説明

積層型電子部品およびその製造方法

【課題】還元性雰囲気中での焼成が可能であり、DCバイアス特性が良好で、電圧印加時における電歪量が低減されており、しかも、比誘電率および容量温度特性の向上された積層型電子部品を提供すること。
【解決手段】誘電体層と内部電極層とを有し、前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物からなり、前記誘電体層中において、前記内部電極層3に直接接触している粒子である電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の割合ABT[%]と、前記内部電極層3に接触していない粒子である非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の割合BBT[%]と、の差(ABT−BBT)が5%以上である積層型電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品と、その製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型かつ高性能化に伴い、積層型セラミックコンデンサに対する更なる小型化、大容量化、低価格化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
【0003】
現在、小型、高容量のセラミックコンデンサには、一般に、強誘電体セラミック材料が使われている。このような強誘電体セラミック材料は、電界を印加した際に、機械的歪みが発生するという電歪現象を伴うため、強誘電体セラミック材料を用いたセラミックコンデンサに電圧を印加すると、電歪現象による振動が発生する。
【0004】
特に、このような電歪現象は、セラミックコンデンサを回路基板上に実装した場合に、たとえば、電圧の変動により、コンデンサ自身だけでなく、基板や、さらには周りの部品を振動させる原因となり、ときに可聴振動数(20〜20000Hz)の振動音を発することがある。この振動音は人に不快な音域の場合もあり、対策が必要とされていた。
【0005】
これに対し、たとえば、特許文献1では、電歪現象によるセラミックコンデンサの振動の基板への伝達を抑止するために、外部端子電極と基板とを接続するための電極接続部をセラミックコンデンサに設け、コンデンサ素子本体の下面と基板との間に一定の離隔距離を設けることが提案されている。
【0006】
しかしながら、この文献のように、電極接続部により、一定の離隔距離を設ける方法を採用すると、セラミックコンデンサの製造コストが高くなってしまうという点や、コンデンサの高さ方向が大きくなってしまい、小型化が困難となってしまうという点より、さらなる改良が望まれていた。
【0007】
また、特許文献2には、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸バリウムを含有し、これら3つの組成モル比について少なくともチタン酸バリウムの組成モル比が0.3以下であり、正方晶または斜方晶の少なくとも何れか一方の結晶構造を含むことを特徴とする誘電体磁器組成物が開示されている。この文献記載の誘電体磁器組成物は、特に、第3次高調波歪み(THD)を低減することを目的としている。しかしながら、この文献の誘電体磁器組成物では、上述した電歪現象の改善については十分ではなく、しかも、主成分であるチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸バリウムを互いに固溶させた構成を採用しているため、容量温度特性が十分ではなく、たとえば、EIA規格のX6S特性(−55〜105℃、ΔC/C=±22%以内)を満足することができなかった。
【0008】
なお、上記のような構成を有する積層セラミックコンデンサは、一般に、セラミック粉末およびバインダを主成分とするセラミックグリーンシートに、内部電極形成用の電極ペーストを所定パターンで印刷して積層した後、同時焼成して一体焼結させ、最後に外部電極を形成して製造される。内部電極の導電材としては、PdやPd合金が用いられていたが、Pdは高価であるため、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属が使用されるようになってきている。しかしながら、NiやNi合金等の卑金属は、誘電体層を構成する誘電体粉末よりも低い温度で焼結してしまうという性質を有している。そのため、たとえば、特許文献3,4のように、内部電極層の焼結挙動を、誘電体層の焼結挙動に近づけるために、内部電極を形成するための電極ペーストに、共材としてセラミック粉末を添加する方法が知られている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−335963号公報
【特許文献2】特開2000−264729号公報
【特許文献3】特開2003−68559号公報
【特許文献4】特開2005−101318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、還元性雰囲気中での焼成が可能であり、DCバイアス特性(誘電率の直流電圧印加依存性)が良好で、電圧印加時における電歪量が低減されており、しかも、比誘電率および容量温度特性の向上された積層型電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品を構成する誘電体層を、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、これらが互いに、実質的に固溶せず、コンポジット構造を形成するとともに、この誘電体層を構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合に関し、内部電極層に接触している粒子中における割合と、内部電極層に接触していない粒子中における割合と、を所定の関係とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る積層型電子部品は、
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有し、
前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
前記内部電極層に直接接触している粒子を電極接触粒子とし、前記内部電極層に接触していない粒子を非電極接触粒子とした場合に、前記電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合を百分率で示したABT[%]と、
前記非電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合を百分率で示したBBT[%]と、の差(ABT−BBT)が5%以上であることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記ABTとBBTとの差(ABT−BBT)が、40%以下である。
【0014】
好ましくは、前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径が、0.2〜2μmである。
【0015】
好ましくは、前記誘電体層の厚みが2〜20μmである。
【0016】
好ましくは、前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOの組成モル比を、組成式{(BaSrCa)O}TiOで示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
0.19≦x≦0.23、
0.25≦y≦0.31、
0.46≦z≦0.54、
x+y+z=1、
0.980≦m≦1.01、
である。
【0017】
好ましくは、前記誘電体磁器組成物が、副成分として、Mnの酸化物をさらに含み、前記Mnの酸化物の含有量が、前記主成分100モルに対して、MnO換算で、0.3〜1モルである。
【0018】
好ましくは、前記誘電体磁器組成物が、副成分として、Siの酸化物をさらに含み、前記Siの酸化物の含有量が、前記主成分100モルに対して、SiO換算で、0.1〜0.5モルである。
【0019】
好ましくは、前記誘電体磁器組成物が、副成分として、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素の酸化物から選択される1種以上をさらに含み、前記V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの酸化物の含有量が、前記主成分100モルに対して、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素換算で、0.02モル以上、0.40モル未満である。
【0020】
また、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品を製造する方法であって、
焼成後に誘電体層となるグリーンシートを形成する工程と、電極ペーストを用いて、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、前記グリーンシートおよび電極ペースト膜を交互に積層し、グリーンチップを得る工程と、前記グリーンチップを焼成する工程と、を有し、
焼成後の前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物からなり、
前記電極ペースト膜を形成するための電極ペーストとして、導電体粉末と、BaTiO粉末を含有する共材と、を含む電極ペーストを用いることを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法において、好ましくは、前記電極ペースト中における、前記共材の含有量が、前記導電体粉末100重量部に対して、1〜30重量部である。
【0022】
本発明の製造方法において、好ましくは、前記誘電体層を構成する誘電体磁器組成物が、前記本発明の積層型電子部品と同様な構成を有する。
【0023】
本発明の積層型電子部品、および本発明の製造方法により得られる積層型電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、誘電体層を、主成分としてBaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含み、かつ、これらが、それぞれ互いに実質的に固溶せず、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成している。そのため、比誘電率、DCバイアス特性および容量温度特性を良好とし、電圧印加時における電歪量を低減することができる。
【0025】
しかも、本発明では、コンポジット構造を形成しているBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のうち、BaTiO結晶粒子の存在割合を次のように制御している。すなわち、内部電極層に直接接触している粒子である電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子の個数の割合ABT[%]と、内部電極層に接触していない粒子である非電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子の個数の割合BBT[%]と、の差(ABT−BBT)を5%以上としている。そのため、上記各特性を良好に保ちながら、比誘電率および容量温度特性のさらなる向上を図ることができる。特に、容量温度特性については、EIA規格のX6S特性を満足させることができる。
【0026】
また、本発明の製造方法によれば、誘電体層を、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含むコンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成とするとともに、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を、共材としてBaTiO粉末を含有する電極ペーストを用いて形成する。そして、このような構成を採用することにより、電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTと、非電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTと、を上記所定の関係とすることができ、上記と同様な効果を奏することができる。
【0027】
なお、たとえば、上述した特許文献3(特開2003−68559号公報)には、Ba、CaおよびTiを含有するBCT型結晶粒子と、BaおよびTiを含有するBT型結晶粒子と、からなるコンポジット構造を形成している誘電体層を有する積層セラミックコンデンサにおいて、共材として(Ba、Ca)TiO結晶粉末を含有する電極ペーストを用いて、内部電極を形成する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献3では、誘電体層を構成する結晶粒子がコンポジット構造となっている一方で、コンポジット構造を構成している誘電体粒子の種類が本発明とは異なる。また、電極ペーストに含有させる共材としても(Ba、Ca)TiO結晶粉末を使用しており、この点においても本発明とは異なる。そのため、この特許文献3では、上記した本発明の製造方法のような効果を奏することができない。
【0028】
また、上述した特許文献4(特開2005−101318号公報)では、主成分として、Aサイト成分であるBa,Ca、およびBサイト成分であるTi、Zrがそれぞれ固溶してなる結晶粒子から構成される誘電体層を有する積層セラミックコンデンサにおいて、共材としてBaTiO粉末、BaZrO粉末およびCaZrO粉末を含有する電極ペーストを用いて、内部電極を形成する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献4では、電極ペースト中に含有させる共材としてBaTiO粉末に加えて、BaZrO粉末およびCaZrO粉末を用いている点で本発明とは異なる。また、誘電体層を構成する結晶粒子がコンポジット構造ではなく、固溶体で形成されており、この点においても本発明とは異なる。そのため、この特許文献4では、上記した本発明の製造方法のような効果を奏することができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合と、非電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合と、を説明するための図である。
【0030】
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0031】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0032】
誘電体層2
誘電体層2は、誘電体磁器組成物を含有する。
誘電体層2に含有される誘電体磁器組成物は、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含む主成分を有する。
【0033】
本実施形態において、主成分を構成する上記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOは、それぞれ互いに、実質的に固溶していない状態で含有されている。すなわち、本実施形態では、これらBaTiO、SrTiOおよびCaTiOは、それぞれ別々の結晶粒子としてのBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子として含有され、コンポジット構造を形成している。
【0034】
ただし、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOは、実質的にBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子として含有されていれば良く、たとえば、BaTiOの結晶粒子とSrTiOの結晶粒子との界面付近においては、一部固溶相が形成されていても構わない。
【0035】
BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを、それぞれ互いに、実質的に固溶していない状態とし、コンポジット構造を形成させることにより、誘電率を維持しながら、容量温度特性の向上を図ることができ、特に、EIA規格のX6S特性(−55〜105℃、ΔC/C=±22%以内)を満足させることができる。なお、この理由としては、たとえば、非固溶とし、コンポジット構造とすることにより、BaTiOに由来するキュリー温度のピークが残存すること等によると考えられる。
【0036】
主成分を構成するBaTiO、SrTiOおよびCaTiOが互いに固溶しているか否かについては、たとえば、誘電体層2のX線回折により確認することができる。具体的には、誘電体層2に対して、X線源にCu−Kα線を用いたX線回折を行い、2θ=30〜35°の範囲に、それぞれBaTiO、SrTiOおよびCaTiOに起因する分離可能な3つの回折ピークが観測されるか否かにより確認することができる。なお、2θ=30〜35°の範囲に観測される回折ピークは、それぞれBaTiOの(110)面の回折ピーク、SrTiOの(110)面の回折ピーク、およびCaTiOの(121)面の回折ピークである。
【0037】
さらに、本実施形態では、誘電体層2を構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の3種類の結晶粒子中における、BaTiO結晶粒子の割合(個数割合)に関し、次のような構成とする。
すなわち、図2に示すように、内部電極層3に直接接触している結晶粒子を電極接触粒子2aとし、内部電極層3に接触していない結晶粒子を非電極接触粒子2bとした場合に、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の割合と、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の割合と、を所定の関係とする。
【0038】
なお、図2は、電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合と、非電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合と、を説明するための図であり、一対の内部電極層3に挟まれた誘電体層2の断面を拡大した部分に相当する図である。この図2においては、電極接触粒子を符号「2a」で示し、非電極接触粒子を符号「2b」で示すとともに、その断面に、それぞれ異なる平行斜線(ハッチング)を付した。ただし、これらの粒子2a,2bはともに、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のいずれかで構成される粒子であるという点では同じである一方で、単に内部電極層3に接触しているか否かで、平行斜線(ハッチング)を異なるものとした模式図である。また、図2中では、たとえば、電極接触粒子2aにおいては、組成がいずれであるか(すなわち、BaTiO、SrTiO、CaTiOのいずれであるか)に関係なく同じ電極接触粒子2aとして図示した(この点については、非電極接触粒子2bも同様である。)。
【0039】
具体的には、本実施形態では、内部電極層3に直接接触している電極接触粒子2aを構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合をABT[%]とし、非電極接触粒子2bを構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合をBBT[%]とした場合に、これらの差(ABT−BBT)が5%以上となっている。
【0040】
すなわち、本実施形態では、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTを、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTよりも高いものとし、その差を5%以上とする。電極接触粒子2a中および非電極接触粒子2b中における、BaTiO結晶粒子の割合をこのような関係とすることにより、DCバイアス特性を良好なものとし、電圧印加時における電歪量を低減しつつ、比誘電率および容量温度特性(特に低温側の温度特性)のさらなる向上を図ることができる。特に、本実施形態では、DCバイアス特性および電歪量を良好なものとしつつ、比誘電率を480以上と高くすることができ、しかも、容量温度特性については、EIA規格のX6S特性を満足させることができる。
【0041】
電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTと、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTと、の差であるABT−BBTは、5%以上であり、好ましくは5%以上、35%以下である。ABT−BBTが小さすぎると、比誘電率が低下するとともに、容量温度特性(特に低温側の温度特性)が悪化してしまう。
【0042】
なお、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTは、たとえば、次のようにして求めることができる。
すなわち、まず、誘電体層2の断面についてSEM観察を行い、誘電体層2のSEM像(反射電子像)を得る。そして、SEM像(反射電子像)より、誘電体層2中において内部電極層3に直接接触している粒子を特定し、これを電極接触粒子2aとする。そして、この特定した電極接触粒子2aを構成する各粒子について、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のいずれであるか特定する。そして、その結果に基づいて、下記式(1)により、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTを求めることができる。割合ABTを求める際には、少なくとも15個以上の電極接触粒子2aを用いて、上記測定を行うことが好ましい。
割合ABT[%]=(BaTiO結晶粒子の個数)/(BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計個数)×100 …(1)
【0043】
なお、電極接触粒子2aを構成する各粒子について、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のいずれであるかは、SEM像(反射電子像)より、各結晶粒子がBa,Sr,Caのいずれを主として含有しているかを測定することにより特定することができる。
【0044】
また、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTは、誘電体層2中において内部電極層3に接触していない粒子である非電極接触粒子2bについて、上記測定を行う以外は、同様にして求めることができる。なお、この場合には、SEM像(反射電子像)中において、15個以上の非電極接触粒子2bを通る直線を引き、この直線上の非電極接触粒子2bについて、各粒子の種類を特定する方法を採用することが好ましい。
【0045】
誘電体層2を構成する電極接触粒子2a、非電極接触粒子2b(すなわち、誘電体層2を構成する全てのBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子)の平均結晶粒子径は、好ましくは0.2〜2μm、より好ましくは0.5〜1.5μmである。平均結晶粒子径が小さすぎると、比誘電率が低下したり、容量温度特性が悪化する場合がある。一方、大きすぎると、高温負荷寿命が劣化する傾向にある。
【0046】
また、主成分を構成するBaTiO、SrTiOおよびCaTiOの組成モル比については特に限定されないが、これらを組成式{(BaSrCa)O}TiOで示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、好ましくは、
0.19≦x≦0.23、
0.25≦y≦0.31、
0.46≦z≦0.54、
0.980≦m≦1.01、
であり、より好ましくは、
0.195≦x≦0.225、
0.255≦y≦0.305、
0.465≦z≦0.535、
0.985≦m≦1.0095、
である。なお、上記式において、x+y+z=1である。
記号x、y、zおよびmを上記範囲とすることにより、DCバイアス特性の向上効果と、電圧印加時における電歪量の低減効果と、を高めることができる。また、上記組成式において、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
【0047】
上記式中、xは、BaTiOの含有割合を示す。主成分中のBaTiOの含有量が増加すると、強誘電性が強くなる傾向にある。xが小さ過ぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。特に、比誘電率が低すぎる場合には、所望の容量を得るためには、誘電体層2の積層数を増加させる必要が生じてくるため、製造コストが増加してしまうという問題や、コンデンサの小型化が困難となってしまうという問題が発生してしまう。一方、xが大き過ぎると、比誘電率は向上するものの、電圧印加時の電歪量が高くなり、さらにはDCバイアス特性が悪化する傾向にある。
【0048】
上記式中、yは、SrTiOの含有割合を示す。主成分中のSrTiOの含有量が増加すると、常誘電性が強くなる傾向にある。yが小さ過ぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。一方、yが大き過ぎると、DCバイアス特性が悪化する傾向にある。
【0049】
上記式中、zは、CaTiOの含有割合を示す。CaTiOは、主に焼結安定性を向上させる効果や、絶縁抵抗値を向上させる効果を有する。zが小さ過ぎると、DCバイアス特性が悪化する傾向にある。一方、zが大き過ぎると、比誘電率が低下してしまう傾向にある。
【0050】
主成分中のBaTiOの含有量が増加すると、強誘電性が強くなる一方で、主成分中のSrTiO,CaTiOの含有量が増加すると、常誘電性が強くなる傾向にあり、記号x、y、zを上記範囲とすることにより、強誘電相と常誘電相とのバランスを図ることができる。
【0051】
上記式中、mは、ペロブスカイト構造のAサイトと、Bサイトと、の比(Ba,SrおよびCaと、Tiと、の比)を示す。mを0.980以上とすることにより、焼成時における誘電体粒子の粒成長を抑制することができる。また、mを1.01以下とすることにより、焼成温度を高くしなくても緻密な焼結体を得ることができる。mが小さすぎると、誘電体粒子の微細化が困難となり、DCバイアス特性が悪化する傾向にある。一方、mが大きすぎると、焼結温度が高くなり過ぎてしまい、焼結が困難となる傾向にある。
【0052】
上記誘電体磁器組成物には、上記した主成分に加えて、副成分がさらに含有されていることが好ましい。
本実施形態においては、副成分として、Mnの酸化物と、Siの酸化物と、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素の酸化物から選択される1種以上と、をさらに含有していることが好ましい。
【0053】
Mnの酸化物は、焼結を促進する効果、および高温負荷寿命を改善する効果を有する。Mnの酸化物の含有量は、上記主成分100モルに対して、MnO換算で、好ましくは0.3〜1モルであり、より好ましくは0.3〜0.8モルである。Mnの酸化物の含有量が少な過ぎると、焼結性が悪化するとともに、高温負荷寿命に劣る傾向にある。一方、含有量が多過ぎると、IR不良率が悪化してしまう場合がある。
【0054】
Siの酸化物は、主として焼結助剤として作用するが、薄層化した際の初期絶縁抵抗の不良率を改善する効果を有する。Siの酸化物の含有量は、上記主成分100モルに対して、SiO換算で、好ましくは0.1〜0.5モルであり、より好ましくは0.15〜0.45モルである。Siの酸化物の含有量が少な過ぎると、焼成温度が上昇してしまう場合がある。一方、多過ぎると、IR不良率が悪化してしまう傾向にある。
【0055】
なお、本実施形態においては、Siの酸化物を複合酸化物の形態で含有させても良い。このような複合酸化物としては、SiOと、誘電体磁器組成物に含有される他の主成分や副成分を構成する元素の酸化物と、の複合酸化物が挙げられ、たとえば、CaSiO、SrSiO、(Ca,Sr)SiO、MnSiO、BaSiOなどが挙げられる。これら複合酸化物を使用する場合には、焼成後の組成が所望の範囲となるように、適宜調整すればよい。
【0056】
V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素の酸化物は、高温負荷寿命を改善する効果を有する。これらの酸化物の含有量は、主成分100モルに対して、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各酸化物換算で、好ましくは、0.02モル以上、0.40モル未満、より好ましくは0.03〜0.30モル、さらに好ましくは0.05〜0.20モルである。これらの酸化物の含有量が少な過ぎると、上記効果が得難くなる。一方、多過ぎると、IRが低下する傾向にある。
なお、上記含有量は各元素換算の含有量であり、たとえば、Vの酸化物において、V元素換算での含有量が0.10モルである場合には、その酸化物であるV換算での含有量は0.05モルとなる。
【0057】
また、本実施形態においては、必要に応じて、上記以外の副成分を含有させても良い。このような副成分としては、特に限定されないが、たとえば、Ba、Ca、Sr、Li、Mg、Al、Zr、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの各元素の酸化物などが挙げられる。
【0058】
誘電体層2の厚みは、特に限定されないが、好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは4〜15μmである。誘電体層2の厚みをこのような範囲とすることにより、定格電圧の高い(たとえば100V以上)中耐圧用途に対応させることができる。誘電体層2を薄くしすぎると、ショート不良率が悪化する場合がある。一方、厚くしすぎると、コンデンサの小型化が困難となってしまう。
【0059】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、Ni、Cu、Ni合金またはCu合金が好ましく、特にNiまたはNi合金が好ましい。内部電極層3の主成分をNiやNi合金とした場合には、誘電体が還元されないように、低酸素分圧(還元雰囲気)で焼成することが好ましい。内部電極層3の厚さは、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは0.8〜1.5μmである。
【0060】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0061】
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0062】
誘電体ペーストの準備
まず、誘電体ペーストに含まれる誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体ペーストを調製する。
誘電体ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0063】
誘電体原料としては、上記した主成分および副成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
【0064】
本実施形態では、上記主成分の原料として、BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末を使用することが好ましく、特に、これらのBaTiO粉末、SrTiO粉末、CaTiO粉末は、互いに予め反応させることなく用いることが好ましい。主成分の原料として、これらの粉末を使用し、しかも、予め互いに反応させることなく用いることにより、焼結後の誘電体磁器組成物において、主成分を構成することとなるBaTiO、SrTiOおよびCaTiOを、それぞれ互いに、実質的に固溶していない構成とすることができる。すなわち、焼結後の誘電体磁器組成物において、これらの複合酸化物を、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で存在させ、コンポジット構造を形成させることができる。
【0065】
なお、主成分原料としてのBaTiO粉末、SrTiO粉末、CaTiO粉末は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、しゅう酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造することができる。
また、主成分の原料としては、上記した各粉末以外に、ペロブスカイト構造のAサイトと、Bサイトと、の比(Ba,SrおよびCaと、Tiと、の比)を調整するために、TiOをさらに添加しても良い。
【0066】
また、上記主成分以外の原料(たとえば、副成分の原料)としては、各酸化物や焼成により各酸化物となる化合物を、そのまま用いても良いし、あるいは、予め仮焼きし、焙焼粉として用いても良い。
【0067】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ブチラール樹脂、アクリル樹脂等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、ターピネオール、アセトン、トルエン、エタノール、キシレン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0068】
また、誘電体ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0069】
電極ペーストの準備
次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を形成するため電極ペーストを準備する。
内部電極層3を形成するための電極ペーストとしては、導電体粉末と、共材と、有機ビヒクルと、を含有するペーストを用いる。
【0070】
導電体粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金で構成される。
【0071】
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
【0072】
本実施形態では、共材として、BaTiO粉末を含有するものを用いる。
共材として、BaTiO粉末を含有するものを用いることにより、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTと、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTと、の差(ABT−BBT)を、上記範囲に制御することができる。なお、この理由としては、たとえば、電極ペースト中に含有させた共材としてのBaTiO粉末が、焼成時に、内部電極層3と誘電体層2との界面付近で焼結し、焼成後には、電極接触粒子2aとして存在することとなることによると考えられる。そして、この共材としてのBaTiO粉末の効果により、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTよりも、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTが高くなると考えられる。
【0073】
また、共材としては、BaTiO粉末の他、必要に応じて、SrTiO粉末やCaTiO粉末等が含有されていても良い。
【0074】
電極ペースト中における、共材の含有量は、前記導電体粉末100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは5〜25重量部である。共材の含有量が少なすぎると、焼成時における、内部電極層と誘電体層との間の収縮挙動の差が大きくなってしまい、クラック等の構造欠陥が発生し易くなる。また、割合ABTと割合BBTとの差(ABT−BBT)が小さくなってしまい、上記効果が得られなくなる傾向にある。一方、共材の含有量が多すぎると、容量温度特性や、高温加速寿命が悪化してしまう。また、割合ABTと割合BBTとの差(ABT−BBT)が大きくなりすぎてしまい、上記効果が得られなくなる傾向にある。なお、共材の平均粒子径は、特に限定されないが、粉砕後の粒子径で、好ましくは0.01〜1μmである。
【0075】
有機ビヒクルとしては、上記した誘電体ペーストと同様のものを使用すれば良い。
【0076】
電極ペーストは、上記した各成分をボールミルや3本ロールミルなどで混合し、スラリー化することにより形成することができる。あるいは、市販の電極ペーストにBaTiO粉末を含む共材を添加する方法などを採用しても良い。
【0077】
グリーンチップの作製、焼成など
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、キャリアシート上に、セラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートは、焼成後に図1に示す誘電体層2となる。
【0078】
キャリアシートとしては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーンなどがコーティングしてあるものが好ましい。キャリアシートの厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
【0079】
そして、上記にて作製した電極ペーストを用いて、キャリアシート上に形成されたセラミックグリーンシートの表面に、焼成後に図1に示す内部電極層3となる所定パターンの電極ペースト膜(内部電極パターン)を形成する。
【0080】
電極ペースト膜の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、たとえば、スクリーン印刷法などが挙げられる。
【0081】
次に、以上のような、所定パターンの電極ペースト膜が表面に形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して、グリーンチップを作製する。
そして、焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
【0082】
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−10〜10−3Paとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0083】
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1100〜1360℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0084】
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
【0085】
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0086】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−1〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
【0087】
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、高温負荷寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、高温負荷寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
【0088】
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
【0089】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0090】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0091】
本実施形態によれば、積層セラミックコンデンサの誘電体層2を、上記した誘電体磁器組成物で構成する。具体的には、第1に、主成分としてBaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含み、かつ、これらが、それぞれ互いに実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有されたコンポジット構造を形成している。そして、第2に、内部電極層3に直接接触している粒子である電極接触粒子2a中における、BaTiO結晶粒子の個数の割合ABTと、内部電極層3に接触していない粒子である非電極接触粒子中2b中における、BaTiO結晶粒子の個数の割合BBTと、の差(ABT−BBT)を所定の範囲としている。そのため、DCバイアス特性を良好なものとし、電圧印加時における電歪量を低減しつつ、比誘電率および容量温度特性(特に低温側の温度特性)のさらなる向上を図ることができる。特に、DCバイアス特性および電歪量を良好なものとしつつ、比誘電率を480以上と高くすることができ、しかも、容量温度特性については、EIA規格のX6S特性を満足させることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、480以上という高い誘電率を実現しつつ、上記電圧印加時における電歪量に関し、以下のような特性を有する。
すなわち、一対の内部電極層3に挟まれている誘電体層2の層数をN層とした場合に、セラミックコンデンサを基板に固定し、ガラスエポキシ基板などの積層セラミックコンデンサ1が実装されるような通常の基板に固定したセラミックコンデンサに対し、AC:0.2Vrms/μm、DC:4V/μm、周波数:1kHzの条件で電圧を印加した際における素子本体10表面の振動幅で定義される電歪量を、好ましくは、0.125N[nm]未満、より好ましくは0.1N[nm]以下とすることができる。
【0093】
上記電圧印加条件における、AC、DCの値は、誘電体層の厚み1μm当たりの印加電圧である。すなわち、たとえば、誘電体層の厚みを5μmとした場合における印加電圧は、AC:1.0Vrms(=0.2Vrms/μm×5μm)、DC:20V(=4V/μm×5μm)である。また、上記電歪量は、誘電体層2の厚みが変化すると、それに伴い変化する傾向にある。そのため、本実施形態においては、誘電体層2の厚みが、好ましくは2〜20μm、より好ましくは4〜15μm、特に5μmの場合に、上記所定範囲となることが好ましい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0095】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る積層型電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る積層型電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有するものであれば何でも良い。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0097】
実施例1
誘電体ペーストの作製
まず、主成分の原料として、BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末を、副成分の原料として、MnCO、V、SiOを、主成分のAサイトと、Bサイトと、の比(Ba,SrおよびCaと、Tiと、の比)を調整するための原料として、TiOをそれぞれ準備した。なお、副成分の原料であるMnCOは、焼成後にMnOとなる化合物である。
【0098】
次いで、上記にて準備した各原料を、ボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥して、誘電体材料を得た。なお、各原料の混合割合は、焼成後の組成が表1に示す組成となるように調整した。ただし、表1において、各副成分の添加量は主成分100モルに対するモル数であり、MnO、SiOについては各酸化物換算で、VについてはV元素換算で、それぞれ添加量を示した。
【0099】
次いで、得られた誘電体原料100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP)5重量部と、溶媒としてのアルコール100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体ペーストを得た。
【0100】
電極ペーストの作製
まず、導電体粉末としてのNi粉末と、共材としてのBaTiO粉末を準備した。そして、Ni粉末と、BaTiO粉末と、有機ビヒクルと、をボールミルで混合してペースト化し、電極ペーストを得た。本実施例では、Ni粉末100重量部に対する、共材の含有量が、表1に示す量となるように、各電極ペーストを調製した。
【0101】
積層セラミックコンデンサ試料の作製
そして、上記にて作製した誘電体ペーストと、電極ペーストと、を用い、以下のようにして、図1に示される積層型セラミックコンデンサ1を製造した。
【0102】
まず、得られた誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法にて、PETフィルム上に、グリーンシートを形成した。次いで、このグリーンシートの上に、電極ペーストを用いて、スクリーン印刷により、電極パターンを印刷し、電極パターンの印刷されたグリーンシートを製造した。なお、電極パターンの印刷されたグリーンシートの厚みは、乾燥後の厚みで6.5μmとした。次いで、上記のグリーンシートとは別に、誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法にて、PETフィルム上に電極パターンの印刷されていないグリーンシートを製造した。
【0103】
そして、上記にて製造した各グリーンシートを次の順序にて積層し、得られた積層体を加圧することにより、グリーンチップを製造した。
まず、電極パターンの印刷されていないグリーンシートを合計の厚みが300μmとなるまで積層した。その上に、電極パターンの印刷されたグリーンシートを5枚積層した。さらにその上に、電極パターンの印刷されていないグリーンシートを合計の厚さが300μmとなるまで積層し、積層体とした。そして、得られた積層体について、温度80℃、圧力1t/cmの条件で加熱・加圧して、グリーンチップを得た。
【0104】
次いで、得られたグリーンチップを所定のサイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:30℃/時間、保持温度:250℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1240℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス(H:3%)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガスとした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウェッターを用いた。
【0105】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料1〜9を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、2.5mm×2.5mm×3.2mmであり、誘電体層の厚み5μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とした。
【0106】
得られた各コンデンサ試料について、比誘電率、容量温度特性(X6S特性)および割合ABTと割合BBTとの差ABT−BBTを下記に示す方法により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0107】
比誘電率ε
まず、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの信号を入力し、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率ε(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では480以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0108】
容量温度特性(X6S特性)
コンデンサ試料について、−55℃、25℃および105℃の各温度における静電容量を測定し、25℃における静電容量に対する−55℃および105℃での静電容量の変化率△C(単位は%)を算出した。本実施例では、静電容量の変化率が、EIA規格のX6S特性(−55〜105℃、ΔC=±22%以内)を満たしている試料を良好とした。結果を表1に示す。なお、表1においては、−55℃における静電容量の変化率と、105℃における静電容量の変化率と、をそれぞれ示した。
【0109】
割合ABTと割合BBTとの差ABT−BBT
電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTと、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTと、の差であるABT−BBTは、上述した実施形態に記載した方法に従って測定した。なお、測定に際しては、それぞれ、15個の電極接触粒子2aおよび非電極接触粒子2bを用いた。
【0110】
また、本実施例では、上記評価に加えて、DCバイアス特性、電圧印加による電歪量を、下記の方法により測定、評価した。その結果、本実施例のコンデンサ試料は、いずれも下記に示すような各基準を満足していることが確認できた。
【0111】
DCバイアス特性
DCバイアス特性は、コンデンサ試料に対し、一定温度(25℃)において、4V/μmの直流電圧を印加した際の比誘電率の変化(単位は%)を算出することにより、測定した。本実施例では、DCバイアス特性は、10個のコンデンサ試料を用いて測定した値の平均値とした。DCバイアス特性は0に近いほど好ましく、本実施例では、いずれの試料も、DCバイアス特性が−10%以上となり、良好な結果であった。
【0112】
電圧印加による電歪量
電圧印加による電歪量は、次の方法で測定した。すなわち、まず、コンデンサ試料を、所定パターンの電極がプリントしてあるガラスエポキシ基板にハンダ付けすることにより固定した。次いで、基板に固定したコンデンサ試料に対して、AC:0.2Vrms/μm、DC:4V/μm、周波数:1kHzの条件で電圧を印加し、電圧印加時におけるコンデンサ試料表面の振動幅を測定し、これを電歪量とした。なお、コンデンサ試料表面の振動幅の測定には、レーザードップラー振動計を使用した。また、本実施例では、10個のコンデンサ試料を用いて測定した値の平均値を電歪量とした。電歪量は低いほうが好ましく、本実施例では、いずれの試料も、電歪量が0.5nm以下となり、良好な結果であった。
【0113】
【表1】

【0114】
電極ペースト中に、共材としてのBaTiO粉末を、導電体粉末100重量部に対して、1〜30重量部の範囲で添加した試料番号2〜8においては、電極接触粒子2a中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合ABTと、非電極接触粒子2b中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合BBTと、の差であるABT−BBTが5〜40%の範囲となった。そして、これら試料番号2〜8においては、各特性(DCバイアス特性、電圧印加時における電歪量)を良好に保ちながら、比誘電率および容量温度特性(特に低温側の温度特性)の向上が可能となることが確認できる。
【0115】
特に、試料番号2〜4を比較することにより、共材としてのBaTiO粉末の添加量を増加させることにより、ABT−BBTも大きくなっていき、比誘電率および容量温度特性(特に低温側の温度特性)の向上効果が高くなることが確認できる。また、試料番号5〜8より、誘電体層の主成分組成を変化させた場合でも、同様の結果が得られることが確認できる。
【0116】
また、試料番号2〜8おいては、誘電体層についてのX線回折の結果より、2θ=30〜35°の範囲に、分離した3つの回折ピークが存在し、BaTiO、SrTiO、およびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶していない状態で存在していることも確認できた。
【0117】
一方、共材としてのBaTiO粉末の含有量を、導電体粉末100重量部に対して、0.5重量部とした試料番号1においては、ABT−BBTが5%未満となり、比誘電率が低くなる結果となった。また、共材としてのBaTiO粉末の含有量を、導電体粉末100重量部に対して、33重量部とした試料番号9においては、ABT−BBTが40%以上と大きくなりすぎ、内部電極層3の電極途切れが発生し、電極被覆率が低下し、そのため静電容量が低下するため、誘電率が低くなる結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2】図2は電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合と、非電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合と、を説明するための図である。
【符号の説明】
【0119】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
2a… 電極接触粒子
2b… 非電極接触粒子
3… 内部電極層
4… 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品であって、
前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
前記内部電極層に直接接触している粒子を電極接触粒子とし、前記内部電極層に接触していない粒子を非電極接触粒子とした場合に、
前記電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合を百分率で示したABT[%]と、
前記非電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、BaTiO結晶粒子の個数の割合を百分率で示したBBT[%]と、の差(ABT−BBT)が5%以上であることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記ABTとBBTとの差(ABT−BBT)が、40%以下である請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径が、0.2〜2μmである請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層の厚みが2〜20μmである請求項1〜3のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOの組成モル比を、組成式{(BaSrCa)O}TiOで示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
0.19≦x≦0.23、
0.25≦y≦0.31、
0.46≦z≦0.54、
x+y+z=1、
0.980≦m≦1.01、
である請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体磁器組成物が、副成分として、Mnの酸化物をさらに含み、
前記Mnの酸化物の含有量が、前記主成分100モルに対して、MnO換算で、0.3〜1モルである請求項1〜5のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体磁器組成物が、副成分として、Siの酸化物をさらに含み、
前記Siの酸化物の含有量が、前記主成分100モルに対して、SiO換算で、0.1〜0.5モルである請求項1〜6のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体磁器組成物が、副成分として、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素の酸化物から選択される1種以上をさらに含み、
前記V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの酸化物の含有量が、前記主成分100モルに対して、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素換算で、0.02モル以上、0.40モル未満である請求項1〜7のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項9】
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品を製造する方法であって、
焼成後に誘電体層となるグリーンシートを形成する工程と、
電極ペーストを用いて、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
前記グリーンシートおよび電極ペースト膜を交互に積層し、グリーンチップを得る工程と、
前記グリーンチップを焼成する工程と、を有し、
焼成後の前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物からなり、
前記電極ペースト膜を形成するための電極ペーストとして、導電体粉末と、BaTiO粉末を含有する共材と、を含む電極ペーストを用いることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記電極ペースト中における、前記共材の含有量が、前記導電体粉末100重量部に対して、1〜30重量部である請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−258477(P2007−258477A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81421(P2006−81421)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】