説明

組電池及び組電池用セパレータ

【課題】電池セルへの接続端子の連結を、部材を破損することなく強固に行えると共に、簡素な構成で電極にバスバー等の接続端子を締結する際の電極の共回りを防止可能な組電池等を提供する。
【解決手段】電極端子3を有する複数の角形電池セル1と、隣接する角形電池セル1同士の間に挿入されて絶縁するためのセパレータ2と、前記セパレータ2を介して積層された角形電池セル1の隣接する電極端子3同士を電気的に接続するための接続端子6と、を備える組電池であって、前記接続端子6は、電極端子3と螺合式に固定され、前記セパレータ2は、接続端子6を螺合する際に、接続端子6に当接して接続端子6の回転を阻止する回転阻止壁9を設けている。これにより、接続端子6の締結時に接続端子6の回転が阻止され、接続端子6や電池セルが変形する事態が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層状態で連結してなる電池ブロックを電池ホルダーで固定してなる組電池及び組電池用セパレータに関し、特に接続端子に接続するための電極を有する組電池及び組電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電池セルを積層しているバッテリシステムは、電池セルを直列に接続して出力電圧を高くできることから、ハイブリッドカーや電気自動車の電源装置のように大電流で充放電される用途に使用される。このバッテリシステムは、車両を加速するときに極めて大きな電流で放電され、また、回生制動等の状態では、相当に大きな電流で充電される。このバッテリシステムは、大容量の電池セルを多数、直列及び/又は並列に接続することで、要求される出力を達成している。
【0003】
電池セル同士の接続には、バスバー等の接続端子が利用される。電池セルをセパレータを介して積層した電池ブロックにおいて、隣接する電池セルの電極同士を、バスバーにより接続している。バスバーへの接続を容易にするために、電池の電極を構成する金属端子にはボルトが取り付けられている。金属端子に取り付けられたボルトは、バスバーを貫通し、ナットと螺合することでバスバーを強固に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277085号公報
【特許文献2】特開2008−192595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池モジュールの電気出力を信頼性高く得るために、バスバーは電極の金属端子と確実に固定する必要がある。このためネジによる締結が一般に利用されている。しかしながら締結の際に、電極のボルトにバスバーを挿入してナットを回転させるためにトルクを付与すると、バスバーや電極端子のボルトが共に回転してしまうと、これらを変形、破損する虞がある。特にバスバーやボルトなどの金属部材に比べると、電池セルは強度的に脆弱な部分を含むため破損しやすい。螺合の際にトルクが印加されると、電池セルの上面が共回りして変形或いは破損する虞がある。このため、従来はバスバーの締結に際して、回転を阻止するための専用治具を使用していた。
【0006】
また電極の共回りを阻止する構造として、特許文献1のようなバッテリ装置が提案されている。このバッテリ装置では図12に示すように電池モジュールと電池モジュールに隣接して配置される保持部材とを備えている。電池モジュールは、バスバー81に接続するための電極21を有している。電極21は、電池モジュールから延出する金属端子41と、金属端子41に挿入され、抜け止めを構成する拡大部35を後端に有するボルト31とを有している。保持部材は、拡大部35に当接してボルト31の回転を妨げる当接部64を有している。この構造により、図12のバッテリ装置は電極のボルトにナットを緊結する際のボルトや電極の共回りを防止している。
【0007】
しかしながら、上記の構成では円柱形のボルトの回転を阻止するために、一部を箱形に形成した特殊な形状のボルトを使用する必要があった。またボルトが直接当接して回転を阻止する構造のため、意図しない導通や短絡を阻止するための絶縁構造も必要となり、部品点数が多く構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は電池セルへの接続端子の連結を、部材を破損することなく強固に行えると共に、簡素な構成で電極にバスバー等の接続端子を締結する際の電極の共回りを防止可能な組電池及び組電池用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
以上の目的を達成するために、本発明の組電池によれば、電極端子を有する複数の角形電池セル1と、隣接する角形電池セル1同士の間に挿入されて絶縁するためのセパレータ2と、前記セパレータ2を介して積層された角形電池セル1の隣接する電極端子同士を電気的に接続するための接続端子6と、を備える組電池であって、前記接続端子6は、電極端子と螺合式に固定され、前記セパレータ2は、接続端子6を螺合する際に、接続端子6に当接して接続端子6の回転を阻止する回転阻止壁9を設けている。これにより、接続端子6の締結時に接続端子6の回転が阻止され、接続端子6や電池セルが変形する事態が阻止される。
【0010】
また、第2の側面に係る組電池によれば、前記角形電池セル1が、その上面に、傾斜面を有する絶縁性の端子ホルダ4を設けており、前記電極端子は前記端子ホルダ4の傾斜面を貫通して、傾斜姿勢で突出するよう前記端子ホルダ4と固定されてなり、前記セパレータ2の回転阻止壁9が、前記端子ホルダ4の傾斜面の両側面を狭持するように配置されてなる。これにより、端子ホルダ4を回転阻止壁9で狭持することにより、端子ホルダ4に固定された電極端子の回転を阻止することができる。
【0011】
さらに、第3の側面に係る組電池によれば、前記回転阻止壁9は、前記電極端子の高さよりも高く形成できる。これにより、回転阻止壁9で電極端子を囲むことができ、電極端子の突出を防止して意図しない短絡を回避できる。
【0012】
さらにまた、第4の側面に係る組電池によれば、前記回転阻止壁9は、前記接続端子6の長さよりも長く形成できる。これにより、回転阻止壁9で接続端子6を囲むことができ、意図しない導通を回避できる。
【0013】
さらにまた、第5の側面に係る組電池によれば、前記接続端子6は、該接続端子6と電気的に接続して前記角形電池セル1の電圧を検出するための検出端子5が固定されており、前記セパレータ2はさらに、接続端子6に固定された検出端子5の一部を狭持して所定の姿勢に保持するための凹部7を形成している。これにより、凹部7で検出端子5を支持できるため、この部分でも接続端子6の回転を阻止する効果が得られる。
【0014】
さらにまた、第6の側面に係る組電池によれば、さらに前記角形電池セル1を前記セパレータ2を介して積層した状態で、端面に位置するセパレータ2を被覆するように両側から狭持する金属製のエンドプレートを備えており、前記エンドプレートに面するセパレータ2は、エンドプレートに向かって突出する突起13を設けており、前記エンドプレートは、前記突起13を挿入する突起挿入穴14を形成してなり、前記突起挿入穴14は前記エンドプレートの中心軸に対して非対称に開口されている。これにより、セパレータ2とエンドプレートを所望の位置に位置決めでき、またエンドプレートを誤って上下逆向きに装着する事態を回避できる。
【0015】
さらにまた、第7の側面に係る組電池によれば、前記接続端子6を、前記回転阻止壁9との当接面を矩形状に構成できる。これにより、接続端子6の回転を阻止し易くできる。
【0016】
さらにまた、第8の側面に係る組電池によれば、前記セパレータ2の底面に、前記角形電池セル1の隅部頂点と当接する傾斜面を有する三角リブ11を設けることができる。これにより、セパレータ2を含めた電池ブロックをエンドプレートで両側面から締結する際に、傾斜面で角形電池セル1の底面隅部を押圧する結果、傾斜面に沿って角形電池セル1を押し上げる効果が得られ、この結果角形電池セル1上面で接続端子6を固定する面が、角形電池セル1の高さのばらつきによらず同一面に揃えることができ、同一面で接続端子6を確実に固定できる利点が得られる。
【0017】
さらにまた、第9の側面に係る組電池用セパレータによれば、複数の角形電池セル1を積層した組電池において、角形電池セル1同士の間に介在されてこれらを絶縁するための組電池用セパレータであって、角形電池セル1を両側面に挿入するための開口を構成する枠部12と、
【0018】
前記枠部12の上面で、垂直に突出させた回転阻止壁9と、を備えており、前記回転阻止壁9は、前記開口に角形電池セル1を挿入した状態で、電極端子の側面を覆い、かつ電極端子を固定する端子ホルダ4の側面を当接する位置に設けることができる。これにより、接続端子6の締結時に接続端子6の回転が阻止され、接続端子6や電池セルが変形する事態が阻止される。
【0019】
さらにまた、第10の側面に係る組電池用セパレータによれば、前記回転阻止壁9がさらに、角形電池セル1の電極端子に、他の角形電池セル1と電気的に接続するための接続端子6を接続した状態で、該接続端子6の側面を当接する位置に設けることができる。これにより、接続端子6の締結時に接続端子6の回転が阻止され、接続端子6や電池セルが変形する事態が阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る組電池の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の端子部分を示す拡大斜視図である。
【図3】角形電池セルの片面にセパレータを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図3から角形電池セルを排除したセパレータの外観を示す斜視図である。
【図5】図4のセパレータの正面図である。
【図6】図4のセパレータの平面図である。
【図7】図5のVII−VII’線における垂直断面図である。
【図8】図3のセパレータに角形電池セルを挿入した状態の平面図である。
【図9】図7のセパレータに角形電池セルを挿入した状態を示す模式断面図である。
【図10】接続端子の外観を示す斜視図である。
【図11】実施の形態2に係る組電池に接続端子を装着した状態を示す斜視図である。
【図12】従来のバッテリ装置の電極構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本明細書においては、特許請求の範囲を理解し易いように、実施の形態に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための組電池及び組電池用セパレータを例示するものであって、本発明は組電池及び組電池用セパレータを以下のものに特定しない。また特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0022】
図1に実施の形態1に係る組電池の外観を示す斜視図を、図2に図1の端子部分の拡大斜視図を、図3に角形電池セルの片面にセパレータを装着した状態の斜視図を、図4に図3から角形電池セルを排除したセパレータの外観を示す斜視図を、図5に図4のセパレータの正面図、図6に平面図、図7に図5のVII−VII’線における垂直断面図を、また図8に図3のセパレータに角形電池セルを挿入した状態の平面図を、図9に図7のセパレータに角形電池セルを挿入した状態を示す模式断面図を、図10に接続端子の外観を示す斜視図を、図11に他の実施の形態に係る組電池に接続端子を装着した状態を示す斜視図を、それぞれ示す。これらの図に示す組電池100は、車両用であり、主としてエンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーや、モータのみで走行する電気自動車などの電動車両の電源に最適である。またハイブリッドカーや電気自動車以外の車両にも使用できる。
【0023】
図1に示す組電池100は、外装缶1Aの表面が導電性を有する複数の角形電池セル1を互いに絶縁して積層状態で配置して電池ブロックを構成している。
【0024】
角形電池セル1は、幅よりも薄い薄型の角形電池で、互いに平行な姿勢としてセパレータ2を挟んで積層している。角形電池セル1は、図2に示すように、上面の両端部に正負の電極端子3を突出させて固定している。電極端子3を突出させる位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、角形電池セル1を裏返して重ねると、正極と負極とを並列させることができ、直列接続を容易に行える。角形電池セル1を直列に接続する組電池は、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただし、組電池は、角形電池セルを並列と直列に接続することもできる。
【0025】
角形電池セル1はリチウムイオン二次電池である。ただし、角形電池はリチウムイオン二次電池には特定されず、充電できる全ての電池、たとえばニッケル水素電池なども使用できる。角形電池1は、正負の電極板を積層している電極体を外装缶1Aに収納して電解液を充填して気密に密閉したものである。外装缶1Aは、図3に示すように、底を閉塞する四角い筒状に成形したもので、上方の開口部を封口板1Bで気密に閉塞している。外装缶1Aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工したもので、表面が導電性を有する。積層される角形電池セル1は、薄い角形に成形される。封口板1Bもアルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。この封口板1Bは、正負の電極端子3を両端部に、端子ホルダ4を介して固定している。
(端子ホルダ4)
【0026】
端子ホルダ4は、傾斜面を有する三角形状に形成されており、角形電池セル1の上面で電極端子3の突出部分を除く周囲を絶縁している。この端子ホルダ4はプラスチックなどの絶縁性部材で構成される。端子ホルダ4の傾斜面には貫通孔が形成され、ここに電極端子3を挿通して、電極端子3を傾斜姿勢で突出させた状態で電極端子3と端子ホルダ4とが強固に固定される。電極端子3と端子ホルダ4との固定には、螺合や接着、溶接等の方法が利用できる。これにより、端子ホルダ4で電極端子3の絶縁、補強が図られる。
【0027】
一方、正負の電極端子3は内蔵する正負の電極板に接続される。電極端子3は、好ましくはネジ乃至ボルト状に構成される。この電極端子3には、図2に示すように外部の突出位置に接続端子6が螺合により固定される。
【0028】
積層される角形電池セル1は、隣接する電極端子3を接続端子6で連結して、互いに直列に接続される。さらに、各々の角形電池セル1の電極端子3には検出端子5が接続される。この検出端子5は、電池の電圧を検出する保護回路を実装する回路基板(図示せず)に接続される。
(接続端子6)
【0029】
接続端子6は隣接する角形電池セル1の電極端子3同士を電気接続するために固定される。接続形態は、隣接する角形電池セル1を直列接続するか並列接続するかに応じて異なる。すなわち並列接続時は正極同士、負極同士を、直列接続時は正極と負極とを、各々連結する。
【0030】
接続端子6の外形を図10に示す。図10に示す接続端子6は、端子ホルダ4の傾斜面と適合するように折曲した傾斜面6aを有する金属片のバスバーであり、傾斜面6aには隣接する角形電池セル1の電極端子3を挿通するための電極用ねじ穴6cが2つ、一方水平面6bには検出端子5を固定するための検出用ねじ穴6dが1つ、各々開口されている。
(検出端子5)
【0031】
検出端子5は、各角形電池セル1の電圧を検出するための端子であり、リード線を介して回路基板(図示せず)と接続される。図2の検出端子5は丸端子で構成され、ナットにより接続端子6の検出用ねじ穴に固定される。
(凹部7)
【0032】
さらに検出端子5を保持するために、図2に示すようにセパレータ2には、接続端子6に固定された検出端子5の一部を狭持して所定の姿勢に保持するための凹部7を形成している。凹部7はセパレータ2の側面の上端の一部を切り欠くようにして形成される。凹部7の内径は、検出端子5の一部とほぼ同じ大きさとし、さらに接続端子6に検出端子5を固定した状態で、検出端子5がセパレータ2側面から垂直に突出する姿勢で保持されるような位置に形成される。
【0033】
また凹部7は、図3、図6等に示すように、開口部分を形成する両側が同一面上でなく、段差を有するように設けこともできる。すなわち、接続端子6を電極端子3に螺合する際に、共回りし易い方向に対して抵抗力を発揮するよう、ネジ締結のトルクが印加される方向に抗する面を、より円周外縁方向に配置することが好ましい。図2の例では凹部7の左側がその右側よりも外側に位置するよう形成している。これにより、検出端子5を螺合により固定する際のトルクに対し、回転面の半径方向を長くして抵抗力を大きくできる。さらに凹部7は、開口部分の高さを一定にせず、一方を高くすることもできる。このように凹部7を形成することで、共回り阻止の抵抗力を高め、より信頼性の高い組電池が得られる。
(接合片8)
【0034】
さらに図3の例では、接続端子6と電極端子3との電気接続を確実にするため、端子ホルダ4の傾斜面から水平面にかけて適合するように折曲した接合片8を設けている。接合片8は端子ホルダ4に電極端子3を挿通した状態で、端子ホルダ4の上面を被覆し、電極端子3と固定される。これにより、電極端子3と電気的に接続された接合片8が端子ホルダ4の上面で広く延在し、この上に図2に示すように接続端子6を重ねて固定することで、接続端子6と端子ホルダ4との間に接合片8を介在させ、電極端子3と接続端子6との電気接続を接合片8を介して広い面積で行える。
(セパレータ2)
【0035】
角形電池セル1は、その間にセパレータ2を挟着している。セパレータ2は、互いに隣接する角形電池セル1の間に挟着されて、隣接する角形電池セル1を一定の間隔に保持して絶縁する。このためセパレータ2は、絶縁部材で構成され、隣接する角形電池セル1の外装缶1Aを絶縁する。このようなセパレータ2は、プラスチック等の絶縁材を成形して製作される。また角形電池セル1同士の対向面に、電池セル冷却用のガスを流すための送風隙間を設けることもできる。
【0036】
図4のセパレータ2は一体で形成することもできるが、複数部材に分割して構成することもできる。分割構成のセパレータは、例えば隣接する角形電池セルの対向面の間に配設される絶縁シートと、この絶縁シートの両側にあって絶縁シートを挟着する一対の分割セパレータとで構成できる。
【0037】
セパレータ2は、角形電池セル1の外周に沿う枠部12を有し、この枠部12の内側を開口している。枠部12は、角形電池セル1の両側に沿う縦枠12Aと、上下縁部に沿う横枠12Bとを連結した四角形としている。縦枠12A、横枠12Bは角形電池セル1の外周面に沿う板状としている。縦枠12Aは、角形電池セル1に挟着される状態で、角形電池セル1の両側面の全体をカバーする幅としている。横枠12Bは、角形電池セル1の上下面に沿う水平部12aを構成する。水平部12aは、角形電池セル1の上面に設けている電極端子3や安全弁の開口部を閉塞しないように、電極端子3や安全弁の開口部を露出させる形状としている。角形電池セル1の下面に沿う水平部12aは、縦枠12Aと同じ幅として、角形電池セル1に挟着される状態で、角形電池セル1の下面全体をカバーするようにしている。このセパレータ2は、角形電池セル1の間に挟着されて、積層される角形電池セル1の両側面と下面をセパレータ2でカバーして絶縁できる。
(回転阻止壁9)
【0038】
このセパレータ2は、回転阻止壁9を設けている。回転阻止壁9は絶縁性部材で構成され、好ましくはセパレータ2と一体に形成される。また回転阻止壁9は、端子ホルダ4の側面を被覆する位置に設けられる。図3、図4の例では、セパレータ2の上面の略中央から垂直方向に、仕切り状に延長され、端子ホルダ4の傾斜面を構成する三角形状ブロックの側面を完全に覆う。さらに回転阻止壁9の高さは、図3に示すように角形電池セル1の側面をセパレータ2で被覆した状態で、電極端子3を覆えるように電極端子3の高さよりも高く設計する。また回転阻止壁9の幅は、図2に示すように、接続端子6を固定した状態で、接続端子6の側面を覆えるように長く設計する。このように、電極部分を絶縁性の回転阻止壁9で完全に被覆することで、意図しない短絡を回避できる。
【0039】
さらに回転阻止壁9は、2枚のセパレータ2で角形電池セル1を狭持する状態で、図3、図2に示すように端子ホルダ4及び接続端子6を両側から狭持するので、これらが確実に保持される。すなわち、端子ホルダ4の両側が回転阻止壁9で狭持されて補強されるため、電極端子3への接続端子6の取り付け時のネジ締結作業で、端子ホルダ4や電極端子3が共に回転してしまう共回りを阻止できる。
【0040】
特に、電池の電極端子3に直接当接するのでなく、電極端子3に固定された端子ホルダ4に当接させる構成とすることで、回転素子構造を簡素化できる利点が得られる。ネジは円柱状であるため、その回転を阻止するためにはネジの一部に矩形状の部分を形成した特殊な形状のネジを使用する必要があったが、本実施の形態ではネジの絶縁、補強のために設けられているブロック状の端子ホルダ4を利用し、端子ホルダ4をセパレータ2の一部で保持することでネジ締結時の共回りを有効に阻止できる。よって、既存の部材を有効利用できるため、共回り素子の構造を簡素化できる利点が得られる。
【0041】
以上のようにセパレータ2は、上面を構成する水平面6bの一方の側に回転阻止壁9を、他方の側に凹部7を、各々設けている。このセパレータ2は、互いに隣接する角形電池セル1の間に挟着されて、隣接する角形電池セル1を一定の間隔に保持して絶縁する。この際、セパレータ2を、図1及び図2に示すように交互に逆向きに積層することで、同一形状のセパレータを使用して、隣接する角形電池セル1同士の間に、各々回転阻止壁9と凹部7とを配置させることができる。
【0042】
図4に示すセパレータ2は、上述の通り枠部12により有底の枠状に形成されており、左右に角形電池セル1を挿入可能な開口を形成している。開口の深さは、角形電池セル1が概ね半分程度もしくはそれ以下に収まる程度に設定される。これによって、2枚のセパレータ2の間に1個の角形電池セル1が収納できる。枠部12の開口の内壁には、リブ10が設けられており、角形電池セル1を収納した状態で角形電池セル1とセパレータ2との間に隙間が形成される。この隙間に冷却空気を流すことで、角形電池セル1の表面を冷却することが可能となる。また必要に応じて、セパレータ2の開口底面にストライプ状の凹凸を形成すれば、この凹凸がセパレータ2に収納された角形電池セル1の表面との間でスリットを形成し、ここに冷却空気通路を流すことで角形電池セル1の冷却能力を高めることができる。
(三角リブ11)
【0043】
また角形電池セル1の底面に位置するリブ11の形状は、図9の断面図に示すように、傾斜状に形成することが好ましい。傾斜面は、セパレータ2の開口側に向かって下り勾配となるように形成される。このような傾斜面とすることで、図9に示すように角形電池セル1を配置したとき、その隅部乃至頂点が傾斜面と当接するようになる。すなわち、セパレータ2を含めた電池ブロックをエンドプレートで両側面から締結する際に、三角リブ11の傾斜面で角形電池セル1の底面隅部を押圧する結果、傾斜面に沿って角形電池セル1が押し上げられることとなる。角形電池セル1は押し上げられると、その天面がセパレータ2の内壁に当接されて停止する。この結果、押し上げられた各角形電池セル1は、その上面がセパレータ2に沿って綺麗に揃うこととなる。上面の高さが同一面であれば、隣接する角形電池セル1同士を接続端子6で接続する際の接触状態が一定となって、接続の信頼度が高まる。逆に接続端子6で接続したい角形電池セル1の高さが揃っていないと、接続端子6が傾いて固定されることとなって、接触面積が一定せず接触不良などの原因となる。特に角形電池セル1の製造時の公差などにより、電池ブロックとして並べた際の高さにばらつきが生じることがあるが、このような場合であっても上記構成によって上面高さを一定に揃えることができるので、端子接続の信頼性向上の観点からは極めて有効である。
【0044】
また接続端子6のみならず、角形電池セル1のガス排出弁から排出されるガスを外部に排出するための排出ガス用ダクトを接続する基準面も揃えることができる。角形電池セル1は、過充電や過放電で内圧が上昇する異常な状態での破壊を防止して安全性を確保するために、ガス排出弁を設けている。ガス排出弁は、電池の内圧が異常に上昇すると開弁してガスを排気する。排出ガス用ダクトは、各角形電池セル1のガス排出弁の位置に沿うように配置されている。
【0045】
このように、三角リブ11は電池ブロックの締結時に角形電池セル1を上向きに誘導する誘導部材として機能する。
(エンドプレート)
【0046】
角形電池セル1をセパレータ2を介して交互に積層した電池ブロックは、両側端面に位置するセパレータ2をエンドプレートで被覆される。エンドプレートを介してボルトなどにより電池ブロックの両側から狭持される。エンドプレート4は、硬質のプラスチックで成形され、あるいはアルミニウムやその合金などの金属で製作される。エンドプレート4は、広い面積で角形電池1を挟着するために、その外形を角形電池1と同じ四角形としている。四角形のエンドプレート4は、角形電池1と同じ大きさに、あるいは角形電池1よりもわずかに大きくしている。プラスチック製のエンドプレート4は、直接に角形電池1に積層され、金属製のエンドプレートは、積層材を介して角形電池に積層される。
【0047】
エンドプレート4には、金属バンド5の端部が連結される。金属バンド5は、止ネジ6を介してエンドプレート4に連結している。図1の金属バンド5は、止ネジ6でエンドプレート4に固定しているが、金属バンドの端部を内側に折曲してエンドプレートに連結し、あるいはまた、端部をカシメてエンドプレートに連結することもできる。
(突起13)
【0048】
図1、図2の例では、エンドプレートに面するセパレータ2は、エンドプレートに向かって突出する突起13を設けており、またエンドプレート側には、この突起13を挿入する突起挿入穴14を形成している。突起挿入穴14は、エンドプレートに線対称の位置に開口せず、エンドプレートの中心軸に対して非対称に開口させている。非対称とは、エンドプレートを180°回転させても一致しない位置をいう。この構成により、突起13と突起挿入穴14でセパレータ2とエンドプレートを所望の位置に位置決めでき、またエンドプレートを誤って上下逆向きに装着する事態を回避できる。
【0049】
セパレータ2を介して積層される角形電池1は、固定部品3で定位置に固定される。固定部品3は、積層している角形電池1の両端面に配置される一対のエンドプレート4と、このエンドプレート4に、端部を連結して積層状態の角形電池1を圧縮状態に固定してなる金属バンド5とからなる。
(金属バンド5)
【0050】
金属バンド5は、所定の厚さの金属板を所定の幅に加工して製作される。金属バンド5は、端部をエンドプレート4に連結して、一対のエンドプレート4を連結して、その間に角形電池1を圧縮状態に保持する。金属バンド5は、一対のエンドプレート4を所定の寸法に固定して、その間に積層される角形電池1を所定の圧縮状態に固定する。角形電池1の膨張圧力で金属バンド5が伸びると、角形電池1の膨張を阻止できない。したがって、金属バンド5には、角形電池1の膨張圧で伸びない強度の金属板、たとえばSUS304等のステンレス板や鋼板等の金属板を十分な強度を有する幅と厚さに加工して製作される。さらに、金属バンドは、金属板を溝形に加工することもできる。この形状の金属バンドは、曲げ強度を強くできるので、幅を狭くしながら、積層する角形電池をしっかりと所定の圧縮状態に固定できる特長がある。金属バンド5は、端部に折曲部5Aを設けて、折曲部5Aをエンドプレート4に連結する。折曲部5Aは、止ネジ6の貫通孔を設けて、ここに挿入される止ネジ6を介してエンドプレート4に固定される。
【0051】
さらに、図1の斜視図に示す電池ブロックは、2列の金属バンド5を、電池ブロックの両側面の上下に配設して、一対のエンドプレート4の両側を上下で連結している。この構造の電池ブロックは、2列の金属バンド5でエンドプレート4を強固に連結できる。
【0052】
以上の組電池100は、車両用の電源装置に組み込まれる。この組電池100を備える電源装置は、図示しないが、角形電池セル1の温度を検出する複数の温度センサと、この温度センサで検出される角形電池セル1の温度で、送風ダクト6を介して各々の送風隙間に分岐して冷却気体を送風する強制送風機と、温度センサで検出される角形電池セル1の温度で電池の電流を制御する制御回路とを備える。
(実施の形態2)
【0053】
図11は、実施の形態2に係る組電池の接続端子6を示す斜視図である。この図においては、バスバーである接続端子の形状を見易くするために、角形電池セル1を一部(左側の4列)のみ表示し、残りの表示は省略している。さらにセパレータ2の表示も省略している。図11においては、3種類の接続端子が使用されており、図中右側に位置する第2接続端子6Bは、隣接する角形電池セルでなく、積層された状態で離間した位置にある角形電池セル同士を接続するためのものであり、所定間隔で略平行に配置された傾斜面を有する水平片と、略直角に折曲されてこれらを結ぶ垂直片とで構成される。
【0054】
また左側に位置する第3接続端子6Cは、終端で電極を外部に取り出すための端子であり、傾斜面を有する水平片と、L字状に折曲された垂直片を備える。最後に中間及び奥側に位置する2枚の接続端子6は、上述した図10と同様のものである。このような様々な形状の接続端子6を使用する例においても、上述した回転阻止壁9を設けたセパレータ2(図11に図示せず)を利用することによって、電極端子3への締結時に印加されるトルクで接続端子が回転しようとしても、傾斜面が回転阻止壁9で狭持されているため、共回りを効果的に阻止できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る組電池及び組電池用セパレータは、車載用のバッテリシステムの電池として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
100…組電池
1…角形電池セル;1A…外装缶;1B…封口板
2…セパレータ
3…電極端子
4…端子ホルダ
5…検出端子
6…接続端子;6a…傾斜面;6b…水平面;6c…電極用ねじ穴;6d…検出用ねじ穴;6B…第2接続端子;6C…第3接続端子
7…凹部
8…接合片
9…回転阻止壁
10…リブ
11…三角リブ
12…枠部;12A…縦枠;12B…横枠;12a…水平部
13…突起
14…突起挿入穴
21…電極
31…ボルト
35…拡大部
41…金属端子
64…当接部
81…バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子(3)を有する複数の角形電池セル(1)と、
隣接する角形電池セル(1)同士の間に挿入されて絶縁するためのセパレータ(2)と、
前記セパレータ(2)を介して積層された角形電池セル(1)の隣接する電極端子(3)同士を電気的に接続するための接続端子(6)と、
を備える組電池であって、
前記接続端子(6)は、電極端子(3)と螺合式に固定され、
前記セパレータ(2)は、接続端子(6)を螺合する際に、接続端子(6)に当接して接続端子(6)の回転を阻止する回転阻止壁(9)を設けてなることを特徴とする組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池であって、
前記角形電池セル(1)が、その上面に、傾斜面を有する絶縁性の端子ホルダ(4)を設けており、前記電極端子(3)は前記端子ホルダ(4)の傾斜面を貫通して、傾斜姿勢で突出するよう前記端子ホルダ(4)と固定されてなり、
前記セパレータ(2)の回転阻止壁(9)が、前記端子ホルダ(4)の傾斜面の両側面を狭持するように配置されてなることを特徴とする組電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組電池であって、
前記回転阻止壁(9)は、前記電極端子(3)の高さよりも高く形成されてなることを特徴とする組電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の組電池であって、
前記回転阻止壁(9)は、前記接続端子(6)の長さよりも長く形成されてなることを特徴とする組電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の組電池であって、
前記接続端子(6)は、該接続端子(6)と電気的に接続して前記角形電池セル(1)の電圧を検出するための検出端子(5)が固定されており、
前記セパレータ(2)はさらに、接続端子(6)に固定された検出端子(5)の一部を狭持して所定の姿勢に保持するための凹部(7)を形成していることを特徴とする組電池。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の組電池であって、さらに、
前記角形電池セル(1)を前記セパレータ(2)を介して積層した状態で、端面に位置するセパレータ(2)を被覆するように両側から狭持する金属製のエンドプレートを備えており、
前記エンドプレートに面するセパレータ(2)は、エンドプレートに向かって突出する突起(13)を設けており、
前記エンドプレートは、前記突起(13)を挿入する突起挿入穴(14)を形成してなり、
前記突起挿入穴(14)は前記エンドプレートの中心軸に対して非対称に開口されてなることを特徴とする組電池。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の組電池であって、
前記接続端子(6)が、前記回転阻止壁(9)との当接面を矩形状に構成されてなることを特徴とする組電池。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の組電池であって、
前記セパレータ(2)が、その底面に、前記角形電池セル(1)の隅部頂点と当接する傾斜面を有する三角リブ(11)を設けてなることを特徴とする組電池。
【請求項9】
複数の角形電池セル(1)を積層した組電池において、角形電池セル(1)同士の間に介在されてこれらを絶縁するための組電池用セパレータ(2)であって、
角形電池セル(1)を両側面に挿入するための開口を構成する枠部(12)と、
前記枠部(12)の上面で、垂直に突出させた回転阻止壁(9)と、
を備えており、
前記回転阻止壁(9)は、前記開口に角形電池セル(1)を挿入した状態で、電極端子(3)の側面を覆い、かつ電極端子(3)を固定する端子ホルダ(4)の側面を当接する位置に設けられてなることを特徴とする組電池用セパレータ。
【請求項10】
請求項9に記載の組電池用セパレータであって、
前記回転阻止壁(9)がさらに、角形電池セル(1)の電極端子(3)に、他の角形電池セル(1)と電気的に接続するための接続端子(6)を接続した状態で、該接続端子(6)の側面を当接する位置に設けられてなることを特徴とする組電池用セパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−176997(P2010−176997A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17353(P2009−17353)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】