説明

突入電流抑制回路

【課題】入力コンデンサの充電電位の検出精度を向上させる。
【解決手段】入力コンデンサ40への突入電流を抑制する抵抗素子31−5と、突入電流の導通切替を行うスイッチ素子35を有する突入電流抑制回路であって、ツェナーダイオード32−1により、入力コンデンサ40の充電電圧を検出し、これが閾値を越えるとツェナーダイオード32−1が導通する。導通直後は、充電電圧が大きいため充電電流がダイオード33を通って流れるため、スイッチ35はオフ状態を保つ。充電電流が減少するとスイッチ35はオンとなる。入力コンデンサの充電電位を検出するツェナーダイオード32−1の経路では、従来の技術に比べ、温度依存性があるPN接合の素子を減少させたため、入力コンデンサの充電電位検出精度の向上が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置等における突入電流抑制回路、特に、入力電源投入時、入力コンデンサをチャージするための突入電流を抑制する突入電流抑制回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器の電源を投入した際には、定常的な電流を超えた突入電流といわれる大容量の電流が流れることがある。突入電流は、機器の各所に悪影響を及ぼすため、これを抑制するための技術が知られている。このような、突入電流抑制回路に関する従来技術は、例えば、次のような文献に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−352669号公報
【0004】
特許文献1には、電源装置の入力コンデンサに突入電流が流れたときは、これを突入電流抑制用の抵抗を導通させることにより抑制し、入力コンデンサの充電が閾値を超えたら、スイッチを導通させ、突入電流抑制用の抵抗を迂回させる突入電流抑制回路が記載されている
【0005】
図3は、従来の電源装置を示す回路図である。
電源装置1の入力側には、スイッチ3を介して入力電源2が接続され、出力側には、負荷4が接続されている。電源装置1は、突入電流抑制回路10を有し、この出力側にコンデンサ20を介して電力変換部21が接続されている。
【0006】
突入電流抑制回路10は、スイッチ3を閉じたときに、入力コンデンサ20を充電するために発生する突入電流に対し、抵抗素子を用いて抑制する回路である。その構成は、概ね次の通りである。
【0007】
入力電源2のプラス電極は抵抗11−1の一端、抵抗11−2の一端、抵抗11−3の一端、ツェナーダイオード(以下「ZD」という。)12−1のカソード、入力コンデンサ20の一端、電力変換部21の入力側の一端とそれぞれ接続されている。また、前記入力電源2のマイナス電極はスイッチ3を介して、ZD12−2のアノード、抵抗11−4の一端、バイポーラジャンクショントランジスタ(以下「BJT」という。)14−1のエミッタ、抵抗11−5の一端、電界効果トランジスタ(以下「FET」という。)15のソース、抵抗11−6の一端にそれぞれ接続されている。
【0008】
前記スイッチ3をオンし、入力電源2の電圧を電源装置1の入力端子に印加すると、当初、入力コンデンサ20の充電電圧はZD12−1のツェナー電圧より低いため、BJT14−3のベースには電流が流れずBJT14−3は、非導通状態(以下「オフ」という)である。そのため、BJT14−2は、抵抗11−3を通してベース電流が供給され導通状態(以下「オン」という)となる。その結果、BJT14−1も抵抗11−2及びBJT14−2を通してベース電流が供給されオンとなり、FET15のゲート・ソース間を短絡し、FET15をオフとする。この結果、入力コンデンサ20の充電電流は抵抗11−6を流れるため、抑制された小さい値となる。
【0009】
徐々に前記入力コンデンサ20が、抵抗11−6との時定数で充電され、ZD12−1のツェナー電圧を超えると、ZD12−1にツェナー電流が流れ、BJT14−3がオンとなる。そのため、BJT14−2はオフとなり、BJT14−1もオフとなる。その結果、FET15のゲートに抵抗11−1から電流が流れ、FET15の入力容量には過電圧保護用ZD12−2のツェナー電圧になるまで電荷が蓄積され、FET15をオンとする。以後、入力コンデンサ20の充電電圧がZD12−1のツェナー電圧を越えている限りこの状態を維持する。
【0010】
なお、入力コンデンサ20の容量が大きい場合等には、大きな充電電流のために抵抗11−6の両端電圧が高く、入力コンデンサ20の充電電圧がZD12−1のツェナー電圧以上になってもダイオード13に逆バイアスがかかりZD12−1にツェナー電流が流れない。そのため、BJT14−3もオフとなり、結果的にFET15がオフとなる。そして、十分、入力コンデンサ20が、充電されてからFET15がオンとなることから、過大な突入電流を抑制することができる。
【0011】
次に、スイッチ3をオフし、入力電源2を電源装置1の入力端子から遮断すると、入力コンデンサ20の充電電圧は電源変換部21やZD12−1,抵抗11−3等によって消費される電力によって低下していく。そして、ZD12−1のツェナー電圧を下回ると、BJT14−3のベースに電流が流れなくなりオフとなる。その結果、BJT14−2は抵抗11−3を通してベース電流が供給されオンとなり、BJT14−1も抵抗11−2及びBJT14−2を通してベース電流が供給されオンとなり、FET15のゲート−ソース間を短絡する。すなわちFET15の入力容量の電荷を瞬時に放出することによってオフし、次の入力電源2の電圧の印加に備えることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来例の構成では次のような課題があった。
(1) 入力コンデンサ20の充電電位の検出精度に課題があった。すなわち、シリコンのPN接合における順方向電圧は約−2.2mV/℃という温度特性を持つが、前記入力コンデンサ20の充電電位を検出するZD12−1の経路にはBJT14−3のベース−エミッタ間とダイオード13という2つのPN接合、つまり温度依存要素が存在するため、精度が高いとは言い難かった。
【0013】
(2) BJTが3段になっており、それらを高効率かつ確実にオン、オフさせるためには複雑な計算が必要で設計が容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の突入電流抑制回路は、入力電力を充電する入力コンデンサと、前記入力コンデンサへの突入電流を抑制する突入電流抑制素子と、前記突入電流抑制素子の導通切替を行うスイッチ素子と、前記入力コンデンサの充電電圧が、閾値電圧を越えたか否かを検出し、前記充電電圧が上昇して前記閾値電圧を越えたときには、第1の検出結果を出力し、前記充電電圧が下降して前記閾値電圧を下回ったときには、第2の検出結果を出力する第1の検出手段と、前記第1又は第2の検出結果を入力し、且つ、前記入力コンデンサへの充電電流が、閾値電流よりも小さくなったか否かを検出し、前記閾値電流よりも小さくなったときには、前記スイッチ素子を導通状態にする第2の検出手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次の(1)〜(2)のような効果がある。
(1) 入力コンデンサの充電電位を検出する第1の制御手段の経路では、従来の技術に比べ、温度依存性があるPN接合の素子を減少させたため、入力コンデンサの充電電位検出精度の向上が期待できる。
【0016】
(2) 例えば、トランジスタの結合段数を従来の技術に比べ削減することが可能であり、回路設計が容易になることが期待できる。更に、部品点数の削減も可能なため、部品配置の自由度向上や実装面積・コストの削減も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1の電源装置を示す回路図である。
【0019】
電源装置21の入力側には、スイッチ23を介して入力電源22が接続され、出力側には、負荷24が接続されている。電源装置21は、突入電流抑制回路30を有し、この出力側に入力コンデンサ40を介して電力変換部41が接続されている。電力変換部41は、直流電圧の変換を行う機能を有しており、例えば、−48Vの直流を+5V程度に変換する。
【0020】
突入電流抑制回路30は、スイッチ素子(例えば、スイッチ)23をオンとしたときに、入力コンデンサ40を充電するために発生する突入電流に対し、抵抗素子(例えば、抵抗)31−5を用いて抑制する回路である。その構成は、次のとおりである。
【0021】
突入電流抑制回路30は、抵抗31−1、抵抗31−2、抵抗31−3、抵抗31−4、抵抗31−5、抵抗31−6、抵抗31−7、抵抗31−8、ZD32−1、ZD32−2、ダイオード33、BJT34−1、BJT34−2、FET35、入力コンデンサ40及びコンデンサ41から構成され、その接続状態は、以下のとおりである。
【0022】
入力電源22のプラス電極は、抵抗31−1の一端、抵抗31−2の一端、ZD32−1のカソード、入力コンデンサ40の一端、電力変換部41の入力側の一端とそれぞれ接続されている。また、入力電源22のマイナス電極はスイッチ23を介して、ZD32−2のアノード、抵抗31−3の一端、コンデンサ41の一端、BJT34−1のエミッタ、抵抗31−4の一端、FET35のソース、抵抗31−5の一端にそれぞれ接続されている。
【0023】
FET35のドレインは、抵抗31−5の他端、ダイオード33のアノード、BJT34−2のエミッタ、抵抗31−6の一端、入力コンデンサ40の他端、電力変換部41の入力側他端にそれぞれ接続されている。電力変換部41の出力側は負荷24に接続されている。
【0024】
抵抗31−1の他端は、ZD32−2のカソード、抵抗31−3の他端、コンデンサ41の他端、FET35のゲート、BJT34―1のコレクタにそれぞれ接続されている。
【0025】
BJT34―1のベースは、抵抗31−4の他端、抵抗31−7の一端に接続され、抵抗31−7の他端はダイオード33のカソード、BJT34−2のコレクタ、抵抗31−2の他端にそれぞれ接続されている。
【0026】
また、BJT34−2のベースは、抵抗31−6の他端、抵抗31−8の一端に接続され、抵抗31−8の他端はZD32−1のアノードに接続されている。なお、ZD32−1のツェナー電圧VZは、電力変換部41の停止電圧に合わせておく。
【0027】
(実施例1の動作)
図2は、図1の動作波形を示す説明図である。
【0028】
スイッチ23をオンにして入力電源22を印加した際の動作について、図1、図2を用いて説明する。なお、以下、単位を[ ]で括って表す。例えば、電圧の単位であるボルトは[V]のように表す。
【0029】
図2において、横軸は時刻を示し、時刻t1〜t3は、スイッチ23を閉じて入力電源22の電圧Vinが電源装置21に印加されてからの時刻を表す。時刻t4は、スイッチ23をオフにして、電圧Vinを遮断してからの時刻を表す。T1〜T5は、それぞれ、各事象間の期間を表す。Vinは、入力電源22の電圧を、ecinは、入力コンデンサ40の両端電位を、iは、突入電流を、VGSは、FET35のゲート−ソース間電圧をそれぞれ表す。 次に期間T1〜T5ごとに突入電流抑制回路の動作を説明する。
【0030】
(1) 期間T1
期間T1は、スイッチ23をオンにしてから、ZD32−1にツェナー電流が流れるまでの期間である。スイッチ23をオンにした瞬間、入力電源22の電圧Vinが電源装置21に印加される。入力コンデンサ40には電荷が蓄積していないため、入力コンデンサ40の電位差ecinはゼロであり、オフであるFET35のドレイン・ソース端子間に電圧Vinが印加される。ecinは、その後、入力コンデンサ40に電荷が蓄積されるに従って、電圧を高めていく。突入電流iは、スイッチを閉じた瞬間、立ち上がるが、入力コンデンサ40に電荷が蓄積されるに従って、次第に減少する。
【0031】
図1において、FET35のドレイン・ソース端子間と並列回路にあるBJT34−1には、時刻t1となるまでは、次の(a),(b)の経路で、時刻t1以降は(b)の経路のみで、抵抗31−7を介してベース電流IBが供給されオンとなるため、FET15はオフを維持する。
【0032】
(a) 入力コンデンサ40の充電電流の一部から充電電流検出用ダイオード33を通る経路
【0033】
(b) 入力電源22から抵抗31−2を通る経路
ここで、式(1)は、入力電源22の電圧Vinが印加されてから、入力コンデンサ40の充電電流の一部がダイオード33を通らなくなるまでの時刻t1を表す。
t1≒−Cin×R3×logA ・・・・(1)
但し、
A=(B+VBE+VF)/Vin ・・・(1−1)
B=R5×(Vin−VBE)/(R5+R6) ・・・(1―2)
t1[秒]:入力電源22の電圧Vinが印加されてから、
入力コンデンサ40の充電電流の一部がダイオード33を通
らなくなるまでの時間
Cin[F]:入力コンデンサ40の容量
R3[Ω]:抵抗31−5の抵抗値
Vin[V]:入力電源22の電圧
VBE[V]:BJT34−1のベース―エミッタ間電圧
R5[Ω]:抵抗31−7の抵抗値
R6[Ω]:抵抗31−2の抵抗値
VF[V]:ダイオード33の順電圧
【0034】
時間の経過とともに、入力コンデンサ40は、突入電流防止用の抵抗31−5によって、かつ抵抗31−5との時定数で入力コンデンサ40の瞬時充電電流である突入電流を抑制しながら電荷を蓄積する。このときの入力コンデンサ40の充電電位は、電圧Vinが印加されてからt秒後の両端電位をecin(t)とすると式(2)で表される。
ecin(t)=Vin×(1−expC) ・・・(2)
但し、
C=−t/(Cin×R3) ・・・(2−1)
ecin(t)[V]:電圧Vinが印加されてからt秒後の入
力コンデンサ40の両端電位
Vin[V]:入力電源22の電圧
Cin[F]:入力コンデンサ40の容量
R3[V]:抵抗31−5の抵抗値
【0035】
また、FET35のドレイン・ソース間電圧VDSは、式(3)で表される。
VDS=Vin−ecin(t) ・・・(3)
VDS[V]:FET35のドレイン・ソース間電圧
Vin[V]:入力電源22の電圧
ecin(t)[V]:入力電源22の電源投入からt秒後の入力
コンデンサ40の両端電位
【0036】
(2) 期間T2
さらに時間が経過し、前記入力コンデンサ40の両端電圧ecin(t)がZD32−1のツェナー電圧VZ、BJT34−2のベース・エミッタ間電圧VBE及び抵抗31−8の両端電圧の和を越えると、第1の制御手段の第1の検出結果として、ZD32−1に流れるツェナー電流IZが抵抗31−8を介して前記BJT34−2のベース電流IBとして供給されBJT34−2はオンとなる。しかし、この時点ではまだ入力コンデンサ40の充電電流が大きく、FET35のドレイン・ソース間電圧VDSが高いため、BJT34−1はオンを維持する。
【0037】
最終的に、第2の検出手段において、入力コンデンサ40が、ほぼ入力電源22の電位に充電される時刻t2になると、入力コンデンサ40の充電電流が減少するため、FET35のドレイン・ソース間電圧VDSとBJT34−2のコレクタ−エミッタ間の飽和電圧VCE(sat)の和は、抵抗31−7の電圧降下VとBJT34−1のベ−ス−エミッタ間電圧VBEの和より低くなる。すると、BJT34−1のベース電流IBとなっていた抵抗31−2の電流はBJT34−2を流れるようになるため前記BJT34−1はオフとなる。
【0038】
式(4)は、入力電源22が印加されてから、入力コンデンサ40が、ほぼ入力電源22の電位に充電される時刻t2を表す。
t2=−Cin×R3×log(D/Vin) ・・・(4)
但し、
D=VBE+(E+(VBE/R4))×R5−VCE(sat)
E=(Vin−VCE(sat))/(R1×hfe)
t2[秒]:入力電源22が印加されてから、入力コンデンサ4
0が、ほぼ入力電源22の電位に充電される時刻t2
Cin[F]:入力コンデンサ40の容量
R3[Ω]:抵抗31−5の抵抗値
Vin[V]:入力電源22の電圧
VBE[V]:BJT34−1のベース・エミッタ間電圧
VCE(sat)[V]:BJT34−2のコレクタ・エミッタ間
飽和電圧
R1[Ω]:抵抗31−1の抵抗値
hfe:BJT34−1の電流増幅率
R4[Ω]:抵抗31−4の抵抗値
R5[Ω]:抵抗31−7の抵抗値
【0039】
前記BJT34−1が、オフになると、FET35のゲート・ソース間電圧VGSは、ZD32−2のツェナー電圧VZもしくは抵抗31−1と抵抗31−3の分圧比まで、抵抗31−1,抵抗31−3,コンデンサ41及びFET35の入力容量Cissの時定数で上昇する。
【0040】
FET35のゲート・ソース間電圧VGSがFET35のゲート・ソース間スレッシュホールド電圧VGS(th)を越えると、ドレイン・ソース間は急速に低インピーダンスとなり、FET35はオンとなる。その結果、抵抗31−5を流れていた動作電流は、これ以降、FET35を流れるようになる。
【0041】
このFET35がオンとなる時刻t3は、式(5)で表される。
t3=−Cin×R3×logF ・・・ (5)
但し
F=(VF+V+VBE)/Vin
V=(IC/hfe+VBE/R4)×R5
t3[秒]:入力電源22の印加時を起点として、FET35がオ
ンとなる時刻t3
Cin[F]:入力コンデンサ40の容量
R3[Ω]:抵抗31−5の抵抗値
VF[V]:ダイオード33の順電圧
VBE[V]:BJT34−1のベース・エミッタ間電圧
Vin[V]:入力電源22の電圧
IC[A]:BJT34−1のコレク電流
hfe:BJT34−1の電流増幅率
VBE[V]:BJT34−1のベース・エミッタ間電圧
R4[Ω]:抵抗31−4の抵抗値
R5[Ω]:抵抗31−7の抵抗値
【0042】
(3) 期間T3
FET35がオンを維持して、電力変換部41が動作している期間である。
【0043】
(4) 期間T4
次に、前記スイッチ23をオフにして電圧Vinを遮断した際の動作について説明する。
【0044】
入力電源22によって充電されている入力コンデンサ40は、次のルートで蓄積電荷を放出する。
【0045】
(a) 入力コンデンサ40→電力変換部41及び該電力変換部41を介して負荷24→入力コンデンサ40
【0046】
(b) 入力コンデンサ40→ZD32−1→抵抗31−8→抵抗31−6及びBJT34−2のベース−エミッタ間→入力コンデンサ40
【0047】
(c) 入力コンデンサ40→抵抗31−2→BJT34−2→入力コンデンサ40
【0048】
(d) 入力コンデンサ40→抵抗31−1→抵抗31−3,ZD32−2,コンデンサ41→FET35のドレイン・ソース間の寄生ダイオード、抵抗31−5→前記入力コンデンサ40
【0049】
蓄積電荷の放出につれて、入力コンデンサ40の電位ecin(t)が徐々に低下していき、BJT34−2のベース・エミッタ間電圧VBE、ZD32−1のツェナー電圧VZ及び抵抗31−8の電圧降下Vの和を下回る時刻t4になると、第2の検出結果として、ZD32−1のツェナー電流IZが流れなくなるのでBJT34−2のベース電流が供給されなくなり、BJT34−2はオフとなる。
【0050】
式(6)は、スイッチ23を開いて入力電源22を遮断した時刻を起点として、ZD32−1のツェナー電流IZが流れなくなる時刻t4を表す。
t4=−Cin×R3×(logG)/J ・・・(6)
但し
G=H+I+VBE+VZ ・・・(6−1)
H=(−VCE(sat)×R7)/(R6×hfe)
・・・(6−2)
I=(VBE×R7)/R8 ・・・(6−3)
J=(1−R7/(R6×hfe))/Vin ・・・(6−3)
t4:スイッチ23を開いて入力電源22を遮断した時刻を起点
として、ZD32−1のツェナー電流IZが流れ
なくなる時刻
Cin[F]:入力コンデンサ40の容量
R3[Ω]:抵抗31−5の抵抗値
VCE(sat)[V]:BJT34−2のコレクタ―エミッタ間
飽和電圧
R6[Ω]:抵抗31−2の抵抗値
hfe:BJT34−2の電流増幅率
R7[Ω]:抵抗31−8の抵抗値
VBE[V]:BJT34−2のベース―エミッタ間電圧
R8[Ω]:抵抗31−6の抵抗値
VZ[V]:ZD32−1のツェナー電圧
Vin[V]:入力電源22の電圧
【0051】
BJT34−2がオフとなると、入力電源22から抵抗31−2,抵抗31−7を介してBJT34ー1のベース電流IBが、供給されるためBJT34―1はオンとなる。BJT34―1は、FET35のゲート−ソース間に接続されているため、コンデンサ41及びFET35のゲート電荷を放出し、瞬時にFET35をオフにする。これにより、次の電源投入に備えることができる。
【0052】
(5) 期間T5
FET35はオフ状態を維持しており、次の入力電源22の電圧Vinの印加に備えている。
【0053】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)〜(3)の効果がある。
【0054】
(1) 入力コンデンサ40の充電電位を検出するZD32−1の経路にはシリコンのPN接合がBJT34−2のベース・エミッタ間のみであり、従来の技術に比べ、温度依存性があるPN接合が半減しているため、入力コンデンサ40の充電電位検出精度の向上が期待できる。
【0055】
(2) BJTの結合段数が従来の3段から2段に減少しており、回路設計が容易になることが期待できる。
【0056】
(3) 更に、部品点数も削減できるため、部品配置の自由度向上や実装面積・コストの削減も期待できる。
【0057】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)及び(b)のようなものがある。
【0058】
(a) 実施例ではBJT34−2にBJTを用いているがFETを使用することもできる。その場合、FETの寄生ダイオードが利用できるためダイオード33を削除することができ、部品点数をさらに削減することができる。
【0059】
(b)ZD32−1は入力コンデンサ40の充電電位の検出手段の例として示しただけであり、前記入力コンデンサ40の両端電圧を検出する入力低電圧保護回路の信号をフォトカプラで受け取る等の方法も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1の電源装置を示す回路図である。
【図2】図1の動作波形を示す説明図である。
【図3】従来の電源装置を示す回路図である。
【符号の説明】
【0061】
21:電源装置
22:入力電源
23:スイッチ
24:負荷
30:突入電流抑制回路
31−5:抵抗
32−1:ツェナーダイオード
33:ダイオード
35:EFT
40:入力コンデンサ
41:電力変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力を充電する入力コンデンサと、
前記入力コンデンサへの突入電流を抑制する突入電流抑制素子と、
前記突入電流抑制素子の導通切替を行うスイッチ素子と、
前記入力コンデンサの充電電圧が、閾値電圧を越えたか否かを検出し、前記充電電圧が上昇して前記閾値電圧を越えたときには、第1の検出結果を出力し、前記充電電圧が下降して前記閾値電圧を下回ったときには、第2の検出結果を出力する第1の検出手段と、
前記第1又は第2の検出結果を入力し、且つ、前記入力コンデンサへの充電電流が、閾値電流よりも小さくなったか否かを検出し、前記閾値電流よりも小さくなったときには、前記スイッチ素子を導通状態にする第2の検出手段と、
を備えたことを特徴とする突入電流抑制回路。
【請求項2】
前記突入電流抑制素子は、抵抗素子であり、
前記スイッチ素子は、前記抵抗素子に対して並列に接続され、前記第1の検出結果の入力を受け、前記第2の検出手段により、前記突入電流抑制素子の導通状態を切替えるトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の突入電流抑制回路。
【請求項3】
前記第1の検出手段は、ツェナーダイオードを有し、前記入力コンデンサの両端の電圧を検出し、前記検出値が上昇して閾値を越えると、前記ツェナーダイオードが導通し、前記検出値が下降して前記閾値を下回ったときには、前記ツェナーダイオードの導通を遮断することを特徴とする請求項1又は2記載の突入電流抑制回路。
【請求項4】
前記第2の検出手段は、ダイオードを有し、前記ダイオードは、前記入力コンデンサの前記充電電流を導通させ、前記充電電流が前記第2の閾値まで減少し、且つ、前記第1の検出結果が入力されると、前記スイッチ素子を導通させて前記突入電流抑制素子の導通状態を切替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の突入電流抑制回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−51102(P2010−51102A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213481(P2008−213481)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(593065844)株式会社沖コムテック (127)
【Fターム(参考)】