説明

置換心臓弁の経カテーテル送達

置換心臓弁装置。心臓弁装置は、ステントと、管腔を規定する実質的に円筒型の本体を有する弁フレームとを備える。弁フレームは、実質的に円筒型の本体に取り付けられた、複数の曲がったワイヤの対を備える。曲がったワイヤの対の各々は、内側の曲がったワイヤと外側の曲がったワイヤとを備える。ワイヤフレームはさらに、複数の弁尖を有する。弁尖の各々は、内側の曲がったワイヤの各々に取り付けられ、弁尖本体を弁フレームの管腔内で位置決めするように、外側の曲がったワイヤの各々の上を延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、本願の譲受人により所有される、2004年2月5日に出願された、米国仮出願第60/542,008号;2004年5月28日に出願された同第60/575,167号;および2004年9月16日に出願された、同第60/610,271号(これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される)に対する利益および優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本技術は、一般に、心臓弁の機能不全の処置、そして、詳細には、このような心臓弁を置き換えるための最小侵襲性のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
先天性の心疾患の処置は、代表的に、外科的な介入(例えば、胸部腔が開かれ、そして、心臓、動脈/静脈および/または関連する弁が修復されるか、もしくは他の方法で処置される、「開胸」外科手術)を必要とする。短期および長期の患者の追跡の間に現れ得る術後合併症は、心臓弁の機能不全を含む。例えば、ファロー四徴症(tetrology of fallot)は、しばしば、出生時に発見される先天性の心臓欠陥であり、乳児は、心臓の肺動脈弁の適切な機能に影響する閉塞の結果として、青色に見える。この閉塞は、しばしば、早期に外科的に取り除かれて、乳児が生存する機会が増やされる。この外科的手順は、代表的に、その後、肺動脈弁を通る血液の漏れ(すなわち、逆流)を生じる。患者の生涯にわたり、この逆流は、より深刻になり得、そして、逆流の増加を補償するために、例えば、乳児による心腔および心臓弁の拡張に起因して、心臓弁のさらなる機能不全をもたらす。
【0004】
心臓弁の機能不全に対処し、解消するために、毎年およそ89,000〜95,000件の開胸外科手術が行なわれている。この外科手術は、胸骨を咽頭のすぐ下から横隔膜の上まで縦方向に、半分に横切開する全身麻酔下での切開を必要とする。心臓は、この外科手術の間、カリウム含量の高い冷生理食塩水を注入することによって停止もしくは静止される。次いで、人工心肺(heart−lung machine)が脱酸素された血液を、右心房に配置された管から排出し、そして、その血液を、人工肺(oxygenator)を通して駆出する。人工肺は、二酸化炭素を血液から離す一方で、酸素を血中に拡散させることを可能にする、血液ガス膜を有する。次いで、酸素を含ませた血液が、弁の上の大動脈を通る管を通って患者に戻される。この外科手術は、非常に高額であり、そして、患者が一旦退院しても、院内での長期の回復期間と、さらなるリハビリテーションを必要とする。この侵襲性の外科手術はまた、大きな胸部の傷跡ももたらす。
【0005】
心臓弁の機能不全としては、例えば、心臓と肺との間の主肺動脈内の心臓弁が、心臓の右心室への血液の逆流を防ぐことができない場合に生じる、肺の逆流が挙げられる。この心臓弁の機能不全は、右心室への容積負荷をもたらし、そして、右心室の機能不全へとつながり得る右心室の拡張を生じ、これは、心室性頻脈および突然死に寄与すると考えられている。
【0006】
重篤な肺の逆流の長期にわたる有害な影響に起因して、外科的な肺動脈弁の置換は、重篤な逆流、運動不耐性の症状ならびに/または右心室の拡張および機能不全の進行を有する患者に対して行なわれる。
【0007】
繰り返しの開胸外科手術の必要性;外科手術および心肺バイパスの危険性;ならびに、全ての利用可能な外科移植用弁の制限された寿命に起因して、心臓病専門医は、代表的に、可能な限りこの弁置換手順を遅らせる。外科的弁置換に伴う危険性は、特に、置換弁が患者と共に成長せず、従って、より頻繁な置換を必要とするという点で、小児科患者に関しては急性のものである。
【0008】
冒されているか、または異常な、生来の心臓弁を置き換えるために使用される補綴の心臓弁は、代表的に、例えば、剛性のオリフィスリングおよび剛性のヒンジ式弁尖、またはボールとケージ(ball−and−cage)のアセンブリを備える機械式のデバイスである。補綴の心臓弁は、より近年、機械的なアセンブリと生物学的な材料(例えば、ヒト、ブタ、ウシ、または生体高分子の弁尖)とを組合せた、生物義装デバイスとなっている。多くの生物義装弁は、弁の弁尖を支持するためのさらなる支持構造(例えば、ステント)を備える。このステントはまた、そうでなければ、弁尖により支えられる、正常な心臓の機能の間にはたらく血行動態学的な圧力からの応力を吸収する。
【0009】
心臓弁の置換は、代表的に、開胸外科手術の間に弁の補綴具の外科的な移植を包含し、そして、心臓が停止し、人工弁補綴具が縫われるので、血液の外循環のために、人工心肺の使用を必要とする。弁の置換外科手術は、従って、患者の身体に対して非常に過酷なものであり、そして、それゆえ、年齢または疾病のために肉体的に弱い患者には、実行可能な技術ではない可能性がある。従って、最小侵襲性であり、かつ、再手術の罹患を有さない、心臓弁置換の装置および手順を開発することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
開示される技術に従って製造および使用される置換心臓弁および支持構造は、心臓病専門医が、再手術の罹患を避ける、最小侵襲性の手順を実行することを可能にする。
【0011】
1つの実施形態において、開示される技術に従って製造される装置は、置換心臓弁の経カテーテル送達を可能にする。この装置は、導入カテーテル、ステントおよび弁フレームを備える。このステントは、弁フレームを受容するように適合され、そして、ステントを受容し、弁フレームを支持する前に、導入カテーテルを介して心臓の解剖学的な管腔内で展開される。1つの局面において、このステントは、開かれたときに、ヒトの心臓弁の生理学的な形状を模倣するように、樽もしくは洞の形状を有する。別の局面において、バルーンカテーテルは、一旦導入カテーテルから引き出されると、ステントを拡張させる。別の局面において、ステントは、一旦導入カテーテルから引き出されると、自ずと拡張する。
【0012】
1つの実施形態において、開示される技術に従って製造されるステントは、弁フレームの経カテーテル送達を可能にする。ステントは、複数の固定構造体または材料(例えば、縫合糸または接着剤)を備え、このような固定構造体または材料の各々は、複数の弁フレームのうちの1つを受容および支持するように適合される。
【0013】
まずステントが展開され、続いて、弁フレームが展開され、そして、ステントに固定されるという、上述の2部の方法論は、導入カテーテルが、比較的小さなフレンチサイズであることを可能にし、そして、移植の間の置換心臓弁の歪みを減らす。このステントはまた、ステントを置き換えることなく、複数の弁フレームの置換を可能にし、そして、解剖学的な管腔内で展開されたときに、ステントに対する弁フレームの正確な配置を維持する。
【0014】
1つの実施形態において、開示される技術は、置換心臓弁を移植する、最小侵襲性の方法を可能にする。1つの局面において、弁アセンブリは、導入カテーテルを介して、心臓の解剖学的な管腔内で展開される。弁アセンブリは、ステントおよび弁フレームの両方の機能を有する単一の本体である。
【0015】
一般に、別の局面において、本発明は、心臓の血管を通る血液の流れを変えるための、補綴弁を含む。この弁は、第1のほぼ円筒型の本体を有するステントを備える。この第1のほぼ円筒型の本体は、第1のメッシュを有し、そして、第1の管腔を規定する。この第1の管腔は、第1のほぼ円筒型の本体の長さに沿って延びる。この弁はまた、このステントの第1の管腔内で同軸上に位置決め可能な弁フレームを有する。この弁フレームは、第2のメッシュを有する第2のほぼ円筒型の本体を有する。この第2のほぼ円筒型の本体は、第2の管腔および複数の弁尖を規定する。この第2の管腔は、第2のほぼ円筒型の本体の長さに沿って延びる。
【0016】
本発明のこの局面の実施形態は、以下の特徴を備え得る。補綴弁の第1のほぼ円筒型の本体は、第1のほぼ円筒型の本体から突出する領域を規定し得る。この領域は、複数の領域であり得る。この補綴弁の複数の弁尖は、第2のほぼ円筒型の本体の一方の端部に位置し得る。
【0017】
一般に、別の局面において、本発明は、心臓の血管を通る血液の流れを変えるための穂綴弁を含む。この弁は、ほぼ円筒型の本体を有する弁アセンブリを備える。このほぼ円筒型の本体は、メッシュおよび複数の弁尖を有する。このほぼ円筒型の本体は、ほぼ円筒型の本体の長さに沿って延びる管腔を規定する。
【0018】
本発明のこの局面の実施形態は、以下の特徴を備え得る。補綴弁のほぼ円筒型の本体は、ほぼ円筒型の本体から突出する領域を規定し得る。この領域は、複数の領域であり得る。この補綴弁の複数の弁尖は、ほぼ円筒型の本体の一方の端部に位置し得る。
【0019】
別の局面において、開示される技術に従って製造される装置は、置換心臓弁の経カテーテル送達を可能にする。この装置は、球根状の近位端部と遠位端部とを有し、この近位端部と遠位端部との間にネックが延びるステントを備え、このネックの遠位端部は、テーパー付けされた部分を規定する。また、ステントの管腔内に受容可能な弁フレームもこのデバイス内に備わっており、ここで、弁フレームの遠位端部が、ステントのテーパー付けされた部分と係合可能であり、そして、弁フレームの弁部材が、ステントの球根状の近位端部と係合可能である。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、ステントおよび弁フレームを備える置換心臓弁装置に関する。この弁フレームは、管腔を規定する実質的に円筒型の本体、およびこの実質的に円筒型の本体の一方の端部に取り付けられた複数の曲がったワイヤ対を有する。曲がったワイヤ対の各々は、内側の曲がったワイヤと外側の曲がったワイヤとを備える。ワイヤフレームは、複数の弁尖を有する。各弁尖は、内側の曲がったワイヤの各々に取り付けられ、そして、弁フレームの管腔内で位置決めされるように、外側の曲がったワイヤの各々の上を延びる。
【0021】
これらおよび他の目的は、本明細書中に開示される本発明の特徴と共に、以下の明細書、添付の図面および特許請求の範囲を参照して、明らかとなる。さらに、本明細書中に記載される種々の実施形態の特徴は、相互に相反することはなく、そして、種々の組み合わせおよび順列で存在し得ることが理解されるべきである。
【0022】
図面において、類似の参照番号は、一般に、異なる図面の全体にわたって、同じ部品を参照する。また、図面は、必ずしも等尺ではなく、一般に、本発明の原理を説明するために、強調されている。以下の明細書において、本発明の種々の実施形態が、添付の図面を参照して記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(詳細な説明)
簡単な概要として、そして、図1を参照して、心臓は、4つの房を有し、胸部の中央からわずかに左側に向かって傾いて位置する。脱酸素された血液(低い酸素を含む)が、大静脈の上枝および下枝を介して全身から戻り、右心室へと流れ込む。拡張期すなわち心周期の弛緩期の間に、右心室の圧力は、約20mmHgと約30mmHgとの間から約5mmHgと約10mmHgとの間まで低下する。右心房と右心室との間に生じる圧力勾配、および、心房の収縮により、血液の流れが三尖弁を通して右心室へと進む。三尖弁を通る血液の流れは、それによって、右心室を血液で満たす。収縮期、周期のポンピング期(pumping phase)の間に、右心室は、収縮し始め、心室内圧を増加する。このことにより、三尖弁は、簡単に閉じ、肺動脈弁の尖頭(cusp)が開く。次いで、血液が、右心室から、肺動脈を通って肺へと流れ、肺で、酸素化が起こり、二酸化炭素が除去される。
【0024】
血流の周期は、右心室の弛緩に対して開始する。右心室の拡張圧(例えば、約5mmHg未満)は、肺動脈圧(例えば、約10mmHg)よりも低いので、肺動脈弁が閉じ、逆流を防ぐ。右心室の圧力が低下するのと同時に、三尖弁が開き、再び、右心室が満たされる。
【0025】
血液は、一旦酸素化されると、肺静脈を介して心臓の左側へ、左心房へと流れる。血液が僧帽弁を通って左心室へと流れるのは、拡張期の間である。収縮期の間には、左心室内の圧力により、僧帽弁の弁尖が閉じ、そして、大動脈弁が開く。血液は、全身中を循環するために大動脈から出て流れる。
【0026】
心臓の二つの側部の幾何学および回路は類似している;しかし、各々の機能は異なる。右側は、血液を、ガス交換のために肺にのみ駆出する。左側は、血液を全身へと駆出する。左側は、右側よりも3〜4倍高い圧力を生じる。
【0027】
議論したように、ヒトの心臓には、各房の出口に位置する4つの弁が存在する。血液が流れる順番に、これらの弁は、三尖弁(右心房)、肺動脈弁(右心室)、僧帽弁(左心房)および大動脈弁(左心室)である。より高い圧力勾配に起因して、僧帽弁および大動脈弁は、より大きな疲労および/または疾患の危険性に供される。大動脈弁および肺動脈弁は、解剖学的に類似しており、半月弁と呼ばれている。
【0028】
図2Aおよび2Bに例示したように、大動脈弁21は、半月弁であり、その3つの尖頭20a、20bおよび20c(一般に、20)の部分的な月様の形状からそう命名された。この3つの尖頭20a、20bおよび20cは、弁輪22と名づけられた領域内で、大動脈弁21の壁23に取り付けられた軟部組織構造体である。収縮期(systole)の収縮期(contraction phase)の間に、3つの尖頭20a、20bおよび20cは、大動脈の壁23に押し戻され、そして、血液が(図2Bに例示されるように)大動脈弁21を通って流れる。拡張期または心室が弛緩している間には、左心室内の圧力は低下し、そして、血液が、(図2Bに示した血流とは逆方向に)逆行して流れ始める。拡張期の間、左心室の圧力は、低下し、そして、圧力が大動脈の弛緩圧を下回る場合、大動脈弁が閉じ(尖頭20a、20bおよび20cが、壁23から離れて落ち、そして閉じる)、それによって、血液の逆行性の流れを排除する。
【0029】
大動脈弁21の固有の特徴は、ルート26として参照される弁の領域内の大動脈の洞の存在である。それぞれ、尖頭20a、20bおよび20cの各々にオリフィスを有する、3つの洞24a、24bおよび24cが存在する。この洞24a、24bおよび24cに位置するこれらの樽形状の領域またはオリフィスは、大動脈弁21の領域内の血液の流体動力学に影響を及ぼし、そして、大動脈弁21の尖頭20a、20bおよび20cの開閉に寄与し得る。2つの尖頭は、主冠状動脈の分枝と命名されており、この尖頭は、開口部(すなわち、左右の冠状動脈洞)として働き、そして、第3の洞が、非冠状動脈洞と命名される。3つの対応する尖頭20a、20bおよび20cは、同様の様式で命名される。
【0030】
開示される技術は、例えば、損傷した生来の心臓弁を置換心臓弁で置き換えるために最小侵襲性の技術を適用することによって、侵襲性の外科手術の合併症の可能性を、軽減する。1つの実施形態において、支持構造体(例えば、ステントまたは足場)が、導入カテーテルを介して心臓の解剖学的な管腔内の予め選択された位置で展開される。用語「ステント」および「ドッキングステーション」とは、本明細書中で以降、全ての型の支持構造体および足場を広く指すために使用される。次いで、置換心臓弁が、同じカテーテル、あるいは、第2のカテーテルを用いて、展開されたステント内へと挿入される。ステントおよび/または弁アセンブリは、弁アセンブリをステントに関して所望の方向および配置にしっかりと保持するための取り付け手段(例えば、縫合糸または接着剤)を備える。ステントおよび心臓弁の2部の展開は、より小さなカテーテルの使用を可能にする。なぜならば、カテーテルの内径は、ステントおよび弁アセンブリの両方の圧縮された容積を、この手順時に同時に収容する必要がないからである。
【0031】
図3Aおよび3Bに示されるように、本発明に従うステント30の1つの実施形態は、形状記憶材料から製造される。ステント30は、メッシュ32から構築される壁34を有する、ほぼ円筒型の本体を規定する。壁34は、管腔36を規定する。メッシュ32は、例えば、形状記憶材料のワイヤまたはストリップから構築される。一例として、形状記憶材料は、製品名Nitinolの下で販売される、ニッケル−チタンワイヤであり得る。ニッケル−チタンワイヤは、適切に製造された場合、操作者によって操作され(例えば、曲げる)、その後、そのワイヤが操作される前に有したものと実質的に同じ形状に戻ることを可能にする、弾性特性を示す。ワイヤは、例えば、操作者がワイヤを加熱したときか、あるいは、操作者が、ワイヤを曲げるために適用している力を取り除いたときに、そのワイヤが操作される前に有したものと実質的に同じ形状に戻る。この実施形態において、ステント30は、例えば、欠陥のある心臓弁が外科的に除去される心臓内の位置の、(生来の心臓弁の3つの洞と関連した)クローバーの葉様の形状へと厳密に適合するために、クローバーの葉の形状へと近づく。
【0032】
ステント30は、あるいは、例えば、心臓の管腔内のステント30の配置と適合する、任意の幾何学的形状(例えば、円筒型、円錐型、球状、または樽様)であり得る。ステント30は、所望の材料耐耗性特性を有し、そして/または、患者の身体内で感染を生じる危険性が最小限である、身体内での配置に適合する、代替的な材料(例えば、ステンレス鋼合金、モリブデン合金または熱分解性カーボン(pyrolitic carbon))を用いて製造され得る。
【0033】
図4Aおよび4Bは、展開された形態の(すなわち、例えば、弁フレーム40を身体内に導入するために使用されるカテーテルの管腔壁によって束縛されていない)弁フレーム40の1つの実施形態を例示する。弁フレーム40は、図3Bのステント30のようなステント内で展開され得る。弁フレーム40は、形状記憶材料から製造される。弁フレーム40は、メッシュ42から構築されるほぼ円筒型の本体を規定する。メッシュ42は、形状記憶材料のワイヤまたはストリップから構築され得る。弁フレーム40もまた、3つの弁部材44a、44bおよび44cを有する。弁部材44a、44bおよび44cは、それぞれ、自由端48a、48bおよび48cを有する。弁フレーム40は、あるいは、図3Bのステント30のようなステント内の弁フレーム40の配置と適合する、任意の幾何学的形状(例えば、円筒型、円錐型、球状または樽様)であり得る。
【0034】
図5Aおよび5Bに示されるように、弁フレーム40は、ステント30の管腔36内で展開され得、それによって、弁アセンブリ50を生じる。1つの実施形態において、弁アセンブリ50は、ヒトの心臓内で展開されて、適切に機能し得ない生来の心臓弁を置き換え得る。弁フレーム40は、弁フレーム40とステント30とが患者の心臓内に配置され、そして、弁アセンブリ50を通る血液の流れに供されたときに、ステント30に対して所望の(例えば、固定された)配置を維持することを保証するように製造される。ここで図5Cおよび5Dを参照すると、弁部材44a、44bおよび44cは、代表的に、被覆材56(例えば、患者の免疫系による拒絶の可能性を最小限にするように化学的に処理された、シリコンゴム、または、ウシ、ブタもしくはヒトの組織のような、生体適合性の材料)でコーティングされる。コーティングされた弁部材44a、44bおよび44cは、図2Bの尖頭20a、20bおよび20cと同様に機能し得る。被覆材56は、弁部材44a、44bおよび44cに適用され得るバイオ技術加工された(bio−engineered)材料であり得る。被覆材56は、弁フレーム40が体内で展開する前に、弁フレーム40に適用される。被覆材56は、弁部材44a、44bおよび44cにそれぞれ対応する、3つの自由端46a、46bおよび46cを有する。自由端46a、46bおよび46cはまた、弁尖とも呼ばれる。弁フレーム40を(身体内に位置する)ステント30内に配置した後、弁部材44a、44bおよび44cに適用された被覆材56は、一般に、X軸に沿った位置方向に血液の流れを阻むことができる。自由端46a、46bおよび46cは、ステント30の内壁34から離れて移動し、それによって、X軸に沿った位置方向に血液の流れを制限する。
【0035】
しかし、ここで、図5Eおよび5Fを参照して、血液が、X軸に沿って負の方向に流れる場合、被覆材56の自由端46a、46bおよび46cは、ステント30の内壁34に向かって移動する。自由端46a、46bおよび46cは、それによって、弁アセンブリ50を通る血液の流れを実質的に制限する。この様式で、弁アセンブリ50は、血液がX軸に沿って負の方向に流れることを可能にすることによって、身体の生来の心臓弁の機能に近づく。
【0036】
図13Aおよび13Bは、図5Cの弁フレーム40のような弁フレームのモデル130のデジタル画像である。図を明りょうにする目的で、弁フレームモデル130は、管132とシリコンゴムの被覆材134から構築される。ここで、図13Bを参照して、弁フレームモデル130は、円筒型の形状である。あるいは、弁フレームモデル130は、本明細書中でこれより前に記載されたような、任意の幾何学的形状であり得る。
【0037】
より詳細に、そして図6を参照して、本発明の1つの実施形態の導入に関する方法の工程が記載される。導入カテーテル61は、ガイドワイヤ62によって、心臓の解剖学的な管腔65内の予め選択された位置68まで、大腿部の血管から下大静脈63を介して送達される。予め選択された位置68は、生来の心臓弁の元の位置に近くあり得る。導入カテーテル61は、管腔64を規定する内壁69を有し、そこを通ってガイドワイヤ62が通過する。導入カテーテル61は、開口部66を有し、この開口部から、ガイドワイヤ62が外に延びる。1つの実施形態において、生来の心臓弁の弁尖は、弁尖を静脈内で切除することによって(例えば、カテーテルを介して切断・把持デバイスを挿入して、弁尖を切断および除去することによって)、心臓内に導入カテーテル61を挿入する前に除去される。
【0038】
別の実施形態において、生来の心臓弁は、心臓内に留まる。図7もまた参照して、ステント/バルーンの組み合わせ71が、導入カテーテル61内に挿入され、そして、ガイドワイヤ62を用いて、予め選択された位置68へと導かれる。次いで、この組み合わせ71が、導入カテーテル61の拘束から展開され、そして、解剖学的な管腔65内に配置される。ステント/バルーンの組み合わせ71は、ステント77の管腔75内に位置するバルーン73を備える。1つの実施形態において、ステント/バルーンの組み合わせ71は、導入カテーテル61が解剖学的な管腔65内に挿入される前に、導入カテーテル61内で位置決めされる。別の実施形態において、ステント/バルーンの組み合わせ71は、導入カテーテル61の開口部66が、予め選択された位置68に配置された後に、導入カテーテル61内に挿入される。1つの実施形態において、予め選択された位置68は、解剖学的な管腔65の洞形状の領域に対応する。別の実施形態において、予め選択された位置68は、生来の心臓弁の元の位置と実質的に近い、解剖学的な管腔65内の領域に対応する。
【0039】
ここで、図8を参照すると、次いで、展開されたステント/バルーンの組み合わせ71のバルーン73が膨張させられ、それによって、ステント77を所定の構成およびサイズまで拡張する。ステント77の拡張された構成は、解剖学的な管腔65の洞形状の領域に適合する。1つの実施形態において、洞形状のステント77のサイズおよび形状は、解剖学的な管腔65内の実質的に固定された位置および方向にステント77を保持するのに十分である。さらなる実施形態において、洞形状のステント77は、このステント77を固定された位置により強固に保持するように、解剖学的な管腔65の内壁に取り付ける、要素(例えば、縫合糸、フック、スパイクまたはタックチップ)を備える。
【0040】
別の実施形態において、ステント77は、形状記憶材料(例えば、ニッケル−チタンワイヤ)から製造され、そして、導入カテーテル61の拘束から取り除かれたときに、自ずと拡張する。ステント77が導入カテーテルから展開した後、ステント77は、所定のサイズおよび形状まで拡張する。なぜならば、ステント77に適用される束縛力(例えば、導入カテーテル61の内壁69によるもの)はもはや存在しないからである。
【0041】
ここで、図9および図10を参照すると、弁フレーム19は、圧縮されて、導入カテーテル61内に挿入され、そして、弁フレーム91が、カテーテルのオリフィス66まで導かれ、そして、拡張されたステント77の管腔75内で展開される。一例として、1つの実施形態において、弁フレーム91は、図4Aの弁フレーム40であり得る。弁フレーム91は、導入カテーテル61から展開されると拡張し、そして、拡張されたステント77の管腔75と実質的に同じサイズおよび形状を取る。ステント77および/または弁フレーム91は、弁フレーム91を、ステント77内でステント77に対して所定の位置68に配置および固定するように機能する取り付け手段を有する。ここで図10を参照すると、次いで、導入カテーテル61が、解剖学的な管腔65から取り除かれ、そして、その後、置換弁の作動が、モニターされる。
【0042】
図11Aおよび11Bに例示されるような別の実施形態において、本発明に従う弁アセンブリ110は、ステント(例えば、図3Bのステント30)および弁フレーム(例えば図4Bの弁フレーム40)の両方の機能を備える、単一の本体である。弁アセンブリ110は、メッシュ112から構築される。メッシュ112は、例えば、本明細書中でこれより前に記載されたような形状記憶材料のワイヤまたはストリップから構築される。
【0043】
ここで、図11A、11Bおよび11Cを参照して、弁アセンブリ110は、3つの弁ギャップ111a、111bおよび111cを有し、その各々が、被覆材(例えば、図5Cの被覆材56)のためのヒンジ点として作用する。弁ギャップ111bは、図を明りょうにする目的で、図11Bにおいて隠された図として示される。
【0044】
被覆材56は、患者の免疫系による拒絶の可能性を最小限にするために化学的に処理された、シリコンゴム、または、ウシ、ブタもしくはヒトの組織のような、生体適合性の材料であり得る。被覆材56は、図を明りょうにする目的で、図11Bには示されない。被覆材56は、弁アセンブリ110を身体内で展開する前に、弁アセンブリ110に適用される。被覆材は、例えば、位置118a、118bおよび118c(118bは、図を明りょうにするために示されていない)において、弁アセンブリ110に固定され得る。弁アセンブリ110を身体内に配置した後、被覆材56は、一般に、本明細書中でこれより前に記載したように、X軸に沿って正の方向の血液の流れを許容し得る。
【0045】
弁アセンブリ110は、本明細書中でこれより前に記載されたように、圧縮されて、そして、図6の導入カテーテル61のような導入カテーテルに装填され得る。導入カテーテル61を患者に心臓内に挿入し、導入カテーテル61を所望の位置に位置決めした後、操作者は、弁アセンブリ110を、導入カテーテル61から展開させる。次いで、弁アセンブリ110が拡張する。なぜならば、導入カテーテル61は、もはや弁アセンブリ110に対して圧縮力を適用していないからである。あるいは、本明細書中でこれより前に記載されたように、図7のバルーン73のようなバルーンを使用して、弁アセンブリ110を拡張し得る。
【0046】
あるいは、弁アセンブリ110は、一旦心臓内の所望の位置に位置決めされると、形状記憶材料を加熱することによって拡張され得る。この弁アセンブリは、例えば、患者の心臓組織または血液との接触によって温まり得る。
【0047】
しかし、血液がX軸に沿って負の方向に流れるので、被覆材56の自由端119a、119bおよび119c(自由端119bは、図を明りょうにする目的で示されていない)は、弁アセンブリ110の内壁115から離れて移動する。それによって、被覆材56は、一般に、弁アセンブリ110を通る血液の流れを制限する。この様式で、弁アセンブリ110は、X軸に沿って負の方向に沿った、血液の流れを阻むことによって、身体の生来の心臓弁の機能に近づく。
【0048】
弁ギャップ111a、111bおよび111cは、血液の流れの方向に依存して、血液の流れが、適切に遮断されるか、または、弁アセンブリ110上に位置する被覆材56の存在によって許容されるかのいずれかであるように、任意の適切な形状(例えば、葉の形状、卵型の形状、または、ほぼ多角形の形状)および任意の数(例えば、3、4、または6)であり得る。さらに、弁ギャップの代替的な形状および数がまた、弁アセンブリを、図6の導入カテーテル61のような導入カテーテルに装填し、そして、導入カテーテルから取り外されることを可能にするに違いない。
【0049】
図14Aおよび14Bは、それぞれ、図11Aおよび11Bの弁アセンブリ110のような弁アセンブリのモデル140のデジタル画像である。図を明りょうにする目的で、弁アセンブリモデル140は、管142およびシリコンゴムの被覆材144から構築される。ここで、図14Bを参照して、弁アセンブリモデル140は、円筒型の形状である。あるいは、弁アセンブリモデル140は、本明細書中でこれより前に記載されたような、任意の幾何学的形状であり得る。
【0050】
ここで、図12Aおよび12Bを参照して、別の実施形態において、弁アセンブリ120は、3つの弁ギャップ111a、111bおよび111c(弁ギャップ111cは、図を明りょうにする目的で示されていない)を有する。弁アセンブリ120はまた、2つの開口部121aおよび121cを有する。開口部121aおよび121cは、例えば、心臓内の2つの冠状動脈と流体連絡する、弁アセンブリ120の開口部を表し得る。弁開口部121aおよび121cの存在に起因して、弁アセンブリ120の製造には、より少ない材料が必要とされる。従って、図6の導入カテーテル61のようなより小さな直径の導入カテーテルを使用して、弁アセンブリ120を患者の心臓に導入することが可能であり得る。
【0051】
図15Aおよび15Bは、図12Aの弁アセンブリ120のような、弁アセンブリのモデル150のデジタル画像である。図を明りょうにする目的で、弁アセンブリモデル150は、管152およびシリコンゴムの被覆材154から構築される。ここで、図15Bを参照して、弁アセンブリモデル150は、円筒型の形状である。あるいは、弁アセンブリモデル150は、本明細書中でこれより前に記載されたような、任意の幾何学的形状であり得る。
【0052】
図16に示されるように、ステント30の別の実施形態が例示される。この実施形態において、ステント30は、例えば、欠陥のある心臓弁が外科的に除去される心臓内の位置の、(生来の心臓弁の3つの洞と関連した)クローバーの葉様の形状へと厳密に適合するために、クローバーの葉の形状へと近づく。ステント30は、ほぼ円筒型の、細長本体を規定し、この細長本体は、メッシュ32から構築される壁34を有する。壁34は、管腔36を規定する。メッシュ32は、例えば、形状記憶材料、またはこれより前に記載されたような他の代替的な材料のワイヤまたはストリップから構築される。
【0053】
再度、図16を参照して、ステント30の管腔36は、部分的に展開された弁フレーム40(弁フレーム40は、図17に例示される)と適合し得る、ネック部分37を備える。ステント30はまた、ステント30の遠位端部31から延びるテーパー付けされた部分38と、ステント30の近位端部33から延びる球根状の部分35とを備える。
【0054】
弁フレーム40を、ステント30内で部分的に展開することが可能であることは、有益である。なぜならば、弁フレーム40が、ステント30内で完全に展開される前に、ステント30内で位置を変え得るからである。弁フレーム40の位置を変えることは、例えば、一旦弁フレーム40が完全に展開されると弁フレーム40のステント30に関する移動を最小限にするように、ステント30の管腔36内での弁フレーム40の適切な配置を保証するために必須であり得る。
【0055】
図17は、展開された形態(すなわち、例えば、弁フレーム40を身体内部に導入するために使用されるカテーテルの管腔の壁によって束縛されない)の弁フレーム40の1つの実施形態を例示する。弁フレーム40は、図16のステント30のようなステント内で展開され得、そして、図4A〜4Bを参照してこれより前に記載されるように、構築され得る。
【0056】
これより前に記載したように、弁フレーム40は、ステント30の管腔36内で展開され、それによって、弁アセンブリ50を生じ得る(図18E)。1つの実施形態において、弁アセンブリ50は、適切に機能しない生来の心臓弁を置き換えるために、ヒトの心臓内で展開される。弁フレーム40およびステント30は、弁フレーム40およびステント30が、患者の心臓内に配置され、そして、弁アセンブリ50を通る血液の流れに供される場合に、弁フレーム40がステント30に関して所望の(例えば、固定された)配置を維持することを保証するように製造される。
【0057】
より詳細に、そして、図18A〜18Eを参照して、本発明の1つの実施形態を、解剖学的な管腔へと導入することに関する方法の工程が記載される。最初の工程として、蛍光顕微鏡の助けにより、導入カテーテル61が、ガイドワイヤ62によって、心臓の解剖学的な管腔内の予め選択された位置まで血管を介して心臓へと送達される。予め選択された位置は、例えば、生来の心臓弁の元の位置に近くあり得る。導入カテーテル61は、管腔64を規定する内壁69を有し、そこを通ってガイドワイヤ62が通過する。導入カテーテル61は、開口部66を有し、この開口部から、ガイドワイヤ62が外に延びる。代替的な実施形態において、カテーテルは、ガイドワイヤ62を使用することなく、患者内に挿入され、そして患者内で操作され得る。
【0058】
図18Aを参照して、ステント30は、圧縮されて、導入カテーテル61内に挿入され、そして、ステント30が、ガイドワイヤ62の上を、カテーテルのオリフィス66まで遠位方向に導かれる。あるいは、ガイドワイヤ62は取り除かれ得、そして、ステント30が、導入カテーテル61の壁69をガイドとして用いて、導入カテーテル61を通ってカテーテルのオリフィス66まで導かれ得る。
【0059】
ステント30が一旦カテーテルのオリフィス66に到達すると、ステント30は、オリフィスを通って、身体内へと導かれる。ステント30は、これより前に記載された方法を用いて、所定の構成およびサイズへと拡張され得る。ステント30の拡張された構成は、解剖学的な管腔の領域と適合し(示さず)、そして、1つの実施形態においては、ステント30のサイズおよび形状は、ステント30を、解剖学的な管腔内で実質的に固定した位置および方向に保持するのに十分である。あるいは、これより前に記載されたように、ステント30は、ステント30を固定された位置により強固に保持するように、解剖学的な管腔の内壁に取り付ける、要素(例えば、縫合糸、フック、スパイクまたはタックチップ)を備える。
【0060】
図18Bを参照して、ステント30が身体内に挿入された後、弁フレーム40が、圧縮されて、導入カテーテル61内に挿入される。ステント30と同様に、弁フレーム40は、ガイドワイヤの上を、カテーテルのオリフィス66まで遠位方向に導かれる。あるいは、ガイドワイヤ62は取り除かれ得、そして、弁フレーム40が、導入カテーテル61の壁69をガイドとして用いて、導入カテーテル61を通ってカテーテルのオリフィス66まで導かれ得る。
【0061】
図18Cを参照して、弁フレーム40が一旦カテーテルのオリフィス66に到達すると、弁フレーム40は、拡張されたステント30の細長の管腔36のネック部分37内に部分的に展開される。細長のステント30および弁フレーム40の細長の本体は、弁フレーム40が、ステント30内で部分的に展開されることを可能にする。部分的に展開された状態で、弁フレーム40は、なお、導入カテーテル61内に引っ込められ得、そして、必要に応じて、ステント30内で位置を変え得る。部分的に展開されると、弁フレーム40の遠位端部47が拡張し、そして、拡張されたステント30の管腔36と実質的に同じサイズおよび形状を取る。次いで、弁フレーム40が、ステント30内で適切に位置決めされているかどうかに関する決定が、例えば、蛍光透視を用いてなされる。適切に位置決めされるためには、弁フレームの遠位端部47は、図18Cに示されるように、ステント30のテーパー付けされた部分38と整列するべきである。ステント30と弁フレーム40とが適切な配置ではないという決定がなされる場合、弁フレーム40は、導入カテーテル61内へと引っ込められ得、次いで、ステント30内の適切な位置で再度展開され得る。
【0062】
弁フレーム40が一旦ステント30と適切に整列されると、使用者は、弁フレーム40をステント30内に完全に開放し、そして、カテーテル61を引き出す(図18D〜18E)。弁フレーム40がステント30内で完全に展開された場合、弁フレーム40が拡張し、そして、弁フレーム40の外側表面が、ステント30の内側表面と嵌合するように、ステント30の形状と実質的に対応するように適応する。弁フレーム40とステント30との嵌合表面は、弁フレーム40のステント30内での位置決めを維持する。例えば、弁フレーム40の遠位端部47は、ステント30のテーパー付けされた部分38と係合し、そして、弁部材44a、44bおよび44cが拡張して、ステント30の球根状の部分35と係合する。
【0063】
図19A〜19Eを参照して、他の実施形態において、ステント/ドッキングステーション130は、例えば、心臓の管腔または尿管内のドッキングステーション130の配置と適合する、任意の幾何学的形状(例えば、円筒型、円錐型、球状、または樽様)であり得る。例示的なドッキングステーション130は、これより前に記載したステント材料から製造され得る。ドッキングステーション130は、身体内に挿入された場合、弁に加えて、種々のデバイスを保持し得る。例えば、図19Aを参照すると、ドッキングステーション130は、医薬のカプセルを受容するポケットを備える。このカプセルは、ドッキングステーション130と機能的に係合することによって、適所に保持され得る。例えば、窪みが、ドッキングステーション130の内側表面から内向きへと突出して、カプセルと係合し得る。図19Cを参照して、別の実施形態において、ドッキングステーション130は、圧力応答性の弁および/または括約筋132を保持して、体腔内の流体の流れを減少し得る、外部の環状リング131を備える。図19Dに例示されるような別の実施形態において、ドッキングステーション130は、モニタリングデバイス(例えば、ビデオカメラまたは心拍数モニター)を保持し得る、窪んだ表面または腔133を備える。図19Eを参照して、ドッキングステーション130は、1つの実施形態において、医療用デバイス、薬物または放射線源を受容するための閉じた本体を形成する。1つの実施形態において、薬物は、遅延放出型の医薬処方物である。ドッキングステーション130の閉じた端部134は、身体内にドッキングステーション130を固定するために使用される、取り付けデバイス136に係合され得る。
【0064】
図20A〜20Fを参照して、血管(図20A)、脳(図20B)、尿管(図20C)、胃(図20D)、結腸(図20E)および心臓(図20F)を含む、身体の種々の位置に挿入されたドッキングステーション130が示される。一般に、ドッキングステーション130は、身体の、任意の腔、器官、脈管、弁、括約筋または管腔内に挿入され得る。ドッキングステーション130は、図18A〜18Eを参照して上に記載されたように、カテーテルを通して挿入され得る。ドッキングステーション130が一旦身体内に配置されると、ドッキングステーション130は、上述のように、ドッキングステーション130と一過性に係合するか、または永久に係合する、医療用デバイスを受容し得る。一例として、図20Bに例示されるように、薬物/放射線供給源は、脳内に位置するドッキングステーション130内に挿入されて、てんかん巣、悪性腫瘍を処置し得るか、または、損傷した組織を修復し得る。あるいは、図20Cおよび20Dを参照して、胃または尿管内に取り付けられたドッキングステーション130は、圧力応答性の弁および/または括約筋(図19C)と係合して、還流を防止し得る。図20Eを参照して、別の実施形態において、図19Dに例示されたドッキングステーション130と類似するドッキングステーション130は、結腸内に挿入され得る。次いで、ドッキングステーション130は、モニタリングデバイスを受容して、介護の提供者に対してフィードバックを提供し得る。図20Fを参照して、別の例として、心拍数モニター、心電図センサー、またはペースメーカーが、心臓内に移植されたドッキングステーション130と係合され得る。本発明の1つの利点は、医療用デバイスまたは薬物が、もはや必要とされない場合に、医療用デバイスまたは薬物が、ドッキングステーション130から除去され得、そして、ドッキングステーション130は、別の医療用デバイスまたは薬物の将来的な使用のために、身体内の適所に留まる点である。
【0065】
別の実施形態(図21)において、置換弁アセンブリ310は、ステント330および弁フレーム340を備える。ステント330は、第1の圧縮された状態(図示)と第2の拡張された状態(図示せず)との間で拡張可能である。ステント330は、複数の蛇行するワイヤ(一般に331)から構築された円筒型の本体を有する。第1のワイヤ331の蛇行する曲線の各々は、隣接するワイヤ331の蛇行する曲線の各々に頂部で取り付けられる。1つの実施形態において、ワイヤ331は、ステンレス鋼から構築される。ステント330の各端部には、より小さな半径の蛇行する曲線を有する、さらなる蛇行する形状の末端ワイヤ(一般に334)がある。これらの蛇行する末端ワイヤ334の各々の頂部のいくつかは、本体の他の蛇行するワイヤ331の頂部336のいくつかに取り付けられる。
【0066】
また、図22を参照して、弁フレーム340は、実質的に円筒型の本体部分341、複数の弁取り付け対346、および必要に応じて、1つ以上の外部の蛇行するワイヤリング353に取り付けられた複数のスタンドオフ350を備える。
【0067】
弁フレーム340の実質的に円筒型の本体部分341は、複数の蛇行する曲がったワイヤ352から構築される。第1のワイヤ352の蛇行する曲線の頂部356の各々は、隣接するワイヤ352の蛇行する曲線の頂部の各々に、頂部356で取り付けられる。1つの実施形態において、ワイヤ352は、Nitinolから構築される。再度、実質的に円筒型の本体部分341が、第1の圧縮された状態(図示せず)と第2の拡張された状態(図示)との間で拡張可能である。用語「頂点(vortex)」または「溝(trough)」が使用される場合、語「溝」は、血流の方向を指すワイヤ上の屈曲であり、そして、「頂点」は、血流に対向する方向を指す屈曲であるという決まりになっていることに注意すべきである。
【0068】
弁フレーム340の円筒型の本体341の一方の端部には、3セットの弁取り付け対346がある。各弁取り付け対346は、内側の曲がったワイヤ358と外側の曲がったワイヤ360とを備える。曲がったワイヤ358、360の各々は、頂点362、364(それぞれ、図21に示される)または溝372および頂点370(それぞれ、図22に示される))のいずれかに取り付けられる。1つの実施形態(図22)において、内側の曲がったワイヤ358と外側の曲がったワイヤ360との間の空間Sは、実質的に放物線状であり、一定である。
【0069】
弁取り付け対346の各々に、弁尖390が取り付けられる(図23、24および25)。各弁尖390は、弁尖本体396および複数の弁尖突出部392を有する。弁フレーム340に取り付けられる場合、弁尖本体396は、弁フレーム340の管腔内に位置する。図25を参照して、弁尖390は、弁尖本体396の突出部392に最も近い部分が、外側の曲がったワイヤ360の上を引っ張られ、そして、弁尖突出部392が、内側の曲がったワイヤ358の上を曲がるように、位置決めされる。弁尖突出部392の各々は、縫合糸394によって、それ自体に取り付けられる。これは、弁尖突出部392を、内側の曲がったワイヤ358に係留し、そして、弁尖本体396が、弁フレーム340に固定され、弁フレーム340の管腔内でその形状を維持することを許容する。この構成は、縫合糸394が、弁を通って通過する血液に対して曝露されることを防ぎ、そして、補綴材料に対するあらゆる接触がない弁尖本体の自由な動きを提供し、それによって、弁尖に対する損傷を防止する。
【0070】
さらに、外側の曲がったワイヤ360および内側の曲がったワイヤ358を、弁フレーム340の本体341へと、隣接する頂部370および溝372において取り付けることによって、内側の曲がったワイヤ358と外側の曲がったワイヤ360との間の距離が、実質的に確保される。結果として、弁の弁尖390の動きは、曲がったワイヤ358、360を触れさせず、それによって、弁尖390への損傷を防止する。
【0071】
1つの実施形態において、任意の複数のスタンドオフ350が、1つ以上の外部の蛇行するリング353を、外側の曲がったワイヤ360から一定距離離して保持し、弁フレーム340に対する外部の支持を提供する。外部の蛇行するリング353上のいくつかの位置に、白金マーカー400が位置する。1つの実施形態(図示)において、白金ワイヤは、いくつかの位置で、外部の蛇行するリング353の周りを覆う。次いで、これらの位置は、ステント330内の弁フレーム340の位置決めを助ける、放射線不透過性マーカー400として機能する。別の実施形態において、白金マーカーはまた、弁フレーム340の両端が、蛍光透視下ではっきりと見え得るように、弁フレームの対抗する端部に位置決めされる。なぜならば、弁フレーム340は、ステント330内に位置決めされるからである。スタンドオフ350の各々は、弁フレーム340が、圧縮されてカテーテル内に収められている場合に、外側ワイヤ360の周りを回転する弁尖396が、外部の蛇行するリング353と接することなく、それによって、弁尖390に対する損傷を生じる可能性がないように、十分に長くなければならない。
【0072】
図26は、内側の曲がったワイヤ358と外側の曲がったワイヤ360とが、円筒型の本体352のワイヤ352の頂部の同じ位置404に取り付けられている、類似の弁フレームを図示する。
【0073】
使用の際に、ステント330は、他の実施形態に関してこれより前に記載されたように、カテーテルを通して心臓内の位置へと挿入される。細長のバルーンが、ステント330の管腔内へとカテーテルを通して導入される。バルーンは、ステント330内で膨らまされ、そして、ステント330は、その長さに沿って半径方向に実質的に均一に拡張する。次いで、実質的に球状のバルーンが、拡張したステント330の中央に導入され、そして、膨らまされる。このさらなる膨張により、ステント330の中央領域が、さらに拡張して、ステント330に、樽の形状を取らせる。
【0074】
続いて、弁尖396が取り付けられた圧縮された弁フレーム340が、カテーテルを通してステント330内に導入され、そして、拡張することを許容される。ステント330の樽の形状のテーパー付けされた端部は、閉じた弁が、血流の停止によって、弁フレーム340上に圧力を生じる場合に、適所で、弁フレーム340を保持する。
【0075】
本明細書中に開示される概念を組み込んだ他の実施形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得る。記載される実施形態は、あらゆる点で、例示のみとしてであって、制限的なものではないものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、種々の心臓弁の代表的な位置を示す、心臓の部分的に切り取った図である。
【図2】図2Aは、生来の心臓弁の上面図である。図2Bは、生来の心臓弁の部分的に切り取った等角図である。
【図3】図3Aは、本発明に従うステントの1つの実施形態の上面図である。図3Bは、図3Aのステントの側面図である。
【図4】図4Aは、本発明に従う弁フレームの1つの実施形態の上面図である。図4Bは図4Aの弁フレームの側面図である。
【図5A】図5Aは、図3Aのステントの管腔内に位置する、図4Aの弁フレームの上面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの弁フレームおよびステントの側面図である。
【図5C】図5Cは、図5Aの弁フレームおよびステントの上面図であって、弁フレームの部材が被覆材で覆われており、被覆材の自由端は、ステントの壁から離れて位置している。
【図5D】図5Dは、図5Cの弁フレームおよびステントの断面図である。
【図5E】図5Eは、図5Cの弁フレームおよびステントの上面図であり、被覆材の自由端が、ステントの壁に向かって位置している。
【図5F】図5Fは、図5Eの弁フレームおよびステントの断面図である。
【図6】図6は、心臓内への導入カテーテルの挿入後の、心臓の部分的に切り取った図である。
【図7】図7は、心臓の解剖学的な管腔の所定の位置に、ステントおよびバルーンを配置した後の、図6の心臓の部分的に切り取った図である。
【図8】図8は、ステントおよびバルーンが心臓内で展開された後の、図6および7の心臓の部分的に切り取った図である。
【図9】図9は、弁フレームが導入カテーテル内に導入された後の、図6、7および8の心臓の部分的に切り取った図である。
【図10】図10は、弁フレームをステント内で展開した後の、図6、7、8および9の心臓の部分的に切り取った図である。
【図11A】図11Aは、本発明に従う弁アセンブリの1つの実施形態の上面図である。
【図11B】図11Bは、図11Aの弁アセンブリの側面図である。
【図11C】図11Cは、図11Bの弁アセンブリの断面図であり、被覆材が弁アセンブリに適用されている。
【図12】図12Aは、本発明に従う弁アセンブリの1つの実施形態の側面図である。図12Bは、図12Aの弁アセンブリの断面図であり、被覆材が弁アセンブリに適用されている。
【図13】図13Aは、図5Cの弁フレームのような、弁フレームモデルのデジタル画像の上面図である。図13Bは、図5Cの弁フレームのような、弁フレームモデルのデジタル画像の側面図である。
【図14】図14Aは、図14Aの弁アセンブリのような弁アセンブリモデルのデジタル画像の上面図である。図14Bは、図11Bの弁アセンブリのような弁アセンブリモデルのデジタル画像の側面図である。
【図15】図15Aは、図12Aの弁アセンブリのような弁アセンブリモデルのデジタル画像の上面図である。図15Bは、図12Aの弁アセンブリのような弁アセンブリモデルのデジタル画像の側面図である。
【図16】図16は、本発明の1つの実施形態に従うステントの側面図である。
【図17】図17は、本発明の1つの実施形態に従う弁フレームの側面図である。
【図18A】図18A〜18Eは、本発明の1つの実施形態に従う図16のステント内のカテーテルによって展開された弁フレームの側面図である。
【図18B】図18A〜18Eは、本発明の1つの実施形態に従う図16のステント内のカテーテルによって展開された弁フレームの側面図である。
【図18C】図18A〜18Eは、本発明の1つの実施形態に従う図16のステント内のカテーテルによって展開された弁フレームの側面図である。
【図18D】図18A〜18Eは、本発明の1つの実施形態に従う図16のステント内のカテーテルによって展開された弁フレームの側面図である。
【図18E】図18A〜18Eは、本発明の1つの実施形態に従う図16のステント内のカテーテルによって展開された弁フレームの側面図である。
【図19】図19A〜19Eは、医療用デバイスまたは薬物を受容するためのドッキングステーションの側面図である。
【図20】図20A〜20Fは、種々の位置で身体に挿入されたドッキングステーションの側面図である。
【図21】図21は、本発明のステントおよび(弁尖なしの)弁フレームの1つの実施形態の図である。
【図22】図22は、本発明の(弁尖なしの)弁フレームの別の実施形態の部分の開いた図(opened view)である。
【図23】図23は、弁尖が取り付けられた、図22の弁フレームの実施形態の平面図である。
【図24】図24は、弁尖の平面図である。
【図25】図25は、図23の線AA’を通る断面図であり、内側の曲がったワイヤへの弁尖の取り付けと、外側の曲がったワイヤの上の弁尖の配置を示す。
【図26】図26は、本発明の(弁尖なしの)弁フレームの別の実施形態の部分の開いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換心臓弁装置であって、以下:
ステントを備えるドッキングステーション;および
該ステント内に位置決めするための弁フレームであって、該弁フレームは、管腔を規定する実質的に円筒型の本体と、該実質的に円筒型の本体に取り付けられた複数の曲がったワイヤの対とを備え、該曲がったワイヤ対の各々は、内側の曲がったワイヤと外側の曲がったワイヤとを備え、該ワイヤフレームはさらに、各々が弁尖本体と弁尖突出部とを備える複数の弁尖を備え、該弁尖本体を、該弁フレームの管腔内で位置決めするために、該弁尖突出部は、内側の曲がったワイヤのそれぞれに取り付けられており、そして、該弁尖本体は、外側の曲がったワイヤのそれぞれの上を延びている、弁フレーム
を備える、置換心臓弁装置。
【請求項2】
前記内側の曲がったワイヤと前記外側の曲がったワイヤの曲率が、放物線状である、請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項3】
前記弁フレームの一方の端部が、蛇行する縁部を有し、前記内側の曲がったワイヤが、該蛇行する縁部の頂部に取り付けられており、そして、前記外側の曲がったワイヤが、該蛇行する縁部のくぼみに取り付けられている、請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項4】
前記弁フレームの各端部に、放射線不透過性マーカーをさらに備える、請求項1に記載の置換心臓弁。
【請求項5】
心臓弁と置換弁とを置き換える方法であって、以下:
カテーテルを通して、ドッキングステーションを心臓内に導入する工程;
カテーテルを通して、該ドッキングステーション内に弁フレームを導入する工程;
該ドッキングステーション内で該弁フレームを位置決めする工程;および
該ドッキングステーション内で該弁フレームを解放する工程
を包含する、方法。
【請求項6】
蛍光透視下で、前記弁フレームの端部にある放射線不透過性マーカーを用いて、前記ドッキングステーション内で該弁フレームの位置を決定する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、以下:
前記ドッキングステーション内で前記弁フレームを部分的に展開する工程;
蛍光透視下で、該弁フレームの端部にある放射線不透過性マーカーを用いて、該ドッキングステーション内で該弁フレームの位置を決定する工程;および
該弁フレームの位置決定に応じて、該ドッキングステーション内で、該弁フレームを撤回および再展開する工程
をさらに包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20C】
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【図20E】
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【図20F】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2007−521125(P2007−521125A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552308(P2006−552308)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003749
【国際公開番号】WO2005/076973
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(599086582)チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Center Corporation
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, Massachusetts 02115, U.S.A.
【Fターム(参考)】