説明

組合せ軸受及び回転機械

【課題】複数の転がり軸受を均等かつ十分に潤滑できるとともに、構造が簡単で小型化が図れる潤滑性・信頼性に優れた組合せ軸受及びこの組合せ軸受を用いてなる回転機械を提供すること。
【解決手段】2つの転がり軸受11,13の端面同士を突き合わせて同一軸線上に配置してなる組合せ軸受10である。両転がり軸受11,13の突き合わせる側の外輪11b,13bの対向する側面に切り欠き11d,13dを設けることで、両転がり軸受11,13間の内部に潤滑油を導入する潤滑油導入口15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性・信頼性に優れた組合せ軸受及びこの組合せ軸受を用いてなる回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空ポンプなどの回転機械には回転軸を軸支する組合せ軸受が使用されている。組合せ軸受500は、例えば図8に示すように、2つ以上の転がり軸受(例えばアンギュラ玉軸受や深みぞ玉軸受けなどの玉軸受、さらにコロ軸受など)501,503を、直接(または両者間に間座を介在して)接合して構成される。そしてこの組合せ軸受500の潤滑・冷却は、組合せ軸受500の外側の側面から図8に矢印a1で示すように、潤滑油を供給することによって行われる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−88947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記図8に示す方法は、転がり軸受501の外側の側面から潤滑油を供給する方法なので、両転がり軸受501,503の間の内部空間への潤滑油の供給がスムーズには行えず、十分な潤滑が行えない。また潤滑油を供給する反対側にある転がり軸受503は、潤滑油を供給する側の転がり軸受501に比べて潤滑油の供給量が少なくなり、転がり軸受501に比べて十分な潤滑が行えなくなる恐れもある。一方両転がり軸受501,503を均等に潤滑するため、両転がり軸受501,503の両外側の側面から潤滑油を供給する構成にすると、潤滑油の供給ルートが2つになり、構造が複雑化してしまう。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、複数の転がり軸受を均等かつ十分に潤滑できるとともに、構造が簡単で小型化が図れる潤滑性・信頼性に優れた組合せ軸受及びこの組合せ軸受を用いてなる回転機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、2以上の転がり軸受の端面同士を直接または外輪間座及び内輪間座を介して間接に突き合わせて同一軸線上に配置してなる組合せ軸受であって、少なくとも何れか一方の転がり軸受の外輪または前記外輪間座に、両転がり軸受間の内部に潤滑油を導入する潤滑油導入口を形成したことを特徴とする組合せ軸受にある。
【0007】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の組合せ軸受であって、前記2以上の転がり軸受の端面同士は直接突き合わされており、且つ前記潤滑油導入口は、前記少なくとも何れか一方の転がり軸受の外輪の、他方の転がり軸受と突き合わせる側の側面に設けた切り欠きによって形成されていることを特徴とする組合せ軸受にある。
【0008】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の組合せ軸受であって、前記2以上の転がり軸受の端面同士は外輪間座及び内輪間座を介して間接に突き合わされており、且つ前記潤滑油導入口は、前記外輪間座に設けた切り欠きによって形成されていることを特徴とする組合せ軸受にある。
【0009】
本願請求項4に記載の発明は、回転軸を軸受によって軸支してなる回転機械であって、前記軸受として請求項1又は2又は3に記載の組合せ軸受を用いたことを特徴とする回転機械にある。
【0010】
本願請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の回転機械であって、前記回転機械は真空ポンプであることを特徴とする回転機械にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、隣り合う転がり軸受間の内部に直接潤滑油を供給できるので、これら複数の転がり軸受を容易かつ均等かつ十分に潤滑できる。さらに構造が簡単で、小型化が図れる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、転がり軸受の外輪の側面に切り欠きを設けるだけで潤滑油導入口が形成できるので、部品点数を少なくでき、構造も簡素化し、小型化及びコストダウンが図れる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、外輪間座に切り欠きを設けるだけで潤滑油導入口を容易に形成することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、上記組合せ軸受を用いて回転機械を構成したので、回転機械の耐久性・信頼性が向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、上記組合せ軸受を用いて真空ポンプを構成したので、真空ポンプの耐久性・信頼性が向上する。真空ポンプは半導体製造装置に広く使用されているが、真空ポンプが急に停止などすると半導体製造装置全体にその影響が及び、大きな損害が生じてしまう恐れがある。このため本発明にかかる耐久性・信頼性の高い真空ポンプを半導体製造装置の真空ポンプに用いることは好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】組合せ軸受10を用いて構成された真空ポンプ100の一例を示す概略側断面図である。
【図2】真空ポンプ100の組合せ軸受10近傍部分の要部拡大概略断面図である。
【図3】組合せ軸受10の要部拡大断面図である。
【図4】図3に示す組合せ軸受10を上側から見た図である。
【図5】組合せ軸受10−2の要部拡大断面図である。
【図6】図5に示す組合せ軸受10−2を上側から見た図である。
【図7】組合せ軸受10−3の要部拡大断面図である。
【図8】従来の組合せ軸受500の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかる組合せ軸受10を用いて構成された真空ポンプ100の一例を示す概略側断面図である。また図2は真空ポンプ100の組合せ軸受10近傍部分の要部拡大概略断面図である。
【0018】
真空ポンプ100はルーツ型のドライ真空ポンプであり、組合せ軸受10と軸受150に軸支された2本の回転軸153(図1,図2では1本の回転軸153のみ示している。もう1本の回転軸153は図1の紙面奥側に両回転軸153が水平で平行に並ぶように設置されている。)にルーツ型ロータ159を固定し、ロータケーシング161内に収納し、図示する一方の回転軸153の一端部にモータ163を取り付け、両回転軸153の他方の端部に両回転軸153を同期させて回転駆動するための歯車(タイミング歯車)165を取り付けて構成されている。
【0019】
図2に示すように、回転軸153の端部に取り付けた歯車165は、ギヤケース167内に収納されており、その内部は潤滑油169を溜めておく潤滑油室171になっている。歯車165の下端近傍部分は潤滑油169内に浸漬しており、また歯車165の一端面には油板173が取り付けられている。
【0020】
組合せ軸受10はその内輪が回転軸153の外周面に固定され、その外輪が軸受ケース175によって静止側に固定されている。
【0021】
図3は上記組合せ軸受10の部分の要部拡大断面図、図4は図3に示す組合せ軸受10を上側から見た図である。両図に示すように組合せ軸受10は、2つの転がり軸受11,13の端面同士を相互に直接突き合わせて接合し、両者を同一軸線上に配置して構成されている。各転がり軸受11,13は、リング状の内輪11a,13aとリング状の外輪11b,13bの間にそれぞれ複数個の転動体11c,13cを設置して構成されている。両転がり軸受11,13の外輪11b,13bの突き合わせる側の側面の対向する位置には、それぞれ外輪11b,13bの外周から内周にわたって半径方向に延びる切り欠き11d,13dが設けられており、これら切り欠き11d,13dによって1つの潤滑油導入口15が形成されている。
【0022】
そして図1に示すモータ163を駆動すれば、両回転軸153が同期反転し、両回転軸153に固定されたルーツ型ロータ159が互いに同期反転し、ルーツ型ロータ159の外周面とロータケーシング161の内周面との間に閉じ込められた気体が吸込側から吐出側に送り出され、これによって真空排気が行われる。同時に図2に示す油板173が回転することで油板173及び歯車165が潤滑油169を潤滑油室171の天井面まで掻き上げる。潤滑油室171の天井面に付着した潤滑油169は矢印で示すように軸受カバー177の上に滴下し、軸受ケース175に設けた導入路176を通して潤滑油導入口15から両転がり軸受11,13の間の内部に直接供給され、両転がり軸受11,13をその内側から均等に潤滑する。さらにこの真空ポンプ100においては軸受ケース175内の下部に設けた油溜り181に潤滑油169が溜まるので、溜まっている潤滑油169に組合せ軸受10の下部が浸かり、シャフト153の回転によってこの潤滑油169も掻き上げられて組合せ軸受10を潤滑する。そして余分な潤滑油169は軸受カバー177を越えて潤滑油室171に戻る。
【0023】
以上説明したように本実施形態にかかる組合せ軸受10によれば、隣り合う転がり軸受11,13間の内部に直接潤滑油169を供給できるので、これら複数の転がり軸受11,13を容易かつ均等かつ十分に潤滑できる。この組合せ軸受10を使用している真空ポンプ100はドライ真空ポンプなので、最小限の潤滑油169で効率よく潤滑しなければならないが、この組合せ軸受10によれば、少ない潤滑油169でも効率よく潤滑できるので効果的である。さらにこの組合せ軸受10は構造が簡単で、小型化が図れる。
【0024】
特にこの組合せ軸受10によれば、転がり軸受11,13の外輪11b,13bの側面に切り欠き11d,13dを設けるだけで潤滑油導入口15が形成できるので、部品点数を少なくでき、構造も簡素化でき、小型化及びコストダウンが図れる。また下記する第2実施形態にかかる軸受11,13のように間座21,23を用いないので、間座21,23のスペースを省略でき、その分省スペース化が図れ、さらに間座21,23の精度の影響もなく、組合せ軸受10としての精度・信頼性がより向上する。
【0025】
そして上記組合せ軸受10を用いたので、真空ポンプ100の耐久性・信頼性が向上し、真空ポンプ100全体の小型化も図れる。真空ポンプ100は半導体製造装置に広く使用されているが、真空ポンプ100が急に停止などすると半導体製造装置全体にその影響が及び、大きな損害が生じてしまう恐れがある。このため本発明にかかる耐久性・信頼性の高い組合せ軸受10を半導体製造装置用の真空ポンプ100に用いることは好適である。もちろん真空ポンプ100は半導体製造装置以外の他の各種装置に用いても良いことは言うまでもない。
【0026】
図5は本発明の第2実施形態にかかる組合せ軸受10−2の要部拡大断面図、図6は図5に示す組合せ軸受10−2を上側から見た図である。両図に示す組合せ軸受10−2において、前記図1〜図3に示す実施形態にかかる組合せ軸受10と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図3に示す実施形態と同じである。この組合せ軸受10−2において前記組合せ軸受10と相違する点は、2つの転がり軸受11,13の端面同士を相互に直接突き合わせる代わりに、2つの転がり軸受11,13の端面同士をリング状の外輪間座21及びリング状の内輪間座23を介して間接に突き合わせて接合し、両者を同一軸線上に配置して構成し、さらに外輪間座21の一方の側面に、外輪間座21の外周から内周にわたって半径方向に延びる切り欠き21dを設け、この切り欠き21dによって潤滑油導入口15を形成した点である。
【0027】
そして、前記第1実施形態と同様にモータ163を駆動すれば、真空ポンプ100の運転が行われ、同時に組合せ軸受10―2の潤滑油導入口15から潤滑油169が両転がり軸受11,13の間の内部に直接供給され、前記第1実施形態の場合と同様に、両転がり軸受11,13をその内側から均等且つ十分に潤滑する。
【0028】
すなわちこの実施形態にかかる組合せ軸受10−2の場合も、隣り合う転がり軸受11,13間の内部に直接潤滑油169を供給できるので、これら複数の転がり軸受11,13を容易かつ均等かつ十分に潤滑できる。またこの組合せ軸受10−2を用いた真空ポンプ100の耐久性・信頼性が向上する。
【0029】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記第1実施形態では、潤滑油導入口15を形成するために、転がり軸受11,13の両者に切り欠き11d,13dを設けたが、たとえば図7に示す組合せ軸受10−3のように、一方の転がり軸受13の外輪13bのみに切り欠き13dを設けることで潤滑油導入口15を形成しても良い。このように構成すれば切り欠き13dを設けるのが一方の転がり軸受13のみで良くなり、構造がさらに簡素化され、製造コストも低下する。また上記各実施形態では、潤滑油導入口15を1か所のみに形成したが、複数か所に形成しても良い。
【0030】
また上記各実施形態では2つの転がり軸受11,13によって組合せ軸受10を構成したが、3つ以上の転がり軸受の端面同士を直接または間座を介して間接に突き合わせて同一軸線上に配置することで組合せ軸受を構成しても良い。その場合は、隣り合う転がり軸受の間の全てまたは一部に潤滑油導入口を設ける。また上記各実施形態では転がり軸受11,13として玉軸受を使用しているが、ころ軸受などの他の軸受を使用しても良い。また転がり軸受11,13はリテーナ付きでも良いし、リテーナなしのタイプでも良い。また上記各実施形態では本発明にかかる組合せ軸受を真空ポンプに適用した例を示したが、真空ポンプ以外の各種回転機械(他の各種ポンプ、圧縮機、工作機械のシャフトなど)に適用しても良い。要は回転軸を軸受によって軸支してなる回転機械であればよい。
【符号の説明】
【0031】
10 組合せ軸受
11 転がり軸受
11a 内輪
11b 外輪
11c 転動体
11d 切り欠き
13 転がり軸受
13a 内輪
13b 外輪
13c 転動体
13d 切り欠き
15 潤滑油導入口
100 真空ポンプ(回転機械)
153 回転軸
159 ルーツ型ロータ
161 ロータケーシング
163 モータ
165 歯車(タイミング歯車)
167 ギヤケース
169 潤滑油
171 潤滑油室
173 油板
175 軸受ケース
177 軸受カバー
10−2 組合せ軸受
21 外輪間座
21d 切り欠き
23 内輪間座
10−3 組合せ軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の転がり軸受の端面同士を直接または外輪間座及び内輪間座を介して間接に突き合わせて同一軸線上に配置してなる組合せ軸受であって、
少なくとも何れか一方の転がり軸受の外輪または前記外輪間座に、両転がり軸受間の内部に潤滑油を導入する潤滑油導入口を形成したことを特徴とする組合せ軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の組合せ軸受であって、
前記2以上の転がり軸受の端面同士は直接突き合わされており、
且つ前記潤滑油導入口は、前記少なくとも何れか一方の転がり軸受の外輪の、他方の転がり軸受と突き合わせる側の側面に設けた切り欠きによって形成されていることを特徴とする組合せ軸受。
【請求項3】
請求項1に記載の組合せ軸受であって、
前記2以上の転がり軸受の端面同士は外輪間座及び内輪間座を介して間接に突き合わされており、
且つ前記潤滑油導入口は、前記外輪間座に設けた切り欠きによって形成されていることを特徴とする組合せ軸受。
【請求項4】
回転軸を軸受によって軸支してなる回転機械であって、
前記軸受として請求項1又は2又は3に記載の組合せ軸受を用いたことを特徴とする回転機械。
【請求項5】
請求項4に記載の回転機械であって、
前記回転機械は真空ポンプであることを特徴とする回転機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−94769(P2011−94769A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251919(P2009−251919)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(509273260)株式会社荏原フィールドテック (2)
【Fターム(参考)】