説明

管端部のねじ要素測定方法

【課題】ねじ加工が施された管端部のねじ要素をオンライン(ねじ加工ライン)で自動的に精度良く測定する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、順次搬送される管Pの端部にねじ加工が施されるねじ加工ライン100上で、ねじ加工後の管端部のねじ要素を自動的に測定する方法であって、ねじ加工後の管端部をねじ洗浄装置30で洗浄する洗浄工程と、前記洗浄された管端部をねじ乾燥装置40で乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥後の管端部のねじ要素を自動ねじ要素測定装置50で測定する測定工程とを含み、少なくとも前記測定工程においては、管端部が清浄雰囲気下におかれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油井管など、ねじ加工が施された管端部のねじ要素をオンラインで自動的に精度良く測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油井管等は、管端部に加工されたねじを用いて管端部同士を継ぐことで使用されてきた。このねじは、油井の深化や腐食環境性に対する要請に伴い、ねじ形状等において種々の改善がなされてきている(例えば、非特許文献1参照)。このようなねじは、場合によっては、長さにして数十m、重さにして数百kg重に及ぶ管の端部に形成され、且つ、複雑・高精度なねじ形状を有する。そして、このねじに関して、ねじ要素と称される品質管理項目が定められており、このねじ要素の測定値が所定の公差内にあるか否かが検査されている。ねじ要素としては、例えば、ねじ部外径、シール部外径、平行部外径、ねじ溝径、ねじ山高さ、ねじ溝深さ、ねじテーパ、シールテーパ等を列挙することができる。
【0003】
従来、上記のような品質管理項目であるねじ要素は、オンライン(ねじ加工ライン)では専用の測定器具を用いて手動で測定されていたが、省力やヒューマンエラー抑制、測定の高速化及び高精度化の観点から、より高精度な自動測定技術の開発が試行されてきた。
具体的には、ねじ要素を自動測定する技術として、光源からの平行光をねじ溝に対して略平行に照射し、管軸に対して前記光源とは反対側に漏れ出た光を検出する光学式センサを有し、当該光学式センサの検出結果に基づいてねじ要素を測定する自動測定装置が公知である(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小笠原昌雄、「最近の油井管継手」鐵と鋼:日本鐵鋼協會々誌、1993年5月1日、Vol.79、No.5、pp.N352−N355
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3552440号公報
【特許文献2】特開昭63−212808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載のようなねじ要素の自動測定装置をオンライン(ねじ加工ライン)で適用するには、環境面での問題があった。
具体的に説明すれば、管端部にねじ加工を施す際には、一般的に、管端部に潤滑剤(水及び防錆剤)を散布しながら、旋盤を用いて管端部をねじ切削するが、この潤滑剤がねじ切削後の管端部に残存して、ねじ要素の測定精度の劣化を招く場合がある。また、切削後にかえり取りを行う場合には、ねじ切削時と同様に潤滑剤が残存する他、かえり取りによって管端部に付着した切削屑により、ねじ要素の測定精度の劣化を招くこともある。
【0007】
このため、ねじ要素の自動測定装置をオンラインで適用し、全数測定を行うことは、実際には困難である。従って、従来は、適宜のタイミングで管をねじ加工ラインから抜き取り、環境条件の良い試験室で潤滑剤や切削屑を取り除いた後に自動測定を行っている。
【0008】
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、ねじ加工が施された管端部のねじ要素をオンライン(ねじ加工ライン)で自動的に精度良く測定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、順次搬送される管の端部にねじ加工が施されるねじ加工ライン上で、ねじ加工後の管端部のねじ要素を自動的に測定する方法であって、ねじ加工後の管端部を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄された管端部を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥後の管端部のねじ要素を測定する測定工程とを含み、少なくとも前記測定工程においては、管端部が清浄雰囲気下におかれることを特徴とする管端部のねじ要素測定方法を提供する。
【0010】
本発明は、ねじ加工後の管端部を洗浄する洗浄工程を含むため、ねじ要素の測定精度劣化の要因となり得る、ねじ切削やかえり取りの際に管端部に残存する潤滑剤や、かえり取りによって管端部に付着した切削屑が洗浄されることが期待できる。洗浄工程における管端部の洗浄には、例えば、有機溶剤が使用される。
また、本発明は、洗浄された管端部を乾燥させる乾燥工程を含むため、洗浄工程で管端部に残存するおそれのある有機溶剤等が乾燥し、有機溶剤等によるねじ要素の測定精度の劣化を招くことを防止可能である。
さらに、本発明は、清浄雰囲気下におかれた管端部のねじ要素を測定する測定工程を含むため、精度良く、ねじ要素を測定することが可能である。測定工程におけるねじ要素の測定には、例えば、特許文献1、2に記載のような光学式の自動測定装置が用いられる。
以上のように、本発明によれば、ねじ加工が施された管端部のねじ要素をオンライン(ねじ加工ライン)で自動的に精度良く測定することが可能である。
【0011】
好ましくは、本発明において、少なくとも前記乾燥工程から前記測定工程までの間において、前記ねじ加工後の管端部が清浄雰囲気下におかれる。
【0012】
前記洗浄工程において管端部に残存する潤滑剤や管端部に付着した切削屑が洗浄され、前記乾燥工程において管端部が乾燥した後に、管端部がねじ加工ラインの雰囲気に晒されると、ねじ加工ラインの雰囲気中に存在するパーティクルが管端部に付着して、ねじ要素の測定精度の劣化を招くおそれがある。
しかしながら、前記好ましい方法によれば、少なくとも乾燥工程から測定工程までの間において、管端部が清浄雰囲気下におかれるため、ねじ加工ラインの雰囲気中に存在するパーティクルが管端部に付着してねじ要素の測定精度の劣化を招くおそれが低減し、より一層精度良くねじ要素を測定することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る管端部のねじ要素測定方法によれば、ねじ加工が施された管端部のねじ要素をオンライン(ねじ加工ライン)で自動的に精度良く測定可能である。このため、オンラインでの全数測定も可能となることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法を実施するねじ加工ラインの概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すねじ洗浄装置の一例を概略的に示す模式図である。
【図3】図3は、図1に示すねじ乾燥装置の一例を概略的に示す模式図である。
【図4】図4は、ねじ加工ラインの雰囲気中に存在するパーティクルの影響を評価する試験の結果を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法を実施するねじ加工ラインの概略構成を示す模式図である。
【図6】図6は、図5に示す清浄維持装置の一例を概略的に示す模式図である。
【図7】図7は、図6に示す清浄維持装置の変形例を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法を実施するねじ加工ラインの概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、ねじ加工ライン100では、所定の搬送装置(図示せず)によって、順次搬送される管Pの端部にねじ加工が施される。
具体的には、まず管Pがねじ切削用旋盤10の設置位置に向けて管軸方向に搬入される。そして、管Pの端部に潤滑剤(水及び防錆剤)を散布しながら、ねじ切削用旋盤10によって管Pの端部がねじ切削される。管端部のねじ切削を終えた管Pは、ねじ切削用旋盤10から管軸方向に搬出され、かえり取り装置20の設置位置に対向する位置まで横送りされる。
次に、かえり取り装置20が管Pの端部に向けて管軸方向に前進する。そして、かえり取り装置20によって管Pの端部のかえり取りが実施される。かえり取り装置20としては、例えば、ねじ切削用旋盤10と同様の旋盤が用いられる。つまり、管Pの端部に潤滑剤(水及び防錆剤)を散布しながら、かえり取り装置20によって管Pの端部のねじに生じたかえりが除去される。かえり取り装置20は、管Pの端部のかえり取りを終えた後、元の位置に後退する。
【0017】
以上のようにして、端部にねじ加工が施された管Pは、ねじ洗浄装置30の設置位置に対向する位置まで横送りされ、ねじ加工後の管端部を洗浄する洗浄工程が実行される。具体的には、ねじ洗浄装置30が管Pの端部に向けて管軸方向に前進し、有機溶剤による洗浄が行われる。
【0018】
図2は、本実施形態の洗浄工程で用いることのできるねじ洗浄装置30の一例を概略的に示す模式図である。図2(a)は部分的に透視(筐体31の内部を透視)した正面図を、図2(b)は平面図を示す。ただし、図2(b)では、筐体31及びノズル32の図示を省略している。
図2に示すように、本実施形態のねじ洗浄装置30は、管Pの上方に位置決めされた筐体31と、筐体31に内蔵されたノズル32と、管Pの下方に位置決めされ、軸33A周りに回転可能な洗浄ブラシ33とを備えている。筐体31、ノズル32及び洗浄ブラシ33は、ノズル32がねじ加工が施された管Pの端部の直上に位置し、洗浄ブラシ33がねじ加工が施された管Pの端部の直下に位置するまで、一体として管Pの端部に向けて前進する。そして、前進動作を終えた後、ノズル32から洗浄液としての有機溶剤Sを噴出する。ノズル32から噴出した有機溶剤Sは、筐体31下面の開口部を介して、管Pの端部に散布される。この際、管PをターニングローラRによって周方向に回転させると共に、洗浄ブラシ33も軸33A周りに回転させて、洗浄ブラシ33で管Pの端部を擦る。以上の動作により、管Pの端部全周が洗浄され、ねじ切削やかえり取りの際に管端部に残存する潤滑剤や、かえり取りによって管端部に付着した切削屑が除去されることが期待できる。
ねじ洗浄装置30は、管Pの端部の洗浄を終えた後、元の位置に後退する。
【0019】
次に、図1に示すように、端部が洗浄された管Pは、ねじ乾燥装置40の設置位置に対向する位置まで横送りされ、洗浄された管端部を乾燥させる乾燥工程が実行される。具体的には、ねじ乾燥装置40が管Pの端部に向けて管軸方向に前進し、エアーによる乾燥が行われる。
【0020】
図3は、本実施形態の乾燥工程で用いることのできるねじ乾燥装置40の一例を概略的に示す模式図である。図3(a)は正面図を、図3(b)は斜視図を示す。ただし、図3(b)では、ノズル42の図示を省略している。
図3に示すように、本実施形態のねじ乾燥装置40は、管Pの外径よりも内径の大きな環状部材41と、環状部材41に取り付けられた複数のノズル42を備えている。環状部材41及びノズル42は、これらがねじ加工が施された管Pの端部を囲繞する位置まで、一体として管Pの端部に向けて前進する。そして、前進動作を終えた後、ノズル42から管Pの端部に向けてエアーAを噴出する。以上の動作により、前述した洗浄工程で管Pの端部に残存するおそれのある有機溶剤Sを乾燥させ得ることが期待できる。
ねじ乾燥装置40は、管Pの端部の乾燥を終えた後、元の位置に後退する。
【0021】
最後に、図1に示すように、端部が乾燥した管Pは、自動ねじ要素測定装置50の設置位置に対向する位置まで横送りされ、清浄雰囲気下で乾燥後の管端部のねじ要素を測定する測定工程が実行される。具体的には、管Pの端部が、清浄雰囲気下におかれた自動ねじ要素測定装置50の設置位置に向けて管軸方向に搬入される。より具体的には、自動ねじ要素測定装置50は正圧状態の清浄エアーで満たされた測定室内に設置されており、管Pの端部が、この測定室に設けられた開口部から測定室体内に搬入され、自動ねじ要素測定装置50でねじ要素が測定される。自動ねじ要素測定装置50としては、例えば、特許文献1、2に記載のような光学式の自動測定装置を用いることが可能である。ねじ要素の測定を終えた管Pは、前記測定室の開口部を介して、前記測定室の外部に搬出された後、横送りされる。
【0022】
以上に説明した本実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法は、ねじ加工(ねじ切削及びかえり取り)後の管端部を洗浄する洗浄工程を含むため、ねじ要素の測定精度劣化の要因となり得る、ねじ切削やかえり取りの際に管端部に残存する潤滑剤や、かえり取りによって管端部に付着した切削屑が洗浄されることが期待できる。
また、本実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法は、洗浄された管端部を乾燥させる乾燥工程を含むため、洗浄工程で管端部に残存するおそれのある有機溶剤Sが乾燥し、有機溶剤Sによるねじ要素の測定精度の劣化を招くことを防止可能である。
さらに、本実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法は、清浄雰囲気下におかれた管端部のねじ要素を測定する測定工程を含むため、精度良く、ねじ要素を測定することが可能である。
【0023】
なお、本実施形態では、かえり取り装置20、ねじ洗浄装置30及びねじ乾燥装置40が、管Pの端部に向けて管軸方向に前進し、管Pの端部のかえり取り、洗浄及び乾燥を終えた後、元の位置に後退する態様について説明した。しかしながら、本発明は、このような態様に限るものではなく、管Pが各装置20〜40の設置位置に向けて管軸方向に搬入され、管Pの端部のかえり取り、洗浄及び乾燥を終えた後、管Pが各装置20〜40から管軸方向に搬出される態様とすることも可能である。
【0024】
<第2実施形態>
前述した第1実施形態では、ねじ乾燥装置40による乾燥工程でPの端部が乾燥した後、自動ねじ要素測定装置50による測定工程で管Pの端部のねじ要素が測定されるまでの間、管Pの端部は、ねじ加工ライン100の雰囲気に晒されることになる。このため、管Pの端部のねじ要素が測定される前に、ねじ加工ライン100の雰囲気中に存在するパーティクルが管Pの端部に付着して、ねじ要素の測定精度の劣化を招くおそれがある。
【0025】
そこで、本発明者らは、ねじ加工ライン100の雰囲気中に存在するパーティクルの影響を評価する試験を行った。
まず、本発明者らは、ねじ加工ライン100において2日間に亘り、パーティクルカウンタを用いて、パーティクル径0.3μm、0.5μm及び1μmのパーティクル密度(単位体積当たりのパーティクル個数)を測定した。パーティクル密度の測定には、市販のパーティクルカウンタを用いた。
図4(a)は、測定したパーティクル密度の評価時間内における平均値を示すグラフである。図4(b)は、測定したパーティクル密度の評価時間内における最大値を示すグラフである。本発明者らは、図4(a)、(b)に示すパーティクル径0.3μm、0.5μm及び1μmのパーティクル密度の測定値を外挿し(図4(a)、(b)に示す破線が外挿結果)、パーティクル径5μm及び10μmのパーティクル密度を推定した。
【0026】
次に、本発明者らは、ねじ加工ライン100の雰囲気に晒された状態で搬送される管Pのねじ部の搬送距離(5mと仮定)と、ねじ部外径及びねじ部長さとから、ねじ部が上記の搬送中に通過する領域の体積を算出した。そして、この算出した体積中に存在するパーティクルが管Pのねじ部全体に均等に付着すると仮定した。具体的には、前述のようにして測定したパーティクル径1μmのパーティクル密度と、上記の算出した体積とを乗算し、管Pのねじ部全体に付着するパーティクル径1μmのパーティクルの個数を算出した。また、前述のようにして推定したパーティクル径5μm及び10μmのパーティクル密度と、上記の算出した体積とを乗算し、管Pのねじ部全体に付着するパーティクル径5μm及び10μmのパーティクルの個数を算出した。
【0027】
さらに、本発明者らは、ねじ要素測定装置として、光源と受光手段とを備えた光学式の測定装置を用いる場合を想定し、受光手段の焦点深度を0.2mm、受光手段の撮像視野を5mm×5mmと仮定した。そして、管Pのねじ部全体に付着するパーティクルのうち、上記の評価領域(5mm×5mm×0.2mm)に付着するパーティクルの個数を算出した。
【0028】
図4(c)は、上記のようにして算出した、評価領域に付着するパーティクルの個数を示す図である。図4(c)では、管Pの外径が178mmの場合と60mmの場合の双方について、評価領域に付着するパーティクルの個数を示している。
図4(c)から分かるように、パーティクル径5μmのパーティクルは、多い場合には7〜8%程度の確率で、管Pのねじ部の評価領域に付着する(換言すれば、100本の管Pのうち、7〜8本の管Pのねじ部の評価領域に付着する)ことになる。また、パーティクル径10μmのパーティクルでも、多い場合には3%程度の確率で、管Pのねじ部の評価領域に付着することになる。さらに、パーティクル径1μmのパーティクルは、通常でも15%程度の確率で、多い場合には70%程度の確率で、管Pのねじ部の評価領域に付着することになる。
ねじ要素の要求測定精度が5μm程度であり、管Pの全数を精度良く測定しようとすれば、上記のようなパーティクルの影響は無視できないことになる。
【0029】
このため、少なくとも乾燥工程(洗浄された管端部を乾燥させる工程)から測定工程(管端部のねじ要素を測定する工程)までの間において、ねじ加工後の管端部が清浄雰囲気下におかれることが望ましい。本発明の第2実施形態では、この点を考慮している。
【0030】
以下、本発明の第2実施形態について、前述した第1実施形態と異なる点を主として説明し、第1実施形態と同じ点については説明を適宜省略する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法を実施するねじ加工ラインの概略構成を示す模式図である。
図5に示すように、本実施形態のねじ加工ライン100Aでも、所定の搬送装置(図示せず)によって、順次搬送される管Pの端部にねじ加工(ねじ切削及びかえり取り)が施される。第1実施形態と同様に、ねじ切削にはねじ切削用旋盤10が用いられ、かえり取りにはかえり取り装置20が用いられる。
【0031】
端部にねじ加工が施された管Pは、第1実施形態と同様に、ねじ洗浄装置30の設置位置に対向する位置まで横送りされ、ねじ加工後の管端部を洗浄する洗浄工程が実行される。具体的には、ねじ洗浄装置30が管Pの端部に向けて管軸方向に前進し、有機溶剤による洗浄が行われる。ねじ洗浄装置30は、管Pの端部の洗浄を終えた後、元の位置に後退する。
【0032】
次に、図5に示すように、端部が洗浄された管Pは、洗浄維持装置60の設置位置に対向する位置まで横送りされ、洗浄された管端部を乾燥させる乾燥工程が実行される。具体的には、まず管Pの端部が清浄維持装置60内に搬入される。そして、管Pの端部が清浄維持装置60内に位置する状態で、管Pが横送りされ、この間に清浄維持装置60内の清浄エアーによって管Pの端部が乾燥する。
【0033】
図6は、本実施形態で用いることのできる清浄維持装置60の一例を概略的に示す模式図である。図6(a)は斜視図を、図6(b)は側面視断面図を示す。
本実施形態の清浄維持装置60は、本件出願人が提案している特開2003−248158号公報に記載の「清浄空間形成装置」の技術思想を適用したものである。
具体的には、図6に示すように、本実施形態の清浄維持装置60は、第1室61と、第2室62と、第1室61と第2室62とを仕切るメッシュフィルタ(例えば、メッシュの大きさは5μm以下とされる)63とを備えている。管Pが搬入される側の第2室62の壁面は開口している。また、自動ねじ要素測定装置50が設置された測定室51に対向する側の第2室62の壁面の一部(管Pが測定室51内に搬入される箇所)も開口しており、測定室51と連通している。
【0034】
清浄維持装置60の第1室61内には、配管65を介して、エアーフィルタや加圧装置を具備するエアー供給源64から正圧状態の清浄エアーが供給される。第1室61内に供給された清浄エアーは、メッシュフィルタ63を通過する過程でメッシュの大きさに応じたパーティクルが除去され、第2室62内に供給される。第2室62内に供給された清浄エアーは、第2室62の開口部を介して外部に流出する。
以上の構成を有する清浄維持装置60により、管Pが横送りされる過程において、管Pの端部が清浄雰囲気下におかれると同時に、管Pの端部を乾燥させることができる。
【0035】
最後に、管Pの端部が、正圧状態の清浄エアーで満たされた測定室51内に搬入され、測定室51内に設置された自動ねじ要素測定装置50でねじ要素が測定される。ねじ要素の測定を終えた管Pは、測定室51及び第2室62の開口部を介して、第2室62内に搬出され、更に第2室62の開口部を介して、第2室62の外部に搬出された後、横送りされる。
【0036】
以上に説明した本実施形態に係る管端部のねじ要素測定方法によれば、乾燥工程から測定工程までの間において、管Pの端部が清浄雰囲気下におかれる。このため、本実施形態に係る方法では、前述した第1実施形態に係る方法の利点に加えて、ねじ加工ライン100Aの雰囲気中に存在するパーティクルが管端部に付着してねじ要素の測定精度の劣化を招くおそれが低減し、より一層精度良くねじ要素を測定することが可能である。
【0037】
なお、本実施形態では、洗浄維持装置60内の清浄エアーで管端部を乾燥させる態様について説明したが、本発明はこのような態様に限るものではない。例えば、清浄維持装置60内に、第1実施形態で説明したねじ乾燥装置40を設置し、この乾燥装置40で管端部を乾燥させる態様とすることも可能である。
【0038】
また、本実施形態では、乾燥工程から測定工程までの間において、管Pの端部が清浄雰囲気下におかれる態様について説明したが、本発明はこのような態様に限るものではない。例えば、図7に示すような清浄維持装置60Aを用いて、清浄工程から測定工程までの間において、管Pの端部が清浄雰囲気下におかれる態様とすることも可能である。
【0039】
具体的に説明すれば、図7に示す清浄維持装置60Aは、第2室62内に、第1実施形態で説明したねじ洗浄装置30及びねじ乾燥装置40が設置されている。また、ねじ洗浄装置30を用いて洗浄工程を実行する第2室62内のスペース(ねじ洗浄スペース)と、ねじ乾燥装置40を用いて乾燥工程を実行する第2室62内のスペース(ねじ乾燥スペース)とが、開閉自在のシャッター66Aで仕切られている。また、ねじ乾燥スペースと、第2室62内のその他のスペースとが、開閉自在のシャッター66Bで仕切られている。ねじ洗浄スペースには、配管65Dを介して清浄エアーが供給され、ねじ乾燥スペースには、配管65Cを介して清浄エアーが供給され、第2室62内のその他のスペースには、配管65A、65Bを介して清浄エアーが供給される。
清浄維持装置60Aのその他の構成は、前述した清浄維持装置60と同様である。
【0040】
以上の構成を有する清浄維持装置60Aで洗浄工程を実行する際には、ねじ洗浄スペースに管Pの端部が搬入されると共に、ねじ洗浄装置30が管Pの端部に向けて第2室62内を前進し、有機溶剤による洗浄が行われる。この洗浄工程を実行する際には、シャッター66Aが閉じられ、隣接するねじ乾燥スペースへの有機溶媒S等の飛散が防止される。ねじ洗浄装置30は、管Pの端部の洗浄を終えた後、元の位置に後退する。次に、シャッター66Aが開き、管Pは、管端部が第2室62内に位置する状態で、ねじ乾燥スペースまで横送りされる。
【0041】
乾燥工程を実行する際には、ねじ乾燥装置40が管Pの端部に向けて第2室62内を前進し、エアーによる乾燥が行われる。この乾燥工程を実行する際には、シャッター66Bが閉じられ、隣接するスペースへの有機溶媒S等の飛散が防止される。ねじ乾燥装置40は、管Pの端部の乾燥を終えた後、元の位置に後退する。次に、シャッター66Bが開き、管Pは、管端部が第2室62内に位置する状態で、隣接するスペースまで横送りされる。
以降の動作は、前述した清浄維持装置60を用いる場合と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
以上に説明した清浄維持装置60Aを用いた方法によれば、洗浄工程から測定工程までの間において、管Pの端部が清浄雰囲気下におかれるため、ねじ加工ライン100Aの雰囲気中に存在するパーティクルが管端部に付着してねじ要素の測定精度の劣化を招くおそれがより一層低減されることが期待できる。
【0043】
なお、以上に説明した清浄維持装置60Aを用いた方法では、ねじ乾燥装置40を用いて管端部を乾燥させる態様について説明したが、清浄維持装置60の場合と同様に、ねじ乾燥装置40を設置せずに、清浄維持装置60A内の清浄エアーで管端部を乾燥させる態様にすることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
10・・・ねじ切削用旋盤
20・・・かえり取り装置
30・・・ねじ洗浄装置
40・・・ねじ乾燥装置
50・・・自動ねじ要素測定装置
100・・・ねじ加工ライン
P・・・管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次搬送される管の端部にねじ加工が施されるねじ加工ライン上で、ねじ加工後の管端部のねじ要素を自動的に測定する方法であって、
ねじ加工後の管端部を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄された管端部を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥後の管端部のねじ要素を測定する測定工程とを含み、
少なくとも前記測定工程においては、管端部が清浄雰囲気下におかれることを特徴とする管端部のねじ要素測定方法。
【請求項2】
少なくとも前記乾燥工程から前記測定工程までの間において、前記ねじ加工後の管端部が清浄雰囲気下におかれることを特徴とする請求項1に記載の管端部のねじ要素測定方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203220(P2011−203220A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73514(P2010−73514)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】