説明

線維性障害の診断バイオマーカー

本発明は、BMP9および/またはBMP10アンタゴニストを用いる、線維症を阻害する新規方法および線維性障害を処置または阻害する方法を提供する。本発明はまた、BMP9および/またはBMP10のレベルを検出することによって、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価する方法を提供する。さらに、BMP9およびBMP10の処置後レベルとBMP9およびBMP10の処置前レベルを検出し、比較することによって、線維性障害を処置する処置レジメンの有効性を評価する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
線維症は、臓器または組織における細胞による過剰な線維性結合組織の異常形成または発生に関連する病理過程である。線維症に関連した過程は正常な組織形成または修復の一部として生じうるが、これらの過程の調節不全は、組織または臓器機能を進行的に害する変化した細胞組成および過剰な結合組織沈着を導きうる。
【背景技術】
【0002】
例えば、世界中で500万人以上の人が肺線維症に罹患しており、これは肺胞が徐々に線維性組織に置き換えられて血流中に酸素を取り込む組織の能力の不可逆な喪失を引き起こす。さらに、肝臓線維症は世界中で主要な健康問題であり、門脈高血圧または肝硬変さえも導きうる肝臓における過剰な結合組織形成によってもたらされる(Murphy et al., Expert Opin Investig Drugs. 2002 Nov;11(11):1575-85参照)。さらに、多くの他の線維性障害、例えば血管線維症、膵臓線維症、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症、皮膚線維症、眼線維症、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導される後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症および腫瘍性線維症が存在する。
【0003】
線維症を治療するために抗炎症剤のような治療薬剤がしばしば使用されるが、かかる処置は、低い効能および望ましくない副作用を有しうる。さらに、線維性障害のための完全に有効な処置または治療は現在存在しない。したがって、線維症を阻害し、したがって対象における線維症の処置または予防に使用できる物質ならびにこの消耗性の疾患を診断する方法が、当該技術分野において強く必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、細胞の線維性活性を阻害する方法、対象における線維症を処置または予防する方法、ならびに対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価する方法を提供する。本発明は、少なくとも一部において、BMP9およびBMP10が線維芽細胞の分化ならびに細胞外マトリックスの過剰な合成および蓄積ならびに線維症の間の筋線維芽細胞による組織リモデリングにおける、以前は知られていなかった役割を有することが本発明者らによって示されたことに基づく。
【0005】
したがって本発明は、細胞における線維症を阻害する新たな方法であって、細胞とBMP9またはBMP10アンタゴニストを接触させる方法を提供する。具体的な態様において、細胞は肺細胞、血管細胞、脳細胞、骨細胞、幹細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、皮膚細胞、眼細胞または膵臓細胞を含むがこれらに限定されない。
【0006】
別の局面において、本発明は対象における線維性障害を処置または予防する方法を提供する。この方法は対象、例えばヒトまたは動物に有効量の骨形成タンパク質9(BMP9)または骨形成タンパク質10(BMP)アンタゴニストを投与することを含む。一つの態様において、線維性障害は、血管線維症、肺線維症(例えば特発性肺線維症)、膵臓線維症、肝臓線維症(例えば肝硬変)、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症(例えば心内膜心筋線維症、特発性心筋症)、皮膚線維症(例えば強皮症、外傷後、手術による皮膚瘢痕、ケロイドおよび皮膚ケロイド形成)、眼線維症(例えば緑内障、眼の硬化症、結膜および角膜瘢痕ならびに翼状片)、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導される後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症、腫瘍性線維症、デュピュイトラン病、狭窄症、ならびに放射線誘導性線維症を含むがこれらに限定されない。具体的な態様において、線維性障害は骨髄線維症ではない。
【0007】
具体的な態様において、本発明は、対象における線維性障害を処置または予防する方法であって、対象に有効量の抗BMP9または抗BMP10抗体を投与することを含み、ここで線維性障害が肝臓線維症、腎臓線維症、心臓線維症、皮膚線維症および肺線維症からなる群から選択される、方法を提供する。
【0008】
他の態様において、本発明は、対象における上皮間葉移行(EMT)を阻害または予防する方法であって、対象に有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを投与して、上皮間葉移行(EMT)を阻害または予防する方法を提供する。
【0009】
さらなる局面において、本発明は、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価する方法を提供する。この方法は、対象由来のサンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させて、BMP9またはBMP10を検出することを含み、ここでBMP9またはBMP10活性の上昇したレベル(例えばコントロールに対して少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5倍高い)が、当該対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があることの指標である。具体的な態様において、この方法は、さらなる線維症マーカー、例えばアルファ平滑筋アクチン、III型コラーゲン軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、線維芽細胞特異的タンパク質−1、フィブロネクチン、serpinE1、ペリオスチン、IGFBP3、SPARC、CTGF、TGFb、Cyr61およびphospho smad 2/3の存在を検出する段階を含む。
【0010】
一つの態様において、サンプルは対象から得られた細胞または組織を含む。他の態様において、サンプルは対象から得られた液体である(例えば血液、リンパ液、婦人科液体、嚢胞液、眼液、尿および腹膜リンスによって回収した液体)。
【0011】
本発明の方法に含まれる試薬は、BMP9および/またはBMP10を検出できるあらゆる既知の試薬を含む。一つの態様において、試薬は抗体である。別の態様において、試薬は核酸である。試薬はまた、BMP9および/またはBMP10の検出を促進にするように、標識されていてもよい(例えば放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート剤または酵素)。
【0012】
さらなる局面において、本発明は、対象における線維性障害を処置する処置レジメンの有効性を評価する方法を提供する。この方法は、対象に処置レジメンの少なくも一部を投与する前に対象から得られた第一サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ、処置レジメンの少なくとも一部を投与した後の対象から得られた第二サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ;そして第一および第二サンプルのBMP9またはBMP10レベルを比較することを含み、ここで、第二サンプルと比較して第一サンプル中に存在する上昇したレベルのBMP9またはBMP10が、処置レジメンが対象における線維性障害の処置に有効であることの指標である。具体的な態様において、処置レジメンは、BMP9またはBMP10アンタゴニストの投与を含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、線維芽細胞と有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを接触させることによる、線維芽細胞または他の細胞の筋線維芽細胞への分化を阻害する方法を提供する。
【0014】
一つの局面において、本発明は、細胞、例えば肺細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、皮膚細胞、眼細胞および膵臓細胞の線維性応答の阻害における、BMP9またはBMP10アンタゴニストの使用に関する。
【0015】
別の局面において、本発明は、対象における線維性障害の処置におけるBMP9またはBMP10アンタゴニストの使用に関する。
【0016】
他の態様において、本発明は、対象における線維性障害の予防におけるBMP9またはBMP10アンタゴニストの使用に関する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、線維芽細胞または他の細胞の筋線維芽細胞への分化の阻害におけるBMP9またはBMP10アンタゴニストの使用に関する。
【0018】
本発明はまた、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価するための試薬の使用に関し、この使用は、(i)対象由来のサンプルとBMP9もしくはBMP10またはそれらの生物学的活性を検出できる試薬を接触させ;そして(ii)BMP9またはBMP10を検出することを含み、ここでコントロールに対して上昇したレベルのBMP9またはBMP10活性が、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があることの指標である。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、対象における線維性障害を処置する処置レジメンの有効性を評価するための試薬の使用に関し、この使用はa)対象に処置レジメンの少なくも一部を投与する前に対象から得られた第一サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ、b)処置レジメンの少なくとも一部を投与した後の対象から得られた第二サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ;そしてc)第一および第二サンプルのBMP9またはBMP10レベルを比較することを含み、ここで、第二サンプルと比較して第一サンプル中に存在する上昇したレベルのBMP9またはBMP10が、処置レジメンが対象における線維性障害の処置に有効であることの指標である。
【0020】
本発明の方法において、広範なBMP9およびBMP10アンタゴニスト、例えば抗体、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリン、核酸(例えばアンチセンス分子、例えばRNA干渉剤およびリボザイム)、免疫複合体(例えば治療薬剤とコンジュゲートした抗体)、低分子、融合タンパク質、BMP9またはBMP10由来ペプチド化合物およびレセプターベースのアンタゴニスト(例えば可溶性ALK1またはセリン/スレオニンキナーゼレセプター)が使用できる。
【0021】
具体的な態様において、BMP9またはBMP10アンタゴニストは抗体またはそのフラグメントである。本発明による保護に好適な抗体は、少なくとも可変領域配列を有する抗体のあらゆる既知の形態を含む。例えば、抗体はマウス、ヒト、ヒト化、キメラまたは二重特異性モノクローナル抗体であってよい。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、ヴァーサボディ、ナノボディおよびドメイン抗体であってよく、また抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDまたはIgE抗体であってもよい。
【0022】
本発明の方法で使用されるBMP9またはBMP10アンタゴニストは、静脈内、筋肉内または皮下投与を含むがこれらに限定されないあらゆる好適な方法によって投与できる。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、下記詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】線維性障害を処置できる治療標的としてのBMP9(すなわちGDF2)およびBMP10の同定を導く高含量免疫染色実験の結果を示す。
【図2】ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイにおける線維芽細胞の筋線維芽細胞分化に対するBMP9およびBMP10活性を示すグラフである。
【図3】組換えBMP9またはBMP10で線維芽細胞を処置した後の、線維症の既知マーカーであるIII型コラーゲンのアップレギュレーションを示すグラフである。
【図4】組換えBMP9またはBMP10で線維芽細胞を処置した後の、線維症の既知マーカーであるアルファ平滑筋アクチンのアップレギュレーションを示すグラフである。
【図5】組換えBMP9またはBMP10で線維芽細胞を処置した後の、線維症の既知マーカーである軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)のアップレギュレーションを示すグラフである。
【図6】レポータージーンアッセイにおける、BMP9刺激BREルシフェラーゼ活性に対する抗BMP9モノクローナル抗体およびALK1-Fc可溶性レセプターの効果を示すグラフである。
【図7】上皮間葉移行(EMT)アッセイにおける、BMP9で処理したかまたは処理しなかったHep3B細胞における形態学的または免疫組織学的変化を示す。
【図8】EMTアッセイにおける4種の異なる線維芽細胞マーカー(すなわちαSMA、Col la1、線維芽細胞特異的タンパク質およびビメンチン)の発現に対するBMP9の効果を示すグラフである。
【図9】EMTアッセイにおけるBMP9誘導性FSP−1発現に対するBMP9中和モノクローナル抗体および可溶性レセプター(ALK1−Fc)の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、細胞の線維性応答を阻害する方法、対象における線維性障害を処置または予防する方法ならびに対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価する方法を提供する。本発明は、少なくとも一部において、BMP9およびBMP10が線維芽細胞の分化ならびに細胞外マトリックスの過剰な合成および蓄積ならびに線維症の間の筋線維芽細胞による組織リモデリングにおける、以前は知られていなかった役割を有することが本発明者らによって示されたことに基づく。
【0026】
本発明がより容易に理解されるように、第一にある種の用語を定義する。さらなる定義は詳細な説明を通じて提供する。
【0027】
I.定義
本明細書において使用するとき、用語骨形成タンパク質(本明細書において交換可能なように、「BMP」とも称する)は、骨および軟骨の形成を誘導する能力が知られている多機能成長因子およびサイトカインのグループを意味する。今日まで、約20種のBMPが同定されている。骨形成タンパク質1(BMP1)を除き、全ての骨形成タンパク質は形質転換増殖因子β(TGFβ)スーパーファミリーに属する(Chen et al., Growth Factors. 2004 Dec;22(4):233-41参照)。
【0028】
本明細書において使用するとき、用語骨形成タンパク質9(本明細書において交換可能なように、「BMP9」、「BMP−9」、「成長分化因子2」、「GDF−2」、「GDF2」および「成長/分化因子2前駆体」とも称する)は、間葉系幹細胞の骨芽細胞分化の強力な誘導因子として知られているTGFβ/BMPスーパーファミリーの既知のメンバーを意味する(Tang et al.(2008) J Cell Mol Med. [PMID: 19175684]参照)。BMP9はまた、グルコース代謝の制御、糖尿病マウスにおける血糖症低減、中枢神経系におけるコリン作動性ニューロンの分化因子、鉄ホメオスタシスに関与するホルモン(ヘプシジン)の発現誘導に関与することも示されている(David et al. 2008. Circ Res. Apr 25;102(8):914-22)。
【0029】
代表的なBMP9配列は、下記の配列を含むが、それらに限定されない。
【0030】
BMP9/成長分化因子2[Homo sapiens](NP_057288)
(配列番号1)
MCPGALWVALPLLSLLAGSLQGKPLQSWGRGSAGGNAHSPLGVPGGGLPEHTFNLKMFLENVKVDFLRSLNLSGVPSQDKTRVEPPQYMIDLYNRYTSDKSTTPASNIVRSFSMEDAISITATEDFPFQKHILLFNISIPRHEQITRAELRLYVSCQNHVDPSHDLKGSVVIYDVLDGTDAWDSATETKTFLVSQDIQDEGWETLEVSSAVKRWVRSDSTKSKNKLEVTVESHRKGCDTLDISVPPGSRNLPFFVVFSNDHSSGTKETRLELREMISHEQESVLKKLSKDGSTEAGESSHEEDTDGHVAAGSTLARRKRSAGAGSHCQKTSLRVNFEDIGWDSWIIAPKEYEAYECKGGCFFPLADDVTPTKHAIVQTLVHLKFPTKVGKACCVPTKLSPISVLYKDDMGVPTLKYHYEGMSVAECGCR
【0031】
BMP9/成長分化因子2[Homo sapiens](AF188285)
(配列番号2)
cggtccagcc cggcagcggg tgagagtggg tgctggccag gacggttcct tcagagcaaa
cagcagggag atgccggccc gctccttccc agctcctccc cgtgcccgct aacacagcac
ggccgcctgc agtctcctct ctgggtgatt gcgcgggcct aagatgtgtc ctggggcact
gtgggtggcc ctgcccctgc tgtccctgct ggctggctcc ctacagggga agccactgca
gagctgggga cgagggtctg ctgggggaaa cgcccacagc ccactggggg tgcctggagg
tgggctgcct gagcacacct tcaacctgaa gatgtttctg gagaacgtga aggtggattt
cctgcgcagc cttaacctga gtggggtccc ttcgcaggac aaaaccaggg tggagccgcc
gcagtacatg attgacctgt acaacaggta cacgtccgat aagtcgacta cgccagcgtc
caacattgtg cggagcttca gcatggaaga tgccatctcc ataactgcca cagaggactt
ccccttccag aagcacatct tgctcttcaa catctccatt cctaggcatg agcagatcac
cagagctgag ctccgactct atgtctcctg tcaaaatcac gtggacccct ctcatgacct
gaaaggaagc gtggtcattt atgatgttct ggatggaaca gatgcctggg atagtgctac
agagaccaag accttcctgg tgtcccagga cattcaggat gagggctggg agaccttgga
agtgtccagc gccgtgaagc gctgggtccg gtccgactcc accaagagca aaaataagct
ggaagtgact gtggagagcc acaggaaggg ctgcgacacg ctggacatca gtgtcccccc
aggttccaga aacctgccct tctttgttgt cttctccaat gaccacagca gtgggaccaa
ggagaccagg ctggagctga gggagatgat cagccatgaa caagagagcg tgctcaagaa
gctgtccaag gacggctcca cagaggcagg tgagagcagt cacgaggagg acacggatgg
ccacgtggct gcggggtcga ctttagccag gcggaaaagg agcgccgggg ctggcagcca
ctgtcaaaag acctccctgc gggtaaactt cgaggacatc ggctgggaca gctggatcat
tgcacccaag gagtatgaag cctacgagtg taagggcggc tgcttcttcc ccttggctga
cgatgtgacg ccgacgaaac acgctatcgt gcagaccctg gtgcatctca agttccccac
aaaggtgggc aaggcctgct gtgtgcccac caaactgagc cccatctccg tcctctacaa
ggatgacatg ggggtgccca ccctcaagta ccattacgag ggcatgagcg tggcagagtg
tgggtgcagg tagtatctgc ctgcggggct ggggaggcag gccaaagggg ctccacatga
gaggtcctgc atgcccctgg gcacaacaag gactgattca atctgcatgc cagcctggag
gaggaaaggg agcctgctct ccctccccac accccaccca aagcatacac cgctgagctc
aactgccagg gaaggctaag gaaatgggga tttgagcaca acaggaaagc ctgggagggt
tgttgggatg caaggaggtg atgaaaagga gacaggggga aaaataatcc atagtcagca
gaaaacaaca gcagtgagcc agaggagcac aggcgggcag gtcactgcag agactgatgg
aagttagaga ggtggaggag gccagctcgc tccaaaaccc ttggggagta gagggaagga
gcaggccgcg tgtcacaccc atcattgtat gttatttccc acaacccagt tggaggggca
tggcttccaa tttagagacc cg
【0032】
マウスおよび他の動物のBMP9分子は当該技術分野で知られている(例えばマウスBMP9についてNP_062379、ラットBMP9についてNP_001099566参照)。
【0033】
本明細書において使用するとき、用語骨形成タンパク質10(本明細書において交換可能なように、「BMP10」、「BMP−10」、「MGC126783」および「骨形成タンパク質10前駆体」とも称する)は、TGFβ/BMPスーパーファミリーの既知のメンバーを意味する。BMP10が心室発生における心筋増殖および成熟を調節する必須成分であることが示唆されている。(Chen et al., (2004) Development.131(9):2219-31およびNeuhaus et al., (1999) Mech Dev., 80(2):181-4)。
【0034】
代表的なBMP10配列は、下記の配列を含むが、それらに限定されない。
【0035】
骨形成タンパク質10プレプロタンパク質[Homo sapiens](NP_055297)
(配列番号3)
MGSLVLTLCALFCLAAYLVSGSPIMNLEQSPLEEDMSLFGDVFSEQDGVDFNTLLQSMKDEFLKTLNLSDIPTQDSAKVDPPEYMLELYNKFATDRTSMPSANIIRSFKNEDLFSQPVSFNVSIPHHEEVIMAELRLYTLVQRDRMIYDGVDRKITIFEVLESKGDNEGERNMLVLVSGEIYGTNSEWETFDVTDAIRRWQKSGSSTHQLEVHIESKHDEAEDASSGRLEIDTSAQNKHNPLLIVFSDDQSSDKERKEELNEMISHEQLPELDNLGLDSFSSGPGEEALLQMRSNIIYDSTARIRRNAKGNYCKRTPLYIDFKEIGWDSWIIAPPGYEAYECRGVCNYPLAEHLTPTKHAIIQALVHLKNSQKASKACCVPTKLEPIシリルDKGVVTYKFKYEGMAVSECGCR
【0036】
骨形成タンパク質10[Homo sapiens](NM_014482)
(配列番号4)
ggggagagga agagtggtag ggggagggag agagagagga agagtttcca aacttgtctc
cagtgacagg agacatttac gttccacaag ataaaactgc cacttagagc ccagggaagc
taaaccttcc tggcttggcc taggagctcg agcggagtca tgggctctct ggtcctgaca
ctgtgcgctc ttttctgcct ggcagcttac ttggtttctg gcagccccat catgaaccta
gagcagtctc ctctggaaga agatatgtcc ctctttggtg atgttttctc agagcaagac
ggtgtcgact ttaacacact gctccagagc atgaaggatg agtttcttaa gacactaaac
ctctctgaca tccccacgca ggattcagcc aaggtggacc caccagagta catgttggaa
ctctacaaca aatttgcaac agatcggacc tccatgccct ctgccaacat cattaggagt
ttcaagaatg aagatctgtt ttcccagccg gtcagtttta atgggctccg aaaatacccc
ctcctcttca atgtgtccat tcctcaccat gaagaggtca tcatggctga acttaggcta
tacacactgg tgcaaaggga tcgtatgata tacgatggag tagaccggaa aattaccatt
tttgaagtgc tggagagcaa aggggataat gagggagaaa gaaacatgct ggtcttggtg
tctggggaga tatatggaac caacagtgag tgggagactt ttgatgtcac agatgccatc
agacgttggc aaaagtcagg ctcatccacc caccagctgg aggtccacat tgagagcaaa
cacgatgaag ctgaggatgc cagcagtgga cggctagaaa tagataccag tgcccagaat
aagcataacc ctttgctcat cgtgttttct gatgaccaaa gcagtgacaa ggagaggaag
gaggaactga atgaaatgat ttcccatgag caacttccag agctggacaa cttgggcctg
gatagctttt ccagtggacc tggggaagag gctttgttgc agatgagatc aaacatcatc
tatgactcca ctgcccgaat cagaaggaac gccaaaggaa actactgtaa gaggaccccg
ctctacatcg acttcaagga gattgggtgg gactcctgga tcatcgctcc gcctggatac
gaagcctatg aatgccgtgg tgtttgtaac taccccctgg cagagcatct cacacccaca
aagcatgcaa ttatccaggc cttggtccac ctcaagaatt cccagaaagc ttccaaagcc
tgctgtgtgc ccacaaagct agagcccatc tccatcctct atttagacaa aggcgtcgtc
acctacaagt ttaaatacga aggcatggcc gtctccgaat gtggctgtag atagaagaag
agtcctatgg cttatttaat aactgtaaat gtgtatattt ggtgttccta tttaatgaga
ttatttaata agggtgtaca gtaatagagg cttgctgcct tcaggaaatg gacaggtcag
tttgttgtag gaaatgcata tttt
【0037】
マウスおよび他の動物のBMP10分子は当該技術分野で知られている(例えばマウスBMP10についてNP_033886参照)。
【0038】
本明細書において使用するとき、用語「アンタゴニスト」は、BMP9および/またはBMP10活性をダウンレギュレートするあらゆる物質を意味し、BMP9および/またはBMP10発現をダウンレギュレートするかあるいはBMP9および/またはBMP10機能を阻害する物質を含む。
【0039】
本明細書において使用するとき、用語「ダウンレギュレート」は、BMP9および/またはBMP10の生物学的活性および/または発現の、いずれかの統計的に有為な減少を意味し、活性および/または発現の完全な阻止(すなわち完全阻害)を含む。例えば「ダウンレギュレート」は、BMP9および/またはBMP10活性および/または発現の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の減少を意味する。
【0040】
本明細書において使用するとき、用語線維症を「阻害する」または「阻害すること」は、BMP9および/またはBMP10の生物学的活性および/または発現の、いずれかの統計的に有為な減少を意味し、活性および/または発現の完全な阻止を含む。例えば「阻害」は、BMP9および/またはBMP10活性および/または発現の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の減少を意味する。
【0041】
本明細書において使用するとき、用語「線維症」は、臓器または組織における細胞による過剰な線維性結合組織の異常な形成または発生を意味する。線維症に関連した過程は正常な組織形成または修復の一部として生じうるが、これらの過程の調節不全は、組織または臓器機能を進行的に害する変化した細胞組成および過剰な結合組織沈着を導きうる。様々なタイプの線維症、例えば膵臓および肺の嚢胞性線維症、特に小児において、筋肉内注射の合併症として生じうる注射線維症、心内膜心筋線維症、肺の特発性肺線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、炭坑作業員塵肺症の合併症および腎性全身性線維症が存在する。
【0042】
本明細書において使用するとき、用語「線維性障害」、「線維性状態」および「線維性疾患」は相互に交換可能なように使用され、線維症によって特徴付けられる障害、状態または疾患を意味する。線維性障害の例は、血管線維症、肺線維症(例えば特発性肺線維症)、膵臓線維症、肝臓線維症(例えば肝硬変)、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症(例えば心内膜心筋線維症、特発性心筋症)、皮膚線維症(例えば強皮症、外傷後、手術による皮膚瘢痕、ケロイドおよび皮膚ケロイド形成)、眼線維症(例えば緑内障、眼の硬化症、結膜および角膜瘢痕および翼状片)、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導される後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症ならびに腫瘍性線維症を含むが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書において使用するとき、用語「細胞」は、個々の細胞、組織ならびに組織および臓器中の細胞を含むがこれらに限定されない、線維性応答を受けやすいあらゆる細胞を意味する。用語細胞は、本明細書において使用するとき、細胞それ自体ならびに細胞を取り囲む細胞外マトリックス(ECM)を含む。例えば、細胞の線維性応答の阻害は、肺中の1個以上の細胞(または肺組織);肝臓中の1個以上の細胞(または肝臓組織);腎臓中の1個以上の細胞(または腎組織);筋肉組織中の1個以上の細胞;心臓中の1個以上の細胞(または心組織);膵臓中の1個以上の細胞;皮膚中の1個以上の細胞;骨中の1個以上の細胞;血管中の1個以上の細胞;1個以上の幹細胞または眼中の1個1以上の細胞の線維性応答の阻害を含むがこれらに限定されない。
【0044】
本明細書において使用するとき、用語「上皮間葉移行」(EMT)は、上皮から間葉表現型への変換を意味し、これは胚発生の正常なプロセスである。EMTはまた、イオンおよび液体トランスポーターとして機能する損傷を受けた上皮細胞がマトリックスリモデリング間葉細胞となるプロセスでもある。癌腫において、この形質転換は、変化した細胞形態、間葉タンパク質の発現および上昇した侵襲性をもたらす。インビトロでのEMTを定義する基準は、上皮細胞極性の喪失、細胞運動性の獲得後の個々の細胞への分離および続く分散を含む(Vincent-Salomon et al., Breast Cancer Res. 2003; 5(2): 101-106参照)。EMTにおいて発現、分布および/または機能が変化し、原因として関連している分子のクラスは、増殖因子(例えば形質転換増殖因子(TGF)−β、wnts)、転写因子(例えばsnails、SMAD、LEFおよび核βカテニン)、細胞間接着軸の分子(カドヘリン、カテニン)、細胞骨格調節剤(Rhoファミリー)および細胞外プロテアーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター)を含む(Thompson et al., Cancer Research 65, 5991-5995, July 15, 2005参照)。
【0045】
II.線維性障害の処置または予防方法
本発明は、対象における線維性障害を処置または予防する新たな方法を提供する。この方法は対象に有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを投与して対象における線維性障害を処置または予防することを含む。
【0046】
用語「処置する」、「処置した」、「処置すること」および「処置」は、本明細書において使用するとき、本明細書に記載の治療手段を意味する。「処置」方法は、線維性疾患または状態を治療し、その重症度を低減しあるいはその1個以上の症状を軽減するため、かかる処置なしで予測されるものを超えた対象の健康または生存を延長するための、対象へのBMP9またはBMP10アンタゴニストの投与を含む。例えば「処置」は、対象における線維性疾患症状(例えば肺線維症または拒食症に関連した息切れ、疲労、咳、体重減少、食欲低下、肝臓線維症に関連した疲労、体重減少、門脈高血圧および腹水)の少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の軽減を含む。
【0047】
用語「予防する」、「予防した」、「予防すること」および「予防」は、本明細書において使用するとき、本明細書に記載の予防手段を意味する。「予防」方法は、疾患または状態の1個以上の症状を遅延、予防または排除するための、対象へのBMP9またはBMP10アンタゴニストの投与を含む。例えば「予防」は、対象における線維性疾患症状(例えば肺線維症または拒食症に関連した息切れ、疲労、咳、体重減少、食欲低下、肝臓線維症に関連した疲労、体重減少、門脈高血圧および腹水)の少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の軽減を含む。
【0048】
用語「患者」または「対象」は、本明細書において使用するとき、ヒトまたは動物患者を含むことを意図する。具体的な態様において、対象はヒトである。用語「非ヒト動物」は、全ての動物、例えば哺乳類および非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類および爬虫類を含む。
【0049】
A.適応症
本発明の方法を用いて、線維性障害を処置および/または予防できる。線維性障害の例示的タイプは、血管線維症、肺線維症(例えば特発性肺線維症)、膵臓線維症、肝臓線維症(例えば肝硬変)、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症(例えば心内膜心筋線維症、特発性心筋症)、皮膚線維症(例えば強皮症、外傷後、手術による皮膚瘢痕、ケロイドおよび皮膚ケロイド形成)、眼線維症(例えば緑内障、眼の硬化症、結膜および角膜瘢痕ならびに翼状片)、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導される後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症、腫瘍性線維症、デュピュイトラン病、狭窄症、ならびに放射線誘導性線維症を含むが、これらに限定されない。具体的な態様において、線維性障害は骨髄線維症ではない。
【0050】
B.組合せ治療
本発明は、1種以上の他の治療様式との組み合わせにおけるBMP9およびBMP10アンタゴニストの使用を考慮する。したがって、BMP9および/またはBMP10アンタゴニストの使用に加えて、線維性障害の処置のための1種以上の「標準的」治療を対象に投与してもよい。例えば、本アンタゴニストは、細胞傷害剤、免疫抑制剤、放射性毒素および/または治療用抗体との組合せで(すなわち一緒にまたは結合して(すなわち免疫複合体))投与してよい。本発明によって考慮される具体的な共治療剤は、ステロイド(例えばコルチコステロイド類、例えばプレドニゾン)、免疫抑制および/または抗炎症剤(例えばガンマインターフェロン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキセート、ペニシラミン、シクロスポリン、コルヒチン、抗胸腺細胞グロブリン、ミコフェノール酸モフェチルおよびヒドロキシクロロクイン)、細胞傷害剤、カルシウムチャネルブロッカー(例えばニフェジピン)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)阻害剤、パラアミノ安息香酸(PABA)、ジメチルスルホキシド、形質転換増殖因子β(TGF−β)阻害剤、インターロイキン−5(IL−5)阻害剤およびパンカスパーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0051】
BMP9および/またはBMP10アンタゴニストと組み合わせて使用できるさらなる抗線維性物質は、レクチン(例えば米国特許7,026,283に記載のとおり、その全内容を参照により本明細書に組み込む)、Wynn et alに記載の抗線維性物質(Journal Clin. Invest. Vol 117 Number 3, March 2007, p524、その全内容を参照により本明細書に組み込む)を含むが、これらに限定されない。例えば、さらなる抗炎症性物質および治療は、多様な抗炎症性/免疫抑制/細胞傷害薬物(例えばコルヒチン、アザチオプリン、シクロホスファミド、プレドニゾン、サリドマイド、ペントキシフィリンおよびテオフィリン)、TGF−βシグナル伝達修飾因子(リラキシン、SMAD7、HGFおよびBMP7、ならびにTGF−β1、TGFβRI、TGFβRII、EGR−1およびCTGF阻害剤を含む)、サイトカインおよびサイトカインレセプターアンタゴニスト(IL−1β、IL−5、IL−6、IL−13、IL−21、IL−4R、IL−13Rα1、GM−CSF、TNF−α、オンコスタチンM、WISP−1およびPDGFの阻害剤)、サイトカイン類およびケモカイン類(IFN−γ、IFN−α/β、IL−12、IL−10、HGF、CXCL10およびCXCL11)、ケモカインアンタゴニスト(CXCL1、CXCL2、CXCL12、CCL2、CCL3、CCL6、CCL17およびCCL18の阻害剤)、ケモカインレセプターアンタゴニスト(CCR2、CCR3、CCR5、CCR7、CXCR2およびCXCR4の阻害剤)、TLRアンタゴニスト(TLR3、TLR4およびTLR9の阻害剤)、血管新生アンタゴニスト(VEGF特異的抗体およびアデノシンデアミナーゼ置換療法)、抗高血圧剤(ベータブロッカー、ならびにANG II、ACEならびにアルドステロンの阻害剤)、血管作動物質(ET−1レセプターアンタゴニストおよびボセタン)、コラーゲンを合成および処理する酵素の阻害剤(プロリルヒドロキシラーゼの阻害剤)、B細胞アンタゴニスト(リツキシマブ)、インテグリン/接着分子アンタゴニスト(α1β1およびαvβ6インテグリンを遮断する分子、ならびにインテグリン関連キナーゼの阻害剤、ならびにICAM−1およびVCAM−1に特異的な抗体)、筋線維芽細胞を標的とするアポトーシス促進剤、MMP阻害剤(MMP2、MMP9およびMMP12の阻害剤)およびTIMP阻害剤(TIMP−1に特異的な抗体)を含むが、これらに限定されない。
【0052】
BMP9および/またはBMP10アンタゴニストと共治療薬剤または共治療は、同じ製剤でまたは別個に投与できる。別々に投与する場合、BMP9および/またはBMP10アンタゴニストは、共治療薬剤または共治療の前、後またはそれと同時に投与できる。一方の薬剤は、数分乃至数週間の間隔で他の薬剤の投与に前後してよい。2種以上の異なる種類の治療薬剤が対象に別個に適用される場合、一般に、これらの異なる種類の薬剤が標的組織または細胞で有利な組合せ効果をなおも奏しうるように、各送達時間の間で顕著な期間が経過しないことを保証する。
【0053】
一つの態様において、BMP9および/またはBMP10アンタゴニスト(例えば抗BMP9または抗BMP10抗体)は第二の結合分子、例えば抗体(すなわち二重特異性分子を形成する)または例えばBMP9またはBMP10の異なるエピトープと結合する、他の結合剤と結合していてもよい。本明細書に記載のアンタゴニストとの組合せ治療に使用できるさらなる治療薬剤の例は、下記免疫複合体のセクションにより詳細に記載されている。
【0054】
C.用量/量
用語「有効量」および「治療上有効量」は、本明細書において使用するとき、対象に投与したとき本明細書に記載の線維性障害の処置または予防に影響するのに十分なBMP9および/またはBMP10アンタゴニストの量を意味する。治療上有効量は、処置する線維性障害の対象および重症度、対象の体重および年齢、投与方法等に依存して変化し、これは当業者によって容易に決定されうる。BMP9および/またはBMP10アンタゴニスト投与量は、例えばBMP9および/またはBMP10アンタゴニスト約1 ng〜約10,000 mg、約5 ng〜約9,500 mg、約10 ng〜約9,000 mg、約20 ng〜約8,500 mg、約30 ng〜約7,500 mg、約40 ng〜約7,000 mg、約50 ng〜約6,500 mg、約100 ng〜約6,000 mg、約200 ng〜約5,500 mg、約300 ng〜約5,000 mg、約400 ng〜約4,500 mg、約500 ng〜約4,000 mg、約1 μg〜約3,500 mg、約5 μg〜約3,000 mg、約10 μg〜約2,600 mg、約20 μg〜約2,575 mg、約30 μg〜約2,550 mg、約40 μg〜約2,500 mg、約50 μg〜約2,475 mg、約100 μg〜約2,450 mg、約200 μg〜約2,425 mg、約300 μg〜約2,000、約400 μg〜約1,175 mg、約500 μg〜約1,150 mg、約0.5 mg〜約1,125 mg、約1 mg〜約1,100 mg、約1.25 mg〜約1,075 mg、約1.5 mg〜約1,050 mg、約2.0 mg〜約1,025 mg、約2.5 mg〜約1,000 mg、約3.0 mg〜約975 mg、約3.5 mg〜約950 mg、約4.0 mg〜約925 mg、約4.5 mg〜約900 mg、約5 mg〜約875 mg、約10 mg〜約850 mg、約20 mg〜約825 mg、約30 mg〜約800 mg、約40 mg〜約775 mg、約50 mg〜約750 mg、約100 mg〜約725 mg、約200 mg〜約700 mg、約300 mg〜約675 mg、約400 mg〜約650 mg、約500 mg、or 約525 mg〜約625 mgの範囲であり得る。投与レジメンは、最適な治療応答が提供されるように調節されてよい。有効量はまた、BMP9および/またはBMP10アンタゴニストの毒性または有害な効果(すなわち副作用)が最小限となり、そして/または有益な効果によって凌がれるものである。
【0055】
本発明の方法で使用されるBMP9および/またはBMP10アンタゴニストの実際の投与レベルは、具体的な患者、組成物および投与形態について、患者に毒性なく、所望の治療応答を得るのに有効な有効成分の量が得られるように変化してよい。選択される投与レベルは、多様な薬物動態因子、例えば使用する具体的なBMP9および/またはBMP10アンタゴニスト、そのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する具体的なアンタゴニストの排出速度、処置期間、使用する具体的なアンタゴニストと組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および薬歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子に依存する。当該技術分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要なアンタゴニストの有効量を容易に決定し、予測できる。例えば医師または獣医は、所望の治療効果を得るために必要なものよりも低いレベルでアンタゴニストの投与を開始して、所望の効果が得られるまで用量を漸増してよい。一般に、BMP9および/またはBMP10アンタゴニストの好適な1日投与量は、治療効果を奏するのに有効な最低用量の量である。かかる有効投与量は、一般に、上記要因に依存する。静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下投与が好ましく、好ましくは標的部位の近くに投与する。所望によりBMP9および/またはBMP10アンタゴニストの有効1日用量が1日の適切な間隔で、所望により単位投与形態で、2、3、4、5、5またはそれ以上の分割用量で別個に投与されてもよい。本発明のBMP9および/またはBMP10アンタゴニストを単独で投与してもよいが、医薬製剤(組成物)としてアンタゴニストを投与することが好ましい。
【0056】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば治療応答)が得られるように調節される。例えば、単回ボーラスが投与されてよく、複数回分割用量が時間にわたって投与されてよく、あるいは治療状況の緊急性によって指示されるとおりに用量を比例的に減少または増加してよい。例えば本発明の方法に使用されるBMP9および/またはBMP10アンタゴニストは、皮下注射によって週1回または2回、あるいは皮下注射によって月1回または2回投与されてもよい。
【0057】
投与の簡便さおよび投与量の均一性のために、単位投与形態で非経腸BMP9および/またはBMP10アンタゴニストを製剤することが特に有利である。単位投与形態は、本明細書において使用するとき、処置する対象に単位投与量として好適な物理的に区別された単位を意味し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を奏するように計算された所定の量の活性アンタゴニストを含む。単位投与形態のための仕様は、(a)活性アンタゴニストの固有の特徴および達成される具体的な治療効果、ならびに(b)対象における感受性の処置のためにかかる活性アンタゴニストを製剤する際の当該技術分野に潜在的な限界によって決定され、直接依存する。
【0058】
D.投与方法および製剤
本発明の方法で使用されるBMP9および/またはBMP10アンタゴニストを特定の投与経路で投与するために、その不活性化を予防するために好適な製剤中に該アンタゴニストを含めることが必要でありうる。例えば、BMP9および/またはBMP10アンタゴニストは対象に、適切な担体、例えばリポソームまたは希釈剤中で投与してよい。薬学的に許容される希釈剤は、生理食塩水および水性バッファー溶液を含む。リポソームは水中油中水CGFエマルジョンおよび常套のリポソームを含む(Strejan et al.(1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0059】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散剤および滅菌注射液または分散剤の即時調製用滅菌粉末を含む。かかる薬学的に活性な物質のための媒体および物質の使用は、当該技術分野において既知である。いずれかの常套の媒体または物質が活性BMP9および/またはBMP10アンタゴニストに非適合性である場合を除き、医薬組成物におけるその使用が意図される。補助的活性化合物もBMP9および/またはBMP10アンタゴニストと組み合わされてよい。
【0060】
治療用BMP9および/またはBMP10アンタゴニストは典型的には、滅菌され、製造および保存条件下で安定でなければならない。アンタゴニストは溶液、ミクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物濃度に好適な他の整序構造として製剤されうる。担体は溶媒または分散媒であってよく、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物を含む。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤の使用によって維持されうる。多くの場合、等張化剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって達成されうる。
【0061】
滅菌注射液は、必要な量の活性アンタゴニストを適切な溶媒に、所望により上記成分の1種または組合せと共に加え、次いで滅菌濾過して製造できる。一般に、基礎分散媒および上記所望の他の成分を含む滅菌ビークルに活性化合物を加えて、分散剤を製造する。滅菌注射液の調製用滅菌粉末の場合、製造法は、活性化合物と任意の所望の追加成分をその予め滅菌濾過した溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥(乾燥凍結)である。
【0062】
本発明の方法に使用できるBMP9および/またはBMP10アンタゴニストは、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経腸投与に好適なものを含む。製剤は簡便には単位投与形態で存在していてよく、薬学の分野で既知のいずれかの方法によって製造されてよい。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせられる活性化合物の量は、処置する対象および具体的な投与形態に依存して変化する。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせられる有効成分の量は、一般に、治療効果を奏するアンタゴニストの量である。一般に、100%としたうち、この量は有効成分約0.001%〜約90%、好ましくは約0.05%〜約70%、最も好ましくは約0.01%〜約30%の範囲である。
【0063】
用語「非経腸投与」および「非経腸的に投与」は、本明細書において使用するとき、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および幹内(intrastemal)注射および輸液を含むがこれらに限定されない。
【0064】
本発明の方法に用いるBMP9および/またはBMP10アンタゴニストと共に使用されうる好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。例えばレシチンのようなコーティング剤を用いて、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持して、そして界面活性剤を使用して、適切な流動性が維持できる。
【0065】
BMP9および/またはBMP10アンタゴニストはまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含んでいてもよい。微生物の存在の防止は、滅菌手法ならびに多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることの両方によって確保しうる。糖、塩化ナトリウム等の等張化剤を組成物に含めることも望まれうる。さらに、注射医薬形態の延長された吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる物質を含めることによってもたらされうる。
【0066】
本発明の方法で用いるBMP9および/またはBMP10アンタゴニストがヒトおよび動物に投与される場合、それらは単独で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば0.001〜90%(より好ましくは、0.005〜70%、例えば0.01〜30%)の有効成分を含む医薬アンタゴニストとして与えられうる。
【0067】
BMP9および/またはBMP10アンタゴニストは当該技術分野において既知の医学デバイスで投与してもよい。例えば、好ましい態様において、アンタゴニストは、無針皮下注射デバイス、例えば米国特許5,399,163; 5,383,851; 5,312,335; 5,064,413; 4,941,880; 4,790,824または 4,596,556に示されているデバイスで投与してもよい。本発明において有用な周知のインプラントおよびモジュールの例は次のものを含む:制御された速度で医薬を分散させるインプラント可能なマイクロ輸液ポンプを示す米国特許4,487,603;皮膚を介して医薬を投与する治療デバイスを示す米国特許4,486,194;正確な輸液速度で医薬を送達する投薬輸液ポンプを示す米国特許4,447,233;連続的薬物送達のための流量が変化しうるインプラント可能な輸液装置を示す米国特許4,447,224;複数チャンバーのコンパートメントを有する浸透薬物送達系を示す米国特許4,439,196;および浸透薬物送達系を示す米国特許4,475,196。多くの他のかかるインプラント、送達系およびモジュールが当業者に既知である。
【0068】
ある態様において、アンタゴニストは、インビボでの適切な分散を確保するために製剤してもよい。例えば、血液脳幹門(BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。BMP9および/またはBMP10アンタゴニストがBBBを通過することを(所望により)確保するため、例えばリポソーム中にそれを製剤できる。リポソームを製造する方法については、例えば米国特許4,522,811; 5,374,548; および5,399,331を参照されたい。リポソームは特定の細胞または臓器に選択的に輸送される1個以上の部分を含んでいてよく、したがって標的化された薬剤送達を促進する(例えば、V.V. Ranade, 1989 J. Cline Pharmacol. 29:685参照)。ターゲティング分子の例は、葉酸またはビオチン(例えばLowらの米国特許5,416,016参照);マンノシド(Umezawa et al., 1988 Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al., 1995 FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., 1995 Antimicrob. Agents Chernother. 39:180); 界面活性タンパク質Aレセプター(Briscoe et al., 1995 Am. J. Physiol.1233:134)、本発明の製剤を含みうる異なる種ならびに本発明の分子の成分;p120(Schreier et al.、1994 J. Biol. Chem. 269:9090)を含み、K. Keinanen; M.L. Laukkanen, 1994 FEBSLett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler, 1994 Imrnunomethods 4:273も参照されたい。
【0069】
III.診断方法
本発明はまた、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価する新たな方法も提供する。線維性障害を有する疑いのある個体は、線維性疾患の進行が遅延され、停止さえされうるため、早期検出から利益を得る。この方法は、対象由来のサンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させて、BMP9またはBMP10を検出することを含み、ここでコントロールに対して上昇したレベルのBMP9またはBMP10が、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があることの指標である、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価することを含む。
【0070】
本発明はさらに、線維性障害を処置する処置レジメンの有効性を決定または予測する方法を提供する。この方法は、対象における線維性障害を処置する処置レジメンの有効性を評価する方法であって、a)対象に処置レジメンの少なくも一部を投与する前の対象から得られた第一サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ;b)処置レジメンの少なくとも一部を投与した後の対象から得られた第二サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ;そしてc)第一および第二サンプルのBMP9またはBMP10レベルを比較することを含み、ここで、第二サンプルと比較して第一サンプル中に存在する上昇したレベルのBMP9またはBMP10が、処置レジメンが対象における線維性障害の処置に有効であることの指標である、方法を含む。
【0071】
具体的な態様において、本方法は、アルファ平滑筋アクチン、III型コラーゲン、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、線維芽細胞特異的タンパク質−1、フィブロネクチン、serpinE1、ペリオスチン、IGFBP3、SPARC、CTGF、TGFb、Cyr61およびphospho smad 2/3を含むがこれらに限定されない線維症のさらなるマーカーを、当該技術分野において周知のアッセイを用いて検出する段階をさらに含んでいてもよい。かかるアッセイは、タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製法、タンパク質機能または活性のアッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法ならびに核酸増幅法、ELISA、イムノブロッティング、ウェスタンブロッティング、ノーザンブロッティング、電子顕微鏡およびサザンブロッティングを含むが、これらに限定されない。具体的な態様において、本方法はさらに、肝臓生検のような生検、あるいは商業的に入手可能なデバイス、例えばFibroscan(London, UKから入手可能)またはFibrotest(France, Europeから入手可能)を用いて、線維症を検出することを含んでいてよい。
【0072】
本明細書において使用するとき、用語「サンプル」は、対象由来のいずれかの体液(例えば血液、リンパ液、婦人科液体、嚢胞液、尿、眼液および腹膜リンスによって回収した液体)または細胞を含む。通常、組織または細胞は患者から採取されるが、インビボ診断も意図される。他の患者サンプルは、涙液、血清、脳脊髄液、糞便、痰および細胞抽出物を含む。
【0073】
本明細書において使用するとき、用語「BMP9および/またはBMP10を検出できる試薬」は、BMP9およびBMP10と特異的に結合でき、BMP9および/またはBMP10を検出可能な部分に変形しうるあらゆる試薬を含む。好適な試薬は、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント等を含む。BMP9および/またはBMP10核酸(例えばゲノムDNA、mRNA、スプライスmRNA、cDNA等)と結合する好適な試薬は、相補的核酸を含む。例えば、核酸試薬は、基質と結合したオリゴヌクレオチド(標識化または非標識化)、基質と結合していない標識化オリゴヌクレオチド、PCRプライマー対、分子ビーコンプローブ等を含む。
【0074】
本明細書において使用するとき、用語「コントロール」は、線維症を有さない対象由来のサンプル中のBMP9および/またはBMP10レベルであってよい。それは試験サンプルと同じまたは異なるタイプのサンプルであってよい。例えば、試験する対象由来のサンプルが肝臓サンプル(例えば細胞、細胞の集団または肝臓生検から得た組織)である場合、コントロールサンプルは線維性障害を有さない対象由来の肝臓サンプルであってもよい。あるいは、コントロールサンプルは異なるタイプのものであってもよく、例えば線維性障害を有さない対象由来の血液サンプルであってよい。他の態様において、コントロールサンプルは線維性障害を有さない対象由来のサンプルの集団または線維性障害を有さない対象集団由来のサンプルであってもよい。
【0075】
本明細書において使用するとき、BMP9および/またはBMP10の「異常なレベル」は、BMP9および/またはBMP10のコントロールレベルとは異なるBMP9および/またはBMP10のいずれかのレベル、例えば有為に高いまたは上昇したレベルあるいは有為に低いまたは低下したレベルである。
【0076】
本明細書において使用するとき、BMP9および/またはBMP10の「高いレベル」、「上昇したレベル」または「増加したレベル」は、好適なコントロールと比較して上昇しているレベルを意味する。好ましくは、好適なコントロールからの差が、レベルを評価するために使用したアッセイの標準誤差以上である。さらに、上昇したレベルは、好ましくは好適なコントロールにおけるBMP9および/またはBMP10のレベル(例えば、線維性疾患を有しない対象由来のサンプル、あるいは複数のコントロールサンプルまたは他の好適なベンチマークにおけるBMP9および/またはBMP10の平均レベル)の少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5、6、7、8、9または10倍高い。
【0077】
本明細書において使用するとき、BMP9および/またはBMP10の「低下したレベル」、「低いレベル」または「減少したレベル」は、好適なコントロールと比較して低下しているレベルを意味する。好ましくは、好適なコントロールからの差が、レベルを評価するために使用したアッセイの標準誤差以上である。低下したレベルは、好ましくは好適なコントロールにおけるBMP9および/またはBMP10のレベル(例えば、線維性疾患を有しない健常対象におけるレベル、あるいは複数のコントロールサンプルまたは他の好適なベンチマークにおけるBMP9および/またはBMP10の平均レベル)の少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5、6、7、8、9または10倍低い。
【0078】
本明細書において使用するとき、用語「有効」および「効能」は、処置レジメンが対象における線維性障害を処置する可能性を意味する。例えば処置が対象における線維性疾患症状(例えば肺線維症または拒食症と関連した息切れ、疲労、咳、体重減少、食欲減少、肝臓線維症と関連した疲労、体重減少、門脈高血圧および腹水)の軽減を少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上導く場合、処置レジメンが「有効」と見なされ、有効な処置選択肢と考慮される。
【0079】
A.アッセイ
対象から得られた生物学的サンプル中のBMP9および/またはBMP10の存否および/またはレベルは、サンプル中のBMP9またはBMP10を検出および定量可能な分子に変換する、広範なインビトロおよびインビボ技術および方法によって評価できる。かかる方法の非限定的な例は、タンパク質の検出のための免疫学的方法を用いたサンプル分析、タンパク質精製法、タンパク質機能または活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法および核酸増幅法、酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)、イムノブロッティング、ウェスタンブロッティング、ノーザンブロッティング、電子顕微鏡、質量分析、免疫沈降、免疫蛍光、サザンハイブリダイゼーション等を含む。かかる技術および本明細書に記載の他のものは、適用可能である場合、アルファ平滑筋アクチン、III型コラーゲン、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、線維芽細胞特異的タンパク質−1、フィブロネクチン、serpinE1、ペリオスチン、IGFBP3、SPARC、CTGF、TGFb、Cyr61およびphospho smad 2/3を含むがこれらに限定されないさらなる線維性マーカーを検出するために使用してもよい。
【0080】
一つの態様において、サンプル中のBMP9および/またはBMP10の存否および/またはレベルは、抗体(例えば放射線標識、発色標識、蛍光標識または酵素標識化抗体)、抗体誘導体(例えば基質またはタンパク質−リガンド対(例えばビオチン−ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンドと複合化した抗体)または抗体フラグメント(例えば一本鎖抗体または単離された抗体超可変ドメイン)のような、サンプル中のバイオマーカー、例えばBMP9および/またはBMP10と特異的に結合し、それを検出可能な分子に変換する試薬を用いて評価できる。
【0081】
抗体に関する用語「標識化」は、検出可能な基質と抗体のカップリング(すなわち物理的結合)による抗体の直接標識化、ならびに直接標識される別の試薬との反応性による抗体の間接標識化を含むことを意図する。間接標識化の例は、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出されうるように蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出を含む。
【0082】
他の態様において、BMP9および/またはBMP10の存否および/またはレベルは、核酸を用いて評価する。例えば一つの態様において、BMP9および/またはBMP10の存否および/またはレベルは、核酸プローブを用いて評価する。
【0083】
用語「プローブ」は、本明細書において使用するとき、BMP9および/またはBMP10と選択的に結合できるいずれかの分子を意味する。プローブは当業者によって合成されるか、あるいは適切な生物学的調製物に由来しうる。プローブは標識化されるように特異的に設計してもよい。プローブとして利用できる分子の例は、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機分子を含むが、これらに限定されない。
【0084】
単離されたmRNAは、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析およびプローブアッセイを含むがこれらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用できる。mRNAレベルの検出のための一つの方法は、単離されたmRNAと、BMP9および/またはBMP10 mRNAとハイブリダイズしうる核酸分子(プローブ)とを接触させることを含む。核酸プローブは、例えば全長cDNAまたはその一部、例えば少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長の、ストリンジェントな条件下でBMP9および/またはBMP10ゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであってよい。
【0085】
一つの態様において、例えばアガロースゲル上で単離されたmRNAを泳動させてmRNAをゲルからニトロセルロースのような膜に移すことによって、mRNAは固体表面に固定化され、プローブと接触させる。別の態様において、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイにおいて、プローブが固体表面に固定化され、mRNAをプローブと接触させる。当業者はBMP9および/またはBMP10 mRNAのレベルの検出に使用するための既知のmRNA検出方法を容易に適用できる。
【0086】
サンプル中のBMP9および/またはBMP10 mRNAのレベルを測定するための別の方法は、核酸増幅のプロセス、例えばRT−PCR(Mullis, 1987, 米国特許4,683,202に記載の実験態様)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193)、自己持続性配列複製(Guatelli et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-Betaレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサイクル複製(Lizardi et al., 米国特許5,854,033)または任意の他の核酸増幅法、次いで当業者に周知の技術を用いた増幅分子の検出を含む。これらの検出スキームは、かかる分子が極めて少数存在する場合の核酸分子の検出に特に有用である。本発明の具体的な局面において、BMP9および/またはBMP10発現は、定量的蛍光発生RT−PCR(すなわちTaqMan(商標)System)によって評価する。かかる方法は、典型的には、BMP9および/またはBMP10に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いる。既知の配列に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計する方法は当該技術分野において周知である。
【0087】
BMP9および/またはBMP10 mRNAの発現レベルは、メンブレンブロット(例えばノーザン、サザン、ドットのようなハイブリダイゼーション分析に使用する)またはマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズもしくはファイバー(または結合核酸を含むいずれかの固体支持体)を用いてモニターしてもよい。米国特許5,770,722、5,874,219、5,744,305、5,677,195および5,445,934参照(参照により本明細書に組み込む)。BMP9および/またはBMP10発現の検出は、溶液中での核酸プローブの使用を含んでいてもよい。
【0088】
本発明の一つの態様において、マイクロアレイを用いてBMP9および/またはBMP10発現を検出する。マイクロアレイは、異なる実験間での再現性のために、この目的に特に好適である。DNAマイクロアレイは多数の遺伝子の発現レベルの同時測定のための一つの方法を提供する。各アレイは固体支持体と結合した捕捉プローブの再現性のあるパターンからなる。標識化されたRNAまたはDNAは、アレイ上の相補的プローブとハイブリダイズし、次いでレーザースキャンによって検出される。アレイ上の各プローブについてのハイブリダイゼーション強度が測定され、相対的遺伝子発現レベルを示す定量値に変換される。米国特許6,040,138、5,800,992および6,020,135、6,033,860および6,344,316参照(参照により本明細書に組み込む)。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、サンプル中の多数のRNAについての遺伝子発現プロファイルを測定するために特に有用である。
【0089】
さらに、BMP9および/またはBMP10の検出のためのインビボ技術は、BMP9および/またはBMP10と結合してそれを検出可能な分子に変換する、BMP9および/またはBMP10に対する標識化された抗体を対象に導入することを含む。上記の通り、対象における検出可能なBMP9および/またはBMP10の存在、レベルあるいは位置でさえも、標準的なイメージング技術によって検出測定できる。
【0090】
他の態様において、質量分析を用いてサンプル中のBMP9および/またはBMP10を検出できる。質量分析は、化合物をイオン化して荷電した分子(またはその断片)を作製し、それらの質量対電荷比を測定することからなる分析技術である。典型的な質量分析手法において、サンプルを対象から得て、質量分析にロードし、その成分(例えばBMP9および/またはBMP10)が様々な方法(例えば電子ビームで衝撃を与える)によってイオン化して、荷電粒子(イオン)を形成する。次いで、電磁場を移動するイオンの動きから粒子の質量対電荷比を計算する。
【0091】
IV.BMP9およびBMP10アンタゴニスト
本明細書において使用するとき、用語「アンタゴニスト」は、BMP9および/またはBMP10活性を下方調整するあらゆる物質を意味し、BMP9および/またはBMP10発現をダウンレギュレートするか、またはBMP9および/またはBMP10機能を阻害する物質を含む。本発明の一つの局面において、アンタゴニストは、BMP9および/またはBMP10を直接アンタゴナイズするいずれかの物質であってよい。例えば一つの態様において、アンタゴニストは、BMP9またはBMP10と結合し、BMP9またはBMP10とそのリガンド(例えばアクチビンレセプター様キナーゼ1(ALK1)、セリン/スレオニンキナーゼレセプターまたはエンドグリン)の結合を防止して、BMPシグナル伝達を阻害するペプチドまたは抗体である。他の態様において、アンタゴニストは、BMP9またはBMP10のリガンドと結合し、BMP9またはBMP10とそのリガンドの結合を防止するペプチドまたは抗体である。本発明の別の局面において、該物質は、BMPシグナル伝達経路の下流メディエーターの活性を調節することによってBMP9および/またはBMP10を間接的にアンタゴナイズする。本発明のさらなる局面において、アンタゴニストはレセプターベースのアンタゴニスト、例えば可溶性ALK1またはセリン/スレオニンキナーゼレセプターを含むがこれらに限定されない可溶性BMP9またはBMP10レセプターである。
【0092】
代表的なアンタゴニストは、抗体、核酸(例えばアンチセンス分子、例えばリボザイムおよびRNA干渉剤)、免疫複合体(例えば治療薬剤とコンジュゲートした抗体)、低分子阻害剤、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリンおよびBMP9および/またはBMP10由来ペプチド化合物を含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明が意図する具体的なアンタゴニストは、商業的に入手可能な抗体、例えばMAB3209(R&D Systems, Minneapolis, MN USA)およびAlk1−Fcを含むが、これらに限定されない。本発明が意図するさらなるアンタゴニストは、Gazzerro et al.(Rev Endocr Metab Disord. 2006;7:51-65. 23)およびDerner(Clin Podiatr Med Surg. (2005) 22 607-618)に記載のものを含む(それらの内容を明示的に参照により本明細書に組み込む)。特に、具体的なアンタゴニストは、ノギン、コーディンファミリーのメンバー、捻転した原腸形成、ダンファミリーのメンバー(例えばGremlin、Sclerostin、Dan、子宮感作関連遺伝子(USAG−1)、Cerberus、Caronte、Coco、DanおよびCerberus関連タンパク質(PRDC)ならびにDante)、非シグナル伝達膜BMP偽受容体(例えばBMPおよびアクチビン結合タンパク質(BAMBI))、Smad 6、Smad 7および他の細胞内BMPアンタゴニストを含むがこれらに限定されない。
【0094】
A.抗体
本発明の一つの態様において、本明細書に記載の治療および診断方法は、BMP9またはBMP10と例えば直接または間接的に結合し、その活性を阻害し、そして/またはBMP9またはBMP10発現を下方調整する抗体を使用する。
【0095】
i.総則
用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、本明細書において相互に交換可能なように使用され、抗体全体およびいずれかの抗原結合フラグメント(すなわち抗原結合部分)またはその一本鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合により相互に結合した少なくとも2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は重鎖可変領域(Vと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3の3個のドメインを含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(Vと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域はCLの1個のドメインを含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域によって区分けされた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割できる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順序でならんだ、3個のCDRおよび4個のFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織または因子、例えば免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および常套の補体系の第一成分(C1q)の結合を仲介しうる。
【0096】
用語抗体の「抗原結合部分」または単に「抗体部分」は、本明細書において使用するとき、抗原(例えばBMP9および/またはBMP10)に特異的に結合する能力を保持する、1もしくは数種の抗体のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって行われうることが示されている。抗体の「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例は、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)2個のFabフラグメントがヒンジ領域でジスルフィド結合により連結しているF(ab’)フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単腕のVおよびVドメインからなるFvフラグメント;(v)VHおよびVLドメインを含むdAb;(vi)VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.(1989) Nature 341, 544-546);(vii) VHまたはVLドメインからなるdAb;および(viii)単離された相補性決定領域(CDR)または(ix)所望により合成リンカーによって結合されていてもよい2個以上の単離されたCDRの組合せを含む。さらに、Fvフラグメントの2個のドメインVおよびVは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VおよびV領域を対にして一価の分子を形成する1個のタンパク質として作成されるように、合成リンカーによって、組換え法を用いて、結合することができる(一本鎖Fv(scFv)と知られている;例えばBird et al., 1988 Science 242:423-426; およびHuston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883参照)。かかる一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」なる用語に包含される。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の常套の技術を用いて得られ、該フラグメントはインタクトな抗体と同様の有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術またはインタクトな免疫グロブリンの酵素もしくは化学的切断によって製造できる。
【0097】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用するとき、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち個々の抗体を含む集団が微量で存在しうる可能性のある天然由来の変異体を除き同一である。モノクローナル抗体は、極めて特異的であり、単一の抗原部位に対する。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む常套の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なって、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対する。モノクローナル抗体は、当業者が理解するいずれかの技術および本明細書に記載のもの、例えばKohler et al. (1975) Nature 256, 495に記載のハイブリドーマ法、例えばLonberg, et al.(1994) Nature 368(6474): 856-859に記載のトランスジェニック動物、組換えDNA法(例えば米国特許4,816,567参照)または例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いたファージ抗体ライブラリーを用いて製造できる。モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体およびヒト化抗体を含み、天然に生じたものでも組換え的に製造したものでもよい。
【0098】
用語「組換え抗体」は、組換え手法によって調製、発現、作製または単離された抗体、例えば(a)免疫グロブリン遺伝子(例えばヒト免疫グロブリン遺伝子)についてトランスジェニックもしくはトランスクロモソームな動物またはそれから調製したハイブリドーマから単離した抗体、(b)抗体を発現するように形質転換した宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離した抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒト抗体配列を含む)からファージディスプレイを用いて単離した抗体、ならびに(d)免疫グロブリン遺伝子配列(例えばヒト免疫グロブリン遺伝子)の他のDNA配列へのスプライシングを含むいずれかの他の手法によって調製、発現、作製または単離された抗体を意味する。かかる組換え抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有していてもよい。しかし、ある態様において、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発に付されてもよく、したがって組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来しそれと関連しているが、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリーに天然には存在し得ない配列である。
【0099】
用語「キメラ免疫グロブリン」または抗体は、可変領域が第一の種に由来し、定常領域が第二の種に由来する免疫グロブリンまたは抗体を意味する。キメラ免疫グロブリンまたは抗体は、例えば遺伝子操作によって、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築できる。
【0100】
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図し、例えばKabat et al.に記載されている(Kabat, et al.(1991) Sequences of proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体はヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでいてもよい(例えばインビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される変異)。しかし用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。
【0101】
ヒト抗体は、アミノ酸残基、例えばヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされない活性向上アミノ酸残基で置換された少なくとも1個以上のアミノ酸を有していてよい。典型的には、ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の一部ではないアミノ酸残基で置換された20個までの位置を有していてよい。具体的な態様において、これらの置換は以下に詳述するCDR領域内に存在する。
【0102】
用語「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」は、少なくとも1個のヒト化免疫グロブリンまたは抗体鎖(すなわち少なくとも1個のヒト化軽鎖または重鎖)を含む免疫グロブリンまたは抗体を意味する。用語「ヒト化免疫グロブリン鎖」または「ヒト化抗体鎖」(すなわち「ヒト化免疫グロブリン軽鎖」または「ヒト化免疫グロブリン重鎖」)は、実質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体由来の可変フレームワーク領域および実質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体由来の相補性決定領域(CDR)(例えば少なくとも1個のCDR、好ましくは2個のCDR、より好ましくは3個のCDR)を含む可変領域ならびにさらに定常領域(例えば軽鎖の場合には少なくとも1個の定常領域またはその一部、重鎖の場合には好ましくは3個の定常領域)を含む、免疫グロブリンまたは抗体鎖(すなわち軽鎖または重鎖それぞれ)を意味する。用語「ヒト化可変領域」(例えば「ヒト化軽鎖可変領域」または「ヒト化重鎖可変領域」は、実質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体由来の可変フレームワーク領域および実質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体由来の相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を意味する。
【0103】
「二重特異性」または「二重機能性」抗体は、2個の異なる重鎖/軽鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの結合を含む多様な方法によって作製できる。例えばSongsivilai & Lachmann, (1990) Clin. Exp. Immunol. 79, 315-321; Kostelny et al.(1992) J. Immunol. 148, 1547-1553参照。
【0104】
本明細書において使用するとき、「異種抗体」は、かかる抗体を作製するトランスジェニック非ヒト生物または植物に関連して定義される。
【0105】
「単離された抗体」は、本明細書において使用するとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味することを意図する(例えばBMP9またはBMP10と特異的に結合する単離された抗体は、BMP9またはBMP10以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離された抗体は、典型的には、他の細胞物質および/または化合物を実質的に含まない。本発明の一つの態様において、異なる結合特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、十分に定義された組成物中で組み合わせられる。
【0106】
本明細書において使用するとき、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を意味する。一つの態様において、抗体またはその抗原結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDまたはIgE抗体アイソタイプから選択されるアイソタイプのものである。
【0107】
本明細書において使用するとき、「アイソタイプスイッチ(isotype switching)」は、抗体のクラスまたはアイソタイプがあるIgクラスから他のIgクラスのものに変化する減少を意味する。
【0108】
本明細書において使用するとき、「非スイッチアイソタイプ」は、アイソタイプスイッチが起こらない場合に作製される重鎖のアイソタイプクラスを意味し;非スイッチアイソタイプをコードするCH遺伝子は、典型的には、機能的に再配列されたVDJ遺伝子のすぐ下流の第一CH遺伝子である。アイソタイプスイッチは、古典的または非古典的アイソタイプスイッチに分類される。古典的アイソタイプスイッチは、抗体をコードする遺伝子における少なくとも1個のスイッチ配列領域を含む組換え事象によって生じる。非古典的アイソタイプスイッチは、例えばヒトσμおよびヒトΣμ(δ−関連欠失)の間の相同組換えによって生じうる。特に、別の非古典的スイッチメカニズム、例えばトランスジーン間(intertransgene)および/または染色体間(interchromosomal)の組換えが発生し、アイソタイプスイッチを生じる場合がある。
【0109】
本明細書において使用するとき、用語「スイッチ配列」は、スイッチ組換えに関与するそれらのDNA配列を意味する。「スイッチドナー」配列、典型的にはμスイッチ領域は、スイッチ組換え中に欠失されるコンストラクト領域の5’(すなわち上流)である。「スイッチアクセプター」領域は、欠失されるコンストラクト領域と置換定常領域(例えばγ、ε等)との間にある。組換えが常に生じる特定の部位は存在しないため、最終遺伝子配列は、典型的には、コンストラクトから予測され得ない。
【0110】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位を意味する。エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並置された隣接アミノ酸または非隣接アミノ酸の両者から形成されうる。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒に曝露されても保持され、一方で三次折り畳みによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理で消失する。エピトープは、典型的には、固有の空間的コンホメーション中に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的コンホメーションを測定する方法は、当該技術分野における技術および本明細書に記載の技術、例えばX線結晶学および2次元核磁気共鳴を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed.(1996)参照。
【0111】
ラマ種(Lama paccos、Lama glama および Lama vicugna)のような新世界メンバーを含むラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCalelus dromaderius)ファミリーのメンバーから得た抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑性およびヒトに対する抗原性について、特徴付けられている。天然に見出される哺乳類のこのファミリー由来の特定のIgG抗体は軽鎖を欠いており、したがって他の動物由来の抗体における2個の重鎖および2個の軽鎖を有する4鎖4級構造とは構造的に異なる。WO 94/04678参照。
【0112】
HHと同定される小さな1個の可変ドメインであるラクダ抗体の領域を遺伝子操作によって入手して、標的に高い親和性を有し、「ラクダナノボディ」として知られる低分子量抗体由来タンパク質を得ることができる。米国特許5,759,808参照;Stijlemans, B. et al., 2004 J Biol Chem 279: 1256-1261; Dumoulin, M. et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger, M. et al. 2003 Bioconjugate Chem 14: 440-448; Cortez-Retamozo, V. et al. 2002 Int J Cancer 89: 456-62; および Lauwereys, M. et al. 1998 EMBO J 17: 3512-3520も参照されたい。ラクダ抗体および抗体フラグメントの操作されたライブラリーは、例えばAblynx, Ghent, Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体として、ラクダ抗体のアミノ酸配列を組換え的に変化させて、ヒト配列により似た配列を得てもよい。すなわち、ナノ抗体を「ヒト化」してよい。したがって、ヒトに対するラクダ抗体の天然の低抗原性をさらに低下させうる。
【0113】
ラクダナノボディはヒトIgG分子の約10分の1の分子量を有し、該タンパク質はわずか数ナノメートルの物理系を有する。小さなサイズの一つの帰結は、より大きな抗体タンパク質には機能的に不可視の抗原部位に結合するというラクダナノボディの能力であり、すなわちラクダナノボディは、常套の免疫学的技術を用いると隠される抗原を検出する試薬として、そして可能性のある治療薬物として、有用である。したがって、小さなサイズのさらに別の帰結は、ラクダナノボディが標的タンパク質の溝または小さな割れ目の特定の部位に結合することの結果として、阻害でき、したがって古典的な抗体のものよりも古典的な低分子量薬物の機能により似た能力を提供できることである。
【0114】
低分子量およびコンパクトなサイズは、さらに、極めて熱安定であり、極端なpHおよびタンパク分解に安定であり、そして低い抗原性をラクダナノボディにもたらす。別の帰結は、ラクダナノボディは循環系から組織に容易に移動し、血液脳関門を通過しさえすること、そして神経組織に作用する障害を処置しうることである。ナノボディはさらに、薬物の血液脳関門通過を促進しうる。2004年8月19日公開の米国特許出願20040161738参照。ヒトへの低抗原性と組み合わさったこれらの特徴は、大きな治療ポテンシャルを示す。さらに、これらの分子は、大腸菌のような原核細胞において十分に発現される。
【0115】
したがって、本発明の特徴は、BMP9またはBMP10に高い親和性を有するラクダ抗体またはラクダナノボディである。ここである態様において、ラクダ抗体またはナノボディは、ラクダ科動物において天然に生産され、すなわち他の抗体について本明細書に記載の技術を用いて、BMP9またはBMP10でラクダを免疫して作製される。あるいは、ラクダナノボディを設計し、すなわちパニング法を用いて適切に変異誘発したラクダナノボディを提示する例えばファージディスプレイライブラリーから選択して作製する。操作されたナノ抗体は、受容対象における半減期を45分〜2週間延長するために、さらに遺伝子操作によってカスタマイズしてもよい。
【0116】
ディアボディは、VおよびVドメインが同じ鎖上で2個のドメインを対にするには短すぎるリンカーによって結合された一本ポリペプチド鎖上で発現される二価の二重特異的分子である。VおよびVドメインは別の鎖の相補的ドメインと対になって、2個の抗原結合部位を作る(例えばHolliger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak et al., 1994 Structure 2:1121-1123参照)。ディアボディは、同じ細胞内でVHA−VLBおよびVHB−VLA(V−V立体配置)またはVLA−VHBおよびVLB−VHA(V−V立体配置)の構造を有する2本のポリペプチド鎖を発現することで作成できる。
【0117】
一本鎖抗体(scDb)は、約15アミノ酸残基のリンカーで2個のディアボディ形成ポリペプチド鎖を結合して作製する(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(3-4):128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36参照)。scDbは細菌中で、可溶性の活性モノマー形態で発現されうる(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(34): 128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36; Pluckthun and Pack, 1997 Immunotechnology, 3(2): 83-105; Ridgway et al., 1996 Protein Eng., 9(7):617-21参照)。
【0118】
ディアボディはFcと融合して「ジ−ディアボディ」となってもよい(Lu et al., 2004 J. Biol. Chem., 279(4):2856-65参照)。
【0119】
本発明はさらに、抗体の機能的特性を示すが、フレームワークおよび抗原結合部分が他のポリペプチドに由来するBMP9またはBMP10結合分子を提供する(例えば抗体遺伝子によってコードされるものまたはインビボで抗体遺伝子の組み換えによって作製されるもの以外のポリペプチド)。これらの結合分子の抗原結合ドメイン(例えばBMP9またはBMP10結合ドメイン)は、定向進化プロセスによって作製される。米国特許7,115,396参照。抗体の可変ドメインのものと同様の全体的な折り畳み(免疫グロブリン様折り畳み)を有する分子は、適切なスキャフォールドタンパク質である。抗体結合分子とするのに適したスキャフォールドタンパク質は、フィブロネクチンまたはフィブロネクチンダイマー、テネイシン、N−カドヘリン、E−カドヘリン、ICAM、タイチン、GCSF−レセプター、サイトカインレセプター、グリコシダーゼ阻害剤、抗生物質色素タンパク質、ミエリン膜接着分子P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T細胞抗原レセプター、CD1、VCAM−1のC2およびI−セットドメイン、ミオシン結合タンパク質CのI−セット免疫グロブリンドメイン、ミオシン結合タンパク質HのI−セット免疫グロブリンドメイン、テロキンのI−セット免疫グロブリンドメイン、NCAM、twitchin、neuroglian、成長ホルモン受容体、エリスロポイエチン受容体、プロラクチン受容体、インターフェロンガンマ受容体、βガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、βグルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ、T細胞抗原受容体、スーパーオキシドジスムターゼ、組織因子ドメイン、シトクロームF、緑色蛍光タンパク質、GroELおよびタウマチンを含む。
【0120】
非抗体結合分子の抗原結合ドメイン(例えば免疫グロブリン様折り畳み)は、10 kD未満または7.5 kDより大きな分子量(例えば7.5〜10 kDの分子量)を有する。抗原結合ドメインとするために用いるタンパク質は天然に生じる哺乳類タンパク質(例えばヒトタンパク質)であり、抗原結合ドメインは、それが由来するタンパク質の免疫グロブリン様折り畳みと比較して、50%まで(例えば34%、25%、20%または15%まで)の変異アミノ酸を含む。免疫グロブリン様折り畳みを有するドメインは、一般に、50〜150アミノ酸(例えば40〜60アミノ酸)からなる。
【0121】
非抗体結合分子を作製するために、抗原結合表面を形成するスキャフォールドタンパク質の領域(例えば抗体可変ドメイン免疫グロブリン折り畳みのCDRと位置および構造において類似している領域)の配列がランダム化されているクローンのライブラリーが作製される。ライブラリークローンは、目的の抗原(例えばBMP9またはBMP10)に対する特異的結合および他の機能(例えばBMP9またはBMP10の生物学的活性の阻害)について試験される。選択されたクローンは、抗原に対するより高い親和性の誘導性を作製するためのさらなるランダム化および選択のための基礎として用いることができる。
【0122】
高親和性結合分子は、例えばスキャフォールドとしてフィブロネクチンIIIの第10モジュール(10Fn3)を用いて作製される。23〜29、52〜55および78〜87の残基で10FN3の3個のCDR様ループの各々について、ライブラリーが構築される。各ライブラリーを構築するために、各CDR様領域で重複する配列をコードするDNAセグメントを、オリゴヌクレオチド合成によってランダム化する。選択可能な10Fn3ライブラリーを作製する技術は、米国特許6,818,418および7,115,396; Roberts and Szostak, 1997 Proc. Natl. Acad. Sci USA 94:12297; 米国特許6,261,804; 米国特許6,258,558;およびSzostak et al. WO98/31700に記載されている。
【0123】
非抗体結合分子は、標的抗原に対するアビディティーを向上するためにダイマーまたはマルチマーとして作製できる。例えば、抗原結合ドメインは、Fc−Fcダイマーを形成する抗体の定常領域(Fc)との融合体として発現される。例えば米国特許7,115,396参照。
【0124】
本発明の方法に使用できる抗体はまた、本明細書に記載の具体的な抗体と同じまたは重複したエピトープと結合する抗体、すなわちBMP9もしくはBMP10との結合または本明細書に記載の具体的な抗体によって認識されるBMP9もしくはBMP10上のエピトープとの結合について競合する抗体も含む。
【0125】
同じまたは重複したエピトープを認識する抗体は、例えば標的抗原と別の抗体の結合を阻止するある抗体の能力を示すことによって、すなわち競合結合アッセイのような常套の技術を用いて同定できる。競合結合は、BMP9またはBMP10のような抗原と参照抗体の特異的結合を試験免疫グロブリンが阻害することをアッセイにおいて決定する。様々なタイプの競合結合アッセイが知られており、例えば固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., (1983) Methods in Enzymology 9:242参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., (1986) J. Immunol. 137:3614参照);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press参照);I−125ラベルを用いた固相直接ラベルRIA(Morel et al., (1988) Mol. Immunol. 25(1):7参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., (1990) Virology 176:546);および直接標識化RIA(Moldenhauer et al., (1990) Scand. J. Immunol. 32:77)を含む。典型的には、かかるアッセイは、固体表面と結合した精製抗原(例えばBMP9またはBMP10)または未標識化免疫グロブリンおよび標識化参照免疫グロブリンのいずれかを有する細胞の使用を含む。競合阻害は試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞と結合したラベルの量を測定して測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは参照抗体と共通抗原の特異的結合を少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%またはそれ以上阻害する。
【0126】
本明細書において使用するとき、用語「特異的結合」「特異的に結合する」、「選択的結合」および「選択的に結合する」は、抗体またはその抗原結合部分が特定の抗原またはエピトープにかなりの親和性を示し、一般に、他の抗原およびエピトープとの顕著な交差反応性を示さない。「かなりの」または好ましい結合は、少なくとも106、107、108、109 M-1または1010 M-1の親和性での結合を含む。107 M-1以上の親和性が好ましく、好ましくは108 M-1以上がより好ましい。本明細書に記載のものの中間値も本発明の範囲に含まれ、好ましい結合親和性は、親和性の範囲、例えば106〜1010 M-1、好ましくは107〜1010 M-1、より好ましくは108〜1010 M-1として示される。「顕著な交差反応性を示さない」抗体は、望ましくない物質(例えば望ましくないタンパク質性物質)とかなりの結合をしないものである。特異的または選択的結合は、かかる結合を測定するための当業者に既知のいずれかの方法、例えばScatchard分析および/または競合結合アッセイによって測定できる。
【0127】
用語「K」は、本明細書において使用するとき、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数または抗原に対する抗体の親和性を意味することを意図する。一つの態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイを用いて測定したとき、抗原(例えばBMP9またはBMP10)と50 nMまたはそれよりよい(すなわちそれ未満)(例えば40 nMまたは30 nMまたは20 nMまたは10 nMまたはそれ未満)親和性(K)で結合する。具体的な態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイを用いて測定したとき、BMP9またはBMP10と8 nMまたはそれよりよい(例えば7 nM、6 nM、5 nM、4 nM、2 nM、1.5 nM、1.4 nM、1.3 nM、1nMまたはそれ未満)親和性(K)で結合する。他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、BIACORE 3000装置の表面プラズモン共鳴(SPR)技術で分析物として組換えBMP9またはBMP10、リガンドとして抗原を用いて測定した場合、抗原(例えばBMP9またはBMP10)と約10-7 M未満、例えば10 8 M未満、10-9 M未満もしくは10-10 M未満の親和性(K)で結合し、所定の抗原または密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)との結合の親和性よりも少なくとも2倍大きな親和性で、所定の抗原と結合する。
【0128】
用語「Koff」は、本明細書において使用するとき、抗体/抗原複合体から抗体の解離の解離速度定数を意味することを意図している。
【0129】
用語「EC50」は、本明細書において使用するとき、インビトロまたはインビボアッセイのいずれかにおいて、最大応答の50%、すなわち最大応答とベースラインの半分である応答を誘導する抗体またはその抗原結合部分の濃度を意味する。
【0130】
本明細書において使用するとき、「グリコシル化パターン」は、タンパク質、より具体的には免疫グロブリンタンパク質に共有結合している糖ユニットのパターンとして定義される。
【0131】
物に対して適用される用語「天然に生じる」は、本明細書において使用するとき、物が天然で見られるという事実を意味する。例えば生物(ウイルスを含む)中に存在し、天然源から単離され、研究室で人工的に意図的に修飾されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に生じている。
【0132】
用語「再配列」は、本明細書において使用するとき、Vセグメントが完全VまたはVドメインをそれぞれ本質的にコードするコンホメーションにおけるD−JまたはJセグメントとVセグメントがすぐ隣に隣接している重鎖または軽鎖免疫グロブリン座の立体配置を意味する。再配列された免疫グロブリン遺伝子座は、生殖系列DNAとの比較によって同定でき;再配列された座は少なくとも1個の組換えヘプタマー/ノナマー相同要素を有する。
【0133】
Vセグメントに関する用語「非再配列」または「生殖系列免疫立体配置」は、本明細書において使用するとき、VセグメントがDまたはJセグメントのすぐ隣であるように組み換えられていない立体配置を意味する。
【0134】
用語「修飾された」または「修飾」は、本明細書において使用するとき、抗体における1個以上のアミノ酸が変化していることを意味する。変化は1個以上の位置でのアミノ酸の付加、置換または欠失によって作製されてよい。変化は既知の技術、例えばPCR突然変異誘発を用いて作製できる。例えばいくつかの態様において、本発明の方法で使用される抗体は、修飾されて、BMP9またはBMP10に対する抗体の結合親和性が修飾されていてよい。
【0135】
本発明はまた、本発明の方法で使用する抗体の配列における「保存的アミノ酸置換」、すなわちヌクレオチド配列によってコードされるかまたはそのアミノ酸配列を含む抗体の、抗原、すなわちBMP9またはBMP10との結合を抑制することのないヌクレオチドおよびアミノ酸配列修飾を含む。保存的アミノ酸置換は、あるクラスのアミノ酸を同じくラスのアミノ酸で置換することを含み、ここでクラスは、共通の物理化学的アミノ酸側鎖特性および例えば標準的なDayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスによって測定したとき天然で見られる同種タンパク質における高い置換頻度によって定義される。アミノ酸側鎖の6種の一般的クラスが分類されており、次のものを含む:クラスI(Cys);クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly);クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu);クラスIV(His、Arg、Lys);クラスV(Ile、Leu、Val、Met);およびクラスVI(Phe、Tyr、Trp)。例えば、Aspの他のクラスIII残基、例えばAsn、Glnまたは Gluへの置換は保存的置換である。したがって、本発明の抗BMP9またはBMP10抗体における予測される非必須アミノ酸残基は、このましくは同じクラスの別のアミノ酸残基で置換されている。抗原結合性を失わないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当該技術分野において周知である(例えばBrummell et al., Biochem. 32:1180-1187(1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884(1999);およびBurks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:.412-417(1997)参照)。
【0136】
用語「非保存的アミノ酸置換」は、あるクラスのアミノ酸を別のクラスのアミノ酸で置換することを意味し;例えばクラスII残基であるAlaをAsp、Asn、GluまたはGlnのようなクラスIII残基で置換することを意味する。
【0137】
あるいは他の態様において、変異(保存的または非保存的)は、例えば飽和突然変異誘発によって、抗BMP9またはBMP10抗体コード配列の全てまたは一部に沿ってランダムに導入してもよく、得られる修飾された抗BMP9またはBMP10抗体を結合活性についてスクリーニングしてよい。
【0138】
「コンセンサス配列」は、関連配列のファミリーにおいて最も頻繁に生じるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列である(例えばWinnaker, From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft, Weinheim, Germany 1987)参照)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列の各位置は、ファミリーにおいてその位置で最も頻繁に生じるアミノ酸によって占められる。2種のアミノ酸が等しく頻繁に生じる場合、コンセンサス配列においていずれかが含まれうる。免疫グロブリンの「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を意味する。
【0139】
ii.操作および修飾された抗体
本発明の抗体は、出発物質としてVおよび/またはV配列の1個以上を有する抗体を用いて、出発抗体と異なる特性を有しうる修飾された抗体を製造し、改変できる。抗体は、例えば1個以上のCDR領域および/または1個以上のフレームワーク領域内の1個または両方の可変領域(すなわちVおよび/またはV)内の1個以上の残基を修飾して、改変できる。さらにまたは別に、定常領域の残基を修飾して抗体を改変して、例えば抗体のエフェクター機能を変化させてもよい。
【0140】
行いうる可変領域改変の一つのタイプは、CDR移植である。抗体は、主として6個の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は多くの抗体−抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワークに移植した特定の天然に生じる抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に生じる抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現できる(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad参照。 U.S.A. 86:10029-10033;米国特許5,225,539および米国特許5,530,101; 5,585,089; 5,693,762および6,180,370参照)。
【0141】
フレームワーク配列は、公表されているDNAデータベースまたは公表されている生殖系列抗体遺伝子配列を含む文献から得られる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子についての生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットwww.mrc- cpe.cam.ac.uk/vbaseで閲覧可能)ならびにKabat、E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. Mol. Biol. 227:776-798; および Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836で見られる(それぞれの内容を明示的に参照により本明細書に組み込む)。
【0142】
CDR1、2および3配列ならびにV CDR1、2および3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同一の配列を有するフレームワークに移植でき、あるいは該CDR配列は、生殖系列配列と比較して1個以上の変異を含むフレームワーク領域に移植できる。例えば、ある例において、抗体の抗原結合能を維持しあるいは向上させるためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有利であることが知られている(例えば米国特許5,530,101; 5,585,089; 5,693,762および6,180,370参照)。
【0143】
CDRはまた、免疫グロブリンドメイン以外のポリペプチドのフレームワーク領域に移植してもよい。適切なスキャフォールドは、局在化された表面を形成し、目的の標的(例えばBMP9またはBMP10)と結合するように、移植された残基を提示する、コンホメーション的に安定なフレームワークを形成する。例えば、CDRは、フレームワーク領域がフィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルジノスタイン(neocarzinostain)、シトクロームb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI−D1、Zドメインまたはテンドラミサット(tendramisat)に基づくスキャフォールドに移植できる(例えばNygren and Uhlen, 1997 Current Opinion in Structural Biology, 7, 463-469参照)。
【0144】
別のタイプの可変領域修飾は、Vおよび/またはV CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって目的の抗体の1個以上の結合特性(例えば親和性)を改善することである(「親和性変異」と知られる)。部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発を行って変異を導入して、本明細書に記載のインビトロまたはインビボアッセイで抗体結合または他の興味のある機能的特性に対する影響を評価してもよい。保存的修飾を導入してもよい。変異はアミノ酸置換、付加または欠失であってよい。さらには、典型的にはCDR領域内の1、2、3、4または5個以下の残基が変化する。
【0145】
本発明の操作された抗体は、例えば抗体の特性を改善するため、Vおよび/またはV内のフレームワーク残基に修飾を行ったものを含む。典型的にはかかるフレームワーク修飾は、抗体の免疫源性を低下させるために行う。例えば、一つのアプローチは、対応する生殖系列配列への1個以上のフレームワーク残基の「戻し変異」である。より具体的には、体細胞変異を行った抗体は、当該抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含みうる。かかる残基は抗体フレームワーク配列と当該抗体が由来する生殖系列配列を比較して同定できる。フレームワーク領域配列をその生殖系列立体配置に戻すため、例えば部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発によって、体細胞変異を生殖系列配列に「戻し変異」できる。かかる「戻し変異」された抗体も本発明に含まれる。
【0146】
別のタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内または1個以上のCDR領域内の1個以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それによって潜在的な抗体の免疫源性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも称され、Carrらの米国特許公開20030153043により詳細に記載されている。
【0147】
フレームワークまたはCDR領域に行う修飾に加えてまたはそれとは別に、本発明の抗体は、典型的には抗体の1個以上の機能的特性、例えば血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合および/または抗原依存的細胞傷害性を変化させるため、Fc領域内の修飾を含むように操作してよい。さらにまた、本発明の抗体は、化学的に修飾されてよく(例えば1個以上の化学部分が抗体に結合されてよい)、あるいは再度抗体の1個以上の機能的特性を変化させるため、その糖修飾を修飾してよい。
【0148】
一つの態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基数が変化、例えば増加または減少するように修飾される。このアプローチはBodmerらによる米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基数は、例えば軽鎖および重鎖のアセンブリを促進させるため、あるいは抗体の安定性を上昇または低下させるために変化される。
【0149】
他の態様において、抗体のFcヒンジ領域を変異させて該抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、抗体が天然FcヒンジドメインSpA結合と比較してブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を損なうように、1個以上のアミノ酸変異をFcヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン界面領域に導入する。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0150】
他の態様において、抗体を修飾してその生物学的半減期を増加させる。多様なアプローチが可能である。例えば米国特許6,277,375は、インビボでの半減期を延長するためにIgGに下記変異を導入することを記載している:T252L、T254S、T256F。あるいは生物学的半減期を増加させるために、Prestaらによる米国特許5,869,046および6,121,022に記載のとおり、CH1またはCL領域内でIgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから得たサルベージレセプター結合エピトープを含むように抗体は変化されうる。
【0151】
さらに別の態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変化させるために、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換して変化される。例えば、1個以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対する異なる親和性を有するが親抗体の抗原結合能を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換されうる。親和性を変化させるエフェクターリガンドは、例えばFcレセプターまたは補体のC1成分であり得る。このアプローチはWinterらによる米国特許5,624,821および5,648,260にさらに詳細に記載されている。
【0152】
他の態様において、抗体が異なるC1q結合を有しおよび/または補体依存的細胞傷害性(CDC)が低下もしくは消滅するように、アミノ酸残基から選択される1個以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸残基で置換されうる。このアプローチはIdosugieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
【0153】
他の態様において、1個以上のアミノ酸残基を変化させて、抗体の補体に結合する能力を変化させる。このアプローチはBodmerらによるWO 94/29351にさらに記載されている。
【0154】
さらに別の態様において、Fc領域を修飾して抗体依存的細胞傷害性(ADCC)を仲介する抗体の能力を上昇させ、そして/または1個以上のアミノ酸を修飾してFcγレセプターに対する抗体の親和性を上昇させる。このアプローチは、PrestaによるWO 00/42072にさらに記載されている。さらにまた、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位はマッピングされており、改善された結合性を有する変異体が記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604参照)。
【0155】
さらに別の態様において、抗体の糖修飾は修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作成してよい(すなわち抗体は糖修飾を欠く)。糖修飾は、例えば抗原に対する抗体の親和性を上昇させるために、変化されてよい。かかる糖修飾は、例えば抗体配列中の1個以上の糖修飾部位を変化させることによって行われうる。例えば、1個以上の可変領域フレームワーク糖修飾部位の削除をもたらし、それによってその部位での糖修飾を排除する、1個以上のアミノ酸置換が行われうる。かかる非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を上昇させうる。かかるアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0156】
さらにまたはあるいは、変化した糖修飾のタイプを有する抗体、例えばフコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体または二分GlcNac構造が増加した抗体を作成してよい。かかる変化した糖修飾パターンは、抗体のADCC能を上昇することが示されている。かかる糖修飾は、例えば変化した糖修飾機構を有する宿主細胞内で抗体を発現させることによって行いうる。変化した糖修飾機構を有する細胞は、当該技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現し、それによって変化した糖修飾を有する組換え抗体を発現する宿主細胞として使用できる。例えば、HangらによるEP 1,176,195は、細胞系で発現される抗体が低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊されている細胞系を記載している。PrestaによるPCT公開公報WO 03/035835は、Asn(297)結合糖にフコースを結合させる能力が低下し、また宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化をもたらすCHO細胞系変異体であるLecl3細胞を記載している(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。UmanaらによるWO 99/54342は、細胞系で発現される抗体が増加した二分GlcNac構造を示し、該抗体の増加したADCC活性をもたらすように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えばベータ(1,4))−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GntIII))を発現するように操作された細胞系を記載している(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。
【0157】
本明細書において、本発明が意図する本抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体をペグ化して、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を上昇させることができる。抗体をペグ化するため、抗体またはそのフラグメントは、典型的にはポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1個以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントに結合するような条件下で、反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(または同様の反応性水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応またはアルキル化反応によって実施できる。本明細書において使用するとき、用語「ポリエチレングリコール」は他のタンパク質を誘導体化するために使用されているあらゆる形態のPEG、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを含む。ある態様において、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は、当該技術分野において既知であり、本発明の抗体に適用できる。例えば、NishimuraらによるEP 0 154 316およびIshikawaらによるEP 0 401 384を参照されたい。
【0158】
さらに、ペグ化は、本発明のBMP9またはBMP10結合ポリペプチドの任意の部分における非天然アミノ酸の導入によって得られる。特定の非天然アミノ酸は、Deiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783, 2003; Wang and Schultz, Science 301:964-967, 2003; Wang et al., Science 292:498-500, 2001; Zhang et al., Science 303:371-373, 2004または米国特許7,083,970に記載の技術によって導入できる。簡潔には、これらの発現系のいくつかが部位特異的突然変異誘発に参加して、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーティングフレームにアンバーTAGのような非センスコドンを導入する。次いで導入された非センスコドンに特異的なtRNAを利用できる宿主にかかる発現ベクターを導入して、選択した非天然アミノ酸を補給する。本発明のポリペプチドと物質を複合化する目的で有利である具体的な非天然アミノ酸は、アセチレンおよびアジド側鎖を有するものを含む。これらの新規アミノ酸を含むポリペプチドは、次いで、タンパク質の選択した位置でペグ化されうる。
【0159】
iii.抗体フラグメントおよび抗体模倣物
本発明は伝統的な抗体に限定されず、抗体フラグメントおよび抗体模倣物の使用によって実施されてもよい。以下に詳述するとおり、いまや広範な抗体フラグメントおよび抗体模倣技術が開発されており、広く当該技術分野において知られている。ドメイン抗体、ナノボディおよびユニボディのような多数のこれらの技術は伝統的な抗体構造のフラグメントまたは他の修飾物の用途を作製するが、アドネクチン、アフィボディ、DARPins、アンチカリン、アビマーおよびヴァーサボディのような、結合構造を用いる他の技術も存在し、一方でそれらは伝統的な抗体結合を模倣し、異なるメカニズムで作製され、機能する。これらの別の構造のいくつかは、Gill and Damle (2006) 17: 653-658において概説されている。
【0160】
ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最小の機能的結合ユニットであり、ヒト抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)のいずれかの可変領域に対応する。ドメイン抗体は約13 kDaの分子量を有する。Domantisは、完全ヒトVHおよびVL dAbの巨大で高度に機能的なライブラリーのシリーズを開発しており(各ライブラリーに100億以上の異なる配列)、これらのライブラリーを使用して治療標的に特異的なdAbを選択している。多くの常套の抗体とは異なって、ドメイン抗体は、細菌、酵母および哺乳類細胞系で十分に発現される。ドメイン抗体およびその製造方法についてのさらなる詳細は、米国特許6,291,158; 6,582,915; 6,593,081; 6,172,197; 6,696,245; US 2004/0110941; EP 1433846、EP 0368684および0616640; WO 05/035572、WO 04/101790、WO 04/081026、WO 04/058821、WO 04/003019およびWO 03/002609に記載されており、その各々を全体において参照により本明細書に組み込む。
【0161】
ナノボディは、天然の重鎖抗体の特有の構造特性および機能特性を有する抗体由来の治療用タンパク質である。これらの重鎖抗体は、1個の可変ドメイン(VHH)および2個の定常ドメイン(CH2およびCH3)を有する。重要なことには、クローニングされて単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能力を有する完全に安定なポリペプチドである。ナノボディはヒト抗体のVHドメインと高い相同性を有し、活性のいずれの損失も伴うことなくさらにヒト化されうる。重要なことには、ナノボディは低い免疫原性を有し、これはナノボディリード化合物による霊長類試験において確認されている。
【0162】
ナノボディは、従来の抗体の利点と低分子薬物の重要な特徴とを組み合わせる。従来の抗体と同様に、ナノボディは、高い標的特異性、標的への高い親和性ならびに低い固有の毒性を示す。しかし、低分子薬物と同様に、それらは酵素を阻害でき、レセプターの間隙に容易にアクセスできる。さらに、ナノボディは極めて安定であり、注射以外の方法により投与することができ(例えばWO 04/041867を参照、その全体において参照により本明細書に組み込む)、製造が容易である。ナノボディの他の利点は、その小さいサイズに起因する稀であるかまたは隠れたエピトープの認識、それら特有の3次元構造に起因するタンパク質標的の空洞または活性部位への高親和性および選択的な結合、薬物形態の柔軟性、半減期の調整、ならびに薬物発見の容易さおよび速度を含む。
【0163】
ナノボディは単一の遺伝子によってコードされており、ほぼ全ての原核生物宿主および真核生物宿主、例えば、大腸菌(例えばUS 6,765,087を参照、その全体において参照により本明細書に組み込む)、カビ(例えば、アスペルギルスまたはトリコデルマ)および酵母(例えば、サッカロマイセス、クリベロマイセス、ハンゼヌラまたはピキア)(例えばUS 6,838,254を参照、その全体において参照により本明細書に組み込む)において効率的に産生される。産生プロセスは自在に拡大縮小でき、数キログラムの量のナノボディが産生される。ナノボディは従来の抗体と比較して優れた安定性を示すため、長い保存期間を有する即時使用の溶液として製剤されてよい。
【0164】
ナノクローン(Nanoclone)法(WO 06/079372を参照、その全体において参照により本明細書に組み込む)は、所望の標的に対するナノボディを作製するための、B細胞の自動化ハイスループット選別に基づく特許方法であり、本発明に関連して使用できる。
【0165】
ユニボディ(UniBody)は、IgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づく、別の抗体フラグメント技術である。ヒンジ領域の除去により、従来のIgG4抗体の本質的に半分のサイズであって、2価の結合領域よりむしろ1価の結合領域を有する分子が得られる。IgG4抗体が不活性であり、したがって免疫系と相互作用しないことは周知であり、これは免疫応答が望まれない疾患の処置に有利であり得るが、この利点はユニボディに引き継がれる。例えばユニボディは、それが結合する細胞を阻害またはサイレンシングするために機能しうるが、殺さない。さらに、がん細胞に結合するユニボディは、増殖を刺激しない。さらに、ユニボディは従来のIgG4抗体の約半分のサイズであるため、より大きな固形腫瘍全体によりよく分布し、有利な効果の可能性を示し得る。ユニボディは完全なIgG4抗体と同様の速度で体から排出され、完全な抗体と同様の親和性で抗原と結合できる。ユニボディに関するさらなる詳細はWO 2007/059782を参照することにより得られ、この全体を参照により本明細書に組み込む。
【0166】
アドネクチン分子は、フィブロネクチンタンパク質の1個以上のドメインに由来する操作された結合タンパク質である。フィブロネクチンは人体に天然で存在する。それは不溶性糖タンパク質ダイマーとして細胞外マトリックス中に存在し、リンカータンパク質としても作用する。それはまた、ジスルフィド結合されたダイマーとして血漿中に可溶形態でも存在する。フィブロネクチンの血漿形態は、肝臓の細胞(肝細胞)によって合成され、ECM形態は軟骨細胞、マクロファージ、内皮細胞、線維芽細胞および上皮のいくつかの細胞によって作製される(Ward M., and Marcey, D., callutheran.edu/Academic_Programs/Departments/BioDev/omm/fibro/fibro.htm参照)。既に述べたとおり、フィブロネクチンは天然で細胞接着分子として機能し、あるいは細胞外マトリックスにおける接触を作ることにより細胞の相互作用を仲介しうる。典型的には、フィブロネクチンは3個の異なるタンパク質モジュール、タイプI、タイプIIおよびタイプIIIモジュールからなる。フィブロネクチンの構造および機能の概要について、Pankov and Yamada (2002) J Cell Sci. ;115 (Pt 20):3861-3, Hohenester and Engel (2002) 21:115-128およびLucena et al. (2007) Invest Clin.48:249-262を参照されたい。
【0167】
好ましい態様において、アドネクチン分子は、フィブロネクチンタイプIIIドメインに由来し、2個のベータシートの間に分散した複数のベータストランドからなる天然タンパク質を変化させる。元の組織に依存して、フィブロネクチンは、例えばFn3、Fn3、Fn3などと称される複数のタイプIIIドメインを含みうる。10Fn3ドメインはインテグリン結合モチーフを含み、ベータストランドを結合する3個のループをさらに含む。これらのループはIgG重鎖の抗原結合ループに対応するものと考えることができ、そしてそれらは、目的の標的、例えばBMP9またはBMP10と特異的に結合するために下記の方法によって変更されていてよい。好ましくは、本発明の目的に有用なフィブロネクチンタイプIIIドメインは、Protein Data Bank(PDB、rcsb.org/pdb/home/home.do)から受託コード:1ttgでアクセスできるフィブロネクチンタイプIII分子の構造をコードする配列と、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を示す配列である。アドネクチン分子はまた、単純モノマー10Fn3構造よりも10Fn3関連分子のポリマーに由来していてもよい。
【0168】
天然10Fn3ドメインは典型的にはインテグリンと結合するが、アドネクチン分子となるために採用される10Fn3タンパク質は、目的の抗原、例えばBMP9またはBMP10と結合するように変形される。一つの態様において、10Fn3分子への変形は、ベータストランドへの少なくとも1個の変異を含む。好ましい態様において、10Fn3分子のベータストランドを結合するループ領域が、目的の抗原、例えばBMP9またはBMP10と結合するために、変形される。
【0169】
10Fn3における変形は、誤りがちなPCR、部位特異的突然変異誘発、DNAシャッフルまたは本明細書に記載の組換え突然変異の他のタイプを含むがこれらに限定されないいずれかの既知の方法によって、行いうる。一つの例において、10Fn3配列をコードするDNAの変異体は、インビトロで直接合成し、あるいはインビトロまたはインビボで後に転写および翻訳されてもよい。あるいは、天然10Fn3配列は、標準的な方法を用いて(例えば米国特許出願20070082365で実施の通りに)、ゲノムから単離またはクローン化してよく、次いで当該技術分野において既知の突然変異誘発法を用いて変異してよい。
【0170】
一つの態様において、標的タンパク質、例えばBMP9またはBMP10は、固体支持体、例えばカラム樹脂またはマイクロタイタープレートのウェルに固定化されていてもよい。ついて標的を潜在的結合タンパク質のライブラリーと接触させる。ライブラリーは、10Fn3配列の突然変異誘発/ランダム化または10Fn3ループ領域(ベータストランドではない)の突然変異誘発/ランダム化によって、野生型10Fn3に由来する10Fn3クローンまたはアドネクチン分子を含みうる。好ましい態様において、ライブラリーは、Szostakらの米国出願09/007,005および09/247,190; SzostakらのWO989/31700;ならびにRoberts & Szostak (1997) 94:12297-12302に記載の技術によって作製したRNA−タンパク質融合体ライブラリーであってもよい。ライブラリーはDNA−タンパク質ライブラリーであってもよい(例えばLohseの米国出願60/110,549、米国出願09/459,190、およびWO 00/32823に記載のとおり)。次いで融合体ライブラリーを免疫化標的(例えばBMP9またはBMP10)とインキュベートし、固体支持体を洗浄して、非特異的結合物質を除去する。次いでストリンジェントな条件下で緊密なバインダーを溶出し、PCRを用いて遺伝子情報を増幅し、このプロセスを反復するために(さらなる突然変異ありまたはなしで)、結合分子の新たなライブラリーを作製する。選択/突然変異プロセスは、標的に対する十分な親和性を有するバインダーが得られるまで反復してよい。本発明で使用するアドネクチン分子は、Adnexus, Briston-Myers Squibb社によって使用されるPROfusion(商標)技術を用いて操作できる。PROfusion技術は上記技術に基づいて作製された(例えばRoberts & Szostak (1997) 94:12297-12302)。変化した10Fn3ドメインのライブラリーを作製する方法および本発明で使用できる適切なバインダーを選択する方法は、下記米国特許および特許出願に十分に記載されており、参照により本明細書に組み込む:米国特許7,115,396; 6,818,418; 6,537,749; 6,660,473; 7,195,880; 6,416,950; 6,214,553; 6623926; 6,312,927; 6,602,685; 6,518,018; 6,207,446; 6,258,558; 6,436,665; 6,281,344; 7,270,950; 6,951,725; 6,846,655; 7,078,197; 6,429,300; 7,125,669; 6,537,749; 6,660,473;および米国特許出願20070082365; 20050255548; 20050038229; 20030143616; 20020182597; 20020177158; 20040086980; 20040253612; 20030022236; 20030013160; 20030027194; 20030013110; 20040259155; 20020182687; 20060270604; 20060246059; 20030100004; 20030143616;および20020182597。10Fn3のようなフィブロネクチンタイプIIIドメインの多様性の作製および続く選択段階は、当該技術分野において既知の他の方法、例えばファージディスプレイ、リボソームディスプレイまたは酵母表面ディスプレイ、例えばLipovsek et al.(2007) Journal of Molecular Biology 368: 1024-1041; Sergeeva et al.(2006) Adv Drug Deliv Rev. 58:1622-1654; Petty et al.(2007) Trends Biotechnol. 25: 7-15; Rothe et al.(2006) Expert Opin Biol Ther. 6:177-187; および Hoogenboom (2005) Nat Biotechnol. 23:1105-1116を用いて実施できる。
【0171】
上記文献の方法を用いて、好ましい10Fn3ドメイン以外のタンパク質から抗体模倣物をえることができると当業者は理解すべきである。上記方法によって抗体模倣物を作製するために使用できるさらなる分子は、ヒトフィブロネクチンモジュールFn3〜Fn3および11Fn3〜17Fn3、ならびに非ヒト動物および原核生物由来の関連Fn3分子を含むが、これらに限定されない。さらに、10Fn3と相同な配列を有する他のタンパク質由来のFn3モジュール、例えばテネイシンおよびウンドゥリン(undulin)も使用できる。免疫グロブリン様折り畳みを有する(しかし、Vドメインと関連しない配列を有する)他の例示的タンパク質は、N−カドヘリン、ICAM−2、タイチン、GCSFレセプター、サイトカインレセプター、グリコシダーゼ阻害剤、E−カドヘリンおよび抗生物質色素タンパク質を含む。関連した構造を有するさらなるドメインは、ミエリン膜接着分子P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T細胞抗原受容体、CD1、C2およびVCAM−1のC2およびI−セットドメイン、ミオシン結合タンパク質CのI−セット免疫グロブリン折り畳み、ミオシン結合タンパク質HのI−セット免疫グロブリンド折り畳み、テロキンのI−セット免疫グロブリン折り畳み、テリキン、NCAM、twitchin、neuroglian、成長ホルモン受容体、エリスロポイエチン受容体、プロラクチン受容体、GC−SF受容体、インターフェロンガンマ受容体、βガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、βグルクロニダーゼ、トランスグルタミナーゼに由来しうる。あるいは、1個以上の免疫グロブリン様折り畳みを含むいずれかの他のタンパク質を用いて、アドネクチン様結合部分を作製してもよい。かかるタンパク質は、例えばSCOPプログラムを用いて同定できる(Murzin et al., J. Mol. Biol. 247:536(1995); Lo Conte et al., Nucleic Acids Res. 25:257(2000))。
【0172】
アプタマーは、本発明に含まれる別のタイプの抗体模倣物である。アプタマーは典型的には、特異的分子標的と結合する小さなヌクレオチドポリマーである。アプタマーは一本鎖または二本鎖核酸分子(DNAまたはRNA)であってよいが、DNAベースのアプタマーは多くの場合、二本鎖である。アプタマー核酸の長さは定義されないが、アプタマー分子は多くの場合、15〜40ヌクレオチド長である。
【0173】
アプタマーはしばしば、標的分子に対する親和性を決定する3次元構造の複合体を形成する。アプタマーは、第一義的に、ほぼ完全にインビトロで操作および増幅されうるため、単純な抗体よりも多くの利点を有しうる。さらに、アプタマーは、しばしば免疫応答をほとんどまたは全く誘導しない。
【0174】
アプタマーは多様な技術を用いて作製されるが、元来インビトロ選択(Ellington and Szostak. (1990) Nature. 346 (6287):818-22)およびSELEX法(指数的富化によるリガンドの系統的進化)(Schneider et al. 1992. J Mol Biol. 228 (3):862-9)を用いて開発された(それらの内容を参照により本明細書に組み込む)。アプタマーを作製および使用する他の方法は公表されており、例えばKlussmann. The Aptamer Handbook: Functional Oligonucleotides and Their Applications. ISBN: 978-3-527-31059-3; Ulrich et al. 2006. Comb Chem High Throughput Screen 9 (8):619-32; Cerchia and de Franciscis. 2007. Methods Mol Biol. 361:187-200; Ireson and Kelland. 2006. Mol Cancer Ther. 2006 5 (12):2957-62; 米国特許5582981; 5840867; 5756291; 6261783; 6458559; 5792613; 6111095;および米国特許出願11/482,671; 11/102,428; 11/291,610;および10/627,543を含む(全て参照により本明細書に組み込む)。
【0175】
SELEX法は、明らかに最も有名であり、3つの基礎的段階で実施される。第一に、候補核酸分子のライブラリーが特異的分子標的との結合について選択される。第二に、標的に対する十分な親和性を有する核酸が非バインダーから分離される。第三に、結合核酸を増幅して二次ライブラリーを形成し、このプロセスを反復する。各反復で、標的分子に対してより高い親和性を有するアプタマーが選択される。SELEX法は、下記文献により十分に記載されており、それらを参照により本明細書に組み込む: Bugaut et al. 2006. 4 (22):4082-8; Stoltenburg et al. 2007 Biomol Eng. 2007 24 (4):381-403; and Gopinath. 2007. Anal Bioanal Chem. 2007. 387 (1):171-82。
【0176】
本発明の「アプタマー」はまた、ヌクレオチドに代えてペプチドから作製したアプタマー分子も含む。ペプチドアプタマーは、ヌクレオチドアプタマーと多くの特性を共有し(例えば小さなサイズおよび高い親和性で標的分子と結合する能力)、それらはヌクレオチドアプタマーを作製するために使用したものと同様の原理を有する選択法によって作製できる、例えばBaines and Colas. 2006. Drug Discov Today. 11 (7-8):334-41;およびBickle et al. 2006. Nat Protoc. 1 (3):1066-91(参照により本明細書に組み込む)。
【0177】
アフィボディ分子はブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインの一つに由来する、58アミノ酸残基タンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質の新規クラスを意味する。この3ヘリックスバンドルドメインは、ファージディスプレイ技術を用いて所望の分子を標的とするアフィボディ変異体を選択するコンビナトリアルファージミドライブラリーの構築のためのスキャフォールドとして使用されている(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PA, Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain, Nat Biotechnol 1997;15:772-7. Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PA, Human immunoglobulin A(IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)。アフィボディ分子の単純で強固な構造は、その低分子量(6 kDa)と相まって、広範な利用、例えば検出試薬として(Ronmark J, Hansson M, Nguyen T, et al, Construction and characterization of affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli, J Immunol Methods 2002;261:199-211)および受容体相互作用を阻害するために(Sandstorm K, Xu Z, Forsberg G, Nygren PA, Inhibition of the CD28-CD80 co-stimulation signal by a CD28-binding Affibody ligand developed by combinatorial protein engineering, Protein Eng 2003;16:691-7)好適である。アフィボディおよびその製造法のさらなる詳細は、米国特許5,831,012から得られる(その全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0178】
DARPins(操作されたアンキリン反復タンパク質)は、非抗体ポリペプチドの結合能を利用するために開発されている抗体も放物DRP(操作された反復タンパク質)の一例である。アンキリンまたはロイシンリッチ反復タンパク質のような反復タンパク質は、抗体とは異なり、細胞内および細胞外で生じる偏在結合分子である。それら固有の分子構造は、反復構造単位(反復)を特徴とし、これは一体に積み重なって可変なモジュラー標的結合表面を示す伸長された反復ドメインを形成する。このモジュール性に基づいて、高度に多様化された結合特性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーが作製できる。この戦略は、可変表面残基を提示する自己適合性反復のコンセンサスデザインおよび反復ドメインへのランダムアセンブリを含む。
【0179】
DARPinsは、細菌発現系で極めて高収率に製造でき、既知の最も安定なタンパク質に属する。ヒトレセプター、サイトカイン類、キナーゼ類、ヒトプロテアーゼ、ウイルスおよび膜タンパク質を含む広範な標的タンパク質に対して極めて特異的で、親和性の高いDARPinsが選択される。一桁ナノモル乃至ピコモルの範囲の親和性を有するDARPinsが得られる。
【0180】
DARPinsは広範に、例えばELISA、サンドイッチELISA、フローサイトメトリー分析(FACS)、免疫組織化学(IHC)、チップ利用、アフィニティー精製またはウェスタンブロッティングにおいて利用されている。DARPinsはまた、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合した細胞内マーカータンパク質として、細胞内区画において極めて活性であることが証明された。DARPinsはさらに、pM範囲のIB50でウイルス性物質を阻害するために使用された。DARPinsはタンパク質間相互作用を遮断するだけでなく、酵素を阻害するためにも理想的である。プロテアーゼ、キナーゼおよびトランスポーターは、成功裏に阻害されており、もっとも一般には、アロステリック阻害形態であった。腫瘍における極めて速やかかつ特異的な富化および極めて好ましい腫瘍対血液比のため、DARPinsはインビボ診断または治療アプローチに十分に好適である。
【0181】
DARPinsおよび他のDRP技術に関するさらなる情報は、米国特許出願2004/0132028および国際公開公報WO 02/20565に見ることができる(いずれもそれらの全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0182】
アンチカリンはさらなる抗体模倣技術であるが、この場合、結合特異性はヒト組織およびヒト体液において天然に大量に発現される低分子量タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、インビボで化学的に感受性または不溶性の化合物の生理的輸送および貯蔵と関連した広範な機能を実施するために進化している。リポカリンは、タンパク質の一方の末端で4個のループを支持する高度に保存されたβバレルを含む、強固な内因的構造を有する。これらのループは結合ポケットの入口を形成し、該分子のこの部分におけるコンホメーションの相違は、個々のリポカイン間の結合特異性の変動に寄与する。
【0183】
保存的βシートフレームワークによって支持される超可変ループの全体的構造は免疫グロブリンを想起させるが、リポカリンは、サイズの点で抗体と顕著に異なっており、160〜180アミノ酸の1個のポリペプチド鎖からなり、これは1個の免疫グロブリンドメインよりも顕著に大きい。
【0184】
リポカリンはクローン化され、そのループはアンチカリンを作製するために操作される。構造的に多様なアンチカリンのライブラリーが作製され、アンチカリンディスプレイは結合機能の選択およびスクリーニングを可能とし、次いで原核生物または真核生物系におけるさらなる分析のために可溶性タンパク質の発現および産生を可能とする。試験により実質的にあらゆるヒト標的タンパク質に特異的なアンチカリンが開発可能であり、単離され、ナノモルまたはそれ以上の範囲の結合親和性が得られることを示すことに成功した。
【0185】
アンチカリンはまた、二重標的タンパク質、所謂デュオカリンとしてフォーマットされていてもよい。デュオカリンは、標準的な製造プロセスを用いて容易に作製される1個のモノマータンパク質における2個の別個の治療標的と結合するが、その2個の結合ドメインの構造的向きとは無関係に標的特異性および親和性を保持する。
【0186】
1個の分子を介した複数標的の調節は、1個以上の原因因子が関与することが知られている疾患において特に有利である。さらに、デュオカリンのような二価または多価結合フォーマットは、シグナル伝達経路に対するアンタゴニスト効果を仲介し、あるいは細胞表面レセプターの結合およびクラスター化を介して向上した内部化効果を誘導するため、疾患における細胞表面分子の標的化における顕著な能力を有する。さらに、デュオカリンの高い内因的安定性はモノマーアンチカリンと同等であり、デュオカリンの柔軟な形成および送達能を提供する。
【0187】
アンチカリンに関するさらなる情報は、米国特許7,250,297および国際公開公報WO 99/16873に見られ、いずれもそれらの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0188】
本発明の文脈において有用な他の抗体模倣技術はアビマーである。アビマーは、ヒト細胞外レセプタードメインの大きなファミリーから、結合および阻害特性を有する複数ドメインタンパク質を作製するインビトロエキソンシャッフルおよびファージディスプレイによって進化される。複数の独立した結合ドメインの結合がアビディティーを作成し、常套の単一エピトープ結合タンパク質と比較して改善された親和性および特異性がもたらされることが示されている。他の潜在的利点は、熱安定性およびプロテアーゼに対する耐性が改善された、大腸菌における複数標的特異性分子の単純かつ効果的な生産を含む。ナノモル未満の親和性を有するアビマーは、多様な標的に対して得られている。
【0189】
アビマーに関するさらなる情報は、米国特許出願2006/0286603、2006/0234299、2006/0223114、2006/0177831、2006/0008844、2005/0221384、2005/0164301、2005/0089932、2005/0053973、2005/0048512、2004/0175756に見られる(全て全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0190】
ヴァーサボディは本発明の文脈において使用できる別の抗体模倣技術である。ヴァーサボディは>15%システインを含む3〜5 kDaの小さなタンパク質であり、典型的なタンパク質が有する疎水性コアに代えて高ジスルフィド密度スキャフォールドを形成する。疎水性コアを含む多数の疎水性アミノ酸の小数のジスルフィドによる置換は、MHC提示に寄与するほとんどの残基が疎水性であるため、より小さな、より親水性の(凝集性および非特異的結合が低い)、よりプロテアーゼおよび熱に耐性であり、T細胞エピトープのより低い密度を有するタンパク質をもたらす。これら4つの特性の全ては免疫原性に影響することが周知であり、一体として、それらは免疫原性のかなりの低下を引き起こすと予測される。
【0191】
ヴァーサボディの着想は、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリおよびアネモネによって産生される、予期しない低い免疫原性を示すことが知られている天然の注射可能な生物医薬から来ている。選択した天然タンパク質ファミリーから出発し、サイズ、疎水性、タンパク質溶解抗原プロセッシングおよびエピトープ密度を設計およびスクリーニングして、天然の注射可能なタンパク質についての平均よりもかなり低いレベルに最小化する。
【0192】
ヴァーサボディの構造を考慮すると、これらの抗体模倣物は、多価、多重特異性、半減期メカニズムの多様シエ、組織標的化モジュールおよび抗体Fc領域の不在を含む、多目的形態を提供する。さらに、ヴァーサボディは大腸菌において高収率で製造され、親水性および小さなサイズのために、ヴァーサボディは可溶性が高く、高濃度で製剤できる。ヴァーサボディは例外的に熱安定であり(煮沸可能である)、延長された保存寿命を提供する。
【0193】
ヴァーサボディに関するさらなる情報は、米国特許出願2007/0191272に見られる(その全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0194】
SMIPs(商標)(小モジュラー免疫医薬−Trubion Pharmaceuticals)は、標的結合、エフェクター機能、インビボ半減期および発現レベルを維持および最適化するために設計された。SMIPSは3個の異なるモジュラードメインからなる。第一に、それらは特異性を与えるいずれかのタンパク質からなっていてよい結合ドメイン(例えば細胞表面レセプター、一本鎖抗体、可溶性タンパク質など)を含む。第二に、それらは結合ドメインとエフェクタードメイン間のフレキシブルリンカーとして作用し、SMIP薬物のマルチマー化の制御を補助する、ヒンジドメインを含む。最後に、SMIPSはFcドメインまたは他の特異的に設計されたタンパク質を含む多様な分子に由来しうるエフェクタードメインを含む。多様な異なる結合ドメイン、ヒンジドメインおよびエフェクタードメインを有するSMIPsの単純な構造を可能とする設計のモジュラー性は、速やかな、カスタマイズ可能な薬物設計を提供する。
【0195】
設計例を含むSMIPsのさらなる情報は、Zhao et al. (2007) Blood 110:2569-77 および下記米国特許出願20050238646; 20050202534; 20050202028; 20050202023; 20050202012; 20050186216; 20050180970;および20050175614に見られる。
【0196】
上記抗体フラグメントおよび抗体模倣技術の詳細な説明は、本明細書の文脈において使用されうる全ての技術の総合的なリストであると意図しているわけではない。例えば、限定されないが、多様なさらなる技術、例えば別のポリペプチドベースの技術、例えばQui et al.、Nature Biotechnology、25 (8) 921-929 (2007)(全体を参照により本明細書に組み込む)に記載の相補性決定領域の融合体ならびに核酸ベースの技術、例えば米国特許5,789,157、5,864,026、5,712,375、5,763,566、6,013,443、6,376,474、6,613,526、6,114,120、6,261,774および6,387,620(全て参照により本明細書に組み込む)に記載のRNAアプタマー技術が本発明との関係で使用されうる。
【0197】
B.免疫複合体
別の局面において、本発明の方法は、BMP9またはBMP10を標的とし、BMP9またはBMP10を阻害またはダウンモジュレートする薬物免疫複合体を使用する。BMP9またはBMP10に標的化されうる薬物は、細胞傷害剤、抗炎症剤、例えばステロイドもしくは非ステロイド炎症剤、または細胞傷害性代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびcis−ジクロロジアミンプラチナム(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)。
【0198】
用語「細胞傷害」または「細胞傷害剤」は、線維性組織に有害な(例えば殺す)あらゆる物質を含む。例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、アントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびプロマイシンならびにそれらのアナログまたはホモログを含む。
【0199】
免疫複合体は、好適な治療薬物と抗体を複合化(例えば化学的結合または組換え発現)して形成できる。好適な薬物は、例えば細胞傷害剤、毒素(例えば細菌、心筋、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素またはそのフラグメント)および/または放射性アイソトープ(すなわち放射性複合体)を含む。使用できる酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを含む。多様な放射性ヌクレオチドが放射性複合化抗体の作製のために利用できる。例えば、212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reを含む。
【0200】
免疫複合体は以下の多様な二重機能性タンパク質結合剤を用いて作成できる:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二重機能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド(glutareldehyde)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)。例えば、リシン免疫毒素(ricin immunotoxin)はVitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載のとおりに調製できる。炭素14標識化1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸 (MX−DTPA)は、抗体に対する放射性核の複合化のための例示的なキレート剤である(例えばWO94/11026参照)。
【0201】
C.低分子阻害剤
他の態様において、本発明の方法で用いるBMP9またはBMP10アンタゴニストは、低分子である。本明細書において使用するとき、用語「低分子」は、当該技術分野の用語であり、約7500未満、約5000未満、約1000未満あるいは約500未満の分子量であり、BMP9またはBMP10活性を阻害する分子を含む。低分子の例は、低分子有機化合物(例えばCane et al. 1998. Science 282:63)および天然産物抽出物ライブラリーを含むが、これらに限定されない。他の態様において、化合物は低分子有機非ペプチド化合物である。抗体のように、これらの低分子阻害剤は間接的または直接的に、BMP9またはBMP10の活性を阻害する。
【0202】
D.核酸/アンチセンス分子
他の態様において、本発明の方法で用いるBMP9またはBMP10アンタゴニストは、BMP9またはBMP10をコードする遺伝子もしくは当該遺伝子の一部と相補的なアンチセンス核酸分子または当該アンチセンス核酸分子をコードする組換え発現ベクターである。本明細書において使用するとき、「アンチセンス」核酸は、あるタンパク質をコードする「センス」核酸、例えば二本鎖cDNA分子のコード鎖、mRNA配列または遺伝子のコード鎖と相補的なヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合しうる。
【0203】
細胞における特定のタンパク質の発現をダウンモジュレートするためのアンチセンス核酸の使用は当該技術分野において周知である(例えばWeintraub, H. et al., Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis, Reviews - Trends in Genetics, Vol. 1 (1) 1986; Askari, F.K. and McDonnell, W.M. (1996) N. Eng. J. Med. 334:316-318; Bennett, M.R. and Schwartz, S.M. (1995) Circulation 92:1981-1993; Mercola, D. and Cohen, J.S. (1995) Cancer Gene Ther. 2:47-59; Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51:217-225; Wagner, R.W. (1994) Nature 372:333-335参照)。アンチセンス核酸分子は別の核酸分子(例えばmRNA配列)のコード鎖と相補的なヌクレオチド配列を含み、したがって他の核酸分子のコード鎖と水素結合できる。mRNAの配列と相補的なアンチセンス配列は、mRNAのコード領域、mRNAの5’もしくは3’非翻訳領域またはコード領域と非翻訳領域を結合する領域(例えば5’非翻訳領域とコード領域の接合部)で見られる配列と相補的であってもよい。さらにまた、アンチセンス核酸は、mRNAをコードする遺伝子の制御領域、例えば転写開始配列または制御因子と配列において相補的であってよい。好ましくは、アンチセンス核酸は、コード鎖またはmRNAの3’非翻訳領域において開始コドンに先行するかまたはそれを橋渡す領域と相補的であるように設計される。
【0204】
アンチセンス核酸は、WatsonとCrickの塩基対則に従って設計できる。アンチセンス核酸分子は、BMP9またはBMP10 mRNAの全コード領域と相補的であり得るが、より好ましくはBMP9またはBMP10 mRNAのコードまたは非コード領域の一部のみとアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、BMP9またはBMP10 mRNAの翻訳開始部位の周囲の領域と相補的であってよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であってよい。アンチセンス核酸は、当該技術分野において既知の方法を用いた化学合成および酵素ライゲーション反応を用いて構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に生じるヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増加しあるいはアンチセンスおよびセンス核酸間で形成される二本鎖の物理的安定性を増加するために多様な修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成してよく、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドが使用できる。アンチセンス核酸を作製するために使用できる修飾ヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンを含む。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローン化されている(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAが目的の標的核酸とアンチセンス方向のものである、以下詳述)発現ベクターを用いて生物学的に作製できる。
【0205】
本発明の方法に使用できるアンチセンス核酸分子は、典型的には、それがBMP9またはBMP10をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズまたは結合して、転写および/または翻訳を阻害することによって発現を阻害するように、対象に投与され、あるいはインサイチュで作製される。ハイブリダイゼーションは、安定な二本差を形成するための常套のヌクレオチド相補性によるものであるか、あるいはDNA二本鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんの主溝における特異的相互作用を介しうる。あるいは、アンチセンス核酸分子を修飾して選択した細胞に標的化し、全身投与してもよい。例えば、全身投与のために、アンチセンス分子は、選択した細胞表面上で発現されるレセプターまたは抗原と特異的に結合するように、細胞表面レセプターまたは抗原と結合するペプチドまたは抗体とアンチセンス核酸分子を結合させて、修飾できる。アンチセンス核酸分子はまた、当該技術分野において周知であり、例えばUS20070111230(参照により全内容を本明細書に組み込む)に記載のベクターを用いて細胞に送達できる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が強いIIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれているベクター構築物が好ましい。
【0206】
さらに別の態様において、本発明の方法で用いるアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子を含んでもよい。α−アノマー核酸分子は、通常のβユニットとは異なって、ストランドが互いに平行に走る相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al. (1987) Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)またはキメラRNA−DNAアナログ(Inoue et al. (1987) FEBS Lett. 215:327-330)を含んでもよい。
【0207】
他の態様において、本発明の方法で用いられるアンチセンス核酸は、RNAiを仲介する化合物である。RNA干渉剤は、BMP9またはBMP10またはそのフラグメントと相同な核酸分子、「低分子干渉RNA」(siRNA)、「低分子ヘアピン」または「低分子ヘアピンRNA」(shRNA)ならびにRNA干渉(RNAi)によって標的遺伝子の発現と干渉または阻害する低分子を含むが、それらに限定されない。RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)を用いてdsRNAと同じ配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する、転写後標的遺伝子サイレンシング技術である(Sharp, P.A. and Zamore, P.D. 287, 2431-2432 (2000); Zamore, P.D., et al. Cell 101, 25-33 (2000). Tuschl, T. et al. Genes Dev. 13, 3191-3197 (1999))。内因性リボヌクレアーゼが長いdsRNAを短い、21または22ヌクレオチド長の、低分子干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれるRNAに切断する場合にこのプロセスが生じる。小さなRNAセグメントは、標的mRNAの分解を仲介する。RNAiの合成のためのキットは、例えばNew England BiolabsおよびAmbionから商業的に入手可能である。一つの態様において、アンチセンスRNAに使用するための上記化学の一つ以上が使用できる。
【0208】
さらに別の態様において、アンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは相補的領域を有する一本鎖核酸、例えばmRNAを切断できるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。したがって、リボザイム(例えばハンマーヘッド型リボザイム(Haselhoff and Gerlach, 1988, Nature 334:585-591に記載))を用いてBMP9またはBMP10 mRNA転写産物を触媒的に切断し、それによってBMP9またはBMP10 mRNAの翻訳を阻害できる。
【0209】
あるいは、遺伝子発現は、BMP9またはBMP10の制御領域(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)と相補的なヌクレオチド配列をターゲティングしてBMP9またはBMP10遺伝子の転写を防止する三重らせん構造を形成することによって阻害されうる。一般に、Helene, C., 1991, Anticancer Drug Des. 6 (6):569-84; Helene, C. et al., 1992, Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36;およびMaher, L.J., 1992, Bioassays 14 (12):807-15参照。
【0210】
E.融合タンパク質およびBMP9またはBMP10由来ペプチド化合物
他の態様において、本発明の方法で用いられるBMP9またはBMP10アンタゴニストは、BMP9またはBMP10アミノ酸配列に由来する融合タンパク質またはペプチド化合物である。特に阻害化合物は、BMP9またはBMP10と融合タンパク質またはペプチド化合物の接触がBMP9またはBMP10と標的分子の相互作用を競合的に阻害するように、BMP9またはBMP10と標的分子(例えばALK1)の相互作用を仲介するBMP9またはBMP10の融合タンパク質またはその一部(またはその模倣物)を含む。かかる融合タンパク質およびペプチド化合物は、当該技術分野において既知の標準的な技術を用いて作製できる。例えば、標準的なペプチド合成技術を用いた化学合成によって作製し、次いでペプチドを細胞に導入するための当該技術分野において既知の多様な方法(例えばリポソーム等)によって細胞に導入できる。
【0211】
本発明の融合タンパク質またはペプチド化合物のインビボ半減期は、ペプチド修飾、例えばN−結合グリコシル化部位をBMP9またはBMP10に付加することまたはBMP9またはBMP10とポリ(エチレングリコール)(PEG、PEG化)を、例えばリシン−モノペグ化によって複合化することによって、改善できる。かかる技術は治療用タンパク質薬物の半減期を延長するために有益であることが明らかにされている。本発明のBMP9またはBMP10のペグ化は、同様の医薬上の利点をもたらすと予測される。
【0212】
さらに、ペグ化は本発明のポリペプチドの任意の部分において、非天然アミノ酸の導入によってなし得る。ある非天然アミノ酸は、Deiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783, 2003; Wang and Schultz, Science 301:964-967, 2003; Wang et al., Science 292:498-500, 2001; Zhang et al., Science 303:371-373, 2004 または米国特許7,083,970に記載の技術によって導入できる。簡潔には、これらの発現系のいくつかは、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームに非センスコドン、例えばアンバーTAGを導入するための部位指定突然変異誘発を含む。次いで、導入した非センスコドンに特異的なtRNAを利用できる宿主にかかる発現ベクターを導入し、選択した非天然アミノ酸を加える。本発明のポリペプチドと組み合わせる分子の目的で有益な、具体的な非天然アミノ酸は、アセチレンおよびアジド側鎖を有するものを含む。これらの新規アミノ酸を含むBMP9またはBMP10ポリペプチドは、タンパク質のこれらの選択位置でペグ化されていてもよい。
【0213】
F.レセプターベースのアンタゴニスト
他の態様において、本発明の方法で用いるBMP9またはBMP10アンタゴニストは、レセプターベースのアンタゴニストである。レセプターベースのアンタゴニストは、BMP9またはBMP10(またはその一部)とそれぞれ結合し、BMP9および/またはBMP10の活性および/または機能を乱す、可溶性BMP9およびBMP10を含む。具体的な態様において、レセプターベースのアンタゴニストは、可溶性ALK1またはセリン/スレオニンキナーゼレセプターを含むがこれらに限定されない。
【0214】
V.キット
本発明はまた、対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価するためのキットも提供する。このキットは、次の一つ以上を含む:BMP9および/またはBMP10を検出できる検出可能な部分、例えば抗体またはPCRプローブ、染色のためにサンプルを得るおよび/または調製するための試薬、ならびに使用のための指示書。
【0215】
本発明のキットは、所望により、本発明の方法を実施するのに有用なさらなる成分を含んでいてもよい。例えば、キットは、相補的核酸のアニーリングまたは抗体とそれと特異的に結合するタンパク質の結合に好適な液体(例えばSSCバッファー)、1個以上のサンプル区画、本発明の方法の実施を説明する指示書、ならびに組織特異的コントロール/標準を含んでいてもよい。
【0216】
本発明は下記実施例によってさらに説明されるが、これはさらなる限定を構成すべきでない。
【実施例1】
【0217】
実施例1
表現型スクリーニングにおける線維症の指標として、したがって線維性障害を処置しうる潜在的治療標的として、BMP9およびBMP10が同定された。この実験は、384ウェルプレートフォーマットで3連で行った。簡潔には、予測される分泌タンパク質をコードする約1500のヒトcDNA発現クローンのHek293細胞における逆トランスフェクションを、完全DMEM(Invitrogen)培地中、Fugene 6(Roche)を4:1(Fugene:DNA)の比で用いて実施した。トランスフェクション後、Hek293細胞を24時間洗浄し、分泌タンパク質を富化するためさらに48時間インキュベートした。トランスフェクトしたHek293細胞からの条件培地を、血清の非存在下で24時間飢餓によって同調した3代目ヒト一次皮膚線維芽細胞(Lonza)に移した。線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を96時間後に、高含量イメージングを用いてアルファ平滑筋アクチン(αSMA[Sigma]、線維芽細胞分化の既知のマーカー)の存在について免疫染色して、計測した(図1)。In Cell Analyzer(GE Healthcare)を用いて3つの視野をイメージングし、核あたりのピクセル強度を分化率の物差しとして計算した。
【0218】
線維芽細胞分化に対するBMP9およびBMP10の活性を確認するため、組換えBMP9およびBMP10タンパク質を得て(R&D)、休眠線維芽細胞を刺激するために用いた(図2)。簡潔には、40ng/mlの活性BMP9組換えタンパク質および1000ng/mlの活性BMP10組換えタンパク質(R&D System)を2倍連続希釈し、血清の非存在下で24時間飢餓によって同調した3代目ヒト一次皮膚線維芽細胞を用いた12用量応答実験に使用した。線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を96時間後に、高含量イメージングを用いてアルファ平滑筋アクチンの存在について免疫染色して、計測した。BMP9およびBMP10はそれぞれ約2 ng/mlおよび約125 ng/mlの有効濃度(EC50)で線維芽細胞の分化をポジティブに調節することが示された。さらに、それぞれ10ng/mlおよび250ng/mlのEC90用量で使用した組換えBMP9またはBMP10タンパク質による、線維芽細胞の24〜96時間の処置も、線維症の既知のマーカーのアップレギュレーションを導いた。簡潔には、3代目ヒト一次皮膚線維芽細胞を、血清の非存在下で24時間飢餓によって同調し、次いでBMP9、BMP10または10ng/ml TGFb1で処理した。線維芽細胞を様々な刺激後の時間(24〜96時間)で回収し、qPCRアッセイに使用するためにRNAを調製した(Qiagen)。アルファ平滑筋アクチン、III型コラーゲンおよび軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)を含む既知の線維性マーカーのTGFb、BMP9またはBMP10による調節を測定した(図3〜5)。BMP9およびBMP10はいずれも、アルファ平滑筋アクチン、III型コラーゲンおよび軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質の転写活性を誘導することが示された。
【0219】
実施例2
線維症におけるBMP9の役割をさらに評価するため、レポータージーンアッセイ(RGA)を確立した。具体的には、ホタルルシフェラーゼ遺伝子と融合させたId1プロモーターBMP応答因子(BRE)を用いて、BMP9レポーター構築物(ID-BRE)を作製した。ID-BREで安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞でBMP9 RGAを実施した。HEK293 ID-BRE細胞を5x105細胞/35 mmディッシュで播種した後、1日トランスフェクトした。2日目に、製造業者のプロトコルに従って、Fugene 6(Roche、8μl)を介してHEK293 ID-BRE細胞に構成的に活性なALK1およびGFP(10:1)のDNA構築物2.5 μg をコトランスフェクトした。トランスフェクション効率はGFPの可視化によって測定した。次いで3日目に、トランスフェクトした細胞を1x104細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。4日目に、BMP9を様々な濃度で、BMP9中和抗体または可溶性レセプターALK1−Fcの存在下または非存在下で、96ウェルプレートに加えた。5日目に細胞を収穫し、Bright-Glo Luciferase Assay System(Promega)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0220】
図6に示すとおり、抗BMP9中和抗体および可溶性レセプターALK1−Fcはいずれも、BMP9刺激BREルシフェラーゼ活性を阻害した。
【0221】
実施例3
肝細胞においてBMP9がEMTに対する何らかの効果を有するかを評価するために、上皮間葉移行(EMT)アッセイを実施した。具体的には、10%のFBS、10 U/mlのペニシリンおよび10 U/mlのストレプトマイシンを補ったDMEM−F12中、37℃、5%のCO2を含む湿潤雰囲気で、Hep3B細胞(ATCC)を培養した。2 x 105個のHep3B細胞を24ウェルプレートの各ウェル中完全DMEM−F12に播種した。培地を、10 ng/mlのBMP9(R&D)を含むまたは含まない低血清(1%)培地に置換した。
【0222】
一つの実験において、BMP9ありまたはなしでの処置の24時間後に細胞を固定し、イメージ分析のために固定し、E−カドヘリンおよびα−SMAによる免疫組織化学染色に付した。図6に示す細胞形態学的変化によって示されるとおり、コントロールと比較して、BMP9は、EMTを誘導し、E−カドヘリンを低減し、α−SMAを増加した。
【0223】
定量的PCR分析のために、BMP9処理後48時間で細胞を収穫し、全RNAを抽出し、RT−PCR分析に付した。PCRはABI7700HTで実行した。図8A〜8Dに示すとおり、BMP9は、用量依存的に4種の異なる線維芽細胞マーカー(すなわち、αSMA、Col la1、線維芽細胞特異的タンパク質(FSP−1)およびビメンチン)の発現を誘導した。
【0224】
また、抗BMP9抗体またはALK1−Fcの存在下または非存在下で細胞をBMP9で処理した。処置の48時間後、全線維芽細胞特異的タンパク質(FSP−1)RNAを抽出し、qPCR分析に付した。図9に示すとおり、BMP9中和モノクローナル抗体および可溶性レセプター(ALK1−Fc)はいずれも、BMP9誘導性FSP−1発現を阻害した。
【0225】
均等
当業者は、日常的以下の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の具体的な態様の多くの均等を理解し、または確認できる。かかる均等は、特許請求の範囲に含まれることを意図する。従属請求項に記載の態様のいずれかの組合せは、本発明の範囲に含まれることを意図する。
【0226】
参照による組み込み
本願を通じて言及した全ての文献、特許および公表特許出願の内容、ならびに図面および配列表は、参照により明示的に本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞における線維症を阻害する方法であって、細胞と有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを接触させて細胞における線維症を阻害することを含む、方法。
【請求項2】
細胞が肺細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、皮膚細胞、眼細胞および膵臓細胞からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
対象における線維性障害を処置する方法であって、対象に有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを投与して対象における線維性障害を処置する、方法。
【請求項4】
対象における線維性障害を予防する方法であって、対象に有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを投与して対象における線維性障害を予防する、方法。
【請求項5】
線維性障害が血管線維症、肺線維症、膵臓線維症、肝臓線維症、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症、皮膚線維症、眼線維症、緑内障、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、強皮症、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導された後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症および腫瘍性線維症からなる群から選択される、請求項3または4の方法。
【請求項6】
対象にさらなる治療薬剤を投与することをさらに含む、請求項3〜5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
対象がヒトである、請求項3〜6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
アンタゴニストを対象に静脈内、筋肉内または皮下投与する、請求項3〜7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
BMP9またはBMP10アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリン、BMP9またはBMP10由来ペプチド化合物およびレセプターベースのアンタゴニストからなる群から選択される、請求項3〜8のいずれか1項の方法。
【請求項10】
抗体がマウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびキメラ抗体からなる群から選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
抗体がFab、Fab’2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、ヴァーサボディ、ナノボディおよびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
核酸がRNA干渉剤およびリボザイムからなる群から選択されるアンチセンス分子である、請求項9の方法。
【請求項13】
アンタゴニストが治療薬剤とコンジュゲートした抗体を含む免疫複合体である、請求項3〜8のいずれか1項の方法。
【請求項14】
対象における線維性障害を処置または予防する方法であって、対象に有効量の抗BMP9または抗BMP10抗体を投与することを含み、線維性障害が肝臓線維症、腎臓線維症、心臓線維症、皮膚線維症および肺線維症からなる群から選択され、それによって対象における線維性障害を処置または予防する、方法。
【請求項15】
対象における肝臓線維症を処置または予防する方法であって、対象に有効量の抗BMP9抗体またはレセプターベースのアンタゴニストを投与して対象における肝臓線維症を処置または予防する、方法。
【請求項16】
線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を阻害する方法であって、線維芽細胞と有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを接触させて線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を阻害する、方法。
【請求項17】
BMP9またはBMP10アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリンおよびBMP9またはBMP10由来ペプチド化合物からなる群から選択される、請求項16の方法。
【請求項18】
抗体がマウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびキメラ抗体からなる群から選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
抗体がFab、Fab’2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、ヴァーサボディ、ナノボディおよびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
核酸がRNA干渉剤およびリボザイムからなる群から選択されるアンチセンス分子である、請求項16の方法。
【請求項21】
対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があるかを評価する方法であって:(i)対象由来のサンプルとBMP9またはBMP10を検出可能な試薬を接触させ;そして(ii)BMP9またはBMP10を検出することを含み、ここでコントロールに対して上昇したBMP9またはBMP10レベルが対象が線維性障害を有するかまたは発症する危険があることの指標である、方法。
【請求項22】
アルファ平滑筋アクチン、III型コラーゲン軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、線維芽細胞特異的タンパク質−1、フィブロネクチン、serpinE1、ペリオスチン、IGFBP3、SPARC、CTGF、TGFb、Cyr61およびphospho smad 2/3からなる群から選択されるさらなる線維症マーカーを検出することをさらに含む、請求項21の方法。
【請求項23】
試薬が抗体または核酸である、請求項21の方法。
【請求項24】
試薬が検出可能に標識されている、請求項21の方法。
【請求項25】
標識が放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート剤または酵素からなる群から選択される、請求項24の方法。
【請求項26】
サンプルが対象から得た細胞を含む、請求項21の方法。
【請求項27】
サンプルが対象から得た液体を含む、請求項21の方法。
【請求項28】
液体が血液、リンパ液、婦人科液体、嚢胞液、眼液、尿および腹膜リンスによって回収した液体からなる群から選択される、請求項27の方法。
【請求項29】
BMP9またはBMP10のレベルがコントロールに対して少なくとも2倍高い、請求21の方法。
【請求項30】
BMP9またはBMP10のレベルがコントロールに対して少なくとも3倍高い、請求項21の方法。
【請求項31】
対象における線維性障害を処置する処置レジメンの有効性を評価する方法であって:
a)処置レジメンの少なくも一部を投与する前の対象から得られた第一サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ;
b)処置レジメンの少なくとも一部を投与した後の対象から得られた第二サンプルとBMP9またはBMP10を検出できる試薬を接触させ;そして
c)第一および第二サンプルのBMP9またはBMP10レベルを比較することを含み、
ここで、第二サンプルと比較して第一サンプル中に存在する上昇したレベルのBMP9またはBMP10が、処置レジメンが対象における線維性障害の処置に有効であることの指標である、方法。
【請求項32】
処置レジメンがBMP9またはBMP10アンタゴニストの投与を含む、請求項31の方法。
【請求項33】
BMP9またはBMP10アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリン、BMP9またはBMP10由来ペプチド化合物およびレセプターベースのアンタゴニストからなる群から選択される、請求項32の方法。
【請求項34】
抗体がマウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびキメラ抗体からなる群から選択される、請求項33の方法。
【請求項35】
抗体がFab、Fab’2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、ヴァーサボディ、ナノボディおよびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項33の方法。
【請求項36】
核酸がRNA干渉剤およびリボザイムからなる群から選択されるアンチセンス分子である、請求項32の方法。
【請求項37】
線維性障害が血管線維症、肺線維症、膵臓線維症、肝臓線維症、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症、皮膚線維症、眼線維症、緑内障、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、強皮症、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導される後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症および腫瘍性線維症からなる群から選択される、請求項31〜36のいずれか1項の方法。
【請求項38】
対象における上皮間葉移行(EMT)を阻害または予防する方法であって、対象に有効量のBMP9またはBMP10アンタゴニストを投与して上皮間葉移行(EMT)を阻害または予防する、方法。
【請求項39】
EMTが線維症と関連している、請求項38の方法。
【請求項40】
線維症が血管線維症、肺線維症、膵臓線維症、肝臓線維症、腎線維症、骨格筋線維症、心臓線維症、皮膚線維症、眼線維症、緑内障、全身性進行性硬化症(PSS)、慢性移植片対宿主病、強皮症、ペイロニー病、膀胱鏡後尿道狭窄症、特発性および薬理学的に誘導される後腹膜線維症、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症および腫瘍性線維症からなる群から選択される、請求項39の方法。
【請求項41】
BMP9またはBMP10アンタゴニストが抗体、低分子、核酸、融合タンパク質、アドネクチン、アプタマー、アンチカリン、リポカリン、BMP9またはBMP10由来ペプチド化合物およびレセプターベースのアンタゴニストからなる群から選択される、請求項38の方法。
【請求項42】
抗体がマウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびキメラ抗体からなる群から選択される、請求項41の方法。
【請求項43】
抗体がFab、Fab’2、ScFv、SMIP、アフィボディ、アビマー、ヴァーサボディ、ナノボディおよびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項41の方法。
【請求項44】
核酸がRNA干渉剤およびリボザイムからなる群から選択されるアンチセンス分子である、請求項41の方法。
【請求項45】
対象にさらなる治療薬剤を投与することをさらに含む、請求項38の方法。
【請求項46】
対象がヒトである、請求項38の方法。
【請求項47】
アンタゴニストを対象に静脈内、筋肉内または皮下投与する、請求項38の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−526087(P2012−526087A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509059(P2012−509059)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056298
【国際公開番号】WO2010/128158
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】