説明

空気層開放式振動低減構造

【課題】衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減でき、かつ実用性の高い新たな構造として空気層開放式振動低減構造を提供する。
【解決手段】本発明の空気層開放式振動低減は、開放空間側に表側面11a,21a,41aを向けて配置される板状部材11,21,41と、板状部材11,21,41の表側面11a,21a,41aに対向する裏側面11b,21b,41bに対して間隔を空けて配置される躯体12,22,42とを備え、板状部材11,21,41と躯体12,22,42との間に空気層13,23,43を形成しており、空気層13,23,43と該空気層13,23,43の外部との間で連通する通気筒15,25,35,45が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、該板状部材の裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体との間に空気層を形成している構造において、新たに提案される空気層開放式振動低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の室内空間、自動車の車室内空間、道路等には、騒音及び振動を低減するために、騒音及び振動を減衰させるように構成された防音構造及び防振構造が設けられることがある。
【0003】
防音構造に関しては、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に、建物の室内に設けられる窓等に用いられる複層ガラスの構造が開示されている。非特許文献1及び非特許文献2の構造では、複層ガラスの一方面に微細な孔を穿設した微細穿孔板が配置されており、この微細穿孔板側から入射する音が遮音される構造となっている。また、特許文献1及び特許文献2には、音場となる室内空間から入射する音を吸音する構造が開示されている。特許文献1及び特許文献2の構造では、微細穿孔板が、その表側面を音場となる室内空間に向け、かつその裏側面を壁又は天井に向けるように配置され、微細穿孔板と壁又は天井との間に空気層が形成され、複数の筒状部材が微細穿孔板の複数の各孔に対応して微細穿孔板の裏側面に配置されている。
【0004】
また、特に建物の構造において問題となる振動及び騒音については、建物内における人の行動によって衝撃等の荷重が建物の構造体に加えられ、この衝撃に起因して振動が発生し、この振動によって固体伝播音(いわゆる床衝撃音)が発生するということがある。特許文献3には、特に建物の上層階から加えられる床衝撃音を遮音する天井及び壁の構造が開示されている。特許文献3の天井及び壁の構造では、基礎となる躯体の室内空間側に、有孔板が躯体と間隔を空けて配置され、躯体と有孔板との間に空気層が設けられ、硬い材質からなる支持部材が有孔板と躯体との間に配置されており、この支持部材によって有孔板が支持されている。
【0005】
さらに、建物の構造体に加えられる荷重に起因する振動を低減するために、建物の室内の床構造に二重構造が採用されることがある。この二重構造では、床部材が、その表側面を室内空間側に向け、かつその裏側面を基礎となる躯体側に向けるように配置され、床部材と躯体との間に空気層が形成され、床部材と躯体との間に配置される防振ゴムによって床部材が支持されている。非特許文献3には、このような二重構造における空気層の厚さを変化させることによって、建物の構造に加えられる荷重に起因する床衝撃音が変化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007− 11034号公報
【特許文献2】特開2010− 7278号公報
【特許文献3】特開2003− 56092号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高橋 大弐、他2名、「複層ガラスの遮音性能向上に関する研究−微細穿孔板を用いた二重窓構造の提案−」、日本音響学会研究発表会講演論文集(2009年秋季)、社団法人 日本音響学会、2009年 9月、p1009−p1010
【非特許文献2】高橋 大弐、他2名、「微細穿孔板を用いた二重窓構造に関する研究」、日本音響学会研究発表会講演論文集(2010年春季)、社団法人 日本音響学会、2010年 3月、p1159−p1160
【非特許文献3】高橋 大弐、他2名、「二重床構造の重量衝撃音における空気抜きの効果に関する研究」、日本音響学会研究発表会講演論文集(2010年春季)、社団法人 日本音響学会、2010年 3月、p1181−p1182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、非特許文献1及び非特許文献2の構造では、室内空間側から微細穿孔板を透過する音に対しての防音のみを考慮しているに過ぎず、これらの構造では、建物の構造体に加えられる衝撃等の荷重に対する防振効果が十分に得られない。また、特許文献3の構造では、硬い材質の支持部材によって有孔板が支持されているので、有孔板と躯体との間で振動が伝達し易く、建物の構造体に加えられる衝撃等の荷重に対する防振効果が十分に得られない。
【0009】
建物の構造体に加えられる衝撃等の荷重に起因する振動を低減するためには、上述した床の二重構造にて防振ゴムを用いることが有効であるとされ、従来の防振構造は、基本的に防振ゴムのバネ定数等の特性を考慮して設計されている。しかしながら、床の二重構造について、防振ゴムを設けた構造(以下、「防振ゴム有り構造」という)と、防振ゴムを設けずに床部材を吊り上げて自由支持にした構造(以下、「防振ゴム無し構造」という)とのそれぞれに対して、躯体側を加振器により励起して、床部材及び躯体における複数箇所の振動加速度をそれぞれ測定し、躯体における振動加速度の平均値と、床部材における振動加速度の平均値との間の差異である防振効果量(=躯体の振動加速度の平均値−床部材の振動加速度の平均値)を、各周波数について結果を算出した結果、図14に示すように、防振ゴム有り構造については実線S1で表される結果が得られ、かつ防振ゴム無し構造については破線S2で表される結果が得られた。なお、図14では、縦軸が防振効果量(dB)を示し、対数軸で表された横軸が周波数(Hz)を示す。
【0010】
図14では、防振ゴム有り構造の防振効果量に、矢印Xで示した共振周波数f0(=約7.4Hz)のピーク、及び矢印Yで示した共振周波数f1(=約12Hz)のピークが表れて、防振ゴム無し構造の防振効果量には、これらのピークが表れなかった。その一方で、図14では、防振ゴム有り構造及び防振ゴム無し構造の両方の防振効果量は、矢印Zで示した共振周波数f2(=約46Hz)のピーク以降の周波数領域にて、ほとんど変化がなかった。共振周波数f0の固有振動モードでは、図15に示すように、床部材全体が上下方向に動き、共振周波数f1の固有振動モードでは、図16に示すように、床部材の角部のそれぞれが時計周りの順に最大振幅となるように動くこととなり、共振周波数f0及び共振周波数f1の固有振動モードは、防振ゴムのバネ性に起因する固有振動モードとなっている。一方で、共振周波数f2の固有振動モードでは、図17に示すように、床部材が、その一辺の方向の中央部を最大振幅とするように弓状に動くこととなり、共振周波数f2の固有振動モードは、床部材の特性に起因する固有振動モードとなっている。そのため、防振ゴムの効果は、床部材の特性に起因する固有振動に対してあまり効果が得られず、防振ゴムのバネ定数等の特性を考慮したのみでは、床の二重構造にて十分な防振効果が得られていない。
【0011】
上述した床の二重構造における空気層の影響については、非特許文献3のように、二重構造における空気層の厚さを変化させることによって、床衝撃音が変化することが知られているに過ぎず、従来では、空気層の影響を考慮して、建物の構造体に加えられる荷重に起因する振動を低減するための対策が十分に行なわれていなかった。
【0012】
さらに、特許文献1〜特許文献3、及び非特許文献1〜非特許文献3における、微細穿孔板、有孔板等の遮音構造体の音響透過について、遮音構造体に音源から発せられる音波を入射する側である遮音構造体の入射側の音圧レベルと、音源側から入射した後に遮音構造体を通過した音波を発する側を遮音構造体の透過側の音圧レベルとの差に基づいて遮音性能を定めると、入射側と反射側とを逆にした場合でも同様の遮音性能が得られる。すなわち、上述の特許文献における遮音構造体の音響透過については、可逆則が成立している。しかしながら、上述の床の二重構造では、床部材側を励起した場合の躯体側の振動に関する振動特性と、躯体側を励起して床部材側の振動に関する振動特性とは、異なる傾向にある。すなわち、上述のような床の二重構造における床部材と躯体との間の振動特性については、可逆則が成立していない。
【0013】
よって、床の二重構造のような防振構造では、効果的な防振効果を得るために、床部材と躯体との間の空気層、床部材及び躯体の剛性及び重量等の複雑な条件を考慮することが肝要となる。
【0014】
加えて、実使用上では、床部材等の表側面等が面する開放空間には人が存在し、かつ床部材等の表側面には物が配置される。そのため、このような開放空間、床部材等の表側面の実使用に影響することなく、高い実用性を有する振動低減構造を実現することが要求されている。
【0015】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減でき、かつ実用性の高い新たな構造として空気層開放式振動低減構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
課題を解決するために、本発明の空気層開放式振動低減構造は、次の(1)〜(3)のいずれかに構成されているとよい。
(1) 本発明の空気層開放式振動低減構造は、開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、前記板状部材の表側面に対向する裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体とを備え、前記板状部材と前記躯体との間に空気層を形成している空気層開放式振動低減構造であって、前記空気層と前記空気層の外部との間で連通する通気筒を備え、前記通気筒が、前記板状部材の内部に配置され、前記通気筒の空気層側端に位置する開口が、前記板状部材の裏側面に配置され、前記通気筒の外部側端に位置する開口が、前記板状部材の周縁に配置されている。
そのため、前記通気筒によって、前記空気層と前記空気層の外部との間に所定の通気抵抗及び/又は所定の音響低減効果がもたらされることとなり、空気が、このような作用をもたらす前記通気筒を通過することによって、前記空気層に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように作用することとなる。また、このような通気筒が、実使用環境下で使用されることの多い前記板状部材の表側面を避けて形成されることとなる。例えば、前記板状部材の表側面が、床面として構成されている場合に、このような床面を避けて、前記通気筒の外部側端の開口が配置されることとなる。従って、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。さらに、前記空気層と前記空気層の外部との間における空気の経路が、前記板状部材及び前記躯体とは別体である前記通気筒によってシンプルに形成されることとなるので、新設の構造物だけでなく、既設の構造物にも、本発明の空気層開放式振動低減構造を採用することができる。従って、空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。特に、前記板状部材は、基礎となる前記躯体を作製した後に、前記躯体に嵌めこむことができるので、前記板状部材単体の状態で、前記通気筒を前記板状部材の内部に設置する作業が可能となる。そのため、前記通気筒を容易に設置でき、さらに、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0017】
(2) 本発明の空気層開放式振動低減構造は、開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、前記板状部材の表側面に対向する裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体とを備え、前記板状部材と前記躯体との間に空気層を形成している空気層開放式振動低減構造であって、前記空気層と前記空気層の外部との間で連通する通気筒を備え、前記通気筒が前記躯体の内部に配置されており、前記通気筒の空気層側端に位置する開口が、前記空気層を形成する前記躯体の底面に配置され、前記通気筒の外部側端に位置する開口が、前記空気層の外部に位置する躯体の外壁側面又は前記空気層の外部に位置する躯体の外部底面に配置されている。
そのため、前記通気筒によって、前記空気層と前記空気層の外部との間に所定の通気抵抗及び/又は所定の音響低減効果がもたらされることとなり、空気が、このような作用をもたらす前記通気筒を通過することによって、前記空気層に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように作用することとなる。また、このような通気筒が、実使用環境下で使用されることの多い前記板状部材の表側面、及び前記躯体の底面に対向する表面を避けて形成されることとなる。例えば、前記板状部材の表側面が、床面として構成され、かつ前記躯体の底面に対向する表面が、天井面として構成されている場合に、このような床面及び天井面を避けて、前記通気筒の外部側端の開口が配置されることとなる。従って、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。さらに、前記空気層と前記空気層の外部との間における空気の経路が、前記板状部材及び前記躯体とは別体である前記通気筒によってシンプルに形成されることとなるので、新設の構造物だけでなく、既設の構造物にも、本発明の空気層開放式振動低減構造を採用することができる。従って、空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。特に、前記開放空間には、実使用環境下で物が配置されることが多いが、前記躯体については、このような開放空間以外の前記空気層の外部空間に接する面積が大きくなっている。そのため、前記空気層と前記空気層の外部とを連通する前記通気筒を設置するための設計自由度が高くなり、さらに、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0018】
(3) 本発明の空気層開放式振動低減構造は、開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、前記板状部材の表側面に対向する裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体とを備え、前記板状部材と前記躯体との間に空気層を形成している空気層開放式振動低減構造であって、前記空気層と前記空気層の外部との間で連通する通気筒を備え、前記通気筒が前記空気層に配置されている。
そのため、前記通気筒によって、前記空気層と前記空気層の外部との間に所定の通気抵抗及び/又は所定の音響低減効果がもたらされることとなり、空気が、このような作用をもたらす前記通気筒を通過することによって、前記空気層に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように作用することとなる。また、このような通気筒が、実使用環境下で使用されることの多い前記板状部材の表側面を避けて形成されることとなる。例えば、前記板状部材の表側面が、床面として構成されている場合に、このような床面を避けて、前記通気筒の外部側端の開口が配置されることとなる。従って、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。さらに、前記空気層と前記空気層の外部との間における空気の経路が、前記板状部材及び前記躯体とは別体である前記通気筒によってシンプルに形成されることとなるので、新設の構造物だけでなく、既設の構造物にも、本発明の空気層開放式振動低減構造を採用することができる。従って、空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。特に、前記通気筒を、空洞である前記空気層内に配置すればよいので、前記通気筒を容易に設置でき、さらに、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0019】
さらに、本発明の空気層開放式振動低減構造は、以下のように構成されていると好ましい。
本発明の空気層開放式振動低減構造では、前記板状部材又は前記躯体における空気層を形成する表面の通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、前記通気筒が構成されているので、前記空気層と前記空気層の外部との間を連通し、かつ前記通気抵抗を有する前記通気筒を、空気が通過することによって、前記空気層に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。
【0020】
本発明の空気層開放式振動低減構造では、外力の付加によって前記空気層内に発生する音圧レベルが、前記板状部材及び前記躯体に通気性が無い場合に対して、前記板状部材、前記躯体及び前記空気層から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、前記通気筒が構成されているので、前記音圧レベルを低減させる特性を有する空気層と前記空気層の外部との間を連通する前記通気筒を、空気が通過することによって、前記空気層に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。
【0021】
本発明の空気層開放式振動低減構造では、前記空気層内又は前記通気筒内に配置された音検出器と、前記通気筒内に配置され、前記音検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器とをさらに備え、前記音検出器により検出された前記空気層内の音圧レベルに対応して前記空気層内の音圧レベルを低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっているとよい。
または、前記板状部材及び/又は前記躯体に取付けられた振動検出器と、前記空気層内又は前記通気筒内に配置された音検出器と、前記通気筒内に配置され、前記振動検出器及び前記音検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器とをさらに備え、前記振動検出器により検出された前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅に対応して、前記音検出器により検出される前記空気層内の音圧レベルを低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっているとよい。
または、前記板状部材及び/又は前記躯体に取付けられた振動検出器と、前記空気層内又は前記通気筒内に配置された音検出器と、前記通気筒内に配置され、前記振動検出器及び前記音検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器とをさらに備え、前記音検出器により検出された前記空気層内の音圧レベルに対応して、前記振動検出器により検出される前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅を低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっているとよい。
または、前記板状部材及び/又は前記躯体に取付けられた振動検出器と、前記通気筒内に配置され、前記振動検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器とをさらに備え、前記振動検出器により検出された前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅に対応して前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅を低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっているとよい。
そのため、外的要因に影響されることなく、前記空気層内の音圧レベルを調節できるので、前記空気層に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように安定的に作用することとなる。また、前記空気層と前記空気層の外部との間に所定の通気抵抗及び所定の音響低減効果をもたらすために、前記通気筒を多数設ける等のように複雑な構造を用いることなく、前記音検出器及び/又は前記振動検出器と前記出力器とを用いて、本発明の空気層開放式振動低減構造をシンプルにすることができる。このようなシンプルな構造によって、本発明の空気層開放式振動低減構造が、既設の構造物により設置し易くなり、さらに、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0022】
本発明の空気層開放式振動低減構造では、前記通気筒の外部側端に位置する開口に、消音器が取付けられているので、前記空気層内の特性、例えば、前記空気層の内部の音響共鳴等に起因して、前記空気層の外部の音圧が上昇することを防止できる。よって、さらに、本発明の空気層開放式振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0023】
本発明の空気層開放式振動低減構造では、前記通気筒に、音圧レベルを30Hz〜300Hzの周波数領域で0dB〜2dB低減するような遮音性能を有する音響的に透明な部材が配置されているので、僅かな遮音性能を有するに過ぎない前記音響的に透明な部材によって前記通気筒が塞がれることとなる。そのため、前記空気層と前記空気層の外部との間における所定の通気抵抗及び所定の音響低減効果が損なわれることなく、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減させることができる。加えて、このような音響的に透明な部材によって、前記通気筒に耐水性及び防塵性がもたらされて、その結果、前記通気筒を介して前記空気層内に異物が侵入することを防止できる。よって、本発明の空気層開放式振動低減構造を、より実用的なものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減でき、かつ実用性の高い新たな構造として空気層開放式振動低減構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)第1実施形態〜第11実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を説明する上で前提となる基本の空気層開放式振動低減構造を概略的に示す平面図である。(b)図1(a)のA−A断面図である。
【図2】図1(a)及び図1(b)の基本の空気層開放式振動低減構造において、躯体における振動加速度の平均値及び板状部材における振動加速度の平均値の差異である防振効果量と、周波数との関係を示す図である。
【図3】図1(a)及び図1(b)の基本の空気層開放式振動低減構造において、板状部材の表側面及び裏側面の間を通過する空気の風速と、板状部材の通気抵抗との関係を示す図である。
【図4】図1(a)及び図1(b)の基本の空気層開放式振動低減構造において、通気性が無い板状部材を用いた振動低減構造に外力が付加された場合の空気層内の音圧レベル及び通気孔を有する板状部材を用いた空気層開放式振動低減構造に外力が付加された場合の音圧レベルの差異と、周波数との関係を示す図である。
【図5】(a)本発明の第1実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を概略的に示す平面図である。(b)図5(a)のB−B断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図11】本発明の第8実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図12】本発明の第10実施形態に係る空気層開放式振動低減構造を、図5(a)のB−B断面視と同様に示した断面図である。
【図13】本発明の第11実施形態に係る空気層開放式低減構造に用いられる通気筒の外部側開口周辺の断面図である。
【図14】防振ゴムを設けた場合の防振効果量と、防振ゴムを設けずに床部材を吊り上げて自由支持した場合の防振効果量とを比較した図である。
【図15】図14のXで示したピークにおける固有振動モードである。
【図16】図14のYで示したピークにおける固有振動モードである。
【図17】図14のZで示したピークにおける固有振動モードである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1実施形態〜第11実施形態に係る空気層開放式振動低減構造(以下、「振動低減構造」という)を以下に説明する。なお、各実施形態では、建物の室内における床に設けられた振動低減構造を説明するが、これに限定されず、各実施形態に係る振動低減構造は、建物の室内における壁、天井等に設けられてもよい。また、この振動低減構造は、自動車の室内における床、側面、天井等に設けられてもよく、室外の道路の路面等に設けられていてもよい。
【0027】
はじめに、各実施形態に係る振動低減構造の特性の前提となる基本の振動低減構造(以下、「基本振動低減構造」という)の特性について説明する。
図1(a)及び図1(b)に示すように、基本振動低減構造には、床部材として構成される板状部材1が設けられている。また、基本振動低減構造には、板状部材1を支持する基礎となる躯体2が設けられている。板状部材1は、四角形状に形成され、その表側面1aを室内の開放空間側に向けて配置されており、板状部材1の表側面1aが室内の床面として構成されることとなる。躯体2は凹状に形成され、この凹状の躯体2には、室内の開放空間側にて開口する開口部2aが設けられている。このような躯体2の開口部2aに板状部材1が嵌め込まれるように構成されている。板状部材1の裏側面1bと躯体2の底面2bとは間隔を空けて配置されており、板状部材1と躯体2との間に、板状部材1の裏側面1bと、躯体2の底面2b及び側壁面2cとによって囲まれた空気層3が形成されている。躯体2の底面2bには、板状部材1の角部に対応して防振ゴム4が配置され、防振ゴム4によって板状部材1が支持されている。なお、板状部材1の周縁1cと躯体2の側壁面2cとは、当接するか又は接近して配置されており、板状部材1は、躯体2に対して開放空間側と空気層3側とに移動可能となっている。板状部材1の全体には、複数の通気孔1dが、開放空間と空気層3とを連通する通気部として形成されており、通気孔1dは板状部材1を貫通している。
【0028】
この場合、板状部材1の空気層3を形成する表面における通気抵抗(流れ抵抗)の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、通気孔1dの形状、寸法、数等は定められる。
【0029】
ここで、通気抵抗の平均値の下限は、次のように定められる。
板状部材1が設けられていない場合には、通気抵抗の平均値が0N・s/mとなる。しかしながら、基本振動低減構造では板状部材1を設けることが前提となっているので、このような前提によって、基本振動低減構造において想定される通気抵抗の平均値は0N・s/mを超える必要がある。そのため、上述した通気抵抗の平均値の下限は、0N・s/mを超えるとしている。
【0030】
一方で、通気抵抗の平均値の上限は、次のように定められる。
板状部材1の表側面1a又は裏側面1bの面積に対する板状部材1の表側面1a又は裏側面1b上における全通気孔1dの面積の比率である開口率を変化させた場合、躯体2における振動加速度の平均値と板状部材1における振動加速度の平均値との間の差異である防振効果量(=躯体の振動加速度の平均値−床部材の振動加速度の平均値)と、周波数との関係は、図2に示すような結果となった。なお、図2では、開口率0.18%の場合を実線W1、開口率0.36%の場合を一点鎖線W2、開口率0.73%の場合を二点鎖線W3、開口率1.46%の場合を点線W4、開口率2.92%の場合を一点鎖線W5(隣接する一点部分同士の間隔がW2より広い)、開口率5.83%の場合を二点鎖線(隣接する二点部分同士の間隔がW3より広い)W6、及び開口率14.58%の場合を破線W7で示している。図2では、板状部材1の特性に起因する固有振動モード、特に、板状部材1の一次固有振動モード(図2では、約40Hz)、及び板状部材1の二次固有振動モード(図2では、約80Hz)で、開口率0.73%以上となった場合に、振動低減効果が得られることが確認できる。
そこで、開口率と通気抵抗との関係を確認した。
上述の各開口率を有する板状部材1における表側面1aと裏側面1bとの間に、風速を変化させて空気を流したところ、各開口率を有する板状部材1のそれぞれにおいて、風速と通気抵抗との関係は、図3に示すような結果となった。なお、図3では、図2と同様に、開口率0.18%の場合を実線W1、開口率0.36%の場合を一点鎖線W2、開口率0.73%の場合を二点鎖線W3、開口率1.46%の場合を点線W4、開口率2.92%の場合を一点鎖線W5(隣接する一点部分同士の間隔がW2より広い)、開口率5.83%の場合を二点鎖線(隣接する二点部分同士の間隔がW3より広い)W6、及び開口率14.58%の場合を破線W7で示している。実際に振動発生時に板状部材1における表側面1aと裏側面1bとの間に流れる空気の風速が、0m/s〜0.2m/sであるので、このような風速の範囲において、開口率0.73%以上の場合には、定常的に通気抵抗の平均値が1000N・s/m以下となることが確認できる。
よって、上述した通気抵抗の平均値の上限は、1000N・s/m以下であるとよいことが確認できる。
【0031】
または、基本振動低減構造では、外力の付加によって空気層3内に発生する音圧レベルが、板状部材1に通気性が無い場合に対して、板状部材1、躯体2及び空気層3から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数(図2では、約40Hz、約80Hz等)で3dB以上低減されるように、通気孔1dの形状、寸法、数等は定められる。
【0032】
このことは、次のように定められる。
上述のように、図2においては、板状部材1、躯体2及び空気層3から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数、特に、約40Hz及び約80Hzで、開口率0.73%以上の状態で、振動低減効果が得られることが確認できる。
そこで、開口率と音圧レベルとの関係を確認した。
通気性が無い板状部材を用いた振動低減構造に外力が加えられた場合の空気層3内の音圧レベルから、上述の各開口率を有する板状部材1を用いた基本振動低減構造に外力が加えられた場合の音圧レベルそれぞれを引いた差異を測定したところ、このような音圧レベルの差異と周波数との関係は、図4に示すような結果となった。なお、図4では、図2と同様に、開口率0.18%の場合を実線W1、開口率0.36%の場合を一点鎖線W2、開口率0.73%の場合を二点鎖線W3、開口率1.46%の場合を点線W4、開口率2.92%の場合を一点鎖線W5(隣接する一点部分同士の間隔がW2より広い)、開口率5.83%の場合を二点鎖線(隣接する二点部分同士の間隔がW3より広い)W6、及び開口率14.58%の場合を破線W7で示している。図4では、開口率0.73%以上の場合に、板状部材1、躯体2及び空気層3から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数約40Hz、及び卓越周波数約80Hzにおいて、上述の音圧レベルの差異が3dB以上となっていることが確認される。
なお、上述した低減される音圧レベルの上限は、板状部材1に通気性が無い場合の音圧レベルそのものとなるので、特に明示しない。
【0033】
さらに、基本振動低減構造では、板状部材1の空気層3を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となり、加えて、外力の付加によって空気層3内に発生する音圧レベルが、板状部材1に通気性が無い場合に対して、板状部材1、躯体2及び空気層3から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気孔1dの形状、寸法、数等は定められてもよい。
【0034】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る振動低減構造を説明する。
図5(a)及び図5(b)に示すように、振動低減構造には、床部材として構成される板状部材11が設けられている。また、振動低減構造には、板状部材11を支持する基礎となる躯体12が設けられている。板状部材11は、四角形状に形成され、その表側面11aを室内の開放空間側に向けて配置されており、板状部材11の表側面11aが室内の床面として構成されることとなる。躯体12は凹状に形成され、この凹状の躯体12には、室内の開放空間側にて開口する開口部12aが設けられている。このような躯体12の開口部12aに板状部材11が嵌め込まれるように構成されている。板状部材11の裏側面11bと躯体12の底面12bとは互いに間隔を空けて配置されており、板状部材11と躯体12との間に、板状部材11の裏側面11bと躯体12の底面12b及び内壁側面12cとによって囲まれた空気層13が形成されている。躯体12の底面12bには、板状部材11の角部に対応して防振ゴム14が配置され、防振ゴム14によって板状部材11が支持されている。なお、板状部材11の周縁11cと躯体12の内壁側面12cとは、当接するか又は接近して配置されており、板状部材11は、躯体12に対して開放空間側と空気層13側とに移動可能となっている。
【0035】
板状部材11の内部には、少なくとも1つの通気筒15が配置されている。また、通気筒15について、本発明による作用及び効果が得られるのであれば、複数の通気筒15が板状部材11の内部に配置されていてもよい。図5(a)及び図5(b)では、一例として、1つの通気筒15が板状部材11の内部に配置されている。通気筒15は、空気層13と空気層13の外部とを連通しており、板状部材11の裏側面11bと板状部材11の周縁11cとの間で略L字状に延びている。通気筒15の空気層側端には空気層側開口15aが形成され、この空気層側開口15aは板状部材11の裏側面11bに配置されている。なお、図5(a)及び図5(b)では、一例として、空気層側開口15aが板状部材11の裏面11b中央に配置されている。また、通気筒15の外部側端には外部側開口15bが形成され、この外部側開口15bは、板状部材11の周縁11cに配置されている。
【0036】
このような通気筒15について、基本振動低減構造と同様に、板状部材11の空気層13を形成する表面における通気抵抗(流れ抵抗)の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、通気筒15の形状、寸法、数、通気筒15の空気層側開口15a及び外部側開口15bの位置、形状等は定められる。
【0037】
または、第1実施形態では、基本振動低減構造と同様に、外力の付加によって空気層13内に発生する音圧レベルが、板状部材11に通気性が無い場合に対して、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒15の形状、寸法、数、通気筒15の空気層側開口15a及び外部側開口15bの位置、形状等は定められる。
【0038】
さらに、第1実施形態では、基本振動低減構造と同様に、板状部材11の空気層13を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となり、加えて、外力の付加によって空気層13内に発生する音圧レベルが、板状部材11に通気性が無い場合に対して、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒15の形状、寸法、数、通気筒15の空気層側開口15a及び外部側開口15bの位置、形状等が定められてもよい。
【0039】
以上のように本発明の第1実施形態によれば、通気筒15によって、空気層13と空気層13の外部との間に所定の通気抵抗及び/又は所定の音響低減効果がもたらされることとなり、空気が、このような作用をもたらす通気筒15を通過することによって、空気層13に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように作用することとなる。また、このような通気筒15が、実使用環境下で使用されることの多い板状部材11の表側面11aを避けて形成されることとなる。第1実施形態では、板状部材11の表側面11aが、床面として構成されているので、このような床面を避けて、通気筒15の外部側開口15aが配置されることとなる。従って、振動低減構造の実用性を高めることができる。さらに、空気層13と空気層13の外部との間における空気の経路が、板状部材11及び躯体12とは別体である通気筒15によってシンプルに形成されることとなるので、新設の構造物だけでなく、既設の構造物にも、振動低減構造を採用することができる。従って、振動低減構造の実用性を高めることができる。特に、板状部材11は、基礎となる躯体12を作製した後に、躯体12に嵌めこむことができるので、板状部材11単体の状態で、通気筒15を板状部材11の内部に設置する作業が可能となる。そのため、通気筒15を容易に設置でき、さらに、振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0040】
本発明の第1実施形態によれば、空気層13と空気層13の外部との間を連通し、かつ上述の通気抵抗を有する通気筒15を、空気が通過することによって、空気層13に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。よって、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減できる。
【0041】
本発明の第1実施形態によれば、上述のように音圧レベルを低減させる特性を有する空気層13と空気層13の外部との間を連通する通気筒15を、空気が通過することによって、空気層13に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。よって、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減できる。
【0042】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る振動低減構造を説明する。
図6に示すように、振動低減構造には、床部材として構成される板状部材21が設けられている。また、振動低減構造には、板状部材21を支持する基礎となる躯体22が設けられている。第1実施形態の板状部材11と同様に、板状部材21は、四角形状に形成され、その表側面21aを室内の開放空間側に向けて配置されており、板状部材21の表側面21aが室内の床面として構成されることとなる。第1実施形態の躯体12と同様に、躯体22は凹状に形成され、この凹状の躯体22には、室内の開放空間側にて開口する開口部22aが設けられている。このような躯体22の開口部22aに板状部材21が嵌め込まれるように構成されている。板状部材21の裏側面21bと躯体22の底面22bとは互いに間隔を空けて配置されており、板状部材21と躯体22との間に、板状部材21の裏側面21bと躯体22の底面22b及び内壁側面22cとによって囲まれた空気層23が形成されている。第1実施形態の防振ゴム14と同様に、躯体22の底面22bには、板状部材21の角部に対応して防振ゴム24が配置され、防振ゴム24によって板状部材21が支持されている。なお、板状部材21の周縁21cと躯体22の内壁側面22cとは、当接するか又は接近して配置されており、板状部材21は、躯体22に対して開放空間側と空気層23側とに移動可能となっている。
【0043】
躯体22の内部には、少なくとも1つの通気筒25が配置されている。なお、通気筒25について、本発明による作用及び効果が得られるのであれば、複数の通気筒25が躯体22の内部に配置されていてもよい。図6では、一例として、1つの通気筒25が躯体22の内部に配置されている。通気筒25は、空気層23と空気層23の外部とを連通しており、躯体22の底面22bと躯体22の外壁側面22dとの間で略L字状に延びている。通気筒25の空気層側端には空気層側開口25aが形成され、この空気層側開口25aは躯体22の底面22bに配置されている。なお、図6では、一例として、空気層側開口25aが躯体22の底面22b中央に配置されている。また、通気筒25の外部側端には外部側開口25bが形成され、この外部側開口25bは、躯体22の外壁側面22dに配置されている。
【0044】
このような通気筒25について、基本振動低減構造と同様に、躯体22の空気層23を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、通気筒25の形状、寸法、数、通気筒25の空気層側開口25a及び外部側開口25bの位置、形状等は定められている。
【0045】
また、基本振動低減構造と同様に、外力の付加によって空気層23内に発生する音圧レベルが、躯体22に通気性が無い場合に対して、板状部材21、躯体22及び空気層23から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒25の形状、寸法、数、通気筒25の空気層側開口25a及び外部側開口25bの位置、形状等は定められていてもよい。
【0046】
さらに、基本振動低減構造と同様に、躯体22の空気層23を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となり、加えて、外力の付加によって空気層23内に発生する音圧レベルが、躯体22に通気性が無い場合に対して、板状部材21、躯体22及び空気層23から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒25の形状、寸法、数、通気筒25の空気層側開口25a及び外部側開口25bの位置、形状等は定められていてもよい。
【0047】
本発明の第2実施形態によれば、通気筒25によって、空気層23と空気層23の外部との間に所定の通気抵抗及び/又は所定の音響低減効果がもたらされることとなり、空気が、このような作用をもたらす通気筒25を通過することによって、空気層23に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように作用することとなる。また、このような通気筒25が、実使用環境下で使用されることの多い板状部材21の表側面21a、及び躯体22の底面22bに対向する表面を避けて形成されることとなる。第2実施形態では、板状部材21の表側面21aが、床面として構成されており、さらに、躯体22の底面22bに対向する表面が、天井面として構成されていれば、このような床面及び天井面を避けて、通気筒25の外部側開口25bが配置されることとなる。従って、振動低減構造の実用性を高めることができる。さらに、空気層23と空気層23の外部との間における空気の経路が、板状部材21及び躯体22とは別体である通気筒25によってシンプルに形成されることとなるので、新設の構造物だけでなく、既設の構造物にも、振動低減構造を採用することができる。従って、振動低減構造の実用性を高めることができる。特に、開放空間には、実使用環境下で使用されることが多いが、躯体22については、このような開放空間以外の空気層23の外部空間に接する面積が大きくなっている。そのため、空気層23と空気層23の外部とを連通する通気筒25を設置するための設計自由度が高くなり、さらに、振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0048】
本発明の第2実施形態によれば、空気層23と空気層23の外部との間を連通し、かつ上述の通気抵抗を有する通気筒25を、空気が通過することによって、空気層23に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。よって、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減できる。
【0049】
本発明の第2実施形態によれば、上述のように音圧レベルを低減させる特性を有する空気層23と空気層23の外部との間を連通する通気筒25を、空気が通過することによって、空気層23に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。よって、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減できる。
【0050】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第3実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第2実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第2実施形態と同様な要素は、第2実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0051】
第3実施形態では、図7に示すように、躯体22の外壁側面22dに、躯体22から離れるように水平方向に延びる外部底面22eが形成されている。躯体22の内部には、少なくとも1つの通気筒35が配置されている。通気筒35は、空気層23と空気層23の外部とを連通しており、躯体22の底面22bと躯体22の外部底面22eとの間で略U字状に延びている。通気筒35の空気層側端には空気層側開口35aが形成され、この空気層側開口35aは躯体22の底面22bに配置されている。なお、一例として、空気層側開口35aが躯体22の底面22b中央に配置されているとよい。また、通気筒35の外部側端には外部側開口35bが形成され、この外部側開口25bは、空気層23の外部に位置する躯体22の外部底面22eに配置されている。
【0052】
このような通気筒35について、基本振動低減構造と同様に、躯体22の空気層23を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、通気筒35の形状、寸法、数、通気筒35の空気層側開口35a及び外部側開口35bの位置、形状等は定められる。
【0053】
また、基本振動低減構造と同様に、外力の付加によって空気層23内に発生する音圧レベルが、躯体22に通気性が無い場合に対して、板状部材21、躯体22及び空気層23から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒35の形状、寸法、数、通気筒35の空気層側開口35a及び外部側開口35bの位置、形状等は定められる。
【0054】
さらに、基本振動低減構造と同様に、躯体22の空気層23を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となり、加えて、外力の付加によって空気層23内に発生する音圧レベルが、躯体22に通気性が無い場合に対して、板状部材21、躯体22及び空気層23から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒35の形状、寸法、数、通気筒35の空気層側開口35a及び外部側開口35bの位置、形状等は定められていてもよい。
【0055】
以上のように本発明の第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る振動低減構造を説明する。
図8に示すように、振動低減構造には、床部材として構成される板状部材41が設けられている。また、振動低減構造には、板状部材41を支持する基礎となる躯体42が設けられている。第1実施形態の板状部材11と同様に、板状部材41は、四角形状に形成され、その表側面41aを室内の開放空間側に向けて配置されており、板状部材41の表側面41aが室内の床面として構成されることとなる。第1実施形態の躯体12と同様に、躯体42は凹状に形成され、この凹状の躯体42には、室内の開放空間側にて開口する開口部42aが設けられている。このような躯体42の開口部42aに板状部材41が嵌め込まれるように構成されている。板状部材41の裏側面41bと躯体42の底面42bとは互いに間隔を空けて配置されており、板状部材41と躯体42との間に、板状部材41の裏側面41bと躯体42の底面42b及び内壁側面42cとによって囲まれた空気層43が形成されている。第1実施形態の防振ゴム14と同様に、躯体42の底面42bには、板状部材41の角部に対応して防振ゴム44が配置され、防振ゴム44によって板状部材41が支持されている。なお、板状部材41の周縁41cと躯体42の内壁側面42cとは、当接するか又は接近して配置されており、板状部材41は、躯体42に対して開放空間側と空気層43側とに移動可能となっている。
【0057】
空気層43には、少なくとも1つの通気筒45が配置されている。なお、通気筒45について、本発明による作用及び効果が得られるのであれば、複数の通気筒45が空気層43に配置されていてもよい。図8では、一例として、1つの通気筒45が空気層43に配置されている。通気筒45は、空気層43と空気層43の外部とを連通しており、空気層43で水平方向に延びており、さらに躯体42の内壁側面42cと外壁側面42dとの間で延びている。通気筒45の空気層側端には空気層側開口45aが形成され、この空気層側開口45aは空気層43内に配置されている。なお、図8では、一例として、空気層側開口45aが躯体42の底面42b中央に配置されている。また、通気筒45の外部側端には外部側開口45bが形成され、この外部側開口45bは、躯体42の外壁側面42dに配置されている。
【0058】
このような通気筒45について、基本振動低減構造と同様に、躯体42の空気層43を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、通気筒45の形状、寸法、数、通気筒45の空気層側開口45a及び外部側開口45bの位置、形状等は定められる。
【0059】
また、基本振動低減構造と同様に、外力の付加によって空気層43内に発生する音圧レベルが、躯体42に通気性が無い場合に対して、板状部材41、躯体42及び空気層43から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒45の形状、寸法、数、通気筒45の空気層側開口45a及び外部側開口45bの位置、形状等は定められる。
【0060】
さらに、基本振動低減構造と同様に、躯体42の空気層43を形成する表面における通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となり、加えて、外力の付加によって空気層43内に発生する音圧レベルが、躯体42に通気性が無い場合に対して、板状部材41、躯体42及び空気層43から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、通気筒45の形状、寸法、数、通気筒45の空気層側開口45a及び外部側開口45bの位置、形状等は定められていてもよい。
【0061】
以上のように本発明の第4実施形態によれば、通気筒45によって、空気層43と空気層43の外部との間に所定の通気抵抗及び/又は所定の音響低減効果がもたらされることとなり、空気が、このような作用をもたらす通気筒45を通過することによって、空気層43に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように作用することとなる。また、このような通気筒45が、実使用環境下で使用されることの多い板状部材41の表側面41aを避けて形成されることとなる。例えば、板状部材41の表側面41aが、床面として構成されている場合に、このような床面を避けて、通気筒45の外部側開口45bが配置されることとなる。従って、振動低減構造の実用性を高めることができる。さらに、空気層43と空気層43の外部との間における空気の経路が、板状部材41及び躯体42とは別体である通気筒45によってシンプルに形成されることとなるので、新設の構造物だけでなく、既設の構造物にも、振動低減構造を採用することができる。従って、振動低減構造の実用性を高めることができる。特に、通気筒45を、空洞である空気層43内に配置すればよいので、通気筒45を容易に設置でき、さらに、振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0062】
本発明の第4実施形態によれば、空気層43と空気層43の外部との間を連通し、かつ上述の通気抵抗を有する通気筒45を、空気が通過することによって、空気層43に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。よって、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減できる。
【0063】
本発明の第4実施形態によれば、上述のように音圧レベルを低減させる特性を有する空気層43と空気層43の外部との間を連通する通気筒25を、空気が通過することによって、空気層43に基づくバネ特性又は減衰特性が振動を低減させるように作用することとなる。よって、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減できる。
【0064】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第5実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第1実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0065】
図9に示すように、空気層13の通気筒15の空気層側開口15a近傍には、音検出器としてマイクロフォン51が配置されている。また、マイクロフォン51は、空気層13の通気筒15の空気層側開口15a近傍の代わりに、通気筒15内の空気層側開口15a近傍に配置されていてもよい。特に、マイクロフォン51は板状部材11及び躯体12の振動が伝わり難い位置に配置されていると好ましい。なお、音検出器として、マイクロフォン51の代わりに、その他の音圧センサ等が用いられてもよい。
【0066】
さらに、通気筒15の外部側開口15b近傍には、音又は振動を発生させる出力器としてスピーカ52が配置されている。マイクロフォン51は信号処理回路53と電気的に接続され、信号処理回路53は増幅器54と電気的に接続され、増幅器54はスピーカ52と電気的に接続されている。そのため、マイクロフォン51は、信号処理回路53と増幅器54とを介して、スピーカ52と電気的に接続されている。なお、音又は振動を発生させる出力器として、スピーカ52以外に、音又は振動を発生可能とする機器が用いられてもよい。
【0067】
このような構成において、次に説明するように、マイクロフォン51により検出された空気層13内の音圧レベルに対応して空気層13内の音圧レベルを変化させるように、スピーカ52が制御される。
【0068】
マイクロフォン51により検出された音圧レベルの信号(以下、「音圧検出信号」という)が、信号処理回路53に送られる。次に、音圧検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数を解析する。なお、第5実施形態では、このような信号処理回路53の解析によって、約40Hz及び約80Hzの卓越周波数が得られることとなる。さらに、音圧検出信号に基づいて、信号処理回路53が、解析により得られた卓越周波数において、板状部材に通気性が無い場合の空気層の音圧レベルから、マイクロフォン51により検出された空気層13の音圧レベルを引いた差異(以下、「音圧差異」という)を3dB以上とするように信号(以下、「出力信号」という)を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路53が増幅器54を介してスピーカ52に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ52から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11及び躯体12の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路53が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0069】
以上のように本発明の第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、外的要因に影響されることなく、空気層13内の音圧レベルを調節できる。そのため、空気層13に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように安定的に作用することとなる。また、空気層13と空気層13の外部との間に上述の通気抵抗及び上述の音響低減効果をもたらすために、通気筒15を多数設ける等のように複雑な構造を用いることなく、マイクロフォン51及びスピーカ52を用いて、本発明の振動低減構造をシンプルにすることができる。このようなシンプルな構造によって、本発明の振動低減構造が、既設の構造物により設置し易くなり、さらに、本発明の振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0070】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第6実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第1実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0071】
図10に示すように、板状部材11の裏側面11bに、振動検出器として第1の振動加速度計61が取付けられており、この第1の振動加速度計61は、通気筒15の空気層側開口15a近傍に配置されている。また、躯体12の底面12bに、振動検出器として第2の振動加速度計62が取付けられている。なお、振動検出器として、第1の振動加速度計61及び第2の振動加速度計62の代わりに、速度計、変位計、その他の振動センサ等が用いられてもよい。
【0072】
空気層13の通気筒15の空気層側開口15a近傍には、音検出器としてマイクロフォン63が配置されている。また、マイクロフォン63は、空気層13の通気筒15の空気層側開口15a近傍の代わりに、通気筒15内の空気層側開口15a近傍に配置されていてもよい。特に、マイクロフォン63は板状部材11及び躯体12の振動が伝わり難い位置に配置されていると好ましい。なお、音検出器として、マイクロフォン63の代わりに、その他の音圧センサ等が用いられてもよい。
【0073】
通気筒15の外部側開口15b近傍には、音又は振動を発生させる出力器としてスピーカ64が配置されている。第1の振動加速度計61、第2の振動加速度計62、及びマイクロフォン63は信号処理回路65と電気的に接続され、信号処理回路65は増幅器66と電気的に接続され、増幅器66はスピーカ64と電気的に接続されている。そのため、第1の振動加速度計61と、第2の振動加速度計62と、マイクロフォン63とは、信号処理回路65と増幅器66とを介して、スピーカ64と電気的に接続されている。なお、音又は振動を発生させる出力器として、スピーカ64以外に、音又は振動を発生可能とする機器が用いられてもよい。
【0074】
このような構成において、次に説明するように、第1の振動加速度計61又は第2の振動加速度計62により検出された板状部材11及び躯体12の振動振幅に対応して、マイクロフォン63により検出される空気層13内の音圧レベルを低減させるように、スピーカ64が制御される。
【0075】
板状部材11への外力の付加によって発生した振動が、板状部材11から躯体12に伝わる場合、板状部材11側の第1の振動加速度計61により検出された第1の振動検出信号が、信号処理回路65に送られる。また、マイクロフォン63により検出された音圧検出信号が、信号処理回路65に送られる。次に、音圧検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数を解析する。なお、第6実施形態では、このような信号処理回路65の解析によって、約40Hz及び約80Hzの卓越周波数が得られることとなる。さらに、第1の振動検出信号に基づいて、信号処理回路65が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られる。このとき、マイクロフォン63により検出された音圧レベルの信号(以下、「音圧評価信号」という)が、信号処理回路65に送られる。次に、音圧評価信号に基づいて、上述の卓越周波数における音圧差異が3dB以上であるか否か、信号処理回路65が判定する。なお、音圧差異が3dB未満であると判定された場合、第1の振動検出信号に基づいて、音圧差異が3dB以上となるように、信号処理回路65が上述の出力信号を変更し、変更された出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、躯体12の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路65が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0076】
一方で、躯体12への外力の付加によって発生した振動が、躯体12から板状部材11に伝わる場合、躯体12側の第2の振動加速度計62により検出された振動振幅の信号(以下、「第2の振動検出信号」という)が、信号処理回路65に送られる。また、マイクロフォン63により検出された音圧検出信号が、信号処理回路65に送られる。次に、音圧検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数を解析する。さらに、第2の振動検出信号に基づいて、信号処理回路65が、解析により得られた卓越周波数(約40Hz、及び約80Hz)において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られる。このとき、マイクロフォン63により検出された音圧評価信号が、信号処理回路65に送られる。次に、音圧評価信号に基づいて、上述の卓越周波数における音圧差異が3dB以上であるか否か、信号処理回路65が判定する。なお、音圧差異が3dB未満であると判定された場合、第2の振動検出信号に基づいて、音圧差異が3dB以上となるように、信号処理回路65が上述の出力信号を変更し、変更された出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路65が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0077】
また、外力が板状部材11及び躯体12のいずれに加えられるか想定できない場合、第1の振動加速度計61により検出される第1の振動検出信号と、第2の振動加速度計62により検出される第2の振動検出信号と、マイクロフォン63により検出される音圧検出信号とを監視かつ比較することによって、力の伝わる方向と、振動の低減量と、空気層13内の音圧レベルとに関する情報を得ることができる。これらの情報に基づいて、信号処理回路65が、空気層13内の音圧レベルを低減するための出力信号を生成し、この出力信号に基づいてスピーカ64から音を出力することによって、空気層13内の音圧レベルが効果的に低減され、その結果、板状部材11及び躯体12の振動が低減されることとなる。
【0078】
以上のように本発明の第6実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、外的要因に影響されることなく、空気層13内の音圧レベルを調節できる。そのため、空気層13に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように安定的に作用することとなる。また、空気層13と空気層13の外部との間に上述の通気抵抗及び上述の音響低減効果をもたらすために、通気筒15を多数設ける等のように複雑な構造を用いることなく、第1の振動加速度計61、第2の振動加速度計62、マイクロフォン63、及びスピーカ64を用いて、本発明の振動低減構造をシンプルにすることができる。このようなシンプルな構造によって、本発明の振動低減構造が、既設の構造物により設置し易くなり、さらに、本発明の振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0079】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第7実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第6実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第6実施形態と同様な要素は、第6実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第6実施形態と異なる構成について説明する。
【0080】
第7実施形態に係る振動低減構造は、第6実施形態に係る振動低減構造と同様となっている。このような構成において、次に説明するように、マイクロフォン63により検出される空気層13内の音圧レベルに対応して、第1の振動加速度計61又は第2の振動加速度計62により検出された板状部材11又は躯体12の振動振幅を低減させるように、スピーカ64が制御される。
【0081】
板状部材11への外力の付加によって発生した振動が、板状部材11から躯体12に伝わる場合、板状部材11側の第1の振動加速度計61により検出された第1の振動検出信号が、信号処理回路65に送られる。また、マイクロフォン63により検出された音圧検出信号が、信号処理回路65に送られる。次に、第1の振動検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数を解析する。なお、第7実施形態では、このような信号処理回路65の解析によって、約40Hz及び約80Hzの卓越周波数が得られることとなる。さらに、音圧検出信号に基づいて、信号処理回路65が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られる。このとき、第1の振動加速度計61により検出された振動振幅の信号(以下、「第1の振動評価信号」という)が、信号処理回路65に送られる。次に、第1の振動評価信号に基づいて、上述の卓越周波数における音圧差異が3dB以上であるか否か、信号処理回路65が判定する。なお、音圧差異が3dB未満であると判定された場合、音圧検出信号に基づいて、音圧差異が3dB以上となるように、信号処理回路65が上述の出力信号を変更し、変更された出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路65が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0082】
一方で、躯体12への外力の付加によって発生した振動が、躯体12から躯体11に伝わる場合、躯体12側の第2の振動加速度計62により検出された第2の振動検出信号が、信号処理回路65に送られる。また、マイクロフォン63により検出された音圧検出信号が、信号処理回路65に送られる。次に、第2の振動検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数(約40Hz、及び約80Hz)を解析する。さらに、音圧検出信号に基づいて、信号処理回路65が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られる。このとき、第2の振動加速度計62により検出された振動振幅の信号(以下、「第2の振動評価信号」という)が、信号処理回路65に送られる。次に、第2の振動評価信号に基づいて、上述の卓越周波数における音圧差異が3dB以上であるか否か、信号処理回路65が判定する。なお、音圧差異が3dB未満であると判定された場合、音圧検出信号に基づいて、音圧差異が3dB以上となるように、信号処理回路65が上述の出力信号を変更し、変更された出力信号に基づいて、信号処理回路65が増幅器66を介してスピーカ64に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ64から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路65が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0083】
以上のように本発明の第7実施形態によれば、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第8実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第1実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0085】
図11に示すように、板状部材11の裏側面11bに、振動検出器として第1の振動加速度計71が取付けられており、この第1の振動加速度計71は、通気筒15の空気層側開口15a近傍に配置されている。また、躯体12の底面12bに、振動検出器として第2の振動加速度計72が取付けられている。なお、振動検出器として、第1の振動加速度計71及び第2の振動加速度計72の代わりに、速度計、変位計、その他の振動センサ等が用いられてもよい。
【0086】
通気筒15の外部側開口15b近傍には、音又は振動を発生させる出力器としてスピーカ73が配置されている。第1の振動加速度計71及び第2の振動加速度計72は信号処理回路74と電気的に接続され、信号処理回路74は増幅器75と電気的に接続され、増幅器75はスピーカ73と電気的に接続されている。そのため、第1の振動加速度計71と、第2の振動加速度計72とは、信号処理回路74と増幅器75とを介して、スピーカ73と電気的に接続されている。なお、音又は振動を発生させる出力器として、スピーカ73以外に、音又は振動を発生可能とする機器が用いられてもよい。
【0087】
このような構成において、次に説明するように、第1の振動加速度計71又は第2の振動加速度計72により検出された板状部材11及び躯体12の振動振幅に対応して板状部材11及び躯体12の振動振幅を低減させるように、スピーカ73が制御される。
【0088】
板状部材11への外力の付加によって発生した振動が、板状部材11から躯体12に伝わる場合、板状部材11側の第1の振動加速度計71により検出された第1の振動検出信号が、信号処理回路74に送られる。次に、第1の振動検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数を解析する。なお、第8実施形態では、このような信号処理回路74の解析によって、約40Hz及び約80Hzの卓越周波数が得られることとなる。さらに、第1の振動検出信号に基づいて、信号処理回路74が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路74が増幅器75を介してスピーカ73に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ73から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路74が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0089】
一方で、躯体12への外力の付加によって発生した振動が、躯体12から板状部材11に伝わる場合、躯体12側の第2の振動加速度計72により検出された第2の振動検出信号が、信号処理回路74に送られる。次に、第2の振動検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数(約40Hz、及び約80Hz)を解析する。さらに、第2の振動検出信号に基づいて、信号処理回路74が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路74が増幅器75を介してスピーカ73に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ73から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路74が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0090】
また、外力が板状部材11及び躯体12のいずれに加えられるか想定できない場合、第1の振動加速度計61により検出される第1の振動検出信号と、第2の振動加速度計62により検出される第2の振動検出信号とを監視かつ比較することによって、力の伝わる方向と、振動の低減量と、空気層13内の音圧レベルとに関する情報を得ることができる。これらの情報に基づいて、信号処理回路74が、空気層13内の音圧レベルを低減するための出力信号を生成し、この出力信号に基づいてスピーカ73から音を出力することによって、空気層13内の音圧レベルが効果的に低減され、その結果、板状部材11及び躯体12の振動が低減されることとなる。
【0091】
以上のように本発明の第8実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、外的要因に影響されることなく、空気層13内の音圧レベルを調節できる。そのため、空気層13に基づくバネ特性又は減衰特性が、振動を低減させるように安定的に作用することとなる。また、空気層13と空気層13の外部との間に上述の通気抵抗及び上述の音響低減効果をもたらすために、通気筒15を多数設ける等のように複雑な構造を用いることなく、第1の振動加速度計71、第2の振動加速度計72、及びスピーカ73を用いて、本発明の振動低減構造をシンプルにすることができる。このようなシンプルな構造によって、本発明の振動低減構造が、既設の構造物により設置し易くなり、さらに、本発明の振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0092】
[第9実施形態]
本発明の第9実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第9実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第8実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第8実施形態と同様な要素は、第8実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第8実施形態と異なる構成について説明する。
【0093】
第9実施形態に係る振動低減構造は、第8実施形態に係る振動低減構造と同様となっている。このような構成において、次に説明するように、第1の振動加速度計71又は第2の振動加速度計72により検出された板状部材11及び躯体12の振動振幅に対応して板状部材11及び躯体12の振動振幅を低減させるように、スピーカ73が制御される。
【0094】
板状部材11への外力の付加によって発生した振動が、板状部材11から躯体12に伝わる場合、板状部材11側の第1の振動加速度計71により検出された第1の振動検出信号が、信号処理回路74に送られる。また、躯体12側の第2の振動加速度計72により検出された第2の振動検出信号が、信号処理回路74に送られる。次に、第2の振動検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数を解析する。なお、第9実施形態では、このような信号処理回路74の解析によって、約40Hz及び約80Hzの卓越周波数が得られることとなる。さらに、第1の振動検出信号に基づいて、信号処理回路74が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路74が増幅器75を介してスピーカ73に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ73から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路74が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0095】
一方で、躯体12への外力の付加によって発生した振動が、躯体12から板状部材11に伝わる場合、躯体12側の第2の振動加速度計72により検出された第2の振動検出信号が、信号処理回路74に送られる。また、板状部材11側の第1の振動加速度計71により検出された第1の振動検出信号が、信号処理回路74に送られる。次に、第1の振動検出信号に基づいて、板状部材11、躯体12及び空気層13から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数(約40Hz、及び約80Hz)を解析する。さらに、第2の振動検出信号に基づいて、信号処理回路74が、解析により得られた卓越周波数において音圧差異を3dB以上とするように出力信号を生成し、生成した出力信号に基づいて、信号処理回路74が増幅器75を介してスピーカ73に電圧を印加する。印加された電圧によってスピーカ73から発せられた音が、通気筒15内を通って空気層13内に送られて、空気層13内の音圧レベルが低減され、その結果、板状部材11の振動が低減されることとなる。なお、音圧差異は、信号処理回路74が安定して作動する範囲内で、できる限り大きく設定されるとよい。
【0096】
以上のように本発明の第9実施形態によれば、第8実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
[第10実施形態]
本発明の第10実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第10実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第1実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0098】
図12に示すように、通気筒15の外部側開口15bには、消音器81が配置されている。消音器81は、通気筒15の外部側開口15bに対応して板状部材11の周縁11cに取付けられている。
【0099】
以上のように本発明の第10実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、消音器81によって、空気層13内の特性、例えば、空気層13の内部の音響共鳴等に起因して、空気層13の外部の音圧が上昇することを防止できる。よって、さらに、本発明の振動低減構造の実用性を高めることができる。
【0100】
[第11実施形態]
本発明の第11実施形態に係る振動低減構造を以下に説明する。第11実施形態の振動低減構造における基本的な形態は、第1実施形態における振動低減構造の形態と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0101】
図13に示すように、第11実施形態における振動低減構造では、板状部材11の周縁11cに、音響的に透明な部材91が配置されている。音響的に透明な部材91は、板状部材11の周縁1cに位置する通気筒15の外部側開口15bを覆っている。音響的に透明な部材91は、音圧レベルを、30Hz〜300Hzの周波数領域で0dB〜2dB低減する遮音性能を有している。本発明の属する技術分野では、このように僅かな遮音性能を有するに過ぎない部材を「音響的に透明な部材」と呼んでいる。第11実施形態では、一例として、音響的に透明な部材91はシート状に形成されている。なお、音響的に透明な部材91は、板状部材11の周縁11cの代わりに、板状部材11の裏側面11bに配置されていてもよい。また、音響的に透明な部材91は、板状部材11の表側面11aの代わりに、通気筒15の内部に配置されていてもよい。
【0102】
以上、本発明の第11実施形態によれば、僅かな遮音性能を有するに過ぎない音響的に透明な部材91によって通気筒15が塞がれることとなる。そのため、空気層13と空気層13の外部との間における上述の通気抵抗及び上述の音響低減効果が損なわれることなく、衝撃等の荷重に起因する振動を効果的に低減させることができる。加えて、このような音響的に透明な部材91によって、通気筒15に耐水性及び防塵性がもたらされて、その結果、通気筒15を介して前記空気層内に異物が侵入することを防止できる。よって、本発明の空気層開放式振動低減構造を、より実用的なものとすることができる。
【0103】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0104】
例えば、本発明の第1変形例として、第5実施形態のマイクロフォン51、スピーカ52、信号処理回路53、及び増幅器54が、第2実施形態の通気筒25、第3実施形態の通気筒35、又は第4実施形態の通気筒45に設けられていてもよい。第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
本発明の第2変形例として、第6実施形態又は第7実施形態の第1の振動加速度計61、第2の振動加速度計62、マイクロフォン63、スピーカ64、信号処理回路65、及び増幅器66が、第2実施形態の通気筒25、第3実施形態の通気筒35、又は第4実施形態の通気筒45に設けられていてもよい。この場合、スピーカ64は、第6実施形態及び第7実施形態のいずれかの態様で制御されるとよい。第6実施形態又は第7実施形態と同様の効果が得られる。
【0106】
本発明の第3変形例として、第8実施形態又は第9実施形態の第1の振動加速度計71、第2の振動加速度計72、スピーカ73、信号処理回路74、及び増幅器75が、第2実施形態の通気筒25、第3実施形態の通気筒35、又は第4実施形態の通気筒45に設けられていてもよい。第8実施形態又は第9実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
本発明の第4変形例として、第10実施形態の消音器81が、第2実施形態の通気筒25の外部側開口25b、第3実施形態の通気筒35の外部側開口35b、第4実施形態の通気筒45の外部側開口45b、及び第5実施形態〜第9実施形態の通気筒15の外部側開口15bのいずれかに対応して配置されていてもよい。第10実施形態と同様の効果が得られる。
【0108】
本発明の第5変形例として、第11実施形態の音響的に透明な部材91が、第2実施形態の通気筒25、第3実施形態の通気筒35、第4実施形態の通気筒45、及び第5実施形態〜第10実施形態の通気筒15のいずれかに設けられていてもよい。第11実施形態と同様の効果が得られる。
【0109】
本発明の第6変形例として、各実施形態の板状部材11,21,41の周縁部に、板状部材11,21,41から躯体12,22,42に向かう荷重が負荷されていてもよい。この荷重によって、板状部材11,21,41の特性に基づく振動をさらに低減できる。
【0110】
本発明の第7変形例として、各実施形態の板状部材11,21,41が、四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状、円弧形状等に形成されていてもよい。各実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
本発明の第8変形例として、各実施形態の防振ゴム14,24,44が、板状部材11,21,41の角部に対応した位置以外に配置されてもよく、防振ゴム14,24,44の数は、板状部材11,21,41を支持可能とするように適宜調節されるとよい。各実施形態と同様の効果が得られる。
【0112】
本発明の第9変形例として、各実施形態において、防振ゴムが設けられていなくてもよい。この場合、一例として、板状部材11,21,41は自由支持状態に吊り下げられている等するとよい。各実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0113】
11,21,41 板状部材
11a,21a,41a 表側面
11b,21b,41b 裏側面
11c,21c,41c 周縁
12,22,42 躯体
13,23,43 空気層
15,25,35,45 通気筒
15a,25a,35a,45a 空気層側開口
15b,25b,35b,45b 外部側開口
22c 底面
22d 外壁側面
22e 外部底面
51,63 マイクロフォン
52,64,73 スピーカ
61,71 第1の振動加速度計
62,72 第2の振動加速度計
81 消音器
91 音響的に透明な部材
X,Y,Z 矢印
S1 実線
S2 破線
W1 実線
W2 一点鎖線
W3 二点鎖線
W4 点線
W5 一点鎖線
W6 二点鎖線
W7 破線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、
前記板状部材の表側面に対向する裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体と
を備え、
前記板状部材と前記躯体との間に空気層を形成している空気層開放式振動低減構造であって、
前記空気層と前記空気層の外部との間で連通する通気筒を備え、
前記通気筒が、前記板状部材の内部に配置され、
前記通気筒の空気層側端に位置する開口が、前記板状部材の裏側面に配置され、
前記通気筒の外部側端に位置する開口が、前記板状部材の周縁に配置されている、空気層開放式振動低減構造。
【請求項2】
開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、
前記板状部材の表側面に対向する裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体と
を備え、
前記板状部材と前記躯体との間に空気層を形成している空気層開放式振動低減構造であって、
前記空気層と前記空気層の外部との間で連通する通気筒を備え、
前記通気筒が前記躯体の内部に配置されており、
前記通気筒の空気層側端に位置する開口が、前記空気層を形成する前記躯体の底面に配置され、
前記通気筒の外部側端に位置する開口が、前記空気層の外部に位置する躯体の外壁側面又は前記空気層の外部に位置する躯体の外部底面に配置されている、空気層開放式振動低減構造。
【請求項3】
開放空間側に表側面を向けて配置される板状部材と、
前記板状部材の表側面に対向する裏側面に対して間隔を空けて配置される躯体と
を備え、
前記板状部材と前記躯体との間に空気層を形成している空気層開放式振動低減構造であって、
前記空気層と前記空気層の外部との間で連通する通気筒を備え、
前記通気筒が前記空気層に配置されている、空気層開放式振動低減構造。
【請求項4】
前記板状部材又は前記躯体における空気層を形成する表面の通気抵抗の平均値が、0N・s/mを超え、かつ1000N・s/m以下となるように、前記通気筒が構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項5】
外力の付加によって前記空気層内に発生する音圧レベルが、前記板状部材及び前記躯体に通気性が無い場合に対して、前記板状部材、前記躯体及び前記空気層から成る一連の系の特性に基づく卓越周波数で3dB以上低減されるように、前記通気筒が構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項6】
前記空気層内又は前記通気筒内に配置された音検出器と、
前記通気筒内に配置され、前記音検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器と
をさらに備え、
前記音検出器により検出された前記空気層内の音圧レベルに対応して前記空気層内の音圧レベルを低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項7】
前記板状部材及び/又は前記躯体に取付けられた振動検出器と、
前記空気層内又は前記通気筒内に配置された音検出器と、
前記通気筒内に配置され、前記振動検出器及び前記音検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器と
をさらに備え、
前記振動検出器により検出された前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅に対応して、前記音検出器により検出される前記空気層内の音圧レベルを低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項8】
前記板状部材及び/又は前記躯体に取付けられた振動検出器と、
前記空気層内又は前記通気筒内に配置された音検出器と、
前記通気筒内に配置され、前記振動検出器及び前記音検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器と
をさらに備え、
前記音検出器により検出された前記空気層内の音圧レベルに対応して、前記振動検出器により検出される前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅を低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項9】
前記板状部材及び/又は前記躯体に取付けられた振動検出器と、
前記通気筒内に配置され、前記振動検出器と電気的に接続され、かつ音又は振動を発生させるように構成された出力器と
をさらに備え、
前記振動検出器により検出された前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅に対応して、前記板状部材及び/又は前記躯体の振動振幅を低減させるように、前記出力器を制御できる構成となっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項10】
前記通気筒の外部側端に位置する開口に、消音器が取付けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。
【請求項11】
前記通気筒に、音圧レベルを30Hz〜300Hzの周波数領域で0dB〜2dB低減するような遮音性能を有する音響的に透明な部材が配置されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の空気層開放式振動低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−24312(P2013−24312A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158914(P2011−158914)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(390029023)日東紡音響エンジニアリング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】