説明

紙部材の製造方法及び紙部材並びに紙容器

【課題】製造工程が簡略で、端面から水分等が浸透しない機能を有する紙部材の製造方法及びその紙部材並びにその紙部材を用いた紙容器を提供することにある。
【解決手段】紙層を主体とする紙基材単体又は紙層を主体とする紙基材に粘着剤層、支持体層が積層されてなる積層体の紙基材のみに抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有する状態又は未カット部を有しない状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、カット部の端面から内部に樹脂が含浸した後に、カット部から個々に引きちぎってむしり加工するか、あるいは粘着剤層と支持体層を紙基材から剥がして分離加工した後にカット部から個々に引きちぎってむしり加工する方法と、紙部材がその製造方法で製造されており、紙容器がその紙部材からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分や内容物が紙の端面より侵入することによる強度低下などを防止できる機能を有する紙部材の製造方法及びその紙部材並びに紙部材を用いた紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙層を主体とする部材の製造方法としては、巻取状又は枚葉状の材料に抜き刃で打ち抜き加工を施し、耳部などの不必要な部分をむしり加工して製造する。また、前記部材を用いて紙容器にする場合は、その部材をサック貼り加工等して製函する。前記部材は紙層の表面や端面から水分や内容物が浸透し、強度低下が生じ易く、強度低下を防止する為に紙層表面に樹脂をコーティングする方法が一般的に行われているが、この方法では端面からの水分及び内容物の浸透を防止することができない。紙層の端面からの水分や内容物の浸透を防止する一つの方法として、スカイブヘミング加工がある。スカイブヘミング加工とは、例えば、紙層の片面に樹脂層を積層した積層構成の端部より数ミリの範囲を紙層の厚みが半分程度になるように紙層を削除(スカイブ)し、その部分を削除面が内側になるように折り返し(ヘミング)して、紙層の端面が露出しないようにする加工方法である。又、他の方法として、紙層にアルミニウム箔層を積層した積層体に孔部を設けて所定形状に打ち抜いた後に、両面にポリエチレン等の樹脂層を積層し、しかる後に元の孔部の樹脂層のみの部分を打ち抜いて、再度孔部を設けて、孔部の周囲の紙の端面が露出しないようにする加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−246432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の方法では、製造工程が複雑で、スカイブする時に紙粉等が発生するという問題があり、また、この加工は直線部分にのみ適用可能であり、紙層全体の端面を保護することは困難である。後者の方法では、孔部の周囲の紙層の端面の保護はできるが、同様に製造工程が複雑で、再度設けた孔部の先が鋭角になって不都合が生じたり、見栄えが悪い等の欠点があった。
【0004】
本発明の課題は、製造工程が簡略で、端面から水分等が浸透しない機能を有する紙部材の製造方法及びその方法で製造した紙部材並びにその紙部材を用いた紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発明は、紙層を主体とする紙基材単体に抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有する状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、前記カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、カット部から個々に引きちぎってむしり加工することを特徴とする紙部材の製造方法である。
【0006】
本発明の請求項2に係る発明は、紙層を主体とする紙基材に粘着剤層、支持体層が積層されてなる積層体の紙基材のみに抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有しない状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、前記カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、粘着剤層と支持体層を紙基材から剥がして分離加工し、カット部から個々に引きちぎってむしり加工することを特徴とする紙部材の製造方法である。
【0007】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に係る発明において、塗布加工された樹脂が紙基材のカット部の端面から内部に含浸した後にむしり加工することを特徴とする紙部材の製造方法である。
【0008】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の紙部材の製造方法で製造され、紙層を主体とする紙基材の少なくとも厚み方向の端面から内部に樹脂が含浸されているものからなることを特徴とする紙部材である。
【0009】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項4記載の紙部材を用いて製函されているものからなることを特徴とする紙容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紙部材の製造方法は、紙層を主体とする紙基材単体に抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有する状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、前記カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、カット部から個々に引きちぎってむしり加工する方法、あるいは、紙層を主体とする紙基材に粘着剤層、支持体層が積層されてなる積層体の紙基材のみに抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有しない状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、前記カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、粘着剤層と支持体層を紙基材から剥がして分離加工し、カット部から個々に引きちぎってむしり加工する方法で、さらに塗布加工された樹脂が紙基材のカット部の端面から内部に含浸した後にむしり加工する方法であり、紙部材は前記のいずれかの製造方法で製造され、紙層を主体とする紙基材の少なくとも厚み方向の端面から内部に樹脂が含浸されているものからなっているので、表面及び端面全部が樹脂で保護されており、水分などが浸透せず、強度が低下しない。また、前記紙部材からなる紙容器も端面から水分や内容物が浸透することがなく、紙容器の強度低下もなく、優れた内容物保存性を保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の紙部材の製造方法及びその製造方法で製造した紙部材並びにその紙部材を用いた紙容器を実施の形態に沿って以下に説明する。図1(a)〜(c)は本発明の紙部材の製造方法の一実施形態を示す工程説明図であり、図1(a)は打ち抜き加工の工程説明図で、この場合は紙部材を製造する為の材料として、紙基材(10)単体を使用しており、紙基材(10)を抜き刃(101)を有する抜きローラー(100)とアンビルローラー(200)で両側から挟んで、紙基材(10)の抜き刃(101)と反対側の面に未カット部(22)を有する状態で、カット部(20)を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工しており、図1(b)は次工程の工程説明図で、カット部(20)を設けた紙基材(10)の表面に樹脂(30)を塗布加工しており、樹脂(30)は塗布された後にカット部(20)の隙間から厚み方向に侵入して、図示していないが、カット部(20)の端面から紙基材(10)の内部へ含浸し、図1(c)はさらに、次工程の工程説明図で、紙基材(10)の表面に樹脂(30)が積層され、かつ、端面から内部へ樹脂(30)が含浸した後に、カット部(20)から個々に引きちぎってむしり加工する。なお、前記未カット部(22)の長さは通常、数μm〜10μm程度である。また、前記むしり加工とは、カット部(20)から引きちぎり、個々の部分に分離する工程を指している。
【0012】
図2(a)〜(d)は、本発明の紙部材の製造方法の他の実施形態を示す工程説明図であり、図2(a)は打ち抜き加工の工程説明図で、この場合は、紙部材を製造する材料としては、紙基材(10)の片面に粘着剤層(11)、支持体層(12)が積層されてなる積層体を使用しており、その積層体を紙基材(10)側が抜き刃(101)側になるように、抜き刃(101)を有する抜きローラー(100)とアンビルローラー(200)で
両側から挟んで、紙基材(10)の抜き刃(101)と反対側の面に未カット部を有していない状態でカット部(21)を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、図2(b)は次工程の工程説明図で、カット部(21)を設けた紙基材(10)の表面に樹脂(30)を塗布した状態で、樹脂(30)は塗布された後にカット部(21)の隙間から厚み方向に侵入して、表示していないが、カット部(21)の端面から紙基材(10)の内部へ含浸し、図2(c)はさらに、次工程の工程説明図で、粘着剤層(11)と支持体層(12)を紙基材(10)から剥がして分離する工程であり、図2(d)はさらに、次工程の工程説明図で、樹脂(30)が表面に積層され、かつ、端面から内部へ樹脂(30)が含浸した後に、カット部(21)から個々に引きちぎってむしり加工する。前記製造方法は、打ち抜き加工する時に未カット部がない状態で紙基材(10)を厚み方向に打ち抜いても、粘着剤層(11)と支持体層(12)で一時的に固定されているので、ばらばらになることはなく、そのまま樹脂を塗布、含浸させる工程を実施出来る利点があるが、逆にコストが高くなる不利な点も有しており、製造方法は適宜選定するのが好ましい。
【0013】
図3は本発明の紙部材の製造方法で製造した紙部材の一実施形態を示す側断面図であり、紙部材(40)は、紙基材(10)の表面と両側面の内部に樹脂(30)を有している。従って、表面及び両側面から水分などが浸透せず、強度が低下しない。
【0014】
前記紙基材(10)は、紙層を主体としたものからなっており、マニラボール紙、コートボール紙、ノーコートボール紙などからなる紙層単体あるいは前記紙層の片面または両面にポリエチレン樹脂あるいはプラスチックフィルムを積層し積層構成のものからなっていても良い。前記紙層単体の場合は、塗布された樹脂は表面と端面の両方から内部に含浸するが、積層構成のものの場合は塗布された樹脂は端面のみから内部に含浸する。
【0015】
前記塗布する樹脂(30)の種類は、特に限定されず、例えば、天然ゴム、SBR、NBR、ポリクロロプレン等の合成ゴム、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン若しくはこれらの共重合体樹脂、イソシアネート化合物などが使用できる。特にイソシアネート化合物は、含浸しやすく乾燥時の紙力及び湿潤時の紙力強度を向上させるので望ましい。イソシアネート化合物としては、これまで知られている各種のもの、例えば、フェニレンジイソシアネート(PDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族脂肪族ジイソシアネート、水添TDI、水添XDI、水添MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族若しくは脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体であるポリオール付加物、ビュレット体、3量体である3官能以上のポリイソシアネート、リジントリイソシアネート(LTI)等の3官能イソシアネートの他、イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマーを使用することができる。
【0016】
塗布、含浸させる方法は、公知のグラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、エアーナイフコート法、ブレードコート法、カーテンコート法などのいずれかの方法で前記の各種樹脂を主成分とするラテックス、樹脂溶液を打ち抜き加工した後の紙基材の表面に塗布し、含浸させる。塗布量は、通常3〜10g/m2(乾燥状態)が好ましい。
【0017】
前記粘着剤層(11)は、ゴム系粘着剤あるいはアクリル系粘着剤からなっており、また、前記支持体層(12)には、安価な各種高分子フィルムあるいは紙が使用できる。
【0018】
本発明の紙容器は、前記製造方法で製造された紙部材を用いて、製函されたものからなっており、紙容器の形態は特に限定されず、各種の液体用紙容器等がある。
【0019】
本発明の紙部材の製造方法及び紙部材を具体的な実施例に沿って以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
紙基材(10)として、坪量310g/m2のカード紙の両面に厚さ12μmのポリエステルフィルムをラミネートした積層材を使用し、格子形状の抜き刃を有する抜きローラーとアンビルローラーとを備えた打ち抜き機を用いて、抜き刃の反対側に1μmの未カット部を有する状態で前記積層材を厚み方向に打ち抜き加工して格子形状のカット部を設け、引き続いて、カット部側の表面から、ロールコート法で10g/m2(乾燥状態)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)を塗布加工し、格子形状のカット部の四方の端面から内部にイソホロンジイソシアネート(IPDI)樹脂を含浸させ、その後、カット部から個々に引きちぎってむしり加工する製造方法で、85mm×54mm寸法のカード状の本発明の紙部材を製造した。
【0021】
〈評価〉
実施例1の本発明の紙部材を用いて、80℃、85%RH条件下で96時間保存する暴露試験を実施し、暴露試験後の強度低下の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

表1に示すように、実施例1の本発明の紙部材は、暴露試験後も強度低下はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(b)は本発明の紙部材の製造方法の一実施形態を示す工程説明図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の紙部材の製造方法の他の実施形態を示す工程説明図である。
【図3】本発明の紙部材の一実施形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10…紙基材
11…粘着剤層
12…支持体層
20,21…カット部
22…未カット部
30…樹脂
40…紙部材
100…抜きローラー
101…抜き刃
200…アンビルローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層を主体とする紙基材単体に抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有する状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、前記カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、カット部から個々に引きちぎってむしり加工することを特徴とする紙部材の製造方法。
【請求項2】
紙層を主体とする紙基材に粘着剤層、支持体層が積層されてなる積層体の紙基材のみに抜き刃を用いて、紙基材の抜き刃と反対側面に未カット部を有しない状態でカット部を設ける為に厚み方向に打ち抜き加工し、前記カット部側の紙基材表面に樹脂を塗布加工し、粘着剤層と支持体層を紙基材から剥がして分離加工し、カット部から個々に引きちぎってむしり加工することを特徴とする紙部材の製造方法。
【請求項3】
塗布加工された樹脂が紙基材のカット部の端面から内部に含浸した後にむしり加工することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の紙部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の紙部材の製造方法で製造され、紙層を主体とする紙基材の少なくとも厚み方向の端面から内部に樹脂が含浸されているものからなることを特徴とする紙部材。
【請求項5】
請求項4記載の紙部材を用いて製函されているものからなることを特徴とする紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−1110(P2007−1110A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183022(P2005−183022)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】