説明

窒化可能な鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナ及びその製造用鋳造方法

良好な窒化特性を有する鋼組成物を本体として含む鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナを開示する。鋼組成物は以下の元素、0〜0.5重量%のB、0.5〜1.2重量%のC、4.0〜20.0重量%のCr、0〜2.0重量%のCu、45.30〜91.25重量%のFe、0.1〜3.0重量%のMn、0.1〜3.0重量%のMo、0〜0.05重量%のNb、2.0〜12.0重量%のNi、0〜0.1重量%のP、0〜0.05重量%のPb、0〜0.05重量%のS、2.0〜10.0重量%のSi、0〜0.05重量%のSn、0.05〜2.0重量%のV、0〜0.2重量%のTi、および0〜0.5重量%のWからなる。鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナは、鋳鉄部品の製造用の機械および技術を使用する鋳造プロセスで製造し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な窒化特性を有し、鋳造プロセスで製造し得るピストンリングおよびシリンダーライナに関する。本発明はまた、本発明の良好な窒化特性を有するピストンリングとシリンダーライナから製造し得る窒化ピストンリングおよびシリンダーライナに関する。さらに本発明は、本発明の良好な窒化特性を有するピストンリングおよびシリンダーライナの製造方法と、本発明に係る窒化ピストンリングおよびシリンダーライナの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、ピストンリングは燃焼室のピストンヘッドとシリンダ壁との間の空隙を密閉する。ピストンが前後に動くと、ピストンリングの一方がその外周面でシリンダ壁に対し永久的なバネ荷重位置で摺動し、そしてピストンリングの傾斜運動のため、ピストンリングの他方がそのピストンリング溝内で振動しながら摺動し、その際にその側面がピストンリング溝の上下の溝側面に交互に作用する。これら部品が互いに摺動すると、材質に応じてより多かれ少なかれ磨耗が生じ、乾燥稼動の場合には、いわゆるフレッチングやスコーリング、最終的にはエンジンの破壊に至ることもある。シリンダ壁に対するピストンリングの摺動および磨耗動作を改善するために、その周面に各種材料から形成したコーティングが施されてきた。
【0003】
レシプロ式ピストン内燃機関におけるもののようなシリンダーライナは、高い耐磨耗性を有しなければならない。さもなければ、シリンダーライナが薄くなればなるほど、ガス漏れや油の消費が増加し、エンジンの性能が劣化する。シリンダーライナが磨耗すると、ピストンリングの遊びが着実に増加するので、より多くの燃焼ガスがクランク室内に侵入するようになる。さらに極端な場合、ピストンリングはもはや均一にシリンダーライナに作用しなくなり、より一層多くのガスがクランク室に侵入することとなる。
【0004】
ピストンリングやシリンダーライナのような高性能内燃機関の部品を製造するために、鋳鉄材料、すなわち鋳鉄合金を通常用いる。高性能エンジンにおいて、ピストンリング、特にコンプレッションリングに要求されることは、例えばピーク圧縮圧力、燃焼温度、EGRおよび潤滑油膜減少に関して、これまで以上に厳しいものとなってきており、磨耗、耐スコーチ性、マイクロ溶接及び耐食性のような機能的な特性に大きく影響を与える。
【0005】
しかしながら、従来の鋳鉄材料は破壊の危険性が高い。実際、現在の材料を用いる場合、リングが頻繁に壊れる。機械力学的な負荷を高めると、ピストンリングとシリンダーライナの寿命が短くなる。深刻な磨耗と腐食が稼動面と側面に生じる。
【0006】
より高い着火圧力、排気の低下および燃料の直接噴射は、ピストンリングへの負荷の増加を意味する。これは、ピストン材料、とりわけ下方ピストンリング側面の損傷および蓄積をもたらす。
【0007】
ピストンリングとシリンダーライナへのより高い機械力学的なストレスのため、エンジンメーカーは、高級鋼(例えば、鋼種1.4112のような焼入れ焼き戻しの高度合金)のピストンリングとシリンダーライナをますます求めている。ここで、2.08重量%未満の炭素を含有する鉄鋼材が鋼として既知である。炭素含有量がより高い場合、鋳鉄として知られている。鋳鉄に比較して、基本微細構造において遊離グラファイトによる干渉が無いので、鋼は一層良好な強度及び靭性特性を有する。
【0008】
通常、高クロム合金化マルテンサイト鋼が鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナの製造に用いられる。しかしながら、かかる鋼を使用すると、製造コストが鋳鉄成分のものより著しく高いという欠点に悩まされる。
【0009】
鋼製ピストンリングは輪郭付けしたワイヤから製造される。輪郭付けしたワイヤを円形に丸め、切断し、「非円形状」マンドレルにあてがわれる。ピストンリングは、所要の接線力を付与する焼鈍処理によってマンドレル上で所望の非円形状を達成する。鋼からのピストンリングの製造におけるさらなる欠点は、一定の直径を超えると、鋼線からのリングの製造(コイリング)が不可能となることである。
【0010】
従来の鋼製ピストンリングが欧州特許出願公開第0295111号に開示されている。これは、輪郭付けしたワイヤの製造を容易にし、またピストンリングを形成するためのさらなる処理を促進するために添加したアルミニウムを有する合金から成る。
【0011】
一方、鋳鉄から形成したピストンリングは、鋳造時に既に非円形であるので、これらは最初から理想的形態を有する。鋳鉄は、鋼よりも著しく低い融点を有する。その差は、化学組成に応じて350℃までになることがある。よって、融点が低いということは鋳造温度が低く、冷却時の収縮が小さいということを意味するため、鋳鉄は溶融及び鋳造が一層容易であり、従って鋳造材料はパイプ欠陥または熱間および冷間割れが少ない。より低い鋳造温度はまた、型の材質へのストレス(侵食、気孔率、砂の封入)および炉への負荷を小さくし、また溶融コストの低下も生ずる。
【0012】
鉄鋼材の融点は、炭素含有量に単純に依存するのではなく、「飽和度」にも依存する。次の経験式が成立する。
Sc=C/(4.26−1/3(Si+P))
飽和度が1に近づくほど、融点は低くなる。鋳鉄では、飽和度1.0が通常望ましく、その場合鋳鉄は1150℃の融点を有する。鋼の飽和度は、化学組成に依存するが、約0.18である。共晶鋼は1500℃の融点を有する。
【0013】
飽和度は、実質的にSiもしくはP含有量に影響される。例えば、ケイ素含有量の3重量%の増加がC含有量の1重量%の増加と同様の効果を奏する。したがって、飽和度1.0の鋳鉄(C:3.26重量%、Si:3.0重量%)と同じ融点を有する鋼鉄をC含有量1重量%およびケイ素含有量9.78重量%で製造することが可能である。
【0014】
Si含有量の大幅な増加は、鋼鉄の飽和度を上昇させ、融点を鋳鉄のものまで下げることができる。すなわち、鋳鉄の製造に用いるのと同じ技術、例えば、GOE44を用いて鋼鉄を製造することが可能である。
【0015】
高ケイ素鋳鋼から形成したピストンリングとシリンダーライナが当業界で知られている。しかしながら、多量に存在するケイ素は、オーステナイト遷移温度“Ac3”が上昇するため、材料の焼入性に悪影響を有する。
【0016】
然るに、低ケイ素含有量の鋼製ピストンリングが従来輪郭付けしたワイヤから製造される。かかる低ケイ素含有量の鋼製ピストンリングが特開平3−122257号に記載されている。
【0017】
それにもかかわらず、ピストンリング表面の硬度を上げるための当業界で普通の処理は、材料を窒化することからなっていた。しかしながら、従来の高ケイ素鋼鋳物は窒化特性に乏しいことが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0295111号
【特許文献2】特開平3−122257号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
すなわち、本発明の目的は、高ケイ素含有鋼組成物から形成し、良好な窒化特性を有する本体のピストンリングとシリンダーライナ、並びに窒化ピストンリングとシリンダーライナを提供することにある。重力鋳造により製造すると、窒化ピストンリングとシリンダーライナの窒化鋼組成物の特性は、少なくとも以下の1つにおいて、焼入れ焼戻した球状黒鉛鋳鉄の特性を上回る。
弾性率、曲げ強度のような機械的特性
破壊強度
形態安定性
側面磨耗
稼動面磨耗
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によると、この目的は、以下の元素を以下の割合で含む鋼組成物から形成した本体を有する鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナによって達成される。
B: 0〜0.5重量%
C: 0.5〜1.2重量%
Cr: 4.0〜20.0重量%
Cu: 0〜2.0重量%
Fe: 45.30〜91.25重量%
Mn: 0.1〜3.0重量%
Mo: 0.1〜3.0重量%
Nb: 0〜0.05重量%
Ni: 2.0〜12.0重量%
P: 0〜0.1重量%
Pb: 0〜0.05重量%
S: 0〜0.05重量%
Si: 2.0〜10.0重量%
Sn: 0〜0.05重量%
Ti: 0〜0.2重量%
V: 0.05〜2.0重量%
W: 0〜0.5重量%
【0021】
本発明のピストンリングとシリンダーライナの良好な窒化特性は、4.0〜20.0重量%のクロム含有量によるものと推定される。窒化処理において、クロムは非常に硬い窒化物を形成する。クロムを鋼組成物に添加すると、通常材料のオーステナイト遷移温度をさらに上げ、その結果焼入性をさらに劣化させる一方、本発明においては、2.0〜12.0重量%のニッケルを添加するとオーステナイト遷移温度の上昇を妨げることが観測された。このように、本発明は、鋼組成物の優れた窒化特性のために入手し得る材料表面のより良好な焼入性が殺がれることによるオーステナイト遷移温度の上昇を、本体の焼入性の同時低減により防止する。
【0022】
あるいはまた、 鋼組成物は以下の組成を有する。
B: 0〜0.5重量%
C: 0.5〜0.95重量%
Cr: 11.0〜14.5重量%
Cu: 0〜2.0重量%
Fe: 72.055〜84.550重量%
Mn: 0.1〜1.0重量%
Mo: 0.2〜1.0重量%
Nb: 0〜0.05重量%
Ni: 1.5〜3.0重量%
P: 0〜0.055重量%
Pb: 0〜0.05重量%
S: 0〜0.04重量%
Si: 2.6〜4.0重量%
Sn: 0〜0.05重量%
Ti: 0〜0.2重量%
V: 0.05〜0.15重量%
W: 0〜0.4重量%
【0023】
使用する鋼の飽和度を増加させるために、両方の選択肢において, 鋼のケイ素含有量は少なくとも3.0重量%であるのが好ましい。
【0024】
さらに、鋼組成物は少なくとも0.003重量%の鉛、少なくとも0.003重量%の銅、少なくとも0.003重量%のリン、および少なくとも0.003重量%の硫黄を含むのが好ましい。
【0025】
本発明の鋼製ピストンリングは、樹枝状微細構造を有するのが好ましい。従来の輪郭付けしたワイヤから製造した鋼製ピストンリングは、樹枝形状を有さない微粉化した微細構造を有する。しかしながら、いくつかの従来の鋼製ピストンリングにおいては、輪郭付けしたワイヤの延伸もしくは圧延方向を微細構造において未だ検出することができる。
【0026】
本発明によれば、本発明の良好な窒化特性を有する鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナを窒化すると、窒化鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナを生成する。
【0027】
本発明の窒化鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナは、強く加熱する際に形状が変化する傾向を減少し、ゆえに長期間高性能を付与し、さらには油の消費を低減する。
【0028】
本発明の窒化鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナはまた、鋳鉄部品を製造するための機械と技術を用いて製造し得るという利点を有する。加えて、製造コストが鋳鉄ピストンリングもしくはねずみ鋳鉄シリンダーライナのものに相当し、製造業者のコスト削減及び利益の向上につながる。同様に、材料のパラメータを供給業者から独立して調節設定することができる。
【0029】
本発明はまた、本発明に係る良好な窒化特性を有する鋼製ピストンリングおよび鋼製シリンダーライナの製造方法を提供し、該方法は
a. 出発材料から溶融塊を製造するステップと、
b. 溶融塊を調製型に流し込むステップと
を備える。
【0030】
これは、樹枝状微細構造を有する鋼製ピストンリングと鋼製シリンダーライナを製造する。これに対し、従来の輪郭付けしたワイヤから鋼製ピストンリングを製造すると、微粉化した微細構造を有するピストンリングを製造する。
【0031】
出発材料の例としては、鋼スクラップ、返送スクラップ 、合金化物質がある。溶融処理を炉、好ましくは溶鉱炉、特に好ましくはキューポラで行う。次に、溶融物が固化する際にブランクを製造する。従来技術では、鋼製ピストンリングまたは鋼製シリンダーライナを、例えば遠心鋳造処理(シリンダーライナの製造に好ましい方法)、連続鋳造処理、ダイス刻印処理、クローニング処理、または好ましくは、生型成形により鋳造することができる。
【0032】
ピストンリングもしくはシリンダーライナが冷却された後、鋳型を空にし、得られたブランクを洗浄する。
【0033】
所要に応じて、ピストンリングもしくはシリンダーライナをその後焼き入れし、焼き戻ししてもよい。以下のステップがこれを達成する。
c. ピストンリングもしくはシリンダーライナをそのAc3温度以上でオーステナイト化するステップと、
d. ピストンリングもしくはシリンダーライナを適当な焼入れ媒体中で焼き入れするステップと、
e. ピストンリングもしくはシリンダーライナを制御雰囲気炉内において400℃〜700℃の範囲の温度で焼き戻しするステップ。
【0034】
油を焼入れ媒体として用いるのが好ましい。
【0035】
本発明によって窒化ピストンリングもしくはシリンダーライナを製造するために、上述の処理ステップの後に、得られたピストンリングもしくはシリンダーライナの窒化を行う。これは、例えば、ガス窒化、プラズマ窒化もしくは圧力窒化により達成することができる。
【0036】
以下の実施例や図は、本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係わるピストンリングの線図である。
【図2】本発明に係わる鋼製ピストンリングの基本的な微細構造を拡大(倍率500:1)して示す写真である。
【図3】本発明に係わる鋼製ピストンリングの基本的な微細構造を拡大(倍率200:1)して示す写真である。
【図4】従来の鋼製ピストンリングの基本的な微細構造を拡大(倍率500:1)して示す写真である。
【実施例】
【0038】
ピストンリング(図1参照)を下記の組成を有する本発明に係る高度に窒化可能な鋼組成物から製造した。
B: 0.001重量% Pb: 0.16重量%
C: 0.8重量% S: 0.009重量%
Cr: 13.0重量% Si: 3.0重量%
Cu: 0.05重量% Sn: 0.001重量%
Mn: 0.3重量% Ti: 0.003重量%
Mo: 0.5重量% V: 0.11重量%
Nb: 0.002重量% W: 0.003重量%
Ni: 2.1重量% Fe: 残部
P: 0.041重量%
【0039】
これは、出発材料(鋼スクラップ、返送スクラップおよび合金化物質)から溶融塊を製造し、溶融物を調製生型に流し込むことにより得た。次に、鋳型を空にし、得られたピストンリングを洗浄した。その後、ピストンリングを焼入れし、そして焼き戻しした。これは、鋼組成物のAc3温度以上でオーステナイト化し、油中で焼入れし、制御雰囲気炉において400℃から700℃の範囲の温度で焼き戻すことにより達成された。
【0040】
最後に、得られたピストンリングの表面を窒化した。窒化前の硬度は420HVもしくは42HRCであったが、窒化領域では1000HVを超える硬度が得られ、側面磨耗および稼動面磨耗に対し高い抵抗性を保証するものである。この場合、硬度をDIN EN10109−1とDIN EN10008−1に準拠して求めた。本発明のピストンリングの弾性率は、215000MPaであった。
【0041】
本発明の鋳鋼ピストンリングの基本的な微細構造の拡大図を図2(倍率500:1)および図3(倍率200:1)に示す。比較のために、図4は従来技術により製造された鋼製ピストンリング(フェデラルーモーグル社製 GOE65D鋳鉄; 化学組成 C:0.05〜0.75重量%、Cr:11.0〜15.0重量%、Mn:最大1.0重量%、Mo:最大0.6重量%、P:最大0.045重量%、Si:最大1.0重量%、V:最大0.1重量%)の基本的な微細構造を同倍率で示す。本発明の鋼製ピストンリングが樹枝状基本微細構造を有していることがわかる。白い部分は、樹枝に沿って粒界で析出した炭化クロムを確認する。これに対し、従来の鋼製ピストンリングは、樹枝形状の無い微粉化した微細構造を有する。ピストンリングの延伸もしくは圧延方向すら見ることができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
良好な窒化特性を有する鋼組成物を本体として含み、
該鋼組成物が鋼組成物100重量%に対して表示された割合の以下の元素から成ることを特徴とする鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナ。
B: 0〜0.5重量%
C: 0.5〜1.2重量%
Cr: 4.0〜20.0重量%
Cu: 0〜2.0重量%
Fe: 45.30〜91.25重量%
Mn: 0.1〜3.0重量%
Mo: 0.1〜3.0重量%
Nb: 0〜0.05重量%
Ni: 2.0〜12.0重量%
P: 0〜0.1重量%
Pb: 0〜0.05重量%
S: 0〜0.05重量%
Si: 2.0〜10.0重量%
Sn: 0〜0.05重量%
Ti: 0〜0.2重量%
V: 0.05〜2.0重量%
W: 0〜0.5重量%
【請求項2】
良好な窒化特性を有する鋼組成物を本体として含み、
該鋼組成物が鋼組成物100重量%に対して表示された割合の以下の元素から成ることを特徴とする鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナ。
B: 0〜0.5重量%
C: 0.5〜0.95重量%
Cr: 11.0〜14.5重量%
Cu: 0〜2.0重量%
Fe: 72.055〜84.550重量%
Mn: 0.1〜1.0重量%
Mo: 0.2〜1.0重量%
Nb: 0〜0.05重量%
Ni: 1.5〜3.0重量%
P: 0〜0.055重量%
Pb: 0〜0.05重量%
S: 0〜0.04重量%
Si: 2.6〜4.0重量%
Sn: 0〜0.05重量%
Ti: 0〜0.2重量%
V: 0.05〜0.15重量%
W: 0〜0.4重量%
【請求項3】
前記鋼組成物が少なくとも3.0重量%のケイ素を含むことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の鋼製ピストンもしくは鋼製シリンダーライナ。
【請求項4】
前記鋼組成物が少なくとも0.003重量%の鉛、少なくとも0.003重量%の銅、少なくとも0.003重量%のリン、および少なくとも0.003重量%の硫黄を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の鋼製ピストンもしくは鋼製シリンダーライナ。
【請求項5】
前記鋼組成物が樹枝状微細構造を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の鋼製ピストンリングを窒化することにより得られることを特徴とする窒化鋼製ピストンリング。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の鋼製シリンダーライナを窒化することにより得られることを特徴とする窒化鋼製シリンダーライナ。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナを製造するに当たり、
a. 溶融塊を出発材料から製造するステップと、
b. 溶融塊を調製型に流し込むステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記溶融塊を溶鉱炉で製造することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記型が生砂型であることを特徴とする請求項8もしくは9に記載の方法。
【請求項11】
鋼製シリンダーライナの製造方法であって、鋼製シリンダーライナが遠心鋳造プロセスにより製造されることを特徴とする請求項8もしくは9に記載の方法。
【請求項12】
c. 鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナをそのAc3温度以上でオーステナイト化するステップと、
d. 鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナを適切な焼入媒体中で焼き入れするステップと、
e. 鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナを制御雰囲気炉において400℃〜700℃の範囲の温度で焼き戻しするステップと
をさらに備える請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項6に記載の鋼製ピストンリングもしくは請求項7に記載のシリンダーライナを製造するに当たり、
a. 請求項8から12のいずれか一項に記載の方法を実施するステップと、
b. 得られた鋼製ピストンリングもしくは鋼製シリンダーライナを窒化するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記窒化をガス窒化、プラズマ窒化もしくは圧力窒化により行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−521489(P2012−521489A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501189(P2012−501189)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001887
【国際公開番号】WO2010/108685
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509340078)フェデラル−モーグル ブルシェイド ゲーエムベーハー (16)
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL BURSCHEID GMBH
【Fターム(参考)】