説明

窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法及びこれを用いた排気装置

【課題】本発明は、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を正確に予測する方法、及び、これを用いて、窒素酸化物低減触媒の再生時期及び噴射される還元剤の量を調節する排気装置に関するものである。
【解決手段】本発明は、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップ、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップ、窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップ、及び、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量、及び窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を用いて、窒素酸化物低減触媒に実際に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップ、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法及びこれを用いた排気装置に係り、より詳細には、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を正確に予測する方法、及びこれを用いて窒素酸化物低減触媒の再生時期及び噴射される還元剤の量を調節する排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンから排気マニホールドを通じて排出される排気ガスは、排気パイプに設けられた触媒コンバータ(Catalytic Converter)に誘導されて清浄化され、マフラを通過して、騒音が減らされた後、テールパイプを通じて大気中に排出される。触媒コンバータは、排気ガスに含まれている汚染物質を清浄化する。また、排気パイプには、排気ガスに含まれている粒状物質(Particulate Matters:PM)を捕集するための排気ガスフィルタが装着される。
【0003】
窒素酸化物低減触媒(Denitrification Catalyst;脱NOx触媒)は、排気ガスに含まれている窒素酸化物(NOx)を清浄化する触媒コンバータの一種である。尿素(Urea)、アンモニア(Ammonia)、一酸化炭素及び炭化水素(Hydrocarbon;HC)等のような還元剤を排気ガスに供給すると、窒素酸化物低減触媒において、排気ガスに含まれている窒素酸化物が還元剤との酸化還元反応により還元される。
【0004】
最近は、このような窒素酸化物低減触媒として、LNT触媒(Lean NOx Trap Catalyst)が用いられている。LNT触媒は、エンジンがリーン(lean:希薄)雰囲気で作動する場合には、排気ガスに含まれている窒素酸化物を吸着し、エンジンがリッチ(rich)雰囲気で作動する場合には、吸着していた窒素酸化物を脱着する。このように、LNT触媒に吸着された窒素酸化物を脱着することを、再生と言う(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来は、エンジンの運転状態に応じて、発生する排気ガスに含まれている窒素酸化物の量を予測し、排気ガスに含まれている窒素酸化物の量からLNT触媒に吸蔵された窒素酸化物の量を予測し、LNT触媒に吸蔵された窒素酸化物の量が、設定された量以上になると、還元剤を噴射したり、または燃焼雰囲気を調節することによってLNT触媒の再生を行った。
【0006】
従来の方法によりLNT触媒を再生するためには、LNT触媒に吸蔵された窒素酸化物の量を正確に予測しなければならない。また、LNT触媒に吸蔵された窒素酸化物の量を正確に予測するためには、排気ガスに含まれている窒素酸化物の量を正確に予測しなければならない。
【0007】
排気ガスに含まれている窒素酸化物の量を正確に予測する方法は、特許文献2及び特許文献3に開示されており、再生した後にLNT触媒に残る窒素酸化物及び二酸化窒素の量を正確に予測する方法は、特許文献4に開示されている。ここでは、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を正確に予測する方法について述べる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−209898号公報
【特許文献2】韓国特許出願10−2010−0115239
【特許文献3】韓国特許出願10−2010−0115238
【特許文献4】韓国特許出願10−2010−0121836
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたのものであって、本発明の目的は、窒素酸化物低減触媒の劣化度と窒素酸化物低減触媒の温度を考慮して、窒素酸化物低減触媒に実際に貯蔵される窒素酸化物の量を正確に予測する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、予測された窒素酸化物の貯蔵量から、窒素酸化物低減触媒の再生時期及び還元剤投入量を正確に予測する排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法は、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップと、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップと、窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップと、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量、及び窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を用いて窒素酸化物低減触媒に実際に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップは、触媒温度に応じた体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力を計算するステップと、体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力と窒素酸化物低減触媒の有効体積を用いて、実際の窒素酸化物貯蔵能力を計算するステップと、実際の窒素酸化物貯蔵能力と実際の窒素酸化物貯蔵量を用いて、相対の窒素酸化物貯蔵レベルを計算するステップと、相対の窒素酸化物貯蔵レベルと窒素酸化物貯蔵触媒の温度から、基本の窒素酸化物貯蔵効率を計算するステップと、基本の窒素酸化物貯蔵効率を補正するステップと、補正された窒素酸化物の貯蔵効率と排気ガス内の窒素酸化物の量を用いて、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップと、を含む。
【0012】
基本の窒素酸化物貯蔵効率は、排気ガスの体積速度に基づいて一次補正され、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて二次補正される。
排気ガスの体積速度に基づく基本の窒素酸化物貯蔵効率の一次補正は、排気ガスの体積速度及び触媒劣化度に基づいて第1補正係数を計算するステップと、基本の窒素酸化物貯蔵効率に第1補正係数をかけるステップと、を含む。
【0013】
触媒劣化度は、熱的老化及び硫黄被毒による老化を含む。
実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づく基本の窒素酸化物貯蔵効率の二次補正は、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて第2補正係数を計算するステップと、一次補正された基本の窒素酸化物貯蔵効率に第2補正係数をかけるステップ、を含む。
【0014】
窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップは、現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度を計算するステップと、現在の窒素酸化物低減触媒の温度が、現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度以下であるか否かを判断するステップと、現在の窒素酸化物低減触媒の温度が、現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度を超える場合は、現在の窒素酸化物貯蔵量から、現在の窒素酸化物低減触媒の温度での最大の窒素酸化物貯蔵量を差引くステップ、を含む。
【0015】
現在の窒素酸化物低減触媒の温度が、現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度以下である場合は、窒素酸化物低減触媒から窒素酸化物が熱的に脱着されない。
【0016】
本発明の他の実施形態による排気装置は、燃焼室内に燃料を噴射する第1インジェクタを有するエンジンで発生した排気ガスが流れる排気パイプと、排気パイプに取り付けられ、還元剤を噴射する第2インジェクタと、第2インジェクタの後端の排気パイプに装着され、第2インジェクタから噴射される還元剤を用いて、排気ガスに含まれている窒素酸化物を低減させる窒素酸化物低減触媒と、エンジンの運転条件に応じて窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する制御部と、を含み、
制御部は、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量、及び窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を計算し、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量から、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量と、窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量と、を引くことによって、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する。
【0017】
制御部は、触媒温度に応じた体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力と窒素酸化物低減触媒の有効体積と、を用いて、窒素酸化物の貯蔵能力を計算し、窒素酸化物の貯蔵能力と実際の窒素酸化物貯蔵量を用いて、相対の窒素酸化物貯蔵レベルを計算し、相対の窒素酸化物貯蔵レベルと窒素酸化物貯蔵触媒の温度から、基本の窒素酸化物貯蔵効率を計算し、基本の窒素酸化物貯蔵効率と排気ガス内の窒素酸化物の量を用いて、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算する。
【0018】
基本の窒素酸化物貯蔵効率は、排気ガスの体積速度及び触媒劣化度に基づいて一次補正される。
基本の窒素酸化物貯蔵効率は、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて二次補正される。
【0019】
触媒劣化度は、熱的老化及び硫黄被毒による老化を含む。
制御部は、現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を計算し、現在の窒素酸化物貯蔵量から、現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を引いて、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算する。
【0020】
現在の窒素酸化物貯蔵量から、現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を引いた値が、正数であれば、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量は、値を設定された時間で割った値である。
【0021】
現在の窒素酸化物貯蔵量から、現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を引いた値が、負数であれば、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量はない。
還元剤が、燃料であり、排気装置が、第2インジェクタと窒素酸化物低減触媒との間の排気パイプ上に装着され、燃料を分解する燃料分解触媒をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を正確に予測することによって、窒素酸化物の浄化効率を向上することができる。
窒素酸化物低減触媒に貯蔵された窒素酸化物の正確な量に応じて窒素酸化物の再生時期及び還元剤の噴射量を調節することによって、燃費を向上することができる。
また、窒素酸化物低減触媒に実際に貯蔵される窒素酸化物の正確な量を予測できることから、窒素酸化物低減触媒の過大設計を抑制することができ、これによって窒素酸化物低減触媒に用いる貴金属の量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法を適用できる排気装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法に用いられる制御部における入出力関係を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法のフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態において、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量の計算を行う方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態において、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量の計算を行う方法のフローチャートである。
【図6】温度に応じて窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付図面に基づき、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法が適用できる排気装置の一例を示す概略図である。
図1に示すように、内燃機関の排気装置は、エンジン10、排気パイプ20、排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation;EGR)装置80、燃料分解触媒32、媒煙フィルタ(Particulate Filter)30、窒素酸化物低減触媒40、及び制御部50を含む。
【0025】
エンジン10は、燃料及び空気が混合された混合気を燃焼させて、化学的エネルギーを機械的エネルギーに変換する。エンジン10は、吸気マニホールド18に連結されて、燃焼室12の内部に空気が流入され、燃焼過程で発生した排気ガスは、排気マニホールド16に集められた後、エンジン外部に排出される。燃焼室12には第1インジェクタ14が取り付けられていて、燃料を燃焼室12の内部に噴射する。
【0026】
ここでは、ディゼルエンジンを例示したが、希薄燃焼(lean burn)ガソリンエンジンを用いてもよい。ガソリンエンジンを用いる場合、吸気マニホールド18を通じて混合気が燃焼室12の内部に流入され、燃焼室12の上部には、点火するための点火プラグ(図示せず)が装着される。
また、多様な圧縮比、好ましくは16.5以下の圧縮比を有するエンジンを用いてもよい。
【0027】
排気パイプ20は、排気マニホールド16に連結されて、排気ガスを車両の外部に排出する。排気パイプ20上には、媒煙フィルタ30及び窒素酸化物低減触媒40が装着されていて、排気ガス内に含まれている炭化水素、一酸化炭素、粒子状物質、及び窒素酸化物などが除去される。
【0028】
排気ガス再循環装置80は、排気パイプ20上に装着され、エンジン10から排出される排気ガスの一部を排気ガス再循環装置80を介してエンジンに再供給する。また、排気ガス再循環装置80は、吸気マニホールド18に連結され、排気ガスの一部を空気に混合して、燃焼温度を制御する。このような燃焼温度の制御は、制御部50の制御によって、吸気マニホールド18に供給される排気ガスの量を調節することによって行われる。
【0029】
排気ガス再循環装置80の後方の排気パイプ20には、第1酸素センサ25が取り付けられていて、排気ガス再循環装置80を通過した排気ガス中の酸素量を検出する。本明細書では、第1酸素センサの測定値をエンジン出口の空燃比(lambda)と称する。
【0030】
第2インジェクタ90は、排気ガス再循環装置80の後方の排気パイプ20に取り付けられ、制御部50に電気的に連結されて、制御部50の制御によって排気パイプ20内に燃料の追加噴射を行う。
【0031】
媒煙フィルタ30は、第2インジェクタ90の後方排気パイプ20に装着されている。媒煙フィルタ30の前端部には、燃料分解触媒(Fuel Cracking Catalyst)が備えられている。この場合、燃料分解触媒32は、第2インジェクタ90と窒素酸化物低減触媒40との間に配置される。ここでは、媒煙フィルタ30とは別に燃料分解触媒32が備えられていることを示したが、燃料分解触媒32を媒煙フィルタ30の前端部にコーティングすることもできる。
【0032】
燃料分解触媒32は、触媒反応によって、燃料内に含まれている炭素化合物の炭素鎖を切って分解させる。つまり、燃料分解触媒32は、熱分解(Thermal Cracking)機能により、炭化水素を構成する連結を切って分解する。これにより、追加噴射された燃料の有効反応表面積が増加し、高反応性の酸素が含まれている炭化水素(Oxygenated HC)、CO、H等を生成する。
【0033】
サーマルクラッキングは、下記のような手順で進められる。
1634→2n−C17*→n−C13*→n−C*→C*→C
1634→8C+H
ここで、*はラジカルを意味する。
ここで、炭化水素は、排気ガス及び燃料に含まれている炭素と水素とから構成された全ての化合物を称する。
【0034】
燃料分解触媒32の後方には、媒煙フィルタ30の一種である媒煙濾過装置(Particulate Filter)30が取り付けられていて、排気パイプ20を通じて排出される排気ガスに含まれている粒子状物質(Particulate Matters:PM)を捕集する。ここで、媒煙フィルタ30は、媒煙濾過装置30と同様の意味である。しかし、媒煙濾過装置30の代わりに、他の種類の媒煙フィルタ30(例えば、触媒媒煙フィルタ(catalyzed particulate filter:CPF))を用いてもよい。
【0035】
また、媒煙濾過装置30には、酸化触媒(Oxidation Catalyst)がコーティングされてもよい。このような酸化触媒は、排気ガスに含まれている炭化水素と一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、排気ガスに含まれている一酸化窒素を二酸化窒素に酸化する。酸化触媒は、媒煙フィルタ30の所定部分に多くコーティングされていてもよく、媒煙フィルタ30の全領域に均等にコーティングされていてもよい。
【0036】
燃料分解触媒32の前方排気パイプには第1温度センサ35が取り付けられ、燃料分解触媒32の入口部温度を測定し、燃料分解触媒32の後方には第2温度センサ36が取り付けられ、燃料分解触媒32の出口部温度又は媒煙フィルタ30の入口部温度を測定する。
【0037】
一方、排気パイプ20には、差圧センサ55が取り付けられている。差圧センサ55は、媒煙フィルタ30の前端部と後端部との圧力差を測定し、これに対する信号を制御部50に伝達する。制御部50は、差圧センサ55で測定された圧力差が第1設定圧力以上である場合に媒煙フィルタ30を再生するように制御することができる。
この場合、第1インジェクタ14で燃料を後噴射することによって、媒煙フィルタ30の内部に捕集された粒子状物質を燃焼させることができる。これとは異なり、第2インジェクタ90で燃料を追加噴射することによって、媒煙フィルタ30を再生させることもできる。
【0038】
窒素酸化物低減触媒40は、媒煙フィルタ30の後方の排気パイプ20上に装着され、排気ガスに含まれている窒素酸化物を吸着し、燃料の追加噴射によって吸着した窒素酸化物を脱着して還元反応を進めることにより、排気ガスに含まれている窒素酸化物を除去する。
【0039】
前記窒素酸化物低減触媒40の前方及び後方には、第3温度センサ60及び第4温度センサ65がそれぞれ取り付けられていて、窒素酸化物低減触媒40の入口部の温度及び出口部の温度を測定する。図1には、窒素酸化物低減触媒40が2つの部分に分かれていることを示してある。
これは、担体にコーティングされた金属の比率を変えることによって特定の機能を遂行させるためのものである。例えば、エンジン10に近い第1部分は、パラジウム(Pd)の比率を高めることによって耐熱機能を強化し、テールパイプに近い第2部分は、白金(Pt)の比率を高めることによって炭化水素のスリップを防止するようにすることができる。これとは異なり、担体にコーティングされた金属比率が全領域において均一である窒素酸化物低減触媒40を用いても良い。
【0040】
また、窒素酸化物低減触媒40の前方の排気パイプ20には第2酸素センサ62が取り付けられており、窒素酸化物低減触媒40の後方の排気パイプ20には第3酸素センサ70が取り付けられている。第2酸素センサ62は、窒素酸化物低減触媒40に流入する排気ガスに含まれている酸素量を測定し、これに対応する信号を制御部50に出力する。これにより、制御部50が排気ガスのリーン/リーチ制御(lean/rich control)を行うのを助ける。
【0041】
第3酸素センサ70は、本発明の実施形態による内燃機関の排気装置が排気ガスに含まれている有害物質を正常に除去しているか否かをモニターするためのものである。ここでは、排気パイプ20に第2酸素センサ62を追加装着したことを示した。
しかし、排気パイプ20に第2酸素センサ62を取り付けずに、第1酸素センサ25及び第3酸素センサ70の測定値、燃料消耗量、及びエンジンの可動ヒストリー(history)の少なくとも一つに基づいて、窒素酸化物低減触媒40に流入される排気ガスに含まれている酸素量を推定することもできる。本明細書では、第2酸素センサ62の測定値を触媒の入口部の空燃比(lambda)と称する。
【0042】
制御部50は、各センサから検出された信号に基づいてエンジンの運転条件を判断し、エンジンの運転条件に基づいて燃料の追加噴射量及び追加噴射時期を制御することによって、窒素酸化物低減触媒40に吸着した窒素酸化物を脱着する。一例として、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40に吸着した窒素酸化物の量が設定値以上である場合、燃料を追加噴射するように制御する。
【0043】
また、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40で窒素酸化物の還元反応が活性化するよう、排気ガス内で窒素酸化物に対する炭化水素の比率が設定比率以上になるように制御する。設定されている比率は、5である。
一方、制御部50は、エンジンの運転条件に基づいて窒素酸化物低減触媒40に吸着した窒素酸化物の量、窒素酸化物低減触媒の出口部からの窒素酸化物のスリップ量、及び窒素酸化物に対する炭化水素の比率を計算する。このような計算は、多くの実験によって求められたマップに基づいて行われる。
【0044】
また、制御部50は、エンジンの運転条件、エンジンの状態又は窒素酸化物低減触媒の状態に応じて第2インジェクタ90の燃料噴射パターンを変化させる。ここで、エンジンの状態は、エンジンの作動時間を考慮して推定し、窒素酸化物低減触媒の状態は、窒素酸化物低減触媒の劣化を考慮して推定される。
【0045】
さらに、制御部50は、媒煙フィルタ30の再生を行う。
また、制御部50は、第2インジェクタ90での追加の噴射を制御する代わりに、第1インジェクタ14での後噴射を制御することによって、窒素酸化物低減触媒40で窒素酸化物の還元反応を活性化することができる。
この場合、後噴射された燃料は、燃料分解触媒32で高反応性の還元剤に変化し、窒素酸化物低減触媒40で窒素酸化物の還元反応を促進させる。したがって、本明細書及び特許請求の範囲における追加噴射は、後噴射を含むものと解釈すべきである。
ここでは、窒素酸化物低減触媒40としてLNT触媒を用いることを例示した。
【0046】
以下、窒素酸化物低減触媒40の一例について、詳しく説明する。
窒素酸化物低減触媒40は、担体にコーティングされた第1、2触媒層を含む。第1触媒層は排気ガスに近接して配置され、第2触媒層は担体に近接して配置される。
第1触媒層は、排気ガスに含まれている窒素酸化物を酸化し、酸化された窒素酸化物の一部を、未燃焼の燃料又は排気ガスに含まれている炭化水素との酸化還元反応によって還元する。また、酸化された窒素酸化物の他の一部は第2触媒層に拡散される。
【0047】
第2触媒層は、第1触媒層から拡散してきた窒素酸化物を吸着し、追加噴射された燃料によって、吸着した窒素酸化物を脱着して、第1触媒層で還元されるようにする。第2触媒層に拡散されてきた窒素酸化物は、硝酸塩の形で第2触媒層に吸着される。また、第2触媒層で脱着された窒素酸化物は、二酸化窒素の形で第1触媒層へ移動し、二酸化窒素の一部は還元され、他の一部はスリップし、残りは第1触媒層に吸着される。
第2触媒層は吸着性物質を含む。このような吸着性物質には弱塩基性酸化物が用いられる。弱塩基性酸化物には、具体的にはアルカリ又はアルカリ土類金属を含む酸化物が用いられ、より具体的にはバリウムを含む酸化物が用いられる。
【0048】
以下、窒素酸化物低減触媒40の作動原理について、詳しく説明する。
第2インジェクタ90で燃料が追加噴射されていない場合、排気ガスに含まれている窒素酸化物は第1触媒層で酸化される。酸化された窒素酸化物の一部は、排気ガスに含まれている炭化水素と酸化還元反応を行い、窒素ガスに還元される。この過程で、排気ガスに含まれている炭化水素は二酸化炭素に酸化される。
【0049】
また、第1触媒層で酸化された窒素酸化物の他の一部と、排気ガスに含まれている窒素酸化物は、第2触媒層に拡散して吸着される。
第2インジェクタ90で燃料が追加噴射された場合、追加噴射された燃料は燃料分解触媒32を通過する。この過程で、燃料は低分子の炭化水素に変換される。変換された低分子の炭化水素の一部は酸素と結合した炭化水素に変換されて、窒素酸化物低減触媒40を通過する。
【0050】
このとき、第2触媒層では、吸着されていた窒素酸化物が燃料の炭化水素との置換反応によって脱着され、第2触媒層から脱離する。また、第1触媒層では、脱着された窒素酸化物と、炭化水素及び/又は酸素と結合した炭化水素との間の酸化還元反応によって、窒素酸化物は窒素ガスに還元され、炭化水素/酸素と結合した酸化型炭化水素は二酸化炭素に酸化される。
よって、排気ガスに含まれている窒素酸化物と炭化水素が除去される。
【0051】
図2は、本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法に用いられる制御部における入出力関係を示すブロック図である。
図2に示すように、NOx検出部100、NO検出部110、硫黄被毒量検出部120、排気ガスの流量検出部130、第3温度センサ60、第4温度センサ65、エンジンの回転数センサ140、燃料噴射量検出部150、吸気流量検出部160、及び還元剤噴射量検出部170は、制御部50に電気的に連結されており、検出した値を制御部50に伝達する。
【0052】
NOx検出部100は、窒素酸化物低減触媒40の入口部における排気ガス中のNOxの量を検出する。通常、制御部50は、混合気の燃焼状態、排気ガスの温度、エンジン出口の空燃比、及び窒素酸化物低減触媒の入口部における空燃比を用いて、排気ガスに含まれている窒素酸化物の量を予測する。または、窒素酸化物の量を測定できるセンサを排気パイプ20に取り付けることもできる。
【0053】
硫黄被毒量検出部120は、窒素酸化物低減触媒40を被毒している硫黄の質量を検出する。通常、エンジンの運転時間及び噴射された総燃料量に対応する硫黄被毒量はマップに保存されており、制御部50は、エンジンの運転時間及び噴射された総燃料量から、マップを用いて、窒素酸化物低減触媒40を被毒している硫黄の質量を予測する。
【0054】
排気ガスの流量検出部130は、排気パイプ20を流れる排気ガスの流量を検出する。
第3温度センサ60は、窒素酸化物低減触媒40の入口部の温度を検出する。
第4温度センサ65は、窒素酸化物低減触媒40の出口部の温度を検出する。
第3温度センサ60及び第4温度センサ65で検出された温度は、設定された計算により、窒素酸化物低減触媒40の温度を決定するのに用いられる。これとは別に、窒素酸化物低減触媒40の入口部の温度又は窒素酸化物低減触媒40の出口部の温度を窒素酸化物低減触媒40の温度を決定するのに用いることもできる。
【0055】
エンジンの回転数センサ140は、クランクシャフト(図示せず)の位相変化からエンジンの回転数を検出する。
燃料噴射量検出部150は、現在噴射している燃料噴射量を検出する。
最近は、燃料は主噴射とパイロット噴射とによって噴射される。したがって、燃料噴射量検出部150は、一周期において噴射される主噴射量とパイロット噴射量を検出する。また、燃料噴射量は、制御部50によってデューティ制御されるため、現在のデューティ値を読み取ることによって検出することができる。
【0056】
吸気流量検出部160は吸気パイプに取り付けられ、1サイクルにおいて吸入される吸入空気の流量を検出する。
還元剤噴射量検出部170は、現在噴射している還元剤の噴射量を検出する。還元剤の噴射量は、制御部50によってデューティ制御されるため、現在のデューティ値を読み取ることによって検出することができる。
【0057】
制御部50は伝達されたデータに基づき、エンジンの運転条件、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、燃料の噴射パターン、燃料の追加噴射量(すなわち、還元剤の噴射量)、追加噴射時期(すなわち、再生時期)、及び追加噴射パターンを決定し、第1インジェクタ14及び第2インジェクタ90を制御するための信号を第1インジェクタ14及び第2インジェクタ90に出力する。
また、制御部50は、差圧センサ55で測定された値に基づいて媒煙フィルタ30の再生を制御する。上述したように、媒煙フィルタ30の再生は、第1インジェクタ14による後噴射又は第2インジェクタ90による追加噴射によって行われる。
【0058】
さらに、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される窒素酸化物の量と、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物の量と、窒素酸化物低減触媒40と、から化学的に脱着される窒素酸化物の量と、を計算し、これらに基づいて窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される窒素酸化物の量を計算する。
一方、本発明の実施形態による内燃機関の排気装置には、図2に記載されたセンサ以外に複数のセンサが取り付けられても良いが、説明の便宜のため省略する。
【0059】
図3は、本発明の実施形態による窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法のフローチャートであり、図4は、本発明の実施形態において、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量の計算を行う方法のフローチャートであり、図5は、本発明の実施形態において、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量の計算を行う方法のフローチャートである。
【0060】
図3に示すように、NOx検出部100は、窒素酸化物低減触媒40の入口部における排気ガスに含まれているNOxの量を検出し(S200)、NO検出部110は、窒素酸化物低減触媒40の入口部における排気ガスに含まれている二酸化窒素の量を検出し、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40の入口部における二酸化窒素/窒素酸化物の比を検出する(S210)。
【0061】
また、硫黄被毒量検出部120は、窒素酸化物低減触媒40を被毒している硫黄の量を検出し(S220)、排気ガスの流量検出部130は、排気ガスの流量を検出し(S230)、第3温度センサ60は、窒素酸化物低減触媒40の入口部の温度を検出し(S240)、第4温度センサ65は、窒素酸化物低減触媒40の出口部の温度を検出し(S250)、エンジンの回転数検出部140は、エンジン速度を検出し(S260)、燃料噴射量検出部150は、エンジン10に噴射される総燃料噴射量を検出する(S270)。
【0062】
吸気流量検出部160は、1サイクルに吸入される空気の流量を検出し、制御部50は、1サイクルに吸入される空気の流量に基づき、各シリンダが1サイクルに吸入する空気の流量を検出する(S280)。
そして、還元剤噴射量検出部170は、排気ガスに噴射される還元剤の量を検出する(S290)。
【0063】
制御部50は、窒素酸化物低減触媒40の入口部の温度及び出口部の温度に基づいて窒素酸化物低減触媒40の温度を計算する(S300)。
また、制御部50は、排気装置の空燃比を計算する(S310)。つまり、第1酸素センサ25はエンジン出口の空燃比を検出し(S320)、第2酸素センサ62は触媒の入口部における空燃比(S330)を検出する。一方、第1酸素センサ25及び第2酸素センサ62の不正確性及び時間遅延の理由により、エンジン出口の空燃比及び触媒の入口部における空燃比は、次式により計算できる。
【0064】
【数1】

【0065】
制御部50は、窒素酸化物低減触媒40の劣化度を計算し(S340)、窒素酸化物低減触媒40を通過する排気ガスの体積速度を計算する(S350)。
窒素酸化物低減触媒40の劣化度は、熱的老化及び硫黄被毒による老化を含む。
窒素酸化物低減触媒40の熱的老化は、高温で早く進行し、エンジンの運転時間及び窒素酸化物低減触媒40の温度による熱的老化が設定されたマップに保存されている。したがって、制御部50は、予め設定されたマップを用いて、窒素酸化物低減触媒40の熱的老化を計算する。一方、上述したように、硫黄被毒による老化は硫黄被毒量検出部120によって検出される。
【0066】
窒素酸化物低減触媒を通過する排気ガスの体積速度(SV)は、次式によって計算される。
【数2】

【0067】
制御部50は、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵された窒素酸化物の量を計算し(S360)、これに基づき、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される量と、窒素酸化物低減触媒40の実際の窒素酸化物貯蔵能力を計算する(S370、S380)。
窒素酸化物低減触媒40に貯蔵された窒素酸化物の量は、前回再生後に窒素酸化物低減触媒40に残存する窒素酸化物の量と、前回再生後に窒素酸化物低減触媒40に貯蔵された窒素酸化物と、の差から計算される。
【0068】
図4は、本発明の実施形態において、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量の計算を行う方法のフローチャートである。窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される量と、窒素酸化物低減触媒40の実際の窒素酸化物貯蔵能力を計算する過程を、図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40の温度に応じた体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力を計算する(S500)。窒素酸化物低減触媒40の温度に応じた体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力は、予め設定されたマップに保存されている。
【0069】
制御部50は、体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力と有効体積を用いて、実際の窒素酸化物貯蔵能力を計算する(S510)。
次に、制御部50は、実際の窒素酸化物貯蔵能力及び実際に貯蔵された窒素酸化物の量を用いて、相対の窒素酸化物貯蔵レベルを計算する(S520)。相対の窒素酸化物貯蔵レベルは、実際に貯蔵された窒素酸化物の量を実際の窒素酸化物貯蔵能力で割ることによって計算できる。
制御部50は、相対の窒素酸化物貯蔵レベルと窒素酸化物低減触媒40の温度から、基本の窒素酸化物貯蔵効率を計算する(S530)。相対の窒素酸化物貯蔵レベルと窒素酸化物低減触媒40の温度に応じた基本の窒素酸化物貯蔵効率は、設定されたマップに保存されている。
【0070】
その後、制御部50は、排気ガスの体積速度及び触媒劣化度に基づいて基本の窒素酸化物貯蔵効率を一次補正する(S540)。つまり、制御部50は、排気ガスの体積速度及び触媒劣化度に基づいて第1補正係数を計算し、基本の窒素酸化物貯蔵効率に第1補正係数を掛けることによって基本の窒素酸化物貯蔵効率を一次補正する。
また、制御部50は、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づき基本の窒素酸化物貯蔵効率を二次補正する(S550)。つまり、制御部50は、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて第2補正係数を計算し、一次補正された基本の窒素酸化物貯蔵効率に第2補正係数を掛けることによって基本の窒素酸化物貯蔵効率を二次補正する。
その後、制御部50は、補正された窒素酸化物の貯蔵効率と排気ガス内の窒素酸化物の量を用いて、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される窒素酸化物の量を計算する(S560)。つまり、補正された窒素酸化物の貯蔵効率を排気ガス内の窒素酸化物の量に掛けることによって窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される窒素酸化物の量を計算する。
【0071】
また、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物量を計算する(S390)。熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップは、図5を参照しながら説明する。
図5に示すように、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40の温度(T)を計算し(S300)、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵された窒素酸化物の量を計算する(S360)。
その後、制御部50は、現在貯蔵されている窒素酸化物の量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする窒素酸化物低減触媒40の温度(T’)を計算する(S610)。
【0072】
図6は、温度に対応して窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の最大の窒素酸化物貯蔵量を示すグラフである。図6に示すように、現在の窒素酸化物低減触媒40に貯蔵された窒素酸化物の量がA1であれば、A1を最大の窒素酸化物貯蔵量とする窒素酸化物低減触媒40の温度(T’)は、T1である。
制御部50は、TがT’を超えるか否かを判断する(S620)。
【0073】
S620ステップで、TがT’以下であれば、熱的に脱着される窒素酸化物の量は0である(S650)。
S620ステップで、TがT’を超えた場合は、制御部50は、現在貯蔵されている窒素酸化物の量から、現在の窒素酸化物低減触媒40の温度で貯蔵可能な最大の窒素酸化物量を引く(S640)。この値を、設定された時間(通常、窒素酸化物が完全に熱的に脱着されるのにかかる時間)で割ることによって、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算する。
【0074】
例えば、現在の窒素酸化物低減触媒40の温度がT2であれば、T2において窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される最大の窒素酸化物量は、A2である。したがって、A1からA2を引いた値であるd1が、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物の量になる。この値を設定された時間で割ると、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物の量が計算できる。
【0075】
次に、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40から化学的に脱着される窒素酸化物の量を計算する(S400)。制御部50は、窒素酸化物低減触媒40から脱着される二酸化窒素の量を計算し(S410)、窒素酸化物低減触媒40でスリップする二酸化窒素の量を計算する(S420)。
S400ステップは、韓国特許出願10−2010−0121836に開示されているため、ここでは、詳細な説明を省略する。なお、韓国特許出願10−2010−0121836の明細書、図面、そして特許請求の範囲に記載された全ての内容は、この明細書に含まれるものと認めるべきである。
【0076】
制御部50は、浄化されずに大気に排出される窒素酸化物の量を計算する(S430)。つまり、大気に排出される窒素酸化物の量は、次式によって計算できる。
大気に排出される窒素酸化物の量 = 排気ガスに含まれている窒素酸化物の量 −(窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量 − 窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量)+ 窒素酸化物低減触媒からスリップされる窒素酸化物の量
【0077】
また、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される窒素酸化物の量から、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物の量と、窒素酸化物低減触媒40から化学的に脱着される窒素酸化物の量を引いた値と、を積分し(S440)、窒素酸化物低減触媒40に実際に貯蔵された窒素酸化物の量を計算する(S450)。
また、制御部50は、窒素酸化物低減触媒40に貯蔵される窒素酸化物の量から、窒素酸化物低減触媒40から熱的に脱着される窒素酸化物の量と、窒素酸化物低減触媒40でスリップする窒素酸化物の量と、を引いた値を積分し(S460)、窒素酸化物低減触媒40の入口部と出口部との窒素酸化物の量の差を計算する(S470)。
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10 エンジン
12 燃焼室
14 第1インジェクタ
16 排気マニホールド
18 吸気マニホールド
20 排気パイプ
25 第1酸素センサ
30 媒煙フィルタ(媒煙濾過装置)
32 燃料分解触媒
35 第1温度センサ
36 第2温度センサ
40 窒素酸化物低減触媒
50 制御部
55 差圧センサ
60 第3温度センサ
62 第2酸素センサ
65 第4温度センサ
70 第3酸素センサ
80 排気ガス再循環装置
90 第2インジェクタ
100 NOx検出部
110 NO検出部
120 硫黄被毒量検出部
130 排気ガスの流量検出部
140 エンジンの回転数センサ
150 燃料噴射量検出部
160 吸気流量検出部
170 還元剤噴射量検出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップと、
前記窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップと、
前記窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップと、
前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量、前記窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量、及び前記窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を用いて、前記窒素酸化物低減触媒に実際に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップと、
を含むことを特徴とする窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項2】
前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップは、
触媒温度に応じた体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力を計算するステップと、
前記体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力と窒素酸化物低減触媒の有効体積を用いて、実際の窒素酸化物貯蔵能力を計算するステップと、
前記実際の窒素酸化物貯蔵能力と実際の窒素酸化物貯蔵量を用いて、相対の窒素酸化物貯蔵レベルを計算するステップと、
前記相対の窒素酸化物貯蔵レベルと窒素酸化物貯蔵触媒の温度から、基本の窒素酸化物貯蔵効率を計算するステップと、
前記基本の窒素酸化物貯蔵効率を補正するステップと、
補正された窒素酸化物の貯蔵効率と排気ガス内の窒素酸化物の量を用いて、前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項3】
前記基本の窒素酸化物貯蔵効率は、排気ガスの体積速度に基づいて一次補正され、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて二次補正されることを特徴とする請求項2に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項4】
排気ガスの体積速度に基づく前記基本の窒素酸化物貯蔵効率の一次補正は、
排気ガスの体積速度及び触媒劣化度に基づいて第1補正係数を計算するステップと、前記基本の窒素酸化物貯蔵効率に前記第1補正係数をかけるステップと、を含むことを特徴とする請求項3に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項5】
前記触媒劣化度は、熱的老化及び硫黄被毒による老化を含むことを特徴とする請求項4に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項6】
前記実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づく前記基本の窒素酸化物貯蔵効率の二次補正は、前記実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて第2補正係数を計算するステップと、一次補正された基本の窒素酸化物貯蔵効率に前記第2補正係数をかけるステップと、を含むことを特徴とする請求項3に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項7】
前記窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算するステップは、
現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度を計算するステップと、
現在の窒素酸化物低減触媒の温度が、前記現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度以下であるか否かを判断するステップと、
現在の窒素酸化物低減触媒の温度が、前記現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度を超える場合は、前記現在の窒素酸化物貯蔵量から、前記現在の窒素酸化物低減触媒の温度での最大の窒素酸化物貯蔵量を引くステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項8】
前記現在の窒素酸化物低減触媒の温度が、前記現在の窒素酸化物貯蔵量を最大の窒素酸化物貯蔵量とする触媒温度以下である場合は、前記窒素酸化物低減触媒から窒素酸化物が熱的に脱着されないことを特徴とする請求項7に記載の窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する方法。
【請求項9】
燃焼室内に燃料を噴射する第1インジェクタを有するエンジンで発生した排気ガスが流れる排気パイプと、
前記排気パイプに取り付けられ、還元剤を噴射する第2インジェクタと、
前記第2インジェクタの出口部の排気パイプに装着され、前記第2インジェクタから噴射される還元剤を用いて、排気ガスに含まれる窒素酸化物を低減させる窒素酸化物低減触媒と、
エンジンの運転条件に応じて前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測する制御部と、
を含み、
前記制御部は、窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量、及び窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量を計算し、前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量から、前記窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量と、前記窒素酸化物低減触媒から化学的に脱着される窒素酸化物の量と、を引くことによって、前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を予測することを特徴とする排気装置。
【請求項10】
前記制御部は、触媒温度に応じた体積当たりの窒素酸化物貯蔵能力と、窒素酸化物低減触媒の有効体積と、を用いて、窒素酸化物の貯蔵能力を計算し、前記窒素酸化物の貯蔵能力と実際の窒素酸化物貯蔵量を用いて、相対の窒素酸化物貯蔵レベルを計算し、前記相対の窒素酸化物貯蔵レベルと窒素酸化物貯蔵触媒の温度から、基本の窒素酸化物貯蔵効率を計算し、前記基本の窒素酸化物貯蔵効率と排気ガス内の窒素酸化物の量を用いて、前記窒素酸化物低減触媒に貯蔵される窒素酸化物の量を計算することを特徴とする請求項9に記載の排気装置。
【請求項11】
前記基本の窒素酸化物貯蔵効率は、排気ガスの体積速度及び触媒劣化度に基づいて一次補正されることを特徴とする請求項10に記載の排気装置。
【請求項12】
前記基本の窒素酸化物貯蔵効率は、実際の二酸化窒素/窒素酸化物の比に基づいて二次補正されることを特徴とする請求項11に記載の排気装置。
【請求項13】
前記触媒劣化度は、熱的老化及び硫黄被毒による老化を含むことを特徴とする請求項11に記載の排気装置。
【請求項14】
前記制御部は、現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を計算し、現在の窒素酸化物貯蔵量から、前記現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を引いて、窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量を計算することを特徴とする請求項9に記載の排気装置。
【請求項15】
前記現在の窒素酸化物貯蔵量から、前記現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を引いた値が、正数であれば、前記窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量は、前記値を設定された時間で割った値であることを特徴とする請求項14に記載の排気装置。
【請求項16】
前記現在の窒素酸化物貯蔵量から、前記現在の窒素酸化物低減触媒の温度で最大貯蔵可能な窒素酸化物の量を引いた値が、負数であれば、前記窒素酸化物低減触媒から熱的に脱着される窒素酸化物の量はないことを特徴とする請求項14に記載の排気装置。
【請求項17】
前記還元剤は、燃料であり、
前記排気装置は、前記第2インジェクタと前記窒素酸化物低減触媒との間の前記排気パイプ上に装着され、燃料を分解する燃料分解触媒をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の排気装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117511(P2012−117511A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96470(P2011−96470)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(506172344)エフエーファウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【氏名又は名称原語表記】FEV GmbH
【住所又は居所原語表記】Neuenhofstrasse 181,D−52078 Aachen, Germany
【Fターム(参考)】