説明

積層型電池

【課題】配線基板の修理工数を低減することができる積層型電池を提供する。
【解決手段】集電体12を有する電極11と電解質層15からなる単電池20を複数積層するとともに、単電池20の電圧を検出するために単電池20と外部機器40を電気的に接続する配線基板30を備える積層型電池100において、配線基板30は、複数の単電池20の集電体12とそれぞれ接続する複数の接続部34と、複数の接続部34をまとめて外部機器40と接続するとともに、接続部34と集電体12の接着部分の接着強度よりも低強度の脆弱部を有する延設部33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単電池を複数積層した積層型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等においては、電極と電解質層からなる単電池を複数積層した積層型電池が使用される。
【0003】
特許文献1には、各単電池の電圧を検出するための配線基板を備えた積層型電池が開示されている。配線基板は先端に複数の接続部を有しており、配線基板の接続部は単電池を構成する電極の集電体に電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−160060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した配線基板に車両走行時の衝撃等に起因する外力が作用して、配線基板が引っ張られると、配線基板の接続部と集電体との接着部分が剥離するおそれがある。このように剥離した配線基板を修理する場合には、積層型電池を一旦分解して配線基板の接続部と集電体とを再度接着する必要があり、配線基板の修理に手間が掛かるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、配線基板の修理工数を低減することができる積層型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0008】
本発明の積層型電池は、集電体を有する電極と電解質層からなる単電池を複数積層するとともに、単電池の電圧を検出するために単電池と外部機器を電気的に接続する配線基板を備える。この配線基板は、複数の単電池の集電体とそれぞれ接続する複数の接続部と、複数の接続部をまとめて外部機器と接続するとともに、接続部と集電体の接着部分の接着強度よりも低強度の脆弱部を有する延設部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線基板の延設部は脆弱部を有するので、車両走行時の衝撃等に起因する外力によって配線基板が強く引っ張られた場合には、配線基板の接続部と集電体の接着部分が剥離する前に、延設部の脆弱部が破断する。このように破断した場合には、破断した延設部同士を再度接着させるだけで配線基板の修理が済み、従来のように積層型電池を分解する必要がない。したがって、配線基板の修理を容易に実施でき、修理工数を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態における積層型電池の一部縦断面図である。
【図2】(A)は積層型電池に設けられる配線基板の平面図であり、(B)は(A)のB−B断面における配線基板の断面図である。
【図3】(A)は積層型電池を積層方向から見た時の概略図であり、(B)は積層型電池を積層方向に直交する方向から見た時の概略図である。
【図4】(A)は第2実施形態の積層型電池を積層方向から見た時の概略図であり、(B)は積層型電池を積層方向に直交する方向から見た時の概略図である。
【図5】第3実施形態の積層型電池を積層方向から見た時の概略図である。
【図6】第3実施形態と関連する積層型電池を積層方向から見た時の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態における積層型電池100について説明する。図1は、積層型電池100の一部縦断面図である。
【0013】
図1に示す積層型電池100は、双極型二次電池であって、発電ユニット1と、発電ユニット1を収容する外装ケース2とを備える。
【0014】
発電ユニット1は、一対の双極型電極11とこれら双極型電極11の間に挟まれる電解質層15からなる単電池20を複数直列接続して構成されている。
【0015】
双極型電極11は、導電性部材によって板状に形成された集電体12と、集電体12の一方の面に設けられる正極活物質層13と、集電体12の他方の面に設けられる負極活物質層14と、を備える。集電体12の外縁部は、正極活物質層13及び負極活物質層14が塗布されない未塗布部となっている。
【0016】
電解質層15は、イオン伝導部であって、ポリエチレン製セパレータに電解液を含浸させて形成される。
【0017】
発電ユニット1は、隣り合う双極型電極11の正極活物質層13と負極活物質層14とが電解質層15を介して対向するように、双極型電極11と電解質層15を交互に積層した積層体である。隣接する双極型電極11の外縁部には、電解質層15に含浸させた電解液が漏出するのを防止するシール部16が設けられる。
【0018】
なお、発電ユニット1の積層方向の両端に配置される双極型電極11の集電体12は、正極活物質層13又は負極活物質層14が省略されており、発電ユニット1からの電力を外部に取り出す集電板として利用される。
【0019】
外装ケース2は、アルミニウム等の金属をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムのシート材から形成される。外装ケース2のケース外周部は熱融着によって接合され、外装ケース2は発電ユニット1を収容した状態で密封される。
【0020】
上記した積層型電池100は、各単電池20の電圧を検出するために配線基板30を備える。配線基板30は、電池制御装置等の外部機器40と各単電池20の集電体12を電気的に接続する。これにより外部機器40を用いて各単電池20の電圧を個別に検出することが可能となる。
【0021】
図2(A)〜図3(B)を参照して、積層型電池100に設けられる配線基板30について説明する。
【0022】
図2(A)は配線基板30の平面図であり、図2(B)は図2(A)のB−B断面における配線基板30の断面図である。図3(A)は積層型電池100を積層方向から見た時の概略図であり、図3(B)は積層型電池100を積層方向に直交する方向から見た時の概略図である。
【0023】
図2(A)及び図2(B)に示すように、配線基板30は、銅製の導電部31を絶縁層32で被覆して形成されたフレキシブルプリント基板である。配線基板30は、外部機器40から延設する延設部33と、延設部33から分岐して各単電池20の集電体12にそれぞれ接続する複数の接続部34と、を備える。
【0024】
複数の接続部34は、等間隔で平行に配置される。接続部34の先端部34Aは導電部31の先端が絶縁層32から露出するように形成されており、接続部34は導電部31の先端を介して単電池20の集電体12と電気的に接続する。接続部34の先端部34Aは、図3(B)に示すように、導電性を有する接着部材35によって集電体12に接着される。なお、図3(B)は、発明の理解を容易にするために、配線基板30の1つの接続部34が単電池20の集電体12に接続している状態を模式的に示したものであり、他の部材等の記載を省略している。
【0025】
一方、延設部33は、図2(A)に示すように複数の接続部34をまとめて一本化した状態で直線状に延設される。延設部33の後端部33Aは、各単電池20の集電体12と接続する各導電部31の後端が絶縁層32から露出するように形成されている。延設部33は、これら導電部31の後端を介して外部機器40と電気的に接続する。
【0026】
上記した配線基板30の延設部33は、図3(A)及び図3(B)に示すように、先端側の第1延設部33Bと後端側の第2延設部33Cとから構成されている。
【0027】
第1延設部33Bは、配線基板30が各単電池20の集電体12に接続された状態で、外装ケース2の内部から外部に突出するように設けられる。第1延設部33Bの先端には上述した複数の接続部34が形成されており、第1延設部33Bの後端と第2延設部33Cの先端は、導電性を有する接着部材36を介して電気的に接続されている。第2延設部33Cの後端は、図1に示した外部機器40と電気的に接続する。
【0028】
ここで、第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分の接着強度(例えば、引張せん断接着強さ)は、接続部34と集電体12の接着部分の接着強度(例えば、引張せん断接着強さ)よりも低くなるように設定されている。したがって、外力が配線基板30に作用して配線基板30が強く引っ張られた場合には、配線基板30の接続部34と集電体12の接着部分が剥離する前に、配線基板30の第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分が破断することとなる。
【0029】
なお、第1延設部33Bと第2延設部33Cとの接着部分は、外装ケース2の外部に配置されている。
【0030】
上記のように構成される第1実施形態の積層型電池100では、以下の効果を得ることができる。
【0031】
積層型電池100の各単電池20の電圧を検出するための配線基板30は、各単電池20の集電体12と電気的に接続する複数の接続部34と、これら接続部34をまとめて外部機器40と電気的に接続する延設部33とを備える。延設部33は第1延設部33Bと第2延設部33Cとから構成されており、第1延設部33Bと第2延設部33Cとの接着部分の接着強度は接続部34と集電体12の接着部分の接着強度よりも低くなるように設定されている。第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分を延設部33における脆弱部としたので、車両走行時の衝撃等に起因する外力の作用によって配線基板30が強く引っ張られた場合には、配線基板30の接続部34と集電体12の接着部分が剥離するよりも前に、第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分が破断する。このように破断した場合には、破断した第1延設部33Bと第2延設部33Cを再度接着させるだけで配線基板30の修理が済み、従来手法のように積層型電池100を分解する必要がない。したがって、配線基板30の修理を容易に実施でき、配線基板30の修理工数を低減することが可能となる。
【0032】
配線基板30の第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分(脆弱部)は、発電ユニット1を収容する外装ケース2の外部に配置されるため、第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分が破断しても、外装ケース2は損傷することがない。また、配線基板30の修理時に外装ケース2を取り除く必要もないので、配線基板30の修理工数を低減することが可能となる。
【0033】
配線基板30はフレキシブルプリント基板であり、その柔軟性により外力を吸収しやすいので、配線基板30における破断の発生を抑制することが可能となる。
【0034】
(第2実施形態)
図4(A)及び図4(B)を参照して、第2実施形態における積層型電池100について説明する。図4(A)は積層型電池100を積層方向から見た時の概略図であり、図4(B)は積層型電池100を積層方向に直交する方向から見た時の概略図である。
【0035】
第2実施形態における積層型電池100は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、配線基板30の延設部33の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0036】
図4(A)及び図4(B)に示すように、配線基板30の延設部33は、第1延設部33B及び第2延設部33Cの他に、第3延設部33Dをさらに備えている。
【0037】
第3延設部33Dの先端は、導電性を有する接着部材36を介して第2延設部33Cの後端と電気的に接続している。第3延設部33Dの後端は、図1に示した外部機器40と電気的に接続している。
【0038】
ここで、第2延設部33Cと第3延設部33Dの接着部分の接着強度(例えば、引張せん断接着強さ)は、接続部34と集電体12の接着部分の接着強度(例えば、引張せん断接着強さ)よりも低く設定されている。なお、第1実施形態でも説明したように、第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分の接着強度も、接続部34と集電体12の接着部分の接着強度よりも低く設定されている。
【0039】
上記のように、第2実施形態の積層型電池100では、第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分及び第2延設部33Cと第3延設部33Dの接着部分を延設部33における脆弱部とした。外力の作用によって配線基板30が強く引っ張られた場合には、接続部34と集電体12との接着部分が剥離する前に、第1延設部33Bと第2延設部33Cの接着部分又は第2延設部33Cと第3延設部33Dの接着部分が破断するので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態における積層型電池100について説明する。図5は、積層型電池100を積層方向から見た時の概略図である。
【0041】
第3実施形態における積層型電池100は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、配線基板30の延設部33の構成において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0042】
図5に示すように、配線基板30の延設部33は、第1実施形態のように第1延設部33B及び第2延設部33Cの二部材から構成されるのではなく、一つの延設部材として構成されている。延設部33の先端には複数の接続部34が設けられており、延設部33の後端は図1に示した外部機器40と電気的に接続している。
【0043】
延設部33は、延設方向の一部に、部材幅が狭くなる幅狭部33Eを備えている。
幅狭部33Eは、延設部33の幅方向の外側部分を矩形状に切り欠いて形成される。この幅狭部33Eは、外装ケース2よりも外側に配置される。
【0044】
延設部33の幅狭部33Eにおける引張強度は、配線基板30の接続部34と集電体12の接着部分の接着強度(例えば、引張せん断接着強さ)よりも低くなるように設定されている。
【0045】
上記した積層型電池100では、配線基板30の延設部33に形成された幅狭部33Eを脆弱部としたので、外力の作用によって配線基板30が強く引っ張られた場合には、接続部34と集電体12との接着部分が剥離する前に、延設部33の幅狭部33Eが破断する。幅狭部33Eが伸長することによって延設部33自体が破断するが、幅狭部33Eの破断部分を除去すれば延設部33を再利用することができる。したがって、破断した延設部33同士を再度接着させるだけで配線基板30の修理が済み、従来手法のように積層型電池100を分解する必要がないため、第1実施形態と同様に配線基板30の修理工数を低減することが可能となる。
【0046】
第3実施形態の積層型電池100の配線基板30においては、図5に示すように延設部33の幅方向の外側部分を切り欠いて幅狭部33Eを形成したが、図6に示すように延設部33の幅方向の中央部分を矩形状に切り抜いて幅狭部33Eを形成してもよい。
【0047】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0048】
第1〜第3実施形態における配線基板30は、双極型電極と電解質層とを交互に積層した双極型二次電池に適用したが、正電極と電解質層と負電極とを順番に積層した積層型二次電池に適用してもよい。
【0049】
また、第1〜第3実施形態では、配線基板30が破断する等の異常時に、外部機器40が運転者に異常を報知するようにしてもよい。
【0050】
さらに、第1〜第3実施形態では、積層型電池100は外装ケース2を有しているが、必要に応じて外装ケース2は省略するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
100 積層型電池
1 発電ユニット
2 外装ケース(外装体)
11 双極型電極
12 集電体
13 正極活物質層
14 負極活物質層
15 電解質層
20 単電池
30 配線基板
33 延設部
33B 第1延設部(延設部材)
33C 第2延設部(延設部材)
33D 第3延設部(延設部材)
33E 幅狭部
34 接続部
40 外部機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体を有する電極と電解質層からなる単電池を複数積層するとともに、前記単電池の電圧を検出するために前記単電池と外部機器を電気的に接続する配線基板を備える積層型電池において、
前記配線基板は、
前記複数の単電池の集電体とそれぞれ接続する複数の接続部と、
前記複数の接続部をまとめて前記外部機器と接続するとともに、前記接続部と前記集電体の接着部分の接着強度よりも低強度の脆弱部を有する延設部と、を備えることを特徴とする積層型電池。
【請求項2】
前記延設部は、複数の延設部材を順次接続して構成されており、
前記脆弱部は、前記延設部材同士の接着部分の接着強度を前記接続部と前記集電体の接着部分の接着強度よりも低く設定して形成されることを特徴とする請求項1に記載の積層型電池。
【請求項3】
前記延設部は、延設方向の一部の幅が狭くなる幅狭部を備えており、
前記脆弱部は、前記幅狭部の引張強度を前記接続部と前記集電体の接着部分の接着強度よりも低く設定して形成されることを特徴とする請求項1に記載の積層型電池。
【請求項4】
前記積層型電池を収容する外装体をさらに備え、
前記延設部は、前記外装体の内部から外部に突出するように設けられ、
前記脆弱部は、前記外装体の外部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の積層型電池。
【請求項5】
前記配線基板は、フレキシブルプリント基板であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の積層型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−198616(P2011−198616A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64118(P2010−64118)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】