説明

粘着テープ

【目的】半導体ウエハ端縁の洗浄のない半導体ウエハの端縁を被覆保護する半導体加工方法に用いるための粘着テープを提供することにある。
【構成】本発明は、粘着テープを半導体ウエハの外周端縁に貼り付ける工程及び粘着テープを除去する工程を有する半導体加工方法に用いる粘着テープであって、粘着テープの粘着剤がアクリル成分とシリコーン成分を有する粘着テープである。他の発明は、アクリル成分とシリコーン成分を有する粘着剤に、さらに、アクリル成分とシリコーン成分の両者が結合された成分を配合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、半導体ウエハの端縁を粘着テープで被覆する半導体加工で用いられる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの加工工程では、半導体ウエハの端縁を被覆保護する半導体加工方法及びこの方法に用いるための粘着テープが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−206806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法によれば、シリコーンが主たる成分の粘着剤であった場合には、シロキサン成分が汚染源となる可能性があることから、その使用が著しく制限される場合がある。一方でアクリルが主たる成分の粘着剤であった場合には、半導体ウエハ主面の加工や洗浄の工程において、粘着テープが半導体ウエハの端縁を被覆した状態でテープが水に触れると、粘着テープが脱落する可能性があった。または水がウエハと粘着テープの間に浸入する可能性があった。ここで、水とは酸、アルカリ、あるいはイオンを含むような水溶液も含まれる。
【0005】
本願発明の目的は、水に触れても脱落しにくい、あるいは水の浸入が抑制された半導体ウエハ端縁被覆のための粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粘着テープを半導体ウエハの外周端縁に貼り付ける工程及び粘着テープを除去する工程を有する半導体加工方法に用いる粘着テープであって、粘着テープの粘着剤がアクリル成分とシリコーン成分を有する粘着テープである。
【0007】
さらに他の発明は、上述のアクリル成分とシリコーン成分を有する粘着剤に、さらに、アクリル成分とシリコーン成分の両者が結合された成分を配合した粘着テープである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、半導体ウエハ状材料の端縁を簡便に保護し、また剥離に伴う洗浄を必要とせずに、効率的に半導体ウエハの薄膜形成処理やパターン処理を行うことができるだけでなく、テープが水に接するような工程にも安定的な適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例にかかる粘着テープを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
半導体ウエハの外周端縁を被覆するのは、ウエハ主面を加工する際に、電気絶縁、汚染防止又は保護を行うためである。半導体ウエハの外周端縁を被覆することによって電気絶縁を行うことにより、無電解ニッケルめっきに必要な絶縁部分を作製できる。半導体ウエハの外周端縁を被覆することによって汚染防止を行うことにより、ウエハ外周端縁部に付着したフォトレジストや外来異物の除去又はフォトレジスト塗布時のウエハ外周端縁部のマスキングをすることができる。
【0011】
半導体ウエハの外周端縁を被覆することによって保護をすることにより、プラズマエッチング時のウエハ外周端縁部のマスキングや、ウエハ取り扱い時の外部衝撃からの保護をすることができる。
【0012】
粘着テープにアクリル成分とシリコーン成分を有させたのは、水に触れても脱落しにくい、あるいは水の浸入が抑制された半導体ウエハ端縁被覆のための粘着テープとすることができる。
【0013】
アクリル成分とシリコーン成分を有する粘着剤は、アクリル粘着剤にシリコーン成分を配合することによって作製できる。好ましい配合は、アクリル粘着剤100質量部に対してシリコーン系成分を0.5質量部から5部質量部の範囲である。
【0014】
シリコーン成分としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル骨格にシリコーンを含有する重合体がある。シリコーン成分を配合するだけでも好ましいが、さらに好ましくは、シリコーン成分とアクリル成分を結合させることが好ましい。具体的には、シリコーン成分がアクリル成分、例えばアクリル酸エステルと結合すると、粘着剤としての結合力が強化されるためである。結合の例としてより具体的に説明すると、水酸基を有するシリコーン成分が、イソシアネート硬化剤を介して、アクリル酸エステル共重合体と結合されるものがある。
【0015】
粘着剤には、粘着力調整のために粘着付与剤を含んでもよい。粘着剤は、一般感圧型あるいは紫外線硬化により粘着力が低減する紫外線剥離型のいずれでもよいが、被着体材料に対して、2N/10mm以下の剥離力が望ましい。剥離力が高すぎると粘着テープをウエハ外周端縁から剥離除去し難くなり、粘着テープの破断、粘着剤残留又は半導体ウエハの破損が発生しやすい。
【0016】
粘着テープは基材フィルムの片面に粘着剤層が設けられた構成が望ましい。粘着テープの使用前には、粘着剤層表面は剥離性フィルムで保護されていることが望ましい。または剥離力の異なる二種類の剥離性フィルムの間に粘着剤層が設けられた構成が望ましい。
【0017】
基材フィルムを構成する樹脂材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはこれらを含む共重合体が好ましい。その基材フィルムの厚みは5μmから150μmの間が望ましい。基材フィルムの厚みが薄いと、粘着テープを剥離除去する際に、テープが破断してウエハの外周端縁に残留してしまう可能性がある。また基材フィルムの厚みが厚いと、粘着テープをウエハの外周端縁に隙間無く貼り付けることが困難になる。
【0018】
粘着剤層の厚みは0.1μmから60μmの間が望ましい。粘着剤層が薄いと、テープの貼り付けあるいはウエハの加工中に、粘着テープがウエハ外周端縁から脱落する可能性がある。粘着剤層が厚いと、粘着テープを剥離除去しにくくなる。
【0019】
粘着テープの幅は2mmから10mmの間が望ましい。粘着テープの幅が小さいと、ウエハ外周端縁からテープがはずれやすくなる。粘着テープの幅が大きいと、ウエハ外周端縁に粘着テープを隙間無く貼り付けることが困難になる。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例について、図1を用いつつ、詳細に説明する。
(実施例1)
図1の符号1は、直径8インチの円板状のウエハであり、符号2はその表面、符号3はその端縁である。図1(A)の状態のウエハの端縁3に粘着テープ4を貼った状態を図1(B)、図1(C)に示す。粘着テープ4は図1(C)にある「巻き始め」から、時計回りに粘着テープ4を巻き、一周を超えて巻いた「巻き終わり」の地点まで巻いたものである。
【0021】
この粘着テープ4の製造方法について説明する。
(粘着シートの製造)
粘着剤の組成物は次のものである。アクリル酸エステル共重合体(日本合成化学社製N−2993)100質量部、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製コロネートL(登録商標))2質量部、ウレタンアクリレート(荒川化学工業社製ビームセット575(登録商標))50質量部、光反応開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア907(登録商標))3質量部、シリコーン含有成分(綜研化学社製アクトフローUTMM−LS2(登録商標))2質量部。
この粘着剤を含むトルエン・酢酸エチル溶液を、基材としてのコロナ処理されたポリエチレンフィルム(厚み30μm、幅300mm)の片面に30μmの厚みで転写塗工し、さらに図示外の剥離性フィルム(シリコーン系剥離剤が塗工処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を粘着剤の表面に積層して粘着シートを製造した。
【0022】
(粘着テープの製造)
この粘着シートを40℃で5日間静置したのち、8mm幅に裁断して粘着テープ4を得た。
【0023】
(効果の確認)
粘着テープ4が貼り付けられたウエハ1(図1(B)、(C)参照)を、無電解ニッケルめっき浴に浸漬しても、粘着テープ4の剥がれがなく、粘着テープ4の貼り付け面以外の面にめっきすることができた。めっき後、粘着テープ4に紫外線を照射量150mJ/cmで照射し、粘着テープ4を剥離した。このときに粘着テープ4に破断は発生しなかった。また粘着テープ4の剥離後、端縁3(粘着テープ4を貼り付けて剥がした面)を10倍の光学顕微鏡で観察しても、糊残りがなかった。このような試験をウエハ10枚に対して行い、いずれも同様の結果を得た。
【0024】
(比較例1)
シリコーン含有成分を含まないことを除いては、実施例1と同様の粘着剤組成でテープを作製し、10枚のウエハに対して貼り付けを行い、めっき試験を行った。その結果、10枚のうち2枚についてテープとウエハの間にめっき液の侵入がみられ、めっきがされなかった。
【0025】
(比較例2)
粘着テープ4を貼り付けずに、実施例1と同様の無電解ニッケルめっきをした結果、めっきはできなかった。無電解めっきには、実施例1のように、絶縁部分が必要であることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本願発明は、半導体ウエハの端縁を被覆保護する半導体加工方法及びこの半導体加工方法で用いられる粘着テープに関するものであり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0027】
1 半導体ウエハ
2 表面
3 端縁
4 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープを半導体ウエハの外周端縁に貼り付ける工程及び粘着テープを除去する工程を有する半導体加工方法に用いる粘着テープであって、粘着テープの粘着剤がアクリル成分とシリコーン成分を有する粘着テープ。
【請求項2】
アクリル成分とシリコーン成分を有する粘着剤に、さらに、アクリル成分とシリコーン成分の両者が結合された成分を配合した請求項1記載の粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219503(P2011−219503A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4347(P2009−4347)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】