説明

管・充填物ユニット、内部熱交換型蒸留塔およびその製造方法

【課題】内部熱交換型蒸留塔の蒸留部に好適に用いることが可能な管・充填物ユニット、それを用いた、蒸留部を抜き出して洗浄することが可能な内部熱交換型蒸留塔、その製造方法を提供する。
【解決手段】管壁の内側と外側で熱交換を行わせる管1の内側に、管1の内周面に当接するように内側規則充填物層2を配設するとともに、管の外側に、管を包囲し、管の外周面に密着するように外側規則充填物層3を配設する。
管の外周面に、外周面と外側規則充填物層の密着性を向上させるための密着性促進処理を施す。
本願発明の管・充填物ユニットを、内部熱交換型蒸留塔の蒸留部に用い、管・充填物ユニットを構成する管の内側を内部熱交換型蒸留塔の管内とし、管の外側を内部熱交換型蒸留塔の管外とするとともに、管・充填物ユニットを構成する内側規則充填物層を管内の規則充填物層とし、外側規則充填物層を管外の規則充填物層とする構造を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、管と規則充填物を組み合わせてなる構造体である管・充填物ユニット、該管・充填物ユニットを用いて製造した、例えば、単管または複数の管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において単管または各管の管内と管外を隔離し、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、高圧側から、低圧側に熱移動させることにより両者の間で熱交換を行わせるようにした充填塔式の内部熱交換型蒸留塔、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー性に優れた蒸留塔として、低圧塔と高圧塔とを備え、両者の間で熱交換を行うように構成され、他との熱の授受を必要としない内部熱交換型の蒸留塔が知られている。
【0003】
そして、このような内部熱交換型の蒸留塔に関し、規則充填物が充填された管内側の高圧側から、同じく規則充填物が充填された管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、この内部熱交換型蒸留塔は、図9に示すように、本体胴51と、本体胴51内に挿入された複数の管75を上側管板53aおよび下側管板53bによって本体胴51と連結させることにより形成されている。そして、各管75の管内54と管外55は互いに隔離された構造を有しており、管内54が高圧側の濃縮部となり、管外55が低圧側の回収部となるように構成されている。
【0005】
また、本体胴51の上部には、管外(回収部)55に液を供給するための回収部液入口56、管外(回収部)55からの蒸気を抜き出す回収部蒸気出口57が配設されており、上側管板53aより上側の、管内(濃縮部)54と連通する端室64aには、管内(濃縮部)54に液を供給するための濃縮部液入口58が配設され、また、管内(濃縮部)54からの蒸気を抜き出す濃縮部蒸気出口59が配設されている。
【0006】
一方、本体胴51の下部には、管外(回収部)55に蒸気を供給するための回収部蒸気入口60、管外(回収部)55からの液を抜き出す回収部液出口61が配設されており、下側管板53bより下側の、管内(濃縮部)54と連通する端室64bには、管内(濃縮部)54に蒸気を供給するための濃縮部蒸気入口62が配設され、また、管内(濃縮部)54からの液を抜き出す濃縮部液出口63が配設されている。また、管内(濃縮部)54および管外(回収部)55には充填物(規則充填物)54a,55aが充填されている。
【0007】
また、この内部熱交換型蒸留塔においては、図10に示すように、管75の外周面を包み込むように充填物層(規則充填物)55aが配設され、かつ、管75の外周面に配設された充填物層55aが金属薄板からなる仕切管65により被覆された構造を有する複数の単一管ユニット80を、所定のピッチで本体胴51の内部に配設することにより、本体胴51の内部において各管75の管内54と管外55が隔離されており、各管75の周囲に充填物層55aが配設されている。
そして、この特許文献1の内部熱交換型蒸留塔によれば、高い省エネルギー性と、優れた蒸留性能を同時に実現することが可能になる。
【0008】
ところで、上述のように構成された内部熱交換型蒸留塔においては、連続的な運転により管内や管外などの蒸留部の洗浄が必要になる場合がある。その場合、管75や、管内54および管外55に配設された規則充填物54a,55aなどからなる蒸留部を本体胴から抜き出して、洗浄を行うことが望ましいが、蒸留部を本体胴から抜き出すことは必ずしも容易ではない。そのため、装置を分解せずに洗浄を行う、化学洗浄などの方法に頼ることになるが、その場合、必ずしも十分な洗浄を行うことができない場合であっても、充填物の交換などを行うことができず、十分な性能を回復することができないという問題点がある。
【0009】
ところで、内部熱交換蒸留塔においては、原料液は回収部側の最上部に供給されその液は回収部の最下部まで流下する一方、濃縮部は回収部から汚れを伴わない蒸気で供給されることから、濃縮部側である管内54側よりも、回収部側である管外55において汚れの程度が強くなりやすいのが実情である。
【0010】
そこで、汚れの程度が強くなりやすい回収部側である管外を、洗浄が比較的容易な濡れ壁構造とすることが提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、内部熱交換型蒸留塔においては、蒸留部に充填物を使用することに利点がある。例えば、濡れ壁や棚段に比べ、充填物は単位高さあたりの理論段数が大きく、充填塔では、濡れ壁塔や棚段塔に比べて、塔高を低く設計することが可能で、設備スペースの低減や、コストの削減を図ることができる。
【0011】
そこで、充填塔式の内部熱交換型蒸留塔をより有意義なものにするためには、蒸留部を抜き出し可能にして、蒸留部が汚染した場合にも、性能を確実に回復させることができるようにすることが必要になる。
しかしながら、上述のように、現状では、蒸留部、特に、回収部の充填物を抜き出すことが容易ではないのが実情である。
【特許文献1】特開2004−016929号公報
【特許文献2】特開2004−037017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するものであり、管と、その内側と外側に配設された内側規則充填物層および外側規則充填物層を備え、内部熱交換型蒸留塔の蒸留部に好適に用いることが可能な管・充填物ユニット、およびそれを用いた、蒸留部を抜き出して洗浄することが可能な内部熱交換型蒸留塔およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本願発明(請求項1)の管・充填物ユニットは、
管壁の内側と外側で熱交換を行わせる管と、
前記管の内側に、前記管の内周面に当接するように配設された内側規則充填物層と、
前記管の外側に、前記管を包囲するように、かつ、前記管の外周面に密着するように配設された外側規則充填物層と
を具備することを特徴としている。
【0014】
また、請求項2の管・充填物ユニットは、請求項1の発明の構成において、前記外側規則充填物層が、周方向に複数に分割された複数の分割筒状規則充填物から形成されおり、前記複数の分割筒状規則充填物が前記管の外周面を覆うように配設されて筒状構造体となり、かつ、前記複数の分割筒状規則充填物からなる前記筒状構造体である前記外側規則充填物層が、前記管の外周面に密着するように、締結部材により締結されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3の管・充填物ユニットは、請求項1または2の発明の構成において、前記管の外周面には、前記外周面と前記外側規則充填物層の密着性を向上させるための密着性促進処理が施されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4の管・充填物ユニットは、請求項3の発明の構成において、
前記密着性促進処理が、
(a)前記管の外周面に線材を巻き付ける処理、
(b)前記管の外周面に凸状を設ける処理、
(c)前記管の外周面に掘り溝を形成する処理
の少なくとも1つであることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5の管・充填物ユニットは、請求項4の発明の構成において、前記線材、前記凸状、および前記掘り溝の少なくとも1つが、前記管の外周面に、螺旋状に、所定の角度で、かつ軸方向に平行な方向についてみた場合に所定の間隔をおいて配設されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項6の管・充填物ユニットは、請求項4または5の発明の構成において、前記密着性促進処理が、前記管の外周面に線材を巻き付ける処理である場合において、前記線材として、径が2〜5mmの線材が用いられていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項7の管・充填物ユニットは、請求項5または6の発明の構成において、前記管の外周面に、前記線材が、螺旋状に巻き付けられている場合において、前記線材を巻き付ける角度が、前記管の軸方向と直交する面に対して7〜15°であることを特徴としている。
【0020】
また、請求項8の管・充填物ユニットは、請求項5〜7のいずれかに記載の発明の構成において、前記管の外周面に、前記線材が、螺旋状に巻き付けられている場合において、前記線材の中心間の間隔が8〜15mmであることを特徴としている。
【0021】
また、請求項9の管・充填物ユニットは、請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成において、
前記外側規則充填物層の外周部には、前記外側規則充填物層の周囲を周回する複数の外側帯状体が、前記管の軸方向に、所定のピッチで配設されており、
前記外側帯状体の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットの使用時に上側となる方の側部には、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込みが形成され、かつ、
前記外側帯状体の前記切り込みが形成された方の側部が、40〜90°の範囲で外側に折り曲げられていること
を特徴としている。
【0022】
また、請求項10の管・充填物ユニットは、請求項1〜9のいずれかに記載の発明の構成において、
前記内側規則充填物層の外周部には、前記内側規則充填物層の周囲を周回する複数の内側帯状体が、前記管の軸方向に、所定のピッチで配設されており、
前記内側帯状体の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットの使用時に上側となる方の側部には、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込みが形成され、かつ、
前記内側帯状体の前記切り込みが形成された方の側部が、40〜90°の範囲で外側に折り曲げられていること
を特徴としている。
【0023】
また、本願発明(請求項11)の内部熱交換型蒸留塔の製造方法は、
単管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において、前記単管の管内と管外が隔離され、管内および管外には規則充填物層が配設されているとともに、管内および管外にはそれぞれ気液の出入口が配設され、
かつ、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、前記単管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔の製造方法であって、
請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、前記本体胴内に挿入することにより、前記管・充填物ユニットを構成する前記管を、前記内部熱交換型蒸留塔の前記単管とし、前記管の内側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内とし、前記管の外側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外とするとともに、前記管・充填物ユニットを構成する前記内側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内の前記規則充填物層とし、前記管・充填物ユニットを構成する前記外側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外の前記規則充填物層とする構造を得る工程を備えていること
を特徴としている。
【0024】
また、本願発明(請求項12)の内部熱交換型蒸留塔の製造方法は、
複数の管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において各管の管内と管外が隔離され、管内および管外のそれぞれが気液の出入口を有し、前記複数の管を構成する各管の内側には規則充填物層が配設され、各管の外側には外周面を包囲するように規則充填物層が配設されているとともに、各管の外周面に配設された前記規則充填物層が、各管ごとに金属薄板からなる仕切管により被覆された構造を有する複数の単一管ユニットが、所定のピッチで本体胴の内部に配設された構造を有し、かつ、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、前記複数管を構成する各管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔の製造方法であって、
前記仕切管に、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを挿入することにより、前記管・充填物ユニットを構成する前記管を、前記内部熱交換型蒸留塔の前記複数の管を構成する前記各管とし、前記管の内側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内とし、前記管の外側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外とするとともに、前記管・充填物ユニットを構成する前記内側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内の前記規則充填物層とし、前記管・充填物ユニットを構成する前記外側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外の前記規則充填物層とする構造を得る工程を備えていること
を特徴としている。
【0025】
また、請求項13の内部熱交換型蒸留塔の製造方法は、請求項12の発明の構成において、本体胴の内部に、本体胴の軸方向に平行に複数の前記仕切管が配設され、かつ、本体胴が垂直に立てられた状態で、前記仕切管のそれぞれに、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、上方から挿入することを特徴としている。
【0026】
また、本願発明(請求項14)の内部熱交換型蒸留塔は、請求項11〜13のいずれかに記載の方法により、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、前記本体胴または仕切管に挿入する工程を経て製造されたものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本願発明(請求項1)の管・充填物ユニットは、管壁の内側と外側で熱交換を行わせる管の内側に、管の内周面に当接するように内側規則充填物層を配設するとともに、管の外側に、管を包囲し、管の外周面に密着するように外側規則充填物層を配設するようにしているので、例えば、単管または複数の管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において単管または各管の管内と管外を隔離し、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより、操作温度を異ならせ、高圧側から、低圧側に熱移動させることにより両者の間で熱交換を行わせるようにした充填塔式の内部熱交換型蒸留塔の蒸留部の構成部材として好適に用いることができる。
【0028】
すなわち、本願発明の管・充填物ユニットにより、上述のような充填塔式の内部熱交換型蒸留塔の、管内および管外を効率よく形成することが可能になるとともに、蒸留部を構成する本願発明の管・充填物ユニットを一体として抜き出すことにより、定期的な抜き出し、洗浄などのメンテナンスを容易に行うことが可能な内部熱交換型蒸留塔を実現することが可能になる。
【0029】
また、請求項2の管・充填物ユニットのように、請求項1の発明の構成において、外側規則充填物層を、複数の分割筒状規則充填物から形成し、複数の分割筒状規則充填物を管の外周面を覆うように配設して筒状構造体とし、かつ、筒状構造体である外側規則充填物層が、管の外周面に密着するように、締結部材により締結するようにした場合、筒状構造体である外側規則充填物層を効率よく形成することが可能になるとともに、外側規則充填物層を管の外周面に確実に密着するように配設することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0030】
また、請求項3の管・充填物ユニットのように、請求項1または2の発明の構成において、管の外周面に、外周面と外側規則充填物層の密着性を向上させるための密着性促進処理を施すことにより、管の外周面と外側規則充填物層の密着性が良好で、内部熱交換型蒸留塔の蒸留部を構成するのにより適した管・充填物ユニットを提供することが可能になる。
【0031】
また、請求項4の管・充填物ユニットのように、請求項3の発明の構成において、密着性促進処理として、(a)前記管の外周面に線材を巻き付ける処理、(b)管の外周面に凸状を設ける処理、(c)前記管の外周面に掘り溝を形成する処理の少なくとも1つの処理を行うことにより、確実に管の外周面と外側規則充填物層の密着性を向上させることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0032】
また、請求項5の管・充填物ユニットのように、請求項4の発明の構成において、線材、凸状、および掘り溝の少なくとも1つを、管の外周面に、螺旋状に、所定の角度で、かつ軸方向に平行な方向についてみた場合に所定の間隔で配設するようにした場合、管の外周面を均一に濡らしながら、液が管の外周面を流れるようにすることが可能になり、内部熱交換型蒸留塔の蒸留部を構成するのにより適した管・充填物ユニットを提供することが可能になる。
【0033】
また、請求項6の管・充填物ユニットのように、請求項4または5の発明の構成において、密着性促進処理として、管の外周面に線材を巻き付ける処理を行う場合に、線材として、径が2〜5mmの線材を用いることにより、管の外周面(前記線材を含む外周面)と外側規則充填物層の密着性を十分に向上させることが可能になるとともに、内部熱交換型蒸留塔の蒸留部として用いた場合に、管外を流下する液により、管の外周面を確実に濡らすことが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0034】
また、請求項7の管・充填物ユニットのように、請求項5または6の発明の構成において、管の外周面に、線材を、螺旋状に巻き付ける場合に、線材を巻き付ける角度を、前記管の軸方向と直交する面に対して7〜15°とすることにより、本願発明の管・充填物ユニットを内部熱交換型蒸留塔の蒸留部として用いた場合に、管外を流下する液により管の外周面を確実に濡らすことが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0035】
また、請求項8の管・充填物ユニットのように、請求項5〜7のいずれかに記載の発明の構成において、管の外周面に、線材を、螺旋状に巻き付ける場合に、線材の中心間の間隔を8〜15mmとすることにより、本願発明の管・充填物ユニットを内部熱交換型蒸留塔の蒸留部として用いた場合に、管外を流下する液により、管の外周面をさらに確実に濡らすことが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0036】
なお、本願発明の管・充填物ユニットにおいては、管に線材を螺旋状に巻き付けるにあたって、その角度および線材の間隔を意図する条件に合わせるためには、所定本数の線材を巻き付けることが必要になるが、線材の必要本数はその条件により定まる。
【0037】
また、請求項9の管・充填物ユニットのように、請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成において、外側規則充填物層の外周部に、外側規則充填物層の周囲を周回する複数の外側帯状体を、管の軸方向に、所定のピッチで配設し、外側帯状体の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットの使用時に上側となる方の側部に、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込みを形成するとともに、外側帯状体の切り込みが形成された方の側部を、40〜90°の範囲で外側に折り曲げるようにした場合、例えば、本願発明の管・充填物ユニットを内部熱交換型蒸留塔の蒸留部として用い、管外を仕切るための仕切管に管・充填物ユニットを収容した場合において、仕切管の内周面を流下する液を外側規則充填物層に導くことが可能になり、仕切管の内周面に沿って流下する液量を減少させるとともに、管外側の規則充填物に液を均一に分散させることが可能になり、蒸留性能の高い内部熱交換型蒸留塔を得ることが可能になる。
【0038】
また、請求項10の管・充填物ユニットのように、請求項1〜9のいずれかに記載の発明の構成において、内側規則充填物層の外周部に、内側規則充填物層の周囲を周回する複数の内側帯状体を、管の軸方向に、所定のピッチで配設し、内側帯状体の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットの使用時に上側となる方の側部に、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込みを形成するとともに、内側帯状体の切り込みが形成された方の側部が、40〜90°の範囲で外側に折り曲げるようにした場合、例えば、本願発明の管・充填物ユニットを内部熱交換型蒸留塔の蒸留部として用い、管の内側を管内として機能させるようにした場合、管の内周面を流下する液を、内側帯状体の折り曲げた部分(折り曲げ部)を介して効率よく内側規則充填物層(管内の規則充填物)に導くことが可能になり、管の内周面に沿って流下する液量を減少させ、流下液の厚みを薄くして、伝熱抵抗を小さくするとともに、規則充填物の表面を流下する液量として、十分な気液接触を行わせるのに必要な液量を確保して、蒸留効率を向上させることが可能になる。
【0039】
また、本願発明(請求項11)の内部熱交換型蒸留塔の製造方法は、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、本体胴内に挿入することにより、管・充填物ユニットを構成する管を、内部熱交換型蒸留塔の単管とし、管の内側を内部熱交換型蒸留塔の管内とし、管の外側を内部熱交換型蒸留塔の管外とするとともに、管・充填物ユニットを構成する内側規則充填物層を内部熱交換型蒸留塔の管内の規則充填物層とし、管・充填物ユニットを構成する外側規則充填物層を内部熱交換型蒸留塔の管外の規則充填物層とする構造を得るようにしているので、単管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能する内部熱交換型蒸留塔を効率よく製造することが可能になるとともに、蒸留部(すなわち本願発明の管・充填物ユニット)を抜き出して容易に洗浄することが可能な内部熱交換型蒸留塔を提供することが可能になる。
また、この方法で製造された、本体胴の内部に単管が配設された構造の内部熱交換型蒸留塔を1つの蒸留ユニットとし、必要に応じて蒸留ユニットの数を増やして行くことにより、処理量の増大に柔軟に対応することが可能になり、有意義である。
【0040】
また、本体胴とは別に、管の内側と外側に配役された規則充填物層を一体とするユニットが製作されることになるため、管の外周面に配設する規則充填物を、本体胴に挿入する迄の間、確認や規則充填物の脱着を行うことが可能になり、内部熱交換型蒸留塔としての諸性能(すなわち、蒸留分離効率および内部熱交換性能)を充分に発揮させることができるように精度の高い確実な製作を行うことが可能になる。これは、請求項11の発明の場合に限らず、以下の請求項12,13の発明の場合も同様である。
【0041】
また、本願発明(請求項12)の内部熱交換型蒸留塔の製造方法は、仕切管に、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを挿入することにより、管・充填物ユニットを構成する管を、内部熱交換型蒸留塔の複数の管を構成する各管とし、管の内側を内部熱交換型蒸留塔の管内とし、管の外側を内部熱交換型蒸留塔の管外とするとともに、管・充填物ユニットを構成する内側規則充填物層を内部熱交換型蒸留塔の管内の規則充填物層とし、管・充填物ユニットを構成する外側規則充填物層を内部熱交換型蒸留塔の管外の規則充填物層とする構造を得るようにしているので、複数の管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において各管の管内と管外が隔離され、かつ、管内および管外のそれぞれが気液の出入口を備え、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、各管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能する、充填塔式の内部熱交換型蒸留塔を効率よく製造することができる。
【0042】
すなわち、複数の管を構成する各管の内側には規則充填物層が配設され、各管の外側には外周面を包囲するように規則充填物層が配設されているとともに、各管の外周面に配設された規則充填物層が、各管ごとに金属薄板からなる仕切管により被覆された構造を有する複数の単一管ユニットが、所定のピッチで本体胴の内部に配設された構造を有し、複数管を構成する各管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔を効率よく製造することが可能になる。
【0043】
なお、上述の特許文献1の構成の場合、管外側規則充填物層を取り外そうとすると金属薄板(仕切管)を取り外す工程が必要になるが、本願発明の管・充填物ユニットを用いることにより、そのような工程を必要とすることなく、本願発明の管・充填物ユニット(蒸留部)を一体として仕切管から抜き出し、あるいは仕切管に挿入するだけで、管外側充填物の脱着を容易に行うことが可能になる。
【0044】
また、上述の特許文献1の構成の場合、単一管ユニットの管外側の下部を流通する気液をシールするために、単一管ユニットを被覆する金属薄板が、下部で本体胴に接続された管板などに接続されることになり、その接続箇所を取り外す作業は極めて困難で、実際上、蒸留部を本体胴から抜き出すことはできないのが実情である。それでも、蒸留部を抜き出そうとすると、金属薄板(仕切管)ごと管外側規則充填物層を取り外さなければならなくなり、金属薄板と本体胴の接続箇所を取り外すための多大の工数が必要になるが、本願発明の場合、管・充填物ユニットのみを仕切管から抜き出して取り出すことができるため、本体胴に固定された仕切管を本体胴から取り外す必要がなく、工数を大幅に削減することができる。
【0045】
また、請求項13の内部熱交換型蒸留塔の製造方法のように、請求項12の発明の構成において、本体胴の内部に、本体胴の軸方向に平行に複数の仕切管が配設され、かつ、本体胴が垂直に立てられた状態で、仕切管のそれぞれに、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、上方から挿入するようにした場合、管・充填物ユニットが相当な長さを有している場合にも、容易かつ確実に管・充填物ユニットを仕切管に挿入することが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0046】
また、本願発明(請求項14)の内部熱交換型蒸留塔は、請求項11〜13のいずれかに記載の方法により製造されたものであり、管外および管内に規則充填物が確実に充填された、蒸留性能が高く、しかも、蒸留部を抜き出して洗浄することが可能な実用性の高い内部熱交換型蒸留塔を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0048】
図1は本願発明の一実施例(実施例1)にかかる管・充填物ユニットの構成を示す図であり、図2は要部構成を示す斜視図、図3は本願発明の外側規則充填物層の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、図4は本願発明の管・充填物ユニットの正面断面図である。
【0049】
この実施例1の管・充填物ユニットAは、管壁の内側と外側で熱交換を行わせる管1と、管1の内側に、管1の内周面に当接するように配設された内側規則充填物層2と、管1の外側に、管1を包囲し、管1の外周面に密着するように配設された外側規則充填物層3を備えている。
なお、管1は高さ方向の途中で、レジューサ(図示せず)により、下側に向かって段階的に径が大きくなるように径の調整が行われている。
【0050】
そして、外側規則充填物層3は、軸方向に平行に2つに分割された半割り筒状規則充填物3a,3bから形成されおり、半割り筒状規則充填物3a,3bが管1の外周面を覆うように配設されて筒状構造体となり、かつ、半割り筒状規則充填物3a,3bからなる筒状構造体である外側規則充填物層3が、管3の外周面に密着するように、締結部材により締結されている。すなわち、この実施例1では外側規則充填物層3の外周に締結部材として針金(図示せず)を巻き付け、締結することにより、外側規則充填物層3が、管1の外周面に密着するように取り付けられ、固定されている。
なお、この実施例1の管・充填物ユニットAにおいては、管1としては外径が 200mmで厚みが6mmの鉄製の管が用いられている。
【0051】
また、外側規則充填物層3の外周部には、外側規則充填物層3の周囲を周回する複数の外側帯状体13(図5参照)が、管1の軸方向に、所定のピッチP1(この実施例1ではP1=60mm)で配設されている。なお、ピッチP1は、管の径や外側規則充填物層3の寸法などの条件、用途などにより適切な値が定められることになる。
【0052】
また、外側帯状体13の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットAの使用時に上側となる方の側部13a(図3参照)には、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込み13bが形成されており、外側帯状体13の切り込み13bが形成された方の側部13aが、40〜90°の範囲で外側に折り曲げられている。
【0053】
具体的には、外側帯状体13は、例えば、厚みが0.1mmの金属製(この実施例1ではステンレス製の弾性の強い薄板(SUS304−CSP−H)を加工することにより形成されており、図5に示すように、幅(全幅)Wが約22mmで、長手方向に沿った両側部のうち、上側の側部13aには、周方向に所定のピッチP2(この実施形態ではP2=7mm)で、複数の切り込み13bが形成されている。なお、外側帯状体13の材質を弾性の強いSUS304−CSP−Hとすることにより40〜90°の範囲で外側に折り曲げた形状を維持しようとする力が働くため、後述する仕切管35に管・充填物ユニットAを収容した場合において、仕切管35の内周面を流下する液をより確実に外側規則充填物層3に導くことが可能になる。
また、切り込み13bの、外側帯状体13の上側の側部から、先端までの長さL1は10mmであり、切り込みの形成されていない部分の幅方向の寸法L2は12mmとされている。
【0054】
また、内側規則充填物層2は円柱状に形成されており、外周部には、内側規則充填物層2の周囲を周回する複数の内側帯状体12が、管1の軸方向に、所定のピッチP3(この実施例1ではP3=60mm)で配設されている(図4参照)。
また、内側帯状体12としては、外側帯状体13と同じ構成、同じ材質のものが用いられており、上側の側部12aには、周方向に所定のピッチP2(この実施例1ではP4=7mm)で、複数の切り込み12bが形成されている。
また、切り込み12bの、内側帯状体12の上側の側部から、先端までの長さL1は10mmであり、切り込みの形成されていない部分の幅方向の寸法L2は12mmとされている。
【0055】
また、管1の外周面には、管1の外周面と外側規則充填物層3の密着性を向上させるための密着性促進処理として、線材(断面形状が円形の鉄製の線材)6を螺旋状に巻き付ける処理が施されている。
【0056】
なお、この実施例1では、線材6として、径が2〜5mmの鉄製の線材を用いている。
また、線材6は、前記管の軸方向と直交する面に対して7〜15°の角度で、かつ、線材6の間隔が管1の軸方向において8〜15mmとなるような態様で、管1の外周に螺旋状に巻き付けられており、スポット溶接により管1の外周面に固定されている。
【0057】
なお、ここでは、外側規則充填物層3の管1の外周面への密着性促進処理として、線材6を螺旋状に巻き付ける処理を施しているが、線材6の巻き付けの態様(角度、線材の間隔など)は、この実施例の構成に限定されるものではなく、種々の態様とすることが可能である。
【0058】
また、外側規則充填物層3の管1の外周面への密着性促進処理は、線材6を巻き付ける方法に限られるものではなく、密着性促進処理として、管1の外周面に凸状を設ける処理を施したり、管1の周囲に掘り溝を形成する処理を施したりすることも可能である。
【0059】
また、この実施例1では、外側規則充填物層3を半割り筒状に2分割した場合を例にとって説明したが、分割の態様はこれに限らず、製造の容易性、管の外周面への密着性などを考慮して、種々の変形を加えることが可能である。また、場合によっては、分割されていない筒状構造の外側規則充填物層を用いることも可能である。
【実施例2】
【0060】
図6は、上記実施例1の管・充填物ユニットを蒸留部の構成材料として用いた本願発明の実施例2にかかる内部熱交換型蒸留塔Hの構成を示す図、図7は図6のx−x線断面図である。
また、図8は、本願発明の管・充填物ユニットなどを配設する前の、内部熱交換型蒸留塔下部本体Haを示す断面図である。
【0061】
この実施例2の内部熱交換型蒸留塔Hは、図6および7に示すように、本体胴21と、本体胴21内に挿入された複数の管1を上側管板23aおよび下側管板23bによって本体胴21と連結することにより形成されている。そして、各管1の管内24と管外25は互いに隔離された構造を有しており、管内24が高圧側の濃縮部として機能し、管外25が低圧側の回収部として機能するように構成されている。
【0062】
また、本体胴21の上部には、管外(回収部)25に液を供給するための回収部液入口26、管外(回収部)25からの蒸気を抜き出す回収部蒸気出口27が配設されており、上側管板23aより上側の、管内(濃縮部)24と連通する端室34aには、管内(濃縮部)24に液を供給するための濃縮部液入口28が配設され、また、管内(濃縮部)24からの蒸気を抜き出す濃縮部蒸気出口29が配設されている。
【0063】
一方、本体胴21の下部には、管外(回収部)25に蒸気を供給するための回収部蒸気入口30、管外(回収部)25からの液を抜き出す回収部液出口31が配設されており、下側管板23bより下側の、管内(濃縮部)24と連通する端室34bには、管内(濃縮部)24に蒸気を供給するための濃縮部蒸気入口32が配設され、また、管内(濃縮部)24からの液を抜き出す濃縮部液出口33が配設されている。また、管内(濃縮部)24および管外(回収部)25には内側および外側規則充填物層2,3が充填されている。
【0064】
そして、この実施形態の内部熱交換型蒸留塔Hにおいては、図6,7に示すように、管1の内部に規則充填物2が配設され、かつ、管1の外周面を包み込むように外側規則充填物層3が配設され、かつ、管1の外周面に配設された充填物層3が金属薄板からなる、軸方向に直交する方向の断面形状が円形である仕切管35により被覆された構造を有する複数の単一管ユニット40を、所定のピッチで本体胴21の内部に配設することにより、本体胴21の内部において各管1の管内24と管外25が隔離され、各管1の内部に内側規則充填物層2が配設され、各管1の周囲に外側規則充填物層3が配設された構造を有している。
【0065】
また、外側規則充填物層3の上端および下端側には、上部仕切板36a,下部仕切板36bが配設されており、上部仕切板36a,下部仕切板36bには、管外(回収部)25への液の供給口であり、かつ、管外(回収部)25からの蒸気出口でもある開口部37aと、管外(回収部)25からの液の排出口であり、かつ、管外(回収部)25への蒸気の供給口でもある開口部37bが配設されている。
【0066】
また、上側管板23aと上部仕切板36aの間には、回収部液入口26から供給される液を分散させて管外(回収部)25に供給するための液分配器38が配設されている。
【0067】
そして、この実施例2の内部熱交換型蒸留塔Hにおいては、管1、内側規則充填物層2が配設された管内24、外側充填物層3が配設された管外25は、図8に示すような内部熱交換型蒸留塔下部本体Haの、仕切管35に、図1に示す上記実施例1の管・充填物ユニットAを挿入することにより構成されている。
【0068】
なお、図6および7に示す内部熱交換型蒸留塔Hにおいては、図1に示すように、外側規則充填物層3の外周に、外側帯状体13が配設されているが、図6,7では図示を省略している。
【0069】
次に、この実施例2の内部熱交換型蒸留塔Hの製造方法を、図6,7および8を参照しつつ説明する。
【0070】
まず、図8に示すような構造を有する、内部熱交換型蒸留塔下部本体Haを作製する。
この内部熱交換型蒸留塔下部本体Haは、蒸留部を構成する管・充填物ユニットAが配設されておらず、かつ、管・充填物ユニットAが配設された後に配設されるべき、濃縮部液入口28および濃縮部蒸気出口29を備えた上側の端室34a、上側管板23a、液分配器38などが配設される前の構造体であり、本体胴21の内部には複数の仕切管35が配設されている。
【0071】
そして、この内部熱交換型蒸留塔下部本体Haは、例えば、本体胴21を横置きした状態で組み立てることが可能であり、精度の高い組立を行うことができる。
【0072】
それから、この内部熱交換型蒸留塔下部本体Haを垂直に立て、複数の仕切管35のそれぞれに、蒸留部となる管・充填物ユニットAを、上方から挿入する。
【0073】
その後、液分配器38、上側管板23a、端室34aなどを取り付けることにより、図6に示すような内部熱交換型蒸留塔Hが作製される。
【0074】
本願発明の内部熱交換型蒸留塔は、上述のように、仕切管35に管・充填物ユニットAを挿入することにより蒸留部を構成するようにしているので、管・充填物ユニットAを構成する管1を、内部熱交換型蒸留塔の複数の管を構成する各管とし、管1の内側を内部熱交換型蒸留塔Hの管内24とし、管1の外側を内部熱交換型蒸留塔Hの管外25とするとともに、管・充填物ユニットAを構成する内側規則充填物層2を管内24の規則充填物層とし、管・充填物ユニットAを構成する外側規則充填物層3を管外25の規則充填物層とする構造を容易かつ確実に実現することができる。
【0075】
したがって、本願発明によれば、複数の管を構成する各管1の内側には内側規則充填物層2が配設され、各管1の外側には外周面を包囲するように外側規則充填物層3が配設されているとともに、各管の外周面に配設された外側規則充填物層3が、各管1ごとに金属薄板からなる仕切管35により被覆された構造を有する複数の単一管ユニット40が、所定のピッチで本体胴21の内部に配設された構造を有し、複数管を構成する各管1の管壁を伝熱面として、管内24側の高圧側から管外25側の低圧側に熱移動させることにより、管内24側の高圧側が濃縮部、管外25側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔Hを効率よく製造することが可能になる。
【0076】
また、この実施例2の内部熱交換型蒸留塔Hの場合、上述のように、蒸留部が、仕切管35に管・充填物ユニットAを挿入することにより形成されているため、管・充填物ユニット(蒸留部)Aを一体として仕切管35から抜き出し、あるいは仕切管35に挿入するだけで、管外側充填物の脱着を容易に行うことができる。
【0077】
すなわち、上述の特許文献1の構成の場合、単一管ユニットの管外側の下部を流通する気液をシールするために、単一管ユニットを被覆する金属薄板が、下部で本体胴に接続された管板などに接続されることになり、その接続箇所を取り外す作業は極めて困難で、実際上、蒸留部を本体胴から抜き出すことはできず、それでも、蒸留部を抜き出そうとすると、金属薄板(仕切管)ごと外側規則充填物層を取り外さなければならなくなり、金属薄板と本体胴の接続箇所を取り外すための多大の工数が必要になるが、この実施例2の内部熱交換型蒸留塔Hの場合、管・充填物ユニットAのみを仕切管35から抜き出して取り出すことができるため、本体胴21に固定された仕切管35を本体胴21から取り外す必要がなく、メンテナンスの際などにおける、蒸留部の取り出し、収納のための工数を大幅に削減することができる。
【0078】
また、この実施例2の内部熱交換型蒸留塔Hにおいては、外側規則充填物層3の管1の外周面への密着性促進処理として、線材6を螺旋状に巻き付ける処理を施すとともに、内側規則充填物層2および外側規則充填物層3に内側帯状体12,外側帯状体13を配設した管・充填物ユニットAを用いているので、管内24および管外25における液の分散性が良好で、内部熱交換効率が高く、省エネルギー性に優れ、かつ、蒸留性能の高い充填塔式の内部熱交換型蒸留塔を得ることが可能になる。
【0079】
また、この実施例2では、複数の単一管ユニット40が、所定のピッチで本体胴21の内部に配設された構造を有する内部熱交換型蒸留塔(すなわち、本体胴の内部に複数の管を備えた内部熱交換型蒸留塔)Hを例にとって説明したが、本体胴の内部に1つの単一管ユニットが配設された構造を有する内部熱交換型蒸留塔すなわち、本体胴の内部に単一の管を備え、管の内部が単一の管内(濃縮部)として機能し、管の外部が単一の管外(回収部)として機能する内部熱交換型蒸留塔とすることも可能である。
【0080】
なお、本体胴の内部に1つの単一管ユニットが配設された構造を有する内部熱交換型蒸留塔の場合、この内部熱交換型蒸留塔を1つの蒸留ユニットとし、必要に応じて蒸留ユニットの数を増やして行くことにより、処理量の増大に柔軟に対応することが可能になる。
【0081】
本願発明はさらにその他の点においても、上記実施例に限定されるものではなく、管・充填物ユニットを構成する各部の具体的な形状、構造、内側および外側規則充填物層の具体的な構成、本願発明の管・充填物ユニットを用いた内部熱交換型蒸留塔の細部の構造などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本願発明の管・充填物ユニットは、管と、管の内側に配設された内側規則充填物層と、管の外側に配設された外側規則充填物層とを一体に備えた構成を有しており、単管または複数の管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において単管または各管の管内と管外を隔離し、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、高圧側から、低圧側に熱移動させることにより両者の間で熱交換を行わせるようにした充填塔式の内部熱交換型蒸留塔の蒸留部の構成部材として好適に用いることができる。
また、本願発明の管・充填物ユニットを用いて形成され、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔においては、蒸留部(すなわち本願発明の管・充填物ユニット)を抜き出して容易に洗浄することが可能で、良好な蒸留性能を確実に維持することができる。また、本願発明の管・充填物ユニットを用いることにより、管内および管外の熱交換性能、全体としての省エネルギー性に優れ、しかも、蒸留性能の良好な内部熱交換型蒸留塔を提供することができる。
したがって、本願発明の管・充填物ユニットおよび内部熱交換型蒸留塔は、種々の分野に広く利用することが可能であり、特に、蒸留部を定期的に洗浄することが必要になるような液を蒸留対象とする内部熱交換型蒸留塔およびその構成部材として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本願発明の一実施例(実施例1)にかかる管・充填物ユニットの構成を示す図である。
【図2】本願発明の実施例1にかかる管・充填物ユニットの要部構成を示す斜視図である。
【図3】本願発明の実施例1にかかる管・充填物ユニットを構成する外側規則充填物層の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図4】本願発明の実施例1にかかる管・充填物ユニットの正面断面図である。
【図5】本願発明の実施例1にかかる管・充填物ユニットにおいて用いられている外側および内側帯状体の構成を示す平面図である。
【図6】本願発明の実施例(実施例2)にかかる内部熱交換型蒸留塔の構成を示す図である。
【図7】図6のX−X線断面図である。
【図8】本願発明の実施例2にかかる内部熱交換型蒸留塔を構成する、内部熱交換型蒸留塔下部本体の構成を示す断面図である。
【図9】従来の内部熱交換型蒸留塔の構成を示す図である。
【図10】従来の内部熱交換型蒸留塔の平面断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 管
2 内側規則充填物層
3 外側規則充填物層
3a,3b 半割り筒状規則充填物
6 線材
12 内側帯状体
12a 側部
12b 切り込み
13 外側帯状体
13a 側部
13b 切り込み
21 本体胴
23a 上側管板
23b 下側管板
24 管内(濃縮部)
25 管外(回収部)
26 回収部液入口
27 回収部蒸気出口
28 濃縮部液入口
29 濃縮部蒸気出口
30 回収部蒸気入口
31 回収部液出口
32 濃縮部蒸気入口
33 濃縮部液出口
34a 端室
34b 端室
35 仕切管
36a 上部仕切板
36b 下部仕切板
37a 開口部
37b 開口部
38 液分配器
40 単一管ユニット
A 管・充填物ユニット
H 内部熱交換型蒸留塔
Ha 内部熱交換型蒸留塔下部本体
L1 切り込みの、帯状体の上側の側部から、先端までの長さ
L2 切り込みの形成されていない部分の幅方向の寸法
P1,P2,P3 ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管壁の内側と外側で熱交換を行わせる管と、
前記管の内側に、前記管の内周面に当接するように配設された内側規則充填物層と、
前記管の外側に、前記管を包囲するように、かつ、前記管の外周面に密着するように配設された外側規則充填物層と
を具備することを特徴とする管・充填物ユニット。
【請求項2】
前記外側規則充填物層が、周方向に複数に分割された複数の分割筒状規則充填物から形成されおり、前記複数の分割筒状規則充填物が前記管の外周面を覆うように配設されて筒状構造体となり、かつ、前記複数の分割筒状規則充填物からなる前記筒状構造体である前記外側規則充填物層が、前記管の外周面に密着するように、締結部材により締結されていることを特徴とする請求項1記載の管・充填物ユニット。
【請求項3】
前記管の外周面には、前記外周面と前記外側規則充填物層の密着性を向上させるための密着性促進処理が施されていることを特徴とする請求項1または2記載の管・充填物ユニット。
【請求項4】
前記密着性促進処理が、
(a)前記管の外周面に線材を巻き付ける処理、
(b)前記管の外周面に凸状を設ける処理、
(c)前記管の外周面に掘り溝を形成する処理
の少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載の管・充填物ユニット。
【請求項5】
前記線材、前記凸状、および前記掘り溝の少なくとも1つが、前記管の外周面に、螺旋状に、所定の角度で、かつ軸方向に平行な方向についてみた場合に所定の間隔をおいて配設されていることを特徴とする請求項4記載の管・充填物ユニット。
【請求項6】
前記密着性促進処理が、前記管の外周面に線材を巻き付ける処理である場合において、前記線材として、径が2〜5mmの線材が用いられていることを特徴とする請求項4または5記載の管・充填物ユニット。
【請求項7】
前記管の外周面に、前記線材が、螺旋状に巻き付けられている場合において、前記線材を巻き付ける角度が、前記管の軸方向と直交する面に対して7〜15°であることを特徴とする請求項5または6記載の管・充填物ユニット。
【請求項8】
前記管の外周面に、前記線材が、螺旋状に巻き付けられている場合において、前記線材の中心間の間隔が8〜15mmであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の管・充填物ユニット。
【請求項9】
前記外側規則充填物層の外周部には、前記外側規則充填物層の周囲を周回する複数の外側帯状体が、前記管の軸方向に、所定のピッチで配設されており、
前記外側帯状体の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットの使用時に上側となる方の側部には、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込みが形成され、かつ、
前記外側帯状体の前記切り込みが形成された方の側部が、40〜90°の範囲で外側に折り曲げられていること
を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の管・充填物ユニット。
【請求項10】
前記内側規則充填物層の外周部には、前記内側規則充填物層の周囲を周回する複数の内側帯状体が、前記管の軸方向に、所定のピッチで配設されており、
前記内側帯状体の長手方向に沿った両側部のうち、管・充填物ユニットの使用時に上側となる方の側部には、周方向に15mm以下のピッチで、複数の切り込みが形成され、かつ、
前記内側帯状体の前記切り込みが形成された方の側部が、40〜90°の範囲で外側に折り曲げられていること
を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の管・充填物ユニット。
【請求項11】
単一の管(以下「単管」という)を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において、前記単管の管内と管外が隔離され、管内および管外には規則充填物層が配設されているとともに、管内および管外にはそれぞれ気液の出入口が配設され、
かつ、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、前記単管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔の製造方法であって、
請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、前記本体胴内に挿入することにより、前記管・充填物ユニットを構成する前記管を、前記内部熱交換型蒸留塔の前記単管とし、前記管の内側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内とし、前記管の外側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外とするとともに、前記管・充填物ユニットを構成する前記内側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内の前記規則充填物層とし、前記管・充填物ユニットを構成する前記外側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外の前記規則充填物層とする構造を得る工程を備えていること
を特徴とする内部熱交換型蒸留塔の製造方法。
【請求項12】
複数の管を両端管板によって本体胴と連結することにより、本体胴の内部において各管の管内と管外が隔離され、管内および管外のそれぞれが気液の出入口を有し、前記複数の管を構成する各管の内側には規則充填物層が配設され、各管の外側には外周面を包囲するように規則充填物層が配設されているとともに、各管の外周面に配設された前記規則充填物層が、各管ごとに金属薄板からなる仕切管により被覆された構造を有する複数の単一管ユニットが、所定のピッチで本体胴の内部に配設された構造を有し、かつ、管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、前記複数管を構成する各管の管壁を伝熱面として、管内側の高圧側から管外側の低圧側に熱移動させることにより、管内側の高圧側が濃縮部、管外側の低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔の製造方法であって、
前記仕切管に、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを挿入することにより、前記管・充填物ユニットを構成する前記管を、前記内部熱交換型蒸留塔の前記複数の管を構成する前記各管とし、前記管の内側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内とし、前記管の外側を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外とするとともに、前記管・充填物ユニットを構成する前記内側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管内の前記規則充填物層とし、前記管・充填物ユニットを構成する前記外側規則充填物層を前記内部熱交換型蒸留塔の前記管外の前記規則充填物層とする構造を得る工程を備えていること
を特徴とする内部熱交換型蒸留塔の製造方法。
【請求項13】
本体胴の内部に、本体胴の軸方向に平行に複数の前記仕切管が配設され、かつ、本体胴が垂直に立てられた状態で、前記仕切管のそれぞれに、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、上方から挿入することを特徴とする請求項12記載の内部熱交換型蒸留塔の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載の方法により、請求項1〜10のいずれかに記載の管・充填物ユニットを、前記本体胴または仕切管に挿入する工程を経て製造されたものであることを特徴とする内部熱交換型蒸留塔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−29996(P2008−29996A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208815(P2006−208815)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【特許番号】特許第3998100号(P3998100)
【特許公報発行日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構業務委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(390036663)木村化工機株式会社 (27)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】