説明

紙葉類検査装置

【課題】ホログラムの付された紙葉類の真贋、損傷を安定して検出することが可能な紙葉類検査装置を提供する。
【解決手段】紙葉類処理装置は、紙葉類12のホログラム10に、このホログラムから回折光を得る所定の方向から照明光を照射する光源装置16と、ホログラムからの回折光を受光する第1受光部18と、ホログラムに照射され紙葉類を透過した透過光を受光する第2受光部20と、第1受光部により受光された回折光からホログラムの真贋を判別するとともに、第2受光部により受光された透過光からホログラムの欠損を判別する判別処理装置と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はホログラムが付された紙葉類等を検査する紙葉類検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムに代表される回折型光学的変化素子(以下、回折型OVD)は、表面に光の回折現象を引き起こす加工がされた素子であり、回折パターンにより光の回折・干渉現象に起因する鮮やかな色彩を発光する模様を有している。ホログラムは、通常の印刷とは異なる光学的な特徴を有しているため、商品券、有価証券等の紙葉類のセキュリティスレッドとして用いられ、真贋を判別する目的として実現化されている。
【0003】
このようなホログラムが付された紙葉類の品質管理を目的として、紙葉類を検査する種々の検査装置が用いられている。例えば、検査媒体の表面にレーザ光を照射して、その反射回折画像を受光センサを用いて検査する検査装置、あるいは、ライン照明を用いて移動する検査媒体を検査する装置等が実用化されている(例えば、特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2004−150885号公報
【特許文献2】特開2002−221494号公報
【特許文献3】特開2002−221496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検査装置において、レーザ光を利用したものは、検査媒体を静止させ観測する条件が厳しいとともに、情報収集や判別処理に時間がかかるという問題がある。移動媒体を検査する検査装置は、検査媒体のばたつき等が検査結果に悪影響を与えるという問題がある。
【0005】
また、有価証券等の紙葉類はその流通過程で欠け、剥がれ等による欠損「欠損」や、傷、しわ等による表面状態が劣化しホログラム本来の光学的特徴が失われる「疲弊」が発生する可能性がある。これら紙葉類を自動的に検査する装置では、真贋(本物とにせ物)と損傷状態を検査することを求められる。しかし、このようなホログラムの欠損や疲弊等を検査する装置は提供されていない。
【0006】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、ホログラムの付された紙葉類の真贋、損傷を安定して検出することが可能な紙葉類検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係る紙葉類検査装置は、ホログラムが設けられた紙葉類を検査する紙葉類検査装置であって、前記紙葉類のホログラムに、このホログラムから回折光を得る所定の方向から照明光を照射する光源装置と、前記ホログラムからの回折光を受光する第1受光部と、上記ホログラムに照射され前記紙葉類を透過した透過光を受光する第2受光部と、前記第1受光部により受光された回折光から前記ホログラムの真贋を判別するとともに、前記第2受光部により受光された透過光から前記ホログラムの欠損を判別する判別処理装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、ホログラムの付された紙葉類の真贋、損傷を安定して検出することが可能な紙葉類検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る紙葉類検査装置について詳細に説明する。
図1および図2に示すように、この発明の第1の実施形態に係る紙葉類検査装置は、検査対象となるホログラム10が付された有価証券等の紙葉類12を保持する保持機構14、紙葉類に検査用の照明光を照射する光源装置16、ホログラム10からの反射光を受光する第1受光センサ18、および紙葉類を透過した透過光を受光する第2受光センサ20を備えている。
【0010】
ホログラム10は、紙葉類12に貼付された例えば、円形の金属箔10aと、この金属箔に形成された所望形状、例えば「A」の回折パターン(回折格子)10bとを有している。ホログラム10は、所定の角度から可視光が照射されると、回折パターン10bに対応した回折光を反射し虹色の特徴パターンを表示する。
【0011】
保持機構14は、例えば、複数のローラ22および図示しないベルト等により構成され、紙葉類12を張力が印加された状態、すなわち、弛み無く張った状態で所定位置に保持する。
【0012】
光源装置16は、ホログラム10を含みホログラムよりも大きな照明領域34にスポット照明光を照射するスポット照明器を有している。スポット照明器は、例えば、白熱光源によって構成され、可視光波長域から近赤外波長域までの波長を含む広い波長領域の照明光を照射する。光源装置16は、紙葉類12に対して所定の角度位置に配設され、対象ホログラム10の回折パターン10bにより回折画像が得られるように最適化した指向性を有する照明光をホログラムに照射する。
【0013】
第1受光部として機能する第1受光センサ18は、紙葉類12に対して光源装置16と同一面側に設けられ、ホログラム10からの回折光を受光する位置に配設されている。第1受光センサ18は、結像レンズ19を有し、この結像レンズで結像された反射光を受光する。第1受光センサ18としては、ポイントフォトセンサ、モノクロCCDセンサ、カラーCCDセンサ等を用いることができる。
【0014】
第2受光部として機能する第2受光センサ20は、紙葉類12に対して光源装置16と反対面側に設けられ、ホログラム10の周囲から紙葉類12を透過した透過光を受光する位置に配設されている。第2受光センサ20は、結像レンズ21を有し、この結像レンズで結像された透過光を受光する。第2受光センサ20としては、ポイントフォトセンサ、モノクロCCDセンサ、カラーCCDセンサ等を用いることができる。
【0015】
図3に示すように、紙葉類検査装置は、第1受光センサ18により検出された検出データを演算処理し特徴を抽出し、判定基準メモリ26に記憶されている基準データと比較し、ホログラム10の真贋を判別する第1判別処理回路28、第2受光センサ20により検出された検出データを演算処理し特徴を抽出し、判定基準メモリ26に記憶されている基準データと比較し、ホログラムおよび紙葉類12の損傷、欠損を判別する第2判別処理回路30、光源装置16を駆動する光源ドライバ32、および装置全体の動作を制御する制御部36を備えている。第1および第2判別処理回路は判別処理装置として機能する。
【0016】
次に、以上のように構成された紙葉類検査装置の検査動作について説明する。
検査対象のホログラム10から回折光が現れる条件は、ホログラムの回折格子の向きとピッチにより決まる。図4に示すように、光源装置16からの照射光は、ホログラム10の回折格子10bに直交する方向Bで最適化した入射角度θ1にてホログラム10へ照明する。これにより、回折格子10bから、正反射光が角度θ1で現れる。この入射角と正反射光角に挟まれた間で回折光が観測される。
【0017】
照明光を検査対象であるホログラム10の寸法、ここでは、金属箔10aの寸法よりも僅かに大きい照明領域34を持つスポット照明とすると、図5に示すように、ホログラム10への照明光の入射角がホログラムの位置に応じて異なるため、回折光λ2、λ3、λ4の波長がずれる。この結果、第1受光センサ18として、カラーCCDセンサを用いた場合、第1受光センサで受光された画像は位置により波長の異なる虹色画像が得られる。第1判別処理回路28は、第1受光センサ18により検出された検出データを演算処理し2次元の画像として特徴を抽出し、判定基準メモリ26に記憶されている基準データと比較し、ホログラム10の真贋を判別する。
【0018】
また、紙葉類12の照明領域34に照射された照明光の内、ホログラム10に当たる光は、金属箔10aにより遮蔽され、紙葉類をほとんど透過しない。ホログラム10の周囲に当たった光は、紙葉類12を透過し、第2受光センサ20によって受光される。紙葉類12を透過する透過光に比較して、非透過光領域として金属箔10aによって遮光される光は極端に少ないため、この非透過領域から金属箔の情報が得られる。第2判別処理回路30は、第2受光センサ20により検出された検出データを演算処理し1次元あるいは2次元の画像として特徴を抽出し、判定基準メモリ26に記憶されている基準データと比較する。これにより、第2判別処理回路30は、ホログラム10の損傷、欠損を判別する。
【0019】
以上のように、紙葉類検査装置は、紙葉類12に付されたホログラム10に最適化したスポット照明光を照明し、ホログラムからの回折光情報を検出することで、ホログラムの真贋性を検査することできる。偽造目的で類似のホログラムを故意に貼付したものや、偽造ホログラム媒体では本物の回折格子パターンやピッチといった固有の特徴を完全に一致させない限り、前述の回折光が観測されない。これにより、有効な真贋判別が可能となる。偽造を意図せず同じホログラムを繰り返し製造する場合においても、ホログラムの品質や特徴が安定しているかの検査が可能となる。
【0020】
同時に、紙葉類を透過した透過光情報を検出することでホログラムに使用されている金属箔の欠損や損傷状態を検査することできる。表面に白色光を当てると虹色の縞模様が観察できるレインボーホログラムは、金属箔によって反射された光が像を再生する原理のため、光を透過しにくい条件を持っている。この特性を利用し、同じ検査装置でホログラムからの透過光情報を検出することで、金属箔の損傷や欠損を検査できる。
これにより、ホログラムの付された紙葉類の真贋、損傷を安定して検出することが可能な紙葉類検査装置を提供することができる。
【0021】
光源装置から照射する検査光として、スポット照明光を用いることで、ホログラムの回折格子の特徴に最適化した照明が実現可能となる。拡散照明や大面積照明を使用した場合、最適照明に比較してそれ以外の方向性を持った光が存在することになる。これらの光が異なる回折格子に適合したものであると同様に虹色特徴を得られる危険性が増す。この視点から必要とする照明光は検査対象に最適化された必要最低限の光であることが望ましい。スポット照明装置はこの目的に合う照明である。
【0022】
第1受光センサとしてフォトダイオード等を用いた場合でも、ホログラムの回折光の情報を検出可能である。しかし、二次元のイメージ情報を得る方が、より高性能な真贋検査が可能となる。紙葉類を透過する透過光の検出する第2受光センサについても、フォトダイオード等の一次元データを検出するセンサおよび二次元イメージ情報を得るCCDセンサ等のイメージセンサを用いることができ、性能面ではイメージセンサが有効となる。更に、第1および第2受光センサとして、2次元のイメージセンサであるカラーのイメージセンサ、例えば、カラーCCDセンサを用いた場合、判別性能をより向上することが可能となる。
【0023】
光源装置として、白色照明または、白熱光源のように広い波長域特性を持つスポット照明を使用することで、検査対象のレインボーホログラムの虹色特徴を最大限に引き出すことができる。同時にホログラムの面が傾いたり、多少の凹凸を持っていている場合でも虹色特徴が安定して得られる。虹色特徴の現れ方は条件によって変動するため、特徴の有無、特徴の頻度等の評価基準で判定することで安定した性能を得ることが可能である。
【0024】
白熱光源のように熱線を含む光源装置を使用した場合、透過受光を近赤外波長域の光とすることにより、ホログラム周辺にある印刷地模様の影響を低減することで損傷や欠損を検査する性能を向上することが可能となり有効である。
【0025】
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態では、紙葉類12が静止した状態でホログラムを検査する構成としたが、図6に示すように、第2の実施形態によれば、検査装置は、紙葉類12を紙面と平行な方向Cに沿って搬送する搬送機構を備えている。この搬送機構は、紙葉類12を挟持して搬送する複数の搬送ローラ40および図示しない搬送ベルト等を有している。
【0026】
この検査装置によれば、搬送機構によって紙葉類12を搬送しながら、光源装置16からホログラム10を含む照明領域34に照明光を照射し、反射光を第1受光センサ18で検出するとともに、紙葉類を透過した透過光を第2受光センサ20により検出する。
【0027】
第2の実施形態において、他の構成は前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、紙葉類を搬送しながら検査することができ、様々な用途への展開が可能となる。
【0028】
次に、この発明の第3の実施形態について説明する。
図7および図8に示すように、第2の実施形態によれば、紙葉類検査装置は、光源装置16として、2つの照明器を備えている。すなわち、光源装置16は、スポット照明器16aと透過用の照明光を照射する透過照明器16bとを備えている。
【0029】
スポット照明器16aは、ホログラム10が設けられている照明領域34aにスポット照明光を照射する。スポット照明器16aは、可視光波長域の照明光を照射する光源として構成されている。スポット照明器16aは、紙葉類12に対して所定の角度位置に配設され、ホログラム10の回折パターン10bにより回折画像が得られるように最適化した指向性を有する照明光をホログラムに照射する。
【0030】
透過照明器16bは、ホログラム10を含みホログラムよりも大きな照明領域34bに透過用の照明光を照射する。透過照明器16bは、近赤外波長域の照明光を照射する光源として構成されている。第3の実施形態において、他の構成は前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0031】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、光源装置をホログラムで反射する波長域の照明光を照射する照明器と、紙葉類を透過する波長域の照明光を照射する照明器とで構成することにより、各照明器をそれぞれの検出に適した最適の機能に設定することが可能となる。すなわち、スポット照明器16aは、ホログラム10と同一寸法のスポット径とすることができ、照明光の強度および均一性を上げ、検出精度の向上を図ることが可能となる。また、透過照明器16bの照射光波長をスポット照明器16aの照射光波長と異なる波長域とし、相互の干渉を防止することができる。透過照明器16bの照明光を近赤外波長域とすることにより、紙葉類の印刷地模様等の影響を低減し、確実に紙葉類を透過可能な照明光とすることができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、第1および第2受光センサは、ラインセンサとしてもよい。光源装置のスポット形状は円形に限らず、他の任意の形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態に係る紙葉類検査装置を示す斜視図。
【図2】図2は、上記紙葉類検査装置を概略的に示す側面図。
【図3】図3は、上記紙葉類検査装置全体の構成を示すブロック図。
【図4】図4は、ホログラムの回折光と反射光とを示す図。
【図5】図5は、スポット照明光によるホログラムの回折光を示す図。
【図6】図6は、この発明の第2の実施形態に係る紙葉類検査装置を示す斜視図。
【図7】図7は、この発明の第3の実施形態に係る紙葉類検査装置を示す斜視図。
【図8】図8は、上記第3の実施形態に係る紙葉類検査装置を概略的に示す側面図。
【符号の説明】
【0034】
10…ホログラム、 12…紙葉類、 16…光源装置、
18…第1受光センサ、 20…第2受光センサ、 26…判定基準メモリ、
28…第1判定処理回路、 30…第2判定処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラムが設けられた紙葉類を検査する紙葉類検査装置であって、
前記紙葉類のホログラムに、このホログラムから回折光を得る所定の方向から照明光を照射する光源装置と、
前記ホログラムからの回折光を受光する第1受光部と、
上記ホログラムに照射され前記紙葉類を透過した透過光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部により受光された回折光から前記ホログラムの真贋を判別するとともに、前記第2受光部により受光された透過光から前記ホログラムの欠損を判別する判別処理装置と、
を備えた紙葉類検査装置。
【請求項2】
前記光源装置は、前記ホログラムを含み前記ホログラムよりも大きな領域にスポット照明光を照射するスポット照明器を有している請求項1に記載の紙葉類検査装置。
【請求項3】
前記光源装置は、可視光波長域から近赤外波長域までの波長領域を含む照明光を照射する照明器を備えている請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記光源装置は、前記ホログラムの形成された領域にスポット照明光を照射するスポット照明器と、前記ホログラムを含み前記ホログラムよりも大きな領域に透過用の照明光を照射する透過照明器と、を有している請求項1に記載の紙葉類検査装置。
【請求項5】
前記スポット照明器は、可視光波長域の照明光を照射する照明器であり、前記透過照明器は近赤外波長域の照明光を照射する照明器である請求項4に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記第1および第2受光部の少なくとも一方は、一次元のイメージを検出する検出器を有している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
前記第1および第2受光部の少なくとも一方は、ニ次元のイメージを検出する検出器を有している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記第1および第2受光部の少なくとも一方は、カラーのイメージを検出する検出器を有している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−240315(P2007−240315A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62760(P2006−62760)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】