説明

絶縁性接着フィルム、積層体、硬化物、及び複合体

【課題】低線膨張であり、配線埋め込み性に優れ、高いピール強度を有する絶縁性接着フィルムを提供すること。
【解決手段】極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)、及び無機充填剤(A2)を含有する被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)、及び無機充填剤(B2)を含有してなる接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有する絶縁性接着フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性接着フィルム、積層体、硬化物、及び複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、電子機器に用いられる回路基板のさらなる高密度化が要求されており、このような高密度化の要求に応えるために、回路基板の多層化が図られている。このような多層回路基板は、例えば、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、電気絶縁層を積層し、この電気絶縁層の上に導体層を形成させ、さらに、これら電気絶縁層の積層と、導体層の形成と、を繰り返し行なうことにより形成される。電気絶縁層と導体層とは、必要に応じて、数段積層することもできる。
【0003】
このような多層回路基板においては、導体層と電気絶縁層との線膨張差により回路の断線が発生してしまう場合があり、特に、導体層が高密度のパターンである場合にはこのような断線の問題は顕著であった。そのため、多層回路基板においては、電気絶縁層の低線膨張化が求められている。電気絶縁層の低線膨張化には、一般に、無機充填剤を添加することが有効ではあるが、無機充填剤を添加することにより、電気絶縁層の表面粗度が高くなってしまい、電気絶縁層表面に導体層を形成し、該導体層をエッチングすることにより微細配線を形成した際に、エッチング不良によりパターン間に導体が残ったり、導体に浮きや剥れが発生してしまうという問題が発生してしまう。
【0004】
これに対し、電気絶縁層の表面粗度を低くしながら、低線膨張化を実現するために、たとえば、特許文献1では、ポリイミド樹脂及び無機フィラーを含有する第1の層と、ポリイミド樹脂及び無機フィラーを含有し、第1の層よりも無機フィラーの含有量を少なくした第2の層とからなる電気絶縁層用の接着シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−45388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上述した特許文献1に記載の技術では、得られる電気絶縁層の表面粗度を低くすることは可能であるものの、低線膨張化が必ずしも十分でなく、しかも、ピール強度が低く、信頼性に劣ってしまうという不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、低線膨張で、配線埋め込み性に優れ、高いピール強度を有する電気絶縁層を形成可能な絶縁性接着フィルム、ならびに、これを用いて得られる積層体、硬化物、及び複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、絶縁性接着フィルムを、極性基を有する脂環式オレフィン重合体及び無機充填剤を含有する被めっき層と、有機溶剤可溶性ポリイミド及び無機充填剤を含有する接着層とからなる2層構造で形成することにより、当該絶縁接着フィルムによれば、低線膨張で、配線埋め込み性に優れ、高いピール強度を有する電気絶縁層を形成可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
特に、本発明によれば、絶縁性接着フィルムを、被めっき層と接着層とを異なる樹脂で構成し、これら異なる樹脂の2層構造としたことによる不具合、具体的には、2層間における密着性が悪くピール強度が低下してしまうという不具合の発生を有効に防止しながら、低線膨張性、及び優れた配線埋め込み性を有する電気絶縁層の形成を実現するものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)、及び無機充填剤(A2)を含有する被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)、及び無機充填剤(B2)を含有してなる接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有する絶縁性接着フィルム、
〔2〕前記被めっき層用樹脂組成物が、前記極性基と反応可能な官能基を分子内に2個以上有する硬化性化合物(A3)をさらに含有し、前記接着層用樹脂組成物が、エポキシ樹脂(B3)、フェノール化合物(B4)、及び硬化促進剤(B5)をさらに含有する前記〔1〕に記載の絶縁性接着フィルム、
〔3〕前記被めっき層の厚みが1〜10μmであり、前記接着層の厚みが10〜100μmである前記〔1〕又は〔2〕に記載の絶縁性接着フィルム、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の絶縁性接着フィルムを基材に積層してなる積層体、
〔5〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の絶縁性接着フィルム、又は前記〔4〕に記載の積層体を硬化してなる硬化物、
〔6〕前記〔5〕に記載の硬化物の表面に、無電解めっきにより、導体層を形成してなる複合体、ならびに、
〔7〕前記〔5〕に記載の硬化物、又は前記〔6〕に記載の複合体を構成材料として含む電子材料用基板、
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低線膨張で、配線埋め込み性に優れ、高いピール強度を有する電気絶縁層を形成可能な絶縁性接着フィルム、ならびに、これを用いて得られる積層体、硬化物、及び複合体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の絶縁性接着フィルムは、極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)、及び無機充填剤(A2)を含有する被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)、及び無機充填剤(B2)を含有してなる接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有するものである。
なお、本明細書において脂環式オレフィン重合体とは、脂環式構造を有するオレフィン(脂環式オレフィン)単量体由来の繰り返し単位、又は当該繰り返し単位と同視しうる繰り返し単位(以下、便宜的に、両者をまとめて脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し単位という。)を含んでなる重合体をいう。
【0012】
(被めっき層用樹脂組成物)
まず、被めっき層を形成するための被めっき層用樹脂組成物について説明する。本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物は、極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)、及び無機充填剤(A2)を含有する。
【0013】
(極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1))
本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物は、樹脂成分として、極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)を含有する。
本発明で用いる極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)(以下、適宜、「脂環式オレフィン重合体(A1)」と略記する。)を構成する脂環構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、機械的強度や耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、脂環式オレフィン重合体(A1)は、通常、熱可塑性のものである。
【0014】
本発明においては、被めっき層を構成する樹脂成分として、脂環式オレフィン重合体(A1)を用いることにより、本発明の絶縁性接着フィルムを、後述する有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)を樹脂成分として含有してなる接着層との間における密着性を良好なものとしながら、被めっき層表面における表面粗度を低く抑えるものとすることができる。そして、これにより、被めっき層上に、無電解めっき等により導電層を形成した際に、被めっき層と接着層との間における密着性、及び被めっき層と導電層との間における密着性のいずれも優れたものとすることが可能となる。すなわち、被めっき層上に、無電解めっき等により導電層を形成した際における、ピール強度を優れたものとすることができる。
【0015】
脂環式オレフィン重合体(A1)中の脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し単位の割合が少なすぎると、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
【0016】
脂環式オレフィン重合体(A1)が有する極性基としては、特に限定されないが、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられるが、これらのなかでも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びフェノール性水酸基が好ましく、カルボン酸無水物基がより好ましい。なお、脂環式オレフィン重合体(A1)は、2種以上の極性基を有するものであってもよい。また、脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。脂環式オレフィン重合体(A1)中の極性基の含有率は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体(A1)を構成する全繰り返し単位100モル%中、通常5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。
【0017】
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)は、たとえば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)極性基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)極性基を有しない脂環式オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合する方法、(3)極性基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)極性基を有しない芳香族オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、又は、(5)極性基を有しない脂環式オレフィン重合体に極性基を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られる極性基(例えばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の極性基を、例えば加水分解することなどにより他の極性基(例えばカルボキシル基)に変換する方法などにより得ることができる。これらのなかでも、前述の(1)の方法によって得られる重合体が好適である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。
【0018】
極性基を有する脂環式オレフィンの具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのフェノール性水酸基を有する脂環式オレフィンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
極性基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0020】
極性基を有しない芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの具体例が前記極性基を有する場合、極性基を有する芳香族オレフィンの例として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0021】
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、極性基を有する脂環式オレフィン以外の、極性基を有する単量体としては、極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0022】
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、極性基を有しない単量体としては、極性基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)の分子量は、特に限定されないが、テトロヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることがより好ましく、特に好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度が低下し、大きすぎるとシート状又はフィルム状に成形して成形体とする際に作業性が悪化する傾向がある。
【0024】
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,W又はRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基又はカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。
【0025】
上記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl、MoBrなどのハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、上記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族又は14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物の量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、モル比で、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。
【0026】
また、上記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
【0027】
メタセシス重合触媒の使用割合は、重合に用いる単量体に対して、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
【0028】
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解又は分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されているものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
【0029】
有機溶媒の使用量は、重合溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪くなり、50重量%を超えると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる場合がある。
【0030】
重合反応は、重合に用いる単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。これらを混合する方法としては、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。用いるメタセシス重合触媒が、主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えてもよいし、その逆でもよい。また、単量体と有機金属化合物との混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えてもよいし、その逆でもよい。
【0031】
重合温度は特に制限はないが、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。
【0032】
得られる脂環式オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整に用いるジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、又は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
【0033】
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:重合に用いる単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
【0034】
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、たとえば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−209460号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報、特開平11−209460号公報などに記載されている、たとえば、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、たとえば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、上述したメタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
【0035】
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
【0036】
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
【0037】
水素添加反応の時間は、水素添加率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常、0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上を水素添加することができる。
【0038】
水素添加反応を行った後、水素添加反応に用いた触媒を除去する処理を行ってもよい。触媒の除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
本発明で用いられる脂環式オレフィン重合体(A1)は、重合や水素添加反応後の重合体溶液として使用しても、溶媒を除去した後に使用してもどちらでもよいが、樹脂組成物を調製する際に添加剤の溶解や分散が良好になるとともに、工程が簡素化できるため、重合体溶液として使用するのが好ましい。
【0039】
(無機充填剤(A2))
無機充填剤(A2)としては特に限定されないが、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。これらの中でも、シリカが、微細な粒子が得やすいため好ましい。これらの無機充填剤(A2)は、シランカップリング剤処理やステアリン酸などの有機酸処理をしたものであってもよい。
【0040】
また、無機充填剤(A2)としては、得られる電気絶縁層の誘電特性を低下させない非導電性のものであることが好ましい。また、無機充填剤(A2)の形状は、特に限定されず、球状、繊維状、板状などであってもよいが、微細な粗面形状を得るために、微細な球状であることが好ましい。
【0041】
無機充填剤(A2)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.2〜2μmである。無機充填剤の平均粒子径を前記範囲とすることにより、絶縁性接着フィルムの表面粗度を適切な範囲とすることができる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
【0042】
無機充填剤(A2)の配合割合は、被めっき層用樹脂組成物中、好ましくは0.1〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%である。無機充填剤(A2)の配合割合を前記範囲とすることにより、被めっき層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の線膨張率やピール強度をより良好なものとすることができる。
【0043】
(硬化性化合物(A3))
また、本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物は、上述した脂環式オレフィン重合体(A1)、及び無機充填剤(A2)に加えて、被めっき層用樹脂組成物の硬化を促進させるための成分として、脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応可能な官能基を分子内に2個以上有する硬化性化合物(A3)(以下、適宜、「硬化性化合物(A3))」と略記する。)をさらに含有していてもよい。
【0044】
硬化性化合物(A3)としては、脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応可能な官能基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、脂環式オレフィン重合体(A1)としてカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合には、好ましい硬化性化合物(A3)としては、エポキシ樹脂、多価イソシアネート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジン化合物、アジリジン化合物などが挙げられる。これらのなかでも、経済性と性能のバランスの点で優れるという点より、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物や、脂環式オレフィン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、得られる絶縁性接着フィルム、積層体及び硬化物の機械物性を良好なものとすることができるという点より、ビスフェノールA型エポキシ化合物や、脂環式オレフィン構造、ナフタレン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、脂環式オレフィン構造を有するエポキシ樹脂がより好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0046】
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、たとえば、商品名「jER827、jER828、jER828EL、jER828XA、jER834」(以上、三菱化学社製)、商品名「エピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン850−S、エピクロン850−LC」(以上、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標)などが挙げられる。脂環式オレフィン構造、ナフタレン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂〔たとえば、商品名「エピクロンHP7200L、エピクロンHP7200、エピクロンHP7200H、エピクロンHP7200HH」(以上、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標);商品名「Tactix558」(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製);商品名「XD−1000−1L、XD−1000−2L」(以上、日本化薬社製)〕や、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂〔たとえば、商品名「エピクロンHP4032、HP4032D、HP4700、HP4710、HP4770、HP5000」(以上、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標)、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂〔たとえば、商品名「オンコートEX−1010、オンコートEX−1011、オンコートEX−1012、オンコートEX−1020、オンコートEX−1030、オンコートEX−1040、オンコートEX−1050、オンコートEX−1051」(以上、長瀬産業社製、オンコートは登録商標);商品名「オグソールPG−100、オグソールEG−200、オグソールEG−250)」(以上、大阪ガスケミカル社製、オグソールは登録商標)〕などが挙げられる。
【0047】
本発明の被めっき層用樹脂組成物中における、硬化性化合物(A3)の配合量は、脂環式オレフィン重合体(A1)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜60重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の範囲である。硬化性化合物(A3)の配合量が少なすぎても、多すぎても、被めっき層用樹脂組成物を硬化させる作用が不十分となり、被めっき層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物のピール強度が低下してしまうおそれがある。
【0048】
(その他の成分)
また、本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては特に限定されないが、たとえば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第2級アミン、第3級アミン、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド、ジシアンジアミド及びその誘導体、尿素誘導体などが挙げられるが、これらのなかでも、イミダゾール誘導体が特に好ましい。
【0049】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物;などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
硬化促進剤を配合する場合における配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、脂環式オレフィン重合体(A1)100重量部に対して、好ましくは、0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0051】
さらに、本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物には、絶縁性接着フィルムの難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される難燃剤を配合してもよい。難燃剤を配合する場合の配合量は、脂環式オレフィン重合体(A1)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である。
【0052】
また、本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物には、さらに必要に応じて、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0053】
本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
【0054】
(接着層用樹脂組成物)
次いで、接着層を形成するための接着層用樹脂組成物について説明する。本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)、及び無機充填剤(B2)を含有する。
【0055】
(有機溶剤可溶性ポリイミド(B1))
本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、樹脂成分として、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)を含有する。
有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)としては、有機溶剤に23℃で20重量%以上溶解するポリイミドであればよく、特に限定されない。このような有機溶剤としては、たとえば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0056】
本発明においては、接着層を構成する樹脂成分として、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)を用いることにより、本発明の絶縁性接着フィルムを、上述した脂環式オレフィン重合体(A1)を樹脂成分として含有してなる被めっき層との間における密着性を良好なものとしながら、低線膨張で、配線埋め込み性に優れた電気絶縁層を形成可能である。
【0057】
本発明においては、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)としては、酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られるものや、酸二無水物成分と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られるものが好適に用いられる。
【0058】
酸二無水物成分としては、たとえば、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’−ハイドロキノンビス(無水フタル酸)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0059】
また、ジアミン成分としては、たとえば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0060】
また、多価イソシアネート化合物としては、たとえば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4′−ジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートおよびノルボヌレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0061】
有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)の酸価としては、2〜100mg(KOH)/gが好ましく、3〜80mg(KOH)/gがより好ましく、5〜60mg(KOH)/gの範囲のものが特に好ましい。
【0062】
(無機充填剤(B2))
無機充填剤(B2)としては、特に限定されないが、たとえば、上述した被めっき層用樹脂組成物に用いる無機充填剤(A2)と同様のものを用いることができる。ただし、本発明においては、接着層用樹脂組成物に用いる無機充填剤(B2)としては、接着層用樹脂組成物の流動性向上という観点より、上述した被めっき層用樹脂組成物に用いる無機充填剤(A2)よりも平均粒子径が大きいものを用いることが好ましい。
【0063】
接着層用樹脂組成物中における、無機充填剤(B2)の配合割合は、上述した被めっき層用樹脂組成物中における無機充填剤(A2)の配合割合よりも多くすることが好ましい。すなわち、本発明の絶縁性接着フィルムにおいては、被めっき層中における無機充填剤(A2)の配合割合よりも、接着層中における無機充填剤(B2)の配合割合の方が多いような構成とすることが好ましい。
【0064】
接着層用樹脂組成物中における、無機充填剤(B2)の具体的な配合割合は、接着層用樹脂組成物中、好ましくは30〜80重量%であり、好ましくは40〜75重量%、より好ましくは50〜70重量%である。無機充填剤(B2)の配合割合が少なすぎると、接着層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の線膨張率が高くなるおそれがあり、一方、配合割合が多すぎると、接着層用樹脂組成物の流動性が悪化するおそれがある。
【0065】
(エポキシ樹脂(B3))
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、上述した有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)、及び無機充填剤(B2)に加えて、接着層用樹脂組成物の硬化を促進させるための成分として、エポキシ樹脂(B3)をさらに含有していてもよい。
【0066】
エポキシ樹脂(B3)としては、エポキシ基を2つ以上有するものであればよいが、本発明においては、上述した被めっき層用樹脂組成物の硬化性化合物(A3)として例示したエポキシ樹脂と同様のものを用いることができる。また、接着層用樹脂組成物に配合するエポキシ樹脂(B3)としては、上述した被めっき層用樹脂組成物の硬化性化合物(A3)として例示したもののなかでも、ビスフェノールA型エポキシ化合物や、脂環式オレフィン構造、ナフタレン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン構造を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0067】
本発明の接着層用樹脂組成物中における、エポキシ樹脂(B3)の配合量は、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは50〜700重量部、さらに好ましくは100〜500重量部の範囲である。有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)の配合量が少なすぎても、多すぎても、接着層用樹脂組成物の硬化性が不十分となってしまうおそれがある。
【0068】
(フェノール化合物(B4))
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、接着層用樹脂組成物を硬化させるための成分として、エポキシ樹脂(B3)に加えて、フェノール化合物(B4)をさらに含有していてもよい。
【0069】
フェノール化合物(B4)としては、分子中にフェノール性水酸基を有するものであれば特に限定するものではない。このようなフェノール化合物(B4)としては、たとえば、ビスフェノールA、フェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フルオレン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられ、これらのなかでも、フルオレン変性フェノール樹脂が好ましい。また、フェノール化合物(B4)としては、接着層用樹脂組成物の硬化性の観点から、フェノール化合物の水酸基当量が50〜300のものを用いることが好ましい。
【0070】
本発明の接着層用樹脂組成物中における、フェノール化合物(B4)の配合量は、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)100重量部に対して、好ましくは、50〜2000重量部、より好ましくは65〜900重量部、さらに好ましくは100〜550重量部の範囲である。フェノール化合物(B4)の配合量が少なすぎると、接着層用樹脂組成物の流動性が悪化するおそれがあり、一方、多すぎると、接着層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の線膨張性が悪化するおそれがある。
【0071】
(硬化促進剤(B5))
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、接着層用樹脂組成物を硬化させるための成分として、エポキシ樹脂(B3)及びフェノール化合物(B4)に加えて、硬化促進剤(B5)をさらに含有していてもよい。
【0072】
硬化促進剤(B5)としては特に限定されないが、上述した被めっき層用樹脂組成物に用いることのできる硬化促進剤として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0073】
本発明の接着層用樹脂組成物中における、硬化促進剤(B5)の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)100重量部に対して、好ましくは、1〜50重量部、より好ましくは2〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。硬化促進剤(B5)の配合量が少なすぎると、接着層用樹脂組成物の硬化が不十分となるおそれがあり、一方、多すぎると、接着層用樹脂組成物の保存安定性に劣ったり、流動が不十分となるおそれがある。
【0074】
本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)及び無機充填剤(B2)に加え、エポキシ樹脂(B3)、フェノール化合物(B4)、及び硬化促進剤(B5)をさらに含有してもよい。
【0075】
(その他の成分)
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物には、上述した被めっき層用樹脂組成物と同様に、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される難燃剤を配合してもよい。難燃剤を配合する場合の配合量は、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である。
【0076】
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物には、上述した被めっき層用樹脂組成物と同様に、さらに必要に応じて、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0077】
本発明で用いる接着層用樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
【0078】
(絶縁性接着フィルム)
本発明の絶縁性接着フィルムは、上述した被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、上述した接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有するものである。
【0079】
本発明の絶縁性接着フィルムは、たとえば、以下の2つの方法:(1)上述した被めっき層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布または流延し、必要に応じて乾燥させ、次いで、その上に、上述した接着層用樹脂組成物をさらに塗布または流延し、必要に応じて乾燥させることにより製造する方法;(2)上述した被めっき層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布または流延し、必要に応じて乾燥させて得られたシート状又はフィルム状に成形してなる被めっき層用成形体と、上述した接着層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布または流延し、必要に応じて乾燥させて、シート状又はフィルム状に成形してなる接着層用成形体とを積層し、これらの成形体を一体化させることにより製造する方法、により製造することができる。これらの製造方法の内、より容易なプロセスであり生産性に優れることから、上記(1)の製造方法が好ましい。
【0080】
上述の(1)の製造方法において、被めっき層用樹脂組成物を支持体に塗布、散布または流延する際、及び塗布、散布または流延された被めっき層用樹脂組成物に接着層用樹脂組成物を塗布、散布または流延する際、あるいは上述の(2)の製造方法において、被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形して被めっき層用成形体及び接着層用成形体とする際には、被めっき層用樹脂組成物または接着層用樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延することが好ましい。
【0081】
この際に用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。なお、支持体の表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0082】
上述の(1)の製造方法における、被めっき層用樹脂組成物および接着層用樹脂組成物の厚み、あるいは上述の(2)の製造方法における被めっき層用成形体及び接着層用成形体の厚みは、特に限定されないが、絶縁性接着フィルムとした際における、被めっき層の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは1〜5μm、また、接着層の厚みが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmとなるような厚みとすることが好ましい。被めっき層の厚みが薄すぎると、絶縁性接着フィルムを硬化して得られる硬化物上に、無電解めっきにより導体層を形成した際における、導体層の形成性が低下してしまうおそれがあり、一方、被めっき層の厚みが厚すぎると、絶縁性接着フィルムを硬化して得られる硬化物の線膨張が大きくなるおそれがある。また、接着層の厚みが薄すぎると、絶縁性接着フィルムの配線埋め込み性が低下してしまうおそれがある。
【0083】
被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
【0084】
また、上述の(1)の製造方法における、被めっき層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布または流延した後、あるいは接着層用樹脂組成物を被めっき層用樹脂組成物上に塗布、散布または流延した後、あるいは上述の(2)の製造方法における、被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物を支持体上に塗布した後、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
【0085】
なお、本発明の絶縁性接着フィルムにおいては、絶縁性接着フィルムを構成する被めっき層及び接着層が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。これらを未硬化又は半硬化の状態とすることにより、本発明の絶縁性接着フィルムを構成する接着層を接着性の高いものとすることできる。ここで未硬化とは、本発明の絶縁性接着フィルムを、それぞれ、脂環式オレフィン重合体(A1)を溶解可能な溶剤、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)を溶解可能な溶剤に漬けたときに、実質的に脂環式オレフィン重合体(A1)、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)の全部が溶解する状態をいう。また、半硬化とは、加熱すれば更に硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、それぞれ、脂環式オレフィン重合体(A1)を溶解可能な溶剤、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)を溶解可能な溶剤に、脂環式オレフィン重合体(A1)、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)の一部(具体的には7重量%以上)が溶解する状態であるか、あるいは、溶剤中に成形体を24時間浸漬した後の体積が、浸漬前の体積の200%以上(膨潤率)である状態をいう。
【0086】
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明の絶縁性接着フィルムを基材に積層してなるものである。本発明の積層体としては、少なくとも、上述した本発明の絶縁性接着フィルムを積層してなるものであればよいが、表面に導体層を有する基板と、上述した本発明の絶縁性接着フィルムからなる電気絶縁層とを積層してなるものが好ましい。なお、この際においては、本発明の絶縁性接着フィルムが、接着層を介して基板と積層されるような構成とする。すなわち、本発明の積層体においては、電気絶縁層の表面は、本発明の絶縁性接着フィルムの被めっき層及び接着層のうち、被めっき層により形成されることとなる。
【0087】
表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(たとえば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニルエーテル、ガラス等)を含有する樹脂組成物を硬化して形成されたものである。導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。表面に導体層を有する基板の厚みは、通常、10μm〜10mm、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは30μm〜2mmである。
【0088】
本発明で用いる表面に導体層を有する基板は、電気絶縁層との密着性を向上させるために、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術を、特に限定されず使用することができる。例えば、導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導体層にめっきを析出させて粗化する方法、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び導体層にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。これらの内、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
【0089】
本発明の積層体は、通常、表面に導体層を有する基板上に、上述した本発明の絶縁性接着フィルムを加熱圧着することにより、製造することができる。
【0090】
加熱圧着の方法としては、支持体付きの絶縁性接着フィルムを、絶縁性接着フィルムを構成する接着層が、上述した基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、基板表面の導体層と絶縁性接着フィルムとの界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。
【0091】
加熱圧着操作の温度は、通常、30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常、30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う減圧下の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
【0092】
(硬化物)
本発明の硬化物は、上述した方法により得られる本発明の積層体について、本発明の絶縁性接着フィルムを硬化する処理を行なうことで、硬化物とすることができる。硬化は、通常、導体層上に、本発明の絶縁性接着フィルムが形成された基板全体を加熱することにより行う。硬化は、上述した加熱圧着操作と同時に行うことができる。また、先ず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。
【0093】
(複合体)
本発明の複合体は、上述した本発明の積層体の電気絶縁層上に、すなわち、絶縁性接着フィルムの硬化物の被めっき層上に、無電解めっきにより、さらに別の導体層を形成してなるものである。以下、本発明の複合体の製造方法を、本発明の複合体の一例としての多層回路基板を例示して、説明する。
【0094】
まず、積層体に、電気絶縁層を貫通するビアホールやスルーホールを形成する。ビアホールは、多層回路基板とした場合に、多層回路基板を構成する各導体層を連結するために形成される。ビアホールやスルーホールは、フォトリソグラフィ法のような化学的処理により、又は、ドリル、レーザー、プラズマエッチングなどの物理的処理などにより形成することができる。これらの方法の中でもレーザーによる方法(炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、UV−YAGレーザーなど)は、より微細なビアホールを電気絶縁層の特性を低下させずに形成できるので好ましい。
【0095】
次に、積層体の電気絶縁層、具体的には、積層体を構成する絶縁性接着フィルムの被めっき層の表面を、粗化する表面粗化処理を行う。表面粗化処理は、電気絶縁層上に形成する導電層との接着性を高めるために行う。
電気絶縁層の表面平均粗さRaは、好ましくは0.05μm以上0.5μm未満、より好ましくは0.06μm以上0.3μm以下であり、かつ表面十点平均粗さRzjisは、好ましくは0.3μm以上4μm未満、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。なお、本明細書において、RaはJIS B0601−2001に示される算術平均粗さであり、表面十点平均粗さRzjisは、JIS B0601−2001付属書1に示される十点平均粗さである。
【0096】
表面粗化処理方法としては、特に限定されないが、電気絶縁層表面(すなわち、絶縁性接着フィルムの硬化物の被めっき層の表面)と酸化性化合物とを接触させる方法などが挙げられる。酸化性化合物としては、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物などの酸化能を有する公知の化合物が挙げられる。電気絶縁層の表面平均粗さの制御の容易さから、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いるのが特に好ましい。無機酸化性化合物としては、過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩などが挙げられる。有機酸化性化合物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、オゾンなどが挙げられる。
【0097】
無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いて電気絶縁層表面を表面粗化処理する方法に格別な制限はない。例えば、上記酸化性化合物を溶解可能な溶媒に溶解して調製した酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる方法が挙げられる。
酸化性化合物溶液を、電気絶縁層の表面に接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、電気絶縁層を酸化性化合物溶液に浸漬するディップ法、酸化性化合物溶液の表面張力を利用して、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に載せる液盛り法、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に噴霧するスプレー法、などいかなる方法であってもよい。表面粗化処理を行うことにより、電気絶縁層の、導体層など他の層との間の密着性を向上させることができる。
【0098】
これらの酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる温度や時間は、酸化性化合物の濃度や種類、接触方法などを考慮して、任意に設定すればよいが、温度は、通常、10〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、時間は、通常、0.5〜60分間、好ましくは1〜40分間である。
【0099】
なお、表面粗化処理後、酸化性化合物を除去するため、表面粗化処理後の電気絶縁層表面を水で洗浄する。また、水だけでは洗浄しきれない物質が付着している場合には、その物質を溶解可能な洗浄液でさらに洗浄したり、他の化合物と接触させたりすることにより水に可溶な物質にしてから水で洗浄する。例えば、過マンガン酸カリウム水溶液や過マンガン酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を電気絶縁層と接触させた場合は、発生した二酸化マンガンの皮膜を除去する目的で、硫酸ヒドロキシアミンと硫酸との混合液などの酸性水溶液により中和還元処理した後に水で洗浄することができる。
【0100】
次いで、積層体の電気絶縁層について表面粗化処理を行った後、電気絶縁層の表面(すなわち、絶縁性接着フィルムの硬化物の被めっき層の表面)及びビアホールやスルーホールの内壁面に、導体層を形成する。
導体層の形成方法は、密着性に優れる導体層を形成できるという観点より、無電解めっき法により行なう。
【0101】
たとえば、無電解めっき法により導体層を形成する際においては、まず、金属薄膜を電気絶縁層の表面に形成させる前に、電気絶縁層(すなわち、絶縁性接着フィルムの硬化物の被めっき層)上に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を電気絶縁層に付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコールもしくはクロロホルムなどの有機溶剤に0.001〜10重量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤などを含有していてもよい。)に浸漬した後、金属を還元する方法などが挙げられる。
【0102】
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは特に限定されない。例えば、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸、水素化硼素アンモニウム、ヒドラジン、ホルマリンなどを還元剤とする無電解銅めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液;ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液;無電解パラジウムめっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液;無電解金めっき液;無電解銀めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液などの無電解めっき液を用いることができる。
【0103】
金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、金属薄膜を形成した後、密着性向上などのため、金属薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。なお、この際において、加熱は加圧条件下で実施してもよい。このときの加圧方法としては、例えば、熱プレス機、加圧加熱ロール機などの物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加える圧力は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、金属薄膜と電気絶縁層との高い密着性が確保できる。
【0104】
このようにして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属薄膜をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法により形成される導体層は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
【0105】
以上のようにして得られた多層回路基板を、上述した積層体を製造するための基板とし、これを上述した成形体又は複合成形体とを加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成し、さらにこの上に、上述した方法に従い、導電層の形成を行い、これらを繰り返すことにより、更なる多層化を行うことができ、これにより所望の多層回路基板とすることができる。
【0106】
このようにして得られる本発明の複合体(及び本発明の複合体の一例としての多層回路基板)は、本発明の絶縁性接着フィルムからなる電気絶縁層を有してなり、該電気絶縁層は、低線膨張であり、配線埋め込み性に優れ、ピール強度に優れたものであるため、該電気絶縁層に導体層を形成し、形成した導体層をパターン化し、微細配線を形成した際に、導体層のパターン化を良好に行なうことができるものである。特に、本発明によれば、本発明の絶縁性接着フィルムについて、被めっき層を、脂環式オレフィン重合体(A1)を樹脂成分として含有してなるものとし、接着層を、有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)を樹脂成分として含有してなるものとすることで、これら異なる樹脂の2層構造としたことによる不具合、具体的には、2層間における密着性が悪くピール強度が低下してしまうという不具合の発生を有効に防止しながら、低線膨張性、及び優れた配線埋め込み性を実現するものである。そのため、本発明の複合体(及び本発明の複合体の一例としての多層回路基板)は、各種用途に好適に用いることができる。
【0107】
(電子材料用基板)
本発明の電子材料用基板は、上述した本発明の硬化物又は複合体からなるものである。このような本発明の硬化物又は複合体からなる本発明の電子材料用基板は、携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの各種電子機器に好適に用いることができる。
【実施例】
【0108】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0109】
(1)脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
【0110】
(2)脂環式オレフィン重合体の水素添加率
水素添加前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを水素添加率とした。
【0111】
(3)脂環式オレフィン重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率
重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位のモル数の割合を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率とした。
【0112】
(4)引張強度、弾性率、伸び
フィルム複合体の引張強度、弾性率及び伸びを、オートグラフ(AGS−5kNH、島津製作所製)を用いて、サンプル形状70mm×5mm、引張速度2mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定した。
【0113】
(5)線膨張係数
フィルム複合体から幅5.95mm、長さ15.4mm、の小片を切り出し、支点間距離10mm、昇温速度10℃/分の条件で、熱機械分析装置(TMA/SDTA840:メトラー・トレド社製)により、30℃〜150℃の線膨張係数の測定を行った。
【0114】
(6)配線埋め込み性
内層回路基板(IPC MULTI−PURPOSE TESTBOARD No.IPC−B−25、導体厚25μm、0.8mm厚)の両面に、フィルム複合体の接着層側の面が接するように積層した。具体的には、一次プレスを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着で行い、さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、1MPaで90秒間、加熱圧着することで、積層体を得た。そして、この積層体から支持フィルムを剥がし、180℃で60分間硬化した。硬化後、導体幅165μm、導体間隔165μmのくし型パターン部分の導体がある部分とない部分との段差を触針式段差膜厚計(Tencor Instruments製 P−10)にて測定し、以下の基準で、配線埋め込み性を評価した。
○:段差が2μm未満
×:段差が2μm以上
【0115】
(7)ピール強度
多層プリント配線板における絶縁層と銅めっき層との引き剥がし強さをJIS C6481−1996に準拠して測定した。
【0116】
合成例1
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「EdNB」と略記する)35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目に得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン)45モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物20モル部、アニソール250モル部およびC1063 0.01モル部を追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063 0.03モル部を追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(A1−1)の溶液を得た。得られた重合体(A1−1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は20モル%であった。重合体(A1−1)の溶液の固形分濃度は22%であった。
【0117】
実施例1
(脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1))
合成例1にて得られた脂環式オレフィン重合体(A1−1)の溶液454部(脂環式オレフィン重合体(A1−1)換算で100部)、硬化性化合物(A3)としてのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(「エピクロン HP7200L」、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標)36部、無機充填剤(A2)としてのシリカ(「アドマファイン SO−C1」、アドマテックス社製、平均粒子径0.25μm、「アドマファイン」は登録商標)24.5部、老化防止剤としてのトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(「Irganox3114」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1部、紫外線吸収剤としての2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール0.5部、及び硬化促進剤としての1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を、アニソールに混合して、配合剤濃度が16%になるように混合することで、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)のワニスを得た。脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)の配合を表1に示す。
【0118】
(ポリイミド含有樹脂組成物(B−1))
有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)としてのポリイミド樹脂(「ELG−485」、大日本インキ化学工業社製、酸価28mg(KOH)/g)100部、エポキシ樹脂(B3)としてのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(「エピクロン HP4710」、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標)290部、フェノール化合物(B4)としてのフルオレン変性フェノール樹脂とビスフェノールAとの混合物(「CP002」、大阪ガスケミカル社製)233部、無機充填剤(B2)としてのシリカ(「HPS−0500」、東亞合成社製、平均粒子径0.5μm)960部、及び硬化促進剤(B5)としてのイミダゾール化合物(「キュアゾール 2PZCNS−PW」、四国化成社製、「キュアゾール」は登録商標)16.7部を、N,N−ジメチルアセトアミドに混合して、配合剤濃度が65%になるように混合することで、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)のワニスを得た。ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)の配合を表1に示す。
【0119】
(フィルム複合体の作製)
硬化性樹脂組成物(A−1)のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で5分間乾燥させて、未硬化の硬化性樹脂組成物(A−1)の厚みが3μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルムを得た。
【0120】
次に、前記支持体付きフィルムの硬化性樹脂組成物(A−1)の面に、硬化性樹脂組成物(B−1)のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、硬化性樹脂組成物の総厚みが40μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルム複合体を得た。当該支持体付きフィルム複合体は、支持体、硬化性樹脂組成物(A−1)の樹脂層、硬化性樹脂組成物(B−1)の樹脂層の順で形成された。
【0121】
そして、得られた支持体付きフィルム複合体について、上記方法に従い、配線埋め込み性の測定を行なった。また、銅張り積層基板の上に厚さ10μmの銅箔をのせ、その上から、得られた支持体付きフィルム複合体を、支持体が付いた状態で、硬化性樹脂組成物が内側になるようにして、耐熱性ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、200Paに減圧して、温度110℃、圧力0.1MPaで60秒間加熱圧着積層し、その後180℃で120分間空気中で加熱硬化した。硬化後、銅箔付き硬化樹脂を切り出し、銅箔を1mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液にて溶解し、フィルム状硬化物を得た。このフィルム状硬化物について、上記方法に従い、引張強度、弾性率、伸び、線膨張係数の測定を行なった。なお、実施例1においては、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)からなる層を被めっき層とし、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)からなる層を接着層として、各測定を行なった。結果を表2に示す。
【0122】
(積層体の作製)
次いで、上記とは別に、ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚みが18μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、150mm角(縦150mm、横150mm)の両面銅張り基板表面に、配線幅及び配線間距離が50μm、厚みが18μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して内層基板を得た。
【0123】
この内層基板の両面に、上記にて得られた支持体付きフィルム複合体を150mm角に切断したものを、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)側の面が内側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)及びポリイミド含有樹脂組成物(B−1)からなる樹脂層と内層基板との積層体を得た。さらに積層体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、樹脂層を硬化させて内層基板上に電気絶縁層を形成した。
【0124】
(膨潤処理工程)
得られた積層体を、膨潤液(「スウェリング ディップ セキュリガント P」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬した後、水洗した。
【0125】
(酸化処理工程)
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)500mL/L、水酸化ナトリウム濃度40g/Lになるように調製した70℃の水溶液に15分間揺動浸漬をした後、水洗した。
【0126】
(中和還元処理工程)
続いて、硫酸ヒドロキシアミン水溶液(「リダクション セキュリガント P 500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)100mL/L、硫酸35mL/Lになるように調製した40℃ の水溶液に、積層体を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
【0127】
(クリーナー・コンディショナー工程)
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップ MCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)を濃度50ml/Lとなるよう調整した50℃の水溶液に積層体を5分間浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に積層体を1分間浸漬した後、水洗した。
【0128】
(ソフトエッチング処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lとなるように調製した水溶液に積層体を2分間浸漬しソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
【0129】
(酸洗処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に積層体を1分間浸漬し酸洗処理を行った後、水洗した。
【0130】
(触媒付与工程)
次いで、アルカップ アクチベータ MAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/L、アルカップ アクチベータ MAT−1−B(上商品名、村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に積層体を5分間浸漬した後、水洗した。
【0131】
(活性化工程)
続いて、アルカップ レデユーサ− MAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が20mL/L、アルカップ レデユーサ− MAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/Lになるように調整した水溶液に積層体を35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
【0132】
(アクセレレータ処理工程)
次いで、アルカップ アクセレレーター MEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が50mL/Lになるように調製した水溶液に積層体を25℃で、1分間浸漬した。
【0133】
(無電解めっき工程)
このようにして得られた積層体を、スルカップ PEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)100mL/L、スルカップ PEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)50mL/L、スルカップ PEA−6−C(商品名、上村工業社製)14mL/L、スルカップ PEA−6−D(商品名、上村工業社製)15mL/L、スルカップ PEA−6−E(商品名、上村工業社製)50mL/L、37重量%ホルマリン水溶液5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬して無電解銅めっき処理して積層体表面(脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)からなる層の表面)に無電解めっき膜を形成した。そして、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)からなる層の表面に、無電解めっき膜を形成した積層体について、無電解めっき膜析出性を、上記方法にしたがって評価した。結果を表2に示す。
【0134】
次いで、無電解めっき膜を形成した積層体を、AT−21(商品名、上村工業社製)が10mL/Lになるよう調製した防錆溶液に室温で1分間浸漬した後、水洗した。さらに、乾燥することで、防錆処理積層体を作製した。この防錆処理が施された積層体を空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
【0135】
アニール処理が施された積層体に、電解銅めっきを施し厚さ18μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで当該積層体を180℃で60分間加熱処理することにより、積層体上に前記金属薄膜層及び電解銅めっき膜からなる導体層で回路を形成した両面2層の多層プリント配線板を得た。そして、得られた回路基板のピール強度を、上記方法にしたがって測定した。結果を表2に示す。
【0136】
比較例1
(ポリイミド含有樹脂組成物(B−2))
無機充填剤(B2)としてのシリカ(「HPS−0500」、東亞合成社製)の配合量を113部に変更および配合剤濃度を16%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド含有樹脂組成物(B−2)のワニスを得た。ポリイミド含有樹脂組成物(B−2)の配合を表1に示す。
【0137】
そして、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)のワニスの代わりに、上記にて得られたポリイミド含有樹脂組成物(B−2)のワニスを用いて、厚さ3μmのポリイミド含有樹脂組成物(B−2)のフィルムを得た以外は、実施例1と同様にして、得られたポリイミド含有樹脂組成物(B−2)のフィルムと、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)のフィルムとからなる支持体付きフィルム複合体を得て、実施例1と同様に評価を行った。
【0138】
次いで、得られた支持体付きフィルム複合体を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を得て、実施例1と同様に評価を行った。なお、比較例1においては、内層基板の両面に支持体付きフィルム複合体を貼り合わせる際には、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)側の面が内側となるように貼り合わせを行い、また、無電解めっきを行なう際には、ポリイミド含有樹脂組成物(B−2)の表面に無電解めっきを行なった。すなわち、比較例1においては、ポリイミド含有樹脂組成物(B−2)からなる層を被めっき層とし、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)からなる層を接着層とした。
【0139】
比較例2
(脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2))
無機充填剤(A2)としてのシリカ(「アドマファイン SO−C1」、アドマテックス社製)の配合量を207部に変更および配合剤濃度を65%に変更した以外は、実施例1と同様にして、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)のワニスを得た。脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)の配合を表1に示す。
【0140】
そして、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)のワニスの代わりに、上記にて得られた脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)のワニスを用いて、厚さ37μmの脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)のフィルムを得た以外は、実施例1と同様にして、得られた脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)のフィルムと、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)のフィルムとからなる支持体付きフィルム複合体を得て、実施例1と同様に評価を行った。
【0141】
次いで、得られた支持体付きフィルム複合体を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を得て、実施例1と同様に評価を行った。なお、比較例2においては、内層基板の両面に支持体付きフィルム複合体を貼り合わせる際には、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)側の面が内側となるように貼り合わせを行い、また、無電解めっきを行なう際には、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)の表面に無電解めっきを行なった。すなわち、比較例2においては、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)からなる層を被めっき層とし、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)からなる層を接着層とした。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
表1、表2に示すように、脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)からなる層を被めっき層として有し、かつ、ポリイミド含有樹脂組成物(B−1)からなる層を接着層として有する絶縁性接着フィルムを用いることにより、該フィルムは線膨張係数が低く、得られる電気絶縁層を配線埋め込み性及びピール強度に優れたものとすることができた(実施例1)。
【0145】
一方、シリカの含有割合が比較的少ないポリイミド含有樹脂組成物(B−2)からなる層を被めっき層として、シリカの含有割合が比較的多いポリイミド含有樹脂組成物(B−1)からなる層を接着層とした場合には、得られるフィルムは低線膨張性が十分でなく、また、電気絶縁層のピール強度も劣る結果となった(比較例1)。
また、シリカの含有割合が比較的少ない脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−1)からなる層を被めっき層として、シリカの含有割合が比較的多い脂環式オレフィン重合体含有樹脂組成物(A−2)からなる層を接着層とした場合には、得られるフィルムは低線膨張性に劣る結果となった(比較例2)
なお、実施例1、比較例1,2を比較することにより、実施例1は、ピール強度を比較例2と同等程度としながら、比較例1及び比較例2のいずれよりも低い線膨張係数を達成できることが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基を有する脂環式オレフィン重合体(A1)、及び無機充填剤(A2)を含有する被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、
有機溶剤可溶性ポリイミド(B1)、及び無機充填剤(B2)を含有してなる接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有する絶縁性接着フィルム。
【請求項2】
前記被めっき層用樹脂組成物が、前記極性基と反応可能な官能基を分子内に2個以上有する硬化性化合物(A3)をさらに含有し、
前記接着層用樹脂組成物が、エポキシ樹脂(B3)、フェノール化合物(B4)、及び硬化促進剤(B5)をさらに含有する請求項1に記載の絶縁性接着フィルム。
【請求項3】
前記被めっき層の厚みが1〜10μmであり、前記接着層の厚みが10〜100μmである請求項1又は2に記載の絶縁性接着フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁性接着フィルムを基材に積層してなる積層体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁性接着フィルム、又は請求項4に記載の積層体を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物の表面に、無電解めっきにより、導体層を形成してなる複合体。
【請求項7】
請求項5に記載の硬化物、又は請求項6に記載の複合体を構成材料として含む電子材料用基板。

【公開番号】特開2013−10895(P2013−10895A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145628(P2011−145628)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】