説明

粘膜送達のための方法および製品

本発明は、多糖類製剤の非侵襲性送達に関連した方法および製品を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年4月25日に出願された、米国仮特許出願番号第60/375,927号;2002年4月25日に出願された第60/375,970号;2002年5月28日に出願された第60/383,926号;2002年7月23日に出願された第60/393,959号;および2003年2月10日に出願された第60/446,432号の優先権を主張し、それらの全内容は、参照として本明細書に組み入れられている。
【0002】
技術分野
本発明は、多糖類調製物の非侵襲性送達に関連した方法および製品に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
医薬における最近の進歩は、薬物送達のいくつかの既存のものに代わる様式を生み出した。以前に注射可能な形でのみ利用可能であった薬物は、今や、経口の錠剤またはカプセル、徐放性装置、および経皮性パッチのような侵襲性のより少ない形で利用可能である。しかしながら、これらの進歩の多くは、タンパク質に基づいたまたは低分子の薬物について起こっている。治療的または予防的目的のための多糖類の送達は、まだ、いくつかの問題と関連している。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、ヘパリンおよび低分子量ヘパリン(LMWH)のような多糖類が治療的有効レベルで非侵襲性送達を受け入れられるという発見に、一部、基づいている。例えば、硫酸塩は、スルホン化多糖類の性質および活性を決定するにおいて重要な役割を果たすことができる。硫酸塩は、ヘパリンおよびLMWHのイオン性ならびに機能的相互作用、例えば、抗凝血、に寄与することができる。硫酸塩は、一般的に酸性条件に不安定であるが、ヘパリンおよびLMWHのようなスルホン化多糖類は、胃の酸性および酵素的環境において安定していることが見出された。このように、そのような多糖類は、例えば、腸の膜による吸収の前に胃の中の通過を必要とする、経口投与に用いられることができる。さらに、総合的な電荷、電荷密度、分子の大きさ、大きさ対電荷比およびイズロン酸/グルクロン酸含有量を含む多糖類の生理化学的性質が測定されうるが、オリゴ糖の化学的特性に基づいて、単糖または二糖構成単位の数および同定に関する情報が測定されうることが見出された。このように、化学的特性から得られる情報は、非侵襲性送達経路、例えば、肺、経皮的、および粘膜の送達について高められた多糖類を得るために用いられうる。
【0005】
従って、一つの局面において、本発明は、インビボの送達、例えば、非侵襲性送達、例えば、経皮的、肺、または粘膜の送達、のための多糖類、例えば、GAG、例えば、HLGAG、を調製するための方法を特徴とする。非侵襲性送達の例は、肺、経皮的、鼻、口、舌下、頬、直腸または膣の送達を含む。方法は、多糖類を中和することを含み、それにより、インビボの送達のための多糖類を調製する。方法は、多糖類の質量を減少させることをさらに含みうる。
【0006】
一つの態様において、方法は、多糖類についての化学的特性を測定すること、およびそれの化学的特性に基づいて多糖類を中和することを含む。方法は、それの化学的特性に基づいて多糖類の質量を減少させることをさらに含みうる。
【0007】
一つの態様において、多糖類の正味の負または正味の正電荷は、少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %または90 %、低下する。他の態様において、多糖類は、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和されている。多糖類は、例えば、少なくとも1つの試薬、例えば、多糖類の化学的特性に基づいて選択された試薬、でポリペプチドを消化することにより、中和されうる。例えば、試薬は、酵素(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる酵素)もしくは化学物質(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる化学物質)、またはそれらの組み合わせでありうる。用いられうる酵素の例は、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体を含む。用いられうる化学物質の例は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断を含む。
【0008】
他の態様において、多糖類は、電荷中和剤、例えば、一価もしくは二価のイオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケルおよび銅)、および/または他の中和化合物(例えば、低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、塩基性ペプチド)に多糖類を接触させることにより中和される。
【0009】
一つの態様において、多糖類はHLGAGである。好ましくは、HLGAGは、未分画ヘパリンもしくは分画ヘパリン(例えば、低分子量ヘパリン)または合成五糖類、例えば、アリクストラ(Arixtra)、である。LMWHの例は、エノキサパリン(enoxaparin)、ダルテパリン(dalteparin)、レビパリン(reviparin)、チンザパリン(tinzaparin)、ナドロパリン(nadroparin)、セルトパリン(certoparin)、アルデパリン(ardeparin)およびパルナパリン(parnaparin)を含む。
【0010】
一つの態様において、方法は、多糖類の粒子、例えば、1〜500ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子、を作製することをさらに含む。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。
【0011】
いくつかの態様において、方法は、例えば、多糖類へ活性薬剤を連結することにより、多糖類を担体として用いることをさらに含む。活性薬剤は、例えば、核酸、ポリペプチド、低分子、異成分からなる混合物などでありうる。
【0012】
態様において、方法は、送達促進剤、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、ポリマーなどと共に多糖類を製剤化することをさらに含む。
【0013】
いくつかの態様において、多糖類は、多糖類の調製物中にあり、調製物の多分散性は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)である。
【0014】
もう一つの局面において、本発明は、非侵襲性のインビボの送達、例えば、経皮的、肺または粘膜の送達、のためのHLGAG、例えば、ヘパリン、を調製するための方法を特徴とする。非侵襲性送達の例は、肺、経皮的、鼻、口、舌下、頬、直腸または膣の送達を含む。方法は、HLGAG、例えば、ヘパリン、を中和することを含み、それにより、非侵襲性のインビボの送達のためのHLGAGを調製する。方法は、多糖類の質量を減少させることをさらに含みうる。
【0015】
いくつかの態様において、HLGAGは、未分画もしくは分画ヘパリン(LMWH)または合成五糖類、例えば、アリクストラ、である。好ましくは、HLGAGは、LMWH、例えば、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンおよびパルナパリン、である。一つの態様において、方法は、ヘパリンについての化学的特性を測定すること、およびそれの化学的特性に基づいてヘパリンを中和することを含む。方法は、ヘパリンの質量をそれの化学的特性に基づいて減少させることをさらに含みうる。
【0016】
一つの態様において、ヘパリンの正味の負または正味の正電荷は、少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %または90 %、低下する。他の態様において、ヘパリンは、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和されている。例えば、エノキサパリンの正味電荷は、約19.23である。このように、一つの態様において、ヘパリンは、エノキサパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、レビパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンは、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンは、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。ヘパリンは、例えば、少なくとも1つの試薬、例えば、ヘパリンの化学的特性に基づいて選択された試薬、でヘパリンを消化することにより、中和されうる。例えば、試薬は、酵素(例えば、ヘパリンを、それの化学的特性に基づいてヘパリン内の既知の位置で切断することができる酵素)もしくは化学物質(例えば、ヘパリンを、それの化学的特性に基づいてヘパリン内の既知の位置で切断することができる化学物質)、またはそれらの組み合わせでありうる。用いられうる酵素の例は、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体を含む。用いられうる化学物質の例は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断を含む。
【0017】
他の態様において、ヘパリンは、電荷中和剤、例えば、一価もしくは二価のイオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケルおよび銅)、および/または他の中和化合物(例えば、低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、塩基性ペプチド)にヘパリンを接触させることにより中和される。
【0018】
一つの態様において、ヘパリン、例えばLMWH、はヘパリンの少なくとも1つの生物活性が維持されるように中和されうる。例えば、ヘパリンの1つまたは複数の以下の活性は維持されうる:抗Xa活性、抗IIa活性、FGF-2結合活性、血小板因子4(PF4)結合活性またはHIT性向の他の測定、プロタミン中和。他の態様において、ヘパリンは、少なくとも1つの生物活性、例えば抗Xa活性および/もしくは抗IIa活性、が少なくとも一部分は維持されるまたは増強される、ならびに少なくとも1つの他の生物活性、例えばPF4結合、が低下するように中和されうる。ヘパリンの1つもしくは複数の活性の存在または非存在は、例えば、中和されたヘパリンの化学的特性に基づいて、測定されうる。例えば、ヘパリン、例えばLMWH、は以下の成分:I/GHNAc,6SI/GHNS,3S,6S、I/GHNS,6SGHNS,3S,6S、I/GHNAc,6SGHNS,3S、I/GHNS,6SI/GHNS,3S、I/GHNS,6SI/GHNS,3S,6S、I/GHNAc,6SGHNS,3S、I/GHNS,6SI/GHNS,3S、またはそれらの組み合わせ、加えて非天然の、例えば修飾された、糖の1つまたは複数の存在(または非存在)および量について分析されうる。これらの特性は、例えば、それらの分子量を測定することおよびシーケンシングすることにより、もしくはNMRにより、検出されうる、または特性は、例えば、それらの誘導体(例えば、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、ΔUHNS,6SGHNS,3S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、ΔUHNS,6SGHNS,3S)またはそれらの組み合わせ、加えて非天然の、例えば修飾された、糖を検出することにより、間接的に検出されうる。他の態様において、標準的アッセイ法が、例えば、プロタミン中和、抗Xaもしくは抗IIa活性(例えば、ACT)、PF4結合もしくは他のHIT性向についての測定および/またはFGF-2結合活性を測定するために用いられうる。
【0019】
一つの態様において、生成されることになっているヘパリンは、エノキサパリン由来であり、ヘパリンが約19.32/4200未満である電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンは中和され、質量は減少する。もう一つの態様において、生成されることになっているヘパリンは、ナドロパリン由来であり、ヘパリンが約27.6/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、生成されることになっているヘパリンは、例えば、約23/5000未満の電荷対質量比率をもつ中和されたダルテパリン、または約25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつ中和されたレビパリンでありうる。もう一つの態様において、生成されることになっているヘパリンは、パルナパリン由来であり、ヘパリンが約30.4/6610未満である電荷対質量比率をもつように、パルナパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、生成されることになっているヘパリンは、例えば、約28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつ中和されたチンザパリンでありうる。
【0020】
一つの態様において、方法は、ヘパリンの粒子、例えば、1〜500ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子、を作製することをさらに含む。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。
【0021】
いくつかの態様において、方法は、例えば、ヘパリンを活性薬剤へ連結することにより、ヘパリンを担体として用いることをさらに含む。活性薬剤は、例えば、核酸、ポリペプチド、低分子、異成分からなる混合物などでありうる。
【0022】
いくつかの態様において、方法は、送達促進剤、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、ポリマーなどと共にヘパリンを製剤化することをさらに含む。
【0023】
いくつかの態様において、ヘパリンは、ヘパリンの調製物中にあり、ヘパリン調製物の多分散性は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)である。
【0024】
もう一つの局面において、本発明は、非侵襲性のインビボの送達のための多糖類、例えば、GAG、HLGAG、を調製するための方法を特徴とする。非侵襲性送達の例は、肺、経皮的、鼻、口、舌下、頬、直腸または膣の送達を含む。方法は、以下のことを含む:多糖類を供給すること;多糖類についての化学的特性を測定すること;およびそれの化学的特性に基づいて多糖類の質量を減少させ、それにより、非侵襲性のインビボの送達のための多糖類を調製すること。方法は、多糖類を中和させることをさらに含みうる。
【0025】
好ましい態様において、多糖類の質量は、多糖類の少なくとも1つまたは複数の活性が維持されるように減少しうる。他の好ましい態様において、多糖類の質量は、多糖類の少なくとも1つの活性が少なくとも一部分は維持されるまたは増強される、および多糖類の少なくとも1つの活性が低下するように、減少しうる。
【0026】
一つの態様において、多糖類の質量は、供給された多糖類の質量から、少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %、35 %、40 %、45 %、50 %、55 %、60 %、65 %、70 %、75 %、80 %、85 %または90 %(およびそれらの間の整数)、減少する。他の態様において、多糖類の質量は、供給された多糖類の質量から、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2200、2500、3000 Daまたはそれ以上、減少する。
【0027】
一つの態様において、供給された多糖類の質量は、例えば、少なくとも1つの試薬、例えば、多糖類の化学的特性に基づいて選択された試薬、でポリペプチドを消化することにより、減少されうる。例えば、試薬は、酵素(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる酵素)もしくは化学物質(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる化学物質)、またはそれらの組み合わせでありうる。用いられうる酵素の例は、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体を含む。用いられうる化学物質の例は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断を含む。
【0028】
いくつかの態様において、多糖類の電荷が中和される場合、多糖類の正味の負または正味の正電荷は、少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %または90 %、低下されうる。他の態様において、多糖類の電荷が中和される場合、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和されうる。多糖類は、例えば、少なくとも1つの試薬、例えば、多糖類の化学的特性に基づいて選択された試薬、でポリペプチドを消化することにより、中和されうる。例えば、試薬は、酵素(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる酵素)もしくは化学物質(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる化学物質)、またはそれらの組み合わせでありうる。用いられうる酵素の例は、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体を含む。用いられうる化学物質の例は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断を含む。
【0029】
他の態様において、多糖類の電荷が中和される場合、それは、電荷中和剤、例えば、一価もしくは二価のイオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケルおよび銅)、および/または他の中和化合物(例えば、低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、塩基性ペプチド)に多糖類を接触させることにより中和されうる。
【0030】
一つの態様において、多糖類はHLGAGである。好ましくは、HLGAGは、未分画ヘパリンもしくは分画ヘパリン(例えば、LMWH)または合成五糖類、例えば、アリクストラ、である。LMWHの例は、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンおよびパルナパリンを含む。
【0031】
一つの態様において、方法は、多糖類の粒子、例えば、1〜500ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子、を作製することをさらに含む。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。
【0032】
いくつかの態様において、方法は、例えば、多糖類へ活性薬剤を連結することにより、多糖類を担体として用いることをさらに含む。活性薬剤は、例えば、核酸、ポリペプチド、低分子、異成分からなる混合物などでありうる。
【0033】
いくつかの態様において、方法は、送達促進剤、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、ポリマーなどと共に多糖類を製剤化することをさらに含む。
【0034】
いくつかの態様において、多糖類は、多糖類の調製物中にあり、ヘパリン調製物の多分散性は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)である。
【0035】
もう一つの局面において、本発明は、非侵襲性のインビボの送達のためのHLGAG、例えば、ヘパリン、を調製するための方法を特徴とする。非侵襲性送達の例は、肺、経皮的、鼻、口、舌下、頬、直腸または膣の送達を含む。方法は、以下のことを含む:HLGAGを供給すること;HLGAGについての化学的特性を測定すること;およびそれの化学的特性に基づいてHLGAGの質量を減少させ、それにより、非侵襲性のインビボの送達のためのHLGAGを調製すること。方法は、HLGAGを中和させることをさらに含みうる。
【0036】
好ましい態様において、HLGAGは、ヘパリン、例えば、未分画もしくは分画ヘパリンまたは合成五糖類、例えば、アリクストラ、である。好ましくは、ヘパリンは、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンまたはパルナパリンのようなLMWHである。
【0037】
好ましい態様において、ヘパリンの質量は、ヘパリンの少なくとも1つまたは複数の活性が維持されるように減少されうる。他の好ましい態様において、ヘパリンの質量は、ヘパリンの少なくとも1つの活性が少なくとも一部分は維持されるまたは増強される、およびヘパリンの少なくとも1つの他の活性が低下するように減少されうる。ヘパリンの1つもしくは複数の活性の存在または非存在は、例えば、中和されたヘパリンの化学的特性に基づいて、測定されうる。例えば、ヘパリン、例えばLMWH、は以下の成分:I/GHNAc,6SI/GHNS,3S,6S、I/GHNS,6SGHNS,3S,6S、I/GHNAc,6SGHNS,3S、I/GHNS,6SI/GHNS,3S、I/GHNS,6SI/GHNS,3S,6S、I/GHNAc,6SGHNS,3S、I/GHNS,6SI/GHNS,3Sまたはそれらの組み合わせ、加えて非天然の、例えば修飾された、糖の1つまたは複数の存在(または非存在)について分析されうる。これらの特性は、例えば、それらの分子量を測定することおよびシーケンシングすることにより、もしくはNMRにより、検出されうる、または特性は、例えば、それらの誘導体(例えば、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、ΔUHNS,6SGHNS,3S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、ΔUHNS,6SGHNS,3S)またはそれらの組み合わせ、加えて非天然の、例えば修飾された、糖を検出することにより、間接的に検出されうる。他の態様において、標準的アッセイ法が、例えば、プロタミン中和、抗Xaもしくは抗IIa活性(例えば、ACT)、PF4結合(または他のHIT性向の測定)および/またはFGF-2結合活性を測定するために用いられうる。
【0038】
一つの態様において、ヘパリンの質量は、供給されたヘパリンの質量から、少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %、35 %、40 %、45 %、50 %、55 %、60 %、65 %、70 %、75 %、80 %、85 %または90 %(およびそれらの間の整数)、減少されうる。他の態様において、ヘパリンの質量は、供給されたヘパリンの質量から、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2200、2500、3000 Daまたはそれ以上、減少されうる。
【0039】
一つの態様において、供給された多糖類の質量は、例えば、少なくとも1つの試薬、例えば、多糖類の化学的特性に基づいて選択された試薬、でポリペプチドを消化することにより、減少されうる。例えば、試薬は、酵素(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる酵素)もしくは化学物質(例えば、多糖類をそれの化学的特性に基づいて多糖類内の既知の位置で切断することができる化学物質)、またはそれらの組み合わせでありうる。用いられうる酵素の例は、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体を含む。用いられうる化学物質の例は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断を含む。
【0040】
一つの態様において、ヘパリンは、エノキサパリン由来のヘパリンであり、エノキサパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700 Daまたはそれ未満であるように減少する。もう一つの態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来であり、ナドロパリンの質量は、ヘパリンの質量が約5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。他の態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来であり、ダルテパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、レビパリン由来であり、レビパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。もう一つの態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来であり、パルナパリンの質量は、ヘパリンの質量が約6500、6400、6300、6200、6100、6000、5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来であり、チンザパリンの質量は、ヘパリンの質量が約6000、5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。
【0041】
いくつかの態様において、ヘパリンの電荷が中和される場合、ヘパリンの正味の負または正味の正電荷は、少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %または90 %、低下されうる。他の態様において、ヘパリンの電荷が中和される場合、それは、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和されうる。例えば、エノキサパリンの正味電荷は、約19.23である。このように、一つの態様において、ヘパリンは、エノキサパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来のヘパリンであり、正味電荷は、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、レビパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンは、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。ヘパリンは、例えば、少なくとも1つの試薬、例えば、ヘパリンの化学的特性に基づいて選択された試薬、でヘパリンを消化することにより、中和されうる。例えば、試薬は、酵素(例えば、ヘパリンを、それの化学的特性に基づいてヘパリン内の既知の位置で切断することができる酵素)もしくは化学物質(例えば、ヘパリンを、それの化学的特性に基づいてヘパリン内の既知の位置で切断することができる化学物質)、またはそれらの組み合わせでありうる。用いられうる酵素の例は、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体を含む。用いられうる化学物質の例は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断を含む。
【0042】
他の態様において、ヘパリンの電荷が中和される場合、それは、電荷中和剤、例えば、一価もしくは二価のイオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケルおよび銅)、および/または他の中和化合物(例えば、低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、塩基性ペプチド)にヘパリンを接触させることにより中和されうる。
【0043】
一つの態様において、生成されることになっているヘパリンは、エノキサパリン由来であり、ヘパリンが約19.32/4200未満である電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンは中和され、質量は減少する。もう一つの態様において、生成されることになっているヘパリンは、ナドロパリン由来であり、ヘパリンが約27.6/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、生成されることになっているヘパリンは、例えば、約23/5000未満の電荷対質量比率をもつ中和されたダルテパリン、または約25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつ中和されたレビパリンでありうる。もう一つの態様において、生成されることになっているヘパリンは、パルナパリン由来であり、ヘパリンが約30.4/6610未満である電荷対質量比率をもつように、パルナパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、生成されることになっているヘパリンは、例えば、約28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつ中和されたチンザパリンでありうる。
【0044】
一つの態様において、方法は、ヘパリンの粒子、例えば、1〜500ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子、を作製することをさらに含む。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。
【0045】
いくつかの態様において、方法は、例えば、ヘパリンを活性薬剤へ連結することにより、生成されたヘパリンを担体として用いることをさらに含む。活性薬剤は、例えば、核酸、ポリペプチド、低分子、異成分からなる混合物などでありうる。
【0046】
いくつかの態様において、方法は、送達促進剤、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、ポリマーなどと共に生成されたヘパリンを製剤化することをさらに含む。
【0047】
いくつかの態様において、ヘパリンは、ヘパリンの調製物中にあり、調製物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0048】
もう一つの局面において、本発明は、上記の方法により作製された非侵襲性のインビボの送達のための多糖類組成物を特徴とする。
【0049】
さらにもう一つの局面において、本発明は、非侵襲性送達、例えば、経皮的、肺または粘膜の送達、のための組成物を特徴とし、組成物は、スルホン化多糖類、例えば、スルホン化HLGAGの治療的有効量を含む。
【0050】
好ましい態様において、スルホン化HLGAGは、ヘパリン、例えば、分画もしくは未分画ヘパリンまたは合成五糖類、例えばアリクストラ、である。好ましくは、ヘパリンは、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンまたはパルナパリンのようなLMWHである。
【0051】
好ましい態様において、組成物は、粘膜の送達(例えば、口、頬、舌下、直腸または膣の送達)用である。
【0052】
一つの態様において、組成物は、多糖類の粒子、例えば、1〜500ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子、を含む。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。
【0053】
いくつかの態様において、スルホン化多糖類は、担体として用いられ、例えば、組成物は、活性薬剤をさらに含み、例えば、スルホン化多糖類は、活性薬剤に連結されている。活性薬剤は、例えば、核酸、ポリペプチド、低分子、異成分からなる混合物などでありうる。
【0054】
いくつかの態様において、組成物は、送達促進剤、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、ポリマーなど、をさらに含む。
【0055】
さらにもう一つの局面において、本発明は、肺の送達のための組成物を特徴とし、組成物は、HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類、例えばアリクストラ、の治療的有効量を含む。もう一つの態様において、HLGAGは、LMWH、例えば、以下のものからなる群より選択されるLMWH:エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンおよびパルナパリン、である。好ましくは、組成物は、あらかじめ選択される治療効果、例えば、抗Xaおよび/または抗IIa活性、を与えうるHLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類、例えばアリクストラ、の治療的有効単位用量を送達する装置内にある。
【0056】
一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、の治療的有効単位用量は、約0.05 mg/kg、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、の治療的有効単位用量は、約3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、16 mg、48 mg、80 mg、120 mgまたはそれらの間の用量である。好ましい態様において、合成HLGAGは、アリクストラである。他の態様において、合成HLGAGは、1つまたは複数の、図9に提供されている化合物およびそれらの誘導体である。
【0057】
もう一つの態様において、HLGAGは、LMWH(例えば、以下のものからなる群より選択されるLMWH:エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンおよびパルナパリン)であり、LMWHの治療的有効単位用量は、約2 mg/kg、2.2 mg/kg、2.5 mg/kg、2.7 mg/kg、3.0 mg/kg、3.2 mg/kg、3.5 mg/kg、3.7 mg/kg、4.0 mg/kg、4.5 mg/kg、5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、LMWHの治療的有効単位用量は、約160 mg、180 mg、200 mg、220 mg、240 mg、260 mg、280 mg、300 mg、350 mg、400 mgまたはそれらの間の用量である。好ましい態様において、LMWHはアルデパリンである。
【0058】
もう一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAGまたはLMWH、の治療的有効単位用量は、送達後約5分〜約5時間、10分〜約3時間、30分〜約2時間以内に、HLGAG、例えば合成HLGAG、のピークの血漿濃度を生じるのに有効な量である。
【0059】
一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAGまたはLMWH、は固体、例えば乾燥粒子、の形をとっている。一つの態様において、合成HLGAGまたはLMWHは、乾燥粒子の形をとり、粒子は、1〜500ミクロン(例えば、53〜75ミクロン)の平均幾何学的直径をもつ。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。他の態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、は液体の形をとっている。
【0060】
一つの態様において、HLGAGはアリクストラであり、治療的有効単位用量は、約0.01 mg/kg、0.03 mg/kg、0.05 mg/kg、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、アリクストラの治療的有効単位用量は、約3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、16 mg、48 mg、80 mg、120 mgまたはそれらの間の用量である。
【0061】
もう一つの態様において、HLGAGはアリクストラであり、治療的有効単位用量は、送達後約5分〜約5時間、10分〜約3時間、30分〜約2時間以内に、アリクストラのピークの血漿濃度を生じるのに有効な量である。
【0062】
いくつかの態様において、組成物は、肺の送達促進剤、例えば界面活性剤、をさらに含む。
【0063】
好ましい態様において、装置は、加圧容器またはディスペンサー、例えば、適した噴霧剤および/もしくは噴霧器を含む加圧容器またはディスペンサー、である。一つの態様において、加圧容器またはディスペンサーは、加圧パックである。もう一つの態様において、加圧容器またはディスペンサーは、噴霧器である。
【0064】
さらにもう一つの局面において、本発明は、あらかじめ選択された治療効果、例えば、抗Xaおよび/または抗IIa活性、を与える肺の送達のためのHLGAG、例えば、LMWHまたは合成HLGAG(例えば合成五糖類、例えばアリクストラ)、を調製するための方法を特徴とする。方法は、所望の効果を与えるために肺の投与によりHLGAGの治療的有効単位用量を送達する装置に、HLGAGを供給することを含む。
【0065】
一つの態様において、単位用量は、HLGAG、例えば、LMWHもしくは合成HLGAG(例えば、合成五糖類)、の皮下または静脈内の投与によりあらかじめ選択された結果を与えるために用いられる用量より少なくとも2倍、好ましくは3倍、より好ましくは4倍または5倍多い。
【0066】
一つの態様において、合成HLGAGの治療的有効単位用量は、約0.05 mg/kg、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、合成HLGAGの治療的有効単位用量は、約8 mg、16 mg、48 mg、80 mg、120 mgまたはそれらの間の用量である。好ましい態様において、合成HLGAGは、アリクストラおよびその誘導体である。他の態様において、合成HLGAGは、1つまたは複数の、図9に提供されている化合物およびそれらの誘導体である。
【0067】
もう一つの態様において、HLGAGは、LMWH(例えば、以下のものからなる群より選択されるLMWH:エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンおよびパルナパリン)であり、LMWHの治療的有効単位用量は、約2 mg/kg、2.2 mg/kg、2.5 mg/kg、2.7 mg/kg、3.0 mg/kg、3.2 mg/kg、3.5 mg/kg、3.7 mg/kg、4.0 mg/kg、4.5 mg/kg、5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、LMWHの治療的有効単位用量は、約160 mg、180 mg、200 mg、220 mg、240 mg、260 mg、280 mg、300 mg、350 mg、400 mgまたはそれらの間の用量である。好ましい態様において、LMWHはアルデパリンである。
【0068】
もう一つの態様において、HLGAG、例えば、LMWHまたはは合成HLGAG、の治療的有効単位用量は、送達後約5分〜約5時間、10分〜約3時間、30分〜約2時間以内に、HLGAG、例えばLMWHまたは合成HLGAG、のピークの血漿濃度を生じるのに有効な量である。
【0069】
一つの態様において、HLGAG、例えばLMWHまたは合成HLGAGは、固体、例えば乾燥粒子、の形をとっている。一つの態様において、合成HLGAGまたはLMWHは、乾燥粒子の形をとり、粒子は、1〜500ミクロン(例えば、53〜75ミクロン)の平均幾何学的直径をもつ。好ましくは、少なくとも約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100ミクロンの平均幾何学的直径をもつ粒子が作製される。他の態様において、HLGAG、例えばLMWHまたは合成HLGAG、は液体の形をとっている。
【0070】
一つの態様において、HLGAGは、アリクストラであり、治療的有効単位用量は、約0.01 mg/kg、0.03 mg/kg、0.05 mg/kg、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、アリクストラの治療的有効単位用量は、約3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、16 mg、48 mg、80 mg、120 mgまたはそれらの間の用量である。
【0071】
もう一つの態様において、HLGAGはアリクストラであり、治療的有効単位用量は、送達後約5分〜約5時間、10分〜約3時間、30分〜約2時間以内に、アリクストラのピークの血漿濃度を生じるのに有効な量である。
【0072】
いくつかの態様において、方法は、肺の送達促進剤、例えば界面活性剤、および/または薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0073】
いくつかの態様において、方法は、肺の送達のための装置に組成物を供給することをさらに含む。装置は、加圧容器またはディスペンサー、例えば、適した噴霧剤および/もしくは噴霧器を含む加圧容器またはディスペンサー、である。一つの態様において、加圧容器またはディスペンサーは、加圧パックである。もう一つの態様において、加圧容器またはディスペンサーは、噴霧器である。
【0074】
他の局面において、本発明は、ヘパリン、例えば未分画もしくは分画ヘパリン(LMWH)または合成五糖類、例えばアリクストラ、の非侵襲性送達、例えば経皮的、肺または粘膜の送達、のための組成物を特徴とし、ヘパリンは、ヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ。いくつかの態様において、ヘパリンはさらに、ヘパリンについての参照質量より少ない質量をもつ。
【0075】
一つの態様において、組成物は、経口送達用である。
【0076】
好ましい態様において、ヘパリンは、LMWHである。好ましくは、LMWHは、電荷中和されたエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリンまたはパルナパリンである。
【0077】
好ましい態様において、ヘパリンは、エノキサパリンの参照正味電荷未満の負の正味電荷をもつ。このように、一つの態様において、ヘパリンはエノキサパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来のヘパリンであり、正味電荷は、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、レビパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンは、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。好ましくは、LMWHの正味電荷は、エノキサパリンの正味電荷より少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %、100 %少ない。
【0078】
一つの態様において、ヘパリンがさらに、参照質量より少ない質量をもつ場合、参照質量は、エノキサパリンの質量である。好ましくは、ヘパリンの質量は、エノキサパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。もう一つの態様において、参照質量は、ナドロパリンの質量である。好ましくは、ヘパリンの質量は、ナドロパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。他の好ましい態様において、参照質量は、ダルテパリンの質量であり、ヘパリンの質量は、ダルテパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。さらに他の態様において、参照質量は、レビパリンの質量であり、ヘパリンの質量は、レビパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。他の好ましい態様において、参照質量は、パルナパリンの質量であり、ヘパリンの質量は、パルナパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。さらに他の態様において、参照質量は、チンザパリンの質量であり、ヘパリンの質量は、チンザパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。
【0079】
いくつかの態様において、ヘパリンは、LMWHであり、LMWHの質量は、約4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3200、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700 Daまたはそれ未満である。
【0080】
一つの態様において、ヘパリンはエノキサパリン由来であり、ヘパリンが約19.32/4200未満である電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンは中和され、質量は減少する。もう一つの態様において、ヘパリンはナドロパリン由来であり、ヘパリンが約27.6/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、ヘパリンは、例えば、約23/5000未満の電荷対質量比率をもつ中和されたダルテパリン、または約25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつ中和されたレビパリンでありうる。もう一つの態様において、ヘパリンはパルナパリン由来であり、ヘパリンが約30.4/6610未満である電荷対質量比率をもつように、パルナパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、ヘパリンは、例えば、約28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつ中和されたチンザパリンでありうる。
【0081】
一つの態様において、ヘパリンは、乾燥粒子製剤、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450または500ミクロン(またはそれらの間の整数)の平均幾何学的直径をもつ乾燥粒子、としてある。
【0082】
もう一つの態様において、ヘパリンは、水性製剤としてある。
【0083】
いくつかの態様において、組成物は、電荷中和剤をさらに含む。電荷中和剤は、例えば、対イオン、例えば一価もしくは二価のイオン(バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケルおよび銅)、他の電荷中和剤(例えば、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、塩基性ペプチド)でありうる。
【0084】
一つの態様において、ヘパリンは担体でありうり、組成物は、活性薬剤をさらに含みうり、例えば、活性薬剤とヘパリンは別個である。他の態様において、ヘパリンは活性薬剤である。
【0085】
一つの態様において、組成物は、送達促進剤、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、ポリマーなどをさらに含む。
【0086】
いくつかの態様において、ヘパリンは、ヘパリンの調製物中にあり、調製物の多分散性は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)である。
【0087】
他の局面において、本発明は、M405を含む粘膜の送達のための組成物を特徴とする。
【0088】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0089】
もう一つの局面において、本発明は、M108を含む粘膜の送達のための組成物を特徴とする。
【0090】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0091】
もう一つの局面において、本発明は、M115を含む粘膜の送達のための組成物を特徴とする。
【0092】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0093】
もう一つの局面において、本発明は、M411を含む粘膜の送達のための組成物を特徴とする。
【0094】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0095】
もう一つの局面において、本発明は、M118を含む粘膜の送達のための組成物を特徴とする。
【0096】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0097】
もう一つの局面において、本発明は、M312を含む粘膜の送達のための組成物を特徴とする。
【0098】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0099】
もう一つの局面において、本発明は、対象へスルホン化多糖類を送達するための方法を特徴とする。方法は、対象へ治療的有効量におけるスルホン化多糖類(例えば、HLGAG、例えばヘパリン)を経口投与し、それにより対象へ多糖類を送達することを含む。
【0100】
好ましい態様において、スルホン化多糖類は、ヘパリン、例えば、未分画もしくは分画ヘパリンまたは合成五糖類、例えばアリクストラ、である。好ましくは、分画ヘパリンはLMWHである。そのようなLMWHの例は、本明細書に記載されているLMWH、例えば、電荷中和されたおよび/または質量減少したエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、ならびにパルナパリン、加えて、M312、M118、M405、M108、M115およびM411を含む。
【0101】
一つの態様において、多糖類は、固体の形をとっている。他の態様において、多糖類は水性の形状である。
【0102】
多糖類はまた、組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む組成物、に含まれうる。薬学的組成物は、活性薬剤、例えば、多糖類とは別個の活性薬剤(例えば、多糖類は担体である)、送達促進剤などをさらに含みうる。
【0103】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0104】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0105】
もう一つの局面において、本発明は、対象への多糖類のインビボの非侵襲性送達(例えば、経皮的、肺または粘膜の送達)のための方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載されている方法により作製された治療的有効量の組成物を対象へ投与し、それにより、対象へ多糖類を送達することを含む。
【0106】
好ましい態様において、多糖類は本明細書に記載されている多糖類である。
【0107】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0108】
もう一つの局面において、本発明は、ヘパリン、例えばLMWH、の対象への経口送達のための方法を特徴とする。方法は、ヘパリン、例えばLMWH、の治療的有効量を対象へ経口投与し、それによりヘパリンを対象へ送達することを含み、ヘパリン、例えばLMWHは、ヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ。
【0109】
好ましい態様において、ヘパリンは、合成五糖類、例えばアリクストラ、またはLMWHである。そのようなLMWHの例は、本明細書に記載されているLMWH、例えば、電荷中和されたおよび/または質量減少したエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、ならびにパルナパリン、加えて、M312、M118、M405、M108、M115およびM411を含む。
【0110】
好ましい態様において、LMWHは、エノキサパリンの正味電荷より少ない正味電荷をもち、例えば、LMWHの正味電荷は、エノキサパリンの正味電荷より少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %、100 %少ない。例えば、エノキサパリンの正味電荷は、約19.32である。このように、一つの態様において、ヘパリンは、約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。もう一つの態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、約22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、レビパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンは、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。
【0111】
他の態様において、ヘパリンはさらに、ヘパリンについての参照質量より少ない質量をもつ。例えば、ヘパリンはLMWHであり、LMWHは、エノキサパリンの質量より少ない質量をもつ。好ましくは、LMWHの質量は、エノキサパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。他の好ましい態様において、LMWHの質量は、約4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3200、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700 Daまたはそれ未満である。
【0112】
一つの態様において、ヘパリンはエノキサパリン由来のヘパリンであり、エノキサパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700 Daまたはそれ未満であるように減少する。もう一つの態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来であり、ナドロパリンの質量は、ヘパリンの質量が約5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。他の態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来であり、ダルテパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、レビパリン由来であり、レビパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。もう一つの態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来であり、パルナパリンの質量は、ヘパリンの質量が約6500、6400、6300、6200、6100、6000、5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来であり、チンザパリンの質量は、ヘパリンの質量が約6000、5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。
【0113】
一つの態様において、ヘパリンはエノキサパリン由来であり、ヘパリンが約19.32/4200未満である電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンは中和され、質量は減少する。もう一つの態様において、ヘパリンはナドロパリン由来であり、ヘパリンが約27.6/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、ヘパリンは、例えば、約23/5000未満の電荷対質量比率をもつ中和されたダルテパリン、または約25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつ中和されたレビパリンでありうる。もう一つの態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来であり、ヘパリンが約30.4/6610未満である電荷対質量比率をもつように、パルナパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、ヘパリンは、例えば、約28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつ中和されたチンザパリンでありうる。
【0114】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0115】
一つの態様において、LMWHの治療的有効量は、約2 mg/kg、3 mg/kg、5 mg/kg、10 mg/kg、20 mg/kg、30 mg/kg、40 mg/kg、50 mg/kg、60 mg/kg、70 mg/kg、80 mg/kg、90 mg/kg、100 mg/kgである。
【0116】
もう一つの態様において、LMWHは、約1〜5時間、2〜4時間の期間にわたって、約0.2 IU/ml、0.25 IU/ml、0.3 IU/ml、0.35 IU/ml、0.4 IU/mlまたはそれ以上の胃腸管における吸収率をもつ。
【0117】
好ましい態様において、LMWHの少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %またはそれ以上は、腸管粘膜へ送達される。もう一つの態様において、LMWHは、送達後2、3、4、5、6、7時間以内にLWMHのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で腸管粘膜へ送達される。さらにもう一つの態様において、LMWHの少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %、40 %またはそれ以上は、送達後約1〜10、2〜7、3〜5時間以内に血液において検出可能である。好ましい態様において、LMWHの生物学的利用率は、少なくとも約15 %、20 %、25 %、30 %、35 %、40 %、50 %またはそれ以上である。
【0118】
一つの態様において、ヘパリンは固体の形をとっている。他の態様において、ヘパリンは水性の形状である。
【0119】
ヘパリンはまた、組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む組成物、に含まれうる。薬学的組成物は、活性薬剤、例えばヘパリンとは別個の活性薬剤(例えば、ヘパリンは担体である)、送達促進剤などをさらに含みうる。
【0120】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0121】
もう一つの局面において、本発明は、治療的用量のM405を対象へ送達しうる有効量でM405を含む組成物を対象へ経口投与し、それによりM405を対象へ送達することを含む、対象へM405を送達するための方法を特徴とする。
【0122】
一つの態様において、M405の治療的有効量は、約1 mg/kg、2 mg/kg、3 mg/kg、5 mg/kg、10 mg/kg、20 mg/kg、30 mg/kg、40 mg/kg、50 mg/kg、60 mg/kg、70 mg/kg、80 mg/kg、90 mg/kg、100 mg/kgである。
【0123】
もう一つの態様において、M405は、約1〜5時間、2〜4時間の期間にわたって、約0.2 IU/ml、0.25 IU/ml、0.3 IU/ml、0.35 IU/ml、0.4 IU/mlまたはそれ以上の胃腸管における吸収率をもつ。
【0124】
好ましい態様において、M405の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、30 %、40 %またはそれ以上は、腸管粘膜へ送達される。もう一つの態様において、M405は、送達後1、2、3、4、5、6、7時間以内にM405のピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で腸管粘膜へ送達される。さらにもう一つの態様において、M405の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %またはそれ以上は、送達後約1〜10、2〜7、3〜5時間以内に血液において検出可能である。好ましい態様において、M405の生物学的利用率は、少なくとも約5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %、35 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %またはそれ以上である。
【0125】
一つの態様において、M405は固体の形をとっている。他の態様において、M405は水性の形状である。
【0126】
M405はまた、組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む組成物、に含まれうる。薬学的組成物は、活性薬剤、例えばヘパリンとは別個の活性薬剤(例えば、ヘパリンは担体である)、送達促進剤などをさらに含みうる。
【0127】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0128】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0129】
もう一つの局面において、本発明は、治療的用量のM108を対象へ送達しうる有効量でM108を含む組成物を対象へ経口投与し、それによりM108を対象へ送達することを含む、対象へM108を送達するための方法を特徴とする。
【0130】
一つの態様において、M108の治療的有効量は、約1 mg/kg、2 mg/kg、3 mg/kg、5 mg/kg、10 mg/kg、20 mg/kg、30 mg/kg、40 mg/kg、50 mg/kg、60 mg/kg、70 mg/kg、80 mg/kg、90 mg/kg、100 mg/kgである。
【0131】
もう一つの態様において、M108は、約1〜5時間、2〜4時間の期間にわたって、約0.2 IU/ml、0.25 IU/ml、0.3 IU/ml、0.35 IU/ml、0.4 IU/mlまたはそれ以上の胃腸管における吸収率をもつ。
【0132】
好ましい態様において、M108の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、30 %、40 %またはそれ以上は、腸管粘膜へ送達される。もう一つの態様において、M108は、送達後2、3、4、5、6、7時間以内にM108のピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で腸管粘膜へ送達される。さらにもう一つの態様において、M108の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %、40 %またはそれ以上は、送達後約1〜10、2〜7、3〜5時間以内に血液において検出可能である。好ましい態様において、M108の生物学的利用率は、少なくとも約5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %、35 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %またはそれ以上である。
【0133】
一つの態様において、M108は固体の形をとっている。他の態様において、M108は水性の形状である。
【0134】
M108はまた、組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む組成物、に含まれうる。薬学的組成物は、活性薬剤、例えばヘパリンとは別個の活性薬剤(例えば、ヘパリンは担体である)、送達促進剤などをさらに含みうる。
【0135】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0136】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0137】
さらにもう一つの局面において、本発明は、対象へのヘパリン、例えばLMWH、の肺の送達のための方法を特徴とする。方法は、治療的有効量のヘパリン、例えばLMWH、を対象の肺組織へ投与し、それにより、対象へヘパリンを送達することを含み、ヘパリン、例えばLMWHは、ヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ。
【0138】
好ましい態様において、ヘパリンはLMWHである。そのようなLMWHの例は、本明細書に記載されているLMWH、例えば、電荷中和されたおよび/または質量減少したエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、ならびにパルナパリン、加えて、M312、M118、M405、M108、M115およびM411を含む。
【0139】
好ましい態様において、LMWHは、エノキサパリンの正味電荷より少ない正味電荷をもち、例えば、LMWHの正味電荷は、エノキサパリンの正味電荷より少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %、100 %少ない。例えば、エノキサパリンの正味電荷は、約19.32である。このように、一つの態様において、LMWHは、約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。もう一つの態様において、LMWHは、ナドロパリン由来のLMWHであり、LMWHの正味電荷は、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの態様において、LMWHは、ダルテパリン由来であり、LMWHの正味電荷は、約22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの態様において、LMWHは、レビパリン由来のLMWHであり、LMWHの正味電荷は、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。もう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンの正味電荷は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。さらにもう一つの好ましい態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来のヘパリンであり、ヘパリンは、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満の正味電荷をもつ。
【0140】
他の態様において、ヘパリンはさらに、ヘパリンについての参照質量より少ない質量をもつ。例えば、ヘパリンはLMWHであり、LMWHは、エノキサパリンの質量より少ない質量をもつ。好ましくは、LMWHの質量は、エノキサパリンの質量より、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、500、1000、1500、2000、2500 Da少ない。他の好ましい態様において、LMWHの質量は、約4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3200、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700 Daまたはそれ未満である。
【0141】
一つの態様において、ヘパリンはエノキサパリン由来のヘパリンであり、エノキサパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700 Daまたはそれ未満であるように減少する。もう一つの態様において、ヘパリンは、ナドロパリン由来であり、ナドロパリンの質量は、ヘパリンの質量が約5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。他の態様において、ヘパリンは、ダルテパリン由来であり、ダルテパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、レビパリン由来であり、レビパリンの質量は、ヘパリンの質量が約4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。もう一つの態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来であり、パルナパリンの質量は、ヘパリンの質量が約6500、6400、6300、6200、6100、6000、5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。さらにもう一つの態様において、ヘパリンは、チンザパリン由来であり、チンザパリンの質量は、ヘパリンの質量が約6000、5900、5800、5700、5500、5200、5000、4700、4500、4400、4300、4200、4100、4000、3900、3800、3700、3600、3500、3400、3300、3100、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000 Daまたはそれ未満であるように減少する。
【0142】
一つの態様において、ヘパリンはエノキサパリン由来であり、ヘパリンが約19.32/4200未満である電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンは中和され、質量は減少する。もう一つの態様において、ヘパリンはナドロパリン由来であり、ヘパリンが約27.6/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、ヘパリンは、例えば、約23/5000未満の電荷対質量比率をもつ中和されたダルテパリン、または約25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつ中和されたレビパリンでありうる。もう一つの態様において、ヘパリンは、パルナパリン由来であり、ヘパリンが約30.4/6610未満である電荷対質量比率をもつように、パルナパリンは中和され、質量は減少する。さらに他の態様において、ヘパリンは、例えば、約28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつ中和されたチンザパリンでありうる。
【0143】
一つの態様において、LMWHの治療的有効量は、約1 mg/kg、2 mg/kg、3 mg/kg、5 mg/kg、10 mg/kg、20 mg/kg、30 mg/kg、40 mg/kg、50 mg/kg、60 mg/kg、70 mg/kg、80 mg/kg、90 mg/kg、100 mg/kgである。
【0144】
もう一つの態様において、LMWHは、約10分〜5時間、30分〜3時間、1時間〜2時間の期間にわたって、約0.2 IU/ml、0.25 IU/ml、0.3 IU/ml、0.35 IU/ml、0.4 IU/mlまたはそれ以上の肺組織における吸収率をもつ。もう一つの態様において、LMWHの少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %またはそれ以上は、肺組織、例えば、上部および/または下部気道(例えば、深肺)、へ送達される。さらに他の態様において、LMWHは、送達後10分〜3時間、30分〜2時間以内にLWMHのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で肺組織へ送達される。もう一つの態様において、LMWHの少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %またはそれ以上は、送達後約5分〜5時間、10分〜4時間、30分〜2時間以内に血液において検出可能である。
【0145】
一つの態様において、LMWHは、固体、例えば乾燥粒子、の形をとっている。LMWHが乾燥粒子の形をとっている場合、粒子は、1〜500ミクロン(およびそれらの間の整数)の平均幾何学的直径をもちうる。もう一つの態様において、LMWHは水性の形状である。
【0146】
LMWHはまた、組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む組成物、に含まれうる。薬学的組成物は、活性薬剤、例えばLMWHとは別個の活性薬剤(例えば、LMWHは担体である)、送達促進剤などをさらに含みうる。
【0147】
好ましい態様において、組成物は、1.3、1.2、1.1または1未満(およびそれらの間の整数)の多分散性をもつ。
【0148】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0149】
さらにもう一つの局面において、本発明は、HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類、例えばアリクストラ、の対象の肺系への送達のための方法を特徴とする。方法は、対象においてあらかじめ選択された効果、例えば、抗Xaおよび/または抗IIa活性、を与えるために対象の肺組織へ治療的有効量のHLGAGを投与することを含む。好ましい態様において、方法は、用量が、あらかじめ選択された効果、例えば、抗Xaおよび/もしくは抗IIa活性、を与えるのに有効であるHLGAGの皮下または静脈内用量より少なくとも2倍、好ましくは3倍、4倍または5倍である、肺系へHLGAGの用量を投与することを含む。
【0150】
一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、の治療的有効単位用量は、約0.05 mg/kg、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kg、3 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、の治療的有効単位用量は、約3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、16 mg、48 mg、80 mg、120 mgまたはそれらの間の用量である。好ましい態様において、合成HLGAGは、アリクストラである。他の態様において、合成HLGAGは、1つまたは複数の、図9に提供されている化合物およびそれらの誘導体である。一つの態様において、合成HLGAGは、1つまたは複数の、図9に提供されている化合物およびそれらの誘導体であり、治療的有効量は、約0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kg、3 mg/kgまたはそれらの間の用量である。
【0151】
もう一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、の治療的有効単位用量は、送達後約5分〜約5時間、10分〜約3時間、30分〜約2時間以内に、HLGAG、例えば合成HLGAG、のピーク血漿濃度を生じるのに有効な量である。
【0152】
一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAGは固体、例えば乾燥粒子、の形をとっている。他の態様において、HLGAG、例えば合成HLGAGは、液体の形をとっている。
【0153】
一つの態様において、HLGAGはアリクストラであり、治療的有効単位用量は、約0.01 mg/kg、0.03 mg/kg、0.05 mg/kg、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、0.6 mg/kg、0.7 mg/kg、0.8 mg/kg、0.9 mg/kg、1 mg/kg、1.5 mg/kgまたはそれらの間の用量である。もう一つの態様において、アリクストラの治療的有効単位用量は、約8 mg、16 mg、48 mg、80 mg、120 mgまたはそれらの間の用量である。
【0154】
もう一つの態様において、HLGAGはアリクストラであり、治療的有効単位用量は、送達後約5分〜約5時間、10分〜約3時間、30分〜約2時間以内に、アリクストラのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量である。
【0155】
一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類は、約10分〜5時間、30分〜3時間、1時間〜2時間の期間にわたって、約0.2 IU/ml、0.25 IU/ml、0.3 IU/ml、0.35 IU/ml、0.4 IU/ml、0.5 IU/ml、0.7 IU/ml、0.9 IU/ml、1 IU/ml、1.5 IU/ml、2 IU/mlまたはそれ以上の肺組織における吸収率をもつ。もう一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %またはそれ以上は、肺組織、例えば、上部および/または下部気道(例えば、深肺)、へ送達される。さらに他の態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類は、送達後5分〜5時間、10分〜3時間、30分〜2時間以内にHLGAGのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で肺組織へ送達される。もう一つの態様において、HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、30 %またはそれ以上は、送達後約5分〜5時間、10分〜4時間、30分〜2時間以内に血液において検出可能である。
【0156】
一つの態様において、HLGAGは固体、例えば乾燥粒子、の形をとっている。もう一つの態様において、HLGAGは、液体の形をとっている。
【0157】
HLGAG、例えば合成HLGAG、例えば合成五糖類はまた、組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む組成物、に含まれうる。薬学的組成物は、活性薬剤、例えばHLGAGとは別個の活性薬剤、例えば送達促進剤(例えば、界面活性剤)などをさらに含みうる。
【0158】
もう一つの態様において、対象は、血栓症、循環器病、血管状態または心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患またはアトピー性疾患のような炎症性疾患;肥満症または脂肪過多症、アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、または肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹っているまたはリスクを負っている、対象は、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けているまたは受けた。
【0159】
さらにもう一つの局面において、本発明は、治療効果、例えば、抗Xaおよび/または抗IIa活性、を与えるためのHLGAGの送達のための方法を特徴とし、方法は、肺系へHLGAGの用量を投与することを含む。
【0160】
本発明の1つまたは複数の態様の詳細は、添付の図面および下の説明に示されている。本発明の他の特徴、対象および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から、明らかであるものと思われる。
【0161】
発明の詳細な説明
ヘパリンおよび低分子量ヘパリン(LMWH)のような多糖類が治療的有効レベルにおいて非侵襲性送達を受け入れられることが、発見された。さらに、多糖類の化学的特性を同定することにより、非侵襲性のインビボの送達のための向上した製剤が作製されうることが、見出された。
【0162】
本明細書に記載される方法は、過去において、たとえあったとしても限られた成功であった投与経路により高レベルの生物学的利用率をもつ多糖類組成物を作製するために用いられうる。実施例に示されるように、向上した経口および肺の送達側面をもつHLGAGが作製された。
【0163】
本明細書に用いられる場合の「多糖類」は、お互いに連結された単糖類から構成される重合体である。多くの多糖類において、多糖類の基本的構成単位は、実際には、繰り返しまたは非繰り返しでありうる二糖類単位である。このように、多糖類に関して用いられる場合の単位は、多糖類の基本的構成単位を指し、単量体の構成単位(単糖)または二量体の構成単位(二糖)を含みうる。多糖類は、限定されるものではないが、ヘパリン様グリコサミノグリカン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびその誘導体または類似体、キチン誘導体およびそれらの類似体、例えば6-0-硫酸カルボキシメチルキチン、フェリナスリンテウス(phellinus linteus)から単離された免疫原性多糖類、PI-88(酵母ピチアホルスティー(pichia holstii)の発酵により産生された高分子量コアから精製されているホスホマンナンの硫酸化由来の高度に硫酸化されたオリゴ糖の混合物)およびそれの誘導体および類似体、ワクチン用多糖類抗原、ならびにカルシウムスピルラン(spirulan)(Ca-SP、藍藻類、スピルリナプラテンシス(spirulina platensis)から単離されている)およびその誘導体および類似体を含む。
【0164】
多糖類の1つの好ましい型は、HLGAGである。このように、いくつかの態様において、送達されることになっている活性薬剤は、ヘパリン様グリコサミノグリカン(HLGAG)のような多糖類である。本明細書に教示される方法は、時々、HLGAGに関連して記載されるが、本明細書に教示される性質は、他の多糖類へ拡大されうり、特許請求の範囲が別なふうに明記しない限り、特許請求の範囲は、任意の多糖類、および選択的に、診断、予防または治療の利用をもつ多糖類を含む。本明細書に用いられる場合、用語「HLGAG」および「グリコサミノグリカン」は、ヘパリン様構造および性質をもつ分子のファミリーを指すために交換可能に用いられる。これらの分子は、限定されるものではないが、低分子量ヘパリン(LMWH)、ヘパリン、生物工学的に調製されたヘパリン、化学修飾されたヘパリン、五糖類(例えば、アリクストラ)および図9に描かれた構造のような合成ヘパリン、ヘパリン模倣体ならびにヘパラン硫酸を含む。用語「生物工学的ヘパリン」は、化学修飾されている、およびRaziら、Bioche. J. 1995年7月15日、309(Pt 2):465-472に記載されている、多糖類の天然源から調製されるヘパリンを含む。化学修飾されたヘパリンは、Yatesら、Carbohydrate Res(1996)11月20日、294:15-27に記載され、当業者に知られている。合成ヘパリンは、当業者によく知られており、Petitou, Mら、Bioorg Med Chem Lett(1999)4月19日、9(8):1161-1166およびVlodavskyら、Int. J. Cancer、1999、83:424-431に記載されている。合成ヘパリンの例は、フォンダパリヌックス(fondaparinux)である。フォンダパリヌックス(アリクストラ)は、AT-III結合部位に対応する5単位合成グリコサミノグリカンである。ヘパラン硫酸は、ヘパリンと類似しているが、より多くのN-アセチル基ならびにより少ないN-硫酸基およびO-硫酸基をもつ、二糖繰り返し単位を含むグリコサミノグリカンを指す。ヘパリン模倣体は、ヘパリンの少なくとも1つの生物活性(すなわち、抗凝血、癌抑制、肺疾患の治療など)をもつ単糖(例えば、スクラルファート)、オリゴ糖、または多糖類である。好ましくは、これらの分子は高度に硫酸化されている。ヘパリン模倣体は、天然に存在する、合成であるまたは化学修飾されている場合がある。(Barchi, J.J.、Curr. Pharm. Des.、2000年3月、6(4):485-501)。用語「HLGAG」はまた、上記のHLGAG分子の機能的変異体を含む。これらの機能的変異体は、類似した構造をもつが、分子がそれの生物活性の大部分を保持するまたは増加した生物活性をもつことを可能にする構造へのわずかな改変を含む。
【0165】
本明細書に用いられる場合の「LMWH」は、8000 Da未満の分子量をもつLMWH調製物のオリゴ糖鎖の約少なくとも60 %をもつ、8000 Da未満の平均分子量をもつ硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の調製物を指す。いくつかのLMWH調製物は、商業的に入手可能であるが、LMWHはまた、例えば、HLGAG分解酵素を用いて、ヘパリンから調製されうる。HLGAG分解酵素は、限定されるものではないが、ヘパリナーゼ-I、ヘパリナーゼ-II、ヘパリナーゼ-III、ヘパリナーゼ-IV、ヘパラナーゼ、D-グルクロニダーゼおよびL-イズロニダーゼを含む。フラボバクテリウムヘパリナム(Flavobacterium heparinum)由来の3つのヘパリナーゼは、LMWH(5,000〜8,000 Da)および超低分子量ヘパリン(〜3,000 Da)の作製のために用いられた酵素的道具である。商業的に入手可能なLMWHは、限定されるものではないが、エノキサパリン(商標名Lovenox;Aventis Pharmaceuticals)、ダルテパリン(Fragmin、Pharmacia and Upjohn)、セルトパリン(Sandobarin、Novartis)、アルデパリン(Normiflo、Wyeth Lederle)、ナドロパリン(Fraxiparine、Sanofi-Winthrop)、パルナパリン(Fluxum、Wassermann)、レビパリン(Clivain、Knoll AG)、およびチンザパリン(Innohep、Leo Laboratories、Logiparin、Novo Nordisk)を含む。LMWHのいくつかの好ましい型は、エノキサパリン(Lovenox)およびダルテパリン(Fragmin)である。本明細書に用いられる場合の用語「アリクストラ」は、メチルO-2-デオキシ-6-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-2-デオキシ-3,6-ジ-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-2-O-スルホ-α-L-イドピラヌロノシル-(1→4)-2-デオキシ-6-O-スルホ-2-(スルホアミン)-α-D-グルコピラノシド、十ナトリウム塩およびその誘導体の合成五糖類を含む組成物を指す。本明細書に用いられる場合の「合成ヘパリン」または「合成HLGAG」は、合成された化合物であり、ヘパリンの断片化により引き出されていないHLGAGを指す。合成ヘパリンの例は、図9に提供されている。合成ヘパリンを調製する方法は、例えば、Petitouら、(1999)Nature 398:417に提供されており、その内容は参照として本明細書に組み入れられている。合成ヘパリンという用語はまた、図9に提供されるヘパリンの誘導体を含む。
【0166】
多くの現在入手可能なヘパリンのような多糖類は、異なる分子量の範囲をもつ多数の鎖を含む多分散の混合物である。用語「多分散の」または「多分散性」は、組成物の重量平均分子量(Mw)割る数平均分子量(Mn)を指す。数平均分子量(Mn)は、以下の方程式から計算される:Mn = Σci/(Σci/mi)。変数のciは、スライスiにおけるポリマーの濃度であり、Miはスライスiにおけるポリマーの分子量である。加法は、多くのスライスのデータを含むクロマトグラフィーのピークを採用されている。スライスのデータは、クロマトグラフィーのピーク対時間のプロット上に垂直線として描かれうる。それゆえに、溶出ピークは、多くのスライスへ分割されうる。数平均分子量は、各スライスのデータにおける分子量および濃度に従属した計算である。重量平均分子量(Mw)は、以下の方程式から計算される:Mw = Σ(ci/mi)/Σci。重量平均分子量計算は、すべてのスライスの濃度および分子量の加法に従属した平均である。多分散性を測定するための方法が知られているため、未分画ヘパリンおよび様々なLMWHの多分散性は知られている。例として、未分画ヘパリンの調製物は、約1.5〜2.0の多分散性をもつ。エノキサパリン、ダルテパリンおよびレビパリンのような多くの商業的に入手可能なLMWHはまた、存在する幅広い分子量の鎖を有するLMWH鎖の多分散の混合物として利用可能である。例えば、エノキサパリンは、4,200ダルトンの平均分子量をもつ。しかしながら、エノキサパリンの調製物は、調製物の20 %未満または同等が2000ダルトン未満の分子量をもち、調製物の68 %より多いまたは同等が2000ダルトンと8000ダルトンの間の分子量をもち、調製物の18 %未満または同等が8000ダルトンより大きい分子量をもつ、分子量分布をもつ。同様の分子量分布は、他の商業的に入手可能なLMWHについて存在しており、例えば、ダルテパリン、約5000ダルトンの平均分子量をもち、以下の分子量分布をもつ:調製物の約3〜15 %は3000ダルトン未満の分子量をもち、調製物の約65〜78 %は3000ダルトンと8000ダルトンの間の分子量をもち、調製物の約14〜26 %は8000ダルトンより大きい分子量をもつ、およびレビパリン、約5500ダルトン〜7500ダルトンの平均分子量をもち、以下の分子量分布をもつ:調製物の約<10 %は2000ダルトン未満の分子量をもち、調製物の約60〜72 %は2000ダルトンと8000ダルトンの間の分子量をもち、調製物の約22〜36 %は8000ダルトンより大きい分子量をもつ。高レベルの多分散性は、そのような多糖類の薬物動力学を複雑にさせる。このように、より低い多分散性をもつ組成物は、その組成物が結果として、より一貫した治療効果をもつより一貫した最終製品を生じるため、治療にとって望ましい。
【0167】
従って、一つの局面において、本発明は、参照値、例えば、未分画ヘパリンまたはエノキサパリンのようなLMWHについての参照値、より小さい多分散性をもつインビボの送達のための多糖類組成物を含む。好ましくは、多糖類組成物の多分散性は、参照値の1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4または0.3未満である。例えば、LMWH組成物の多分散性は、好ましくは、エノキサパリンについての参照多分散性値(すなわち、1.35)より少なくとも0.01、0.1、0.2、0.3(およびそれらの間の整数)低い。他の局面において、最終多糖類組成物の多分散性は、出発材料より低い。例えば、消化された、例えば、酵素的にまたは化学的に消化された、ヘパリンの多分散性は、好ましくは、それが引き出された未分画ヘパリンより低い、例えば、多分散性は、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9(およびそれらの間の整数)である、または未分画ヘパリンについての参照多分散性値(すなわち、1.5〜2.0)より低い。本明細書に示されるように、多糖類組成物、例えば、ヘパリンまたはLMWH組成物、におけるより低い多分散性は、非侵襲性経路のよる多糖類の送達を促進することができる。このように、向上した送達側面、例えば、非侵襲性送達側面、は低多分散性をもつ多糖類組成物を供給することにより得られうる。
【0168】
多糖類の正味電荷および/または質量を中和する方法
例えば、本明細書に記載される、経皮的、肺および粘膜の送達について、向上した送達側面は、多糖類を、例えば、それの化学特性に基づいて、中和することによりおよび/または多糖類の質量を減少させることにより、起こさせうる。多糖類の化学的特性を用いて、電荷は中和されうる、および/または多糖類の質量は減少されうる。
【0169】
本明細書に用いられる場合の「中和された製剤」とは、正味の負もしくは正電荷が少なくとも10 %、低下しているまたはマスクされている製剤である。他の態様において、中和された製剤は、正味の負または正電荷が、少なくとも20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %もしくは100 %またはそれらの間の任意の整数、低下している製剤である。「完全に中性の」製剤とは、ゼロの正味の負および正電荷があるものである。
【0170】
特定のHLGAG組成物に加えて、経皮的、肺および粘膜の経路のような非侵襲性経路による活性薬剤の送達を促進するために、多糖類の特定の化学的特性が同定かつ操作されうることが、発見された。多糖類の化学的特性は、診断的もしくは治療的多糖類の送達または担体多糖類と付随した活性薬剤(例えば、治療的ポリペプチド)の送達を促進するために、様々な技術により変化されうる。多糖類の化学的特性を測定するために方法体系が開発された。本明細書に用いられる場合、化学的特性とは、例えば、多糖類の単糖および二糖構成単位の同定ならびに数に関する情報、総合的な電荷(「正味電荷」とも呼ばれる)、電荷密度、分子の大きさ、電荷対質量比ならびにイズロン酸および/またはグルクロン酸含有量の存在、加えて、単糖および二糖構成単位間の関係、ならびにこれらの構成単位に関連した活性部位に関する情報を指す。本明細書に記載されているように、向上した、例えば、経皮的、肺および/または粘膜の、送達性質をもつ多糖類を製剤化するために特定の化学的特性を用いることが可能である。化学的特性は、以下から選択された1つまたは複数の一次出力を測定することにより提供されうる:1つもしくは複数の構成している糖もしくは二糖の存在または量;1つもしくは複数のブロック成分の存在または量、ブロック成分は、1より多い糖または多糖類から構成されるものである;1つもしくは複数の糖-類似物の存在または量、糖-類似物は、検出性を高めるために修飾された糖である;三次元構造の指標もしくは三次元構造に関連したパラメーター、例えば活性、の存在または量、例えば、多糖類を架橋すること、例えば、一列の配列において隣接していない特定の糖の架橋、により生じる構造の存在または量;1つもしくは複数の改変された糖の存在または量、改変された糖は、調製物を作製するために用いられる出発材料に存在しているが、調製物の生成において変化しているものである、例えば、切断により改変された糖。化学的特性はまた、二次出力を測定することにより提供されうり、以下の1つまたは複数を含む:全電荷;電荷の密度。
【0171】
本明細書に用いられる場合、「1」または「ピーク1」はΔU2SHNS,6Sを指す;「2」または「ピーク2」はΔU2SHNSを指す;「3」または「ピーク3」はΔUHNS,6Sを指す;「4」または「ピーク4」はΔU2SHNAc,6Sを指す;「5」または「ピーク5」はΔUHNSを指す;「6」または「ピーク6」はΔU2SHNAcを指す;「7」または「ピーク7」はΔUHNAc,6Sを指す;「8」または「ピーク8」はΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S;ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S;ΔUHNAc,6SGHNS,3S;またはΔUHNS,6SGHNS,3Sを集合的に指す。名称「ΔU」は、不飽和ウロン酸(ヘパリナーゼのリアーゼ作用の結果として4-5位に導入された二重結合をもつイズロン酸(I)またはグルクロン酸(G))を指す。二重結合の導入により、立体異性体IとUの間の区別がなくなり、よって、表記法ΔU:Δは二重結合を表す、Uは、それらがIまたはUのいずれか由来でありうることを表す。このように、本明細書に用いられる場合、「ΔU」は、ΔU2SHNS,6SがI2SHNS,6SおよびG2SHNS,6Sの両方を含む;ΔU2SHNSがI2SHNSおよびG2SHNSの両方を含む、などのように、IおよびGの両方を表す。
【0172】
多糖類の化学的性質または特性を同定すること、および向上したインビボの送達のための多糖類を作製するためにこの情報を用いることの工程は、本明細書では、多糖類の化学的製剤の工程と呼ばれる。化学的製剤は、送達のための適切なバランスに達するために化学的実体を用いる組成物の調製を含む。化学的製剤は、多糖類を構造的に特徴付けるまたはシーケンシングする技術を用い、その後、製剤化、例えば、構造に基づいて電荷を効果的にマスクして、達成される。これは、粒子のあらゆる物理的記載である、粒子の大きさ、タップ密度などのような粒子の物理的特性に基づく当技術分野において公知の方法による粒子の加工を指す、多糖類の物理的製剤とは異なる。本発明の組成物および方法は、効果的な経皮的、肺および粘膜の送達のための多糖類の化学的製剤を最低限、含む。化学的製剤に加えて、多糖類は、例えば、特定の粒子の大きさ、タップ密度などを達成するために物理的に製剤されうる。そのような化学的製剤が、物理的に製剤化されることなく、非侵襲性送達を向上させることができることが見出された。分析されうる一つの特定の化学的性質は、電荷である。多糖類の電荷の中和は、脂質膜、例えば、腸および肺胞の膜、を透過する多糖類の能力を向上させる。本明細書に用いられる場合、用語「中和」、「中和する」および「中和すること」とは、材料の正味の負または正電荷が少なくとも10 %、およびいくつかの態様において、少なくとも20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %もしくは100 %または中間的な任意の整数、低下しているまたはマスクされている多糖類を作製するための工程を指す。ヘパリンのような多糖類の正味または総合的な電荷は、ヘパリンの質量を二糖の平均分子量(500)で割り、その数に二糖あたりの平均電荷(例えば、2.3)をかけることにより計算されうる。二糖あたりの平均電荷は、多糖類によって異なりうる。平均電荷は、多分散性組成物に存在する多糖類についての平均電荷である。組成物における各多糖類の正味電荷は異なりうる。二糖あたりの電荷を含む多糖類の電荷を測定するための方法は、例えば、Venkataraman, G.ら、Science、286、537-542 (1999)に記載されている。電荷中和は、様々な方法で達成されうる。好ましくは、多糖類の電荷が測定される。その測定に基づいて、電荷中和のための適切なストラテジーが選択されうり、例えば、多糖類の1つまたは複数の活性を維持するストラテジーである。一般的に、より高度に荷電した多糖類は、電荷をマスクするために、より高濃度の中和剤の使用で、より効果的に中和されるものである。例えば、ヘパリンオリゴ糖の化学的分析により、分子は総計で17負電荷、主としてO-硫酸塩、を含むことが明らかにされた。ヘパリン分子の電荷中和および粉末形成は、200 mM 塩化ナトリウム、pH 4.5溶液を用いて多糖類を沈殿させることにより達成された。同様に、低分子量ヘパリンのようなヘパリンの異成分からなる集団は、化学的に分析され、24〜32負電荷の平均電荷分布をもつことが見出された。この材料の電荷中和および最適の粉末形成は、効果的に電荷をマスクするために、より高濃度の塩、対イオン、および/または異なるpHを用いることにより達成された。
【0173】
中和は、電荷中和剤を用いて達成されうる。本明細書に用いられる場合の「電荷中和剤」とは、反対に荷電した分子と相互作用し、それにより電荷を中和することができる正にまたは負に荷電した化合物である。電荷中和剤は、限定されるものではないが、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウムおよび亜鉛(に限定されるものではないが)を含む一価および二価イオンのような対イオン、加えて、鉄、ニッケルおよび銅のような遷移金属;ならびに低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミンまたは塩基性ペプチドのような他の中和化合物を含む。
【0174】
多糖類が負に荷電している場合には、多糖類を中和するために正に荷電した化合物が用いられうる。同様に、多糖類が正に荷電している場合には、負に荷電した化合物が用いられうる。いったん、多糖類における電荷の型および量が化学的分析により測定されたならば、中和化合物の適切な量が選択されうる。正確な量の中和化合物は、電荷の型および量が試料によって異なりうるため、特定の試料に依存するものである。一般的に、低濃度の中和剤は、ほんの少数だけ荷電した部分を有する多糖類の電荷を低下させるために十分なものであり、より高度に荷電した分子については中和剤の濃度を増加させることが望ましい。
【0175】
考慮されうる多糖類のもう一つの化学的性質は、多糖類に存在する2-O硫酸化イズロン酸部分の量である。2-O硫酸化イズロン酸部分は、多糖類の他の成分とは明瞭に異なる事情で金属をキレート化する。それとして、中和に有用な対イオンの性質および量は、多糖類における2-O硫酸化イズロン酸の数および位置により多少、決定される。例えば、2-O硫酸化イズロン酸を高い割合(〜80 %)でもつヘパリンは、ナトリウム塩の代わりにカルシウムまたはバリウム塩を用いて効率的に沈殿したが、2-O硫酸化イズロン酸を低い割合でもつヘパラン硫酸は、これらの同じ条件を用いる適切な方法では沈殿しなかった。一般的に、多糖類における高い割合の2-O硫酸化イズロン酸は、より高濃度の中和剤でより効果的に製剤化される。
【0176】
さらに、多糖類の長さは、それの製剤に影響力をもっている。多糖類の長さに基づいて、有機溶媒のような有機調節剤の異なる型および濃度は、多糖類の製剤性質に異なる影響を及ぼすものである。例えば、異なる大きさのヘパリンオリゴ糖が、有機溶媒の様々な濃度において最適な粉末を形成することが実証された。一般的に、オリゴ糖鎖が長ければ長いほど、かつそれの電荷の数が高ければ高いほど、多糖類が非水溶液に溶けにくくなる。それとして、化学的特性としての大きさおよび電荷に基づいて、粉末は、様々な容積当量の有機調節剤の添加により形成されうる。一般的に、多糖類の特定クラス(すなわち、HLGAG)内のオリゴヌクレオチドが長ければ長いほど、より低い濃度の有機調節剤が向上した結果を生じるものである。
【0177】
本明細書に用いられる場合の有機調節剤とは、例えば、アルコール、およびアセトニトリル、アセトンまたはジメチルスルホキシドのような極性有機溶媒、ならびにそれらの水性混合物のような有機溶液である。
【0178】
多糖類の質量および/または電荷は、少なくとも1つの試薬で多糖類を消化することにより低下させられうる。試薬は、例えば、多糖類の化学的特性に関して得られた情報に基づいて、選択されうる。例えば、多糖類を選択的に切断する酵素および/または化学物質が、用いられうる。このように、多糖類は、例えば、望ましい生物活性に関与しないおよび/または影響を及ぼさない多糖類の領域が切断されうる、ならびに生物活性に関与するおよび/または影響を及ぼす多糖類の領域が無傷のままであるように、作製されうる。本明細書に用いられる場合、用語「無傷」とは、切断されておらず、完全であることを意味する。
【0179】
例えば、ヘパリンの少なくとも1つの活性、例えば、抗Xaおよび/または抗IIa活性、を維持するが、もう一つの活性、例えば、PF4結合、において低下がある、LMWHが作製されうる。本明細書に用いられる場合の用語「維持される」とは、たとえ、その活性を実行する能力が、電荷中和および/または質量減少の前の多糖類の活性と比較して、低下しているとしても、望ましい活性をまだ実行することができる多糖類の能力を指す。ヘパリンにより媒介される活性の例は以下のものを含む:抗Xa活性、抗IIa活性、PF4結合(またはHIT性向の他の測定)、FGF結合、プロタミン中和、抗凝血/抗血栓症、細胞増殖、例えば望まれない細胞増殖、例えば望まれない悪性または非悪性細胞増殖;血管形成;炎症性過程;細胞遊走;細胞活性化;細胞接着。そのような活性を測定する標準的な方法は知られている。例えば、抗Xa活性は、標準がLMWHについての第一国際標準である、Teienら、Thrombo. Res. 10:399-410(1977)により記載される色素生産性基質におけるアミド分解性方法により測定されうる。抗IIa活性を測定するための公知の方法は、例えば、標準がLMWHについての第一国際標準である、Andersonら、Thrombo. Res. 15:531-541 (1979)により記載されている。
【0180】
HLGAG断片は、例えば、ヘパリンリアーゼ酵素(ヘパリナーゼ)のような酵素または亜硝酸を用いて分解されうる。それらはまた、硫酸基を特定の位置へ転移するまたは硫酸基をそれらの位置から除去する異なる酵素を用いて修飾されうる。修飾酵素は、それらが非還元末端に一度作用するだけで、鎖の残りを連続して修飾することなくヘパリン鎖を手放すことを意味するエキソ分解かつ非前進的である。二糖単位における修飾可能位置のそれぞれに対して、修飾酵素が存在する。硫酸基を付加する酵素は、スルホトランスフェラーゼと呼ばれ、硫酸基を除去する酵素は、スルファターゼと呼ばれる。修飾酵素は、2-Oスルファターゼ/スルフォトランスフェラーゼ、3-Oスルファターゼ/スルフォトランスフェラーゼ、6-Oスルファターゼ/スルフォトランスフェラーゼおよびN-デアセチラーゼ-N-スルフォトランスフェラーゼを含む。これらの酵素の機能は、それらの名前から明らかであり、例えば、2-Oスルフォトランスフェラーゼは、硫酸基をイズロン酸の2-O位へ転移し(2-O硫酸化グルクロン酸はHLGAG鎖においてまれな存在である)、2-Oスルファターゼは、硫酸基をイズロン酸の2-O位から除去する。
【0181】
HLGAG分解酵素は、限定されるものではないが、ヘパリナーゼ-I、ヘパリナーゼ-II、ヘパリナーゼ-III、ヘパリナーゼ-IV、ヘパラナーゼ、D-グルクロニダーゼおよびL-イズロニダーゼ、ヘパリナーゼの改変バージョン、それらの変異体および機能的活性断片を含む。フラボバクテリウムヘパリナム(Flavobacterium heparinum)由来の3つのヘパリナーゼは、LMWH(5,000〜8,000 Da)および超低分子量ヘパリン(≦3,000 Da)の作製のために用いられた酵素的道具である。ヘパリナーゼIは、HLGAGの高度に硫酸化された領域を2-O硫酸化ウロン酸で切断するが、ヘパリナーゼIIは、より広い基質特異性をもち、2-O硫酸化ウロン酸および非硫酸化ウロン酸の両方を含むグリコシド結合を切断する(Ernst, S.、Langer, R.、Cooney, C.L. & Sasisekliaran, R.(1995) Cit Rev Biochem Mol Biol 30, 387-444)。ヘパリナーゼIとは対照的に、ヘパリナーゼIIIは、主として、HLGAGの低硫酸化領域、すなわち、非硫酸化ウロン酸を含むグリコシド結合を切断する(Ernst, S.、Langer, R.、Cooney, C.L. & Sasisekliaran, R.(1995) Cit Rev Biochem Mol Biol 30, 387-444)。米国特許第6,217,863号ならびに係属中の出願第09/384,959号および第09/802,285号を含む、いくつかの特許および特許出願は、ヘパリナーゼの有用な改変および変異体および断片を記載している。他の改変および変異体もまた有用である。
【0182】
グルクロニダーゼおよびイズロニダーゼは、それらの名前が示唆するように、それぞれ、グルクロン酸およびイズロン酸の後のグリコシド結合で切断する。亜硝酸は、N-硫酸化ヘキソサミンの後のグリコシド結合でランダムに切り取り、ヘキソサミン6員環を無水マンニトール5員環へ変換する。
【0183】
HLGAGのような多糖類を消化するために有用な化学物質は、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断からなる群より選択される化学物質を含む。
【0184】
多糖類の電荷をはじめとする性質を同定するための方法は、Venkataraman, G.ら、Science、286、537-542 (1999)、ならびに両方とも2000年4月24日に出願された、米国特許出願第09/557,997号および第09/558,137号に記載されており、それらは参照として本明細書により組み入れられている。
【0185】
製剤化多糖類組成物
本発明の多糖類組成物は、非製剤化または製剤化組成物でありうる。「非製剤化多糖類調製物」とは、その多糖類を含むが、送達を促進させるもしくは結果として徐放を生じるための担体または他の賦形剤を含まない組成物を指す。そのような担体または賦形剤を含む組成物は、「製剤化された」と呼ばれる。粘膜の膜へのおよび/または粘膜の膜を通っての送達を促進する賦形剤ならびに担体は、本明細書では、送達促進剤と呼ばれる。本発明の多糖類は、非製剤化組成物として送達されて、結果として、非侵襲性経路により送達されることになっている多糖類の治療的有効レベルをなお生じうることが見出された。
【0186】
多糖類はまた、固体または液体の形状であるように作製されうる。固体形状の例は、乾燥粒子、例えば、国際公開公報第02/32406号(その内容は、参照として本明細書に組み入れられている)に記載されているもののような肺の送達のための乾燥粒子、である。
【0187】
本発明の多糖類は、選択的に、薬学的に許容される担体中に製剤化されうる。そのような調製物は、日常的に、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、アジュバント、および選択的に他の治療的成分を含みうる。組成物は、さらに、特定の送達装置へ製剤化されうる。下に記載されているように、多糖類はまた、それらの意図される送達の経路に基づいて製剤化されうる。
【0188】
本発明の組成物は、それ自体で(ストレートで)、または薬学的に許容される塩の形をとって投与されうる。医薬に用いられる場合、塩は薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するために都合よく用いられうり、本発明の範囲から排除されない。そのような薬理学的かつ薬学的に許容される塩は、限定されるものではないが、以下の酸から調製されるものを含む:塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に許容される塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムもしくはカルシウム塩のような、アルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製されうる。
【0189】
適する緩衝剤は以下のものを含む:酢酸および塩(1〜2モル% W/V);クエン酸および塩(1〜3モル% W/V);ホウ酸および塩(0.5〜2.5モル% W/V);ならびにリン酸および塩(0.8〜2モル% W/V)。適する保存剤は以下のものを含む:塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03モル% W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9モル% W/V);パラベン(0.01〜0.25モル% W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9モル% W/V);パラベン(0.01〜0.25モル% W/V)およびチメロサール(0.004〜0.02モル% W/V)。
【0190】
本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および選択的に他の治療成分と共に硫酸化多糖類調製物を含む、医薬的使用のための薬学的組成物を提供する。本明細書に用いられる場合の用語「薬学的に許容される担体」とは、ヒトまたは他の動物への投与に適している、1つまたは複数の、適合性固体もしくは液体増量剤、希釈剤または封入物質を意味する。本発明において、用語「担体」とは、適用を促進させるために活性成分が組み合わされる、天然もしくは合成の、有機または無機成分を意味する。薬学的組成物の成分はまた、本発明の硫酸化多糖類と、お互いに、望ましい薬学的効率を実質的に損なう相互作用がないような様式において、混合されることができる。
【0191】
多糖類の徐放性はまた、生体適合性および生物分解性である適切な賦形剤材料で達成されうる。多糖類の徐放をもたらすこれらの重合体材料は、限定されるものではないが、非生物腐食性/非生物分解性および生物腐食性/生物分解性の重合体を含む、粒子を作製するための任意の適する重合体材料でありうる。そのような重合体は、先行技術に十分詳細に記載されている。それらは、限定されるものではないが、以下のものを含む:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらの共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリルエステルの重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、トリアセチルセルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルプリロリドン、ヒアルロン酸、ならびにコンドロイチン硫酸。
【0192】
好ましい非生物分解性重合体の例は、エチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、それらの共重合体および混合物を含む。
【0193】
好ましい生物分解性重合体の例は、乳酸およびグリコール酸の重合体、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)およびポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)のような合成重合体、ならびに、アルギナートとデキストランおよびセルロースを含む他の多糖類、コラーゲン、それらの化学的誘導体(置換、化学基、例えばアルキル、アルキレン、の付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者により日常的に行われる他の改変)、アルブミンと他の親水性タンパク質、および他のプロラミンと疎水性タンパク質のような天然の重合体、それらの共重合体および混合物を含む。一般的に、これらの材料は、インビボでの酵素的加水分解または浸水のいずれかにより、表面または本体腐食で分解する。前記の材料は、単独で、物理的混合物(ブレンド)として、または共重合体として、用いられうる。最も好ましい重合体は、ポリエステル、ポリ無水物、ポリスチレンおよびそれらのブレンドである。
【0194】
多糖類組成物は、単一の多糖類または複数の多糖類を含みうる。このように、組成物は、例えば、ただ1つの多糖類、1つより多い多糖類を含みうるが、ただ1つの多糖類が診断的もしくは治療的活性をもつ、または1つより多い多糖類が診断的もしくは治療的活性をもつ。他の局面において、多糖類は、活性薬剤、例えば、治療的ポリペプチド、のための担体として用いられうる。いくつかの状況において、本発明の多糖類は、送達される粒子の大きさにかかわらず、送達されうることが見出された。このように、粒子、例えば、多糖類担体および活性薬剤を含む粒子、は5、10、15、20、25、30ミクロンより大きく、それでも、特定の投与経路、例えば、肺の送達、により治療的有効量においてインビボで投与されうる。
【0195】
非侵襲性投与経路
本発明の多糖類は、インビボで様々な非侵襲性送達経路により送達されうる。非侵襲性送達とは、組織、例えば皮膚の層、を通しての多糖類の強制的挿入を必要としない送達経路を指す。本発明の多糖類について用いられうる非侵襲性送達方法の例は、肺(例えば、吸入または鼻腔内送達)、経皮的、および粘膜の送達(例えば、口、頬、舌下、直腸または膣の送達)を含む。組織を通して送達するために、例えば、強制的圧力または器具を必要とする侵襲性送達方法は、静脈内、筋肉内および皮下の送達を含む。
【0196】
非侵襲性送達経路は、対象者による自己投与の簡便さを含むいくつかの利点をもち、例えば、多糖類組成物は、用量単位型でありうる。本明細書に用いられる場合の用量単位型とは、治療される対象に対して単位の用量として適した物理的に別個の単位を指す;各単位は、望ましい治療効果を生じるために計算された活性化合物のあらかじめ決められた量を含む。自己投与に用いられうる組成物の例は以下のものを含む:肺の送達のための吸入器から投与される、計器で測定される量の組成物;経口投与のための指示された用量単位をもつ錠剤;皮膚を渡って用量単位を送達する経皮的パッチ;および直腸にまたは膣に望ましい用量単位を送達する坐剤。組成物は、投与についての使用説明書と共に、容器、パックまたはディスペンサーに含まれうる。これらの方法、および非侵襲性送達に用いられる他の方法はまた、本発明の多糖類を対象へ投与するヘルスケア専門家により用いられうる。
【0197】
特定の投与経路および用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性、および食事、投与の時間、所望の吸収率、生物学的利用率、排出率、任意の薬剤組み合わせ、ならびに所望の治療効果の部位、例えば局所的または全身的効果、を含む様々な因子に依存するものであることは理解されている。局所的治療効果とは、多糖類が送達される組織に生じる生物学的効果を指す。例えば、多糖類がヘパリンである場合、例えば呼吸器疾患の治療のために局所的効果を生じるために多糖類を肺へ送達することが望ましくありうる。局所的治療効果を送達するために用いられうる他の非侵襲性経路は、鼻腔内、頬、直腸および膣の送達を含む。全身的効果とは、組成物が送達される組織/器官の外側で生じる生物学的効果を指し、例えば、生物学的効果は血液中に生じる。
【0198】
肺送達
多糖類の、例えばそれらの化学的特性に基づく、化学的性質の同定は、肺の経路、例えば、口または鼻の通路を通しての吸入により、化合物を送達するための強化された製剤を作製するために用いられうることが見出された。例えば、HLGAGのような多糖類の正味電荷を中和することにより、肺の脂質膜、例えば、肺胞の膜、を透過する多糖類の能力が向上されうる。
【0199】
本発明の多糖類は、肺組織への吸入により投与されうる。本明細書に用いられる場合の用語「肺組織」とは、別なふうに指示されているところを除いては、任意の気道の組織を指し、上部および下部の両方の気道を含む。
【0200】
吸入による投与について、多糖類は、適した噴霧剤もしくは噴霧器を含む加圧容器またはディスペンサーからのエアゾールスプレーの形をとって送達される。多糖類は、乾燥粒子の形をとって、または液体としてありうる。好ましくは、多糖類は、乾燥粒子として肺組織へ送達される。多糖類粒子は、例えば、電荷中和剤を含む水性多糖類溶液を乾燥させ、その後、乾燥粉末から粒子を形成することにより、または有機調節剤における水性多糖類溶液を乾燥させ、その後、乾燥粉末から粒子を形成することにより、調製されうる。
【0201】
多糖類は、適した噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジエリロロテトラフルオロクトリアン、二酸化炭素または他の適したガスの使用で、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー提供の形をとって都合よく送達されうる。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計器で測定された量を送達するようにバルブを用意することにより測定されうる。吸入器または注入器における使用のためのカプセルおよびカートリッジは、粒子が製剤化粒子である場合には、多糖類、および乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤の粉末混合を含んで製剤化されうる。投与される製剤化または非製剤化多糖類、例えば、多糖類粒子、に加えて、100 % DPPCまたは他の界面活性剤のような他の材料が、製剤化または非製剤化多糖類の送達および分散を促進するために多糖類と混合されうる。乾燥多糖類粒子を調製する方法は、例えば、国際公開公報第02/32406号に記載されている。
【0202】
投与された場合の多糖類、例えば、乾燥エアゾール粒子、は急速に吸収され、急速な局所的または全身的治療結果を生じうる。送達された多糖類のピーク活性は3時間以内、および好ましくは2時間以内に達成されうることが発見された。いくつかの態様において、ピーク活性は、よりいっそう速く、例えば、半時間以内にまたは10分以内でさえも、達成されうる。肺の送達による本発明の多糖類の急速な吸収率に基づいて、吸入されたヘパリンは、LMWHの皮下投与では達成されることができない血液中で急速な抗凝血/抗血栓症状態を可能にする。吸入後のヘパリンの急速な吸収は、所望の活性、例えば、抗血栓/抗凝血治療、の効率を向上させるために続いてのLMWHの皮下投与と組み合わせられうる。または、より長い生物学的半減期のために製剤化されたヘパリンが、LMWHの皮下投与に代わるものとして用いられうる。同様の処置はまた、即時の初期介入を必要とする脳卒中のような脳血管疾患におけるヘパリンの使用に採用されうる。これらをはじめとする治療的使用は、下により詳細に記載されている。
【0203】
一つの態様において、多糖類の5 %が下部気道または深肺へ送達されるような量で送達される。深肺は、ヒトの身体において任意の器官の中に見出される最も富んだ毛細血管網状組織をもち、肺胞の空間から毛細血管の管腔を隔てている呼吸膜は非常に薄く(≦6 μm)かつ極めて許容度が高い。このように、肺のその部分へ送達することが望ましい。さらに、肺胞表面の内側を覆う液体層は、界面活性物質に富んでいる。他の態様において、多糖類組成物の少なくとも2 %、3 %、5 %、10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %または80 %は、下部気道または深肺へ送達される。これらの組織の一方または両方への送達は、結果として、多糖類の効率的な吸収および高い生物学的利用率を生じる。一つの態様において、多糖類は、例えば、吸入器または噴霧器を用いて計器で測定された用量で供給される。好ましくは、多糖類は、少なくとも約15 mg/ひと吹き、20 mg/ひと吹き、30 mg/ひと吹き、35 mg/ひと吹き、40 mg/ひと吹き、45 mg/ひと吹き、50 mg/ひと吹き、55 mg/ひと吹き、60 mg/ひと吹き、70 mg/ひと吹き、80 mg/ひと吹き、90 mg/ひと吹き、100 mg/ひと吹きまたはそれ以上の容量単位形式で送達される。
【0204】
パーセント生物学的利用率は、以下のように計算されうる:パーセント生物学的利用率 = (AUC非侵襲性/AUC静脈内または皮下)×(用量静脈内または皮下/用量非侵襲性)×100。
【0205】
望ましいレベルの送達を達成するために必要ではないが、界面活性剤のような送達促進剤が肺の送達をさらに促進するために用いられうる。本明細書に用いられる場合の「界面活性剤」とは、2つの不混和性の相間の界面と相互作用することにより薬剤の吸収を促進する、親水性および親油性の部分を有する化合物を指す。界面活性剤は、いくつかの理由、例えば、粒子凝集の低減、マクロファージ食作用の低減など、で乾燥粒子において有用である。肺界面活性物質と共役する場合、DPPCのような界面活性剤は、肺胞の膜表面を渡るヘパリンのような多糖類の拡散を、ヘパリンポリマーの親水性の荷電した基を隠蔽することにより大いに促進するため、多糖類のより効率的な吸収が達成されうる。界面活性剤は、当技術分野においてよく知られており、限定されるものではないが、ホスホグリセライド、例えば、ホスファチジルコリン、L-アルファ-ホスファチジルコリンジパルミトイル(DPPC)およびジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサデカノール;脂肪酸;ポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシエチレン-9-;アウリルエーテル;パルミチン酸;オレイン酸;ソルビタントリオレアート(スパン85(Span 85));グリココレート;サーファクチン;ポロキソマー;ソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタントリオレアート;チロキサポール;リン脂質を含む。
【0206】
粘膜送達
多糖類の、例えばそれらの化学的特性に基づく、化学的性質の同定は、化合物の粘膜の送達のための強化された組成物を作製するために用いられうることが見出された。用語「粘膜」および「粘膜の」とは、消化管および生殖管における粘液性組織、上皮、固有層および平滑筋の層を指す。粘膜の送達の方法は、口、頬、舌下、直腸および膣の送達を含む。
【0207】
経口投与について、化合物(例えば、LMWH調製物)は、活性化合物を薬学的に許容される担体と組み合わせることにより製剤化されうる。そのような担体は、本発明の化合物が治療される対象による経口摂取のための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されるのを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、固体賦形剤として得られうり、選択的には、結果として生じる混合物を粉砕し、望ましい場合には、錠剤または糖衣錠コアを得るために、適した助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工する。適した賦形剤は、糖(例えば、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトール)、セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP))のような増量剤を含む。望ましい場合には、架橋したポリビニルピロリドンのような崩壊剤が添加されうり、寒天またはアルギナートもまた、内部酸性条件を中和するために食塩緩衝剤において製剤化されうる、またはいずれの担体もなく投与されうる。
【0208】
糖衣錠コアは、適したコーティング剤を用いて供給される。この目的のために、濃縮した糖溶液が用いられうり、選択的に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/もしくは二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適した有機溶媒または溶媒混合物を含みうる。染料または色素が、識別のためにまたは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティング剤へ添加されうる。
【0209】
経口で用いられうる薬学的調製物は、ゼラチンで作製された押しはめカプセル、加えて、ゼラチン、およびグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤で作製された柔らかい封をしたカプセルを含む。押しはめカプセルは、乳糖のような増量剤、デンプンのような結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ならびに選択的に安定剤との混合物中に活性成分を含みうる。柔らかいカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールのような適した液体中に溶解されうるまたは懸濁されうる。さらに、安定剤が添加されうる。経口投与のために製剤化された微小球もまた、用いられうる。そのような微小球は当技術分野において知られている。適切な用量単位に経口組成物を製剤化することは都合がよい。
【0210】
本発明の多糖類組成物が、その多糖類が全身的送達を達成するために、膜、例えば、腸管粘膜、を通過しなければならないような、経口で送達されることになっている場合、透過していくバリアに適切な浸透剤のような送達促進剤が、製剤において用いられうる。そのような浸透剤は、当技術分野において一般的に知られており、例えば、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。
【0211】
経粘膜的投与は、例えば、直腸送達のための坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドのような通常の坐剤基剤を含む)または保持浣腸剤の使用により、直腸送達を通して達成されうる。
【0212】
頬の投与については、組成物は、通常の方法で製剤化された錠剤、舐剤および口腔リンス液の形をとりうる。
【0213】
本明細書に実証されているように、硫酸化多糖類は、胃の苛酷な条件を含む胃腸管の酸性および酵素的環境下において安定である。LMWHのようなスルホン化多糖類を中和することおよび/または質量を減少させることにより、これらの多糖類が腸粘膜を通過して血流へ入ることができることが見出された。実施例に実証されているように、LMWHは、エノキサパリンと比較して減少した質量および正味電荷をもつように調製された。これらのLMWHは、許容される吸収半減期で治療的に許容されるレベルにおいて、腸粘膜を通して吸収されることが示された。用語「治療的に許容されるレベル」とは、細胞または対象に結果として望ましい活性の発生を生じるのに十分なレベルにおける、局所的または全身的効果のための、多糖類組成物の送達を指す。例えば、治療的抗凝血性効果を生じるためのHLGAGの最小治療的レベルは、約0.3 IU/ml抗因子Xa活性であることが一般的に認められている。従って、多糖類がHLGAGであり、かつ所望の活性が抗Xa活性である場合の一つの局面において、HLGAG(例えば、LMWH)は、投与後1〜5時間、好ましくは2、3または4時間の期間中、少なくとも約0.2 IU/ml、好ましくは、少なくとも約0.25 IU/ml、0.30 IU/ml、0.35 IU/ml、0.4 IU/mlまたはそれ以上(例えば、0.5 IU/ml、1.0 IU/ml)のレベルにおいて胃腸管により吸収される。好ましくは、多糖類、例えばLMWH、の吸収速度は、投与後1〜5時間、好ましくは2、3または4時間以内である。
【0214】
「治療的有効量」とは、本明細書に記載されているような対象の症状を治療する、緩和する、軽減するまたは改善するにおいて、対象への単一または複数の用量投与により、そのような治療の非存在下において予想されるものを超える効果がある多糖類の量を指す。
【0215】
非侵襲性送達をモニターするための方法
送達される多糖類の量は、日常的な方法を用いて測定されうる。吸入による送達を測定するための例として、試験系において、吸入後の指示された時間間隔における動物肺の洗浄が、下部気道へ送達されたヘパリンの量を測定するために用いられうる。同様の試験が、例えば、腸粘膜における多糖類のレベルを経口送達後の様々な地点で測定するように行われうる。このデータは、治療されることになっているヒトまたは動物において生じると思われるその量に相関しうる。または、放射性または蛍光標識のような標識が多糖類に付着され、送達された多糖類の分布を測定するために用いられうる。所望の組織へ送達される多糖類の量はまた、その組織におけるもしくは生物活性が発生している領域、例えば血液、における多糖類の存在から結果として生じる治療効果の量、または多糖類の血漿濃度として測定されうる。送達の有効性を評価するために用いられるパラメーターの型は、対象の型、利用可能な装置の型、および治療されるまたは防がれることになっている疾患を含む様々な因子に依存して変化するものである。多糖類のピーク血漿濃度は、時間の経過にしたがって血液中に存在する多糖類のレベルを測定し、いつ濃度のピークレベルに達しているかを決定することにより、決定されうる。治療効果またはピーク血漿活性の量は、日常的なアッセイ法を用いて同定されうる。これらの効果の型は、評価されることになっている治療的パラメーターに依存するものである。例えば、多糖類が凝血を防ぐために投与される場合には、因子Xa活性の阻害の量が評価されうる。治療的抗凝血性効果を生じるためのヘパリン様グリコサミノグリカンの最小治療的レベルは、約0.3 IU/ml抗因子Xa活性であることがわかっている。HLGAGはまた、ヒト白血球エラスターゼのような酵素活性を阻害するのに有用である。一般的に、ヒト白血球エラスターゼにおけるHLGAGのIC50は、1 ng/mlから50マイクログラム/mlまでの範囲である。または、HLGAGのA1値は、10 nmから10 μMまでの範囲である。他の例において、多糖類がフェリナスリンテウス(phellinus linteus)から単離された多糖類である場合、評価されうる生物活性は、細胞性免疫および体液性免疫の両方を含む。このように、細胞性免疫または抗体産生のレベルは、これらの化合物のピーク生物活性の治療効果を特徴付けるために測定されうる。様々な多糖類について、他のアッセイ法は、当業者によく知られている。
【0216】
治療的使用
組成物は、対象へ投与されうる。本明細書に用いられる場合、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯類のような脊椎動物である。対象は、例えば、実験動物、家畜動物、またはヒト被験者でありうる。
【0217】
HLGAGは多くの治療的利用がある。HLGAG組成物は、HLGAG治療が有用であるいずれの型の状態の治療のためにも用いられうる。このように、製品および方法は、HLGAG治療が有用である様々なインビトロ、インビボおよびエキソビボの方法において有用である。例えば、HLGAG組成物は、アルツハイマー病のような痴呆、凝固、血管形成、血栓性疾患、循環器病、血管状態、アテローム性動脈硬化症、呼吸器疾患、循環性ショックおよび関連疾患を防ぐおよび治療する、加えて、癌細胞増殖および転移を阻害するために、有用である。これらの疾患のそれぞれは、当技術分野において周知であり、例えば、参照として組み入れられているが、Harrison's Principles of Internal Medicine(McGraw Hill, Inc.、ニューヨーク)に記載されている。様々な治療方法におけるHLGAGの使用は、Huang, J.およびShimamura, A.、Coagulation Disorders、12、1251-1281 (1998)に記載かつ要約されている。
【0218】
このように、HLGAG調製物は、凝固に関連した疾患を治療するまたは防ぐのに有用である。凝固経路における不均衡が過度の凝固へ移動する場合、その結果は、心臓発作、脳卒中、深部静脈血栓症、不安定狭心症および心筋梗塞のような急性冠動脈症候群(ACS)としてしばしば顕在化する血栓傾向の発生である。本明細書に用いられる場合の「凝固に関連した疾患」は、心筋もしくは脳梗塞または末梢血管性疾患について見られるような組織へ血液を供給することを担う血管の妨害の結果として、または心房細動もしくは深部静脈血栓症のような状態に関連した塞栓形成の結果として、起こりうる組織への血液供給における中断または減少に起因しうる局所的炎症を特徴とする状態を指す。凝固疾患は、限定されるものではないが、循環器病および脳虚血のような血管状態を含む。例えば、肺の送達による多糖類で、心筋梗塞およびACSのような疾患を治療することは、この送達系の速い吸収および作用のため、特に有用である。
【0219】
方法は、循環器病を治療するのに有用である。循環器病は、限定されるものではないが、急性心筋梗塞、ACS、例えば不安定狭心症、および心房細動を含む。心筋梗塞は、アテローム性動脈硬化症により以前に狭くなっている冠動脈の血栓性閉塞の結果として起こる冠血流量における突然の減少を時々発生する疾患状態である。そのような傷害は、タバコ喫煙、高血圧および脂質蓄積のような因子により引き起こされうるまたは促進されうる。急性狭心症は、一過性心筋虚血による。この疾患は、通常、胸骨下の重苦しさ、圧迫、圧搾感、息苦し感、または締め付け感を伴う。症状発現は、通常、労作または感情により引き起こされるが、眠っている時に発生しうる。
【0220】
心房細動は、感情的ストレスの結果として、または手術、運動もしくは急性アルコール性中毒後に一般的に発生する不整脈のよくある型である。心房細動の持続性型は、一般的に、循環器病をもつ患者に起こる。心房細動は、表面ECG上の不連続P波無しの乱れた心房性活動を特徴とする。この乱れた活動は、心房における異常な血流および血栓形成へと導きうる。これらの血栓が閉鎖し、結果として、脳虚血および他の疾患を生じる。
【0221】
手術、麻酔および長期間のベッド療養または他の不活動を経験する人は、下肢および/または骨盤における静脈血の凝固である、深部静脈血栓症、すなわちDVTとして知られている状態にしばしばなりやすい。この凝固は、静脈血をポンプで汲み出すために必要とされる下肢における筋肉活動の欠如(鬱血)、局所的血管損傷または凝固性亢進状態のために発生する。その状態は、血餅が、肺へ移動し、結果として「肺の塞栓」を生じる、または別なふうに、心血管性循環を妨害する場合には、生命を危うくしうる。治療の一つの方法は、抗凝血剤の投与を含む。
【0222】
化合物は、単独で、または循環器病のリスクを低減させるもしくは循環器病を治療するための他の治療剤と組み合わせて、循環器病の治療のために用いられうる。他の治療剤は、限定されるものではないが、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、フィブリン溶解性剤、脂質低下剤、直接的トロンビン阻害剤、抗Xa阻害剤、抗IIa阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤およびヒルジン、ヒルゲン、アンジオマックス(Angiomax)、アガトロバン(agatroban)、PPACK、トロンビンアプタマーのような直接的トロンビン阻害剤を含む。
【0223】
HLGAG調製物はまた、血管状態を治療するのに有用である。血管状態は、限定されるものではないが、深部静脈血栓症、末梢血管性疾患、脳卒中を含む脳虚血性、および肺塞栓症を含む。脳虚血性発作または脳虚血は、脳への血液供給が遮断されている虚血性状態の型である。この脳への血液供給における中断または減少は、血管自身の内因性封鎖もしくは閉塞、遠方に源を発した閉塞の供給源、結果として不十分な脳血流量を生じる減少した灌流圧力もしくは増加した血液粘度、またはクモ膜下腔もしくは脳内組織における破裂した血管を含む様々な原因から生じうる。
【0224】
方法は、脳虚血を治療するのに有用である。脳虚血は、結果として、一過性または持続性のいずれかの障害を生じ、脳虚血を経験した患者における神経学的損傷の重篤度は、虚血性事象の強度および持続期間に依存する。一過性虚血性発作は、脳への血流が短時間のみ中断されるものであり、たいてい24時間未満には全くないが、一時的な神経学的障害を引き起こす。TIAの症状は、顔もしくは手足の麻痺または虚弱、明瞭に話すおよび/または他人の話を理解する能力の喪失、視覚の喪失または視覚の不明瞭、ならびにめまいの感覚を含む。持続性脳虚血性発作は、脳卒中とも呼ばれるが、血栓または塞栓症のいずれかを起因とする脳への血流のより長い中断または減少により引き起こされる。発作は、典型的には、結果として、改善されうるが完全には回復しない神経学的障害を生じる神経細胞の損失を引き起こす。
【0225】
血栓塞栓性脳卒中は、血栓もしくは塞栓による頭蓋外または頭蓋内の血管の閉塞による。脳卒中が血栓症かまたは塞栓症かのいずれにより引き起こされているのか識別することはしばしば困難であるため、用語「血栓塞栓症」は、これらの機構のどちらによっても引き起こされる脳卒中を網羅するように用いられる。
【0226】
吸入後のUFHまたはLMWHのようなHLGAGの急速な吸収は、静脈血栓塞栓症の治療において非常に価値が高くありうる。UFHの静脈内投与は、経口ワルファリンと組み合わせて、静脈血栓塞栓症の治療のために広く用いられていた。しかしながら、向上した効力および低下したリスクのために、LMWHが、静脈血栓塞栓症の治療において静脈内UFHに代わるものとして、だんだん用いられてきた。ヘパリン治療の効力は、治療の最初の24時間以内に臨界の治療的レベル(例えば、抗因子Xaまたは抗因子IIa活性の値の)を達成することに依存していることが確証された。血栓塞栓症の初期においてヘパリンの急速な治療的レベルを達成するヘパリン粒子の肺内送達はまた、経口投与のような長期抗血栓性/抗凝血性効果のためのLMWHまたはヘパリンの他の投与経路と組み合わせられうる。
【0227】
方法はまた、HLGAGを用いる急性血栓塞栓性脳卒中の治療へも向けられる。急性脳卒中は、脳への血液供給における中断または減少である虚血性事象に起因する神経学的損傷を含む医学的症候群である。
【0228】
脳卒中の治療のための単独またはもう一つの治療用物質と組み合わせてのHLGAG調製物有効量は、脳卒中に起因するインビボでの脳損傷を低減させるのに十分な量である。脳損傷の低減とは、さもなければ、本明細書に記載されている治療なしに血栓塞栓性脳卒中を経験した対象において発生したであろう脳への損傷の任意の防止である。いくつかの生理学的パラメーターは、例えば、治療前の患者のパラメーター、治療されていない脳卒中患者、または血栓溶解剤単独で治療された脳卒中患者と比較して、より小さい梗塞部の大きさ、改善された局所的脳血流、および減少した頭蓋内圧を含め、脳損傷の低減を評価するために用いられうる。
【0229】
薬学的HLGAG調製物は、凝固に関連した疾患を治療するために、単独でまたは治療剤と組み合わせて用いられうる。凝固に関連した疾患の治療において有用な治療物質の例は、抗凝血剤、抗血小板剤および血栓溶解剤を含む。
【0230】
抗凝血剤は、血液成分の凝固を防ぎ、それに伴って血餅形成を防ぐ。抗凝血剤は、限定されるものではないが、ワルファリン、クマジン(Coumadin)、ジクマロール、フェンプロクーモン、アセノクマロール、エチルビスクーマセテートおよびインダンジオン誘導体を含む。「直接的トロンビン阻害剤」は、ヒルジン、ヒルゲン、アンジオマックス、アガトロバン、PPACK、トロンビンアプタマーを含む。抗血小板剤は、血小板凝集を阻害し、一過性虚血性発作または脳卒中を経験した患者において血栓塞栓性脳卒中を防ぐためにしばしば用いられる。血栓溶解剤は、血栓塞栓性脳卒中を引き起こす血餅を溶解する。血栓溶解剤は、急性静脈血栓塞栓症および肺塞栓の治療に用いられており、当技術分野においてよく知られている(例えば、Hennekensら、J Am Coll Cardiol;v. 25(7 supp)、p.18S-22S(1995);Holmesら、J Am Coll Cardiol;v.25(7 suppl)、p. 10S-17S(1995))。
【0231】
本明細書に用いられる場合の肺塞栓症は、重篤な呼吸機能不全を引き起こす、肺動脈の管腔における血餅の取り込みに関連した疾患を指す。肺塞栓はしばしば、下肢の静脈に源を発し、血餅が深部下肢静脈に形成し、その後、静脈循環により肺へ移動する。このように、肺塞栓症はしばしば、下肢静脈における深部静脈血栓症の合併症として発生する。肺塞栓症の症状は、息切れの急性襲来、胸痛(呼吸のせいでいっそう悪くなる)、ならびに速い心拍数および呼吸数を含む。いくつかの個体は喀血を経験する場合がある。
【0232】
製品および方法はまた、アテローム性動脈硬化症を治療するまたは防ぐのに有用である。ヘパリンは、様々な実験モデルにおいてアテローム性動脈硬化症の防止に有益であることが示された。脈管系の内皮へのより直接的な接近のために、吸入されたヘパリンは、アテローム性動脈硬化症の防止において有用でありうる。アテローム性動脈硬化症は、たいていの冠動脈疾患、大動脈瘤および下肢の心房性疾患の原因であり、加えて、脳血管疾患の一因となると考えられているアテローム性動脈硬化症の一つの型である。
【0233】
賦形剤有りまたは無しでのHLGAGは、それの速い吸収および可変性の排出速度により、手術的および透析処置のための静脈内ヘパリンとしての選択肢として用いられうる。例えば、HLGAG粒子は、手術前に自ら進んでの吸入により吸入されうる、または手術前もしくは手術中の麻酔中において気管を通して受動的に吸入されうる。手術の患者、特に40歳の年齢を越すものは、深部静脈血栓症を発生するリスクが増加する。このように、手術的処置に付随した血栓症の発生を防ぐためのHLGAG粒子の使用が企図されている。経皮的介入(例えば、経皮冠動脈インターベンション(PCI))、PCTA、ステントおよび他の類似した方法、股関節または膝置換、心肺のバイパス手術、冠動脈血管再生手術、整形外科的手術、ならびに人工器官置換手術のような一般的な手術的処置に加えて、方法はまた、股関節骨折のような骨折のための組織もしくは器官の移植処置または治療を受ける対象において有用である。
【0234】
さらに、ヘパリンの肺吸入は、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺再灌流傷害、および肺、腎臓、心臓および腸の虚血性再灌流傷害、ならびに肺腫瘍増殖および転移のような呼吸器疾患の治療に価値がある。
【0235】
嚢胞性線維症は、呼吸器系に影響を及ぼす慢性進行性疾患である。嚢胞性線維症の一つの重篤な結果は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)肺感染症であり、それだけで、嚢胞性線維症における罹患率および死亡率のほとんど90 %を占める。嚢胞性線維症を治療するための治療物質は、病原性感染症を治療するための抗菌物質を含む。
【0236】
ヘパリンはまた、十分確立された、エラスターゼならびに腫瘍増殖および転移の阻害剤でもある。エアゾール化されたヘパリン粒子は、急性肺気腫モデルにおいて、エラスターゼ誘発性肺損傷を阻害することができる。喘息は、炎症、気道の狭窄、および吸入された薬剤に対して増加する気道反応性を特徴とする呼吸器系の疾患である。喘息は、頻繁に、だがもっぱらではないが、アトピーまたはアレルギー症状と付随している。喘息はまた、運動誘発喘息、気管支刺激物に対する気管支収縮性応答、遅延型過敏症、自己免疫脳脊髄炎および関連した疾患を含みうる。アレルギーは、一般的に、アレルゲンに対するIgE抗体産生により引き起こされる。気腫は、肺胞中隔の破壊を伴う末端細気管支の遠位にある空間の膨張である。気腫は、エラスターゼ誘発性肺損傷から発生する。ヘパリンは、このエラスターゼ誘発性損傷を阻害することができる。成人呼吸窮迫症候群は、重篤な心房性低酸素血症を併発する多様なイデオロギーの多数の急性広汎性浸潤性肺障害を含む用語である。ARDSの最も頻度の高い原因の一つは、敗血症である。炎症性疾患は、限定されるものではないが、自己免疫疾患およびアトピー性疾患を含む。HLGAGで治療可能である炎症性疾患の他の型は、難治性潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、自己免疫疾患、非特異的潰瘍性大腸炎および間質性膀胱炎である。
【0237】
一つの態様において、HLGAG調製物は、血管形成を阻害するために用いられる。HLGAG調製物の血管形成を阻害するための有効量が、その治療を必要としている対象へ投与される。本明細書に用いられる場合の血管形成は、新しい血管の不適当な形成である。内皮細胞が、結果として新しい血管の生成を生じる内皮細胞の伸長および増殖を引き起こす内皮細胞に対して分裂促進性である成長因子の群を分泌する場合、「血管形成」はしばしば、腫瘍に起きる。いくつかの血管形成性分裂促進物質は、内皮細胞成長因子に関連しているヘパリン結合ペプチドである。血管形成の阻害は、動物モデルにおいて腫瘍退縮を引き起こすことができ、治療的抗癌剤としての使用を示唆する。血管形成を阻害するための有効量は、腫瘍へと増殖する血管の数を減少させるのに十分であるHLGAG調製物の量である。この量は、当技術分野において多数知られている腫瘍および血管形成の動物モデルにおいて評価されうる。血管形成性疾患は、限定されるものではないが、眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、癌および循環器病を含む。
【0238】
HLGAG調製物はまた、眼の疾患に関連した新血管形成を阻害するのに有用である。もう一つの態様において、HLGAG調製物は、乾癬を治療するために投与される。乾癬は、慢性炎症により引き起こされるよくある皮膚科学的疾患である。
【0239】
HLGAG含有組成物はまた、癌細胞増殖および転移を阻害しうる。このように、方法は、対象において、腫瘍細胞増殖もしくは転移を治療するおよび/または防ぐために有用である。癌は、悪性または非悪性癌でありうる。癌または腫瘍は、限定されるものではないが、胆道癌;脳腫瘍;乳癌;子宮頚癌;絨毛癌;大腸癌;子宮体癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;白血病;リンパ腫;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);黒色腫;神経芽腫;口腔癌;卵巣癌;膵癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌、加えて他の癌腫および肉腫を含む。
【0240】
癌治療を必要としている対象は、癌を発生する可能性が高い対象でありうる。これらの対象は、例えば、その存在が癌を発生するより高い見込みと相関関係をもつことが実証されている遺伝子異常をもつ対象、およびタバコ、アスベストもしくは他の化学的毒素のような癌誘発剤に曝されている対象、または以前に癌について治療されたことがあり、見かけ上緩解状態にある対象を含む。
【0241】
癌治療を受けている患者に投与される場合、多糖類粒子は、他の抗癌剤を含むカクテルにおいて投与されうる。多糖類組成物はまた、制吐剤、放射線保護剤などのような放射線療法の副作用を治療する薬剤を含むカクテルにおいて投与されうる。
【0242】
本明細書に用いられる場合の用語「防ぐ」および「防ぐこと」とは、生物学的効果、例えば、炎症、血管形成、または、癌もしくは腫瘍細胞の増殖または転移、を完全にまたは部分的に阻害すること、加えて生物学的効果における任意の増加を阻害することを指す。
【0243】
多糖類粒子の有効量が、そのような治療を必要としている対象へ投与される。有効量は、結果として望ましい生物学的効果を生じる量である。望ましい生物学的効果は、投与されることになっている多糖類粒子の型(すなわち、活性薬剤の型)、および防がれるまたは治療されることになっている疾患の型のような因子に依存するものである。例えば、多糖類組成物における活性薬剤がHLGAGである場合、生物学的効果は、他の医学的に許容されない副作用を引き起こすことのない、細胞の増殖もしくは転移における低減、炎症における低減、エラスターゼの阻害、呼吸器疾患の防止、または凝固の防止でありうる。そのような量は、日常的実験のみで決定されうる。投与の様式に依存する、1ナノグラム/キログラムから100ミリグラム/キログラムまでの範囲である用量が有効であるものと考えられる。多糖類粒子の有効パーセンテージは、日常的実験のみで決定されうる。絶対量は、様々な因子(投与は他の治療方法との組み合わせであるかどうか、用量の数、ならびに年齢、身体的状態、寸法および体重を含む個々の患者のパラメーターを含む)に依存するものであり、日常的実験で決定されうる。極量、すなわち、堅実な医学的審査による最高の安全用量、が用いられることが一般的に好ましい。
【0244】
非侵襲性送達を用いることの一つの利点は、投与の便利さであり、外来患者ベースで自己投与を可能にする。これは、ヘパリンでの治療のより早い開始を可能にする。このように、対象は、必要である場合、多糖類を自己投与するための吸入器のような装置、または錠剤、パッチもしくは坐剤を保有しうる。これは、いくつかの場合、迅速な投与を必要とするHLGAGについて、特に有用である。多糖類はまた、例えば、気管チューブの使用で、または十二指腸内の送達によって、ヘルスケア専門家により投与されうる。そのような方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0245】
HLGAGに加えて、他の多糖類は、きちんと整理された多様な治療的利用がある。コンドロイチン硫酸は、化学療法の間にシスプラチンの腎毒性を低減させるためにシスプラチンとの複合体として用いられた。Zhang JS、Imai T、Otagiri M. Arch Toxicol 2000年8月;74(6):300-307。ヒアルロン酸およびその誘導体は、変形性関節症の治療のための遅効性薬の薬理学的クラスであることが示された。Watterson JR、Esdaile JM、J Am Acad Orthop Surg 2000年10月;8(5):277-284。キチンは、非硫酸化多糖類であるが、化学的に硫酸化されて、修飾多糖類、例えば、黒色腫の肺転移を阻害することができる6-O硫酸化カルボキシメチルキチン、を生成することができる。Murata J、Saiki I、Makabe T、Tsuta Y、Tokura S、Azuma I、Cancer Res 1991年1月;51(1):22-26。Nishiyama Y、Yoshikawa T、Kurita K、Hojo K、Kamada H、Tsutsumi Y、Mayumi T、Kawasaki K. Chem Pharm Bull(東京)1999年3月;47(3):451-453。フェリナスリンテウス(phellinus linteus)から単離された多糖類もまた、特にアドリアマイシンと組み合わせて投与される場合、黒色腫を治療するおよび防ぐのに有用である。Han SB、Lee CW、Jeon YJ、Hong ND、Yoo ID、Yang KH、Kim HM. 1999年2月;41(2):157-164。藍藻類、スピルリナプラテンシスから単離されたカルシウムスピルランは、主にラムノースから構成される硫酸化多糖類であり、腫瘍浸潤および転移を阻害することが実証された。Hayakawa Y、Hayashi T、Lee JB、Ozawa T、Sakuragawa N. J Biol Chem 2000年4月14日;275(15):11379-11382。オリゴ糖および五糖類のようなヘパリン模倣体は、凝固および血栓症を防ぐのに有用である。他の糖模倣体は、凝固の防止、加えて、炎症、癌および他の免疫学的疾患の治療のために用いられた。(Barchi, J.J.、Curr. Pharm. Des.、2000、6(4):485-501)。ラミナリンのような合成的に誘導された硫酸化多糖類は、ヘパリナーゼを阻害するために、およびそれに伴って、炎症、腫瘍進行などを阻害するために有用である。(Marchetti, D.ら、Cancer Res.、2000、60:4767-4770)。PI-88は、酵母ピチアホルスティ(pichia holstii)の発酵により産生される高分子量のコアから精製されるホスホマンナンの硫酸化から誘導される高度に硫酸化されたオリゴ糖の混合物である。主要な成分は、ペンタマンノースであるが、少量の四糖および微量の六糖もまた存在する。PI-88は、目下、それの抗凝血/抗血栓症の性質について臨床試験を受けている。PI-88はまた、ヘパラン硫酸結合の強い阻害剤であり、ヘパリナーゼ酵素活性を阻害する。(Parish, C.R.ら、Cancer Res.、1999、59:3433-3441)。
【0246】
有用である他の多糖類は、多糖類ワクチン抗原である。これらの抗原は、免疫応答を刺激する目的のために単独で、または標準的ワクチンアジュバントと組み合わせて送達されうる。多糖類抗原は、宿主において微生物に対する免疫応答を誘発することができる多糖類である。これらは、限定されるものではないが、莢膜の多糖類、リポ多糖類および他の被膜下(表面)の多糖類を含む。莢膜の多糖類の例は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカスアガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、チフス菌(Salmonella typhi)、大腸菌(Escherichia coli)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から単離されたものを含む。リポ多糖類の例は、髄膜炎菌、大腸菌、チフス菌および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)から単離されたものである。他の被膜下の多糖類の例は、グループA、BおよびCの連鎖球菌(Streptococci)の共通多糖類抗原(c-物質)ならびに肺炎双球菌の共通多糖類抗原(c-物質)である。多糖類ワクチンの免疫学は、Jenningsら、「The Polysaccharides」(編者;G.O. Aspinall)、1巻、291-329 (1982)により概説されている。「Carbohydrate Chemistry」、John F. Kennedy編、Clarendon Press、オックスフォード、1988;「The Carbohydarates, Chemistry and Biochemistry」、W. PigmanおよびD. Horton、Academic Press, Inc.、1970;および「Chitin, Chitosan, and Related Enzymes」、John P. Zikakis編、Academic Press, Inc.、1984もまた参照されたい。
【0247】
多糖類はまた、ワクチンアジュバントを含む。これらの多糖類アジュバントは、免疫応答を刺激する目的のために単独でまたは標準的ワクチン抗原と組み合わせて送達されうる。
【0248】
いくつかの態様において、多糖類組成物は、組成物が少なくとも1つの多糖類を含む限り、多糖類以外の成分を含みうる。これらは、例えば、限定されるものではないが、タンパク質、核酸、低分子の有機または無機分子のような活性薬剤、徐放性をもたない担体、保存剤などを含む。このように、方法は、活性薬剤の非侵襲性投与に関する。本明細書に用いられる場合の活性薬剤は、生物体において、診断的、予防的または治療的効果をもつ任意の化合物である。活性薬剤は、選択的に、タンパク質、ペプチド、抗体、多糖類、核酸(例えば、RNA、DNA、PNA、それらの多重鎖(例えば:三重鎖))、多糖類、糖タンパク質、アミノ酸、ウイルス、高分子の不均質混合物(例えば、天然産物の抽出物)およびハイブリッド高分子(例えば、タンパク質/核酸ハイブリッド、アルブミン結合タンパク質、リンカー無機分子、有機分子またはそれらの組み合わせを含む薬剤)でありうる。
【0249】
生理活性剤は、生物体において予防的または治療的効果をもつ任意の化合物である。いくつかの態様において、生理活性剤は、上記薬剤のいずれか、または1つもしくは複数の以下の薬剤である:アドレナリン作用薬;副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤;認知を治療するための薬剤、抗血小板剤、アルドステロン拮抗薬;アミノ酸;タンパク同化剤;興奮剤;鎮痛剤;麻酔薬;食欲抑制薬(anorectic);抗ざ瘡剤;抗アドレナリン作用薬;抗アレルギー薬;抗アルツハイマー病薬;抗アメーバ薬;抗貧血剤;抗狭心症薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗アテローム性動脈硬化薬;抗細菌薬;抗コリン作用薬;抗凝血薬;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗利尿薬;制吐剤;抗癲癇薬;抗フィブリン溶解剤;抗真菌薬;抗出血薬;抗ヒスタミン薬;抗高脂血症薬;抗高血圧薬;抗低血圧薬;抗感染薬;抗炎症薬;抗微生物薬;抗偏頭痛薬;抗有糸分裂薬;抗真菌薬;制嘔吐剤;抗新生物薬;抗好中球減少薬;駆虫薬;増殖抑制薬;抗精神病薬;抗リウマチ薬;抗脂漏薬;抗分泌薬;鎮痙薬;抗血栓症薬;抗潰瘍薬;抗ウイルス薬;不安緩解剤;食欲抑制剤(appetite suppressant);血糖調節剤;骨吸収阻害剤;気管支拡張薬;心血管薬;コリン作用薬;COX1阻害剤、COX2阻害剤、直接的トロンビン阻害剤、抑制薬;診断的補助剤;利尿薬;ドーパミン作用薬;エストロゲン受容体作用薬;フィブリン溶解剤;蛍光剤;遊離活性酸素捕捉剤;胃腸運動エフェクター;グルココルチコイド;GPIIbIIIa拮抗薬、発毛刺激薬;止血剤;ヒスタミンH2受容体拮抗薬;ホルモン;ヒト成長ホルモン;コレステロール低下薬;血糖降下薬;脂質低下薬;催眠薬;血圧降下剤;画像化剤;免疫化剤、免疫調節薬(immunomodulator)、免疫調整薬(immunoregulator)、免疫刺激薬および免疫抑制薬のような免疫学的薬剤;角質溶解薬;LHRH作用薬;気分調節剤;粘液破壊薬;散瞳薬;鼻鬱血除去薬;神経筋遮断薬;神経保護剤;NMDA拮抗薬;非ホルモンのステロール誘導体;プラスミノーゲンアクチベーター;血小板活性化因子拮抗薬;血小板凝集阻害剤;プロトンポンプ阻害剤、向精神薬;放射性薬;抗疥癬薬;硬化剤;鎮静剤;鎮静催眠薬;選択的アデノシンA1拮抗薬;セロトニン拮抗薬;セロトニン阻害剤;セロトニン受容体拮抗薬;スタチン、ステロイド;甲状腺ホルモン;甲状腺阻害剤;甲状腺模倣体;精神安定薬;筋萎縮側索硬化薬;脳虚血薬;ページェット病薬;不安定狭心症薬;血管収縮神経薬;血管拡張神経薬;創傷治癒薬;キサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【0250】
いくつかの態様において、多糖類と活性薬剤は別個であり、他の態様において、それらは同じである。このように、いくつかの製剤において、活性薬剤は多糖類組成物の多糖類であり、さらなる活性薬剤は組み入れられていない。他の製剤において、多糖類は、多糖類、およびその多糖類とは異なる活性薬剤を含む。「多糖類と活性薬剤は別個である」とは、それらが異なる化学的実体である場合である。多糖類は、たとえ活性薬剤が多糖類であるとしても、活性薬剤がその同一の多糖類ではない限り、活性薬剤とは別個でありうる。例えば、多糖類調製物はLMWHであり、活性薬剤はUFH、ヒアルロン酸などである場合がある。または、多糖類は活性薬剤ではなく、多糖類組成物は追加の活性薬剤を含む場合がある。
【0251】
以下の行われる実験の説明は、例証的なものであり、主張される発明の範囲を限定するものではない。
【0252】
実施例
実施例1:エノキサパリン由来LMWH化合物の合成
段階1:100 mgのエノキサパリンを10 mlの水に溶解し、10 mg/mlの濃度を得た。100 mg NaClをこの溶液に添加した。溶液のpHを6.7に調整した。5 ml 200プルーフ(Proof)エタノールをこの混合物に添加した。溶液を4℃で24時間、維持した。沈澱した残渣(MLP)を4000 RPMで15分間の遠心分離により除去する。20 ml エタノールを上清に添加し、混合物を4℃で24時間、維持した。24時間の終わりに形成された沈澱物(MLP)を4000 RPMで15分間の遠心分離により分離する。それを一晩、凍結乾燥し、MLSの60 mg乾燥粉末を供給する。
【0253】
段階2:100 mg MLSを50 mM 酢酸カルシウム緩衝液、pH 6.7の10 mlに溶解した。10 mgのヘパリナーゼIIおよび1 mgのヘパリナーゼIIIからなる酵素カクテルをこの混合物に添加し、溶液を37℃で4時間、維持した。2時間の終わりに形成された沈澱物を4000 RPMで15分間の遠心分離により除去した。消化されたMLSの上清をサイズ排除クロマトグラフィーカラムにおいて脱塩した。
【0254】
段階3:上で説明された方法により消化された100 mg MLSを長さ1 m、直径10 cmのP10サイズ排除カラムに添加した。500 mM 酢酸アンモニウム緩衝液を流出緩衝液として用いた。溶出液をUV 232 nMでの吸収により追跡した。3 mlのピークを最初のボイド容量後に収集した。0.1ユニットより大きい吸収を与えるピークを収集した。それらは、10個の等しい画分へ分けられた。別々の画分を、その後、重炭酸アンモニウム塩を除去するために水から凍結乾燥した。その後、それらを、記載されるアッセイ法により、構成単位および機能的特徴(抗Xa、および抗IIa活性)についてアッセイした。画分3および画分7(M108およびM405と名付けられる)の特徴は、下の表1および表2に列挙されている。
【0255】
実施例2:UFH由来LMWH化合物の合成:
段階1:100 mgのUFHを10 mlの水に溶解し、10 mg/mlの濃度を得た。100 mg NaClをこの溶液に添加した。溶液のpHを6.7に調整した。3 ml 200プルーフ(Proof)エタノールをこの混合物に添加した。溶液を4℃で12時間、維持した。沈澱した残渣(MUP)を4000 RPMで15分間の遠心分離により除去する。10 ml エタノールを上清に添加し、混合物を4℃で24時間、維持した。24時間の終わりに形成された沈澱物(MUS)を4000 RPMで15分間の遠心分離により分離する。それを一晩、凍結乾燥し、MUSの60 mg乾燥粉末を供給する。
【0256】
段階2:100 mg MUSを50 mM 酢酸カルシウム緩衝液、pH 6.7の10 mlに溶解した。5 mgのヘパリナーゼIIおよび5 mgのヘパリナーゼIIIからなる酵素カクテルをこの混合物に添加し、溶液を37℃で4時間、維持した。2時間の終わりに形成された沈澱物を4000 RPMで15分間の遠心分離により除去した。消化されたMUSの上清をサイズ排除クロマトグラフィーカラムにおいて脱塩した。
【0257】
段階3:上で説明された方法により消化された100 mg MLSを長さ1 m、直径10 cmのP10サイズ排除カラムに添加した。500 mM 酢酸アンモニウム緩衝液を流出緩衝液として用いた。溶出液をUV 232 nMでの吸収により追跡した。3 mlのピークを最初のボイド容量後に収集した。0.1ユニットより大きい吸収を与えるピークを収集した。それらは、10個の等しい画分へ分けられた。別々の画分を、その後、重炭酸アンモニウム塩を除去するために水から凍結乾燥した。その後、それらを、記載されるアッセイ法により、構成単位および機能的特徴(抗Xa、および抗IIa活性)についてアッセイした。画分2および画分4(M115およびM411と名付けられる)の特徴は、下に列挙されている。
【0258】
実施例1および実施例2の結果:
上記の方法は、以下のLMWH組成物を調製かつ特徴付けるために用いられた:
【0259】
(表1) LMWH組成物、CE分析により測定されたAUC

【0260】
(表2) LMWH組成物、所定成分のモル%

【0261】
「グリッド」手順は、上で挙げられている特定の実施例、M108、M405、M115およびM411を作製するために用いられた。これらは、複合体出発物質から複数のパラメーターを変えることにより得られる複合体分子であることは、理解されるべきである。生成物の組成物は、複数のパラメーターにより影響されるため、異なる方法において異なるパラメーターを調整すること、および生成物のプロフィールをモニターすることは、当業者がM108、M405、M115およびM411と類似した生成物を調整することを可能にするものと思われる。
【0262】
変化しうるパラメーターは、限定されるものではないが、以下のものを含む:
1)出発物質:UFH、FH、特に、エノキサパリン、ダルテパリン、アルデパリン、セルトパリン、パルナパリン、ナドロパリン、レビパリンまたはチンザパリンのような他のLMWH調製物。
2)塩(型、濃度):MgおよびCaのような二価の金属のような(例えば、MgCl2、酢酸カルシウムなど)。
3)酵素(ヘパリナーゼI、II、III、変異ヘパリナーゼ、およびこれらの酵素の異なる組み合わせ)。
4)温度
5)インキュベーション時間
【0263】
この方法は、異なる特徴をもつLMWH調製物を作製するために用いられた。例えば、プロタミンにより中和されるLMWH調製物が作製されうる。例えば、LMWH調製物、M118およびM312は両方とも、UFHまたはエノキサパリンのいずれかより、抗因子Xaおよび抗因子IIa活性のプロタミン中和に感受性がより高い。さらに、より低いPF4結合活性をもつLMWH調製物が作製され、これらの調製物は、PF4結合に関連している成分1、2、4および6のより少ない量を含む。PF4結合は、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)に結びつけられているため、PF4結合の減少したLMWHの組成物は望ましいものと思われる。
【0264】
PF4結合は、Maccaranaらのフィルター結合アッセイ法を用いてアッセイされた。簡単には、1 μgの3H-放射性標識のヘパリンを、10 μlのトリス緩衝液(130 mM NaCl、50 mM トリス-HCl、pH 7.3)において37℃で10分間、様々な量の非放射性LMWHの存在下において、1 μgのPF4とインキュベートする。その後、トリス緩衝液の添加により、容量を300 μlに近づけ、試料を、減圧マニホルドでの緩衝液平衡硝酸セルロースフィルターを通して引き出す。フィルターを130 mM NaCl、50 mM トリス-HClの2 x 5 mlで洗浄し、結合した物質を2 M NaCl、50 mM トリス-HClの2 x 5 mlで溶出する。平均して99 %より多い放射性標識物質が、2 M NaCl、50 mM トリス-HClでフィルターから取り出された。
【0265】
様々なLMWHについてPF4結合親和性を評価するために、フィルター結合アッセイ法により収集されたデータのスキャッチャード(Scatchard)解析を用いた。データについて最良適合の直線および図式方程式が決定された。これらの直線の傾きは、1/Kd(1)および1/Kd(2)に等しく、第一の直線についてのx切片は、タンパク質上の結合部位の数(n1)を表し、第二についてのx切片は、n1 + n2を表し、n2は、Kd(2)についての結合部位の数である。
【0266】
(表3) 副作用についての等価抗Xa活性の比較

【0267】
これらの結果から明らかであるように、方法は、抗因子Xaおよび抗因子IIa活性;プロタミン中和;FGF結合;ならびにPF4結合の比率およびレベルを変えることを含む、ほとんどの任意の所望の特徴をもつLMWH調製物を作製するために用いられうる。
【0268】
実施例3:胃腸管におけるLMWHの分析
雄のSD(Sprague Dawley)ラットの胃への送達後の様々な地点でのエノキサパリンの活性を測定した。
【0269】
ラット(250 mg〜300 mg)は、標準的ラット飼料および水を随意に与えられた。動物を実験の前の12時間、絶食させた。すべての動物を、ケタミン(72 mg/kg)およびアセプロマジン(3 mg/kg)の腹膜内注射で麻酔をかけた。経口胃管栄養法は、1-ml注入器に取り付けられたRuschカテーテルで行われた。ラットを直立位置にして、投薬カテーテルを門歯から10 cm、食道へ通し、投薬溶液を胃へとゆっくり圧出した。0〜4時間の異なる時点で、内頚静脈へと挿入されたカテーテルから血液を抜き取った。動物は、実験の終わりに屠殺された。
【0270】
10 mgのエノキサパリンを、15分間から5時間まで続く時間、ラット胃液においてインキュベートした。Xa/IIa活性についてアッセイするために後でアリコートを抜き取った。表4に見られるように、エノキサパリンは、胃の酸性環境において安定である。
【0271】
(表4) エノキサパリンの抗Xaおよび抗IIa活性のレベル

【0272】
異なる総合的な電荷対質量比率をもつLMWHが作製された。実施例4に示されることは、胃腸管からのLMWHの吸収速度への電荷対質量比率の効果である。電荷対質量比率は、ヘパリンの経口送達に影響を及ぼす重要なパラメーターであることが見出された。
【0273】
実施例4:胃腸管におけるLMWHの吸収
LMWHは、SAXカラムおよびサイズ排除カラムを用いて、電荷およびサイズ分画された。100 mgのLMWHを、100 gのSAX樹脂を保持する高さ1 m、直径10 cmSAXカラムに添加した。化合物を重量測定流量下において1 m NaCl緩衝液で溶出した。溶出液の10 ml画分をT = 0分から収集した。溶出画分を、アズールAアッセイ法または232 nm波長でのUV吸収のいずれかによりそれらのLMWH含有量についてモニターした。1吸収ユニットから100吸収ユニットまでの正味の吸収を示すピークを5バッチにおいて(バッチ1〜5)共にプールした。その後、これらの分画された試料を脱塩かつ濃縮した。異なる画分の組成物を、CEおよび機能的アッセイ法(Xa、IIa)により測定した。電荷対質量比率は、以下のように計算された。二糖分子あたり2.3の電荷を仮定すると、電荷/質量比率は、分子の質量で割られた分子の電荷である。
【0274】
従って、
エノキサパリンの電荷対質量 = 19.32/4200
M108についての電荷対質量 = 23/5000
M405についての電荷対質量 = 10.12/2200
【0275】
エノキサパリン、M108またはM405は、その後、十二指腸内の送達により胃腸管へ導入され、これらのLMWHの吸収が測定された。簡単には、雄のSDラット(250 mg〜300 mg)は、標準的ラット飼料および水を随意に与えられた。動物を実験の前の12時間、絶食させた。すべての動物を、ケタミン(72 mg/kg)およびアセプロマジン(3 mg/kg)の腹膜内注射で麻酔をかけた。送達は、1-ml注入器に取り付けられたRuschカテーテルで行われた。投薬カテーテルを十二指腸へ挿入し、投薬溶液を十二指腸へとゆっくり圧出した。0〜4時間の異なる時点で、血液を抜き取った。動物は、実験の終わりに屠殺された。
【0276】
図6に見られるように、電荷対質量比率とGITからのLMWHの吸収速度の間には相関がある。
【0277】
実施例5:LMWHのpKプロフィールへの多分散性の効果
LMWHは、サイズ排除カラムを用いて、それの多分散性の機能として分画された。100 mgのLMWHを、100 gのP10サイズ排除樹脂を保持する高さ1 m、直径10 cmのサイズ排除カラムに添加した。化合物を重量測定流量下において重炭酸アンモニウム緩衝液で溶出した。溶出液の10 ml画分をT = 0分から収集した。溶出画分を、232 nm波長でのUV吸収によりそれらのLMWH含有量についてモニターした。正吸収>0.1ユニットを示す試料を4つの異なるバッチとして合わせてプールした。その後、これらの分画された試料を脱塩かつ濃縮した。試料の多分散性は、多角度レーザー光散乱により測定された。エノキサパリンは1.3の多分散性をもつが、M108は、1.0の多分散性をもつ。
【0278】
エノキサパリンまたはM108は、その後、十二指腸内の送達により胃腸管へ導入され、これらのLMWHの吸収が測定された。簡単には、雄のSDラット(250 mg〜300 mg)は、標準的ラット飼料および水を随意に与えられた。動物を実験の前の12時間、絶食させた。すべての動物を、ケタミン(72 mg/kg)およびアセプロマジン(3 mg/kg)の腹膜内注射で麻酔をかけた。送達は、1-ml注入器に取り付けられたRuschカテーテルで行われた。投薬カテーテルを十二指腸へ挿入し、投薬溶液を十二指腸へとゆっくり圧出した。0〜4時間の異なる時点で、血液を抜き取った。動物は、実験の終わりに屠殺された。
【0279】
図7に見られるように、多分散性とGITからのLMWHの吸収速度の間には相関がある。
【0280】
実施例6:エノキサパリンの肺送達
ウサギへのエノキサパリンの肺送達を調べ、導かれた薬物動力学パラメーターを標準的皮下注射についてのものと比較した。異なる化学的および物理的パラメーターのグリッドサーチを、エノキサパリンの肺送達についての好都合の条件を同定するために調べた。グリッドサーチ条件は、エノキサパリンの多分散性、電荷対質量比率および硫酸化パターンのような理化学的性質の分析に基づいて決定された。循環の血液学への複数回の血液抜き取りおよび肺の吸入の効果を試験するために、血液試料を実験の始めおよび終わりに収集した。肺組織学への吸入された製剤の可能性のある病理学的効果の試験として、ウサギの肺を実験の終わりに摘出し、標準的組織化学的技術を用いて調べた。
【0281】
動物:
ウサギモデルとして、2.5〜3 kg ニュージーランド雄ウサギを群あたり3匹で用いた。ウサギを、7日間順応しかつ水および食物へ自由に接近するようにさせておいた。ケタミン(40 mg/kg)およびキシラジン(5 mg/kg)を、ウサギに麻酔をかけるために用いた。血液試料を抜き取るために、24-ガーゼテフロンカテーテルを中央耳介動脈へ挿入した。カテーテルを、0.9 % 食塩水で満たされたヘパリンキャップへ連結した。
【0282】
肺送達用エノキサパリンの物理的製剤:
エノキサパリンの化学的に製剤化された粒子は、商業的に入手可能なエノキサパリン調製物および3〜30 mMの塩濃度を用いて調製され、続いて、凍結乾燥、ならびに乳鉢および乳棒または他の物理的方法を用いることにより粉砕し、固体粉末を顆粒状にした。この粉末は、その後、20、53、75および106 μmのメッシュサイズに通してふるいにかけることによるサイズ分離にかけられた。20〜53 μm、53〜75 μmおよび53〜106 μmの範囲のサイズをもつ粉末を収集し、肺送達のために用いられた。
【0283】
粒子サイズの測定:
粒子サイズは、Beckman Coulter(マイアミ、FL 33116)により製造された、コールター(Coulter)LS230レーザー回折装置を用いて測定された。粒子サイズは、およそ同じ位の精度をもつ「湿式」または「乾式」のいずれかにおいて測定されうる。LMWH試料は、主として、灯油が懸濁媒である「湿式」において流された。ポンプ流量は50 %に維持された。オリフィスを通して流れる粒子はレーザービームを回折する;回折度が粒子サイズの機能である。
【0284】
エノキサパリンの肺送達:
15cm 気管チューブが、口を経由して麻酔にかけられたウサギの気管へ挿入された。続いて、気管チューブと等しい長さの一直線の送達チューブに取り付けられた吸入器が、気管チューブを通して挿入された。LMWHは、3 mg/kgおよび6 mg/kgの用量で送達され、粉末量は、送達の前および後の吸入器の重量を引き算することにより導かれた。0.2 mlの血液を吸入後0分、5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、18時間、24時間目に抜き取った。抜き取られた最初の0.2 ml血液は、各抜き取りについて捨てられた。血液試料は、クエン酸ナトリウム(3.8 %;1/9、v/v)の水溶液に収集され、2000 x gで20分間遠心分離され、その結果生じた血漿は、衝撃凍結され、抗Xaアッセイが完了されうるまで-80℃フリーザーで保存された。
【0285】
エノキサパリンの皮下投与:
3 mg/kgおよび6 mg/kgの用量でのエノキサパリンが、時間0において皮下注射により与えられた。血液試料は、皮下注射後0分、3分、5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間目に収集され、上記のように処理された。血漿は、指示された時間において収集され、記載されているように抗Xaアッセイについて分析された。皮下注射用のエノキサパリンは、100 mg/ml濃度でのPBSまたは水における溶液として製剤化され、適切な用量が注射された。
【0286】
抗Xa活性アッセイ:
抗Xaアッセイは、血漿LMWHレベルをモニターするために用いられた。抗Xaアッセイは、色素生産性基質としてS-2222を用いることによるCoatestヘパリン試験キット(Diapharma Group, Inc. OH)でのTeienおよびLie(Thrombosis res. 10:399-410、1977)のアミド分解方法の改変を用いて行われた。詳細な手順は、他の所で記載されている(Liuら、PNAS、94:1739-1744、1997)。未知の試料におけるエノキサパリンの濃度は、0.1〜0.7 IU/mlの範囲において直線である検量線と読みを比較することにより計算された。
【0287】
薬物動力学的パラメーターの計算:
抗Xa IU/mLに表される実験データは、拡張最小二乗法によるSigmaPlotプログラムを用いることによる1-コンパートメントモデル(CornelliおよびFareed、Semin thromb Hemost、25:57-61、1999)に基づく非線形回帰曲線として利用された。動力学曲線から、以下のパラメーターが計算された:曲線下領域(IU*hr*ml-1で表示されるAUC)、吸収半減期(時間で表示されるt1/2);および見かけの排出の半減期(時間で表示されるt1/2e)。AUC(0〜t)は、台形法則(RowlandおよびTozer、Clinical Pharmacokinetics. Concepts and Applications. 459-461、Lea and Febiger、1989)を用いて計算され、最後の測定された濃度値を排出速度定数で割ることにより無限大(AUC)へ外挿された。
【0288】
(表4) エノキサパリン粒子の物理的性質

【0289】
エノキサパリンが肺の経路を通して送達されうるかどうかを研究するために、化学的に製剤化されたエノキサパリンを作製し、作製された粒子(1〜500 μm)を異なるメッシュサイズのふるい(20、53および75 μmカットオフ)でふるい分けた。20〜53、53〜75および75〜106 μmの範囲の直径のエノキサパリン粒子が得られた。これらの粒子は、挿管された気管チューブを経由して3 mg/kgおよび6 mg/kgにおいて吸入器でのウサギへの吸入により投与された。同じ用量がまた、参照として皮下に注射された。現行の見解とは反対に、肺内経路を通して送達された粒子は、血漿試料の抗Xa活性アッセイにより示されるように、有意に速い吸収を示した(表5)。これらの粒子に共有される特徴は、以下のものを含む − (1)皮下投与についての1〜2時間と比較して、極めて短い吸収半減期(1〜10分)(tmaxは吸入後約30分で達せられた);(2)皮下投与と匹敵するまたはより遅い排出速度(試験された粒子の排出半減期は、約2〜6時間の範囲であり、概して、皮下投与のそれよりも遅い);(3)有意な生物学的利用率(皮下投与に対する相対的生物学的利用率は、約30〜60 %の範囲である)、および(4)直線的用量-応答関係(表5)。最後に、エノキサパリン粒子の平均滞留時間(MRT)値は、皮下投与とほぼ同等であった(表5)。
【0290】
(表5) エノキサパリンの皮下および肺への送達についての薬物動力学的パラメーター

【0291】
実施例7:エノキサパリンの化学的組成物はpKプロフィールに影響を及ぼす
LMWHの2つの異なる化学的組成物のウサギへの肺送達を調べた。肺内送達のためのエノキサパリンの化学的製剤(pH、対イオンの追加および理論量のようなパラメーターを含む)を除いては、肺内送達のための20〜53 μmの範囲での粒子作製は同一であった。製剤2は、より低い対イオン濃度(約50 %より低い)をもち、わずかに高いpHにおいて製剤化されている。このように、粒子を得るための同一の乾燥、粉砕、およびふるい分け手順が維持された。それぞれは、3 mg/kgの用量においてニュージーランドウサギへ肺内経路により送達された。2つの製剤は、いくらかの点において異なる:(1)製剤#2のpHは、製剤#1のpHより高く、対イオン濃度は、2分の1〜3分の1だけ低い。より多いアンマスクされた負電荷は、より速い吸収特性を可能にする「群発」効果へと導く(表6)。対イオン「中和」剤の性質における類似した変化は、薬物動力学的プロフィールに影響を及ぼす。
【0292】
同一の物理的製剤パラメーターをもつエノキサパリンの異なる化学的製剤は、著しく異なる薬物動力学的パラメーターをもつ(図6および表6)。エノキサパリンの化学的製剤を変化させることは、生物学的利用率、Cmaxおよび排出速度を含むエノキサパリンの臨床的使用において重要なパラメーターに著しく影響を及ぼしうる。
【0293】
(表6) 2つの異なる化学的製剤を用いるエノキサパリンの肺内送達についての薬物動力学的パラメーター

【0294】
実施例8:ダルテパリンの肺送達
第二の商業的に入手可能なLMWH、ダルテパリン、についての肺送達もまた調べた。化学的に製剤化されたダルテパリンは、3 mg/kgおよび6 mg/kgの用量でウサギへ肺内に送達され、導かれた薬物動力学的パラメーターは、標準的皮下注射についてのものと比較された。エノキサパリンにおいて完了された研究と同様に、異なる化学的および物理的パラメーターのグリッドサーチを、ダルテパリンの肺送達についての好都合な条件を同定するために調べた。グリッドサーチ条件は、ダルテパリンの多分散性、電荷対サイズ比率および硫酸化パターンのような理化学的性質の分析に基づいて決定された。この場合、対イオンの濃度およびpHが変えられるだけでなく、マスキング剤の性質も変えられた。この場合、可能なマスキング剤のグリッドサーチにより、よりかたいルイス酸、特に遷移金属および/または二価金属イオンが結果として、概してより低い生物学的利用率をもつ、より長く持続する製剤を生じることが示された。
【0295】
動物:
ウサギモデルとして、2.5〜3 kg ニュージーランド雄ウサギが、群あたり3匹のウサギで用いられた。肺または皮下送達の前に、ウサギは、エノキサパリンの用量を与えられたウサギと同一の様式において処理された(上記参照)。
【0296】
肺送達用ダルテパリンの物理的製剤:
ダルテパリンの化学的に製剤化された粒子は、商業的に入手可能なダルテパリン調製物および3〜30 mMの塩濃度を用いて調製され、続いて、凍結乾燥、および粉砕して固体粉末を顆粒状にした。この粉末は、その後、20、53、75および106 μmのメッシュサイズに通してふるいにかけることによるサイズ分離にかけられた。20〜53 μm、53〜75 μmおよび75〜106 μmの範囲のサイズをもつ粉末を収集し、肺送達のために用いられた。
【0297】
実験手順の他の局面は、実施例6と同一である。
【0298】
ダルテパリンが肺の経路を通して送達されうるかどうかを研究するために、化学的に製剤化されたダルテパリンを粉砕し、生じた粒子(1〜500 μm)を異なるメッシュサイズのふるい(20、53および75 μmカットオフ)でふるい分けた。20〜53、53〜75および75〜106 μmの範囲の直径のダルテパリン粒子が得られた。これらの粒子は、挿管された気管チューブを経由して3 mg/kgおよび6 mg/kgにおいて吸入器でのウサギへの吸入により投与された。同じ用量がまた、参照として皮下に注射された。またしても、現行の見解とは反対に、試験された粒子の両方とも、血漿試料の抗Xa活性アッセイにより示されるように、有意に速い吸収を示した(表7)。これらの製剤化されたダルテパリン粒子に共有される特徴は、以下のものを含む − (1)皮下投与についての1〜2時間と比較して、極めて短い吸収半減期(1〜10分)(tmaxは吸入後約30分で達せられた);(2)皮下投与と匹敵するまたはより遅い排出速度(試験された粒子の排出半減期は、約2〜6時間の範囲であり、概して、皮下投与のそれよりも遅い);(3)有意な生物学的利用率(皮下投与に対する相対的生物学的利用率は、約30〜60 %の範囲である)、および(4)直線的用量-応答関係(より高い用量がより高いピーク濃度(Cmax)に関連している)(表7)。最後に、製剤化されたダルテパリン粒子の平均滞留時間(MRT)値は、皮下投与とほぼ同等であった(表7)。
【0299】
(表7) ダルテパリンの皮下および肺への送達についての薬物動力学的パラメーター

【0300】
実施例9:ダルテパリンの化学的組成物はpKプロフィールに影響を及ぼす
ダルテパリンの2つの異なる化学的組成物のウサギへの肺送達を調べた。肺送達のためのダルテパリンの化学的製剤(pH、対イオンの付加および理論量のようなパラメーターを含む)を除いては、肺送達のための20〜53 μmの範囲での粒子作製は同一であった。製剤2は、より高いpHおよび概してより低い対イオン量をもった。このように、粒子を得るための同一の乾燥、粉砕、およびふるい分け手順が維持された。それぞれは、3 mg/kgの用量においてニュージーランドウサギへ肺経路により送達された。
【0301】
エノキサパリンについての場合のように、同一の物理的製剤パラメーターをもつダルテパリンの異なる化学的製剤は、著しく異なる薬物動力学的パラメーターをもつ(図7および表8)。ダルテパリンの化学的製剤を変化させることは、肺経路により与えられたダルテパリンの臨床的使用において重要な、生物学的利用率、Cmaxおよび排出速度を含むパラメーターに著しく影響を及ぼしうる。
【0302】
(表8) 2つの異なる化学的製剤を用いるダルテパリンの肺送達についての薬物動力学的パラメーター

【0303】
実施例10:他のLMWHの肺送達
他の低分子量ヘパリン、すなわち、M118およびM312、の肺送達もまた調べた。M118およびM312の化学的に製剤化された粒子は、10〜30 mMの塩濃度を用いて調製され、続いて、凍結乾燥、およびコーヒー挽き器を用いることにより粉砕し、固体粉末を顆粒状にした。化学的に製剤化されたM118およびM312は、3 mg/kgの用量でウサギへ肺内に送達され、薬物動力学的パラメーターが導かれ、同じ用量での皮下注射と比較された。ダルテパリンおよびエノキサパリンにおいて完了された研究と同様に、異なる化学的パラメーターのグリッドサーチを、M118およびM312の肺送達についての好都合な条件を同定するために調べた。グリッドサーチ条件は、M118およびM312の多分散性、電荷対サイズ比率および硫酸化パターンのような理化学的性質の分析に基づいて決定された。
【0304】
動物:
ウサギモデルとして、2.5〜3 kg ニュージーランド雄ウサギが、群あたり3匹のウサギで用いられた。
【0305】
肺送達用M118およびM312の物理的製剤:
M118およびM312の化学的に製剤化された粒子は、コーヒー挽き器を用いて凍結乾燥された固体粉末を粒状化することにより調製された。この粉末は、その後、20、53、75および106 μmのメッシュサイズに通してふるいにかけることによるサイズ分離にかけられた。粉末を収集し、肺送達のために用いられた。
【0306】
実験手順の他の局面は、実施例6と同一である。
【0307】
M118およびM312が肺の経路を通して送達されうるかどうかを研究するために、化学的に製剤化されたM118およびM312を粉砕し、生じた粒子(1〜500 μm)を異なるメッシュサイズのふるい(20、53および75 μmカットオフ)でふるい分けた。直径範囲をもつM118およびM312粒子が得られた。これらの粒子は、挿管された気管チューブを経由して3 mg/kgおよび6 mg/kgにおいて吸入器でのウサギへの吸入により投与された。同じ用量がまた、参照として皮下に注射された。またしても、現行の見解とは反対に、試験された粒子の両方とも、血漿試料の抗Xa活性アッセイにより示されるように、有意に速い吸収を示した(表10)。このように、すべての低分子量ヘパリン粒子に共有される特徴は、以下のものを含む − (1)皮下投与についての1〜2時間と比較して、極めて短い吸収半減期(1〜10分)(tmaxは吸入後約30分で達せられた);(2)皮下投与と匹敵するまたはより遅い排出速度(試験された粒子の排出半減期は、約2〜6時間の範囲であり、概して、皮下投与のそれよりも遅い);および(3)皮下投与とほぼ同等である平均滞留時間(MRT)値(表9)。
【0308】
(表9) M118およびM312の皮下および肺の送達についての薬物動力学的パラメーター

【0309】
本出願に列挙されているすべての参照文献、特許および特許公開は、参照として本明細書に完全に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0310】
【図1】血漿試料における2つのエノキサパリン由来の粒子調製物の抗Xa活性アッセイを示すグラフである。
【図2】挿管された気管チューブを経由して3 mg/kgおよび6 mg/kgにおいて吸入器でのウサギへの吸入により投与されたエノキサパリン由来の粒子の抗Xa活性アッセイを用いる吸収速度を示すグラフである。
【図3】血漿試料における別個の製剤(実施例に記載されている)をもつ2つのエノキサパリン由来の粒子調製物の抗Xa活性アッセイを示すグラフである。
【図4】挿管された気管チューブを経由して3 mg/kgおよび6 mg/kgにおいて吸入器でのウサギへの吸入により投与されたダルテパリン由来の粒子の抗Xa活性アッセイを用いる吸収速度を示すグラフである。
【図5】血漿試料における別個の製剤(実施例に記載されている)をもつ2つのダルテパリン由来の粒子調製物の抗Xa活性アッセイを示すグラフである。
【図6】異なる電荷対質量比率をもつ様々なLMWHの吸収速度を示すグラフである。吸収速度は、十二指腸内送達により投与された3つのLMWH、すなわち、エノキサパリン、M108およびM405、の抗Xa活性を用いて測定された。
【図7】異なる多分散性をもつ2つのLMWHの吸収速度を示すグラフである。吸収速度は、十二指腸内送達により投与された2つのLMWH、エノキサパリン(1.35の多分散性をもつ)およびM405(1の多分散性をもつ)、の抗Xa活性を用いて測定された。
【図8】挿管された気管チューブを経由して吸入器でのウサギへの吸入により投与された0.23 mg/kg、0.45 mg/kgおよび0.6 mg/kgの用量でのアリクストラの抗Xa活性を示すグラフである。
【図9】いくつかの合成HLGAGの構造を示す。
【図10】吸入または皮下の送達によって送達されたLMWHによる静脈血栓症阻害を示すグラフである。SDラット(n=3)は、皮下注射または吸入のいずれかにより、アルデパリン(3 mg/kg)で処理された。動物は、2時間(皮下注射)または15分間(吸入)、モニターされたが、ラッセルクサリヘビ毒液(Russell's Viper Venom)が注射された。2分後、下大静脈を結紮し、血栓形成がモニターされた。
【図11】吸入によるLMWHの投与への異なる製剤の効果を示すグラフである。異なるアルデパリン粒子:ウサギ(n=3)は、気管チューブを挿管され、異なるパーセンテージの乳糖で製剤化されたヘパリンは、吸入器を用いて肺へ送達された。耳介血液におけるヘパリン濃度は、自動色素生産性方法を用いて測定された。
【図12】吸入によるLMWHの投与への異なる製剤の効果を示すグラフである:ウサギ(n=3)は、気管チューブを挿管され、乳糖またはDPPCで製剤化されたヘパリンは、吸入器を用いて肺へ送達された。耳介血液(0.3 ml)におけるヘパリンの濃度は、自動色素生産性方法を用いて測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、非侵襲性送達のための多糖類を調製するための方法:
多糖類を中和し、それにより非侵襲性送達のための多糖類を調製する段階。
【請求項2】
多糖類の質量を減少させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
多糖類についての化学的特性を測定する段階、および多糖類をその化学的特性に基づいて中和する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
多糖類の質量をその化学的特性に基づいて減少させる段階をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
多糖類の正味の負または正味の正電荷が少なくとも30 %またはそれ以上、低下する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
多糖類が、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
多糖類をその化学的特性に基づいて多糖類における既知の位置で切断する少なくとも1つの試薬でポリペプチドを消化することにより多糖類が中和される、請求項3記載の方法。
【請求項8】
試薬が酵素である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
酵素がヘパリンリアーゼである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ヘパリンリアーゼが、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
試薬が化学物質である、請求項7記載の方法。
【請求項12】
化学物質が、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、ならびにアルカリ処理によるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断からなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
多糖類が、電荷中和剤に多糖類を接触させることにより中和される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
電荷中和剤が対イオンである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
対イオンが、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、および亜鉛からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
電荷中和剤が遷移金属である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
遷移金属が、鉄、ニッケル、および銅からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
電荷中和剤が、低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、および塩基性ペプチドからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項19】
多糖類がHLGAGである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
多糖類の粒子を作製する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
粒子が約1〜500ミクロンの平均幾何学的直径をもつ、請求項20記載の方法。
【請求項22】
多糖類を送達促進剤と共に製剤化する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
送達促進剤が、界面活性剤、吸収促進剤、およびポリマーからなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
以下の段階を含む、非侵襲性インビボ送達のためのヘパリンを調製するための方法:
ヘパリンを中和し、それにより非侵襲性インビボ送達のためのヘパリンを調製する段階。
【請求項25】
ヘパリンの質量を減少させる段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
中和されるヘパリンが未分画ヘパリン、分画ヘパリン、または合成五糖類である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
分画ヘパリンがLMWHである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
LMWHが、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ヘパリンについての化学的特性を測定する段階およびヘパリンをその化学的特性に基づいて中和する段階をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項30】
ヘパリンの質量をその化学的特性に基づいて減少させる段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ヘパリンの正味の負電荷が少なくとも30 %またはそれ以上、低下する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
ヘパリンが、0の総正味電荷があるように中和される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
ヘパリンが、ヘパリンの化学的特性に基づいて選択された少なくとも1つの試薬でヘパリンを消化することにより中和される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
ヘパリンが、ヘパリンの少なくとも1つの生物活性が維持または増強されるように中和される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
活性が、抗Xa活性、抗IIa活性、プロタミン中和、FGF-2結合活性、血小板因子4結合活性もしくはHIT性向の他の測定、またはそれらの組み合わせである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
試薬が酵素である、請求項33または34記載の方法。
【請求項37】
酵素がヘパリンリアーゼである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ヘパリンリアーゼが、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
試薬が化学物質である、請求項33または34記載の方法。
【請求項40】
化学物質が、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、ならびにアルカリ処理によるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ヘパリンが、電荷中和剤にヘパリンを接触させることにより中和される、請求項29記載の方法。
【請求項42】
電荷中和剤が、一価または二価イオンのような対イオンである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
対イオンが、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、およびマグネシウムからなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
電荷中和剤が遷移金属である、請求項41記載の方法。
【請求項45】
遷移金属が、鉄、ニッケル、亜鉛、および銅からなる群より選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
電荷中和剤が、低分子有機化合物、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、または塩基性ペプチドである、請求項41記載の方法。
【請求項47】
ヘパリンがエノキサパリン由来であり、かつヘパリンが19.32/4200未満である電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンが中和され質量が減少する、請求項30記載の方法。
【請求項48】
ヘパリンがナドロパリン由来であり、かつヘパリンが27.6/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンが中和され質量が減少する、請求項30記載の方法。
【請求項49】
ヘパリンがダルテパリン由来であり、かつヘパリンが23/6000未満である電荷対質量比率をもつように、ダルテパリンが中和され質量が減少する、請求項30記載の方法。
【請求項50】
ヘパリンがレビパリン由来であり、かつヘパリンが25.3/5500未満である電荷対質量比率をもつように、レビパリンが中和され質量が減少する、請求項30記載の方法。
【請求項51】
ヘパリンがパルナパリン由来であり、かつヘパリンが30.4/6610未満である電荷対質量比率をもつように、パルナパリンが中和され質量が減少する、請求項30記載の方法。
【請求項52】
ヘパリンがチンザパリン由来であり、かつヘパリンが28.06/6100未満である電荷対質量比率をもつように、チンザパリンが中和され質量が減少する、請求項30記載の方法。
【請求項53】
ヘパリンがエノキサパリン由来であり、かつヘパリンの正味電荷が約18未満である、請求項30記載の方法。
【請求項54】
ヘパリンがダルテパリン由来であり、かつヘパリンの正味電荷が約21未満である、請求項30記載の方法。
【請求項55】
ヘパリンがナドロパリン由来であり、かつヘパリンの正味電荷が約26未満である、請求項30記載の方法。
【請求項56】
ヘパリンがレビパリン由来であり、かつヘパリンの正味電荷が約24未満である、請求項30記載の方法。
【請求項57】
ヘパリンがパルナパリン由来であり、かつヘパリンの正味電荷が約29未満である、請求項30記載の方法。
【請求項58】
ヘパリンがチンザパリン由来であり、かつヘパリンの正味電荷が約27未満である、請求項30記載の方法。
【請求項59】
ヘパリンが、以下のものからなる群より選択される非侵襲性送達のために調製される、請求項24記載の方法:肺送達、経皮的送達、および粘膜送達。
【請求項60】
以下の段階を含む、非侵襲性インビボ送達のための多糖類を調製するための方法:
多糖類を供給する段階;
多糖類についての化学的特性を測定する段階;および
多糖類の質量をその化学的特性に基づいて減少させ、それにより非侵襲性インビボ送達のための多糖類を調製する段階。
【請求項61】
多糖類の少なくとも1つまたは複数の活性が少なくとも部分的に維持されるように、多糖類の質量が減少する、請求項60記載の方法。
【請求項62】
多糖類の少なくとも1つの活性が少なくとも部分的に維持され、かつ多糖類の少なくとも1つの他の活性が低下するように、多糖類の質量が減少する、請求項60記載の方法。
【請求項63】
多糖類を中和する段階をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項64】
多糖類の質量が、供給された多糖類の質量から少なくとも20 %減少する、請求項60記載の方法。
【請求項65】
多糖類の質量が、供給された多糖類の質量から少なくとも100 Daまたはそれ以上減少する、請求項60記載の方法。
【請求項66】
多糖類の正味の負または正味の正電荷が少なくとも30 %またはそれ以上低下する、請求項63記載の方法。
【請求項67】
多糖類が、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和される、請求項63記載の方法。
【請求項68】
多糖類の化学的特性に基づいて選択された少なくとも1つの試薬でポリペプチドを消化することにより、供給された多糖類の質量が減少する、請求項60記載の方法。
【請求項69】
試薬が酵素である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
ヘパリンがヘパリンリアーゼである、請求項69記載の方法。
【請求項71】
ヘパリンリアーゼが、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体からなる群より選択される、請求項70記載の方法。
【請求項72】
試薬が化学物質である、請求項68記載の方法。
【請求項73】
化学物質が、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、ならびにアルカリ処理によるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
多糖類がHLGAGである、請求項60記載の方法。
【請求項75】
以下の段階を含む、非侵襲性インビボ送達のためのヘパリンを調製するための方法:
ヘパリンを供給する段階;
ヘパリンについての化学的特性を測定する段階;および
ヘパリンの質量をその化学的特性に基づいて減少させ、それによりインビボ粘膜送達のためのヘパリンを調製する段階。
【請求項76】
ヘパリンの少なくとも1つまたは複数の活性が少なくとも部分的に維持または増強されるように、ヘパリンの質量が減少する、請求項75記載の方法。
【請求項77】
活性が、抗Xa活性、抗IIa活性、PF4活性もしくはHIT性向の他の測定、FGF-2活性、プロタミン中和の1つまたは複数である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
ヘパリンの少なくとも1つの他の活性が低下するように、ヘパリンの質量が減少する、請求項76記載の方法。
【請求項79】
PF4結合またはHIT性向の他の測定が低下する、請求項78記載の方法。
【請求項80】
ヘパリンを中和することをさらに含む、請求項75記載の方法。
【請求項81】
ヘパリンの質量が、供給されたヘパリンの質量から少なくとも10 %低下する、請求項75記載の方法。
【請求項82】
ヘパリンの質量が、供給されたヘパリンの質量から少なくとも100 Daまたはそれ以上低下する、請求項75記載の方法。
【請求項83】
ヘパリンがLMWHである、請求項75または80記載の方法。
【請求項84】
LMWHがエノキサパリン由来であり、かつ質量が約4100 Daまたはそれ未満であるように、エノキサパリンの質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項85】
LMWHがナドロパリン由来であり、かつ質量が約5900 Daまたはそれ未満であるように、ナドロパリンの質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項86】
LMWHがダルテパリン由来であり、かつ質量が約4700 Daまたはそれ未満であるように、ダルテパリンの質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項87】
LMWHがレビパリン由来であり、かつ質量が約5400 Daまたはそれ未満であるように、レビパリンの質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項88】
LMWHがパルナパリン由来であり、かつ質量が約6500 Daまたはそれ未満であるように、パルナパリンの質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項89】
LMWHがチンザパリン由来であり、かつ質量が約6000 Daまたはそれ未満であるように、チンザパリンの質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項90】
ヘパリンの正味の負または正味の正電荷が少なくとも10 %またはそれ以上低下する、請求項80記載の方法。
【請求項91】
ヘパリンが、0の正味の負および正味の正電荷があるように中和される、請求項80記載の方法。
【請求項92】
ヘパリンの化学的特性に基づいて選択される少なくとも1つの試薬でヘパリンを消化することにより、供給されたヘパリンの質量が減少する、請求項75記載の方法。
【請求項93】
試薬が酵素である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
酵素がヘパリンリアーゼである、請求項93記載の方法。
【請求項95】
ヘパリンリアーゼが、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、ならびにそれらの機能的活性断片および変異体からなる群より選択される、請求項94記載の方法。
【請求項96】
試薬が化学物質である、請求項92記載の方法。
【請求項97】
化学物質が、H2O2、またはCu+およびH2O2での酸化的脱重合、亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸での脱アミノ化切断、ならびにアルカリ処理によるヘパリンのベンジルエステルでのβ-脱離的切断からなる群より選択される、請求項96記載の方法。
【請求項98】
LMWHがエノキサパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが19.32/4200未満の電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項99】
LMWHがナドロパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが27.6/6000未満の電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項100】
LMWHがダルテパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが23/5000未満の電荷対質量比率をもつように、ダルテパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項101】
LMWHがレビパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつように、レビパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項102】
LMWHがパルナパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが30.4/6610未満の電荷対質量比率をもつように、パルナパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項103】
LMWHがチンザパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつように、チンザパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項83記載の方法。
【請求項104】
ヘパリンが、肺送達、経皮的送達、および粘膜送達からなる群より選択される非侵襲性送達のために調製される、請求項75記載の方法。
【請求項105】
請求項1または24記載の方法により作製された非侵襲性インビボ送達のための多糖類組成物。
【請求項106】
ヘパリンが、ヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ、ヘパリンの経口送達のための組成物。
【請求項107】
ヘパリンが、ヘパリンについての参照質量より少ない質量をもつ、請求項106記載の組成物。
【請求項108】
ヘパリンがLMWHである、請求項106または107記載の組成物。
【請求項109】
参照正味電荷がエノキサパリンの正味電荷である、請求項108記載の組成物。
【請求項110】
LMWHの正味電荷がエノキサパリンの正味電荷より少なくとも30 %少ない、請求項109記載の組成物。
【請求項111】
LMWHの正味電荷が18未満である、請求項110記載の組成物。
【請求項112】
参照質量がエノキサパリンの質量であり、LMWHの質量がエノキサパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項107記載の組成物。
【請求項113】
LMWHの質量が約4100 Daまたはそれ未満である、請求項112記載の組成物。
【請求項114】
ヘパリンが乾燥粒子製剤の状態である、請求項106記載の組成物。
【請求項115】
乾燥粒子が少なくとも5ミクロンまたはそれ以上の平均幾何学的直径をもつ、請求項114の組成物。
【請求項116】
ヘパリンが水性製剤の状態である、請求項106記載の組成物。
【請求項117】
電荷中和剤をさらに含む、請求項106記載の組成物。
【請求項118】
ヘパリンがヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ、ヘパリンおよび電荷中和剤を含む、ヘパリンの肺送達のための組成物。
【請求項119】
ヘパリンがヘパリンについての参照質量より少ない質量をもつ、請求項118記載の組成物。
【請求項120】
ヘパリンがLMWHである、請求項118または119記載の組成物。
【請求項121】
参照正味電荷がエノキサパリンの正味電荷である、請求項120記載の組成物。
【請求項122】
LMWHの正味電荷がエノキサパリンの正味電荷より少なくとも30 %少ない、請求項121記載の組成物。
【請求項123】
LMWHの正味電荷が18未満である、請求項121記載の組成物。
【請求項124】
参照質量がエノキサパリンの質量であり、かつLMWHの質量がエノキサパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項119記載の組成物。
【請求項125】
ヘパリンが乾燥粒子製剤の状態である、請求項118記載の組成物。
【請求項126】
ヘパリンが水性製剤の状態である、請求項118記載の組成物。
【請求項127】
電荷中和剤が対イオンである、請求項117または請求項118記載の組成物。
【請求項128】
対イオンが、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛からなる群より選択される、請求項127記載の組成物。
【請求項129】
電荷中和剤が遷移金属である、請求項117または118記載の組成物。
【請求項130】
遷移金属が、鉄、ニッケル、および銅からなる群より選択される、請求項129記載の組成物。
【請求項131】
電荷中和剤が、スペルミン、スペルミジン、低分子量プロタミン、および塩基性ペプチドからなる群より選択される、請求項117または118記載の組成物。
【請求項132】
組成物が活性薬剤をさらに含む、請求項106または118記載の組成物。
【請求項133】
活性薬剤とヘパリンが別個である、請求項132記載の組成物。
【請求項134】
ヘパリンが担体および活性薬剤である、請求項106または118記載の組成物。
【請求項135】
送達促進剤をさらに含む、請求項106または118記載の組成物。
【請求項136】
M405を含む粘膜送達のための組成物。
【請求項137】
M108を含む粘膜送達のための組成物。
【請求項138】
以下の段階を含む、スルホン化多糖類を対象へ送達するための方法:
治療的有効量におけるスルホン化多糖類を対象へ経口投与し、それにより、多糖類を対象へ送達する段階。
【請求項139】
スルホン化多糖類がヘパリンである、請求項138記載の方法。
【請求項140】
ヘパリンが未分画ヘパリンまたは分画ヘパリンである、請求項139記載の方法。
【請求項141】
ヘパリンが分画ヘパリンであり、かつ分画ヘパリンがLMWHである、請求項140記載の方法。
【請求項142】
LMWHが、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、パルナパリン、M118、M312、M405、M108、M115、およびM411からなる群より選択される、請求項141記載の方法。
【請求項143】
以下の段階を含む、対象への多糖類のインビボ送達のための方法:
請求項1または24記載の方法により作製された組成物の治療的有効量を対象へ投与し、それにより多糖類を対象へ送達する段階。
【請求項144】
以下の段階を含む、対象へのヘパリンの経口送達のための方法:
対象へヘパリンの治療的有効量を経口投与し、それにより対象へヘパリンを送達する段階であって、ヘパリンが、ヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ、段階。
【請求項145】
ヘパリンがLMWHである、請求項144記載の方法。
【請求項146】
参照正味電荷がエノキサパリンの正味電荷である、請求項145記載の方法。
【請求項147】
LMWHの正味電荷がエノキサパリンの正味電荷より少なくとも30 %少ない、請求項145記載の方法。
【請求項148】
LMWHの正味電荷が18未満である、請求項145記載の方法。
【請求項149】
ヘパリンが、ヘパリンについての参照質量より少ない質量をさらにもつ、請求項144記載の方法。
【請求項150】
ヘパリンがLMWHである、請求項149記載の方法。
【請求項151】
LMWHについての参照質量が、エノキサパリンの質量、ナドロパリンの質量、ダルテパリンの質量、レビパリンの質量、パルナパリンの質量、およびチンザパリンの質量からなる群より選択される、請求項150記載の方法。
【請求項152】
LMWHの質量がエノキサパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項151記載の方法。
【請求項153】
LMWHの質量がナドロパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項151記載の方法。
【請求項154】
LMWHの質量がダルテパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項151記載の方法。
【請求項155】
LMWHの質量がレビパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項151記載の方法。
【請求項156】
LMWHの質量がパルナパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項151記載の方法。
【請求項157】
LMWHの質量がチンザパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項151記載の方法。
【請求項158】
LMWHの質量が約4100 Daまたはそれ未満である、請求項151記載の方法。
【請求項159】
LMWHがエノキサパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが19.32/4200未満の電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項150記載の方法。
【請求項160】
LMWHがナドロパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが27.6/6000未満の電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項150記載の方法。
【請求項161】
LMWHがダルテパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが23/5000未満の電荷対質量比率をもつように、ダルテパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項150記載の方法。
【請求項162】
LMWHがレビパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつように、レビパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項150記載の方法。
【請求項163】
LMWHがパルナパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが30.4/6610未満の電荷対質量比率をもつように、パルナパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項150記載の方法。
【請求項164】
LMWHがチンザパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつように、チンザパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項150記載の方法。
【請求項165】
LMWHの治療的有効量が約2 mg/kgまたはそれ以上である、請求項158記載の方法。
【請求項166】
LMWHが、約1〜5時間の期間に渡って約0.25 IU/mlまたはそれ以上の胃腸管における吸収速度をもつ、請求項158記載の方法。
【請求項167】
LMWHの少なくとも5 %またはそれ以上が腸粘膜へ送達される、請求項158記載の方法。
【請求項168】
LMWHが、送達後2〜7時間以内にLMWHのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で腸粘膜へ送達される、請求項158記載の方法。
【請求項169】
LMWHの10 %またはそれ以上が送達後約2〜7時間以内に血液において検出可能である、請求項158記載の方法。
【請求項170】
LMWHの生物学的利用率が少なくとも約10 %またはそれ以上である、請求項158記載の方法。
【請求項171】
以下の段階を含む、対象へM405を送達するための方法:
対象へ治療的用量のM405を送達するための有効量においてM405を含む組成物を対象へ経口投与し、それにより対象へM405を送達する段階。
【請求項172】
以下の段階を含む、対象へM108を送達するための方法:
対象へ治療的用量のM108を送達するための有効量においてM108を含む組成物を対象へ経口投与し、それにより対象へM108を送達する段階。
【請求項173】
以下の段階を含む、対象へのヘパリンの肺送達のための方法:
対象の肺組織へ治療的有効量のヘパリンを投与し、それにより対象へヘパリンを送達する段階であって、ヘパリンがヘパリンについての参照正味電荷より少ない正味の負電荷をもつ、段階。
【請求項174】
ヘパリンがLMWHである、請求項173記載の方法。
【請求項175】
参照正味電荷がエノキサパリンの正味電荷である、請求項174記載の方法。
【請求項176】
LMWHの正味電荷がエノキサパリンの正味電荷より少なくとも30 %少ない、請求項175記載の方法。
【請求項177】
LMWHの正味電荷が18未満である、請求項176記載の方法。
【請求項178】
ヘパリンがヘパリンについての参照質量より少ない質量をさらにもつ、請求項173記載の方法。
【請求項179】
ヘパリンがLMWHである、請求項178記載の方法。
【請求項180】
LMWHについての参照質量がエノキサパリンの質量である、請求項179記載の方法。
【請求項181】
LMWHの質量がエノキサパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項180記載の方法。
【請求項182】
参照質量が、ナドロパリンの質量、ダルテパリンの質量、レビパリンの質量、パルナパリンの質量、およびチンザパリンの質量からなる群より選択される、請求項179記載の方法。
【請求項183】
参照質量がナドロパリンの質量であり、かつLMWHの質量がナドロパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項182記載の方法。
【請求項184】
参照質量がダルテパリンの質量であり、かつLMWHの質量がダルテパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項182記載の方法。
【請求項185】
参照質量がレビパリンの質量であり、かつLMWHの質量がレビパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項182記載の方法。
【請求項186】
参照質量がパルナパリンの質量であり、かつLMWHの質量がパルナパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項182記載の方法。
【請求項187】
参照質量がチンザパリンの質量であり、かつLMWHの質量がチンザパリンの質量より少なくとも30 Da少ない、請求項182記載の方法。
【請求項188】
LMWHの質量が約4100 Daまたはそれ未満である、請求項180記載の方法。
【請求項189】
LMWHがエノキサパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが19.32/4200未満の電荷対質量比率をもつように、エノキサパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項180記載の方法。
【請求項190】
LMWHがナドロパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが27.6/6000未満の電荷対質量比率をもつように、ナドロパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項180記載の方法。
【請求項191】
LMWHがダルテパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが23/5000未満の電荷対質量比率をもつように、ダルテパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項180記載の方法。
【請求項192】
LMWHがレビパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが25.3/5500未満の電荷対質量比率をもつように、レビパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項180記載の方法。
【請求項193】
LMWHがパルナパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが30.4/6610未満の電荷対質量比率をもつように、パルナパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項180記載の方法。
【請求項194】
LMWHがチンザパリンまたは未分画ヘパリン由来であり、かつLMWHが28.06/6100未満の電荷対質量比率をもつように、チンザパリンまたは未分画ヘパリンが中和され質量が減少する、請求項180記載の方法。
【請求項195】
LMWHが、約10分〜5時間の期間に渡って約0.25 IU/mlまたはそれ以上の肺組織における吸収速度をもつ、請求項174記載の方法。
【請求項196】
LMWHの少なくとも5 %またはそれ以上が肺組織へ送達される、請求項174記載の方法。
【請求項197】
LMWHの少なくとも2 %またはそれ以上が深肺へ送達される、請求項196記載の方法。
【請求項198】
LMWHが、送達後10分〜3時間以内にLMWHのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量で肺組織へ送達される、請求項174記載の方法。
【請求項199】
LMWHの2 %またはそれ以上が送達後約5分〜5時間以内に血液において検出可能である、請求項174記載の方法。
【請求項200】
治療的有効量が少なくとも20 mg/一息である、請求項174記載の方法。
【請求項201】
対象が、血栓症、循環器病、血管状態もしくは心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患もしくはアトピー性疾患のような炎症性疾患;アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、もしくは肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌もしくは転移性疾患;眼の血管新生性疾患、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病のような血管形成性疾患からなる群より選択される疾患に罹患しているもしくはその危険性がある、または、外科的処置、器官移植、整形外科手術、股関節置換、膝置換、骨折、例えば股関節骨折についての治療、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けている、もしくは受けた、請求項138〜200のいずれか一項記載の方法。
【請求項202】
以下の段階を含む、対象の肺系へのHLGAGの送達のための方法:
HLGAGの用量が、あらかじめ選択された治療効果を与えるのに有効であるHLGAGの皮下または静脈内用量より少なくとも2倍多い、対象においてあらかじめ選択された効果を与えるために対象の肺組織へHLGAGの治療的有効量を投与する段階。
【請求項203】
HLGAGが合成HLGAGである、請求項202記載の方法。
【請求項204】
合成HLGAGが合成五糖類である、請求項203記載の方法。
【請求項205】
合成五糖類がアリクストラである、請求項204記載の方法。
【請求項206】
あらかじめ選択された治療効果が抗Xa活性および抗IIa活性の1つまたは複数である、請求項202記載の方法。
【請求項207】
HLGAGが、HLGAGの治療的有効単位用量を供給する装置内にある、請求項202記載の方法。
【請求項208】
HLGAGが合成HLGAGであり、かつ治療的有効単位用量が約0.06 mg/kgまたはそれ以上である、請求項207記載の方法。
【請求項209】
HLGAGが合成HLGAGであり、かつ治療的有効単位用量が約8 mg/kgまたはそれ以上である、請求項207記載の方法。
【請求項210】
合成HLGAGがアリクストラまたはその誘導体である、請求項208または209記載の方法。
【請求項211】
合成HLGAGが図9に提供されている化合物およびそれらの誘導体の1つまたは複数である、請求項208または209記載の方法。
【請求項212】
HLGAGが合成HLGAGであり、かつ治療的有効単位用量が、送達後約5分〜約5時間以内にHLGAGのピーク血漿濃度を生じるのに有効な量である、請求項207記載の方法。
【請求項213】
合成HLGAGがアリクストラまたはその誘導体である、請求項212記載の方法。
【請求項214】
HLGAGが固体の形状である、請求項202記載の方法。
【請求項215】
HLGAGが、約10分〜5時間の期間に渡って少なくとも約0.25 IU/mlまたはそれ以上の肺組織における吸収速度をもつ、請求項202記載の方法。
【請求項216】
HLGAGが合成HLGAGである、請求項215記載の方法。
【請求項217】
合成HLGAGがアリクストラまたはその誘導体である、請求項216記載の方法。
【請求項218】
HLGAGの少なくとも5 %またはそれ以上が、肺の上部および/または下部気道へ送達される、請求項202記載の方法。
【請求項219】
HLGAGが合成HLGAGである、請求項218記載の方法。
【請求項220】
合成HLGAGがアリクストラまたはその誘導体である、請求項219記載の方法。
【請求項221】
HLGAGが組成物中にあり、かつ組成物が薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項202記載の方法。
【請求項222】
組成物が送達促進剤をさらに含む、請求項221記載の方法。
【請求項223】
対象が、血栓症、循環器病、血管状態もしくは心房性細動のような凝血に関連した疾患;偏頭痛、アテローム性動脈硬化症;自己免疫疾患もしくはアトピー性疾患のような炎症性疾患;アレルギー;喘息、気腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、もしくは肺再灌流傷害のような呼吸器疾患;癌もしくは転移性疾患;血管形成性疾患、心血管疾患、糖尿病、肥満症、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病からなる群より選択される疾患に罹患しているもしくはその危険性がある、または、外科的処置、器官移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節骨折についての治療、股関節置換、膝置換、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント設置、血管形成術、および冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受けることになっている、受けている、もしくは受けた、請求項202記載の方法。
【請求項224】
組成物があらかじめ選択された効果を与えうる合成HLGAGの治療的有効量を含み、該組成物があらかじめ選択された効果を与えうるHLGAGの皮下または静脈内送達として用いられる単位用量より少なくとも2倍多い単位用量においてHLGAGを送達する装置内にある、肺送達のための組成物。
【請求項225】
あらかじめ選択された治療効果が抗Xa活性および抗IIa活性の1つまたは複数である、請求項224記載の組成物。
【請求項226】
あらかじめ選択された治療効果を与えうるHLGAGの単位用量が少なくとも約0.05 mg/kgである、請求項224記載の組成物。
【請求項227】
あらかじめ選択された治療効果を与えうるHLGAGの単位用量が少なくとも約16 mgである、請求項224記載の組成物。
【請求項228】
合成HLGAGがアリクストラまたはその誘導体である、請求項226または227記載の組成物。
【請求項229】
合成HLGAGが図9の合成HLGAGおよびそれらの誘導体の1つまたは複数である、請求項226または227記載の組成物。
【請求項230】
あらかじめ選択された治療効果が抗Xa活性および抗IIa活性の1つまたは複数である、請求項228記載の組成物。
【請求項231】
あらかじめ選択された治療効果が抗Xa活性および抗IIa活性の1つまたは複数である、請求項229記載の組成物。
【請求項232】
界面活性剤をさらに含む、請求項224記載の組成物。
【請求項233】
請求項224、230、または231のいずれか一項記載の組成物を含む加圧容器またはディスペンサー。
【請求項234】
加圧容器またはディスペンサーが、適した噴霧剤および噴霧器の1つまたは複数を含む、請求項233記載の加圧容器またはディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−501815(P2006−501815A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−587335(P2003−587335)
【出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/013085
【国際公開番号】WO2003/090696
【国際公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(504346293)モメンタ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】