説明

緑色硬化性組成物、それから形成される色フィルタアレイ、固体撮像素子及びカメラシステム

【課題】耐熱性の高い緑色硬化塗膜を形成できる緑色硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】化合物(I)、化合物(II)、硬化剤及び溶剤を含む緑色硬化性組成物から、耐熱性の高い緑色硬化塗膜を形成できる。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDやCMOSセンサなどの固体撮像素子の色フィルタアレイを製造するのに有用な緑色硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子をカラー化するための色フィルタアレイとしては、赤色フィルタ層(R)、緑色フィルタ層(G)及び青色フィルタ層(B)を素子上の同一平面に隣接して形成した色フィルタアレイが知られている。色フィルタアレイの各フィルタ層(R、G、B)の平面パターンは適宜設定されている。またフィルタ層は、前記赤色(R)、緑色(G)、青色(B)からなる原色系の組合せの他、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、さらに場合により緑色(G)からなる補色系の組合せが採用されることもある。これらのフィルタ層の中でも、緑色フィルタ層は原色系では必須であり、また補色系でも色再現性や画像再現性を向上させるために有用である。
【0003】
緑色は、通常、イエロー色素及びシアン色素を組み合わせることによって形成される。例えば特許文献1には、下記のイエロー色素及びシアン色素を含む緑色硬化性組成物が開示されている。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−249218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緑色は、400〜800nmの可視光線のうち、750〜800nmの光が色素に吸収されることによって形成される。しかし従来の緑色フィルタ層は耐熱性が低く、熱履歴を受けると、緑色の目的スペクトルから逸脱するという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐熱性の高い緑色硬化塗膜(特に緑色フィルタ層)を形成できる緑色硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、従来のイエロー色素に替えて、式(I)で表される化合物を使用すれば、耐熱性に優れた緑色硬化塗膜を作製できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち上記目的を達成し得た本発明の緑色硬化性組成物とは、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、硬化剤及び溶剤を含むことを特徴とする。なお以下では式(I)で表される化合物を「化合物(I)」と略称することがある。他の式で表される化合物、樹脂、構成単位、基なども同様に略称することがある。
【0010】
【化2】

【0011】
式(I)中、Z11、Z12及びZ13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価のC1-16脂肪族炭化水素基を表す。但しZ11、Z12及びZ13に含まれる両末端以外のメチレン単位は、カルボニル基又は酸素原子で置換されていてもよい。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC2-18アシル基を表す。A11及びA12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価のC6-14芳香族炭化水素基を表す。B11及びB12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC6-14芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい5〜14員環の複素環基を表す。
なお本発明において「Ca-b」とは、炭素数がa以上b以下であることを意味する。
【0012】
【化3】

【0013】
式(II)中、R21〜R23は、それぞれ独立して、C1-10飽和脂肪族炭化水素基、C1-8アルコキシ基が置換しているC1-10飽和脂肪族炭化水素基、C6-20アリール基、C7-20アラルキル基、又はC2-10アシル基を表す。
【0014】
11及びB12が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい5〜14員環の含窒素複素環基であることが好ましく、式(B−1)で表される基であることがより好ましい。
【0015】
【化4】

【0016】
式(B−1)中、R13は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基を表す。R14は、置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基を表す。
【0017】
緑色硬化性組成物の固形分が、組成物に対して、5〜30質量%であることが好ましい。
【0018】
硬化剤の含有量が、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及び硬化剤の合計100質量部に対して20〜70質量部であることが好ましい。
【0019】
本発明の緑色硬化性組成物は、さらにバインダー樹脂を含有していても良い。バインダー樹脂を含有する場合、その含有量は、硬化剤100質量部に対して50〜300質量部である。
【0020】
さらに本発明は、上記の緑色硬化性組成物を用いて形成される色フィルタアレイ、並びにこの色フィルタアレイを具備する固体撮像素子及びカメラシステムも提供する。
【発明の効果】
【0021】
イエロー色素として化合物(I)を含有する本発明の緑色硬化性組成物を用いれば、熱履歴を受けても緑色の目的スペクトルからの逸脱を抑制できる耐熱性に優れた緑色硬化塗膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、CCDイメージセンサの一例を示す部分拡大概略断面図である。
【図2】図2は、カメラシステムの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の緑色硬化性組成物は、色素(化合物(I)及び化合物(II))、硬化剤及び溶剤から構成される。前記色素及び硬化剤は、前記溶剤に溶解していてもよく、分散していてもよい。以下、各成分について順に説明する。
【0024】
〈色素〉
本発明では、化合物(I)(イエロー色素)と化合物(II)(シアン色素)とを組合せて緑色を構成する。化合物(I)と化合物(II)との質量比は、好ましくは2:1〜1:2程度、より好ましくは1.5:1〜1:1.5程度、さらに好ましくは1.2:1〜1:1.2程度である。
【0025】
〈化合物(I)〉
本発明の緑色硬化性組成物は、イエロー色素として化合物(I)を含有することによって優れた耐熱性を発揮できる。以下、式(I)を順に説明する。
【0026】
式(I)中、Z11、Z12及びZ13は、それぞれ独立に、2価のC1-16脂肪族炭化水素基である。但し前記脂肪族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子(例えばフッ素原子)などで置換されていても良く、また両末端以外のメチレン単位は、カルボニル基(−CO−)又は酸素原子(−O−)で置換されていても良い。2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上(好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上)、16以下(好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下)である。なおメチレン単位が酸素原子で置き換えられる場合、前記炭素数は、炭素数と酸素数の合計を表す。
【0027】
11〜Z13の2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分枝鎖状のアルカンジイル基およびアルケンジイル基を含む。直鎖状アルカンジイル基(アルキレン基)としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デシレン基、テトラデシレン基及びエイコシレン基などが挙げられる。分枝鎖状アルカンジイル基としては、側鎖にアルキル基(例えばメチル基、エチル基など)を有するものが好ましく、例えば−CH2−C(CH3)−及び−C(CH3)−CH2−などが挙げられる。アルケンジイル基としては、側鎖にアルキリデン基(例えばメチリデン基、エチリデン基など)を有するものが好ましく、例えば−CH2−C(=CH2)−及び−C(=CH2)−CH2−などが挙げられる。
【0028】
メチレン単位が酸素原子で置換された2価の脂肪族炭化水素基は、主鎖にエトキシ単位(−C24O−)を有するものが好ましく、例えば−(C24O)m−(CH2n−(式中、mは1〜4の整数を表し、より好ましくは1又は2であり、nは1〜6の整数を表し、より好ましくは2又は4である)などが挙げられる。
【0029】
好ましいZ11及びZ12は、−(CH23−、−C24O−C24−、−(C24O)2−C24−、−CH2−CH(CH3)−及び−CH(CH3)−CH2−である。
【0030】
好ましいZ13は、−(CH22−、−(CH24−、−(CH26−、−(CH28−、−CH2−C(=CH2)−及び−C(=CH2)−CH2−である。
【0031】
式(I)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、C1-16脂肪族炭化水素基、又はC2-18アシル基、好ましくは水素原子又はC2-18アシル基である。
【0032】
11及びR12の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メチルブチル基(1,1,3,3−テトラメチルブチル基など)、メチルヘキシル基(1,5−ジメチルヘキシル基など)、エチルヘキシル基(2−エチルヘキシル基など)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基(2−メチルシクロヘキシル基など)及びシクロヘキシルアルキル基などが挙げられる。
【0033】
脂肪族炭化水素基は、C1-8アルコキシ基、カルボキシ基等で置換されていても良い。置換基を有する脂肪族炭化水素基としては、例えばプロポキシプロピル基(3−(イソプロポキシ)プロピル基など)及びアルコキシプロピル基(3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル基など)、2−(カルボキシ)エチル基、3−(カルボキシ)エチルプロピル基及び4-(カルボキシ)ブチル基などが挙げられる。
【0034】
脂肪族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれず、その数は、1以上(好ましくは6以上)、16以下(好ましくは10以下、より好ましくは4以下)である。
【0035】
11及びR12のアシル基は、無置換であってもよく、飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基などの置換基が結合していてもよい。アシル基の炭素数は、置換基の炭素数を含めて数えられ、その数は、2以上、18以下(好ましくは10以下、より好ましくは6以下)である。前記アシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基(例えばp−メトキシベンゾイル基)などが挙げられる。
【0036】
好ましいR11及びR12は、水素原子、アセチル基(−COCH3)、プロパノイル基(−COC25)である。
【0037】
式(I)中、A11及びA12は、2価のC6-14芳香族炭化水素基であり、フェニレン基(ベンゼンジイル基)、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基が挙げられ、これらの中でもフェニレン基、ナフタレンジイル基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0038】
11及びA12の2価のC6-14芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、C1-8アルキル基、C1-8アルコキシ基、ニトロ基(−NO2)、スルホ基(−SO3H)、スルファモイル基(−SO2NH2)及びN−置換スルファモイル基などの置換基を有していてもよい。
【0039】
好ましいハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子、塩素原子及び臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子及び塩素原子である。
【0040】
11及びA12のC1-8アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などが挙げられる。これらの中で、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0041】
11及びA12のC1-8アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基などが挙げられる。これらの中で、炭素数4以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0042】
11及びA12のN−置換スルファモイル基としては、C1-16脂肪族炭化水素基および/またはC2-18アシル基で置換されたスルファモイル基が挙げられる。N−置換スルファモイル基は、一置換でも二置換でもよい。前記C1-16脂肪族炭化水素基およびC2-18アシル基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0043】
好ましいA11及びA12は、フェニレン基、メチルフェニレン基、メトキシフェニレン基、クロロフェニレン基である。
【0044】
式(I)中、B11及びB12は、それぞれ独立に、C6-14芳香族炭化水素基、又は5〜14員環の複素環基である。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフタレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基が挙げられ、これらの中でもナフタレニル基が好ましい。複素環基は、好ましくは含窒素複素環の基である。含窒素複素環の基としては、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、イソキノリン環、キノリン環、アクリジン環、又はフェナントロリン環から水素原子を1つ除いて得られる基が挙げられる。前記含窒素複素環の中でも、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びインドール環が好ましい。
【0045】
11及びB12の芳香族炭化水素基および複素環基は、ヒドロキシ基(−OH)、オキソ基(=O)、アミノ基(−NH2)、N−置換アミノ基、C1-16脂肪族炭化水素基などの置換基を有していてもよい。N−置換アミノ基としては、C1-16脂肪族炭化水素基および/またはC6-14芳香族複素環基で置換されたアミノ基などが挙げられる。N−置換アミノ基は、一置換でも、二置換でも良い。前記C1-16脂肪族炭化水素基およびC6-14芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0046】
11及びB12は、それぞれ独立に、好ましくは式(B−1)〜式(B−7)で表される基のいずれか、より好ましくは式(B−1)〜式(B−6)で表される基のいずれか、さらに好ましくは式(B−1)で表される基である。なお基(B−1)〜(B−6)は、ケト−エノール互変異性体を含む。
【0047】
【化5】

【0048】
式(B−1)中、R13は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基を表し、R14は、C1-16脂肪族炭化水素基を表す。
式(B−2)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC6-14芳香族炭化水素基を表す。
式(B−3)及び(B−4)中、R17〜R19は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC6-14芳香族炭化水素基を表す。
式(B−5)中、R110は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基を表す。
【0049】
式(B−1)〜(B−5)中のC1-16脂肪族炭化水素基は、R11及びR12で説明したものと同じものが挙げられる。また式(B−1)〜(B−5)中のC6-14芳香族炭化水素基は、B11及びB12で説明したものと同じものが挙げられる。
【0050】
好ましいR13は、直鎖状C2-6アルキル基(より好ましくはエチル基、プロピル基及びブチル基)、分枝鎖状のC2-10アルキル基(より好ましくはメチルブチル基(1,1,3,3−テトラメチルブチル基など)、メチルへキシル基(1,5−ジメチルへキシル基など)、エチルへキシル基(2−エチルヘキシル基など)、及びメチルシクロへキシル基(2−メチルシクロヘキシル基など))、及びC1-6アルコキシC1-3アルコキシ基(好ましくはアルコキシプロピル基(3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル基など)である。
好ましいR14は、直鎖状C1-4アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基)である。
【0051】
好ましいR15及びR16は、直鎖状C1-6アルキル基(より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基)、並びに置換フェニル基(より好ましくはメチルフェニル基(例えば4−メチルフェニル基)、メトキシフェニル基(例えば4−メトキシフェニル基)、アルコキシカルボニルフェニル基(例えば4−エトキシカルボニルフェニル基))である。
【0052】
好ましいR17〜R19は、水素原子及びフェニル基である。
好ましいR110は、直鎖状C1-4アルキル基(より好ましくはメチル基)である。
【0053】
好ましい化合物(I)は、式(I−1)〜式(I−18)で表される化合物である。なお式(I−1)〜式(I−18)のZ11等を、まとめて表1〜4に示す。この表1〜4ではZ11等の結合方向を、式(I)の方向と合わせている。
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
化合物(I)は塩の形態で存在していても良い。例えば化合物(I)がスルホ基又はカルボキシ基を有する場合、スルホン酸塩又はカルボン酸塩の形態で存在していても良い。これら塩を形成するカチオンは特に限定されないが、溶剤に対する溶解性を考慮すると、塩は、好ましくは、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;アンモニウム塩などの無機アミン塩;及びエタノールアミン塩、アルキルアミン塩のような有機アミン塩などである。特にアルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)は、偏光膜基材に含有させる場合に有用である。また有機アミン塩は、樹脂との親和性が高く、樹脂を含有する硬化性組成物で有用である。さらには非金属塩である有機アミン塩は、絶縁性が重要視される分野で有用である。
【0063】
化合物(I)は、1種を単独で使用しても良く、2種以上の混合物を使用しても良い。例えばZ13がエチレン基である化合物(I)とZ13がブチレン基である化合物(I)とを組み合わせて用いると、溶剤への溶解性を向上させることができる。
【0064】
化合物(I)は、エステル化反応又はエステル交換反応によって製造できる。例えば溶媒中で式(IA)で表される化合物及び式(IB)で表される化合物と、式(IC)で表される化合物とを0〜150℃で反応させることによって、化合物(I)を製造できる。なお化合物(IA)と化合物(IB)とは、同じものでも、異なるものでも良い。同じ化合物を使用すれば、左右対称な化合物(I)が得られ、異なる化合物を使用すれば、左右非対称な化合物(I)が得られる。
【0065】
【化10】

【0066】
式(IA)〜式(IC)中、Z11〜Z13、R11、R12、A11、A12、B11及びB12は上記と同じ意味である。
111及びR112は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は−OR113を表し、R113は、C1-16脂肪族炭化水素基を表す。またR113を介してR111とR112とが結合することによって、化合物(IC)は酸無水物を形成していても良い。
【0067】
化合物(IC)としては、例えばマロン酸ジメチル、コハク酸イソブチル、アジピン酸ジメチル、及びスベリン酸ジエチル、マロン酸クロライド、コハク酸クロライド、アジピン酸クロライド及びスベリン酸クロライドなどが挙げられる。化合物(IC)は、1種だけを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0068】
化合物(IC)の使用量は、化合物(IA)及び化合物(IB)の合計1モルに対して、例えば0.5〜3モル程度である。なお溶媒中に水が含まれる場合は、化合物(IC)を、化合物(IA)及び化合物(IB)に対して過剰に使用することが好ましい。
【0069】
化合物(IC)のR111及びR112が、−OR113である場合には、公知の酸触媒を添加することが好ましい。酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。酸触媒の使用量は、化合物(IA)及び化合物(IB)の合計1モルに対して、例えば、0.01〜2モル程度である。
【0070】
化合物(IA)及び化合物(IB)と化合物(IC)との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、水;1,4−ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2−ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアルキルアミド類などが挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。溶媒の使用量は、化合物(IA)及び化合物(IB)の合計1質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部である。
【0071】
化合物(IA)及び化合物(IB)と化合物(IC)との反応は、通常、窒素雰囲気下、又はアルゴン雰囲気下で行われる。また塩化カルシウムなどで乾燥した空気下で、反応させても良い。上記の反応温度は、例えば、0〜150℃、好ましくは10〜130℃である。反応時間は、例えば、1〜25時間、好ましくは3〜15時間程度である。
【0072】
化合物(IA)、化合物(IB)、化合物(IC)及び溶媒の反応容器への添加順序は特に限定されないが、化合物(IA)及び化合物(IB)及び溶媒からなる溶液に、化合物(IC)を添加(滴下)することが好ましい。酸触媒を用いる場合には、化合物(IA)、化合物(IB)、酸触媒及び溶媒からなる溶液に、化合物(IC)を添加(滴下)することが好ましい。
【0073】
また化合物(I)は、ジアゾカップリング反応によって製造できる。例えば式(ID)で表される化合物及び式(IE)で表される化合物と式(IF)で表されるジアゾニウム塩とを水性溶媒中20〜60℃で反応させることによって、化合物(I)を製造することができる。
【0074】
【化11】

【0075】
式(ID)〜式(IF)中、Z11〜Z13、R11、R12、A11、A12、B11及びB12は上記と同じ意味である。
-は、1価の無機又は有機アニオンを示す。X-としてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、酢酸イオン(CH3COO-)、及び安息香酸イオン(PhCOO-)などが挙げられ、好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、及び酢酸イオンである。
【0076】
上記の反応混合物から目的化合物である化合物(I)を取得する方法は、特に限定されず、公知の種々の手法を採用できる。例えば反応混合物を有機溶媒で抽出・精製することによって、化合物(I)を取得できる。より詳しくは、例えば反応混合物、有機溶媒及び水を混合し、化合物(I)を有機相へ溶出させた後、分液ロートなどで分取した有機相から溶媒を留去することによって、化合物(I)を取得できる。抽出温度は、通常、10〜50℃、好ましくは20〜30℃である。また抽出は、同温度で0.5〜4時間程度攪拌することが好ましい。抽出後の化合物(I)は、通常、アルカリ性水溶液、酸性水溶液などで洗浄され、次いで乾燥される。また必要に応じて、再結晶などの公知の手法によって、さらに精製してもよい。
【0077】
アルカリ性水溶液としては、公知のアルカリ性物質を水に溶解させたものを使用できる。アルカリ性水溶液のpH範囲は、通常8〜12、好ましくは9〜11である。アルカリ性物質に特に限定は無く、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、アンモニアなどを使用できる。
【0078】
酸性水溶液としては、公知の酸性物質を水に溶解させたものを使用できる。酸性水溶液のpHは、通常0〜6、好ましくは1〜5である。酸性物質に特に限定はなく、例えば塩化アンモニウム、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸などを使用できる。
【0079】
〈化合物(II)〉
本発明の緑色硬化性組成物は、シアン色素として化合物(II)を含有する。以下、式(II)を説明する。
【0080】
式(II)中、R21〜R23は、それぞれ独立して、C1-10飽和脂肪族炭化水素基、C1-8アルコキシ基が置換しているC1-10飽和脂肪族炭化水素基、C6-20アリール基、C7-20アラルキル基、又はC2-10アシル基を表す。
【0081】
飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。飽和脂肪族炭化水素基の炭素数には置換基の炭素数は含まれず、その数は、通常、1〜10、好ましくは6〜10である。飽和脂肪族炭化水素基には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基などのメチルブチル基、1−メチルヘキシル基や1,5−ジメチルヘキシル基などのメチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基など、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基などのメチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルアルキル基などが含まれる。
【0082】
1-8アルコキシ基が置換しているC1-10飽和脂肪族炭化水素基としては、3−(イソプロポキシ)プロピル基などのプロポキシプロピル基などが例示できる。
【0083】
アリール基は、無置換であってもよく、飽和脂肪族炭化水素基又はヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。前記アリール基の炭素数は、置換基の炭素数を含めて数えられ、通常、6〜20、好ましくは6〜10である。これらアリール基としては、例えば、フェニル基、4−ヒドロキシフェニル基などのヒドロキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基などの置換又は無置換フェニル基などが挙げられる。
【0084】
アラルキル基のアルキル部分は、直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。アラルキル基の炭素数は、通常、7〜20、好ましくは7〜10である。このアラルキルとしては、ベンジル基、1−メチル−3−フェニルプロピル基などのフェニルプロピル基、3−アミノ−1−フェニルブチル基などのフェニルブチル基などのフェニルアルキル基が代表的である。
【0085】
アシル基は、無置換であってもよく、飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基などの置換基が結合していてもよい。アシル基の炭素数は、置換基の炭素数を含めて数えられ、その数は、通常、2〜10、好ましくは6〜10である。前記アシル基は、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基(例えばp−メトキシベンゾイル基)などである。
【0086】
式(II)中のR21〜R23は、それぞれ別の置換基であってもよいが、同じ置換基であることが好ましい。特に好ましいR21〜R23は、アルコキシ基が置換している飽和脂肪族炭化水素基、例えば、3−(イソプロポキシ)プロピル基などのプロポキシプロピル基である。
【0087】
化合物(II)は、例えば、C.I.Acid Colour及びC.I.Direct Colour等に記載の染料から選ばれる色素をジメチルホルムアミド中で塩化チオニルと反応させてスルホニルクロリドを製造し、次いで該スルホニルクロリドを1級アミンと反応させることによって製造できる。
【0088】
〈硬化剤〉
硬化剤としては、式(a)で表される基を有する化合物が挙げられる。
−(CH2sOR (a)
〔式(a)中、Rは水素原子又はC1-4アルキル基を示し、sは1〜4の整数を表す。低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル及びブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。〕
【0089】
硬化剤として、例えば、式(III−1)で表されるメラミン化合物及び式(III−2)で表されるベンゾグアナミン化合物が挙げられる。
【0090】
【化12】

【0091】
式(III−1)及び式(III−2)中、R30〜R39は、それぞれ独立に、水素原子又は−(CH2sOR基を表す。但し式(III−1)ではR30〜R35のうち少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、さらに好ましくは5つ以上が−(CH2sOR基である。式(III−2)ではR36〜R39のうち少なくとも2つ、好ましくは3つ以上が−(CH2sOR基である。
【0092】
メラミン化合物(III−1)としては、例えば、
アミノ基が6つのアルコキシメチル基(アルコキシメチロール基ともいう)で変性されているメラミン(ヘキサアルコキシメチルメラミン類(ヘキサアルコキシメチロールメラミン類))、好ましくはアミノ基が合わせて6つのC1-4アルコキシメチル基(特にメトキシメチル基、ブトキシメチル基)で変性されているメラミン、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン;
アミノ基が合わせて6つのアルコキシメチル基及びヒドロキシメチル基(メチロール基)で変性されているメラミン;
アミノ基が5つ以下のアルコキシメチル基で変性されているメラミン;
アミノ基が合わせて5つ以下のアルコキシメチル基及びヒドロキシメチル基で変性されているメラミン;
などが挙げられる。
【0093】
ベンゾグアナミン化合物(III−2)としては、例えば、
アミノ基が4つのアルコキシメチル基(アルコキシメチロール基)で変性されているベンゾグアナミン(テトラアルコキシメチルベンゾグアナミン類(テトラアルコキシメチロールベンゾグアナミン類))、例えば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン;
アミノ基が合わせて4つのアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)及びヒドロキシメチル基(メチロール基)で変性されているベンゾグアナミン;
アミノ基が3つ以下のアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)で変性されているベンゾグアナミン;
アミノ基が合わせて3つ以下のアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)及びヒドロキシメチル基で変性されているベンゾグアナミン;
などが挙げられる。
【0094】
メラミン化合物(III−1)及びベンゾグアナミン化合物(III−2)は、例えば、サイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65及び同UFR300(以上、日本サイテックインダストリーズ(株)製);ニカラックMX−750、同MX−035、同MX−706、同MX−708、同MX−042、同MX−45、同MS−11、同MW−22、同MS−21、同MW−24X、同MS−001、同MX−002、同MX−730、同MW−30M、MX−45、同MX−500、同MX−520、同MX−43、同MX−417、同MX−410、及び同MW−30(以上、(株)三和ケミカル社製);並びにニカラックBX−4000、同SB−401、同BX−37、同SB−355、同SB−303、同SB−301、同BL−60、同SB−255、同SB−203、及び同SB−201(以上、(株)三和ケミカル社製)の商品名で市販されている。
【0095】
その他の硬化剤としては、式(III−3)〜(III−8)で表される化合物が挙げられる。
【0096】
【化13】

【0097】
化合物(III−3)及び(III−4)は、それぞれ、p−クレゾール又はt−ブチルフェノールを塩基性条件下でホルムアルデヒドと縮合させることで製造できる。また化合物(III−5)〜(III−8)は、特開平1−293339号公報に記載された公知化合物である。
【0098】
〈溶剤〉
溶剤としては、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどのエチレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール類;4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチルなどのカルボン酸エステル類;1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0099】
〈バインダー樹脂〉
本発明の緑色硬化性組成物は、さらに、バインダー樹脂を含んでいてもよい。本発明では、バインダー樹脂に特に限定はなく、あらゆる樹脂、例えば、感光性組成物の分野で使用される公知のあらゆる樹脂を使用できる。感光性組成物の分野で多用されるバインダー樹脂として、例えば、カルボキシ基を有する樹脂、及びヒドロキシ基(特にフェノール性水酸基)を有する樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0100】
カルボキシ基を有する樹脂として、例えば、(メタ)アクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体(例えば、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−マレイン酸エステルの共重合体など)、(メタ)アクリル酸−マレイン酸系共重合体(例えば、無水マレイン酸−メチルメタクリレート共重合体など)、及び式(IV−1−1)及び式(IV−1−2)で表される構成単位を有する共重合体などが挙げられる。
【0101】
【化14】

【0102】
式(IV−1−1)及び式(IV−1−2)中、R41及びR42は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-4アルキル基を示し、いずれもメチル基であることが好ましい。R43は、C1-10アルキル基又はC6-20アリール基を表す。好ましいR43はフェニル基である。
【0103】
前記共重合体中の構成単位(IV−1−1)及び構成単位(IV−1−2)の好ましい重合比(即ち前記共重合体の全構成単位を100モル%としたときの重合比)は、以下の通りである:
構成単位(IV−1−1):好ましくは20〜80モル%、より好ましくは30〜60モル%
構成単位(IV−1−2):好ましくは20〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%
【0104】
フェノール性水酸基を有する樹脂として、例えば、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、又はヒドロキシスチレン構造を含む共重合体、例えば、J. Photopolym. Sci. Technol. vol.3, No.3 (1990) の第235〜247頁に記載されているようなp−ヒドロキシスチレンとp−アセトキシメチルスチレンとの共重合体等が挙げられる。
【0105】
フェノール性水酸基を有する樹脂の中で、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に縮合して得られるノボラック樹脂が好ましい。
前記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、キシレノール、フェニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ナフトール、ビスフェノールC、ビスフェノールA、又は3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチル−5−インダノール等が挙げられる。
また前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド又はベンズアルデヒド等の脂肪族又は芳香族アルデヒドが挙げられる。
前記フェノール類及びアルデヒド類は、単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0106】
前記ノボラック樹脂として、p−クレゾールノボラック樹脂、m−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールとm−クレゾールを含むノボラック樹脂、及び3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチル−5−インダノール・ホルムアルデヒド重縮合物などの式(IV−2−1)で表される構成単位を有するノボラック樹脂などが好ましい。
【0107】
【化15】

【0108】
樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量は、例えば、1,000〜50,000程度、好ましくは1,500〜30,000程度である。樹脂の分子量分布は、必要に応じ、分別等の手段を用いて適宜調整できる。
【0109】
〈他の成分〉
さらに本発明の緑色硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない程度で、例えば、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0110】
〈各成分量〉
組成物中の固形分の量は、組成物に対して、通常、5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%である。
ここで、組成物中の固形分とは、色素及び硬化剤、並びに場合に応じて含まれるバインダー樹脂及び他の成分の合計量をいう。
硬化剤の含有量は、化合物(I)、化合物(II)及び硬化剤の合計100質量部に対して、好ましくは20〜70質量部、より好ましくは25〜65質量部、さらに好ましくは30〜60質量部である。
バインダー樹脂を含有する場合、その含有量は、硬化剤100質量部に対して、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは80〜250質量部、さらに好ましくは100〜200質量部である。
【0111】
〈緑色硬化性組成物の製造〉
前記各成分を溶剤中で混合することで本発明の緑色硬化性組成物を調製できる。この調製された緑色硬化性組成物を、ポアサイズが0.1μm以下程度のフィルタでろ過することが好ましい。ろ過によって、緑色硬化性組成物を塗布する際の均一性が向上する。
【0112】
〈パターンの形成方法〉
本発明の緑色硬化性組成物からパターン(例えば色フィルタアレイの緑色フィルタ層)を形成するためには、以下のような選択エッチングを採用することが好ましい。ここで選択エッチングとは、対象物を部分的にマスクし、マスクされていない箇所をエッチングで除去する技術である。選択エッチングによるパターン形成は、一般に、(1)硬化性組成物の塗布工程、(2)レジストマスクの形成工程、(3)エッチング工程、及び必要に応じて(4)レジストマスクの除去・剥離工程、から構成される。以下、各工程を順に説明する。
【0113】
(1)硬化性組成物の塗布工程
本発明の緑色硬化性組成物を、公知の手段によって基板などの支持体に塗布して、緑色塗膜を形成する。塗布手段として、例えば、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター(ダイコーター、カーテンフローコーターとも呼ばれることがある。)、インクジェットなどが使用できる。
【0114】
緑色塗膜を、必要に応じて熱硬化させてもよい。熱硬化させることによって、後工程でレジストマスクを溶剤で剥離する際に、緑色塗膜の耐溶剤性を向上させることができる。熱硬化温度及び時間は、樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜設定すればよい。熱硬化温度は、通常、150〜250℃、好ましくは160〜220℃、より好ましくは170〜200℃である。熱硬化時間は、通常、数分程度、例えば、1〜3分程度である。
【0115】
(2)レジストマスクの形成工程
緑色塗膜の上に、所望のパターン形状を有するレジストマスクを形成する。レジストマスクは、通常、感光性組成物を使用するフォトリソグラフィーによって形成される。フォトリソグラフィーは、一般に、(i)感光性組成物の塗布工程、(ii)塗布した感光性組成物から溶剤を除去して塗膜を形成する工程(プリベーク工程)、(iii)前記塗膜をマスキングした後に露光する工程、(iv)可溶化部を洗い流す工程(現像工程)、及び(v)残った塗膜を加熱によって硬化する工程(ポストベーク工程)から構成される。
レジストマスクの膜厚は、硬化塗膜がRIEによるドライエッチにより除去されても、残るように設定することが好ましい。例えば、[(レジストエッチングレート/カラーフィルタエッチングレート)×1.2倍]以上の膜厚が好ましい。
現像工程においては、通常のコーターデベロッパーによるパドル法により行なうことができるが、これに限定されるものではない。
【0116】
(3)エッチング工程
緑色塗膜のレジストマスクで保護されていない箇所を、エッチングによって選択的に除去する。本発明ではエッチング手段に特に限定はないが、ドライエッチングを採用することが好ましい。ドライエッチングの種類としては、ガスエッチング、プラズマエッチング、イオンエッチング、リアクティブイオンエッチング(RIE)などを挙げることができる。これらの中でもRIEが好ましい。エッチング条件は、採用するエッチング手段、並びに緑色硬化性組成物の樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
例えば、並行平板式枚葉リアクテブイオンエッチャー(RIE)を用い、酸素ガスを主成分とするエッチングガスを用いて、パターニングされて露出した硬化塗布膜をドライエッチングにより除去することができる。
また、エッチングガスには、塩素ガスやフッ素ガス等のハロゲンを加えてもよい。
【0117】
(4)レジストマスクの除去・剥離工程
エッチング後に、必要に応じてレジストマスクを剥離溶剤で除去する。剥離溶剤としては、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどのエチレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール類;4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチルなどのカルボン酸エステル類;1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。剥離溶剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0118】
なおドライエッチング後にレジストマスクを除去しなくともよい場合がある。例えば、固体撮像素子に使用される色フィルタアレイを製造する場合に、透明のレジストマスクを形成すれば、これを除去する必要はない。固体撮像素子に使用される色フィルタアレイの表面には、後述するように平坦化膜が形成されるので、緑色フィルタ層上に透明レジストマスクを残しても問題はない。
【0119】
〈色フィルタアレイ〉
緑色フィルタ層を上記のような選択エッチングで形成し、他の色のフィルタ層を選択エッチング又はフォトリソグラフィーで形成することによって、色フィルタアレイを形成できる。色フィルタアレイの厚みは、例えば、0.4〜2.0μm程度である。また各画素の縦及び横の長さは、それぞれ独立に、1.0〜20μm程度の範囲で設定できる。
【0120】
本発明の色フィルタアレイは、CCDやCMOSセンサなどの固体撮像素子などの素子上に形成でき、これらをカラー化するのに有用である。本発明の色フィルタアレイをCCDイメージセンサに形成する場合の典型例、及びこれらを用いたカメラシステムについて、図を参照しながら詳細に説明する。
【0121】
〈CCDイメージセンサ及びカメラシステム〉
図1は、本発明の色フィルタアレイを形成したCCDイメージセンサの一例を示す部分拡大概略断面図である。
【0122】
図示例のCCDイメージセンサでは、シリコン基板1におけるP型不純物領域の表面の一部にPやAs等のN型不純物をイオン注入した後、熱処理を行うことにより、フォトダイオード2を形成する。またシリコン基板1の表面であってフォトダイオード形成部位とは異なる領域に、フォトダイオード2よりもN型不純物濃度が高い不純物拡散層からなる垂直電荷転送部3を形成する。この垂直電荷転送部3はPやAs等のN型不純物をイオン注入した後、熱処理を行うことにより形成でき、フォトダイオード2が入射光を受けることにより発生した電荷を縦方向に転送するCCDの役割を果たす。
【0123】
図示例のCCDイメージセンサでは、シリコン基板1の不純物領域をP型不純物層、フォトダイオード2及び垂直電荷転送部3をN型不純物層としているが、シリコン基板1の不純物領域をN型不純物層、フォトダイオード2及び垂直電荷転送部3をP型不純物層としても実施できる。
【0124】
シリコン基板1、フォトダイオード2及び垂直電荷転送部3上には、例えば、SiO2等の絶縁膜5aを形成し、垂直電荷転送部3の上方には前記絶縁膜5aを介して、例えば、ポリSi等からなる垂直電荷転送電極4を形成する。この垂直電荷転送電極4は、フォトダイオード2に発生した電荷を垂直電荷転送部3に転送するための転送ゲートとしての役割と、垂直電荷転送部3に転送された電荷をCCDイメージセンサの縦方向に転送するための転送電極としての役割を果たす。
【0125】
垂直電荷転送電極4の上方、及び側面には、例えば、SiO2等の絶縁膜5bを介して遮光膜6を形成する。遮光膜6はタングステン、タングステンシリサイド、又はAl、Al−シリサイド等の金属からなり、入射光が垂直電荷転送電極4や垂直電荷転送部3に入り込むのを防ぐ役割を果たす。また、遮光膜6の側面のうち、フォトダイオード2の上方には遮光膜6に張り出し部を設け、入射光が垂直電荷転送部3に漏れこむのを防ぐこともできる。
【0126】
遮光膜6の上方には、例えば、BPSG膜7をフォトダイオード2に対して、下向きに凸型となるように形成し、さらにその上にはP−SiN膜8を積層する。BPSG膜7とP−SiN膜8とは、これらの界面がフォトダイオード2の上方で下に湾曲するように積層されており、入射光を効率よくフォトダイオード2に導くための層内レンズの役割を果たす。P−SiN膜8表面には、この表面又は画素領域以外の凹凸部を平坦化する目的で平坦化膜9を形成する。
【0127】
この平坦化膜9表面に色フィルタアレイ10(緑色フィルタ層10G、青色フィルタ層10B、赤色フィルタ層10R)が形成される。なお、この図示例では緑色(G)、青色(B)及び赤色(R)の原色系の組合せを示したが、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び緑色(G)の補色系の組合せを採用してもよい。この色フィルタアレイ10表面にはその凹凸を平坦化する目的で平坦化膜11が形成される。
【0128】
さらにこの平坦化膜11の上面に、フォトダイオード2に入射する光を効率良く集光するための、オンチップレンズとも呼ばれるマイクロレンズ12を形成することによって、CCDイメージセンサ及びこれを用いたカメラシステムが形成される。
【0129】
図2は、イメージセンサなどの固体撮像素子を組込んだカメラシステムの一例を示す構成図である。このカメラシステムでは、入射光はレンズ21を介して、イメージセンサ22に入射する。イメージセンサ22の光入射面側には、前述のマイクロレンズ12と色フィルタアレイ10が形成されており、入射光の各色に応じた信号を出力する。このイメージセンサ22からの信号は、信号処理回路23で信号処理され、カメラ出力される。
【0130】
図示例のカメラシステムでは、イメージセンサ22はイメージセンサ駆動回路25により駆動される。イメージセンサ駆動回路25の動作は、モード設定部24から静止画モード、動画モード等のモード信号を送ることによって制御できる。なお本発明は、CCDイメージセンサだけでなく、CMOSイメージセンサなどの増幅型固体撮像素子、及びこれを用いたカメラシステムにも適用できる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお実施例では、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記されない限り、「質量%」及び「質量部」を表す。
【0132】
1.緑色硬化性組成物の調製
表5に示す部数で以下の各成分を混合して、緑色硬化性組成物1及び2(実施例1及び2)並びに緑色硬化性組成物3(比較例1)を調製した。
【0133】
(1−1)色素
イエロー色素:化合物(I−5)(実施例1及び2で使用)
シアン色素:化合物(II−1)
イエロー色素:化合物(X−1)(比較例1で使用)
【0134】
【化16】

【0135】
(1−2)化合物(I−5)の合成
実施例1及び2で使用した化合物(I−5)を以下のようにして合成した。
【0136】
式(Ia−1)で表される化合物(m−トルイジン−4−スルホン酸)25.0部に、水200部とN−メチルピロリドン50部を加えた後、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7〜8に調節した。以下の操作は氷冷下で行った。亜硝酸ナトリウムを27.6部加えて30分攪拌した。35%塩酸97.3部を少量ずつ加えて褐色溶液とした後、2時間攪拌した。アミド硫酸25.1部を水250部に溶解した水溶液を反応溶液に加えて攪拌し、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を得た。
【0137】
【化17】

【0138】
式(Ia−2)で表される化合物(1−ブチル−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシピリド−2−オン)28.9部に水260部とN−メチルピロリドン28.9部を加えた後、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH8〜9に調節した。
【0139】
【化18】

【0140】
以下の操作は氷冷下で行った。前記ピリドン水溶液を攪拌して無色溶液とした後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH8〜9に調節しながら、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を2時間かけてポンプで滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌することで暗色溶液を得た。精製塩140部を反応溶液に加えて、5時間攪拌した。濾過して得た黄色固体を減圧下60℃で乾燥し、式(Ia−3)で表される化合物を46.7部(収率79%)得た。
【0141】
【化19】

【0142】
冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコに、化合物(Ia−3)を5.0部、アセトニトリル25部及びN,N−ジメチルホルムアミド1.8部を投入し、攪拌下20℃以下を維持しながら、塩化チオニル2.8部を滴下して加えた。滴下終了後、40℃に昇温し、同温度で2時間維持して反応させ、その後20℃に冷却した。冷却後の反応溶液を氷水150部に攪拌しながら注いだ後、30分攪拌した。析出した黄色結晶を濾別し、水道水でよく洗浄し、60℃で2時間減圧乾燥した。冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコを別途用意し、1−アミノ−2−プロパノール1.9部とN−メチルピロリドン20部とを投入し、攪拌下20℃以下を維持しながら、先に調整した黄色結晶を1時間かけて投入した。黄色結晶を投入した後、液温を室温まで昇温してから、反応溶液を30分攪拌した。反応溶液にメタノール40部を加えて攪拌した後、この混合溶液を、酢酸29部及びイオン交換水300部の混合液中に攪拌しながら加えて、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、イオン交換水でよく洗浄し、60℃で減圧乾燥して、式(IA−1)で表される化合物4.4部(収率77%)を得た。
【0143】
【化20】

【0144】
以下の反応は、窒素雰囲気下で行った。化合物(IA−1)25.0部にN−メチルピロリドン50.0部を加えた後、30分攪拌して反応溶液を調整した。室温下、反応溶液を攪拌しながら、アジピン酸クロライド5.0部を滴下した。滴下終了後、さらに8時間攪拌した。反応溶液を水1Lの中に注いだ後、酢酸エチル0.6Lを加えて30分攪拌した。分液ロートを用いて有機相を分取した後、さらに水2L、10%炭酸ナトリウム水溶液2L、10%酢酸水溶液2L、及びイオン交換水2Lで洗浄した。分取した有機相を溶媒留去して、化合物(I−5)を24.7部得た(収率88%)。
【0145】
化合物(I−5)の構造は質量分析によって決定した。質量分析装置はJMS−700(日本電子株式会社製)を使用した。
質量分析:イオン化モード=FD+:m/z=1032
【0146】
(2)バインダー樹脂
(2−1)樹脂(IV−1)
構成単位(IV−1−1a)(重合比65モル%)及び構成単位式(IV−1−2a)(重合比35モル%)からなる共重合体、重量平均分子量2,000。
【0147】
(2−2)樹脂(IV−2)
化合物(IV−2−1a)[PIPE−CD;三井化学(株)製]50.8部、メチルイソブチルケトン50.8部およびシュウ酸9.5部の混合物を80℃で攪拌しながら1時間かけてホルマリン(ホルムアルデヒドを質量分率で37%含有する)13.8部を滴下して加えた。滴下終了後、91℃に昇温し、同温度で10時間反応させた。反応後の反応混合物にイオン交換水125部、メチルイソブチルケトン76部を加えて水洗し、更にメチルイソブチルケトン51部、イオン交換水125部を加えて洗浄し、その後蒸留により脱水して、ノボラック樹脂のメチルイソブチルケトン溶液145.5部を得た。得られたメチルイソブチルケトン溶液にメチルイソブチルケトン133部、n−ヘプタン363部を加えて分別し、樹脂層(液体)として樹脂(IV−2)を取り出した。この樹脂(IV−2)に乳酸エチル145.8部を加えて、樹脂(IV−2)の乳酸エチル溶液(樹脂(IV−2)の含有量は質量分率で33%)を得た。この樹脂(IV−2)のGPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は、14,000であった。
【0148】
【化21】

【0149】
(3)硬化剤:三井化学製「M−100C」(ヘキサメトキシメチロールメラミン)
【0150】
(4)溶剤
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(HMP)
1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)
乳酸エチル(EL)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
【0151】
【表5】

【0152】
2.緑色硬化塗膜の特性評価
緑色硬化性組成物1及び2(実施例1及び2)並びに緑色硬化性組成物3(比較例1)から得られる緑色硬化塗膜の耐熱性、耐溶剤性及び耐光性を以下のようにして評価した。これらの結果を表6に示す。
【0153】
(1)耐熱性評価
石英基板に、緑色硬化性組成物をスピンコートした。次いで102℃で1分間プリベークして塗膜を形成した後、200℃で3分間ポストベークし1μmの硬化塗膜を作製し、分光光度計(V670 日本分光社製)を用いて400〜700nmの波長−透過率スペクトルを測定した。次いで、この硬化塗膜を240℃で2分間加熱した。加熱後の硬化塗膜の400〜700nmの波長−透過率スペクトルを測定した。波長毎に加熱前後の透過率の差の絶対値を求め、この絶対値の400〜700nmでの平均を耐熱性の指標として評価した。この平均値が小さいほど、耐熱性が良好である。
【0154】
(2)耐溶剤性評価
石英基板上に緑色硬化性組成物をスピンコートした。次いで102℃で1分間プリベークして塗膜を形成した後、200℃で3分間ポストベークした。この硬化塗膜の膜厚d1を測定した。次いで、この石英基板上に形成された硬化塗膜を、23℃の大過剰量の乳酸エチル中に3分間浸漬した。取り出した後、スピンコーターで乳酸エチルを振り切るか、又はホットプレート上で100℃1分間加熱して乳酸エチルを除去してから、膜厚d2を測定した。式(1)によって得られた値を、耐溶剤性の指標として評価した。この値が大きいほど、耐溶剤性が良好である。
耐溶剤性(%)=d2/d1×100 (1)
【0155】
(3)耐光性評価
石英基板に、緑色硬化性組成物をスピンコートした。次いで102℃で1分間プリベークして塗膜を形成した後、200℃で3分間ポストベークし1μmの硬化塗膜を作製し、400〜700nmの波長−透過率スペクトルを測定した。次いで、この硬化塗膜に、耐光試験機(SUNTEST XLS+;ATLAS社製)を用いて、波長375nm以下の光をカットするフィルタ(COLORED OPTICAL GLASS;HOYA製)を介して、100万ルクス(電力400W)の光を15時間照射した後、400〜700nmでの波長−透過率スペクトルを測定した。波長毎に光照射前後の透過率の差の絶対値を求め、この絶対値の400〜700nmでの平均を耐光性の指標として評価した。この平均値が小さいほど、耐光性が良好である。
【0156】
【表6】

【0157】
表5及び6の結果から明らかなように、イエロー色素として化合物(I−5)を使用した実施例1及び2の緑色塗膜は、化合物(X−1)を使用した比較例1のものに比べて、加熱後の400〜700nmの平均透過率の低下量が小さく、耐熱性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の緑色硬化性組成物から、耐熱性に優れた緑色フィルタ層を形成できる。このような緑色フィルタ層は、CCDやCMOSセンサなどの固体撮像素子の色フィルタアレイの一部として有用である。
【符号の説明】
【0159】
10 色フィルタアレイ
10G 緑色フィルタ層(緑色画素パターン)
10B 青色フィルタ層(青色画素パターン)
10R 赤色フィルタ層(赤色画素パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、硬化剤及び溶剤を含む緑色硬化性組成物。
【化1】

〔式(I)中、Z11、Z12及びZ13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価のC1-16脂肪族炭化水素基を表す。但しZ11、Z12及びZ13に含まれる両末端以外のメチレン単位は、カルボニル基又は酸素原子で置換されていてもよい。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいC2-18アシル基を表す。A11及びA12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価のC6-14芳香族炭化水素基を表す。B11及びB12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC6-14芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい5〜14員環の複素環基を表す。〕
【化2】

〔式(II)中、R21〜R23は、それぞれ独立して、C1-10飽和脂肪族炭化水素基、C1-8アルコキシ基が置換しているC1-10飽和脂肪族炭化水素基、C6-20アリール基、C7-20アラルキル基、又はC2-10アシル基を表す。〕
【請求項2】
11及びB12が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい5〜14員環の含窒素複素環基である請求項1に記載の緑色硬化性組成物。
【請求項3】
11及びB12が、それぞれ独立に、式(B−1)で表される基である請求項2に記載の緑色硬化性組成物。
【化3】

〔式(B−1)中、R13は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基を表す。R14は、置換基を有していてもよいC1-16脂肪族炭化水素基を表す。〕
【請求項4】
緑色硬化性組成物の固形分が、組成物に対して、5〜30質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の緑色硬化性組成物。
【請求項5】
硬化剤の含有量が、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及び硬化剤の合計100質量部に対して、20〜70質量部である請求項1〜4のいずれか記載の緑色硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、バインダー樹脂を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の緑色硬化性組成物。
【請求項7】
バインダー樹脂の含有量が、硬化剤100質量部に対して、50〜300質量部である請求項6に記載の緑色硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の緑色硬化性組成物を用いて形成される色フィルタアレイ。
【請求項9】
請求項8に記載の色フィルタアレイを具備する固体撮像素子。
【請求項10】
請求項8に記載の色フィルタアレイを具備するカメラシステム。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−70027(P2011−70027A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221438(P2009−221438)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】