説明

締結具

【課題】締結部の剛性を確保でき、しかも過大な荷重が作用した際、部材の破損を防止できる締結具を提供する。
【解決手段】基礎プレート42などの支持部材と、柱51などの結合部材と、を締結する締結具を、支承体11aと緩衝体38aと係留具55などで構成する。支承体11aは、支持部材と結合部材が対向する空間S内の中央に配置され、支持部材に面接触する基本板12と、結合部材に面接触する積載板14と、両板を連結する連結部と、からなる。緩衝体38aは、U字状の板バネなどを用い、支持部材と結合部材が対向する空間S内の外縁に配置され、結合部材などの変位に応じて反力を発生する。係留具55は、結合部材などが木材の場合、その中に埋め込まれて、木材に作用する集中荷重を緩和する。本発明による締結具は、支承体11aで圧縮荷重などを確実に伝達でき、また地震などの際は、緩衝体38aでエネルギーを吸収して部材の破損を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種木造構造において、柱を基礎に据え付ける際や、横架材を柱に締結する際などに用いる締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築は、これまで住宅などの小規模な建物を中心に普及してきたが、近年は大断面の集成材が製造されるようになり、公共施設など、より規模の大きい建物にも導入されるようになった。国内の木造住宅は、土台や柱や梁などを骨格とする木造軸組工法が主流だが、より規模の大きい建物では、大断面の集成材を門形などに組み上げたラーメン構造とすることが多い。この木造ラーメン構造は、基礎と柱や、柱と梁など、部材同士の締結部の剛性を確保することが必要不可欠であり、下記特許文献1のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1は、柱に相当する縦材と梁に相当する横材を、基本金物と付属金物を介して連結するもので、基本金物と付属金物の上下両端には、対になるテーパ部と受部を設けている。そして一方の金物を縦材の側面に取り付けて、他方の金物を横材の端面に取り付けた後、両金物のテーパ部を相手方の受部に差し込むことで、横材が縦材に連結される。この技術は、テーパ部に傾斜面を設けており、両金物が自然に密着するため、締結部の剛性を無理なく確保できる。なお木材の経年変形で金物の取り付けが緩くなると、剛性が低下してラーメン構造が維持できなくなる。そのため両金物は、ラグスクリューを介して部材に固定されている。
【0004】
木材は、外力に対して粘り強さに乏しく、荷重が限度を超えると急速にヒビ割れが発達して、一気に破壊してしまう脆性的な性質がある。また木材は天然由来であり、節の有無や含水量などの様々な要因で強度にバラツキがある。このような木材固有の特徴に対応するため、特許文献2のような技術が提案されており、金属製の弾塑性ダンパーを用いて、柱や梁などの二部材を締結する制振構造が開示されている。この弾塑性ダンパーは、二枚のフランジをウェブで結んだH形で、ウェブに切り欠き部を設けており、ウェブが地震時に弾塑性変形することでエネルギーが吸収され、木材の破損を防止できる。
【0005】
特許文献2に関連する技術として、特許文献3や特許文献4が挙げられる。文献3は、木造柱を柱脚部に据え付ける構造に関する技術で、基礎に埋め込まれて柱を固定するアンカー部材に、振動減衰機能を持たせたことを特徴としている。また文献4は、木構造において地震時の揺れを速やかに減衰できることを目的としており、柱と梁を板バネ状の接合金具で締結していることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−132168号公報
【特許文献2】特開2005−61058号公報
【特許文献3】特開2002−256628号公報
【特許文献4】特開平4−261935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように木材は、脆性的な性質や強度のバラツキなど固有の課題がある。これを解決するには、特許文献2などのように、締結具を弾塑性変形させてエネルギーを吸収する対策が有効である。しかし締結具に柔軟性を与えると剛性が不足して、日常的な荷重変動でも無視できない程度の変形が生じるほか、居住性にも影響を与える恐れがある。そのためラーメン構造で使用する締結具は、剛性を有しながらも、地震時などには柔軟性を発揮して部材のヒビ割れを防止できることが好ましい。
【0008】
また建物が地震に遭遇した際、締結具が塑性変形すると、締結具自体や、締結具と木材との接合部に緩みが生じて、以降の余震では当初の機能を発揮できず、建物が大きく破損する恐れがある。そのため締結具は、過大な荷重が繰り返して作用することにも考慮する必要がある。さらに、余震が収束して建物を補修する際は、その費用や時間を抑制して、居住者に対する負担を軽減すべきである。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、締結部の剛性を確保でき、しかも過大な荷重が作用した際、部材の破損を防止できる締結具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、基礎プレートと柱や、柱と横架材など、隣接する支持部材と結合部材との締結に用い、支持部材と結合部材が対向する空間内に配置する支承体と、該空間内の外縁近傍に複数配置する緩衝体と、前記支承体および前記緩衝体を固定するため支持部材および結合部材の一方または両方に埋め込む係留具と、前記支承体および前記緩衝体を固定するためのボルトと、を備え、前記支承体は、支持部材に面接触する基本板と、結合部材に面接触する積載板と、前記空間の略中央で基本板と積載板を連結する連結部と、からなり、前記緩衝体は、前記空間の変位に応じて反力を発生する弾性を有しており、その一端は基本板または支持部材内の係留具のいずれかに固定して、他端は積載板または結合部材内の係留具のいずれかに固定することを特徴とする締結具である。
【0011】
本発明による締結具は、各種木造構造において、基礎と柱や、柱と横架材など、隣接する二つの部材を一体化するためのもので、部材同士を強固に締結する必要のある木造ラーメン構造での使用を想定している。そして支持部材とは、締結される二つの部材のうち、地盤に近い方を指しており、また結合部材は、支持部材によって空中に支持される方を指している。なお本発明は、柱と横架材のように、いずれも集成材を含む木材同士を締結する場合のほか、基礎と柱のように、コンクリートや鋼材に木材を締結する場合もあるが、コンクリートや鋼材についても、便宜上、支持部材と称するものとする。そして締結される二つの部材の境界では、それぞれの部材の側面または端面が隙間を隔てて対向しており、この空間内に、支承体と緩衝体を挟み込む。
【0012】
支承体は、支持部材に面接触する基本板と、結合部材に面接触する積載板と、基本板と積載板を一体化する連結部と、からなり、全体が金属製で概ねH形の外観であり、二つの部材の境界の中心に一個だけが配置され、結合部材に作用する軸力を支持部材に伝達する機能を有する。なお基本板と積載板のいずれも、ボルトを介して支持部材や結合部材に取り付けられる。そのため両板には、ボルトを挿通するための丸孔が形成してある。
【0013】
連結部は、基本板と積載板との間隔を維持するためのもので、少なくとも、圧縮方向には十分な強度を有することを前提としており、結合部材に作用する軸力を支持部材に伝達する。なお、結合部材に曲げモーメントが作用した場合、積載板がこれに追従して変位できるよう、連結部は屈曲可能な構造であることも前提とする。そのため大断面のブロックなど、屈曲の余地がないものを連結部として使用することはできない。
【0014】
連結部の具体的な構成例としては、基本板と積載板を中央同士を結ぶ単純な板でも構わない。そして、この板の両側面を局地的に切り欠いて、過大な荷重に対する屈曲性を確保する。ただし切り欠きを設けた箇所も、日常的な軸力ではほとんど変位しない強度は必要である。また柱の下部など、通常は圧縮荷重しか作用しない箇所については、連結部を分割可能な構造とすることもできる。
【0015】
緩衝体は、支持部材と結合部材が対向する空間内の外縁近傍に配置するもので、支持部材と結合部材を跨ぐように取り付ける。なお緩衝体は、一箇所の締結部について、最低でも二個は必要であり、支承体の中心を基準として対称形に配置する。したがって締結部が細長い矩形状であれば、支承体の中心を挟み込むように緩衝体を配置することになる。緩衝体は、外力を受けた際、弾性的または塑性的に変形することでエネルギーや変位を吸収して、部材に作用する荷重を緩和する機能を有しており、さらに軸力やせん断力の伝達も担う。なお緩衝体は、日常的な荷重では実質的にラーメン構造と見なせる程度の剛性が必要であり、バネ定数が小さいものは使用できない。
【0016】
緩衝体の具体例としては、鋼板をU字状に屈曲させただけの単純な板バネが挙げられる。この板バネの一方の外側面を支持部材に取り付けて、他方の外側面を結合部材に取り付けると、中間の半円状の部分がバネとして機能する。板バネは、その長さや厚さなどを変えることでバネ定数を変化でき、荷重条件に応じた最適設計が容易である。なお板バネの形状はU字状以外にも、Z字状や筒状など自在に選択できる。そのほか、鋼板に複数の切り抜きを設けて目皿状にしたものなども、緩衝体として使用可能である。
【0017】
緩衝体は、支持部材や結合部材に直接取り付ける場合のほか、支承体の基本板や積載板に取り付けることもできる。基本板や積載板は、支持部材や結合部材と一体化するため、基本板と積載板を跨ぐように緩衝体を取り付けても、その機能は何ら変わらない。ただしこの場合、基本板や積載板は、結合部材の端面形状などと同等の大きさとして、緩衝体を適切に配置できるようにする。
【0018】
係留具は、支承体や緩衝体を部材と強固に一体化するために使用する。支承体や緩衝体には大きな荷重が作用するため、部材との取り付けにも十分な配慮が必要で、強度の面で単純な木ネジなどは使用できない。そこで部材が木材であれば、その中にラグスクリューなどの係留具を配置して、これ介して支承体や緩衝体を取り付ける。係留具の端面には雌ネジが形成されており、この端面に支承体や緩衝体を接触させた後、ボルトを差し込んで締め上げると、支承体や緩衝体は、係留具を介して部材と一体化する。なお係留具の具体例としては、ラグスクリューのほか異形棒鋼などが挙げられる。
【0019】
請求項2記載の発明は、支承体の連結部の構造に関するもので、連結部は、基本板から突出する下アームと、積載板から突出する上アームと、前記下アームおよび前記上アームを貫通して基本板と積載板を揺動自在に軸支するピンと、からなることを特徴とする。
【0020】
下アームまたは上アームのいずれか一方は、所定の間隔を空けて最低でも二個が平行に並んでおり、他方は、これらに噛み合うように配置される。そして一方のアームの間に他方のアームを入り込ませた上、全てのアームを貫通するように円断面のピンを打ち込むと、ピンを介して基本板と積載板が一体化する。なお下アームと上アームのいずれも、ピンを支点として自在に回転できる構造として、基本板と積載板の揺動を実現する。
【0021】
このように構成することで、支承体は、軸力やせん断力の伝達は可能だが、曲げモーメントの伝達は不可能になる。そのため支承体と緩衝体で役割を分離でき、荷重条件に応じてそれぞれを最適に設計できるようになる。なお支承体を横倒しで使用する場合、積載板の上アームをフック状とすることもできる。フック状とは、下から上に向けて係止溝が切り込まれた形状で、係止溝の奥でピンを受け止める。そのため基本板と積載板の分離が容易である。
【0022】
請求項3記載の発明は、緩衝体の具体例に関するもので、緩衝体は、一端側に左ネジを形成して他端側に右ネジを形成したスタッドボルトであり、且つ基本板および積載板の外縁には、該スタッドボルトに螺合する内ネジを備えていることを特徴とする。本発明は、緩衝体としてスタッドボルトを使用したものである。スタッドボルトは、全ネジボルトとも呼ばれ、単純な丸棒に雄ネジを形成したものだが、本発明では、一端側に左ネジを形成してあり、他端側に右ネジを形成してある。当然ながらスタッドボルトは、基本板と積載板を結ぶように配置され、その両端がそれぞれの板に固定される。なおスタッドボルトは、低降伏点鋼など弾塑性変形を引き起こしやすい素材を使用して、本来の機能を発揮させる必要がある。
【0023】
内ネジは、スタッドボルトと螺合する雌ネジであり、基本板と積載板の双方に同心で形成する。スタッドボルトは、左ネジと右ネジが形成してあるため、基本板と積載板のうち、一方の内ネジは左ネジとして、他方の内ネジは右ネジとする。なお内ネジは、単純な雌ネジとすることもできるが、スタッドボルトの組み込みや取り外しのため、内ネジの直径線で分割可能な構造としてもよい。そのほかスタッドボルトの配置方法や使用数などは、自在に決めることができる。
【0024】
請求項4記載の発明も、緩衝体の具体例に関するもので、緩衝体は、両端近傍の側周面にツバ状または溝状の段差部を有するシャフトであり、且つ基本板および積載板の外縁には、該段差部を保持する拘束部を備えていることを特徴とする。本発明は、緩衝体としてシャフト(棒材)を使用しており、基本板と積載板を結ぶように配置する。また段差部は、シャフトを基本板や積載板に取り付けるためのもので、シャフトの側周面からせり出したツバ状、または側周面を削り込んだ溝状の部位であり、端部の近傍に形成する。そして拘束部は、基本板と積載板に設けられ、段差部を嵌め込んで離脱不能に保持する部位である。
【0025】
段差部と拘束部の具体例としては、シャフトの両端にフランジ状の段差部を設けて、基本板と積載板には、段差部が嵌まり込む溝状の拘束部を設ける構成が挙げられる。この構成では、シャフトの組み込みや取り外しを円滑に実施できるよう、拘束部を分割可能とする必要がある。そのほか、シャフトについても、低降伏点鋼など弾塑性変形を引き起こしやすい素材を使用して、本来の機能を発揮させる必要がある。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明のように、締結具を支承体と緩衝体などで構成することで、支持部材と結合部材との間に作用する圧縮荷重は、支承体によって直接的に伝達され、締結部の剛性を確保できる。また結合部材に作用する曲げモーメントは、緩衝体を介して支持部材に伝達されるが、緩衝体は、板バネなどを使用するためバネ定数を大きくしやすく、しかも最低でも二個配置される。そのため日常的な荷重変動による変形は微小であり、締結された支持部材と結合部材は、ラーメン構造とみなすことができる、さらに、地震などで日常とは異なる衝撃荷重が作用した際は、緩衝体の変形によってエネルギーを吸収するため、主幹部材や結合部材に作用する負荷が軽減され、ヒビ割れなどの破損を防止して、建物へのダメージを最小限に抑制する。
【0027】
また衝撃荷重が作用した際も、支承体や緩衝体に塑性変形が生じなければ、その後も性能が劣化することはない。仮に塑性変形が生じた場合でも、その変形によって部材やボルトなどに作用する負荷が軽減され、部材の割れやボルトの緩みなどを防止でき、締結具周辺の強度が低下することはない。しかも余震の収束後に建物を復旧する際は、支承体や緩衝体だけを交換して、柱などをそのまま流用できるため、費用や時間を抑制でき、居住者に対する負担が軽減される。
【0028】
請求項2記載の発明のように、支承体の連結部について、アームやピンを介在させて基本板や積載板を揺動可能な構造とすることで、支承体は、曲げモーメントの伝達を担うことができなくなる。そのため支承体と緩衝体の機能分担が明確になり、荷重条件に応じて双方を最適に設計可能になり、十分な剛性を確保した上で、地震などの際には確実に柔軟性を発揮できるようになる。また積載板が自在に揺動するため、衝撃荷重を受けた際も連結部が塑性変形することはなく、その後の補修は、緩衝体だけを交換すればよい。
【0029】
請求項3記載の発明のように、緩衝体としてスタッドボルトを使用して、その素材や断面積を変化させることで、荷重に対する挙動を自在に調整可能で、使用箇所の状況に応じた最適な締結具を提供できる。また請求項4記載の発明のように、緩衝体としてシャフトを使用した場合も、その素材や断面積を変化させることで、同様の効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による締結具の形状例とその使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1の支承体の詳細形状を示す斜視図である。
【図3】図1の締結具を用いて基礎プレートと柱を締結した状態の縦断面図である。
【図4】図1の締結具を用いて柱と横架材を据え付けた状態の縦断面図である。
【図5】支承体の形状例を示す斜視図で、基本板と積載板の間を中板で結んでいる。
【図6】支承体の形状例を示す斜視図で、基本板と積載板の間に凹面と軸棒を介在させている。
【図7】締結具全体の形状例を示す斜視図である。
【図8】大断面の柱を据え付けるために用いる締結具の形状例を示す斜視図である。
【図9】大断面の柱を据え付けるために用いる支承体の形状例を示す斜視図である。
【図10】本発明による締結具を用いて、柱の側面に横架材を据え付ける形態を示す斜視図であり、緩衝体としてU字状の板バネを使用している。
【図11】図10の最終形態を示す斜視図である。
【図12】本発明による締結具を用いて、柱の側面に横架材を据え付ける形態を示す斜視図であり、緩衝体として目皿状のものを使用している。
【図13】図12の最終形態を示す斜視図である。
【図14】締結具全体の形状例を示す斜視図であり、緩衝体としてスタッドボルトを使用している。
【図15】図14の締結具を用いて基礎と柱を締結した状態の縦断面図である。
【図16】締結具全体の形状例を示す斜視図であり、緩衝体としてシャフトを使用している。
【図17】大断面の柱を据え付けるために用いる締結具の形状例を示す斜視図であり、緩衝体としてプレート状のものを使用している。
【図18】図17の最終形態を示す斜視図である。
【図19】大断面の柱を据え付けるために用いる締結具の形状例を示す斜視図であり、緩衝体として目皿状のものを使用している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による締結具の形状例とその使用状態を示している。この図では、基礎41に柱51を据え付けるために締結具を使用しているが、柱51をコンクリート製の基礎41に直結する訳ではなく、その間に金属製の基礎プレート42を介在させている。したがって基礎プレート42は、柱51を据え付けるための支持部材に相当しており、基礎41に埋め込まれたアンカーボルト45にナット46を螺合して、基礎41の上面に固定している。なお基礎プレート42の表面には、締結具を取り付けるため、所定の位置に複数の雌ネジ47を形成してある。
【0032】
基礎プレート42に締結される柱51は、結合部材に相当しており、直立した状態で固定される。柱51は集成材を細長断面に加工したもので、その下端面には、締結具を取り付けるため四個の係留具をねじ込んでいる。係留具は一般にラグスクリュー55と呼ばれるもので、円柱状の金属で側周面に螺旋状の凸条56を形成してあり、さらに下端面に雌ネジ57を形成してある。なお柱51の下面には、ラグスクリュー55をねじ込むための下穴53が加工してある。
【0033】
締結具は、柱51の横断面形状に応じた細長の構成で、中央に支承体11aが位置しており、その両側を緩衝体38aで取り囲んでいる。支承体11aは、基礎プレート42に接触する基本板12と、柱51に接触する積載板14と、を連結部で一体化した構造で、全体が金属製であり、柱51に作用する軸力やせん断力を基礎41に伝達する。なお基本板12や積載板14の表面には丸孔13を形成してあり、ここから基礎プレート42やラグスクリュー55の雌ネジ47、57に向けてボルト54を差し込むと、基礎プレート42と柱51が支承体11aを介して一体化する。
【0034】
支承体11aの連結部は、下アーム21と上アーム23とピン22で構成される。基本板12の上面から延びる下アーム21は、間隔を空けて二個が平行に並んでいる。また積載板14の下面から延びる上アーム23は、二個の下アーム21の間に入り込む。さらに下アーム21と上アーム23のそれぞれの先端付近を貫通するようにピン22が差し込まれており、各アーム21、23は、ピン22を支点として自在に揺動可能に連結される。したがって、基礎プレート42と柱51を支承体11aだけで一体化して、柱51の幅広の側面を見た場合、柱51は左右方向に自在に倒れることができる。
【0035】
緩衝体38aは、鋼板をU字状に曲げた板バネで、横倒しの状態で基礎プレート42と柱51との間に挟み込まれる。したがって、緩衝体38aの下方の外側面は基礎プレート42に接触して、上方の外側面は柱51に接触する。このように、支承体11aの左右両側に緩衝体38aを組み込むことで、柱51を安定して支持できるようになる。なお緩衝体38aは、日常的な荷重変動による変位を微小に抑えるため、厚さを調整して必要なバネ定数を確保している。そのほか緩衝体38aの両端近傍には、ボルト54を差し込むための丸孔39を形成してある。
【0036】
柱51の下面には四個のラグスクリュー55がねじ込まれており、支承体11aや緩衝体38aの上面は、ラグスクリュー55の端面と面接触する。したがって締結具と柱51の間に作用する荷重は、ラグスクリュー55全体を介して柱51の中に分散して伝達され、柱51の狭い領域に集中荷重が作用することはなく、部材のヒビ割れを防止する。
【0037】
図2は、図1の支承体11aの詳細形状を示している。支承体11aは、基本板12と積載板14をピン22などの連結部で一体化したもので、基本板12には、間隔を空けて平行に並ぶ二個の下アーム21を設けて、また積載板14には、中央に一個の上アーム23を設けている。そして各アーム21、23の先端付近には、ピン22を挿通するためのピン孔24を形成してある。このピン孔24の内径は、ピン22の外径よりもわずかに大きくしてあり、ピン22は自在に回転できる。基本板12と積載板14を対向させた後、全てのピン孔24を同心に揃えてピン22を差し込み、ピン22の両端に留め具25を取り付けると、基本板12と積載板14が一体化され、ピン22を支点として双方が自在に揺動可能になる。
【0038】
図3は、図1の締結具を用いて基礎プレート42と柱51を締結した状態を縦断面で示している。基礎プレート42と柱51を正しく締結すると、上方の図のように、左右の緩衝体38aの高さが等しく揃い、柱51は垂直に据え付けられる。したがって柱51に作用する垂直荷重やせん断力は、支承体11aと緩衝体38aの両方で伝達される。ただし柱51を図の左右方向に回転させる曲げモーメントは、左右の緩衝体38aだけで伝達される。なお緩衝体38aは、日常的な荷重変動では微小な変位しか生じないため、基礎プレート42と柱51は実質的に剛接合されており、ラーメン構造として機能する。
【0039】
地震などで衝撃荷重が作用した際は、柱51に水平荷重が作用して曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントが過大になると、緩衝体38aは大きく弾性変形して、さらに限度を超えると、下方の図のように、左側が押し潰され、右側が引き延ばされる。この緩衝体38aの変形でエネルギーが吸収され、柱51やボルト54などに作用する荷重が緩和される。そのため柱51にヒビ割れが生じることはなく、柱51は傾斜してしまうものの、倒れることはなく、余震の際も安全性を確保できる。しかも建物を補修する際は緩衝体38aだけを交換すればよく、再建に要する費用や時間を抑制できる。
【0040】
図4は、図1の締結具を用いて柱51と横架材59を据え付けた状態を縦断面で示している。基礎41の上面に基礎プレート42を固定して、その上に締結具を介して柱51を据え付けている。また柱51の上部にも締結具を組み込んで、横架材59を据え付けている。この上側の締結具は、下側のものと全く同じ構成だが、ここでは柱51が支持部材に相当して、横架材59が結合部材に相当する。しかも柱51と横架材59のいずれも木材であるため、双方にラグスクリュー55をねじ込んでいる。このように締結具は、柱51の据え付けのほか、各種部材同士の締結にも使用できる。
【0041】
図5は、支承体11の形状例を示している。支承体11は、図2のようにピン22を支点として自在に首振りができる形態のほか、この図の支承体11b、11cのように、基本板12と積載板14との連結部に中板26を用いることもできる。中板26は、基本板12と積載板14の中央同士を垂直に結ぶ金属製の単純な平板であり、溶接で基本板12などと一体化してある。なお本発明による締結具は、緩衝体38を有効に機能させるため、過大な荷重が作用した際、連結部が適度に屈曲するよう、強度を調整する必要がある。ただし日常的な垂直荷重で座屈が生じてはならない。
【0042】
図の形状例1は、中板26に適度な強度を持たせるため、二等辺三角形状のリブ27を上下左右に組み込んでいる。ただし中板26の中央にはリブ27が到達しておらず、過大な荷重が作用した際は、この箇所で変形が生じる。また図の下方の形状例2は、中板26の両側面に切欠28を設けて変形性を確保している。この構成では、中板26の強度を確保するため、その幅を基本板12や積載板14と同じにしてあり、支承体11cを正面から見ると単純なH形になる。
【0043】
図6も、支承体11の形状例を示している。この図の支承体11dは、基本板12と積載板14を連結部で一体化するものではなく、基本板12の上面には、円弧状に窪んだ凹面30を設けて、対する積載板14の下面には、先端が半球状に形成された軸棒31を設けており、軸棒31を凹面30に接触させて垂直荷重を伝達する。支承体11dは、基本板12と積載板14が押し合う方向の荷重のみを伝達できるため、柱51の下部などに限定して使用する。なお、このような箇所も地震などで逆方向の荷重が作用することはあるが、その場合は緩衝体38で結合部材の離脱を防止する。そのほか、軸棒31の先端と凹面30の曲率半径を一致させると、双方が面接触するため、安定性が向上する。
【0044】
図7は、締結具全体の形状例を示している。形状例1の支承体11eは、図1などとは異なり、積載板14が幅広になっており、柱51の下面全体に接触するほか、基本板12も積載板14と同じ大きさとなっている。また基本板12と積載板14は、中心に配置された下アーム21やピン22を介して一体化され、積載板14は自在に揺動可能である。そのほか緩衝体38bは、鋼板を筒状にしたものを使用しており、しかも基本板12と積載板14の間に挟み込んでいる。このように緩衝体38bは、支持部材や結合部材に接触させる以外に、基本板12や積載板14に接触させても構わない。
【0045】
形状例2の支承体11fについても、基本板12と積載板14は幅広になっている。ただし緩衝体38cの形状は大きく異なり、板状で内部が切り抜かれた目皿状のものを使用している。この緩衝体38cを取り付けるため、基本板12の積載板14の側面にはネジ穴16を形成してあり、また緩衝体38cには丸孔39を形成してあり、ボルト54を介して支承体11fの側面に緩衝体38cを取り付けることができる。この緩衝体38cは着脱が容易で、作業性に優れている。
【0046】
図8は、大断面の柱51を据え付けるために用いる締結具の形状例を示している。支持部材となる基礎プレート42は、柱51の断面形状に応じて正方形となっており、その中心に支承体11gを配置している。この支承体11gは、基本板12と積載板14が丸棒状の連結部で結ばれている。また緩衝体38aは、U字状の板バネを使用しており、四個を90度間隔で配置してある。このように大断面の柱51を据え付ける際は、柱51がどの方向に傾いても反力を発生できるよう、最低でも三個の緩衝体38aを使用する必要がある。
【0047】
図9は、図8のように大断面の柱51を据え付けるために用いる支承体11の形状例を示している。形状例1は図8に示したもので、基本板12と積載板14との連結部をクビレ軸32としている。クビレ軸32は、全体が円断面で、中央に向かうに連れて断面径が絞り込まれている。そのため曲げモーメントが作用した場合、中央部分が首を振るように屈曲する。また形状例2は、連結部に自在継ぎ手33を使用している。そのため基本板12や積載板14は、内部の球体を中心としてあらゆる方向に自在に揺動が可能で、軸力やせん断力だけを伝達する。
【0048】
図10は、本発明による締結具を用いて、柱51の側面に横架材59を据え付ける形態を示している。ここで使用する支承体11jは、積載板14の表面から突出するフック34を相手方のピン22に引っ掛けることで、基本板12と積載板14を一体化する構造である。また緩衝体38aは、U字状の板バネを使用している。そして柱51と横架材59を締結する際は、あらかじめ柱51の側面に基本板12を取り付け、さらに基本板12の直下に一方の緩衝体38aを取り付けておく。対する横架材59の端面中央に積載板14を取り付け、さらに積載板14の真上に他方の緩衝体38aを取り付けておく。
【0049】
その後、横架材59を吊り上げて柱51の上方に移動して、位置を調整しながら横架材59を徐々に下降させると、係止溝35の奥にピン22が入り込み、支承体11jを介して横架材59が柱51に仮置きされる。その後、緩衝体38aにボルト54を差し込んで締め上げると、横架材59の据え付けが完了する。なお柱51の側面に埋め込む係留具については、ラグスクリュー55ではなく異形棒鋼58を使用している。異形棒鋼58は、接着剤によって柱51と一体化する。
【0050】
図11は、図10の最終形態であり、柱51と横架材59は、支承体11jと緩衝体38aを介して締結されており、横架材59に作用する垂直荷重や軸力は、ピン22やフック34を介して伝達され、曲げモーメントは緩衝体38aを介して伝達される。このように、横架材59を据え付ける箇所では、積載板14にフック34を設けるなどの対策を講じて、横架材59を締結具で仮置きできることが好ましい。
【0051】
図12も、本発明による締結具を用いて、柱51の側面に横架材59を据え付ける形態を示している。この支承体11kの基本板12と積載板14は、横架材59の端面とほぼ同じ大きさとしてあり、また緩衝体38cは目皿状のものを使用している。さらに基本板12と積載板14の側面には、緩衝体38cの下面を受け止めるストッパ17を形成してある。そのほかピン22は、横架材59を仮置きした後、ピン孔24に差し込む。
【0052】
柱51と横架材59を締結する際は、あらかじめ柱51の側面に基本板12を取り付け、さらに基本板12下方の両側面に緩衝体38cを取り付けておく。対する横架材59の端面に積載板14を取り付け、さらに積載板14上方の両側面に緩衝体38cを取り付けておく。その後、横架材59を吊り上げて柱51の上方に移動して、位置を調整しながら横架材59を徐々に下降させると、各緩衝体38cの下面が相手方のストッパ17に接触して、緩衝体38cとストッパ17を介して横架材59が柱51に仮置きされる。この際、下アーム21と上アーム23のピン孔24は同心に揃うよう配慮されており、各アーム21、23を貫通するようにピン22を差し込んで留め具25を取り付けると、横架材59の据え付けが完成する。
【0053】
図13は、図12の最終形態であり、柱51と横架材59は、支承体11kと緩衝体38cを介して締結されており、横架材59に作用する垂直荷重や軸力は、下アーム21やピン22や上アーム23を介して伝達され、曲げモーメントは緩衝体38cを介して伝達される。この図の形態は、緩衝体38cとストッパ17を利用して横架材59を仮置き可能で、施工性に優れている。
【0054】
図14は、締結具全体の形状例を示している。この形状例3の支承体11mは、積載板14が幅広になっており、柱51の下面全体に接触するほか、基本板12は、積載板14と同じ大きさとなっている。また基本板12と積載板14は、その中心に配置された下アーム21と上アーム23とピン22を介して一体化され、積載板14は自在に揺動可能である。そして緩衝体としてスタッドボルト38dを使用しているほか、基本板12と積載板14の両端には、保持具61、64を溶接で取り付けている。
【0055】
保持具61、64の側面には、ボルト68を介して押圧具66、67を取り付け可能で、保持具61、64と押圧具66、67が一体になった状態でスタッドボルト38dを保持することができる。そのため保持具61、64と押圧具66、67との境界には、スタッドボルト38dを螺合できるよう、雌ネジ状の内ネジ62、65が形成してあり、さらに内ネジ62、65に隣接して、スタッドボルト38dが差し込まれる案内穴63を設けている。
【0056】
スタッドボルト38dは、下端側が左ネジで上端側が右ネジである。そのため下側(基本板12の方)の保持具61と押圧具66は、内ネジ62が左ネジであり、対する上側(積載板14の方)の保持具64と押圧具67は、内ネジ65が右ネジである。なおスタッドボルト38dを組み込む際は、押圧具66、67を取り外した状態でスタッドボルト38dを保持具61、64に接触させて、次にボルト68で押圧具66、67を取り付ける。その後、必要に応じてスタッドボルト38dを回転させて、基本板12と積載板14との間隔を調整する。
【0057】
図15は、図14の締結具を用いて基礎41と柱51を締結した状態の縦断面である。通常の状態では、左右のスタッドボルト38dのねじ込み量が調整され、積載板14は水平になっており、柱51は直立している。しかし柱51に過大な水平荷重が作用すると、図の「変形した状態」のように、一方のスタッドボルト38dが押し潰され、他方のスタッドボルト38dが引き延ばされる。この変形によってエネルギーが吸収され、柱51に及ぶ被害を軽減できる。また案内穴63は、スタッドボルト38dに圧縮荷重が作用した際、その座屈を防止するためのものである。図の左側のスタッドボルト38dの中間部分は、案内穴63によって座屈が規制され、押し潰されるように変形している。なお、スタッドボルト38dが塑性変形した状態でも、スタッドボルト38dは基本板12や積載板14と一体化しており、締結具の剛性は維持される。
【0058】
スタッドボルト38dが塑性変形した後は、図の「補修中の状態」のように、ボルト68と押圧具66、67を取り外して、さらに当初のスタッドボルト38dを取り外して、柱51の傾きを修正する。その後、新しいスタッドボルト38dを組み込み、さらに押圧具66、67を取り付ける。このように、保持具61、64と押圧具66、67を使用して、内ネジ62、65を分割可能な構造とすることで、基礎41と柱51に挟まれた空間でもスタッドボルト38dの交換が可能である。
【0059】
図16は、締結具全体の形状例を示している。この形状例4の支承体11nは、積載板14が幅広になっており、柱51の下面全体に接触するほか、基本板12は、積載板14と同じ大きさとなっている。また基本板12と積載板14は、その中心に配置された下アーム21と上アーム23とピン22を介して一体化され、積載板14は自在に揺動可能である。そして緩衝体として丸棒状のシャフト38eを使用しているほか、基本板12と積載板14の両端には、保持具71を溶接で取り付けている。なお保持具71は、上下とも同一形状だが、それぞれの案内穴73が対向するように配置している。さらにシャフト38eの両端には、フランジ状の段差部37を形成している。
【0060】
保持具71の側面には、ボルト68を介して押圧具76を取り付け可能で、保持具71と押圧具76が一体になった状態でシャフト38eを保持することができる。そのため保持具71と押圧具76との境界には、シャフト38eを収容できるよう、拘束部72と案内穴73を形成している。拘束部72は、段差部37を嵌め込むための部位で、シャフト38eを固定する機能を担っている。また案内穴73は、シャフト38eの座屈を規制する機能を担っている。
【0061】
外力によってシャフト38eが塑性変形した場合でも、段差部37が拘束部72に嵌まり込んでいる。そのためシャフト38eは、基本板12や積載板14に対して緩みを生じることがなく、締結具の剛性は維持される。また塑性変形したシャフト38eを交換する際は、押圧具76を取り外してシャフト38eを水平方向に引き出せばよく、狭い空間でも作業が可能である。
【0062】
図17は、大断面の柱51を据え付けるために用いる締結具の形状例を示している。この図の締結具は、柱51(結合部材)を基礎41(支持部材)に据え付けるためのもので、柱51の下面と基礎41の上面が対向する空間Sの中に配置される。そして主に下向きの荷重の伝達を担う支承体11pは、基本板12と積載板14と連結部で構成され、そのうち積載板14は、柱51の横断面と同じ大きさで、柱51の下面に接触する。また基本板12は、基礎41の上面に載置され、積載板14と同じ大きさである。なお基本板12は、基礎41の上面から突出するアンカーボルト45と、その先端にねじ込むナット46を介して基礎41に固定される。さらに基本板12の中央には、円盤状の鋼板を溶接で取り付けており、その上面にはスリ鉢状の凹面30を形成してある。
【0063】
積載板14は、全体が柱51の下面に接触している。また柱51の下面にはラグスクリュー55がねじ込まれており、ラグスクリュー55の下端面も積載板14と接触しており、積載板14と柱51は、強固に一体化されている。さらに積載板14の中央には、軸棒31を溶接で取り付けている。軸棒31の先端は半球状になっており、これが凹面30と接触することで下向きの荷重を伝達できる連結部が構成される。当然ながら軸棒31は、凹面30に対して自在に揺動が可能である。なおこの図の連結部は、図6に示すものと同じである。
【0064】
基本板12と積載板14は、完全に重なるように配置するが、両板の外縁全周には、プレート状の緩衝体38fを取り付ける。緩衝体38fは、鋼板を所定の形状に仕上げたものだが、垂直荷重に対する変形性を確保するため、内部を「く」の字状などに切り抜いてあり、衝撃荷重が作用した際、弾塑性変形を生じてエネルギーを吸収する。なお四枚の緩衝体38fは、いずれも同形状であり、ボルト54で基本板12や積載板14に取り付ける。そのため緩衝体38fには、丸孔39や底溝36を形成してあり、また基本板12や積載板14の側面にはネジ穴16を形成してある。
【0065】
実際に柱51を基礎41に据え付ける際は、基本板12を基礎41の上面に固定して、積載板14を柱51の下面に取り付けた後、四枚の緩衝体38fを積載板14の側面にボルト54で固定する。次に、基本板12の側面に設けたネジ穴16のうち、緩衝体38fの底溝36と対になる箇所には、あらかじめボルト54を差し込んでおく。ただしこのボルト54は、完全に締め上げてはならず、基本板12とボルト54の頭部との間には、底溝36を差し込むためのスペースを確保しておく。これによって柱51を基礎41に据え付ける際、底溝36を利用して柱51の仮置きが可能になり、以後、残りの丸孔39にボルト54を差し込むと、柱51の据え付けが完成する。なお柱51を仮置きした時点で、軸棒31が凹面30に接触しており、底溝36に柱51の全荷重が作用することはない。
【0066】
図18は、図17の最終形態を示している。基本板12と積載板14は、一定の距離を隔てて対向しており、その中心では凹面30と軸棒31が接触しており、下向きの荷重を伝達している。また両板の外縁全周には、ボルト54を介して緩衝体38fが取り付けられており、柱51に過大な水平荷重が作用すると、緩衝体38fが弾塑性変形することでエネルギーを吸収できる。なお地震などで突き上げるような荷重が作用した場合、凹面30と軸棒31がこれに対抗するため、全ての緩衝体38fが押し潰されることはない。そして緩衝体38fが実際に塑性変形した後は、重機などで柱51を直立させて、次にボルト54を取り外して緩衝体38fを交換する。この交換作業中は、凹面30と軸棒31で下向きの荷重を受け止める。
【0067】
図19は、図17と同様、大断面の柱51を据え付けるために用いる締結具の形状例を示している。支承体11pは、図17と同じ構成で、基本板12と積載板14は、柱51の下面と同じ大きさであり、両板の中心には凹面30と軸棒31が接触する連結部を設けている。対して緩衝体38cは、図7などと同じ目皿状のものを使用しており、さらに柱51の一側面当たりで二枚を対向するように配置している。この形態も他と同様、柱51に過大な水平荷重が作用すると、緩衝体38cが弾塑性変形することでエネルギーを吸収でき、しかも塑性変形した緩衝体38cは、容易に交換できる。
【0068】
なお図17、図18、図19の連結部は、いずれも凹面30と軸棒31で構成されているが、当然ながらこれに限定される訳ではなく、図9に示す支承体11g、11hのように、クビレ軸32を使用したものや、自在継ぎ手33を使用したものなどに置き換えることもできる。
【符号の説明】
【0069】
11 支承体
12 基本板
13 丸孔
14 積載板
16 ネジ穴
17 ストッパ
21 下アーム(連結部)
22 ピン(連結部)
23 上アーム(連結部)
24 ピン孔
25 留め具
26 中板(連結部)
27 リブ(連結部)
28 切欠
30 凹面(連結部)
31 軸棒(連結部)
32 クビレ軸(連結部)
33 自在継ぎ手(連結部)
34 フック(連結部)
35 係止溝
36 底溝
37 段差部
38 緩衝体
39 丸孔
41 基礎
42 基礎プレート(支持部材)
45 アンカーボルト
46 ナット
47 雌ネジ
51 柱
53 下穴
54 ボルト
55 ラグスクリュー(係留具)
56 凸条
57 雌ネジ
58 異形棒鋼(係留具)
59 横架材(結合部材)
61 保持具(下側)
62 内ネジ(左ネジ)
63 案内穴
64 保持具(上側)
65 内ネジ(右ネジ)
66 押圧具(下側)
67 押圧具(上側)
68 ボルト
71 保持具
72 拘束部
73 案内穴
76 押圧具
S 空間(支持部材と結合部材との間)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎プレート(42)と柱(51)や、柱(51)と横架材(59)など、隣接する支持部材と結合部材との締結に用い、
支持部材と結合部材が対向する空間(S)内に配置する支承体(11)と、該空間(S)内の外縁近傍に複数配置する緩衝体(38)と、前記支承体(11)および前記緩衝体(38)を固定するため支持部材および結合部材の一方または両方に埋め込む係留具(55、58)と、前記支承体(11)および前記緩衝体(38)を固定するためのボルト(54)と、を備え、
前記支承体(11)は、支持部材に面接触する基本板(12)と、結合部材に面接触する積載板(14)と、前記空間(S)の略中央で基本板(12)と積載板(14)を連結する連結部と、からなり、
前記緩衝体(38)は、前記空間(S)の変位に応じて反力を発生する弾性を有しており、その一端は基本板(12)または支持部材内の係留具(55、58)のいずれかに固定して、他端は積載板(14)または結合部材内の係留具(55、58)のいずれかに固定することを特徴とする締結具。
【請求項2】
前記連結部は、前記基本板(12)から突出する下アーム(21)と、前記積載板(14)から突出する上アーム(23)と、前記下アーム(21)および前記上アーム(23)を貫通して前記基本板(12)と前記積載板(14)を揺動自在に軸支するピン(22)と、からなることを特徴とする請求項1記載の締結具。
【請求項3】
前記緩衝体は、一端側に左ネジを形成して他端側に右ネジを形成したスタッドボルト(38d)であり、且つ前記基本板(12)および前記積載板(14)の外縁には、該スタッドボルト(38d)に螺合する内ネジ(62、65)を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の締結具。
【請求項4】
前記緩衝体は、両端近傍の側周面にツバ状または溝状の段差部(37)を有するシャフト(38e)であり、且つ前記基本板(12)および前記積載板(14)の外縁には、該段差部(37)を保持する拘束部(72)を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−82668(P2012−82668A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237295(P2010−237295)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(500292851)
【Fターム(参考)】