説明

粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料、それらの製造法及びそれらの使用

乳化剤(A)の存在下に、(1)粉体スラリー又は粉体塗料の液状又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)1種を水性媒体(C)中で乳化し、これにより液体粒子(D)の水性エマルジヨンを生じさせ、(2)このエマルジヨンを冷却して、寸法安定な粒子(D)の懸濁液、即ち粉体スラリーを形成させ、かつこの際、(3)寸法安定な粒子(D)、即ち粉体塗料を単離することにより製造可能である、粉体スラリー及び粉体塗料であって、この際、乳化剤(A)は、50〜250mg(KOH)/gのヒドロキシル価を有し、かつ水性媒体中での、(a1)ヒドロキシ基含有オレフィン系不飽和モノマー及び(a2)群:(a21)一般式(I)RC=CR(I)(式中、少なくとも2つの置換基は、置換又は非置換のアリール、アリールアルキル又はアリールシクロアルキル基を表す)のモノマー;(a22)オレフィン系不飽和テルペン炭化水素及び(a23)二量体α−アルキルビニル芳香族化合物から成る群から選択されるオレフィン系不飽和モノマーのラジカル共重合によって製造可能である、粉体スラリー及び粉体塗料;それらの製造法及びそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化法により製造可能である新規の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料に関する。更に本発明は、乳化による新規粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料の製造法に関する。更に本発明は、この新規粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料を、被覆剤、接着剤及びシーリング組成物として使用すること又はそれらの製造法並びに被覆剤、接着剤及びシーリング組成物を、被覆、接着層及びシーリングの製造のために使用することに関する。
【0002】
背景技術
ドイツ特許出願DE10126651A1から、次のようにして製造可能である粉体スラリー及び粉体塗料が公知である:
(1)粉体スラリー又は粉体塗料の液状又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)少なくとも1種を、水性媒体(C)中で、乳化剤(その水溶液又は分散液は臨界ミセル形成濃度(KMK)で、表面張力>30mN/mを有する)の存在下に乳化し、これにより液体粒子(D)の水性エマルジヨンを生じさせ、
(2)このエマルジヨンを冷却して、寸法安定な粒子(D)の懸濁液、即ち粉体スラリーを形成する、かつこの際、粉体塗料は、
(3)寸法安定な粒子(D)、即ち粉体塗料を単離することにより製造可能である。公知のように、乳化剤としては、主に、
− 第1のオレフィン系不飽和モノマー少なくとも1種及び
− 第1のオレフィン系不飽和モノマーとは異なる、一般式I
C=CR (I)
[式中、基R、R、R及びRはそれぞれ相互に無関係に、水素原子、置換又は非置換のアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基を表す、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2個は置換又は非置換のアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基、殊に置換又は非置換のアリール基を表すことを条件とする]の第2のオレフィン系不飽和モノマー少なくとも1種
を水性媒体中で1段−又は多段ラジカル共重合することによって製造可能であるコポリマーが、溶融された又は固体の粒子及び乳化剤の量に対して0.01〜5質%の量で、乳化剤として使用される。
【0003】
公知の粉体スラリー及び粉体塗料は、乳化法によって簡単な方法で、確かにかつ再現可能に製造することができ、かつ所定の特殊性を確実に満足している。これらは、被覆、殊に非常に良好な光学的特性及び非常に高い光−、化学品−、水−、凝縮水−及び気候−耐性を有する、1回塗り−又は重ね塗り色−及び/又は効果付与性塗装、複合効果層及び透明塗装を生じる。これらは、殊に濁り及び不均一性を有しない。これらは、固くてフレキシブルであり、かつ耐引掻き性である。これらは、非常に良好なリフロー特性、優れた層間付着性及び慣用で公知の自動車補修塗装のための良好〜非常に良好な付着性を有する。
【0004】
しかしながら、ESTA−適用の場合の公知粉体スラリーの剪断安定性には、なお問題がある。
【0005】
更に、公知の粉体スラリー及び粉体塗料は、屡々、さもなければ非常に良好な使用技術的特性を害する不充分な流展性を示す。
【0006】
更に、マーケット、殊に自動車製造者及びその顧客の常に向上性の要求を完全に満足させるためには、公知の粉体スラリー及び粉体塗料から製造される被覆の光沢及び曇りを更に改良しなければならない。
【0007】
もとより、前記の課題を特別有利な方法で解決し、かつ分散液で将来起こりうる技術的問題の解決のための器具を開発するために、ドイツ特許出願DE10126651A1の安定剤、分散剤又は乳化剤に関する選択を提供することが望ましい。
【0008】
発明が解決しようとする課題
本発明の目的物は、殊に、簡単な方法で確かにかつ再現可能に製造でき、かつ前記の特殊性を確実に満足する、乳化法によって製造可能である新規粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び新規粉体塗料である。殊にこの新規粉体スラリーは、ESTA−適用の際に高い剪断安定性を有すべきである。
【0009】
特に、新規粉体スラリー及び粉体塗料は、被覆、殊に殊に非常に良好な光学的特性及び非常に高い光−、化学品−、水−、凝縮水−及び気候−耐性を有し、非常に良好なリフロー特性、優れた層間付着性及び慣用かつ公知の自動車補修塗装のための非常に良好な付着性を有し、かつ固くフレキシブルで、耐引掻き性であり、濁り及び不均一性を有しない、1回塗り又は重ね塗り色−及び/又は効果付与性塗装、複合効果層及び透明塗装を提供すべきである。この場合に、これら新規の被覆は光沢及び曇りに関して更に改良されているべきである。
【0010】
更に本発明の1課題は、簡単な方法で確かにかつ再現可能な、特殊化要件を満足する粉体スラリー及び粉体塗料を提供する、粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料の新規製造法を見つけることである。
【0011】
更に本発明の1課題は、乳化によって粉体スラリー及び粉体塗料を製造する方法のための、差し当たり生じる乳化された液体粒子及びエマルジヨンの冷却の後に生じる寸法安定な粉体塗料粒子を双方同時に必要な程度に安定化し、かつ従来公知の安定剤、分散剤及び乳化剤に関する優れた選択性を提供する、新規の安定剤、分散剤又は乳化剤を得ることである。
【0012】
課題を解決するための手段
相応して、少なくとも1種の乳化剤(A)の存在下に製造可能である、新規の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料が発見され、この際、この粉体スラリーは、
(1)粉体スラリー又は粉体塗料の液状又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)少なくとも1種を水性媒体(C)中で乳化して、それにより液体粒子(D)の水性エマルジヨンを生じさせ、
(2)このエマルジヨンを冷却して、寸法安定な粒子(D)の懸濁液、即ち粉体スラリーを形成することにより製造可能であり、かつこの際、粉体塗料は、
(3)寸法安定な粒子(D)、即ち粉体塗料を単離することにより製造可能であり、
この際、乳化剤(A)は、50〜250mg(KOH)/gのヒドロキシル価を有し、
水性媒体中での、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシル基含有オレフィン系不飽和モノマー及び
(a2)オレフィン系不飽和モノマー(a1)とは異なる、以下の(a21)〜(a23)からなる群から選択される、少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー
(a21) 一般式I
C=R (I)
[式中、基R、R、R及びRはそれぞれ相互に無関係に、水素原子、置換又は非置換のアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基を表す、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2つは置換又は非置換のアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基、殊に置換又は非置換のアリール基を表すことを条件とする]のモノマー;
(a22) オレフィン系不飽和テルペン炭化水素;及び
(a23) 二量体α−アルキルビニル芳香族化合物;
の1段−又は多段ラジカル共重合によって製造可能である、コポリマーの群から選択されている。
【0013】
以下において、この新規粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料を、「本発明による粉体スラリー及び粉体塗料」と称する。
【0014】
更に、乳化剤(A)の存在下に本発明による粉体スラリー及び粉体塗料を製造する新規方法が発見され、ここでは、
(1)粉体スラリー又は粉体塗料の液状又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)少なくとも1種を水性媒体(C)中で乳化して、それにより液体粒子(D)の水性エマルジヨンを生じさせ、かつ
(2)このエマルジヨンを冷却して、寸法安定な粒子(D)の懸濁液、即ち粉体スラリーを形成することができ、かつ粉体塗料の製造のために、
(3)寸法安定な粒子(D)、即ち粉体塗料を単離させる。
【0015】
以下において、溶融乳化による粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料のこの新規製造法を、「本発明の方法」と称する。
【0016】
もちろん、水性媒体中での、
(a1)少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー及び
(a2)オレフィン系不飽和モノマー(a1)とは異なる、以下の(a21)〜(a23)からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー
(a21) 一般式I
C=R (I)
のモノマー
(a22) オレフィン系不飽和テルペン炭化水素及び
(a23) 二量体α−アルキルビニル芳香族化合物
の1段又は多段ラジカル共重合によって製造可能である、ヒドロキシル価50〜250mg(KOH)/gを有するコポリマー(A)の、乳化剤としての新規使用(以後、これを「本発明による使用」と称する)が発見された。
【0017】
更なる本発明の課題は、明細書の記載から明らかである。
【0018】
発明の利点
技術水準の観点から、本発明の根底にある課題が、本発明による使用、本発明の方法及び本発明による粉体スラリー及び粉体塗料を用いて解決できたことは意想外であり、かつ当業者には予測可能ではなかった。
【0019】
コポリマー(A)が、本発明の方法及び本発明による使用のために考慮される必要な特性を有することは殊に意想外であった。更に、これが殊に、本発明の方法の範囲で従来公知の乳化剤に代わる優れた選択を提供し、差し当たり生じる乳化された液体粒子(D)及びエマルジヨンの冷却の後に生じる寸法安定な粒子(D)を、双方同時に必要な程度に安定化することは、なおさら意想外であった。従ってこれは、乳化剤、懸濁液及びエマルジヨンの分野で一般的で、かつ粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料の製造の分野で将来現れうる技術的問題を解決するための器具を特別著しく拡大及び改良することを可能とした。
【0020】
更に、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、殊に本発明の方法による簡単な方法で、確かにかつ再現可能に製造することができ、所定の特殊性を確実に満足し、優れて加工することができたことは意想外であった。殊にこの新規粉体スラリーは、ESTA−適用時に高い剪断安定性を有した。
【0021】
意外にも、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、被覆、殊に、非常に良好な光学的特性及び非常に高い光−、化学品−、水−、凝縮水−及び気候−耐性、非常に良好なリフロー特性、優れた層間付着性及び慣用かつ公知の自動車補修塗装のための非常に良好な接着性を有し、並びに固くてフレキシブルで、かつ耐引掻き性であり、濁り及び不均一性を有しない、1回塗り又は重ね塗り色−及び/又は効果付与性塗装、複合効果層及び透明塗装を提供した。この場合に、この新規被覆は光沢及び曇りに関して更に改善された。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明によれば、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の製造のために、少なくとも1種の乳化剤(A)、殊に1種が使用される。この乳化剤(A)の量は、広範に変えることができ、従って優れて個々の場合の必要性に適合させることができる。この乳化剤(A)は、以後に詳細に記載されている粒子(D)の水性エマルジヨンが、それぞれ、その固体含分に対して、乳化剤(A)0.01〜1、有利に0.1〜0.5、殊に0.15〜0.4質量%を含有するような量で使用されるのが有利である。
【0023】
ここで、かつ以下において、「固体含分」とは、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料から製造される本発明による被覆、接着層及びシーリング、殊に被覆の固体を構成している粒子(D)の水性エマルジヨンの成分の合計であると理解される。この成分の主要分、即ちこれら成分の合計に対して50質量%を上回る、好ましくは60質量%を上回る、殊に70質量%を上回る分が、粒子(D)中で濃縮されているのが有利である。全ての当該成分がこの粒子(D)中に含有されているのが好ましい。
【0024】
本発明によれば、乳化剤(A)として、水性媒体中での、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシル基含有オレフィン系不飽和モノマー及び
(a2)オレフィン系不飽和モノマー(a1)とは異なる、以下の(a21)〜(a23)からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー
(a21) 一般式I
C=R (I)
[式中、基R、R、R及びRはそれぞれ相互に無関係に、水素原子、置換又は非置換のアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基を表し、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2つは置換又は非置換のアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基、殊に置換又は非置換のアリール基を表すことを条件とする]のモノマー;
(a22) オレフィン系不飽和テルペン炭化水素;及び
(a23) 二量体α−アルキルビニル芳香族化合物;
の1段−又は多段ラジカル共重合によって製造可能である、コポリマーの群から選択される、50〜250mg(KOH)/gのヒドロキシル価のコポリマー(A)が使用される。
【0025】
モノマー(a1)としては、全ての慣用かつ公知のヒドロキシル基含有オレフィン系不飽和モノマーを使用することができる。好適なモノマー(a1)の例は次のものである:アクリル酸、メタクリル酸又は他のα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル(これらは、酸でエステル化されているアルキレングリコールに由来するか又はα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸とアルキレンオキシドとの反応により得られる)、殊にアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル(ここで、ヒドロキシアルキル基は好ましくは20個までの炭素原子を含有する)、例えば2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシブチル−、4−ヒドロキシブチルアクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート、−クロトネート、−マレイネート、−フマレート又は−イタコネート;又はヒドロキシシクロアルキルエステル 、例えば1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−ジメタノール−又はメチルプロパンジオールモノアクリレート、−モノメタクリレート、−モノエタクリレート、−モノクロトネート、−モノマレイネート、−モノフマレート又は−モノイタコネート;又は環状エステル、例えばε−カプロラクトン及びそのヒドロキシアルキル−又はシクロアルキルエステルからの反応生成物;又はオレフィン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール又はポリオール、例えばトリメチロールプロパンモノ−又はジアリルエーテル又はペンタエリスリットモノ−、−ジ−又はトリアリルエーテル。一般に、高官能性モノマー(a1)は、下位量で、即ちコポリマー(A)の架橋又はゲル化をもたらさない量で使用される。
【0026】
コポリマー(A)の製造時に、モノマー(a1)は、コポリマー(A)が50〜250、好ましくは80〜220、殊に100〜200mg(KOH)/gのヒドロキシル価を有するような量で使用される。
【0027】
モノマー(a2)としては、一般式Iのモノマー(a21)を使用することができる。
【0028】
一般式I中で、基R、R、R及びRはそれぞれ相互に無関係に、水素原子、置換又は非置換のアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基を表す、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2つは、置換又は非置換のアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基、殊に置換又は非置換のアリール基を表すことを条件とする。
【0029】
好適なアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル又は2−エチルヘキシルである。
【0030】
好適なシクロアルキル基の例は、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0031】
好適なアルキルシクロアルキル基の例は、メチレンシクロヘキサン、エチレンシクロヘキサン又はプロパン−1,3−ジイル−シクロヘキサンである。
【0032】
好適なシクロアルキルアルキル基の例は、2−、3−又は4−メチル−、−エチル−、−プロピル−又は−ブチルシクロヘキシ−1−イルである。
【0033】
好適なアリール基の例は、フェニル、ナフチル又はビフェニリルである。
【0034】
好適なアルキルアリール基の例は、ベンジル又はエチレン−又はプロピレン−1,3−ジイル−ベンゼンである。
【0035】
好適なシクロアルキルアリール基の例は、2−、3−又は4−フェニルシクロヘキシ−1−イルである。
【0036】
好適なアリールアルキル基の例は、2−、3−又は4−メチル−、−エチル−、−プロピル−又は−ブチルフェニ−1−イルである。
【0037】
好適なアリールシクロアルキル基の例は、2−、3−又は4−シクロヘキシルフェニ−1−イルである。
【0038】
前記の基R、R、R及びRは置換されていてよい。このために、電子吸引性又は電子供与性原子又は有機基を使用することができる。
【0039】
好適な置換基の例は次のものである:ハロゲン原子、殊に塩素及び弗素、ニトリル基、ニトロ基、部分的又は完全にハロゲン化された、殊に塩素化及び/又は弗素化されたアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−及びアリールシクロアルキル基、前記の例に挙げられている、殊にt−ブチルを包含;アリールオキシ−、アルキルオキシ−及びシクロアルキルオキシ基、殊にフェノキシ、ナフトキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブチルオキシ又はシクロヘキシルオキシ;アリールチオ−及びアルキルチオ−及びシクロアルキルチオ基、殊にフェニルチオ、ナフチルチオ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ又はシクロヘキシルチオ;ヒドロキシル基;及び/又は1級、2級及び/又は3級のアミノ基、殊に、アミノ、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N−プロピルアミノ、N−フェニルアミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジピロピルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N,N−ジシクロヘキシルアミノ、N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ又はN−エチル−N−メチルアミノ。
【0040】
本発明により特別好ましく使用されるモノマー(a121)の例は、ジフェニルエチレン、ジナフタリンエチレン、シス−又はトランス−スチルベン、ビニリデン−ビス(4−N,N−ジメチルアミノベンゼン)、ビニリデン−ビス(4−アミノベンゼン)又はビニリデン−ビス(4−ニトロベンゼン)である。
【0041】
モノマー(a21)は、個々に又はモノマー(a21)少なくとも2種からの混合物として使用することができる。
【0042】
反応実施及び生じるコポリマー(A)、殊にアクリレートコポリマー(A)の特性を考慮すると、ジフェニルエチレン(a21)が全く特別有利であり、従って一般式Iのモノマー(a21)として全く特別好ましく使用される。
【0043】
更に、モノマー(a2)として、オレフィン系不飽和テルペン炭化水素(a22)を使用することができる。
【0044】
オレフィン系不飽和テルペン炭化水素(a22)は、慣用かつ公知の、天然由来の又は合成の化合物である。反応性官能基、例えばヒドロキシル基、アミノ基又はカルボニル基を含有しないオレフィン系不飽和テルペン炭化水素を使用するのが有利である。
【0045】
オレフィン系不飽和テルペン炭化水素(a22)は、非環式ジテルペン、単環式テルペン、二環式テルペン、非環式セスキテルペン、単環式セスキテルペン、二環式セスキテルペン、三環式セスキテルペン、非環式ジテルペン、単環式ジテルペン及び三環式ジテルペンから成る群から選択されるのが好ましい。
【0046】
テルペン炭化水素(a22)は、非環式モノテルペン、単環式テルペン及び二環式テルペンから成る群から選択されるのが特別好ましい。
【0047】
テルペン炭化水素(a22)は、オシメン(Ocimen)、ミルセン(Myrcen)、メンテン、メンタジエン、α−ピネン及びβ−ピネンから成る群から選択されるのが全く特別好ましい。
【0048】
殊に、メンタジエン(a22)は、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、リモネン及びジペンテンから成る群から選択される。
【0049】
γ−テルピネンが特別にモノマー(a22)として使用される。
【0050】
モノマー(a2)として、もちろん、二量体α−アルキルビニル芳香族化合物(a23)及び有利には二量体α−アルキルスチレン(a23)、殊に二量体α−メチルスチレン(a23)を使用することができる。
【0051】
前記のオレフィン系不飽和モノマー(a1)及び(a2)は、なおこれとは異なるオレフィン系不飽和モノマー(a3)少なくとも1種と共重合することができる。
【0052】
好適なモノマー(a3)の例は次のものである:
(a31) 本質的に酸基不含の(メタ)アクリル酸エステル、例えばアルキル基中に炭素原子数20までを有する(メタ)アクリル酸アルキル−又は−シクロアルキルエステル、殊にメチル−、エチル−、プロピル−、n−ブチル−、s−ブチル−、t−ブチル−、ヘキシル−、エチルヘキシル−、ステアリール−及びラウリルアクリレート又は−メタクリレート;脂環式(メタ)アクリル酸エステル、殊にシクロヘキシル−、イソボルニル−、ジシクロペンタジエニル−、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−メタノール−又はt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸オキサアルキルエステル又は−オキサシクロアルキルエステル、例えばエチルトリグリコール(メタ)アクリレート及び有利に550の分子量Mnを有するメトキシオリゴグリコール(メタ)アクリルレート又は他のエトキシル化及び/又はプロポキシル化されたヒドロキシル基不含の(メタ)アクリル酸誘導体。これらは、下位量の高官能性(メタ)アクリル酸アルキル−又は−シクロアルキルエステル、例えばエチレングリコール−、プロピレングリコール−、ジエチレングリコール−、ジプロピレングリコール−、ブチレングリコール−、ペンタン−1,5−ジオール−、ヘキサン−1,6−ジオール−、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−ジメタノール−又はシクロヘキサン−1,2−、−1,3−又は−1,4−ジオール−ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン−ジ−又は−トリ(メタ)アクリレート;又はペンタエリスリット−ジ−、−トリ−又は−テトラ(メタ)アクリレートを含有することができる。下位量の高官能性モノマーとは、コポリマー(A)の架橋又はゲル化をもたらさないような量であると理解すべきである。
(a32) 1分子当たり少なくとも1個のアミノ基、アルコキシメチルアミノ基又はイミノ基を有し、本質的に酸基不含であるモノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、アリルアミン又はN−メチルイミノエチルアクリレート又はN,N−ジ(メトキシメチル)−アミノエチピルアクリレート及び−メタクリレート又はN,N−ジ(ブトキシメチル)アミノプロピルアクリレート及び−メタクリレート。
(a33) 1分子当たり相応する酸アニオン基に移行可能である酸基少なくとも1個を有するモノマー、例えばアクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸;オレフィン系不飽和スルホン−又はホスホン酸又はこれらの部分エステル;又はマレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル又はフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル。
(a34) 分子中に炭素原子数5〜18を有するα−位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル。分枝したモノカルボン酸は、液状の強酸性触媒の存在下に、蟻酸又は一酸化炭素及び水とオレフィンとの反応によって得ることができ;オレフィンは、パラフィン系炭化水素、例えば鉱油フラクシヨンの分解−生成物であってよく、かつ、分枝鎖又は直鎖の非環式及び/又は脂環式オレフィンを含有することができる。このようなオレフィンと蟻酸との又は一酸化炭素及び水との反応時に、そのカルボキシル基が特に4級炭素原子上に存在するカルボン酸からの混合物が生じる。他のオレフィン系出発物質は、例えばプロピレントリマー、プロピレンテトラマー及びジイソブチレンである。しかしながらビニルエステル(a34)は、自体公知の方法で、酸から製造することもでき、例えばこの際には、酸をアセチレンと反応させる。特別好ましくは、−良好な入手性の故に− C−原子数9〜11を有し、α−C−原子の所で分枝している飽和脂肪族モノカルボン酸、殊にベルサチック(R)酸−のビニルエステルが使用される。
(a35) アクリル酸及び/又はメタクリル酸と1分子当たりC−原子数5〜18を有する、α−位で分枝しているモノカルボン酸、殊にベルサチック(R)−酸のグリシジルエステルとの反応生成物又はこの反応生成物の代わりに、当量のアクリル酸及び/又はメタクリル酸(これらは、重合反応の間又は後に、1分子当たりC−原子数5〜18を有する、α−位で分枝したモノカルボン酸、殊にベルサチック(R)−酸のグリシジルエステルと反応される)。
(a36) 環式及び/又は非環式オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブテ−1−エン、ペンテ−1−エン、ヘキセ−1−エン、シクロヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン及び/又はジシクロペンタジエン。
(a37) (メタ)アクリル酸アミド、例えば(メタ)アクリル酸アミド、N−メチル−、N,N−ジメチル−、N−エチル−、N,N−ジエチル−、N−プロピル−、N,N−ジプロピル−、N−ブチル−、N,N−ジブチル−、N−シクロヘキシル−、N,N−シクロヘキシル−メチル−及び/又はN−メチロール−、N,N−ジメチロール−、N−メトキシメチル−、N,N−ジ(メトキシメチル)−、N−エトキシメチル−及び/又はN,N−ジ(エトキシエチル)−(メタ)アクリル酸アミド。最後に記載の種類のモノマーは、特に自己架橋性結合剤の製造のために使用される。
(a38) エポキシド基含有モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はイタコン酸のグリシジルエステル。
(a39) ビニル芳香族炭化水素、例えばスチレン、α−アルキルスチレン、殊にα−メチルスチレン及び/又はビニルトルエン;ビニル安息香酸(全異性体)、N,N−ジエチルアミノスチレン(全異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全異性体)、N,N−ジエチルアミノ−α−メチルスチレン(全異性体)及び/又はp−ビニルベンゼンスルホン酸。
(a310) ニトリル、例えばアクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル。
(a311) ビニル化合物、殊にビニル−及び/又はビニリデンジハロゲニド、例えば塩化ビニル、弗化ビニル、二塩化ビニリデン又は二弗化ビニリデン;N−ビニルアミド、例えばビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、1−ビニルイミダゾール又はN−ビニルピロリドン;ビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエ−テル及び/又はビニルシクロヘキシルエーテル;及び/又はビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル及び/又は2−メチル−2−エチルヘプタン酸のビニルエステル。
(a312) アリル化合物、殊にアリルエーテル及び−エステル、例えばアリルメチル−、−エチル−、−プロピル−又は−ブチルエーテル又はアリルアセテート、−プロピオネート又は−ブチレート。
(a313) 1000〜40000の数平均分子量Mn及び1分子当たり平均0.5〜2.5個のエチレン系不飽和二重結合を有するポリシロキサンマクロモノマー;殊に、例えばDE3807571A1の5〜7頁、DE3706095A1の3〜7欄、EP0358153B1の3〜6頁、US−A−4754014の5〜9欄、DE4421823A1又は国際特許出願WO92/22615の12頁18行〜18頁10行に記載されているような、2000〜20000、特に好ましくは2500〜10000、殊に3000〜7000の数平均分子量Mn及び1分子当たり平均して0.5〜2.5、好ましくは0.5〜1.5個のエチレン系不飽和二重結合を有する、ポリシロキサンマクロモノマー
及び/又は
(a314) ヒドロキシ官能性シランとエピクロロヒドリンとの反応及び引き続くこの反応生成物と(メタ)アクリル酸と及び/又は(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキル−及び/又はシクロアルキルエステルとの反応により製造可能である、アクリルオキシシラン−含有ビニルモノマー(例えばモノマーa112参照)。
【0053】
前記のモノマー(a31)〜(a314)の各々は、自体単独でモノマー(a1)及び(a2)と重合することができる。本発明によれば、モノマー(a3)少なくとも2種を使用するのが有利である。それというのも、これによって、生じるコポリマー(A)の特性像が特別有利に非常に広く変動でき、その都度の本発明の方法に全く合目的に適合させることができるからである。殊にこの方法でコポリマー(A)中に更なる反応性官能基を導入することができ、それによってコポリマー(A)を、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料から製造される被覆、接着層及びシーリング中に架橋導入することができる。
【0054】
モノマー(a3)として、モノマー(a33)を使用するのが好ましい。その量は、広く変えることができ、個々の場合の要求に優れて適合させることができる。それを、酸価100〜400、全く特別好ましくは100〜350、殊に100〜300mg(KOH)/gのコポリマー(A)が生じるような量で使用することが特別好ましい。
【0055】
モノマー(a1)及び(a2)並びに場合によっては(a3)は、ラジカル重合開始剤少なくとも1種の存在下に相互に反応してコポリマー(A)に変換される。使用可能な開始剤の例としては次のものが挙げられる:ジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシド;ヒドロペルオキシド、例えばクモールヒドロペルオキシド又はt−ブチルヒドロペルオキシド;ペルエステル、例えばt−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペル−3,5,5−トリメチル−ヘキサノエート又はt−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート;カリウム−、ナトリウム−又はアンモニウムペルオキソジスルフェート;アゾジニトリル、例えばアゾビスイソブチロニトリル;C−C−切断開始剤、例えばベンズピナコールシリルエーテル;又は非酸化性開始剤と過酸化水素との組み合わせ物。
【0056】
比較的多量のラジカル重合開始剤を加えるのが有利であり、この際、それぞれモノマー(a1)及び(a2)並びに場合による(a3)及び開始剤の合計量に対する反応混合物の開始剤の割合は、好ましくは0.5〜50質量%、特別好ましくは1〜20質量%及び殊に2〜15質量%である。
【0057】
開始剤とモノマー(a2)との質量比は、4:1〜1:4、特に好ましくは3:1〜1:3、かつ殊に2:1〜1:2であるのが有利である。開始剤が記載の範囲内で過剰に使用される場合に更なる利点が生じる。
【0058】
ラジカル共重合を慣用かつ公知の装置中で、殊に撹拌タンク、管状反応器又はテイラー反応器中で実施するのが有利であり、この際、テイラー反応器は、反応媒体の動粘度が共重合に基づき著しく変わる、殊に上昇する場合でも、反応器の全長に渡ってテイラー流の条件を満足するように設計されている。
【0059】
この共重合は水性媒体中で実施される。
【0060】
水性媒体は本質的に水を含有する。この場合にこの水性媒体は、それらが共重合に負の影響をしないか又は全く抑制しないかぎりにおいて、後に詳述されている添加剤及び/又は有機溶剤及び/又はその他の溶解された固体、液体又はガス状の有機及び/又は無機の、低分子及び/又は高分子物質を下位量で含有することができる。本発明の範囲内で、概念「下位量」とは、水性媒体の水性特性を消さない量であると理解すべきである。しかしながら、この水性媒体は純粋な水であることもできる。
【0061】
この共重合を、少なくとも1種の塩基の存在下に実施するのが有利である。低分子量の塩基、例えば苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−、ジ−及びトリエチルアミン及び/又はジメチルエタノールアミン、殊にアンモニア及び/又はジ−及び/又はトリエタノールアミンが特別好ましい。
【0062】
この共重合は、室温を上回り、かつその都度使用されるモノマー(a1)及び(a2)並びに場合による(a3)の最低分解温度を下回る温度で有利に実施され、この際、10〜150℃、全く特別好ましくは70〜120℃、かつ殊に80〜110℃の温度範囲を選択するのが好ましい。
【0063】
特別易揮発性のモノマー(a1)及び(a2)並びに場合による(a3)を使用する場合には、この共重合は加圧下に、有利には1.5〜3000バール、好ましくは5〜1500及び殊に10〜1000バールで実施することもできる。
【0064】
分子量分布に関して、コポリマー(A)は全く制限されない。しかしながら、共重合を、標準としてのポリスチレンの使用下でのゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィを用いて測定される分子量分布Mw/Mnが、≦4、特別有利には≦2、殊に≦1.5並びに個々の場合には≦1.3にもなるように実施するのが有利である。コポリマー(A)の分子量は、モノマー(a1)及び(a2)並びに場合による(a3)とラジカル重合開始剤との割合の選択によって広範囲でコントロール可能である。この場合に、殊にモノマー(a2)の含分が分子量を決定し、しかも、モノマー(a2)の割合が多い程、得られる分子量は小さくなる。
【0065】
共重合によって生じるコポリマー(A)は、水性媒体との混合物として、通常は分散液(A)の形で生じる。これは、この形で直接、乳化剤(A)として使用することができるか又は固体(A)として単離し、次いで本発明の方法に、かつ本発明による使用に供することもできる。
【0066】
本発明の方法では、乳化剤(A)が、有利に水性媒体(C)を介して液体粒子(D)の水性エマルジヨン中に、かつ最後に寸法安定な粒子(D)の懸濁液中に導入される。
【0067】
着色された本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の製造時に使用される本発明の方法の1実施形では、乳化剤(A)が少なくとも1種の顔料ペースト又は顔料調製物を経て水性媒体(C)中に導入される。しかしながら、当該顔料ペースト又は顔料調製物が水性媒体(C)を形成することもできる。
【0068】
水性媒体(C)中の本発明により使用すべき乳化剤(A)の量は、著しく変えることができ、個々の場合の必要性により、殊に液体粒子(D)のエマルジヨンの固体含分によって左右される。この水性媒体(C)は、有利にはその都度の(C)に対して、乳化剤(A)を0.01〜5、殊に0.1〜2.5質量%の量で、かつ増粘剤(a2)を0.02〜10、殊に0.1〜5質量%の量で含有する。
【0069】
本発明の方法では、本発明により使用される乳化剤(A)と並んで、なお少なくとも1種の増粘剤(E)を使用することができる。それにもかかわらず、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料が、増粘剤(E)の使用なしでも製造することができることに、本発明の方法及び本発明による使用の特別な利点がある。
【0070】
使用される場合には、増粘剤(E)を、それぞれ後に記載の粒子(D)の水性エマルジヨンの固体含分に対して、0.01〜2、有利には0.1〜1、殊に0.3〜0.8質量%の量で使用するのが有利である。
【0071】
少なくとも1個の酸基を含有する(メタ)アクリレート(コ)ポリマー(E)、殊に(メタ)アクリレートコポリマー(E)をベースとする増粘剤(E)を使用するのが好ましい。この場合に、概念「(メタ)アクリレート」とは、慣用及び公知の意味で「アクリレート及び/又はメタクリレート」の短縮形と理解される。
【0072】
酸基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、燐酸エステル基及び硫酸エステル基からなる群から選択されること、殊にカルボキシル基が有利である。
【0073】
(メタ)アクリレート(コ)ポリマー(E)は、有利に、アクリル酸又はメタクリル酸のホモポリマー(E1)、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー(E2)及び(メタ)アクリル酸と少なくとも1種のこれとは異なる他のオレフィン系不飽和モノマーとのコポリマー(E3)から成る群から選択される。
【0074】
コポリマー(E3)を使用するのが好ましい。
【0075】
コポリマー(E3)は、(C〜C)−アルキル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸をベースとするメタクリレートコポリマー(E3)から成る群から選択されるのが特別好ましい。
【0076】
殊にメタクリレートコポリマー(E3)は、例えばドイツ特許出願DE10043405C1、11欄[0075]節に記載のように、酸性の低粘度エマルジヨンの形で使用される。このエマルジヨン(E3)は、市販の製品であり、例えばFirma Ciba Specialty Chemicals から、Viscalex(R)HV30又はLO30なる商品名で提供されている。
【0077】
本発明の方法で使用される出発物質、即ち本発明による粉体スラリー又は粉体塗料の成分は、本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の所望の組成及び硬化のメカニズムを考慮して選択される。
【0078】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、物理的に硬化することができる。
【0079】
本発明の範囲内で、概念「物理的硬化」とは、本発明による粉体スラリー又は粉体塗料の粒子からの層の硬化が成膜によることを意味し、この際、被覆内の結合は結合剤のポリマー分子のループ形成を介して行われる(この概念に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart, New York,1998,≧Bindemittel≦,73〜74頁参照)。あるいはこの成膜は、結合剤粒子の脱乳化を介しても行われる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart, New York ,1998,≧Haertung≦,274〜275頁参照)。このために通常は、架橋剤は不必要である。場合によってはこの物理的硬化は、空気酸素、熱又は化学線の照射により援助することができる。
【0080】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、熱的に硬化可能であることができる。この場合に、これらは自己架橋性であるか又は外的架橋性であることができる。
【0081】
本発明の範囲内で概念「自己架橋性」とは、自己架橋反応をする結合剤の特性を意味している。このための前提は、結合剤中に、既に架橋のために必要である相補的反応性の2種の官能基を含有していることである。これに反して外的架橋性とは、相補的反応性の官能基の1種がバインダー中に、かつ他種が硬化剤又は架橋剤中に存在することを意味している。これに関して補足的に、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart, New York,1998,≧Haertung≦,274〜276頁、殊に275頁、下部の記載が参照される。
【0082】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、化学線を用いて硬化可能である。
【0083】
この場合に、硬化は、化学線で活性化可能である結合を有する基を介して行われる。本発明の範囲で化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV−線、X−線又はガンマ線、殊にUV−線及び粒子線、例えば電子線、陽子線、中性子線、α−線又はβ−線、殊に電子線であると理解すべきである。
【0084】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、熱的に及び化学線を用いて硬化可能である。
【0085】
粉体スラリー又は粉体塗料において熱的及び化学線を用いる硬化を一緒に用いる場合には、用語「デュアルキュア」及び「デュアル−キュア−粉体スラリー」及び「デュアル−キュア−粉体塗料」も使用される。
【0086】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、有利に、1成分(1K)−系である。
【0087】
本発明の範囲内で、1成分(1K)−系とは、熱的に又は熱及び化学線で硬化する粉体スラリー及び粉体塗料であると理解され、この際に、結合剤及び架橋剤は懸濁された粒子中に相並んで存在する。そのための必要条件は、双方の成分が、高い温度で及び/又は化学線での照射時に初めて相互に架橋することである。
【0088】
本発明による粉体スラリーの寸法安定な粒子(D)の含有率は、非常に広く変動でき、個々の場合の必要性によって左右される。これは有利には、本発明による粉体スラリーの合計量に対してそれぞれ5.0〜60、好ましくは10〜55、特別好ましくは15〜50、全く特別好ましくは20〜50、殊に25〜50質量%である。
【0089】
同様に、本発明による粉体スラリーの寸法安定な粒子(D)の平均粒度は広く変動できる。これは、有利には0.1〜100、好ましくは0.2〜80、特別好ましくは0.3〜60、全く特別好ましくは0.4〜40、殊に0.5〜20μmであるの。全く特別要求水準の高い用途、例えば自動車第一塗装(Kraftfahrzeugerstlackierung)のためには、1〜10μmの粒子寸法が全く特別有利である。有利に平均粒度はレーザー回折法で測定される。平均粒度<1μmでは、有利に光子相関分光分析(Photonenkorrelationsspectro-skopie)が使用される。
【0090】
本発明による粉体塗料の寸法安定な粒子(D)の大きさも広く変動することができる。これは、有利に5〜500、好ましくは5〜400、特別好ましくは5〜300、全く特別好ましくは10〜200、殊に10〜100μmである。平均粒度は、有利に10〜300、好ましくは10〜200、特別好ましくは10〜150、全く特別好ましくは10〜100、殊に10〜50μmである。この場合に、粒度分布は狭い又は広くてよい。大抵の場合には、特許出願明細書及び文献EP0687714A1、DE4204266A1、DE4038681A1、P.G.de Lange und P.Selier,≫Korngroessenverteilung und Eigenschaften von elektrostatischen Spritzpulvern(1)-Fraktionierung des Pulvers und Charakterisierung der Fraktionen≪,Farbe und Lack ,79. Jahrgang,Nr.5,1973, 403-412頁、P.G.de Lange und P.Selier,≫Korngroessenverteilung und Eigenschaften von elektrostatischen Spritzpulvern(2)-Verhalten der Pulverfraktionen beim Spritzen und nach dem Einbrennen≪,Farbe und Lack ,79. Jahrgang,Nr.6,1973, 509-517頁及びEP0536791A1に記載されているような、狭い粒度分布が有利である。ここでも平均粒度は、有利にレーザー回折法で測定される。
【0091】
本発明の範囲内で、「寸法安定な」とは、粒子(D)が粉体スラリー又は粉体塗料懸濁液の貯蔵及び使用の通常かつ公知の条件下で、ともかく僅かにのみ凝集する及び/又は小粒子に崩壊する場合でも、剪断力の影響下でも、本質的にその当初の形を保つことを意味する。この場合に、粒子(D)は高粘稠性及び/又は固体であることができる。この寸法安定な粒子(D)は有利には固体である。
【0092】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、揮発性有機化合物(揮発性有機化合物、VOC)不含、殊に有機溶剤(コソルベント)不含であるのが有利である。本発明の範囲でこのことは、それらが<1質量%、好ましくは<0.5質量%及び特別好ましくは<0.2質量%のVOC残留含分を有することを意味する。本発明によれば、この残留含分がガスクロマトグラフィ検出限度を下回っている場合が全く特別有利である。
【0093】
本発明の方法は、液体出発物質少なくとも1種又は本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の液状又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)少なくとも1種の製造から出発する。この場合にこの成分は、室温で既に液体であるか又は高い温度で初めて溶融することができる。出発物質は使用処理温度で液体であることが重要である。この成分は室温では固体であるのが有利である。殊に、この出発物質は少なくとも1種の結合剤である。
【0094】
液体成分(B)の製造は、方法的特別性を有せず、融液、殊にポリマー融液の製造のための慣用かつ公知の方法及び装置、例えば押出機、撹拌タンク、テイラー反応器、管状反応器、ループ形反応器等を用いて行われる。
【0095】
処理温度は、最も容易に分解する出発物質又は成分の分解温度を超えないように選択される。有利には50〜250、好ましくは60〜220、特別好ましくは70〜200、全く特別好ましくは80〜190及び殊に90〜180℃の処理温度が使用される。
【0096】
本発明の範囲内では、液体成分(B)1種又は液体成分(B)複数種が引き続き好適な混合装置に供給され、ここで、それらが水性媒体(C)中で乳化される。この水性媒体(C)は、有利に前記の本発明により使用すべき乳化剤(A)を含有する。
【0097】
本発明の方法のもう一つの変法では、それぞれ少なくとも1種の液体出発物質又は少なくとも1種の液状の又は液化された成分を含有する少なくとも2種の液体成分(B)を先ず、慣用かつ公知の静電気ミキサーに供給し、かつホモゲナイジングする。好適なミキサーの例は、Firma Sulzer Chemtech GmbHから提供されているSulzerタイプのものである。集めた融液(B)を引き続き混合装置に供給する。
【0098】
液体成分(B)は、それぞれ、その混合過程で液体成分(B)が他によって固体凝集物を生じる程度までは冷却されない程度の高い処理温度を有するのが有利である。他方、液体成分(B)の処理温度は、液体成分(B)が他によってそれが例えば分解反応をする程度に充分加熱されるように高く選択すべきではない。液体成分(B)は、この混合過程で同じ又はほぼ同じ処理温度を有することが特別好ましい。
【0099】
水性媒体(C)中での液体成分(B)の乳化のために好適である混合装置は、慣用かつ公知である。好適な混合装置の例は、ローターステーター構成を有するインライン−ディソルバー、有利には、殊に少なくとも1個の円筒形設計でホルダー上に存在する、取り囲んで相対的に反対方向に回転できる少なくとも2個の粉砕リング(ステーター及びローター)を有する歯車−分散装置(Zahnkranz-Dispergieraggregate)であり、この際、ステーターとローターとの間の相対運動によって生じる作業スリットは、非平行に相互に走る壁を有している。この場合に、ローターは作業スリットを開くように回転する場合が有利である。好適な歯車−分散装置の例は、特許EP0648537A1明細書中に詳述されている。それは、「K−ジェネレーター」なる商品名で、Firma Kinematica AG,Luzern, Schweizから販売されている。
【0100】
本発明の方法の特別な利点は、乳化を比較的低い温度で実施することができることである。これは、有利に100〜200、好ましくは100〜160、殊に100〜130℃の温度で実施される。
【0101】
この乳化の後に、生じる乳化された液体粒子(D)を冷却すると、懸濁された寸法安定な粒子(D)が生じる。
【0102】
本発明による粉体スラリーの製造のために、有利に、少なくとも1種の結合剤を溶融させ、液体状態で歯車−分散装置に供給し、ここで、水性媒体(C)中で乳化させる。
【0103】
融液(B)の温度は、非常に広範に変えることができ、結合剤の物質組成によって左右される。一般に、結合剤が熱的に損傷されない温度が使用される。有利には110〜200、好ましくは115〜180、殊に120〜160℃の温度を使用する。この場合に、熱的損傷の危険をできるだけ低く保持するために、本発明の方法の過程では、ここでも結合剤融液(B)をできるだけ急速に冷却させることに注意すべきである。従って当業者は、それぞれの個々の場合に好適である温度−時間−窓(Temperatur-Zeit-Fenster)を、彼等の一般的専門知識に基づいて、場合により方向性実験を用いて簡単な方法で決定することができる。
【0104】
本発明による粉体スラリーの製造のために付加的に架橋剤少なくとも1種及び/又は添加剤少なくとも1種を使用する場合には、全ての出発物質又は成分をそれぞれ相互に別々に液化又は溶融して、歯車−分散装置に供給し、この中で、それらを水性媒体(C)中で乳化させる。溶融できない成分、例えば後に記載の顔料は、懸濁液の形で液化して使用される。
【0105】
この場合に使用される温度−時間−窓に関しては、前記のことが有意義に当て嵌まり、この際、更なる限界条件として、結合剤と架橋剤との時期早尚の反応は避けるべきである。
【0106】
この分散の後にエマルジヨンを急速に冷却すると懸濁液が生じる。この場合には、DE19652813A1、8欄9〜17行に記載の方法を使用するのが有利である。
【0107】
冷却によって、液体粒子(D)は寸法安定になり、これにより懸濁液が生じる。場合によっては、この懸濁液又は本発明による粉体スラリーを、なお好適な装置、例えば撹拌ミル又は実験用ミル中で湿式粉砕し、その適用の前に濾過する。このためには、公知の粉体スラリーの濾過のためにも考慮されているような、慣用かつ公知の濾過装置及びフィルターが使用される。このフィルターの網目寸法は広範に変えることができ、第1には懸濁液の粒子(D)の粒度及び粒度分布によって左右される。従って、当業者は好適なフィルターを、その物理的パラメータに基づき容易に見つけることができる。好適なフィルターの例は、フィルターバッグ(Beutelfilter)である。これは、Pong(R)又はCuno(R)なる商品名で市販されている。網目寸法10〜50μmを有するフィルターバッグ、例えばPong(R)10〜 Pong(R)50が有利に使用される。
【0108】
本発明による粉体塗料の製造のために、懸濁された寸法安定な粒子(D)を単離する。この単離は、方法的特別性を有せず、例えば濾過、スプレー乾燥又は凍結乾燥において使用されるような慣用かつ公知の装置及び方法を用いて行われる。国際特許出願WO99/01499、5頁24行〜7頁27行及び27頁16行〜28頁19行に記載のような回転粉砕機、加圧粉砕機又は空気圧粉砕機を使用する乾燥法が極めて好適である。
【0109】
化学線で架橋されうる本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の製造の場合には、化学線の遮断下に操作するのが有利である。
【0110】
乳化された液状の及び懸濁された寸法安定な粒子(D)は、結合剤少なくとも1種を含有するか又はそれから成っている。
【0111】
好適な結合剤及びそれが使用される量は、ドイツ特許出願DE10126651A1、9頁、[0089]節〜14頁、[0127]節から公知である。
【0112】
熱的に又は熱及び化学線を用いて硬化可能で、外的架橋性の本発明による粉体塗料及び粉体スラリー又はその製造に役立つ粒子(D)は、結合剤の反応性官能基に対して相補性の反応性官能基を含有する架橋剤少なくとも1種を含有する。従って当業者は、個々の場合に好適である架橋剤を容易に選択することができる。
【0113】
好適な架橋剤の例及びその使用量は、同様にドイツ特許出願DE10126651A1、14頁、[0129]及び[0130]節から公知である。
【0114】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の使用目的に応じて、これらは、色−及び/又は効果付与性で、蛍光性の、導電性及び/又は磁気遮蔽性の顔料、金属粉末、有機及び無機の透明又は不透明な充填剤及び/又はナノ粒子(以後、包括的に「顔料」と称する)を含有することができる。
【0115】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料が、着色された被覆剤、接着剤及びシーリング組成物として使用されるべき場合には、顔料が使用される。本発明の方法では、有利に、これらが、顔料ペースト又は顔料調製物の形(Roempp Lexikon Lack und Druckfarben, Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York, 1998,≫Pigmentpraeparation ≪,452 頁参照)で、水性媒体(C)中に導入分散されるか、又は既に記載のように顔料ペースト又は顔料調製物が水性媒体(C)を構成している。これらは、前記の本発明により使用すべき混合物(A)を含有するのが好ましい。
【0116】
本発明の方法の1実施形では、乳化された又は懸濁された粒子(D)が、顔料少なくとも1種を含有する;即ち、使用される顔料の全量が粒子(D)中に及び/又はその上に存在する。
【0117】
本発明の方法のもう1つの実施形では、乳化された又は懸濁された粒子(D)が顔料を含有しない;即ち、全ての顔料が分離した固相として存在する。それらの粒度に関しては前記のことが当て嵌まる。
【0118】
本発明の方法のもう一つの実施形では、乳化された又は懸濁された粒子(D)が前記の意味で、使用されている顔料の一部分を含有するが、顔料の他の部分は分離した固相として存在する。ここで、粒子(D)中に存在する部分は、主要量であってよい、即ち、使用顔料の50質量%を上回っていてよい。それでも、粒子(D)中に及び/又はその上に、50質量%を下回って存在することもできる。粒度に関してはここでも前記のことが当て嵌まる。
【0119】
着色された本発明による粉体スラリーの製造の場合の本発明の方法の如何なる変法が有利であるかは、殊に顔料の特性及びその機能によって左右される。本発明の方法を、着色された本発明による粉体塗料の製造に使用する場合には、乳化されかつ懸濁された粒子(D)の中及び/又はその上に顔料の全部又は主要分が存在する変法が有利であり、従って好ましく使用される。
【0120】
好適な顔料の例は、ドイツ特許出願DE10126651A1、14頁、[0137]〜[0150]節から公知である。
【0121】
前記の本発明により使用すべき混合物(A)の使用の場合に、顔料ペースト又は顔料調製物は、ナノ粒子の特別高い含有率を有することができ、このことは、本発明により使用すべき混合物(A)のもう一つの利点である。
【0122】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、前記の顔料に加えて又はそれらの代わりに、分子分散性に分配された有機染料を含有することができる。この分子分散性に分配された染料は、乳化された又は懸濁された粒子(D)中又は連続相中に、即ち水性媒体中に存在することができる。それでも、これらは、粒子(D)中に又は連続相(C)中に存在することもできる。この場合に、粒子(D)中に存在する部分は主要量、即ち使用有機染料の50%を上回ることができる。それでも、この粒子(D)中に50%を下回って存在することもできる。相の間の有機染料の分布は、相中の有機染料の溶解性から生じる熱力学的平衡に相当することができる。この分布は、熱力学的平衡からかなり離れていることも可能である。乳化された及び懸濁された粒子(D)を本発明による粉体塗料の製造のために使用する場合には、染料は粒子(D)中のみに含有されている。
【0123】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料中に前記の意味で可溶性である全ての有機染料が好適である。耐光性の有機染料が極めて好適である。本発明による粉体スラリー及び粉体塗料から製造された被覆、接着層及びシーリングからのミグレーシヨンの傾向の低い又は傾向のない耐光性有機染料が特別良好に好適である。当業者は、その一般的専門知識に基づきこのミグレーシヨン傾向を評価することができ、かつ/又は例えば色調試験の分野での簡単な方向性前実験を用いて測定することができる。
【0124】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の分子分散性に分配されている有機染料の含分は極めて広範に変動することができ、第1に調節されるべき色及び色調並びに場合により存在する顔料の量によって左右される。
【0125】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、添加剤を含有することができる。
【0126】
着色又は非着色の粉体スラリー及び粉体塗料中に含有されうる添加剤は、有利に、UV−吸収剤、酸化防止剤、遮光剤、ラジカル捕捉剤、脱気剤、乳化剤(A)とは異なる付加的な乳化剤、湿潤剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、架橋用の触媒、熱不安定なラジカル開始剤、光重合開始剤、熱硬化可能な反応性希釈剤、化学線で硬化可能な反応性希釈剤、付着助剤、レベリング剤、増粘剤(E)とは異なるレオロジー調節性添加剤、成膜助剤、防炎剤、腐食阻害剤、流動助剤、ワックス、乾燥剤、殺生剤及び/又は艶消し剤から成る群から選択される。
【0127】
好適な添加剤の例は、ドイツ特許出願DE10126651A1、16頁、[0156]節〜17頁、[0172]節から公知である。
【0128】
本発明の方法のために、前記の添加剤は、前記の水性媒体(C)中でも又は前記の融液(B)中でも使用することができる。特に、それらがその慣用及び公知の機能により、乳化された又は懸濁された粒子(D)中に良好に又は連続して、即ち水性相(C)中に良好に存在すべきであるか否かが特に決定的な要因である。例えば本発明による粉体スラリーにとって、付加的な増粘剤及び乳化剤が水性媒体(C)中に、即ち本質的に粒子(D)の外に存在する場合が有利である。本発明の方法を、本発明による粉体塗料の製造に使用する場合には、添加剤は主に又は全て融液(B)中に、かつこれから製造される乳化されかつ懸濁された粒子(D)中に存在する。従って当業者は、それぞれの事例のために最適な変法を、彼の一般的専門知識により、場合によっては簡単な前試験の補助的使用下に容易に決定することができる。
【0129】
本発明により使用すべきコポリマー(A)は、優れた乳化剤であり、乳化剤の使用が必要である全ての用途のために有利に供給することができる。殊に、それは本発明の方法のために極めて好適である。
【0130】
本発明による粉体スラリーは、優れた安定性及び貯蔵可能性及び優れた適用性能を有する。殊にそれはESTA−適用の場合の優れた剪断安定性を有するので、存在する液体塗装用の塗装装置中で問題なく適用することができる。
【0131】
本発明による粉体塗料は、優れた流動性、貯蔵可能性及び輸送可能性を有し、かつ長い貯蔵の場合にもケーキングを示さない。適用性能は優れている。
【0132】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、被覆剤、接着剤及びシーリング組成物として又はそれらの製造のために極めて好適である。
【0133】
本発明による被覆剤は、1回塗り又は重ね塗りの色−及び/又は効果付与性で、導電性、磁気遮断性又は蛍光性の被覆、例えばプライマーサーフェーサーコート(Fueller-lackierungen)、ベースコート(Basislackierungen)、ソリッド−カラートップコート(Unidecklackierung)又は複合効果層又は1回塗り−又は重ね塗りクリアコートの製造のために極めて好適である。
【0134】
本発明による接着剤は、接着層の製造のために優れており、本発明によるシーリング組成物は優れてシーリングの製造のために優れて好適である。
【0135】
着色されていない本発明による粉体スラリー及び粉体塗料を1回塗り−又は重ね塗りクリアコートの製造のためのクリアラッカーとして使用する場合に、全く特別な利点が生じる。殊に、本発明によるクリアラッカーを、ウエット−オン−ウエット法(この際には、ベースコート、殊に水性ベースコートが基材の表面上に適用される)による色−及び/又は効果付与性重ね塗り塗装の製造のために使用し、その後、生じるベースコート層を、硬化させずに乾燥させ、それにクリヤーラッカー層を上塗りする。引き続き、双方の層を一緒に硬化させる。
【0136】
更に、着色された本発明による粉体スラリー及び粉体塗料を、1回塗り又は重ね塗り色−及び/又は効果付与性塗装又は複合効果層の製造のために使用する場合には、全く特別な利点が生じる。複合効果層とは、色−及び/又は効果付与性塗装が少なくとも2つの機能を満足する塗装であると理解すべきである。このような機能は殊に腐食に対する保護、付着補助、機械的エネルギーの吸収及び色−及び/又は効果付与性である。更にこの複合効果層は、有利に機械的エネルギーの吸収並びに色−及び/又は効果付与のために同時に役立ち;これは、プライマーサーフェーサーコート又は石衝撃保護性下塗り塗装及びベースコートの機能をも満足する。更に複合効果層は有利に、なお腐食保護作用及び/又は付着補助作用を有する。
【0137】
着色された被覆又は塗装は、同様に、ウエット−オン−ウエット法を用いて製造することができる。例えば着色された本発明による粉体スラリー及び粉体塗料は、硬化されていない又は完全には硬化されていない電着塗装層上に適用することができ、その後に、上下に存在する層を一緒に硬化させる。
【0138】
本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の全く特別な利点は、それを用いて完全に又は主に本発明による粉体スラリー及び/又は粉体塗料をベースとする全ての種類の重ね塗り塗装を得ることができることにある。
【0139】
本発明による粉体スラリーの適用は、方法的特別性を有せず、全ての慣用の適用法、例えば吹き付け塗装、ドクターブレード塗装、刷毛塗り、流し塗り、浸漬塗り、トリックリング又はローラ塗りによって行うことができる。吹き付け適用法、例えば圧縮空気吹き付け、エアレス−吹き付け、高速回転、静電(スプレー)塗装(ESTA)によって、場合により熱スプレー装置、例えば熱空気−熱スプレーと結びつけて用いるのが有利である。殊に高速回転鐘を用いる静電(スプレー)塗装(ESTA)が使用される。ここでも、本発明によるデュアル−キュア−被覆剤、−接着剤及び−シーリング組成物の時期早尚な架橋を避けるために、化学線の遮断下に操作することが推奨される。
【0140】
粉体塗料の適用も方法的特別性を有せず、例えばBASF Coatings AGの会社文献 ≫Pulverlacke,fuer industrielle Anwendungen≪, Janur 2000又は ≫Coatings Partner,Pulverlack Spezial≪,1/2000又はRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben ,Georg Thime Verlag,Stuttgart,New York,1998,187及び188頁、≫Elektrostatisches Pulverspruehen≪、 ≫Elektroststisches Spruehen≪及び≫Elektrostatisches Wirbelbadverfahren≪から公知であるような、慣用で公知の流動浸漬塗装法(Wirbelschichtverfahren:fluid bed coating technique)によって行われる。
【0141】
基材としては、その表面内及びその物質内で、熱及び/又は化学線の使用によってその上に存在する層の硬化時に損傷されない全てのものがこれに該当する。基材は、有利に金属、プラスチックス、木材、セラミック、石材、繊維材料、ファイバー複合材、皮革、ガラス、ガラス繊維、ガラスウール及びロックウール、鉱物−及び樹脂結合建築材料、例えば石膏−及びセメント板又は屋根瓦並びにこれら材料の複合材から成る。
【0142】
従って、本発明による被覆剤、接着剤及びシーリング組成物は、
− 筋力、熱気又は風で駆動される陸上、水上又は空中移動装置、例えば自転車、軌道トロリー、ボート、ヨット、熱気球、ガス気球又はセイルプレーン(Segelflugzeuge)、並びにそれらの部品、
− モーターで駆動される陸上、水上又は空中移動装置、例えばモーター付き自転車、実用車又は自動車、殊に自家用車、水上−又は水中舟又は飛行機並びそれらの部品、
− 固定浮遊体、例えばブイ又は港湾設備、
− 室内−及び屋外−建築部材、
− 扉、窓及び家具類 及び
− ガラス中空体、
− 並びに次のものの被覆、接着及び填隙のための工業用塗装の分野、
− 小部品、例えばナット、ネジ、ハブキャップ、車輪リム、
− タンク、例えばコイル、コンテナ又はパッケージング、
− 電気工業用部品、例えばモーター巻線又は変圧器巻線、
− 光学的部材、
− 機械部材及び
− 白物、例えば家事用器具、暖房器具及びラジエーター
の被覆、接着及び填隙のために極めて好適である。殊に、自動車車体、殊に高級乗用車の車体の被覆のために好適である。
【0143】
導電性基材の場合には、電着塗装用塗料から慣用かつ公知の方法で製造される下塗り塗料を使用することができる。このために、アノード及びカソード電着塗料、殊にカソード電着塗料も使用される。官能化されていない及び/又は非極性のプラスチック表面の場合には、これらを、被覆の前に、公知方法で、例えばプラズマ又はフレームを用いるような前処理に供するか又は水性下塗り塗料で処理することができる。
【0144】
適用された本発明による粉体スラリー及び粉体塗料の硬化は、方法的特別性を有せず、慣用かつ公知の熱的方法、例えば循環空気炉内での加熱又はIR−灯の照射によって行われる。化学線を用いる硬化のためには、線源、例えば水銀高圧灯又は−低圧蒸気灯(これらは、場合により、405nmまでの放射線窓を開けるために、鉛でドーピングされている)又は電子線源が使用される。化学線を用いる硬化のために好適な方法及び装置の更なる例は、ドイツ特許出願DE19818735A1、10欄、31〜61行又はドイツ特許出願DE10316890A1、17頁、[0128]〜[0130]節に、又は国際特許出願WO94/11123、2頁、35行〜3頁、6行、3頁、10〜15行及び8頁、1〜14行に記載されている。
【0145】
生じる本発明による被覆、殊に本発明による1回塗り又は重ね塗りの色−及び/又は効果付与性塗装、複合効果層及び透明塗装は、簡単に製造でき、かつ優れた光学的特性及び非常に高い耐光性、耐化学品性、耐水性、耐凝縮水性及び耐候性を有する。殊にこれらは、濁り及び不均一性を有しない。これらは、固く、フレキシブルで、かつ耐引掻き性である。これらは、非常に良好なリフロー特性及び優れた層間付着性及び慣用かつ公知の自動車補修塗装のための良好〜非常に良好な付着性を有する。しかしながら、これらは特にその光沢及び曇り並びにその流展性において、技術水準の被覆を凌駕している。
【0146】
本発明による接着層は、種々の基材に長期間付着堅固に相互に結合し、極端な温度及び/又は温度変動の場合にも高い化学的及び機械的安定性を有する。
【0147】
同様に、本発明によるシーリング剤は、基材を長期間填隙し、この際、これは極端な温度及び/又は温度変動の場合にも、攻撃的化学品の作用と結びついた場合ですら、高い化学的及び機械的安定性を有する。
【0148】
本発明によるデュアル−キュア−被覆剤、−接着剤及び−シーリング組成物のもう一つの利点は、それらが複雑に成形された三次元的基材、例えば車体、ラジエーター又は電気巻線の蔭の部位中にも、蔭の部位の最適な、殊に完全な化学線での露光なしでも、蔭の部位の外の被覆、接着層及びシーリングのそれに少なくとも匹敵する使用技術的特性を有する被覆、接着層及びシーリングを提供することである。これによって、蔭の部位に存在する本発明による被覆、接着層及びシーリングは、例えば被覆された車体中への自動車の更なる構築部材の取り込みの場合に生じうるような機械的及び/又は化学的作用によって最早容易には損傷されない。
【0149】
従って、前記の技術的分野で慣用されている、下塗りされた又は下塗りされていなく、少なくとも1つの本発明による被覆剤で被覆され、本発明による接着層少なくとも1つで接着されかつ/又は本発明によるシーリング剤少なくとも1種で填隙されている基材は、特別有利な使用技術的特性像の場合に、それを経済的に全く特別魅力的にする特別長い耐用時間を有する。
【0150】
実施例
製造例1
乳化剤(A1)の製造
3個の供給容器、攪拌機、還流冷却器及びオイルヒーターを備えている適当な反応容器中に、脱イオン水1839.5質量部を装入し、90℃まで加熱した。引き続きこの温度で3個の別々の供給流を、平行してかつ一様に予備装入物に配量導入した。第1供給流は、メタクリル酸メチル403.5質量部、アクリル酸178.2質量部、メタクリル酸イソブチル13.4質量部、メタクリル酸n−ブチル224.7質量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル165.4質量部及び1,1−ジフェニルエチレン65.7質量部から成っていた。第2供給流は、水中の25質量%アンモニア溶液173.5質量部から成っていた。第3供給流は、脱イオン水183.8質量部中のペルオキソジ硫酸アンモニウム78.9質量部の溶液から成っていた。第1及び第2の供給流を、4時間かかって一様に予備装入物に配量添加した。第3供給流を、4.5時間かかって一様に配量添加した。この添加の終了後に、3時間後重合させた。この場合に、反応混合物の温度をゆっくり40℃まで低下させた。生じた乳化剤(A1)の分散液は、34.3質量%の固体含有率(1時間/130℃)、5.3のpH値、132mg(KOH)/g(固体樹脂)の計算酸価、68mg(KOH)/g(固体樹脂)の計算ヒドロキシル価及び40.7mN/mの表面張力を有した。
【0151】
製造例2
乳化剤(A2)の製造
1,1−ジフェニルエチレン65.7質量部の代わりに、γ−テルピネン65.7質量部を使用することで相違して、製造例1を繰り返した。生じた乳化剤(A2)の分散液は、34.5質量%の固体含有率(1時間/130℃)、36.2mN/mの表面張力、132mg(KOH)/g(固体樹脂)の計算酸価及び68mg(KOH)/g(固体樹脂)の計算ヒドロキシル価を有した。
【0152】
製造例3
ヒドロキシ官能性メタクリレートコポリマー(結合剤)の製造
適当な反応容器中にメチルエチルケトン42.15質量部を装入し、78℃まで加熱した。この前装入物に、78℃で6時間及び45分かかって、2個の別々の供給流を介して、一方にt−ブチルペルエチルヘキサノエート5.1質量部とメチルエチルケトン2.75質量部とからの開始剤溶液を、かつ他方に、4時間かかってn−ブチルメタクリレート55質量%、ヒドロキシエチルメタクリレート40.5質量%、イソブチルメタクリレート3.3質量%及びメタクリル酸1.2質量%から成るモノマー混合物50質量部を一様に撹拌下に配量添加した。開始剤溶液の流入の開始後15分に、モノマー混合物の流入を開始させた。生じた反応混合物を段階的に150℃まで加熱し、溶剤を20ミリバールで完全に留去した。生じた結合剤の熱い融液を、この反応容器から流出させた。室温まで冷却の後に無色の固体が得られた。
【0153】
例1
粉体スラリー1の製造
第1の容器中に、それぞれ(B1)に対して製造例3による結合剤95.33質量%及び2,5−ジエチルオクタンジオール−1,5 4.67質量%から成る混合物(B1)を装入した。この容器の内容物を150℃まで加熱した。
【0154】
第2の容器中に、(B2)に対して、それぞれ市販のヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする3,5−ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネート94.18質量%、遮光剤(HALS,Firma Ciba Specialty ChemicalsのTinuvin(R)123)1.02質量%及びUV−安定剤(Triazin,Firma Ciba Specialty ChemicalsのTinuvin(R)400)4.8質量%からの混合物(B2)を装入した。この容器の内容物を110℃まで加熱した。
【0155】
この調節された温度で、融液(B1)及び(B2)が生じ、それらの粘度は更なる処理、殊にコンベヤ移送を可能とした。
【0156】
融液(B1)及び(B2)を歯車−分散装置を有する装置(Firma Kinematica AG,Luzern,Schweizの"K−ジェネレーター")に通して移送する前に、装置全体を水蒸気で100℃まで加熱した。その後に、双方の融液(B1)及び(B2)を、別々の加熱された導管を経て、計量ポンプを用いて、静的ズルツアーミキサー(Sulzer-Mischer)中に配量供給した。ポンプの流量によって、ブロックされたイソシアネート基とヒドロキシル基との化学量論的割合を調節した。このランダムミキサー中で、双方の融液(B1)及び(B2)を非常に短い時間(約6秒)、分子分散性に混合した。生じた均質融液(B)(これは、依然として成分の融点を上回る温度を有する)を、インジェクター管を経て歯車−分散装置の前乳化帯域中に移送した。
【0157】
前乳化帯域に、(C)に対して、それぞれ脱イオン水97.74質量%、製造例1による乳化剤分散液(A1)0.61質量%、ジメチルエタノールアミン0.68質量%及び市販の非イオン性界面活性剤(Niotensid,Firma BASF AktiengesellschaftのLutensol(R)AT50)0.97質量%からなる水性媒体(C)を、計量ポンプを用いて配量添加した。この配量の前に、水性媒体(C)を、耐圧性容器中で、この処理温度まで加熱しておいた。
【0158】
歯車−分散装置の第1ローターステーター系を用いるエネルギー入力によって、前エマルジヨンが得られ、この中で水性媒体(C)は連続相を形成した。この前エマルジヨンを、歯車−分散装置のもう一つの帯域内で、1〜4μmの平均粒度まで粉砕した。ローターステーター系のエネルギー投入は、ローターとステーターとの間の作業スリットの間隙幅を介して、それぞれのローターとステーターの歯の形状並びに回転数によって調節された。歯車−分散装置の回転数は、この場合に12000U/minであり、滞留時間は約6秒であった。
【0159】
この方法を、生じるエマルジヨンがこのエマルジヨンに対してそれぞれ水性媒体(C)59質量%、融液(B1)21.4質量%及び融液(B2)19.6質量%から成るように実施した。
【0160】
分散の後に、エマルジヨンを後続の熱交換器中で急速に<40℃の温度まで冷却した。生じた粉体スラリー1は、循環空気炉内、125℃で1時間の間に測定された固体含有率38.5質量%を有した。
【0161】
粉体スラリー1は沈殿安定であった。これは、優れた移送−及び貯蔵特性を有した。この利点は意外にも、既に比較的僅かな量の乳化剤によって得ることができた。
【0162】
適用のために、これを、フィルターバッグ(網目寸法25μm)及びMicroKlean(R)−カートリッジ(分離限界3μm)から成るカスケードを通して濾過した。これは、問題なく、静電(スプレー)塗装(ESTA)により適用することができた。
【0163】
例2
粉体スラリー2の製造
粉体スラリー2の製造のために、製造例1の乳化剤(A1)の代わりに製造例2の乳化剤(A2)を使用することで相違して、例1を繰り返した。同様に有利な結果が得られた。
【0164】
例3及び4
重ね塗り塗装1及び2の製造
例3の重ね塗り塗装1を製造するために、例1の粉体スラリー1を使用した。
【0165】
例4の重ね塗り塗装2を製造するために、例2の粉体スラリー2を使用した。
【0166】
重ね塗り塗装1及び2の製造のために、慣用かつ公知の方法で、寸法10cm×20cmの試験板を製造した。このために、慣用かつ公知の陰極沈殿され、焼成された電着塗装(KTL)で被覆された鋼板(車体板)を、市販の低構造プライマーサーフェーサー(Firma BASF Coatings AGのEcoprimer(R))で塗被し、その後、生じたプライマーサーフェーサー層(Fuellerschichten:Primer-surfacer film)を20℃及び65%の相対的湿度で5分間フラッシングし、循環空気炉中、80℃で、5分間乾燥させた。この後、このプライマーサーフェーサー層は、15μmの乾燥層厚を有していた。
【0167】
試験板を20℃まで冷却の後に、Firma BASF Coatings AG の市販の水性塗料メトログレー(Metrograu:水性ベースコート膜1)及びアトルブルー(Atollblau:水性ベースコート膜2)からの2層の水性ベースコート層を適用し、23℃で5分間及び40℃、相対湿度65%で10分間フラッシングし、循環空気炉内、80℃で7分間乾燥させると、乾燥されたベースコート層は、約15μmの乾燥層厚を有した。
【0168】
試験板を改めて20℃まで冷却した後に、このベースコート層に本発明による粉体スラリー1又は2を上塗りした。この場合に、例3ではESTAを用いて粉体スラリー1を適用した。例4では、粉体スラリー2を空気圧で適用した。
【0169】
生じた粉体スラリークリアコート層1及び2を、20℃及び相対湿度65%で、3分間フラッシングし、循環空気炉中、60℃で5分間乾燥させた。
【0170】
全ての層の適用の後にそれらを一緒に150℃で30分間焼成し、これにより重ね塗り塗装1及び2が生じた。それらクリアコート1及び2は、40μmの層厚を有した。
【0171】
重ね塗り塗装1及び2は、高光沢性であり、非常に良好な流展性を有した。光沢及び曇りを、DIN67530によって測定した。
【0172】
流展性及び起伏を、ウエーブスキャン(Wavescan)−法を用いて測定した。この目的のために、レーザー線を60°の角度で表面に当て、測定装置を用いて、10cmの測定距離上で、いわゆる長波長領域(0.6〜10mm;観察距離:2.5m)及びいわゆる短波長領域(0.1〜0.6mm;観察距離:45cm)での反射光の変動を記録した。
【0173】
結果を第1表中に示す。
【0174】
第1表: 重ね塗り塗装1及び2の光沢及び流展性
重ね塗り塗装
1 2
光沢(20°) 87 86
曇り 17 26
流展性(長波長/短波長) 16/25 11/50

この結果は、重ね塗り塗装1及び2が非常に良好な光沢および僅かな曇り並びに非常に良好な流展性を有することを示している。
【0175】
更に、重ね塗り塗装1及び2は、フレキシブルで硬く、かつ耐引掻き性であり、優れた耐溶剤性(メチルエチルケトン−試験で二重摩擦100以上損傷なし)及び良好な耐凝縮水性を有した。層間付着性は非常に良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の乳化剤(A)の存在下に製造可能であり、
(1)粉体スラリー又は粉体塗料の液状の又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)少なくとも1種を、水性媒体(C)中で乳化し、これにより液体粒子(D)の水性エマルジヨンを生じさせ、
(2)このエマルジヨンを冷却して、寸法安定な粒子(D)の懸濁液、即ち粉体スラリーを形成することにより製造可能な粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び
(3)前記寸法安定な粒子(D)、即ち粉体塗料を単離することにより製造可能な粉末塗料において、
乳化剤(A)は、50〜250mg(KOH)/gのヒドロキシル価を有し、かつ、
(a1)少なくとも1種のヒドロキシル基含有オレフィン系不飽和モノマー及び
(a2)オレフィン系不飽和モノマー(a1)とは異なる、以下の(a21)〜(a23)からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー、
(a21) 一般式I
C=R (I)
[式中、基R、R、R及びRはそれぞれ相互に無関係に、水素原子又は置換又は非置換のアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基を表す、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2つは置換又は非置換のアリール−、アリールアルキル−又はアリールシクロアルキル基、殊に置換又は非置換のアリール基を表すことを条件とする]のモノマー;
(a22) オレフィン系不飽和テルペン炭化水素;及び
(a23) 二量体α−アルキルビニル芳香族化合物;
を水性媒体中で1段又は多段ラジカル共重合することによって製造可能なコポリマーの群から選択されていることを特徴とする、粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項2】
乳化剤(A)は、液体粒子(D)の水性エマルジヨンがその固体含分に対してそれぞれ(A)0.01〜1質量%を含有する量で使用されていることを特徴とする、請求項1に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項3】
ヒドロキシル基含有オレフィン系不飽和モノマー(a1)は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル及びヒドロキシシクロアルキルエステル及び環状エステルとそのヒドロキシアルキルエステル及び−シクロアルキルエステル並びにオレフィン系不飽和アルコールとの反応生成物から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項4】
ヒドロキシル基含有オレフィン系不飽和モノマー(a1)は、
2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシブチル−、4−ヒドロキシブチルアクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート、−クロトネート、−マレイネート、−フマレート及び−イタコネート;1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−ジメタノール−及びメチルプロパンジオールモノアクリレート、−モノメタクリレート、−モノエタクリレート、−モノクロトネート、−モノマレイネート、−モノフマレート及び−モノイタコネート;ε−カプロラクトンとそのヒドロキシアルキル−及びシクロアルキルエステルとの反応生成物;アリルアルコール及びトリメチロールプロパンモノ−及びジアリルエーテル及びペンタエリスリットモノ−、−ジ−及び−トリアリルエーテルから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項3に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項5】
モノマー(a21)のアリール基R、R、R及び/又はRは、フェニル−又はナフチル基であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項6】
モノマー(a21)のアリール基R、R、R及び/又はRは、フェニル基であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項7】
モノマー(a21)の基R、R、R及び/又はR中の置換基は、電子吸引性又は電子供与性原子又は有機基から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項8】
置換基は、ハロゲン原子、ニトリル−、ニトロ−、部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル−、シクロアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリール−、アルキルアリール−、シクロアルキルアリール−、アリールアルキル−及びアリールシクロアルキル基;アリールオキシ−、アルキルオキシ−及びシクロアルキルオキシ基;アリールチオ−、アルキルチオ−及びシクロアルキルチオ基及び1級、2級及び3級のアミノ基から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項7に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項9】
テルペン炭化水素(a22)は、非環式ジテルペン、単環式テルペン、二環式テルペン、非環式セスキテルペン、単環式セスキテルペン、二環式セスキテルペン、三環式セスキテルペン、非環式ジテルペン、単環式ジテルペン及び三環式ジテルペンから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項10】
テルペン炭化水素(a22)は、非環式モノテルペン、単環式テルペン及び二環式テルペンから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項11】
テルペン炭化水素(a22)は、オシメン、ミルセン、メンテン、メンタジエン、α−ピネン及びβ−ピネンから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項12】
メンタジエン(a22)は、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、リモネン及びジペンテンから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項11に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項13】
γ−テルピネン(a22)が選択されていることを特徴とする、請求項12に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項14】
二量体α−アルキルビニル芳香族化合物(a23)は、二量体α−アルキルスチレンであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項15】
二量体α−アルキルスチレン(a23)として、二量体α−メチルスチレンが使用されていることを特徴とする、請求項14に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項16】
オレフィン系不飽和モノマー(a1)及び(a2)は、これらとは異なるオレフィン系不飽和モノマー(a3)少なくとも1種と共重合されていることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項17】
オレフィン系不飽和モノマー(a3)は、酸基含有オレフィン系不飽和モノマー(a33)の群から選択されていることを特徴とする、請求項16に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項18】
酸基含有オレフィン系不飽和モノマー(a33)は、アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸;オレフィン系不飽和スルホン酸−又はホスホン酸及びそれらの部分エステル;並びにマレイン酸モノ−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル及びフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項17に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項19】
乳化剤(A)は、100〜400mg(KOH)/gの酸価を有していることを特徴とする、請求項17又は18に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項20】
乳化剤(A)は、水性媒体(C)中に含有されていることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料を製造する方法において、
(1)粉体スラリー又は粉体塗料の液状又は液化された成分少なくとも1種を含有する液体成分(B)少なくとも1種を、水性媒体(C)中で乳化し、これにより液体粒子(D)の水性エマルジヨンを生じさせ、かつ
(2)このエマルジヨンを冷却して、寸法安定な粒子(D)の懸濁液、即ち粉体スラリーを形成する、かつ、粉体塗料の製造のために、
(3)寸法安定な粒子(D)、即ち粉体塗料を単離する
ことを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料を製造する方法。
【請求項22】
水性媒体(C)は、乳化剤(A)を(C)に対して0.01〜5質量%の量で含有することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
方法工程(1)を100〜150℃の温度で実施することを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
被覆剤、接着剤及びシーリング組成物としての、又は被覆剤、接着剤及びシーリング組成物を製造するための、請求項1から20のいずれか1項に記載の及び請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法で製造された、粉体塗料懸濁液(粉体スラリー)及び粉体塗料の使用。
【請求項25】
被覆剤、接着剤及びシーリング組成物を、被覆、接着層及びシーリングを製造するために使用することを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
被覆は、少なくとも1つのベースコート及び少なくとも1つのクリアコートを包含する重ね塗り塗装であることを特徴とする、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
乳化剤としての、
(a1)請求項1、3又は4に定義されているような少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー及び
(a2)オレフィン系不飽和モノマー(a1)とは異なる、以下の(a21)〜(a23)からなる群から選択された少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー
(a21) 請求項1又は5から8のいずれか1項で定義されているような一般式I:
C=CR (I)
のモノマー、
(a22) 請求項1又は9から13までのいずれか1項で定義されているようなオレフィン系不飽和テルペン炭化水素及び
(a23) 請求項1、14又は15で定義されているような二量体α−アルキルビニル芳香族化合物
を水性媒体中で1段又は多段ラジカル共重合することによって製造可能である、50〜250mg(KOH)/gのヒドロキシル価のコポリマー(A)の使用。
【請求項28】
オレフィン系不飽和モノマー(a1)及び(a2)は、これらとは異なる少なくとも1種のオレフィン系不飽和モノマー(a3)と共重合されていることを特徴とする、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
オレフィン系不飽和モノマー(a3)は、酸基含有オレフィン系不飽和モノマーの群から選択されていることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
酸基含有オレフィン系不飽和モノマー(a3)は、アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸;オレフィン系不飽和スルホン−又はホスホン酸及びこれらの部分エステル;並びにマレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸−モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル及びフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
コポリマー(A)は、100〜400mg(KOH)/gの酸価を有していることを特徴とする、請求項29又は30に記載の使用。

【公表番号】特表2009−523183(P2009−523183A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549823(P2008−549823)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000145
【国際公開番号】WO2007/082656
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】