説明

繊維強化未硬化フィルムの製造方法および繊維強化未硬化フィルム

【課題】繊維強化未硬化フィルム中に気泡が残り難く、比較的強度の弱い基材を用いる場合でも基材の破壊を防止でき、繊維強化未硬化フィルムを薄型化することができる、繊維強化未硬化フィルムの製造方法の提供。
【解決手段】熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー3上に塗布し、液状塗膜7を形成する第一の工程と、前記第一の工程で形成された液状塗膜中に、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である繊維質基材9を埋設させる第二の工程と、前記第二の工程で前記液状塗膜中に前記繊維質基材を埋設させた後、前記液状塗膜中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得る第三の工程とを有する繊維強化未硬化フィルム1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維質基材で強化された未硬化フィルム(以下「繊維強化未硬化フィルム」という。)の製造方法および繊維強化未硬化フィルム、この繊維強化未硬化フィルムを用いて得られる接着シートおよびプリント配線用積層板、ならびに、このプリント配線用積層板を用いて得られる電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、特にノートパソコンや携帯電話等の携帯用電子機器の分野において、小型化、薄型化が益々進んでいる。このような電子機器に使用されるプリント配線板においては、高密度実装に対応するため、より一層の微細配線化、高精度化、小型化が課題となっている。
【0003】
電子機器の小型化および高性能化を図るため、多層プリント配線板ではその回路を構成している導体の幅をより細くし、隙間なく配置することが望まれている。
このような要望に応えるために、銅箔を極力薄くすること(例えば、約12μm以下)が望まれるが、銅箔を薄くするとその銅箔を貼り付ける積層板の表面凹凸の影響を大きく受けることとなる。そのため、積層板の表面平滑性を更に向上することが要求されている。
【0004】
プリント配線板へ電子部品を実装する方式としては、チップマウンターを用いて行う方式が多用されている。
プリント配線板への電子部品の実装は、製造時の熱履歴により反りやねじれ等の寸法変化が生じたプリント配線板に対してなされる。
従来、繊維質基材で強化された未硬化シートであるプリプレグを構成する基材として、MIL規格1080タイプ等のガラス繊維を用いて構成される織布(以下「ガラスクロス」ともいう。)が使用されていたため、寸法変化の影響を小さくすることができていた。しかしながら、より薄いプリプレグを得る目的でより薄いガラスクロスを使用する場合、ガラスクロスにワニスを含浸させる工程において、ガラスクロスの目地が歪む、または、ガラスクロスにワニスを均一に含浸できずに気泡(ボイド)が残る等の問題がある。
【0005】
プリント配線板の製造技術においては、近年、内層回路板の導体層上に有機絶縁層を交互に積み上げて、多層プリント配線板を製造するビルドアップ工法が注目されており、熱硬化性樹脂付き銅箔を使用し、真空積層プレスにより多層プリント配線板を製造する工法が、携帯用電子機器向けに広く行われている。
【0006】
このビルドアップ工法には、樹脂付き銅箔(RCC)や樹脂フィルムが用いられている。しかしながら、補強繊維を有しないフィルム状接着剤単独のものは、寸法安定性、機械的強度、耐熱性等に問題があり、スルーホール接続信頼性も問題視されている。また、携帯機器に多く使用されているが、僅かな衝撃で導通不良等の問題も発生している。
そのため、機械的強度や熱による変形の少なさの点から、ガラスクロス、無機繊維ウエブ、有機繊維ウエブ等からなる繊維質基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂組成物を含浸し、いわゆるAないしBステージとした未硬化状態のプリプレグが好んで使用されるようになってきている。
このようなプリプレグを構成する繊維質基材としては、寸法安定性が良好であるという点から、特にMIL規格1080タイプのガラスクロス、アラミド繊維不織布等が好適に使用されている。
【0007】
繊維強化未硬化フィルムの製造方法においては、一般的に、縦型塗工装置が使用されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
図3に、従来の縦型塗工装置を用いた繊維強化未硬化フィルムの製造方法の一例を示す。この縦型塗工装置は、基材31にワニス32を含浸させた後、垂直方向に引き上げ、ロールニップ33で過剰分のワニス32を掻き落とす。
【0008】
他の繊維強化未硬化フィルムの製造方法としては、特許文献4に、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスをダイコーターで塗布して、80〜120℃で溶剤を揮発乾燥した後、乾燥固化させた樹脂面にガラスクロスを50℃、線圧2kg/cmの条件で熱ラミネートして圧入する方法が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−269931号公報
【特許文献2】特開2003−285327号公報
【特許文献3】特開2004−196920号公報
【特許文献4】特開2004−241394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、高密度実装に対応するためガラスクロスのより薄いものが要求されており、より細いフィラメントを用いた非常に薄いガラスクロスが使用されるようになってきている。しかしながら、このような細いフィラメントを用いたガラスクロスは、繊維間の空隙が小さいため、含浸時ワニスの浸透が不完全であること、フィラメント間の空気置換が不十分で乾燥プリプレグに気泡(ボイド)が残存し、加熱圧力成型後もその部分の気泡は除去できずに残るという問題がある。繊維強化未硬化フィルムの加熱圧力成型後も基板内に気泡が残存すると、基板の孔加工後のメッキ処理時に薬液浸入によるマイグレーションや、熱伸縮特性、絶縁特性、耐湿特性、誘電特性等に問題を引き起こす要因となり得る。即ち、プリプレグ内に残存した気泡は、微細な回路構成材に致命的な欠陥を引き起こすおそれがある。
【0011】
縦型塗工装置においては、過剰量のワニスを除去するために、スクイズロール等で強く剪断力をかける必要があるため、ロール等を通過する際に大きな荷重がかかる。また、過剰量のワニスを付着させた後に垂直方向に引上げるため樹脂垂れがおきて均一な厚さになり難い上に、ワニスの重さにより基材が破壊されるという問題がある。例えば、樹脂濃度20質量%のワニスを使用する場合には、基材に当量のワニスを塗布するためにはスクイズロール後で基材質量の5倍、スクイズロール前だと7〜10倍程度の質量が上乗せになって垂直に持ち上げられることになる。このようなことはガラスクロスが薄くなるほどに問題が大きくなり、幅方向でのゆがみ、縦目、横目の織り構造が歪んだり、破断してしまうことにつながって生産は困難を極める。
このように、縦型塗工装置を用いる方法は、薄い基材への応用では問題が多く、目地のズレによる基材分布の不均一構造と付着斑、それによる厚さ斑、気泡等による不均一基板構造につながる。
このような繊維強化未硬化フィルムを用いて作製したプリント配線板用積層板は、そりねじれ、線膨張率、孔加工性等の物理特性や、種々の電気特性等において均一性にかけたものになる。
これらの対策として、ロール等を通過する際の荷重を低減するために塗工速度を大幅に落とすことが考えられるが、本質的欠陥は改善できない。
このような問題は、基材の厚さが20μm以下の極めて薄いものである場合において、基材の構造強度が弱くなるため、特に緯糸(横糸)フィラメントのズレを生じやすく、織り糸構造の破壊と気泡抱き込み、付着斑を生じるという問題がある。
【0012】
特許文献4に記載された方法(以下「ドライラミネート法」という。これに対して本発明の方法を「ウェットラミネート法」ということもある。)では、乾燥固化されたフィルムとのラミネートであり、溶剤の含まない高い粘度での接合であるため、特に繊維の交差部の濡れと浸透が不十分であり、繊維質基材の空気層が残って成形後でも気泡が生じやすく、加熱加圧工程後も気泡が残りやすいという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、繊維強化未硬化フィルム中に気泡が残り難く、比較的強度の弱い基材を用いる場合でも基材の破壊を防止でき、繊維強化未硬化フィルムを薄型化することができる、繊維強化未硬化フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、気泡が少ない繊維強化未硬化フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、気泡が少ない接着シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、薄型で、平滑性に優れ、比誘電率および誘電正接が低いプリント配線用積層板を提供することを目的とする。
また、本発明は、小型化可能で、比誘電率および誘電正接が低い電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー上に塗布し、液状塗膜を形成する第一の工程と、上記第一の工程で形成された液状塗膜中に、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である繊維質基材を埋設させる第二の工程と、上記第二の工程で上記液状塗膜中に上記繊維質基材を埋設させた後、上記液状塗膜中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得る第三の工程とを有する繊維強化未硬化フィルムの製造方法が、繊維強化未硬化フィルム中に気泡が残り難く、比較的強度の弱い基材を用いる場合でも基材の破壊を防止でき、繊維強化未硬化フィルムを薄型化することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明は下記(1)〜(21)を提供する。
(1)熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー上に塗布し、液状塗膜を形成する第一の工程と、
前記第一の工程で形成された液状塗膜中に、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である繊維質基材を埋設させる第二の工程と、
前記第二の工程で前記液状塗膜中に前記繊維質基材を埋設させた後、前記液状塗膜中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得る第三の工程とを有する繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0016】
(2)前記繊維質基材が、ガラス繊維またはアラミド繊維を用いて構成される織布または不織布である上記(1)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0017】
(3)前記ガラス繊維を用いて構成される織布が、平均直径3〜9μmのフィラメントからなり、単位質量が5〜50g/m2である上記(2)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0018】
(4)前記ガラス繊維を用いて構成される織布が、水流ジェット処理および拡幅扁平化処理からなる群から選択される少なくとも1種の開繊処理により、フィラメント結束が緩和されたガラス繊維を用いて構成される織布である上記(2)または(3)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0019】
(5)前記ガラス繊維を用いて構成される織布が、縦糸密度40〜100本/inch、かつ、横糸密度25〜100本/inchである上記(2)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0020】
(6)前記アラミド繊維を用いて構成される不織布が、繊維と耐熱性樹脂とを含み、
前記繊維が繊維太さ2デニール以下のパラフェニレンテレフタラミド繊維を50質量%以上含み、
前記不織布中の前記耐熱性樹脂の含有量が、5〜30質量%であり、
前記不織布の単位質量が20〜80g/m2である上記(2)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0021】
(7)前記熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の含有量が、5〜45質量%である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0022】
(8)前記繊維質基材と前記熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分との合計100質量%中、前記樹脂成分の含有量が40〜75質量%である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0023】
(9)前記熱硬化性樹脂が、両末端に官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル樹脂および/またはエポキシ樹脂である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0024】
(10)前記熱硬化性樹脂組成物が、数平均分子量500〜5,000の両末端にスチレン官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)100質量部と、ビニル芳香族炭化水素モノマーに由来する繰返し単位と共役ジエンモノマーに由来する繰返し単位とを含むブロック共重合体(B)50〜250質量部とを含有する熱硬化性樹脂組成物である上記(9)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0025】
(11)前記熱硬化性樹脂組成物が、1つ以上のヒドロキシ基と2つ以上のエポキシ基とを有する重量平均分子量1,500〜70,000の直鎖状エポキシ樹脂(C)と、
フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部を脂肪酸でエステル化した変性フェノールノボラック(D)とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記変性フェノールノボラック(D)の含有量が、前記直鎖状エポキシ樹脂(C)100質量部に対して30〜200質量部である上記(9)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0026】
(12)前記エポキシ樹脂組成物が、更にイソシアネート化合物を含有する上記(11)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0027】
(13)前記エポキシ樹脂組成物が、更にジビニルベンゼンを含有する上記(11)または(12)に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0028】
(14)前記熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の含有量が、10〜40質量%である上記(1)〜(13)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0029】
(15)繊維強化未硬化フィルムの厚さが、10〜120μmである上記(1)〜(14)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0030】
(16)更に、前記第二の工程と前記第三の工程との間に、前記第二の工程で前記繊維質基材が埋設された前記液状塗膜を加圧して脱泡および表面を平滑化する第四の工程を有する上記(1)〜(15)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0031】
(17)更に、前記第三の工程で得られた繊維強化未硬化フィルムの表面に、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、前記揮発性溶剤を揮発させる第五の工程を有する上記(1)〜(16)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【0032】
(18)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法により得られる繊維強化未硬化フィルム。
【0033】
(19)上記(18)に記載の繊維強化未硬化フィルムからなる接着シート。
【0034】
(20)上記(18)に記載の繊維強化未硬化フィルムを硬化させて得られる絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に形成された導体層とを有するプリント配線用積層板。
【0035】
(21)上記(20)に記載のプリント配線用積層板を用いて得られる電子部品。
【発明の効果】
【0036】
本発明の繊維強化未硬化フィルムの製造方法は、繊維強化未硬化フィルム中に気泡が残り難く、比較的強度の弱い基材を用いる場合でも基材の破壊を防止でき、繊維強化未硬化フィルムを薄型化することができる。
本発明の繊維強化未硬化フィルムおよび接着シートは、気泡が少ない。
本発明のプリント配線用積層板は、薄型で、平滑性に優れ、比誘電率および誘電正接が低い。
本発明の電子部品は、小型化可能で、比誘電率および誘電正接が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の繊維強化未硬化フィルムの製造方法(以下「本発明の製造方法」という。)は、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー上に塗布し、液状塗膜を形成する第一の工程と、上記第一の工程で形成された液状塗膜中に、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である繊維質基材を埋設させる第二の工程と、上記第二の工程で上記液状塗膜中に上記繊維質基材を埋設させた後、上記液状塗膜中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得る第三の工程とを有する繊維強化未硬化フィルムの製造方法である。
なお、従来のプリプレグは、成形後で例えば250μm程度の厚さを有する、100μmを超える厚さのシート状であるのに対して、本発明は好ましくは100μm以下の薄いフィルム状であるので繊維強化未硬化フィルムと称する。
【0038】
本発明の製造方法の一例を図を用いて説明する。図1は、本発明の製造方法の好適な一例を示す模式図である。
まず、有機フィルム、金属箔等の支持体キャリヤー3は、グラビアコーター等の塗工装置5に送られ、ワニス(熱硬化性樹脂組成物)が表面に塗布され、液状塗膜7が形成される(第一の工程)。
次に、液状塗膜7中に、上記繊維質基材9を埋設させる(第二の工程)。
次に、必要に応じて、加圧ロール11によって、繊維質基材9が埋設された液状塗膜7を加圧して脱泡および表面を平滑化する(第四の工程)。
次に、乾燥炉13によって、液状塗膜7中の揮発性溶剤を揮発させることにより液状塗膜を固化し、繊維質基材と一体化させて、繊維強化未硬化フィルム1を得る(第三の工程)。
【0039】
続いて、図2に本発明の製造方法の他の好適な一例を示す。
図2は、本発明の製造方法の他の好適な一例を示す模式図である。
乾燥炉13によって、液状塗膜7中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させる工程までは、図1に示す方法と同様であるが、その後更に、得られた繊維強化未硬化フィルムの表面に、塗工装置15によって熱硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥炉17によって揮発性溶剤を揮発させて、繊維強化未硬化フィルム1を得る(第五の工程)。
以下、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0040】
<第一の工程>
上記第一の工程は、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー上に塗布し、液状塗膜を形成する。
本発明は、特許文献4等に記載されたドライラミネート法で通常使用する熱硬化性樹脂組成物よりも粘度が低い熱硬化性樹脂組成物を使用する。そして、後述する第二の工程において、熱硬化性樹脂組成物を乾燥させずに、熱硬化性樹脂組成物からなる液状塗膜中に繊維質基材を埋設する。そのため、繊維質基材へ樹脂が含浸し易くなり、細いフィラメントで構成された繊維質基材を用いた場合でも気泡の残存が少ない繊維強化未硬化フィルムを得ることができる。
【0041】
本発明の製造方法に用いられる支持体キャリヤーは、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂等の有機フィルム:銅箔、アルミ箔,ステンレス鋼箔等の金属箔;等が挙げられる。支持体キャリヤーに銅箔を用いた場合、本発明の製造方法により得られた支持体キャリヤー付き繊維強化未硬化フィルムをそのまま加熱硬化することにより、簡便な方法でプリント配線用片面銅箔張積層板とすることができる。
また、上記支持体はシリコーン系化合物等で離型処理されていてもよい。
【0042】
上記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、25℃における粘度が1000mPa・s以下であるものであれば特に限定されない。
上記熱硬化性樹脂組成物の粘度がこの範囲であると、繊維質基材への含浸性が良好となり、織布構造においては糸束、フィラメント束へのワニスの浸透性がよく、不織布構造においては個々の繊維表面との濡れ性が良いために、気泡が出にくく、気泡欠点のない繊維強化未硬化フィルムを得ることができる。
また、所望の樹脂量の塗布が容易で、均質な樹脂の浸透ができるため気泡が残りにくく、より繊維間の隙間が小さい繊維質基材を用いた場合でも気泡が少ない繊維強化未硬化フィルムを得ることができる点から、上記熱硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、20〜1000mPa・sであることが好ましく、50〜500mPa・sであることがより好ましい。
【0043】
なお、本明細書において、粘度は、E型粘度計(TVE−22LT、東機産業社製)を用いて、25℃で測定した値で示される。
【0044】
上記熱硬化性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、両末端にスチレン官能基、ビニル基、グリシジル基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、両末端にスチレン官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂が、誘電特性(例えば、低誘電率、低誘電正接)、低吸水性、塗膜形成性等に優れる点から好ましい。
【0045】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に、本願出願人が先に出願した特願2006−215464号明細書に記載されたオリゴフェニレンエーテル系樹脂組成物が好ましい。具体的には、例えば、数平均分子量500〜5000の両末端にスチレン官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)100質量部と、ビニル芳香族炭化水素モノマーに由来する繰返し単位と共役ジエンモノマーに由来する繰返し単位とを含むブロック共重合体(B)50〜250質量部とを含有する熱硬化性樹脂組成物が、誘電特性(例えば、低誘電率、低誘電正接)、低弾性、塗膜形成性に優れる点から好適に挙げられる。
【0046】
上記熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)としては、例えば、特開2006−28111号公報に記載されている2,2′,3,3′,5,5′−ヘキサメチルビフェニル‐4,4′−ジオール−2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物が挙げられる。
【0047】
このような熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)は、公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。例えば、OPE−2st 2200(三菱ガス化学社製)を好適に使用することができる。
【0048】
熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)の数平均分子量が5,000を超えると、揮発性溶剤に溶解し難くなる。一方、数平均分子量が500未満であると、架橋密度が高くなりすぎるため、硬化物の弾性率や可撓性に悪影響がでる。そのため、熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)の数平均分子量は、500〜5,000であり、1、000〜3、000であるのが好ましい。
【0049】
上記ブロック共重合体(B)は、ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部と、共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部とから構成されるブロック共重合体である。
上記ブロック共重合体(B)としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0050】
ブロック共重合体(B)は、公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。例えば、TR2003(JSR社製)を好適に使用することができる。
【0051】
上記熱硬化性樹脂組成物におけるブロック共重合体(B)の含有量は、熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)100質量部に対して、50〜250質量部であり、65〜200質量部であるのが好ましく、80〜150であるのがより好ましい。ブロック共重合体(B)の含有量がこの範囲であると、フィルム形成能、熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)との相溶性に優れる。
【0052】
上記オリゴフェニレンエーテル樹脂組成物に用いられる揮発性溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
揮発性溶剤の含有量は、組成物の粘度が上記の範囲になるように適宜調整すればよく特に限定されないが、樹脂成分が5〜45質量%となるように使用するのが好ましく、10〜40質量%となるように使用するのがより好ましく、10〜35質量%となるように使用するのが更に好ましい。本発明は、低濃度領域でも溶剤込みの全体重量が多くなっても均一塗布に支障なく塗工できる。また、組成物中の樹脂成分の割合がこの範囲であると、繊維質基材に含浸しやすくなり、気泡を少なくすることができる。このような低濃度では、従来の縦型含浸装置では、所望の樹脂付着量を得るためには大量のワニス付着量にしなければならず、そうすると垂直方向に進行する際に含浸した樹脂が垂れて不均一な縦縞になって樹脂斑のひどいものになる上に、塗布膜内部に溶剤が残って表面だけが乾燥するといった現象が起きて均一な未硬化状態にはならない。
【0054】
上記オリゴフェニレンエーテル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー、粘着性付与剤、難燃化剤、消泡剤、流動調整剤、成膜補助剤、分散助剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0055】
また、上記オリゴフェニレンエーテル樹脂組成物は、硬化触媒を含有していてもよいが、加熱のみによって硬化することができる。
【0056】
上記オリゴフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を採用できる。例えば、上述した各成分を撹拌機により十分混合して製造することができる。
【0057】
また、上記熱硬化性樹脂組成物としては、国際公開第2005/100435号パンフレットに記載されたエポキシ樹脂組成物も好適に使用できる。具体的には、1つ以上のヒドロキシ基と2つ以上のエポキシ基とを有する重量平均分子量1,500〜70,000の直鎖状エポキシ樹脂(C)と、フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部を脂肪酸でエステル化した変性フェノールノボラック(D)とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、上記変性フェノールノボラック(D)の含有量が、上記直鎖状エポキシ樹脂(C)100質量部に対して30〜200質量部であるエポキシ樹脂組成物が、誘電特性(例えば、低誘電率、低誘電正接)に優れる点から好適に挙げられる。
【0058】
直鎖状エポキシ樹脂(C)の重量平均分子量は、1,500〜70,000のである。
直鎖状エポキシ樹脂(C)の数平均分子量は、好ましくは3,700〜74,000、より好ましくは5,500〜26,000である。
直鎖状エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、5000g/eq以上が好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いた値とする。
直鎖状エポキシ樹脂(C)としては、重量平均分子量/数平均分子量が2〜3の範囲のものが特に好ましい。
直鎖状エポキシ樹脂(C)としては、具体的には、例えば、下記式(1)で示される化合物が好ましく、下記式(2)で示される化合物がより好ましい。
【0059】
【化1】


【0060】
上記式中、XおよびYは、それぞれ、単結合、炭素数1〜7の炭化水素基、−O−、−S−、−SO2−、−CO−または下記式で示される基である。XおよびYが複数ある場合は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
【0061】
【化2】

【0062】
ここで、上記式中R2は、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子であり、R2が複数ある場合は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。R3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子である。qは、0〜5の整数である。
【0063】
上記式(1)〜(2)中、R1およびR4は、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子である。R1およびR4が複数ある場合は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
pおよびsは、それぞれ、0〜4の整数であり、同一であっても、異なっていてもよい。
上記式(1)中、nは、平均値を表し、25〜500である。
上記式(2)中、tは、平均値を表し、10〜250である。
【0064】
直鎖状エポキシ樹脂(C)は、上記式(1)において、pが0である、式(1′)で示される化合物であるのがより好ましい。
【0065】
【化3】

【0066】
上記式中、Xおよびnはそれぞれ上記式(1)中のXおよびnと同義である。
上述した直鎖状エポキシ樹脂(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
上記フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部を脂肪酸エステル化した変性フェノールノボラック(D)としては、例えば、下記式(3)で表される変性フェノールノボラックが好適に挙げられる。
【0068】
【化4】

【0069】
上記式(3)中、R5は、炭素数1〜5のアルキル基を表し、好ましくはメチル基であり、複数のR5は、同一であっても異なっていてもよい。
6は、炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有していもよいフェニル基、置換基を有していもよいアラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、複数のR6は、同一であっても異なっていてもよい。
7は、炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、複数のR7は、同一であっても異なっていてもよい。
gは、0〜3の整数を表し、複数のgは、同一であっても異なっていてもよい。
hは、0〜3の整数を表し、複数のhは、同一であっても異なっていてもよい。
n:mは、1:1〜1.2:1であり、約1:1であることが好ましい。
nとmの合計としては、例えば2〜4とすることができる。
【0070】
上記式(3)におけるn、mは、繰り返し単位の平均値であり、繰り返し単位の順序は限定されず、ブロックでもランダムでもよい。
【0071】
変性フェノールノボラック(D)としては、好ましくは、下記式(3′)で表される変性フェノールノボラックが挙げられる。
【0072】
【化5】

【0073】
上記式(3′)中、R5、nおよびmは、それぞれ、上記式(3)のR5、nおよびmと同様である。
特に好ましくは、上記式(3′)においてR5がメチル基のアセチル化フェノールノボラックである。
【0074】
これらの変性フェノールノボラックは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記(D)成分の含有量は、上記(C)成分100質量部に対して30〜200質量部であるのが好ましい。(D)成分の含有量がこの範囲であると、誘電特性、フィルム形成性、硬化反応性に優れる。上記(D)成分の含有量は、上記(C)成分100質量部に対して、50〜180質量部であるのがより好ましい。
【0076】
上記エポキシ樹脂組成物に用いられる揮発性溶剤の種類や使用量については、上述したオリゴフェニレンエーテル樹脂組成物におけるものと同様である。
【0077】
上記エポキシ樹脂組成物は、更に、イソシアネート化合物を含有するのが好ましい態様の1つである。エポキシ樹脂中にヒドロキシ基がある場合は、そのヒドロキシ基や、エポキシ樹脂が開環した際に生成するヒドロキシ基と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基が反応して、ウレタン結合を形成し、硬化後のポリマーの架橋密度を上げ、分子の運動性を更に低下させるとともに、極性の大きいヒドロキシ基が減少するため、一層の比誘電率の低下、誘電正接の低下が可能になる。更に、エポキシ樹脂は分子間力が大きく、フィルム化する場合に均一な成膜が困難であり、かつフィルム化してもフィルム強度が弱く、フィルム形成時にクラックが入り易い傾向があるが、イソシアネート化合物を配合することによりこれらの欠点を除くことができる。
【0078】
上記イソシアネート化合物としては、2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリ(イソシアネートフェニル)トリホスファート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0079】
また、上記イソシアネート化合物には、イソシアネート化合物の一部が環化反応により、イソシアヌレート環を形成したプレポリマーを含むものとする。例えば、イソシアネート化合物の3量体を含むプレポリマーが挙げられる。
【0080】
上記イソシアネート化合物は、特に、上述した直鎖状エポキシ樹脂(C)との組み合わせで使用することが好ましい。エポキシ樹脂の開環反応に伴う生成したヒドロキシ基とイソシアネート基との反応に加えて、直鎖状エポキシ樹脂(C)中にはヒドロキシ基が存在するため、このヒドロキシ基とイソシアネート基とが反応できるため、より大きな効果が得られる。
【0081】
上記イソシアネート化合物の含有量は、上記(C)成分100質量部に対して100〜400質量部であるのが好ましく、300〜350質量部であるのがより好ましい。イソシアネート化合物の含有量がこの範囲であると、硬化する際に発泡が抑えられ均一なフィルムになりやすく、また、硬化後にクラックが生じにくく、誘電特性(例えば、低誘電率、低誘電正接)にも優れる。
【0082】
上記エポキシ樹脂組成物は、更に、ジビニルベンゼンを含有するのが好ましい態様の1つである。ジビニルベンゼンを含有すると、架橋成分の溶融温度の低温化、成型時の流動性の向上、硬化温度の低温化、相溶性の向上に優れる。
ジビニルベンゼンの含有量は、上記(C)成分100質量部に対して、50〜150質量部であるのが好ましい。
【0083】
上記エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として硬化促進剤を含有してもよい。
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として公知のものを使用することができ、例えば、2−メチルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の複素環化合物イミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のリン化合物類、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンやその塩等のDBU類、アミン類、イミダゾ−ル類をエポキシ、尿素、酸等でアダクトさせたアダクト型促進剤類等が挙げられる。
硬化促進剤の含有量は、上記(C)成分100質量部に対して、1〜10質量部であるのが好ましい。
【0084】
上記エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート等が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、上記(C)成分100質量部に対して、1〜10質量部であるのが好ましい。
【0085】
上記エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、粘着性付与剤、難燃化剤、消泡剤、流動調整剤、分散助剤等の添加剤を含有してもよい。
【0086】
また、上記エポキシ樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、弾性率の向上、膨張係数の低下、ガラス転移温度(Tg値)の変更等を目的として、必要に応じて、(C)成分以外のエポキシ樹脂を含有してもよい。
(C)成分以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
また、上記エポキシ樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、脂肪酸エステル化されていないフェノールノボラック、クレゾールノボラック樹脂、フェノール多核体等の公知のエポキシ樹脂硬化剤を含有してもよい。
フェノール多核体としては、例えば、3〜5核体程度等のフェノール類が挙げられる。
【0088】
上記エポキシ樹脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、溶媒の存在下または非存在下に(C)、(D)および場合により(E)成分の各々をプロペラ撹拌機、バンバリー式ミキサー、遊星式ミキサー、加熱真空混合ニーダー等により混合できる。
また、例えば、樹脂成分は所定の溶剤濃度に溶解し、それらを25〜60℃に加温された反応釜に所定量投入し、常圧混合を30分〜6時間行うことができる。その後、真空下(最大1Torr)で更に5分〜60分混合撹拌することができる。
【0089】
上述した熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の含有量は、5〜45質量%であるのが好ましく、10〜40質量%であるのがより好ましく、10〜35質量%であるのが更に好ましい。組成物中の樹脂成分の割合がこの範囲であると、繊維質基材に含浸しやすくなり、気泡を少なくすることができる。
【0090】
上述した熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー上に塗布する方法は、特に限定されず、例えば、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター等を用いて塗布することができる。
【0091】
熱硬化性樹脂組成物の塗布量は特に限定されず、後述する第二の工程において繊維質基材を埋設できるように液状塗膜を形成できればよいが、例えば、乾燥後の塗膜の厚さが5〜120μmとなる量が好ましく、10〜100μmとなる量がより好ましい。
【0092】
次に、第二の工程について説明する。
第二の工程は、上記第一の工程で形成された液状塗膜中に、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である繊維質基材を埋設させる工程である。
本発明の製造方法は、この第二の工程において、熱硬化性樹脂組成物を乾燥させずに、熱硬化性樹脂組成物からなる液状塗膜中に繊維質基材を埋設する。そのため、繊維質基材へ樹脂が含浸し易くなり、細いフィラメントで構成された繊維質基材を用いた場合でも気泡の残存が少ない繊維強化未硬化フィルムを得ることができる。
【0093】
本発明の製造方法に用いられる繊維質基材は、無機材料または有機材料からなる繊維で構成され、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である。
【0094】
上記繊維質基材の厚さは、8〜100μmであり、8〜80μmが好ましく、8〜60μmがより好ましい。上記繊維質基材の厚さがこの範囲であると、極薄の繊維基材による繊維強化未硬化フィルムとすることができ、高多層のビルドアッププリント配線板でも中央配置のコア基板を薄くしたり、コアレスのビルドアッププリント配線板とすることが可能になるので、電気特性が飛躍的に改善される。
従来の繊維基材強化プリプレグの製造方法では、このような極薄基材を用いた場合には基材構造が破壊する等の問題があったが、本発明の製造方法によればそのような問題を解決することができる。
なお、本明細書において、繊維質基材の厚さは、接触式膜厚測定器(ミリトロン No.1240、マール・ジャパン社製、接触端子径φ10mm、接触圧力0.025kg)を用いて測定した値で示される。
【0095】
上記繊維質基材の通気度は、5〜200cm3/cm2/secであり、20〜180cm3/cm2/secであるのが好ましく、40〜160cm3/cm2/secであるのがより好ましい。上記繊維質基材の通気度がこの範囲であると、熱硬化性樹脂組成物、いわゆるワニスの浸透速度が速く、繊維フィラメント表面への濡れが良いために、濡れないことによる気泡発生を防ぐことができる。
なお、本明細書において、通気度は、JIS L1096−1999(一般織物試験方法 通気性 A法 フラジー)に準じて測定した値で示される。
【0096】
上記繊維質基材の見かけ密度は、0.5〜1.5g/cm3であり、0.6〜1.3g/cm3であるのが好ましく、0.8〜1.2g/cm3であるのがより好ましい。上記繊維質基材の見かけ密度がこの範囲であると、熱硬化性樹脂と繊維質基材の割合が、繊維強化で期待する熱膨張性能の効果を上げることができる。すなわち、繊維強化未硬化フィルムの構成比として熱硬化性樹脂の割合を40〜70質量%とすることが容易にできる。
なお、本明細書において、見かけ密度は単位質量(g/m2)を厚さ(μm)で除した数値(g/cm3)で示される。
【0097】
上記繊維質基材としては、例えば、ガラス繊維からなる織布(ガラスクロス)、ガラス不織布(耐熱性バインダー強化);ポリフェニレンテレフタラミド(アラミド)、ポリベンゾキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェノール等の有機耐熱性繊維で構成される織布や不織布等が挙げられる。これらの中でも、ガラスクロス、ポリフェニレンテレフタラミド(アラミド)不織布が、熱膨張阻止という性能効果の点から好ましい。
【0098】
上記ガラスクロスに用いられるガラス繊維としては、Eガラス(比誘電率 ε′=7、誘電正接tanδ=0.003、1GHz)、Dガラス(ε=4、tanδ=0.0013、1GHz)、Hガラス(ε=11、tanδ=0.003、1GHz)、Cガラス、Sガラス、NEガラス等各種のガラス成分組成を持つものを挙げることができるが、コスト性と誘電特性とのバランスの観点から、Eガラスが好適に用いられる。
しかし、本発明の熱硬化性樹脂の硬化後比誘電率は例えば3以下であるのに対して、このEガラスの比誘電率は7とあまりにも高く、上記繊維基材強化での比誘電率は3以上になってしまう。この対策として、例えば、特開2003−41486号公報に開示されたような、Eガラス繊維で構成されるガラスクロスを酸性溶媒、例えば硝酸水溶液10%、温度80℃によりリーチングして30%質量減少させ、次いでヒートクリーニングとシランカップリング剤処理をして誘電特性を改良したガラスクロス等も好適に使用できる。
上記ガラスクロスに用いられるガラス繊維は、平均直径3〜9μmのフィラメントからなり、単位質量が5〜50g/m2であるものが、極薄の繊維基材とするという点から好適に使用できる。
【0099】
上記ガラス繊維(つまり、フィラメント)の平均直径は、3〜9μmであり、3.5〜7.5μmであるのが好ましく、5μm以下であるのがより好ましい。平均直径が3μm未満のものは工業的生産面と環境面で制約される。上記ガラス繊維の平均直径がこの範囲であると、繊維強化未硬化フィルムをより薄く薄型化することができ、高密度実装が可能となる。
なお、本明細書において、ガラスクロスの平均直径は電子顕微鏡で測定した値で示される。
【0100】
上記ガラスクロスの単位質量は、5〜50g/m2であり、7〜38g/m2であるのが好ましく、8〜25g/m2であるのがより好ましい。上記ガラスクロスの単位質量がこの範囲であると、厚さが適正値になること、熱硬化性樹脂と繊維基材の割合が熱膨張性の制御に適するものとなるからである。
なお、本明細書において、単位質量は10cm×10cmの質量を計量して100倍してg/m2の単位にしたものである。
【0101】
上記ガラスクロスは、水流ジェット処理および拡幅扁平化処理からなる群から選択される少なくとも1種の開繊処理により、フィラメント結束が緩和されたガラスクロスであるのが、熱硬化性樹脂組成物がより含浸しやすくなり、気泡が少ない繊維強化未硬化フィルムが得られる点から好ましい。特に、ガラスクロスの縦糸を拡幅扁平化処理することが、より気泡の少ない繊維強化未硬化フィルムを得られる点から好ましい。
【0102】
上記水流ジェット処理とは、高圧散水流をガラスクロスに接触させてフィラメント結束を緩和させる処理であり、例えば、特開2004−277988号公報に記載された方法が好適に挙げられる。具体的には、例えば、ガラスクロスを構成する縦糸1本あたりにかかる張力が2×10-5〜2×10-2Nの範囲で、物理加工を施しかつ乾燥させる処理であって、上記物理加工が10N/cm2 〜1000N/cm2 の範囲の圧力を有する水流による物理加工である処理が好適に挙げられる。
【0103】
上記拡幅扁平化処理とは、フィラメントを拡幅化および扁平化させて、フィラメント結束を緩和させる処理であり、例えば、特開2005−213656号公報に記載された方法が好適に挙げられる。具体的には、ガラス糸の撚り数を、0〜0.7回/インチとすることが好ましく、0〜0.5回/インチとすることがより好ましく、0〜0.3回/インチとすることが更に好ましい。低撚糸化することで、より糸幅は拡がり易く、ガラスクロスの厚みが低減しやすくなる。また、低撚糸を使用することにより、糸が扁平化し、糸自体の断面形状が楕円の形状から平板の形状に近づき、ガラスクロス中のガラス繊維の分布がより均一となる。
【0104】
上記ガラスクロスは、縦糸織密度40〜100本/inch、かつ、横糸織密度25〜100本/inchであるのが好ましく、縦糸密度50〜80本/inch、かつ、横糸密度30〜80本/inchであるのがより好ましい。この範囲であると、繊維質基材へ樹脂が含浸し易くなり、細いフィラメントで構成された繊維質基材を用いた場合でも気泡の残存が少ない繊維強化未硬化フィルムを得ることができる。
【0105】
上記ガラスクロスに用いられるガラス繊維は、シランカップリング剤で処理されたものが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ガラス繊維への付着量は、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
【0106】
上記ガラスクロスの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、特開2004−050755号公報に記載された方法が好適に挙げられる。以下に、ガラスクロスの製造方法の具体例を示す。
縦糸および横糸にモノフィラメントの平均直径4.5μm、モノフィラメント数100本で撚り数が1.0ZのEガラス組成ガラス糸を使用し、エアージェットルームで、縦糸70本/inch、横糸73本/inchの織り密度でガラスを製織し、得られた生機に水流ジェットでフィラメント同士の結合を緩和処理(加工圧20kgf/cm2)する。その後400℃で24時間高温脱糊する。続いて、表面処理としてシランカップリング剤であるSZ6032(東レ・ダウコーニング社製)を用いて処理液とし、ガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥し、厚みは0.028mm、質量23g/m2、通気度61cm3/cm2/sec、縦方向糸−糸間隔0.212mm、横方向糸−糸間隔0.005mmの極薄ガラスクロスを得ることができる。水流ジェット処理の水圧は、0.2〜10MPa以上であるのが好ましく、1〜5MPaであるのがより好ましい。
【0107】
上記アラミド繊維を用いて構成される不織布としては、例えば、特開2002−302893号公報に記載された不織布が好適に挙げられる。また、繊維と耐熱性樹脂とを含み、上記繊維が繊維太さ2デニール以下のパラフェニレンテレフタラミド繊維を50質量%以上含み、上記不織布中の前記耐熱性樹脂の含有量が、5 〜30質量%であり、上記不織布の単位質量が20〜80g/m2である、アラミド不織布がワニス含浸性と厚さの均一性、スルーホール加工性という点から好適に挙げられる。
【0108】
上記パラフェニレンテレフタラミド繊維の繊維太さ(繊度)は、2デニール以下であり、0.1〜1.7デニールであるのが好ましく、0.1〜1.5デニールであるのがより好ましい。
1デニール以下の繊維太さはそれ以上の太さのポリパラフェニレンエーテル繊維フィラメントを物理的に、たとえばレファイナー等で叩解処理することで得られるもので、湿式不織布の製造で少量配合することで湿ウエブ強度の向上と地合いの均質化に効果が得られるものである。繊維太さ(繊度)が2デニールを超えるものは、同じ面積あたりの質量で比較した場合に繊維本数の密度が低く、平滑性も出ないことから1.5デニール以下の細い繊維で構成されることが好ましい。
【0109】
上記不織布の単位質量は、20〜100g/m2であり、23〜80g/m2であるのが好ましく、25〜60g/m2であるのがより好ましい。上記不織布の単位質量がこの範囲であると、本発明の繊維強化未硬化フィルムを極薄化しやすい。
また、本発明の繊維強化未硬化フィルムを極薄化しやすい点から、後仕上げ加工で180〜360℃の高温カレンダー処理で緻密仕上げすることが好ましい。特に、熱硬化性樹脂が被覆されたいわゆる「ソフトカレンダー」か、高温度域においてはスチールロール/スチールロールからなるカレンダーで高温度加圧して緻密化処理することが好ましい。上記不織布の厚さは好ましくは60μm以下である。
【0110】
上記不織布を構成する耐熱性樹脂(バインダー)としては、特に限定されないが、はんだ耐熱性と、耐湿特性としてのPCTテスト等でFR4クラスと同等のものとすることが好ましい。例えば、特開2002−30289号公報に記載されているような、エポキシ樹脂エマルジョンとブロックイソシアネート樹脂を配合したものや、特開2002−317392号公報に記載されたエポキシ樹脂のアミンアダクト酸性中和溶液で含浸して得られるもの等が挙げられる。
【0111】
上記不織布の製造方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、特開2002−317392号公報に記載された方法が挙げられる。
具体的には、イオン交換水に粘剤としてポリアクリルアマイド/ポリアクリル酸ソーダ共重合物とレファイナーでアラミド繊維を叩解処理した微細パルプ状物を20質量%、1.5デニール3mmカットのアラミド繊維80質量%からなる繊維を水中に分散させて抄造脱水してウエブを得る。次に、ネットで挟んでエポキシバインダーの10%濃度液をスプレー含浸してからマングルで絞って均質化させ、PTFEシート帖着の表面温度135℃のシリンダードライヤーにて乾燥を行う。次に、表面温度300℃のスチール/スチールカレンダーで2度通して緻密化と平滑化を行って不織布を得る。
【0112】
上述した繊維質基材を上記液状塗膜中に埋設させる方法は特に限定されない。本発明の製造方法においては、液状塗膜が比較的低粘度であるため、液状塗膜の上に繊維質基材を載置することにより繊維質基材の重さで自然に埋設させることができるが、埋設しにくい場合や作業工程の効率化を図るために、液状塗膜の上に繊維質基材を載置した後、加圧ロール等により圧力を加えてもよい。
【0113】
本発明の製造方法においては、上記繊維質基材と上記熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分との合計100質量%中、上記樹脂成分の含有量は、40〜75質量%であるのが好ましく、45〜70質量%であるのがより好ましく、47〜60質量%であるのが更に好ましい。樹脂成分の割合がこの範囲であると、熱圧力成型で気泡のない均質な硬化基板が得られる。
【0114】
次に、第三の工程について説明する。
第三の工程は、第二の工程で液状塗膜中に繊維質基材を埋設させた後、液状塗膜中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得る工程である。第三の工程で、溶剤が蒸発することにより液状塗膜が固化され、繊維質基材と一体化される。このようにして、繊維強化未硬化フィルムが得られる。得られた繊維強化未硬化フィルムは、冷却されることにより取り扱いに耐える強度をもったものになる。
得られた繊維強化未硬化フィルムは、いわゆるAステージまたはBステージにあって、硬化状態のCステージより前の熱で流動する状態である。即ち、液状塗膜中の揮発性溶剤が蒸発して固化したものだが、まだ未硬化状態にあるものであり、加熱で再溶融して接着性を発現する状態にある。得られた繊維強化未硬化フィルムは、未硬化物でゲル化が進行していないほとんどがAステージ状態にあると考えられる。
得られた繊維強化未硬化フィルムは、支持体キャリヤーを剥離して使用してもよく、支持体キャリヤーが付いたまま使用してもよい。
【0115】
揮発性溶剤を揮発させる方法は、例えば、熱風ドライヤー、オーブン、赤外線ヒーター等により加熱する方法が挙げられる。
加熱する際の温度は、配合する揮発性溶剤の沸点の違い、処理速度等によって適宜変える必要がある。即ち、硬化反応しない条件で揮発性溶剤を完全に蒸発できるような温度にすればよい。加熱する際の温度は、使用する溶剤の種類等により異なり、例えば、60〜120℃が好ましい。また、50〜80℃で加熱した後、更に100〜180℃で加熱することがより好ましい。
【0116】
繊維強化未硬化フィルムの厚さは、10〜100μmであるのが好ましく、10〜75μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのが更に好ましい。繊維強化未硬化フィルムの厚さがこの範囲であると、極薄の繊維強化未硬化フィルムとすることができ、高多層のビルドアッププリント配線板に使用して中央配置のコア基板を薄くしたり、コアレスのビルドアッププリント配線板とすることが可能になるので、電気特性が飛躍的に改善される。
【0117】
本発明の製造方法は、更に、上記第二の工程と上記第三の工程との間に、上記第二の工程で上記繊維質基材が埋設された上記液状塗膜を加圧して脱泡および表面を平滑化する第四の工程を有するのが好ましい態様の1つである。この工程を有する場合、得られる繊維強化未硬化フィルムは、より気泡が少なく、表面平滑性に優れたものとなる。
【0118】
上記液状塗膜を加圧して脱泡および表面を平滑化する方法としては、例えば、ロールニップ等の加圧ロールによる方法が挙げられる。
上記加圧ロールとしては、シリコーンゴムやフッソ系樹脂で被覆した弾性のあるロールが好ましく、溶剤や樹脂に対して非着性であることがより好ましい。
加圧する際の圧力は特に限定されないが、脱泡および表面平滑化の点から0.01〜1.5MPaが好ましく、0.2〜1.2MPaがより好ましい。
【0119】
本発明の製造方法においては、少なくとも銅箔等の支持体キャリヤーに接触した面は溶剤を含んだ粘度の低い状態での接触になるので、濡れが従来の溶剤を含まない繊維強化未硬化フィルムとの接触とは格段の差が出てくる。
あらかじめ脱泡させてある繊維強化未硬化フィルムであるために加圧プレスでのAないしBステージから硬化のCステージへの移行が全面積で均一に行えるという利点を有する。また、より支持体キャリヤーとのピール強度が高く、支持体キャリヤー面の平滑性に優れる。
【0120】
本発明の製造方法は、更に、上記第三の工程で得られた繊維強化未硬化フィルムの表面に、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、上記揮発性溶剤を揮発させる第五の工程を有するのが好ましい態様の1つである。この工程を有する場合、より完全な繊維基材の埋設ができること、繊維基材が埋設したフィルム表面に繊維の裸出している部分がなくなるために相手表面との接着性により優れる繊維強化未硬化フィルムを得ることができる。
【0121】
第五の工程で用いられる熱硬化性樹脂組成物としては、上記第一の工程で説明した熱硬化性樹脂組成物と同様なもの使用できる。
また、熱硬化性樹脂組成物の塗布方法および揮発性溶剤を揮発させる方法は、上述した方法と同様である。
【0122】
上述した本発明の製造方法は、溶剤を含有する低粘度の熱硬化性樹脂組成物中に繊維質基材を埋設するため、繊維質基材中に熱硬化性樹脂組成物が含浸しやすい。そのため、繊維強化未硬化フィルム中に気泡が残り難い。特に、拡幅扁平化処理されたガラスクロスを用いた場合や、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の含有量を上述した特定の範囲とした場合は、より繊維質基材中に熱硬化性樹脂組成物が含浸しやすくなるため、気泡を少なくすることができる。
【0123】
一方、特許文献4に記載されたドライラミネート法は、溶剤を含まない25℃における粘度が1000〜10000Pa・s程度のほぼ固体状態の樹脂組成物層にガラスクロスを埋め込む。この樹脂組成物層の粘度は、本発明の製造方法の液状塗膜の約200〜2000倍にもなる。
そのため、加熱プレスする必要があり、特に繊維の交差部への濡れと浸透が不十分で気泡の多い繊維強化未硬化フィルムとなり使用には耐えない。
【0124】
また、本発明の製造方法は、繊維質基材に対する負荷が小さいので、比較的強度の弱い基材を用いても基材が破壊されることがない。そのため、繊維強化未硬化フィルムを薄型化することができる。
特に、熱硬化性樹脂組成物の樹脂濃度を下げて繊維質基材に付着させる熱硬化性樹脂組成物の量を増やした場合または溶剤と接触することにより強度が低下する有機繊維不織布を用いた場合でも、本発明の製造方法は繊維質基材に対する負荷はほとんどないため、比較的強度の弱い基材を用いても基材が破壊されることがない。一方、従来の縦型塗工装置を用いた製造方法では、繊維質基材に付着させる熱硬化性樹脂組成物の量を増やした場合、樹脂組成物の重さや過剰量の樹脂組成物をロールで掻き落とす際の負荷の増大により、繊維質基材が破壊されやすくなり、強度の弱い基材を使用することは困難である。
また、本発明の製造方法は、樹脂含浸量を正確に制御し、糸束を構成するフィラメント間への含浸が容易であり(ボイドレス)、繊維構造を破壊しない、含浸において基材の破断が無い点に優れる。
【0125】
したがって、本発明の繊維強化未硬化フィルムは、厚みムラが無くフィラメント間に十分に樹脂の含浸が行われておりフィルム内の気泡が無い。
また、本発明の繊維強化未硬化フィルムは、例えば、厚さ10〜100μm、好ましくは10〜75μm、より好ましくは10〜50μmにすることが可能であり、このような繊維強化未硬化フィルムであればより高密度な実装を可能とする点で極めて有用である。
また、本発明の繊維強化未硬化フィルムは、表面平滑性にも優れる。
また、本発明の繊維強化未硬化フィルムは、支持体キャリヤーと樹脂との接着性に優れる。
また、本発明の繊維強化未硬化フィルムは、厚み精度に優れる。
【0126】
本発明の繊維強化未硬化フィルムは、特にプリント配線用積層板、接着シートに好適に使用できる。
【0127】
本発明の接着シートは、上述した本発明の繊維強化未硬化フィルムで構成される。そのため、気泡が少なく、薄くすることができ、表面平滑性および支持体キャリヤー(金属箔の場合)と樹脂との接着性に優れる。また、本発明の接着シートは、耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、耐リフロー性に優れ、粉落ち、クラック等の欠点がない。
【0128】
本発明の接着シートは、工業用、電気用、特にプリント基板周り、銅箔面での接着シートに使用できる。
【0129】
本発明のプリント配線用積層板は、本発明の繊維強化未硬化フィルムを硬化させて得られる絶縁層と、上記絶縁層の少なくとも一方の表面に形成された導体層とを有する。
【0130】
本発明のプリント配線用積層板は、例えば、本発明の繊維強化未硬化フィルムの製造方法において支持体キャリヤーとして銅箔を使用した場合、表面に銅箔からなる導体層を有する繊維強化未硬化フィルムが得られるので、それを加熱プレス等して硬化させることにより得ることができる。
また、本発明の繊維強化未硬化フィルムの製造方法において支持体キャリヤーとして有機フィルムを使用した場合、得られた繊維強化未硬化フィルムから有機フィルムを剥離した後、繊維強化未硬化フィルムの片面または両面に金属箔を積層し、真空加熱プレス等して繊維強化未硬化フィルムを硬化させることにより本発明のプリント配線用積層板を得ることができる。
【0131】
上記導体層に用いられる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ステンレス鋼箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。
【0132】
上述した本発明のプリント配線用積層板は、薄型で、平滑性に優れ、比誘電率および誘電正接が低い。更に、高寸法安定性、高絶縁信頼性、高耐湿信頼性、低誘電率、低誘電正接、耐半田耐熱性、耐屈曲性、耐薬品性、耐マイグレーション特性等の優れた性能を発揮する。また、本発明のプリント配線用積層板は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等のレーザー加工機により穴あけスミアなく加工可能であり、パンチング、ドリル加工においても加工可能(φ20〜1000μm)である。
【0133】
次に、本発明の電子部品について説明する。
本発明の電子部品は、上述した本発明のプリント配線用積層板を用いて得られる電子部品である。
本発明の電子部品としては、主としてプリント配線板が好適に挙げられる。中でもビルドアップ工法で得られるプリント配線板がより好ましい。ビルドアップ工法は、高密度実装という時代の要請に応える工法であり、本発明の誘電特性とあいまって薄いフィルム形状であるために、厚いコア基板に代わってパッケージ基板全体を薄くする、さらにはコア基板無しのビルドアッププリント配線板を可能とするので、電気特性は飛躍的に改善されるものとなる。
【0134】
上記電子部品の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法により得ることができる。 例えば、プリント配線板は、下記のようにして作製することができる。
まず、本発明のプリント配線用積層板を用い、このプリント配線用積層板の導体層の表面に感光性レジストを被覆する。そしてこのプリント配線用積層板を露光機に導入して、感光性レジストにフォトマスクを介して紫外線等の光を照射する露光を行う。このように露光した後、現像処理して感光性レジストを回路パターンと逆パターンで部分的に除去する。次にエッチング処理をすることによって、感光性レジストが除去されて部分的に露出した導体層をエッチング溶液に溶解させて除去する。この後に感光性レジストを剥離することによって、導体層で回路パターンを表面に形成したプリント配線板を得ることができる。
【0135】
上述した本発明の電子部品は、小型化可能で、比誘電率および誘電正接が低い。更に、高寸法安定性、高絶縁信頼性、高耐湿信頼性、低誘電率、低誘電正接、耐半田耐熱性、耐屈曲性、耐薬品性、耐マイグレーション特性等の優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0137】
<熱硬化性樹脂組成物(ワニス)の調製>
(配合例1〜3)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す割合(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。
得られた各組成物についてE型粘度計(TVE−22LT、東機産業社製)を用いて25℃における粘度を測定した。結果を下記第1表に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
上記第1表中の各成分は下記のとおりである。
・オリゴフェニレンエーテル樹脂(2,2′,3,3′,5,5′−ヘキサメチルビフェニル‐4,4′−ジオール−2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物):OPE−2st 2200、三菱ガス化学社製
・SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体):TR2003(商品名)、JSR社製、重量平均分子量100,000、スチレン含有量43%
・エポキシ樹脂:YX6954BH30、ジャパンエポキシレジン社製
・アセチル化変性フェノールノボラック:エピキュアDC808、ジャパンエポキシレジン社製
・イソシアネート化合物(TDIブロック型ポリイソシアネート):コロネート2507、日本ポリウレタン社製
・2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル:2E4MZ、四国化成社製
・1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート:パーオクタ・O、日本油脂社製
【0140】
<繊維質基材>
下記に示す基材1〜4を用意した。
基材1:ガラスクロス、1000TF(商品名)、旭シュエーベル社製、特に縦糸が拡幅扁平化処理されたもの
【0141】
基材2:ガラスクロス、101(商品名)、旭シュエーベル社製
【0142】
基材3:ガラスクロス、1037(商品名)、旭シュエーベル社製
【0143】
基材4:特開2002−302893号公報の実施例1(電気絶縁用不織布の製造)に記載された方法にしたがってアラミド不織布を製造した。
具体的には、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維(ケブラー、デュポン社製)チョップと、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維パルプと、第二バインダーとしてポリ−m−フェニレンイソフタラミド繊維(コーネックス、帝人社製)チョップを水中に分散し混抄した。これらの繊維は、いずれも、繊維太さ1.5デニール、繊維長3mmである。ポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維パルプは、上記繊維長3mmのポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維チョップを叩解しフリーネス50csfとしたものである。適用する熱硬化性樹脂バインダーは、エポキシ樹脂エマルジョン(VコートA、大日本インキ化学工業社製)とブロックイソシアネート樹脂(CR−60B、大日本インキ化学工業製)を主成分とし、エポキシ樹脂の質量10に対するブロックイソシアネート樹脂の配合質量(硬化剤質量)を1とした。この熱硬化性樹脂バインダーを上記繊維の抄造後にスプレーして加熱乾燥し不織布を製造した。さらに、この不織布を、線圧力200kN/m、温度333℃に設定した一対の熱ロールの間に通すことにより加熱圧縮した。この不織布は、単位質量33g/m2、厚さ50μm、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維チョップとポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維パルプの配合質量比率(ポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維チョップ/ポリ−p−フェニレンテレフタラミド繊維パルプ)80/20、不織布中の熱硬化性樹脂バインダー含有量17質量%、不織布中の第二バインダー含有量8質量%の成分組成である。
【0144】
基材1〜5の種類、拡幅扁平化処理の有無、厚さ、単位質量、フィラメント平均直径、見かけ密度、通気度、繊維太さ、縦糸密度および横糸密度を下記第2表にまとめて示す。
【0145】
【表2】

【0146】
<繊維強化未硬化フィルムの製造>
(実施例1〜8:ウェットラミネート法)
下記第3表に示す熱硬化性樹脂組成物(ワニス)をシリコーン系離型剤付PETフィルム(ルミラー、東レ社製、厚さ38μm、以下同じ)上に、グラビアコーターを用いて硬化後の厚みが2〜90μmとなるよう塗布し、液状塗膜を形成した。次に、液状塗膜の上に第3表に示す基材を載置して、液状塗膜中に基材を埋設させた。その後、60〜120℃で1〜5分加熱して、液状塗膜中の溶剤を揮発させて、樹脂と基材を一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得た。
得られた各繊維強化未硬化フィルム中の樹脂量および厚さを第3表に示す。
【0147】
(比較例1〜5:従来の縦型塗工装置を用いた方法)
縦型塗工装置を用いて、シリコーン系離型剤付PETフィルムに下記第3表に示す熱硬化性樹脂組成物(ワニス)を含浸させた後、鉛直方向に引き上げ、ロールニップで過剰分の熱硬化性樹脂組成物を掻き落とした。その後、150℃で3〜10分加熱して、熱硬化性樹脂組成物中の溶剤を揮発させて、樹脂と基材を一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得た。
得られた各繊維強化未硬化フィルム中の樹脂量および厚さを第3表に示す。
【0148】
(比較例6〜8:ドライラミネート法)
下記第3表に示す熱硬化性樹脂組成物(ワニス)をシリコーン系離型剤付PETフィルム(ルミラー、東レ社製、厚さ38μm、以下同じ)上に、ダイコーターを用いて硬化前フィルムの厚さが下記第3表に記載した厚さとなるよう塗布した後、80〜120℃(平均100℃)で2〜10分間乾燥して下記第3表に示す熱硬化性樹脂組成物のフィルム(被膜)を形成した。
次に、乾燥させたフィルムの表面に第3表に示す基材を載せ、50℃、線圧2kg/cmの条件で1〜20秒、熱ラミネートして、樹脂と基材を一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得た。
硬化前フィルムの厚さ、得られた各繊維強化未硬化フィルム中の樹脂量および厚さを第3表に示す。
【0149】
(基材の構造破壊の有無)
上記で得られた各繊維強化未硬化フィルム中の基材の構造破壊の有無を目視で観察した。構造破壊の無かったものを「○」、構造破壊のあったものを「×」とした。結果を第3表に示す。
【0150】
(熱成形後厚さ、比誘電率、誘電正接の測定)
上記で得られた各繊維強化未硬化フィルムを、使用した熱硬化性樹脂組成物の種類に応じて下記の条件・方法で硬化した。硬化後のフィルムの厚さを測定した。結果を第3表に示す。
硬化条件1(配合例1〜2の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合):200℃、60分、圧力1MPa、真空度10kPa未満にて真空プレス
硬化条件2(配合例3の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合):140℃、10分にてプリベーク後、180℃、120分、圧力4MPa、真空度10kPa未満にて真空プレス
【0151】
硬化後のフィルムを10cm×4cmに切り出して10cm長さの辺を筒の長さ方向になるように、直径1mmの筒中に丸めて挿入して試料とし、25℃で、空洞共振器(摂動法誘電体測定装置、関東電子応用開発社製)を用いて、比誘電率、誘電正接を測定した。結果を第3表に示す。
【0152】
(表面粗さ)
表面粗さ測定器(サーフコム590A−12、東京精密社製)にて、測定長さ30mm、測定速度1.5mm/sで、10点平均高さRzを求めた。結果を第3表に示す。
【0153】
(熱膨張係数(CTE))
硬化後のフィルムを幅15mm、長さ40mmに切断後、これを試験片とし、熱分析装置(TMA4000SA、Bruker AXS社製)を用いて、昇温速度5℃/分、引っ張りモードのTMA法により、25℃から250℃まで測定を行った。平均膨張係数については20℃〜150℃までの線膨張係数の傾きより求めた。結果を第3表に示す。
【0154】
(弾性率およびガラス転移温度(Tg))
硬化後のフィルムを幅10mm、長さ40mmに切断後、試験片とした。この試料を粘弾性スペクトロメータ(型番EXSTAR6000 DMS、セイコーインスツルメンツ社製)を用い、つかみ幅15mm、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、引張りモードのDMA法により、25℃の貯蔵弾性率を求めた。また、25℃の貯蔵弾性率、誘電正接のピークよりガラス転移温度(Tg)を求めた。結果を第3表に示す。
【0155】
<積層板の製造>
上記で得られた各繊維強化未硬化フィルムの両面に銅箔(電解銅箔、厚さ18μm、Rz1.9μm)を積層し、下記の条件で真空加熱プレスして、積層板を得た。
硬化条件1(配合例1〜2の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合):200℃、60分、圧力1MPa、真空度10kPa未満にて真空プレス
硬化条件2(配合例3の熱硬化性樹s脂組成物を使用した場合):140℃、10分にてプリベーク後、180℃、120分、圧力4MPa、真空度10kPa未満にて真空プレス
【0156】
(ボイドの有無)
得られた各積層板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。ボイドが無かったものを「○」、ボイドがあったものを「×」とした。結果を第3表に示す。
【0157】
(銅箔ピール強度)
上記で得られた積層板の銅箔をJIS C6481−1996に準じて、10mm幅でダイシングし、50mm/minの速度で180°の方向に銅箔を引き剥がしピール強度を求めた。結果を第3表に示す。
【0158】
【表3】

【0159】
【表4】

【0160】
上記第3表に示す結果から明らかなように、従来の縦型塗工装置を用いて製造した比較例1〜5は、基材に破壊がみられ、気泡も確認された。また、ドライラミネート法により製造した実施例6〜8も同様に、基材に破壊がみられ、気泡も確認された。
一方、本発明のウェットラミネート法により製造した実施例1〜8は、基材が破壊されず、気泡は確認されなかった。また、低誘電率、低誘電正接であり、銅箔ピール強度が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、本発明の製造方法の好適な一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法の他の好適な一例を示す模式図である。
【図3】図3は、従来の縦型塗工装置を用いた繊維強化未硬化フィルムの製造方法の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0162】
1 本発明の繊維強化未硬化フィルム
3 支持体キャリヤー
5、15 塗工装置
7 液状塗膜
9 繊維質基材
11 加圧ロール
13、17 乾燥炉
31 基材
32 ワニス
33 ロールニップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を支持体キャリヤー上に塗布し、液状塗膜を形成する第一の工程と、
前記第一の工程で形成された液状塗膜中に、厚さが8〜100μm、かつ、通気度が5〜200cm3/cm2/sec、かつ、見かけ密度が0.5〜1.5g/cm3である繊維質基材を埋設させる第二の工程と、
前記第二の工程で前記液状塗膜中に前記繊維質基材を埋設させた後、前記液状塗膜中の揮発性溶剤を揮発させることにより固化一体化させて、繊維強化未硬化フィルムを得る第三の工程とを有する繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記繊維質基材が、ガラス繊維またはアラミド繊維を用いて構成される織布または不織布である請求項1に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ガラス繊維を用いて構成される織布が、平均直径3〜9μmのフィラメントからなり、単位質量が5〜50g/m2である請求項2に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ガラス繊維を用いて構成される織布が、水流ジェット処理および拡幅扁平化処理からなる群から選択される少なくとも1種の開繊処理により、フィラメント結束が緩和されたガラス繊維を用いて構成される織布である請求項2または3に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ガラス繊維を用いて構成される織布が、縦糸密度40〜100本/inch、かつ、横糸密度25〜100本/inchである請求項2〜4のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記アラミド繊維を用いて構成される不織布が、繊維と耐熱性樹脂とを含み、
前記繊維が繊維太さ2デニール以下のパラフェニレンテレフタラミド繊維を50質量%以上含み、
前記不織布中の前記耐熱性樹脂の含有量が、5〜30質量%であり、
前記不織布の単位質量が20〜80g/m2である請求項2に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の含有量が、5〜45質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記繊維質基材と前記熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分との合計100質量%中、前記樹脂成分の含有量が40〜75質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂が、両末端に官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル樹脂および/またはエポキシ樹脂である請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物が、数平均分子量500〜5,000の両末端にスチレン官能基を有する熱硬化性オリゴフェニレンエーテル(A)100質量部と、ビニル芳香族炭化水素モノマーに由来する繰返し単位と共役ジエンモノマーに由来する繰返し単位とを含むブロック共重合体(B)50〜250質量部とを含有する熱硬化性樹脂組成物である請求項9に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記熱硬化性樹脂組成物が、1つ以上のヒドロキシ基と2つ以上のエポキシ基とを有する重量平均分子量1,500〜70,000の直鎖状エポキシ樹脂(C)と、
フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部を脂肪酸でエステル化した変性フェノールノボラック(D)とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記変性フェノールノボラック(D)の含有量が、前記直鎖状エポキシ樹脂(C)100質量部に対して30〜200質量部である請求項9に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂組成物が、更にイソシアネート化合物を含有する請求項11に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂組成物が、更にジビニルベンゼンを含有する請求項11または12に記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の含有量が、10〜40質量%である請求項1〜13のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項15】
繊維強化未硬化フィルムの厚さが、10〜120μmである請求項1〜14のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項16】
更に、前記第二の工程と前記第三の工程との間に、前記第二の工程で前記繊維質基材が埋設された前記液状塗膜を加圧して脱泡および表面を平滑化する第四の工程を有する請求項1〜15のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項17】
更に、前記第三の工程で得られた繊維強化未硬化フィルムの表面に、熱硬化性樹脂と揮発性溶剤とを含有し、粘度が1000mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、前記揮発性溶剤を揮発させる第五の工程を有する請求項1〜16のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の繊維強化未硬化フィルムの製造方法により得られる繊維強化未硬化フィルム。
【請求項19】
請求項18に記載の繊維強化未硬化フィルムからなる接着シート。
【請求項20】
請求項18に記載の繊維強化未硬化フィルムを硬化させて得られる絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に形成された導体層とを有するプリント配線用積層板。
【請求項21】
請求項20に記載のプリント配線用積層板を用いて得られる電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−126917(P2009−126917A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301949(P2007−301949)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】