説明

緩衝装置及び金属製カバー

【課題】この発明は、安定して優れた制振性を備えた緩衝装置及び当該緩衝装置を用いて取付ける金属製カバーを提供することを目的とする。
【解決手段】振動源であるエキマニ1に設けたボルト用ボス41と接続対象であるヒートインシュレータ3との間に配置し、エキマニ1に設けたボルト用ボス41とヒートインシュレータ3とを連結するとともに、エキマニ1に設けたボルト用ボス41からヒートインシュレータ3への振動の伝達を緩衝する緩衝装置10を、振動を緩衝する螺旋多段コイル渦巻きバネ50、螺旋多段コイル渦巻きバネ50及びヒートインシュレータ3を結合するグロメット20、並びに、エキマニ1に設けたボルト用ボス41に締結する取付ボルト42と螺旋多段コイル渦巻きバネ50との間に介在させるカラー部材30で構成し、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を平面視渦巻き状の線材で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、振動を発生する部材に対して、カバー類やハウジングなどを装着するために用いられる緩衝装置に関するものであり、さらに詳しくは、ヒートインシュレータのようなカバー類を内燃機関のエキゾーストマニホールド(以下、「エキマニ」という)等に取付けるために用いられる緩衝装置及び緩衝装置を用いて取付ける金属製カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図10に示すように、エンジン2の側面に取付けられたエキマニ1は、エンジンの駆動に応じて、圧力や温度が脈動する燃焼排気ガスが内部を通過するため、エキマニ1自体が振動し、振動音を発生する。さらに、エキマニ1は、内部を通過する高温の燃焼排気ガスによって加熱され、エキマニ1自体が熱を発する。このように、エキマニ1から発せられる振動音や熱が、エンジン2の周辺へ伝播することを抑制するため、エキマニ1を覆うようにヒートインシュレータ3が取付けられている。
【0003】
しかし、振動するエキマニ1やエンジン2にヒートインシュレータ3を直接取付けると、ヒートインシュレータ3が共振して、ヒートインシュレータ3自体が振動源となって、騒音が大きくなるおそれがあった。
【0004】
そこで、特許文献1では、上述のように、エンジン2のエキマニ1に対して、ヒートインシュレータ3を取付けるためのフローティングマウント構造の緩衝装置5が提案されている(図15参照)。なお、図15は下記特許文献で提案されている緩衝装置5の断面図を示している。
【0005】
従来技術の緩衝装置5は、金属繊維をメッシュ状に編み、それを平板なマット状に形成して構成する円環状の緩衝部材8と、アルミニウム合金から形成され、断面が略S字状の結合部材であるグロメット20と、緩衝部材8と取付ボルト42との間に配置されるカラー部材10とで構成している。
【0006】
そして、カラー部材10と緩衝部材8との間に、取付ボルト42の軸線方向及び半径方向の隙間17を形成している。この隙間17により、エキマニ1から入力された振動のカラー部材10から緩衝部材8への伝達を抑制する、つまり優れた制振性を有するとされている。
【0007】
詳しくは、カラー部材10から緩衝部材8に伝達された振動により、緩衝部材8自身が撓み運動を行う。この撓み運動により、緩衝装置5は、カラー部材10から伝達された振動の振動エネルギーを緩衝部材8の撓みの運動エネルギーに変換し、ヒートインシュレータ3に伝達する振動を抑制することができるとされている。
【0008】
しかし、カラー部材10と緩衝部材8との間に、緩衝部材8がカラー部材10内側で遊動する程度の隙間17を設けたことにより、緩衝部材8がカラー部材10内で振動し、緩衝部材8がカラー部材10に衝突する。この緩衝部材8とカラー部材10との衝突によって、カタカタと鳴る騒音が発生するというおそれがあった。つまり、この騒音は、カラー部材10から緩衝部材8への振動伝達を抑制するための隙間17がカラー部材10と緩衝部材8との間のアソビとなり、新たな騒音が生じる要因となっていた。このように騒音が生じるということは、新たな振動が生じており、制振性を阻害することと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−360496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、安定して優れた制振性を備えた緩衝装置及び当該緩衝装置を用いて取付ける金属製カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、振動源である振動対象部材と接続対象である接続対象部材との間に配置し、前記振動対象部材と前記接続対象部材とを連結するとともに、前記振動対象部材から前記接続対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、前記振動を緩衝する緩衝部材、該緩衝部材及び前記接続対象部材を結合する結合部材、並びに、前記振動対象部材に締結する締結部材と前記緩衝部材との間に介在させるカラー部材で構成し、前記結合部材を、前記緩衝部材を外囲するとともに、該接続対象部材を径外側に保持する第一保持部と、該緩衝部材を径内側に保持する第二保持部と、前記第一保持部と前記第二保持部とを連結する連結部とで構成し、前記カラー部材を、前記締結部材の挿通を許容する締結部材挿通部を径内側に備えるとともに、前記カラー部材装着部を保持する緩衝部材保持部を径外側に備えて構成し、前記緩衝部材を、平面視渦巻き状の線材で構成するとともに、前記カラー部材の装着を許容するカラー部材装着部を、前記平面視渦巻き状における径方向中心部に備えるとともに、前記第二保持部に保持される被保持部を、前記平面視渦巻き状における径方向外側部に備え、前記緩衝部材の前記平面視渦巻き状の少なくとも一部に、他の部分に比べてバネ定数の高い高バネ部分を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記振動対象部材は、例えば、自動車等のエンジン本体や、エンジンに装着された部分における排気管(特にエキマニ)や触媒部分、あるいは車体を構成するフレーム等とすることができる。
【0013】
接続対象部材は、上記エンジン本体、排気管や触媒部分等に連結してカバーするヒートインシュレータ、あるいは車体の底部をカバーするアンダーカバーやミッションカバー等とすることができる。
結合部材は、いわゆるグロメットといわれる部材とすることができる。
【0014】
締結部材は、例えば、振動対象部材とカラー部材とを螺着するボルトやナット、あるいはかしめによるかしめ治具等の部材とすることができる。
上記平面視渦巻き状は、平面視において、旋回するにつれ、少なくとも一部が中心から遠ざかる二次元曲線である、いわゆるスパイラルあるいは、中心から遠ざかるにつれて、少なくとも一部の平面サイズが大きくなり、連続する略多角形による渦巻きとすることができる。
【0015】
上記線材は、抑制すべき振動の周波数帯域や振幅、使用下温度などの各種使用条件に応じて適宜選定される線材であり、丸形、長円形、略矩形あるいはその他の任意の閉曲面形状での断面形状である線材とすることができる。
【0016】
上記径内側は上記平面視渦巻き状における平面視外側に対する中心側とし、上記径外側は上記平面視渦巻き状における中心に対する平面視外側とする。
他の部分に比べてバネ定数の高い高バネ部分は、狭ピッチで巻き回された線材、バネ定数の高い線材、あるいは同じバネ定数であっても径大な線材等で構成することができる。また、前記緩衝部材の前記平面視渦巻き状の少なくとも一部に、他の部分に比べてバネ定数の高い、あるいは見かけのバネ定数が高い高バネ部分を備えるということは、平面視渦巻き状の径内側の端部、径外側の端部、あるいは中間部分の少なくとも一箇所に配置した高バネ部とすることができる。
【0017】
この発明により、安定して優れた制振性を奏することができる。
詳しくは、前記緩衝部材を、平面視渦巻き状の線材で構成し、前記カラー部材の装着を許容するカラー部材装着部を、前記平面視渦巻き状における径方向中心部に備えるとともに、前記カラー部材装着部を保持する緩衝部材保持部を前記カラー部材の径外側に備えたため、カラー部材から緩衝部材に伝達された振動により、平面視渦巻き状の線材で構成した緩衝部材自身が撓み運動を行う。この撓み運動により、緩衝装置は、カラー部材から伝達された振動の振動エネルギーを緩衝部材の撓みの運動エネルギーに変換し、前記接続対象部材に伝達する振動を抑制することができる。つまり、従来技術の緩衝装置において、カラー部材と緩衝部材との間に、それぞれが遊動するように積極的に形成した軸線方向及び半径方向(平面方向)の隙間の役目を平面視螺旋状に形成した線材同士のクリアランスで実現し、入力振動の伝達を抑制する、つまり優れた制振性を実現している。
【0018】
また、前記カラー部材の装着を許容するカラー部材装着部を、前記平面視渦巻き状における径方向中心部に備え、前記カラー部材装着部を保持する緩衝部材保持部を前記カラー部材の径外側に備えたため、緩衝部材とカラー部材とが衝突することなく振動の伝達を抑制することができる。したがって、緩衝部材とカラー部材との衝突によるカタカタと鳴る騒音が発生することなく、カラー部材から緩衝部材への振動伝達を抑制する、つまり優れた制振性を奏することができる。
【0019】
また、緩衝部材を平面視渦巻き状の線材で構成しているため、金属繊維をメッシュ状に編み、マット状に形成した緩衝部材に比べて、製品のバラつきが少ない。したがって、安定した弾性を有する緩衝部材を構成することができる。つまり、安定した制振性を有する緩衝装置を構成することができる。
【0020】
詳しくは、緩衝部材を、平面視渦巻き状に成形された線材で構成するため、微細な無機繊維を取り扱う必要がなく、無機繊維を所定繊維長に切断する工程での繊維長の管理や最終製品への加工における加工工程などにおいて寸法精度の高精度の管理の困難さが解消される。これにより、寸法精度が向上され、緩衝装置の制振性の精度及び安定性を向上することができる。
したがって、緩衝装置を上述の構成とすることにより、振動源である振動対象部材と接続対象部材とを、振動を伝達することなく連結することができる。
【0021】
さらに、前記緩衝部材の前記平面視渦巻き状の少なくとも一部に、他の部分に比べてバネ定数の高い高バネ部分を備えたことにより、所望の緩衝特性を有する緩衝装置を構成することができる。
【0022】
詳しくは、ひとつの平面視渦巻き状の緩衝部材に、バネ定数、あるいは見かけのバネ定数が高い高バネ部分と、高バネ部分と比べてバネ定数が低い部分とを兼ね備えているため、小さな振動に対してはバネ定数が低い部分で振動を吸収し、大きな振動に対しては、バネ定数が低い部分で吸収しきれなかった振動を高バネ部分で吸収するというように、例えば、大きい振動も小さい振動も高バネ部分のみで振動吸収する場合と比較して、振動挙動に応じて適切な振動吸収性能を実現することができる。したがって、所望の緩衝特性を有する緩衝部材及び緩衝装置を構成することができる。
【0023】
この発明の態様として、前記高バネ部分を、高さ方向の略円筒状に巻き付けたつる巻き部で構成し、該つる巻き部よりバネ定数の低い前記他の部分を、渦巻き方向に沿って高さ方向に徐々に変化する螺旋渦巻き部で構成することができる。
【0024】
上記高さ方向の略円筒状に巻き付けたつる巻き部は、側面視円筒状、円錐台状、及び鼓状に巻き付けたつる巻き部であり、いわゆるコイルバネとすることができる。
また、渦巻き方向に沿って高さ方向に徐々に変化する螺旋渦巻き部は、旋回するにつれ旋回面に垂直成分を持つ方向に動く三次元曲線であり、いわゆるヘリックスとすることができる。
【0025】
この発明により、容易に、所望の緩衝特性を有する緩衝装置を構成することができる。
詳しくは、つる巻き部と螺旋渦巻き部とでは線材の巻付けピッチが異なるため、同じバネ定数、同じ断面径の線材を用いても、見かけのバネ定数が高いつる巻き部と高バネ部分と比べてバネ定数が低い螺旋渦巻き部とを容易に構成することができる。つまり上述したように、見かけのバネ定数が高い高バネ部分と、高バネ部分と比べてバネ定数が低い部分とを兼ね備える緩衝部材を、振動挙動に応じて適切なバネ定数を容易に設定することができる。したがって、所望の緩衝特性を有する緩衝部材及び緩衝装置を構成することができる。
【0026】
なお、緩衝部材を、円筒状のつる巻き部と、螺旋渦巻き部とで構成することにより、例えば、螺旋渦巻き部のみやつる巻き部のみで所望の高さに構成した緩衝部材と比べて、所望のバネ定数を有する緩衝部材を構成することができる。
【0027】
詳述すると、螺旋渦巻き部のみで所望の高さの緩衝部材を構成した場合、螺旋渦巻きを構成する線材のピッチが広くなりすぎ、バネ定数が低くなり、所望の弾性を確保することができない。逆に、円筒状のつる巻きバネだけでは、径外側の結合部材と径内側のカラー部材とを、緩衝可能につなぐことはできない。
【0028】
また、制振性を向上するためには、緩衝部材の線材の長さを長くする必要があるが、径外側が結合部材の第二保持部で制限された状態で、所望の制振性を確保するための線材長さで螺旋渦巻き状のみを形成すると、螺旋渦巻きを形成する線材の巻き数が増大し、線材同士の平面方向ピッチが小さくなり、逆に平面方向の振動吸収性能が低減し、制振性を阻害することとなる。
【0029】
これに対し、緩衝部材を、円筒状のつる巻き部と、螺旋渦巻き部とで構成することにより、螺旋渦巻き部で径方向及び高さ方向の弾性を確保し、バネ定数の高いつる巻き部で所望の高さに構成し、所望のバネ定数を有する緩衝部材を構成することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記緩衝部材を、前記振動対象部材に対して、前記被保持部が前記カラー部材装着部より離れる向きで配置することができる。
上述の前記振動対象部材に対して、前記被保持部が前記カラー部材装着部より離れる向きで配置する前記緩衝部材は、渦巻き方向に沿って高さ方向に徐々に変化する螺旋渦巻き状と、コイル状のつる巻き部とで、前記振動対象部材に対して、前記被保持部が前記カラー部材装着部より離れる方向となる向きで配置することをいう。
【0031】
この構成により、緩衝装置における制振性を向上することができる。
詳しくは、緩衝部材をつる巻き部と螺旋渦巻き部とで構成することにより、平面方向の弾性に加えて、高さ方向の弾性を二種類のバネ定数で調整することができる。つまり、緩衝部材の制振性に大きな影響を及ぼす緩衝部材の弾性を、二種類のバネ定数に基づいて三次元的に調整することができる。
【0032】
また、前記振動対象部材に対して、前記被保持部が前記カラー部材装着部より離れる向きで緩衝部材を配置することによって、緩衝部材における径内側のカラー部材装着部より、径外側の前記被保持部が振動対象部材より離れることとなる。つまり、被保持部を第二保持部で保持する連結部材の第一保持部で保持された接続対象部材が、カラー部材装着部に巻着されるカラー部材より振動対象部材から離れて配置されることとなる。
【0033】
したがって、カラー部材、及び緩衝部材を介して伝達された振動によって、接続対象部材自体が振動した場合であっても、カラー部材が接続対象部材より振動対象部材から離れて配置される場合と比較して、接続対象部材自体が振動対象部材と衝突するおそれを低減することができる。よって、接続対象部材自体と振動対象部材との衝突による騒音の発生を抑制することができる。
このように、緩衝装置を上記構成とすることによって、制振性をさらに向上することができる。
【0034】
また、この発明の態様として、前記カラー部材装着部を、前記つる巻き部に備え、前記被保持部を、前記螺旋渦巻き部を径方向外側部分で構成することができる。
この構成、つまり、カラー部材装着部を備える緩衝部材における径内側につる巻き部を配置し、被保持部を備える緩衝部材における径外側に螺旋渦巻き部を配置することによって、カラー部材を介して入力された振動は、まず径外側の螺旋渦巻き部に入力され、平面方向及び高さ方向の弾性で緩衝される。そして、螺旋渦巻き部で緩衝された振動は見かけのバネ定数の高いつる巻き部でさらに緩衝される。したがって、接続対象部材自体が振動対象部材と衝突するおそれを、さらに低減することができる。よって、接続対象部材自体と振動対象部材との衝突による騒音の発生を抑制することができる。
【0035】
また、この発明の態様として、前記カラー部材装着部及び前記被保持部を円弧形状で形成し、前記第二保持部を平面視円形で形成し、前記カラー部材を円筒状に形成するとともに、前記緩衝部材保持部を前記円筒状の側面において前記カラー部材装着部の嵌着を許容する嵌着凹部で形成することができる。
【0036】
この発明により、容易に緩衝部材とカラー部材とを嵌着させるとともに、第二保持部で前記被保持部を保持することができる。
詳しくは、前記カラー部材装着部及び前記被保持部を円弧状に形成するとともに、前記緩衝部材保持部を前記円筒状の側面において前記カラー部材装着部の嵌着を許容する嵌着凹部で形成するため、円弧状に形成したカラー部材装着部を、前記円筒状に形成したカラー部材の側面における嵌着凹部に嵌着することで、容易に緩衝部材とカラー部材とを嵌着させることができる。また、円弧状に形成したカラー部材装着部と、前記円筒状の側面に形成した嵌着凹部とを嵌着するため、カラー部材に対する周方向の位置を問わず、容易に緩衝部材とカラー部材とを嵌着させることができる。
また、前記被保持部を円弧状で形成したため、周方向の位置を問わず第二保持部で保持することができる。
【0037】
このように、容易に緩衝部材とカラー部材とを嵌着させるとともに、第二保持部で前記被保持部を保持することができるため、緩衝装置の組み立て性を向上することができる。
【0038】
さらには、例えば、緩衝部材のカラー部材装着部を、別部材を用いて、カラー部材の緩衝部材保持部に装着する場合と比較して、円弧状に形成したカラー部材装着部を、前記円筒状に形成したカラー部材の側面における嵌着凹部に嵌着することにより、部品点数を低減することができる。したがって、緩衝装置の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0039】
また、この発明の態様として、前記嵌着凹部と前記カラー部材装着部との間に制振性向上のための隙間を設けることができる。
この構成により、緩衝装置における制振性をさらに向上することができる。詳しくは、円弧状に形成したカラー部材装着部を嵌着凹部で保持する状態において制振性向上のための隙間を形成しているため、カラー部材装着部と嵌着凹部において衝突音が生じることなく、カラー部材を介して入力された振動を隙間で吸収することができる。また、隙間により、熱の伝達を遮断することができる。
【0040】
また、この発明の態様として、前記カラー部材を、前記締結部材挿通部を構成し、径方向に適宜の厚みを有する厚肉リング部と、該厚肉リング部の上下端の一方から径外側向きに突出する円盤状のフランジ部とで片断面が略L字状に構成されたカラー構成部品を、前記フランジ部が外側となるように、前記厚肉リング部の端部同士を対向させて組み付けて構成することができる。
【0041】
この構成により、制振性の高い緩衝装置の製品信頼性を向上することができる。詳しくは、前記カラー部材を、前記締結部材挿通部を構成し、径方向に適宜の厚みを有する厚肉リング部と、該厚肉リング部の上下端の一方から径外側向きに突出する円盤状のフランジ部とで片断面が略L字状に構成したカラー構成部品を、前記フランジ部が外側となるように、前記厚肉リング部の端部同士を対向させて組み付けて構成することによって、対向する厚肉リング部と、両フランジ部とで囲まれる空間で嵌着凹部を構成することができる。
【0042】
また、組み付け状態においてカラー構成部品の厚肉リング部の端部同士を対向させているため、組み付けられたカラー部材の締結部材挿通部に締結部材を挿通して振動対象部材に固定する際に、両フランジ部で構成する嵌着凹部が締結部材の締結圧力によって、変形することを防止できる。したがって、カラー部材装着部と嵌着凹部との間に形成された制振性向上のための隙間を確保することができ、カラー部材装着部と嵌着凹部において衝突音が生じることなく、カラー部材を介して入力された振動を隙間で吸収することができる。また、隙間により、熱の伝達を遮断することができる。
【0043】
また、この発明の態様として、前記カラー部材を構成するカラー構成部品を、前記振動対象部材側の振動対象部材側構成部品と、前記接続対象部材側の接続対象部材側構成部品とで構成し、前記振動対象部材側構成部品における前記フランジ部に、前記第二保持部に当接可能な大径で形成した大径フランジ部を備えることができる。
【0044】
上記前記振動対象部材側構成部品における前記フランジ部に備えた大径フランジ部は、前記振動対象部材側構成部品における前記フランジ部自体を大径に形成した大径フランジ部、あるいは前記振動対象部材側構成部品における前記フランジ部に固定した大径フランジ部とすることができる。
【0045】
この構成により、より制振性の高い緩衝装置を構成することができる。
詳しくは、前記カラー部材を構成するカラー構成部品のうち前記振動対象部材側の振動対象部材側構成部品のフランジ部に、第二保持部に当接可能な大径で形成した大径フランジ部を備えたことにより、大きな振幅により、接続対象部材に結合する結合部材が、振動対象部材側に変位した場合であっても、振動対象部材側構成部品のフランジ部に備えた大径フランジ部が結合部材の第二保持部に当接し、第二保持部が直接、振動対象部材に当接することを防止できる。したがって、例えば、共振等による大きな振幅に対しても確実な制振性を確保することができる。
【0046】
また、この発明は、相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板で構成し、立体形状をなす金属製カバーであって、押し潰し対象部位の前記コルゲート形状を押し潰して略平板形状に形成し、前記相互に交差するいずれか一方の方向が前記立体形状を構成する主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められるとともに、上述の緩衝装置を用い、前記振動対象部材を内燃機関及び/またはその排気経路で構成するとともに、前記第一保持部で前記押し潰し対象部位を保持する構成としたことを特徴とする。
【0047】
この発明により、例えば、自動車等の内燃機関及び/またはその排気経路からの熱の放散及び振動の伝達を抑制することのできる金属製カバーを構成することができる。
【0048】
詳しくは、例えば、適宜の耐熱性能を有する材料で構成する金属製カバーを、制振性の高い上述の緩衝装置で取付けるため、熱源である内燃機関及び/またはその排気経路からの熱の放散を防止するとともに、振動源でもある内燃機関及び/またはその排気経路からの振動を金属製カバーに伝達することを防止できる。
したがって、例えば、振動減から入力された振動に対して金属製カバー自体が共振する場合と比較して、制振性の高い状態で金属製カバーを取付けることができる。
【0049】
また、金属製カバーを相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板で構成するため、変形加工性の高い金属製カバーを構成することができる。したがって、例えば複雑な形状の内燃機関及び/またはその排気経路であっても、それらの形状に応じた形状の金属製カバーを形成できる。また、それらの形状に応じた形状の金属製カバーを取付けできるため、内燃機関及び/またはその排気経路からの熱の放散をより確実に防止することができる。
【0050】
この発明の態様として、前記相互に交差する方向を、直交する第一方向及び第二方向とするとともに、前記コルゲート形状を、それぞれが前記第一方向に沿って延びる隆起部と谷部とが前記第二方向に交互に繰り返され、前記隆起部は、前記第一方向に沿って、第一起立部と第二起立部とが前記谷部から立上って交互に配列され、前記谷部は、前記第一方向に沿って、平坦部と凹部とが交互に配列され、前記第一起立部は、前記谷部から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、前記側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、前記第一起立部は内曲しており、前記第一起立部の基端部よりも先端部のほうが幅広になり、前記第二起立部は、平坦部からそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部とで構成され、前記第一起立部及び前記凹部、並びに前記第二起立部及び平坦部が、前記第二方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成することができる。
【0051】
この構成により、金属製カバーの形状加工性がさらに向上するため、より取付け対象である内燃機関及び/またはその排気経路の形状にマッチした形状を容易に形成することができる。したがって、内燃機関及び/またはその排気経路からの熱の放散をさらに確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0052】
この発明により、安定して優れた制振性を備えた緩衝装置及び当該緩衝装置を用いて取付ける金属製カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】緩衝装置の底面側からの斜視図。
【図2】緩衝装置の説明図。
【図3】緩衝装置の底面図。
【図4】カラー部材の説明図。
【図5】多段コイル渦巻きバネの説明図。
【図6】多段コイル渦巻きバネの説明図。
【図7】グロメットの説明図。
【図8】緩衝装置の装着状態についての断面図。
【図9】ヒートインシュレータを構成するコルゲート板についての説明図。
【図10】緩衝装置の装着状態についての概略正面図。
【図11】螺旋多段コイル渦巻きバネのバネ定数確認試験のグラフ。
【図12】緩衝装置の効果確認試験のグラフ。
【図13】緩衝装置の効果確認試験のグラフ。
【図14】別の実施形態の緩衝装置の説明図。
【図15】従来技術の緩衝装置の装着状態についての断面図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は本実施例の緩衝装置10の底面側からの斜視図であり、図2は緩衝装置10の説明図を示し、図3は緩衝装置10の底面図を示している。なお、図2(a)は緩衝装置10の正面図を示し、図2(b)は緩衝装置10の断面図を示している。
【0055】
また、図4はカラー部材30の説明図を示し、図5,図6は螺旋多段コイル渦巻きバネ50の説明図を示し、図7はグロメット20の説明図を示している。
なお、図4(a)は緩衝装置10のカラー部材30の平面図を示し、図4(b)はカラー部材30の断面図を示し、図4(c)はカラー部材30の分解断面図を示している。
【0056】
また、図5(a)は緩衝装置10の螺旋多段コイル渦巻きバネ50の底面図を示し、図5(b)は螺旋多段コイル渦巻きバネ50の正面図を示し、図6(a)は螺旋多段コイル渦巻きバネ50の底面側からの斜視図を示し、図6(b)は正面側が透過状態である螺旋多段コイル渦巻きバネ50の底面側からの斜視図を示している。さらに、図7(a)はグロメット20の平面図を示し、図7(b)はグロメット20の断面図を示し、図7(c)はグロメット20の底面図を示している。
【0057】
また、図8は緩衝装置10の装着状態についての断面図を示し、図9はヒートインシュレータ3を構成するコルゲートシート120についての説明図を示し、図10は緩衝装置10の装着状態についての概略正面図を示している。
【0058】
なお、図9(a)はコルゲートシート120の斜視図を示し、図9(b)は図9(a)におけるI−I端面図を示し、図9(c)は図9(a)におけるII−II端面図を示し、図9(d)は図9(a)におけるIII−III端面図を示している。
【0059】
背景技術において説明したように、自動車などの車両のエンジン2には、エキマニ1が、燃焼排気ガスを排出するために、エンジン2の側面に取付けられている(図10参照)。そして、このエキマニ1に、このエキマニ1を覆うヒートインシュレータ3が取付けられている。
【0060】
本発明の緩衝装置10は、ヒートインシュレータ3をエキマニ1に取付けるためのフローティングマウント構造の緩衝装置であり、振動を緩衝する螺旋多段コイル渦巻きバネ50、グロメット20及びカラー部材30で構成している。
【0061】
カラー部材30は、径に対して高さの低い円柱状であり、SPCCなどの鉄系材料で構成される。また、カラー部材30は、図4(a)に示すように、平面視中央に取付ボルト42の挿通を許容するボルト孔40を備え、側面には、後述する螺旋多段コイル渦巻きバネ50のカラー部材装着部53の嵌着を許容する嵌合凹部33を備えている。
【0062】
カラー部材30は、下向きに凸な上側カラー部材31と、下側カラー部材32と嵌着し、かしめて構成している。
詳しくは、上側カラー部材31は、径外側に配置したリング部31aと、該リング部31aの径内側に配置した円環状の厚肉部31bと、厚肉部31bの内周縁から上向きに突出する円筒状の嵌合筒部31cとを一体に構成している。なお、厚肉部31bの底面を31baとしている。
【0063】
下側カラー部材32は、底面におけるリング部31aに対応する径外側に配置したリング部32aと、内周部に上述の嵌合筒部31cの嵌着を許容する嵌着開口32cを備えた環状の厚肉部32bとで構成している。なお、厚肉部32bの上面を32baとしている。また、リング部31a,32aは、厚肉部31b,32bに比べて、後述する螺旋多段コイル渦巻きバネ50の断面半径分ほど薄く形成している。
【0064】
このように構成した上側カラー部材31の厚肉部31bの底面31baと、下側カラー部材32の厚肉部32bの上面32baとを対向させ、嵌着開口32cに挿入した嵌合筒部31cを径外側向きにかしめることにより、上側カラー部材31と下側カラー部材32とを一体化している。そして、このとき、上側カラー部材31のリング部31aと、下側カラー部材32のリング部32aとによって、平面視円周状で、円柱状のカラー部材30の側面から径内側向きに凹状の嵌合凹部33を構成している。
【0065】
なお、嵌合凹部33は、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の断面半径分ほど薄く形成したリング部31a,32aを対向させて構成しているため、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の断面直径よりわずかに高さの高い平面視円周状の凹部を構成している。
【0066】
螺旋多段コイル渦巻きバネ50は、円形断面線材を巻き回して形成しており、径外側の螺旋渦巻き部51と、径内側の多段コイル部52とで構成している。
詳しくは、径外側から内側に向かうとともに、徐々に高さ方向に変化する螺旋渦巻き部51と、螺旋渦巻き部51の径内側端部から連続し、円筒状に巻き回した多段コイル部52とで構成している。このように構成することによって、螺旋渦巻き部51と多段コイル部52とは同じ円形断面線材を巻き回して構成しているものの、ピッチが異なるため螺旋渦巻き部51と多段コイル部52とでバネ定数が異なる。つまり、螺旋渦巻き状と円筒状とのように巻き回し方を変えることによって、一本の連続する円形断面線材を巻き回して形成する螺旋多段コイル渦巻きバネ50は、二種類のバネ定数を有することとなる。なお、カラー部材装着部53を多段コイル部52の端部に形成し、後述するグロメット20の連結部23に保持される被保持部54を、螺旋渦巻き部51の径方向外側部に備えている。
【0067】
螺旋多段コイル渦巻きバネ50の螺旋渦巻き部51について詳述すると、螺旋渦巻き部51は、渦巻き方向に沿って高さ方向(図5(b)における上下方向)に徐々に変化し、三巻きの螺旋渦巻き状に形成している。
また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50は、上述したように、螺旋渦巻き状の径方向外側部に円弧状の被保持部54を備え、螺旋渦巻き状の径方向中心部の端部から連続して多段コイル部52を形成している。
【0068】
多段コイル部52は、上述したように、螺旋渦巻き部51の径内側の端部から連続し、高さ方向において狭ピッチ且つ同じ巻き径で巻き回して構成している。そして、その端部を、嵌合凹部33に装着するカラー部材装着部53としている。
【0069】
カラー部材装着部53及び被保持部54は、端部から3/4円である270度の中心角度で、同一径の円弧形状で形成している(図5(a)参照)。なお、カラー部材装着部53の内周円は、上述のカラー部材30における嵌合凹部33の内側円33cよりわずかに大きな径で形成している。具体的には、約0.2mm大きな径で形成している。したがって、カラー部材装着部53の内周と、嵌合凹部33の内側円33cとの間に制振性向上のための隙間sが形成される(図2(b)a部拡大図参照)。
【0070】
なお、螺旋多段コイル渦巻きバネ50は、SUS304などのステンレスバネ鋼からなる線材で構成している。
また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、螺旋渦巻き部51と多段コイル部52とで構成したが、抑制すべき振動の周波数帯域や振幅、使用状態温度などの各種使用条件にしたがって、長円形でも略矩形でも、その他の随意の閉曲面形状の断面線材で構成してもよく、線材の径や材料あるいは巻き数とともに、適宜選定すればよい。
【0071】
グロメット20は、ヒートインシュレータ3を保持する第一保持部21と、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を保持する第二保持部22と、第一保持部21と第二保持部22とを連結する連結部23とで、平面視中央に挿通穴24を有し、片断面略S字形状となる円環状に構成している。
【0072】
詳しくは、ヒートインシュレータ3を径外側で保持する第一保持部21は、円環状の金属板の外周縁から内周側における所定の半径方向長さ部分を、図7の上方から下方に向かい、径方向内周側から外周側に折り返して径外向き倒位のJ字形状に形成している。なお、第一保持部21は、後述するヒートインシュレータ3を挟み込む厚みで形成している。
【0073】
また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を径内側で保持する第二保持部22は、環状の金属板の内周縁から外周側における所定の半径方向長さ部分を、図7の下方から上方に向かい、径方向外周側から内周側に折り返して径内向き倒位のJ字形状に形成している。
【0074】
なお、第二保持部22は、上述の螺旋多段コイル渦巻きバネ50を挟み込む厚みで形成されている。さらに、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の被保持部54の外周円と、倒位のJ字形状の第二保持部22の内側との間にわずかな隙間sを形成している(図2(b)b部拡大図参照)。
【0075】
連結部23は、第一保持部21と第二保持部22とに亘って屈曲して形成され、径外向き倒位のJ字形状に形成した第一保持部21の径内側の下側端部と、径内向き倒位のJ字形状に形成した第二保持部22の径外側の上側端部とを相互に連結する構成である。これら第二保持部22、連結部23及び第一保持部21は、エキマニ1に設けたボルト用ボス41の側からこの順序で配置される。
【0076】
上述したように緩衝装置10は、上述の構成のカラー部材30、螺旋多段コイル渦巻きバネ50、及びグロメット20を組み付けて構成している。詳述すると、カラー部材30の嵌合凹部33に、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の多段コイル部52のカラー部材装着部53を嵌合させて、カラー部材30と螺旋多段コイル渦巻きバネ50とを組み付ける。このとき、上述したように、嵌合凹部33の内側円33cと螺旋多段コイル渦巻きバネ50のカラー部材装着部53の内周側との間に隙間sが設けられるとともに、カラー部材装着部53は、内側円33cの周面に対して3/4の範囲を巻き付けることができる。
【0077】
また、グロメット20の第二保持部22に、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の螺旋渦巻き部51の被保持部54を嵌合させて、グロメット20と螺旋多段コイル渦巻きバネ50とを組み付ける。このとき、上述したように、グロメット20の第二保持部22の内周面と、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の被保持部54との外周の間に隙間sが設けられるとともに、被保持部54は、第二保持部22の内周面に対して3/4の範囲に配置される。
【0078】
また、図2(b)に示すように、径外側の被保持部54が径内側のカラー部材装着部53より高くなるように螺旋多段コイル渦巻きバネ50を緩衝装置10とカラー部材30との間に配置するため、嵌合凹部33でカラー部材装着部53を嵌合するカラー部材30は、被保持部54を保持する第二保持部22は、高い位置(図2(b)において上方向)となるように組み付けられる。
【0079】
このように構成された緩衝装置10は、図8に示すように、ヒートインシュレータ3に形成された装着孔3aに装着され、エキマニ1に形成されたボルト用ボス41に螺挿される取付ボルト42によって、ボルト用ボス41に固定される。
【0080】
ヒートインシュレータ3は、図10に示すように、エンジン2の側面に取付けられたエキマニ1を覆うように形成されており、エキマニ1に設けられた複数のボルト用ボス41に対して、緩衝装置10を介して、取付ボルト42によって固定される。
【0081】
このようにエキマニ1を覆うような形状のヒートインシュレータ3は、古くはアルミメッキ鋼板が用いられていたが、近年はアルミニウムを相互に交差する2方向にそれぞれコルゲート加工した軽金属からなるコルゲートシート120を所定形状に形状加工して用いられている(図9参照)。
【0082】
詳しくは、コルゲートシート120は、図9(b),(c)に示すように、隆起部121と谷部122とが交互に連続してX方向に連なるとともに、Y方向において、各隆起部121と谷部122との高さがそれぞれ、図9(d)に示すように、一定間隔で頂部(121a,122a)と底部(121b,122b)とを繰り返して形成されたコルゲート形状のアルミ板である。
【0083】
なお、隆起部121と谷部122とは、X方向において、等間隔で幅広と幅狭とを一定間隔毎に交互に繰り返して上記コルゲート形状を形成している。
さらに詳述すると、コルゲートシート120のコルゲート形状は、それぞれがY方向に沿って延びる隆起部121と谷部122とがX方向に交互に繰り返されている。
【0084】
隆起部121は、Y方向に沿って、頂部121aと底部121bとが谷部122から立上って交互に配列され、谷部122は、Y方向に沿って、頂部である平坦部122aと底部である凹部122bとが交互に配列されている。
【0085】
頂部121aは、谷部122から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、頂部121aは内曲しており、頂部121aの基端部よりも先端部のほうが幅広になる。
【0086】
底部121bは、平坦部122aからそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部122bとで構成され、頂部121a及び凹部122b、並びに底部121b及び平坦部122aが、X方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成している。
【0087】
そして、このコルゲートシート120を所定形状に形状加工したヒートインシュレータ3において、エキマニ1に設けたボルト用ボス41に対応する箇所に装着孔3aを形成するとともに、装着孔3aの周辺のコルゲート形状を潰して略平板形状に形成する押し潰し部3bを、グロメット20の第一保持部21で保持している。
【0088】
また、立体形状に形成されたヒートインシュレータ3は、上記コルゲート形状において相互に交差するいずれか一方の方向が立体形状を構成する主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められている。
【0089】
より詳述すると、ヒートインシュレータ3は上述したようにエキマニ1の立体的な外観形状に沿った立体形状に形成されるので、ヒートインシュレータ3には屈曲部位であるひとつ、あるいは複数の稜線相当部位が形成される。本実施例では、コルゲート形状の長手方向が、これら複数の稜線相当部位のうちの主要な稜線相当部位に交差する方向となるように、立体形状へのプレス加工を施している。
【0090】
ここで、主要な稜線相当部位とは、ヒートインシュレータ3の全体的な形状を特徴付ける比較的大きな曲率を有する折り曲げ部位が連続する部位である。即ち、ヒートインシュレータ3に形成される大小種々の折り曲げ部位のうち、ヒートインシュレータ3の外観形状を実質的に決定付ける比較的長寸に亘って延びる折り曲げ部位である。
【0091】
ヒートインシュレータ3がエキマニ1に対して装着されると、エキマニ1からの振動の伝達によりヒートインシュレータ3も振動する。この振動によりヒートインシュレータ3が振動すると、主要な稜線相当部位を中心にしてその両側のヒートインシュレータ3の部位が蝶の羽根のように大きく振動する。このような振動が発生すると、ヒートインシュレータ3の稜線相当部位付近の部位が繰り返しの屈曲により金属疲労を生じクラックを発生しやすくなる。
【0092】
これに対して、本実施例のヒートインシュレータ3は、ヒートインシュレータ3に形成されているコルゲート形状の一方向が、主要な稜線相当部位に対して交差する方向、好適には直交する方向となるように定められているので、コルゲート形状が稜線相当部位を中心とする振動に対してリブの作用を実現する。これにより、ヒートインシュレータ3の振動を抑制することができ、ヒートインシュレータ3のクラックの発生を防止することができ、ヒートインシュレータ3の品質を格段に向上することができる。
【0093】
このように構成することによって、ヒートインシュレータ3は、図8に示すように、ヒートインシュレータ3に形成された装着孔3aに装着された緩衝装置10を介して、エキマニ1に設けられたボルト用ボス41に対して固定することができる。
【0094】
この様に構成した緩衝装置10を用いてヒートインシュレータ3を固定した場合の効果確認試験について、図11、図12及び図13とともに以下で説明する。
なお、図11は螺旋多段コイル渦巻きバネ50のバネ定数を確認するバネ定数確認試験の結果のグラフを示し、図12は共振ピーク削減確認試験の結果のグラフを示し、図13は実車に搭載した状態での効果確認試験の結果のグラフを示している。
【0095】
まず、緩衝装置10に装着した螺旋多段コイル渦巻きバネ50のバネ定数を確認するバネ定数確認試験を行った。詳しくは、螺旋多段コイル渦巻きバネ50に対して高さ方向の引っ張り力を作用させ、その際のバネ定数を算出した。その結果、図11に示すように、所定変位を超えてから第1バネ定数部と異なる第2バネ定数部が出現すること、つまり見かけのバネ定数が存在することを確認した。
【0096】
これは、所定変位まで、バネ定数の低い螺旋渦巻き部51に負荷が作用し、所定変位を超えるとバネ定数の高い多段コイル部52に負荷が作用することに起因すると考えられる。
【0097】
次に、緩衝装置10を用いてヒートインシュレータ3を固定する場合の効果確認試験として、ヒートインシュレータ3を緩衝装置10で加振機に固定したものと、螺旋渦巻き状の緩衝部材を用いた緩衝装置でヒートインシュレータ3を加振機に固定したものを比較例として比較した。なお、図12,図13において、緩衝装置10を用いたものを実線で示し、比較例を点線で示している。
【0098】
その結果、緩衝装置10を用いた場合と、比較例ともに、例えば、図15に示すような従来の緩衝装置に比べて、振動を吸収する緩衝効果がともにあることは確認できたが、比較例の共振ピークは、エンジン常用域に発生することを確認した(図12参照)。なお、エンジン常用域は、アイドリング回転数(850rpm)から全開回転数(7000rpm)に対する周波数30〜230Hzである。
【0099】
これに対し、緩衝装置10を用いた場合、図12に示すように、共振ピークが30Hz以下の27Hz程度で発生することが確認できた。このことから、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を備えた緩衝装置10は、エンジン常用域で共振せず、例えばエンジン常用域で共振する螺旋渦巻き状の緩衝部材を備えた緩衝装置に比べて、エンジン常用域において高い緩衝効果を得ることができることを確認できた。
【0100】
上記結果を踏まえ、緩衝装置10を用いてヒートインシュレータ3を実車に装着した場合と、比較例の緩衝装置を用いてヒートインシュレータ3を実車に装着した場合において、振動するヒートインシュレータ3の加速度について計測し比較した。
【0101】
詳しくは、1300cの実車のエンジンに、緩衝装置10や比較例の緩衝装置を用いてヒートインシュレータ3を装着し、運転者の足操作によるアクセルワークによってエンジン回転数を調整し、ヒートインシュレータ3のトラッキング測定を行った。
【0102】
その結果、図13に示すように、エンジン回転数に依存することなく、比較例の緩衝装置を用いた場合に比べて、緩衝装置10を用いた場合の方が振動を抑えることを実証できた。
【0103】
上述したように、緩衝装置10は、振動源であるエキマニ1に設けたボルト用ボス41と接続対象であるヒートインシュレータ3との間に配置し、エキマニ1に設けたボルト用ボス41とヒートインシュレータ3とを連結するとともに、エキマニ1に設けたボルト用ボス41からヒートインシュレータ3への振動の伝達を緩衝する装置であり、上記構成により、上述したように、緩衝装置10は安定して優れた制振性を奏することができる。
【0104】
詳しくは、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、平面視渦巻き状の線材で構成し、カラー部材30の装着を許容するカラー部材装着部53を、平面視渦巻き状における径方向中心部に備えるとともに、カラー部材装着部53を保持する嵌合凹部33をカラー部材30の径外側に備えたため、カラー部材30から螺旋多段コイル渦巻きバネ50に伝達された振動により、平面視渦巻き状の線材で構成した螺旋多段コイル渦巻きバネ50自身が撓み運動を行う。この撓み運動により、緩衝装置10は、カラー部材30から伝達された振動の振動エネルギーを螺旋多段コイル渦巻きバネ50の撓みの運動エネルギーに変換し、ヒートインシュレータ3に伝達する振動を抑制することができる。
【0105】
つまり、従来技術の緩衝装置5において、カラー部材10と緩衝部材8との間に、それぞれが遊動するように積極的に形成した軸線方向及び半径方向(平面方向)の隙間17の役目を螺旋多段コイル渦巻きバネ50における螺旋渦巻き部51の線材同士のクリアランスで実現し、入力振動の伝達を抑制する、つまり優れた制振性を実現している。
【0106】
また、カラー部材30の装着を許容するカラー部材装着部53を、平面視渦巻き状における径方向中心部に備え、カラー部材装着部53を保持する嵌合凹部33をカラー部材30の径外側に備えたため、螺旋多段コイル渦巻きバネ50とカラー部材30とが衝突することなく振動の伝達を抑制することができる。したがって、螺旋多段コイル渦巻きバネ50とカラー部材30との衝突によるカタカタと鳴る騒音が発生することなく、カラー部材30から螺旋多段コイル渦巻きバネ50への振動伝達を抑制する、つまり優れた制振性を奏することができる。
【0107】
また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を平面視渦巻き状の線材で構成しているため、金属繊維をメッシュ状に編み、マット状に形成した螺旋多段コイル渦巻きバネ50に比べて、製品のバラつきが少ない。したがって、安定した弾性を有する螺旋多段コイル渦巻きバネ50を構成することができる。よって、安定した制振性を有する緩衝装置10を構成することができる。
【0108】
詳しくは、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、平面視渦巻き状に成形された線材で構成するため、微細な無機繊維を取り扱う必要がなく、無機繊維を所定繊維長に切断する工程での繊維長の管理や最終製品への加工における加工工程などにおいて寸法精度の高精度の管理の困難さが解消される。これにより、寸法精度が向上され、緩衝装置10の制振性の精度及び安定性を向上することができる。
したがって、緩衝装置10を上述の構成とすることにより、振動源であるエキマニ1とヒートインシュレータ3とを、振動を伝達することなく連結することができる。
【0109】
さらに、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の平面視渦巻き状の径内側に、螺旋渦巻き部51に比べてバネ定数の高い多段コイル部52を備えたことにより、所望の緩衝特性を有する緩衝装置10を構成することができる。詳しくは、ひとつの平面視渦巻き状の螺旋多段コイル渦巻きバネ50に、見かけのバネ定数が高い多段コイル部52と、多段コイル部52と比べてバネ定数が低い螺旋渦巻き部51とを兼ね備えているため、小さな振動に対してはバネ定数が低い螺旋渦巻き部51で振動を吸収し、大きな振動に対しては、バネ定数が低い螺旋渦巻き部51で吸収しきれなかった振動を多段コイル部52で吸収するというように、例えば、大きい振動も小さい振動も多段コイル部52で振動吸収する場合と比較して、振動挙動に応じて適切な振動吸収性能を実現することができる。したがって、所望の緩衝特性を有する緩衝部材及び緩衝装置を構成することができる。
【0110】
また、高さ方向の略円筒状に巻き付けて、見かけのバネ定数の高い多段コイル部52を構成し、多段コイル部52よりバネ定数の低い螺旋渦巻き部51を、渦巻き方向に沿って高さ方向に徐々に変化する螺旋渦巻き状に構成したことにより、容易に、所望の緩衝特性を有する緩衝装置10を構成することができる。
【0111】
詳しくは、多段コイル部52と螺旋渦巻き部51とでは線材の巻付けピッチが異なるため、同じバネ定数、同じ断面径の線材を用いても、見かけのバネ定数が高い多段コイル部52と、多段コイル部52と比べてバネ定数が低い螺旋渦巻き部51とを容易に構成することができる。つまり上述したように、見かけのバネ定数が高い多段コイル部52と、多段コイル部52と比べてバネ定数が低い部分とを兼ね備える螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、振動挙動に応じて適切なバネ定数を容易に設定することができる。したがって、所望の緩衝特性を有する螺旋多段コイル渦巻きバネ50及び緩衝装置10を構成することができる。
【0112】
なお、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、円筒状の多段コイル部52と、螺旋渦巻き部51とで構成することにより、例えば、螺旋渦巻き部51のみや多段コイル部52のみで所望の高さに構成した螺旋多段コイル渦巻きバネ50と比べて、所望のバネ定数を有する螺旋多段コイル渦巻きバネ50を構成することができる。
【0113】
詳しくは、螺旋渦巻き部51のみで所望の高さの螺旋多段コイル渦巻きバネ50を構成した場合、螺旋渦巻きを構成する線材のピッチが広くなりすぎ、バネ定数が低くなり、所望の弾性を確保することができない。逆に、円筒状のつる巻きバネだけでは、径外側のグロメット20と径内側のカラー部材30とを、緩衝可能につなぐことはできない。
【0114】
また、制振性を向上するためには、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の線材の長さを長くする必要があるが、径外側がグロメット20の第二保持部22で制限された状態で、所望の制振性を確保するための線材長さで多段コイル部52のみを形成すると、螺旋渦巻きを形成する線材の巻き数が増大し、線材同士の平面方向ピッチが小さくなり、逆に平面方向の振動吸収性能が低減し、制振性を阻害することとなる。
【0115】
これに対し、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、円筒状の多段コイル部52と、螺旋渦巻き部51とで構成することにより、螺旋渦巻き部51で径方向及び高さ方向の弾性を確保し、バネ定数の高い多段コイル部52で所望の高さに構成し、所望のバネ定数を有する螺旋多段コイル渦巻きバネ50を構成することができる。
【0116】
また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を、エキマニ1に対して、被保持部54がカラー部材装着部53より離れる向きで配置することにより、緩衝装置10における制振性を向上することができる。
【0117】
詳しくは、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を多段コイル部52と螺旋渦巻き部51とで構成することにより、平面方向の弾性に加えて、高さ方向の弾性を見かけ上、二種類のバネ定数で調整することができる。つまり、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の制振性に大きな影響を及ぼす螺旋多段コイル渦巻きバネ50の弾性を、二種類のバネ定数に基づいて三次元的に調整することができる。
【0118】
また、多段コイル部52を高さ方向において狭ピッチ且つ同じ巻き径で巻き回して構成しているため、多段コイル部52における巻き回した線材同士の摩擦も振動吸収効果に寄与していると考えられる。
【0119】
さらには、螺旋多段コイル渦巻きバネ50に入力された振動のうち、被保持部54とカラー部材装着部53とが近づく方向の振幅においては、多段コイル部52を高さ方向において狭ピッチ且つ同じ巻き径で巻き回して構成しているため、巻き回し状態の線材が、高さ方向に隣接する巻き回し状態の線材の内側に入り込み、弾性力に抗して径外側に押し広げることによる振動吸収効果も得ることができる。
【0120】
また、エキマニ1に対して、被保持部54がカラー部材装着部53より離れる向きで螺旋多段コイル渦巻きバネ50を配置することによって、螺旋多段コイル渦巻きバネ50における径内側のカラー部材装着部53より、径外側の被保持部54がエキマニ1より離れることとなる。つまり、被保持部54を第二保持部22で保持する連結部23材の第一保持部21で保持されたヒートインシュレータ3が、カラー部材装着部53に巻着されるカラー部材30よりエキマニ1から離れて配置されることとなる。
【0121】
したがって、カラー部材30、及び螺旋多段コイル渦巻きバネ50を介して伝達された振動によって、ヒートインシュレータ3自体が振動した場合であっても、カラー部材30がヒートインシュレータ3よりエキマニ1から離れて配置される場合と比較して、ヒートインシュレータ3自体がエキマニ1と衝突するおそれを低減することができる。よって、ヒートインシュレータ3自体とエキマニ1との衝突による騒音の発生を抑制することができる。
このように、緩衝装置10を上記構成とすることによって、制振性をさらに向上することができる。
【0122】
また、多段コイル部52にカラー部材装着部53を備え、螺旋渦巻き部51の径方向外側部分で被保持部54を構成すること、つまり、カラー部材装着部53を備える螺旋多段コイル渦巻きバネ50における径内側に多段コイル部52を配置し、被保持部54を備える螺旋多段コイル渦巻きバネ50における径外側に螺旋渦巻き部51を配置することによって、カラー部材30を介して入力された振動を、まず径外側の螺旋渦巻き部51に入力され、平面方向及び高さ方向の弾性で緩衝し、螺旋渦巻き部51で緩衝された振動を見かけのバネ定数の高い多段コイル部52でさらに緩衝する。したがって、ヒートインシュレータ3自体がエキマニ1と衝突するおそれを、さらに低減することができる。よって、ヒートインシュレータ3自体とエキマニ1との衝突による騒音の発生を抑制することができる。
【0123】
また、カラー部材装着部53及び被保持部54を円弧形状で形成し、第二保持部22を平面視円形で形成し、カラー部材30を円筒状に形成するとともに、嵌合凹部33を円筒状の側面においてカラー部材装着部53の嵌着を許容する嵌合凹部33で形成することにより、容易に螺旋多段コイル渦巻きバネ50とカラー部材30とを嵌着させるとともに、第二保持部22で被保持部54を保持することができる。
【0124】
詳しくは、カラー部材装着部53及び被保持部54を円弧状に形成するとともに、嵌合凹部33を円筒状の側面においてカラー部材装着部53の嵌着を許容する嵌合凹部33で形成するため、円弧状に形成したカラー部材装着部53を、円筒状に形成したカラー部材30の側面における嵌合凹部33に嵌着することで、容易に螺旋多段コイル渦巻きバネ50とカラー部材30とを嵌着させることができる。また、円弧状に形成したカラー部材装着部53と、円筒状の側面に形成した嵌合凹部33とを嵌着するため、カラー部材30に対する周方向の位置を問わず、容易に螺旋多段コイル渦巻きバネ50とカラー部材30とを嵌着させることができる。
また、被保持部54を円弧状で形成したため、周方向の位置を問わず第二保持部22で保持することができる。
【0125】
このように、容易に螺旋多段コイル渦巻きバネ50とカラー部材30とを嵌着させるとともに、第二保持部22で被保持部54を保持することができるため、緩衝装置10の組み立て性を向上することができる。
【0126】
さらには、例えば、螺旋多段コイル渦巻きバネ50のカラー部材装着部53を、別部材を用いて、カラー部材30の嵌合凹部33に装着する場合と比較して、円弧状に形成したカラー部材装着部53を、円筒状に形成したカラー部材30の側面における嵌合凹部33に嵌着することにより、部品点数を低減することができる。したがって、緩衝装置10の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0127】
さらにまた、嵌合凹部33とカラー部材装着部53との間に制振性を向上するための隙間Sを設けているため、緩衝装置10における制振性をさらに向上することができる。詳しくは、円弧状に形成したカラー部材装着部53を嵌合凹部33で保持する状態において制振性を向上するための隙間Sを形成しているため、つまり、制振性向上のためにわずか0.2mm程度の隙間Sを形成しているため、従来技術の緩衝装置5のように、カラー部材10と緩衝部材8との間に形成し、それぞれが遊動するように積極的に形成した軸線方向及び半径方向(平面方向)の隙間17(図15参照)のように、カラー部材装着部53と嵌合凹部33において衝突音が生じることなく、カラー部材30を介して入力された振動を隙間Sで吸収することができる。また、隙間Sにより、熱の伝達を遮断することができる。
【0128】
また、カラー部材30を、径方向に適宜の厚みを有する厚肉部31b,32bと、リング部の上下端の一方から径外側向きに突出する円盤状のリング部31a,32aとで片断面が略L字状に構成された上側カラー部材31,下側カラー部材32を、リング部31a,32aが外側となるように、厚肉部31bの底面31baと、厚肉部32bの上面32baとを対向させて組み付けて構成することにより、制振性の高い緩衝装置10の製品信頼性を向上することができる。
【0129】
詳しくは、カラー部材30を、径方向に適宜の厚みを有する厚肉部31b,32bと、リング部の上下端の一方から径外側向きに突出する円盤状のリング部31a,32aとで片断面が略L字状に構成した上側カラー部材31及び下側カラー部材32を、リング部31a,32aが外側となるように、厚肉部31bの底面31baと、厚肉部32bの上面32baとを対向させて組み付けて構成することによって、対向する厚肉部31b,32bと、両リング部31a,32aとで囲まれる空間で嵌合凹部33を構成することができる。
【0130】
また、組み付け状態の上側カラー部材31,下側カラー部材32の厚肉部31bの底面31baと、厚肉部32bの上面32baとを対向させているため、組み付けられたカラー部材30のボルト孔40に取付ボルト42を挿通してエキマニ1に固定する際に、両リング部31a,32aで構成する嵌合凹部33が取付ボルト42の締結圧力によって、変形することを防止できる。したがって、カラー部材装着部53と嵌合凹部33との間に形成された制振性向上のための隙間Sを確保することができ、カラー部材装着部53と嵌合凹部33において衝突音が生じることなく、カラー部材30を介して入力された振動を隙間Sで吸収することができる。また、隙間Sにより、熱の伝達を遮断することができる。
【0131】
また、相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板で構成し、立体形状をなすヒートインシュレータ3であって、押し潰し部3bのコルゲート形状を押し潰して略平板形状に形成し、相互に交差するいずれか一方の方向が立体形状を構成する主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められるとともに、上述の緩衝装置を用い、エキマニ1をエンジン2及び/またはそのエキマニ1で構成するとともに、第一保持部21で押し潰し部3bを保持する構成としたことにより、例えば、自動車等のエンジン2及び/またはそのエキマニ1からの熱の放散及び振動の伝達を抑制することのできるヒートインシュレータ3を構成することができる。
【0132】
詳しくは、例えば、適宜の耐熱性能を有する材料で構成するヒートインシュレータ3を、制振性の高い上述の緩衝装置で取付けるため、熱源であるエンジン2及び/またはそのエキマニ1からの熱の放散を防止するとともに、振動源でもあるエンジン2及び/またはそのエキマニ1からの振動をヒートインシュレータ3に伝達することを防止できる。
【0133】
したがって、例えば、振動減から入力された振動に対してヒートインシュレータ3自体が共振する場合と比較して、制振性の高い状態でヒートインシュレータ3を取付けることができる。
【0134】
また、ヒートインシュレータ3を相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板で構成するため、変形加工性の高いヒートインシュレータ3を構成することができる。したがって、例えば複雑な形状のエンジン2及び/またはそのエキマニ1であっても、それらの形状に応じた形状のヒートインシュレータ3を形成できる。また、それらの形状に応じた形状のヒートインシュレータ3を取付けできるため、エンジン2及び/またはそのエキマニ1からの熱の放散をより確実に防止することができる。
【0135】
さらにまた、相互に交差する方向を、直交するX方向及びY方向とするとともに、コルゲート形状を、それぞれがX方向に沿って延びる隆起部と谷部とがY方向に交互に繰り返され、隆起部は、X方向に沿って、頂部121aと底部121bとが谷部から立上って交互に配列され、谷部は、X方向に沿って、平坦部と凹部とが交互に配列され、頂部121aは、谷部から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、頂部121aは内曲しており、頂部121aの基端部よりも先端部のほうが幅広になり、底部121bは、平坦部からそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部とで構成され、頂部121a及び凹部、並びに底部121b及び平坦部が、Y方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成することにより、ヒートインシュレータ3の形状加工性がさらに向上するため、より取付け対象であるエンジン2及び/またはそのエキマニ1の形状にマッチした形状を容易に形成することができる。したがって、エンジン2及び/またはそのエキマニ1からの熱の放散をさらに確実に防止することができる。
【0136】
なお、カラー部材30を構成する上側カラー部材31,下側カラー部材32のうち、下側カラー部材32におけるリング部32aに、図14に示すように、第二保持部22に当接可能な大径で形成した大径フランジ部35を備えてもよい。
これにより、より制振性の高い緩衝装置10を構成することができる。
【0137】
詳しくは、カラー部材30を構成する上側カラー部材31及び下側カラー部材32のうちエキマニ1側の下側カラー部材32のリング部32aに、第二保持部22に当接可能な大径で形成した大径フランジ部35を備えたことにより、大きな振幅により、ヒートインシュレータ3に結合するグロメット20が、エキマニ1側に変位した場合であっても、下側カラー部材32のリング部32aに備えた大径フランジ部35がグロメット20の第二保持部22に当接し、第二保持部22が直接、エキマニ1に当接することを防止できる。したがって、例えば、共振等による大きな振幅に対しても確実な制振性を確保することができる。
【0138】
上述の説明では、下側カラー部材32のリング部32a自体を径大に形成して大径フランジ部35を構成したが、下側カラー部材32におけるリング部32aに別部材の大径フランジ部35を固定して構成してもよい。
【0139】
また、本実施例の緩衝装置10は、自動車のエンジン2に装着されるエキマニ1用のヒートインシュレータ3に関連して説明されたが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、例えば、車体の底部をカバーするアンダーカバー等の自動車の他の部位に装着される種々の用途のカバー類の取付に実施してもよい。また、自動車以外の種々の用途のカバー類の取付に実施できるものである。
【0140】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の振動対象部材は、エキマニ1に対応し、
以下同様に、
接続対象部材は、ヒートインシュレータ3に対応し、
緩衝部材は、螺旋多段コイル渦巻きバネ50に対応し、
結合部材は、グロメット20に対応し、
締結部材は、取付ボルト42に対応し、
締結部材挿通部は、ボルト孔40に対応し、
緩衝部材保持部及び嵌着凹部は、嵌合凹部33に対応し、
他の部分及び螺旋渦巻き部は、螺旋渦巻き部51に対応し、
高バネ部分及びつる巻き部は、多段コイル部52に対応し、
厚肉リング部は、厚肉部31b,32bに対応し、
厚肉リング部の端部は、厚肉部31bの底面31ba及び厚肉部32bの上面32baに対応し、
フランジ部は、リング部31a,32aに対応し、
カラー構成部品は、上側カラー部材31及び下側カラー部材32に対応し、
振動対象部材側構成部品は、下側カラー部材32に対応し、
接続対象部材側構成部品は、上側カラー部材31に対応し、
金属製カバーは、ヒートインシュレータ3に対応し、
内燃機関は、エンジン2に対応し、
排気経路は、エキマニ1に対応し、
押し潰し対象部位は、押し潰し部3bに対応し、
第一方向は、X方向に対応し、
第二方向は、Y方向に対応し、
第一起立部は、頂部121aに対応し、
第二起立部は、底部121bに対応するも、この発明は、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0141】
例えば、本実施形態では、カラー部材30において、第二保持部22、連結部23及び第一保持部21は、エキマニ1に設けたボルト用ボス41の側からこの順序で配置したが、エキマニ1に設けたボルト用ボス41の側から第一保持部21、連結部23及び第二保持部22を配置してもよい。
【0142】
また、螺旋渦巻き部51に比べて見かけのバネ定数の高い多段コイル部52は、狭ピッチで円筒状に線材を巻き回して構成したが、バネ定数の高い線材、あるいは同じバネ定数であっても径大な線材等とで構成してもよい。また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50における径外側を螺旋渦巻き部51とし、径内側を多段コイル部52としたが、螺旋多段コイル渦巻きバネ50における径内側に螺旋渦巻き部51を配置し、径外側に多段コイル部52を配置してもよい。さらには、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の中間部分に螺旋渦巻き部51を構成し、その径外側及び径内側の両側に多段コイル部52を備えてもよく、また、螺旋多段コイル渦巻きバネ50の中間部分に多段コイル部52を構成し、その径外側及び径内側の両側に螺旋渦巻き部51を備えてもよい。
【0143】
また、上述のグロメット20は、ヒートインシュレータ3を径外側に保持する第一保持部21と、螺旋多段コイル渦巻きバネ50を径内側に保持する第二保持部22と、第一保持部21と第二保持部22とを連結する連結部23とで、片断面略S字形状となる円環状に構成したが、径外側でヒートインシュレータ3を保持し、径内側で螺旋多段コイル渦巻きバネ50を保持できればよく、例えば、ヒートインシュレータ3及び螺旋多段コイル渦巻きバネ50を保持する倒位のU字型やV字型の保持部を外向きに配置するとともに、それらの保持部の間を連結する片断面形状となる円環部材で構成してもよい。
【0144】
また、上述の説明においては、下向きに凸な上側カラー部材31と、下側カラー部材32と嵌着し、かしめてカラー部材30を構成し、この向きで緩衝装置10に装備したが、上側カラー部材31と、下側カラー部材32とが上下逆さまとなる上下逆向きで緩衝装置10に装備してもよい。
【符号の説明】
【0145】
1…エキマニ
2…エンジン
3…ヒートインシュレータ
3b…押し潰し部
10…緩衝装置
20…グロメット
21…第一保持部
22…第二保持部
23…連結部
30…カラー部材
31…上側カラー部材
32…下側カラー部材
31a,32a…リング部
31b,32b…厚肉部
31ba…底面
32ba…上面
33…嵌合凹部
35…大径フランジ部
40…ボルト孔
42…取付ボルト
50…螺旋多段コイル渦巻きバネ
51…螺旋渦巻き部
52…多段コイル部
53…カラー部材装着部
54…被保持部
121…隆起部
122…谷部
121a…頂部
121b…底部
122a…平坦部
122b…凹部
S…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源である振動対象部材と接続対象である接続対象部材との間に配置し、前記振動対象部材と前記接続対象部材とを連結するとともに、前記振動対象部材から前記接続対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、
前記振動を緩衝する緩衝部材、該緩衝部材及び前記接続対象部材を結合する結合部材、並びに、前記振動対象部材に締結する締結部材と前記緩衝部材との間に介在させるカラー部材で構成し、
前記結合部材を、
前記緩衝部材を外囲するとともに、
該接続対象部材を径外側に保持する第一保持部と、
該緩衝部材を径内側に保持する第二保持部と、
前記第一保持部と前記第二保持部とを連結する連結部とで構成し、
前記カラー部材を、
前記締結部材の挿通を許容する締結部材挿通部を径内側に備えるとともに、前記カラー部材装着部を保持する緩衝部材保持部を径外側に備えて構成し、
前記緩衝部材を、平面視渦巻き状の線材で構成するとともに、
前記カラー部材の装着を許容するカラー部材装着部を、前記平面視渦巻き状における径方向中心部に備えるとともに、前記第二保持部に保持される被保持部を、前記平面視渦巻き状における径方向外側部に備え、
前記緩衝部材の前記平面視渦巻き状の少なくとも一部に、他の部分に比べてバネ定数の高い高バネ部分を備えた
緩衝装置。
【請求項2】
前記高バネ部分を、高さ方向の略円筒状に巻き付けたつる巻き部で構成し、
該つる巻き部よりバネ定数の低い前記他の部分を、渦巻き方向に沿って高さ方向に徐々に変化する螺旋渦巻き部で構成した
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記緩衝部材を、
前記振動対象部材に対して、前記被保持部が前記カラー部材装着部より離れる向きで配置した
請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記カラー部材装着部を、前記つる巻き部に備え、
前記被保持部を、前記螺旋渦巻き部を径方向外側部分で構成した
請求項3に記載の緩衝装置。
【請求項5】
前記カラー部材装着部及び前記被保持部を円弧形状で形成し、
前記第二保持部を平面視円形で形成し、
前記カラー部材を円筒状に形成するとともに、前記緩衝部材保持部を前記円筒状の側面において前記カラー部材装着部の嵌着を許容する嵌着凹部で形成した
請求項1乃至4のうちいずれかひとつに記載の緩衝装置。
【請求項6】
前記嵌着凹部と前記カラー部材装着部との間に制振性向上のための隙間を設けた
請求項5に記載の緩衝装置。
【請求項7】
前記カラー部材を、
前記締結部材挿通部を構成し、径方向に適宜の厚みを有する厚肉リング部と、該厚肉リング部の上下端の一方から径外側向きに突出する円盤状のフランジ部とで片断面が略L字状に構成したカラー構成部品を、前記フランジ部が外側となるように、前記厚肉リング部の端部同士を対向させて組み付けて構成した
請求項6に記載の緩衝装置。
【請求項8】
前記カラー部材を構成するカラー構成部品を、
前記振動対象部材側の振動対象部材側構成部品と、前記接続対象部材側の接続対象部材側構成部品とで構成し、
前記振動対象部材側構成部品における前記フランジ部に、
前記第二保持部に当接可能な大径で形成した大径フランジ部を備えた
請求項7に記載の緩衝装置。
【請求項9】
相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板で構成し、立体形状をなす金属製カバーであって、
押し潰し対象部位の前記コルゲート形状を押し潰して略平板形状に形成し、
前記相互に交差するいずれか一方の方向が前記立体形状を構成する主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められるとともに、
請求項1乃至8のうちいずれかひとつに記載の緩衝装置を用い、
前記振動対象部材を内燃機関及び/またはその排気経路で構成するとともに、前記第一保持部で前記押し潰し対象部位を保持する構成とした
金属製カバー。
【請求項10】
前記相互に交差する方向を、直交する第一方向及び第二方向とするとともに、
前記コルゲート形状を、
それぞれが前記第一方向に沿って延びる隆起部と谷部とが前記第二方向に交互に繰り返され、
前記隆起部は、前記第一方向に沿って、第一起立部と第二起立部とが前記谷部から立上って交互に配列され、
前記谷部は、前記第一方向に沿って、平坦部と凹部とが交互に配列され、
前記第一起立部は、前記谷部から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、前記側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、前記第一起立部は内曲しており、前記第一起立部の基端部よりも先端部のほうが幅広になり、
前記第二起立部は、平坦部からそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部とで構成され、
前記第一起立部及び前記凹部、並びに前記第二起立部及び平坦部が、前記第二方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成した
請求項9に記載の金属製カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−132389(P2012−132389A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286348(P2010−286348)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【特許番号】特許第4901992号(P4901992)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(391061831)三和パッキング工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】