説明

織りプリフォーム、コンポジットおよびその製造方法

【課題】3次元織りプリフォーム、そのプリフォームを組み込んだ強化コンポジット、およびそれらの製造方法の提供。
【解決手段】織りプリフォームは、2または3以上のたて糸操りファブリック層を含む。たて糸操りファブリックは、ダーツ部分と、ダーツのない部分とを含む。たて糸操りファブリックのダーツ部分をダーツのない部分に互いに結合し、それにより、プリフォームの全部分の周辺および半径の方向に連続ファイバが存在するようにする。一つのたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分は、他のたて糸操りファブリックにおけるダーツ部分を補強する。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。最終のプリフォームは、航空機の窓フレームの一部分になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、強化コンポジットに関し、特には、織りストリップ材を含むプリフォームであって、強化コンポジット材料に用いるものに関し、平坦に織り、そして最終形状を形成することができ、最終形状には2あるいは3以上の方向の補強がなされる技術に関する。
【引用による組み入れ】
【0002】
ここで述べる製品についてのすべての特許、特許出願、文書、文献、製造者の使用説明書、解説、製品仕様書、および製品説明書を引用によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【背景技術】
【0003】
構造的な構成要素あるいは部品を製造するために、強化コンポジット材料を用いることは、今や一般的である。特に、重さが軽いこと、強固、丈夫、耐熱性、自らを支える能力、および形作る上で適合するという、好ましい特性が求められるところでは広く普及している。そのような構成要素あるいは部品は、たとえば、航空、航空宇宙産業、人工衛星、レクレーション分野(レース艇やレーシングカーなど)、およびその他の分野で用いられる。
【0004】
そのような構成要素あるいは部品は、典型的に、マトリックス材料の中に埋め込んだ強化素材から構成される。強化の構成部分は、ガラス、炭素、セラミック、アラミド、ポリエチレン、および/または、物理的、熱的、化学的および/またはその他の好ましい特性、第1には応力に対する大きな耐久性を示すその他の材料から構成される。そのような強化材料、それらは結局は完成品の構成要素になるのであるが、それらを使用するとき、たとえば非常に大きな強度のようなそれら強化素材の望ましい特性が、完成したコンポジット部品に授けられることになる。構成要素である強化材料は、典型的には、織られたり編まれたり、あるいは編組される。通常、選択理由である強化材料の特性が最大限に活用されるように注意が図られる。また、そのような強化プリフォームについては、マトリックス材料と組み合わせることにより必要な完成品を得、あるいは、完成品の最終生産のために役立つ在庫品を得る。
【0005】
必要な強化プリフォームを構成した後、マトリックス材料をプリフォームおよびその中に加えるようにする。それにより、強化プリフォームは、マトリックス材料で包まれ、マトリックス材料は強化プリフォームの構成要素の間のすき間部分を埋める。マトリックス材料としては、たとえば、エポキシ、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、炭素および/またはその他の材料で、必要とする物理的、熱的、化学的および/または他の特性を示すものなど、いろいろな材料を広く適用することができる。マトリックスとして用いる材料としては、強化プリフォームの材料と同じものでも良いし、異なるものでも良く、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似したものでも良いし、類似しないものでも良い。しかし、通常、それらは強化プリフォームと同じ材料ではなく、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似しない。なぜなら、第1にコンポジットを用いる通常の目的は、ただ一つの構成材料だけでは得ることができない組合せ特性を完成品で得ることにあるからである。強化プリフォームおよびマトリックス材料は、そのように組み合わされた後、熱硬化処理あるいは他の公知の方法で同じ作業工程において硬化および安定化され、さらに、目的とする構成部品を製造するための他の作業工程に入る。ここで、そのように硬化した時点において、マトリックス材料の固体化したものが、通常、強化材料(たとえば、強化プリフォーム)に非常に強く付着していることに気付くことが大事である。結局、完成品上の応力が、繊維間の接着剤として機能するそのマトリックス材料を特に通して、補強された強化プリフォームの構成材料に有効に移され保持される。
【0006】
航空機の胴体に対し、そのような強化プリフォームを含むコンポジット材料を用いることが増すことにより、コンポジットの窓フレームが必要になっている。在来の金属製のフレームをこれに使うことができない。なぜなら、コンポジット胴体と金属製フレームとの熱膨張係数の間に違いがあるからである。その上、コンポジットと金属とが接触するときに生じる腐食問題をなくすため、寄生バリヤー層を用いなければならない。それらのバリヤー層は、全体の重量を増すだけでなく、製造コスト増をきたす。
【0007】
航空機の窓フレーム10は、たとえば図1に示すように、卵形であって、フレームの主要な軸が円筒形の胴体に適合するよう曲がっている。窓フレーム10の断面形状は、たとえば図2に示すように、一般に一様である。しかし、その形状には複雑な形を含むことができる。たとえば、外側の端に起立した脚20、そしてまた、「ジョグル(オフセットフランジ)」15と称し、航空機の本体に対して窓を密閉するのを助けるものなどがある。起立した脚20は、フレーム10が卵形であるため、コンポジット設計に組み込むことが特に困難な形である。この形を今までのファブリックあるいはテープによって形作るためには、ダーツを用いて曲がった形を作らなければならない。しかし、そのようなダーツは、それらを強化しなければ、コンポジットの強度および剛性を下げる。
【0008】
この手法によって、必要な形を得ることができるが、補強ファイバは、図3(a)に示すように、デカルト座標の主要な方向に配列されるであろう。それは、図3(b)に示す窓フレームの主要な方向ではない。この問題を解決するため、補強ファイバについていわゆる準等方性の補強材を用いることにより、窓フレームの全体にわたってプリフォームが一様な剛性をもつようにすることが一般的である。補強材は、通常、0°、90°および45°の方向に等しいファイバ部分を伴う。
【0009】
しかし、この手法は、2つの問題を生じるおそれがある。第1には、準等方性の補強材は、一様な剛性特性をもつだけである。その強度は、主要な窓フレームの座標について一様ではない。第2には、準等方性の補強材の剛性は、0°/90°補強材で得る軸上の剛性に比例して縮小する。
【発明の概要】
【0010】
したがって、この発明の一つの目的は、窓フレームの主要な方向に沿って進む補強ファイバをもつようにすることであり、図3(b)に示すように、それらの方向は周辺に平行な方向、および曲線(曲がり)に対する法線の方向である。その結果、プリフォームは、主要な座標系について一様の強度および剛性を伴うことになり、結果として得る構造物の主要な方向における強度および剛性を最大にする。
【0011】
この発明の他の目的は、起立した脚、および窓の主要な方向に沿って進む補強ファイバをもつ、コンポジット窓フレームの製造方法を提供することである。
【0012】
この発明のさらに他の目的は、今までのものに比べて、重量減および/あるいは性能向上を図ることができる3次元のプリフォームの形成方法を提供することである。
【0013】
この発明の一つの実施態様は、2層またはそれ以上のたて糸操りファブリック(ワープ・ステアード・ファブリック)を含む3次元の織りプリフォームである。たて糸操りファブリックは、それぞれダーツ部分とダーツのない部分とを備える。たて糸操りファブリックのダーツ部分は、ダーツのない部分に互いに結合し、それによって、プリフォームのすべての部分の周囲および半径の方向に連続したファイバを提供する。あるたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分は、他におけるダーツ部分を補強する。たて糸操りファブリックの一部には、在来の一般のカーボン・ファイバおよび/またはストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を含ませることができる。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。最終のプリフォームは、航空機の窓フレーム部分になる。
【0014】
別の実施態様は、2層または3層以上のたて糸操りファブリック(ワープ・ステアード・ファブリック)を含む3次元の織りプリフォームから成る強化コンポジットである。たて糸操りファブリックは、ダーツ部分とダーツのない部分とを備える。たて糸操りファブリックのダーツ部分同士は、互いに結合し、それによって、プリフォームのすべての部分の周辺および半径の方向に連続したファイバを提供する。あるたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分は、他におけるダーツ部分を補強する。たて糸操りファブリックの一部には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)および/または在来の一般のカーボン・ファイバを含ませることができる。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。コンポジットは、航空機の窓フレームになり得る。コンポジットは、マトリックス材料中、織りプリフォームを含浸および硬化することにより形成する。
【0015】
さらに別の実施態様は、3次元の織りプリフォームを形成する方法である。その方法は、2層または3層以上のたて糸操りファブリックを織る工程を備える。その方法は、また、たて糸操りファブリックの第1部分にダーツを設けること、および、たて糸操りファブリックの第2部分をそのままにしてダーツを設けないことを備える。その方法は、たて糸操りファブリックのダーツ部分を結合し、それにより、プリフォームのすべての部分の周辺および半径の方向に連続したファイバを提供する。その方法は、また、あるたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分を他におけるダーツ部分の支えで補強することを含む。たて糸操りファブリックの一部には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)および/または在来の一般のカーボン・ファイバを含ませることができる。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。プリフォームは、航空機の窓フレームの一部になる。
【0016】
さらにまた別の実施態様は、3次元の織りプリフォームを形成する工程を備える、強化コンポジットを形成する方法である。その方法は、2層または3層以上のたて糸操りファブリックを織る工程を備える。その方法は、また、たて糸操りファブリックの第1部分にダーツを設けること、および、たて糸操りファブリックの第2部分をそのままにしてダーツを設けないことを備える。その方法は、たて糸操りファブリックのダーツ部分とダーツのない部分とを結合し、それにより、プリフォームのすべての部分の周辺および半径の方向に連続したファイバを提供する。その方法は、また、あるたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分を他におけるダーツ部分の支えで補強することを含む。たて糸操りファブリックの一部には、在来の一般のカーボン・ファイバおよび/またはストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を含ませることができる。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。コンポジットは、航空機の窓フレームになり得る。コンポジットは、マトリックス材料中、織りプリフォームを含浸および硬化することにより形成する。
【0017】
この発明のプリフォームは、たて糸ファイバに対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。また、プリフォームは、今までの織りパターン、たとえば、平織り、あや織り、朱子織りなどの織りパターンを用いて織ることができる。カーボン・ファイバ(炭素繊維)が好ましいが、この発明は、実際上、他のどのようなファイバにも適用することができる。限定されるわけではないが、ストレッチ・ブロークン可能なもの、たとえばカーボン・ファイバ、ガラスがその例である。
【0018】
この発明の織りプリフォームは、補強脚を伴う輪郭フレームを利用する、いろいろな構造に適用することができ、その例が航空機の窓フレームである。
【0019】
この発明を特徴づける新規ないろいろな技術的事項について、特には、添付のクレーム(そこに示した事項はこの出願の開示の一部である)に指摘する。この発明、ならびに、それを使用することによって得る作用効果および特定の目的について良く理解するため、詳細な説明を参照されたい。そこには、この発明の好ましい実施形態(これに限定されない)が図面に示されている。
【0020】
この中で用いる用語「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」は、「含んでいる(including)」および「含む(includes)」という意味になるし、あるいは米国特許法におけるそれらの意味にもなる。また、「本質的に有している(consisting essentially of)」および「本質的に有する(consists essentially of)」の用語は、クレームで用いるときには、米国特許法におけるそれらの意味である。この発明の他の考え方(形態)については、以下の説明に記載されているか、その記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】航空機の窓フレームの構成図である。
【図2】図1の2−2線に沿って示す航空機の窓フレームの断面図である。
【図3(a)】デカルト座標系に示した卵形のファブリックの模式図である。
【図3(b)】窓フレームの主な座標系を示す図である。
【図4】この発明の一実施形態であって、「操り」織りを用いて得た卵形ファブリックの構成図である。
【図5(a)】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【図5(b)】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【図5(c)】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【図6】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以後この発明について添付の図面を参照しながら、より詳しく説明する。図面には、好ましい実施例を示す。しかし、この発明は、多くのいろいろな形態で実施することができ、ここに述べる実施例に限定されるわけではない。むしろ、図示するそれらの実施例は、開示が全体に行き渡り完全になるようにし、当業者にこの発明の考え方を充分に伝えるためのものである。
【0023】
引き続く説明において、図面を通して同様あるいは対応する部分に対し同一の符号を付ける。そしてまた、以下の説明中、たとえば「上部の」、「下部の」、「上」、「下」、「第1の」、「第2の」およびその他の用語は、便宜的なものであり、文字どおりに解釈されるわけではない。
【0024】
さて、図面に戻ると、この発明の一実施例は、高強度のものに用いる3次元の織りプリフォームを製造する方法である。高強度のものとして、たとえば、航空機の窓フレーム、コンポジットのタービンファンケース、ジェットエンジンの格納リング、航空機の胴体フレームあるいは航空機エンジンにナセルを取り付けるためのフランジ付きリングなどがある。ここでは航空機の窓フレームを好ましい実施例として挙げるが、この発明はそれに限定されるわけではない。たとえば、ここに述べる織りプリフォームあるいは製法を、上述したものや同種のものの構造のいずれの製造にも利用することができる。
【0025】
この発明の一実施態様による方法では、独特なテキスタイル製造技術、すなわち、「たて糸操り(warp steering)」と称する技術を用いる。「たて糸操り(warp
steering)」という用語は、たて糸に対する差動テークアップ機構を指し、その差動テークアップ機構はたて糸を必要な形に「操り導き」、直線織り、ポーラ織り(polar weaving)あるいはそれらの組み合わせをすることによって、ファブリックあるいはプリフォームのX−Y面における形を実際上どのような形にもすることができる。この発明の一実施形態により、「操り」織りを用いて形成した、そのようなたて糸操りファブリックの卵形の一例30を図3に示す。卵形のファブリック30は、ある面において平らであり、X−Y面で曲線状の形である。そのような配置構造において、各たて糸あるいはファイバ32は、経路の長さが異なり、競技トラックの走路ラインと同様である。それに対し、各よこ糸あるいはファイバ34は、ファブリックの端部に対していつも直角をなしあるいは直交している。すなわち、そのようなファブリックにおいて、たて糸ファイバ32は、周辺の方向に連続し、そして、よこ糸ファイバ34は、曲線のその場所の半径に関して、いつも半径方向に方向付けられている。
【0026】
この発明の一実施態様によれば、この技術を用いることにより、図1に示すようなコンポジットの窓フレーム10を形成する。その窓フレームは、起立した脚20および選択的な「ジョグル」15などの特徴を含む。この実施例による方法では、別に織った2つのファブリック22,24を用いる。それらの各ファブリックは、たとえば、図5(a)に示すように、ダーツのない部分26とダーツ部分28とを含む。一方のファブリック24は、その領域にダーツを設けることなく、窓フレーム10の本体の中の大体平らな卵形になるように形成する。また、他方のファブリック22は、ダーツのない起立脚の楕円錐の形になるように形成する。2つのファブリック22、24を結合すると、各ファブリックのダーツのない部分26が、たとえば、図5(b)に示すように、他のファブリックのダーツ部分28を補強する。結果として得るプリフォーム35は、たとえば図5(c)に示すように、フレーム10の全部分について周辺および半径の両方向に連続ファイバをもつことになるだろう。
【0027】
図5(c)に示すプリフォームについては、両ファブリック22,24をフレーム10の全幅にわたって織ることができる。それにより、一様な厚さの構成部分を得る。しかし、当業者にとって、それらのファブリックのいずれかは、当然ダーツのない部分26を含むように織られることが自明である。そのような場合、全幅中ダーツのない部分26で構成される窓フレーム10の部分は、全幅のダーツ部分と幅の一部がダーツのない部分とを結合して得る部分ほどの厚さをもたない。
【0028】
この実施態様によるプリフォームは、単一の層あるいは多層の層にすることができる。たとえば、操り織りファブリック(steered fabric)30あるいは35の連続した層を多数互いの上に重ねることにより、図6に示すように、必要な厚さの積層プリフォーム40にすることができる。追加的な強度および/または剛性が必要であれば、軸外れ方向(特定部分の曲率半径に関して)のファイバを伴うファブリックの層を追加することによって、操り織りのファブリックの層間に差し入れることができる。その代わりに、操り織りのファブリックを多層のファブリックとして織ることができる。多層のファブリックの2または3以上の層は、必要なパターンの1または2以上のたて糸および/またはよこ糸によって一体に保持される。ファブリックについては、たて糸ファイバに対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。また、ファブリック自体は、今までの織りパターン、たとえば、平織り、あや織り、朱子織りなどの織りパターンを用いて織ることができる。カーボン・ファイバ(炭素繊維)が好ましいが、この発明は、ストレッチ・ブロークン可能なものを含む他の繊維にも実際上適用することができる。たとえば、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を、必要に応じてプリフォームの選ばれた領域の周辺ファイバとして用いることができる。
【0029】
この方法による操り織りについては、差動テークアップ機構を用いる織機で織り、窓フレームの必要な卵形にすることができる。操り織りファブリック30において、たて糸ファイバは、周辺方向に連続し、そして、よこ糸ファイバは、曲線のその場所の半径に関して、いつも半径方向に方向付けられている。
【0030】
今、ファブリックを必要な3次元の形にしたり、あるいは形作る上で付加的な道具を要しないように目論んではいるが、必要に応じて、付加的な道具、たとえば成形ツールおよび/または圧縮器具などを用いることができる。必要な3次元の形にファブリックを成形した後、たとえば、トタンスファー成形のような在来の樹脂注入法を用いて、プリフォーム30をコンポジットへと処理加工する。たとえば、この一実施例によるプリフォームは、図1に示すような航空機の窓フレーム10に加工することができる。その構造物10は、今までに述べた各実施例における織りプリフォームから構成される。
【0031】
この発明のプリフォームは、たて糸ファイバに対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。カーボン・ファイバ(炭素繊維)が好ましいが、この発明は、他のタイプの繊維にも実際上適用することができる。たとえばカーボン、ナイロン、レーヨン、ファイバーグラス、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、および金属糸あるいは繊維などがある。
【0032】
この発明のたて糸操りファブリック(ワープ・ステアード・ファブリック)は、たとえばカーボン、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ファイバーグラス、綿、ガラス、セラミック、アラミド、およびポリエチレン、あるいはこの分野で知られた他の材料など、いろいろな材料で作り上げることができる。最終的な構造物は、マトリックス材料、たとえば、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、および炭素などを用いて、樹脂トランスファー成形や化学的気相ろ過などの樹脂含浸法によって含浸し、それによって、3次元のコンポジット構造物を形成する。
【0033】
この発明の織りプリフォームは、補強脚を伴う輪郭フレームを利用する、いろいろな構造に適用することができる。ここに一例として挙げたものは、航空機の窓フレームである。
【0034】
この発明の好ましい実施例および変形例について詳しく述べたが、この発明は、それらの実施例や変形例に限定されるわけではない。特許請求の範囲に記載するこの発明の考え方の範囲内において、他の変形や修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
10 窓フレーム
15 ジョグル
20 起立脚
22,24 織りファブリック
26 ダーツのない部分
28 ダーツ部分
30 卵形ファブリック
32 たて糸(ファイバ)
34 よこ糸(ファイバ)
35 プリフォーム
40 積層プリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のたて糸操りファブリックを備える、3次元の織りプリフォーム。
【請求項2】
前記たて糸操りファブリックは、ダーツのない部分を備える、請求項1のプリフォーム。
【請求項3】
前記たて糸操りファブリックは、ダーツ部分を備える、請求項1のプリフォーム。
【請求項4】
前記たて糸操りファブリックのダーツ部分は、互いに結合され、それにより、前記プリフォームの全部分の周辺および半径の方向に連続ファイバがある、請求項3のプリフォーム。
【請求項5】
前記プリフォームは、窓フレームの一部である、請求項4のプリフォーム。
【請求項6】
前記プリフォームは、航空機の窓フレームの一部である、請求項5のプリフォーム。
【請求項7】
前記たて糸操りファブリックの一部分には、一般のカーボン・ファイバおよび/またはストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバがある、請求項1のプリフォーム。
【請求項8】
一つのたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分は、別のたて糸操りファブリックにおけるダーツ部分を補強する、請求項4のプリフォーム。
【請求項9】
複数のたて糸操りファブリック間に差し入れた、軸外れ方向に整列させたファイバを伴う、1または2以上のファブリック層をさらに備える、請求項1のプリフォーム。
【請求項10】
前記たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織られたものである、請求項1のプリフォーム。
【請求項11】
前記たて糸操りファブリックの少なくとも一つは、多層のファブリックである、請求項1のプリフォーム。
【請求項12】
前記たて糸操りファブリックにおけるたて糸ファイバパターンは、プライ対プライ、直交、およびアングルインターロックの中の一パターンである、請求項11のプリフォーム。
【請求項13】
前記たて糸操りファブリックは、よこおよびたての複数の糸あるいはファイバを織り交ぜて構成したものであり、それらのよこおよびたての糸あるいはファイバは、カーボン、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ、ナイロン、レーヨン、ファイバーグラス、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、および金属糸あるいは繊維の中の一つである、請求項1のプリフォーム。
【請求項14】
請求項1による3次元の織りプリフォームを備える強化コンポジット。
【請求項15】
マトリックス材料をさらに備える、請求項14のコンポジット。
【請求項16】
前記マトリックス材料は樹脂であり、前記コンポジットは、樹脂トランスファー成形および化学的気相ろ過のいずれかによって構成される、請求項15のコンポジット。
【請求項17】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、および炭素の中の一つである、請求項15のコンポジット。
【請求項18】
3次元の織りプリフォームを製造する方法であって、複数のたて糸操りファブリックを織る工程を備える方法。
【請求項19】
前記たて糸操りファブリックの第1部分にダーツを設ける工程をさらに備える、請求項18の方法。
【請求項20】
前記たて糸操りファブリックの第2部分に対しダーツを設けないままにする工程をさらに備える、請求項19の方法。
【請求項21】
前記たて糸操りファブリックのダーツ部分を互いに結合し、それにより、前記プリフォームの全部分の周辺および半径の方向に連続ファイバが存在するようにする工程をさらに備える、請求項20の方法。
【請求項22】
前記プリフォームは、窓フレームの一部である、請求項21の方法。
【請求項23】
前記プリフォームは、航空機の窓フレームの一部である、請求項22の方法。
【請求項24】
前記たて糸操りファブリックは、一般のカーボン・ファイバおよび/またはストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバを備える、請求項18の方法。
【請求項25】
一つのたて糸操りファブリックにおけるダーツのない部分を、別のたて糸操りファブリックにおけるダーツ部分で補強する、請求項21の方法。
【請求項26】
複数のたて糸操りファブリック間に、軸外れ方向に整列させたファイバを伴う、1または2以上のファブリック層を差し入れる工程をさらに備える、請求項18の方法。
【請求項27】
前記たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織られる、請求項18の方法。
【請求項28】
前記たて糸操りファブリックの少なくとも一つは、多層のファブリックである、請求項18の方法。
【請求項29】
前記たて糸操りファブリックにおけるたて糸ファイバパターンは、プライ対プライ、直交、およびアングルインターロックの中の一パターンである、請求項28の方法。
【請求項30】
前記たて糸操りファブリックは、よこおよびたての複数の糸あるいはファイバを織り交ぜて構成したものであり、それらのよこおよびたての糸あるいはファイバは、カーボン、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ、ナイロン、レーヨン、ファイバーグラス、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、および金属糸あるいは繊維の中の一つである、請求項18の方法。
【請求項31】
請求項18による3次元の織りプリフォームを形成する工程を備える、強化コンポジットの製造方法。
【請求項32】
前記プリフォームにマトリックス材料を含浸させる工程をさらに備える、請求項31の方法。
【請求項33】
前記マトリックス材料は樹脂であり、前記コンポジットは、樹脂トランスファー成形および化学的気相ろ過のいずれかによって形成される、請求項32の方法。
【請求項34】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、および炭素の中の一つである、請求項32の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−506766(P2013−506766A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532251(P2012−532251)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050639
【国際公開番号】WO2011/041355
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508135080)アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】