説明

老化関連病状中の老化及び介入におけるDNA損傷の役割に関する早期老化マウスモデル

本発明は、ゲノム維持障害及びその結果、特に老化関連症状及び障害を阻害する、予防する、遅延させる或いは減少させる化合物をスクリーニング及び発見するための方法に関する。本発明は、ゲノム維持障害及びその結果を阻害、予防、遅延或いは減少させる化合物をスクリーニング方法を提供する。本発明は、DNA修復システムなどのそのゲノム維持システムの欠陥を含み、早期の、増大した、加速的又は断片的な老化の表現型を示す動物モデルを利用する。これらの動物モデルを有利に用いて化合物をスクリーニングすることができ、したがって老化関連症状を治療、遅延、阻害、予防或いは治癒するための介入機構を開発することができる。老化関連症状及び疾患を治療する治療活性がある化合物をスクリーニング及び/又は発見するための、新しい強力なツールを提供する。虚血、臓器/組織移植における再灌流障害、化学療法及び幹細胞移植に影響を与える化合物のスクリーニング及び発見を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化の分野、特に老化とゲノム維持(genome maintenance;GM)の間の関係;DNA損傷の誘導及び応答に関する。より詳細には本発明は、細胞の生存及び毒素遺伝子に対する細胞の耐性に対して重大な影響を有する、老化及びDNA損傷修復/応答系に関する。
【0002】
本発明は、ゲノム維持障害及びその結果を阻害する、予防する、遅延させる或いは減少させることができる化合物をスクリーニング及び発見するための方法に関する。特に本発明は、哺乳動物における老化関連症状及び状態、例えばゲノム維持障害によって引き起こされる症候群及び状態、又は哺乳動物の正常な生存期間中の正常な本来の老化プロセスによって引き起こされる症候群及び状態などを阻害する、減少させる或いは予防する化合物をスクリーニングするための方法を提供する。本発明はGM障害に関する介入の戦略を提供し、老化関連症状用の新たな治療物質の発見を目的とするスクリーニング法を提供する。これらの化合物を用いて治療されるこれらの老化関連症状は、遺伝的欠陥及び障害、特にNER/TCR/XLR/DSBRの遺伝的欠陥によってもたらされる老化関連症状である可能性があるが、正常な老化において観察される老化関連症状及び疾患である可能性もある。特に本発明は、ゲノム維持に欠陥があり早期老化(premature ageing)の表現型を示すマウスモデルを開発及び使用するための方法を提供し、哺乳動物における1個の老化関連パラメータ又は数個の老化関連パラメータ及び/又は表現型を予防する、阻害する、減少させる或いは遅延させるはずである化合物、物質及び組成物を試験するのに非常に適している。
【背景技術】
【0003】
老化は、生物の増大した年齢と関係がある細胞、組織、器官及び哺乳動物身体の進行性の退化として定義することができる。老化の進化論は、自然淘汰の有効性は年齢と共に低下するという観察結果に基づく。これは老化がないとしても、個体は捕食、疾患及び事故などの環境要因で死に至るためである。老化のプロセスは年長の個体を排除するために機能して、個体がその子孫と資源に関して競合するのを防止するはずである。したがって老化は、生命初期に適合性を最適化する結果として進行している。
【0004】
生命後期の影響による損傷の進行的蓄積は、老化関連症状の主な原因と広く考えられているが、さらに多くの他の理論がホルモン誘導型の老化などを述べている。老化生物及び種の寿命の適合性は、一方では細胞の生物分子に対して内因的に引き起こされる損傷と環境的に引き起こされる損傷のバランスによって、他方では維持活性及びストレス耐性システムによって、少なくとも一部分は決定されるようである。どの生物分子:脂質、膜、オルガネラ(ミトコンドリアなど)、タンパク質、RNA又はDNA又は組合せが主な標的であるかという本質は、依然として議論の対象である。
【0005】
老化の遺伝的性質を研究するための4つの主なモデル系;出芽酵母菌サッカロミセス・セレビジアエ種、線虫シノラブディス・エレガンス種(Caenorhabditis elegans)、ショウジョウバエのキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、及び哺乳動物モデルとして最も重要なマウスMus musculusが存在する。老化の機構に関する理論を試験するために、これらのモデルが広く使用されてきている。
【0006】
一般的な遺伝子変異体又は環境要因、例えば食物摂取などを、ヒトの死亡率及び疾患に対するそれらの影響に関して試験することは、細胞レベルでの老化の理解に貢献している。遺伝経路の検索、及び老化及び老化関連疾患又は表現型に影響を与え、老化プロセスを詳細に研究するのを可能にする動物モデルの開発は、近年の遺伝学及びゲノム学の発展によって急速に進んでいる。
【0007】
早期及び/又は加速的老化の幾つかの特徴を示す、断片的早老症候群(segmental progeroid syndromes)などの稀な遺伝性ヒト疾患の研究は、(加速的断片的)老化の幾つかの根底にある遺伝的機構の発見をもたらしている。このことが、老化関連現象を研究するための、遺伝的に改変したマウスなどの特異的動物モデルの開発を可能にしている。より詳細にはこのことが、ゲノム維持システムに欠陥があり加速的又は増大した断片的老化の表現型を示す、遺伝的に改変したマウスモデルなどの動物モデルの開発をもたらしている(Boer J,et al.,Science.2002 May 17;296(5571):1276-9,de Waard H,et al.,Mol Cell Biol.2004 Sep ; 24(18):7941-8.,Hasty P,Campisi J,Hoeijmakers J,van Steeg H,Vijg J.,Science.2003 Feb 28 ; 299(5611):1355-9.中に総説された)。
【0008】
ゲノム維持に欠陥があり加速的及び/又は増大した老化又は断片的老化の表現型を示す動物モデル、及び老化を研究するためのこのような動物モデルの使用は、科学者技術者連盟からの広範囲の懐疑と一致している。加速的老化の特徴を示す動物モデルは、正常な老化のプロセスに関する有用なモデルとなるかどうか、及びその程度が、現在議論されている(Hasty P,Vijg J.,Ageing Cell 2004 vol 3,pp55-65及びHasty P.,Vijg J.,Ageing Cell 2004 vol 3 pp.67-69)。多くの科学者及び当技術分野の専門家は、このような動物モデルは単に特定の遺伝的改変、特にゲノム維持システムに影響を与える突然変異の影響を示すと述べている。彼らの見解では、大部分のこれらの表現型の影響は単に、最良の場合自然な老化の症状と類似しており、最悪の場合発達障害と類似しており、正常な老化とはほとんど関係がない(Miller R.A.,Ageing Cell 2004 vol 3,pp 47-51,Miller R.A.Ageing Cell 2004 vol 3,pp 52-53,Miller RA.Science.2005 Oct ; 310(5747):441-3)。
【0009】
【非特許文献1】Boer J,et al.,Science.2002 May 17;296(5571):1276-9
【非特許文献2】de Waard H,et al.,Mol Cell Biol.2004 Sep ; 24(18):7941-8.
【非特許文献3】Hasty P,Campisi J,Hoeijmakers J,van Steeg H,Vijg J.,Science.2003 Feb 28 ; 299(5611):1355-9.
【非特許文献4】Hasty P,Vijg J.,Ageing Cell 2004 vol 3,pp55-65
【非特許文献5】Hasty P.,Vijg J.,Ageing Cell 2004 vol 3 pp.67-69
【非特許文献6】Miller R.A.,Ageing Cell 2004 vol 3,pp 47-51
【非特許文献7】Miller R.A.Ageing Cell 2004 vol 3,pp 52-53
【非特許文献8】Miller RA.Science.2005 Oct ; 310(5747):441-3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの動物モデルの多くの考えられる用途が前述の文献中に論じられているが、これらの動物モデルの有用性に関する多大な難点は、老化の分野及び老化研究の分野で依然として広く認識されている問題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ゲノム維持障害及びその結果を阻害する、予防する、遅延させる或いは減少させることができる化合物をスクリーニング及び発見するための方法を提供する。本発明は、そのゲノム維持システムの欠陥を含み、早期の、増大した、加速的又は断片的の老化の表現型を示す動物モデルを利用する。本発明は、劇的に加速した、早期及び/又は増大した老化の表現型の特徴を示すこれらの動物モデルの使用は実際有効であり、これらを有利に施用して化合物をスクリーニングすることができ、したがって老化関連症状を治療する、遅延させる、阻害する、予防する或いは治癒するための介入機構を開発することができることを初めて示す。本明細書に与える例はこの方法を例示し、本発明によるスクリーニング法を使用して、このような化合物を明確に同定することができる明らかな証拠を与える。したがって本発明は、老化関連症状を防止することができ予防及び/又は治療活性がある化合物を含む、化合物をスクリーニング及び発見するための新しい強力なツールを提供する。
【0012】
本発明による化合物のスクリーニング法は、遺伝的に改変されておらず増大した、加速的及び/又は早期老化の表現型を示さない動物の使用を含む、当技術分野で知られている類似のスクリーニング法に優る幾つかの利点を有する。
【0013】
第1に本発明は、老化症状又はスクリーニングする化合物によって影響され得る特徴を動物が示すまで、はるかに少ない時間を必要とするので、より有効であるスクリーニング法を提供する。幾つかの動物モデルは、本発明の実施例中で例示するように子宮中においてさえも老化関連症状を示し、一方で正常なマウスは1年半、2年、又はさらにそれ以上の後にのみこのような老化関連症状を示す。
【0014】
第2に本発明による方法は、野生型動物と比較して遺伝的に改変された動物中でより一層顕著である特定の表現型に対する影響を有することに関して、化合物をスクリーニングすることを可能にし、ごく少数の動物が老化関連症状を2年以上の後にのみ示すはずである。特にこの方法を使用して、個々の器官及び組織のレベルで特定の表現型に対する特定の化合物の影響をスクリーニングすることができる。したがって、本発明による方法を有利に施用して化合物をスクリーニングすることができ、個々の老化関連症状又は疾患に関する介入の戦略を開発することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.一般的な定義
「遺伝子」又は「コード配列」は、個々のタンパク質を「コードする」DNA又はRNA領域(転写される領域)を指す。コード配列は、プロモーターなどの適切な制御領域の調節下に置くと、ポリペプチドに転写され(DNA)翻訳される(RNA)。遺伝子は非コードイントロン及びコードエクソンを含むゲノム配列であってよく、相補的DNA(cDNA)配列であってよい。遺伝子は幾つかの動作可能に連結した断片、例えばポリアデニル化部位を含むプロモーター、転写制御配列、5’リーダー配列、コード配列及び3’非翻訳配列などを含み得る。キメラ又は組換え遺伝子は、例えばプロモーターが転写されるDNA領域の一部又は全体とは本来結合していない遺伝子などの、本来通常は見られない遺伝子である。「遺伝子の発現」は、遺伝子がRNAに転写される且つ/或いは活性タンパク質に翻訳されるプロセスを指す。
【0016】
本明細書で使用する用語「プロモーター」は、遺伝子の転写開始部位の転写の方向に関して上流に位置する1つ又は複数の遺伝子の転写を調節するために働き、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位、及び転写因子結合部位、リプレッサー及びアクチベータータンパク質結合部位だけには限られないが、これらを含めた任意の他のDNA配列、並びにプロモーターからの転写量を制御するために直接的或いは間接的に作用することが当業者に知られている、任意の他のヌクレオチド配列の存在によって構造的に同定される核酸断片を指す。「構成的」プロモーターは、大部分の生理及び発生条件下において大部分の組織中で活性があるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、生理上或いは発生上制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定の型の組織又は細胞中でのみ活性がある。
【0017】
本明細書で使用する用語「動作可能に連結した」は、互いに機能的関係にあるように物理的に連結した2つ以上の核酸又はアミノ酸配列要素を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写及び/又は発現を開始させる或いは他の場合制御/調節することができる場合、プロモーターはコード配列と動作可能に連結しており、この場合コード配列は、プロモーターの「調節下にある」として理解されるはずである。一般に2つの核酸配列が動作可能に連結しているとき、それらは同じ方向にあるはずであり、さらに通常は同じリーディングフレーム内に存在するはずである。さらにそれらは通常ほぼ隣接しているはずであるが、このことは必要とされない可能性がある。
【0018】
「遺伝子送達」又は「遺伝子導入」は、組換え体又は外来性DNAを宿主細胞に確実に導入するための方法を指す。移動させるDNAは非組込み状態であってよく、宿主細胞のゲノムに組み込むことが好ましい。遺伝子送達は例えば形質導入によって、ウイルスベクターを使用して、又は細胞の形質転換によって、エレクトロポレーション、細胞ボンバードメント法などの知られている方法を使用して行うことができる。さらに遺伝子は、例えばウイルスベクターによって、或いはリポソーム媒体の使用によって、生きているマウスに直接(及び組織特異的に)送達することができる(Current protocols in molecular biology,Ausubel et al.Wiley Interscience,2004)。
【0019】
「ベクター」は一般に、ヌクレオチド配列のクローニング及び発現に適した核酸構築体を指す。用語ベクターは、ベクターを宿主細胞の中及び間に移動させることができる、ウイルス、ビリオン又はリポソームなどのベクターを含む輸送媒体を時折指す可能性もある。
【0020】
「トランス遺伝子」は、細胞中に新たに導入された遺伝子、即ち再導入された外来性遺伝子、突然変異遺伝子、不活性遺伝子、又は細胞中に通常存在しない遺伝子として本明細書では定義する。トランス遺伝子は細胞に固有である配列、細胞中に本来存在しない配列を含むことができ、且つトランス遺伝子は両方の組合せを含むことができる。トランス遺伝子は、細胞中でコード配列を発現させるのに適した制御配列と動作可能に連結させることができる、1つ又は複数のタンパク質をコードする配列を含むことができる。好ましくは、トランス遺伝子を宿主細胞のゲノムにランダムな形式で組み込み、或いは相同的組換えによって特定の遺伝子座に組み込む。送達は、当技術分野で知られている方法によってインビトロ(卵母細胞/ES細胞)で、或いはインビボ(生きているマウス)で行うことができる。
【0021】
「被験体」は、ヒト、非ヒト霊長類、畜産動物、家畜動物及び実験動物を非制限的に含む哺乳動物クラスの任意のメンバーを意味する。
【0022】
用語「実質的に同一」は、2つのペプチド又は2つのヌクレオチド配列が、デフォルトパラメータを使用するプログラムGAP又はBESTFITなどによって最適にアラインメントをとるとき、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセント以上の配列同一性(例えば、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。GAPはNeedleman及びWunschのグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つの配列をその全長さ部分でアラインメントし、マッチ数を最大にし、ギャップ数を最小にする。一般に、ギャップクリエーションペナルティー=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)、及びギャップ伸張ペナルティー=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)で、GAPデフォルトパラメータを使用する。ヌクレオチドに関しては、使用するデフォルトスコア行列はnwsgapdnaであり、タンパク質に関しては、デフォルトスコア行列はBlosum62である(Henikoff & Henikoff、1992)。
【0023】
用語「含む」は、言及する部分、ステップ又は要素の存在を特定するものとして解釈すべきであるが、1つ又は複数の他の部分、ステップ又は要素の存在を除外するわけではない。領域Xを含む核酸配列は、したがって他の領域を含む可能性がある、即ち領域Xはより大きな核酸領域に含まれる可能性がある。
【0024】
用語「物質」は化合物、及び2つ以上の化合物を含む組成物を含む。
【0025】
B.発明の詳細な説明
ゲノム維持システムは、ヌクレオチド切除修復(NER;包括的ゲノムNER(GG−NER)及び転写関連NER(TC−NERを含む)、転写関連修復(TCR)、分化関連修復(DAR)、塩基切除修復(BER)、及び二本鎖切断修復(DSBR)、及びDNA架橋修復(XLR)経路、及び関連DNA損傷耐性、及びシグナル(DT&S)システム、及びそれに関係があるタンパク質を含む。簡潔のために、この部分はここではGM(ゲノム維持)と表す。
【0026】
本発明は、老化関連の表現型を評価するための、遺伝的に改変された動物モデル(並びに組織、培養細胞及びそれらに由来する無細胞系)の新たな使用を提供する。動物モデルは、前に示したGMシステム中に突然変異を含む。本明細書中に以下で示し実施例中で実証するように、これらの「GM動物」の幾つかはヒトGM症状と非常に似ており、これらの動物は、欠陥のあるDNA維持が原因であり骨粗しょう症、脊柱後弯症、カヘキシー、初期の不妊発症、加速的な神経、血液、及び筋肉変性、肝不全及び腎不全、胸腺退縮、老化関連のホルモン変化を含めた早期老化の多数の徴候を含む多数の症状を示す。正常な老化と平行する状態も、さまざまな早老マウス突然変異体及び正常に老化した動物の非常に類似したゲノムの広範囲の発現プロファイルから明らかである(実施例9参照)。本発明は、哺乳動物における早期老化の表現型を阻害する、遅延させる、予防する或いは治癒することができる化合物又は混合物を選択するための方法を提供する。同時にこの方法は、老化プロセス自体の特徴付け以外に、老化プロセスを向上させる化合物又は混合物(薬剤又は既知/未知の化学物質など)の同定も可能にする。本発明の他の態様では、これらのGM動物(及びそれに由来する細胞)の使用は、移植目的用の器官及び組織の状態を改善する化合物の同定を目的として、酸素再灌流障害を予防するか或いは減少させる。本発明の他の態様では、この方法をDNA損傷を誘導する化学療法剤の使用の最適化に適用し、このようにして老化を向上させる。他の態様では、本発明の方法は、老化の概念で化粧品化合物及び治療物質を試験するための、GM動物モデル(及びその細胞)の使用を含む。本発明のさらに他の態様では方法は、器官再生に使用するための幹細胞移植用の老化促進GM動物モデルの使用を含む。本発明の最終態様では、ここに記載する方法及びGM動物モデルを、例えばマイクロアレイ上での遺伝子又はタンパク質発現のレベルで、及び/又はSNPのレベルで、及び/又は代謝産物のレベルで(メタボローム解析)、老化関連の特徴を誘導するために使用し、これらは特定の器官又は組織の老化状態、及び老化状態に対する化合物(の混合物)及び適用例の影響を示す。幾つかの前述の化合物/適用例は、老化関連状態、より詳細には欠陥GMシステムによって引き起こされる早期の老化関連状態、並びに動物中及びヒト中の本来の老化症状用の新規の治療及び療法をもたらすはずである。本発明は特に、骨粗しょう症、神経、筋肉及び造血系の老化、肝臓、腎臓及び他の器官の機能障害、老化関連のホルモン変化、カヘキシー、不妊発症を含めた一般的な老化の迅速で確実な読み出し情報としての、出生ストレス、その出生前及び出生後初期の発達(体重/サイズ/挙動)、骨粗しょう症、脊柱後弯症の発症、3週間の期間を超える寿命を克服する、特定の(組合せの)GM突然変異体の子孫の能力の使用を含む。したがって、この迅速で有効なモデルは、特異的及び一般的な老化、老化関連病状、化学療法及び器官/組織及び幹細胞移植に影響を与える化合物/治療剤の有効、確実且つ迅速なスクリーニングを可能にする。
【0027】
DNAは、酸化代謝産物、電離及び紫外線(UV)放射及び多数の天然又は人造化学毒素を含めた(ただしこれらだけには限られない)、無数の環境的及び内因的に生じる損傷因子に絶えず曝されている。結果として生じるDNA損傷は、転写及び複製などの重要な細胞プロセスを害する可能性があり、或いは発癌現象又は(胚細胞の場合)先天性障害を誘発し得る突然変異を引き起こす可能性がある。さらにDNA損傷は、一時的又は永続的な細胞周期停止、細胞(複製)老化又は細胞死(直接又はアポトーシスを誘発することによって)を引き起こし、これによって老化に貢献する可能性がある。
【0028】
これらの有害な結果を防止するために、それぞれが特定クラスのDNA障害を処理する相補的及び部分的に重複するDNA修復機構の精巧なネットワークを、全ての生物は備えている。非常に入り組んだゲノム維持システムのこのネットワークは、それらのゲノムを完全に維持するのに必要である。以下に記載したDNA損傷修復及び応答システムの総説に関しては、Hoeijmakers,Genome maintenance mechanisms for preventing cancer,Nature 2001,May 17 ; 411(6835):366-74を参照のこと。
【0029】
塩基切除修復(BER)は、幾つかのDNAの酸化障害などのより細かい型の損傷を除去する。それぞれが認識されるさらに狭い範囲の障害を伴う幾つかのDNAグリコシラーゼは、多段階の切断、短期又は長期のパッチ修復合成を含む障害切除反応を開始させる。
【0030】
DNA損傷は(例えば、X線又はγ線又は電離放射によって誘導される)一本鎖或いはさらに二本鎖切断も含む可能性があり、相同的組換え又は非相同的末端接合、2つの主要な型の二本鎖切断修復(DSBR)によって修復される。相同的組換えと非常に関係があるがほとんど理解されていない他の修復システムは、脂質過酸化の副産物(マロンアルデヒド)として自然に誘導される、或いはシス−プラチンなどの化学療法剤によって意図的に誘導される、非常に毒性が強い鎖間架橋を除去する。このプロセスは架橋修復と呼ばれ、ここではXLRと呼ぶ。
【0031】
よく知られており充分研究されているゲノム維持システムは、複雑な「カットアンドパッチ」反応における損傷を認識し除去するのに少なくとも25個のタンパク質の共同作用を必要とする、高度に保存されたヌクレオチド切除修復(NER)経路である。NERは最も多用なDNA修復経路の1つである、何故ならNERは、幾つかの形の酸化損傷以外に、主なUV誘導型障害及び多大な化学的付加を含めた、ここで以後「古典的NER障害」と呼ぶ広くさまざまなヘリックス変形DNA障害を除去するからである。NERは2つのサブ経路、包括的ゲノムNER(GG−NER)及び転写関連NER(TC−NER)からなり、後者は特異的に働いて活性遺伝子の転写鎖から損傷を除去し、このようにしてRNA合成の回復及び細胞生存を可能にする。TC−NER反応は、DNA障害に伸長RNAポリメラーゼを施し、阻害ポリメラーゼの除去又は置換の後に主要なNER機構で補うことによって誘導される。さらに、塩基切除修復(BER)経路の典型的な基質であり転写機構の阻害を引き起こす幾つかの障害は、転写関連式にも修復されるという証拠が存在する。我々はNER型の障害の転写関連修復に関してTC−NER、及び全種類の転写阻害DNA損傷の転写関連修復を意味するときはTCRを言及する。非複製細胞(即ち、ニューロンなどの最終的に分化する細胞)は包括的ゲノム修復を低下させるが、TCRの鋳型として働き分化関連修復(DAR)と示す機構によって傷害を含まない、活性遺伝子の非転写鎖(NTS)を保つための機構は維持するという証拠が増大している(Nouspikel T,Hanawalt PC(2002)DNA repair in terminally differentiated cells.DNA Repair Jan 22 ; 1(1):59-75)。
【0032】
TFIIH(10個のタンパク質サブユニットから構成される)、XPG、CSB及びCSAなどの多数のGG−NER及びTC−NER要素は、同時にTCRの重要な因子であることを、強調することは重要である。さらに、マルチサブユニットTFIIH複合体は、RNAポリメラーゼIIによって転写される全ての構造遺伝子、及びRNAポリメラーゼIによって転写されるrRNA遺伝子の転写開始における重要な要素である。さらに、GG−NER及びTC−NERタンパク質複合体の少なくとも1つ、ERCC1/XPFは、非常に細胞毒性が強い鎖間架橋(XLR)の修復及び幾つかの形の組換え修復(DSBR)と同時に関係がある。さらに、BERにも携わるNER/TCR因子XPGの関与に関する証拠が報告されてきている。この広範囲の多機能は対応するGM機構は強く関係しあっていることを示し、互いに強い関係にあると考えるべきである。したがって、患者、又はトランスジェニックマウス中の前に記載した異なるNER因子の突然変異、又は個々の細胞における後天的な体細胞の突然変異は、厳密なNER概念において主たる影響があるだけでなく、BER、DSBR、XLR、転写開始及び伸長に広がる多くの他のGMシステム、並びに主たるDT&S(DNA損傷耐性&シグナル)経路とも重要な関係がある。したがって、本特許出願の主題である、XPB、XPD、XPG、CSB、CSA及びERCC1/XPFなどの突然変異に影響を与えるNER要素は、多くのGM機構に対して主たる影響を同時に有する。
【0033】
修復が失敗すると、細胞は老化(Campisi,J.(2001)Trends Cell Biol 11:S27-31)又はアポトーシス(Bernstein,C.,H.et al.,2002,Mutat.Res.511:145-78)と呼ばれる永続的な細胞周期の阻害を引き起こすことによってその増殖能力を失う可能性がある。アポトーシス又は他の形の細胞死によって失われた細胞を原種に置き換えて、器官機能の消失を回避することが必要である。さらに、高いアポトーシス率が新しい細胞によって充分に補われるときでさえ、生物は依然としてアポトーシスの影響に苦しむ可能性がある、何故なら高レベルのアポトーシス及び組織再生は、特定の幹細胞区画の消失をもたらす可能性があるからである。このように、アポトーシスと老化の両方が組織の恒常性、及びしたがって組織の機能を最終的に害すると予想される。機能の悪化は最終的に、症状(例えば関節痛、感覚機能の消失、骨粗しょう症、器官障害、精神変性)が現れる閾値に達する。大部分の老化理論は、このような変化はさまざまな損傷した細胞の生物分子(脂質、タンパク質、核酸)及びオルガネラ(例えばミトコンドリア)の蓄積によるものであることを認めている。幾つかの理論は、特に組織及び器官の細胞中の未修復のDNA損傷の累積を含む。Institute of Geneticsの発見によって強く支持される老化の主な機構に関するシナリオは、老化の主な原因としてDNA障害の蓄積を特に指摘している。このシナリオは、転写及び複製の阻害、個々の細胞の代謝及び複製能力の消失、老化及び細胞死の誘導又は突然変異の誘導及び染色体異常をもたらすDNA損傷に関するものである。後者は癌の発症を誘導する可能性がある。前者は最終的に、主に器官/組織障害及びストレスに対する低下した耐性を含めた全体的な機能低下によって老化関連疾患に達するはずである(Hasty,et al.,2003,Science 299:1355-9 and Mitchell,J.R.,J.H.Hoeijmakers,and L.J.Niedernhofer,2003,Curr Opin Cell Biol 15:232-40によって総説された)。
【0034】
このシナリオでは、2つの重要な要因が老化のプロセスと関係がある:第1に、独占的にではないが主に内因性の源からのDNA損傷の誘導に影響を与える要因(フリーラジカル、DNAの化学的崩壊だけでなく、障害の誘導を妨げるスカベンジャーシステムも含む)、及び第2にDNA障害の影響を打ち消すことを試みるゲノム維持(GM)機構。
【0035】
DNA損傷の重要な原因はフリーラジカル又は活性酸素種(ROS)であり、これらは細胞代謝の副産物として生成される化学的に非常に反応性がある分子であり、したがって特に身体組織に影響を与え、代謝活性がある。ラジカル形成のレベルは代謝活性の程度だけでなく、ミトコンドリア機能及び呼吸鎖のパラメータにも依存する。問題の程度は、塩基修飾からさまざまな種類の一本鎖及び二本鎖DNA切断及び鎖間架橋の範囲まで、100を超える異なる型の酸化DNA障害が既に記載されている事実から明らかである(J.H.Hoeijmakers,Nature,2001上記)。さらに、DNA中の幾つかの化学結合は自発的加水分解を経て、無塩基部位をもたらす可能性がある。例えば、毒素への暴露、感染、喫煙及び食生活における高飽和脂肪の摂取は、フリーラジカルの生成及びフリーラジカルによる損傷を増大させ、これが老化プロセスを加速させる。対照的に、カロリー摂取の制限はフリーラジカル生成を低下させ、哺乳動物を含めた広範囲の生物の寿命の増大と関係がある。
【0036】
DNA損傷の誘導に対する防御における最後の重要な要素は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)及びグルタチオンシンテターゼ(GSS)、低分子量スカベンジャー、並びに例えば食品中の天然又は人造スカベンジャーなどの酵素スカベンジャーを含めた精巧なスカベンジャーシステムである。前述の老化のシナリオを鑑みて、GMシステムの範囲を含めた全ての前述の要因は、特に老化関連疾患及びハンディキャップを改善するための関連介入標的となる。老化とゲノム維持機構の関係は、依然として広がる一連のヒトの症状、及び特に害されたゲノム維持経路を有する動物モデル(GMモデル、本出願の主題)の作製によって強調されている。
【0037】
ヒトヌクレオチド切除修復症状の研究は、GMシステム、より詳細にはDNA修復システムは突然変異及び染色体再編成を予防し、それによって癌を防止するのに重要であるだけでなく、DNA損傷の蓄積を妨げ、無害且つ無影響の転写及び複製を確実にすることによって、少なくとも幾つかの老化関連の表現型及び状態の予防とも関係がある可能性がある最初の指標を与えている。多数の老化の表現型及び特徴の加速的発症を示す、幾つかのヒト早期老化症が知られている。これらの多くは、ゲノム維持とも呼ばれるDNA修復システム及びDNA代謝(即ち、DNA鋳型からのRNA転写及びDNAの正確な複製)に影響を与える突然変異によって引き起こされる。患者が正常な老化の特徴の全てではないが、一部分の初期発症を示すとき、これらの障害は「断片的」早期老化症と考えられる。ゲノム維持と老化及び老化関連疾患間の考えられる関係の存在は、(大部分ではなくとも)多くの他の知られている早期老化症は、DNA代謝と関係がある遺伝子の突然変異によって引き起こされるという発見によってさらに強調される。これらの例は特にウエルナー症候群(WS)、血管拡張性失調症(AT)及びハッチンソン−ギルフォード早期老化症(HGPS)などの症状である。WSはWRN RecQヘリカーゼ遺伝子の欠陥によって引き起こされる。ATはATM遺伝子の突然変異によるDNA損傷認識/シグナルプロセスの欠陥によって引き起こされ、一方HGPSは、クロマチン編成において役割を果たす核膜における特異的点突然変異によるものである。
【0038】
3つのヒトUV感受性症状が長年知られているが、さらに近年では早期老化、色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、及び硫黄欠乏症育毛発育異常(TTD)の幾つかの異なる特徴と明らかに結びついている。この3つの症状はNER障害である(総説に関しては、Bootsma et al.,2001を参照)。これらの遺伝的欠陥の同定は、NERと関係がある遺伝子及び遺伝子産物の発見をもたらした。
【0039】
色素性乾皮症(XP)は、約1:250,000の頻度(USA)、ただし日本及び地中海領域ではより高い頻度で発生する多遺伝子性、多対立遺伝子性の、常染色体劣性疾患である。XPを有する個体は少なくとも7つの切除欠陥相補群(XP−A〜XP−G)、さらに特別な損傷乗り越え複製ポリメラーゼ(DNA損傷耐性)によって特定のUV障害の複製バイパスに欠陥が生じる、XP変異体と呼ばれる1群に分類することができる。この疾患の特徴はUV(太陽光)−過敏症、UV−B誘導型皮膚癌(基底細胞及び扁平上皮細胞及び癌腫及びメラノーマ)の1000倍までの増大、及び皮膚の加速的光老化、及び数人の患者では神経変性である。ヘテロ接合体は一般に影響を受けないようである。
【0040】
XPにおいて影響を受ける遺伝子はXPA、XPB、XPC、XPD、XPE、XPF及びXPGと表す。XPC及びXPE遺伝子は、ゲノム範囲を操作する障害認識タンパク質をコードしており、一方XPA遺伝子産物によって、NER反応の後期段階における障害が確認されると考えられる。XPB及びXPDタンパク質は基底転写因子複合体TFIIHのヘリカーゼ要素であり、これはRNAポリメラーゼI及びIIの基底及び活性型転写開始に関するDNA二本鎖ヘリックスの開環、ERCC1−XPF複合体によって損傷した鎖の切断前のDNA修復プロセスの目的、多数のDNA修復経路において機能する構造特異的5’エンドヌクレアーゼ(Niedernhofer et al.,EMBO Journal,2001)、3’をDNA光産物に切断するXPG相補的構造特異的エンドヌクレアーゼ(Tian et al.,Mol Cell Biol.2004 Mar ; 24(6):2237-42)と関係がある。
【0041】
コケイン症候群(CS)は、カヘキシー、小人症、網膜症、小頭症、難聴、神経欠陥、並びに生後の成長及び発達の遅れによって特徴付けられる常染色体劣性疾患である。文献中で報告されるCS患者の寿命は12年に制限され、この疾患の重度を示す。死因は、摂食問題及び免疫欠陥による、全体的な身体機能の低下と関係がある日和見感染であることが多い。患者はくぼんだ眼、くちばし状の鼻及び突出した下あごを伴う典型的な顔面の外見を有する。CS患者は太陽光に敏感であるが、癌を発症することは特に報告されておらず、この疾患はXPとは別のものとなる。古典的なCSは2つの相補群、CS−A及びCS−Bを含み、後者は最も一般的であり、CSA又はCSB遺伝子の突然変異によって引き起こされる。CSA及びCSB欠陥細胞はTC−NER(転写関連NER)経路に特に欠陥があり、一方で包括的ゲノム−NER(GG−NER)経路は機能状態にある。CSではNERのただ1つのサブ経路が影響を受けるが、NERの両方のサブ経路を完全に欠くXP−A患者より、CS患者は一層複雑な表現型を有する。CSにおいて影響を受けるCSA及びCSBタンパク質はいずれも複合体の要素であり、これらはRNAポリメラーゼIIと結合するか、或いはRNAポリメラーゼIIによって間接的に誘導され、それらの役割はDNA損傷誘導型転写阻害を処理する際のポリメラーゼの補助にあると考えられる。したがって、これらの患者の欠陥はTC−NERに限られず、一般にTCRに広がる。興味深いことに、XPB、XPD又はXPGの突然変異はXPとCSの組合せを引き起こす可能性がある(Bootsma,2001)。複合XPCSを有する患者はCS症状を示すが、その極限ではUV皮膚癌素因に苦しむ。さらに、これらのタンパク質はGG−NER及びTC−NERと関係があるだけでなく、同時にTCRとも関係があるようであり、TFIIHヘリカーゼXPB及びXPDはほぼ全ての遺伝子の基底及び活性型転写とさらに関係がある。
【0042】
硫黄欠乏症育毛発育異常(TTD)は、硫黄が欠乏した脆い毛及び魚鱗癬によって特徴付けられる稀な常染色体劣性障害である。毛の軸が縦方向に小さな繊維に分かれ、この脆弱性は正常な個体の15〜50%のレベルである毛のタンパク質中のシステイン/シスチンのレベルと関係がある。毛は極光下で眼に見える特徴的な「トラの尾型」バンドを有する。患者は、突出した耳及び退化したあご先を伴う異常な顔面の外見を有することが多い。精神能力は中の下〜重度の精神遅滞の範囲である。UV損傷に対する細胞の応答及び影響を受ける遺伝子に基づいて、この疾患の幾つかのカテゴリーを認めることができる。重度の症例は低いNER活性及びXPB、XPD又はTTDA遺伝子の突然変異を有する。後者の遺伝子は近年クローニングされており、TFIIHの修復機能に重要であり10サブユニット複合体を安定化させる、非常に小さな76kDポリペプチドをコードする(Giglia-Mari et al.,Nature Genetics,2004)。TTD患者は皮膚癌の高い発生率を示さない。ヒトTTDのXpd遺伝子の点突然変異を用いた対応するノックインマウスは、UVへの露出によって適度に増大した皮膚癌を示すが、しかしながらヒトの症状と一致して、内発的な癌は減少する可能性がある(de Boer et al.,Cancer Res.1998)。XPBはTFIIHの中心の一部であり、転写の中心的役割を有し、一方でXPDは中心とCAKサブ複合体を結びつけ、多くの異なる突然変異に耐性がある可能性がある。TFIIH(GG−NER、TC−NER、TCR及び転写開始)の多くの活性及びその安定性に対する、これらの個々の突然変異の影響のわずかな違いが臨床結果を決定し、それらはXP、TTD、XPとCS及びXPとTTDであってよい。
【0043】
NER複合体と関係がある他の非常に稀な新規の早期老化症が、本出願人のチームによって近年発見された。XPF/ERCC1(XFE)症状と仮に表す、この常染色体劣性状態が2症例において観察されており、以前に確立されたマウスモデルと著しい類似性を示した。1症例はXPF遺伝子の重度の突然変異によるものであり、この突然変異は16歳の年齢での早期の死をもたらす皮膚、血液、肝臓、腎臓、及び重度の神経症状の関与を伴う、約10歳の年齢からの多系統の加速的老化を引き起こす。もう1つの症例は、多系統の障害及び人生のほぼ最初の年での死を引き起こすERCC1遺伝子の重度の突然変異によるものであった。この症状及び対応するErcc1マウスの突然変異は、前述の他のNER/TCR症状とは異なる幾つかの特徴を有する。これらは、XLR及びDSBR経路の一部におけるERCC1/XPFエンドヌクレアーゼの他の関与に原因がある可能性が最も高い。このことは再度、さまざまなGM機構の強く関係しあった性質、及びそれらの(加速的)老化との関連を強調する。
【0044】
NERと関係がありヒト中で突然変異する遺伝子の全体像は、以下の表I中に示す。包括的で頻繁にアップデートされるヒト中での360を超えるXP、TTD及びCS突然変異のリストは、www.xpmutations.orgにおいて見ることができる。その寿命が比較的短く、遺伝的アクセスが容易であり、ヒトと密接な遺伝的及び生理的関連があるマウスは、早期及び加速的老化の表現型をモデル化するのに適したツールを与え得る。NER遺伝子をノックアウトすることによって(Weeda et al.,van der Horst et al.,DNA Repair 2002)、或いはNER関連遺伝子のヒトにおけるXP、CS、XPCS又はTTD突然変異と(非常に)似た突然変異を導入することによって、遺伝子工学処理したゲノム維持の欠陥を有する幾つかのマウスモデル(GMマウス)が、本発明者によるマウスモデルを含めて、作製され部分的に特徴付けされている。例えばvan der Horst et al.,Cell,1997,de Boer et al.,Cancer Research 1999,Niedernhofer et al.,EMBO Journal 2001,de Boer et al.,Science 2002はいずれも、NER欠陥を有するマウスモデルを提供し、その幾つかは加速的又は早期老化の特徴を含む表現型を示す。総説に関してはHoeijmakers,Nature 2001,Hasty et al.,Science 2003,Hasty and Vijg,Aging Cell,2004.を参照のこと。
【0045】
XP、CS及びTTD患者における広くさまざま突然変異によって、特異的な独特の特徴及びさまざまな重度の障害を伴う異なる表現型が生じる。本発明者によるNER/TCR/XLR欠陥ヒト及びNER/TCR/XLR/DSBRマウスモデルの最新の研究は、包括的ゲノム修復システム(GG−NER、BERなど)に主に影響を与えるGM遺伝子の突然変異は、癌傾向の表現型を主にもたらしたという観察結果につながっている。他方で、非常に細胞毒性が強い鎖間架橋の修復及び損傷プロセス並びに二本鎖切断などの、DNA損傷からの細胞生存を助長するTCR又は他の(修復)システムに、特に影響を与えるGM遺伝子の突然変異によって、早期及び増大した老化の表現型が主に生じる。後者のXLR、DSBR、DT&Sシステムは増殖する細胞と特に関係がある。
【0046】
本発明はこの概念に基づくものであり、したがって細胞死又は細胞老化によって誘導されるDNA損傷と関係がある任意の経路と老化を関連付ける。さらに本発明は、老化プロセスの性質を探求するためのGG−NER/BER及びTCR/XLR/DSBR及びDT&Sなどの他のGM欠陥の生物学的影響の顕著な差異、及びDNA損傷誘導又は処理に干渉することによってこれに影響を与えるための手段を利用しようと努める。
【0047】
【表1】








【0048】
本発明の実施形態
包括的ゲノムNERに影響を与える遺伝子の突然変異は癌傾向の表現型を主にもたらし、一方で転写関連修復(TCR)、及び−本発明の一部分としての−DNA損傷誘導型細胞死又は細胞周期停止を予防するためのゲノム保護と関係がある全ての他の機構(前に定義したGM機構)に、特に影響を与える遺伝子の突然変異によって、早期及び増大した老化の表現型が主に生じる。さらに、このようなTCR関連の早期及び増大した老化の表現型は、TCRの欠陥がXpa又はXpcの欠陥と組み合わさった二重突然変異マウスモデルの表現型から明らかであるように、GG−NERの他の欠陥によってさらに助長され得る。本発明は、害されたゲノム維持及び増大した細胞死又は複製老化をもたらし、早期、加速的及び増大した断片的な老化の表現型を生み出す、TCR/XLR/DSBR/DT&S欠陥を有し、Xpa又は他のGM遺伝子の追加的な突然変異を有するか或いは有さない、新たな動物モデルを開発し利用しようと努める。
【0049】
本発明は、GM障害、より詳細には相互に関連するNER/TCR/XLR/DSBR障害を予防する、遅延させる、阻害する或いは治癒することができる化合物又は化合物の混合物をスクリーニング及び発見するための方法に関する。特に本発明は、NER/TCR/XLR/DSBRの症状及び他のGM障害、特に前記障害によって引き起こされる哺乳動物における老化関連の症状及び状態をある程度阻害する、予防する、遅延させる或いは減少させることができる化合物又は化合物の混合物をスクリーニングするための方法を提供する。さらに、本出願中に示す発見によって本発明は、正常に老化する哺乳動物における老化関連の症状及び病状をある程度阻害する、予防する、遅延させる或いは減少させる化合物(の混合物)をスクリーニングするための方法を提供する。このように選択した化合物を施用又は投与することによって、本発明は、GM障害又は疾患、並びに自然な老化における、老化症状又は老化関連状態用の治療介入の戦略も提供する。治療介入は選択した1つ又は複数の化合物の医薬組成物、機能性食品、又は化粧品組成物としての投与を含むことができる。
【0050】
本発明による化合物のスクリーニング法は、GM欠陥又はGMの適度な異常(些細な欠陥を有する多型変異体など)及び老化関連症状を軽減するための新たな治療としての、a)新たな化合物又は組成物の発見及び使用、或いはb)知られている化合物及び組成物の新たな使用を目的とする。治療は老化関連症状の進行及び/又は発症の予防、低下、遅延を含む。これらの選択した化合物或いは新たに同定した化合物を用いて治療する老化関連症状は、稀な遺伝的欠陥及び障害によって、或いはNER/TCR/XLR/DSBR/DT&Sだけには限られないが好ましくはこれらなどの、GMシステム中により頻繁に存在する本来の変異体によってもたらされる老化関連症状であってよいが、被験体の正常な老化中に観察される老化関連症状及び疾患であってもよい。したがって、本発明のスクリーニング法によって同定及び/又は選択される化合物又は組成物は、動物及びヒトにおける早期及び正常な老化関連状態用の新たな治療及び療法をもたらすはずである。
【0051】
他の態様では本発明は、GM能力、及び特に他のGMシステムと複合したTCR、並びにこれらに由来する細胞に影響を与える1つ又は複数の遺伝子の突然変異を実施して、動物モデル、好ましくはマウスモデルを開発するための方法を提供する。好ましくは、早期老化の表現型を示し、動物モデルにおける老化関連パラメータを予防する、阻害する、遅延させる或いは減少させる本発明による化合物及び/又は物質又は組成物のスクリーニング法に非常によく適している、GG−NER及びTCR突然変異、或いは二重又はさらに三重突然変異を使用することができる。より好ましくは、このような動物モデルは、皮膚、骨、脳又は網膜だけには限られないがこれらを含めた1つ又は限られた数の組織又は器官における、GMシステムの不活性化による組織特異的な老化病状を示す。GM突然変異哺乳動物は各システムの突然変異が異型であってよく、且つ各システムの突然変異が同型であることが好ましい。
【0052】
第1の実施形態において本発明は、1種の化合物及び/又は2種以上の化合物を含む組成物であってよい物質の、哺乳動物中でのDNA損傷レベル及びゲノム維持に対する影響を測定する方法であって、非ヒト動物(又はそこから単離した細胞)を化合物に曝すステップであって、哺乳動物が哺乳動物の相互に関連するNER及び/又はTCR/XLR/DSBRシステムの欠陥を引き起こす少なくとも1つの突然変異を示すか、或いは前記突然変異がゲノム維持に影響を与え、且つDNA損傷の加速的蓄積及び/又はDNA損傷の高い定常状態レベルを引き起こすステップ、及び物質、化合物又は組成物のゲノム維持及びDNA損傷レベルに対する影響を測定するステップを含む方法を提供する。
【0053】
好ましくは、化合物(の混合物)のDNA損傷レベル及びゲノム維持に対する影響は、哺乳動物における老化関連パラメータに対するその定性又は定量的影響によって決定又は測定する。老化関連パラメータは、正常な老化を示す哺乳動物において試験することができる。老化関連パラメータは、早期の、増大した或いは加速的(断片的)な老化の表現型を示すNER及び/又はTCR/XLR/DSBR欠陥哺乳動物において試験することが好ましい。
【0054】
早期且つ増大した老化の表現型を示す哺乳動物は、少なくとも1つのGM遺伝子の突然変異又は改変を含むはずであるが、2つ以上のGM遺伝子の突然変異又は改変を含むことができることが好ましく、突然変異は異型であってよいが、同型であることが好ましく、或いは代替的に、1つ、2つ以上のGM関連遺伝子の複合異型であってよい。NER関連遺伝子の突然変異は、GMシステム、好ましくは包括的ゲノムNER及び/又は転写関連修復或いはこの2つの組合せの適度又は重度の欠陥を引き起こす可能性がある。
【0055】
哺乳動物における老化を予防する、阻害する、遅延させる或いは減少させる化合物(の混合物)をスクリーニングするための方法は、生きている哺乳動物においてインビボ又は検死解剖状態で、或いは外植した器官/組織(の部分)、又はそれらに由来する細胞系を利用して試験することができる。したがって、DNA損傷レベル、ゲノム維持又は老化に対する化合物(の混合物)の影響は、試験する動物由来の部分においても試験することができる。これらの部分は、回収した器官、組織バイオプシー、血液、血清若しくは尿などの体液、糞便、単離細胞、インビトロで培養した組織外植片若しくは細胞、或いは単離タンパク質、代謝産物、培養細胞若しくはバイオプシー又は体液及びその中の代謝産物由来のRNA若しくはDNAサンプルなどの生物物質であってよい。
【0056】
本発明によるスクリーニング法に使用するための、(前述のような)哺乳動物のGMシステムの欠陥を引き起こす突然変異を示す哺乳動物は、哺乳動物のヌクレオチド切除修復能力、好ましくは包括的ゲノムNERに影響を与える突然変異を含むことが好ましい。突然変異は、哺乳動物の転写関連修復(TCR)能力の欠陥を引き起こすことがより好ましい。突然変異は転写関連修復又は架橋/二本鎖切断修復の欠陥を引き起こし、且つ加速的な、増大した且つ/或いは早期の老化の特徴を有する表現型を動物に示させることが最も好ましい。GMシステムの突然変異又は2つのDNA修復システムの同時阻害を引き起こす突然変異、例えばGG−NER能力とTCR能力の両方に影響を与える突然変異の組合せを有する哺乳動物(及びその部分又は細胞)を使用することも、本発明の一態様である。さらに、同じ又は異なるGMシステムに影響を与える同型、異型又は複合異型のGM関連遺伝子の突然変異対立遺伝子であってよい2、3又は4個の突然変異体の組合せを含む哺乳動物を使用することができる。突然変異体の組合せが、哺乳動物において増大した、早期又は加速的老化の表現型を引き起こすことが最も好ましい。
【0057】
DNA損傷の蓄積及び/又は老化症状を阻害する、遅延させる或いは予防する化合物のスクリーニングに使用するための、哺乳動物中のGM維持システム、及びより詳細にはDNA損傷修復能力に影響を与える突然変異体は、NERプロセス並びにICL及びDSBR及び他の関連GM経路と関係がある構造タンパク質又は酵素をコードする遺伝子からなる群から選択されることが好ましい。突然変異は、以下の遺伝子群:Xpa、Xpb、Xpc、Xpd、Xpf、Xpg、Csa、Csb、Ttda、HR23A、HR23B、Ercc1、Ku70、Ku80及びDNA−PKcsの少なくとも1つ又は複数の遺伝子内に存在することがより好ましい。
【0058】
NER、TCR、XLR、DSBR又はDT&S、これらの組合せ又はGMと関係がある遺伝子の突然変異体は、置換、欠失、逆位、挿入、温度感受性対立遺伝子、スプライシング対立遺伝子、優性ネガティブ対立遺伝子、過剰又は過小発現対立遺伝子又は停止コドンの挿入体(切断型対立遺伝子)を含み得る。突然変異体は無効対立遺伝子、又は部分的にのみ遺伝子産物の機能に影響を与えるわずかな突然変異体であってよく、或いはそれらは、細胞中にも存在する野生型タンパク質に干渉するか或いはそれを阻害する優性ネガティブ対立遺伝子であってよい。天然に存在するマイクロRNAの使用を含めたRNA干渉(RNAi)戦略を使用して、GMシステムと関係がある遺伝子を全体的、局所的或いは部分的に不活性化させることもできる。さらに他の実施形態では、突然変異と遺伝的背景の組合せを使用することができる、例えば、条件付き突然変異、少なくとも1つの細胞系がGMシステムに欠陥がある、或いはそれが改変されている且つ/或いはそれが突然変異している、異なる細胞系からなる複合異型の動物又はキメラ動物の使用を、本発明によるスクリーニング法において有利に使用することができる。
【0059】
本発明中で使用するためのNER及び/又はTCR突然変異の好ましい組合せは、Xpa及びXpdを不活性化させる突然変異であり、この場合Xpd対立遺伝子はXP、XPCS、TTD、TTD−XP又はCOFS(脳−眼−顔−骨格症候群)を引き起こす対立遺伝子と同型、或いはこれらの対立遺伝子並びにErcc1/XpfNER/XLR/DSBR遺伝子の異なる突然変異体と複合異型であってよい。
【0060】
他の好ましい組合せは、不活性突然変異体XpaとXpb、XpaとCsb、XpcとCsb、XpaとCsa、XpcとCsa、XpbとXpdである。NER及び/又はTCR遺伝子の突然変異体のこれらの好ましい組合せのそれぞれが、異なる老化の態様、及び異なる時間の発症及び/又は重度を伴う断片的老化、又は老化関連病状の特徴を含む異なる表現型を示し、これらを使用してこれらの状態又は障害に影響を与える化合物をスクリーニングすることができる。特に好ましいのは、動物の生前、誕生時、又は生後1、2又は3カ月或いは周辺で存在し得ることができる、劇的に加速する早期老化の表現型をもたらす突然変異体及び突然変異体の組合せである。関連タンパク質の多機能性、多数の経路におけるそれらの同時関与及び他のGMシステムとの強い関連性を鑑みて、本発明の範囲が前述の組合せに限られないことを強調することは重要である。
【0061】
1つ及び好ましくは2つ以上のゲノム維持システムの欠陥を有する、哺乳動物(好ましくはマウス)突然変異体を使用することによって、(これまで本発明者によって試験された2つの突然変異体の組合せの多くの場合において)、生後3カ月未満で少なくともある程度の早期老化の特徴を示すことが多い。これらのモデルは、老化速度に影響を与える化合物のスクリーニング、幹細胞及び器官/組織移植目的、及び老化のRNA、タンパク質及び代謝産物バイオマーカーの表示に最も適している。
【0062】
不活性化突然変異は、部分的又は完全な欠失、挿入、フレームシフト及び停止コドンの導入だけには限られないが、これらなどの、機能性タンパク質の発現に干渉する任意の突然変異であってよい。機能性タンパク質の正確な発現又は翻訳を阻害する突然変異の導入は、当技術分野で、例えば(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,2004)中においてよく知られている。当技術分野で知られている相同的組換え技法によって、突然変異を導入することが好ましい。
【0063】
(1つ又は複数の)遺伝的改変が特定の組織又は器官に限られ、或いは哺乳動物の後期発生段階中に全身或いは組織限定的に欠陥を導入することができる条件付き突然変異動物を、スクリーニング法に使用することも、本発明の一態様である。条件付き突然変異体は、例えば当技術分野で知られているCre/Lox又はFLP/FRTシステムを用いて作製することができ(実施例5)、例えばこのエストロゲン類似体を用いた処理によって、Cre(又は他の)リコンビナーゼが構成的に発現されるが、核に運ぶことのみが可能である(したがって条件付き対立遺伝子を切除することのみ、他の場合は不活性化させることが可能である)、エストロゲン受容体融合体/タモキシフェンシステムを使用して、何処でリコンビナーゼが発現されるか、局所(実施例6)或いは全体に応じて、組織特異的なNER、TCR又はGM関連遺伝子の突然変異の導入を含むことができる。或いは、ドキシサイクリンの存在/不在下で転写を可能にする、(その同じ遺伝子のノックアウト背景において)TetOn又はTetOffプロモーターから発現されるcDNAを使用することができる。特定の組織に限定される突然変異GM対立遺伝子を過剰発現するか、或いは例えば肝臓、皮膚、脳、網膜又はリンパ区画要素だけには限られないが、好ましくはこれらの特定の器官又は組織に限定して、例えば(ノックダウン技術によって)優性ネガティブ対立遺伝子又は不活性RNAi分子を発現する、組織特異的トランスジェニック動物を使用することができる。
【0064】
特に好ましいのは、Xpb、Xpd又はTtda遺伝子の突然変異を示す哺乳動物(及びその部分又は細胞)の使用であり、その突然変異はヒト中で硫黄欠乏症育毛発育異常を引き起こす対立遺伝子と同一であるか、或いは非常に似ている。ヒト中でTTDを引き起こす突然変異体の非制限的な例は本出願中の表1に与える。TTDを引き起こす突然変異体の中で特に好ましいのは、XpdR722W/R722Wだけには限られないがこれらなどの、早期の、増大した且つ/或いは加速的老化の表現型を引き起こす突然変異体又は突然変異体の組合せである。増大した/加速的老化の表現型を引き起こすヒトXPD遺伝子の他の好ましいTTD関連突然変異体の例は、G47R、R112H、D234N、C259Y、S541R、Y542C、R601L、R658C、R658H、D673G、R683W、R683Q、G713R、A725P、Q726ter、K751Qである(Cleaver et al.,(1999)Human Mutation 14:9-22;Itin et al.,2001,J Am Acad Dermatol 44:891-920)。ヒトXPB遺伝子のTTD関連突然変異体の例にはT119Pがある(Itin et al.,2001,J Am Acad Dermatol 44:891-920)。ヒトTTDA遺伝子、M1T、L21P、R57terの突然変異体は、本出願人のチームによって決定されている(Giglia-Mari G et al.,Nat Genet.2004 Jul;36(7):714-9.)。
【0065】
本発明の他の好ましい実施形態では、Csa、Csb、Xpb、Xpd及びXpg遺伝子の突然変異を示す哺乳動物を使用し、その突然変異はコケイン症候群(CS)又は複合型コケイン症候群及び色素性乾皮症(XPCS)、或いは脳−眼−顔−骨格症候群(COFS)と呼ばれる、近年発見された関連する、非常に重度の状態を引き起こすヒト対立遺伝子と同一であるか、或いは非常に似ている。ヒト中でXP、CS、XPCS及びCOFSを引き起こす突然変異体の非制限的な例は本出願中の表Iに与える。CSを引き起こすNER突然変異体の中で特に好ましいのは、Csanull/null、CsbG744ter/G744ter(CS1AN対立遺伝子aに類似)だけには限られないがこれらなどの、早期の、増大した且つ/或いは加速的老化の表現型を引き起こす突然変異体又は突然変異体の組合せである。ヒトCsb遺伝子の他の好ましいコケイン症候群関連突然変異体は、Q184ter(翻訳−突然変異の停止;停止コドン及び/又はフレームシフト突然変異の導入)、R453ter、W517ter、R670W、R735ter、W851R、Q854ter、R947ter、P1042L、P1095R、R1213Gである。本発明の実施形態のヒトCsa遺伝子の好ましい突然変異体は、Y322terである。XPCSを引き起こす突然変異体の中で特に好ましいのは、XpdG602D/G602D、XpbFS740/FS740だけには限られないがこれらなどの、早期の、増大した且つ/或いは加速的老化の表現型を引き起こす突然変異体である。本発明の実施形態の他の好ましいXPCS関連突然変異体は、(i)ヒトXpb遺伝子に関して:F99S;(ii)ヒトXpd遺伝子に関して:G675R、669fs708ter(iii)ヒトXpg遺伝子に関して:R263ter、659terである(Cleaver et al.,(1999)Human Mutation 14:9-22及びwww.xpmutations.org)。
【0066】
本発明の最も好ましい実施形態では、前述の遺伝子のTTD、CS、COFS及び/又はXPCSを引き起こす突然変異体を示す哺乳動物は、Xpa遺伝子又は包括的ゲノムNERに影響を与える他の遺伝子の突然変異体も含む。特に好ましいのは、Csanull/null/Xpanull/null、Csanull/null/Xpcnull/null、CsbG744ter/G744ter/Xpanull/null、CsbG744ter/G744ter/Xpcnull/null、XpdG602D/G602D/Xpanull/null、XpdR722W/R722W/Xpanull/null、XpdG602D/R722W/Xpanull/null、又は前に示した表現型をもたらす、これらGM遺伝子の任意の他の突然変異体だけには限られないがこれらなどの、CS、XPCS、COFS又はTTDマウスモデルにおいて観察された、重度の増大及び/又は早期の、増大した且つ/或いは加速的老化の表現型の発症年齢の低下を引き起こす突然変異体の組合せである。これはさらに、組織又は発生段階特異的な老化の表現型の誘導に関して前に記載したように遺伝子の1つが条件付きになる、1つ及び複数の突然変異を含む(実施例7は、脳特異的CsbG744ter/G744ter/Xpaconditional/null突然変異体を示す)。
【0067】
NER又は他のDNA修復経路及びゲノム維持システムに影響を与え、好ましくは哺乳動物の老化にも影響を与え、本発明による化合物のスクリーニング法において使用する突然変異を示す哺乳動物は、げっ歯類であることが好ましく、マウス、ラット、ウサギ、モルモットからなる群から選択されることがより好ましく、マウスであることが最も好ましい。
【0068】
DNA損傷の加速的蓄積及び好ましくは早期の、増大且つ加速的老化の表現型を引き起こすNER、TCR及び他のDNA修復及びGMシステムの欠陥を示す哺乳動物を使用する、本発明による化合物のスクリーニング法を使用して、前記表現型発現を阻害する、予防する又は遅延させることができる化合物及び組成物を同定することができる。スクリーニングする化合物の影響は、哺乳動物中インビボ、或いはインビトロで幾つかの表現型の読み出し情報によって、定性的及び定量的に測定することができる。本明細書で定義する表現型の読み出し情報は、老化関連状態又は障害を同定する任意の老化関連定量又は定性パラメータであってよい。試験中のその挙動及び/又は性能などの、本発明によるスクリーニング法の表現型の情報読み出しは、動物自体に実施することができる。他の表現型の情報読み出しは、その器官、組織バイオプシーの中又はそれらにおいて、細胞、或いは哺乳動物又はインビトロで培養した組織外植片、細胞若しくは無細胞抽出物由来のタンパク質、DNA又はRNAサンプルにおいて実施し、試験又は分析用に後に使用することができる。DNA損傷レベル及び/又は老化関連症状に対するその影響に関してスクリーニングする化合物又は組成物に曝される哺乳動物に関する、好ましい読み出し情報は、寿命、(実施例4に例示するような)周産期ストレスの存続、若年死、脊柱後弯症、体重、(脂肪組織と合計体重の比によって測定した)体脂肪率、カヘキシー、毛の消失、灰色化、神経及び感覚機能障害(視力、聴力、嗅覚、学習及び記憶能力の消失)、震え、発作、運動失調、性的挙動、生殖能力、筋肉機能、(四肢の)協調性、心臓機能、ホルモン、免疫学的又は血液学的パラメータ、テロメア縮小、骨粗しょう症、網膜変性症、光受容体細胞の消失、肝機能、腎機能、胸腺退縮、プルキンエ細胞の消失、貧血、(自己免疫疾患を含めた)免疫機能障害、心臓血管機能不全、糖尿病、遺伝子発現パターン、RNA発現レベル、タンパク質発現レベル、代謝産物レベル及びホルモンレベルだけには限られないが、これらなどのパラメータである。本発明によるスクリーニング法における表現型の読み出し情報は、個々の突然変異体又は突然変異体群と、GM維持システムの1つ又は複数の突然変異を示さない比較可能な野生型マウスの間の、(p値<0.05、0.02、0.01又は0.001での)統計上有意な差異として記録することができる。前述の表現型の読み出し情報のパラメータを記録するためには、当業者には明らかであろう当技術分野で知られている方法を使用することができる。
【0069】
器官又は組織レベルでは、使用するのに好ましい老化関連パラメータは、(実施例8に例示するような)骨粗しょう症、(実施例3に例示するような)網膜変性症及び光受容体の消失、(脾臓又は胸腺中の)リンパ枯渇、胸腺退縮、皮下組織脂肪の消失、腎細管拡張、肝臓内のリポフスシン沈着、腎臓ヒアリン化糸球体硬化症、肝臓の核内封入体、皮膚萎縮、貧血、腫瘍形成及び腫瘍である。これらのパラメータは単なる例示のために与え、本発明によるスクリーニング法における、ゲノム維持及び老化に関して考えられる読み出し情報を制限するわけではない。
【0070】
本発明の他の実施形態では、化合物のスクリーニング法における好ましい情報読み出しは細胞及び分子レベルであり、より好ましい実施形態では、RNAサンプルにおける遺伝子発現分析(トランスクリプトーム解析)、タンパク質サンプルにおけるタンパク質発現分析(プロテオーム解析)、及びゲノムDNAサンプルにおけるDNA損傷及び障害の蓄積の分析である。他の好ましい実施形態は、メタボローム解析、即ち試験する哺乳動物における代謝産物及び代謝経路に対する本発明による方法における化合物の影響を測定することによって、決定される老化関連パラメータを含む。本発明によるスクリーニング法における化合物又は組成物で処理及び未処理の、哺乳動物又は培養細胞由来のRNA、DNA及びタンパク質サンプルは、特にNER、参照サンプル/標準物質の欠陥を引き起こす突然変異を示さない哺乳動物又は細胞、或いは比較的若年又は老年の哺乳動物又は細胞と比較して、哺乳動物又はそれに由来する細胞においてDNA損傷レベル及び老化プロセスに対して化合物が有する影響を評価することができる。遺伝子発現パターンの違いは、試験(トランスクリプトーム解析、実施例1及び2中にさらに示す)に使用した哺乳動物から得たRNA又はcDNAサンプルとハイブリダイズさせた、カスタムメイド又は市販のDNAマイクロアレイで測定することができる。タンパク質発現レベルの違いは、免疫沈降実験、1D又は2Dイムノブロッティング技法、タンパク質(マイクロ)アレイ及び他のプロテオーム解析技法又はメタボローム解析技法において、抗体を使用して測定することができる。本発明によるスクリーニング法におけるゲノム維持に対する化合物の影響は、直接ゲノムDNA中のDNA損傷の蓄積に基づいて、直接測定することもできる。DNA分析はDNAシークエンシング、突然変異分析、特に突然変異のホットスポットの検出を含むことができる。DNA損傷は、例えば酸化によるDNA損傷を測定するためのH.Poulsenの方法によって測定することができる(Riis,B.,L.Risom,S.Loft,and H.E.Poulsen.2002,DNA Repair 1:419-24)。
【0071】
DNAの修飾を仲介する100を超える異なるフリーラジカルが記載されている。しかしながら、DNA損傷及びゲノム維持の最も好ましいパラメータは1つの修飾、グアニンの8−ヒドロキシル化(8oxoG)であり、これは酸化によるDNA塩基損傷の最も豊富な型の1つである。ヨウ化ナトリウム系DNA抽出、酵素によるDNAの消化、及び液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC−MSMS)を用いた分析を利用する方法は、本発明による化合物のスクリーニング法において施用するのに好ましい情報読み出しである。それは、本発明の方法による化合物を用いた哺乳動物の治療に応じて、ゲノムDNAにおける高い感度及び8−oxodGの真の値の指標を与える。
【0072】
本発明の方法における突然変異及びDNA損傷の蓄積の迅速且つ有効なスクリーニングに他の好ましい技法は、Vijg J.et al.,Mech Ageing Dev.1997 Dec ; 98(3):189-202中に記載されたのと同様のlacZレポーターマウスモデル、又はこの方法の他の変形である。この方法は、本発明による化合物のスクリーニング法に使用する動物モデルのインビボでの老化中の、体細胞及び組織のDNAの突然変異の蓄積の研究を可能にする。モデルとなるlacZレポーターマウスモデルは、好ましくはさまざまな染色体の位置に頭部から尾部まで組み込まれたlacZレポーター遺伝子を含む、プラスミドベクターを有する。大腸菌宿主細胞にプラスミドを効率良く戻すための手順が実施されてきている。lacZ突然変異プラスミドを有する大腸菌細胞のみを増殖させる陽性選択系は、突然変異コロニーと形質転換体の合計数、即ち回収したプラスミドコピーの合計数の比として、突然変異頻度の正確な測定を可能にする。染色体3及び4にベクター群を有するプラスミド保有マウスの寿命試験から得た結果は、動物細胞、例えば肝細胞中の老化関連突然変異の蓄積を示した。本発明の方法によってスクリーニングする化合物の影響は、本発明によるスクリーニング法においてアッセイする化合物で治療した(及び比較用に治療していない)マウスの肝臓(又は任意の他の型の細胞)において、このアッセイを使用して効率良く測定することができる。
【0073】
さらにより好ましい方法は、前述の早期老化マウスモデルにおけるレポーター遺伝子の使用である。このようなレポーター遺伝子はプロモーターから構成され、その発現レベルは老化によって増大し、老化関連病状の発症及び重度と関係があることが示されており、生物発光(例えばルシフェラーゼ)又は蛍光(例えば緑色蛍光タンパク質)レポーター遺伝子と結合して、生きているマウスにおける老化及び老化関連病状の長期間の非侵襲的スクリーニング、並びに老化及び老化関連病状の発症及び重度に対する化合物の干渉影響のスクリーニングを可能にする。或いはレポーター遺伝子は、タンパク質をコードする遺伝子から構成されていてよく、その発現レベルは老化によって(例えば、増大した発現、高い安定性又は低度の分解によって)増大し、生物発光又は蛍光タンパク質とインフレームで融合する。
【0074】
本発明による化合物のスクリーニング法は、DNA損傷処理に哺乳動物を追加的に曝して、方法の識別力を増大させることによって向上させることができる。DNA損傷処理はUV、X線又はγ放射線への露出などの物理的処理、活性酸素種(ROS)、酸化ストレスへの露出、及びDNA損傷化合物への露出などの化学的処理によって施すことができる。都合よく使用することができるDNA損傷化合物はパラコート、H、DMBA、AAF、アフラトキシン、ベンズ(o)ピレン、EMS、ENU、MMS、MNNG、H、ベロマイシン、イルジンS、ナイトロジェンマスタード、PUVA、マイトマイシンC、シスプラチナ、及びタクソールを含むが、これらだけには限られない。
【0075】
或いは、前に記載したような本発明によるDNA損傷レベル及び老化症状に対する影響を有する化合物のスクリーニング法は、特定の遺伝的背景を示す哺乳動物においてNER、TCR、XLR、DSBR又は他のGM関連経路を害する突然変異を導入することによってさらに向上させ、より高感度且つ/或いはより多目的にすることができる。例えば、好ましくはDNA損傷の蓄積及び/又は老化症状の蓄積の傾向がある、或いはそれらに対する感度が高い、遺伝的背景を使用することができるはずである。例えば、例えばトランスジェニック又はノックアウト動物、天然に存在する突然変異体、RNAi発現抑制(腫瘍抑制)遺伝子を有するRNAiトランスジェニック動物だけには限られないが、これらにおける、突然変異、欠失、又はそれらのゲノム中への挿入によって、活性化癌遺伝子又は不活性化腫瘍抑制遺伝子を有する哺乳動物を使用することができる。広範囲の腫瘍抑制遺伝子及び癌遺伝子が、当技術分野でよく知られており研究されている。本発明による化合物のスクリーニング法中で使用する哺乳動物の遺伝的背景として、都合よく使用することができる遺伝子の例には、p53、p16、p19arf、Ras、c−Myc、Rb、サイクリンD、テロメラーゼ、ウイルス癌遺伝子、アデノウイルスE1A、E1B、HPVE6又はE7、SV40大Tなどがあるが、これらだけには限られない。或いは、細胞解毒作用又は抗酸化防御経路の他の遺伝的欠陥を使用して、早期老化マウスモデルを感作することができる。
【0076】
害されたNER、TCR、XLR、DSBR又はGM能力を有する哺乳動物中での化合物の影響によって測定する、本発明によるゲノム維持及び老化に対する影響を有する化合物をスクリーニングするための方法を実施して、新規の化合物又は組成物、例えば微生物、植物又は動物だけには限られないが、これらなどの天然/生物源由来の粗製抽出物の影響を確認することができる。特異的性質を有することが知られており、したがってDNA損傷レベル及び老化に対して影響を有する可能性がある化合物、例えばフリーラジカル、活性酸素種、又はNラジカルを除去又は解毒し得る抗酸化性を有する化合物などに、この方法を都合よく使用することもできる。細胞周期進行、代謝、細胞死又はアポトーシス、DNA修復、解毒作用及び/又は肝機能、心臓血管機能及び/又は循環、免疫性能に対する影響を有する化合物も、本発明によるゲノム維持及び老化症状に対するそれらの影響に関して試験することができる。老化関連症状を阻害する、遅延させる或いは減少させるため、及びゲノム維持の改善又は回復のために、本発明に従い使用するのに特に好ましい化合物は、β−カテキン、N−アセチル−システイン、システイン、α−トコフェロール、レチノール、D−マンニトール、プロリン、N−tert−ブチル−a−フェニルニトロン(PBN)、ビタミン−C/アスコルビン酸、尿酸/尿酸塩、アルブミン、ビリルビン、ビタミンE、ユビキノール、カロテノイド(リコペン、カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチンなど)、フラボノイド、カテキン、4−ニトロフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、フェノール、チロシン、4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール、セロトニン、α−、β−、γ−、δ−トコフェロール、ヒドロキノン、DOPA、4−アミノフェノール、4−デメチルアミノフェノール、アロプリノール、デフェリチアシン、フェナントロリン、エルゴチオネインからなる群から選択される抗酸化剤及びラジカルスカベンジャーである。
【0077】
本発明による方法中で使用することができる、抗酸化/ラジカルスカベンジャー活性と関係がある酵素は、酵素ラジカルスカベンジャー(ペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)など)、抗酸化剤の還元と関係がある酵素(GSHリダクターゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、デヒドロアスコルビン酸リダクターゼなど)、及び還元環境の維持を助長する細胞酵素(例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼなど)、及び例えばアポフェリチン、トランスフェリン、ラクトフェリン、セルロプラスミン、及び他の小さなラジカルスカベンジャーなどの金属イオンの封鎖と関係があるタンパク質である。本出願中に概略した概念に基づくと、これらの要素のいずれかの先天性又は後天性の欠陥は加速的表現型を誘導する可能性もあり、このように本出願の一部である。これらのタンパク質の遺伝子は、好ましくは前に記載したGM突然変異体と組み合わせて、トランスジェネシス(過剰発現及び低下した発現)の点で関係がある。
【0078】
他の実施形態では、本発明による化合物をスクリーニングするための方法は、化合物、及び特に医薬品及び食品の老化促進(副)作用をスクリーニングするための方法として利用することもできる。
【0079】
老化及び老化関連の特徴に影響を与える化合物のスクリーニング以外に、GMマウスモデル及び細胞系、それに由来する器官及び組織(の部分)は、幾つかの他の老化関連プロセス及び現象とも関係がある。これは、臓器移植の概念でのゲノムに対する再灌流障害の分析及び影響測定、特に移植臓器又は組織の寿命を縮める再灌流障害を減少させる化合物のスクリーニング用の、GMマウスの使用を含む。同様の設定で、GMマウスモデル及び細胞系、それに由来する器官及び組織(の部分)は、虚血の分析及び影響測定とも関係がある。
【0080】
本発明による加速的老化の表現型を示すDNA修復及びゲノム不安定突然変異体の使用は、さまざまな他の介入、例えば移植、及び特に幹細胞移植などに用いることもできる。
【0081】
同じ概念構想内で本発明は、正常組織に対する化学又は放射線療法の負の影響を低下させる、或いは腫瘍に対する影響を向上させて癌治療の治療範囲を拡大する目的の、GMマウス突然変異体及びそれに由来する細胞系の使用に関する。この目的のために、同じ又は異なる化合物及び物質を、老化に対する影響を評価するための前述の化合物及び物質として利用することができる。
【0082】
同様に、化粧目的の皮膚の老化に影響を与える物質及び化合物、及び化粧品をスクリーニングするために、本発明の方法を使用することもできる。
【0083】
他の関連適用例と同様に、前に記載したGMマウスモデルは、加速的老化を示す特定器官及び組織に関する幹細胞移植の分析及び利用とも関係がある。
【0084】
同分野の最終的な適用例は、老化関連の特徴を遺伝子発現、タンパク質発現及び修飾、及び遺伝的多型(SNP)との関連に関して定義するためのGMマウスモデル及びそれに由来する細胞系の使用、並びに老化関連疾患の診断、予後及び治療におけるそれらの使用である。
【0085】
本発明及びその実施形態を、以下の非制限的な実施例によってさらに例示し説明する。
[実施例]
【実施例1】
【0086】
この実施例は、本発明の方法におけるゲノム維持及び老化関連パラメータに関する好ましい情報読み出しとしての、マイクロアレイ分析の適用例を例示する。マイクロアレイは、本発明によるスクリーニング法中で使用する哺乳動物における、化合物の影響を測定するのに好ましい方法である。この実施例では、肝臓のmRNA発現プロファイルを若年(15日齢)と老年(2年齢)野生型マウスの間で比較し、複合型NER/XLR/DSBR欠陥を示し且つ重度XPF/ERCC1(XFE)症状の患者のそれと似た顕著な断片的な早期老化の表現型を表す、Ercc1null/null(この実施例では以後Ercc1−/−マウスと呼ぶ)15日齢マウスのmRNAプロファイルと比較する。
【0087】
XPF−ERCC1は、多数のDNA修復経路に必要とされるエンドヌクレアーゼである。XPFのわずかな突然変異は、癌傾向の症状である色素性乾皮症を引き起こす。我々は新奇の早老症を有する患者を特徴付けし、XPFの重度の突然変異を発見し、2つの異なる疾患はこの1つのタンパク質の欠陥に原因があることを実証した。DNA修復欠陥誘導型早老症の機構及び自然な老化とのその関係を洞察するために、我々はXPF−ERCC1に欠陥があるように遺伝子工学処理したマウス、若年及び老年野生型マウス由来の肝臓の遺伝子発現プロファイルを比較した。早老症マウスと老化マウスのプロファイルの有意な重複があり、遺伝毒性及び再生プロセスが示された。これらの結果は老化を軽減する際のDNA修復に関する有意な役割を強く支持し、老化を助長する際の細胞毒性DNA損傷を示し、DNA修復欠陥及び自然な老化によって引き起こされた早老症間で観察された多面発現の論理的根拠を与える。
【0088】
導入:
早老症は、老化の兆候及び症状の早期の発症によって特徴付けられる、多様な組の特発性又は遺伝性疾患を含む。早老症と自然な老化の間の関係は知られていないが、老化の原因を理解し老化プロセスを研究するための実践モデルを開発するのに重要である。しかしながら、早老症は断片的、或いは組織特異的ことが多く、ヒトの老化との直接の比較は不満足なものとなる。転写又はタンパク質レベルでは早老症と自然な老化の間に幾つかの直接比較可能な点が存在するが、(1)、培養細胞の比較はこの2つの間で同様のものとして示される。
【0089】
幾つかの遺伝性早老症はDNA損傷に対する細胞応答の欠陥と関係があり、コケイン症候群(CS)、ウエルナー、ロートムンドトムソン症候群、血管拡張性失調症及び硫黄欠乏症育毛発育異常(TTD)を含む(2)。この関係は、DNA損傷に対する不適切な応答は老化を加速させることを示唆する。ヒト早老症の2つ、CS及びTTDは、ヌクレオチド切除修復(NER)の欠陥によって引き起こされる。NERは、DNAの螺旋構造を歪める大きく扱いにくいDNA障害の除去を担う多段階、多タンパク質の機構である。NERの基盤は、DNA損傷認識タンパク質複合体XPC−hHRad23Bによってゲノム中に、或いはRNAPolIIが損傷部位に存在する場合転写中に認められる。CS及びTTDは、転写関連NERの欠陥によって特異的に引き起こされる(3)。対照的に、一般的なNER機構の欠陥は、癌傾向の症状である色素性乾皮症(XP)を引き起こす。XP患者は、人生の最初の10年間に高頻度で、皮膚の太陽光に曝された領域の皮膚癌発症の1000倍を超える高い危険性を有する(4)。しかしながらXP患者は、年齢の似かよったCS及びTTD患者と比較してそれほど顕著ではない早期の老化を有する。これらの対照的な表現型は、同一のDNA損傷(NERの基盤)は癌及び老化に貢献する可能性があることを示唆し、損傷に対する細胞応答は結果を判定するのに重要であることを示す。
【0090】
XPF−ERCC1は、NERに必要とされる構造特異的エンドヌクレアーゼの1つである(5)。両方のタンパク質、及びそのヘテロ二量体の相互作用は真核細胞間で充分一定に保たれている(5,6)。XPFのわずかな突然変異を有するヒトは、平均して人生の40年間内に癌の発症を伴う軽度のXPを有し(7)、Ercc1の突然変異を有する患者は知られていない(8)。これはXPF−ERCC1はヒトの生存能力に必須であり、したがってNER以外のエンドヌクレアーゼに関する他の機能を求めることを示す、何故なら検出不能なNERは生命とは適合性がないからである(9)。実際、XPF−ERCC1は、第2のDNA修復経路:鎖間架橋(ICL)修復(10,11)、及び幾つかの型の有糸分裂組換えに必要とされる(12−14)。ICLは2本のDNA鎖の共有結合と関係がある独特なクラスのDNA損傷であり、NERと異なる修復機構を必要とする(15)。新奇の早老症はICL過敏症を引き起こすXPFの重度の突然変異に原因があることを我々は発見した。この早老症と自然な老化の比較は、両方に貢献するものとして細胞毒性のDNA損傷を示す。
【0091】
物質及び方法
XFE1RO患者線維芽細胞の特徴付け。初代皮膚線維芽細胞培養物を、患者の皮膚バイオプシーから樹立した。15%ウシ胎児血清及び抗生物質を補ったHamsF10培地において、細胞を培養した。試験した細胞系統には、C5RO(正常)、XFE1RO(新たなXP−F患者)、XP42RO(軽度のXPを有する典型的なXP−F患者)、並びにXP−C患者及び完全NER欠陥XP−A患者由来の細胞があった。記載したように(54)ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)を発現する欠陥レトロウイルスを用いた感染によって、細胞系を不死化状態にした。hTERTの発現レベルはRT−PCRによって測定した(55)。細胞の生存は、初代線維芽細胞をUV(UV−C、254nm)に曝した後、或いは不死化線維芽細胞を架橋剤MMCに曝した後に測定し、前に記載したのと同様に(56)クローン増殖を測定した。MEF中でのクローン生存は、3%Oで培養したマウス胚から樹立した初代細胞系を用いて行った(57)。UV損傷後のNER及び転写関連修復に関する能力も、前に記載したのと同様に(56)それぞれ臨時DNA合成(UDS)及びRNA合成の回収データよって測定した。
【0092】
相補性及び配列分析。患者の細胞を、センダイウイルスを使用して明確な一群のXP患者の初代線維芽細胞細胞系と融合させ、記載したのと同様に(58)24時間後にUV誘導型UDSをアッセイした。全RNAを患者の線維芽細胞から単離し、ランダムなヘキサマープライマーを使用して逆転写した。hXPF遺伝子をcDNA由来の2つの重複断片において増幅させ、標準的なプロトコルによって直接塩基配列決定した。hXPF遺伝子のコード配列は、エクソン特異的プライマーを使用して線維芽細胞から単離したゲノムDNAから増幅させ、塩基配列決定した。
【0093】
XPF−ERCC1の免疫検出法。XPF及びERCC1タンパク質の発現を、マウスモノクローナルα−hXPF(Neomarkers;1:1000)及び親和性のある精製ポリクローナルα−hERCC1抗体を使用して、不死化線維芽細胞培養物由来の10μgの全細胞抽出物(WCE)のイムノブロッティングによって検出した(59)。
【0094】
Ercc1−/−マウスの作製。遺伝的標的Ercc1−/−マウスの樹立は前に記載した(22)。同型突然変異マウスを、近親交配Ercc1+/−マウスの交雑によって混合型FVB及びC57Bl/6遺伝的背景で作製した。生後2日で、同腹子を平均的大きさの5匹に抜粋して、養育に関する競合を減らした。ゲノムDNAは尾部組織から単離し、PCRによって遺伝子型を決定した(15)。
【0095】
歩行の分析。運動失調症を、記載したのと同様に(60)3週齢のErcc1−/−及び野生型同腹子のフットプリント法分析によって評価した。簡単に言うと、動物の前足に紫色の水性塗料を塗り、後足は緑色で塗った。マウスはバリケートで塞いだ通路7×30cm中に放し、最終的に暗闇の避難場所に逃がした。連日の3回の実験後にデータを記録した。
【0096】
オートラジオグラフィー。ケタリン及びキシラジンの腹膜内注射(それぞれ120及び7.5μg/体重1g)によってマウスに麻酔をかけた。30kV及び32mASで作動するCGR Senograph 500T X線装置を使用して、2倍の倍率で側面の写真を撮った。65cmの焦点−フィルム間距離及び32.5cmの焦点−被写体間距離で、モリブデン製焦点(0.1mm)を使用した。Kodak社製X線フィルム(MIN−R MA18×24cm)及びDupont Cronex低線量のマンモグラフィー用強度スクリーンを使用した。
【0097】
RNA単離及びcDNAのマイクロアレイ分析。2つの遺伝的背景のErcc1−/−及び同腹子対照を、Erasmusメディカルセンターにおいて我々のコロニーから得た。若年(6カ月)及び老年(26カ月)C57Bl/6マウスはNational Institute on Agingから得て、テキサス大学Health Science Centerのマイクロアレイ中心施設に出荷し、そこでマウスを実験まで少なくとも2週間収容した。マウスは子宮頚部拡張によって安楽死させ、次いで肝臓を切除し、処理前の液体窒素中での瞬間凍結前に全体の病状を調べた。TriReagent(Sigma社製)及びRNeasyキット(Qiagen社製)を使用して全RNAを単離した。RNAの純度は分光測定によって測定し(A260/A280>1.8)、変性ゲル電気泳動によってその完全性を測定した。RNAは4M酢酸アンモニウム及びエタノールを用いて沈殿させた。マイクロアレイハイブリダイゼーション用の蛍光標識cDNA基質を、間接的標識によって生成させた。簡単に言うと、アミノ−アリル修飾cDNAを、15μgの全RNA、オリゴ−dTプライマー(Invitrogen社製)、SuperscriptRT(Invitrogen社製)、並び1:1:1:0.1:0.9の比のdATP:dCTP:dGTP:dTTP:アミノ−アリル−dUTPを含むdNTPを使用して逆転写によって合成した。cDNAはMicron YM−30フィルターを使用して反応混合物から精製し、シアニン色素(Cy3又はCy5、Amersham Biosciences社製)と結合させた。適切なCy3(赤色)とCy5(緑色)標識cDNAを組み合わせ、Qiaquick PCR精製キット(Qiagen社製)を使用して再度精製し、高速真空乾燥によって濃縮した。サンプルは0.5μg/μlの酵母菌tRNA及び0.5μg/μlのせん毛したサケの精液のDNAを含むDIG Easy Hybバッファー(Roche社製)中に再懸濁させ、次いでcDNAマイクロアレイチップとハイブリダイズさせた。チップは25%ホルムアミド、5×生理食塩水クエン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム及び10mg/mlのウシ血清アルブミンを含むバッファー中で1時間プレハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは48℃で16時間行い、その後スライドを異なる厳密度で洗浄し、乾燥させ、デュアルレーザーAxonスキャナーを使用してスキャンした。
【0098】
1912の特徴(付録表1;http://microarray.stcbmlab.uthscsa,edu/mouse1912c.gal)を含むマウスcDNAチップを、Microarray Core Facility、テキサス大学、Health Science Center、San Antonio、TXにおいて、GEM−1マウスcDNAライブラリー(Incyte社製)からCMT−GAPSスライド(Corning社製)上に2連でプリントした。強度値はSpot(CSIRO)を使用して定量化し、“R”(http://www.r-project.org/)で実施するDr.Terry Speed、バークレー大学、バークレー、CAからのStatistics for Microarray Analysis(SMA;http://www.stat.berkeley.edu/users/terry/zarray/)ソフトウェアツールを使用して標準化した。標準化したデータの平均は、log2(赤色/緑色)比として計算した強度比と、log2(赤色×緑色)1/2として計算した全体の強度値の分散プロットとして表す。スタンフォード大学からのSAMソフトウェア(http://www.stat.stanford.edu/-tibs/SAM/)及びSMAを使用して有意性の試験を行った。
【0099】
免疫学的分析及びTUNELアッセイ。3週齢のマウスを子宮頚部拡張によって殺傷した。肝臓を切開し、4%パラホルムアルデヒド、リン酸ナトリウムバッファー、pH7.4中に4℃で一晩固定し、脱水しパラフィンに包埋した。一連の5μm切片をSuperfrost Plusスライド(Fisher社製)上に回収し、37℃で一晩乾燥させ、記載したのと同様に(61)クエン酸系抗原回収を使用する免疫組織化学法用に処理した。IGFBP−1はヤギポリクローナルIgGα−IGFBP−1(Santa Cruz社製;1:100)、次にウサギα−ヤギ−フルオレセイン−ITC(Sigma社製;1:500)を用いて検出した。増殖肝細胞の分画は、殺傷前に30分間、50mg/kgのブロモデオキシウリジン(BrdU)をリン酸緩衝生理食塩水に溶かしたものをマウスに注射することによって測定した。細胞DNA中へのBrdUの取り込みは、マウスモノクローナルα−BrdU(Abcam社製;1:50)及びα−マウスIgG−HRP結合体(Sigma社製;1:1000)を使用して検出した。アポトーシスは、製造者の教示書に従いPromega社製アポトーシス検出システムを使用するTUNELアッセイによって検出した。イムノブロット用に、動物の肝臓を切開し、氷上の100mMのNaCl、50mMのTris−HCl、pH7.5、5mMのEDTA及び0.5%Triton中に沈めた。10秒間の最大振幅でマイクロプローブを備えるSoniprep150(Sanyo社製)を使用して、サンプルを超音波処理した。タンパク質含有量はCoomassie Plusタンパク質アッセイキット(Pierce社製)を使用して測定し、10μgの各サンプルは、標準的な手順によって、α−カテプシンS(CalBiochem社製#219384、1:1000);α−IGFBP−1(Santa Cruz社製#sc−6000;1:1000)、α−p53(Signet社製、#CM1;1:1000);(α−CYR61[IGFBP−10]、Abcam社製#ab2026;1:100);α−シトクロムP450 4A(GeneTex社製、#ab3573;1:1500)又はα−カテプシンL(Abcam社製、#ab7454;1:1000)を用いて電気泳動処理し、ブロッティングし、プローブ処理した。バンドの強度は、Quantity Oneソフトウェア(Bio-Rad社製)を使用して測定した。
【0100】
結果及び考察
新奇の早老症及びXPF−ERCC1欠陥を有する患者。
常習的日焼け及び早期老化の病状を有する15歳の年齢の若い男性が我々に照会された(図1;症例報告の補足オンライン資料S1)。彼の光過敏症のために、皮膚線維芽細胞を得て(細胞系XFE1RO)、UV光に対するそれらの感度を、UV光二量体の欠陥NERのためにXPを有する患者由来の細胞のそれと比較した(物質及び方法;補足オンライン資料S2を参照)。XFE1RO細胞は、野生型(wt)細胞より生存の点で、UVに対して6倍を超えて感度が高かった。これは、軽度(XP−C及び−F相補群)を有する患者と重度XP(XP−A)を有する患者由来の細胞の感度の中間であった(図2A)。UV損傷のDNA修復は、UV露出後に細胞中に取り込まれた放射標識H−チミジンの量(臨時DNA合成即ちUDS)を測定することによって判定した(図2B)。XFE1RO細胞におけるUDSは正常レベルのわずか5%までであった、これはNERが全くない最重度のXP患者(相補群A)よりごくわずかに高い。UV損傷後のRNA合成の回復は、転写関連DNA修復の指標として測定した(図2C)。これもまた、XP−A患者由来のNER欠陥細胞及びCS患者由来の転写関連NER欠陥細胞と同程度に、XFE1RO細胞において非常に影響を受けた。要約するとXFE1RO細胞は、彼の臨床歴がこの診断と一致しなかったという事実にもかかわらず、XPの特徴であるUV誘導型DNA修復のほぼ完全な不在を示した。
【0101】
この患者の異常な症状にもかかわらず、彼の線維芽細胞の強いUV感受性はNERの欠陥を示した。したがって相補性分析を、XFE1RO細胞と全XP群A〜Gの線維芽細胞を融合させ、UV誘導型UDSを測定することによって実施した(図2D)。XFE1RO細胞は、XP−F以外の全ての群のDNA修復を補正した。この結果は予想外であった、何故なら以前に報告されたXP−F患者は実質的に残存するNER、及び結果として非常に軽度のXP症状をいずれも有していたからである(16,17)。XP−F相補群へのXFE1ROの割り当てを確認するために、mRNAを患者の線維芽細胞から単離し、逆転写及び塩基配列決定し、Xpf中の位置478におけるGRC塩基転換が明らかになった(図2E)。この突然変異によって、アルギニン142からプロリンへの非保存的アミノ酸置換(R142P)を予想した。患者のゲノムDNAの配列分析によって、彼がこの突然変異と同型であり、劣性遺伝形質及び親族関係が一致していたことを実証した。
【0102】
142は、その位置に物理化学的関連があるリシン残基を有するArabidopsis thaliana以外の、全真核生物中で保存されている(図2F)。保存型ヘリカーゼモチーフを含むタンパク質の高度に保存されたドメイン中のR142残基は、DNA結合(18)及びタンパク質:タンパク質相互作用としばしば関係がある一連のロイシン多量モチーフ(19)と、関係があると考えた。R142P突然変異は独特であり、Xpf突然変異体の大部分のN末端が報告されている(図2F)。突然変異がXPFタンパク質の大きさ又は安定性に影響を与えたかどうかを測定するために、XFE1RO線維芽細胞由来の全細胞抽出物を、完全長hXPFに対して産生した抗体を用いてイムノブロッティング及びスクリーニングした。XPFタンパク質のレベルは、野生型又はXpfの突然変異のために軽度のXPを有する患者由来の細胞と比較して、XFE1RO細胞中において有意に低下した(〜10×)(図2G)。同様にERCC1タンパク質のレベルは、同程度ではなかったが、XFE1RO細胞中において低下した(図2H)。これらの発見は、ERCC1タンパク質のレベルは、Xpf突然変異チャイニーズハムスター卵巣細胞中において低下し、逆も然りであるという以前の報告を実証し、両方のタンパク質の安定化のために少なくともある程度、XPF−ERCC1タンパク質相互作用が必要とされることを示す(20)。重要なことに、微量の残留完全長XPFを患者XFE1RO細胞中で検出し、XPF−ERCC1の完全な不在はヒトの寿命と相容れないという概念と一致した。全体でこれらのデータは、非常に低レベルのXPF−ERCC1はヒトにおいて早老症を引き起こすことを明らかにする。
【0103】
XFE1RO細胞はUV誘導型DNA損傷修復又はNERのほぼ完全な不在を示したが、XP患者由来の細胞もDNA修復アッセイにおいて同様にあまり働かなかった(図2)。さらにこれらの患者(XP相補群A)は、多臓器の早老症がない重度のXPを有していた。したがって我々は、我々の患者の早老症はNERの欠陥によって引き起こされたのではないと結論付けた。XPF−ERCC1はDNAICL修復とも関係があるので(10)、我々はマイトマイシンCへの露出後にXFE1RO細胞の生存率を測定した(MMC;図2I)。XFE1RO線維芽細胞は、野生型細胞、軽度のXPを有するXP−F患者由来の細胞、又は重度のXP及び検出不能レベルのNERを有するXP−A患者由来の細胞より、ICL損傷に対して有意に感度が高かった。したがって、非常に低下したレベルのXPF−ERCC1を有するヒト細胞の独特の特徴は、早老症の機構の基盤であり得るDNAICLに対する過敏症である。しかしながら早老症の特徴は、ここでは我々の制御下にない他の遺伝及び環境要因によって影響を受ける可能性がある、何故なら我々は、このような過剰なインビトロのICL感度も示す、1つの軽度のXPF症例を見てきているからである(データ示さず)。これらの異常なDNA修復特性、独特な型の症状及び顕著な早老症の特徴は、我々がXPF−ERCC1(XFE1)早老症と名付ける新奇の症候群を定義する。
【0104】
患者XFE1ROとErcc1−/−マウスの比較。ヒトと異なり、Ercc1−及びXpf−欠陥マウスは生命力がある(21−23)。しかしながら、これらのマウスの表現型は非常に重度のものであり、患者XFE1ROと同様に、NER−欠陥マウスとは非常に異なる(24)。Ercc1−欠陥マウスは正常に発育し、出生時にはわずかに小型であり(図3A)、次いで寿命の第3週に死に(図3B)、肝不全で死ぬ(25)。Ercc1−/−マウスにおけるカヘキシー、表皮萎縮、進行性腎臓及び肝臓機能障害、並びに肝細胞多倍数化及び核内封入は以前に報告されており、哺乳動物において進行する年齢と関係がある可能性がある症状であり、マウスが早期に老化することを示唆する(22)。我々は早老症と一致するErcc1−/−マウスの他の特徴を確認した。10日齢までマウスは、尾部で吊るすと震え及び異常な体位(伸張ではなく屈曲)として現れるジストニーであった(データ示さず)。二次的なジストニーが、哺乳動物における一般的な年齢依存性の現象である、神経変性によって引き起こされる可能性がある。さらにErcc1−/−マウスは、神経変性をさらに示す進行性の運動失調症(図3C)、サルコペニア(データ示さず)、低下したストレスによる赤血球生成(26)、及び骨粗しょう症を示す脊柱後弯症(図3D)を有しており、これらはいずれも哺乳動物の老化に付随することが多い症状である(27−29)。重要なことに、XFE1RO細胞と同様に、Ercc1−/−マウスはXPFに欠陥があり(図3E)、他のNER欠陥マウス胚の線維芽細胞よりDNAICLを引き起こす薬剤に対して有意に感度が高く(MEFs;図3F)、患者とマウスモデルの表現型の間だけでなく、表現型の機構基盤の間の類似性も実証する。
【0105】
患者とErcc1−/−マウスは両方共に、表現型は初期発生において正常であった(図1A及び3A);早期老化は初期思春期前に始まり、直ぐに進行し(図1B及び3B)、性的成熟前に早期の死をもたらした。XFE1ROの老年のしなびた外見(図1B)以外に、早老症は表皮の萎縮、視力及び聴力の消失、運動失調症、脳萎縮、高血圧、腎臓及び肝臓機能障害、貧血、オステオペニア、脊柱後弯症、サルコペニア及び体重減少を含んでいた(詳細な比較に関しては、表Iを参照)。マウスにおいて容易に測定される症状の中で、Ercc1−/−マウスにおいて観察されずXFE1ROにおいて観察された唯一の早老症の特徴は貧血であったが、赤血球細胞の高い代謝回転率(22)及び低下したストレスによる赤血球生成(26)を示唆する脾臓中の鉄の沈着を我々は以前に示しており、マウスがより長く生きた場合末梢性貧血が起こる可能性が高くなる。したがって、患者XFE1ROとErcc1−/−マウスは両方共に、減少したXPF−ERCC1DNA修復エンドヌクレアーゼの結果として神経、皮膚、筋骨、造血、腎臓及び肝胆汁系の早老症を示す。
【0106】
Ercc1−/−マウスの肝臓のマイクロアレイ分析。XFE1RO早老症の真のモデルとしてErcc1−/−マウスを確認したので、同腹子対照と比較して最も激しく影響を受けた組織の1つにおける遺伝子発現プロファイルを調べることによって、我々は早期老化の特徴の原因を解明しようと試みた。我々は肝臓を選択した、何故なら肝臓は患者とマウスモデルの両方で影響を受け、マウスにおける肝臓機能障害は早期老化の明確に定義された特徴[核多倍数化(30)、核内封入の発生(22)]並びにDNA損傷の蓄積に関する指標[p53安定化(21)]を伴うからである。
【0107】
21日齢のErcc1−/−マウスの肝臓から単離した全RNAを、2つの異なる実験(補足表1中に定義したアレイ)において野生型同腹子の全RNAと比較した。最初に、3匹のErcc1−/−及び3匹の同腹子対照から集めたRNAサンプルを、それぞれの集めた比較対象の色素交換を含む少なくとも4アレイを使用して、2つの混合型遺伝的背景(FVB/n:C57Bl\6及び129/Ola:C57BBl\6)で比較した(それぞれ図4及び表2)。第2の実験において我々は、3つのランダムな対で(50:50のC57Bl/6:FVB/n背景で)個々のErcc1−/−動物と同腹子対照を比較した(補足表3)。2つの異なる遺伝的背景に関して得た結果の間には有意な類似度が存在した。:最も有意に異なる発現をした遺伝子の50%は、2つのの背景で同一であるようであった。これはErcc1−/−の発現プロファイルが、特定の系統のマウスに特有ではないことを示す。我々は、2つの実験設計間の有意な結果の違いも検出しなかった。最も有意に異なる発現をしたとしてさらに同定した遺伝子の65パーセントが、集めたサンプルを用いた実験において同定した遺伝子と同一であった。最後に我々は、2つの別個の実験において6匹の若年(6カ月)及び6匹の老年(26カ月)C57Bl/6マウスの2つ1組の比較を行うことによって、正常な肝臓の老化を表す遺伝子発現プロファイルを進展させた(表4)。
【0108】
図4は、Ercc1−/−と同腹子対照の集めた比較対象に関して得た結果の一例を示す。SAMを使用して我々は、対照動物と比較してErcc1−/−マウスの肝臓中で有意に過剰発現した14個の遺伝子、及び有意に過少発現した3個の遺伝子を同定した(図4B)。Ercc1−/−マウスにおいて同定した50%を超える遺伝子が、老化マウスにおいても有意に異なる発現をした(図4B)。この重複がランダムに起こる確率は<10−4である。これらの発見は、自然な老化において観察した発現プロファイル中のゲノム全体の変化は、3週齢のErcc1−/−マウスの肝臓において有意な程度で再生され、遺伝子発現の基本レベルでそれらの早老症と自然な老化の間の類似性を確定することを示す。さらにこれらの発見は、老化を減少させる際のDNA修復の実質的な役割を引き合いに出し、哺乳動物の老化の態様を理解するための優れた研究ツールとしての、DNA代謝の欠陥のために早老症を有するマウスの使用を正当化する。
【0109】
遺伝子発現プロファイルの分析。老化及びErcc1−/−の肝臓において異なる発現をした幾つかの遺伝子は、機能的関連がある可能性がある。インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP−1)、そのリガンドインスリン様成長因子1(IGF−1)及び脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)レベルは、成長ホルモン(GH)/糖質コルチコイド軸によって制御される。IGFBP−1は主に肝細胞によって生成及び分泌され、循環IGF−1を封鎖し、その有糸分裂促進活性を害する。マイクロアレイ分析及び免疫検出により実証されるように(図5A及びG)、低レベルのIGF−1及びFAAHと結付いた高レベルのIGFBP−1は、突然変異体及び老化マウスにおいて低下したGHシグナルを示す(31)。GHレベルは年齢とともに低下し(32)、マイクロアレイ結果の生理的確証を与える。GHの血清レベルは、彼の小人症にもかかわらず我々の早老症患者において正常であり(凡例図1)、GHの欠陥が患者の早老症の主な原因ではなかったことが示された。GH軸はXPF−ERCC1欠陥において害されるという観察結果は、異化作用経路とDNA修復欠陥を関連付け、この両者は哺乳動物において寿命に負の影響を与えることが知られている。
【0110】
マイクロアレイデータのさらなる分析によって、Ercc1−/−及び老化マウスの肝臓において異なる発現をした3群の遺伝子が生じ、これらはGH軸阻害の機構に関する興味深い手掛かりを与え、老化の発症に関する妥当なシナリオを示唆した。第1群は、IGFBP−1、シトクロムP450 4A10、シトクロムP450 4A14及びエステラーゼ31を含むペルオキシソーム増殖活性化受容体α(PPARα)の下流エフェクターであった。IGFBP−1レベルはPPARαによって上方制御されるので(33)、GH軸の阻害はPPARα活性化の直接の結果であり、老化を仲介する際のこの2つのシグナルカスケード間の強い関連を反映する可能性がある。
【0111】
PPARαは、脂質輸送体の発現の制御及びタンパク質の代謝によって活性化させると、脂肪酸β−酸化を増大させる転写因子である(34)。Ercc1−/−及び老化マウスの肝臓におけるPPARαエフェクターの増大した発現は、したがって脂質過酸化(LPO)が増大した状態を示す(35)。PPARαの内因性リガンドは長い、直鎖の遊離脂肪酸である。したがってこのカスケードは、肝細胞毒中の細胞膜の分解によって誘導される可能性がある。このシナリオは、Ercc1−/−及び老化マウスの肝臓において異なる発現をした第2群の遺伝子、即ちアンギオゲニン、Ca2+−輸送ATPase及びCEA関連細胞接着分子Iを含めた肝細胞毒を示す遺伝子によって支持される。肝細胞毒は、患者及びマウスの血清中の肝臓酵素の存在[表I及び(21)]、並びにErcc1−/−及び老化した野生型マウスの肝臓に特徴的である肝細胞多倍数化によってさらに支持される(図6B)(21,36,37)。
【0112】
重要なことに、PPARαの活性化及びIGFBP−1の高い発現は、DNAICL物質シスプラチン(38)で処理したラット又は培養肝細胞において誘導される。Ercc1−/−マウス及びXFE1RO細胞の特有の欠陥は、DNAICLを修復できないことであるという事実に照らしてみると、未修復内因性ICLは自然な早期老化に達する事象を開始させると考えられる。DNAICLはそれ自体非常に細胞毒性が強い(15)。したがって考えられるシナリオは、未修復ICLが肝細胞の死を引き起こし、膜の脂肪酸を死にゆく細胞から放出させ、これによってPPARαを活性化させ、組織の老化を引き起こす有糸分裂促進活性の抑制をもたらすということである。興味深いことに、PPARα誘導型LPOは内因性DNAICLの源としても働く可能性があり(39)、組織損傷の蓄積が無期限に継続する可能性がある機構を与え得る。Ercc1−/−及び老化した野生型マウスの肝臓の、遺伝子発現プロファイルの全体的な類似性は、DNA修復欠陥生物の場合だけでなく修復能力のある生物の場合も、老化を促進する際の内因性DNAICLの重要な能力を示唆する。
【0113】
Ercc1−/−、及びそれより低い程度で老化した野生型マウスの肝臓において異なる発現をした第3の主要群の遺伝子は、S−アデノシルメチオニンシンセターゼ、アンギオゲニン、チューブリンα4、α−マンノシダーゼII、カテプシンL及び脂肪酸アミドヒドロラーゼを含めた肝臓再生及び組織再編成のマーカーである(40−43)。脂肪特異的タンパク質27は、脂肪細胞分化のマーカーである(44)。脂肪の変形は、PPARα経路の慢性的活性化から生じるはずである肝臓毒素又は脂質代謝の制御異常によって引き起こされる、肝不全の充分認識されている中間体である(45)。IGFBP−10及びCBFA2T3は、最終分化細胞又は老化細胞において充分に発現される(46、47)。これらのデータは、慢性的肝臓障害及び再生の臨床写真をさらに支持するものである。
【0114】
免疫学的分析及びTUNELアッセイ。マイクロアレイ分析によって過剰発現されたとして示し、そのための抗体が市販されていた全遺伝子産物に関して、Ercc1欠陥、野生型若年及び老年マウスの肝臓においてタンパク質レベルを比較した。肝細胞の細胞質及び肝臓類洞内の赤血球において、IGFBP−1を独占的に検出した(48)。IGFBP−1レベルは、若年野生型マウスと比較してErcc1−/−マウスの肝臓において有意に上昇した(図5A及びC)。IGFBP−1レベルは、老年野生型マウスにおいても上昇した。これらの結果はマイクロアレイデータに対応し、若年野生型マウスと比較してErcc1−/−及び老年野生型マウスにおいて3.7及び1.9倍の増大を示し、タンパク質レベルでの遺伝子プロファイルの有効性に関する支持を与える。これはIGFBP−10、シトクロムP450 4A、及びカテプシンSの免疫検出によってさらに確認され、これらはいずれも、遺伝子発現プロファイルによって予測されたように(図5C)、若年野生型マウスと比較してErcc1−/−及び/又は老化した野生型マウスの肝臓において過剰発現された。
【0115】
TUNELアッセイを使用して、マウスの肝臓切片中のアポトーシスの割合を評価した(図5B)。アポトーシス状態の核は、若年野生型マウスの肝臓中では稀であった。しかしながら、核の蛍光性はErcc1−/−の肝臓中では共通であり、アポトーシスの高い割合と一致した。老化した野生型マウスの肝臓において、レベルはさらに適度に上昇した。これらのデータは老化表現型に対する肝細胞の細胞死の貢献を支持し、細胞死のメディエーターとしてのアポトーシス経路を示唆する。興味深いことに、DNA損傷は一般にp53依存性アポトーシスによる細胞死を誘導し(49)、p53レベルはErcc1−/−肝細胞の核中で上昇する[図5C及び(21)]。
【0116】
未修復DNA損傷の結果としての老化のモデル。全体的にマイクロアレイデータは、XPF−ERCC1の欠陥の結果として老化が生じ得る一般的機構を示唆する(図6A)。内因性DNAICLは修復欠陥細胞において急激に蓄積するか、或いは老化と共に慢性的に蓄積することを我々は示す。細胞毒性DNA障害は、細胞死又は老化(多倍数化)を誘導する。有糸分裂後期ではない組織、例えば肝臓では、障害に対する応答は、細胞増殖、分化及び組織再編成によって機能的組織を再生するための努力である。過度の再生は増殖細胞の早期老化にさらに貢献する可能性があり、有糸分裂シグナルへの応答に対する無力をもたらす可能性がある。内因性遺伝毒素への露出は永続的であり、したがってそのサイクルは続き、組織の再生能力は最終的に減退し、組織の機能の消失及び老化症状の発症をもたらす。
【0117】
我々はマウスの肝臓中の細胞の増殖分画を、それらの相対的再生能力の指標として測定した(図6B)。マウスにブロモデオキシウリジン(BrdU)を注射し、これを注射時に複製する細胞のゲノムDNAに取り込ませる。BrdUで陽性染色した若年野生型マウスの肝細胞の10パーセントが、他のげっ歯類モデルにおいて測定した増殖率が一致する(30)。非常に対照的に、BrdU陽性核はErcc1−/−中では大幅に減少し、老化した野生型マウスの肝臓は非常に低下した増殖率を反映した。これは、組織の老化と低下した再生能力が直接関係ある我々のモデルと一致する。我々のモデルを支持すると、老年野生型マウスの骨格筋の遺伝子プロファイリングは、ストレス応答及びアポトーシスと関係がある遺伝子の過剰発現を示し、老化は酸化誘導型組織障害に対する応答によって引き起こされるという案をもたらした(50)。同様にCao,et al.は、細胞ストレス、組織線維症、及び低下した増殖能力に関する証拠が存在した、老化したマウスの肝臓に関するマイクロアレイデータを報告した(51)。
【0118】
我々のモデルは、何故DNA代謝の欠陥による早老症が、多面発現的且つ断片的であるのかに関する説明も与える。このモデルの主な原理は、細胞毒性の損傷が老化を引き起こすということである。細胞毒性のDNA障害にはICL、DNA二本鎖切断修復及び転写阻害障害がある。臓器関連の代謝の違いは、臓器特異的な範囲の自然なDNA障害をもたらす。したがって、異なるDNA修復機構(ICL修復、二本鎖切断修復及び転写関連修復)は、各組織における老化を防ぐために多かれ少なかれ必須である。転写関連修復の欠陥は神経症、例えばCS及び硫黄欠乏症育毛発育異常と主に関係がある。対照的に、二本鎖切断の非相同的末端接合部の遺伝的欠陥があるマウスでは、中枢神経系ではなく表皮が影響を受ける(52)。
【0119】
要約すると我々は、DNAICLに対する高感度をもたらすXpf又はErcc1の突然変異の結果である新奇の早老症を、人間及びマウスにおいて同定している。マイクロアレイ及び免疫組織化学法のデータは、DNA損傷に対する細胞毒性応答及び後の組織再生能力の消失の結果としての、老化の機構を支持する。老年野生型マウスの肝臓の遺伝子プロファイリングは、Ercc1−/−マウスから得たプロファイリングとの有意な重複を生み出し、この機構は自然な哺乳動物の老化に適用することができ、介入の機会を与え得ることを示した。したがってこれらのマウスモデルは、本発明による化合物のスクリーニング法において、且つ以下の実施例4に例示したように使用するのに非常に適している。
【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
【表5】


【0124】
実施例1の参照文献:
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【実施例2】
【0125】
DNA修復欠陥マウスにおける生後初期のIGF−1/GH−Rシグナルの低下。
本出願中に述べるように、Xpanull/null/CsbG744ter/G744terマウス(この実施例中では以後Xpa−/−/Csb−/−マウスと呼ぶ)は、これらの遺伝子の1回突然変異と対照的に、生後初期の発育中に重度の成長遅延、脊柱後弯症、運動失調症、及び運動機能不全を示した[4]。我々はWt、Xpa−/−、Csb−/−及びXpa−/−/Csb−/−15日齢マウスの肝臓において機能的ゲノム分析を施用して、根底の分子経路を洞察した。(各遺伝子型の)4つの個々のマウスの肝臓からの全RNAの単離、及びAffymetrixの完全なマウスゲノムアレイ(Affymetrix Aバージョン2.0)とのその後のハイブリダイゼーション後、我々の分析は、重要なことに同腹子対照ではなくXpa−/−/Csb−/−マウスにおいて、IGF−1/GH−R成長シグナル(Gh−r、IGF−1、IGFBP3、IGFBP4)並びに乳腺刺激(PrR)及び甲状腺刺激機能(Dio1及びDio2)と関係がある遺伝子の有意な下方制御を明らかにした(図7)。この顕著な低下は、抗酸化防御応答と関係がある幾つかの遺伝子(Gstt3、Gsr、Sod1、Hmox1、Ephox1)の有意な高発現(図1)、並びにシトクロムP450及びNADPH酸化代謝と関係がある遺伝子の有意な低発現(図7)をさらに伴った。本明細書に示す幾つかの有意に制御された遺伝子の中で、成長ホルモン受容体(Gh−R)、インスリン成長因子1(IGF−1)、IGF結合タンパク質3(IGFBP3)、プロラクチン受容体(PrR)、グルタチオンsトランスフェラーゼ(GSTT3)、ヘメオキシゲナーゼ1(Hmox1)、エポキシドヒドロラーゼ1(Ephox1)及びアポリポタンパク質A4(ApoA4)の発現プロファイルを、リアル−タイムPCRによる検証に施用した(図8)。
【0126】
GH/IGF−1シグナルは進行する老化と共に低下することが知られており、ストレス耐性を増大させ、年齢依存性の機能低下を遅らせ、且つ線虫、ハエ及びマウスの寿命を増大させることが示されてきている[5]。興味深いことに、マウスの老化を遅らせるさまざまな遺伝モデルの中で、4つが下垂体内分泌作用の欠陥と関係がある。突然変異体Prop1df[6]及びPit1dwは下垂体における成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及びプロラクチンの生成を妨げ;成長率及び成体の身体の大きさを減少させ、且つ成体の寿命を40〜60%増大させる[7,8]。同様の寿命の改善がある小さな成体は、成長ホルモン受容体のノックアウト(GHR−KO)によっても生成する[9]。GHなしでは、肝臓中での増大した感度の結果として、循環IGF−1及び血漿インスリンの合成も抑制される[10]。哺乳動物の老化の制御におけるIGF−1シグナルの直接的役割に関する強力な証拠が、突然変異マウスによってIFG−1受容体Igf1rに関して与えられた[11]。Igf1r+/突然変異メスマウスは最小限の成長の低下を示すが、性的成熟の年齢、生殖能力、代謝、食物摂取、又は温度の変化は示さない。重要なことに、本明細書中に記載した観察した寿命の延長は、増大した酸化ストレス耐性とも関係があった。これらの発見の生理的関連は、成長ホルモン(Gh)及びインスリン様成長因子I(IGF−1)が、ヒト及びマウスでは進行する老化と共に減少するという事実によって明らかに示される[12、13]。
【0127】
DNA代謝におけるROSの有害な影響にもかかわらず、フリーラジカルは、成長因子シグナル形質導入などの適合性に利点を与える重要な生理プロセスにも関与している[14]。したがって細胞は、ROSの有害な影響に対して最適なエネルギー生成を保つはずである。このわずかなトレードオフは、増大した寿命を有するさまざまなホルモン欠陥マウス突然変異体、並びに成長、甲状腺刺激及び乳腺刺激プロセスと関係がある遺伝子の発現の年齢依存性の付随的低下によって強調される。
【0128】
Xpa−/−/Csb−/−マウスは完全NER欠陥マウスであり、寿命の後期段階に通常存在する事象である内因性DNA損傷がしたがって過度に生じる。低下したGH/IGF1シグナル(及び図1に記載した残りの同化ホルモン)は、抗酸化応答を同時に増大させようと試みながら、活動的に続く代謝、正常状態が優勢になるまでのその後の成長からの有害な影響を最小にするための適合応答をしたがって反映する可能性がある。それにもかかわらず、非常に早期に行うことによって、全体的な生物の恒常性は容易に乱れる。結果としてXpa−/−/Csb−/−マウスは重度の成長欠陥に苦しみ、最終的には死ぬ。
【0129】
ここで我々のデータは、DNA損傷は観察したホルモン応答の主な要因であることを実証し、哺乳動物において、老化関連のGH/IGF−1成長シグナルの低下は、内因性のDNA損傷の連続的な蓄積に対する適合応答を含む可能性があることを示唆する。さらに、分子及び生物レベルでのXpa−/−/Csb−/−マウスの顕著な加速的老化の特性のために、Xpa−/−/Csb−/−マウスモデルは、老化の分子学的基盤をさらに探求するための、非常に貴重なツールであることを証明することができる。これらのマウスモデル、及び特に同定した異なる発現をした転写産物/遺伝子は、したがって本発明による化合物のスクリーニング法において、且つ以下の実施例4に例示したように使用するのに非常に適している。
【0130】
実施例2の参照文献:
1.J.H.Hoeijmakers,Nature411,366(2001).
2.de Boer J,Hoeijmakers,JH.Carcinogenesis21,453-60(2000).
3.G.J.Lithgow and M.S.Gill,Nature421,125(2003).
4.Machiko Murai,Yasushi Enokido,Naoko Inamura,Masafumi Yoshino,Yoshimichi Nakatsu,Gijsbertus T.J.van der Horst,Jan H.J.Hoeijmakers,Kiyoji Tanaka,and Hiroshi Hatanaka.PNAS,98:13379-13384(2001).
5.Tatar M,Bartke A,Antebi A.Science299,1346-51(2003).
6.F.Muller,Ames Dwarf Mice.Science's SAGE KE 2001,tg11(3 October 2001),http://sageke.sciencemag.org/cgi/content/full/sageke;2001/1/tg11.
7.H.M.Brown-Borg,K.E.Borg,C.J.Meliska,A.Bartke,Nature384,33(1996).
8.K.Flurkey,J.Papaconstantinou,R.A.Miller,D.E.Harrison,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.98,6736(2001).
9.K.T.Coschigano,D.Clemmons,L.L.Bellush,J.J.Kopchick,Endocrinology 141,2608(2000)
10.F.P.Dominici,S.J.Hauck,D.P.Argentino,A.Bartke,D.Turyn,J.Endocrinol.173,81(2002)
11.M.Holzenberger,et al.,Nature421,182(2003)
12.Strasburger CJ,Bidlingmaier M,Wu Z,Morrison KM.Horm Res,55 Suppl 2:100-5(2001).
13.Longo VD,Finch CE.Science,299:1342-6(2003).
14.T.Finkei,IUBMB Life52,3(2001)
【実施例3】
【0131】
他の加速的老化の特徴の確認によって、正常な老化プロセスのGM突然変異マウスを示した。
DNA修復障害であるコケイン症候群(CS)は、関連障害である色素性乾皮症(XP)において見られない広範囲の神経異常を含む。網膜症はこれらの特徴の1つであり、定量式に特異的な老化関連状態の発症を研究するための貴重なモデル器官である。CSの目に関する病状は、この疾患の特徴であると考えられる。CSマウスによって示される網膜変性の現象は、正常に老化する個体群中で生じる老化関連の黄斑変性を暗示し、老人のこの疾患に関する貴重なモデルである可能性がある。類似の戦略を哺乳動物における他の老化関連パラメータに実施することができる。
【0132】
DNA修復及びゲノム維持は、以下に示すように、内因性酸化ストレスと可視光及びUV放射線の両方に曝される光受容体細胞の生存に必要不可欠である。さまざまな年齢のCsbm/mマウスの網膜を分析し、XPのマウスモデルの網膜と比較した。Csb欠陥(CsbG744ter/G744ter;TCR欠陥)及びXpa欠陥マウス(Xpanull/null;GG−NER欠陥とTC−NER欠陥の両方)、並びに対照マウスは、いずれもC57Bl/6遺伝的背景で、網膜中の光受容体細胞の消失を示す。3カ月齢において、遺伝子型間の差異は示されなかったが、老年Csbm/mマウスでは、ONL及び外側セグメント層は野生型マウスより明らかに薄かった(図10A)。ONL核の数の定量化は、光受容体細胞の数はCsbm/mマウスにおいて年齢と共に徐々に減少したことを示したが、一方で野生型マウスは細胞の消失を示さなかった(図10B)。この消失は老化依存的である。Csb欠陥マウスは正常数の光受容体を有して生まれるが、野生型C67Bl6/Jマウスと比較して、これは5ヵ月後に10%、12ヵ月後に50%まで減少する。Xpa欠陥マウスでは、野生型マウスと比較して、減少はさらに遅く、9カ月では著しい消失はなく、18カ月で15%消失し、30カ月で40%消失する。Xpa欠陥マウスにおける細胞消失の後期発症は、ヒト被験体におけるXPA欠陥に典型的な神経変性を示す。細胞の消失は、アポトーシスのTUNELアッセイによって、3及び11.5カ月齢のマウスの網膜の水平方向切片に関してさらに分析した。野生型マウスでは、如何なるTUNEL陽性プロファイルもほとんど検出しなかった。Csbm/mマウスでは、明らかにより陽性である細胞を観察した。これらはほぼ全てがONLに位置したが(図10C)、中央及び末梢網膜に存在する明らかな領域特異性は示さなかった。
【0133】
推定では:異なる速度に従うCsb及びXpa欠陥マウスにおいて観察したDNA損傷関連の網膜変性のシナリオは、正常な老化及び老人においてさらに遅いペースで起こる、黄斑変性のプロセスとも関連がある。したがってこの実施例は、ヒトにおける正常な老化のプロセスを理解し影響測定するためのツールとしての、GMマウスモデルにおける加速的老化の意義及び妥当性を例示し実証する。
【0134】
ほぼ同様の発見を、正常マウスの突然変異体と比較したTTDマウスにおける、骨粗しょう症(詳細に関しては、実施例8を参照)及び脊柱後弯症のプロセス、及びカヘキシーの発症を研究した本発明者によって得た。同じことが、野生型対照マウスと比較したとき、メスTTDマウスにおいて観察した不妊症の初期発症にも当てはまる。全ての前述の老化関連の表現型は、本発明による化合物の試験法において適切に施用することができる。化合物、並びにこれらの表現型、症状及び障害に関する医薬的介入の戦略は、これらのマウス、遺伝的に改変したマウスを化合物又は組成物で治療して、或いはそれらに曝して、例えば網膜症及び光受容体細胞の消失に対するそれらの影響を測定することによって開発することができる。
【実施例4】
【0135】
NER欠陥マウスにおける化合物の試験:表現型に関する、抗酸化剤のCsbG744ter/G744ter/Xpanull/null二重突然変異マウスに対する影響。
この実施例は、NER/TCR経路の突然変異を示すマウスにおいて、ゲノム維持誘導型症状、特に老化関連症状を阻害する、予防する且つ/或いは遅延させることができる化合物をスクリーニングするための実験設定を示し、それによって本発明による化合物のスクリーニング法の有用性を例示する。
【0136】
この実施例で使用したマウスモデルは、GG−NER及びTC−NERの欠陥(XPA−/−)並びに一般にTCRの欠陥(CSB−/−)を示す、CSB−/−/XPA−/−(CsbG744ter/G744ter/Xpanull/nullの二重ノックアウト)マウスモデルであった。CSB−/−マウスは軽度老化の表現型、網膜における早期の光受容体の消失を示し(実施例3)、一方XPAマウスは強い癌素因とは別に完全にNERに欠陥があり、若干短い寿命によってそれらを野生型マウスと区別するための明らかな表現型は示さない。しかしながら、2つのマウスモデルの交配は、CSB−/−/XPA−/−(二重突然変異)マウスはメンデル頻度未満で生まれ、成長阻害、脊柱後弯症、運動失調、カヘキシー、骨粗しょう症を示し、一般に生後3週間で死ぬことを実証する。さらにこれらの動物には、高い光受容体細胞の消失がある。生前及び生後直後の酸化によるDNA損傷の蓄積は、おそらく転写に悪影響を与え、早期老化の表現型を引き起こす。
【0137】
CSB/XPA二重ノックアウトマウスに対するラジカルスカベンジャーの影響を調べるために、幾つかの化合物及び組成物の影響を、CSA/XPAdKOマウスの頻度(25%の予想メンデル頻度に近い)、延長した寿命(未処理dKOマウスの平均3週間より長い)、及び早期老化の表現型発現の遅延又はある程度の阻害によって調べた。
【0138】
CSB/XPA二重突然変異マウスを得るために、以下の交配を行った:
(M)CSB−/−XPA+/−×(F)CSB−/−XPA+/− (M)CSB−/−XPA+/−×(F)CSB+/−XPA−/−
(M)CSB+/−XPA−/−×(F)CSB+/−XPA−/−
(M)CSB+/−XPA−/−×(F)CSB−/−XPA−/−
【0139】
これらの交配から、9%の頻度でCSB−/−XPA−/−マウスが生まれた、一方で予想メンデル頻度は25%である。
【0140】
16匹の妊娠したメスに、背中の皮膚に浸透圧ポンプ、7×30mmを皮下に植え込み、リン酸緩衝生理食塩水(対照)又は5%D−マンニトールを溶かしたリン酸緩衝生理食塩水を連続的に放出させた。通常の手順に従い(尾部の切断、及びサザンブロット分析又はPCR増幅によるゲノムDNA分析)、その子孫の遺伝子型を決定し、寿命を調べた。
【0141】
図9A及び9Bは、ヒドロキシルスカベンジャーD−マンニトールで処理した後のXPA/CSB二重ノックアウトマウスの誕生の頻度の増大(実験1)、及び誕生後の生存期間(寿命)の増大をそれぞれ示す。2%D−マンニトールを飲料水に投与した実験において、比較可能な結果を得た。他のスカベンジャー:プロリンを用いても比較可能な結果が得られ、プロリンは生後のdKO子孫の生存頻度を増大させる際に同様に有効であった。
【0142】
したがってマンニトール及びプロリンは、老化及び/又はゲノム維持障害の結果を治療するための医薬品を製造するために使用することができる。さらにマンニトール又はプロリンは、(移植)器官及び組織の虚血、及び再灌流障害の結果を治療するための医薬品を製造するために使用することができる。医薬品は、高レベルのマンニトール、プロリン及び他の抗酸化剤又はラジカルスカベンジャーを含む食品組成物も含むことができる。
【0143】
この実験は本発明による化合物のスクリーニング法の使用を例示し、この方法は、NER遺伝子の突然変異を含み損なわれたゲノム維持能力を有し、好ましくは早期老化の表現型発現をもたらす動物モデルを使用し、早期老化の表現型発現を阻害する、予防する或いは遅延させることができる化合物を明確に同定する。
【実施例5】
【0144】
条件付きXpaconditional/null突然変異マウスの作製。
実施例2は、肝臓のトランスクリプトーム解析を含めたCsbm/mXpa−/−マウスモデルの詳細な表現型の特徴付けを記載し、どのようにDNA修復の欠陥がIGF/GH軸に影響を与え、自然な老化中にも生じる全身応答を誘導するかに関する所与の新しい洞察を有する。これらの動物は、化合物を迅速にスクリーニングするのに優れたモデルとなる。同時に、1つの特定組織中の遺伝子をノックアウトすることによって、老化関連の組織の病状に対する化合物の影響を研究することが可能となる。ここで我々は、Xpa遺伝子の(Cre−リコンビナーゼ仲介型)組織及び時間特異的不活性化を可能にする、条件付きXpaマウスの作製を記載する。組織特異的及び/又は時間依存形式でXpa遺伝子をノックアウトするために、エクソン4をマウスcDNA(合成ポリA配列を含む)、次にヒグロマイシン(HYGRO)選択可能マーカー(図11A)と融合させた、標的構築体を我々は作製している(図11A)。LoxP部位をエクソン3及びHygroマーカーの下流に導入して、cDNA及び選択可能マーカーのCre仲介型切除を可能にし、最終的にエクソン4を欠くXpa対立遺伝子が生じた。条件付きXpa対立遺伝子の不活性化を目に見える状態にするために、我々はLacZ−GFP融合マーカー遺伝子を、スプライス受容体(SA)及びリボソーム内部進入配列(IRES)の前に挿入して、マーカーの転写及び翻訳を可能にした。3リーディングフレームに停止コドンを含みSAとIRESの間に位置した、多数のリーディングフレーム挿入配列(Murfi)は、Hygroマーカー遺伝子からの考えられる読み過ごし転写産物の任意の翻訳を妨げる。
【0145】
最初に我々は、条件付きXpa構築体でXpaノックアウトES細胞をトランスフェクトし、20%の標的化頻度で1個のノックアウト及び1個の標的化対立遺伝子を有するESクローンを得た(図11B)。Xpa−/−ES細胞はUVに対して非常に感度が高く、図11Cに示すように、ノックアウト対立遺伝子と条件付きXpa対立遺伝子を交換することによって、野生型(wt)レベルまでUV感度を取り戻すことができ、XPA条件付き構築体の機能性が明らかになる。次に我々は、Cre−リコンビナーゼを含むプラスミドでXpac/+ES細胞をトランスフェクトした。個々のクローンのサザンブロット分析によって、Creリコンビナーゼは囲んだXpa配列を切除することができたことが明らかになった(図11D)。最後に我々は、条件付きXpa構築体でES系IB10をトランスフェクトし、異型Xpac/+ES細胞を17%の頻度で得た(図11E)。染色体異常及び他のランダムな組込みを排除した後(データ示さず)、2つの異なるXpac/+ES細胞クローンを胚盤胞注入用に使用した。生殖系の遺伝を両方のクローンに関して得た。キメラ型のオスとC57BL/6メスマウスの間の交配からの異型の子孫(Xpac/+)は、他の交配用に使用した。
【0146】
我々はXpac/−マウスと、受胎直後にCreリコンビナーゼを発現するCagCreマウス系を交配させた(1)。E10.5及びE13.5胚由来のDNAのサザンブロット分析によって、Cre−リコンビナーゼが囲んだXpaDNAを効率良く認識し切除したことが明らかになった(図12A)。Creリコンビナーゼが囲んだXPADNAを切除するとき、我々はLacZマーカーの発現を検出することができるはずである。単離したXpacr/c、Xpacr/cr、Xpac/−及びXpa+/−胚にLacZ染色を施した。予想通り、Xpacr/c胚とXpacr/cr胚の両方がLacZ染色を示し、一方Xpac/−胚とXpa+/−胚の両方は示さなかった(図12C)。しかしながら、発現が非常に高かったわけではないことを記さなければならない。しかしながら、LacZはXPA遺伝子の内因性プロモーターの下で発現され、XPA自体は通常非常に高く発現されるわけではないので(2)、我々は発現が非常に高いことは予想しなかった。これらの結果は、Creリコンビナーゼは囲んだXPADNA片を組換えることができ、その後LacZマーカーが発現されることを示す。
【0147】
多数回の交配後にCsbm/mXpac/−動物が生成するように、我々はCsb+/mXpa+/−とXpac/+を交配させた(図12A)。Csbm/mXpa−/−マウスと対照的に、これらの動物は生命力があり正常に発育し、如何なる異常な表現型も有していなかった。最高齢のCsbm/mXpac/−マウスは現在121週齢である。これらの結果は、XPA条件付き構築体はインビボでも機能的であることを証明する。前に記載したのと同様の比較可能な交配から、我々は野生型及びXpacr/−ES胚盤胞を単離した。共焦点顕微鏡を使用することによってさえ、我々は野生型レベルを超える如何なるGFPシグナルも検出することができなかった(データ示さず)。さらに我々は、13.5日胚から3つの別個の野生型及びXpacr/−MEF細胞系を単離した。これらのMEFをFAKS分析に施し、ここでも我々は、GFPシグナルを検出することができなかった(データ示さず)。我々はLacZ染色を同じ細胞系に実施し、これによってXPA条件付き対立遺伝子の完全な組換え体が存在したが、我々は約10%のLacZ陽性細胞のみを検出することができたことを示した(図12D)。これらの結果はまとめて、LacZGFP融合マーカーの発現はあったが、非常に高いレベルではなく、したがって検出するのが困難であることを示す。
【0148】
Xpacr/−はUVに対して敏感であるはずである、何故ならそれらはXPAがノックアウトされているからである。3つの別個のXpacr/−MEF系は、3つの別個の野生型MEF系と比較するとUVに対して非常に敏感であったことが示された(図12E)。Xpacr/−細胞の感度のレベルは、Xpa−/−MEFに関して前に示したUV感度と同等である。
【0149】
最終的な、最も重要な確認事項の1つは、組換え対立遺伝子はマウスにおいて機能的なノックアウト表現型をもたらすかどうか判定することであった。Xpacr/−マウスをCSB欠陥背景に交配することによって、我々はこのことを試験した。実施例2で述べたように、Csbm/mXpa−/−マウスは小型であり、成長せず、3週間以内に死ぬ。Csbm/mXpacr/−動物は全く同じ表現型を有するはずである。遺伝子型を決定することによって、我々は各CSB欠陥動物のXPA状態を確認した(図13A)。予想通り、Csbm/mXpacr/−動物はCsbm/mXpa−/−動物と全く同じ表現型を有していた(図13B)。我々は体重を記録し、遺伝子歩行パターンを分析し、それらの寿命を測定した。これらの態様のそれぞれにおいて、Csbm/mXpacr/−マウスは前に観察したCsbm/mXpa−/−マウスと同じであり(データ示さず)、組換えXPA対立遺伝子はインビボで機能的なXPAノックアウト対立遺伝子をもたらすことを証明する。
【0150】
実施例5の参照文献:
1.Sakai,K.and J.Miyazaki(1997)."A transgenic mouse line that retains Cre recombinase activity in mature oocytes irrespective of the cre transgene transmission."Biochem Biophys Res Commun237(2):318-24.
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【実施例6】
【0151】
脳特異的条件付きCsbG744ter/G744ter/Xpanull/null二重突然変異マウスの神経の表現型。
実施例5に示したのと同様に、我々は条件付きXPAマウスを作製した。このマウスと適切なCre−リコンビナーゼマウスを組み合わせることによって、我々は時間依存形式及び組織特異形式でXPA遺伝子をノックアウトすることができる。以前にMuraiと同僚は、これらの動物において観察した運動失調と一致する小脳中の増大したアポトーシスを観察している。さらに、我々の15日齢Csbm/mXpac/−肝臓のトランスクリプトーム解析によって、非常に似た老化状態の視床下部を含むIGF−1/GHR軸を含めた、全身応答が明らかになった。さらに我々は、これらの動物の網膜中の増大したアポトーシスを発見している。したがって、脳は研究するための完璧な候補組織である。
【0152】
我々は(S.Zeitlinによる)CamKIIa−Creリコンビナーゼを発現するマウスを使用した。このCre−リコンビナーゼはCamKIIaプロモーターの制御下にあり、我々が得たトランスジェニック系、L7ag#13は成体の脳全体で、あらゆる前脳構造において高レベルで、小脳において程度なレベルでCre−リコンビナーゼを発現した(1)。最高レベルの組換えを生後5日で検出した。我々はこれらのCreリコンビナーゼ動物とCsbm/m及びXpac/−動物を交配させて、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物を得た。我々はこれらの動物、並びに野生型、Csbm/m及びXpac/−CamKIICre同腹子を毎月体重測定した。最初は、動物は正常な大きさ及び体重であった(図14A)。しかしながら6カ月齢で、対照同腹子と比較したCsbm/mXpac/−CamKIICre動物間の体重の違いに我々は最初に気付き、これは8カ月齢後にさらに明らかになった(図14B)。Csbm/m動物に関しては、それらの体重は13週齢で始まり野生型動物より軽いことが知られている。さらに、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物の体重は、8カ月齢を超えるCsbm/m動物の体重よりさらに軽かった。最初に我々は、前にCsbm/mXpa−/−マウスに行ったのと同様のフットプリント分析をさらに行ったが、これらが明白な異常を明らかにすることはなかった。しかしながら我々は、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物の処理中に、それらが不安様挙動を示したことを観察している。これをさらに調べるために、我々はこれらの動物を30分間開放された場所で、野生型、Csbm/m及びXpac/−CamKIICre同腹子、3及び6カ月齢、n=6と共に試験した。開放された場所中での30分後にコンピュータによって誘導される運動性プロットは、Csbm/mXpac/−CamKIICreは中央ではあまり運動しないことを既に明らかに示す。我々は、中央で費やした距離を全体の距離で割ることによって不安率(AR)を計算した。運動時間は各マウスに関して同じであった。低いARは不安様挙動を示す。Csbm/mXpac/−CamKIICre動物のARは、3カ月齢で対照群のARよりはるかに低く(p<0.05)、6カ月齢でさらに低くなった(p<0.001)(図14C)。これは実際、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物が不安様挙動を示し、経時的に悪くなったことを示す。この不安様表現型と脳の特定領域を関連付けるために、我々は野生型、Csbm/m、Xpac/−CamKIICre及びCsbm/mXpac/−CamKIICre動物の脳をLacZで染色した、何故ならLacZマーカーはXPA遺伝子の組換え後に発現されるからである。予想通り我々は、Xpac/−CamKIICre及びCsbm/mXpac/−CamKIICre動物の脳の染色のみを観察し(図14D)、野生型及びCsbm/m動物の脳の染色は観察しなかった(データ示さず)。この染色は、海馬の近くに位置し不安様挙動において役割を有する外側中隔(LS)のみに限られていた。さらに、染色はCsbm/mXpac/−CamKIICre動物中では少なかったようであり、LSは細胞が消失したかの如く非常に不規則であった。
【0153】
我々は開放された場所での試験を50〜60週齢で繰り返し、ARは大部分のCsbm/mXpac/−CamKIICre動物に関して予想通り依然として低かった(データ示さず)。しかしながら、3匹の最高齢Csbm/mXpac/−CamKIICre動物(約15カ月)は、低下した全体の運動性及び発作に似た挙動を示した。さらにより顕著なことに、それはをプリアピズムを有していたようであり(図14E)、これらの動物の最大寿命は約16カ月に低下した。現在我々は、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物を経時的に追跡しており、異常な挙動及び寿命を記録している。
【0154】
実施例6の参照文献:
1.Dragatsis,I.and S.Zeitlin(2000)."CaMKIIalpha-Cre transgene expression and recombination patterns in the mouse brain."Genesis26(2):133-5.
【実施例7】
【0155】
加速的な骨の老化のモデルとしてのTTDマウスの有効性。
ヒト個体群における老化関連の骨の消失は充分に文書化されている。閉経後の女性では、多数の破骨細胞及びその活性による主要柱骨の加速的消失に、ゆっくりとした連続的な骨消失期が続き、その最中に柱骨の密度が低下し、皮質骨が細くなり、高い骨折の危険をもたらす(1−3)。男性においても、老化関連の骨の消失は存在するがそれほど顕著ではない、何故なら女性における急速な骨の消失の原因であるエストロゲンレベルの低下がないからである。さらに、男性にはより顕著な骨膜付着、即ち骨の外側(骨膜)での骨形成がある(4)。
【0156】
硫黄欠乏症育毛発育異常(TTD)は、稀な常染色体劣性のDNA修復障害であり、その患者は光過敏症、魚鱗癬、脆い毛及び爪、知的障害、低下した生殖能力、低い身長、老化した外見及び短い寿命を含めた一連の症状を示す(5−7)。さらに、軸骨格及び近位肢のオステオペニア及び骨硬化症、並びにさらに軸及び頭蓋骨硬化症、及び遠位骨中の脱塩のような骨格異常が記載されてきている(6,8−15)。我々は、光過敏症のTTD患者(TTD1Bel)のXPD遺伝子において同定した、原因となる点突然変異を模倣したマウスモデルを作製した(16)。以前の文献は、TTDマウスの表現型は、骨格変化のような早期老化の特徴の存在を含めて、患者の症状と非常に似ていることを示している(17)。完全NER欠陥XPAマウス(それ自体は早期老化の特徴を示さない)と交配させると、TTDマウスの早期老化の特徴は劇的に増大する。
【0157】
我々はオス及びメス野生型マウス並びに早期老化TTDマウスにおける老化による骨の変化を研究して、老化関連の骨格変化のプロセスを洞察して、本明細書のDNA修復/基本転写の有意性を評価した。この徹底的な分析は、TTDマウスモデルは骨粗しょう症を研究するのに非常に優れたモデルであることを示した。
【0158】
最初に、メス野生型マウスにおける皮質骨分析は、年齢による3D厚分布の進行的な低下を明らかにした。同様に、オス野生型マウスは年齢による3D厚分布の低下を示した。既に52週齢でTTDメスは、野生型のメスのみが91週齢で達したレベルに達した。52週齢で、TTDオスの脛骨は91週齢の野生型のオスの脛骨よりさらに薄くなっていた。したがって皮質の薄化は、野生型マウスよりもTTDマウスにおいて早く起こる(図15)。
【0159】
第2に、野生型のメスでは骨幹の骨体積は年齢と共に徐々に減少し、26週齢の野生型のメスと比較すると104週齢でのみ有意に達する。TTDメスでは、39週後に骨体積が急速に減少し、年齢が一致する野生型マウスより有意に低下する。既に52週齢で、TTDメスは91及び104週齢の野生型のメスと同様の骨体積に達した。骨体積と共に、野生型のメスの脛骨はその皮質厚を78週齢まで維持しその後減少を示したが、一方TTDメスの脛骨は39週齢後に皮質厚の急速な低下を既に示した。オスの野生型マウスにおける骨体積は、39週齢後に明らかな低下を示した。52週から先、野生型のオスにおいて骨体積は安定状態であった。メスとは異なり、野生型のオスは老化による皮質厚の有意な減少を示さなかった。野生型動物と同様に、皮質厚は年齢が一致するTTDメスよりも26及び39週齢のTTDオスにおいて減少した。老化と共に、TTDオスは類似した骨体積の型を示し、皮質厚は野生型のオスと同様に変化するが、ただし78週齢で野生型より有意に低い値を有する(図16A〜D)。
【0160】
第3に野生型のメスは、26週齢のメスと比較して91及び104週齢で有意に達する骨周囲の進行的な増大を生存期間中示した。対照的に、TTDメスにはこの骨周囲の増大がなく、全ての年齢で一定の骨周囲を示した。39週後、野生型とTTDオスの両方で骨周囲が減少したが、野生型のオスのみが老年で骨周囲の増大を示した(図16E及びF)。
【0161】
まとめて考えると、TTDマウスは骨粗しょう症を予防することができる化合物を研究するための貴重なマウスモデルである。さらに、TTD/XPA二重突然変異体は加速的TTDの表現型を有するので、TTDマウスにおけるXPA遺伝子の骨特異的欠陥は加速的骨粗しょう症をもたらすと思われ、これは化学的介入によって予防することができる。この目的のために、我々はXPA条件付きマウス(XPAc)モデルを作製している(詳細に関しては、実施例6を参照)。これと組織特異的Creリコンビナーゼマウスを交配することによって、我々は当該の我々の組織中のXPA遺伝子をノックアウトすることができ、その後LaczGFPマーカーが発現して組換えが起こったことを示す。TTD/XPAcマウスにおける加速的骨粗しょう症を研究するために、我々はそれらを、CreがコラーゲンIa1プロモーター(18)の制御下にある骨芽細胞特異的Creマウス、又はCreがカテプシンKプロモーター(19)の制御下にある破骨細胞特異的Creマウスのいずれかと交配させる。さらに我々は、Col2a1プロモーター(20)の制御下にあり軟骨及び脂肪特異的Creマウス中で発現される軟骨細胞特異的Cre、及びaP2プロモーター(21)の制御下にあり白色及び茶色脂肪組織中で発現されるCreを使用するつもりである。全体としてこれらのマウスモデルは、我々が骨粗しょう症の機構をさらに洞察するのを手助けすると思われ、骨粗しょう症用薬剤のより迅速なスクリーニング法をもたらすはずである。
【0162】
実施例6の参照文献:
1.Riggs,B.L.,S.Khosla,and L.J.Melton,3rd,Sex steroids and the construction and conservation of the adult skeleton.Endocr Rev,2002.23(3):p.279-302.
2.Seeman,E.,Pathogenesis of bone fragility in women and men.Lancet,2002.359(9320):p.1841-50.
3.Kawaguchi,H.,et al.,Independent impairment of osteoblast and osteoclast differentiation in klotho mouse exhibiting low-turnover osteopenia.J Clin Invest,1999.104(3):p.229-37.
4.Seeman,E.,During aging,men lose less bone than women because they gain more periosteal bone,not because they resorb less endosteal bone.Calcif Tissue Int,2001.69(4):p.205-8.
5.Bootsma,D.,et al.,Nucleotide excision repair syndromes:xeroderma pigmentosum,Cockayne syndrome and trichothiodystrophy,in The genetic basis of human cancer,B.Vogelstein and K.W.Kinzler,Editors.1998,McGraw-Hill:New York.p.245-74.
6.Itin,P.H.,A.Sarasin,and M.R.Pittelkow,Trichothiodystrophy:update on the sulfur-deficient brittle hair syndromes.J Am Acad Dermatol,2001.44(6):p.891-920; quiz 921-4.
7.Botta,E.,et al.,Analysis of mutations in the XPD gene in Italian patients with trichothiodystrophy:site of mutation correlates with repair deficiency,but gene dosage appears to determine clinical severity.Am J Hum Genet,1998.63(4):p.1036-48.
8.Wakeling,E.L.,et al.,Central osteosclerosis with trichothiodystrophy.Pediatr Radiol,2004.34(7):p.541-6.
9.Toelle,S.P.,E.Valsangiacomo,and E.Boltshauser,Trichothiodystrophy with severe cardiac and neurological involvement in two sisters.Eur J Pediatr,2001.160(12):p.728-31.
10.Kousseff,B.G.and N.B.Esterly,Trichothiodystrophy,IBIDS syndrome or Tay syndrome? Birth Defects Orig Artic Ser,1988.24(2):p.169-81.
11.Przedborski,S.,et al.,Trichothiodystrophy,mental retardation,short stature,ataxia,and gonadal dysfunction in three Moroccan siblings.Am J Med Genet,1990.35(4):p.566-73.
12.Civitelli,R.,et al.,Central osteosclerosis with ectodermal dysplasia:clinical,laboratory,radiologic,and histopathologic characterization with review of the literature.J Bone Miner Res,1989.4(6):p.863-75.
13.Chapman,S.,The trichothiodystrophy syndrome of Pollitt.Pediatr Radiol,1988.18(2):p.154-6.
14.Price,V.H.,et al.,Trichothiodystrophy:sulfur-deficient brittle hair as a marker for a neuroectodermal symptom complex.Arch Dermatol,1980.116(12):p.1375-84.
15.McCuaig,C.,et al.,Trichothiodystrophy associated with photosensitivity,gonadal failure,and striking osteosclerosis.J Am Acad Dermatol,1993.28(5Pt2):p.820-6.
16.de Boer,J.,et al.,A mouse model for the basal transcription/DNA repair syndrome trichothiodystrophy.Mol Cell,1998.1(7):p.981-90.
17.de Boer,J.,et al.,Premature aging in mice deficient in DNA repair and transcription.Science,2002.296(5571):p.1276-9.
18.Castro,C.H.,J.P.Stains,et al.(2003)."Development of mice with osteoblast-specific connexin43 gene deletion." Cell Commun Adhes10(4-6):445-50.
19.Chiu,W.S.,J.F.McManus,et al.(2004)."Transgenic mice that express Cre recombinase in osteoclasts."Genesis39(3):178-85.
20.Ovchinnikov,D.A.,J.M.Deng,et al.(2000)."Col2a1-directed expression of Cre recombinase in differentiating chondrocytes in transgenic mice."Genesis26(2):145-6.
21.Barlow,C.,M.Schroeder,et al.(1997)."Targeted expression of Cre recombinase to adipose tissue of transgenic mice directs adipose-specific excision of loxP-flanked gene segments."Nucleic Acids Res25(12):2543-5.
【実施例8】
【0163】
電離放射線に曝した後のCsbマウスにおける増大した光受容体の消失。
実施例3に示したように、Csbm/mマウスには老化関連の網膜中の光受容体細胞の消失がある。酸化によるDNA損傷がCsbm/mマウスにおける網膜変性と関係があるかどうかを調べるために、我々はCsbm/mマウスの網膜中の酸化によるDNA損傷を含めた、さまざまな型のDNA損傷を誘導することが知られているIR感度を試験した。
【0164】
我々は全身γ線照射を低線量(10Gy)で実施し、アポトーシスアッセイにより染色した切片中のアポトーシス細胞を計数することによって、その影響を測定した。Csbm/m及び野生型マウスの網膜中のアポトーシスに対する照射の影響は、表1中に要約する。野生型マウスの網膜中では、アポトーシスレベルは低く、照射後に有意な増大は認められなかった。Csbm/m動物の網膜中では、ONL及びINLのアポトーシスが照射によって増大し、Csbm/mマウスにおけるこれらの網膜細胞は電離放射線に過敏であることが示された。実施例3及び9中の発見は、Csbm/mマウスの網膜は、酸化によるDNA損傷の敏感な読み出しシステムであることを示す。これによって、電離放射線への露出あり及びなしのCsbm/mマウスの網膜中の光受容体の消失に対する、介入の影響を研究することが可能となる。実施例4で述べたように、CSB/XPA二重突然変異マウスには加速的な光受容体細胞の消失、早期老化の表現型があり、これはこれらのマウスの網膜が、早期老化の表現型の発現を予防するか或いは遅延させることができる介入の影響を研究するための、良いモデル器官となることを示す。
【0165】
【表6】

【実施例9】
【0166】
Csbm/m/Xpa−/−及びErcc1−/−突然変異マウスにおける加速的老化と自然な老化の類似性。
マウス突然変異体が老化に関する有効なモデルであるかどうかを示すためには、突然変異体と自然に老化したマウスによって共有される表現型の特徴を列挙し、或いはそうでなければ一組の老化特性を定義し、これらの幾つが突然変異マウスにおいても見られるかを決定しなければならないと提案されてきている(1)。非常に寿命が短いマウスは幾つかの老化関連の特徴を示すが、我々は完全なマウスゲノムに関する手法を実施して、自然に老化するマウスとのその関連性を偏見なく洞察しようと努めた:
【0167】
Csbm/m/Xpa−/−:マウスモデル
Csbm/m/Xpa−/−マウスの肝臓中の発現プロファイルの変化が、自然に老化したマウスにおける発現パターンと類似しているかどうか、且つどの程度類似しているかを調べるために、我々は増大又は低下した発現を有するとして、全ての有意な発現変化(これらのプローブセットは1865の遺伝子を表す)を分類した。我々は次に、16、96及び130週齢の野生型C57Bl/6マウス(n=4)及び8週齢の野生型C57Bl/6マウス(n=4)の完全なマウスゲノムのトランスクリプトームの比較から得たデータセットに対して、このデータセットを重み付けした。この手法は、Csbm/m/Xpa−/−マウス中と同じ方向に変化する16、96及び130週齢の野生型動物中の遺伝子の割合に直接比例する相関係数(ピアソンのr)を割り当てる。注目すべきことに、DNA修復突然変異マウスと16週齢のマウスの間の、類似性を確認することはできなかった(ピアソンのr=−0.26)。重要なことに、我々はCsbm/m/Xpa−/−と96週齢のマウスの間に正の相関関係を確認し(r=0.15)、130週齢の野生型マウス群との比較を行うと実質的にさらに顕著であった(r=0.40、図17の挿入図を参照)。重要なことに、これらの発見は、全てのAffymetrixプローブセット及び検出カットオフ値を超えるシグナルを含む全マウスのトランスクリプトームと同じ手法を我々が施用した時と等しく、したがって如何なる初期の事前選択又は偏見の導入も回避する。実際のデータセットにおいて見られるのと同程度確実にランダムな相関関係を観察する確率を計算することによって、Csbm/m/Xpa−/−マウスと96及び130週齢の野生型マウスの間で観察した類似性が、ランダムな事象であった可能性を排除した(フィッシャーの正確確率検定p≦0.015)。
【0168】
15日齢のCsbm/m/Xpa−/−と130週齢の野生型肝臓のトランスクリプトーム間の顕著な全体の類似性によって我々は、以前に確認した統計上有意なCsbm/m/Xpa−/−マウスの肝臓中の過剰に示される生物学的プロセスは、自然に老化したマウスによっても共有されていたかどうかを調べようと促された。この手法によって我々は、GH/IGF1軸、酸化代謝(即ち解糖、クレブス及び酸化的リン酸化)、シトクロムP450電子伝達及びペロキシソームの生物発生と関係がある遺伝子のトランスクリプトームプロファイルにおける寿命の短いDNA修復欠陥マウスと130週齢マウスの間の著しく高い類似性度を確認した(表1)。しかしながら重要なことに、成長軸と酸化代謝の両方の阻害が、96週齢マウス及びCsbm/m/Xpa−/−マウスのそれと比較して、130週齢マウスにおいて(同定した遺伝子の数の点で、補足表S4)さらに顕著であったが、一方16週齢マウスにおいてはほとんど見られなかった。2週齢Csbm/m/Xpa−/−マウスのゲノム全体のトランスクリプトームと、若年(8週)野生型動物ではなく老年(>90週)のそれの顕著な類似性、並びに転写応答の初期発生は、正常な老化の明白な地点とCsbm/m/Xpa−/−マウスモデルにおける早期老化を関連付けた。
【0169】
【表7】


【0170】
Ercc1−/−マウスモデル:
XFE患者(実施例1参照)及びErcc1−/−マウスモデルは異なる組織セットにおいて早期老化の明らかな徴候を示したが、我々は正常な老化との類似の程度を決定しようとした。Ercc1−/−マウスにおいて観察したゲノム全体の発現の変化は、生理的変化を確認するための広範囲の読み出し値を与え、正常な老化におけるゲノム全体の発現の変化と比較するための強力な基盤を提供する。初期のcDNA及びAffymetrixマイクロアレイ実験は、20日齢(非瀕死状態)Ercc1−/−マウスと2年齢野生型マウス(表2及び3)の転写応答の間の実質的な重複を指摘した。確認のため、及びAffymetrixの完全なマウスのトランスクリプトーム基盤でこれらの発見を広げるために、我々は最初に、野生型対照と比較して増大又は低下した発現変化を有するとして以前に同定した1675個の遺伝子のセットを分類し、4カ月齢及び2.7年齢のマウスの肝臓を2カ月齢の若年成体対照(n=4)の肝臓と対照したときに得た遺伝子と、それらの遺伝子を比較した。この手法は相関係数(ピアソンのr)を割り当て、これはErcc1−/−、4カ月齢及び2.7年齢マウスの間で発現の変化が同じ方向であった遺伝子の割合に比例した。特にこの分析は、Ercc1−/−マウスは4カ月齢のマウスではなく2.7年齢のマウスと顕著な相関度を共有することを明らかにし(ピアソンのr:0.32と0.03、p≦0.05)、年齢及び遺伝的背景の劇的な違いにもかかわらず、遺伝子発現の基本レベルでXPF−ERCC1の欠陥と自然な老化によって引き起こされる早老症間に、強い類似性が存在することを実証した(図18E)。さらに、Ercc1−/−の転写プロファイルと自然に老化したマウスの相関係数が、同じ手法をErcc1−/−マウスの肝臓において有意に過剰に示されたと前に確認した生物学的テーマに限定したとき(表4)、さらに一層顕著であり、ゲノム全体の発現の変化のレベルにおいてErcc1−/−の早老症と自然な老化プロセスの間で確認した応答の共通点を実証した。
【0171】
【表8】

【0172】
【表9】

【0173】
自然な老化とXFE早老症によって共有されるマイクロアレイ分析から予想した最も重要な生物学的応答を確認するために、我々は免疫検出を使用して、Ercc1−/−マウスの肝臓と若年(21日齢)野生型同腹子及び老化マウスの肝臓を比較した。IGFBP1のレベルは、21日齢Ercc1−/−及び老化マウスの肝臓において非常に増大した(図18F)。増殖細胞の割合は、Ercc1−/−マウスの肝臓と同様に、若年野生型マウスと比較して老化した野生型マウスの肝臓において劇的に減少した(図18B)。老化した肝臓の特徴である(2)肝細胞及び多倍数性の核は、Ercc1−/−と老化マウスの肝臓の両方に共通であった(図18B)。Ercc1−/−マウスの肝臓において見られたように、老化した肝臓中ではトリグリセリドの増大した蓄積があり、エネルギー利用ではなくエネルギー貯蔵が実証された(図18D)。最後に、アポトーシス細胞は野生型同腹子と比較してErcc1−/−マウスの肝臓において著しく増大し、老化した肝臓ではわずかに増大した(図18G)。これらのデータはマイクロアレイの結果を有効にし、XFE早老症と自然な老化プロセスの間の強い生理的及び病的類似性を強調する。
【0174】
Csbm/m/Xpa−/−とErcc1−/−マウスモデルの比較:
Ercc1−/−及びCsbm/m/Xpa−/−動物は、広範囲の部分的な重複、及び異なる早老症の特徴を有する異なるDNA修復欠陥マウスモデルである。表現型の類似性及び違いが遺伝子発現の基本レベルにおいても反映されるかどうか、且つそれがどの程度かを調べるために、我々は前と同じ手法を適用して、以前に同定した1675個の異なる発現をした遺伝子を、同じ形式で得たCsbm/m/Xpa−/−マウスの遺伝子と比較した(原稿添付)。この手法はCsbm/m/Xpa−/−マウスが、Csbm/m又はXpa−/−1回突然変異体(ピアソンのr:それぞれ0.26及び0.31、図18H)より、Ercc1−/−マウスと有意に高い類似性(ピアソンのr:0.65、p<0.05、図18H及び表5)を示すことを明らかにした。重要なことにこれらの発見は、遺伝的背景の違いにもかかわらず(純粋なC57Bl/6と、FVBとのF1ハイブリッド)、Csbm/m/Xpa−/−マウスの完全なマウストランスクリプトームを、Ercc1−/−(ピアソンのr:0.43、p<0.05)、Csbm/m又はXpa−/−1回突然変異同腹子(ピアソンのr:それぞれ0.29及び0.30)のそれと比較したときも同様であり、未修復DNA損傷に対する応答の均一性及び生理的有意が実証された。
【0175】
15日齢のErcc1−/−とCsbm/m/Xpa−/−マウスの発現プロファイルの間には有意な類似性が存在したが、定量的及び定性的な違い;例えば、プロアポトーシス遺伝子の顕著な上方制御、及びErcc1−/−肝臓の発現プロファイルにおけるアポトーシス阻害剤の下方制御、架橋剤シスプラチンに曝したげっ歯類モデルにおいて強く誘導されるIGFBP1の確固たる上方制御[図18F;(3)]、及びDNA損傷修復遺伝子(例えばRad51)の特異的上方制御も存在した。
【0176】
【表10】



【0177】
【表11】





【0178】
実施例9の参照文献:
1.R.A.Miller,Science310,44(21 october,2005).
2.S.Gupta,Semin Cancer Biol10,161(Jun,2000)
3.Q.Huang et al.,Toxicol Sci63,196(2001)
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】新奇の早老症を有する患者の図である。(A)3歳時の写真である。光過敏症及び軽度の学習障害以外、彼は10歳まで概ね無症候性であった。(B)16歳時の患者の写真である、この時点で彼は著しく小型、カヘキシー状態であり、老化したしなびた外見を有していた。
【図2】患者の初代皮膚線維芽細胞(XFE1RO)の特徴付けの図である。(A)野生型(■)、XFE1RO(●)及びXP患者の初代皮膚線維芽細胞(XP−F、○;XP−C、Ε;XP−A、◇)のUV感度の図である。細胞は6cm皿にまばらに接種し、48時間後に高線量のUV−C(254nm)に曝した。照射後1週間で、細胞を固定し、染色し、顕微鏡によってコロニーを計数した。(B)UV誘導型のDNA修復を測定するためのUDSの定量化の図である。XP患者の初代線維芽細胞の培養物を、H−チミジンの存在下で10J/mのUV−Cに曝した。UV誘導型のDNA合成は、オートラジオグラフィー後に計数した分子当たりの放射活性粒子の数として測定し、野生型細胞中で検出した粒子の数の割合としてプロットした。(C)患者の細胞系にUV照射した後のRNA合成の回復図である。RNA合成は細胞中に取り込まれたH−デオキシウリジンの量の液体シンチレーション計数によって測定し、非照射細胞中に取り込まれた標識の割合としてプロットした。(D)相補性分析の図である。XFE1RO線維芽細胞を、不活性センダイウイルスを使用して遺伝的に定義した一群のXP患者の細胞系(相補群A〜G)と融合させる。融合後、細胞をUV(20J/m)で照射し、H−デオキシチミジンの存在下でインキュベートし、UDSは図2Bに記載したように測定した。UDSのレベルが表中に100%又は野生型レベルで示した割合から戻ったとき、正の相補性を記録した。(E)XPFのコード配列中の点突然変異を示すXFE1ROXPFのcDNAの配列分析の図である。(F)XPFタンパク質の概略図である。保存されたドメインはカラーで強調する:黄色は非機能的ヘリカーゼモチーフを示し、灰色はロイシン多量ドメインを表し;オレンジ色は推定核局在配列を示し;明るい青色はERCC1タンパク質相互作用に必要とされるドメインを示す。中央の暗い青色領域はあまり保存されていない。XP患者中で確認したコード配列の変化は矢印で示す。Δは欠失を示し;fsはタンパク質切断の際に起こるフレームシフトを示す。青色で示した突然変異が、ヒトの疾患と関係があることは確認しなかった。XFE1RO中でのR142の変化の位置は太字で示す。残基142を含むhXPFタンパク質のセグメントの配列は、マウス及びハムスター(Ercc4)相同体、並びにDrosophila melanogaster(mei-9)、Arabidopsis thaliana、Saccharomyces cerevisiae(RAD1)及びSchizosaccharomyces pombe(RAD16)由来の相同体と一直線に並ぶ。保存型アミノ酸は黒色で示し、保存的変化は緑色、非保存型残基は赤色で示す。垂直方向の矢印は、高度に保存されたアルギニン残基における患者の突然変異の部位を示す。(G)患者の線維芽細胞(正常C5RO、軽度XP患者XP42RO及び患者XFE1RO)由来の全細胞抽出物(WCE)におけるXPFの免疫検出の図である。交差反応するバンドは等しいタンパク質充填を示す。(H)同じWCEにおけるERCC1の免疫検出の図である。(I)架橋剤マイトマイシンCで不死化線維芽細胞(野生型●;XP−A■;軽度XP−FΔ及びXPFE1RO×)を処理した後の、クローン生存アッセイの図である。初期継代初代線維芽細胞であったXP−A患者細胞系以外の、ヒトテロメラーゼを用いて不死化状態にした線維芽細胞をこのアッセイに使用した。
【図3】Ercc1−/−マウスの早老症の特性の図である。(A)1週齢で野生型同腹子と比較したErcc1−/−マウスの図である。ノックアウトマウスをうまく開発しており、それはその同胞種よりごくわずかに小さい。(B)3週齢で野生型同腹子と比較したErcc1−/−マウスの図である。ノックアウトマウスは小型且つカヘキシー状態である。(C)3週齢のマウスのフットプリント分析の図である。前足はピンク色で塗り、後足は緑色で塗った。これらの動物は、3回の実践訓練の後に最後に、暗闇の避難場所を有する狭いトンネル中に放した。白色の矢印は左足の痕跡と右足の痕跡の間の等距離に置かれ、歩行の跡を示す。上図は野生型マウスのパターンを示す。下図はErcc1−/−マウスの歩行状態を示す。黄色い星印は、Ercc1−/−マウスにおける後足の痕跡と前足の痕跡が重ならないステップ、運動失調症の診断基準(53)を示す。(D)マウスのX線写真の図である。左は、重度の脊柱後弯症を示す自然に老化した野生型マウスのX線写真である。中央は、これも脊柱後弯症を有する3週齢のErcc1−/−マウスである。右は、3週齢で正常な脊柱の屈曲を示す、年齢が一致する野生型マウスである。(E)野生型、Ercc1−/−及び異型マウス肝臓由来のタンパク質抽出物のイムノブロットの図である。ブロットは、マウスXPFタンパク質を認識する抗体でプローブ処理した。(F)架橋剤MMCに対する野生型◆、Ercc1−/−▲及びNER欠陥Xpa−/−■初代MEFの応答を比較するクローン生存アッセイの図である。
【図4】ERCC1欠陥マウスの肝臓と正常に老化したマウス由来の肝臓の間の、重複する異なる遺伝子発現プロファイルを示す図である。(A)個々の円でマイクロアレイチップ中に含まれていたそれぞれのcDNAを表す分散プロットの図である。プロットするのは、Ercc1−/−マウス肝臓のmRNAと野生型同腹子対照から単離したmRNAの比である。「M」はlog2(赤色/緑色)比を表し、「A」はlog2(赤色×緑色)として計算した全体の強度値である。異なる発現をした遺伝子は、マイクロアレイの有意性分析(SAM)を使用して計算し、過剰発現(赤色スポット)及び過小発現(緑色スポット)として表す。(B)発現変化の等級順位で列挙し、FVB/n;C57Bl/6遺伝的背景の多数の動物から集めた肝臓RNAを使用する実験から誘導した、SAMによって確認したErcc1−/−マウスの肝臓中で最も有意に過剰又は過小発現した遺伝子の概要の図である。列挙したものが最大で1つの偽陽性データポイントを含むように、厳密度を設定した。このデータは自然な老化によって引き起こされた発現の倍数差を比較し(最終列)、n.d.は、老年と若年野生型マウスの肝臓の間の比較において、発現レベルの有意な差異を検出しなかった遺伝子を示す。
【図5】免疫検出によるマイクロアレイデータを確認する図である。(A)2年齢のマウスの肝臓の肝臓と比較した、瀕死状態のErcc1−/−マウスではなく早期に老化したマウス及び野生型同腹子由来のパラフィン包埋したマウス肝臓におけるIGFBP−1の検出の図である。(B)同じマウスの固定した肝臓切片におけるTUNELアッセイの図である。断片状DNAを含むアポトーシス核は、蛍光顕微鏡によって検出した。(C)ERCC1欠陥マウス、野生型同腹子又は老年野生型マウスから単離した肝臓由来のタンパク質抽出物のイムノブロットの図である。遺伝子型を各レーン上に示し、検出したタンパク質の同一性及び分子量は右側に示す。若年野生型マウスの肝臓中のタンパク質レベルと比較した誘導倍数を、各レーンの下に示す。
【図6】(A)DNAICL修復欠陥の結果としての、早期老化の機構に関するモデルの図である。DNAICLは、おそらく脂質過酸化の後に正常な代謝の結果として内因的に形成される。架橋剤による修復の不在下では、これらの損傷は蓄積する。その化学的性質のために、これらの障害は複製及び転写などのDNA代謝を確実に阻害するものである。DNAの複製又は必須遺伝子の転写の失敗は、細胞死をもたらす。肝臓のように組織が再生能力を有する場合、したがって細胞死は、有糸分裂活性がある細胞の後の増大した増殖によって埋め合わせられる。損傷、細胞毒性及び増殖のサイクルが続く場合、或いは増殖細胞がDNA損傷の直接の標的である場合、したがって組織の全体的な増殖能力は経時的に低下した状態になる。これは組織の低下した機能をもたらし、断片的老化の特徴及び最終的には早期の死に貢献し得る。(B)α−BrdUを使用した増殖細胞の検出の図である。合成ヌクレオチドを殺傷前に30分間マウスに注入し、複製細胞のDNAに取り込ませた。BrdUを含む核を、記載したように免疫組織化学法及びホースラディッシュペルオキシダーゼ活性によって検出した。
【図7】15日齢CsbG744ter/G744ter/Xpanull/nullマウス肝臓の転写プロファイリングの図である。
【図8】CsbG744ter/G744ter/Xpanull/null、CsbG744ter/G744ter、及びXpanull/nullマウス肝臓において選択した遺伝子標的のリアルタイムPCRによる確認の図である。
【図9】A.生まれたCsbG744ter/G744ter/Xpanull/null子孫の割合に対するマンニトールの影響の図である。B.CsbG744ter/G744ter/Xpanull/null子孫の誕生後数週間の間の生存に対するマンニトールの影響の図である。
【図10】年齢によるCsb−/−マウスの網膜の自然発生的変化の図である。(A)3カ月齢Csb−/−(図a)、18カ月齢Csb−/−(図b)及び18カ月齢Csb+/+マウス(図c)の網膜の中央部において、顕微鏡写真を撮った図である。18カ月齢Csb−/−マウスにおけるONL核の消失及び外側セグメント層の変形を記す。棒線25μm。(B)ONL核の数(±標準偏差)は、年齢によるCsb−/−マウスにおける光受容体細胞の消失を示す(ANOVA、次にT検定;P<0.05)。6.5カ月齢のXpa−/−マウスは、光受容体の数が野生型と違わない。(C)左側は核染色液(DAPI)で染色し、右側はTUNEL陽性細胞用のFITCで染色した、3カ月齢の野生型及びCsb欠陥マウスのパラフィン切片の図である。矢印は、Csb−/−マウス網膜のONL中のTUNEL陽性核を指す。
【図11】マウスXPA条件付き構築体の標的化の図である。A)マウスXPA遺伝子のゲノム構造の一部の概略図である。XPAエクソン2〜6のコード部分は中空のボックスで示す。ノックアウト標的化構築体では、エクソン3及び4をネオマイシン(NEO)選択可能マーカーカセットに置換した。条件付き標的化構築体では、マウスXPAのcDNAエクソン4〜6をゲノムエクソン4と融合させた。cDNAの隣には、ヒグロマイシン(HYGRO)選択可能マーカーカセットを、ES細胞中の構築体の選択用に置いた。エクソン3と4の間、及びHYGROカセットの後ろに、LoxP配列を置いてCreリコンビナーゼによる組換えを可能にした。第2のLoxP配列の後ろに、LacZ−GFP融合マーカー、次にスプライス受容体、多数のリーディングフレーム挿入配列(Murfi)カセット、及び内部リボソーム進入配列(IRES)を加えた。このように、Creリコンビナーゼによる組換え後、LacZGFPマーカーが発現するはずであり、インビボとインビトロの両方で目に見える状態にすることができる。重要な制限部位を示す;R=EcoRI、RV=EcoRV。2つのプローブ;プローブエクソン6とプローブLacZを示し、これらは遺伝子型を決定するために使用した。B)条件付き構築体で標的化したXpa−/−ES細胞のサザンブロット分析の図である。消化はEcoRIを用いて行い、ハイブリダイゼーションはプローブエクソン6を用いて行った。このプローブは、標的化構築体の外側と16kbのノックアウトEcoRI断片及び12kbの突然変異EcoRI断片をハイブリダイズさせた。C)UV損傷後の野生型、Xpa−/−及びXpac/−ES細胞の生存率の図である。細胞は高線量のUV−C(254nm)に曝した。7日後、増殖細胞の数をクローン形成の量から推定した。D)標的化ES細胞クローンのサザンブロット分析の図である。消化はEcoRIを用いて行い、ハイブリダイゼーションはプローブエクソン6を用いて行った。このプローブは、標的化構築体の外側と16kbのノックアウトEcoRI断片及び12kbの突然変異EcoRI断片をハイブリダイズさせた。E)Cre−リコンビナーゼでトランスフェクトしたc/+ES細胞クローンのサザンブロット分析の図である。消化はEcoRVを用いて行い、ハイブリダイゼーションはプローブLacZを用いて行った。このプローブはCre組換え前に2.4kbの条件付きEcoRV断片と、及びCre組換え後に10kbの条件付きEcoRI断片とハイブリダイズした。
【図12】XPA条件付き対立遺伝子の機能性及びCre組換えの図である。A)XPA条件付き対立遺伝子の導入によるXpa−/−Csbm/m早期老化の表現型の回復を示す、8週齢のXpac/−Csbm/mマウスの写真である。B)第10.5日及び13.5日のXpa+/−、Xpac/−、Xpac/cr及びXpacr/cr胚DNAのサザンブロット分析の図である。消化はEcoRVを用いて行い、ハイブリダイゼーションはプローブLacZを用いて行った。このプローブはCre組換え前に2.4kbの条件付きEcoRV断片と、及びCre組換え後に10kbの条件付きEcoRI断片とハイブリダイズした。XPA条件付き対立遺伝子は、CagCre、非誘導的な、偏在的に発現したCre−リコンビナーゼによって組換えた。C)第10.5日及び13.5日のXpa+/−、Xpac/−、Xpac/cr及びXpacr/cr胚のLacZ染色の図である。D)野生型及びXpacr/−MEFのLacZ染色の図である。E)UV損傷後の野生型及びXpacr/−MEFの生存率の図である。細胞は高線量のUV−C(254nm)に曝した。7日後、増殖細胞の数をクローン形成の量から推定した。
【図13】マウス中のXPA条件付き対立遺伝子のCre組換えの図である。A)Csbm/mXpa+/−、Csbm/mXpac/−、Csbm/mXpacr/−、Csbm/mXpacr/+及びCsbm/mXpac/crマウス尾部のDNAのサザンブロット分析の図である。消化はEcoRVを用いて行い、ハイブリダイゼーションはプローブLacZを用いて行った。このプローブはCre組換え前に2.4kbの条件付きEcoRV断片と、及びCre組換え後に10kbの条件付きEcoRI断片とハイブリダイズした。XPA条件付き対立遺伝子は、CagCre、非誘導的な、偏在的に発現したCre−リコンビナーゼによって組換え、受胎時に発現した。B)Csbm/mXpacr/−及びCsbm/mXpacr/+同腹子対照、16日齢の写真である。このCsbm/mXpacr/−マウスの表現型は以前に公開されたCsbm/mXpa−/−マウスと同じであり、XPA条件付き対立遺伝子の全体的な組換えによって機能的ノックアウトが生じることが証明される。
【図14】CSB欠陥背景でのXPA条件付き対立遺伝子の脳特異的Cre組換えの図である。A)6カ月齢でのCsbm/mXpac/−CamKIICre動物の写真である。B)野生型、Csbm/m、Xpac/−CamKIICre及びCsbm/mXpac/−CamKIICreの体重曲線の図である。8カ月を過ぎると、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物の体重は、Csbm/m動物を含めて、それらの対照同腹子と実質的に異なり始める。C)3及び6カ月齢で野生型、Csbm/m、Xpac/−CamKIICre及びCsbm/mXpac/−CamKIICreの中央の距離を全体の距離で割ることによって計算した不安率(AR)を示す棒グラフである。低いARは不安様挙動を示す。3カ月齢で、Csbm/mXpac/−CamKIICre動物のARは、対照群のARより有意に低く(p<0.05)、6カ月齢でさらに一層有意になる(p<0.001)。D)Xpac/−CamKIICre及びCsbm/mXpac/−CamKIICre動物の脳内の特異的LacZ染色の写真である。海馬と結付いており不安様挙動と関連がある外側中隔においてのみ、染色が見られた。
【図15】91週齢野生型のメス(E)及びオス(F)と比較した老化野生型のメス(A)及びオス(B)、老化TTDメス(C)及びオス(D)及び52週齢TTDマウスにおける厚分布の図である。
【図16】老化における骨のパラメータの図である。野生型のメス(中実の三角形)、TTDメス(中空の三角形)、野生型のオス(中実の四角形)及びTTDオス(中空の四角形)。骨体積(A,B)、皮質厚(C,D)及び骨周囲(E,F)。 野生型動物と比較したTTDマウス:#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001; それらの26週の時間地点と比較したTTDマウス及び野生型動物:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001;誤差線:SEM
【図17】Csbm/m/Xpa−/−子孫と自然に老化したマウスの、肝臓のトランスクリプトームの類似性の図である。16、96及び130週齢のマウス及び15日齢のCsbm/m/Xpa−/−マウスのピアソンの相関係数の図である。
【図18】DNA修復欠陥によるErcc1−/−マウスの生理的変化の図である。(A)酵素イムノアッセイによって測定した、15日齢の野生型及びErcc1−/−マウス中の血清IGF1レベルの図である。(B)−BrdUを使用した増殖細胞の検出の図である。合成ヌクレオチドを殺傷前に30分間マウスに注入し、複製細胞のDNAに取り込ませた。BrdUを含む核を、記載したように免疫組織化学法及びホースラディッシュペルオキシダーゼ活性によって検出した(矢印)。大きな倍数体の核はErcc1−/−及び老化マウスの肝臓において明らかである(星印)。(C)15及び21日齢Ercc1−/−マウス及び野生型同腹子の血中グルコースレベルの図である。1群当たり8〜21の動物の平均値±標準偏差をプロットする。(D)トリグリセリドの蓄積を検出するためにオイルレッドで染色した、示した年齢のErcc1−/−及び野生型マウス由来の凍結肝臓切片の図である。(E)Ercc1−/−マウス肝臓のトランスクリプトームと2.7年齢及びの4カ月齢のトランスクリプトームの間の、ピアソンの相関係数の図である(補足表S3Aを参照)。(F)2年齢マウスの肝臓と比較した、21日齢の、瀕死状態ではなく早期老化状態のErcc1−/−マウス及び野生型同腹子由来のパラフィン包埋マウス肝臓におけるIGFBP1の免疫蛍光検出の図である(倍率100倍)。21日齢Ercc1−/−マウス及び対照同腹子の肝臓抽出物中のIGFBP1レベルのイムノブロット。(G)同じ肝臓サンプルの一連の切片におけるTUNELアッセイによる、アポトーシス核の測定の図である(倍率20倍)。(H)15日齢のErcc1−/−、Csbm/m及びXpa−/−マウス及びCsbm/m/Xpa−/−突然変異体の、肝臓のトランスクリプトーム間のピアソンの相関係数の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるゲノム維持に関する物質の影響を測定するための方法であって、非ヒト哺乳動物を物質に曝すことにより、前記哺乳動物がDNA修復及びゲノム維持システムの欠損を引き起こす少なくとも1つの突然変異を示し、前記突然変異がDNA損傷の加速的蓄積及び/又は亢進を引き起こすステップと、前記哺乳動物中のゲノム維持に対する物質の影響を測定するステップとを含む、前記方法。
【請求項2】
ゲノム維持に対する影響を哺乳動物における老化関連の表現型パラメータに対する影響によって測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物が2つ以上のDNA修復又はゲノム維持システムの突然変異の組合せを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
老化関連パラメータを生きた哺乳動物又はそれに由来する部分において試験する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物から得てインビトロで培養した細胞又は組織外植片において老化関連パラメータを試験する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
DNA修復及びゲノム維持システムの突然変異が、以下のDNA修復システム:二本鎖切断修復(DSBR)、ヌクレオチド切除修復(NER)、転写関連修復(TCR)、塩基切除修復(BER)、DNA架橋修復(XLR)、ミスマッチ修復の1つ又は複数と関係がある遺伝子内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
DNA損傷の加速的蓄積を引き起こす突然変異が包括的ゲノムヌクレオチド切除修復(GG−NER)と関係がある遺伝子内に存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
DNA損傷の加速的蓄積を引き起こす突然変異が転写関連修復(TCR)と関係がある遺伝子内に存在する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記突然変異がXpa、Xpb、Xpc、Xpd、Xpe、Xpf、Xpg、Csa、Csb、Ercc1又はTtdaからなる群から選択される遺伝子の突然変異である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
突然変異体がXpb、Xpd又はTtda遺伝子中のヒト硫黄欠乏症育毛発育異常(TTD)を引き起こす対立遺伝子と同等であるか或いはそれと類似している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
同等であるTTD突然変異が、ヒトXpd遺伝子:G47R、R112H、D234N、C259Y、S541R、Y542C、R601L、R658C、R658H、D673G、R683W、R683Q、G713R、R722W、A725P、Q726ter、K751Q、ヒトXpb遺伝子:T119P及びヒトTtda遺伝子:M1T、L21P、R57terのTTD関連突然変異からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
突然変異体がCsa、Csb、Xpb、Xpd、Xpg、Xpf又はErcc1遺伝子中のヒトコケイン症候群(CS)、複合型色素性乾皮症−コケイン症候群(XPCS)、脳−眼−顔−骨格症候群(COFS)又はXPF−ERCC1症候群を引き起こす対立遺伝子と同等であるか或いはそれと類似している、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ヒトコケイン症候群、COFS又はXPCS症候群を引き起こす突然変異が、ヒトCsa遺伝子:CSAnull、Y322ter、ヒトCsb遺伝子:CSBnull、Q184ter、R453ter、W517ter、R670W、R735ter、G744ter、W851R、Q854ter、R947ter、P1042L、P1095R、R1213G、ヒトXpd遺伝子:G602D、G675R、669fs708ter、ヒトXpb遺伝子:F99S、FS740及びヒトXpg遺伝子:R263ter、659terのCS関連突然変異からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マウスにおいて加速的老化の表現型をもたらす突然変異体の組合せがCsanull/null/Xpanull/null、Csanull/null/Xpcnull/null、CsbG744ter/G744ter/Xpanull/null、CsbG744ter/G744ter/Xpcnull/null、XpdG602D/G602D/Xpanull/null、XpdR722W/R722W/Xpanull/null、XpdG602D/R722W/Xpanull/nullからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物がげっ歯類である、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物がマウス、ラット、ウサギ、モルモットからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
老化関連パラメータが寿命、周産期ストレスの存続、若年死、脊柱後弯症、骨粗しょう症、体重、体脂肪率、カヘキシー、サルコペニア、脱毛、白髪、神経及び感覚機能障害、筋肉機能、テロメア縮小、骨硬化症、網膜変性症、光受容体細胞の消失、生殖能力レベル、肝機能、腎機能、胸腺退縮、プルキンエ細胞の消失、貧血、免疫機能障害、糖尿病、遺伝子発現パターン、RNA発現レベル、タンパク質発現レベル、代謝産物レベル、及びホルモンレベルからなる群から選択される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
老化関連パラメータが、処理及び未処理試料の細胞、器官、組織、又は生物物質由来の、単離RNAサンプルのマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーションパターン(トランスクリプトーム解析)、タンパク質発現(プロテオーム解析)、又は代謝産物プロファイル(メタボローム解析)として遺伝子発現を比較することによって決定される任意の修復若しくはゲノム維持突然変異体由来の細胞、組織又は生物サンプル中で転写及び翻訳される遺伝子のレベルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ゲノム維持遺伝子の突然変異が、対応する野生型哺乳動物よりDNA損傷を蓄積しやすい遺伝的背景を示す哺乳動物内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物をDNA損傷処理に曝す、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
DNA損傷処理がUV照射、X線、γ線、活性酸素種(ROS)、酸化ストレス及びDNA損傷用化合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
DNA損傷用化合物がパラコート、H、ベロマイシン、イルジンS、DMBA、AAF、アフラトキシン、ベンズ(o)ピレン、EMS、ENU、MMS、MNNG、マイトマイシンC、シスプラチナ、ナイトロジェンマスタード、PUVA及びタクソールからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
突然変異が、ゲノム維持と関係がある遺伝子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を機能的に阻害するために使用される、置換、欠失、挿入、制御配列の変化、又はRNA干渉である、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
老化現象及び/又はゲノム維持障害若しくは症候群を治療するための、医薬品を製造するためのマンニトールの使用。
【請求項25】
老化現象及び/又はゲノム維持障害若しくは症候群を治療するための、医薬品を製造するためのプロリンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−520200(P2008−520200A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541122(P2007−541122)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/NL2005/050043
【国際公開番号】WO2006/052136
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507143624)
【Fターム(参考)】