説明

緊急動作機能を備えたステアリングコラム切換システム

ステアリングコラム切換システムの位置を検出して、ステアリングコラム切換システムが占める切換位置をビットパターンに変換するための機器と、その検知した位置のビットパターンを切換機能に割り付ける復号化機器と、そのビットパターンの検出又は伝送の際の誤りを検出するための機器とを備えており、その場合に、この復号化機器が、誤りを検知した場合に、ビットパターンと始動する切換機能の間の割付を変更する自動車用ステアリングコラム切換システムを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングコラム切換アームの位置を検出して、ステアリングコラム切換アームが占める切換位置をビットパターンに変換するための機器と、その検知した位置のビットパターンを切換機能に割り付ける復号化機器と、そのビットパターンの検出又は伝送の際の誤りを検出するための機器とを備えた自動車用ステアリングコラム切換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最新のステアリングコラム切換システムは、例えば、点滅器やワイパーなどの駆動すべき構成部品に関する電流を直接切り換えるのではなく、マイクロコントローラーがステアリングコラム切換アームの位置を検出して、その時点の切換アーム位置に関する情報を様々な制御機器に転送している。即ち、検出した位置信号を復号して、各制御機器に適した信号に変換している。
【0003】
特許文献1により、切換手段の切換位置を光電方式で検知するための装置が知られており、その装置では、複数の光電式受信器によって、切換リンクの位置を検出している。
【0004】
制御メカニズム(例えば、電流測定、切換順序の監視、誤りコード)によって、例えば、導体線路の遮断により引き起こされる、誤り又は故障を検知することが可能である。
【特許文献1】ドイツ特許公開明細書第10141975−A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、ステアリングコラム切換システム内で誤りが発生した際に、その故障の検知を考慮に入れて、ステアリングコラム切換システムが、その故障にも関わらず、依然として出来る限り広範囲に機能するように、復号化を修正することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、この発明にもとづき、復号化機器が、誤りを検知した際に、ビットパターンと始動する切換機能の間の割付を変更することによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明によるステアリングコラム切換システムの実施例を、図面に図示するとともに、以下において、図面にもとづき詳しく説明する。
【0008】
図1は、ステアリングコラム切換システムの構成を模式図で示している。図示されていないステアリングコラムアームと接続された切換リンクの輪郭を黒い線で図示している。更に、四つの発光ダイオード(1,2,3,4)の配備位置を示しており、それらの中の中央の二つ(2,3)は、図示したステアリングコラムアーム位置において、切換リンクによって隠されている。それぞれ切換リンクによって隠されている、或いは見えている発光ダイオードのパターンは、図示されていない光学検出器によって検出され、ビットパターンに変換される。
【0009】
切換リンクの上半分に図示された黒い丸い面は、ステアリングコラムアームの基準位置を示している。別の可能な切換アーム位置は、丸い環で示している。ステアリングコラムアームが、これらの位置に動いた場合、切換リンクにより発光ダイオードが見え隠れすることによって、その時点の切換アーム位置に対応するビットパターンが生成されることとなる。
【0010】
その時々に得られたビットパターンは、電子モジュールによって検出され、この電子モジュールは、その時点のビットパターンに該当する切換機能を、それに対応する端末機器を駆動することによって作動させる。
【0011】
図1に図示された電子モジュールの構成は、図2に図解されている。この回路の中核部分は、連続する四つのLEDグループ(LED1,LED2,LED3,LED4)を駆動するマイクロコントローラーである。この場合、各LEDグループは、三つの並行して駆動される発光ダイオードから構成されており、その場合に、各LEDグループの発光ダイオードは、ステアリングコラム切換システムの異なる切換リンクに割り付けられている。それにより、図示した構成は、三つのステアリングコラムスイッチS1,S2,S3、例えば、点滅器スイッチ、ワイパースイッチ、車両速度コントローラーの位置を検出する役割を果たす。
【0012】
このマイクロコントローラーは、LEDグループ(LED1,LED2,LED3,LED4)を順番に駆動し、その場合に、アナログ−デジタル変換器(ADC)が、それぞれ駆動されたLEDグループによる電流の大きさを検出する。光電式ステアリングコラム切換システムの送信LEDのために流れる電流を監視することによって、例えば、事故、構成変更などにより導線が遮断された時点を決定することができる。
【0013】
図示した実現形態では、それぞれ一つのLEDグループ(LED1,LED2,LED3,LED4)に属する三つのスイッチの発光ダイオードは、同時に駆動される。各LEDの電流を個々に制御するのではなく、各電流の合計を制御する。即ち、故障の場合、電流監視部は、どのLEDグループが該当するかという情報を提供するが、一般的に誤りがどのスイッチに対応するかは当初明らかではない。
【0014】
ここで述べるステアリングコラム切換システムによって、誤り状態を検知した場合、有利には、システムの出来る限り広範囲な継続動作を可能とする好適な反応が実現可能となる。
【0015】
しかしながら、安全性の理由により、車両速度コントローラーが万一故障した場合、動作を続けるべきではない。それに対して、点滅器スイッチ及びワイパースイッチの機能は、出来る限り広範囲に継続される。
【0016】
図3〜5には、例えば、ワイパースイッチによる実現形態を図示している。
【0017】
図3は、図1に図示した切換リンクの切換位置に対応するビットパターン及びワイパースイッチとして構成されたステアリングコラムスイッチでの対応する切換機能を示している。この図表は、ステアリングコラムアームの停止カーブにおける発光によるコードの空間配列を示しており、「0」又は「1」は、切換リンクの位置によって影響を受ける各LEDから検出器までの光路が、遮られているか、或いは遮られていないことを意味する。切換位置の符号化に関しては、グレイコードを規定する、即ち、隣接する切換位置は、それぞれ単一のビットが変化することにより区別される。
【0018】
誤りの場合、即ち、個々の発光ダイオードが故障した場合、好適な誤り反応が規定される。
【0019】
LED2の測定電流の合計が少なすぎる、或いはLED3の測定電流の合計が少なすぎる場合、ワイパースイッチは、動作を停止され、その場合第二又は第三のLEDによって信号化される、即ち、第二又は第三のビットがセットされる際の機能は、最早実行することができない。
【0020】
図3から、以下の機能の制限を読み取ることができる。
・ワイパースイッチのLED2が故障した場合、すべての後方の機能が動作しない。
・ワイパースイッチのLED3が故障した場合、ワイパー機能及びワイパー第2段の直接 的な作動が動作しない。
【0021】
LED1又はLED4が、故障と検知された場合、ワイパースイッチの緊急動作が始動される。そのために、検出されたコードは、変更される切換機能と結び付けられる。図3と4には、変更される機能の位置が、明るい又は暗い背景で図示されている。この場合、明るい背景は、システムが故障していない場合には生じないビットパターンを表す。
【0022】
図4は、LED1が誤っている場合に電子モジュールにより検知されたビットパターンを図示している。LED1の測定電流が少なすぎる場合、ステアリングコラムスイッチの停止位置では、「間隔ワイパー第1段,第2段」に関するコード(0001)が検出される。前方及び後方のワイパー機能は動作しない。運転者がワイパーのスイッチを切ろう試みた場合に、故障が検知される。更に、以下の切換機能の割付を持つ緊急動作が実施される。

0000 一回ワイパー、間欠ワイパー第1段、間欠ワイパー第2段の停止
0001 休止位置
0010 前方ワイパーと一回ワイパー
0011 一回ワイパー、間欠ワイパー第1段、間欠ワイパ第2段
0100 一回ワイパー、間欠ワイパー第1段、後方間欠ワイパー第2段の停止
0101 後方間欠ワイパー
0111 一回ワイパー、間欠ワイパー第1段、後方間隔ワイパー第2段

即ち、この緊急動作では、後方ワイパーとワイパー第2段機能の直接的な作動は、動作せず、前方ワイパーが、間欠ワイパーと組み合わされてのみ動作する。運転者が、ワイパーを作動したいと思う場合、これらの機能は、遅くなりすぎるが、基本的には正しく作動される。
【0023】
図5に図示された、LED4が故障している場合に得られるビットパターンを、図3の故障の無い時のビットパターン割付と比較した場合、この誤った場合においては、スイッチが、休止位置か、後方間欠ワイパーか、前方間欠ワイパーに有る限り、一回ワイパー機能の中の一つが始動されることが分かる。運転者が、「あちこち回した」場合、スイッチは、誤りの無いシステムでは現れないビットパターンを有する明るく表示された位置の中の一つを占めることとなり、その結果それにより、緊急動作を作動することができる。
【0024】
これらの誤りに関する緊急動作は、以下におけるビットパターンと切換機能の間の割付を規定することができる。

0000 一回ワイパー
0010 ワイパー第2段の作動/ワイパー第2段の停止
0100 後方間欠ワイパーでの一回ワイパー
0110 ワイパー第2段の作動/後方間欠ワイパーでのワイパー第2段の停止
1000 休止位置
1100 後方間欠ワイパー
1010 前方ワイパー
1110 後方ワイパー

これによって、光電式ステアリングコラム切換システムでは、故障を検知して、故障に応じて、スイッチを変更せずに更に動作させるか、或いは緊急動作の復号化を作動することによって、完全には故障していないスイッチを用いて、残った機能を維持することが可能である。誤ったセンサー機能を検知した場合の当該の新しい割付は、点滅器スイッチに関しても、同様に規定することができ、その場合、スイッチの新しい割付が、出来る限り運転者が直観的に期待する機能に従う、即ち、運転者が、新しい割付のために、予期しない機能により大きく驚かされることがないようにすることだけに留意すべきある。
【0025】
この理由から、万一の故障の際に、ステアリングコラムスイッチによって制御される走行速度コントローラーも、完全に停止されるべきである。
【0026】
誤りの検知は、それに対応したマイクロコントローラーの誤り通報を始動させることができ、その結果運転者は、例えば、ディスプレイを介して、誤りを指摘されて、修理工場を探すように仕向けられることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ステアリングコラム切換システムの基本構造の模式図
【図2】ステアリングコラム切換システムに属する電子モジュールのブロック接続図
【図3】ステアリング切換アーム位置に割り付けられたビットパターン例
【図4】ステアリング切換アーム位置に割り付けられたビットパターン例
【図5】ステアリング切換アーム位置に割り付けられたビットパターン例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングコラム切換システムの位置を検出して、ステアリングコラム切換アームが占める切換位置をビットパターンに変換するための機器と、
その検知した位置のビットパターンを切換機能に割り付ける復号化機器と、
そのビットパターンの検出又は伝送の際の誤りを検出するための機器と、
を備えた自動車用ステアリングコラム切換システムにおいて、
この復号化機器が、誤りを検知した場合に、ビットパターンと始動する切換機能の間の割付を変更することを特徴とするステアリングコラム切換システム。
【請求項2】
当該の復号化機器が、誤りを検知した場合に、検知した誤りに応じて、ビットパターンと始動する切換機能の間の割付を変更することを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項3】
当該の復号化機器が、誤りの際に、所定の個々の切換位置に割り付けられた切換機能を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項4】
当該の復号化機器が、誤りの際に、所定の個々の切換位置を、緊急動作とは異なる切換機能に割り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項5】
当該の位置を検出するための機器が、複数の機械的な切換接点を備えた切換機器を用いて、その時点の切換位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項6】
当該の位置を検出するための機器が、非接触型センサーを用いて、その時点の切換位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項7】
当該の位置を検出するための機器が、磁場を検知するセンサーを用いて、その時点の切換位置を検出することを特徴とする請求項6に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項8】
当該の位置を検出するための機器が、光学センサーを用いて、その時点の切換位置を検出することを特徴とする請求項6に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項9】
その時点の切換位置に割り付けられたビットパターンを、複数のフォトアイソレーターの状態を周期的にポーリングすることによって、シリアル信号として検出することを特徴とする請求項8に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項10】
当該の復号化機器が、マイクロコントローラーを有し、このマイクロコントローラーが、記憶手段に保存された割付リスト又は割付テーブルを用いて、検出した切換位置と始動する切換機能の間の割付を行うことを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項11】
当該の復号化機器が、誤りを検知した場合に、誤りに応じて、使用する割付リスト又は割付テーブルを変更するか、或いは記憶手段に保存された、誤りに対応した代替の割付リスト又は割付テーブルにもとづき割付を行うことを特徴とする請求項10に記載のステアリングコラム切換システム。
【請求項12】
順番に並んだ切換位置のビット符号化を、グレイ符号を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム切換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−515887(P2007−515887A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544303(P2006−544303)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014201
【国際公開番号】WO2005/059474
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591183717)レオポルト・コスタール・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (18)
【氏名又は名称原語表記】LEOPOLD KOSTAL GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG & COMPAGNIE KOMMANDITGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】