説明

美白用組成物

(i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および必要に応じて(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は新規な組成物、より詳しくは美白用組成物(美白剤)に関する。
【背景技術】
シミ、そばかす、日やけ、色黒やステロイド等の薬物による皮膚の黒化症などの色素沈着症は、皮膚にメラニン色素が過剰に沈着して生じるものである。メラノサイト中の細胞質顆粒メラノソームで、チロシンがチロシナーゼにより酸化されて、ドーパ、ドーパキノンが生合成され、更にドーパキノンは紫外線による自動酸化によってインドールキノン等になり、複雑な経路を経てメラニンが生合成されることが知られている。このような色素沈着症は、特に女性にとって美容上好ましくないものである。
従来より、色素沈着症の予防・治療剤(美白剤)として、L−アスコルビン酸やその誘導体(特開昭49−86554号参照)、コウジ酸(特開昭53−3538号公報参照)、L−システイン(特開昭59−128320号公報参照)、アルブチン(特開昭60−56912号公報参照)、ウワウルシ(Arctostaphylos uva−ursi)やその抽出物(特開平6−166609号公報参照)やトラネキサム酸とアスコルビン酸の合剤(特開平4−243825号公報)等が知られている。
しかしながら、上述のものはその効果の点等で必ずしも満足できるものではなかった。
【発明の開示】
本発明は、より効果に優れた美白用組成物(美白剤)を提供するものである。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、トラネキサム酸またはその塩、およびL−システイン、その誘導体またはそれらの塩を併用すると、優れた美白効果を示すことを新たに見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
(1) (i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を含有する組成物。
(2) 1日当たりの投与(服用)量として、(i)トラネキサム酸またはその塩を50〜2500mg、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を30〜750mg含有する組成物。
(3) トラネキサム酸およびL−システインを含有する組成物。
(4) 1日当たりの投与(服用)量として、トラネキサム酸を50〜2500mg、およびL−システインを30〜750mg含有する組成物。
(5) (i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を含有する組成物。
(6) 1日当たりの投与(服用)量として、(i)トラネキサム酸またはその塩を50〜2500mg、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を30〜750mg、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を50〜3000mg含有する組成物。
(7) トラネキサム酸、L−システインおよびL−アスコルビン酸を含有する組成物。
(8) 1日当たりの投与(服用)量として、トラネキサム酸を50〜2500mg、L−システインを30〜750mg、およびL−アスコルビン酸を50〜3000mg含有する組成物。
(9) 美白用である上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の組成物。
(10) 色素沈着症の予防および/または治療用である上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の組成物。
(11) 剤形が経口投与製剤である上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の組成物。
(12) (i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする美白方法。
(13) (i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする色素沈着症の処置方法。
(14) (i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする美白方法。
(15) (i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする色素沈着症の処置方法。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明にかかるトラネキサム酸(トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)またはその塩は、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することもできる。トラネキサム酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。本発明においては、トラネキサム酸またはその塩としては、トラネキサム酸が好ましい。
また、本発明にかかるL−システイン、その誘導体またはそれらの塩も、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することもできる。L−システインの誘導体としては、N−アセチル−L−システイン、L−ホモシステイン、L−システイン酸、L−ホモシステイン酸、L−システインスルフィン酸、S−スルフィノ−L−システイン、S−スルホ−L−システイン、シスチン(システインの二量体)などを挙げることができる。また、L−システインおよびその誘導体の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。本発明においては、L−システイン、その誘導体またはそれらの塩としては、L−システインが好ましい。
本発明にかかるL−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩も、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することもできる。L−アスコルビン酸およびその誘導体の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩としては、L−アスコルビン酸;L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸カリウム、L−アスコルビン酸カルシウム等のL−アスコルビン酸塩;L−アスコルビン酸モノステアレート、L−アスコルビン酸モノパルミテート、L−アスコルビン酸モノオレエート等のアスコルビン酸モノアルキルまたはモノアルケニルエステル類;L−アスコルビン酸ジステアレート、L−アスコルビン酸ジパルミテート、L−アスコルビン酸ジオレエート等のL−アスコルビン酸ジアルキルまたはジアルケニルエステル類;L−アスコルビン酸トリステアレート、L−アスコルビン酸トリパルミテート、L−アスコルビン酸トリオレエート等のL−アスコルビン酸トリアルキルまたはトリアルケニルエステル類;L−アスコルビル硫酸、L−アスコルビル硫酸ナトリウム、L−アスコルビル硫酸カリウム、L−アスコルビル硫酸マグネシウム、L−アスコルビル硫酸カルシウム等のL−アスコルビン酸硫酸エステル類;L−アスコルビルリン酸、L−アスコルビルリン酸ナトリウム、L−アスコルビルリン酸カリウム、L−アスコルビルリン酸マグネシウム、L−アスコルビルリン酸カルシウム等のL−アスコルビン酸リン酸エステル類など;L−アスコルビン酸グリコシド等のアスコルビン酸配糖体などを挙げることができる。本発明においては、L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩としては、L−アスコルビン酸が好ましい。
本発明の美白用組成物(美白剤)は、シミ、そばかす、日やけ、色黒やステロイド等の薬物による皮膚の黒化症などの色素沈着症の予防および/または治療を目的としている者に投与するものである。
本発明の組成物には、さらに公知の美白効果を示す成分や美白効果を増強する成分を加えてもよい。これらの成分としては、例えば、パントテン酸、その誘導体またはそれらの塩(パントテン酸;パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸塩;パンテテイン、パンテチン、ホスホパンテテインなど)、ハイドロキノンまたはその誘導体(ハイドロキノン;ハイドロキノン−β−D−グルコース(アルブチン)等のハイドロキノン配糖体など)、グルコサミンまたはその誘導体(グルコサミン;アセチルグルコサミン等のグルコサミンエステル類;グルコサミンメチルエーテル等のグルコサミンエーテル類など)、ヒノキチオールまたはその誘導体(ヒノキチオール;ヒノキチオールグルコシド等のヒノキチオール配糖体など)、アゼライン酸、その誘導体またはそれらの塩(アゼライン酸;アゼライン酸モノアルキルエステル等のアゼライン酸モノエステル類;アゼライン酸ジアルキルエステル等のアゼライン酸ジエステル類など)、トコフェロール類(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールなど)、ユビキノン類(コエンザイムQ(CoQ)、コエンザイムQ(CoQ)、コエンザイムQ(CoQ)、コエンザイムQ(CoQ)、コエンザイムQ10(CoQ10)など)、カロチン類(カロテン、ルテイン、ビオラキサンチン、スピリロキサンチン、スフェロイデンなど)、フラボン類(フラボン、アピゲニン、ルテオリンおよびこれらの配糖体など)、イソフラボンまたはその誘導体(イソフラボン;イソフラボン配糖体など)、フラバノンまたはその誘導体(ナリンゲニン、エリオジクチオール、ナリンギンなど)、カテキン類(カテキン、カテキンガラート、ガロカテキンなど)、フラボノール類(ケンフェロール、クエルセチン、ミリセチンおよびこれらの配糖体など)、グリチルリチン酸、その誘導体またはそれらの塩(グリチルリチン酸;グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸塩など)、グリチルレチン酸、その誘導体またはそれらの塩(グリチルレチン酸;グリチルレチン酸ステアリル等のグリチルリチン酸アルキルエステル類など)、コウジ酸、その誘導体またはそれらの塩(コウジ酸;コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート等のコウジ酸モノアルキルエステル類;コウジ酸ジブチレート、コウジ酸ジパルミテート、コウジ酸ジステアレート、コウジ酸ジオレエート等のコウジ酸ジアルキルエステル類など)、エラグ酸、その誘導体またはそれらの塩(エラグ酸;エラグ酸テトラメチルエーテル等のエラグ酸エーテル類;エラグ酸テトラアセタート、エラグ酸テトラベンゾアート等のエラグ酸アシル誘導体など)、グルタチオン、その誘導体またはそれらの塩(グルタチオン;S−ラクトイルグルタチオン等のS−アシルグルタチオン類;N,S−ジオクタノイルグルタチオンジステアリル、N,S−ジパルミトイルグルタチオンジセチル等のN,S−ジアシルグルタチオンジエステル類など)、レゾルシノールまたはその誘導体(レゾルシノール;4−n−ブチルレゾルシノール、4−イソアミルレゾルシノール、4−シクロヘキシルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール等のアルキル化レゾルシノール;4−クロロレゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール等のハロゲン化レゾルシノールなど)、グリコーゲン;ヨクイニン、ハマメリス、ユキノシタ、ジンコウ、チャ、イタドリ、メリッサ、タイム、カワラヨモギ、セイヨウノコギリソウ、オトギリソウ、セイヨウオトギリ、シャクヤク、ボタン、スペインカンゾウ、カンゾウ、クワ、マグワ、シマグワ、クララ、ウワウルシ、ヘラヤハズ、ハリアミジ、ヒジキ、フシツナギ、イワヒゲ、ダルス、ヤナギモク(オオバモク)、エゾノネジモク、フシスジモク、イシモズク、モウセンゴケ、コモウセンゴケ、ラベンダー、オウレン、ハトムギ、イワナシ、アメリカイワナシ、パッション・フラワー、クダモノトケイ、ウォーターレモン、トケイソウ、月葉西番蓮、蛇王藤、杯葉西番蓮、ワイルドパンジー、ニオイスミレ、スミレ、コスミレ、ノジスミレ、ニョイスミレ、ツクシスミレ、シロスミレ、エゾノタチツボスミレ、ネパールスミレ、シロバナスミレ、マルバケスミレ、フキスミレ、タチツボスミレ、地草果、スミレサイシン、ツボスミレ、威霊仙、テッセン、カザグルマ、センニンソウ、杜仲、トゲミノマサキ、ツリバナ、アスパラガス、イブキトラノオ、エンドウ豆、エイジツ、オウゴン、オノニス、キイチゴ、クジン、ケイケットウ、ゴカヒ、サイシン、サンザシ、サンペンズ、シラユリ、センプクカ、ソウハクヒ、大豆、茶、トウキ抽出物、糖蜜、ビャクレン、ブナノキ、ブドウ種子、フローデマニータ、ホップ、マイカイカ、モッカ、羅漢果、アロエ、アルテア、アルニカ、アシタバ、インチンコウ、イラクサ、ウコン、オウバク、カミツレ、キンギンカ、クレソン、コンフリー、サルビア、シコン、シソ、シラカバ、トウキンセンカ、ニワトコ、ホオウ、ムクロジ、レンゲソウ、ヨモギ、ユーカリ、ノイバラ、イチョウ、ヤシャジツ、ジコッピ、ミクロメルム ミヌツム(Micromelum minutum)、ミクロメルム プベセンス(Micromelum pubescens)、バハクジ、ボウカ、スズメウリ、ラズベリー、カキョクまたはそれらの抽出物;胎盤抽出物等を挙げることができるが、上記のもののみに限定されるべきものではない。これらの成分は1つのもののみを配合してもよく、また、2種以上のものを組み合わせて配合してもよい。本発明の美白用組成物(美白剤)には、公知の美白効果を示す成分や美白効果を増強する成分以外の成分を、さらに加えてもよい。これら成分の配合量は、本発明の組成物の美白効果を損なわない限り、特に限定されない。
本発明の組成物は、経口的または非経口的に投与(服用)すればよい。経口的に投与する製剤(経口投与製剤)としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤等の剤形を挙げることができる。非経口的に投与する製剤(非経口投与製剤)としては、エキス剤、硬膏剤、酒精剤、座剤、懸濁剤、チンキ剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、点眼剤、注射剤等の剤形を挙げることができるが、非経口投与製剤としては、エキス剤、硬膏剤、酒精剤、懸濁剤、チンキ剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤等の剤形が好ましい。また、本発明の美白用組成物は、ローション、クリーム、化粧水、乳液、フォーム剤、ファンデーション、パック剤、皮膚洗浄剤、シャンプー、リンス、コンディショナー等の化粧料組成物の形態とすることも可能である。
製剤化は、公知の製剤技術により行うことができ、製剤中には適当な製剤添加物を加えることができる。製剤添加物としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保湿(湿潤)剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味剤、甘味剤、色素、香料、噴射剤等を挙げることができ、製剤添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して、適当量を加えればよい。
本発明の組成物における、(i)トラネキサム酸またはその塩と(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩との配合比は、適宜検討を行い、適当な配合比を決めればよいが、重量比として、(i):(ii)=1:0.01〜15が好ましく、1:0.1〜1.5がさらに好ましく、1:0.32が特に好ましい。また、(i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩と(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩との配合比は、適宜検討を行い、適当な配合比を決めればよいが、重量比として、(i):(ii):(iii)=1:0.01〜15:0.01〜60が好ましく、1:0.1〜1.5:0.1〜6がさらに好ましく、1:0.32:0.4が特に好ましい。
本発明の美白用組成物(美白剤)は、服用者の性別、年齢、症状、投与(服用)方法、投与(服用)回数、投与(服用)時期等により適宜検討を行い、適当な投与(服用)量を決めればよい。例えば、内服の場合、1日当たりトラネキサム酸またはその塩を50〜2500mg投与(服用)するよう配合することが好ましく、400〜2000mg投与(服用)するよう配合することがさらに好ましい。また、L−システイン、その誘導体またはそれらの塩は、1日当たり、30〜750mg投与(服用)するよう配合することが好ましく、150〜480mg投与(服用)するよう配合することがさらに好ましい。L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩は、1日当たり、50〜3000mg投与(服用)するよう配合することが好ましく、300〜2000mg投与(服用)するよう配合することがさらに好ましい。
本発明の組成物は、本発明に係る全成分を含む単一の製剤として製し、これを投与(服用)してもよいし、本発明に係る各成分を分けて別の製剤とし、それら製剤を同時または順次投与(服用)可能としたキット製剤としてもよい。
以下に、実施例を示して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらのみに限定されるべきものではない。
1. 色素沈着抑制効果
1.1 試験方法
1.1.1 紫外線(UVB)照射時間の検討
6週齢の雌性Kwl:A−1系褐色モルモット(SPF)を2匹用いて、紫外線(UVB)照射時間を検討した。すなわち、1匹のモルモットを腹位に固定し、背部正中線をはさんで左右対称に、2cm×2cmの正方形の紫外線照射部位を各3箇所の計6箇所設けた。紫外線照射部位以外を遮光し、SEランプ(波長250〜350nm、FL20S・E、東芝製)5本を用いて40cmの距離から紫外線(UVB)照射を行った。照射時間は4、6、8、10、12、14分とし、翌日照射部位の皮膚反応(紅斑の有無および程度)を観察した。
次に他の1匹のモルモットを用いて、皮膚反応がみられた最小時間と皮膚反応がみられなかった最大時間の間をさらに15秒間隔に照射時間を設定し、先と同様にして、8箇所の照射部位を設けた後、皮膚反応を観察して、本試験での紫外線(UVB)照射時間を11分30秒および11分45秒の2種に定めた。
1.1.2 試験検体
下記濃度になるように試験検体を注射用水に溶解させた。
検体(1):コントロール(無添加)
検体(2):トラネキサム酸37.5mg/ml
検体(3):L−システイン12mg/ml
検体(4):アスコルビン酸15mg/ml
検体(5):トラネキサム酸37.5mg/ml+アスコルビン酸15mg/ml
検体(6):トラネキサム酸37.5mg/ml+L−システイン12mg/ml
検体(7):L−システイン12mg/ml+アスコルビン酸15mg/ml
検体(8):トラネキサム酸37.5mg/ml+L−システイン12mg/ml+アスコルビン酸15mg/ml
1.1.3 紫外線照射
7週齢の雌性Kwl:A−1系褐色モルモット(SPF)5匹を1群にわけ、検討した。すなわち、紫外線照射日(検体投与開始日、2日目および4日目:紫外線照射回数計3回)に、固定板を用いてモルモットを腹位に固定した。モルモット背部正中線をはさんで左右どちらかの2cm×2cmの正方形1箇所を紫外線照射部位とし、紫外線照射部位以外は遮光した。SEランプ(波長250〜350nm、FL20S・E、東芝製)5本を用いて40cmの距離から紫外線(UVB)を1群中2匹については、11分30秒間照射し、1群中3匹については、11分45秒間照射した。試験検体は、試験期間(14日間)中、1日2回経口投与した。投与液量は10ml/kgとした。なお、紫外線照射日では紫外線照射後に、色素沈着の判定日は判定後に投与を行った。
1.1.4 色素沈着の判定
試験検体投与開始日の照射前および試験終了日に、照射部位を色差計(CR−300、ミノルタカメラ販売株式会社製)を用いてL値(明度)を測定し、ΔL値(観察日のL値−照射前のL値)を求めた。結果を表1に示した(ΔL値が大きいほど、効果が高いことを示す。)


1.2 結果
表1から明らかなように、本発明にかかる検体(6)および(8)は優れた色素沈着抑制効果を示した。すなわち、トラネキサム酸単独投与群(表中、検体(2))、L−システイン単独投与群(表中、検体(3))と比較して、トラネキサム酸およびL−システイン投与群(表中、検体(6))は、優れた色素沈着抑制効果を示した。
また、色素沈着抑制効果がある程度予想されたL−システインおよびアスコルビン酸投与群(表中、検体(7))は、予想外にも効果を示さず、むしろ、色素沈着を促進する効果を示した。このことは、L−システイン単独投与群(表中、検体(3))およびアスコルビン酸単独投与群(表中、検体(4))との結果を比較すれば明らかである。
一方、L−システイン、アスコルビン酸にさらにトラネキサム酸を投与した群(表中、検体(8))は、検体(7)投与群の色素沈着促進を色素沈着抑制に転じただけにとどまらず、極めて優れた色素沈着抑制効果を示した。
2.製剤例
2.1 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 1500mg
L−システイン 240mg
結晶セルロース 100mg
トウモロコシデンプン 40mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 50mg
ヒドロキシプロピルセルロース 30mg
ステアリン酸マグネシウム 20mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 60mg
マクロゴール6000 12mg
タルク 10mg
酸化チタン 18mg
2.2 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 750mg
L−システイン 240mg
L−アスコルビン酸 300mg
結晶セルロース 200mg
トウモロコシデンプン 100mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 90mg
ヒドロキシプロピルセルロース 30mg
ステアリン酸マグネシウム 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 80mg
マクロゴール6000 16mg
タルク 14mg
酸化チタン 24mg
2.3 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 750mg
L−システイン 160mg
L−アスコルビン酸 300mg
α−トコフェロール 300mg
結晶セルロース 170mg
トウモロコシデンプン 200mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 70mg
ヒドロキシプロピルセルロース 30mg
ステアリン酸マグネシウム 20mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 60mg
マクロゴール6000 12mg
タルク 10mg
酸化チタン 18mg
2.4 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 1000mg
L−システイン 480mg
L−アスコルビン酸 600mg
塩酸ピリドキシン 100mg
リボフラビン 30mg
結晶セルロース 200mg
トウモロコシデンプン 950mg
ヒドロキシプロピルセルロース 50mg
ステアリン酸マグネシウム 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 75mg
マクロゴール6000 15mg
タルク 11.5mg
酸化チタン 22.5mg
2.5 液剤
以下の組成(1日量として100ml)で、常法により液剤を製造した。
トラネキサム酸 1000mg
L−システイン 240mg
桂枝茯苓丸エキス 3750mg
ソルビトール 3000mg
クエン酸 100mg
クエン酸ナトリウム 30mg
香料 適量
精製水 100ml
2.6 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 1000mg
L−システイン 240mg
カミツレ 600mg
ウワウルシ 300mg
結晶セルロース 200mg
トウモロコシデンプン 165mg
ヒドロキシプロピルセルロース 50mg
ステアリン酸マグネシウム 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 75mg
マクロゴール6000 15mg
タルク 11.5mg
酸化チタン 22.5mg
2.7 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 1000mg
L−システイン 240mg
セラミド 20mg
結晶セルロース 150mg
トウモロコシデンプン 145mg
ヒドロキシプロピルセルロース 25mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 42mg
マクロゴール6000 7mg
タルク 168mg
酸化チタン 7mg
白糖 660mg
アラビアゴム 17mg
沈降炭酸カルシウム 150mg
2.8 錠剤
以下の組成(1日量として6錠)で、常法により錠剤を製造した。
トラネキサム酸 1000mg
L−システイン 480mg
フフバンジェノール 30mg
コラーゲン 1000mg
結晶セルロース 203mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 70mg
ヒドロキシプロピルセルロース 50mg
ステアリン酸マグネシウム 27mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 80mg
マクロゴール6000 16mg
タルク 14mg
酸化チタン 24mg
2.9 バニシングクリーム
以下の組成で、常法によりバニシングクリーム(100g)を製造した。
(A)ポリソルベート60 1g
テトラオレイン酸POE(60)ソルビット 0.5g
モノステアリン酸グリセリル(自己乳化型) 1.0g
パルミチン酸セチル 4.0g
パラフィンワックス(135°F) 3.0g
ステアリン酸 8.0g
ベヘニルアルコール 2.0g
イソオクタン酸セチル 6.0g
ブチルパラベン 0.1g
(B)メチルパラベン 0.1g
2%水酸化ナトリウム水溶液 4.0g
1,3−ブチレングリコール 7.0g
トラネキサム酸 1.0g
L−システイン 1.0g
精製水 残余
2.10 乳液
以下の組成で、常法により乳液(100g)を製造した。
(A)ポリソルベート60 1g
テトラオレイン酸POE(60)ソルビット 0.5g
モノステアリン酸グリセリル(親油型) 1.0g
ステアリン酸 0.5g
ベヘニルアルコール 0.5g
流動パラフィン 4.0g
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 4.0g
イソオクタン酸セチル 2.0g
ブチルパラベン 0.1g
(B)メチルパラベン 0.1g
カルボキシビニルポリマー(1%水溶液) 5.0g
1,3−ブチレングリコール 5.0g
トラネキサム酸 1.0g
L−システイン 1.0g
L−アスコルビルリン酸マグネシウム 1.0g
精製水で 90.0g
(C)1%水酸化ナトリウム水溶液 2.5g
精製水 7.5g
(D)香料 適量
2.11 ローション剤
以下の組成で、常法によりローション剤(100g)を製造した。
(A)POE(60)硬化ヒマシ油 1.0g
香料 適量
エタノール 15.0g
メチルパラベン 0.1g
(B)クエン酸 0.1g
クエン酸ナトリウム 0.3g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
トラネキサム酸 1.0g
L−システイン 1.0g
L−アスコルビルリン酸マグネシウム 1.0g
精製水 残余
【産業上の利用可能性】
本発明の組成物は、優れたメラニン色素沈着抑制効果を示した。したがって、本発明の組成物は、美白用組成物(美白剤)として、また、シミ、そばかす、日やけ、色黒やステロイド等の薬物による皮膚の黒化症などの色素沈着症の予防および/または治療用組成物として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を含有する組成物。
【請求項2】
1日当たりの投与(服用)量として、(i)トラネキサム酸またはその塩を50〜2500mg、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を30〜750mg含有する組成物。
【請求項3】
トラネキサム酸およびL−システインを含有する組成物。
【請求項4】
1日当たりの投与(服用)量として、トラネキサム酸を50〜2500mg、およびL−システインを30〜750mg含有する組成物。
【請求項5】
(i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を含有する組成物。
【請求項6】
1日当たりの投与(服用)量として、(i)トラネキサム酸またはその塩を50〜2500mg、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を30〜750mg、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を50〜3000mg含有する組成物。
【請求項7】
トラネキサム酸、L−システインおよびL−アスコルビン酸を含有する組成物。
【請求項8】
1日当たりの投与(服用)量として、トラネキサム酸を50〜2500mg、L−システインを30〜750mg、およびL−アスコルビン酸を50〜3000mg含有する組成物。
【請求項9】
美白用である請求の範囲1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
色素沈着症の予防および/または治療用である請求の範囲1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
剤形が経口投与製剤である請求の範囲1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
(i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする美白方法。
【請求項13】
(i)トラネキサム酸またはその塩、および(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする色素沈着症の処置方法。
【請求項14】
(i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする美白方法。
【請求項15】
(i)トラネキサム酸またはその塩、(ii)L−システイン、その誘導体またはそれらの塩、および(iii)L−アスコルビン酸、その誘導体またはそれらの塩を投与することを特徴とする色素沈着症の処置方法。

【国際公開番号】WO2004/060364
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564563(P2004−564563)
【国際出願番号】PCT/JP2003/017050
【国際出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】