説明

美容用組成物

【課題】皮膚の老化の防止および/または改善に有用な組成物を提供すること。
【解決手段】ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナから選択される1種または2種以上の抽出物を含む組成物により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPH(1, 1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去用組成物、ならびにこれらの組成物を含む美容用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮および皮下組織の三層からなり、これらのうち真皮には、皮膚の弾力や保水性など、皮膚の機能維持に重要なコラーゲンおよびヒアルロン酸が多く含まれている。これらコラーゲンおよびヒアルロン酸は、真皮中に存在する線維芽細胞により産生される。
【0003】
一方で、加齢や紫外線などのストレスにより線維芽細胞の機能が衰え、真皮におけるコラーゲンの変性および産生減少、ならびにヒアルロン酸の産生減少が起こる。特に、紫外線に曝露された皮膚においては、スーパーオキサイドやフリーラジカルなどが発生し、これらが皮膚の脂質やタンパク質に対する酸化反応を促進することにより、皮膚の急性炎症や真皮の障害などが引き起こされる。
その結果として、皮膚のしわ、たるみの発生、保水性や弾力などの皮膚機能の低下などのような皮膚の老化現象があらわれる。
【0004】
このような皮膚の老化の防止および/または改善を目的として、糖、アミノ酸、有機酸、ピロリドンカルボン酸などを配合した組成物や失われたコラーゲンおよびヒアルロン酸を補うためにこれらを配合した組成物などが、これまでに開発されてきた。
しかしながら、これらは皮膚の保湿性を高めて、表皮の角質の状態を改善するだけであり、皮膚の老化を根本的に防止または改善するものではないため、いずれも満足できる効果を有していなかった。
【0005】
また、様々な植物体の抽出物などを配合した皮膚外用剤なども、これまでに開発されてきた(特許文献1および2参照)。しかしながら、これらはコラーゲンおよびヒアルロン酸の産生を促進し得るが、スーパーオキサイド、フリーラジカルなどに対しては有効ではなく、皮膚の老化の防止および/または改善には満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−176230号公報
【特許文献2】特開2003−321376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような事情に鑑みて、本発明は、皮膚の老化の根本的な防止および/または改善に有用なコラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPHラジカル消去用組成物、ならびにこれらの組成物のいずれかを含む美容用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナ(Terminalia arjuna)の各抽出物が、コラーゲン産生促進活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性、スーパーオキサイド消去活性およびDPPHラジカル消去活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナから選択される1種または2種以上の抽出物を含むコラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPHラジカル消去用組成物、ならびにこれらの組成物を含む美容用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPHラジカル消去用組成物を使用または摂取することにより、線維芽細胞におけるコラーゲンの産生が促進され、ヒアルロニダーゼの活性が阻害されることによりヒアルロン酸が維持され、皮膚障害の原因であるスーパーオキサイドおよび/またはフリーラジカルが消去される効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「皮膚の老化」とは、加齢や紫外線などの影響により引き起こされる皮膚のしわ、たるみの発生、保水性や弾力などの皮膚機能の低下などを意図する。
【0012】
ヒアルロニダーゼとは、皮膚、血管、関節などに存在するヒアルロン酸を分解する酵素である。該酵素の活性を阻害することにより、生体内でのヒアルロン酸の分解が抑制され、生体内のヒアルロン酸の量を一定に保ち得る。
【0013】
スーパーオキサイド(O2-)とは、活性酸素の一つであり、特に皮膚においては紫外線の曝露により発生することが知られている。一方、生体内にはスーパーオキサイドを消去する活性を有する酵素SOD(Super Oxide Dismutase)が存在する。
スーパーオキサイド消去活性とは、SOD様活性とも呼ばれ、スーパーオキサイドを分解して消去する活性を意味する。
【0014】
DPPHは、安定なフリーラジカルとして知られ、ある物質が有するフリーラジカル消去活性を評価する際の標的物質として用いられる。したがって、DPPHラジカル消去活性とは、DPPHを用いて評価した、ある物質が有するフリーラジカルを消去する活性を意味する。
【0015】
ボダイジュは、シナノキ科(Tiliaceae)の植物であり、その花を乾燥させた菩提樹花茶(リンデンフラワーティー)は、ヨーロッパを中心に18世紀から飲用され、鎮静、鎮痙、発汗などの作用を有することが知られている。
本発明に用いられるボダイジュ花としては、ナツボダイジュ(Tilia platyphyllos Scop.)、フユボダイジュ(Tilia cordata Mill.)、セイヨウシナノキ(Tilia europaea L.)などのシナノキ科、シナノキ属(Tilia)の植物の花が挙げられるが、好ましくはこれらの花の花弁である。
【0016】
シャクヤクは、中国北西部、華北、西北地方から東シベリア、朝鮮半島にかけて自生するボタン科(Paeoniaceae)の植物であり、その根を乾燥させたものは、鎮痛、鎮痙、解熱、利尿などの作用を有する生薬として知られている。
本発明に用いられるシャクヤク花としては、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、シベリアシャクヤク(Paeonia lactiflora)、ベニバナヤマシャクヤク(Paeonia obovata)、ヤマシャクヤク(Paeonia japonica)などのボタン科、ボタン属(Paeonia)の植物の花が挙げられるが、好ましくはこれらの花の花弁である。
【0017】
テルミナリア アルジュナとは、シクンシ科(Cambretaceae)モモタマナ属(Terminalia)の植物で、インド全域に植生し、約18〜28mの高さまで成長する落葉樹である。
テルミナリア アルジュナの樹皮は、インドでは強心剤として用いられており、また、冠動脈疾患、心不全および高コレステロール血症の治療、ならびに狭心症の疼痛緩和のために処方されてきた(特表2008−537539号公報参照)。
本発明に用いられるテルミナリア アルジュナとしては、テルミナリア アルジュナの花、花穂、果実、果皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、種子などが挙げられるが、中でも根皮を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明において原料として用いられるボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナは、市場で入手することができる。
また、上記の各原料は、そのままの形態で用いてもよいが、乾燥および/または粉砕したものを用いるのが好ましい。
【0019】
本発明に用いられる原料を抽出するための溶媒は、特に限定されないが、水、親水性有機溶媒またはこれらの混液が好ましい。親水性有機溶媒としては、例えば、1価の低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、多価アルコール(グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸イソプロピルなど)およびエーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど)が挙げられるが、中でもメタノールまたはエタノールが好ましい。
【0020】
抽出方法は、特に限定されないが、室温〜加熱下、溶媒に原料を浸漬して抽出する方法が好ましい。例えば、室温〜100℃、好ましくは40〜80℃の温度で、撹拌下または非撹拌下に原料を浸漬することによって、抽出することができる。
抽出の際の溶媒量は、原料の量に応じて適宜設定できるが、通常、重量比で原料の1〜
30倍量、好ましくは5〜20倍量である。また、抽出時間は、特に限定されないが、撹拌下に浸漬する場合は1〜3時間程度、非撹拌下に浸漬する場合は5〜24時間程度が適当である。
なお、上記の温度より低い温度で抽出することも可能であるが、その場合には、上記の抽出時間より長く浸漬することが好ましい。
また、抽出処理は、同一原料について1回のみ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度行うこともできる。
【0021】
上記の抽出方法により得られるボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物は、そのままでもコラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPHラジカル消去用組成物として用い得るが、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、脱臭、脱色、乾燥などの処理に付してもよい。また、各抽出物に含まれる特定の成分をカラム精製などにより、単離および/または濃縮してもよい。
【0022】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPHラジカル消去用組成物は、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナから選択される1種または2種以上の抽出物を含むことを特徴とするが、中でもテルミナリア アルジュナの抽出物を含むことが好ましく、また、上記の3種の抽出物を全て含んでいてもよい。
【0023】
また、上記の各抽出物に、これらの抽出物が有する活性を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品(特定保健用食品、栄養機能食品を含む)などの技術分野において通常用いられている、他の成分を適宜配合してもよい。
そのような成分としては、例えば、油脂類(カカオ脂、ヤシ油、パーム核油など)、ロウ類(ミツロウ、カルナバロウなど)、炭化水素類(固形パラフィン、流動パラフィン、ワセリンなど)、脂肪酸類(オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸など)、アルコール類(エタノール、セチルアルコール、イソステアリルアルコールなど)、エステル類(ミリスチン酸ミリスチル、モノステアリン酸グリセリン、オレイン酸デシルなど)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ソルビタン、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなど)、香料(合成香料、天然香料など)、甘味料(ショ糖、ステビアなど)、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなど)、保存剤(安息香酸ナトリウム、ソルビン酸など)、保湿剤(グリセリン、コラーゲン、ヒアルロン酸など)、美白剤(L−アスコルビン酸、ハイドロキノンβ−D−グルコース、エラグ酸、コウジ酸、トラネキサム酸など)、粉体(顔料、色素、樹脂など)、紫外線吸収剤(パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシルなど)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛など)、増粘剤(アラビアゴム、メチルセルロースなど)、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンEなど)、キレート剤(エデト酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールなど)、崩壊剤(デンプン類、結晶セルロースなど)などが挙げられる。
【0024】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物、ヒアルロニダーゼ阻害用組成物、スーパーオキサイド消去用組成物およびDPPHラジカル消去用組成物は、これらの組成物を含む美容用組成物、好ましくは皮膚の老化の防止および/または改善するための美容用組成物として提供することができる。
本発明の美容用組成物を使用または摂取することにより、美容効果、特にしわ、たるみの発生、保水性や弾力などの皮膚機能の低下などの皮膚の老化を防止および/または改善する効果が期待できる。
【0025】
本発明の美容用組成物の形態としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ファンデーション、エッセンス(エキス)、オイル、パック、マスク、口紅、打粉、クレンジングローション、シャンプー、リンス、コンディショナー、石鹸、ボディーシャンプー、浴用剤、日焼け止めローション、軟膏剤、パップ剤、散剤、錠剤、乳剤、トローチ剤、内用液剤、シロップ剤、ゲル剤、エアロゾル剤、飲料、菓子類などが挙げられる。
【0026】
上記の化粧品、医薬部外品、医薬品または食品(特定保健用食品、栄養機能食品を含む)などの形態の美容用組成物における、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物の含量は、特に制限されず、該組成物の形態に応じて適宜選定することができる。
一例を挙げれば、上記の各抽出物の乾燥重量として、美容用組成物の全重量に対して、0.0001〜50重量%、好ましくは0.0005〜40重量%、より好ましくは0.001〜30重量%である。
【0027】
本発明の美容用組成物が皮膚外用剤である場合、上記の各抽出物の乾燥重量としての含量は、通常、該皮膚外用剤の全重量に対して、0.001〜10重量%であればよい。この含量が、0.001重量%未満では十分な美容効果を期待できず、逆に、10重量%を超えても超過分に見合った美容効果の増強は期待できず、不経済である。
【0028】
また、本発明の美容用組成物を内服する場合の摂取量は、投与形態、年齢、体重などによって異なるが、上記の各抽出物の乾燥重量として、0.01〜10g/日、好ましくは0.1〜3g/日である。
【0029】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
製造例1:ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの抽出物の調製
以下のようにして、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの抽出物を得た。
(1)ボダイジュ花抽出物の調製
ボダイジュの花弁乾燥品(中国産)の粗粉砕物40gを50%(v/v)エタノール1000mlに投入し、55℃で撹拌下に1時間浸漬した後、これを吸引ろ過して抽出液を得た。この抽出液を55℃で減圧下に濃縮し、得られた濃縮液を凍結乾燥して、粉末状のボダイジュ花抽出物4.3gを得た。
【0031】
(2)シャクヤク花抽出物の調製
シャクヤクの花弁乾燥品(中国産)の粗粉砕物30gを50%(v/v)エタノール500mlに投入し、55℃で撹拌下に1時間浸漬した後、これを吸引ろ過して抽出液を得た。この抽出液を55℃で減圧下に濃縮し、得られた濃縮液を凍結乾燥して、粉末状のシャクヤク花抽出物11.2gを得た。
【0032】
(3)テルミナリア アルジュナ抽出物の調製
テルミナリア アルジュナの根皮乾燥品(スリランカ産)の粗粉砕物30gを水500mlに投入し、55℃で撹拌下に1時間浸漬した後、これを吸引ろ過して抽出液を得た。この抽出液を55℃で減圧下に濃縮し、得られた濃縮液を凍結乾燥して、粉末状のテルミナリア アルジュナ抽出物6.1gを得た。
【0033】
試験例1:コラーゲン産生促進活性試験
ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物のコラーゲン産生促進活性を、コラーゲンを特異的に染色する色素シリウスレッドを用いて、以下のように評価した。
(1)各抽出物の試料溶液の調製
ボダイジュ花抽出物、シャクヤク花抽出物およびテルミナリア アルジュナ抽出物を、それぞれジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、各試料溶液(10mg/ml)を調製した。
(2)細胞培養
正常ヒト新生児包皮線維芽細胞NHDF(NB)(倉敷紡績株式会社)を、正常ヒト皮膚繊維芽細胞増殖用低血清培地Medium 106S(倉敷紡績株式会社)を用いて、37℃、5%CO2雰囲気下で5日間培養した。
5日後、前記培地にて2×104cells/mlに調製した細胞浮遊液を96ウェルプレート(マイクロプレート:IWAKI社製)に100μl/ウェルで播種し、37℃、5%CO2雰囲気下で48時間培養した。
48時間後、各ウェルの培地を除去し、これらのウェルに前記培地99μlと試料溶液1μlとの混合液(試料終濃度100μg/ml)を添加し、さらに48時間培養した。また、対照ブランクとして、試料溶液に代えてDMSO1μlを前記培地99μlと混合した液を対照用のウェルに添加した。
【0034】
(3)被験反応液および対照ブランク液の調製
上記の工程(2)の培養後、各ウェルから培地を除去し、PBS(−)で細胞を洗浄した後、シリウスレッド試薬(0.1% Sirius Red F3BA(Direct red 80:SIGMA社)/0.5M 酢酸水溶液))を各ウェルに50μl滴下し、室温で1時間インキュベーションした。その後、各ウェルの細胞を10mM 塩酸で3回洗浄し、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液を各ウェルに100μl添加し、室温で5分間インキュベーションして色素を抽出して、被験反応液および対照ブランク液を得た。
(4)吸光度の測定およびコラーゲン産生促進活性の算出
上記の工程(3)のインキュベーション終了後、プレートを軽く撹拌し、マイクロプレートリーダー(モデル680:バイオラッド社製)を用いて、プレート中の被験反応液および対照ブランク液の540nmの吸光度を測定した。なお、測定される吸光度は、コラーゲンに特異的結合したシリウスレッドに由来する。
下記の式を用いて、得られた各測定値からコラーゲン産生促進活性を算出した。なお、該活性は、試料溶液を添加していない対照ブランクの細胞のコラーゲン産生活性を100%とした場合の相対的な数値として算出される。
コラーゲン産生促進活性(%)=(S/C)×100
(S:被験反応液の測定値、C:対照ブランク液の測定値)
得られた結果を表1に示す。
表1より、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物は、正常ヒト新生児包皮線維芽細胞NHDF(NB)に対してコラーゲン産生促進活性を示すことが確認された。
【0035】
【表1】

【0036】
試験例2:ヒアルロニダーゼ阻害活性試験
ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物のヒアルロニダーゼ阻害活性を、ヒアルロン酸などの糖類の定量法であるモルガン−エルソン法(生化学実験,第11巻,第22−23頁(1968年)参照)を応用して評価した。
(1)試料溶液の調製
ボダイジュ花抽出物、シャクヤク花抽出物およびテルミナリア アルジュナ抽出物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、各試料溶液(12.5mg/ml)を調製した。
(2)酵素溶液の調製
牛精巣ヒアルロニダーゼ(SIGMA社)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、酵素溶液(400ユニット/ml)を調製した。
(3)酵素活性化溶液の調製
compound48/80(SIGMA社)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、酵素活性化溶液(0.1mg/ml)を調製した。
【0037】
(4)基質溶液の調製
ヒアルロン酸カリウム(和光純薬社)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、基質溶液(0.4mg/ml)を調製した。
(5)ホウ酸溶液の調製
ホウ酸(和光純薬社)4.95gに水50mlを加え、1N 水酸化ナトリウム溶液でpH9.1にした後、水を加えて100mlに調製した。
(6)p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(p−DAB)試薬の調製
p−DAB(和光純薬社)10gを10N 塩酸12.5mlと酢酸87.5mlとの混液に溶解し、p−DAB試薬(0.1g/ml)を調製した。なお、該試薬は使用時まで冷蔵保存し、使用直前に酢酸で10倍容量に希釈して、濃度を10mg/mlとした。
【0038】
(7)被験反応液および被験ブランク液の調製
96ディープウェルプレート(マイクロプレート:ステム社製)に各試料溶液を2μl/ウェルで添加し、次いでこれらのウェルに酵素溶液28μlを加えて、37℃で20分間インキュベーションした。また、被験ブランクとして、酵素溶液に代えて0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)28μlを被験ブランク用のウェルに添加した。
次いで、酵素活性化溶液20μlを各ウェルに加えて37℃で20分間インキュベーションした。さらに、基質溶液50μlを加えて37℃で40分間反応させた。その後、0.4N 水酸化ナトリウム水溶液20μlを加え、プレートを氷冷して反応を停止させた。そして、ホウ酸溶液20μlを加え、プレートを沸騰浴にて100〜120℃で5分間加熱した後、氷冷した。その後、各ウェルにp−DAB試薬300μlを加え、プレートを37℃で20分間インキュベーションして発色させて、被験反応液および被験ブランク液を得た。
(8)対照反応液および対照ブランク液の調製
上記の工程(7)において、各試料溶液に代えてDMSOを96ディープウェルプレートに2μl/ウェルで添加し、以後の操作を上記の工程(7)と同様にして、対照反応液および対照ブランク液を得た。
【0039】
(9)吸光度の測定およびヒアルロニダーゼ阻害活性の算出
上記の工程(7)および(8)のインキュベーション終了後、マイクロプレートリーダー(モデル680:バイオラッド社製)を用いて、プレート中の被験反応液、被験ブランク液、対照反応液および対照ブランク液の585nmにおける吸光度を測定した。
そして、次の式を用いて、得られた各測定値からヒアルロニダーゼ阻害活性を算出した。
ヒアルロニダーゼ阻害活性(%)={1−(S−Sb)/(C−Cb)}×100
(S:被験反応液の測定値、Sb:被験ブランク液の測定値、C:対照反応液の測定値、
b:対照ブランク液の測定値)
得られた結果を表2に示す。
表2より、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物がヒアルロニダーゼ阻害活性を有することが確認された。
【0040】
【表2】

【0041】
試験例3:スーパーオキサイド消去活性(SOD様活性)試験
ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物のスーパーオキサイド消去活性を、以下のようにSOD Assay Kit−WST(株式会社同仁化学研究所)を用いて評価した。
上記のキットは、キサンチンとキサンチンオキシダーゼとの反応によってスーパーオキサイドを発生させ、さらに、スーパーオキサイドと該キットの発色試薬との反応によって黄色のテトラゾリウム塩WST−1が生成することを利用するものである。例えば、試験対象の試料がスーパーオキサイド消去活性を有する場合、発生したスーパーオキサイドが消去されるため、WST−1の生成量が減少し、反応液の黄色の発色が抑制される。したがって、該反応液の吸光度を測定することにより、スーパーオキサイド消去活性をWST−1の生成抑制率として求めることができる。
【0042】
(1)試験溶液の調製
ボダイジュ花抽出物、シャクヤク花抽出物及びテルミナリア アルジュナ抽出物を、50%(v/v)エタノールに溶解し、各試料溶液(120μg/ml)を調製した。
(2)被験反応液および被験ブランク液の調製
96ウェルプレート(マイクロプレート:アズワン株式会社製)に各試料溶液を20μl/ウェルで添加し、次いでこれらのウェルにWST溶液を200μl加え、プレートミキサーで撹拌した。その後、各ウェルに酵素溶液を20μl加えた。また、ブランク対照として、酵素溶液に代えて希釈緩衝液を20μl加えた。その後、プレートを37℃で20分間インキュベートし、被験反応液および被験ブランク液を得た。
【0043】
(3)対照反応液および対照ブランク液の調製
上記の工程(2)において、各試料溶液に代えて50%(v/v)エタノールを96ウェルプレートに20μl/ウェルで添加し、以後の操作を上記の工程(2)と同様にして、対照反応液および対照ブランク液を得た。
(4)吸光度の測定およびスーパーオキサイド消去活性の算出
上記の工程(2)および(3)のインキュベーション終了後、マイクロプレートリーダー(モデル680:バイオラッド社製)を用いて、プレート中の被験反応液、被験ブランク液、対照反応液および対照ブランク液の450nmにおける吸光度を測定した。
そして、次の式を用いて、得られた各測定値からスーパーオキサイド消去活性を算出した。
スーパーオキサイド消去活性(%)={1−(S−Sb)/(C−Cb)}×100
(S:被験反応液の測定値、Sb:被験ブランク液の測定値、C:対照反応液の測定値、
b:対照ブランク液の測定値)
得られた結果を表3に示す。
表3より、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物がスーパーオキサイド消去活性を有することが確認された。
【0044】
【表3】

【0045】
試験例4:DPPHラジカル消去活性試験
ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物のDPPHラジカル消去活性を、DPPHラジカルの減少量を測定することにより評価した。なお、この試験においては、ラジカル消去活性を有する標準物質としてビタミンE誘導体Trolox(商標)を用いた。
(1)試料溶液の調製
ボダイジュ花抽出物、シャクヤク花抽出物およびテルミナリア アルジュナ抽出物を、DMSOに溶解し、各試料溶液(2mg/ml)を調製した。
(2)DPPH/エタノール溶液の調製
DPPH(和光純薬株式会社)をエタノールに溶解し、DPPH/エタノール溶液(0.4mM)を調製した。なお、試験には調製から2時間以内のものを使用した。
(3)MES緩衝液の調製
MES緩衝液(株式会社同仁化学研究所)を水で希釈し、1N 水酸化ナトリウム水溶液でpH6.1に調整後、200mM MES緩衝液とした。
(4)DPPH希釈標準溶液の調製
0.4mM DPPH/エタノール溶液、200mM MES緩衝液および水を2:1:1の割合で混合し、DPPH希釈標準溶液を調製した。
(5)被験反応液および対照ブランク液の調製
96ウェルプレート(マイクロプレート:アズワン株式会社製)に各試料溶液を10μl/ウェルで添加し、次いでこれらのウェルにDPPH希釈標準溶液190μlを加えた。また、被験ブランクとして試料溶液に代えて、DMSOを各ウェルに10μl添加した。その後、プレートを室温で30分間インキュベートして、被験反応液および対照ブランク液を得た。
(6)対照反応液の調製
上記の工程(5)において、各試料溶液に代えて20mM Trolox(商標)(和光純薬工業株式会社)を96ウェルプレートの各ウェルに20μl添加し、以後の操作を上記の工程(5)と同様にして、対照反応液を得た。
そして、次の式を用いて、対照反応液のDPPHラジカル消去活性を100%として各試料溶液の該活性を算出した。
DPPHラジカル消去活性(%)={(Cb−S)/(Cb−C)}×100
(S:被験反応液の測定値、Cb:対照ブランク液の測定値、C:対照反応液の測定値)
得られた結果を表4に示す。
表4より、ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナの各抽出物がDPPHラジカル消去活性を有することが確認された。
【0046】
【表4】

【0047】
以下に、本発明の美容用組成物の処方例を示す。なお、各抽出物は、製造例1の方法によって得られたものを用いた。
実施例1〜7
クリーム
本発明の美容用組成物(皮膚外用剤)である、化粧品(クリーム)を製造した。各実施例における各成分の配合割合を表5に重量%で示す。
(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分をそれぞれ混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加えて乳化させ、その後35℃に冷却して、クリームを得た。
【0048】
【表5】

【0049】
実施例8〜14
化粧水
本発明の美容用組成物(皮膚外用剤)である、化粧品(化粧水)を製造した。各実施例における各成分の配合割合を表6に重量%で示す。
(A)の各成分を混合し、80℃に加熱して、さらに混合、均一化した後、冷却する。これに35℃で(B)の各成分を順次添加し、混合、均一化して、ローションを得た。
【0050】
【表6】

【0051】
実施例15〜21
錠剤
本発明の美容用組成物である、錠剤の形態にある食品を製造した。各実施例における各成分の配合割合を表7に重量%で示す。
各成分を混合、均一化した後、これを打錠機により形成し、錠剤の形態にある食品を得た。
【0052】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボダイジュ花、シャクヤク花およびテルミナリア アルジュナから選択される1種または2種以上の抽出物を含む、コラーゲン産生促進用、ヒアルロニダーゼ阻害用、スーパーオキサイド消去用および/またはDPPHラジカル消去用の組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物を含む美容用組成物。
【請求項3】
美容用組成物が、皮膚の老化を防止および/または改善するためのものである、請求項2に記載の美容用組成物。
【請求項4】
美容用組成物が、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品である、請求項2または3に記載の美容用組成物。
【請求項5】
化粧品が化粧水、クリーム、乳液、ファンデーション、エッセンス、パック、マスク、口紅、打粉またはクレンジングローションの形態にある、請求項4に記載の美容用組成物。

【公開番号】特開2011−42644(P2011−42644A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91615(P2010−91615)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(592156482)大峰堂薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】