説明

粉粒体排出装置

【課題】粉粒体の排出能力に優れる粉粒体排出装置とする。
【解決手段】粉粒体Fの一時貯留槽2と、当該粉粒体Fの取入口3及び排出口4と、取入口3を開閉する第1の弁体20と、排出口4を開閉する第2の弁体50とを有する粉粒体排出装置1であって、一時貯留槽2を、取入口3を有する上側要素10と、排出口4を有する下側要素30とで構成する。また、下側要素30は、第1の弁体20を伴って上下に移動し、上方へ移動すると第1の弁体20が取入口3を閉じ、下方へ移動すると排出口4が第2の弁体50によって閉じられる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵機に備わる粉粒体ホッパー室などから粉粒体を排出する場合などに用いる粉粒体排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集塵機、乾燥機などに備わる粉粒体ホッパーや、粉粒体の空気輸送路、貯留槽などの空間(以下単に「排出元空間」ともいう。)から粉粒体を排出する場合においては、これらの排出元空間と排出先空間との間に差圧が存在することなどから、粉粒体の排出を促進し、あるいは調節する装置(粉粒体排出装置)として、ロータリーバルブ型の弁装置やダブルダンパー型の弁装置が用いられている。
【0003】
これらの粉粒体排出装置のうち、ロータリーバルブ型の弁装置は、ローター(弁体)がケーシング内において回転する構造であるため、粉粒体の連続排出性の点で優れているが、耐摩耗性の点では劣る。また、ロータリーバルブ型の弁装置は、ローターの回転を滑らかにするために、ローターとケーシングとの間にクリアランスが設けられており、したがって、気密性の点でも劣る。これらのことから、例えば、粉粒体の排出元空間と排出先空間と間の差圧が大きい場合や、研磨性の強い粉粒体を排出対象とする場合などにおいては、一般的にダブルダンパー型の弁装置が用いられている。
【0004】
このダブルダンパー型の弁装置としては、例えば、ボールバルブやバタフライバルブが2台備わる装置(例えば、特許文献1参照。以下この形態の装置を、単に「バルブ型装置」ともいう。)や、フラッパー型のダンパー(弁体)が2台備わる装置(例えば、特許文献2参照。以下この形態の装置を、単に「ダンパー型装置」ともいう。)が存在する。なお、これらのダブルダンパー型の弁装置は、バルブやダンパー等の弁体が2台備わる形態の装置だけではなく、例えば弁体が3台備わる形態の装置なども存在する(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
しかしながら、ダブルダンパー型の弁装置も、次のような問題を有している。
すなわち、(1)「バルブ型装置」においては、バルブとケーシングとの間に粉粒体が噛み込むため、バルブの摩耗、損傷等が生じ、気密性能が劣化する。結果、装置寿命が短くなる。他方、「ダンパー型装置」においても、ダンパーと弁座(特にシール部品)との間に粉粒体が噛み込むため、シール部品の摩耗、損傷等が生じ、気密性能が劣化する。結果、装置寿命が短くなる。(2)「ダンパー型装置」においては、ダンパーを開くに際して、ガスに押し流される粉粒体がダンパーの一部位上を滑り、この一部位上から集中的に落下するため、当該一部位が集中的に摩耗する(偏摩耗)。また、当該一部位上に残った粉粒体は、ダンパーが閉じられると、ダンパーと弁座との間に噛み込まれた状態になるため、偏摩耗が進む。さらに、この偏摩耗が原因となって排出先空間側から排出元空間側に向かってガスが逆噴出(リーク)すると、このリークガスに含まれる粉粒体によって偏摩耗がよりいっそう進んでしまい、装置寿命が一段と短くなる。(3)「ダンパー型装置」は、ホッパーも上下に2台備わり、このホッパーそれぞれの高さはダンパーの回動による開閉が可能になる高さとされるため、装置全体の高さが高くなる(装置の大型化)。例えば、排出口の直径が200mmの場合、装置全体の高さは、800〜1000mmにもなる。(4)いずれの形態の装置においても、複数の弁体がそれぞれ異なる動作をするため、制御が複雑になり、慣性力が大きくなる。したがって、弁体の単位時間当りの開閉サイクルを上げることができず、粉粒体の排出能力が低くなる。(5)さらに、弁体の動作・制御が複雑であると、駆動機構も複雑になるため、部品点数が増加し、装置コストの増加につながる。(6)特に、「ダンパー型装置」においては、通常、ダンパーがホッパー内に貯留された粉粒体を掻き分けながら閉回動することになるため、当該ダンパーを回動させるための大きな駆動源が必要になり、装置コストがいっそう増加する。また、この掻き分けは、ホッパーの高さを高くするか、ダンパーの動作を複雑に制御することで避けることもできるが、これらの方法によると、装置の大型化、装置コストの増加につながる。(7)このほか、従来の装置は、各種弁体の回動軸部分を覆うシール材が粉粒体に曝されるため、粉粒体が高温である場合や、浸食作用を有する場合等には使用できない等の使用制限をともなうことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭51−113223号公報
【特許文献2】特開平6−17947号公報
【特許文献3】特開昭48−77417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、粉粒体の排出能力に優れる粉粒体排出装置を提供することにある。また、より好ましくは装置寿命の長く、装置が大型化せず、装置コストが増加せず、使用制限の少ない粉粒体排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
粉粒体の一時貯留槽と、当該粉粒体の取入口及び排出口と、前記取入口を開閉する第1の弁体と、前記排出口を開閉する第2の弁体と、を有する粉粒体排出装置であって、
前記一時貯留槽は、前記取入口を有する上側要素と、前記排出口を有する下側要素と、で構成され、
当該下側要素は、前記第1の弁体を伴って上下に移動し、上方へ移動すると当該第1の弁体が前記取入口を閉じ、下方へ移動すると前記排出口が前記第2の弁体によって閉じられる、構成とされている、
ことを特徴とする粉粒体排出装置。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記一時貯留槽の周壁は、前記上側要素を構成する上側筒体と、前記下側要素を構成する下側筒体と、これら上側筒体及び下側筒体のいずれか一方に固定され、かつ他方に接する封止材と、で構成され、
前記下側要素の上下移動手段が前記下側筒体の外壁面に取り付けられ、当該下側筒体が上下に移動すると、前記封止材が前記他方の筒体に接したまま上下に移動する構成とされている、
請求項1記載の粉粒体排出装置。
【0010】
〔請求項3記載の発明〕
前記上側要素は前記取入口が形成された天面材を有し、この天面材は少なくとも取入口側端部が当該取入口に向かうに従って下方に傾斜する形状とされ、
前記下側要素は前記排出口が形成された底面材を有し、この底面材は少なくとも排出口側端部が当該排出口に向かうに従って下方に傾斜する形状とされ、
前記第1の弁体及び前記第2の弁体は、上方に向かうに従って径が狭まるテーパー部を有し、
前記下側要素が上方へ移動すると前記第1の弁体のテーパー部が前記天面材の取入口側端縁に突き当たって当該取入口が閉じ、前記下側要素が下方へ移動すると前記底面材の排出口側端縁が前記第2の弁体のテーパー部に突き当たって当該排出口が閉じる、構成とされている、
請求項2記載の粉粒体排出装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、排出能力に優れる粉粒体排出装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本形態の粉粒体排出装置の縦断面図である(取入口が閉じた状態)。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本形態の粉粒体排出装置の縦断面図である(排出口が閉じた状態)。
【図4】本形態の粉粒体排出装置を用いた粉粒体の排出方法の説明図である。
【図5】本形態の粉粒体排出装置を用いた粉粒体の排出方法の説明図である。
【図6】本形態の粉粒体排出装置を用いた粉粒体の排出方法の説明図である。
【図7】粉粒体の噛み込みについての比較説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
〔粉粒体排出装置〕
図1及び図2に、本実施の形態に係る粉粒体排出装置1を示した。
本形態の粉粒体排出装置1は、粉粒体Fの一時貯留槽2と、当該粉粒体Fの取入口3(図3参照)及び排出口4と、取入口3を開閉する第1の弁体20と、排出口4を開閉する第2の弁体50と、を主に有する。
【0014】
本形態の一時貯留槽2は、従来のダブルダンパー型の弁装置の上段ホッパーに相当するものであるが、従来の弁装置における上段ホッパーとは異なり、取入口3を有する上側要素10と、この上側要素10とは別体とされた排出口4を有する下側要素30と、で構成されている。
【0015】
上側要素10は、取入口3が形成された天面材11と、この天面材11の下側に配置された上側筒体12と、を主に有する。天面材11は、少なくとも取入口3側の端部が、図示例ではフランジ部13を除く周端縁から取入口3側端縁までの全体が、取入口3に向かうに従って下方に傾斜する(凹む)形状とされている。この形状は、見方を変えると、「天面材11は、下方に向かうに従って径が狭まる円錐台形状とされている」と表現することができる。
【0016】
天面材11のフランジ部13は、集塵機、乾燥機などに備わる粉粒体ホッパー101のフランジ部102とボルト及びナット等からなる締結手段19によって連結され、この連結により、粉粒体排出装置1全体が粉粒体ホッパー101に取り付けられる。したがって、本形態によると、粉粒体ホッパー101からの粉粒体Fが天面材11上に一時貯留されることになり、一時貯留槽2を構成する天面材11が粉粒体ホッパー101の下端部としても機能することになる。
【0017】
他方、下側要素30は、排出口4が形成された底面材31と、この底面材31の上側に配置された下側筒体32と、を主に有する。底面材31は、少なくとも排出口4側の端部が、図示例では周端縁から排出口4側端縁までの全体が、排出口4に向かうに従って下方に傾斜する(凹む)形状とされている。この形状は、見方を変えると、「底面材31も、下方に向かうに従って径が狭まる円錐台形状とされている」と表現することができる。
【0018】
本形態の粉粒体排出装置1においては、上側筒体12の上端部が天面材11の周端部に溶接等によって気密性をもって接続され、下側筒体32の下端部が底面材31の周端部に溶接等によって気密性をもって接続されている。
【0019】
また、上側筒体12及び下側筒体32は、上側筒体12が内側、下側筒体32が外側に配置された同軸の二重管構造とされ、下側筒体32の上端部には、合成ゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等からなるリング状の封止材33が固定されている。そして、この封止材33は、上側筒体12の外壁面に一周にわたって気密性をもって接している。したがって、封止材33によって、上側筒体12と下側筒体32との間の気密性が図られ、上側筒体12と下側筒体32との間から粉粒体Fを含むガスが外部に漏れるのが防止される。結果、上側筒体12、下側筒体32及び封止材33が、一時貯留槽2の周壁として機能する。
【0020】
加えて、上側筒体12には天面材11が気密性をもって接続され、下側筒体32には底面材31が気密性をもって接続されているため、上側筒体12、下側筒体32及び封止材33並びに天面材11及び底面材31によって、取入口3及び排出口4を有する槽(一時貯留槽2)が構成され、この槽が粉粒体Fを一時貯留することになる。
【0021】
本形態において、一時貯留槽2の周壁の断面形状、つまり上側筒体12及び下側筒体32の断面形状は、特に限定されず、四角形状などとすることもできるが、図示例のように円形状とするのが好適である。
【0022】
本形態において、第1の弁体20は、上方に向かうに従って径が狭まる円錐台状のテーパー部21と、このテーパー部21の上端部と溶接等によって気密性をもって接続された円板状の天部22と、この天部22に、この天部22の下側に位置する状態において連結された支持部23と、を主に有する。この支持部23は、斜め外下方に延びる適宜の数の支持棒24を介して、前述底面材31に接続されており、この支持部23の接続により、第1の弁体20全体が底面材31を含む下側要素30に支持された状態になっている。
【0023】
また、第2の弁体50は、上方に向かうに従って径が狭まる円錐台状のテーパー部51と、このテーパー部51の上端部と溶接等によって気密性をもって接続された円板状の天部52と、この天部52に、この天部52の下側に位置する状態において連結された支持部53と、を主に有する。この支持部53は、水平方向に延びる適宜の数の支持棒54を介して、ドーナツ状の下板43に接続されており、この支持部53の接続により、第2の弁体50全体が下板43に支持された状態になっている。
【0024】
この下板43は、前述天面材11のフランジ部13と、上下方向に延びる棒状のタイロッド44によって連結されている。このタイロッド44の形状、本数等は、特に限定されないが、図示例では、直線状とされ、120°間隔で3本設けられている。また、下板43上には、下側要素30を上下に移動するための上下移動手段60が設置されている。この上下移動手段60は、下側要素30を上下に移動することができるものであれば特に限定されず、例えば、エアシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダー、スクリュージャッキ等の直線的に伸縮する装置や、クランクやカムとモーター等の駆動源とを組み合わせたリンク機構を有する装置などを使用することができる。ただし、粉粒体排出装置1の構造をシンプルにするという観点からは、図示例のように、エアシリンダー60を用いるのが好ましい。
【0025】
このエアシリンダー60は、上下方向に沿うようにタイロッド44と並行に設けられており、基端部が下板43上に固定され、先端部が下側筒体32の外壁面に固定されている。したがって、エアシリンダー60が伸縮すると、下板43や、この下板43に連結されている第2の弁体50、上側要素10に対する関係で相対的に、下側要素30が第1の弁体20を伴って上下に移動する。そして、下側要素30が上方に移動すると、第1の弁体20のテーパー部21が天面材11の取入口3側の端縁に突き当たって、特に図示例では当該取入口3側端縁に取り付けられた、例えば、合成ゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等からなるシールリング14に突き当たって、取入口3が閉じられる(塞がれる)。他方、下側要素30が下方に移動すると、図3に示すように、底面材31の排出口4側の端縁が、特に図示例では当該排出口4側端縁に取り付けられた、例えば、合成ゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等からなるシールリング34が、第2の弁体50のテーパー部51に突き当たって、排出口4が閉じられる(塞がれる)。また、この下側要素30の上下移動に際しては、前述封止材33が上側筒体12の外壁面に接し気密性を保ったまま、上下に移動する。
【0026】
さらに、本形態の粉粒体排出装置1においては、下板43の内周側端縁から上方に延びる補助筒体41が設けられている。この補助筒体41の断面形状は、特に限定されず、例えば、四角形状などとすることもできるが、本形態では、円形状としている。加えて、本形態の粉粒体排出装置1においては、一端部が当該補助筒体41に気密性をもって固定され、他端部が下側筒体32の例えば下端部に気密性をもって固定された蛇腹等の上下方向に伸縮する伸縮筒体42が設けられている。そして、特に本形態の粉粒体排出装置1においては、これら補助筒体41及び伸縮筒体42とともに、取入口3、排出口4及びテーパー部21,51の中心軸が、全て同一とされている。
【0027】
〔粉粒体排出方法〕
次に、本形態の粉粒体排出装置1を用いて粉粒体ホッパー101から粉粒体Fを排出する方法について説明する。なお、本形態の粉粒体排出装置1は、排出元空間と排出先空間とが同圧であっても、排出元空間が排出先空間よりも高圧であっても用いることができるが、以下では、排出元空間が排出先空間よりも低圧である場合を例に説明する。
【0028】
本形態の粉粒体排出装置1を用いて粉粒体Fを粉粒体ホッパー101から排出するにあたっては、まず、図4の(1)に示すように、エアシリンダー60を伸ばして下側要素30を上方へ移動し、第1の弁体20によって取入口3を閉じておく。この状態においては、前述したように天面材11が粉粒体ホッパー101の下端部として機能し、粉粒体ホッパー101からの粉粒体Fが天面材11上に一時貯留される。
【0029】
次に、図4の(2)に示すように、エアシリンダー60を縮めて下側要素30を下方に移動する。この下側要素30の移動に伴って第1の弁体20も下方に移動し、取入口3が開かれるため、天面材11上の粉粒体Fは、取入口3を通して一時貯留槽2内に取り入れられる。
【0030】
この下側要素30の下方への移動中においては、取入口3とともに排出口4も開かれた状態になっているため、排出先空間D側から、排出口4、一時貯留槽2、取入口3を通して、排出元空間U側に、空気等のガスが流れる。このガスの流通により、粉粒体Fが流動化され、例えば一時貯留槽2内や天面材11上に粉粒体Fのブリッジや、フロック、クリンカボール(固結ボール)等が形成されるのが防止される。つまり、本形態の粉粒体排出装置1においては、排出元空間Uと排出先空間Dとの間の差圧に起因するガスの流通をエアレーションとして利用する。また、このエアレーション効果は、下側要素30の移動中にのみ生じるため、従来の粉粒体排出装置におけるガスリークとは異なるものとなり、前述したガスリークにおけるような問題は生じない。このエアレーション効果の継続時間(ガスの流通時間)は、下側要素30の移動時間を調節することによって調節することができ、通常0.1〜1秒、好ましくは0.2〜0.5秒とされる。
【0031】
このようにして下側要素30が下方へ移動すると、図5の(3)に示すように、排出口4が第2の弁体50によって閉じられる。したがって、一時貯留槽2内に取り入れられた粉粒体Fは、一時貯留槽2内において一時貯留された状態になる。
【0032】
次に、図5の(4)に示すように、エアシリンダー60を伸ばして下側要素30を上方へ移動する。この下側要素30の移動に伴って排出口4も上方へ移動し、第2の弁体50から離れるため、排出口4が開かれる。したがって、一時貯留槽2内に一時貯留された粉粒体Fは、排出口4を通して排出される。
【0033】
この粉粒体Fの排出においては、従来の粉粒体排出装置において、上段ダンパー内から排出される粉粒体と同様に、重力が利用されるが、本形態の粉粒体排出装置1においては、排出口4が上方へ移動するため、粉粒体Fがその場に留まろうとする力、つまり慣性力も利用される。したがって、従来の粉粒体排出装置における上段ダンパーからの粉粒体の排出速度に比べて、一時貯留槽2からの粉粒体Fの排出速度の方が速くなる。しかも、本形態の粉粒体排出装置1においては、排出口4が上方へ移動して当該排出口4が開く構成とされており、従来の粉粒体排出装置におけるように第2の弁体50が下方へ移動して排出口4が開く構成とはされていないため、従来の粉粒体排出装置におけるように第2の弁体を収容するための下段ホッパー等を設ける必要がない。したがって、例えば、粉粒体Fの排出速度を5t/hとする場合、粉粒体排出装置1全体の高さを、40〜50cmと従来の約半分にすることができる。
【0034】
なお、この下側要素30の上方への移動中においても、排出口4とともに取入口3が開かれた状態になっているため、前述したエアレーション効果が生じる。
【0035】
このようにして下側要素30が上方へ移動すると、図6の(5)に示すように、第1の弁体20によって取入口3が閉じられ、粉粒体ホッパー101からの粉粒体Fが天面材11上に一時貯留される状態に戻る。また、一時貯留槽2内に一時貯留された粉粒体Fの量によっては、この間においても、排出口4から排出された粉粒体Fが、第2の弁体50を支持する支持棒54間を通して、次の工程等に向かって排出される。
【0036】
以上の下側要素30の上下移動サイクルは、例えば60〜100回/分、好ましくは30〜60回/分とすることができる。
【0037】
以上のように、本形態の粉粒体排出装置1によると、下側要素30の上下移動を繰り返すことのみによって、粉粒体ホッパー101内の粉粒体Fを排出することができ、複数の弁体がそれぞれ異なる動作をする従来の粉粒体排出装置と比べて、装置の制御が極めて容易となり(本形態では、エアシリンダー60を伸縮させるのみで足りる。)、また、慣性力も小さなものとなる。しかも、装置の制御が容易であるため、取込口3及び排出口4の単位時間当りの開閉サイクルを上げても障害が生じにくく、粉粒体Fの排出能力を向上させることができる。具体的には、例えば、従来の粉粒体排出装置によると、粉粒体Fの排出速度が1〜1.5m3/時であったのを、例えば、2〜6m3/時まで向上させることができる。本発明者が試験したところによると、粉粒体Fがセメント、圧力タンク内の圧力が0.7MPaの場合、排出速度を15t/hとすることができ、粉粒体Fがアルミナ研磨材、圧送ブロワ等の圧送装置の圧力が60KPaの場合、排出速度を6t/hとすることができた。また、開閉サイクルを上げて排出能力を向上させると、排出が平準化されるため、定量性が得られる。
【0038】
さらに、本形態の粉粒体排出装置1は、動作がシンプルであり、制御が容易であるため、駆動機構もシンプルにすることができ、部品点数を減らして、装置コストを削減することができる。このほか、本形態の粉粒体排出装置1を駆動するにあたっては、下側要素30を上下に直線移動させるのみで足り、従来の粉粒体排出装置におけるように、ダンパー等を回動させる必要がないため、駆動力をより小さなものとすることができる。
【0039】
さらに、本形態の粉粒体排出装置1においては、エアシリンダー60が下側筒体30の外壁面に取り付けられ、一時貯留槽2内に配置されないため、駆動軸部分を覆うシール材等が粉粒体Fに曝されるということがなく、例えば、粉粒体Fが高温である場合や、浸食作用を有する場合等には使用できないなどの使用制限がない。特に、本形態では、排出口4を通り抜けた粉粒体Fが伸縮筒体42や補助筒体41の内方を通り抜けるため、エアシリンダー60が粉粒体Fに曝されることが完全に防止される。
【0040】
加えて、本形態の粉粒体排出装置1においては、粉粒体Fに曝される部位であって、2つの部材が擦れ合うことになる部位(以下、この部位を単に「擦動部位」ともいう。)は、唯一上側筒体12とこの上側筒体12に接したまま上下に移動する封止材33とが接する部位のみとなるため、摩耗が低減し、装置寿命が長くなる。しかも、当該擦動部位を境界とする一時貯留槽2の内側と外側とでは、一時貯留槽2の内側の方が低圧となるため、当該擦動部位における粉粒体Fの噛み込みは極めて少なくなり、摩耗がいっそう低減される。
【0041】
また、本形態の粉粒体排出装置1においては、下側要素30が上下に移動し、取込口3及び排出口4が開閉するに際して、第1の弁体20のテーパー部21が天面材11の取入口3側(がわ)端縁に突き当たり(取入口3が閉じる)、底面材31の排出口3側(がわ)端縁が第2の弁体50のテーパー部51に突き当たる(排出口4が閉じる)構成とされている。したがって、天面材11や底面材31等に振動が加わり、ハンマリング効果が生じる。このハンマリング効果により、例えば、一時貯留槽2内や天面材11上等に粉粒体Fのブリッジや、フロック、クリンカボール(固結ボール)等が形成されるのが防止される。
【0042】
ところで、従来の粉粒体排出装置(特にダンパー型装置)においては、取入口や排出口を閉じた際に、図7の(a)に示すように、弁体21X上に残る粉粒体Fが当該弁体21Xと弁座11Xとの間に挟まれた(噛み込まれた)状態になり、この噛み込まれた粉粒体Fが摩耗、ガスリークの原因になっていた。しかしながら、本形態の粉粒体排出装置1においては、例えば、取入口3を例に説明すると、図7の(b)に示すように、天面材11の取入口3側端縁が当該取入口3に向かうに従って下方に傾斜する形状とされ、しかも上方に向かうに従って径が狭まるテーパー部21が天面材11の取入口3側端縁に突き当たって当該取入口3が閉じる構成とされているため、当該突き当たりに際して、天面材11の取入口3側端縁が若干押し広げられる。したがって、テーパー部21上に残る粉粒体Fが天面材11の取入口3側端縁によって当該テーパー部21上からそぎ落とされることとなり、粉粒体Fの噛み込みによる摩耗やガスリーク等が防止される。しかも、以上のように天面材11の取入口3側端縁が、特に本形態では弾力性を有するシールリング14が、テーパー部21によって押し広げられた状態になると、閉じた状態における取入口3の気密性も向上する。なお、以上は、排出口4についても、同様である。
【0043】
さらに、本形態の粉粒体排出装置1においては、テーパー部21や排出口4が上下方向に直線的に移動するのみであり、テーパー部21と天面材11の取入口3側端縁との突き当たりや、底面材31の排出口4側端縁とテーパー部51との突き当たりが、一周にわたって均一となるため、偏摩耗も生じない。特に、本形態の粉粒体排出装置1においては、取入口3、排出口4、テーパー部21,51の中心軸が同じとされているため、下側要素30を高速で多数回上下移動させても、移動軸の偏りが生じにくい。したがって、以上の突き当たりは、均一な状態を長く維持し、装置寿命が長くなる。
【0044】
〔その他〕
本形態の粉粒体排出装置1において、タイロッド44の本数は、特に限定されないが、下側要素30の上下移動軸が偏るのを防止して偏摩耗を防止するために、3本以上設けるのが好ましい。もっとも、本形態の粉粒体排出装置1は、前述したように装置構造が極めてシンプルであり軽量であるため、図示例のように、タイロッド44を120°間隔で3本設ければ、十分に下側要素30の上下移動軸の偏り等を防止することができる。
【0045】
また、本形態の粉粒体排出装置1において、エアシリンダー60の本数も、特に限定されないが、下側要素30の上下移動軸が偏るのを防止して偏摩耗を防止するために、3本以上設けるのが好ましい。もっとも、本形態の粉粒体排出装置1は、前述したように駆動力が極めて小さくて足りるため、図示例のように、エアシリンダー60を120°間隔で3本設ければ、十分に下側要素30を偏りなく上下に移動することができる。なお、図示例では、エアシリンダー60をピストンが上側となるように配置した場合を示しているが、ピストンが下側となるように配置することもでき、必要な伸縮力等を考慮して、適宜設計することができる。
【0046】
また、前述したように本形態の粉粒体排出装置1においては、下側要素30の上下移動手段60として、エアシリンダー以外の装置を用いることもできるが、エアシリンダーによると、エアレス時には、下側要素30が下方に移動し、排出口4が第2の弁体50で閉じられた状態になるため、故障時においても気密性が保持される。
【0047】
本形態の粉粒体排出装置1において、処理の対象となる粉粒体Fは、特に限定されず、例えば、アルミナ研磨材、セメント、食品粉体、微粉炭等を例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、集塵機に備わる粉粒体ホッパー室などから粉粒体を排出する場合などに用いる粉粒体排出装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…粉粒体排出装置、2…一時貯留槽、3…取入口、4…排出口、10…上側要素、11…天面材、12…上側筒体、13…フランジ部、14…シールリング、19…締結手段、20…第1の弁体、21,51…テーパー部、22,52…天部、23,53…支持部、24,54…支持棒、30…下側要素、31…底面材、32…下側筒体、41…補助筒体、42…伸縮筒体、43…下板、44…タイロッド、50…第2の弁体、60…上下移動手段(エアシリンダー)、101…粉粒体ホッパー、102…フランジ部、F…粉粒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体の一時貯留槽と、当該粉粒体の取入口及び排出口と、前記取入口を開閉する第1の弁体と、前記排出口を開閉する第2の弁体と、を有する粉粒体排出装置であって、
前記一時貯留槽は、前記取入口を有する上側要素と、前記排出口を有する下側要素と、で構成され、
当該下側要素は、前記第1の弁体を伴って上下に移動し、上方へ移動すると当該第1の弁体が前記取入口を閉じ、下方へ移動すると前記排出口が前記第2の弁体によって閉じられる、構成とされている、
ことを特徴とする粉粒体排出装置。
【請求項2】
前記一時貯留槽の周壁は、前記上側要素を構成する上側筒体と、前記下側要素を構成する下側筒体と、これら上側筒体及び下側筒体のいずれか一方に固定され、かつ他方に接する封止材と、で構成され、
前記下側要素の上下移動手段が前記下側筒体の外壁面に取り付けられ、当該下側筒体が上下に移動すると、前記封止材が前記他方の筒体に接したまま上下に移動する構成とされている、
請求項1記載の粉粒体排出装置。
【請求項3】
前記上側要素は前記取入口が形成された天面材を有し、この天面材は少なくとも取入口側端部が当該取入口に向かうに従って下方に傾斜する形状とされ、
前記下側要素は前記排出口が形成された底面材を有し、この底面材は少なくとも排出口側端部が当該排出口に向かうに従って下方に傾斜する形状とされ、
前記第1の弁体及び前記第2の弁体は、上方に向かうに従って径が狭まるテーパー部を有し、
前記下側要素が上方へ移動すると前記第1の弁体のテーパー部が前記天面材の取入口側端縁に突き当たって当該取入口が閉じ、前記下側要素が下方へ移動すると前記底面材の排出口側端縁が前記第2の弁体のテーパー部に突き当たって当該排出口が閉じる、構成とされている、
請求項2記載の粉粒体排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260574(P2010−260574A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110890(P2009−110890)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(391061646)株式会社流機エンジニアリング (20)
【Fターム(参考)】