説明

粉体接着剤とその製造方法及び塗布方法並びにそれを用いた圧着はがきの作成方法

【課題】実用性のある粉体接着剤とその製造方法及び塗布方法並びにそれを用いた圧着はがき作成方法を安価に提供する。
【解決手段】軟化点110℃のポリエステル樹脂70質量%、粒径4μm且つ軟化点200℃以上のアクリル樹脂30質量%、帯電制御剤1質量%、ポリエチレンワックス3質量%をケミカルミキサーで混合し、二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、I式ジェットミルによって粉砕し、分級して得られた平均体積粒径9μmの粉体粒子100質量%と微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、篩別して粉体接着剤を製造する。はがきサイズの用紙にカラープリンタでフルカラーの可変情報を印字し、この可変情報印字面に、黒トナーに代えて充填した粉体接着剤によりモノクロ印字モードでベタ画像を印字する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体接着剤とその製造方法及び塗布方法並びにそれを用いた圧着はがきの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の個人のみへ文字情報を伝達するために、一般に、文字記載物を封書の形態にし、開封後に始めて当該個人が文字情報を確認できるようにしていた。
近年、個人情報保護が厳しく問われるようにもなり、各種事業所等では、例えば、個人の各種データ、成績表、給与明細書等の個人情報は、これを文字記載物の内部の印字箇所に記録して、印字箇所の周縁部もしくは文字記載物の全面を接着や圧着により封筒状やカード状にして配布したりしている。
【0003】
このうち、はがきサイズのカード状のものは圧着はがきと呼ばれており、通常の郵便はがきと同じ料金で利用できることから、情報提供者側の利便性が高い印字(印刷)情報秘匿システムとして、広告宣伝のダイレクトメール等にも汎用されている。
【0004】
このような圧着はがき等による印字情報秘匿システムを利用するには、従来、専門の製造業者に委託するか、高価な圧着はがき等製造・印刷装置を導入するかして秘匿情報を作成していた。
【0005】
これらの圧着はがき等製造・印刷装置を用いて秘匿情報を作成するには、接着剤を情報印字の後に塗布する方法や、情報印字の前に塗布する方法等があるが、いずれにしても秘匿情報を大量に作成するという前提が必須であり高価であった。
【0006】
また、そのような製造業者への委託は、個人情報の流出の問題も潜在的に存在しており好ましい秘匿情報の作成方法とはいえない。
ところで、近年、パソコンやプリンタの発達と相侯って、小規模事業所や個人でも利用できるように、少量単位でも簡易に圧着はがきを作成できるようにしたものも提案されている。
【0007】
例えば、感圧接着剤を予め塗布した剥離紙付きはがき用紙が販売されている。これは、2つ折り内部の印字面に所定の文字情報等を印字後に、感圧接着剤部分を圧着して投函用の圧着はがきを完成させるものである。
【0008】
また、例えば、粘着フイルムとはがき用紙を一組にしたものが販売されている。これは、2つ折り内部の印字面に所定の文字情報等を印字後に、2つ折り内部に粘着フイルムを挟むようにして圧着して、投函用の圧着はがきを作成できるようにしたものである。
【0009】
しかしながら、これでもコスト高は避けられず、取り扱いが煩雑であり、個人的に数枚の圧着はがきを作成するのなら良いが、ある程度の枚数単位で、安価で、迅速に、且つ対需要即応体制で作成できるものではない。
【0010】
そこで、粘着剤を内包したマイクロカプセルから成るトナー状粘着剤を静電印刷法により基材の表面に転写してフラッシュ定着させ、接着時には圧力によりマイクロカプセルを破壊しカプセル内の粘着剤を浸出させるようにして、圧着はがきを容易に作成できるとする提案がなされている。また、この提案では、粘着剤を溶融、混練、粉砕した粉砕トナーも示唆されている。(例えば、特許文献1参照。)
また、事務用プリンタや複写機の交換用の印字用カートリッジに圧着用物質を入れて、それら事務用プリンタ又は複写機による印字作業と同様の操作で圧着用物質を官製はがきや封筒に塗布し、その後、圧着専用機にかけるようにし、圧着専用機にかけるところまでを1台のプリンタ又は複写機で出来るとする提案がなされている。また、この提案では、二つ折りの片面、三つ折の中央両面に圧着用物質を塗布することが示唆されている。(例えば、特許文献2参照。)
また、感熱接着剤を含むトナーを用い、電子写真方式により画像を対需要即応式で作成する方法が提案されている。この提案では、感熱接着剤の軟化温度は電子写真方式用のトナーの結着樹脂の軟化温度よりも高くなるように構成し、また、感熱接着剤の電子写真方式用トナーに占める割合を5〜60重量%とし、また、感熱接着剤の組成は熱接着性樹脂、ホットメルト及びワックス類からなる群より選ばれる1種類以上を含むようにすることが提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開平09−104849号公報(段落0005、0014、図1、図3、図6)
【特許文献2】特開2000−006553号公報(要約、図なし)
【特許文献3】特開2004−126231号公報(段落0085〜0087、図なし)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術は、マイクロカプセル式のトナーについては構成及び組成について記載されてはいるが、粉砕トナーについては単なる思い付き程度に示唆されているのみであり、具体的な組成、製法、及び用法についての記載がなく、これでは、この分野の当業者といえども有用な粉砕トナーを作成することは勿論、試作することさえ出来ない。
【0012】
また、特許文献2の技術は、圧着専用機にかける前までの官製はがきや封筒による印字情報秘匿書類を作成するものであり、投函用に完成するには圧着専用機にかけなければならない点で利便性と経済性に欠けるものであり、また対需要即応性には程遠いものと言わざるを得ない。
【0013】
また、特許文献3の技術では、単に感熱接着剤の軟化温度が電子写真方式用のトナーの結着樹脂の軟化温度よりも高く設定されているというのみで、感熱接着剤を含むトナーの詳細な処方等の説明はない。
【0014】
ところで、対需要即応性のある圧着はがきの作成方法としては、個人的にも使用できる小型の電子写真式プリンタのトナーカートリッジに収容して使用可能な粉体接着剤を具体的に実現し、その粉体接着剤を現像、転写及び定着によって同プリンタで可変情報を印字(又は印刷、以下同様)した紙面に塗布できればよいと考えられる。
【0015】
但し、そのように印字後の用紙に対する接着剤の塗布を電子写真式プリンタを用いて行うものとすると、粉体接着剤は通常のトナーとほぼ同様の形態のものでないと、接着剤として塗布(現像、転写、及び定着)は出来ないと考えられる。
【0016】
しかしながら、トナー状の圧着はがき用粉体接着剤は、従来の提案技術である上記の各特許文献には思い付き程度に示唆されてはいるものの、既に述べたように具体的な材料処方も具体的な用法も開示されていない。
【0017】
また、そのようなトナー状の圧着はがき用粉体接着剤は今日まで市場に流通もしていない。流通している圧着はがき用粉体接着剤は液状または粘着シート状のものだけである。
そこで、本発明者は、上記従来の提案技術が示唆するところに基づいて、プリンタを用いて塗布できることを前提としたトナー状の接着剤(熱可塑性樹脂粉体)を試作してみることにした。
【0018】
図7は、プリンタ又は複写機を用いて塗布できることを前提として試作されたトナー状接着剤の材料処方を示す図表である。同図に示すように、トナー状接着剤の材料処方では、結着樹脂として、ポリエステルを約95%、帯電制御剤として、LR147を約2%、ワックスとして、ppを約2%とした。
【0019】
尚、上記の材料処方は、圧着はがき用接着剤であること、及びプリンタを用いて塗布できること(つまりトナーと類似した粉体性質を持っていること)の両条件を満たすものとの考えに基づいて処方したものであり、ポリエステルは現在プリンタのトナーとして主に使用されている結着樹脂材料である。
【0020】
次に、これらの材料を、三井鉱山製へンシェルミキサーFM20にて混合し、二軸連続混練機により混練した。その後、粗砕、粉砕、分級、を経て、最後にヘンシェルミキサーにて疎水性シリカと混合し、中心粒径9μmのトナーと類似の粉体を得た。
【0021】
この粉体を、粉体接着剤として感光体ドラムに現像し、往復はがきの折り合わせ面に転写し、定着させて、用紙を取り出し、圧着専用機にかけて貼り合わせた。このとき、貼り合わせる貼り付けローラの設定温度を、120℃、130℃、140℃、150℃の4段階に分けて設定し、それぞれの設定温度において貼り合わせた圧着はがきを作成した。
【0022】
この圧着はがきの貼り付けに上記のように圧着専用機を用い、貼り付けローラの温度設定に通常のトナーの溶融温度よりも高い温度が含まれているのは、それぞれ従来の提案技術の示唆に応じたものである。
【0023】
図8は、上記設定温度ごとに作成された圧着はがきを評価した結果を示す図表である。尚、同図表に示す剥離力は、圧着はがきの貼り付け部を剥離する際の力の強さであり、文字オフセットは、圧着はがきの貼り付け部を開封(剥離)したとき、可変情報印字トナーが、もともと印字されていた面から脱離して接着対面へ転移して付着してしまうという現象を示している。また、「×」は評価結果が悪かったことを示している。
【0024】
同図表から明らかなように、上記のように作成された接着剤では、はがきが貼りつく接着力(=剥離力)の温度設定領域(140℃、150℃)においては、文字オフセットが発生するという問題があることが判明した。
【0025】
つまり、先行技術が示唆する範囲で作成された接着剤(軟化温度がトナーの結着樹脂の軟化温度よりも高い接着剤)では、通常トナーで可変情報を印字後に接着剤単体で印字面に塗布を行った場合、又は感熱接着剤を含むトナーで可変情報の画像を形成した場合、その後の接着剤による接着を実現するための加熱によって、紙面に定着されていたトナーが再溶融してしまい、文字オフセットが発生する。
【0026】
この文字オフセット現象は、熱圧着で軟化溶融した可変情報印字トナーと接着剤の両者が共に強く結着し、はがきを開封するとき可変情報印字トナーが対向面の接着剤に強く引っ張られ、その力が紙と可変情報印字トナーとの接着力を凌いで、可変情報印字トナーが対向面側に転移することによって起こると考えられる。
【0027】
従って、十分な接着力(=剥離力)を持ち、かつ文字オフセットのない粉体接着剤の作成に当たっては更なる何らかの工夫が必要である、ということが判明する。
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、実用性のある粉体接着剤とその製造方法及び塗布方法並びにそれを用いた圧着はがき作成方法を安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
先ず、第1の発明の圧着はがき用粉体接着剤は、電子写真法による現像、転写及び定着の工程により紙面に塗布可能に構成され少なくとも接着成分の第1の樹脂と非接着成分の第2の樹脂とを含む透明粉体から成るように構成される。
【0029】
この圧着はがき用粉体接着剤において、例えば、上記第1の樹脂は結着樹脂としてのポリエステル樹脂であり、上記第2の樹脂は非接着粒子から成るように構成される。そして、上記第2の樹脂は、例えば、アクリル樹脂で構成される。
【0030】
また、この圧着はがき用粉体接着剤において、上記非接着粒子は、例えば、粒径5μm以下であるように構成され、また、例えば、無機物又は軟化点が180℃以上の樹脂であるように構成され、また、例えば、20質量%以上含まれるように構成される。
【0031】
次に、第2の発明の圧着はがき用粉体接着剤の製造方法は、軟化点110℃のポリエステル樹脂70質量%、粒径3μmのシリカ粉30質量%、帯電制御剤1質量%、及びポリエチレンワックス3質量%をケミカルミキサーで混合し、該混合物を二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、該粗砕物をI式ジェットミルによって粉砕し、該粉砕物を分級して平均体積粒径9μmの粉体粒子を得、該粉体粒子100質量%と流動性改良剤の微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、該混合物を篩別する上記各工程を少なくとも含んで成るように構成される。
【0032】
また、第3の発明の圧着はがき用粉体接着剤の製造方法は、軟化点110℃のポリエステル樹脂70質量%、粒径4μm且つ軟化点200℃以上のアクリル樹脂30質量%、帯電制御剤1質量%、ポリエチレンワックス3質量%をケミカルミキサーで混合し、該混合物を二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、該粗砕物をI式ジェットミルによって粉砕し、該粉砕物を分級して平均体積粒径9μmの粉体粒子を得、該粉体粒子100質量%と流動性改良剤の微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、該混合物を篩別する上記各工程を少なくとも含んで成るように構成される。
【0033】
また、第4の発明の圧着はがき用粉体接着剤の塗布方法は、はがきの整数倍面積に裁断された普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに電子写真式画像形成方法にて通常トナーによる可変情報を印刷し、上記電子写真式画像形成方法により第2の発明の圧着はがき用粉体接着剤の製造方法で得られた圧着はがき用粉体接着剤をベタ印字率で現像し、該現像された圧着はがき用粉体接着剤を上記可変情報を印刷した上記普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに転写し定着器により定着して機外に排出する上記各工程を少なくとも含んで成るように構成される。
【0034】
更に、第5の発明の圧着はがき用粉体接着剤の塗布方法は、はがきの整数倍面積に裁断された普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに電子写真式画像形成方法にて通常トナーによる可変情報を印刷し、上記電子写真式画像形成方法により第3の発明の圧着はがき用粉体接着剤の製造方法で得られた圧着はがき用粉体接着剤をベタ印字率で現像し、該現像された圧着はがき用粉体接着剤を上記可変情報を印刷した上記普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに転写し定着器により定着して機外に排出する上記各工程を少なくとも含んで成るように構成される。
【0035】
そして、第6の発明の圧着はがきの作成方法は、マゼンタ、シアン、又はイエローのカラートナーをトナー容器に収容した第1〜第3の画像形成部とブラックのトナーをトナー容器に収容した第4の画像形成部の合計4つの画像形成部を備え、フルカラー印字モードによる印字とモノクロ印字モードによる印字を選択的に実行可能な電子式画像形成装置を用い、上記ブラックのトナーのトナー容器を請求項1乃至6記載の圧着はがき用粉体接着剤を収容したトナー容器に交換し、上記第4の画像形成部を非印字状態として接着剤無加工の圧着用はがきに上記第1〜第3の画像形成部のいずれか又は全てを用いて上記フルカラー印字モードにより可変情報を形成して定着させ、該可変情報を形成して定着された圧着用はがきを両面印字用搬送機構により上記可変情報の形成面が再度印字面となるように搬送させ、上記フルカラー印字モードから上記モノクロ印字モードに印字モードを切り替え且つベタ印字率に設定し、上記第4の画像形成部により上記圧着はがき用粉体接着剤を現像させ、該現像された圧着はがき用粉体接着剤のベタ画像を上記両面印字用搬送機構を介して再搬送されてくる上記圧着用はがきの上記可変情報形成面に転写させ定着させて機外に排出させ、該排出された上記圧着用はがきを上記圧着はがき用粉体接着剤の定着面を内側にして中央より2つに折り曲げて上記電子式画像形成装置に再挿入し、上記2つに折り曲げられた圧着用はがきを定着器により圧着させて再び機外に排出させる上記各工程を少なくとも含んで成るように構成される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、少なくとも結着樹脂からなる第1の樹脂と非接着粒子からなる第2の樹脂とを主成分として圧着はがき用粉体接着剤が構成されるので、剥離力の調整が容易であり且つ文字移りが無い圧着はがき用粉体接着剤を提供することが可能となる。
【0037】
また、圧着はがき用粉体接着剤の製造に使用する材料や使用する装置及び製造工程が明瞭に示されているので、実用可能な圧着はがき用粉体接着剤を容易に製造することができる。
【0038】
また、可変情報印字後の通常紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに、通常トナーと同様に現像・転写を行って、定着温度のみ変更して、圧着はがき用粉体接着剤を塗布することができるので、可変情報の印字と接着剤の塗布を通常の電子写真式画像形成装置により実現出来て便利である。
【0039】
また、圧着用はがきへの可変情報の印字、圧着はがき用粉体接着剤の塗布、圧着はがきの圧着を電子写真式画像形成装置により実現出来るので、圧着はがきの作成が容易に出来て便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
前述したトナー状の熱可塑性樹脂粉体からなる接着剤において、接着力が強すぎて紙破れが発生したり文字移りがするなどの不具合を防ぐためには、可変情報印字トナー(以下、単に印字用トナーという)と接着剤が溶融の際に一体化しないようにすることが必要であると考えられる。
【0041】
そして、そのためには、接着剤の構成を可変情報印字トナーの構成と異ならせることが必要であると考えられる。この考えのもとに、本発明者は、印字用トナーの組成と異なる組成のトナー状粉体と、これらと比較のために、印字用トナーとほぼ同様の組成からなるトナー状粉体、ただし染料や顔料等の着色材を含まない透明粉体、を作成して、それらの接着力と文字オフセット性について評価した。
【0042】
以下、そのトナー状粉体すなわち粉体接着剤の、組成、製造方法、評価の結果について述べる。
図1は、一実施の形態として作成された3種類の粉体接着剤の組成を示す図表である。同図表には、横欄に左から右へ、3種類の粉体接着剤を作製例1、作製例2及び作製例3として示し、縦欄に上から下へ、ポリエステル樹脂、シリカ粉、帯電制御剤、ポリエチレンワックス、アクリル樹脂、及び微粒シリカを、それぞれ含有比率を質量%で示している。
【0043】
これらの材料処方のうち、ポリエステル樹脂は結着樹脂である。圧着はがき用の粉体接着剤としては、トナーに用いられる結着樹脂を用いることが可能であり、このような結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0044】
特にポリエステル樹脂は、他の樹脂に比較して軟化点が低く、図に示すように軟化点110℃に設定でき、本例で接着力調整のために用いられる非粘着材とし有機物を混合したときに、軟化点の温度差を大きく設定できる利点がある。
【0045】
また、粒径3μmのシリカ粉は、無機の非粘着材料の代表として選択されたものであり、接着強度調整剤として用いられている。また、粒径4μmで軟化点200℃以上のアクリル樹脂は、有機の非粘着材料の代表として選択されたものであり、他の接着強度調整剤として用いられている。
【0046】
また、帯電制御剤である日本カーリット社製の帯電制御剤LR−147、ワックスとしての三井化学製のポリエチレンワックスNP−056、及び流動性改良剤としての外添剤である日本アエロジル社製の微粒シリカRY−50は、印字用トナーと同様に電子写真法を用いて粉体接着剤を用紙に塗布するために用いられている。
【0047】
同図表に示すように、作製例1では、先ず、結着樹脂としてポリエステル樹脂70質量%、非接着樹脂としてシリカ粉30質量%、帯電制御剤1質量%、及びポリエチレンワックス3質量%を用意する。
【0048】
これらをケミカルミキサーで混合し、その混合物を二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、更に、その粗砕物をI式ジェットミルによって粉砕し、その粉砕物を分級して、平均体積粒径9μmの粉体粒子を作製する。
【0049】
そして、この粉体粒子100質量%と微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、その混合物を篩別して、所望の圧着はがき用粉体接着剤を得た。
次に、作製例2では、先ず、結着樹脂としてポリエステル樹脂70質量%、非接着樹脂としてアクリル樹脂30質量%、帯電制御剤1質量%、及びポリエチレンワックス3質量%を用意する。
【0050】
そして、上記同様に、これらをケミカルミキサーで混合し、その混合物を二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、更に、その粗砕物をI式ジェットミルによって粉砕し、その粉砕物を分級して、平均体積粒径9μmの粉体粒子を作製する。
【0051】
そして、この粉体粒子100質量%と微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、その混合物を篩別して、所望の圧着はがき用粉体接着剤を得た。
そして、作製例3では、印字用トナーと同様に、ポリエステル樹脂100質量%、帯電制御剤1質量%、ポリエチレンワックス3質量%を用い、上記の作成例1又は2と同様にして、平均体積粒径9μmの粉体粒子を作製したのち、この粉体粒子100質量%と微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、その混合物を篩別して、所望の圧着はがき用粉体接着剤を得た。
【0052】
図2は、紙面に印字用トナーで可変情報を印字し、その紙面の印字面に重ねて、上述した作製例1〜3の粉体接着剤を塗布するために使用された電子写真式のカラー画像形成装置(以下、単にプリンタという)の外観を示す斜視図である。
【0053】
尚、本例のプリンタは、タンデム方式のカラープリンタの例を示している。また、本例のプリンタは、両面印刷用のカラープリンタの例を示している。
同図において、プリンタ1はケーブルによって不図示のパーソナルコンピュータ等のホスト機器に接続されている。このプリンタ1は装置本体上部2と装置本体下部3によって構成され、装置本体上部2の上面には操作パネル4が配設され、更に印字用紙の排紙部5が形成されている。
【0054】
操作パネル4は複数のキーが配設されたキー操作部4aと、不図示のCPUから出力される表示情報に基づき表示を行う液晶ディスプレイ4bで構成されている。
また、排紙部5には、排紙ローラ6の回転によって後述する画像形成ユニットによりカラー画像を形成され、更に上述した実施例1、2、3又は4の粉体接着剤を塗布された用紙が排出され、排紙部5上に順次積載される。
【0055】
装置本体下部3には、給紙カセット7や後述する両面印刷用搬送ユニットが装着されている。また、装置本体下部3には、その前面に開閉可能なフロントカバー8が設けられ、このフロントカバー8の下方に上記の給紙カセット7が着脱自在に設けられている。この給紙カセット7は、用紙を補給する際などには、取手7aを装置手前に引くことによって、図の矢印aで示すように手前に引き出すことができる。
【0056】
上記のフロントカバー8は、例えばジャム処理やメンテナンス等が行われるときに開放される。また、両面印刷用搬送ユニットは、装置本体下部3の右側面に設けられた横蓋9を開放することによって着脱できるようになっている。上記の横蓋9はメンテナンス用の側面開放蓋も兼ねている。
【0057】
また、この横蓋9のある装置本体下部3の右側面上部には、MPF(マルチペーパーフィーダー)トレイの装着部カバー11が配設されており、この装着部カバー11を下方に開いて、その上にMPFトレイを装着できるようになっている。但し、図1において上記装着部カバー11にMPFトレイは装着されていない。
【0058】
図3は、上記の外観を有するプリンタ1の内部構成を示す側断面図である。同図に示すように、プリンタ1は、画像形成部12、ベルトユニット13、両面印刷用搬送ユニット14、給紙部15、及び定着部16で構成されている。
【0059】
画像形成部12は、多段式に並設された4個の画像形成ユニット17(17−1、17−2、17−3、17−4)で構成される。これらの各画像形成ユニット17は後述する現像容器内に収納された現像剤であるトナーの種類を除けば、いずれも同じ構成であるので、以下、イエロー(Y)用の画像形成ユニット17−3を例にしてその構成を説明する。
【0060】
画像形成ユニット17は、それぞれドラムセット18とトナーセット19とが一体に組み付けられて構成される。ドラムセット18は、感光体ドラム21を備え、この感光体ドラム21の周面近傍を取り巻いて、クリーナ22及び帯電器23が配置されている。
【0061】
更に続いて、装置本体のフレームに支持された記録ヘッド24が配置され、更にトナーセット19を構成する現像容器25及び現像ローラ26が配置されている。そして、最下部には、ベルトユニット13の用紙搬送ベルト27の用紙搬送面が当接し、その用紙搬送ベルト27の用紙搬送面を挟んで、ベルトユニット13のフレームに支持された転写器28が配置されている。
【0062】
上記の現像容器25は、内部にトナーを収容し、下部側面の開口部には現像ローラ26を支持している。
用紙搬送ベルト27は、駆動ローラ29と従動ローラ31との間に掛け渡されテンションローラ32により張設されて、図の矢印B及びB´で示すように反時計回り方向に循環移動する。
【0063】
また、用紙搬送ベルト27の上流側には、待機ローラ対33が配設されている。待機ローラ対33から上流側は横と下に分岐し、横方向には給紙ローラ34と捌き部材からなる分離給送機構が配置され、その横に前述した装着部カバー11を下方に開いた上にMPFトレイ35が装着されている。
【0064】
そして、下分岐方向には、第2案内路36、第2給紙ローラ対37、第1案内路38、第1給紙ローラ対39が配設され、第1給紙ローラ対39のほぼ直下に給紙カセット7の給紙端が位置している。この給紙端に近接する上方に用紙案内コロ41と、断面が半円状の給紙ローラ42が配設されている。
【0065】
また、用紙搬送ベルト27の下流側には、定着部16が設けられている。定着部16には、定着ユニット43が着脱自在に配置される。定着ユニット43は、断熱性の筐体内に、加熱ローラ44、加圧ローラ45、オイル塗布ローラ46、清掃ローラ47、温度センサ48、用紙分離爪49、排出ローラ対51等を備えている。
【0066】
定着部16の下流には、切換フラップ52と排紙ローラ対53が配設され、排紙ローラ対53の後方には排紙口54が装置本体左側面に開口して形成されている。また、切換フラップ52の上方には、搬出ローラ対55、案内路56が配置され、案内路56は上方から右方へ反転して、その終端は排紙部5の左端部上方に開口し、この開口部に前述した排紙ローラ6が配置されている。
【0067】
また、用紙搬送ベルト27と給紙カセット7の間に、両面印刷用搬送ユニット14が配設されている。両面印刷用搬送ユニット14は、片面への印刷を終了した用紙を上流側へ送り戻す複数の送り戻しローラ対57と送り戻し案内路58からなる返送搬送路を備えている。返送搬送路の終端は第1案内路38の内側ガイド壁に開口する。
【0068】
この返送搬送路(57、58)と給紙カセット7との間に、所定枚数の回路基盤を装着可能な電装部59が配設されている。この電装部59に配設される回路基盤には複数の電子部品からなる制御装置が搭載されている。
【0069】
図4は、上記制御装置の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、この制御装置60は、インターフェイスコントローラ(以下、I/Fコントローラという)61と、このI/Fコントローラ61に接続するプリンタコントローラ(PR_CONT)62を備え、I/Fコントローラ61には、不図示のホストコンピュータが接続され、プリンタコントローラ62には、プリンタ印字部63が接続されている。
【0070】
I/Fコントローラ61とプリンタコントローラ62には、CPU64が接続され、CPU64は、ROM65に格納されているシステムプログラムに従って、I/Fコントローラ61とプリンタコントローラ62を制御する。
【0071】
I/Fコントローラ61は、ホストコンピュータから出力される印字情報又は塗布情報に従って、用紙の1頁分に対応するパターンデータを作成する。
このとき、I/Fコントローラ61で作成するパターンデータは、通常は、フルカラー印字モードにおいては、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)及び黒(K)の各色に対応する画像データである。そして、モノクロ印字モードにおいては、黒(K)の印字データであり、接着剤塗布モードでは粉体接着剤(B)の塗布データである。
【0072】
これら色毎のパターンデータ又は接着剤のパターンデータはI/Fコントローラ61内に配設されるフレームメモリ66の上記接着剤又は色毎の各記憶領域66K、66M、66C、66Yに記憶される。
【0073】
また、これらのパターンデータはCPU64の制御によりプリンタコントローラ62に出力され、黒(K)(接着剤(B))、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の各トナー毎にプリンタ印字部63に出力される。
【0074】
尚、CPU64には、図1に示した操作パネル4が接続され、この操作パネル4を介して外部からの各種操作信号がCPU64に入力する。
また、CPU64には、EEPROM67が接続されている。このEEPROM67には、例えば不図示の給紙センサによって検出された用紙サイズや、両面印刷の指示とタイミングデータ、接着剤塗布の指示データ等が記憶される。
【0075】
上記の構成において、通常の使用時には、4個の画像形成ユニット17のうち用紙搬送方向上流側(図の右方)の3個の画像形成ユニット17−1、17−2及び17−3に、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)及びイエロー(Y)の色トナーを収容し、最下流の画像形成ユニット17−4に、黒(K)トナーを収容して、それら色トナーによるフルカラー画像を形成するとともに黒(K)トナーで、カラー画像の暗黒部分や文字部分の黒画像を形成する。
【0076】
しかし、本例では、上記の最下流の画像形成ユニット17−4には、図1に示した作製例1、作製例2及び作製例3の3種類の粉体接着剤が、順次入れ替えられて、印字済みの紙面に粉体接着剤の塗布処理が行われる。
【0077】
この本例の用紙への印字(印刷)と粉体接着剤の塗布では、用紙一枚ごとに、最初はフルカラー印字モードが設定されるが、粉体接着剤(B)を収容した画像形成ユニット17−4は、非印字状態に設定され、用紙搬送方向上流側の3つの画像形成ユニット17−1〜17−3のマゼンタ、シアン、イエローの3色のみによるフルカラーの印字が行われる。
【0078】
次に、モノクロ印字モードが設定され、上記の印字済みの用紙の印字面に、黒(K)トナー用の画像形成ユニット17−4によって、黒(K)トナーと交換されている粉体接着剤による印字(塗布)が行われる。
【0079】
そのようなプリンタ1の動作を以下に説明する。尚、本例においては、用紙として予めA5判に裁断された上質紙(坪量127.9g/m^2)が用いられ、このA5判の上質紙複数枚が給紙カセット7に載置・収容されている。
【0080】
勿論、A5判に裁断された上質紙でなく、A5判又はA5判の整数倍面積に裁断された普通紙であってもよく、又は接着剤無加工の圧着用はがきであってもよい。
先ず、装置本体に電源が投入され、使用する用紙の枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると、可変情報の印字とそれに続く粉体接着剤の塗布が開始される。
【0081】
給紙カセット7に載置されている用紙の最上部の一枚が給紙ローラ42の回転によって、用紙案内コロ41、第1給紙ローラ対39、第1案内路38、第2給紙ローラ対37、第2案内路36を介して待機ローラ対33に給送される。又はMPFトレー35上に載置された用紙の最上部の一枚が給紙ローラ34の回転によって待機ローラ対33に給送される。
【0082】
待機ローラ対33は、回転を一時停止し、用紙の先端を挟持部に突き当たらせて用紙の進行を制止すると共に用紙の斜行を補正して搬送タイミングを待機する。
用紙搬送ベルト27が駆動ローラ29の始動によって反時計回り方向に循環移動を開始する。各画像形成ユニット17が印字タイミングに合わせて順次駆動されドラムセット18の感光体ドラム21が時計回り方向に回転する。
【0083】
ドラムセット18の帯電器23が感光体ドラム21周面に接しながら一様な高電荷を付与して感光体ドラム21を初期化する。記録ヘッド24は上記初期化された感光体ドラム21の周面に画像信号に応じて選択的に露光して電位が減衰した低電位部を形成する。これにより感光体ドラム21周面に初期化による高電位部と露光による低電位部とからなる静電潜像が形成される。
【0084】
トナーセット19の現像ローラ26は、不図示のバイアス電源から現像バイアスを印加され、現像容器25内のトナーを感光体ドラム21との対向部に回転搬送して、そのトナーを静電潜像の低電位部(又は高電位部)に転移させてトナー像を形成(現像)する。このトナー像は、感光体ドラム21の回転に伴われて感光体ドラム21と用紙搬送ベルト27との対向部に搬送される。
【0085】
用紙搬送方向最上流の画像形成ユニット17−1の感光体ドラム21周面上のマゼンタのトナー像の先端が、用紙搬送ベルト27との対向部に回転搬送されてくるタイミングで、その対向部に用紙の印字開始位置が一致するように、待機ローラ対33が回転を開始して用紙を用紙搬送ベルト27へ向けて給送する。
【0086】
用紙搬送ベルト27は、用紙を静電的に吸着して下流側へと搬送する。これより、用紙は画像形成ユニット17−1の感光体ドラム21と用紙搬送ベルト27とが対向する最初の画像転写部へ搬送される。
【0087】
画像転写部では、用紙搬送ベルト27の裏面に圧接している転写器28によって用紙搬送ベルト27を介して用紙に印加される転写電流(又は電圧)によって、感光体ドラム21上のマゼンタのトナー像が用紙に転写される。用紙はそのまま搬送され、続いて、用紙搬送方向上流から2番目の画像形成ユニット17−2の感光体ドラム21のシアンのトナー像が転写され、更に3番目の画像形成ユニット17−3の感光体ドラム21のイエローのトナー像が転写される。
【0088】
3色のトナー像を重ねて転写された用紙は、用紙搬送ベルト27から分離されて定着部16の定着ユニット43内に搬入される。定着ユニット43は、加熱ローラ44と加圧ローラ45とで用紙を押圧挟持して、下流方向に搬送しながら、熱と圧力とによりトナー像を紙面に定着させ、排出ローラ対51により後方へ排出する。
【0089】
切換フラップ52が図3の破線で示す位置に回動し、用紙は切換フラップ52に案内されて、画像形成面を下向きにして両面印刷用搬送ユニット14に搬入される。
そして、用紙は、両面印刷用搬送ユニット14の複数の送り戻しローラ対57と送り戻し案内路58を介して第1案内路38に送り込まれ、上方から下流側(左方)に反転して印字面を上向きにして、再び待機ローラ対33に給送される。
【0090】
このときプリンタ1は、上記のカラー印字モードから自動的にモノクロ印字モードに設定される。
これにより、作製例1の粉体接着剤による全面印字画像が現像され、その粉体接着剤画像が、上記のようにフルカラーの可変情報が形成されている用紙の可変情報形成面に重ねて転写され、定着されて作製例1の粉体接着剤による塗布が完了する。尚、この塗布処理は、所定枚数の上記印字済み用紙に対して実行される。
【0091】
続いて、オペレータにより、最下流の画像形成ユニット17−4の作製例1の粉体接着剤を収容した現像容器25が、例えば作製例2の粉体接着剤を収容した現像容器25に交換される。そして、上記と同様の印字処理の開始と粉体接着剤の塗布処理が指示される。
【0092】
これにより、上記と同一のべた印字パターンによる作製例2の粉体接着剤の現像画像が、上記と同一のフルカラーの可変情報が形成されている用紙の可変情報形成面に重ねて転写され、定着されて、作製例2の塗布が完了する。尚、この塗布処理も上記と同一の所定枚数の上記印字済み用紙に対して実行される。
【0093】
更に、オペレータにより、最下流の画像形成ユニット17−4の作製例2の粉体接着剤を収容した現像容器25が、作製例3の粉体接着剤を収容した現像容器25に交換される。そして、上記と同様の印字処理の開始と粉体接着剤の塗布処理が指示される。
【0094】
これにより、上記と同一のべた印字パターンによる作製例3の粉体接着剤の現像画像が、上記と同一のフルカラーの可変情報が形成されている用紙の可変情報形成面に重ねて転写され、定着されて、作製例3の塗布が完了する。尚、この塗布処理も上記と同一の所定枚数の上記印字済み用紙に対して実行される。
【0095】
図5(a) は、上記のようにフルカラーの可変情報が形成されたA5判の上質紙を示す図であり、同図(b) は、その可変情報形成面に重ねて作製例1、2又は3の粉体接着剤が塗布された用紙を示す図、同図(c) は、その作製例1、2又は3の粉体接着剤が塗布された用紙を可変情報形成面を内側にして二つ折りにする図、同図(d) は、その二つ折りにした用紙を熱圧着する用紙の貼り付け工程(投函直前の圧着はがきの状態に作成する工程)を示す図、同図(e) はその貼り付け工程で仕上がった投函直前の圧着はがきを示す図である。
【0096】
尚、同図(d) に示す用紙の貼り付け工程では、プリンタ1の定着ユニット43を用い、定着ユニット43の定着温度は、用紙が二つ折りで倍の紙厚になっているので、高い定着温度が必要であり、したがって、OHP印字モードで定着(圧着)が行われた。
【0097】
図6は、上記のようにして作成された圧着はがきの剥離性と可変情報の字移りの状態(文字オフセット性)の評価を示す図表である。
尚、この評価において、剥離性の評価は、圧着後のはがき判用紙の接着部を、手で開いて確認した。また、可変情報の字移り状態の評価は、接着部を開封したときの字移りの有無を目視で確認した。
【0098】
同図表に示すように、作製例1の粉体接着剤は、剥離が良好にでき(評価が○)、また開いた面を見ると字移りがなかった(評価が○)。同様に、作製例2の粉体接着剤も、剥離が良好にでき(評価が○)、また開いた面を見ると、これも字移りがなかった(評価が○)。
【0099】
これに対して、作製例3の粉体接着剤は、剥離が旨くいかず、紙が破れたりする(評価が×)。また、開いた面を見ると、字移りが発生していた(評価が×)。
このように上記の評価によれば、作製例1、及び2では剥離性が良好で、且つ字移りが発生せず、極めて良好な圧着はがき用接着剤となることが判明した。
【0100】
そして、作製例3では、接着力が強すぎて、剥離がうまくいかず、部分的に剥離したところも字移りがあって、結果として圧着はがき用の接着剤としては実用にならないことが判明した。
【0101】
圧着はがき用粉体接着材としてトナーを用いることは既に提案されているが、前述したように、作製例3の粉体接着剤はトナーと殆ど同一材料で構成されており、トナーの主成分である結着樹脂の粘着性が強く、粉体接着剤として用いた場合は剥離強度が強すぎて容易に開封することができず、紙破れを生じたり、部分的な開封部分も字移りが発生して、実用にならないことが明白となった。
【0102】
また、従来、網点により粘着力の調整を行うことも提案されているが、網点によって剥離強度は調節できても、接着面の網点に相当する印刷域が、開封時に字移りするという問題は解消されない。
【0103】
これに対して、作製例1又は2のように、接着強度のあるポリエステル系の樹脂に対し定着時に溶融しない非接着成分のシリカ又はアクリル樹脂等の無機又は有機の樹脂を混合して接着力を低減させたものは、剥離性が良好で且つ字移りが発生しない良好な圧着はがき用の接着剤として実用になることが実証された。
【0104】
尚、上記の実施形態では、接着力の強い結着樹脂に非粘着性物質を添加して、接着力を弱めるようにしているが、逆に接着力の弱い結着樹脂に接着力の強い物を添加して接着力を調整するようにしてもよい。
【0105】
例えば、接着力の弱いワックス系を主体として、接着成分を混合して接着力を増強させることにより、良く圧着する接着剤を構成することができ、混合の調整によって、剥離性が良好で且つ字移りが発生しない接着剤とすることができる。
【0106】
また、上記の実施形態では、非接着成分のシリカ又はアクリル樹脂を、初めから微細粒子にして、結着樹脂に添加しているが、非接着成分の形状は粒子に限るものではない。例えば、アクリル樹脂を添加したのち、結着樹脂と溶融混練すると、アクリル樹脂が微細化されて分散される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】一実施の形態として製作された3種類の粉体接着剤の組成を示す図表である。
【図2】一実施の形態における粉体接着剤を可変情報印字後の紙面に塗布するプリンタの外観斜視図である。
【図3】一実施の形態におけるプリンタの内部構成を示す側断面図である。
【図4】一実施の形態におけるプリンタの制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【図5】(a) はフルカラーの可変情報が形成されたA5判の用紙を示す図、(b) は可変情報形成面に重ねて作製例の接着剤が塗布された用紙を示す図、(c) は接着剤が塗布された用紙を可変情報形成面を内側にして二つ折りにする図、(d) は二つ折りにした用紙を熱圧着する用紙の貼り付け工程を示す図、(e) は貼り付け工程で仕上がった投函直前の圧着はがきを示す図である。
【図6】一実施の形態において作製された圧着はがきの剥離性と字移り状態の評価を示す図表である。
【図7】従来技術の示唆に基づきプリンタを用いて塗布できることを前提として試作されたトナー状接着剤の材料処方を示す図表である。
【図8】試作されたトナー状接着剤により設定温度ごとに作成された圧着はがきを評価した結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0108】
1 カラー画像形成装置(プリンタ)
2 装置本体上部
3 装置本体下部
4 操作パネル
4a キー操作部
4b 液晶ディスプレイ
5 排紙部
6 排紙ローラ
7 給紙カセット
7a 取手
8 フロントカバー
9 横蓋
11 装着部カバー
12 画像形成部
13 ベルトユニット
14 両面印刷用搬送ユニット
15 給紙部
16 定着部
17(17−1、17−2、17−3、17−4) 画像形成ユニット
18 ドラムセット
19 トナーセット
21 感光体ドラム
22 クリーナ
23 帯電器
24 記録ヘッド
25 現像容器
26 現像ローラ
27 用紙搬送ベルト
28 転写器
29 駆動ローラ
31 従動ローラ
32 テンションローラ
33 待機ローラ対
34 給紙ローラ
35 MPFトレイ
36 第2案内路
37 第2給紙ローラ対
38 第1案内路
39 第1給紙ローラ対
41 用紙案内コロ
42 給紙ローラ
43 定着ユニット
44 加熱ローラ
45 加圧ローラ
46 オイル塗布ローラ
47 清掃ローラ
48 温度センサ
49 用紙分離爪
51 排出ローラ対
52 切換フラップ
53 排紙ローラ対
54 排紙口
55 搬出ローラ対
56 案内路
57 送り戻しローラ対
58 送り戻し案内路
59 電装部
60 制御装置
61 I/Fコントローラ
62 プリンタコントローラ
63 プリンタ印字部
64 CPU
65 ROM
66 フレームメモリ
66B、66M、66C、66Y 接着剤及び色毎の各記憶領域
67 EEPROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真法による現像、転写及び定着の工程により紙面に塗布可能に構成され少なくとも接着成分の第1の樹脂と非接着成分の第2の樹脂とを含む透明粉体から成ることを特徴とする圧着はがき用粉体接着剤。
【請求項2】
前記第1の樹脂は結着樹脂としてのポリエステル樹脂であり、前記第2の樹脂は非接着粒子から成ることを特徴とする請求項1記載の圧着はがき用粉体接着剤。
【請求項3】
前記非接着粒子は粒径5μm以下であることを特徴とする請求項2記載の圧着はがき用粉体接着剤。
【請求項4】
前記非接着粒子は無機物又は軟化点が180℃以上の樹脂であることを特徴とする請求項2又は3記載の圧着はがき用粉体接着剤。
【請求項5】
前記非接着粒子は20質量%以上含まれることを特徴とする請求項2、3又は4記載の圧着はがき用粉体接着剤。
【請求項6】
前記第2の樹脂はアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の圧着はがき用粉体接着剤。
【請求項7】
軟化点110℃のポリエステル樹脂70質量%、粒径3μmのシリカ粉30質量%、帯電制御剤1質量%、及びポリエチレンワックス3質量%をケミカルミキサーで混合し、
該混合物を二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、
該粗砕物をI式ジェットミルによって粉砕し、
該粉砕物を分級して平均体積粒径9μmの粉体粒子を得、
該粉体粒子100質量%と流動性改良剤の微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、
該混合物を篩別する
上記各工程を少なくとも含んで成ることを特徴とする圧着はがき用粉体接着剤の製造方法。
【請求項8】
軟化点110℃のポリエステル樹脂70質量%、粒径4μm且つ軟化点200℃以上のアクリル樹脂30質量%、帯電制御剤1質量%、ポリエチレンワックス3質量%をケミカルミキサーで混合し、
該混合物を二軸押出機によって溶融混練した後に粗砕し、
該粗砕物をI式ジェットミルによって粉砕し、
該粉砕物を分級して平均体積粒径9μmの粉体粒子を得、
該粉体粒子100質量%と流動性改良剤の微粒シリカ1質量%をヘンシェルミキサーによって混合し、
該混合物を篩別する
上記各工程を少なくとも含んで成ることを特徴とする圧着はがき用粉体接着剤の製造方法。
【請求項9】
はがきの整数倍面積に裁断された普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに電子写真式画像形成方法にて通常トナーによる可変情報を印刷し、
前記電子写真式画像形成方法により請求項1乃至6記載の圧着はがき用粉体接着剤をベタ印字率で現像し、
該現像された圧着はがき用粉体接着剤を前記可変情報を印刷した前記普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに転写し定着器により定着して機外に排出する
上記各工程を少なくとも含んで成ることを特徴とする圧着はがき用粉体接着剤の塗布方法。
【請求項10】
はがきの整数倍面積に裁断された普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに電子写真式画像形成方法にて通常トナーによる可変情報を印刷し、
前記電子写真式画像形成方法により請求項7又は8記載の製造方法により得られた圧着はがき用粉体接着剤をベタ印字率で現像し、
該現像された圧着はがき用粉体接着剤を前記可変情報を印刷した前記普通紙又は接着剤無加工の圧着用はがきに転写し定着器により定着して機外に排出する
上記各工程を少なくとも含んで成ることを特徴とする圧着はがき用粉体接着剤の塗布方法。
【請求項11】
マゼンタ、シアン、又はイエローのカラートナーをトナー容器に収容した第1〜第3の画像形成部とブラックのトナーをトナー容器に収容した第4の画像形成部の合計4つの画像形成部を備え、フルカラー印字モードによる印字とモノクロ印字モードによる印字を選択的に実行可能な電子式画像形成装置を用い、
前記ブラックのトナーのトナー容器を請求項1乃至6記載の圧着はがき用粉体接着剤を収容したトナー容器に交換し、
前記第4の画像形成部を非印字状態として接着剤無加工の圧着用はがきに前記第1〜第3の画像形成部のいずれか又は全てを用いて前記フルカラー印字モードにより可変情報を形成して定着させ、
該可変情報を形成して定着された圧着用はがきを両面印字用搬送機構により前記可変情報の形成面が再度印字面となるように搬送させ、
前記フルカラー印字モードから前記モノクロ印字モードに印字モードを切り替え且つベタ印字率に設定し、
前記第4の画像形成部により前記圧着はがき用粉体接着剤を現像させ、
該現像された圧着はがき用粉体接着剤のベタ画像を前記両面印字用搬送機構を介して再搬送されてくる前記圧着用はがきの前記可変情報形成面に転写させ定着させて機外に排出させ、
該排出された前記圧着用はがきを前記圧着はがき用粉体接着剤の定着面を内側にして中央より2つに折り曲げて前記電子式画像形成装置に再挿入し、
前記2つに折り曲げられた圧着用はがきを定着器により圧着させて再び機外に排出させる
上記各工程を少なくとも含んで成ることを特徴とする圧着はがきの作成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−38476(P2007−38476A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223905(P2005−223905)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】