説明

精神医学的状態の処置のための、NMDAレセプターアンタゴニストと、抗うつ薬であるMAOインヒビターまたはGADPHインヒビターとの併用

大うつ病(特に、不応性うつ病、双極性うつ病、およびうつ病と関連する変質)の処置のための新規の療法および改善された療法を開発することに対する明らかな必要性が存在する。本発明は、うつ病のような精神医学的状態を処置するための、方法ならびにNMDAレセプターアンタゴニストおよび抗うつ薬を含む組成物に関する。本発明の組成物は、NMDAレセプターアンタゴニスト、抗うつ薬である第二の薬剤、および薬学的に適切なキャリアを含み、ここで、このNMDAレセプターアンタゴニストまたは第二の薬剤の少なくとも一方は、持続放出投与形態で提供される薬学的組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、うつ病のような精神医学的状態を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
周期的に起こる気分障害は、荒廃をもたらす長期的効果を有し得、ヒトの苦しみ、生産性、および健康管理の面から、これらの疾患による損失は甚大である。エピソード間の不完全な回復および全体的な機能の進行性の低下が観察されることから、長期的結果が多くの患者にとってしばしば以前に考えられていたよりもさらに好ましくないことが、現在認識される。実際、世界疾病負担調査(the Global Burden of Disease Study)によると、気分障害は、世界的な障害の主要な原因のうちにあり、将来においてますます増大する健康問題、社会的問題、および経済的問題を代表し得る。
【0003】
多くの抗うつ薬が、急性うつ病の処置のために現行で入手可能である。数十年前まで、三環系抗うつ薬(TCA)が、うつ病の処置のために入手し得る唯一の薬物であった。多数の新しい薬剤が、急速に立て続けに後を追った。それらの中でも、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)およびセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)は、現在広く使用されるものである。うつ病のための薬学的処置に対する選択肢は、過去数十年間にわたって外見上は指数関数的に増大しているが、現行の抗うつ治療用品は、効能および耐容性(tolerability)の両方の制限を有し続けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、大うつ病(特に、不応性うつ病、双極性うつ病、およびうつ病と関連する変質)の処置のための新規の療法および改善された療法を開発することに対する明らかな必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
概して、本発明は、CNS関連状態(例えば、精神医学的な障害および疼痛)を処置するための方法および組成物を必要とする被験体に、NMDAレセプターアンタゴニストおよび抗うつ薬(ADD)を含む組合せを投与することによって、そのCNS関連状態を処置するための方法および組成物を提供する。本明細書において記載される組合せの投与は、CNS関連状態と関連する症状またはCNS関連状態から発生する症状の緩和および予防をもたらす。CNS関連状態として、例えば、うつ病、双極性うつ病、不安性頭痛、疼痛、ニューロパシー、脳虚血(cereborischemia)、痴呆、運動障害、多発性硬化症、および他の精神医学的障害が挙げられるが、それらに限定されない。活性薬学的薬剤は、長期にわたるその活性薬剤の濃度の比の変動性を低下させる様式において、患者に投与され得、それによって、治療上の利益を最大限にする一方で副作用を最小限にし得る。本発明は、各々の薬剤と関連する有害作用を減少させるための用量最適化または放出の改変に向けられた、新規の組合せならびに組合せの処方物を提供することによって、先行の研究と異なる。
【0006】
NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両薬剤は、各々の治療上の利益を最大限にする一方で各々に関連する所望されない副作用を低下させるために、即時放出成分を含むかまたは含まない、制御放出形態または持続放出形態で提供され得る。これらの薬物が、制御放出成分または持続放出成分の利益なしで、経口形態で提供される場合、これらの薬物は、数分から数時間の時間をかけて放出されて、体液へと移送される。
【0007】
NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両薬剤は、代表的に被験体に投与される量と同様の量で投与され得る。必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両薬剤の量は、代表的に被験体に投与される量より多い量、もしくはより少ない量で投与され得る。例えば、患者の応答に(有害な効果を含め)正の影響を及ぼすために必要なメマンチンの量は、本明細書において記載される改善された処方を用いずに投与される代表的な10〜20mg/日ではなく、2.5〜80mg/日であり得る。本発明において、より高用量のNMDAレセプターアンタゴニストが、非ニューロパシー性疼痛のような状態に対して利用され得る一方、ADDと組み合わされる場合、より低用量のNMDAレセプターアンタゴニストは、患者に治療効果を達成するのに十分であり得る。必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニストおよびADDの両方の、単独療法として投与される場合の量に対して、より低い量またはより減少した量の各薬剤が、単位投与において利用される。
【0008】
本明細書中で使用される場合、「C」とは、患者サンプルのような生物学的サンプル(例えば、血液、血清、および脳脊髄液)における、活性薬学的成分の濃度を指す。生物学的サンプルにおける薬物の濃度は、当該分野において公知の任意の標準的アッセイ法によって決定され得る。用語「Cmax」とは、生物学的サンプル中の所与の用量の薬物によって達成される最大濃度を指す。用語「Cmean」とは、長期にわたるサンプル中の薬物の平均濃度を指す。CmaxおよびCmeanはさらに、薬物の投与に関する特定の期間を指すように定義され得る。特定の患者サンプル型において最大濃度(「Cmax」)に達するために必要な時間は、「Tmax」と称される。組み合わせる薬剤は、長期にわたる活性薬剤の濃度の割合の変動性を低下させ、したがって治療上の利益を最大限しながら、副作用を最小限にする処方で、投与される。
【0009】
所望される場合、非用量増大性の、1日2回または1日1回の形態で、投薬形態が提供される。このような場合、時間の関数としての濃度変化(「dC/dT」)が、薬物を用量増大する必要性を低下または排除するように変更されるように、濃度の傾斜(またはTmax効果)が低下され得る。dC/dTの低下は、例えば、相対的に比例する様式でTmaxを増加させることによって達成され得る。したがって、Tmax値の2倍の増加は、dC/dTを約1/2に減少させ得る。したがって、NMDAレセプターアンタゴニストは、即時放出(いわゆる、IR)投薬形態に対して有意に減少したdC/dTで、それに伴ってTmaxを遅延させた状態で、放出されるように、提供され得る。薬学的組成物は、24時間、16時間、8時間、4時間、2時間、または少なくとも1時間のTmaxのシフトを提供するように処方され得る。それに伴うdC/dTの減少は、約0.05倍、約0.10倍、約0.25倍、約0.5倍、または少なくとも0.8倍であり得る。特定の実施形態において、これは、30%未満、50%未満、75%未満、90%未満、または95%未満のNMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両方を、循環系または神経系へ一時間以内のそのような投与で放出することによって達成される。
【0010】
組み合わせにおける2つの薬剤の濃度の比は、「Cratio」と称される。これは、薬物の組み合わせが、放出、循環系またはCNSへ移送、代謝、および排出される場合に増減し得る。本発明の目的は、本明細書中において記載される組み合わせについてのCratioを安定化させることである。有益には、Cratioの変動性(「Cratio,var」と称される)は、可能な限り低くあるべきである。
【0011】
したがって、本発明は、各薬剤の別々の投与に伴う有害作用を減少させるための用量最適化または放出の改変のための、組み合わせの処方物に特徴を有する。NMDAレセプターアンタゴニストとADDとの組み合わせは、以下に記載されるように、相加的または相乗的な応答をもたらし得る。
【0012】
したがって、一局面において、本発明は、NMDAレセプターアンタゴニスト、抗うつ薬(ADD)である第二の薬剤、および必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、NMDAレセプターアンタゴニストまたは第二の薬剤のうちの少なくとも1つは、持続放出投薬形態で提供される。
【0013】
別の局面において、本発明は、CNS関連状態を予防または処置する方法を必要とする被験体に、NMDAレセプターアンタゴニストとADDである第二の薬剤とを含む治療有効量の組合せを投与することによって、そのCNS関連状態を予防または処置する方法に、特徴を有する。いくつかの実施形態において、この組み合わせ中の上記NMDAレセプターアンタゴニストまたは上記第二の薬剤のうちの少なくとも1つは、持続放出投薬形態で提供される。
【0014】
所望される場合、NMDAレセプターアンタゴニストは、同量のそのアンタゴニストの即時放出(IR)処方物について観察される速度よりも遅い速度で、被験体サンプル中に放出される。ここで、この放出速度は、IR処方物に対して、0〜Tmaxの期間内で規定される期間にわたるdC/dTとして測定され、このdC/dT速度は、IR処方物の速度の約80%未満である。いくつかの実施形態において、このdC/dT速度は、IR処方物についての速度の、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。同様に、ADDもまた、同量のIR処方物について観察される速度よりも遅い速度で、患者サンプル中に放出され得る。ここで、この放出速度は、IR処方物に対して、0〜Tmaxの期間内で規定される期間にわたるdC/dTとして測定され、このdC/dT速度は、IR処方物についての速度の、約80%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満)である。本発明の上記の局面の全てにおいて、所望される場合、薬学的組成物におけるNMDAレセプターアンタゴニストの少なくとも50%、少なくとも90%、少なくとも95%または本質的に全ては、制御放出投薬形態で提供され得る。いくつかの実施形態において、このNMDAレセプターアンタゴニストの少なくとも99%は、この薬学的組成物の被験体への導入の1時間後に、持続放出投薬形態のままである。このNMDAレセプターアンタゴニストは、このNMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された後、約2時間〜少なくとも8時間後まで、約2時間〜少なくとも12時間後まで、約2時間〜少なくとも16時間後まで、約2時間〜少なくとも24時間後まで、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3または約1.3未満のCmax/Cmeanを有し得る。
【0015】
本発明の上記の局面の全てにおいて、第二の薬剤がまた、制御放出投薬形態で提供され得る。したがって、ADDの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または本質的に全てが、制御放出投薬処方物として提供され得る。このように提供される場合、この第二の薬剤は、この第二の薬剤が被験体に導入された後、約2時間〜少なくとも6時間後まで、約2時間〜少なくとも8時間後まで、約2時間〜少なくとも12時間後まで、約2時間〜少なくとも16時間後まで、約2時間〜少なくとも24時間後まで、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3、または約1.3未満のCmax/Cmeanを有する。
【0016】
必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両薬剤のCratio.varは、この薬剤が定常状態に達した後において、または投与後の最初の24時間の間、100%未満(例えば、70%未満、50%未満、30%未満、20%未満、または10%未満)である。いくつかの実施形態において、このCratio.varは、投与後の最初の4時間、最初の6時間、最初の8時間、または最初の12時間にわたって、同じ活性薬学的成分のIR投与についてのCratio.varの約90%未満(例えば、約75%未満または約50%未満)である。
【0017】
本発明に従って処置され得るCNS関連状態は、精神医学的状態(例えば、発作、パニック症候群、一般的な不安障害、あらゆる型の恐怖症候群、躁病、不安、躁うつ病性障害、軽躁病、単極性うつ病、うつ病、双極性うつ病、ストレス障害、PTSD、身体表現性障害、人格障害、精神病、および統合失調症)、ならびに疼痛(例えば、急性疼痛、慢性疼痛、慢性ニューロパシー性疼痛)であり得る。
【0018】
本発明の組み合わせはまた、以下を含む他の障害の処置および予防のために有用である:頭痛、脳血管疾患、運動ニューロン疾患、痴呆、神経変性疾患、脳卒中、運動障害、失調性症候群(ataxic syndrome)、交感神経系の障害、頭部神経障害、ミエロパシー(myelopethies)、外傷性脳脊髄損傷、放射線脳傷害、多発性硬化症、髄膜炎後症候群(post−menengitis syndrome)、プリオン病(prion diseases)、脊髄炎、神経根炎、ニューロパシー、疼痛症候群、軸索性脳損傷、脳症、慢性疲労症候群、精神医学的障害、ならびに薬物依存。
【0019】
本発明の上記の局面の全てにおいて、NMDAレセプターアンタゴニストは、以下のアミノアダマンチン誘導体であり得る:メマンチン(1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン)、リマンタジン(1−(1−アミノエチル)アダマンタン)、またはアマンタジン(1−アミノ−アダマンタン)であり得る。第二の薬剤は、GABAトランスアミナーゼ(transmaminase)インヒビター、GABA再(取り込み)インヒビター、カルボニックアンヒドラーゼインヒビター、ベンゾジアゼピン、またはナトリウムチャネルインヒビターであり得る。あるいは、第二の薬剤は、例えば、セロトニン再取り込みを遮断する薬剤(SSRI)、セロトニンおよびノルエピネフリンの両方を遮断する薬剤(SNRI)、ドーパミンレセプターに作用する薬剤またはドーパミンの再取り込みを遮断する薬剤(TCA、他)を含む抗うつ薬であり得る。例示的な抗うつ薬は、SSRI(例えば、フルオキセチン(fluoxetine)/PROZACTM、シタロプラム(citalopram)およびエスシタロプラム(escitalopram)/CELEXATMおよびLEXAPROTM、セルトラリン/ZOLOFTTM、パロキセチン/PAXILTM)、SNRI(例えば、デュロキセチン(duloxetine)/CYMBALTATM、およびベンラフェキシン(venlafaxine)/EFFEXORTM)、TCA(例えば、デシプラミン/NORPRAMINTM、イミプラミン/TOFRANILTM、クロミプラミン(cloimipramine)/ANAFRANILTM、ノルトリプチリン(nortrytptline)/PAMELORTM、およびアミトリプチリン/ELAVILTM)、ブプロピオン/WELLBUTRINTM、ならびにブスピロン/BUSPARTMである。従って、NMDAアンタゴニストは、メマンチンであり得、一方で第二の薬剤は、フルオキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、デュロキセチン、またはパロキセチンであり得る。
【0020】
NMDAレセプターアンタゴニスト、第二の薬剤、または両薬剤は、経口送達、非経口送達、直腸送達、口腔送達、経皮パッチ送達、経鼻送達、局所送達、部分局所(subtopical)送達、経上皮送達、皮下送達、または吸入送達のために処方される。したがって、本明細書において記載される薬剤は、懸濁液、カプセル、錠剤、坐剤、ローション、パッチ、またはデバイス(例えば、皮下に埋め込み可能な、送達デバイスまたは吸入ポンプ)として処方される。所望される場合、NMDAアンタゴニストおよびADDは、単一の組成物中で混合され得る。あるいは、この2つの薬剤は、別々の処方物中で、連続的に、または互いに1時間以内、2時間以内、3時間以内、6時間以内、12時間以内、または24時間以内に送達される。別々に投与される場合、この2つの薬剤は、同じ投与経路または異なる投与経路によって、1日3回、1日2回、1日1回、またはさらに、2日に1回、投与され得る。
【0021】
必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニストおよび第二の薬剤は、単位投薬形態で提供される。
【0022】
所望される場合、薬学的組成中のNMDAレセプターアンタゴニストの量は、このNMDAレセプターアンタゴニストが第二の薬剤の非存在下で投与される場合にCNS関連状態の処置に対して同じ治療効果を得るために単位用量において必要とされるNMDAレセプターアンタゴニストの量よりも、少ない。あるいは、薬学的組成物中の第二の薬剤の量は、この第二の薬剤がNMDAレセプターアンタゴニストの非存在下で投与される場合にCNS関連状態の処置に対して同じ治療効果を得るために単位用量において必要とされる第二の薬剤の量よりも、少ない。必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニストは、NMDAレセプターアンタゴニストが第二の薬剤の非存在下でヒト被験体に投与された場合に、このヒト被験体に対して毒性である用量で薬学的組成物中に存在する。所望される場合、第二の薬剤は、第二の薬剤がNMDAレセプターアンタゴニストの非存在下でヒト被験体に投与された場合に、このヒト被験体に対して毒性である用量で薬学的組成物中に存在する。
【0023】
別に規定されない限り、本明細書において使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料が、本発明の実施および試験において使用され得るが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書において記述される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が、本明細書において参考として援用される。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、ただの説明であり、限定することを意図されない。全ての部およびパーセンテージは、別に特定されない限り、重量によるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、CNS関連状態を処置または予防するための方法および組成物を提供する。CNS関連状態として、以下のものが挙げられる:精神医学的障害(例えば、パニック症候群、一般的な不安障害、あらゆる型の恐怖症候群、躁病、躁うつ病性障害、軽躁病、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、PTSD、身体表現性障害、人格障害、精神病、および統合失調症)、ならびに薬物依存(例えば、アルコール、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、スピード、メス(meth))、オピオイド、およびニコチン)、てんかん、頭痛、急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー、脳虚血(cereborischemia)、痴呆、運動障害、ならびに多発性硬化症。組合せは、NMDAレセプターアンタゴニストである第一の成分および抗うつ薬(ADD)である第二の成分を含む。この組合せは、症状が緩和または予防されるように投与されるか、あるいは、CNS関連状態の進行が軽減されるように投与される。望ましくは、これらの2つの薬剤のいずれか、または両方の薬剤までもが、持続放出のために処方され、それによって、所望の期間にわたって、治療効果を有するために十分に高いが、被験体におけるいずれかの成分の過剰なレベルに関連する有害事象を避けるために十分に低い、濃度および最適な濃度比を提供する。
【0025】
(NMDAレセプターアンタゴニスト)
任意のNMDAレセプターアンタゴニスト(特に、本発明の組み合わせにおいて使用される場合に非毒性であるNMDAレセプターアンタゴニスト)は、本発明の方法および組成物において使用され得る。用語「非毒性」は、相対的な意味で使用され、ヒトへの投与に関して米国食品医薬品局(「FDA」)によって承認されているか、または確立された規制基準および実施に沿って、ヒトもしくは動物への投与に関してFDAもしくはいずれかの国の同様の監督官庁による承認が可能な、任意の物質を示すことを意図される。
【0026】
NMDAレセプターアンタゴニストは、アミノアダマンタン化合物であり得る。この化合物としては、例えば、メマンチン(1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン)、リマンタジン(1−(1−アミノエチル)アダマンタン)、アマンタジン(1−アミノ−アダマンタン)、およびそれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。メマンチンは、例えば、米国特許第3,391,142号、同第5,891,885号、同第5,919,826号、および同第6,187,338号に記載されている。アマンタジンは、例えば、米国特許第3,152,180号、同第5,891,885号、同第5,919,826号、および、同第6,187,338号に記載されている。さらなるアミノアダマンタン化合物は、例えば、米国特許第4,346,112号、同第5,061,703号、同第5,334,618号、同第6,444,702号、同第6,620,845号、および同第6,662,845号に記載されている。これらの特許の全ては、本明細書によって参考として援用される。
【0027】
利用され得るさらなるNMDAレセプターアンタゴニストとしては、例えば、以下のものが挙げられる:ケタミン、エリプロデイル、イフェンプロジル、ジゾシルピン(dizocilpine)、レマセミド、イアモトリジン(iamotrigine)、リルゾール、アプチガネル、フェンシクリジン、フルピルチン、セルフォテル(celfotel)、フェルバメート、ネラメキサン、スペルミン、スペルミジン、レベモパミル、デキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、およびその代謝産物、デキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、ネラメキサン、それらの薬学的に受容可能な塩もしくはエステル、または前述のいずれかの代謝前駆体。
【0028】
NMDAレセプターアンタゴニストは、即時放出(いわゆる、IR)投薬形態に対して、有意に低下したdC/dTで(付随するTmaxの遅延を伴って)放出されるように、提供され得る。薬学的組成物は、24時間まで、16時間まで、8時間まで、4時間まで、2時間まで、または少なくとも1時間までのTmaxのシフトを提供するように処方され得る。付随するdC/dTの低下は、約0.05倍、約0.10倍、約0.25倍、約0.5倍、または少なくとも0.8倍までであり得る。さらに、NMDAレセプターアンタゴニストは、NMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された約2時間後から、少なくとも8時間まで、少なくとも12時間まで、少なくとも16時間まで、少なくとも24時間までの間、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3、または約1.3未満のCmax/Cmeanを生じる速度で放出されるように提供され得る。薬学的組成物は、1mg/日〜80mg/日の間、5mg/日〜40mg/日の間、または10mg/日〜20mg/日の間の範囲にわたる量のメマンチン;25mg/日〜500mg/日の間、25mg/日〜300mg/日の間、または100mg/日〜300mg/日の間の範囲にわたる量のアマンタジン;1mg/日〜5000mg/日の間、1mg/日〜1000mg/日の間、100mg/日〜800mg/日の間、または200mg/日〜500mg/日の間の範囲にわたる量のデキストロメトルファンを提供するように処方され得る。小児の用量は、代表的には、成人に対して決定された量より少ない。代表的な用量は、PDRにおいて当業者によって見出され得る。
【0029】
表1は、メマンチン、アマンタジン、およびリマンタジンについての例示的薬物動態特性(例えば、TmaxおよびT1/2)を示す。
【0030】
(表1.選択されたNMDArアンタゴニストについての、ヒトにおける薬物動態およびTox)
【0031】
【表1】

(抗うつ薬(ADD))
適切な抗うつ薬として、例えば、セロトニン再取り込みを遮断する薬剤(SSRI)、セロトニンおよびノルエピネフリンの両方を遮断する薬剤(SNRI)、ドーパミンレセプターに作用する薬剤またはドーパミンの再取り込みを遮断する薬剤(TCA、他)が挙げられる。例示的な抗うつ薬は、SSRI(例えば、フルオキセチン/PROZACTM、シタロプラムおよびエスシタロプラム/CELEXATMおよびLEXAPROTM、セルトラリン/ZOLOFTTM、パロキセチン/PAXILTM)、SNRI(例えば、デュロキセチン/CYMBALTATM、およびベンラフェキシン/EFFEXORTM)、TCA(例えば、デシプラミン/NORPRAMINTM、イミプラミン/TOFRANILTM、クロミプラミン(cloimipramine)/ANAFRANILTM、ノルトリプチリン(nortrytptline)/PAMELORTM、およびアミトリプチリン/ELAVILTM)、ブプロピオン/WELLBUTRINTM、ならびにブスピロン/BUSPARTMである。通常の治療的用量は、Physician desk reference(PDR)において見出され得、以下に表される。
【0032】
(表2.選択された抗うつ薬についての、ヒトにおける薬物動態およびTox)
【0033】
【表2】

本明細書において開示される特定の組み合わせに加えて、第一のNMDArアンタゴニストとADDとから作られる組み合わせは、選択されたNMDArアンタゴニストと1つ以上のADDとの試験組み合わせの、CNS関連障害の症状を緩和させる能力を、試験することによって同定され得る。好ましい組み合わせは、各薬剤が別個に試験された場合に同じ抗うつ効果を得るために必要とされる同量のNMDAレセプターアンタゴニストおよび/またはADDに対して、これらのNMDAレセプターアンタゴニストおよび/またはADDのより低い治療有効量が存在することを示す組み合わせである。
【0034】
NMDAレセプターアンタゴニストおよびADDの量および割合は、治療上の利益を最大限にし、かつ毒性もしくは安全上の懸念を最小限にするために、都合よく変化される。NMDAレセプターアンタゴニストは、その通常の有効量の20%〜200%の間の範囲に及び得、そしてADDは、その通常の有効量の20%と200%との間の範囲に及び得る。正確な割合は、処置されるべき状態に従って変動し得る。一例において、メマンチンの量は、2.5mg/日と40mg/日との間の範囲に及び、そしてデュロキセチンの量は、10mg/日と60mg/日との間の範囲に及ぶ。
【0035】
本明細書において開示される特定の組み合わせに加えて、NMDAレセプターアンタゴニスト(例えば、アミノアダマンタン化合物)とADDとから作られた組み合わせは、試験組み合わせの、CNS関連障害の症状を緩和させる能力を試験することによって同定され得る(実施例1および2を参照のこと)。
【0036】
特定の範囲については、医師または他の適切な医療従事者は、代表的に、所与の患者に対して、その患者の性別、年齢、体重、病理学的状態、および他のパラメータに従って、最良の投薬量を決定する。いくつかの症例では、患者を処置するために、薬のパッケージ挿入物に記述されている範囲外の投薬量を使用することが必要であり得る。これらの症例は、処方する医師または獣医にとって明らかである。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明の組み合わせは、治療レベルを達成し、一方で、即時放出処方物に通常伴う衰弱性の副作用を最小限にする。さらに、ピーク血漿レベルを得るための時間の遅延、および、治療的に有効な血漿レベルにある期間が潜在的に長期であることの結果として、投薬頻度は、例えば、1日1回または1日2回の投薬に減少され得、これによって、患者のコンプライアンスおよび指示順守度が改善する。
【0038】
したがって、本発明の組み合わせは、NMDAレセプターアンタゴニストおよびADDを、両薬剤の効力を改善し、かつ所望されない副作用を回避する組み合わせで投与することを可能にする。例えば、NMDAレセプターアンタゴニストの投与に伴う精神および認知の欠損を含む副作用は、Tmaxをより長期にシフトさせ、それによって薬物のdC/dTを低下させる制御放出法の使用を介して、重篤度および頻度が減少され得る。薬物のdC/dTを低下させることは、Tmaxを増加させるだけでなく、Tmaxにおける薬物濃度を低下させ、Cmax/Cmean比を低下させて、所与の期間にわたって、処置される被験体に、より一定な量の薬物を提供し、そして投与に伴う有害事象を減少させる。同様に、やはり制御放出法を介して、ADDの使用に伴う副作用の重症度および頻度が減少され得る。
【0039】
特定の実施形態において、上記の組み合わせは、相加的効果を提供する。この相加性は、活性薬剤を組み合わせることによって、制御放出技術を必要とすることなく達成される。他の実施形態において、特に、併用される活性薬物成分の薬物動態プロフィールが同様でない場合、制御放出処方物は、活性薬剤の薬物動態を最適化して、長期にわたるCratioの変動性を低下させる。規定される期間にわたるCratio変動性の低下は、その時間にわたるそれらの薬剤の効果の協調を可能にし、組み合わせの有効性を最大限にする。Cratio変動性(「Cratio.var」)は、所与の期間にわたって得られる一連のCratioの標準偏差を、それらのCratioの平均で割り、100%を乗算したものとして定義される。図2A〜2Dおよび表3で示されるように、制御放出処方物のCratioは、任意の有意な期間(投与直後および定常状態を含む)にわたる同じ薬剤のIR投与よりも一定している。この図に含まれるデータを、以下の表にまとめる。
【0040】
(表3.即時放出(IR)投与および制御放出(CR)処方物におけるメラマンチンおよびデュロキセチンのCratioならびにCratio,varデータ)
【0041】
【表3】

(投与様式)
本発明の組み合わせは、局所様式もしくは全身様式のいずれかで、またはデポー形式もしくは徐放形式のいずれかで、投与され得る。好ましい実施形態において、NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両薬剤は、(本明細書において記載されるような)制御された持続放出を提供するように処方され得る。例えば、NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両方の制御放出を提供する薬学的組成物は、所望の薬剤(単数もしくは複数)と、被験体に投与される場合に、各々の薬剤を特定の期間、目標の速度で放出させる1種以上のさらなる成分とを組み合わせることによって、調製され得る。これらの薬剤は、好ましくは、経口形態、経皮形態または鼻腔内形態で送達され得る。
【0042】
上記の2つの成分は、好ましくは、組み合わせ中の第一および第二の成分からの所望の効果を提供する様式で投与される。必要に応じて、この第一および第二の薬剤は、被験体に導入される前に、単一の処方物に混合される。この組み合わせは、都合良くは、適切な量の第一および第二の薬剤を含む単位用量に細分され得る。単位投薬形態は、例えば、カプセルまたは錠剤そのものであり得るか、または適切な数のこのような組成物の梱包された形態であり得る。単位投薬形態中の活性成分の量は、処置される条件の特定の必要性に従って、変化され得るかまたは調節され得る。
【0043】
あるいは、組み合わせ中のNMDAレセプターアンタゴニストおよびADDは、それらが被験体に導入されるまで混合されなくともよい。したがって、用語「組み合わせ」は、NMDAレセプターアンタゴニストおよびADDが別々の処方物中に提供されて、連続的に投与される実施形態を包含する。例えば、NMDAレセプターアンタゴニストとADDとは、互いに、2日以内、1日以内、18時間以内、12時間以内、1時間以内、半時間以内、15分以内、または15分未満の時間内で、別々に被験体に投与され得る。各薬剤は、被験体に別々に投与される複数の単一のカプセルまたは錠剤で提供され得る。あるいは、NMDAレセプターアンタゴニストとADDとは、薬学的組成物中で互いに分離され、したがって、それらは、この薬学的組成物が被験体に導入されるまで混合されない。この混合は、被験体への投与直前に起こっても、被験体へこの組み合わせを投与するずっと前に起こってもよい。
【0044】
所望される場合、NMDAレセプターアンタゴニストとADDとは、他の治療様式(例えば、薬物処置レジメン、外科的処置レジメン、または他の介入処置レジメン)と共に被験体に投与され得る。この組み合わせが非薬物処置を含む場合、この非薬物処置は、組合せと他の治療様式との共作用からの有益な効果が達成される限り、任意の適切な時間に実行され得る。例えば、適切な場合、この有益な効果は、治療剤の投与から非薬物処置が一時的に除かれる場合(おそらく、数日または数週間まで)でも、なお達成される。
【0045】
(特定の投与経路のための処方物)
組み合わせは、特定の型の送達に対して最適化される薬学的組成物として提供され得る。例えば、経口送達のための薬学的組成物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアを使用して処方される。このキャリアは、組み合わせ中の薬剤が、例えば、被験体による経口摂取のための、錠剤、丸剤、カプセル、液剤、懸濁液、徐放性処方物;散剤、液体、またはゲルとして処方されることを可能にする。
【0046】
あるいは、本発明の組成物は、多くのストラテジー(米国特許第5,186,938号、同第6,183,770号、同第4,861,800号、およびWO 89/09051に記載されるものが挙げられる)を介して経皮的に投与され得る。パッチの形態において組み合わせの薬物を提供することは、これらの薬剤が比較的高い皮膚流動性を有することを考慮すると、特に有用である。
【0047】
NMDAレセプターアンタゴニストおよび/または第二の薬剤の組み合わせを含む薬学的組成物はまた、加圧パックおよび噴霧器から、または乾燥粉末吸入器からのエアロゾルスプレー調製物で送達され得る。噴霧器において使用され得る適切な噴霧剤としては、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、および二酸化炭素が挙げられる。投薬量は、加圧エアロゾルの場合、規定された量の化合物を送達するための弁を提供することによって決定され得る。
【0048】
吸入またはガス注入のための組成物としては、薬学的に受容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。液体組成物もしくは固体組成物は、上記のような、適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。好ましくは、この組成物は局所作用および全身性作用のための、経口経路、鼻腔内経路、または呼吸経路によって投与される。好ましくは滅菌の薬学的に受容可能な溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧デバイスから直接的に吸い込まれ得るか、または噴霧デバイスは、フェイスマスク、テント、または間欠性の陽圧呼吸器に取り付けられ得る。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、適切な様式で処方物を送達するデバイスから、好ましくは経口的もしくは経鼻的に、投与され得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、例えば、組成物は、CNSへの嗅覚経路を通って活性薬剤の移送を可能にする吸入によるのではなく、篩板へと、鼻腔内的に投与され得、そして全身投与を減少させる。この投与経路のために一般的に使用されるデバイスは、米国特許第6,715,485号に包含される。この経路を介して送達される組成物は、CNS用量の増加、または特定の薬物に関連する全身性の毒性の危険性を低下させる総身体負荷量の低下を可能にし得る。
【0050】
他の投与様式に適切なさらなる処方物としては、直腸カプセルまたは坐剤が挙げられる。坐剤については、伝統的な結合剤およびキャリアとしては、例えば、ポリアルキレングリコールもしくはトリグリセリドが挙げられ得る;このような坐剤は、0.5%〜10%(好ましくは1%〜2%)の範囲で活性成分を含む混合物から形成され得る。
【0051】
組み合わせは、必要に応じて、継続的な長期送達を提供する管での送達のため(例えば、30日まで、60日まで、90日まで、180日まで、または1年までの送達のため)に処方され得る。例えば、この管は、生体適合性の材料(例えば、チタン)で提供され得る。長期送達処方物は、慢性状態を有する被験体において、改善された患者のコンプライアンスを確実にするために、および組み合わせの安定性を増強するために、特に有用である。
【0052】
継続的な長期送達のための処方物は、例えば、米国特許第6,797,283号、同第6,764,697号、同第6,635,268号、および同第6,648,083号において提供されている。
【0053】
所望される場合、組み合わせは、キットで提供され得る。このキットは、このキットを使用するための指示書をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、1つ以上の容器中にNMDAレセプターアンタゴニストを含み、そして別個に、1つ以上の容器中に、ADDを含む。他の実施形態において、このキットは、1つ以上の容器中において混合されているNMDAレセプターアンタゴニストとADDとの組み合わせを提供する。このキットは、痴呆に関連する状態を処置するための、治療有効用量の薬物を含む。
【0054】
NMDAレセプターアンタゴニスト、ADD、または両薬剤は、制御された持続放出形態で提供され得る。一例において、少なくとも50%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに99%を超えるNMDAレセプターアンタゴニストが、持続放出投薬形態で提供される。放出プロフィール(すなわち、所望の時間にわたるNMDAレセプターアンタゴニストまたはADDの放出の長さ)は、都合良くは、所与の急性もしくは慢性定常状態血清濃度プロフィールを達成するための所望の時間範囲についてのCmax/Cmeanを計算することによって、所与の時間について決定され得る。従って、被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)への投与に際して、NMDAレセプターアンタゴニストは、このNMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された約2時間後から、少なくとも8時間まで、少なくとも12時間まで、少なくとも16時間まで、少なくとも24時間までの間、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3、または約1.3未満のCmax/Cmeanを有する。所望される場合、NMDAレセプターアンタゴニストの放出は、単相性または多相性(例えば、二相性)であり得る。さらに、ADDは、持続放出組成物として処方され得、NMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された約2時間後から、少なくとも8時間まで、少なくとも12時間まで、少なくとも16時間まで、少なくとも24時間までの間、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3、または1.3未満のCmax/Cmeanを有する。当業者は、NMDAレセプターアンタゴニストおよびADD、ならびに当該分野で公知の処方方法もしくは下記の処方方法を使用して、所望の放出プロフィールを有する組み合せを調製し得る。
【0055】
表1および表2に示されるように、上記薬物分類の両方の薬物動態特性は、約3時間〜60時間超で変動する。したがって本発明の一局面は、長期(好ましくは、8時間〜24時間)にわたってほぼ一定の濃度プロフィールを達成し、それによって両成分を短期間の投与および長期の投与の両方についての最適な治療上の利益のための一定の比率および濃度に維持する、適切な処方物を選択することである。好ましいCratio.var値は、約100%、約70%、約50%、約30%、約20%、約10%未満である。好ましいCratio.var値は、投与後最初の4時間、6時間、8時間、12時間にわたって、同じ活性薬学的成分のIR投与のCratio.var値の約10%、約20%、約30%、約50%、約75%、または約90%未満であり得る。
【0056】
この一定な計測可能なプロフィールを送達する処方物はまた、多様な排出半減期を有する薬物についての、長期の比率から所望の短期間の比率までの単相性の勾配を達成することを可能にする。この型の組成物、およびこれらの組成物を用いて患者を処置する方法は、本発明の実施形態である。以下に記載されるように、所望の放出プロフィールを達成するための多数の方法が存在する。
【0057】
第一の成分、第二の成分、または両成分が持続放出処方物中に提供される組み合せを調製するための適切な方法としては、米国特許第4,606,909号(本明細書によって参考として援用される)に記載される方法が挙げられる。この参考文献は、複数の個別にコーティングもしくはマイクロカプセル化された単位が、動物の胃の中でのこの処方物(例えば、丸剤もしくは錠剤)の崩壊によって利用可能になる、制御放出複数単位処方物を記載する(例えば、第3段第26行〜第5段第10行、および第6段第29〜第9段第16行を参照のこと)。これらの個別にコーティングもしくはマイクロカプセル化された単位の各々は、多少溶けにくい活性物質の粒子を含む、断面が実質的に均一なコアを含む。これらのコアは、胃の条件に実質的に耐性であるが小腸内に行き渡る条件下では侵食され得るコーティングで、覆われている。
【0058】
組み合わせは、あるいは、例えば米国特許第4,769,027号に開示される方法を使用して処方され得る。したがって、持続放出処方物は、NMDAレセプターアンタゴニストを含む水浸透性のポリマーマトリックスでコーティングされ得、次に、内部に水溶性の粒子状の孔形成材料を分散させた状態で含む水透過性のフィルムでさらにコーティングされ得る、薬学的に受容可能な材料(例えば、糖/デンプン、塩、および蝋)の丸剤を含む。
【0059】
この組み合わせの一方または両方の成分は、さらに、米国特許第4,897,268号に記載されるように調製され得る。この特許は、生体適合性の、生分解性マイクロカプセル送達システムに関する。したがって、NMDAレセプターアンタゴニストは、ある量のメマンチンを、例えば、種々の速度で生分解する種々のコポリマー賦形剤中に個別にマイクロカプセル化することによって得られる自由流動性球状粒子のブレンドを含む組成物として処方され得、したがって、所定の速度で循環中にメマンチンを放出する。これらの粒子の量は、コア活性成分が投与後迅速に放出され、したがって初期の間に活性成分を送達するようなコポリマー賦形剤の量であり得る。粒子の第二の量は、カプセル化された成分の送達が、初期量の送達の低下し始める時に開始するような型の賦形剤の量である。成分の第三の量は、第二の量の送達が低下し始める時に送達開始する、さらに異なる賦形剤でマイクロカプセル化され得る。送達の速度は、例えば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)カプセル化におけるラクチド/グリコリド比を変動させることによって変更され得る。使用され得る他のポリマーとしては、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、およびこれらのコポリマー、ポリカーボネート、ポリヒドロキシブチレートおよびこれらのコポリマー、ポリマレアミド、コポリアキサレート(copolyaxalate)、ならびに多糖類が挙げられる。
【0060】
あるいは、組み合わせは、米国特許第5,395,626号に記載されるように調製され得る。この特許は、多層の制御放出薬物投薬形態に特徴を有する。この投薬形態は、複数のコーティングされた粒子を含み、この粒子の各々は、NMDAレセプターアンタゴニストおよび/またはADDを含むコアの周囲に複数の層を有する。これによって、コアおよび少なくとも1つの他の薬物活性層を含む薬物は、制御放出障壁層でさらにコーティングされ、それによって、この多層コーティング粒子から、少なくとも2層の水溶性薬物の制御放出層を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される組み合わせの第一の成分および第二の成分は、単一または別個の薬学的組成物内に提供される。「薬学的または薬理学的に受容可能」とは、必要に応じて動物またはヒトに投与された場合に、有害反応、アレルギー性反応、または他の都合の悪い反応を生じない分子実体および組成物を包含する。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または因子が活性成分と非適合性である場合を除いて、治療組成物においてその使用が企図される。補足的な活性成分がまた、この組成物に組み込まれ得る。「薬学的に受容可能な塩」は、酸付加塩を含み、これは、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される。遊離カルボキシル基によって形成される塩はまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から得られ得る。
【0062】
薬学的組成物または薬理学的組成物の調製は、本開示を考慮すれば、当業者に公知である。処方および投与のための一般的技術は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版」(Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)に見出される。錠剤、カプセル、丸剤、散剤、顆粒、糖剤、ゲル、スラリー、軟膏、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾルは、このような処方物の例である。
【0063】
例として、当該分野で公知のさらなる方法を使用して、持続放出性経口処方物が調製され得る。例えば、活性薬学的成分のいずれかまたは両方の適切な持続放出形態は、マトリックス錠剤組成物であり得る。適切なマトリックス形成材料としては、例えば、以下が挙げられる:蝋(例えば、カルナウバ蝋、蜜蝋、パラフィンワックス、セレシン(ceresine)、シェラックワックス、脂肪酸、および脂肪アルコール)、油、硬化油、または脂肪(例えば、硬化菜種油、ヒマシ油、牛脂、パーム油、およびダイズ油)、およびポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコール)。他の適切なマトリックス錠剤形成材料は、微結晶性セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース(他のキャリアおよび充填剤を含む)である。錠剤はまた、顆粒化(granulates)、コーティングされた粉末、またはペレットを含み得る。錠剤はまた、多層であり得る。多層化された錠剤は、その活性成分が大きく異なる薬物動態プロフィールを有する場合、特に好ましい。必要に応じて、完成した錠剤は、コーティングされていてもされていなくてもよい。
【0064】
コーティング組成物は、代表的に、不溶性のマトリックスポリマー(コーティング組成物の約15重量%〜85重量%)、および水溶性材料(例えば、コーティング組成物の約15重量%〜85重量%)を含む。必要に応じて、腸溶性ポリマー(コーティング組成物の約1重量%〜99重量%)が使用され得るか、または含まれ得る。適切な水溶性材料としては、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、および糖(例えば、ラクトース、スクロース、フルクトース、マンニトールなど)のようなモノマー材料、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)、有機酸(例えば、フマル酸、コハク酸、乳酸、および酒石酸)、ならびにこれらの混合物が挙げられる。適切な腸溶性ポリマーとしては、カルボキシル基を含有する、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタレート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、トリメリト酸セルロースアセテート、シェラック、ゼイン、およびポリメタクリレートが挙げられる。
【0065】
コーティング組成物は、コーティングブレンドの特性(例えば、主成分もしくは成分の混合物のガラス遷移温度、またはコーティング組成物を適用するために使用される溶媒)に従って、可塑化され得る。適切な可塑化剤は、コーティング組成物の0重量%〜50重量%で添加され得、そして、例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸エステル、ポリエチレングリコール、グリセロール、アセチル化グリセリド、アセチル化クエン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびヒマシ油を含み得る。所望される場合、コーティング組成物は、充填剤を含み得る。充填剤の量は、コーティング組成物の総重量に基づいて1重量%〜約99重量%であり得、そして不溶性材料(例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、滑石、カオリン、アルミナ、デンプン、粉末セルロース、MCC、またはポラクリリンカリウム(polacrilin potassium))であり得る。
【0066】
コーティング組成物は、有機溶媒もしくは水性溶媒またはそれらの混合物中の溶液もしくはラテックスとして、適用され得る。溶液が適用される場合、溶媒は、溶解された固体の総重量に基づいて、約25重量%〜約99重量%までの量で存在し得る。適切な溶媒は、水、低級アルコール、低級塩素化炭化水素、ケトン、またはそれらの混合物である。ラテックスが適用される場合、溶媒は、ラテックス中のポリマー材料の量に基づいて、約25重量%〜約97重量%までの量で存在する。溶媒は、主に水であり得る。
【0067】
本明細書において記載される薬学的組成物はまた、キャリア(例えば、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤)を含み得る。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野で周知である。薬学的に受容可能な塩(例えば、鉱物塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩)、ならびに有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩))もまた、この組成物に使用され得る。組成物はまた、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール)、ならびに、浸潤剤、乳濁剤、またはpH緩衝化剤のような物質を含み得る。リポソーム(例えば、米国特許第5,422,120号、WO 95/13796、WO 91/14445、またはEP 524,968 B1に記載されるもの)もまた、キャリアとして使用され得る。
【0068】
制御放出処方物を作製するためのさらなる方法は、例えば、米国特許第5,422,123号、同第5,601,845号、同第5,912,013号、および同第6,194,000号(これらの全ては、本明細書によって参考として援用される)に記載される。
【0069】
経皮パッチで送達するための調製は、また当該分野で公知の方法を使用して行われ得る。この方法としては、例えば、米国特許第5,186,938号、および同第6,183,770号、同第4,861,800号、および同第4,284,444号で一般的に記載されているものが挙げられる。パッチは、多くのADDに伴う吸収の問題に起因して、この場合に特に有用な実施形態である。パッチは、12時間、24時間、3日間、および7日間の期間にわたって皮膚透過性活性成分の放出を制御するために作製され得る。一例において、日量の2倍過剰のNMDAレセプターアンタゴニストが、ADDとともに不揮発性流体中に置かれる。本明細書において利用される薬剤の量を考慮すると、好ましい放出は、12時間〜72時間である。
【0070】
この形態の経皮調製物は、1%〜50%の活性成分を含む。本発明の組成物は、粘性の、不揮発性の液体の形態で提供される。好ましくは、組み合わせの両メンバーとも、少なくとも10−9モル/cm/時の皮膚透過速度を有する。少なくとも5%の活性物質が、24時間以内に皮膚を通って流入する。特定の処方物の皮膚を通る透過は、当該分野における標準的方法によって測定され得る(例えば、Franzら,J.Invest.Derm.64:194−195(1975))。
【0071】
いくつかの実施形態において、例えば、組成物は、活性成分を嗅覚経路を介してCNSへと移送することを可能にする吸入によるのではなく、鼻腔内的に脳へと送達され得、そして全身投与を減少させる。この投与経路のために一般的に使用されるデバイスは、米国特許第6,715,485号に包含される。この経路を介して送達される組成物は、CNS用量の増加、または特定の薬物に関連する全身性の毒性の危険性を低下させる、総身体負荷量の低下を可能にし得る。
【0072】
皮下埋め込みデバイスにおける送達のための薬学的組成物の調製は、当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第3,992,518号;同第5,660,848号;および同第5,756,115号に記載される方法)を使用して実行され得る。
【0073】
(組み合わせによる処置に適切な適応症)
CNS関連障害(精神医学的状態(例えば、パニック症候群、一般的な不安障害、あらゆる型の恐怖症候群、躁病、躁うつ病性障害、軽躁病、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、PTSD、身体表現性障害、人格障害、精神病、および統合失調症)、ならびに薬物依存(例えば、アルコール、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、スピード、メス)、オピオイド、およびニコチン)、痴呆関連状態(例えば、てんかん)、発作障害、急性疼痛、慢性疼痛、慢性ニューロパシー性疼痛))を有するか、またはそれらのCNS関連障害を有する危険がある任意の被験体は、本明細書において記載される組合せおよび方法を用いて処置され得る。本発明の組み合わせはまた、以下を含む他の障害の処置および予防のために有用である:頭痛(例えば、片頭痛、緊張性頭痛、および群発性頭痛)、脳血管疾患、運動ニューロン疾患(例えば、ALS、脊髄運動神経萎縮、テイ−サックス病、サンドホフ病、家族性痙性対麻痺)、痴呆(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、前頭側頭葉型痴呆、血管性痴呆、正常圧水頭症、HD、およびMCI)、神経変性疾患(例えば、家族性アルツハイマー病、プリオン関連の疾患、小脳性運動失調、フリードライヒ失調症(Friedrich’s ataxia)、SCA、ウィルソン病、RP、ALS、副腎白質ジストロフィ、メンケズ症候群(Menke’s Sx)、皮質下梗塞を伴う大脳常染色体優性動脈症(CADASIL)、脊髄性筋萎縮症、家族性ALS、筋ジストロフィ、シャルコー−マリー−ツース病、神経線維腫症、フォン・ヒッペル−リンダウ、脆弱X(Frangile X)、痙性対麻痺、結節硬化症、およびワルーデンブルヒ症候群(Wardenburg syndrome))、脳卒中(例えば、血栓性、塞栓性、血栓塞栓性、出血性(hemmorhagic)、血管収縮性(venoconstrictive)、および静脈性)、運動障害(例えば、PD、失調症、良性本態性振戦、遅発性失調症、遅発性ジスキネジー、およびツレット症候群)、失調性症候群、交感神経系の障害(例えば、シャイ−ドレーガー、オリーブ橋小脳変性、線条体黒質変性、PD、HD、ギヤン−バレー、カウザルギー、複合限局性疼痛症候群(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパシー、およびアルコール性ニューロパシー)、脳神経障害(例えば、三叉神経障害、三叉神経痛、メニエール症候群、舌咽神経痛(glossopharangela neuralgia)、嚥下困難、発声障害、および脳神経麻痺)、ミエロパシー(myelopethies)、外傷性脳脊髄損傷、放射線脳傷害、多発性硬化症、髄膜炎後症候群、プリオン病、脊髄炎、神経根炎、ニューロパシー(例えば、ギヤン−バレー、異常蛋白血症を伴う糖尿病、トランスサイレチン誘発性ニューロパシー、HIVに伴うニューロパシー、ライム病に伴うニューロパシー、帯状疱疹に伴うニューロパシー、手根管症候群、足根管症候群、アミロイド誘発性ニューロパシー、らい性ニューロパシー、ベル麻痺、圧迫性ニューロパシー、サルコイドーシス誘発性ニューロパシー、頭側多発性神経炎、重金属誘発性ニューロパシー、遷移金属誘発性ニューロパシー、薬物誘発性ニューロパシー)、疼痛症候群(例えば、急性、慢性、神経因性、侵害受容性、中枢性、および炎症性)、軸索性脳損傷、脳症、ならびに慢性疲労症候群。これらの状態のいずれかが、本明細書において記載される方法および組成物を使用して処置され得る。
【0074】
組合せを用いた被験体の処置は、当該分野で公知の方法を使用してモニタリングされ得る。この組合せを使用した処置の効力は、好ましくは、被験体の症状を定量的な方法で(例えば、再発の頻度の減少、または症状の持続的悪化についての時間の延長に注目することによって)検査することによって評価される。首尾良い処置においては、被験体の状態は改善される(すなわち、再発の頻度が減少するか、または持続的進行までの時間が延長する)。
【0075】
本発明は、以下の非限定的実施例において説明される。
【実施例】
【0076】
(実施例1:最適な定常状態濃度比(Cratio,ss)を決定するためのインビボでの方法)
適切なうつ病モデル(例えば、強制水泳試験(FST))において、メマンチンを用いた用量範囲研究を行い、ED50を決定する(約15μmである)。ADD(例えば、フルオキセチン)についてのED50を、同様の様式で決定する。等興奮(isobolic)実験は、続いて、これらの薬物を、それらのEDXXの画分を合わせて、ED100になるまで足す(すなわち、ED50:ED50、ED25:ED75など)。データのプロットを構築する。グラフ上でED50の点の間の直線下にある実験点は、相乗作用を示し、線上の点は相加的効果を示し、線より上の点は抑制性効果を示す。等興奮線からの最大偏差点が最適比である。これは、最適な定常状態比(Cratio,ss)であり、そしてこれを、成分の半減期に基づいて調整する。同様のプロトコルを多岐にわたる検証用動物モデルにおいて適用し得る。
【0077】
(実施例2:NMDAレセプターアンタゴニストとADDとの組み合わせ)
本発明の組成物に関して、代表的な組み合わせの範囲および比を、以下に提供する。これらの範囲は、本明細書において記載される処方ストラテジーに基づく。
【0078】
(組み合わせ療法に関する成体の投薬量および比)
【0079】
【表4】

(実施例3:メマンチンおよびパロキセチンの放出プロフィール)
メマンチンとパロキセチンとの組み合わせについて、放出の割合を以下の表に示す。累積画分は、処方物マトリックスから血清環境もしくは腸環境に放出された薬物物質の量である(例えば、米国特許第4,839,177号)。
【0080】
【表5】

(実施例4:メマンチンとベンラフェキシンとの組み合わせを含む錠剤)
メマンチンおよびベンラフェキシンの投与のための持続放出投薬形態を、3種の個別の区分として調製する。3種の個別の圧縮錠は、各々、異なる放出プロフィールを有し、続いてこの3種の錠剤をゼラチンカプセルへとカプセルに入れ、次いで、このカプセルを閉鎖し密封する。3種の錠剤の成分は、以下の通りである。
【0081】
【表6】

個々の薬物粒子、および他のコア成分の、流動床造粒機を使用して行われ得るような湿式造粒によって錠剤を調製するか、または成分混合物の直接的圧縮によって錠剤を調製する。錠剤1は、即時放出投薬形態であり、活性薬剤を投与後1〜2時間以内に放出する。これは、現行の投薬形態のdC/dT効果を回避するため、メマンチンを含まない。錠剤2および錠剤3は、従来のコーティング技術(例えば、噴霧コーティングなど)を使用して行い得るように、遅延放出性コーティング材料によってコーティングする。上記の表に列挙される特定の成分は、他の機能的に等価な成分に置き換えられ得る(例えば、希釈液、結合剤、潤沢剤、充填剤、コーティングなど)。
【0082】
患者へのカプセルの経口投与は、三相を有する放出プロフィールを生じる(実質的に即時である第一の錠剤からのベンラフェキシンの初期放出、主に投与の3時間〜5時間後に起こる第二の錠剤からのメマンチンおよびベンラフェキシンの放出、そして主に投与の7時間〜9時間後に起こる第三の錠剤からのメマンチンおよびベンラフェキシンの放出)。
【0083】
(実施例5:メマンチンとベンラフェキシンとの組み合わせを含むビーズ)
錠剤の代わりに薬物含有ビーズを使用することを除いて、実施例4の方法を繰り返す。不活性支持材料(例えば、ラクトース)を第一の(即時放出)パルスを提供する薬物でコーティングすることによって、ビーズの第一の画分を調製する。ビーズの第二の画分は、付加的な挿入支持材料をメラマンチンおよびベンラフェキシンの組合せでコーティングし、そして、これらのビーズを、約3〜7時間を中心とする薬物放出を提供するために十分な量の腸溶性材料でコーティングすることによって、調製される。ビーズの第三の画分は、付加的な挿入支持材料を、メラマンチンとベンラフェキシンとのさらなる組合せでコーティングし、そしてこれらを、約7〜12時間を中心とした薬物放出期間を提供するために十分な量より多い量の腸溶性材料でコーティングすることによって、調製する。これらの3群のビーズを、実施例4においてのように、カプセル化してもよく、または緩衝剤の存在下で、単一の錠剤へと圧縮してもよい。あるいは、薬物コーティングラクトースビーズの代わりに、3群の薬物粒子が提供され得、上記のようにコーティングされ得る。
【0084】
(実施例6:IRエスシタロプラム処方物のおよびCRエスシタロプラム処方物の放出プロフィール)
実施例5と同様に作製される制御放出の組合せ産物について、例示的なヒトPK放出プロフィールおよびCratioを、図3A〜図3Fに示し、現在市販される製品のIR投与と比較する。IR投与について、経口用量は、20mgのメマンチン(1日2回)および20mgのエスシタロプラム(毎日)である。CR処方物1について、20mgのメマンチンおよび20mgのエスシタロプラムを、これらの活性薬剤を12時間にわたって一定の速度で放出する制御放出経口送達処方物中で提供する。このCR産物は、これらの2つの活性成分についてほとんど一定のCratioを維持し、Cratio,varは2〜24時間および192〜240時間の範囲に及ぶ時間にわたって6%および4%と計算された。
【0085】
所望の放出プロフィールを達成することに加えて、この組み合わせ処方物は、より高用量のNMDArアンタゴニストを用いてさえ、dC/dTおよびCmax/Cmeanの好ましい低下を示し、したがって、本発明は、別の方法では必要となり得る段階的増加なしに、治療効果の増大のために、より大用量を提供し得る。さらに、増加した用量により、治療薬剤のより低頻度の投与が可能になる。
【0086】
【表7】

(実施例7:メマンチンおよびエスシタロプラムの持続放出を提供するパッチ)
上記のように、NMDAアンタゴニストの持続放出処方物を、局所投与のために処方する。メマンチン経皮パッチ処方物を、例えば、米国特許第6,770,295号および同第6,746,689号において記載されるように、調製する。
【0087】
接着性アクリル酸中の薬物の調製のため、4.1gのメマンチンおよび3.6gのエスシタロプラムを、11gのエタノールに溶解し、この混合物を20gのDurotak 387−2287(National Starch & Chemical,U.S.A.)に添加する。この薬物ゲルを、コーティング機(例えば、RK Print Coat Instr.Ltd,Type KCC 202 control coater)を用いて、裏打ち膜(Scotchpak 1012;3M Corp.,U.S.A.)上にコーティングする。浸潤層の厚さは、400μmである。この薄層を、室温で20分間、次いで40℃で30分間乾燥させる。ポリエステル放出ライナーを、乾燥した薬物ゲル上に積層する。このシートをパッチへと切断し、使用するまで(袋にパックして)2℃〜8℃で保存する。このパッチ中のメマンチンの濃度は、4.6mg/cmと6.6mg/cmとの間の範囲であり、一方エスシタロプラムは、4.0mg/cmと6.0mg/cmとの間の範囲である。図4A、図4B、および図4Cは、予測される即時放出プロフィールと本実施例の予測される24時間放出とを比較するグラフである。これらのグラフは、成分のほぼ一定な継続注入の利点、ならびに正確な定常状態比(Cratio,ss)を確立してそして最適な治療効果を達成するように投薬形態濃度を改変することの重要性を示す。
【0088】
さらなる実施形態は、特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、NMDAレセプターアンタゴニストの制御放出が、dC/dtの低下をもたらすことを示すグラフである。
【図2A】図2Aは、IR投与についての、24時間、および10日間にわたるAPI濃度を示す一連のグラフである。メマンチンは、10mgで1日2回(Tmax 3時間、T1/2 60時間)提供され、デュロキセチンは、60mgで1日1回(Tmax 6時間、T1/2 12時間)提供される。
【図2B】図2Bは、CR処方物1についての、最初の24時間、および最初の10日間にわたるAPI濃度を示す一連のグラフである。メマンチンは、25mgで1日1回(Tmax 12時間、T1/2 60時間)提供され、一方デュロキセチンは、60mgで1日1回(Tmax 12時間、T1/2 12時間)提供される。
【図2C】図2Cは、IR投与およびCR処方物1についての、メマンチンに対するデュロキセチンの濃度の比を示すグラフである。
【図2D】図2Dは、IR投与およびCR処方物2についての、メマンチンに対するデュロキセチンの濃度の比を示すグラフである。
【図3A】図3A〜図3Fは、実施例6に関する、IR処方物またはCR処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図3B】図3A〜図3Fは、実施例6に関する、IR処方物またはCR処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図3C】図3A〜図3Fは、実施例6に関する、IR処方物またはCR処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図3D】図3A〜図3Fは、実施例6に関する、IR処方物またはCR処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図3E】図3A〜図3Fは、実施例6に関する、IR処方物またはCR処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図3F】図3A〜図3Fは、実施例6に関する、IR処方物またはCR処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図4A】図4A〜図4Cは、実施例7に関する、IR処方物およびパッチ処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図4B】図4A〜図4Cは、実施例7に関する、IR処方物およびパッチ処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。
【図4C】図4A〜図4Cは、実施例7に関する、IR処方物およびパッチ処方物としてのメマンチンおよびエスシタロプラムのPKプロフィール放出ならびにCratioを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)NMDAレセプターアンタゴニスト;
(b)抗うつ薬(ADD)である第二の薬剤;および
(c)薬学的に受容可能なキャリア
を含み、ここで、該NMDAレセプターアンタゴニストまたは該第二の薬剤の少なくとも一方は、持続放出投与形態で提供される、薬学的組成物。
【請求項2】
前記NMDAレセプターアンタゴニストは、IR処方物についての速度の約80%未満のdC/dTを有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記NMDAレセプターアンタゴニストは、被験体に導入された後、約2時間〜少なくとも12時間まで、約1.6以下のCmax/Cmeanを有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記NMDAレセプターアンタゴニストおよび前記第二のADDの相対的なCratio.varは、投与後2時間〜12時間まで100%未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記NMDAレセプターアンタゴニストおよび前記第二のADDの相対的なCratio.varは、投与後2時間〜12時間まで、対応するIR処方物の70%未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記第二の薬剤は、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、セロトニン/ノルエピネフリン再取り込みインヒビター(SNRI)、三環系抗うつ薬(TCA)である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記NMDAレセプターアンタゴニストはメマンチンであり、前記第二の薬剤は、デシプラミン、エスシタロプラム、パロキセチン、ベンラフェキシン、デュロキセチン、ブスピロン、またはブプロピオンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
経口送達、経鼻送達、非経口送達、部分局所経上皮送達、経皮パッチ送達、皮下送達、または吸入送達のために処方される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
懸濁液、カプセル、錠剤、坐剤、ローション、またはパッチとして処方される、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記NMDAレセプターアンタゴニストはメマンチンであり、前記第二の薬剤はデュロキセチンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
CNS関連状態を処置する方法であって、該方法は、CNS関連状態の処置を必要とする被験体に、NMDAレセプターアンタゴニストと第二の薬剤とを含む治療的有効量の組合せを投与する工程を包含し、該第二の薬剤はADDであり、該NMDAレセプターアンタゴニストは持続放出形態において提供される、方法。
【請求項12】
前記CNS関連状態は、てんかん、発作障害、または痙攣障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NMDAレセプターアンタゴニストおよび前記第二の薬剤は、同時に、または続けて投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記NMDAレセプターアンタゴニストおよび前記第二の薬剤は、単一組成物として投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記CNS関連状態は、慢性侵害受容疼痛である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記NMDAレセプターアンタゴニストはメマンチンであり、前記第二の薬剤はデュロキセチンである、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2007−522249(P2007−522249A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553359(P2006−553359)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/004917
【国際公開番号】WO2005/079756
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505357339)ニューロモレキュラー・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】NEUROMOLECULAR, INC.
【Fターム(参考)】