説明

管状体内除錆装置

【課題】大電力供給装置や、真空ポンプを必要とせず、鋼管の内面、リブの下面に発生した錆を除去することを可能にすることにある。
【解決手段】主柱(管状体)a内を軸方向に移動する案内装置2と、案内装置2の先端側に配置された作業装置3とを備えてなり、作業装置3は、アーム5と、アーム5の先端側に配置された砥石部(除錆部)62aとを備え、アーム5は、少なくとも主柱aの内面及び主柱aの内方に突出するリブ(突出部)gの下面g2を含む被処理面に、砥石部62aを当接させるべく移動させることが可能な複数のリンク701…704を備えるべく構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体構造物を構成する管状体内に発生した錆を除去するための管状体内除錆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の管状体内除錆装置として、本出願人は、例えば複数の鋼管を連結することによって構成された管状体の上方開口端から吊り下げることによって保持しながら当該管状体内に挿入し、当該管状体内の錆発生箇所まで移動したところで、その箇所に密封用カップを被せ、その内部を真空状態にした上で、当該密封用カップ内に設けられた電極に高電圧を供給することにより、その電極と錆発生箇所との間で生じる真空アーク放電を用いて当該錆を除去する装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この管状体内除錆装置においては、錆を昇華により除去することができるため、除錆後に残滓が生じにくいという利点があるが、その反面、アーク放電のための大電力供給装置や、真空引きのための真空ポンプを必要とすることから、例えば山奥に構築された送電鉄塔等の鋼管構造物に対しては必ずしも有利なものではなかった。
【0004】
一方、他の管状体内除錆装置としては、図12に示すように、複数の鋼管Pを連結することによって構成された管状体a内に挿入した案内装置Dに、下方に延在するアームAを設けると共に、このアームAの先端部に研削部(除錆部)Bを設け、アームAを揺動させることによって、研削部Bを管状体aの内面に押し付けることにより、当該内面に発生した錆を研削除去するように構成したものも開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このように構成された管状体内除錆装置においては、研削部Bを回転駆動するためのモータに電力を供給する小型の発電機があればよく、アーク放電のための大電力供給装置や、真空引きのための真空ポンプを必要としないことから、山奥の鋼管構造物に対しても十分利用することができるという利点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−11013号公報
【特許文献2】特開2004−286114号公報(段落番号0056、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記アームの先端部に研削部を備えてなる管状体内除錆装置においては、図12に示すように、下方に延在するアームAの先端部に研削部Bを設け、この研削部Bを管状体aの内面に当接させるべく当該アームAを揺動させるようになっているため、研削部Bを含むアームA全体の長さと、除錆対象となる管状体aの内径との関係で、当該アームAの最大揺動角度αが90度未満の所定の角度に制限されることになる。
【0008】
このため、上下の鋼管P、Pを連結するフランジ継手部f(この例ではe、fのうち一方のfのみを用いて説明する)に設けられたリブ(突出部)gが管状体aの内方に突出しているような場合には、最大揺動角度αまで揺動した後のアームAがリブgの内方端g1に当接した状態になることがあり、このような状態になると、図12においてハッチングで示す部分、即ちリブgの下面g2に隣接する管状体aの内面部分a1や、リブgの下面g2等に発生した錆を除去することができないという問題があった。
【0009】
なお、上述した管状体aの内面部分a1は、リブgの下面g2に隣接するフランジ継手部fの内面f1と、フランジ継手部fにおける内面f1の下側の端面と、この端面に隣接する鋼管Pの内面部分P1とを含む範囲となっている。ただし、この管状体aの内面部分a1は、最大揺動角度αの大きさや、フランジ継手部fの軸方向の長さによって、フランジ継手部fの内面f1のうちリブgの下面に隣接する一部分のみになる場合もあり、またフランジ継手部fが内面f1を有するものではない場合には、リブgの下面g2に隣接する鋼管Pの内面部分P1のみとなることもある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大電力供給装置や、真空ポンプを必要とせず、かつ管状体の内面のみならず、管状体内の突出部の下面やこの下面に隣接する管状体の内面部分に発生した錆をも除去することのできる管状体内除錆装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、管体構造物を構成する管状体の上方開口端から当該管状体内に挿入して、当該管状体内に発生した錆を除去する管状体内除錆装置であって、前記管状体内を軸方向に移動する案内装置と、この案内装置の先端側に配置された作業装置とを備えてなり、前記作業装置は、アームと、このアームの先端側に配置された除錆部とを備えており、前記アームは、少なくとも前記管状体の内面及び当該管状体の内方に突出する突出部の下面を含む被処理面に、前記除錆部を当接させるべく当該除錆部を移動させることが可能な複数のリンクを備えていることを特徴としている。なお、管状体としては、一つの管体(例えば、一つの鋼管)からなるものであっても、複数の管体(例えば、複数の鋼管)を連結することによって構成されたものであってもよい。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記作業装置は、前記案内装置の先端部に設けられた回転駆動部を介して当該案内装置に連結されており、前記回転駆動部は、前記アームの基端部を回転駆動することにより、前記除錆部を前記管状体の周方向に移動することを可能にしていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記アームの先端部には、前記除錆部の前方を照らす照明手段、及び当該前方を撮影する撮像手段が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記アームは、前記リンクのうち互いに隣接するリンクのなす角度を変更するリンク駆動用モータを有しており、前記隣接するリンクのなす角度と、この角度を変更する前記リンク駆動モータの駆動トルクとによって計算される前記除錆部から前記被処理面に作用する押付力が所定の力を超えないように、当該リンク駆動用モータを制御する制御回路を備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記アームは、前記リンクのうち互いに隣接するリンクのなす角度を変更するリンク駆動用モータを有し、
前記除錆部は、除錆部駆動用モータによって回転駆動されるようになっており、前記リンク駆動用モータの駆動トルクに基づいて前記除錆部を前記被処理面に押し付けて錆を除去するに際して前記除錆部駆動用モータに生じる負荷が所定の値を超えないように、前記リンク駆動用モータを制御する第2の制御回路を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、管状体内を軸方向に移動する案内装置を有し、この案内装置の先端側に作業装置を備えていることから、案内装置を例えば管状体の上方開口端から吊下げながら、下方に移動することより、作業装置を管状体内の錆発生部分に移送することができる。
【0017】
そして、作業装置が管状体内における錆発生部分に移動した状態において、アームを構成する複数のリンクを操作することにより、このアームの先端側に配置された除錆部を錆が発生した被処理面に移動し、その被処理面から錆を除去することができる。この場合、アームの全体が各リンクによって例えば垂直方向の下方に垂れ下がるような形状に設定した状態から、そのアームの先端が横方向(水平方向)に向うように各リンクの角度を制御することにより、除錆部を被処理面としての管状体の内面に移動させることができ、これによりその内面から錆を除去することができる。しかも、管状体の内方に突出部が突き出している場合でも、アームが突出部に当るのを防止しながら、その突出部の下面に隣接する管状体の内面部分に除錆部を移動させることができ、その内面部分から錆を除去することができる。
【0018】
そして、アームの先端が横方向から更に上方に向うように各リンクの角度を制御することにより、除錆部を管状体内の突出部の下面(被処理面)にも移動させることができ、これによりその下面から錆を除去することができる。なお、突出部の上面に付着した錆については、除錆部を突出部の上側に位置させた後、アームの先端を横方向や下方に移動すべく各リンクの角度等を制御することにより、除錆部を突出部の上面に移動し、これによりその上面(被処理面)から錆を除去することができる。
【0019】
以上のように、突出部の下面に隣接する内面部分を含む管状体のすべての内面や、突出部の下面及び上面等の被処理面に生じた錆を確実に除去することができる。しかも、錆の除去のために真空アーク放電を利用する必要がないので、大電力供給装置や、真空ポンプを必要としないという利点がある。従って、山奥に構築した送電鉄塔等の鋼管構造物においても、その管状体内に生じた錆を容易に除去することができる。
【0020】
また、アームの全体を各リンクにより直線状に延在するように形成することにより、上述した突出部によって管状体内が狭くなった部分にも、当該アームを挿入することができる。この場合、アームを有する作業装置と案内装置とが同軸状となるように構成することにより、作業装置及び案内装置を上述の管状体内の狭い部分にも挿入することができ、これにより管状体内の下方に生じた錆を除去する上でより有利になる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、作業装置が回転駆動部を介して案内装置に連結されているので、除錆部を管状体の周方向に沿って旋回移動させることができる。従って、突出部の下面に隣接する内面部分を含む管状体の内面全体や、突出部の下面及び上面において周方向にずれた位置に生じた錆も簡単に除去することができる。
【0022】
この場合、管状体の内面が円筒形状に形成されている場合には、各リンクの角度を一定に保持した状態で、作業装置全体を回転駆動部によって回転駆動することにより、円筒状の内面における周方向にずれた位置に発生した錆を除去することができる。しかも、除錆部を上下方向に変位させるべく、各リンクの角度を制御すること(或いは上述した案内装置を吊下げるワイヤの巻取りや巻出しの制御をすること)によって、円筒状の内面に面状に広がるように発生した錆を隈なく除去することができる。
【0023】
また、管状体の内面が四角筒や六角筒などの多角筒状に形成されている場合には、作業装置全体を回転駆動部によって回転駆動すると共に、除錆部を管状体の内面に常に当接した状態に維持すべく、各リンクの角度を制御することによって、平面状の各内面における周方向にずれた位置に発生した錆を除去することができる。しかも、除錆部を上下方向に変位させるべく、各リンクの角度を制御すること(或いは上述した案内装置を吊下げるワイヤの巻取りや巻出しの制御をすること)によって、平面状の各内面に面状に広がるように発生した錆を隈なく除去することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、除錆部の前方を照らす照明手段、及び当該前方を撮影する撮像手段がアームの先端部に設けられているので、この照明手段及び撮像手段を用いて、ほぼ真っ暗な状態となっている管状体内における突出部の下面に隣接する内面部分を含む当該管状体の内面全体や、突出部の下面及び上面等の被処理面に生じている錆を発見することができると共に、その錆の発生部分に除錆部を移動して、当該錆を除去することができ、更に錆が被処理面から完全に除去された否かを映像で確認することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、互いに隣接するリンクのなす角度を変更するリンク駆動用モータを有しているので、リンク駆動用モータの回転角度を制御することにより、アームの先端側に位置する除錆部を管状体内の錆を生じた位置に正確に移動させることができる。
【0026】
また、隣接するリンクのなす角度と、この角度を変更するリンク駆動用モータの駆動トルクによって計算される除錆部から被処理面に作用する押付力が所定の力を超えないように、リンク駆動用モータを制御する制御回路を備えているので、リンク、リンク駆動用モータ、除錆部、回転駆動部等に過負荷が生じるのを防止することができる。
【0027】
即ち、除錆部から被処理面に作用する押付力は、各リンク駆動用モータの駆動トルクによって変化すると共に、各リンクの長さ及び延在する方向によっても変化することになる。ここで、各リンクについては、外力としての引張力、圧縮力、曲げ力、せん断力等に対して発生する応力が少なくとも弾性限度内となるようにすることによって、永久ひずみが残らないように設計することが前提となる。即ち、各リンクの長さや、延在する方向性に影響を及ぼす例えば真直度は、外力によって変化したとしても、極めて微小である。このため、上記押付力を計算する上で、各リンク自体の長さ及び真直度は一定であると考えることができることから、隣接するリンクのなす角度から各リンクの延在する方向を求めることにより、各リンク駆動用モータのトルクから上述した押付力を計算することができる。従って、押付力が所定の力を超えないように、リンク駆動用モータを制御することにより、リンク、リンク駆動用モータ、除錆部、回転駆動部等に過負荷が生じるのを防止することができる。そして、リンク、リンク駆動用モータ、除錆部、回転駆動部等に過負荷が生じるのを防止することができるので、被処理面に生じた錆を除錆部によって効率よくかつ速やかに除去することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、除錆部が除錆部駆動用モータによって回転駆動されるようになっているので、連続的に回転する除錆部を用いて、錆を被処理面から効率よく除去することができる。
【0029】
また、リンク駆動用モータの駆動トルクに基づいて除錆部を被処理面に押し付けて錆を除去するに際して、除錆部駆動用モータに生じる負荷が所定の値を超えないように、リンク駆動用モータを制御する第2の制御回路を備えているので、除錆部駆動用モータに過負荷が生じるのを防止することができると共に、リンク、リンク駆動用モータ、除錆部、回転駆動部等に過負荷が生じるのも防止することができる。従って、除錆部を連続的に回転させながら、錆を効率よくかつ速やかに除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
この実施の形態で示す管状体内除錆装置1は、図1に示すように、鋼管構造物(管体構造物)を構成する主柱(管状体)aの上方開口端から当該主柱a内に挿入して、当該主柱a内に発生した錆を除去するものであり、主柱a内を軸方向に移動する案内装置2と、この案内装置2の先端側に配置された作業装置3と、案内装置2の先端部に設けられ、作業装置3を回転駆動する回転駆動部4とを備えている。作業装置3は、図3に示すように、アーム5と、このアーム5の先端側に配置された砥石部(除錆部)62aを有する除錆機構部6を備え、アーム5は、主柱aの内面及び当該主柱aの内側に突出するリブ(突出部)gの下面及び上面を含む被処理面に砥石部62aを当接させるように当該砥石部62aを移動させることが可能な複数(この例では4つ)のリンク、即ち第1から第4のリンク701…704を備えた構成になっている。第1から第4のリンク701…704は、リンク体71…78によって構成されている。
【0032】
なお、先端とは、主柱a内への挿入方向の前方の端を意味しており、例えば案内装置2の先端側とは主柱aに挿入された当該案内装置2の下方端側を意味する。
【0033】
また、鋼管構造物としては、例えば図10に示すような鋼管鉄塔が存在する。この鋼管鉄塔を構成する主柱aは、複数の鋼管(管体)Pをフランジ継手部を介して連結することにより構成されたものであり、この例では傾斜角度が3段階に変化するように形成されている。そして、主柱aにおける第1傾斜部bの鋼管Pと、第2傾斜部cの鋼管Pとをフランジ継手部eで連結し、第2傾斜部cの鋼管Pと、第3傾斜部dの鋼管Pとをフランジ継手部fで連結したもので構成されている。
【0034】
フランジ継手部e、fは、図11に示すように、その内部が鉄板gによって仕切られて閉塞された構造になっている場合がある。このような鉄板gで閉塞されたフランジ継手部e、fが存在する場合には、当該フランジ継手部e、fより下方の主柱a内については錆の有無すら確認することができない。このため、例えば、プラズマ切断機等の溶断手段を用いて、鉄板gにおける鎖線j、jで示す間を直径とするような貫通孔をあけることにより、フランジ継手部e、fより下方の主柱a内についても錆の調査及び除去を可能にしている。なお、鉄板gを含むフランジ継手部e、f及び他のフランジ継手部は、鋼管Pと同質の鋼による素材によって形成されている。
【0035】
なお、上記鎖線j、jの位置で円形状の貫通孔g1を形成した後の状態を示したのが図12である。貫通孔g1を形成することにより、鉄板gが内方に突出すリブgとなり、貫通孔g1の部分がリブgの内方端g1となる。従来においては、最大揺動角度αとなったアームAが内方端g1に当ることにより、リブgの下面g2に隣接する主柱aの内面部分a1及びリブgの下面g2に発生した錆が除去できないという問題があった。
【0036】
管状体内除錆装置1は、図10に示す鋼管鉄塔(管体鉄塔)における主柱aの上端開口部に設けられた閉塞板hを開いて、その上端開口部から当該主柱a内に挿入することが可能に構成されたものである。この場合、管状体内除錆装置1は、図1に示すように、フランジ継手部e、f(この例ではフランジ継手部fのみを図示)の鉄板gにあけられた貫通孔g1の部分を上下方向に移動できるように、案内装置2及び作業装置3が同軸状に延在することが可能なように構成されている。即ち、管状体内除錆装置1は、案内装置2の上端部に連結されたワイヤ(吊持索)11によって吊下げられた状態で、主柱aの最下位置まで移動することが可能になっている。また、図1は、フランジ継手部fの鉄板gにあけられた貫通孔g1に作業装置3を通過させた後、その位置に停止させた状態を示している。なお、鉄板gは、上述のように、主柱aの内面から内側に突出するリブgとして残存した状態になっている。
【0037】
案内装置2は、図1及び図2に示すように、直線状に長く延在する外郭部21を有すると共に、その基端部(上端部)にワイヤ11の接続部21aが設けられている。また、案内装置2には、その長手方向の所定の位置に、当該案内装置2を主柱a内の中空位置に支持すると共に、当該案内装置2を主柱aの延在する方向に沿って移動可能に支持する脚部22が少なくとも一組設けられている(この例では上下方向に位置をずらして3組設けられている)。
【0038】
各組みにおける脚部22は、案内装置2を周方向にほぼ三等分する各位置(図示例では脚部22を周方向に120度離間させて3つ設けているが、例えば周方向に90度離間させて4つ設けたり、周方向に180度離間させて2つ設けたりすることも可能である)に配置されている。その各位置に配置された脚部22は、図2に示すように、その基端部(上端部)22aが外郭部21内に位置していると共に、当該基端部22aを支点にして主柱aの内面に対して離接する方向に揺動駆動されるようになっている。即ち、外郭部21内には、基端部22aを支点にして脚部22を揺動駆動する揺動駆動機構23が設けられている。
【0039】
揺動駆動機構23は、ステッピングモータ等からなるモータ23aと、このモータ23aから出力される回転運動を直線運動に変換するねじ機構23bと、このねじ機構23bによって直線方向に駆動されるラックギヤ23cと、このラックギヤ23cに噛み合う3つのピニオンギヤ23dを備えた構成になっている。そして、各ピニオンギヤ23dが各脚部22の基端部22aに固定されており、モータ23aの回転角度によって制御される各ピニオンギヤ23dの回転角度に伴った角度で各脚部22が揺動駆動されるようになっている。
【0040】
即ち、各脚部22は、各ピニオンギヤ23dの回転角度に応じて、全体が外郭部21内に収納された状態になったり、その先端部が種々の径の主柱aの内面に当接した状態となるように、揺動駆動されるようになっている。また、各脚部22の先端部には、主柱aの内面に当接した状態で当該主柱aの軸方向(延在する方向)に移動することが可能なように転輪22bが設けられている。
【0041】
なお、ピニオンギヤ23dは、その外周部の全体にラックギヤ23cと噛み合う歯を設けた例を示しているが、この歯については脚部22の揺動可能角度に応じてラックギヤ23cに噛み合う範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0042】
回転駆動部4は、図3に示すように、案内装置2の先端部(下端部)における軸心位置に回転自在に設けられた回転駆動軸4aと、この回転駆動軸4aの基端側に配置されたモータ4bと、このモータ4bの回転駆動力を回転駆動軸4aに伝達する一対のギヤ4c、4dと、回転駆動軸4aの回転角度を検出するエンコーダ4eと、回転駆動軸4aの回転をエンコーダ4eに伝えるべくギヤ4cと噛み合うギヤ4fと、回転駆動軸4aの先端部に同軸状に固定されたフランジ4gとを備えた構成になっている。フランジ4gは、案内装置2から先端側に露出しており、その外周面の径が案内装置2の外周面の径と同等に形成されている。
【0043】
作業装置3は、図4に示すように、アーム5の基端部がフランジ4gに連結されており、これにより案内装置2の軸線と同軸回りに回転駆動されるようになっている。なお、作業装置3は、外周面の径が案内装置2の外周面の径と同等以下に形成されている。
【0044】
アーム5は、案内装置2と同軸の方向に延在することが可能なように連結されていると共に、当該アーム5の先端を横方向(水平方向)に移動して除錆機構部6の砥石部62aを主柱aの内面に当接させたり、当該アーム5の先端を更に上方に移動して、砥石部62aをリブgの下面g2に当接させたりすることが可能なように連結された第1から第4のリンク701…704を備えている。第1から第4のリンク701…704は、複数(この例では8個)のリンク体71…78によって構成されており、このうち最も基端側に位置するリンク体71がフランジ4gに同軸状に連結されており、最も先端側に位置するリンク体78に除錆機構部6が設けられている。
【0045】
最も基端側のリンク体71の次のリンク体72及びこのリンク体72から一つおきに配置されたリンク体74、76の先端部内には、それぞれの先端側に位置するリンク体73、75、77とのなす角度を変更するためのリンク駆動用モータ7aが設けられている。リンク駆動用モータ7aは、減速ギヤ付きのサーボモータによって構成されており、フィードバック信号に基づいて所定の角度回転したり、所定の駆動トルクを発生したりすることが可能になっている。また、3つの各リンク駆動用モータ7aは、それぞれの出力軸7amが互いに平行となるように各リンク体72、74、76内に設けられている。
【0046】
また、最も基端側のリンク体71は、第1の固定リンク体71aと、第2の固定リンク体71bとを備えた構成になっている。これらの固定リンク体71a、71bは、先端側に位置するリンク体72を挟むように配置された状態で、基端側がフランジ4gに固定され、先端側がリンク体72の外周面に固定されている。この場合、第1の固定リンク体71aは、その先端部がリンク体72の基端部の外周面に固定されている。また、第2の固定リンク体71bは、その先端部がリンク体72内のリンク駆動用モータ7aの出力軸7amと同軸状の位置をカバーする状態となる位置まで延在した状態で当該リンク体72の外周面に固定されている。
【0047】
なお、リンク駆動用モータ7aの出力軸7amは、リンク体72における第1の固定リンク体71aが固定されている側の外周面から外側に突出している。
【0048】
また、第2の固定リンク体71bには、リンク駆動用モータ7aの出力軸7amと同軸状の位置に、滑り軸部SFが形成されている。そして、リンク体72及び滑り軸部SFには、それぞれリンク駆動用モータ7aの出力軸7amと同軸状に貫通孔72h、THが形成されており、第2の固定リンク体71bのリンク体72側の面には、貫通孔THに通じる溝DIが基端側から連続して延在するように形成されている。貫通孔72h、TH及び溝DIは、リンク体72に設けられたリンク駆動用モータ7aや、更に先端側に位置するリンク駆動用モータ7aや、後述する砥石駆動用モータ(除錆部駆動用モータ)61、照明手段8a、カメラ8b等の駆動や制御のために配線される導線CWの保護通路PPの一部となっている。
【0049】
導線CWは、鋼管鉄塔の外側に設置された制御装置(図示せず)からワイヤ11に沿って案内装置2内に導かれ、更に回転駆動部4の回転駆動軸4aに同軸状に形成された貫通孔を介してアーム5の基端部内に導かれた上で、溝DIに導入されるようになっている。
【0050】
また、リンク体73、75は、それぞれ第1のリンク体7Raと、第2のリンク体7Rbとによって構成されている。各第1のリンク体7Raは、それぞれの基端部がリンク体72、74内の各リンク駆動用モータ7aの出力軸7amに固定されており、先端部がリンク体74、76の各基端側の外周面に固定されるようになっている。なお、リンク体74内のリンク駆動用モータ7aの出力軸7amは、リンク体73における第1のリンク体7Raが固定されている側の外周面から外側に突出しており、リンク体76内のリンク駆動用モータ7aの出力軸7amは、リンク体75における第1のリンク体7Raが固定されている側の外周面から外側に突出している。
【0051】
一方、リンク体73、75の各第2のリンク体7Rbは、それぞれの基端部に上述した滑り軸部SFと回転自在に嵌合する構造の滑り軸受け部BEを有し、先端部に当該滑り軸部SFと同一構造の滑り軸部SFを有する構成になっている。
【0052】
そして、リンク体73の第2のリンク体7Rbは、滑り軸受け部BEが第2の固定リンク体71bの滑り軸部SFに回転自在に嵌合され、先端側の部分が滑り軸部SFをリンク体74内のリンク駆動用モータ7aの出力軸7amと同軸状に配した状態で当該リンク体74の外周面に固定されるようになっている。なお、第2のリンク体7Rbが固定されるリンク体74の外周面は、リンク駆動用モータ7aの出力軸7amが突出する側とは反対側の外周面である。
【0053】
一方、リンク体75の第2のリンク体7Rbは、滑り軸受け部BEがリンク体74に固定された第2のリンク体7Rbの滑り軸部SFに回転自在に嵌合され、先端側の部分が滑り軸部SFをリンク体76内のリンク駆動用モータ7aの出力軸7amと同軸状に配した状態で当該リンク体76の外周面に固定されるようになっている。なお、第2のリンク体7Rbが固定されるリンク体76の外周面は、リンク駆動用モータ7aの出力軸7amが突出する側とは反対側の外周面である。
【0054】
また、リンク体74、76及び各滑り軸部SFのそれぞれには、リンク駆動用モータ7aの出力軸7amと同軸状に形成された貫通孔74h、76h、THが形成されており、各第2のリンク体7Rbには、貫通孔THに通じる溝や孔等からなる通路PSが設けられている。そして、通路PS及び貫通孔74h、76h、THは、上述した導線CWを導くための保護通路PPの一部となっている。
【0055】
また、リンク体77は、第1のリンク体77aと、第2のリンク体77bとによって構成されている。第1のリンク体77aは、基端部がリンク体76内のリンク駆動用モータ7aの出力軸7amに固定されており、先端部がリンク体78の外周面に固定されるようになっている。
【0056】
第2のリンク体77bは、基端部に、リンク体76に固定された第2のリンク体7Rbの滑り軸部SFに回転自在に嵌合する滑り軸受け部BEを有している。そして、第2のリンク体77bは、滑り軸受け部BEがリンク体76に固定された第2のリンク体7Rbの滑り軸部SFに回転自在に嵌合され、先端部がリンク体78の外周面に固定されるようになっている。
【0057】
また、リンク体78及び第2のリンク体77bのそれぞれには、同軸状に形成された貫通孔78h、THが形成されており、第2のリンク体77bには、当該貫通孔TH及び滑り軸部SFの貫通孔THに通じる溝からなる通路PSが設けられている。そして、通路PS及び貫通孔78h、THは、上述した導線CWを導くための保護通路PPの一部となっている。
【0058】
また、リンク体71とリンク体72、リンク体73とリンク体74、リンク体75とリンク体76及びリンク体77とリンク体78がそれぞれ固定的に連結されている。そして、リンク体71、72によって第1のリンク701が構成され、リンク体73、74によって第2のリンク702が構成され、リンク体75、76によって第3のリンク703が構成され、リンク体77、78によって第4のリンク704が構成されている。これにより、第1から第4のリンク701…704は、互いに隣接するもの同士の角度を変更するリンク駆動用モータ7aを介して連結された状態になっている。
【0059】
除錆機構部6は、砥石駆動用モータ61と、この砥石駆動用モータ61によって回転駆動される砥石(除錆ヘッド)62とを備えた構成になっている。砥石駆動用モータ61は、本体部61aがリンク78内に設けられており、出力軸としてのチャック61bがリンク78の先端面から外側に突出している。このチャック61bは、第1から第4のリンク701…704によってアーム5が直線状に延在すべく設定された状態において、このアーム5と同軸状となる位置に配置されている。また、砥石駆動用モータ61は、貫通孔78hから導入された導線CWを介して、上述した制御装置によって回転制御されるようになっている。
【0060】
砥石62は、例えば球形状に形成された砥石部62aと、この砥石部62aを支持する軸部62bとによって一体的に構成されており、軸部62bがチャック61bに同軸状に連結されるようになっている。
【0061】
また、リンク78(即ち、アーム5の先端部)には、砥石部62aの前方を照らす照明手段8a、及び当該前方を撮影する撮像手段としての動画撮影用のカメラ8bが設けられている。カメラ8bは、第1から第4のリンク701…704によって揺動する方向(即ち、左右方向)におけるリンク78の各側面部に設けられている。即ち、カメラ8bは、リンク78の左側面部及び右側面部の双方に設けられていて、砥石部62aの前方における所定の視野角度θの範囲を撮影することが可能になっている。この視野角度θ内には、砥石部62aの一部及び当該砥石部62aの側方の所定の範囲が入るようになっている。一方、照明手段8aは、例えば各カメラ8bの周囲に配置されたLEDによって構成されており、少なくとも上記視野角度θの範囲に光を照射するようになっている。なお、照明手段8aは、リンク体78を正面視(砥石部62a側から正面視)した場合における左右に位置する各カメラ8bに対してチャック61bの軸心を中心にして90度ずらした各位置(2位置)に設けるように構成してもよい。
【0062】
また、制御装置は、第1から第4のリンク701…704のうち隣接するもの同士のなす角度と、この角度を変更する各リンク駆動用モータ7aの駆動トルクとによって計算される砥石部62aから主柱a内の被処理面に作用する押付力が所定の力を超えないように、当該リンク駆動用モータ7aの駆動トルクを制御する第1の制御回路を備えている。
【0063】
更に、制御装置は、リンク駆動用モータ7aの駆動トルクに基づいて砥石部62aを被処理面に押し付けて錆を除去するに際して、砥石駆動用モータ61に生じる負荷(例えば消費電力値や電流値等)が所定の値を超えないように、リンク駆動用モータ7aを制御する第2の制御回路を備えている。
【0064】
そして、制御装置には、第1の制御回路及び第2の制御回路の双方を同時に機能させる制御、及び何れか一方を機能させる制御が可能になっている。即ち、第1の制御回路及び第2の制御回路の双方を同時に機能させた場合には、第1の制御回路に基づいて砥石部62aを被処理面に所定の押付力を作用させて当該被処理面から錆を取り除くことができると共に、錆の状況等により砥石部62aに大きな研削抵抗が生じ、これにより砥石駆動用モータ61に大きな負荷が生じるような場合には、第2の制御回路に基づいてリンク駆動用モータ7aの駆動トルクを低下することにより、砥石駆動用モータ61の負荷を許容値以下に軽減することが可能となる。また、第1の制御回路及び第2の制御回路の何れか一方のみを機能させた場合には、それぞれの機能によって、砥石部62a等に対する負荷が所定の値以下に制御されることになる。
【0065】
上記のように構成された管状体内除錆装置1においては、主柱a内を軸方向に移動する案内装置2を有し、この案内装置2の先端側に作業装置3を備えているので、案内装置2を主柱aの上方開口端から吊下げながら、下方に移動することより、作業装置3を主柱a内の錆発生部分に移送することができる。
【0066】
そして、作業装置3が主柱a内における錆発生部分に移動した時点においてその移動を停止した後、各リンク駆動用モータ7aの回転角度を制御することにより、第1から第4の各リンク701…704における隣接するもの同士の角度を変化させ、砥石部62aを錆の発生した被処理面に移動することができる。
【0067】
即ち、図3に示すように、アーム5の全体がほぼ垂直に垂れ下がった状態で錆発生部分まで移動し、その状態から、図5に示すように、アーム5の先端が横方向(水平方向)に向うように第1から第4の各リンク701…704の角度を制御することにより、砥石部62aを被処理面としての主柱aの内面に移動させることができ、これによりその内面から錆を除去することができる。この場合、従来においては錆の除去が不可能であった主柱aにおけるリブgの下面g2に隣接する内面部分a1にも、アーム5をリブgの内方端g1に当接させることなく砥石部62aを移動させて、当該内面部分a1に発生した錆を除去することができる。なお、内面部分a1は、リブgの下面g2に隣接するフランジ継手部fの内面f1と、フランジ継手部fにおける内面f1の下側の端面と、この端面に隣接する鋼管Pの内面部分P1を含む部分であって、図においてハッチングで示した部分である。また、主柱aの内面とは、鋼管Pの内面全体、フランジ継手部fの内面f1(フランジ継手部eの内面を含む)及びフランジ継手部fにおける内面f1(フランジ継手部eの内面を含む)の下側の端面であって、リブgを除く主柱aの内方に露出する面をいう。
【0068】
そして、図6及び図7に示すように、アーム5の先端が横方向から更に上方に向うように第1から第4の各リンク701…704の角度を制御することにより、砥石部62aを主柱aの内方に突出するリブgの下面g2にも移動させることができ、これによりその下面g2(即ち、被処理面)に発生した錆を除去することができる。この場合、第1から第4の複数のリンク701…704でアーム5を構成することにより、図8に示すように、砥石部62aを主柱aの内方に十分に移動することができるので、リブgが内方に大きく突出している場合でもその下面g2から錆を除去することができる。また、例えば溶断手段によって鉄板gにあけられた貫通孔g1としてのリブgの内方端g1も綺麗に仕上げることができる。
【0069】
しかも、アーム5を第1から第4の複数のリンク701…704で構成することにより、図9に示すように、主柱aの内面(内面部分a1を含む)から錆を除去することが可能状態に設定した砥石部62aの位置を主柱aの内方に十分に移動することができる。従って、小径の主柱aに対してもその内面に発生した錆を除去することができるという有利な効果がある。
【0070】
なお、リブgの上面に付着した錆については、砥石部62aをリブgの上側に位置させた状態において、アーム5の先端を横方向及び下方等に移動すべく第1から第4の各リンク701…704の角度を制御することにより、砥石部62aをその上面に移動して、当該上面から錆を除去することができる。このため、鋼管Pの内面、フランジ継手部fの内面f1(フランジ継手部eの内面を含む)、リブgの下面g2、上面及び内方端g1の面等の主柱a内に露出するすべての面としての被処理面に生じた錆を除去することができる。
【0071】
以上のように、リブgの下面g2に隣接する主柱aの内面部分a1や、リブgの下面g2のような従来錆を除去することが不可能であった被処理面に生じた錆を確実に除去することができる。しかも、錆の除去のために真空アーク放電を利用する必要がないので、大電力供給装置や、真空ポンプを必要としないという利点がある。従って、山奥に構築した鋼管鉄塔においても、その主柱a内に生じた錆を容易に除去することができる。
【0072】
また、アーム5の全体を第1から第4の各リンク701…704によって案内装置2と同軸の直線状に延在させることにより、リブgにより主柱a内が狭くなった部分にも、当該案内装置2及びアーム5を挿入することができる。即ち、リブgによって狭まった部分の下方に生じた主柱a内の錆を容易に除去することができる。
【0073】
また、作業装置3が回転駆動部4を介して案内装置2に連結されているので、砥石部62aを主柱aの周方向にも旋回移動させることができる。従って、リブgの下面g2に隣接する主柱aの内面部分a1や、リブgの下面g2及び上面において周方向にずれた位置に生じた錆も簡単に除去することができる。
【0074】
この場合、主柱aが円筒状の内面を有するものであれば、第1から第4の各リンク701…704の角度を変化させることなく、作業装置3の全体を回転駆動部4によって回転駆動することによって、主柱aの内面部分a1を含む円筒状の内面において周方向にずれた位置に発生した錆を除去することができる。しかも、砥石部62aを上下方向に変位させるべく、第1から第4の各リンク701…704の角度を制御すること(或いはワイヤ11の巻取りや巻出しの制御をすること)によって、主柱aの内面部分a1を含む円筒状の内面に面状に広がるように発生した錆を隈なく除去することができる。
【0075】
また、主柱aが四角筒や六角筒などの多角筒状の内面を有するものであれば、作業装置3の全体を回転駆動部4によって回転駆動すると共に、砥石部62aを主柱aの内面に常に当接した状態に維持すべく、第1から第4の各リンク701…704の角度を制御することによって、主柱aの内面部分a1を含む平面状の各内面において周方向にずれた位置に発生した錆を除去することができる。しかも、砥石部62aを上下方向に変位させるべく、第1から第4の各リンク701…704の角度を制御すること(或いはワイヤ11の巻取りや巻出しの制御をすること)によって、主柱aの内面部分a1を含む平面状の各内面に面状に広がるように発生した錆を隈なく除去することができる。なお、主柱aが例えば四角筒状のものである場合には、上述した脚部22を案内装置2の周方向に4等分する各位置に設けることにより、管状体内除錆装置1を安定的に保持することができ、また例えば六角筒状のものである場合には、脚部22を案内装置2の周方向に三等分あるいは六等分する各位置に設けることにより、管状体内除錆装置1を安定的に保持することができる。
【0076】
更に、砥石部62aの前方を照らす照明手段8a及び当該前方を撮影するカメラ8bがアーム5の先端部に設けられているので、この照明手段8a及びカメラ8bを用いて、ほぼ真っ暗な状態となっている主柱aの内面や、リブgの下面g2及び上面に生じている錆を発見することができると共に、その錆の発生部分に砥石部62aを移動して、当該錆を除去することができ、更に錆が被処理面から完全に除去された否かを映像で確認することができる。
【0077】
また、第1から第4の各リンク701…704における互いに隣接するもの同士のなす角度を変更するリンク駆動用モータ7aを有しているので、リンク駆動用モータ7aの回転角度を制御することにより、砥石部62aを主柱a内の錆の発生位置に正確に移動させることができる。
【0078】
また、第1から第4の各リンク701…704における隣接するもの同士のなす角度と、この角度を変更するリンク駆動用モータ7aの駆動トルクによって計算される砥石部62aから被処理面に作用する押付力が所定の力を超えないように、各リンク駆動用モータ7aの駆動トルクを制御する第1の制御回路を備えているので、第1から第4の各リンク701…704、各リンク駆動用モータ7a、砥石駆動用モータ61、砥石62、回転駆動部4等に過負荷が生じるのを防止することができる。
【0079】
即ち、砥石部62aから被処理面に作用する押付力は、各リンク駆動用モータ7aの駆動トルクによって変化すると共に、第1から第4の各リンク701…704の長さ及び延在する方向によっても変化することになる。ここで、各リンク701…704については、外力としての引張力、圧縮力、曲げ力、せん断力等に対して生じる応力が少なくとも弾性限度内となるようにすることによって、永久ひずみが残らないように設計することが前提となる。即ち、各リンク701…704の長さや、延在する方向性に影響を及ぼす例えば真直度は、外力によって変化したとしても、極めて微小である。このため、押付力を計算する上で、各リンク701…704自体の長さ及び真直度は一定である考えることができることから、隣接する各リンク701…704のなす角度からそれぞれのリンク701…704の延在する方向を求めることにより、各リンク駆動用モータのトルクから上述した押付力を計算することができる。従って、押付力が所定の力を超えないように、リンク駆動用モータ7aを制御することにより、各リンク701…704、リンク駆動用モータ7a、除錆機構部6、回転駆動部4等に過負荷が生じるのを防止することができる。
【0080】
従って、リンク701…704、リンク駆動用モータ7a、除錆部6、回転駆動部4等各構成部分に過負荷による変形や破損が生じたり、砥石駆動用モータ61の回転数が過負荷により低下するなどの問題が生じるのを防止することができる。よって、被処理面に生じた錆を砥石部62aによって効率よくかつ速やかに除去することができる。
【0081】
一方、砥石部62aが砥石駆動用モータ61によって回転駆動されるようになっているので、連続的に回転する砥石部62aを用いて、錆を被処理面から効率よく研削して除去することができる。
【0082】
また、リンク駆動用モータ7aの駆動トルクに基づいて砥石部62aを被処理面に押し付けて錆を除去するに際して、砥石駆動用モータ61に生じる負荷が所定の値を超えないように、リンク駆動用モータ7aを制御する第2の制御回路を備えているので、砥石部62aから被処理面に作用する押付力が正常な範囲内であるにもかかわらず、錆の状況や、砥石部62aの状況や、被処理面の状況等によって砥石駆動用モータ61に作用する負荷が過大になるようなことがあっても、当該砥石駆動用モータ61の負荷を許容範囲内に抑えることができる。従って、砥石部62aを連続的に回転させながら、錆を効率よくかつ速やかに除去することができる。
【0083】
なお、上記実施の形態においては、砥石62として、球状に形成された砥石部62aを有する軸付きのものを示したが、その砥石部62aとしては、円板状(又は円筒状)や円錐形状等の他の形状に形成したものであってもよい。また、砥石62に代えて、砥石部62aに相当する部分を金属製の複数のワイヤブラシで構成した軸付きブラシからなる除錆ヘッドを用いてもよい。更に、砥石62に代えて、砥石部62aに相当する部分の外周面に複数の切れ刃を有し、その少なくとも切れ刃部分が炭素鋼や超硬合金やダイヤモンド等で構成されたスチールバーや超硬バーやダイヤモンドバー等からなる除錆ヘッドを用いてもよい。このように構成された除錆ヘッドを用いた場合も、ワイヤブラシや切れ刃によって形成される外周面の形状として上述のように円板状(又は円筒状)や、球状や、円錐形状等に形成されたものを用いてもよい。
【0084】
そして、砥石部62aあるいは砥石部62aに相当する部分が円錐形状に形成された除錆ヘッドを用いた場合には、リブgの下面g2とフランジ継手部fの内面f1との境の隅部や、フランジ継手部fにおける内面f1の下側の端面と鋼管Pの内面部分P1との境の隅部に発生した錆をも除去することができる。なお、軸付きのブラシからなる除錆ヘッドを用いた場合には、鉄や真鍮等の金属製のワイヤブラシのフレキシブル性により、上述した各隅部に発生した錆を除去することが可能である。この場合、軸付きブラシの外周面の形状としては、円錐形状に形成したものを用いることが隅部の錆を除去する上で好ましいが、円筒形状や、球形状等であっても隅部の錆を除去することが可能である。
【0085】
また、アーム5を4つのリンク701…704で構成した例を示したが、このアーム5としては、3以下又は5以上の数のリンクによって構成してもよい。
【0086】
更に、管状体の例として主柱aを示し、この主柱aを複数の鋼管Pをフランジ継手部を介して連結したもので構成した例を示したが、この主柱aは1つの鋼管によって構成したものであってもよく、またフランジ継手部を介さずに溶接等で連結した複数の鋼管によって構成したものであってもよい。そして、主柱aとしては、鋼製(鉄製)のものに限らず、アルミニウム等の他の金属によって形成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施の形態として示した管状体内除錆装置を示す正面図である。
【図2】同管状体内除錆装置における案内装置を示す要部破断正面図である。
【図3】同管状体内除錆装置における作業装置及び回転駆動部を示す要部破断正面図である。
【図4】同管状体内除錆装置における作業装置を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図5】同管状体内除錆装置の作用を示す図であり、砥石部が主柱の内面に当接した状態を示す正面図である。
【図6】同管状体内除錆装置の作用を示す図であり、砥石部が主柱内におけるリブの下面に当接した状態を示す正面図である。
【図7】同管状体内除錆装置の作用を示す図であり、砥石部がリブの下面の内方端に移動した状態を示す正面図である。
【図8】同管状体内除錆装置の作用を示す図であり、リブの下面を研削することが可能な最も内側の位置に砥石部を移動した状態を示す正面図である。
【図9】同管状体内除錆装置の作用を示す図であり、リブの下面に隣接する主柱の内面部分を研削することが可能で、かつ回転駆動部によって回転駆動される作業装置の回転半径が最小となるようにした状態を示す正面図である。
【図10】同管状体内除錆装置を挿入して錆を除去するための主柱を有する鋼管鉄塔を示す正面図である。
【図11】同鋼管鉄塔における鋼管及びフランジ継手部を示す主柱の要部断面図である。
【図12】従来のアームの先端部に研削部を備えてなる管状体内除錆装置の問題点を示す管状体(主柱)の要部断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 管状体内除錆装置
2 案内装置
3 作業装置
4 回転駆動部
5 アーム
6 除錆機構部
7a リンク駆動用モータ
8a 照明手段
8b カメラ(撮像手段)
61 砥石駆動用モータ(除錆部駆動用モータ)
62 砥石(除錆ヘッド)
62a 砥石部(除錆部)
701 第1のリンク(リンク)
702 第2のリンク(リンク)
703 第3のリンク(リンク)
704 第4のリンク(リンク)
a 主柱(管状体)
a1 内面部分
g リブ(突出部)
g2 下面
P 鋼管(管体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体構造物を構成する管状体の上方開口端から当該管状体内に挿入して、当該管状体内に発生した錆を除去する管状体内除錆装置であって、
前記管状体内を軸方向に移動する案内装置と、
この案内装置の先端側に配置された作業装置とを備えてなり、
前記作業装置は、アームと、このアームの先端側に配置された除錆部とを備えており、
前記アームは、少なくとも前記管状体の内面及び当該管状体の内方に突出する突出部の下面を含む被処理面に、前記除錆部を当接させるべく当該除錆部を移動させることが可能な複数のリンクを備えていることを特徴とする管状体内除錆装置。
【請求項2】
前記作業装置は、前記案内装置の先端部に設けられた回転駆動部を介して当該案内装置に連結されており、
前記回転駆動部は、前記アームの基端部を回転駆動することにより、前記除錆部を前記管状体の周方向に移動することを可能にしていることを特徴とする請求項1に記載の管状体内除錆装置。
【請求項3】
前記アームの先端部には、前記除錆部の前方を照らす照明手段、及び当該前方を撮影する撮像手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管状体内除錆装置。
【請求項4】
前記アームは、前記リンクのうち互いに隣接するリンクのなす角度を変更するリンク駆動用モータを有しており、
前記隣接するリンクのなす角度と、この角度を変更する前記リンク駆動モータの駆動トルクとによって計算される前記除錆部から前記被処理面に作用する押付力が所定の力を超えないように、当該リンク駆動用モータを制御する制御回路を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管状体内除錆装置。
【請求項5】
前記アームは、前記リンクのうち互いに隣接するリンクのなす角度を変更するリンク駆動用モータを有し、
前記除錆部は、除錆部駆動用モータによって回転駆動されるようになっており、
前記リンク駆動用モータの駆動トルクに基づいて前記除錆部を前記被処理面に押し付けて錆を除去するに際して前記除錆部駆動用モータに生じる負荷が所定の値を超えないように、前記リンク駆動用モータを制御する第2の制御回路を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の管状体内除錆装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−89232(P2010−89232A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263546(P2008−263546)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(306033025)日本鉄塔工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】