説明

粒子合成用装置

【課題】小粒子およびナノ粒子の清浄高温合成のための装置を提供する。高温粒子合成を行うことができる耐久性粒子生成装置が開示される。粒子生成装置は過酷な反応条件にともなうサセプタ劣化を最小限に抑えるように構成される。
【解決手段】粒子生成装置において、
(a)反応体材料の貫通路を収容するための内部空間、
(b)エネルギーの作用を受けると熱を発生することができ、あらかじめ定められた範囲内の前記反応体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように配置された、少なくとも1つのサセプタ、および
(c)前記サセプタを前記反応体材料から隔離するための、前記サセプタと前記内部空間の間に配置された、熱を伝達するバリア層、を有する少なくとも1つの容器を備える粒子生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には粒子合成のための装置に関し、さらに詳しくは、小粒子およびナノ粒子の清浄高温合成を行うことができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多年にわたり、エレクトロニクス、材料科学およびナノスケール技術の領域において急速な進歩があり、例えば、エレクトロニクス分野における一層小さなデバイス、ファイバ製造分野における進歩およびバイオ技術分野における新しい応用をもたらしてきた。小粒子物質を利用する領域における技術的進歩を促進するためには、さらに一層、小さく、清浄で、均一な粒子を生成できる能力が必要である。新規で、効率が高く、順応性が高い、小粒子物質の生成手段の開発は益々有益になる。
【0003】
粒子の大きさが粒子または粒子を構成する化合物の物理的および化学的な特性に影響を与えることが多い。例えば、光学特性、機械特性、生化学特性および触媒特性は粒子の断面直径が200ナノメートル(nm)より小さくなると変わることが多い。粒径が200nmより小さくなると、元素または化合物のそのような小粒子は同じ元素または化合物の大粒子の特性とは極めて異なる特性を示すことが多い。例えば、巨視的スケールでは触媒的に不活性である材料がナノ粒子の形態では極めて効率の高い触媒として振る舞うことがある。
【0004】
上述した粒子特性は多くの技術分野で重要である。例えば、光ファイバ製造において、不純な前駆体からのある粒径範囲(約5〜300nm)の実質的に純粋なシリカおよびゲルマニウムのスート粒子の生成が、高純度光ファイバを作成できる光学プリフォームの提供において肝要になっている。また、薬物の分野においては、いくつかのあらかじめ定められた特性を有する粒子の生成が、例えば、生体内送達、生物学的利用能、薬物安定性および生理学的適合性を最適化するために有益である。粒子の光学特性、機械特性、生化学特性および触媒特性は粒子の大きさおよび粒子を構成する化合物の大きさに密に関係する。気相生成法では一般に、所望の寸法範囲内にある、大量の高純度粒子が得られるから、気相粒子生成法は魅力的である。
【0005】
気相ナノ粒子合成のため、エーロゾルリアクタのような粒子生成装置が開発されている。そのようなエーロゾルリアクタには、フレームリアクタ、管型炉リアクタ、プラズマリアクタおよび、ガス濃縮法、レーザアブレーション法およびスプレー熱分解法を用いるリアクタがある。特に、光ファイバ製造におけるシリカプリフォーム形成のためのスート粒子生成には、ホットウォール管型炉リアクタが適していることがわかっている。通常、ホットウォール管型炉リアクタには、反応域近傍のリアクタ壁にエネルギーを供給するため、抵抗加熱素子が用いられるかまたはバーナーが用いられる。
【0006】
誘導スート生成装置(ISG)は、リアクタ壁を加熱するために誘導加熱素子を用いるホットウォール管型炉リアクタの例である。光ファイバ製造で用いるためのシリカスート粒子の合成用に開発された、そのようなISGの例は、本発明と共通に所有される発明の、特許文献1に説明されており、特許文献1の開示はその全体が本明細書に参照として含まれる。特許文献1に説明されるISGは、一般に白金、ロジウムまたは白金/ロジウム合金でつくられる、誘導加熱リアクタ壁を有する。特許文献1におけるISGの一実施形態の説明は、反応域のいくつかの領域を加熱するための無線周波数(RF)電磁エネルギーの使用も示し、適するRFサセプタとしてのグラファイトの使用可能性に言及している。ISGには他の管型スート生成装置に優る多くの利点がある。例えば、化学反応を支援するために反応域のリアクタ壁を加熱するためのエネルギー供給に燃焼が必要ではない。また、反応域の壁のバーナー加熱を用いる生成装置に比較して高められたエネルギー源制御により、反応温度を含むプロセス温度を制御できる能力が高められている。
【0007】
しかし、ISGにはいくつかの欠点もある。例えば、高温(約1500℃)における塩素(Cl)イオンおよび酸素(O)イオンのような、侵襲性化学物質にリアクタ壁がさらされることにより、反応域のリアクタ壁が損傷を受け得る。そのような侵襲性環境条件は、リアクタ壁が白金、ロジウムまたは白金/ロジウム合金でつくられているとしても、損傷を生じさせる。この結果、リアクタ壁の機械的特性および誘導特性は時間の経過とともに劣化する。また、このリアクタ壁材料の劣化により、白金およびロジウムの化合物による合成粒子の汚染がおこり得る。劣化がおこると、リアクタ壁材料を交換しなければならず、これには費用がかかり、時間もかかる。リアクタ壁の劣化が最小限に抑えられ、いかなる劣化がおころうとも汚染が反応領域から隔離されるであろう、高温粒子合成を行うことができる装置の開発は有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0206127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、リアクタ壁の劣化を最小限に抑え、いかなる劣化がおころうとも汚染が反応領域から隔離される、高温粒子合成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
粒子生成のための装置が本明細書に開示される。
【0011】
本発明の一実施形態において、装置は、材料が加熱される内部空間を有する少なくとも1つの容器およびエネルギー源により供給されるエネルギーから熱を発生できる少なくとも1つのサセプタを備える。サセプタは容器の内部空間が加熱されるように配置される。サセプタはバリア層を介して内部空間から隔てられる。
【0012】
本発明の別の実施形態において、装置はマイクロ波加熱またはレーザ加熱の形態の電磁エネルギーから熱を発生することができる少なくとも1つのサセプタを備え、電磁エネルギーはサセプタにエネルギーを供給し、よって内部空間内の前駆体材料を加熱する。本実施形態において、バリア層は省略することができる。
【0013】
本発明の別の実施形態において、装置は直列連結された複数の容器を備える。複数の容器のそれぞれの内部空間は直列の隣の容器の内部空間と流体が通じる。
【0014】
本発明の別の実施形態において、装置は、材料を受け入れるための少なくとも1つの流入口および、流入口と流体が通じ、反応体を収容するための内部空間を有する、少なくとも1つの円筒形容器を備える。円筒形容器は少なくとも1つの円筒形サセプタを有し、サセプタ材料は、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金からなる群から選ばれ、電磁エネルギーによる作用を受けて熱を発生することができ、その熱が内部空間に与えられるように配置される。円筒形容器はバリア層も有し、バリア層材料は、石英ガラスおよび石英からなる群から選ばれ、円筒形サセプタを封入しており、円筒形サセプタとバリア層の間には空間が存在する。円筒形サセプタに電磁エネルギーを供給するためにエネルギー源が円筒形容器と通じている。
【0015】
サセプタが侵襲性環境条件にさらされず、サセプタを安価な材料でつくることができるであろう、高温粒子合成を行うことができる装置を開発することは有益であろう。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者には説明から容易に明らかであろうし、あるいは、本明細書の記述および特許請求の範囲に説明され、また添付図面に示されるように本発明を実施することによって認められるであろう。
【0017】
上述の全般的説明および以下の詳細な説明がいずれも本発明の例示に過ぎず、特許請求されるような本発明の本質および特徴の理解のための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。
【0018】
添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。図面は本発明の1つ以上の実施形態を示し、記述とともに本発明の原理および動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の一実施形態にしたがう粒子生成のための装置の略図である。
【図2】図2は本発明の別の実施形態にしたがう粒子生成のための別の装置の簡略な断面図である。
【図3】図3は直列連結容器を有する本発明の別の実施形態にしたがう粒子生成のための装置の略図である。
【図4】図4は直列連結容器を有する本発明の別の実施形態にしたがう粒子生成のための装置の簡略な分解組立図である。
【図5】図5は本発明の別の実施形態にしたがう粒子生成のための装置の簡略な断面図である。
【図6】図6は本発明の別の実施形態にしたがう粒子生成のための装置の簡略な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は添付図面とともに読めば、以下の詳細な説明から最善に理解される。
【0021】
本明細書に用いられるように、
術語「サセプタ」はエネルギー源からのエネルギーによる作用を受けると熱を発生することができるいずれかの材料を指し、
術語「バリア層」は、内部空間内の環境条件による劣化に対するサセプタの保護に役立つように、サセプタに近接して配置される材料の層を指す。
【0022】
その例が添付図面に示される、本発明の現在の実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、全図面にわたって、同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。
【0023】
図1に示される実施形態において、前駆体材料を収容するための概ね軸長にわたって延びる内部空間20を定める内表面を有する円筒形容器につくられたサセプタ12を有する、粒子生成装置10が示される。連続流路16が容器内の内部空間を通り抜け、よって、前駆体材料が、例えばサセプタの底において、内部空間に入ることができ、本発明によって発生された熱でおこる化学反応を受けた後に、所望の粒子の形態でサセプタの頂部からでることができる。本実施形態では装置の頂部から粒子がでるが、粒子は別の方向で装置からでることができる。例えば、装置は横型配置とするか、または粒子生成および/または粒子流が最適化される別の向きの配置とすることもできる。サセプタ12は入射エネルギーを吸収して熱を発生することができ、その熱が内部空間20に伝達されるように配置される。本実施形態において、サセプタはグラファイトからなることが好ましい。石英からなることが好ましいバリア層14は、サセプタと内部空間の間に配置される。図1において誘導コイルとして示されるエネルギー源18は、サセプタにエネルギーを供給するため、容器に近接して配置される。他の従来の誘導加熱システムを本発明のこの実施形態の要件を満たすように適合させることができる。
【0024】
図1においてサセプタ12は概ね円筒形であるとして示されるが、サセプタは、内部空間による所要量の前駆体材料の収容を可能にし、エネルギー源、選ばれたサセプタおよびバリア層の配置による所望の環境条件、例えばあらかじめ定められた温度範囲または内部空間内の滞留時間の確立、したがって前駆体材料からの所望の特性を有する粒子の生成を可能にする、いずれの形状または寸法もとることができる。
【0025】
図1に示されるサセプタ12はグラファイトからなることが好ましいが、あるいは、サセプタ材料は、白金、ロジウムまたは白金/ロジウム合金、例えば80/20白金/ロジウム、のようないずれかの実質的に導電性の材料からなることができる。サセプタ材料は以下に説明されるような対応するエネルギー源によって供給されるエネルギーから目的とする粒子生成反応に適切な量の熱を発生することができ、そのような熱に耐えることができるように、選ばれるべきである。
【0026】
図1に示されるエネルギー源18は誘導加熱によってサセプタ12にエネルギーを供給するが、あるいは、エネルギー源はサセプタ12に直接入射する電磁波源(source of electromagnetic radiation)とすることができ、そのような電磁波は、例えば、赤外周波数範囲、光学周波数範囲または無線周波数範囲にある。
【0027】
図5に別形態のエネルギー源が示される。この実施形態において、エネルギー源18は、循環してタンク回路に戻る水冷銅配管30に接続された水冷銅電極を有する誘電加熱システムである。タンク回路は、合せて電気共振器として機能して粒子生成装置を特定の周波数に保持する、誘導性コンポーネントと容量性コンポーネントの組合せである。これらのコンポーネントの間を(コンポーネントのLおよびCの値の組合せによって決定される角周波数または波長で)電流が交互するにしたがって、比例「加熱」がインダクタの中央に置かれた導電材料または半導体材料に与えられ、および/または比例「加熱」がキャパシタの導電プレート間に置かれたいずれかの「損失性」誘電体に与えられる。
【0028】
図6にまた別の形態のエネルギー源が示される。この実施形態において、マイクロ波加熱システムは、共振空洞32内にマイクロ波エネルギーを分布させるためのエネルギー源18としてマグネトロンを備える。
【0029】
また別の形態の加熱方法としてレーザ加熱システムを用いることができる。レーザ源はパルスモードまたは連続モードで動作する大パワーレーザであり、サセプタは耐熱性の、内部空間内でおこる反応に対して化学的に不活性な、材料からなる。レーザ加熱システムは、例えばエレクトロニクス用途およびナノ技術における、流量および粒子生成量が小さい場合のような、小型粒子生成装置に高効率で用いることができる。
【0030】
一般に、電磁エネルギー源によって内部空間内の反応温度の迅速で精密な調整が可能になる。
【0031】
図1に示されるバリア層14は石英であることが好ましいが、あるいは、バリア層は、石英ガラス、アルミナ、セラミックまたは、熱、化学反応体または化学副生物への曝露あるいは機械的摩耗による劣化からサセプタを保護するに適するその他の材料からなることができる。
【0032】
図2に示される実施形態において、バリア層14はグラファイトサセプタ14を封入し、よってサセプタを囲む外囲器を形成する。バリア層とサセプタの間には空間24が存在して外囲器内のサセプタの膨張を可能にし、よってサセプタ材料とバリア層材料の間の熱膨張係数(CTE)のいくらかの不整合が許容される。バリア層は気密封止され、バリア層内部は排気される。バリア層でサセプタを完全に囲み、内容積を排気することにより、サセプタは、所望の粒子をつくる化学反応体(すなわち前駆体材料)からだけでなく、サセプタの酸化および/または早期劣化をもたらし得るであろう酸化雰囲気からも、隔離される。サセプタの劣化がおこったとしても、サセプタ材料はバリア層外囲器内に閉じ込められたままであろう。例えば、グラファイトからなるサセプタが高温による劣化のために崩れて粉末形態になったとしてもサセプタ材料はバリア層外囲器内に収められているから、粉末形態のサセプタ材料は内部空間内の反応体材料にまだ熱を供給できる。
【0033】
図5および図6において、バリア層14はサセプタ12を封入する。サセプタの封入により、高温におけるサセプタの酸化および前駆体材料とのサセプタの反応が防止される。バリア層がサセプタを封入していないと、サセプタが誘電加熱システムまたはマイクロ波加熱システムの共振空洞内部のプレートへのアーク放電をおこし得る。図5および図6のサセプタ12はグラファイトからなることが好ましいが、あるいは、サセプタ材料には、白金、ロジウム、80/20白金/ロジウムのような白金/ロジウム合金、セラミック材料、石英および石英ガラスを含めることができる。図5および図6に示されるようないくつかの実施形態において、サセプタがセラミック材料、石英または石英ガラスからなる場合、粒子生成装置はバリア層を必要としない高温粒子合成を提供できる。
【0034】
一般に、バリア層は、高温で侵襲性の化学的条件のような、サセプタ材料を劣化させ得る内部空間の環境条件とのサセプタの直接接触を防止する。例えば、バリア層なしで容器内にサセプタ材料として用いられる白金、ロジウムまたは白金/ロジウム合金には、高温(1500℃以上)においてClおよびOのイオンが点蝕を生じさせ、よって材料が劣化し、サセプタ材料の熱発生能力が低下するという欠点がある。
【0035】
図3および図4に示される実施形態において、複数の容器10を有する粒子生成装置が示される。複数の容器は、複数の容器のそれぞれの内部空間20が直列の隣の容器の内部空間と流体が通じるように、直列連結される。この結果、連続流路16が連結されて複数の容器のそれぞれを通過するであろう。それぞれの容器のエネルギー源18はそれぞれの容器を個別に加熱するために互に独立である。
【0036】
図3および図4に示される構成により、複数の容器の内の少なくとも1つが所望の粒子の生成に必要な温度より低い温度まで前駆体材料を加熱するための予熱ヒータとしてはたらくことが可能になる。複数の容器のそれぞれについて個別加熱能力を有する粒子生成装置によって温度勾配をかけることができる。この温度勾配により、特に反応し易く揮発性の材料の、高度に制御された態様での、徐加熱が可能になり得るであろう。
【0037】
さらに、図4においては、材料の滞留時間を長くして混合を強め、よって温度、組成および粒径がより均一な材料を得るため、本実施形態における連続流路16は故意に曲がりくねらせてある。
【0038】
所望の粒子生成を達成するに必要な場所において装置に材料を導入するため、開口26が内部空間に設けられる。取り付けられる容器よりも小さな容積をもつ内部空間を有するスペーサ28によるか、および/または内部空間への開口の計画的配置により、乱流が誘起される。この実施形態において、容器10は円筒形であり、円筒形のサセプタ12を有する。バリア層14がサセプタを封入する。エネルギー源18によってサセプタにエネルギーが供給される。エネルギー源はサセプタの誘導加熱を介する電磁波源であり、熱は熱伝導および輻射によってサセプタから内部空間20に伝達される。エネルギーはサセプタに近接して配置された誘導コイルによってサセプタに供給される。誘導コイルは冷却システムによって水冷することができる。
【0039】
どこで粒子生成がおこるかは、前駆体材料が相互に接触する回数、反応がおこるに必要な反応温度および材料がその間に反応する機会を与えられる滞留時間のような要因に依存する。粒子を生成する反応に先立って全ての前駆体材料が混合される場合、反応は、必要な反応温度に達し、所望の粒子の蒸気が発生する場所において開始し得る。
【0040】
いくつかの状況において、容器の内部空間において達成可能な最高温度より低い温度で、加熱域の直後に1つまたはいくつかの前駆体材料が添加され、そこで反応が開始し得る。このガスのその後の冷却により、得られる材料の蒸気の核形成および凝結がおこり、エーロゾル粒子が形成される。この核形成は、臨界核径に達して粒子が形成されるまでの、分子の衝突、離脱(蒸発)および凝集の結果である。粒径は一般に、粒子凝集のための条件、例えば十分高いエーロゾルモノマー濃度が存在すれば、数ナノメートルと数100ナノメートルの間の範囲にある。
【0041】
この複数容器手法は多層粒子の生成に用いることができる。例えば、第1のエーロゾル材料が十分に高い蒸気圧を有し、第2のエーロゾル材料の形成に必要な環境条件に対して化学的に不活性であれば、第1のエーロゾル材料を他の前駆体材料と同時に粒子生成装置の連続流路に沿ういずれかの場所で内部空間に注入して、多層粒子を形成することができる。
【0042】
本発明の粒子生成装置は、少なくとも1つのサセプタと内部空間の間にバリア層があるから、他の粒子生成装置にともなうサセプタ劣化効果に関連する問題なしに、ハロゲン化物を含む侵襲性化学反応において少なくとも約1650℃までの温度で動作できる能力という利点を有する。本発明の粒子生成装置は、特許文献1においてスート粒子生成について説明される反応条件と同様の反応条件に、サセプタ劣化に関連する問題なしに、耐えることができるであろう。
【0043】
本発明において、容器の温度能力は選ばれるバリア層の耐熱強度にしか制限されない。例えば、石英からなるかまたは石英ガラスからなるバリア層は内部空間における2000℃までの温度に対する耐熱強度を提供できるであろう。この温度は、ヘリウムのような不活性キャリアガスを用いれば、さらに高くなり得る。不活性キャリアガスを用いれば、バリア材料の軟化温度においてさえ、動作が可能になる。いくつかの用途において、アルゴンおよび窒素のような、別のキャリアガスを用いることができる。温度および化学的相互作用に依存して過酷になり得る内部空間における条件からバリア層で隔てられているサセプタ材料によって、安価なサセプタ材料を用いることができる能力が提供される。サセプタが例えば石英バリア層で内部空間から隔てられる本発明の粒子生成装置では、サセプタを安価な材料、例えばグラファイトでつくることができる。
【0044】
本発明の結果、粒子合成プロセスは、内部空間内のサセプタ分解生成物、炭化水素燃焼生成物および/または酸化種および不純物の存在による汚染なしに、極めて清浄に実行することができる。例えば、排気された石英バリア層で封入されることにより内部空間から隔てられたサセプタを有する少なくとも1つの容器を備える本発明の粒子生成装置は、安価な材料でつくられたサセプタを、その材料が劣化し易いかまたはガス放出性であっても、利用できる。サセプタとバリア層の間に排気されていない空間がある場合であっても、サセプタ劣化副生物は封入バリア層内に閉じ込められるであろう。バリア層とサセプタの間の排気された空間(evacuated space)は、サセプタの機械的劣化がおこったとしても、サセプタ材料の一体性の維持に役立つ。図3および図4に示される実施形態において、タングステン、鉄またはその他の実質的に導電性の材料からなるサセプタは、加熱時に液体形態にあっても、内部空間に熱を供給するために機能することができる。サセプタ材料は、高温で安定であり、エネルギー源からのエネルギーの作用を受けると熱を発生できる材料とすることが好ましい。
【0045】
本発明の結果、酸化(例えば酸化物粒子形成)、還元(例えば、純金属粒子、さらには窒化物または炭化物からなる粒子の、形成)、化合および分解、並びに蒸発および凝縮のような物理反応を含み、これらの組合せも含む、高純度粒子形成に、広い範囲の気相化学反応を用いることができる。
【0046】
上述した理由のため、本発明の粒子生成装置は、ISGおよびその他の管型生成装置を含む、その他の粒子生成装置に優る利点を有する。バリア層および/または代替電磁エネルギー源のため、本発明により、グラファイトおよび/または石英ガラスのような、安価なサセプタ材料の使用が可能になる。高温反応体はバリア層にしか接触しないから、形成される粒子のサセプタ分解生成物による汚染が最小限に抑えられる。この結果、過酷な化学的環境および/または摩耗性環境をともなう高温において、より清浄な粒子合成プロセスを実行することが可能である。また、サセプタの腐食が最小限に抑えられ、よってサセプタの機械的特性および熱発生特性の劣化が最小限に抑えられる。
【0047】
本発明の精神または範囲を逸脱することなく様々な改変および変形が本発明になされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明の改変および変形が添付される特許請求項およびそれらの等価物の範囲内に入れば、本発明はそのような改変および変形を包含するとされる。
【0048】
他の実施態様
1.粒子生成装置において、
(a)反応体材料の貫通路を収容するための内部空間、
(b)エネルギーの作用を受けると熱を発生することができ、あらかじめ定められた範囲内の前記反応体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように配置された、少なくとも1つのサセプタ、および
(c)前記サセプタを前記反応体材料から隔離するための、前記サセプタと前記内部空間の間に配置された、熱を伝達するバリア層、を有する少なくとも1つの容器を備えることを特徴とする粒子生成装置。
【0049】
2.前記サセプタにエネルギーを供給するための少なくとも1つのエネルギー源をさらに備える実施態様1記載の粒子生成装置。
【0050】
3.前記エネルギー源が、電磁波源であることを特徴とする実施態様2記載の粒子生成装置。
【0051】
4.前記電磁波源が、誘導加熱システムであることを特徴とする実施態様3記載の粒子生成装置。
【0052】
5.前記電磁波源が、誘電加熱システムであることを特徴とする実施態様3記載の粒子生成装置。
【0053】
6.前記電磁波源が、マイクロ波加熱システムであることを特徴とする実施態様3記載の粒子生成装置。
【0054】
7.前記指サセプタが、モリブデン、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金よりなる群から選択されることを特徴とする実施態様1記載の粒子生成装置。
【0055】
8.前記バリア層が前記反応体材料に対して非反応性である材料を含むことを特徴とする実施態様1記載の粒子生成装置。
【0056】
9.前記バリア層が石英を含むことを特徴とする実施態様1記載の粒子生成装置。
【0057】
10.前記バリア層が石英ガラスを含むことを特徴とする実施態様1記載の粒子生成装置。
【0058】
11.前記バリア層がセラミック材料を含むことを特徴とする実施態様1記載の粒子生成装置。
【0059】
12.前記バリア層が、前記サスセプタを封入(encases)することを特徴とする実施態様1記載の粒子生成装置。
【0060】
13.前記サスセプタが、セラミック材料、石英、石英ガラス、モリブデン、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金よりなる群から選択されることを特徴とする実施態様12記載の粒子生成装置。
【0061】
14.排気された空間(evacuated space)が前記バリア層と前記サセプタとの間に存在することを特徴とする実施態様12記載の粒子生成装置。
【0062】
15.連続流路を提供する複数の容器をさらに含み、該複数の容器は、複数の容器のそれぞれの内部空間が直列の隣の容器の内部空間と流体が通じるように、直列連結されていることを特徴とする実施態様12記載の粒子生成装置。
【0063】
16.前記連続流路が、乱流が前記複数の容器の少なくとも1つにおいて材料の混合をもたらすように配置されていることを特徴とする実施態様15記載の粒子生成装置。
【0064】
17.前記複数の容器のそれぞれのエネルギー源が、それぞれの容器を個別に加熱するためにお互い独立していることを特徴とする実施態様15記載の粒子生成装置。
【0065】
18.前記複数の容器の少なくとも1つが、粒子の生成に必要な温度より低い温度まで材料を加熱するための予熱ヒータであることを特徴とする実施態様15記載の粒子生成装置。
【0066】
19.前記連続流路に沿って所望の位置に前駆体材料を導入するための、バリア層を横断する少なくとも1つの入口をさらに含む実施態様15記載の粒子生成装置。
【0067】
20.粒子生成装置であって、
前駆体材料を収容するための内部空間を有する少なくとも1つの円筒形容器、
前記円筒形容器と流体が通じる、前記前駆体材料を受け取るための少なくとも1つの流入口、
少なくとも1つの円筒形サセプタであって、電磁エネルギーによる作用を受けて、熱を発生することができ、あらかじめ定められた範囲内の前記前駆体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように配置された、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金からなる群から選ばれるサセプタ、
バリア層であって、バリア層は石英ガラスおよび石英からなる群から選ばれ、前記サセプタを封入し、排気された空間が前記サセプタと前記バリア層の間に存在するものであるバリア層、および
前記サセプタに電磁エネルギーを供給するための、前記円筒形容器に通じるエネルギー源、を備えることを特徴とする粒子生成装置。
【0068】
21.粒子生成装置において、
(a)反応体材料の貫通路を収容するための内部空間、
(b)対応するエネルギー源からの電磁エネルギーによる作用を受けると熱を発生することができる、セラミック材料、石英、石英ガラス、モリブデン、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金からなる群から選ばれ、あらかじめ定められた範囲内の前記反応体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように配置された、少なくとも1つのサセプタ、および
(c)前記サセプタに電磁エネルギーを供給するための少なくとも1つのエネルギー源であって、マイクロ波加熱システムおよびレーザ加熱システムからなる群から選ばれるエネルギー源、を有する少なくとも1つの容器を備えることを特徴とする粒子生成装置。
【符号の説明】
【0069】
10 粒子生成装置
12 サセプタ
14 バリア層
16 連続流路
18 エネルギー源
20 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子生成装置において、
(a)反応体材料の貫通路を収容するための内部空間、
(b)エネルギーの作用を受けると熱を発生することができ、あらかじめ定められた範囲内の前記反応体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように前記内部空間の外側に配置された、少なくとも1つのサセプタ、および
(c)前記サセプタを前記反応体材料から隔離するための、前記サセプタと前記内部空間の間に配置された、熱を伝達するバリア層、
を有する少なくとも1つの容器を備え、前記バリア層は前記サセプタを封入することを特徴とする粒子生成装置。
【請求項2】
前記サセプタと前記バリア層の間に排気された空間が存在することを特徴とする請求項1記載の粒子生成装置。
【請求項3】
前記バリア層が前記反応体材料に対して非反応性である材料を含むことを特徴とする請求項1または2記載の粒子生成装置。
【請求項4】
前記バリア層が石英を含むことを特徴とする請求項1または2記載の粒子生成装置。
【請求項5】
前記バリア層が石英ガラスを含むことを特徴とする請求項1または2記載の粒子生成装置。
【請求項6】
粒子生成装置において、
前駆体材料を収容するための内部空間を有する少なくとも1つの円筒形容器、
前記円筒形容器と流体が通じる、前記前駆体材料を受け取るための少なくとも1つの流入口、
少なくとも1つの円筒形サセプタであって、電磁エネルギーによる作用を受けて、熱を発生することができ、あらかじめ定められた範囲内の前記前駆体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように前記内部空間の外側に配置された、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金からなる群から選ばれるサセプタ、
バリア層であって、石英ガラスおよび石英からなる群から選ばれ、前記サセプタを封入し、排気された空間が前記サセプタと前記バリア層の間に存在するものであるバリア層、および
前記サセプタに電磁エネルギーを供給するための、前記円筒形容器に通じるエネルギー源、
を備えることを特徴とする粒子生成装置。
【請求項7】
粒子生成装置において、
(a)反応体材料の貫通路を収容するための内部空間、
(b)対応するエネルギー源からの電磁エネルギーによる作用を受けると熱を発生することができる、セラミック材料、石英、石英ガラス、モリブデン、白金、ロジウム、グラファイトおよび白金/ロジウム合金からなる群から選ばれ、あらかじめ定められた範囲内の前記反応体材料を加熱するに十分な温度が前記内部空間に達成されるように前記内部空間の外側に配置された、少なくとも1つのサセプタ、
(c)バリア層であって、石英ガラスおよび石英からなる群から選ばれ、前記サセプタを封入するバリア層、および
(d)前記サセプタに電磁エネルギーを供給するための少なくとも1つのエネルギー源であって、マイクロ波加熱システムおよびレーザ加熱システムからなる群から選ばれるエネルギー源、
を有する少なくとも1つの容器を備えることを特徴とする粒子生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115837(P2012−115837A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20673(P2012−20673)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2009−523803(P2009−523803)の分割
【原出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】