説明

組成物

【課題】化粧料(但し、医薬部外品を含む)、食品等に好適な、新規な母核を有するメラニン産生抑制剤、並びに、当該成分を含有する組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩からなるメラニン産生抑制剤、ならびに、当該成分を含有する組成物。


(1)
[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)、食品等に好適な組成物に関し、詳しくは、下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤、並びに、当該成分を含有する組成物に関する。
【化1】

(1)
[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【背景技術】
【0002】
皮膚における日焼け後の色素沈着、シミ、肝斑、老人性色素斑などは、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進することにより生じる肌症状である。この様な皮膚色素沈着関連のトラブルの発生・悪化に対し予防又は改善作用を有する成分としては、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、カテコ−ル等の美白作用を有する化合物(美白剤)がよく知られ(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照)、これらの有効成分を配合した皮膚外用剤が広く使用されている。現在、既存の美白剤が有する作用機序としては、チロシナ−ゼ酵素阻害作用(例えば、特許文献1を参照)、チロシナ−ゼ関連蛋白分解、メラノサイトにおけるデンドライト伸長抑制(例えば、特許文献2を参照)によるメラニン移送阻害などの多様な作用機序が報告されている。しかしながら、前記の美白剤には、安全性又は安定性に課題を有する化合物も存し、十分に満足出来る状況とは言い難い。このため、新たな美白剤を求め、既存の標的分子に対し高い有効性及び選択性を有する新規母核を有する化合物のほか、同時に複数の美白作用機序に働きかける化合物、更には、新たな作用機序を有する化合物等に関する研究が盛んに行われている。
【0003】
プロトンポンプ阻害剤は、細胞又は細胞小器官内外のプロトン濃度勾配に逆らってプロトンを輸送するプロトンポンプに作用し、細胞又は細胞小器官内外のプロトン濃度を調整することにより目的とする生物活性を発揮する。前記のプロトンポンプには、能動動的に輸送する膜ATPase(F型ATPase群、V型ATPase群、P型ATPase群)に加え、Na/K-ATPaseと共役的に働きプロトンを輸送するNa/H交換輸送体等が存在する。現在、ランソプラゾ−ルなどのプロトンポンプ阻害剤は、膜ATPase(H/K-ATPase)阻害作用を有し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の治療薬として利用されている。しかしながら、皮膚におけるプロトンポンプ阻害剤の薬理作用、取り分け、Na/H交換輸送体への作用に関しては全く知られていない。本出願人は、この様な状況において、プロトンポンプ阻害剤、取り分け、Na/H交換輸送体に作用するプロトンプ阻害剤が、色素細胞又は細胞小器官内の酸性化作用を有し、当該作用を介することによりメラニン産生抑制作用、並びに、美白作用を発揮することを見出した。即ち、プロトンポンプ阻害剤は、細胞又は細胞小器官内を酸性化することにより、チロシナ−ゼ酵素活性を低下させ、メラニン産生抑制作用及び美白作用等の色素沈着予防又は改善効果を発揮する。このため、プロトンポンプ阻害剤は、チロシナ−ゼ酵素阻害作用、チロシナ−ゼ関連蛋白分解作用、メラノサイトにおけるデンドライド伸長抑制によるメラニン移送阻害作用等の様々な作用機序を有する従来の美白剤とは全く異なる作用機序を有する新たな美白剤として有用である。
【0004】
また、ショウガ科に属する植物には、ショウガオ−ル誘導体、ジンゲロ−ル誘導体、ジンジャ−ジオ−ル誘導体、脂肪族ケトン類等の様々な生理活性化合物が含有されている(例えば、非特許文献3を参照)ことが報告されている。さらに、ショウガ科に属する植物には、前記誘導体に加え、ジンジャ−ジオン及びデヒドロジンジャ−ジオン誘導体が含有されること知られ、これら化合物には、一酸化窒素産生抑制作用、貪食促進作用等の生物活性(例えば、非特許文献4を参照)が存することが知られている。しかしながら、デヒドロジンジャ−ジオン誘導体に、メラニン産生抑制作用及びプロトンポンプ阻害作用が存すること、更には、当該化合物を含有する組成物に、色素沈着予防又は改善作用等が存することは全く知られていなかった。このため、前記一般式(1)に表される化合物は、新たな作用機序を有するメラニン産生抑制剤として有用であり、当該化合物を含有する組成物には、優れた色素沈着予防又は改善効果が期待出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−196895号公報
【特許文献2】特開2003−113027号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】武田克之ら監修、「化粧品の有用性、評価技術と将来展望」、薬事日報社刊(2001年).
【非特許文献2】大森敬之、FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊、No.14、1995、 118−126.
【非特許文献3】Zhang K. et al., Se Pu. 26(6), 692-696(2008)
【非特許文献4】Koh EM. et al., Planta Med., 75(2), 148−151(2009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な状況下において為されたものであり、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤、並びに、当該化合物を含有する組成物を提供することを課題とする。
【0008】
この様な状況を鑑みて、本発明者等は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)、食品等に好適なメラニン産生抑制剤を求めて鋭意努力を重ねた結果、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、プロトンポンプ阻害作用によるメラニン産生抑制作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下に示す通りである。
<1> 下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤。
【0009】
【化1】

(1)
[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0010】
<2> 前記一般式(1)に表される化合物が、下記一般式(2)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>に記載のメラニン産生抑制剤。
【0011】
【化2】

(2)
[式中、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R8は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0012】
<3> 前記一般式(2)に表される化合物が、下記一般式(3)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のメラニン産生抑制剤。
【0013】
【化3】

(3)
[式中、R9は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R10は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0014】
<4> 前記一般式(3)に表される化合物が、下記一般式(4)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のメラニン産生抑制剤。
【0015】
【化4】

(4)
[式中、R11は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0016】
<5> 前記一般式(1)〜(4)に表される化合物が、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
【0017】
【化5】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(化合物1)
【0018】
【化6】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(化合物2)
【0019】
【化7】

4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(化合物3)
【0020】
<6> 前記メラニン産生抑制剤の起源が、ショウガ科ショウガ属に属する植物より得られる植物抽出物であることを特徴とする、<1>〜<5>の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
<7> 前記ショウガ科ショウガ属に属する植物が、ショウガ科ショウガ属ショウガであることを特徴とする、<6>に記載のメラニン産生抑制剤。
<8> 前記メラニン産生抑制作用が、プロトンポンプ阻害作用によることを特徴とする、<1>〜<7>の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
<9> 前記プロトンポンプ阻害作用が、Na/H交換輸送系への作用であることを特徴とする、<1>〜<8>の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
<10> <1>〜<9>に記載のメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
<11> <1>〜<9>に記載のメラニン産生抑制剤を組成物全量に対し0.000001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、<10>に記載の組成物。
<12> 色素沈着予防又は改善用であることを特徴とする、<10>又は<11>に記載の組成物。
<13> 食品、医薬品又は化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<10>〜<12>の何れか一項に記載の組成物。
<14> 皮膚外用剤であることを特徴とする、<10>〜<13>の何れか一項に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の化合物1のメラノサイト内酸性化検出(プロトンポンプ阻害作用)検討に結果を示す図である。
【図2】本発明のショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物のメラノサイト内酸性化検出(プロトンポンプ阻害作用)検討
【発明を実施するための形態】
【0022】
<本発明の組成物の必須成分である前記一般式(1)に表される化合物>
本発明の組成物は、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする。また、前記一般式(1)〜(4)に表される化合物には、幾何異性体に加え、互変異性体が存するが、この様な異性体も本発明の前記一般式(1)〜(4)に表される化合物よりなるメラニン産生抑制剤に包含される。本発明の前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤は、前記一般式(1)に表される化合物の内、メラニン産生抑制作用を有する化合物であれば、特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、後記の実施例に記載の「メラニン産生抑制作用評価」において、メラニン産生抑制作用を示す物質が好適に例示出来る。本発明の「メラニン産生抑制評価」においてメラニン産生抑制作用を示す成分とは、細胞毒性を示さない被験物質添加濃度において、コントロ−ル群に比較し50%以下のレベルまでメラニン産生を抑制する成分を意味する。また、本発明の前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤が有する作用機序としては、色素細胞(メラノサイト)におけるメラニン産生を抑制する作用機序であれば、特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、プロトンポンプ阻害作用によるメラニン産生抑制作用であることが好ましい。また、本発明においてプロトンポンプ阻害作用を有する成分としては、細胞又は細胞小器官内外におけるプロトン濃度を調節する機能を有する生体機能分子に働きかけることにより、細胞又は細胞小器官内外におけるプロトン濃度を調節する作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来る。かかるプロトンポンプ阻害作用を有する成分の内、好ましいものを挙げれば、能動的なプロトン輸送を担う膜H−ATPaseのみならず、Na/K−ATPase等のイオンポンプと共役的に働きプロトンを受動輸送するNa/H交換輸送体に働きかけることにより細胞又は細胞小器官内外におけるプロトン濃度を調節する成分等が好適に例示出来、さらに好ましくは、細胞又は細胞小器官内の酸性化作用(プロトンポンプ阻害作用)を有する成分が好適に例示出来る。また、本発明におけるプロトンポンプ阻害作用を有する成分の内、好ましいものの具体例を挙げれば、後述する「メラノサイト内酸性化検出(プロトンポンプ阻害作用)検討」において、メラノサイト内を酸性化する作用(プロトンポンプ阻害作用)を示すプロトンポンプ阻害剤が好適に例示出来る。尚、本発明のメラノサイト内における酸性化作用を有するプロトンポンプ阻害剤とは、後述する「メラノサイト内酸性化検出(プロトンポンプ阻害作用)検討において、蛍光顕微鏡による目視観察により、pH感受性蛍光色素の発色強度の増強が認められる成分を意味する。
【0023】
ここで前記一般式(1)に表される化合物に付いて述べれば、式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基が好適に例示出来る。前記R1及びR2のフェニル基上の置換位置に付いては、特段の限定はないが、より好ましくは、R3及びR4を有する置換基に対しメタ及びパラ位が置換されていることが好ましい。前記R4は、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数5〜9の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物の内、好ましいものとしては、前記一般式(2)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましいものとしては、前記一般式(3)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、さらに好ましいものとしては、前記一般式(4)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物の内、好ましいものを具体的に例示すれば、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、プロトンポンプ阻害作用に基づく優れたメラニン産生抑制作用を有する。かかる化合物が有するメラニン産生抑制は、プロトンポンプ阻害作用、取り分け、Na/H交換輸送体の阻害作用によるものである。さらに、かかる化合物は、製剤化等に使用される極性又は非極性溶媒への溶解性、製剤中の安定性に優れ、製剤化が容易であるほか、皮膚貯留性に優れ、色素沈着予防又は改善等の美白効果を発揮する。加えて、かかる化合物は、天然物中に含有される化合物であり、安全性にも優れる。
【0024】
ここで前記一般式(2)に表される化合物に付いて述べれば、式中、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R8は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基が好適に例示出来る。前記R8は、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数5〜9の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が好適に例示出来、さらに好ましくは、ペンチル基、ヘプチル基、ノニル基が好適に例示出来る。前記一般式(2)に表される化合物の内、前記一般式(3)及び前記一般式(4)に属さない化合物に関し具体例を挙げれば、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−デカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−3−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1−ヘプタジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(4−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(3−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−ジオン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(4−ブチルオキシ−3−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、その異性体及び/又はそれらの塩が好適に例示出来る。前記一般式(2)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の内、好ましいものとしては、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(2)に表される化合物の内、より好ましいものとしては、前記一般式(3)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、さらに好ましいものとしては、前記一般式(4)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。かかる化合物は、プロトンポンプ阻害作用に基づく優れたメラニン産生抑制作用を有する。かかる化合物が有するメラニン産生抑制は、プロトンポンプ阻害作用、取り分け、Na/H交換輸送体の阻害作用によるものである。さらに、かかる化合物は、製剤化等に使用される極性又は非極性溶媒への溶解性、製剤中の安定性に優れ、製剤化が容易であるほか、皮膚貯留性に優れ、色素沈着予防又は改善等の美白効果を発揮する。加えて、かかる化合物は、天然物中に含有される化合物であり、安全性にも優れる。
【0025】
ここで前記一般式(3)に表される化合物に付いて述べれば、式中、R9は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R10は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R9は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基が好適に例示出来る。前記R10は、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数5〜9の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基が好適に例示出来、さらに好ましくは、ペンチル基、ヘプチル基、ノニル基が好適に例示出来る。前記一般式(3)に表される化合物に関し具体例を挙げれば、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン(1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン化合物2)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(3−エトキシー4−ヒドロキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(3−エトキシー4−ヒドロキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−プロピルオキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシー4−ヒドロキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(3−ブチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、その異性体及び/又はそれらの塩が好適に例示出来、これらの内、より好ましいものとしては、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、プロトンポンプ阻害作用に基づく優れたメラニン産生抑制作用を有する。かかる化合物が有するメラニン産生抑制は、プロトンポンプ阻害作用、取り分け、Na/H交換輸送体の阻害作用によるものである。さらに、かかる化合物は、製剤化等に使用される極性又は非極性溶媒への溶解性、製剤中の安定性に優れ、製剤化が容易であるほか、皮膚貯留性に優れ、色素沈着予防又は改善等の美白効果を発揮する。加えて、かかる化合物は、天然物中に含有される化合物であり、安全性にも優れる。
【0026】
ここで前記一般式(4)に表される化合物に付いて述べれば、式中、R11は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R11は、炭素数1〜12、より好ましくは、炭素数5〜9の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好適に例示出来、これらの内、より好ましくは、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が好適に例示出来、さらに好ましくは、ペンチル基、ヘプチル基、ノニル基が好適に例示出来る。前記一般式(5)に表される化合物に関し具体例を挙げれば、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ヘキサジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ヘプタジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−オクタジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ノナジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−デカジエン−5−オン(1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ウンデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン化合物2)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−トリデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ペンタデカジエン−5−オン、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−ヘキサデカジエン−5−オン、その異性体及び/又はそれらの塩が好適に例示出来、これらの内、より好ましいものとしては、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、プロトンポンプ阻害作用に基づく優れたメラニン産生抑制作用を有する。かかる化合物が有するメラニン産生抑制は、プロトンポンプ阻害作用、取り分け、Na/H交換輸送体の阻害作用によるものである。さらに、かかる化合物は、製剤化等に使用される極性又は非極性溶媒への溶解性、製剤中の安定性に優れ、製剤化が容易であるほか、皮膚貯留性に優れ、色素沈着予防又は改善等の美白効果を発揮する。加えて、かかる化合物は、天然物中に含有される化合物であり、安全性にも優れる。
【0027】
斯くして得られた前記一般式(1)〜(4)に表される化合物、その異性体は、そのまま使用することも出来るし、アルカリと共に処理するなどして、塩の形態として使用することも出来る。一般式(1)〜(4)に表される化合物、その異性体の塩としては、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されない。薬理学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ−ルアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩などが好適に例示出来る。
【0028】
前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、新規化合物である。また、本発明の前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤としては、単純な化学物質、又は、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有する植物由来の抽出物等の形態が好適に例示出来、かかる化合物又は植物抽出物を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、植物由来の抽出物とは、植物抽出物自体、植物抽出物を分画、精製した分画、植物抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。かかる植物抽出物の内、好ましいものとしては、ショウガ科ショウガ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。ショウガ科ショウガ属ショウガは、熱帯アジア原産の世界中で栽培される多年草であり、日本においては、静岡、愛知、岡山等で食用又は生薬等として生産されており、生薬又は抽出物等の形態で市販されている。また、根茎は、ショウキョウと呼ばれ、生薬等に利用されている。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有するショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物は、実施例1に記載の方法に従い製造することも出来るし、丸善株式会社、一丸ファルコス株式会社、株式会社ウチダ和漢薬などにより市販されている抽出物を購入し、使用することも出来る。また、日本において生育し、販売されているショウガの根茎(ショウキョウ)を溶媒抽出により得ることも出来る。
【0029】
本発明におけるショウガ科に属する植物より得られる抽出物は、日本においては、自生又は生育された植物、漢方生薬原料等として販売される日本産のものを用い抽出物を作製することも出来るし、市販の植物抽出物を取り扱う会社より販売されている市販の抽出物を購入し、使用することも出来る。前記植物より得られる植物抽出物の作製に用いる植物部位には、特段の限定がなく、全草を用いることが出来るが、勿論、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位のみを使用することも出来、より好ましくは、根茎(ショウキョウ)が好適に例示出来る。抽出に際し、植物体などの抽出に用いる部位は、予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物製造においては、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することが出来る。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ−などで分画精製し、所望の抽出物を得ることが出来る。ここで、本発明の植物より得られる抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する
【0030】
前記抽出溶媒としては、ショウガ科に属する植物に含有される脂溶性成分を溶解することが出来る溶媒であれば、特段の限定なく適応することが出来、特に好ましくは、脂質可溶性溶媒である、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、1,3−ブタンジオ−ル、ポリプロピレングリコ−ルなどの多価アルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素類等のから選択される1種乃至は2種以上が好適に例示出来る。
【0031】
本発明の前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤は、細胞又は細胞小器官等に存在する膜成分であるプロトンポンプ(膜H−ATPase)、又は、イオンポンプであるNa/K−ATPaseと共役的に働くNa/H交換輸送系などを阻害することにより、細胞又は細胞小器官内外におけるプロトン輸送を阻害し、細胞又は細胞小器官内外のプロトン濃度を調節する、取り分け、細胞又は細胞小器官内におけるプロトン濃度を高める酸性化作用(プロトンポンプ阻害作用)に優れる。細胞又は細胞小器官内の酸性化作用は、細胞又は細胞小器官内等に存在するpH依存的な機能分子(例えば、酵素、イオンチャネル等)の生物活性又は機能を変化させる。特に、細胞又は細胞小器官内を酸性化することは、pH依存的な機能分子のひとつであるチロシナ−ゼ等の酵素活性を低下させ、メラニン産生を抑制することに繋がり、美白をはじめとする色素異常関連疾患に対する予防又は治療効果が期待される。
【0032】
本発明のメラニン産生抑制剤は、組成物全量に対し0.000001質量%〜20質量%、より好ましくは、0.000005質量%〜10質量%、さらに好ましくは、0.00001〜5質量%含有させることがより好ましい。これは、本発明のメラニン産生抑制剤の含有量が、少なすぎると細胞又は細胞小器官内における酸性化作用(プロトンポンプ阻害作用)によるチロシナ−ゼ酵素の活性低下作用、並びに、メラニン産生抑制作用を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。また、かかる成分は、細胞又は細胞小器官内における標的分子に対し高い選択性を有し、更には、標的部位への集積性及び選択性に優れ、高い安全性及び安定性を有するために、医薬、食品、化粧料などへの使用が好ましい。
【0033】
また、本発明者等は、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、取り分け、前記化合物1〜3が、天然物中に存在することを見出した。かかる化合物は、ショウガ科ショウガ属に属する植物により単離精製することが出来る。さらに、単離精製された化合物に関し各種スペクトル測定し、その化学構造を決定した。詳細な精製方法及び構造解析結果は、実施例1に後述する。
【0034】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする。本発明の組成物における前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、かかる化合物の内、1種又は2種以上を組み合わせて用い、当該物質をそのまま組成物に配合してもよく、また、かかる化合物をショウガ科ショウガ属に属する植物より得られる植物抽出物、より好ましくは、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物として配合することも出来る。尚、本発明の植物抽出物とは、抽出物自体、抽出物を分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の粗製物を本発明の組成物に含有させることは、処方の自由度が大きくなるという点でより好ましい。
【0035】
また、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、並びに、当該化合物を含有するショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロ−ス、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロ−スなどの結合剤、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、カルボキシメチルセルロ−スカルシウムなどの崩壊剤、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、マルチト−ルやソルビト−ルなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤、タルク、ロウ類などの滑沢剤、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲルなどの流動促進剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの希釈剤、矯味矯臭剤、着色剤、殺菌剤、防腐剤、香料など好適に例示出来る。経皮投与組成物であれば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリ−ブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル等の高級アルコ−ル、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。製造は、常法に従い、これらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
【0036】
本発明の組成物としては、医薬品、化粧品、食品、飲料などが好適に例示出来、日常的に摂取出来ることから、食品、化粧品などに適応することが好ましい。その投与経路も、経口投与、経皮投与の何れもが可能であり、その投与経路も、経口投与、経皮投与の何れもが可能であり、解毒(デトックス)の目的では、関連臓器への到達効率のよい経口投与を採用し、食品などの経口投与組成物の形態を採用することが好ましい。また、かかる成分が連続投与される場合、さらには安全性を考慮した場合、経皮的に投与されることが好ましい。皮膚に外用で適応されるものであれば特段の限定なく応用出来、例えば、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば、特段の限定無く使用することができ、例えば、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などが好適に例示でき、化粧料に適用することが特に好ましい。これは本発明の皮膚外用剤が、比類無き使用感の良さを有しているため、使用感が重要な化粧料に特に好適であるためである。化粧料としては、油中水乳化剤形を応用できるものであれば、特段の限定はなく、例えば、エッセンス、乳液、クリ−ム等の基礎化粧料、アンダ−メ−クアップ、ファンデ−ション、チ−クカラ−、マスカラ、アイライナ−などのメークアップ化粧料、ヘアクリ−ムなどの毛髪化粧料などが好適に例示できる。
【0037】
本発明の組成物は、メラニン産生抑制用である。「メラニン産生抑制用」の用途には、メラニン産生抑制により達成しようとする目的を主とした用途、例えば、「色素沈着改善用」、「美白用」、「シミ改善用」等の用途も含まれる。
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明に付いて更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定を受けないことは、言うまでもない。
【実施例1】
【0039】
<製造例1: 本発明のショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物の製造方法、前記一般式(1)に表される化合物の単離精製>
本発明のショウガ科ショウガ属ショウガ(ショウキョウ)より得られる植物抽出物の製造方法を示す。本抽出物は、ショウガZingiber officinale Roscoe( Zingiberaceae ) の根茎をエタノ−ルに浸漬し製造した。具体的には、ショウガ科ショウガ属ショウガ(ショウキョウ)を粗末にしたもの200gに、薄めたエタノ−ル(37〜50%)約600mLを加え、時々かき混ぜながら可溶性成分が充分に溶けるまで放置し、布ごしし、残留物を薄めたエタノ−ル(37〜50%)少量で洗い、圧搾し、浸出液及び洗液をあわせ、2日間放置し、濾過し、さらに薄めたエタノ−ル(37〜50%)を加え、本発明のショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物 全量1000mLを製造した。尚、本発明のショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物は、上記の製造方法に準じ製造することも出来るし、丸善株式会社、一丸ファルコス株式会社などにより市販されている抽出物を購入し、使用することも出来る。
本発明の前記一般式(1)に表される化合物(化合物1、化合物2及び化合物3)の単離精製を行った。即ち、市販のショウキョウ(乾燥品、刻み、株式会社ウチダ和漢薬)1.8(kg)を9(L)のメタノ−ル中で2時間加熱還流抽出を2回行い、濾過後2回分の濾液をあわせたものを、減圧下濃縮・乾燥し、ショウキョウメタノ−ルエキス159gを得た。ショウキョウメタノ−ルエキス159(g)を10%の水を含んだメタノ−ル溶液に溶解させ、n−ヘキサンで液液分配抽出を行い、得られたn−ヘキサン画分を減圧下濃縮・乾燥し、n−ヘキサンエキス61.8(g)を得た。ショウキョウn−ヘキサンエキス61.8(g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(シリカゲル:Fuji Silysia PSQ100B、600g)に付し、n−ヘキサンと酢酸エチルの混合溶液の比率を変えながら溶出させ,28のフラクションに分画した。この内、20番目のフラクション4(g)をさらにTSK-gel ODS-80Ts(東ソ−株式会社製)カラムを装着した分取HPLCにて分画・精製を行い、化合物1(72mg)、化合物2(36mg)、化合物3(99mg)を得た。の化学構造は、H−及び13C−NMRを測定した後、得られたNMRスペクトルデ−タの解析を行い、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン(1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン(1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)及び1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン(1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)であることを確認した。また、後述する本発明の「メラニン産生抑制作用評価」、並びに、「本発明のメラノサイト内酸性化検出(プロトンポンプ阻害作用)検討」には、前記操作に従い単離精製した化合物1、化合物2及び化合物3、更には、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物を使用した。下記に各化合物の物理恒数を記載する。
【0040】
【化8】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン(1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)(8)
【0041】
<化合物1のH−及び13C−NMRスペクトルデ−タ>
H-NMR (400 MHz、CDCL3) δ: 0.9(3H、t、J=7.0Hz)、1.31−1.36(4H、m)、1.61−1.69(2H、m)、2.36(2H、t、J=7.0Hz)、3.92(3H、s)、5.62(1H、s)、5.90(1H、brs)、6.93(1H、d、J=16.0Hz)、6.91(1H、d、J=8.0Hz)、7.01(1H、d、J=1.5Hz)、7.07(1H、dd、J=8.0Hz、J=1.5Hz)、7.52(1H、d、J=16.0Hz)
13C-NMR (100 MHz、 CDCL3) δ: 13.9、22.4、25.3、31.5、40.0、56.0、100.0、109.6、114.8、120.7、122.6、127.8、139.8、146.8、147.7、178.2、200.0
【0042】
【化9】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン(1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)(9)
【0043】
<化合物2のH−及び13C−NMRスペクトルデ−タ>
H-NMR (400 MHz、CDCL3) δ: 0.89(3H、t、J=7.0Hz)、1.23−1.36(8H、m)、1.61−1.36(8H、m)、1.61−1.68(2H、m)、2.36(2H、t、J=7.0Hz)、3.92(3H、s)、5.62(1H、s)、5.96(1H、brs)、6.33(1H、d、J=16.0Hz)、6.91(1H、d、J=8.0Hz)、7.01(1H、d、J=1.5Hz)、7.07(1H、d、J=1.5Hz)、7.52(1H、d、J=16.0Hz)
13C-NMR (100 MHz、 CDCL3) δ: 14.0、22.6、25.6、29.0、29.2、31.6、40.1、55.9、100.0、109.6、114.8、120.6、122.6、127.7、139.8、146.8、147.4、178.2、200.0
【0044】
【化10】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン(1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)(10)
【0045】
<化合物3のH−及び13C−NMRスペクトルデ−タ>
H-NMR (400 MHz、CDCL3) δ: 0.88(3H、t、J=7.0Hz)、1.22−1.34(12H、m)、1.55-1.63(2H、m)、1.55−1.63(2H、m)、2.47−2.53(4H、m)、2.71(2H、t、J=7.0Hz)、3.87(3H、s)、5.53(1H、brs)、6.10(1H、dt、J=16.0Hz、J=1.5Hz)、6.66(1H、d、J=1.5Hz)、6.67(1H、dd、J=8.0Hz、J=1.5Hz)、6.82(1H、dt、J=16.0Hz、J=7.0Hz)、6.83(1H、d、J=8.0Hz)
13C-NMR (100 MHz、 CDCL3) δ: 14.0、22.6、24.3、29.2、29.3、29.4、29.4、31.8、34.2、34.4、40.2、55.9、111.0、114.4、120.9、130.7、132.7、144.1、145.8、146.5、200.8
【実施例2】
【0046】
<試験例1: 前記化合物1〜3及び本発明のショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物のメラニン産生抑制作用評価>
本発明の化合物1〜3、並びに、本発明のショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物に関し、以下に記載の方法に従い、メラニン産生抑制作用を評価した。同時に、陽性対象としてハイドロキノンを用い、メラニン産生抑制作用を評価した。24穴プレ−トにヒト正常メラノサイト(クラボウ株式会社)を22500(cells/cm)播種する。翌日、評価物質を含有する培地 0.5(mL/well)に交換し、0.25(μCi)2−[2−14C]チオウラシル(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を添加し培養を継続した。播種4日後、培地を除去しPBSで1回プレ−トを洗浄した後、細胞生存率を評価するため生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社)溶液を添加した培地に交換し、37℃、3時間呈色反応を行った。反応後、450(nm)の吸光度をマイクロプレ−トリ−ダ−Benchmark Plus(Bio-Rad Laboratories)を用い測定した。コントロ−ルとして評価物質を含まないサンプルを前記同様に調製し、コントロ−ルに対する評価物質を含むサンプルの吸光度の百分率を求め細胞生存率とした。
メラニン量測定のため吸光度測定後、PBSで1回プレ−トを洗浄し、TCAを添加し、細胞を溶解した後、蒸留水 を加え溶液をバイアルに移した。氷上に放置後、15000rpm、5分間遠心した後、上清を除去した。再度、各バイアルに10%TCA 500(μL)を添加し、氷上15分間放置した。15000rpm、5分間遠心した後、上清を除去した。残渣にアクアゾ−ル−2(パ−キンエルマ−社) 1(mL)を添加し、液体シンチレ−ションカウンタ− LSC−6100(アロカ社製)にて放射線量を測定した。コントロ−ルとして評価物質を含まないサンプルを前記同様に調製し、コントロ−ルに対する評価物質を含むサンプルの放射線量の百分率を求めメラニン量(%)とした。メラニン産生量の50%阻害濃度(IC50値)は、細胞毒性の認められない範囲でSAS software version 9.1.3(SAS Institute Inc.)を用い算出した。結果を表1及び図2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
本発明の化合物1〜3、及び、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物は、細胞毒性を示さない濃度において顕著なメラニン産生抑制作用を示した。また、メラニン産生抑制作用は、陽性対照のハイドロキノンより高かった。
【実施例3】
【0050】
<試験例2: メラノサイト内酸性化検出(プロトンポンプ阻害作用)検討>
本発明の化合物1及びショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物に関し、以下の手順に従い、生細胞内酸性化(プロトンポンプ阻害作用)検出を行った。ヒト正常メラノサイト(クラボウ株式会社)を4ウェルLab-Tek chamber slide(Thormo Fisher Scientific社)に10000cells/cm播種し、翌日、評価物質を含有する培地 0.55mL/wellに交換し、1時間30分培養した。コントロ−ルとして評価物質を含まないサンプルを前記同様に調製した。その後、Lysosensor189(モレキュラ−プロ−ブ社:最終濃度1μM)を加え、15分間培養した。培養終了後、PBSにて洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで室温15分固定を行った。その後、スライドガラスでサンプルを封入し、蛍光顕微鏡(カ−ルツァイツ社)にて観察した。尚、前記化合物1は、最終濃度が5X10−5(%)、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物は、最終濃度が0.001(w/v%)になる様に調整した。本発明において、プロトンポンプ阻害作用を有する物質とは、当該ヒト正常メラノサイトを用いたメラノサイト内酸性化(プロトンポンプ阻害作用)検出において、pH感受性蛍光色素の発色強度が、蛍光顕微鏡による目視的観察により、発光強度の増強が認められる場合を意味する。結果を図1及び図2に示す。評価物質無処理のコントロ−ルに比較し、評価物質処理によりLysosensor189の蛍光強度(緑色)が増強していれば、ヒト正常メラノサイト内の酸性化が亢進したと考えられる。
【0051】
図1及び図2において、コントロ−ルでは、酸性化度を示す蛍光発色強度は弱く、一方、本発明の化合物1又はショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物を添加した場合は、いずれも蛍光強度は増強している。従って、本発明の化合物1及びショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物は、顕著なメラノサイト内における酸性化作用(プロトンポンプ阻害作用)を示すことが判った。
【実施例4】
【0052】
<製造例2: 本発明のメラニン産生抑制剤を含有する皮膚外用剤の製造>
下記の表3及び表4に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、エッセンス化粧料を作製した。即ち、イ、ロ及びハの成分をそれぞれ75℃に加熱し、イにロを徐々に加え乳化し、更に、ハを加え中和、増粘させ、攪拌冷却してエッセンスエマルション化粧料(化粧料1〜4)を得た。また、表3の処方成分中、「本発明のメラニン産生抑制剤」を、「アルブチン」に置換した比較例1、さらには、「本発明のメラニン産生抑制剤」を水に置換した比較例2を作製した。
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【実施例5】
【0055】
<製造例3: 本発明の皮膚外用剤の製造例2>
表5及び表6に記載の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料(ロ−ション)を作製した。即ち、処方成分を80℃に加熱し、攪拌し、溶解させ、攪拌冷却し、化粧料(ロ−ション1)を得た。
【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【実施例6】
【0058】
<試験例3: ヒトにおける紫外線による色素沈着抑制効果>
前記実施例に従い製造された化粧料1〜4、比較例1及び2の化粧料を用いて、色素沈着抑制効果を調べた。自由意思で参加したパネラ−の上腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を上下2段に分け、合計7ヶ所設け、最少紅斑量(1MED)の紫外線照射を1日1回、3日連続して3回照射した。照射終了後1日より、1日1回28日連続してサンプル50μLを塗布した。1部位は無処置部位とした。塗布終了24時間後に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、無処置部位のL値に対するΔL*値を算出した。L*値は、色素沈着の程度が強いほど低い値となる。従って、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。結果を表7に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜4及び比較例1は色素沈着抑制効果を示すことが分かる。また、化粧料1〜4の色素沈着抑制効果は、アルブチンを配合した比較例1に比べ優れていた。これは、化粧料1〜4に含有される前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩のメラニン産生抑制作用によると考えられる。
【0059】
【表7】

【実施例7】
【0060】
<製造例4: 本発明のメラニン産生抑制剤を含有する健康食品の製造>
表8に示す処方に従い、健康食品1を作製した。即ち、処方成分を10重量部の水と共に転動相造粒(不二パウダル株式会社製「ニュ−マルメライザ−」)し、打錠して錠剤状の健康食品を得た。尚、表中の数値の単位は、重量部を表す。本健康食品は、優れた肥満に対する抑制効果を示していた。
【0061】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、美白用の化粧料、食品等に応用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるメラニン産生抑制剤。
【化1】

(1)
[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)に表される化合物が、下記一般式(2)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1に記載のメラニン産生抑制剤。
【化2】

(2)
[式中、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R8は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項3】
前記一般式(2)に表される化合物が、下記一般式(3)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のメラニン産生抑制剤。
【化3】

(3)
[式中、R9は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R10は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項4】
前記一般式(3)に表される化合物が、下記一般式(4)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のメラニン産生抑制剤。
【化4】

(4)
[式中、R11は、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項5】
前記一般式(1)〜(4)に表される化合物が、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−デセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−6−ジンジャ−ジオン、化合物1)、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ドデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−8−ジンジャ−ジオン、化合物2)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−テトラデセン−3,5−ジオン、1−デヒドロ−10−ジンジャ−ジオン、化合物3)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
【化5】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−デカジエン−5−オン(化合物1)
【化6】

1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−ドデカジエン−5−オン(化合物2)
【化7】

4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−1,3−テトラデカジエン−5−オン(化合物3)
【請求項6】
前記メラニン産生抑制剤の起源が、ショウガ科ショウガ属に属する植物より得られる植物抽出物であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
【請求項7】
前記ショウガ科ショウガ属に属する植物が、ショウガ科ショウガ属ショウガであることを特徴とする、請求項6に記載のメラニン産生抑制剤。
【請求項8】
前記メラニン産生抑制作用が、プロトンポンプ阻害作用によることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
【請求項9】
前記プロトンポンプ阻害作用が、Na/H交換輸送系への作用であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のメラニン産生抑制剤。
【請求項10】
請求項1〜9に記載のメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項11】
請求項1〜9に記載のメラニン産生抑制剤を組成物全量に対し0.000001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
色素沈着予防又は改善用であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
食品、医薬品又は化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項10〜12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項10〜13の何れか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178761(P2011−178761A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47220(P2010−47220)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】