説明

端子取付け構造及び端子取付け方法

【課題】簡易な構造でありながら、取付け当初から十分な電気的導通と接合強度を有し、かつ長期信頼性に優れた基板への端子取付け構造及び端子取付け方法を提供する。
【解決手段】基板1上に形成された電熱線等の導体2に対し、端子3が導通接続される。端子3は、固定部31と、固定部31から延在する弾性部32と、基板1に対して凸となるように弾性部32に設けられ、導体2に電気的に接続された基板接触部33とを備える。固定部31は、両面接着テープ4等の接合手段によって基板1に固着される。また端子3の基板接触部33は、弾性部32の弾性変位による反発力で導体2に接触している状態で、接着剤5によって基板1に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板との電気的接続を図る端子の取付け方法、及び該取付け方法に適用可能な端子取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のリアウインドウのような平面又は曲面に形成された電熱線等の導体に、端子を電気的に接続する方法又は構造としては、種々のものが知られている。例えば特許文献1には、「端子先端部2aと弾性部材6が樹脂材料7に囲まれ、かつ、樹脂材料7が、端子先端部2aの周囲に位置する接着部材8を介してバスバー4に接着されて取り付けられている」と記載されている。
【0003】
また特許文献2には、「ステー部6の先端部に、導電性を有するシリコーンゴムを電気的に接続し、これをステー部6の弾性力により、給電パターン部3に押し付けることによって、電気的に接続されている」と記載されている。
【0004】
さらに特許文献3には、「ばね接点28は、フレーム27の相対する辺からそれぞれ延出されており、図3に良好に示されるように、互いに交差する方向に傾斜している。そして、先端部は弧状に曲げられていて、その凸部分29が、ガラスアンテナ又はフィルムアンテナの導体に設けられた電極87と接触してアンテナとの導通を取るために使用される」と記載されており、さらに「接着時には、取出電極26はソケットハウジング20にも被着面にも、何の影響を及ぼさない(邪魔にならない)ので、接着剤層65が固化して十分な接着強度が発生するまでの不安定な状態の時にソケットハウジング20を被着面から剥がす力や、位置ずれさせるような力が作用することはなく、確実な接着が行える」と記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−18981号公報
【特許文献2】特開2001−230616号公報
【特許文献3】特開2006−294410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、基板上の電熱線等の導体に端子を半田付けする場合が多かったが、半田付けに比べて熟練を要さず、室温に近い温度で確実に導通接続できる技術が望まれている。確実性という点ではネジ止めや基板を挟み込んで圧接する方法があるが、基板に孔を開けるか基板を挟み込む手段が必要となり、いずれも導通接続のための構造が基板の平面性を大きく損なうものであった。
【0007】
一方、異方導電接着剤のように、熱可塑性又は熱硬化性の接着剤に導電性粒子を加え、熱圧着時に被圧着体の間に導電性粒子を介在させて電気的接続を図る手段も公知である。これは一般に200℃以上が要求される半田付けや溶接と比較して工程温度を低くできるが、それでも150℃以上の温度は必要である。
【0008】
さらに、導電性ゴムシートのように、ゴムシート中に導電性の電極を有し、これを被着体の間に挟持することで導通接続を図る手段も公知である。これは室温で加工できるメリットがあるが、ゴムシートに圧縮力を作用させるための手段が必要であり、故に接続部のスペースが半田付け等に比べ大幅に大きくなる問題がある。
【0009】
そこで本発明は、簡易な構造でありながら、取付け当初から十分な電気的導通と接合強度を有し、かつ長期信頼性に優れた基板への端子取付け構造及び端子取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、表面に導体が形成された基板に端子を取付けるための端子取付け構造であって、前記端子は、前記基板上に固着される固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に自由端として設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備え、前記端子の前記固定部が接合手段によって前記基板に固着され、前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記固定部が接着剤によって前記基板に接着されている、端子取付け構造が提供される。
【0011】
また本発明の他の態様によれば、表面に導体が形成された基板に端子を取付けるための端子取付け構造であって、前記端子は、前記基板上に固着される固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備え、前記端子の前記固定部が接合手段によって前記基板に固着され、前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記基板接触部が接着剤によって前記基板に接着されている、端子取付け構造が提供される。
【0012】
本発明のさらなる他の態様によれば、基板の表面に導体を形成するステップと、固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に自由端として設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備える端子を、前記基板上に配置するステップと、前記端子の前記固定部を接合手段によって前記基板に固着するステップと、前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記固定部を接着剤によって前記基板に接着するステップと、を有する端子取付け方法が提供される。
【0013】
本発明のまたさらなる他の態様によれば、基板の表面に導体を形成するステップと、固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備える端子を、前記基板上に配置するステップと、前記端子の前記固定部を接合手段によって前記基板に固着するステップと、前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記基板接触部を接着剤によって前記基板に接着するステップと、を有する端子取付け方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、端子の基板接触部が基板の導体に弾性力により当接している状態で、基板接触部を接着剤により導体に固着させることができるので、簡単な手順で長期にわたり安定した接続状態が得られる。
【0015】
本発明の他の態様によれば、端子の基板接触部が基板の導体に弾性力により当接している状態で、固定部を接着剤により導体に固着させることができるので、簡単な手順で長期にわたり安定した接続状態が得られるとともに、基板接触部を基板の導体に対して摺動させることができ、端子の熱膨張等の寸法変化にも柔軟に順応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に係る端子取付け構造の第1の実施形態を示す斜視図である。自動車のリアウインドウのような基板1上に形成された電熱線等の導体2に対し、端子3が導通接続される。端子3は、2つの固定部31と、2つの固定部の一方から他方に向けて略平行に延在する複数の弾性部32と、基板1に対して凸となるように弾性部32に設けられ、導体2に電気的に接続された基板接触部33とを備える。固定部31は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ4等の接合手段によって基板1に固着される。また端子3の基板接触部33は、弾性部32の弾性変位による反発力で導電体2に接触している状態で、接着剤5によって基板1に接着されている。なお端子3は、図示しない電源ケーブルに接続するためのケーブル接続部34を有する。ケーブル接続部34は、固定部31の一端から略垂直に、基板1から離れる方向に延在している。ケーブル接続部34には、電源ケーブルに取り付けられたコネクタ(図示せず)を装着することができる。必要に応じ、ケーブル接続部34には樹脂等からなるハウジング(図示せず)を取り付けてもよい。電源ケーブルからの電流は端子3のケーブル接続部34から基板接触部33を経由して、基板1の導体2に流れることができる。
【0017】
図2(a)〜(c)は、図1の端子を基板への取付ける方法を説明する図である。なお明瞭化のため、端子3の弾性部32が1つの基板接触部を有するものとして図示している。先ず図2(a)に示すように、固定部31に凸状の基板接触部33を導体2側に向けて配置する。弾性部32は固定部31と平行に延在してもよいし、基板面側に傾斜するように延在してもよい。このとき固定部31に、両面接着テープ4を貼付しておく。或いは両面接着テープ4は、基板側に貼付しておいてもよい。
【0018】
次に図2(b)に示すように、基板接触部33が導体2に当接するように端子3を基板1に取り付ける。端子3の弾性部32は弾性変形し、基板接触部33は弾性部32の反発力により導体2に押し付けられ、確実な導通接続がなされる。ここで、図示するように、両面接着テープとして住友スリーエム株式会社より入手可能なVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープY4920のような3層構造のものを使用することが有利である。このような両面接着テープは2つの粘着層41、41の間の基材42が弾性を有しており、故に弾性の基材42はテープの面方向に作用するせん断力や、端子の熱膨張による寸法変化を吸収する機能を有する。従って接合した端子3の固定部31が、基板の面方向に作用する外力により容易に基板から外れてしまうことが防止される。
【0019】
次に図2(c)に示すように、端子3の基板接触部33を包埋するように液状樹脂5を流し込み、液状樹脂5を硬化させ、基板接触部33を導体2に当接した状態で封止する。なお液状樹脂5としては種々のものが使用可能であるが、化学的に架橋反応が起こり、緻密な3次元網目を形成する樹脂が望ましい。このような樹脂としては、エポキシ系樹脂、光硬化型アクリル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド、シアノアクリレート及び尿素樹脂等の室温硬化型又は熱硬化型樹脂が挙げられる。ここでエポキシ系樹脂のような室温硬化型樹脂を使用した場合は、熱を加えずに常温で作業可能であるので、各要素は熱による影響を受けない。或いは紫外線硬化樹脂を使用してもよい。また他の熱可塑性の樹脂を用いてもよいが、半田付けに必要な200℃よりは低い融点のもの、好ましくは150℃以下の融点のものが使用される。
【0020】
本発明に係る端子取付け構造では、端子3を両面テープ4で基板1に固定して基板接触部33を弾性部32の弾性力により導体2に押圧し、その状態で端子3と基板1の導体2との電気的接続部となる端子3の基板接触部33を液状樹脂を用いた接着剤5で固定するので、端子3と導体2との確実な導通接続が長期間維持される。また、両面テープ4を用いて端子3を基板1に取り付けることにより、直ちに基板接触部に接圧が生じかつその状態が維持されるので、室温硬化型樹脂のように硬化まである程度の時間を要する手段を使用しても、樹脂の硬化を待つことなく次の工程に移行できるという長所が得られる。なお両面接着テープの代わりに治具等を用いて端子を基板に対して保持することもできるが、治具の着脱等の手間が必要となるので、作業が容易な両面接着テープを使用することが好ましい。また両面接着テープの代わりに瞬間接着剤を使用してもよい。
【0021】
両面接着テープ4の厚さは、端子3の形状に合わせて適宜選定される。すなわち、テープ4が厚すぎると端子3の基板接触部33すなわち凸部と基板1上の導体2との間に適度の接触力が発生せず、また薄すぎると当該接触力が高くなり過ぎてテープ4が端子3又は基板1から剥離する虞がある。但し、上述のように凸部と基板の導体とはエポキシ系接着剤等によって堅固に固定されるので、両面接着テープは接着剤が硬化するまでのいわゆる「仮止め」の役割を果たせればよい。一般に両面接着テープは、扱いが容易であるものの長時間にわたって大きな荷重を支持することには不向きであるが、本発明ではこのような理由から、両面接着テープをその特性を生かして有効に利用することができる。
【0022】
また両面接着テープ4のような接合手段として絶縁性のものを使用すると、導体2と電気的に独立した他の導体(図示せず)がある場合に、当該他の導体上に接合手段を重畳して配置しても導体2と当該他の導体とは短絡しないので、高密度な配線箇所への適用が容易になる。また絶縁性の両面接着テープとしては、汎用の安価なものが利用可能である。一方、他の導体との短絡を気にする必要がない場合には、接合手段として導電性のものを使用してもよい。この場合、端子3の固定部31も導体2との導通経路として作用することができ、結果として端子の導通経路を増やすことができる。
【0023】
端子3の基板接触部33を凸状に構成することにより、基板接触部33に高い接触圧が発生するので、摺動によるワイピング効果がなくても、導体2の酸化膜を突き破って電気的接続を図ることができる。逆にワイピング効果が殆どないので、一般にガラス等から作製される基板表面を傷付ける虞も少ない。
【0024】
基板1は必ずしも平面ではないので、図1に示すように、基板接触部33は複数設けられることが好ましい。また基板接触部を複数設けることにより、基板接触部1つ当たりの電流を小さくでき、発熱を抑制することができる。また弾性部32を図1のように櫛状に形成して各弾性部間にスリットのような開口部を設けることにより、基板接触部33が液状樹脂5によって包埋されることを容易にすることができ、基板接触部33をより確実に固定することができる。さらに、各弾性部は基板1の曲率に応じて変位するので、各基板接触部が確実に基板と導通する。なおスリット形状の代わりに又はそれに加えて、基板接触部の周りにパンチング加工等により孔を形成した構成としてもよい。
【0025】
図1に示す端子3は、2つの固定部31の間に弾性部32が形成されたいわゆる両持ち梁の形状を呈しているが、1つの固定部から弾性部が延びるいわゆる片持ち梁の形状とすることも可能である。これは、端子の取付けスペースに制約がある場合や全体を小型化したい場合に適している。また必要に応じて、1つの固定部から2以上の方向に弾性部が延在する構成としてもよい。或いは他の形態として、複数の固定部と複数の弾性部が交互に配置された構成とすることもできる。
【0026】
図3(a)は、第2の実施形態に係る端子103の概略平面図である。端子103の固定部131は枠状に形成され、弾性部132は枠部131の内側に配置される。この場合、固定部131が基板接触部133を囲繞する枠部として作用することになるので、液状樹脂を流し込んだときに固定部の外側に液状樹脂が流出することが防止され、マスキング等の処置が不要となる。
【0027】
また図3(b)及び(c)は、図3(a)の端子の変形例である端子103′を示す。図3(a)の弾性部132が両持ち梁状に構成されているのに対し、端子103′の弾性部132′は片持ち梁状に構成され、その先端に基板接触部133′が形成される。この形態でも、固定部131′の外側への液状樹脂の流出を防止することができる。
【0028】
図4は、第3の実施形態を示す斜視図である。第3の実施形態では、基板201上の導体と端子とがそれぞれ4つの導体202a〜202dと端子203a〜203dとに分割されて電気的に独立しており、端子203a〜203dがそれぞれ別個に導体202a〜202dに導通接続される。なお各導体と各端子との接続については、図1と同様に両面接着テープ204及び液状樹脂205を用いて行うことができるので、詳細な説明は省略する。このように、各導体及び各端子を電気的に独立させることにより、異なる電流や信号を送ることができる。
【0029】
図1又は図4に示す実施形態は、2つの固定部の間に弾性部が設けられ、弾性部に設けられた基板接触部が液状樹脂等によって基板に接着されるものである。しかし、一般に液状樹脂等の接着剤とガラス等の基板とでは熱膨張率に大きな差があり、故に図1又は図4のような構成がかなりの高温条件下に置かれた場合には、接着剤に包埋されている接触部が端子の熱膨張によって基板から離れる虞もある。そこで以下に説明する第4の実施形態では、基板接触部を自由端として形成することにより熱膨張による影響を低減している。
【0030】
図5は、本発明に係る端子取付け構造の第4の実施形態を示す斜視図である。自動車のリアウインドウのような基板301上に形成された電熱線又は銀ペースト等の導体302に対し、端子303が導通接続される。端子303は、固定部331と、固定部331から異なる方向(図示例では互いに反対方向)に延びる複数の弾性部332と、基板302に対して凸となるように弾性部332に設けられ、導体302に電気的に接続された基板接触部333とを備える。固定部331は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ304等の接合手段によって基板301に固着される。また固定部331は、端子303の基板接触部333が弾性部332の弾性変位による反発力で導電体302に接触している状態で、接着剤305によって基板301に接着されている。なお接着剤305によって接着される固定部331の部分は、接合手段によって基板301に固着される固定部331の部分以外の部分とすることができる。
【0031】
端子303は、図示しない電源ケーブルに接続するためのケーブル接続部334を有する。ケーブル接続部334は、固定部331の一端から略垂直に、基板301から離れる方向に延在している。ケーブル接続部334には、電源ケーブルに取り付けられたコネクタ(図示せず)を装着することができる。必要に応じ、ケーブル接続部334には樹脂等からなるハウジング(図示せず)を取り付けてもよい。電源ケーブルからの電流は端子303のケーブル接続部334から基板接触部333を経由して、基板1の導体302に流れることができる。
【0032】
端子303の基板301への取付けについては、液状樹脂を流し込む部位が固定部331であることを除けば、図2(a)〜(c)を用いて説明したものと概ね同様でよいので、詳細な説明は省略する。
【0033】
図5に示す第4の実施形態では、基板接触部333が基板に固定されていない自由端として形成されているので、端子303が外気温の変化等により膨張又は収縮した場合には基板接触部333は導体302上を摺動することができる。従って不都合な応力がガラス等の基板や端子にかかることはなく、常時安定した導通接続を維持することができる。
【0034】
また第4の実施形態では、図5に示すように基板301がいくらか凹面状に形成されている場合には、基板に対する基板接触部の接圧が基板が平板の場合よりも高くなる。従って自動車のリアウインドウの内面のような部分への適用に特に適している。
【0035】
図5に示すように、固定部331にスリット状の開口部335を設けることにより、固定部331が液状樹脂305によって包埋されることを容易にすることができ、固定部331をより確実に固定することができる。なおスリット形状の代わりに又はそれに加えて、パンチング加工等により孔を形成した構成としてもよい。
【0036】
第4の実施形態では、基板接触部333と導体302との間に異物等が挟まったり、基板接触部333が外気に曝されることにより劣化したりして、基板接触部333と導体302との間の良好な導通接続が維持できなくなることを防止するために、弾性を有する樹脂等(図示せず)によって基板接触部を封止することが好ましい。封止用の樹脂としては、例えばシリコン系、エポキシ系、ウレタン系若しくはアクリル系の樹脂又はオレフィン系ホットメルト樹脂が挙げられる。
【0037】
図5の実施形態では、端子303の固定部331のみが樹脂等の接着剤によって基板に固定されるが、接着形態はこれに限られない。例えば図6(a)に示すように、基板に面する端子303の部分すなわち固定部331、弾性部332及び基板接触部333を全て液状樹脂等の接着剤305′で固定することもできる。この実施形態は、熱膨張があまり問題とならない環境での使用に適している。或いは図6(b)に示すように、基板接触部333のみを液状樹脂等の接着剤305″で固定してもよい。
【0038】
図7は、図5に示す端子の変形例を示す。図5に示す端子303では2つの固定部331の間にスリット335が形成されている(固定部がスリットと弾性部との間に位置する)が、図7に示す端子303aでは、1つの固定部331aの両側の2つの部位にスリット335aが形成される。図5の形態では液状樹脂等の接着剤305を配置する操作が1回で済むのに対し、図7の形態では、液状樹脂等の接着剤305aを配置する操作が2回必要となるが、弾性部332aの固定端側を、接着剤305aで強固に固められた部分で支持することになるので、基板接触部333aと図示しない基板との接触状態が両面テープ等の接合手段の劣化による影響を受けないという利点がある。なお図7の端子303aも、自動車のリアウインドウの内面のような部分への適用に特に適している。
【0039】
図8は、本発明に係る端子取付け構造の第5の実施形態を示す斜視図である。第5の実施形態に係る端子403は、第4の実施形態に係る端子303をその弾性部の延びる方向に関して略半分に分割した形状を有し、第4の実施形態と比べ端子取付け部位が比較的狭い場合等に適している。自動車のリアウインドウのような基板401上に形成された電熱線又は銀ペースト等の導体402に対し、端子403が導通接続される。端子403は、固定部431と、固定部431から一方向に延びる弾性部432と、基板402に対して凸となるように弾性部432に設けられ、導体402に電気的に接続された基板接触部433とを備える。固定部431は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ404等の接合手段によって基板401に固着される。また固定部431は、端子403の基板接触部433が弾性部432の弾性変位による反発力で導電体402に接触している状態で、接着剤405によって基板401に接着されている。なお端子403は、図示しない電源ケーブルに接続するためのケーブル接続部434を有する。ケーブル接続部434は、固定部431の一端から略垂直に、基板401から離れる方向に延在している。ケーブル接続部434には、電源ケーブルに取り付けられたコネクタ(図示せず)を装着することができる。必要に応じ、ケーブル接続部434には樹脂等からなるハウジング(図示せず)を取り付けてもよい。電源ケーブルからの電流は端子403のケーブル接続部434から基板接触部433を経由して、基板1の導体402に流れることができる。
【0040】
端子403の基板401への取付けについては、液状樹脂を流し込む部位が固定部431であることを除けば、図2(a)〜(c)を用いて説明したものと概ね同様でよいので、詳細な説明は省略する。
【0041】
図8に示す第5の実施形態では、基板接触部433が基板に固定されていない自由端として形成されているので、端子403が外気温の変化等により膨張又は収縮した場合には基板接触部433は導体402上を摺動することができる。従って不都合な応力がガラス等の基板や端子にかかることはなく、常時安定した導通接続を維持することができる。
【0042】
また第5の実施形態では、図8に示すように基板401がいくらか凹面状に形成されている場合には、基板に対する基板接触部の接圧が基板が平板の場合よりも高くなる。従って自動車のリアウインドウの内面のような部分への適用に特に適している。
【0043】
図8に示すように、固定部431にスリット状の開口部435を設けることにより、固定部431が液状樹脂405によって包埋されることを容易にすることができ、固定部431をより確実に固定することができる。なおスリット形状の代わりに又はそれに加えて、パンチング加工等により孔を形成した構成としてもよい。
【0044】
第5の実施形態では、基板接触部433と導体402との間に異物等が挟まったり、基板接触部433が外気に曝されることにより劣化したりして、基板接触部433と導体402との間の良好な導通接続が維持できなくなることを防止するために、端子403を基板401に取り付けた後に、弾性を有する樹脂等(図示せず)によって基板接触部を封止することが好ましい。封止用の樹脂としては、例えばシリコン系、エポキシ系、ウレタン系若しくはアクリル系の樹脂又はオレフィン系ホットメルト樹脂が挙げられる。
【0045】
図8の実施形態では、端子403の固定部431のみが樹脂等の接着剤によって基板に固定されるが、接着形態はこれに限られない。例えば図9(a)に示すように、基板に面する端子403の部分すなわち固定部431、弾性部432及び基板接触部433を全て液状樹脂等の接着剤405′で固定することもできる。或いは図9(b)に示すように、基板接触部433のみを液状樹脂等の接着剤405″で固定してもよい。
【0046】
図10は、図8に示す端子の変形例を示す。図8に示す端子403ではスリット435と弾性部432との間に固定部431が位置するが、図10に示す端子403aでは、固定部431aと弾性部432aとの間にスリット435a又は接着剤405aが位置する。図8の形態では液状樹脂等の接着剤405を配置する操作が1回で済むのに対し、図10の形態では、液状樹脂等の接着剤405aを配置する操作が1回で済むのに加え、弾性部432aの固定端側を、接着剤405で強固に固められた部分で支持することになるので、基板接触部433aと図示しない基板との接触状態が両面テープ等の接合手段の劣化による影響を受けないという利点がある。なお図10の端子403aも、自動車のリアウインドウの内面のような部分への適用に特に適している。
【0047】
本発明は、自動車のリアウインドウの曇り止めに使用される電熱線を電源ケーブルに接続するのに非常に有効である。このような電熱線は通常、ガラス上に導電性ペーストを印刷することにより形成され、電熱線と端子とを接続するために手作業による半田付けが従来は行われていた。しかし本発明によれば、手間のかかる半田付けを極めて簡単な接着工程に置換することができ、しかも確実な導通接続状態が得られる。
【0048】
また本発明は、プリント配線板にコネクタを実装する場合にも適用可能である。本発明を利用すれば、予め半田を塗布した基板上にコネクタを載置し、連続炉で半田を溶融して接合するいわゆるリフロー工程を行う必要がなくなり、コネクタ等を高温に曝すことなく実装が行える。
【0049】
さらに本発明によれば、アルミニウムや導電性セラミックスのような半田による接合が困難な導体に対しても、容易かつ確実に端子を導体に導通接続することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明に係る端子取付け構造の実施例について説明する。図11に示すような形状の厚さ0.5mm真鍮板を作製し、破線で囲まれた部分を図12に示すような金型61及び62を用いて、約3000Nの荷重をかけて真鍮板に凸形状を形成した。これにより、図13に示すような固定部531、弾性部532及び凸状の基板接触部533を有する端子503が得られる。次に真鍮板の両端を厚さ0.4mmの接合テープ(住友スリーエム株式会社より入手可能なVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープY4920)504を用いて銅板501に接着し、凸形状部分533を銅板501に圧接させた。この状態で、2液硬化型エポキシ樹脂(住友スリーエム株式会社より入手可能なスコッチウェルド(登録商標)EPX接着剤DP460)505で基板接触部533を封止し、室温で硬化させた。硬化後に、端子503を6つの端子503a〜503fに分割すべくその両端を切断し、銅板と各端子との接続抵抗を4端子法で測定した。以下の表1にその結果を示す。
【0051】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る端子取付け構造を示す概略斜視図である。
【図2】(a)端子の取付け方法を説明する概略図であって、端子を基板の上方に用意した状態を示す図であり、(b)両面接着テープを用いて端子を基板に接合した状態を示す図であり、(c)液状樹脂を用いて端子の基板接触部を導体に当接した状態で固定した状態を示す図である。
【図3】(a)本発明の第2の実施形態に係る端子を示す概略平面図であり、(b)(a)の端子の変形例を示す図であり、(c)(b)のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る端子取付け構造を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る端子取付け構造を示す概略斜視図である。
【図6】(a)図5に類似する図であって液状樹脂を端子全体にわたって配置した例を示す図であり、(b)液状樹脂を基板接続部に配置した例を示す図である。
【図7】図5の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る端子取付け構造を示す概略斜視図である。
【図9】(a)図8に類似する図であって液状樹脂を端子全体にわたって配置した例を示す図であり、(b)液状樹脂を基板接続部に配置した例を示す図である。
【図10】図8の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施例に係る端子の、基板接触部を形成する前の状態を示す図である。
【図12】本発明の実施例に係る端子を成形加工するための金型の概略形状を示す図である。
【図13】本発明の実施例に係る端子を銅板に取付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基板
2 導体
3 端子
31 固定部
32 弾性部
33 基板接触部
4 両面接着テープ
5 液状樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導体が形成された基板に端子を取付けるための端子取付け構造であって、
前記端子は、前記基板上に固着される固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に自由端として設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備え、
前記端子の前記固定部が接合手段によって前記基板に固着され、
前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記固定部が接着剤によって前記基板に接着されている、
端子取付け構造。
【請求項2】
前記基板接触部が凸状に曲げられた凸部を備え、該凸部の頂点部分が前記基材の前記導体との電気的な接点部となっている、請求項1に記載の端子取付け構造。
【請求項3】
前記固定部及び前記弾性部の少なくとも一方に1つ以上の貫通孔が設けられている、請求項1又は2に記載の端子取付け構造。
【請求項4】
表面に導体が形成された基板に端子を取付けるための端子取付け構造であって、
前記端子は、前記基板上に固着される固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備え、
前記端子の前記固定部が接合手段によって前記基板に固着され、
前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記基板接触部が接着剤によって前記基板に接着されている、
端子取付け構造。
【請求項5】
前記基板接触部が凸状に曲げられた凸部を備え、該凸部の頂点部分が前記基材の前記導体との電気的な接点部となっている、請求項4に記載の端子取付け構造。
【請求項6】
前記基板接触部及び前記弾性部の少なくとも一方に1つ以上の貫通孔が設けられている、請求項4又は5に記載の端子取付け構造。
【請求項7】
前記固定部に連絡して枠部が設けられており、前記弾性部が前記固定部と前記枠部とによって画定される領域内に延在し、前記枠部と前記固定部との基板面側に両面テープが貼着されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の端子取付け構造。
【請求項8】
前記固定部と前記枠部とによって画定される領域内に、前記枠部から延在している弾性部をさらに有する、請求項7に記載の端子取付け構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の端子取付け構造を備えた、自動車用ウインドウ。
【請求項10】
基板の表面に導体を形成するステップと、
固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に自由端として設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備える端子を、前記基板上に配置するステップと、
前記端子の前記固定部を接合手段によって前記基板に固着するステップと、
前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記固定部を接着剤によって前記基板に接着するステップと、
を有する端子取付け方法。
【請求項11】
基板の表面に導体を形成するステップと、
固定部と、該固定部から延在する弾性部と、該固定部から離れた該弾性部の部位に設けられ、前記基板の前記導体に電気的に接続された基板接触部とを備える端子を、前記基板上に配置するステップと、
前記端子の前記固定部を接合手段によって前記基板に固着するステップと、
前記端子の前記基板接触部が前記弾性部の弾性変位による反発力で前記導体に接触している状態で、前記端子の前記基板接触部を接着剤によって前記基板に接着するステップと、
を有する端子取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−105036(P2009−105036A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236868(P2008−236868)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】