説明

紫外線照射装置及び紫外線ランプ

【課題】
本発明の目的は、放射される紫外線を遮光する反応生成物の固着を抑制した紫外線ランプ及び紫外線照射装置を提供することにある。
【解決手段】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、紫外線ランプと、該紫外線ランプを内部に配置した筐体と、該紫外線ランプを該筐体と共に取り囲む平板状の光照射窓と、からなる紫外線照射装置において、該光照射窓の紫外線ランプに対向する面に対して反対側の面に金又は白金からなる薄膜を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を放射する紫外線ランプと、該紫外線ランプを具備した紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板や液晶基板などに紫外線を照射して処理する光洗浄処理に、紫外線を放射する紫外線ランプや、該紫外線ランプを具備した紫外線照射装置が用いられる。
このような、紫外線ランプや紫外線照射装置としては、特許文献1〜3のものが知られていた。
【0003】
このようなランプユニットにおいては、半導体基板や液晶基板を処理する工程で、有機溶剤,酸,アルカリなどの各種薬品が使用されているため、それらの薬品が気化して遊離していることが多い。これらの薬品の中には、紫外線を吸収し、その光エネルギーで分解し他の薬品と反応して反応生成物を生じることが、特許文献4の段落番号0004に記載されている。また、特許文献4には、該反応性生物の一例として、硫化水素三アンモニウム(NH)H(SOや硫酸アンモニウム(NHSOが挙げられている。
さらに、特許文献4には、該反応生成物が紫外線照射装置の窓部材に付着し、該反応生成物によって該窓部材の紫外線透過率が低下する問題についても記載されている(特許文献4の段落番号0008〜0010参照)。
上記、反応生成物が付着する問題の解決手段として、特許文献4に記載されるものがあった。特許文献4の該解決手段について説明する。
【0004】
図7は、特許文献4に記載される図1及び図2を示している。図7(a)は、紫外線照射装置において、具備される紫外線ランプの長手方向に対して直交する断面図であり、図7(b)は、図7(a)の紫外線照射装置に具備される窓部材103の斜視図である。
【0005】
紫外線照射装置は、容器101の内部に、紫外線を放射するための誘電体バリア放電ランプ102が複数配置され、該容器101の前方に紫外線を透過するための石英ガラスよりなる窓部材103が配置されている。そして、この窓部材103の紫外線照射装置内側には、図7(b)に示すように、この窓部材103を加熱する加熱手段Hが形成されている。
【0006】
該容器101は、密閉されており、誘電体バリア放電ランプ102は大気と隔離され、該容器101内には、誘電体バリア放電ランプ102から放射される光に対して透過性の不活性体、例えば窒素,アルゴン,ネオンなどのガスが充填されている。
この誘電体バリア放電ランプ102は、放電用ガスとしてキセノンガスが封入されており、発光する部分の表面積に給電することで、波長172nmに最大値を有する紫外線が放射されるものである。
【0007】
誘電体バリア放電ランプ102の後方には、ランプ102から放射される紫外線を窓部材103の方向に反射させる反射鏡104が設けられる。
【0008】
図7(b)に示されているように、窓部材3の紫外線照射装置内側、具体的には誘電体バリア放電ランプ102側の表面に厚膜ヒータHが形成されている。この厚膜ヒータHは、導電性発熱ペーストを窓部材103にスクリーン印刷し500℃で30分焼成したものである。
【0009】
厚膜ヒータHを窓部材103に直接形成したことにより、効率良く窓部材103を加熱することができる。
このように、従来に係る紫外線照射装置は、該厚膜ヒータHからなる加熱手段Hによって窓部材103を100℃以上に加熱することで、有機溶剤,酸,アルカリなどの各種薬品による反応生成物が窓部材103に付着することを抑制できるものであった。
【0010】
【特許文献1】特開平11−183699号公報
【特許文献2】特開2004−113984公報
【特許文献3】特開2005−011740公報
【特許文献4】特開平11−295500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4に記載される紫外線照射装置は、窓部材103に反応生成物が付着することを抑制することができても、窓部材103の被照射物(図7において不図示)に対向する面(ランプに対向する面の反対側の面)に反応生成物が付着することを完全に防止することはできなかった。
このため、該窓部材103に付着した反応生成物は、例えばアルコールなどによって拭き取られていた。
ところが、付着した反応生成物のうち、拭き取ることができないものがあった。
【0012】
この拭き取ることができなかった反応性生物を分析してみると、例えば二酸化ケイ素(SiO)であった。この二酸化ケイ素は、窓部材103を構成する石英ガラスと化学的に結合してしまい、反応性生物が窓部材103に固着してしまったために、拭き取ることができなかったものと考えられる。
【0013】
また、特許文献2や特許文献3の場合は、特許文献4でいう窓部材2を具備せず、紫外線ランプと被照射物とが直接対向されていることから、紫外線ランプの放電容器に、反応生成物が固着してしまう問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、放射される紫外線を遮光する反応生成物の固着を抑制した紫外線ランプ及び紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、紫外線ランプと、該紫外線ランプを内部に配置した筐体と、該紫外線ランプを該筐体と共に取り囲む平板状の光照射窓と、からなる紫外線照射装置において、該光照射窓の紫外線ランプに対向する面に対して反対側の面に金又は白金からなる薄膜を設けたことを特徴とする。
第2の発明に係る紫外線ランプは、発光ガスが封入された放電空間を有する管状の放電容器と、該放電空間を介して対向配置された一対の電極と、からなる紫外線ランプにおいて、該管状の放電容器の長手方向に沿って、該放電容器の外面に、金又は白金からなる薄膜を設けたことを特徴とする。
第3の発明に係る紫外線ランプは、発光ガスが封入された放電空間を有する管状の放電容器と、該放電空間を介して対向配置された一対の電極と、該放電容器の外方を取り囲む流路管と、からなる紫外線ランプにおいて、該管状の放電容器の長手方向に沿って、該流路管の外面に、金又は白金からなる薄膜を設けたことを特徴とする。
第4の発明に係る紫外線照射装置は、第2の発明又は第3の発明に係る紫外線ランプを具備し、該紫外線ランプを一面開口の筐体の内部に配置させ、該筐体の一面開口と被照射物を対向配置させ、該紫外線ランプの薄膜を被照射物に対向配置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、光照射窓の紫外線ランプに対向する面に対して反対側の面に、反応性生物が固着することを抑制できる。
第2の発明に係る紫外線ランプは、上記特徴により、放電容器の外面に反応生成物が固着することを抑制できる。
第3の発明に係る紫外線ランプは、上記特徴により、流路管の外面に反応生成物が固着することを抑制できる。
第4の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、放電容器の外面又は流路管の外面に付着した反応生成物を拭き取ることができることから、反応生成物によって紫外線が遮光されることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る第1の実施例は、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、具備する紫外線ランプ3の長手方向に対して直交する断面図である。
図2は、図1の紫外線照射装置1の光照射窓5の斜視図である。
なお、図中には金又は白金からなる薄膜6を図示しているが、該薄膜6の厚みは、実際の厚みよりも極端に厚く図示している。
【0018】
第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、紫外線ランプ3を具備するランプユニット2と、被照射物Wを搬送する搬送ユニット7により構成される。
【0019】
ランプユニット2は、複数本(図1においては3本)の紫外線ランプ3を具備し、該紫外線ランプ3の四方を取り囲む側壁41と該側壁41に蓋をする天板42とからなる筐体4と、該筐体4とにより紫外線ランプ3を取り囲むように筐体4の一面開口に蓋をする光照射窓5と、により構成される。
【0020】
筐体4は、例えばアルマイト処理(酸化処理)をしたアルミニウムのような金属部材によって構成される。該一面開口の筐体4は、その開口部43を光照射窓5によって蓋をされることで、その内部が密閉される。該筐体4の密閉空間には、紫外線透過性を有する不活性ガスとして、例えば窒素,アルゴン又はネオンが充填される。
【0021】
光照射窓5は、図2に示すように、平板状からなり、例えば石英ガラスによって紫外線透過性を有する部材によって構成される。
【0022】
また、平板状の光照射窓5は、紫外線ランプ3に対向する面に対して反対側の面、すなわち被照射物Wに対向する面に、金(Au)又は白金(Pt)からなる薄膜6が設けられる。
具体的には、図2に示すように、光照射窓5を被照射物W(搬送ユニット7)側から見た図であるが、光照射窓5において、被照射物Wに対向する面の全面に、金又は白金からなる薄膜6が設けられている。
金又は白金からなる薄膜6は、例えば蒸着法によって、光照射窓5の被照射物Wに対向する面に成膜される。このとき、金又は白金からなる薄膜6は、1〜10nmという極めて薄い膜厚になるように形成される。これは、反応性生物による光照射窓5の固着を抑制するためには、金又は白金からなる薄膜6の膜厚が1nm以上であることが好ましいためである。また、紫外線ランプ3から放射された紫外線UVは、光照射窓5及び金又は白金からなる薄膜6を透って、被照射物Wに照射されることから、被照射物Wを処理するために十分な紫外線UVを透過するため、金又は白金からなる薄膜6の膜厚が10nm以下であることが好ましい。
【0023】
紫外線ランプ3は、詳細な図示は省略するが、円筒状の外側管と、該外側管の内部に設けられた円筒状の内側管と、該外側管と該内側管との両端を封止する円環状の端壁部と、により、放電容器が構成される。また、紫外線ランプ3は、該内側管の内部に設けられた内側電極と、該外側管の外周面に設けられた外側電極と、により構成される。
【0024】
放電容器は、外側管と内側管と端壁部とにより、密閉された放電空間が構成され、該放電空間に発光ガスとして例えばキセノンガスが封入される。
外側管の外周面には、外側電極が設けられ、内側管の内部には内側電極が設けられることにより、一対の電極が放電空間313を介して対向配置される。
【0025】
図1に示すように、上述したランプユニット2の紙面下側には、搬送ユニット7が配置される。
搬送ユニット7は、複数の円柱状のローラ72と、該ローラ72を回転駆動させる複数の駆動体71により構成される。
搬送ユニット7は、ローラ72上に被照射物Wが配置され、光照射窓5に対向するように被照射物Wを搬送する。
【0026】
上述の第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、図示しない電源から給電されることで、具備する紫外線ランプ3から紫外線UVが放射される。
紫外線ランプ3は、一対の電極に高電圧・高周波が給電されることで、発光ガスによってエキシマ発光を生じ、該発光ガスがキセノンガスのとき172nmにピーク波長を有する紫外線UVを放射させる。
該紫外線UVは、大気に吸収されるが、該紫外線ランプ3を取り囲む筐体4内部が不活性ガスで充填されていることから、紫外線UVの吸収は筐体4内部では抑制される。
【0027】
光照射窓5は、紫外線透過性を有する部材によって構成されていることから、紫外線ランプ3から放射された紫外線UVが透過される。
光照射窓5は、その紫外線ランプ3に対向する面に対して反対側の面(図1において被照射物Wに対向する面)に、金又は白金からなる薄膜6が設けられているが、該薄膜6は紫外線UVを透過するように薄く形成されている。このため、光照射窓5を透過した紫外線UVは、該薄膜6においても透過され、被照射物Wに照射され、被照射物Wを好適に処理することができる。
【0028】
搬送ユニット7の内部においては、被照射物Wを紫外線処理するまでに使用された有機溶剤,酸,アルカリなどの各種薬品が気化して遊離したものが存在する。このため、これら薬品によって、金又は白金からなる薄膜6に反応生成物が付着することがある。
金又は白金は、化学的に極めて安定な金属であり、他の化合物である例えば二酸化ケイ素(SiO)のような酸化物との反応性が極めて低い。このため、金又は白金からなる薄膜6に反応生成物が付着しても、該薄膜6と反応生成物とが化合物を形成して固着することが殆んどない。
これにより、第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、光照射窓5の紫外線ランプ3に対向する面に対して反対側の面に金又は白金からなる薄膜6を設けたことにより、該薄膜6に反応生成物が付着するので、光照射窓5における該薄膜6が設けられた面に反応生成物が固着することが抑制できる。
さらに、第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、金又は白金からなる薄膜6が化学的に極めて安定であるため、該薄膜6に反応生成物が付着しても、固着することが抑制されることから、反応生成物を拭き取ることができる。従って、第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、反応生成物を拭き取ることができるので、反応生成物による紫外線UVの遮光を抑制できる。
【0029】
第1の実施例では、光照射窓5を具備した紫外線照射装置1について説明した。次に、光照射窓5を具備しない場合の紫外線照射装置1について、第2の実施例及び第3の実施例として説明する。
【0030】
図3は、第2の実施例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、具備する紫外線ランプ3の長手方向に対して直交する断面図である。
図4は、図3の紫外線照射装置1に具備される紫外線ランプ3の説明図である。図4(a)は紫外線ランプ3の長手方向に沿った断面図であり、図4(b)は図4(a)の紫外線ランプ3の長手方向に対して直交する断面図(図4(a)のA−A断面図)である。
なお、図中には金又は白金からなる薄膜6を図示しているが、該薄膜6の厚みを、実際の厚みよりも極端に厚く図示している。
また、図3及び図4には、図1及び図2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0031】
図3及び図4に記載の第2の実施例は、光照射窓5を具備しない点と、金又白金からなる薄膜6を紫外線ランプ3に設けた点で、図1及び図2に記載の第1の実施例と相違する。
図3及び図4に記載の第2の実施例の説明として、第1の実施例と共通する部分の説明は省略し、相違する部分の説明について述べる。
【0032】
筐体4は、開口部43が搬送ユニット7の内部に連通するように構成される。このため、筐体4の開口部43に対向するように被照射物Wが搬送されると、図3に示すように、筐体4の内部に配置された紫外線ランプ3と照射物Wとが直接対向される。
【0033】
該紫外線ランプ3は、図4に示すように、円筒状の内管312と、該内管312の外周面を取り囲むように配置された円筒状の外管311と、該外管311の長手方向における両端に設けた封止部314,315と、により放電容器31が構成される。また、紫外線ランプ3は、該内管312の内部に設けられた内電極322と、該外管311の外周面に設けられた網状の外電極321と、により構成される。さらにまた、紫外線ランプ3は、放電容器31の外周面を取り囲む流路管36と、該流路管36の両端に設けられたベース371,372と、により構成される。これにより、紫外線ランプ3は、放電容器31を構成する内管312及び外管311と、流路管36とが互いの中心軸が一致するように、3重管状に構成される。
【0034】
内管312と外管311とからなる2重管状の放電容器31は、外管311の両端が封止部314,315により封止されることで、密閉された放電空間313が構成され、該放電空間313に発光ガスとして例えばキセノンガスが封入される。
外管311の外周面には外電極321が設けられ、内管312の内部には内電極322が設けられることにより、一対の電極321,322が放電空間313を介して対向配置される。
【0035】
放電容器31の封止部314,315の両端には突出する例えばタングステンからなる外部リード331,332が配置され、放電容器31の封止部314,315は外管311の管軸方向の両端のパイプ体を溶融状態にして圧潰するピンチシール法により形成されたものであり、放電容器31の封止部314,315内には内部リード341,342と外部リード331,332とを電気的に接続する例えばモリブデンからなる箔351,352が埋設される。また、放電容器31の封止部314,315はパイプ体を溶融状態にして内部を減圧することにより形成するシュリンクシール法により形成しても良い。
内部リード341,342は、内電極322と電気的に接続されることで、一対の外部リード331,332と内電極322とが電気的に接続される。
【0036】
流路管36は、その中心軸に2重管状の放電容器31が位置するように配置され、流路管36の長手方向における両端に設けられたベース371,372によって、放電容器31に保持される。
該流路管36を構成する部材としては、例えば石英ガラスのような紫外線透過性を有する部材が挙げられる。
【0037】
流路管36は、その長手方向において、図4(a)に示すように、その長手方向に沿って外周面に金又は白金からなる薄膜6が設けられる。また、この金又は白金からなる薄膜6は、流路管36の長手方向に対して直交する断面において、図4(b)に示すように、少なくとも流路管36の外周面の半周に設けられる。
【0038】
ベース371,372には、保持部374が設けられており、該保持部374が放電容器31の封止部314,315の外周面に嵌合され、又は、接着剤によって接着される。また、ベース371,372は流路管36の外周面に嵌合され、又は、接着剤によって接着される。これにより、ベース371,372は、流路管36を放電容器31に固定させる。
【0039】
また、該ベース371,372には、流路管36の内部と流路管36の外部とを連通させる貫通孔373が設けられる。ランプ点灯時、該貫通孔373を通じて、流路管36の内部には、紫外線透過性を有する不活性ガスとして、例えば窒素,アルゴン又はネオンが流通される。
【0040】
図4に示した紫外ランプは、図3に示す紫外線照射装置1に具備されるとき、流路管36の外周面に設けた金又は白金からなる薄膜6が、被照射物Wに対向するように配置される。
【0041】
上述の第2の実施例に係る紫外線照射装置1は、図示しない電源から給電されることで、具備する紫外線ランプ3から紫外線UVが放射される。
紫外線ランプ3は、一対の電極に高電圧・高周波が給電されることで、発光ガスによってエキシマ発光を生じ、該発光ガスがキセノンガスのとき172nmにピーク波長を有する紫外線UVを放射させる。
該紫外線UVは、大気に吸収されるが、紫外線ランプ3の流路管36の内部に不活性ガスが流通されていることから、紫外線UVの吸収は流路管36の内部では抑制される。
【0042】
流路管36は、紫外線透過性を有する部材によって構成されていることから、放電容器31から放射された紫外線UVが透過される。
流路管36の外周面には、金又は白金からなる薄膜6が設けられているが、該薄膜6は紫外線UVを透過するように薄く形成されている。このため、流路管36を透過した紫外線UVは、該薄膜6においても透過され、被照射物Wに照射され、被照射物Wを好適に処理することができる。
【0043】
第2の実施例に係る紫外線照射装置1は、紫外線ランプ3と被照射物Wを直接対向する構成であっても、流路管36の外周面に金又は白金からなる薄膜6を設け、該薄膜6を被照射物Wに対向配置させたことにより、該薄膜6に反応生成物が付着するので、流路管36における該薄膜6が設けられた面に反応生成物が固着することが抑制できる。
さらに、第2の実施例に係る紫外線照射装置1は、金又は白金からなる薄膜6が化学的に安定であるため、該薄膜6に反応生成物が付着しても、固着することが抑制されることから、反応生成物を拭き取ることができる。従って、第2の実施例に係る紫外線照射装置1は、反応生成物を拭き取ることができるので、反応生成物による紫外線UVの遮光を抑制できる。
【0044】
なお、金又は白金からなる薄膜6の流路管36に設ける範囲としては、次の範囲が好ましい。第2の実施例に係る紫外線ランプ3は、一対の電極321,322間での放電によって発光ガスからエキシマ発光を生じるので、流路管36の長手方向においては、少なくとも一対の電極321,322が対向している範囲に金又は白金からなる薄膜6を設けることが好ましい。また、被照射物Wは、紫外線ランプ3から放射される紫外線UVを照射されて処理されることから、流路管36の長手方向に対して直交する断面においては、少なくとも被照射物Wが対向する範囲、すなわち円筒状の流路管36の外周面の少なくとも半周の範囲に設けることが好ましい。
【0045】
図5は、第3の実施例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、具備する紫外線ランプ3の長手方向に対して直交する断面図である。
図6は、図5の紫外線照射装置1に具備される紫外線ランプ3の説明図である。図6(a)は紫外線ランプ3の斜視図であり、図6(b)は図6(a)の紫外線ランプ3の長手方向に対して直交する断面図(図6(b)のB−B断面図)である。
なお、図中には金又は白金からなる薄膜6を図示しているが、該薄膜6の厚みを、実際の厚みよりも極端に厚く図示している。
また、図5及び図6には、図3及び図4に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0046】
図5及び図6に記載の第3の実施例は、紫外線ランプ3の構成が異なる点で、図3及び図4に記載の第2の実施例と相違する。
図5及び図6に記載の第3の実施例の説明として、第2の実施例と共通する部分の説明は省略し、相違する部分の説明について述べる。
【0047】
紫外線ランプ3は、図6に示すように、両端に端壁部316が設けられた直方体状の放電容器31と、該放電容器31の対向する外面のそれぞれに設けられた一対の外電極381,382と、により構成される。
【0048】
放電容器31は、その内部に密閉された放電空間313を有する管状であり、該放電空間313に発光ガスとして例えばキセノンガスが封入される。
【0049】
放電容器31の外面に設けられた一対の外電極381,382は、図6(b)に示すように、放電空間313を介して対向配置される。この外電極381,382は、例えば銅と低融点ガラスとを混合した導電性ペーストを放電容器31の外面に網状に塗布して焼成することで形成したものである。
【0050】
他方の外電極382が設けられた放電容器31の平坦な外面には、例えば蒸着法によって、金又は白金からなる薄膜6が成膜される。金又は白金からなる薄膜6は、図6(a)に示すように、他方の外電極382が設けられた放電容器31の平坦な外面を、その長手方向に沿って設けられる。
【0051】
第3の実施例に係る紫外線照射装置1は、第2の実施例と同じように、紫外線ランプ3と被照射物Wとが直接対向される構成であるが、放電容器31の外面に金又は白金からなる薄膜6を設け、該薄膜6を被照射物Wに対向させたことにより、第2の実際例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0052】
なお、第3の実施例に係る紫外線ランプ3は、放電容器31の外面に一対の電極381,382を具備することから、金又は白金からなる薄膜6が一対の電極381,382を導通するように設けられると、短絡する問題がある。このため、金又は白金からなる薄膜6は、一対の電極381,382を導通しないように設けられる。
また、金又は白金からなる薄膜6の流路管36に設ける範囲としては、次の範囲が好ましい。第3の実施例に係る紫外線ランプ3は、一対の電極間での放電によって発光ガスからエキシマ発光を生じるので、流路管36の長手方向においては、少なくとも一対の電極が対向している範囲に金又は白金からなる薄膜6を設けることが好ましい。さらにまた、被照射物Wは、紫外線ランプ3から放射される紫外線UVを照射されて処理されることから、流路管36の長手方向に対して直交する断面においては、少なくとも被照射物Wが対向する範囲、すなわち直方体状の放電容器31を構成する平坦な外面の少なくとも一面の範囲に設けることが好ましい。特に、第3の実施例のように、一対の電極381,382が共に放電容器31の外面に設けられ、放射される紫外線UVが200nm以下にピーク波長を有する場合、紫外線UVが大気に吸収されないように、他方の外電極382と被照射物Wとが対向配置されることから、金又は白金からなる薄膜6は、他方の電極382が設けられる放電容器31の平坦な外面に設けられることが好ましい。
【0053】
なお、上述の第3の実施例に係る紫外線ランプ3では、図6(b)に示すように、他方の外電極382を設けた放電容器31の外面に、金又は白金からなる薄膜6を設けたが、放電容器31の外面に金又は白金からなる薄膜6を先に設け、その後に該薄膜6の外面に他方の電極382を設けてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施例に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図2】第1の実施例に係る紫外線照射窓の説明図である。
【図3】第2の実施例に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図4】第2の実施例に係る紫外線ランプの説明図である。
【図5】第3の実施例に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図6】第3の実施例に係る紫外線ランプの説明図である。
【図7】従来に係る紫外線照射装置の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 紫外線照射装置
2 ランプユニット
3 紫外線ランプ
31 放電容器
311 外管
312 内管
313 放電空間
314 一方の封止部
315 他方の封止部
316 端壁部
321 外電極
322 内電極
331 一方の外部リード
332 他方の外部リード
341 一方の内部リード
342 他方の内部リード
351 一方の箔
352 他方の箔
36 流路管
371 一方のベース
372 他方のベース
373 貫通孔
374 保持部
381 一方の外電極
382 他方の外電極
4 筐体
41 側壁
42 天板
43 開口部
5 光照射窓
6 金又は白金からなる薄膜
7 搬送ユニット
71 駆動体
72 ローラ

UV 紫外線
W 被照射物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプと、
該紫外線ランプを内部に配置した筐体と、
該紫外線ランプを該筐体と共に取り囲む平板状の光照射窓と、
からなる紫外線照射装置において、
該光照射窓の紫外線ランプに対向する面に対して反対側の面に金又は白金からなる薄膜を設けた
ことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
発光ガスが封入された放電空間を有する管状の放電容器と、
該放電空間を介して対向配置された一対の電極と、
からなる紫外線ランプにおいて、
該管状の放電容器の長手方向に沿って、該放電容器の外面に、金又は白金からなる薄膜を設けた
ことを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項3】
発光ガスが封入された放電空間を有する管状の放電容器と、
該放電空間を介して対向配置された一対の電極と、
該放電容器の外方を取り囲む流路管と、
からなる紫外線ランプにおいて、
該管状の放電容器の長手方向に沿って、該流路管の外面に、金又は白金からなる薄膜を設けた
ことを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の紫外線ランプを具備し、
該紫外線ランプを一面開口の筐体の内部に配置させ、
該筐体の一面開口と被照射物を対向配置させ、
該紫外線ランプの薄膜を被照射物に対向配置させた
ことを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−110699(P2010−110699A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285663(P2008−285663)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】