説明

絞り装置および3次元形状測定装置

【課題】絞り用の開口の光軸に対する偏心量が調整自在な上に、調整された偏心量を維持しながら任意の方向から照明や観察を行えるようにする。
【解決手段】光束を制限するための開口101は、開口位置移動保持機構110によって光軸に直交する平面内で光軸に対して偏心移動自在で移動後の所望の位置で保持され、かつ、開口位置回転機構120によって光軸周りに回転移動させることができ、よって、光軸に対する絞り用の開口101の偏心量を調整し、調整された状態のまま光軸周りに開口101を回転移動させることで同一の偏心量による絞り状態で任意の方向から照明や観察を行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束を制限するための開口を有して対象となる光学系の光軸上に配置される絞り装置および該絞り装置を備える3次元形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡等において試料の観察や検査を行う際に、試料に対して真上からではなく、斜め方向から照明(斜照明)することで、キズやゴミなどにコントラストがつき観察しやすくなることが知られている。このような斜照明を容易に実現するための絞り装置として、例えば特許文献1によれば、開口絞り位置に配置させた絞り装置の開口位置を光軸に直交する平面内で自由に移動可能としたものが提案されている。
【0003】
また、光を用いて非接触で物体の3次元形状を測定する方法の一つとして、格子パターン投影法がある。この格子パターン投影法は、三角測量の原理を利用しているため、撮像光軸に対して、格子パターンの投影光軸は角度がつけられている。このように、傾きのある照明がされることから標本の形状、凹凸によって標本上に影が生じ、格子パターンが投影されない範囲が発生することがある。このような場合、格子パターンが投影されない範囲については正しく高さを算出できない。したがって、格子パターンの投影光軸と撮像光軸とのなす角度を大きくすると、測定精度は向上するが、逆に、標本の凹凸による影も多くなり死角が増え、測定不能な範囲を広めてしまうことになる。
【0004】
このような問題に対して、特許文献2によれば、1つの光源を用いて、2方向から格子パターンを投影する3次元計測装置が提案されている。この3次元計測装置では、光源から出射した光は、変調装置に入射した後、光分割素子で2つの光路に分けられ、2つのユニットに入射するように構成されている。一方のユニットに入射した光は、所定の投影光学系を経て、特定の角度をもって標本上に格子パターン像を形成するように構成され、他方のユニットに入射した光も、同様に、所定の投影光学系を経て、特定の角度をもって標本上に格子パターン像を形成するように構成されている。ここで、ユニットは移動可能に構成され、標本への格子パターン像の入射角度が、対物光学系の有効径の範囲内で可変可能とされている。測定する際には、2つのユニットを片側ずつ遮光状態とし、標本上に2方向別々に格子パターン像を投影し、撮像素子を含む撮像光学系で格子パターン像を観察し、得られる高さ情報を演算処理して標本の3次元形状を算出するようにしている。
【0005】
すなわち、特許文献2は、格子パターンを投影する2つの投影光学系を備え、2方向から格子パターン像を投影可能としているため、標本の凹凸によってできる影、つまり死角を低減できるように構成している。さらに、2つの投影光学系と、光源および格子パターンを内蔵した照明光学系が移動可能に構成されているため、標本に応じて格子パターンの投影角度を変えることができ、標本に合わせた測定精度を得ることができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3354606号公報
【特許文献2】特開2004−191240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように試料に対して斜照明を行う場合、キズやゴミの程度や大きさなどによって影のつき方が異なるため、光軸に対して同じ傾斜角度(偏心量)で任意の方向から斜照明を行えばキズやゴミなどの程度や大きさを相対的に確認することが可能となる。しかしながら、特許文献1に示される絞り装置は、絞り装置の開口を開口絞り位置面上で2次元的に移動させて光軸に対して偏心させ、その状態で斜照明して観察することが可能なだけであり、測定精度を高め得る斜照明を効率よく行わせることができない。すなわち、特許文献1に示される絞り装置の場合、斜照明を行う方向を変更する度に開口絞り位置面上で開口の位置を2次元的に移動させて観察を行わなければならず、操作が面倒な上に、同じ傾斜角度(偏心量)の状態を再現するのも困難で、適正な観察結果を得にくいという欠点がある。
【0008】
また、特許文献2に示される3次元計測装置は、格子パターンをあらかじめ設定された2方向からしか投影できず、複雑な3次元形状を計測しようとする場合には2方向からの投影ではカバーしきれず、標本の凹凸によってできる影により3次元形状を精度よく取得できない可能性が高くなってしまう。加えて、格子パターンを投影する投影光学系のユニットを2つ必要とするため、コンパクトに構成するのが難しい上にコスト高となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、絞り用の開口の光軸に対する偏心量が調整自在な上に、調整された偏心量を維持しながら任意の方向から照明や観察を行うことができる絞り装置および3次元形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る絞り装置は、光束を制限するための開口を有して対象となる光学系の光軸上に配置される絞り装置であって、前記光軸に直交する平面内で前記光軸に対する前記開口の位置が移動可能で移動後の所望の位置で保持する開口位置移動保持機構と、移動後の所望の位置で保持された前記開口を前記光軸周りに回転移動させる開口位置回転機構と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口は、大きさが変更自在であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口の大きさを可変させる開口径可変機構を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口径可変機構は、前記開口の大きさを自動的に可変させる第1の電動駆動機構を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口位置移動保持機構は、前記開口を保持する位置が段階的に設定されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口位置移動保持機構は、前記開口を保持する位置が無段階に設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口位置移動保持機構は、前記開口の位置を自動的に移動させる第2の電動駆動機構を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る絞り装置は、上記発明において、前記開口位置回転機構は、前記開口を前記光軸周りに自動的に回転移動させる第3の電動駆動機構を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る3次元形状測定装置は、光源からの光を試料に照射する照明光学系の照明光軸上の開口絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る3次元形状測定装置は、光源からの光を試料に照射する照明光学系の照明光軸上の視野絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る3次元形状測定装置は、試料からの光を観察または撮影する観察光学系の観察光軸上の開口絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る3次元形状測定装置は、試料からの光を観察または撮影する観察光学系の観察光軸上の視野絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る絞り装置によれば、光束を制限するための開口は、開口位置移動保持機構によって光軸に直交する平面内で光軸に対して偏心移動自在で移動後の所望の位置で保持され、かつ、開口位置回転機構によって光軸周りに回転移動させることができ、よって、光軸に対する絞り用の開口の偏心量を調整し、調整された状態のまま光軸周りに開口を回転移動させることで同一の偏心量による絞り状態で任意の方向から照明や観察を行うことができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る絞り装置によれば、開口は大きさが変更自在であり、例えば開口径可変機構によって開口の大きさを可変させることができ、よって、照明や観察の明るさを調整することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明に係る絞り装置によれば、開口を保持する位置が段階的に設定されているので、開口位置移動保持機構の保持機能を、クリック機構等を利用して比較的簡単に構成することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る絞り装置によれば、開口を保持する位置が無段階に設定されているので、偏心量の調整をきめ細かく行うことができるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明に係る絞り装置によれば、開口の大きさの可変や、開口の位置の移動や、光軸周りの回転移動を、電動駆動機構を利用して自動的に行わせるので、操作性を向上させることができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明に係る3次元形状測定装置によれば、照明光学系の照明光軸上の開口絞り位置に上述の絞り装置を備えるので、同じ偏心量で任意の方向から斜照明を行うことができ、複雑な3次元形状であっても精度よく測定することができるという効果を奏する。
【0028】
また、本発明に係る3次元形状測定装置によれば、照明光学系の照明光軸上の視野絞り位置に上述の絞り装置を備えるので、同じ偏心量で任意の方向からパターン像の照明を行うことができ、複雑な3次元形状であっても精度よく測定することができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明に係る3次元形状測定装置によれば、観察光学系の観察光軸上の開口絞り位置に上述の絞り装置を備えるので、同じ偏心量で任意の方向から斜め観察を行うことができ、複雑な3次元形状であっても精度よく測定することができるという効果を奏する。
【0030】
また、本発明に係る3次元形状測定装置によれば、観察光学系の観察光軸上の視野絞り位置に上述の絞り装置を備えるので、同じ偏心量で任意の方向から範囲を限定した観察を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態である絞り装置および3次元形状測定装置について図面を参照して説明する。本発明は、実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0032】
(実施の形態1)
まず、本実施の形態1の絞り装置が適用される3次元形状測定装置の概要について説明する。図1は、本発明の3次元形状測定装置の構成例を示す概略側面図であり、図2は、図1の破線内に含まれる光学系を抽出して示す概略側面図である。3次元形状測定装置1は、概略的に、装置本体2と照明装置3と観察装置4とを備える。本体2内には図2に示すような光学系が内蔵されており、本体2の所定位置に載置される試料5に照明装置3に基づく照明光が照射され試料5からの反射光によって観察装置4で試料5の表面形状が観察される。
【0033】
本体2内に内蔵された光学系10は、図2に示すように、照明光学系20と観察光学系30とを備える。照明光学系20は、照明装置3内の光源21から出射された光が集光レンズ22、投影レンズ23を通って試料5を均一に照明するケーラー照明になるように構成されている。集光レンズ22および投影レンズ23は照明光軸24上に配置されている。そして、集光レンズ22と投影レンズ23との間の照明光軸24上には、試料5と光学的に共役な位置に例えば3次元形状測定用のパターン像を投影するためのパターン板が配置される視野絞り位置Paが設定され、この視野絞り位置Paよりも光源21側には光源21と光学的に共役位置に開口絞り位置Pbが設定されている。
【0034】
観察光学系30は、試料5真上に対して設定された観察光軸31を有し、この観察光軸31上に、試料5で反射された光が通る対物レンズ32、ハーフミラー33、結像レンズ34および試料5からの反射光をリレーするリレーレンズ35を備える。また、観察光軸31上であってリレーレンズ35の結像位置、すなわち試料5と光学的に共役な位置には、例えば観察装置4としてCCD等の撮像素子36を備える。また、観察光軸31上には、撮像素子36や試料5と光学的に共役な位置に視野絞り位置Pcが設定され、視野絞り位置Pcと撮像素子36との間に開口絞り位置Pdが設定されている。なお、ハーフミラー33は、観察光軸31と照明光軸24とが直交交差する位置であって、対物レンズ32と結像レンズ34との間に配設される。
【0035】
ついで、本実施の形態1の絞り装置100について図3および図4を参照して説明する。図3は、本体を取り除いた絞り装置100中の要部を一部破断して示す平面図であり、図4は、絞り装置100を中央部分で破断して示す縦断側面図である。本実施の形態1の絞り装置100は、図2中に示した3次元形状測定装置1の光学系10中において、それぞれ100a〜100dとして示すように、照明光軸24上の視野絞り位置Paや開口絞り位置Pb、あるいは観察光軸31上の視野絞り位置Pcや開口絞り位置Pdに配置されるものである。
【0036】
本実施の形態1の絞り装置100は、光束を制限するために所定サイズの径で形成された開口101を有する矩形平板状の摺動部材102を備える。また、絞り装置100は、摺動部材102を介して光軸L(照明光軸24または観察光軸31が相当する)に直交する平面内で光軸Lに対する開口101の位置が移動可能で移動後の所望の位置で保持する開口位置移動保持機構110と、移動後の所望の位置で保持された開口101を光軸L周りに回転移動させる開口位置回転機構120とを備える。
【0037】
回転位置移動保持機構110は、まず、照明光学系20や観察光学系30の筐体の一部をなす本体103に装着されて光軸L上の位置に光束を制限しない大きさで形成された開口部111を有する回転枠112の上面側に光軸Lに直交する方向に摺動部材102の厚さで摺動部材102が摺動自在に形成された摺動溝113と、回転枠112の上面にビス114により固定されて摺動溝113とで摺動部材102を挟持する蓋115と、摺動部材102の摺動方向の一端側に形成されたねじ穴104に螺合することで摺動部材102に着脱自在で本体103外に突出した摘み116aを有する摺動操作体116と、を備える。蓋115の中央部には大きな開口部115aが形成されている。ここで、摺動方向の一端側に開口101が形成された摺動部材102の他端側には光束を制限しない大きさ(開口部111以上の大きさ)の全開用の開口部105が開口101と離間させて形成されている。開口部105と開口101との間の間隔は、遮蔽(全閉)用に開口部111の直径以上とされている。
【0038】
また、回転位置移動保持機構110は、保持機能を実現するために、摺動部材102の摺動自在な側面102aの片側の所定位置に形成された複数個のクリック溝117と、回転枠112側に設けられて摺動溝113の摺動面113aからクリック溝117側に係脱自在に突出するプランジャ118とによるクリック機構を備える。ここで、クリック溝117の1つは、図3に示すように、開口101が光軸Lと同軸となる位置(偏心なしの位置)でプランジャ118に係止する位置に形成され、この位置から数個のクリック溝117は、開口101が開口部111の範囲内で摺動部材102の摺動方向に光軸Lに対する位置が段階的にずれてプランジャ118に係止する位置に形成されている。また、他端側のクリック溝117の1つは、開口部111に開口101および開口部105がかからない遮蔽位置でプランジャ118に係止する位置に形成され、残りの1つのクリック溝117は、開口部105が開口部111に重なる全開位置でプランジャ118に係止する位置に形成されている。
【0039】
また、開口位置回転機構120は、摺動部材102を保持して本体103に対して嵌合部103a,112a同士の嵌合により光軸Lを中心に回転可能な上述の回転枠112と、回転枠112と蓋115とを本体103とで回転自在に挟持するように本体103に固定された本体121と、本体103,121の一部に形成された操作用開口部103b,121aを介して指を挿入することで操作される回転枠112の外周面からなる操作部122とを備える。ここで、回転枠112は、本体103の底面部と回転枠112の底面部との間に介在させたリング状の皿バネ123によって本体121側に光軸方向に沿って押圧付勢されている。これにより、回転可能な回転枠112が自然にはフリー回転せず任意の位置で停止するとともに、挟持状態の回転枠112や摺動部材102のがたつきを防止している。
【0040】
このような絞り装置100において、摘み116aを把持して摺動操作体116を押したり引いたりすることで、摺動部材102は回転枠112の摺動溝113に沿って光軸Lを横切る方向に移動する。このような移動操作において、クリック溝117にプランジャ118を係止させることで、所望のクリック溝117の位置で摺動部材102をフリーに動かない状態に保持することができる。すなわち、開口101の位置が光軸Lと同軸上となる位置から、光軸Lに直交する方向に光軸Lから所定量だけ偏心した位置や、開口部111に開口101と開口部105とがかからない遮蔽状態の位置や、開口部105にて開口部111の光束を制限しない全開状態の位置まで、段階的に保持位置の調整設定が可能である。
【0041】
所望の位置に開口101の調整が終了した後は、摺動操作体116を摺動部材102から取り外し、操作用開口部103b,121aから指を挿入して操作部122にて回転枠112を光軸L周りに回転操作することで、開口101は調整設定された移動後の所望の位置のまま光軸L周りに回転移動する。
【0042】
すなわち、本実施の形態1の絞り装置100によれば、摺動部材102の光軸Lに直交する方向の移動により、光束を遮蔽した状態や光束に制限を加えない全開状態にすることができることはもちろんのこと、光束を制限する所定径の開口101の位置を光軸Lと同軸上の位置に設定できるだけでなく、光軸Lに対して偏心した所定の位置に調整保持することが可能であり、光軸Lに対して開口101が所定量偏心した状態で光軸L周りに開口101を回転移動させることができる。
【0043】
なお、開口101の光軸Lに対する位置を再調整したい場合には、ネジ穴104が操作用開口部103bから見える位置まで回転枠112を回転させ、ネジ穴104に摺動操作体116を螺合させ、上述の場合と同様に摺動部材102を摺動させて調整操作を行えばよい。
【0044】
よって、本実施の形態1の絞り装置100を、絞り装置100bとして照明光学系20の照明光軸24上の開口絞り位置Pbに配置することで、試料5に対して傾きを持った斜照明が可能なだけでなく、その照明角度(偏心量)を保ったまま360度任意の方向から試料5を照明することができる。斜照明によって試料5のきずや欠陥等にコントラストがつくが、照明角度(偏心量)を保ったまま任意の方向から照明光を当てることができるため、影のつき方等できずや欠陥等の大きさや程度などの相対的な比較もでき、観察しやすいものとなる。加えて、照明光軸24上の視野絞り位置Paにパターンを置くとともに絞り装置100aとして配置し、試料5に複数方向からパターン像を投影することで、試料5の3次元形状を適正に測定することができる。この際、試料5の形状に合わせて、任意にパターン投影方向(偏心量)を調整設定できるため、死角の少ない3次元形状の測定が可能となる。
【0045】
また、観察光学系30の観察光軸31上の開口絞り位置Pdに絞り装置100dとして配置させることで、試料5を真上からでなく、斜め方向から観察することができる。この観察角度を保ったまま、360度任意の方向から観察できるため、試料5の死角となっている部分の形状把握や欠陥検査が可能となる。また、任意の斜め方向から試料5を観察できるため、ステレオ計測等の3次元計測にも応用できる。また、観察光学系30の観察光軸31上の視野絞り位置Pc上に絞り装置100cとして配置させることで、試料5の必要な部分のみを観察もしくは撮影することができ、よって、例えば半導体基板上の回路構成など機密保持の観点などから必要以外の部分を遮蔽したり、抽出したい箇所以外の余分な部分を省いたりする観察が可能となる。
【0046】
なお、本実施の形態1において、開口101が光軸Lを中心にどの程度回転したかの回転角度を検知するための角度検知手段、例えば回転枠102の外周面の操作部122に目盛を設け、操作用開口部103b,121aから視認できるようにしてもよい。また、摺動部材102を摺動させて開口101の光軸Lに対する偏心量を調整設定する際に、光軸Lから開口101の中心までの距離(偏心量)を検知するための偏心量検知手段、例えば摺動操作体116の引き出し量に対応する目盛等を設けるようにしてもよい。これらの回転角度や偏心量の情報は、3次元形状測定に活用される他、例えば同様の試料5を観察する場合の観察状態の記録等に利用して、同一の偏心状態等を再現することができ、使い勝手の良い観察装置となる。
【0047】
また、本実施の形態1において、摺動部材102には所定径の開口101が形成されているが、径の異なる開口101が形成された複数の摺動部材102を選択自在に用意することで、開口101の大きさを変更自在としてもよい。この際、各摺動部材102には開口101の径の大きさを示す表示を付しておくことが好ましい。また、開口101の形状は、円形形状に限らず、例えば多角形形状であってもよい。
【0048】
(変形例1)
図5は、変形例1の絞り装置100の中央部分で破断して示す縦断側面図である。変形例1の絞り装置100は、回転枠112を本体121側に押圧付勢する皿バネ123に代えて、本体103の一部にプランジャ124を設け、プランジャ124によって回転枠112を本体121側に押圧付勢するようにしたものである。この際、回転枠112のプランジャ124と対向する環状軌跡上に位置させて複数個のクリック溝125を等間隔で設け、回転枠112を一定角度回転させる毎にプランジャ124がクリック溝125に係止するようにしてもよい。また、回転枠112の外周面にギヤ126を形成するとともに、本体103の操作用開口部103aにギヤ126に噛合するギヤ127aを有する操作ハンドル127を本体103外に突出させて設け、この操作ハンドル127を回転操作することで回転枠112が光軸L周りに回転するようにしてもよい。これによれば、操作用開口部103a内に指を入れることなく、本体103外に突出した操作ハンドル127を直接回転操作することができ、操作性が向上する。
【0049】
(変形例2)
図6は、変形例2の本体を取り除いた絞り装置100中の要部を一部破断して示す平面図である。変形例2の絞り装置100は、保持機能を実現するため、プランジャ124およびクリック溝125による段階的なクリック機構に代えて、無段階に位置決め保持する無段階係止機構を備える。すなわち、摺動部材102の一側は摺動溝113の摺動面113aを摺動する摺動部102aを前後両端に残して一段低くした逃げ部102bが摺動面113aと平行に形成されている。一方、回転枠112側においては、摺動面113aに沿って工具挿入部131とネジ部132と摺動面113aに開口する開口部133とが設けられ、ネジ部132には先端が球状の段付きビス134が工具135によってねじ込み可能とされている。また、開口部133には、コマ136がピン137を軸に回転可能に設けられている。このコマ136は、段付きビス134の先端により押されるテーパ部136aを有する。
【0050】
これにより、工具135で段付きビス136を押し込むと、コマ136のテーパ部136aが段付きビス136の球状先端で押されてコマ136はピン137を中心に回動する。ここで、段付きビス136を押し込んでコマ136を図6中に仮想線で示すように回動させると、コマ136の先端が摺動部材102の逃げ部102bに食い込むように係止し、摺動調整された摺動部材102の位置が保持される。そして、開口101の偏心量の再調整等のために段付きビス136を緩めると、コマ136の逃げ部102bに対する係止が解除され、摺動部材102の摺動(開口101の位置調整)が可能となる。変形例2によれば、開口101の位置を無段階に調整して保持することができるので、試料5に応じて開口101の光軸Lに対するずれ位置(偏心量)を最適な位置に設定することができる。
【0051】
(実施の形態2)
ついで、本実施の形態2の絞り装置150について図7−1〜図7−4を参照して説明する。図7−1〜図7−4は、本実施の形態2の絞り装置150の要部の構成例を示す概略平面図である。本実施の形態2の絞り装置150は、光束を制限するために所定サイズの径で形成された複数個の開口161a〜161fを有する円盤形状の回転枠162を備える。この回転枠162は、実施の形態1の回転枠112と同様に光軸Lを中心に回転可能で開口位置回転機構170の構成要素をなす円形状の回転枠171上に搭載されて回転枠171に対して回転軸163によって回転可能に設けられて開口位置移動保持機構160を構成している。回転枠162は、回転枠171の外周よりも大きく逸脱しない範囲の大きさで形成され、外周面が回転枠171を回転自在に支持する本体(本体103,121に相当する)に形成された操作用開口部にて回転操作可能な操作部164とされている。回転枠171は、中心に開口部111に相当する開口部172を有する。
【0052】
ここで、回転枠162が有する複数個の開口161a〜161fは、図7−1中に示すように、回転軸163を中心とし光軸Lを通る円周上に配列されておらず、回転軸163周りに回転枠162を回転させたときに、光軸Lと同軸上の位置をとる開口161aの他は、それぞれの開口161b〜161cが光軸Lに対して開口部172の範囲内で少しずつ異なる距離だけ偏心した位置を取り得るように偏心配列されている。また、各開口161a〜161fは、同時に開口部172内に存在しないように離間されている。さらに、回転枠163上には、回転枠163を回転させたときに開口部172を塞がない大きさに形成された全開用の開口部165が開口161aと同一円周上に形成されている。ここで、開口部165と開口161aとの間は、両者の中間位置を光軸L上に位置させたときに開口部165と開口161aとのいずれもが開口部172にかからない遮蔽状態を確保できる間隔が設けられている。
【0053】
これにより、本実施の形態2の絞り装置150は、図7−1に示すような光軸Lと開口161aとが同軸上となる状態(偏心量0)、図7−2に示すような光軸Lに対して開口161fが所定量偏心した状態(開口161b〜161eの場合も同様であり、光軸Lに対する偏心量が段階的に異なる)、図7−3に示すように光軸L上に開口部165が位置して光束を制限しない全開状態、図7−4に示すように光束を遮光する遮蔽状態を選択的に取り得る。ここで、図7−1〜図7−4に示すような各状態で回転枠162を回転枠171に対して係止させるために、例えば回転枠171側に図示しないプランジャを設け、回転枠162の各開口161a〜161fや開口部165や遮光状態の位置に対応させて回転枠162の下面側にプランジャが係止する図示しないクリック溝を同一円周上に設ければよい。
【0054】
また、本実施の形態2の開口位置回転機構170は、実施の形態1の場合と同様に、回転枠171と、回転枠162を搭載した回転枠171および回転枠162上に設けた図示しない蓋を回転自在に挟持する上下一対の図示しない本体と、回転枠171を光軸L周りに回転操作するために回転枠171の外周面からなる操作部173とを備える他、回転枠171がフリー回転しないように光軸L方向に押圧付勢する皿バネあるいはプランジャ等の押圧手段を備える。
【0055】
本実施の形態2による絞り装置150も、図1および図2に示した3次元形状測定装置1の照明光学系20の照明光軸24上の視野絞り位置Paや開口絞り位置Pb、あるいは観察光学系30の観察光軸31上の視野絞り位置Pcや開口絞り位置Pdに配置させることで、実施の形態1の場合と同様の効果を奏する。特に、本実施の形態2の絞り装置150によれば、開口位置移動保持機構160が回転枠162を含み、この回転枠162の外周面を操作部164として回転操作することで開口161a〜161fによる偏心量を調整設定することができるため、偏心量を変更する度に摺動操作体116の場合のように着脱する必要がなく、簡便な構成で操作性が向上する。
【0056】
なお、本実施の形態2の場合も、径の異なる開口161a〜161fが形成された複数の回転枠162を選択自在に用意することで、開口101a〜161fの大きさを変更自在としてもよい。この際、各摺動部材102には開口101の径の大きさを示す表示を付しておくことが好ましい。また、開口101の形状は、円形形状に限らず、例えば多角形形状であってもよい。また、光軸Lに対する開口の偏心量が一定でよい場合には、ずれ量一定で開口径を段階的に異ならせた複数の開口が形成された1枚の回転枠を用いるようにしてもよい。
【0057】
(実施の形態3)
ついで、本発明の実施の形態3の絞り装置200について図8および図9を参照して説明する。図8は、本体および上部側の回転枠を取り除いた絞り装置200中の要部を一部破断して示す平面図であり、図9は、絞り装置200を中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【0058】
本実施の形態3の絞り装置200は、光束を制限するために所定サイズの径で形成された開口201を有する矩形平板状の摺動部材202を備える。また、絞り装置200は、摺動部材202を介して光軸Lに直交する平面内で光軸Lに対する開口201の位置が移動可能で移動後の所望の位置で保持する開口位置移動保持機構210と、移動後の所望の位置で保持された開口201を光軸L周りに回転移動させる開口位置回転機構220とを備える。
【0059】
回転位置移動保持機構210は、まず、照明光学系20や観察光学系30の筐体の一部をなす本体103に装着されて光軸L上の位置に光束を制限しない大きさで形成された開口部211を有する回転枠212の上面側に光軸Lに直交する方向に摺動部材202が摺動自在に形成されて摺動面213aと突き当て面213b,213cとを有する矩形状の摺動溝213と、回転枠212の上面側に対して光軸L周りに回転自在に嵌合して回転枠212とで摺動部材202を挟持する円盤状の回転枠214と、摺動部材202の一部に摺動方向に直交させて形成された長溝215と、回転枠214の一部に下向きに突出させて設けられて長溝215に係合する駆動ピン216と、回転枠214の外周面からなる操作部217と、を備える。
【0060】
回転枠214の中央部には大きな開口部214aが形成されている。ここで、摺動方向の一端側に開口201が形成された摺動部材202の他端側には光束を制限しない大きさ(開口部211以上の大きさ)の全開用の開口部205が開口201と離間させて形成されている。開口部205と開口201との間の間隔は、遮蔽(全閉)用に開口部211の直径以上とされている。
【0061】
また、回転位置移動保持機構210は、保持機能を実現するために、回転枠214の外周面上の所定位置に形成された複数個のクリック溝218と、回転枠212のフランジ上に搭載されて複数個のクリック溝218に選択的に係脱自在に係止するプランジャ219とによるクリック機構を備える。ここで、クリック溝218の1つは、図8に示すように、開口201が光軸Lと同軸となる位置(偏心なしの位置)でプランジャ219に係止する位置に形成され、この位置から数個のクリック溝218は、開口201が開口部211の範囲内で摺動部材202の摺動方向に光軸Lに対する位置が段階的にずれてプランジャ219に係止する位置に形成されている。また、他のクリック溝218の1つは、開口部211に開口201および開口部205がかからない遮蔽位置でプランジャ219に係止する位置に形成され、残りの1つのクリック溝218は、開口部205が開口部211に重なる全開位置でプランジャ219に係止する位置に形成されている。
【0062】
また、開口位置回転機構220は、摺動部材202を保持して本体103に対して嵌合部103a,212a同士の嵌合により光軸Lを中心に回転可能な上述の回転枠212と、回転枠212,214を本体103とで回転自在に挟持するように本体103に固定された本体121と、本体103,121の一部に形成された操作用開口部103b,121aを介して指を挿入することで操作される回転枠212の外周面からなる操作部222とを備える。ここで、回転枠212は、本体103の底面部と回転枠212の底面部との間に介在させたリング状の皿バネ223によって本体121側に光軸方向に沿って押圧付勢されている。これにより、回転可能な回転枠212が自然にはフリー回転せず任意の位置で停止するとともに、挟持状態の回転枠212,214や摺動部材202のがたつきを防止している。また、回転枠214側に対して回転枠212側の方が重く形成され、回転枠214の操作部217を回転操作したときに回転枠214は単独で回転するが回転枠212は回転せず、かつ、回転枠212の操作部222を回転操作したときには回転枠212の回転に追従して回転枠214も一体的に回転するように構成されている。
【0063】
このような構成の絞り装置200において、操作部217の回転操作により回転枠214を光軸L周りに回転させると、駆動ピン216も光軸L周りに回転する。この駆動ピン216は摺動方向が摺動溝213によって規制された摺動部材202の長溝215に係合しているため、駆動ピン216の回転変位に伴い摺動部材202は回転運動が直線運動に変換されて摺動面213aに沿って光軸Lを横切る方向に直線移動する。
【0064】
このような回転操作において、クリック溝218にプランジャ219を係止させることで、所望のクリック溝218の位置で回転枠214がフリーに回転しない状態、したがって摺動部材202がフリーに動かない状態に保持することができる。すなわち、開口201の位置が光軸Lと同軸上となる位置から、光軸Lに直交する方向に光軸Lから所定量だけ偏心した位置や、開口部211に開口201と開口部205とがかからない遮蔽状態の位置や、開口部205にて開口部211の光束を制限しない全開状態の位置まで、段階的に保持位置の調整設定が可能である。このような摺動部材202の直線移動においては、それぞれ突き当て面213bまたは213cに突き当たる位置で規制され、突き当て面213b,213c間で往復直線移動することとなる。
【0065】
所望の位置に開口201の調整が終了した後は、操作部222にて回転枠212を光軸L周りに回転操作することで、開口201は調整設定された移動後の所望の位置のまま光軸L周りに回転移動する。
【0066】
本実施の形態3による絞り装置200も、図1および図2に示した3次元形状測定装置1の照明光学系20の照明光軸24上の視野絞り位置Paや開口絞り位置Pb、あるいは観察光学系30の観察光軸31上の視野絞り位置Pcや開口絞り位置Pdに配置させることで、実施の形態1,2の場合と同様の効果を奏する。特に、本実施の形態3の絞り装置200によれば、開口201の位置保持用のクリック溝218が大径の回転枠214の外周面に形成されているので、実施の形態1等に比べて多数のクリック溝を細かく設けることが可能となり、開口201の光軸Lに対する偏心量の調整設定を細かく行うことができる。
【0067】
(実施の形態4)
ついで、本発明の実施の形態4の絞り装置250について図10および図11を参照して説明する。図10は、本体を取り除いた絞り装置250中の要部を一部破断して示す平面図であり、図11は、絞り装置250を中央部分で破断して示す縦断側面図である。なお、実施の形態1および変形例2で説明した部分と同一または準ずる部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する。
【0068】
本実施の形態4の絞り装置250は、光束を制限するための開口261の大きさ(径)を可変させる開口径可変機構260を備える。開口径可変機構260は、例えば特許文献1等で公知の構成に準ずるものであり、まず、それぞれがほぼ三日月状に形成された複数枚の絞り羽根262をピン263等で回動自在に保持した平板環状の羽根保持部材264とこの羽根保持部材264が回転自在に嵌合した羽根保持部材265と備える。また、開口径可変機構260は、羽根保持部材264を含む羽根保持部材265上に載置されて羽根保持部材265に形成された摺動溝266の両側の摺動面266aに沿って光軸Lを横切る方向に摺動自在な矩形平板状の羽根開閉部材267を備える。摺動溝266は、羽根開閉部材267の摺動範囲を規制する突き当て面266b,266cを摺動方向両端に有する。ここで、羽根保持部材264には羽根開閉部材267側に突出させた開閉ピン268が設けられ、羽根開閉部材267側には開閉ピン268が常時係止する長溝269が摺動方向に直交する方向に形成されている。また、羽根開閉部材267には、摘み270aを有する開閉操作体270が着脱自在に設けられている。さらに、羽根開閉部材267の片側側面には摺動面266aに平行な逃げ部267aが形成され、逃げ部267a側に位置させて羽根保持部材265には段付きビス271、コマ272等の図6の場合と同様な無段階係止機構を備える。
【0069】
このような開口径可変機構260において、摘み270aを把持して開閉操作体270で羽根開閉部材267を摺動可能な方向に移動させると、開閉ピン268、長溝269の係止により、羽根保持部材264が回転する。この羽根保持部材264の回転に連動して絞り羽根262も開放方向または閉塞方向に回動変位し、開口261の径、すなわち絞り径が無段階に調整される。ここで、羽根開閉部材267の一端が突き当て面266bに当接する位置で開口261の径が所定の最小径となり、羽根開閉部材264の他端が突き当て面266cに当接する位置で開口261の径が光束を制限しない最大径となるように摺動範囲が規定させている。また、これらの動作において開口261を閉塞しないように羽根開閉部材267には大きめの開口部267bが形成されている。また、開口261の径の固定は、図示しない工具にて段付きビス271を締め込み、コマ272を回動変位させて逃げ部267aに係止させることにより行われる。
【0070】
また、本実施の形態4では、開口位置移動保持機構120に関しては、羽根保持部材265が摺動部材102に相当し、回転枠112に形成された摺動溝113の摺動面113aに沿って光軸Lを横切る方向に摺動自在であり、光軸Lに対する開口261の位置を調整自在とされている。光軸Lに対して位置調整された開口261の位置は、段付きビス134、コマ136等の無段階係止機構により無段階に保持される。なお、開口位置回転機構130に関しては、実施の形態1の場合と同様である。
【0071】
本実施の形態4による絞り装置250も、図1および図2に示した3次元形状測定装置1の照明光学系20の照明光軸24上の視野絞り位置Paや開口絞り位置Pb、あるいは観察光学系30の観察光軸31上の視野絞り位置Pcや開口絞り位置Pdに配置させることで、実施の形態1,2の場合と同様の効果を奏する。特に、本実施の形態4の絞り装置250によれば、開口261の径(絞り径)が開口径可変機構260によって可変自在であるので、照明光学系20に適用した場合も観察光学系30に適用した場合も、試料5に合わせて明るさを調整することができる。このためにも、開口径の異なる部材に交換する必要がなく、作業性も向上する。
【0072】
なお、本実施の形態4において、羽根開閉部材267を摺動させて開口261の径を調整設定する際に、可変される開口261の径を検知するための開口径検知手段、例えば開閉操作体270の引き出し量に対応する目盛等を設けるようにしてもよい。この開口径の情報は、3次元形状測定に活用される他、例えば同様の試料5を観察する場合の観察状態の記録等に利用して、同一の開口径(絞り径)等を再現することができ、使い勝手の良い観察装置となる。
【0073】
(実施の形態5)
ついで、本発明の実施の形態5の絞り装置300について図12および図13を参照して説明する。図12は、本体を取り除いた絞り装置300中の要部を一部破断して示す平面図であり、図13は、本体を取り除いた絞り装置300を中央部分で破断して示す縦断側面図である。なお、実施の形態1,4で説明した部分と同一または準ずる部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する。
【0074】
本実施の形態5の絞り装置300は、実施の形態4の場合と同様に、光束を制限するための開口261の大きさ(径)を可変させる開口径可変機構260を備える。ここで、本実施の形態5の開口径可変機構260は、開口261の大きさを自動的に可変させる電動駆動機構(第1の電動駆動機構)310を有する。この電動駆動機構310は、引っ張りバネ311により突き当て面266c側に付勢された羽根開閉部材267の端面に対して羽根保持部材265に形成されたネジ孔312に螺合しながら常に接する調整ビス313と、この調整ビス313に係脱自在で羽根開閉部材267側に対する進出量を調整する調整軸314を進退させる駆動モータ315と、駆動モータ315を搭載して本体103上に摺動自在に設けられた台座316の側面に形成された平歯ギヤ316aに噛合するギヤ317aを有して駆動モータ315を調整ビス313の軸心方向に移動させる駆動モータ317と、を備える。
【0075】
ここで、調整ビス313は、羽根開閉部材267の端面に接する先端313aと、ネジ孔312に螺合するネジ部313bと、回転枠112外に突出した回転部313cとを有する。回転部313cは、例えば四角形状の如く、多角形状に形成されている。このような調整ビス313は、回転枠112を所定量回転させることで調整軸314と同一軸となる位置を取り得るように設定されている。調整軸314は、先端に回転部313cに対して軸心方向には係脱自在で回転方向には固定的に嵌合する保持部314aを有する。回転部313cは、保持部314aにスムーズに嵌合するように、先端にテーパをつけたり、球形状に形成することが望ましい。台座316上に固定された駆動モータ315は、回転駆動により調整軸314を回転させながら調整軸314の軸心方向に進退移動させる。
【0076】
また、本実施の形態5の開口位置移動保持機構110は、羽根保持部材265が回転枠112に対して羽根開閉部材267とは直交する方向に摺動自在に設けられ、羽根保持部材265を介して光軸Lに対する開口261の位置を自動的に移動させる電動駆動機構(第2の電動駆動機構)320を有する。この電動駆動機構320は、引っ張りバネ321により突き当て面113c側に付勢された羽根保持部材265の端面に対して回転枠112に形成されたネジ孔322に螺合しながら常に接する調整ビス323と、この調整ビス323に係脱自在で羽根保持部材265側に対する進出量を調整する調整軸314を進退させる駆動モータ315と、駆動モータ317とを備える。すなわち、調整軸314、駆動モータ315,317は、電動駆動機構310と電動駆動機構320とで共用される。
【0077】
ここで、調整ビス323は、調整ビス313と同様に、羽根保持部材265の端面に接する先端323aと、ネジ孔322に螺合するネジ部323bと、回転枠112外に突出した回転部323cとを有する。回転部323cは、例えば四角形状の如く、多角形状に形成されている。このような調整ビス323は、回転枠112を所定量回転させることで調整軸314と同一軸となる位置を取り得るように設定されている。
【0078】
さらに、本実施の形態5の開口位置回転機構120は、開口261を光軸L周りに自動的に回転移動させる電動駆動機構(第3の電動駆動機構)330を有する。この電動駆動機構330は、回転枠112の外周面に形成されたギヤ331と、本体103上に搭載されてギヤ331に噛合するギヤ332を有する駆動モータ333とを備える。
【0079】
このような構成において、駆動モータ333による回転枠112の回転位置の調整により、図12に示すように、調整ビス313と調整軸314とが同一軸上に並ぶ状態に設定する。この状態で駆動モータ317を駆動させると、ギヤ316aが回転し、これに噛合する平歯ギヤ316aを有する台座316が本体103上を調整軸314の軸心方向に移動する。所定の位置まで台座316を移動させた時点で、駆動モータ317の駆動を停止させる。台座316の移動位置は、あらかじめ駆動モータ317の駆動量を図示しない制御系に記憶させておいてもよく、あるいはメカ的に移動量を制限するようにしてもよい。
【0080】
次に、駆動モータ315を駆動させ、調整軸314を回転させながら保持部314aと回転部313cとが嵌合する位置まで移動させる。保持部314aと回転部313cとが嵌合した後、駆動モータ315を正転または逆転駆動させることで、調整ビス313を回転移動させて羽根開閉部材267側に向けて進出させたり羽根開閉部材267側から退避する方向に移動させる。駆動モータ315の正転により調整ビス313を進出させると、羽根開閉部材267の端面が先端313aによって押し込まれ、調整ビス313をねじ込んだ方向にねじ込んだ分だけ移動する。逆に、駆動モータ315の逆転により調整ビス313を退避させると、引っ張りバネ311で引っ張られている羽根開閉部材267は調整ビス313の先端313aの退避に追従して、調整ビス313を緩めた分だけ移動する。よって、駆動モータ315により駆動される調整ビス313の移動量によって、羽根開閉部材267の位置が自動的に調整され、これと連動して開口261の径の大きさが自動的に調整される。この場合の駆動モータ315の駆動量は、図示しない制御系に記憶させておく。
【0081】
所望の位置に調整ビス313を移動させた時点で、駆動モータ315を停止させ、駆動モータ317を逆転駆動させて調整軸314および駆動モータ315を台座316ごと退避移動させることで、調整ビス313はネジ孔312、ネジ部313bの噛合状態によって調整位置に保持される。また、退避させた駆動モータ315を駆動させて調整軸314をイニシャル位置に戻す。
【0082】
なお、開口261の径の大きさを再調整する場合には、駆動モータ317により台座316を所定の位置まで移動させ、次に、記憶させておいた駆動量に従って駆動モータ315を駆動させれば保持部314aと回転部313cとが嵌合し、再調整が可能な状態となる。
【0083】
また、光軸Lに対する開口261の位置を移動調整する場合には、駆動モータ333によって回転枠112を図12に示す状態から反時計方向に90度回転させて、調整ビス323を調整軸314と同軸上となる位置に移動させる。この位置で、開口261の径の可変時と同様に、駆動モータ317,315および調整軸314を適宜駆動させることで、調整ビス323の位置を調整することで光軸Lに対する開口261の位置(偏心量)を自動的に調整設定することができる。この場合の駆動モータ315の駆動量も、開口261の偏心量に関する情報として図示しない制御系に記憶させておく。
【0084】
開口261の径や光軸Lに対する偏心位置を自動調整した後、駆動モータ333を駆動させると、回転枠112が光軸L周りに回転移動する。この際、開口261の径や光軸に対する偏心位置は調整設定された状態に維持される。
【0085】
本実施の形態5による絞り装置300も、図1および図2に示した3次元形状測定装置1の照明光学系20の照明光軸24上の視野絞り位置Paや開口絞り位置Pb、あるいは観察光学系30の観察光軸31上の視野絞り位置Pcや開口絞り位置Pdに配置させることで、実施の形態1の場合と同様の効果を奏する。特に、本実施の形態5の絞り装置300によれば、開口261の大きさの可変や、開口261の位置の移動や、光軸L周りの回転移動を、電動駆動機構310,320,330を利用して自動的に行わせるので、操作性が向上し、使い勝手のよいものとなる。また、あらかじめ駆動モータ315,317,333の駆動量と開口261の径の大きさ、光軸Lに対する偏心位置、回転方向の位置をテーブルとして記憶させておくことで、駆動モータ315,317,333の駆動量から、開口径、開口位置などの絞り装置300の状態を把握することができる。また、これらのデータは、ステレオ計測等の3次元測定装置への応用が可能なため、拡張性の高いものとなる。
【0086】
(変形例3)
図14は、本体を取り除いた変形例3の絞り装置300中の要部を一部破断して示す平面図であり、図15は、本体を取り除いた変形例3の絞り装置300を中央部分で破断して示す縦断側面図である。変形例3では、駆動モータ315,317に代えて1つの駆動モータ341を本体103に設け、駆動軸314の先端に保持部314aに代えて外周面がV溝形状に形成された保持部314bを設けるとともに、調整ビス313,323側には嵌合部313c,323cに代えて摩擦部313d,323dを設けたものである。駆動モータ341としては、例えばステッピングモータが用いられている。
【0087】
ここで、回転枠112外に位置する摩擦部313d,323dは、ネジ部313b,323bよりも径大な外周が断面円弧状に形成されて、V溝形状の保持部314bに選択的に係脱するものである。また、摩擦部313d,323dの表面および保持部314bのV溝形状部分は互いに摩擦係数が高く、係合状態では追従して回転するように構成されている。
【0088】
このような構成において、駆動モータ341を駆動させ、調整軸314をイニシャル位置から移動させる。このときの調整軸314の移動量は、駆動モータ333の駆動により回転枠112を反時計方向に回転させ、保持部314bに反時計方向から摩擦部313dを接触させたときに、図14に示すように、保持部314bのV溝部分に摩擦部313dの円弧形状部が嵌合する位置までとする。
【0089】
保持部314bに摩擦部313dが接触した状態で、駆動モータ341を駆動させて調整軸314を回転させながら直動させると、保持部314bに接触している摩擦部313dを介して調整ビス313も回転しながら移動する。所望の位置まで移動させ、調整が終了したら、駆動モータ333を駆動させて回転枠112を時計方向に回転させることで、保持部314bから摩擦部313dが離れ、調整ビス313の調整が不能な状態となる。その後、駆動モータ341を駆動し、調整軸314をイニシャル位置まで戻す。イニシャル位置は、回転枠112を光軸L周りに回転させたとき、調整軸314が干渉しない位置に設定される。
【0090】
ここで、開口261の径の大きさを再調整する場合は、図示しない制御系等にあらかじめ記憶させておいた駆動量に従って、前回調整を終了した位置まで駆動モータ341を駆動して調整軸314を移動させる。その後、駆動モータ333を駆動し、保持部314bに摩擦部313dを接触させれば再調整可能な状態となる。
【0091】
調整ビス323を用いて光軸Lに対する開口261の位置を調整する場合も、開口径の調整時と同様に行われる。変形例3によれば、2つの駆動モータ315,317を用いることなく、1つの駆動モータ341で開口径や開口位置の自動調整が可能となり、小型化・低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の3次元形状測定装置の構成例を示す概略側面図である。
【図2】図1の破線内に含まれる光学系を抽出して示す概略側面図である。
【図3】本体を取り除いた実施の形態1の絞り装置中の要部を一部破断して示す平面図である。
【図4】絞り装置を中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【図5】変形例1の絞り装置の中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【図6】変形例2の本体を取り除いた絞り装置中の要部を一部破断して示す平面図である。
【図7−1】実施の形態2の絞り装置の要部の構成例を示す概略平面図である。
【図7−2】絞り装置の状態を変えた要部の構成例を示す概略平面図である。
【図7−3】絞り装置の状態を変えた要部の構成例を示す概略平面図である。
【図7−4】絞り装置の状態を変えた要部の構成例を示す概略平面図である。
【図8】本体および上部側の回転枠を取り除いた実施の形態3の絞り装置中の要部を一部破断して示す平面図である。
【図9】絞り装置を中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【図10】本体を取り除いた実施の形態4の絞り装置中の要部を一部破断して示す平面図である。
【図11】絞り装置を中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【図12】本体を取り除いた実施の形態5の絞り装置中の要部を一部破断して示す平面図である。
【図13】本体を取り除いた絞り装置を中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【図14】本体を取り除いた変形例3の絞り装置中の要部を一部破断して示す平面図である。
【図15】本体を取り除いた絞り装置を中央部分で破断して示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0093】
5 試料
10 光学系
20 照明光学系
21 光源
24 照明光軸
30 観察光学系
31 観察光軸
100 絞り装置
101 開口
110 開口位置移動保持機構
120 開口位置回転機構
150 絞り装置
160 開口位置移動保持機構
161a〜161f 開口
170 開口位置回転機構
200 絞り装置
210 開口位置移動保持機構
220 開口位置回転機構
250 絞り装置
260 開口径可変機構
300 絞り装置
310 電動駆動機構
320 電動駆動機構
330 電動駆動機構
L 光軸
Pa 視野絞り位置
Pb 開口絞り位置
Pc 視野絞り位置
Pd 開口絞り位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を制限するための開口を有して対象となる光学系の光軸上に配置される絞り装置であって、
前記光軸に直交する平面内で前記光軸に対する前記開口の位置が移動可能で移動後の所望の位置で保持する開口位置移動保持機構と、
移動後の所望の位置で保持された前記開口を前記光軸周りに回転移動させる開口位置回転機構と、
を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記開口は、大きさが変更自在であることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記開口の大きさを可変させる開口径可変機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の絞り装置。
【請求項4】
前記開口径可変機構は、前記開口の大きさを自動的に可変させる第1の電動駆動機構を有することを特徴とする請求項3に記載の絞り装置。
【請求項5】
前記開口位置移動保持機構は、前記開口を保持する位置が段階的に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項6】
前記開口位置移動保持機構は、前記開口を保持する位置が無段階に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項7】
前記開口位置移動保持機構は、前記開口の位置を自動的に移動させる第2の電動駆動機構を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項8】
前記開口位置回転機構は、前記開口を前記光軸周りに自動的に回転移動させる第3の電動駆動機構を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項9】
光源からの光を試料に照射する照明光学系の照明光軸上の開口絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項10】
光源からの光を試料に照射する照明光学系の照明光軸上の視野絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項11】
試料からの光を観察または撮影する観察光学系の観察光軸上の開口絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項12】
試料からの光を観察または撮影する観察光学系の観察光軸上の視野絞り位置に請求項1〜8のいずれか一つに記載の絞り装置を備えることを特徴とする3次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−185717(P2008−185717A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18199(P2007−18199)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】