説明

耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板

【課題】 電気機器や電子機器のドライブケース用として普及しているプレコート金属板であって、光ディスクに対する傷付け防止性に優れ、かつ、導電性を有する、プレコート金属板を提供する。
【解決手段】金属板の両面に形成した化成皮膜と、前記化成皮膜の一方の上にベース樹脂にナイロン系樹脂ビーズ、フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズから成る群から選択される1種または2種以上の樹脂ビーズとNiフィラーを含有する塗膜とを備え、該塗膜の乾燥塗膜厚は0.6μm〜2.0μmの範囲にあり、塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.8〜4.6の範囲にあり、Niフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.1以上であり、塗膜厚さに対するNiフィラーの平均粒径の比が1.2以上であるようにする。 反対面に、導電性樹脂皮膜や放熱性かつ導電性の樹脂皮膜を更に備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビ、パソコン、DVDプレーヤー等の電気機器や電子機器の筐体に用いられる耐傷付け性プレコート金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器や電子機器の筐体や光ディスクの開発が進み、ドライブケースのさらなる省スペース化を可能にしたスロットインドライブケースが普及し始めている。スロットイン方式とは光ディスクを裸のまま挿入口に差し込むだけで、自動的にドライブケース内に引き込まれる機能である。従来のトレー方式と比較すると、トレーを引き出す必要がないために省スペース化が可能であり、光ディスクの出し入れがスムーズになる。
【0003】
このようなスロットインドライブケースでは、光ディスクに傷が付き易い。光ディスクとドライブケース内面間の間隔が狭く、光ディスク自身の厚さ精度や光ディスクの運転時の撓み等で光ディスクとドライブケース内面が衝突することがある。また、光ディスクの再生中又はこれに記録中にドライブに不慮の衝撃が加わると、光ディスクとドライブケース内面が接触することがある。更に、投入状態によっては、光ディスクが傾けられて挿入されることがあり、光ディスクとドライブケース内面が接触することがある。ドライブケース内面の構造にも様々なものがあるが、ドライブケース内面のうち光ディスクと接触して問題になる可能性のある部分は平面であるため面接触になる。
【0004】
様々な種類の光ディスクが開発されているが、光ディスク表面に僅かに傷が付いただけでも、記録の再生、書き込みに悪影響を及ぼすものがある。そのため、光ディスクとドライブケース内面の接触によって光ディスクに傷が付くと、光ディスクを使用することができなくなるという不都合があった。
【0005】
このような傷を防止するために、本発明者らは鋭意検討し、過去に非特許文献1における発明を完成するに至った。
【非特許文献1】特願2005−337490号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドライブケース内面の構造によっては、電子機器の誤動作の原因となる静電気の帯電を防止するのに必要なアース接続のために塗膜に導電性を要求される場合があった。非特許文献1に開示された塗膜には導電性物質が含有されていないために、ドライブケース内面に必要な導電性を確保できないという不都合があった。
【0007】
本発明は、電気機器や電子機器のドライブケース用として普及しているプレコート金属板であって、光ディスクに対する傷付け防止性に優れ、かつ、導電性を有する、プレコート金属板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。
【0009】
すなわち、請求項1記載の通り、金属板の両面に形成した化成皮膜と、前記化成皮膜の一方の上にベース樹脂a1にナイロン系樹脂ビーズ、フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズから成る群から選択される1種または2種以上の樹脂ビーズa2とNiフィラーa3を含有する塗膜Aとを備え、該塗膜Aの乾燥塗膜厚は0.6μm〜2.0μmの範囲にあり、塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.8〜4.6の範囲にあり、Niフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.1以上であり、塗膜厚さに対するNiフィラーの平均粒径の比が1.2以上であることを特徴とする耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板である。
【0010】
また請求項2の発明は、塗膜Aを形成した面とは反対の面の前記化成皮膜の上にポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂から成る群から選択される1種または2種以上のベース樹脂b1に、Niフィラーb2を樹脂固形分に対する重量比で10〜70%混合し、かつ、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される1種または2種以上の潤滑剤b3を樹脂固形分に対する重量比で1〜5%混合した塗料を乾燥塗膜厚として0.2〜2.0μm塗装した導電性樹脂皮膜Bを更に備えたことを特徴とする、請求項1に記載の耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板である。
【0011】
さらに、請求項3の発明は、塗膜Aを形成した面とは反対の面の前記化成皮膜の上にフッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から成る群から選択される1種または2種以上のベース樹脂c1と、少なくともグラファイトを含む放熱材c2と、少なくともニッケル粉末を含む導電材c3とを含有する放熱性かつ導電性の樹脂皮膜Cを更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプレコート金属板は、適度な硬さと適度な滑り性を有する樹脂ビーズを用いているので、耐傷付け性を向上できる。
【0013】
本発明のプレコート金属板は、塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比を所定の範囲(1.8〜4.6)とし、Niフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比を所定の範囲(1.1以上)とし、塗膜厚さに対するNiフィラーの平均粒径の比を所定の範囲(1.2以上)とすることによって、耐傷つけ性を向上し、かつ、導電性を付与することができる。塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比が所定の範囲にあるので、光ディスクとの接触面積を小さく維持しつつ、ビーズの脱落を低減することができるので、光ディスクに傷が付き難くすることができる。また、Niフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比が所定の範囲にあるので、Niフィラーが樹脂ビーズよりも突出しにくく、光ディスクに傷が付き難くすることができる。塗膜厚さに対するNiフィラーの平均粒径の比が所定の範囲にあるので、Niフィラーが塗膜から突出し、電気抵抗値を小さくすることができる。
【0014】
更に、金属板における塗膜Aとは反対側の面に、所定の導電性樹脂皮膜Bを備えるので、ドライブケース外面を電磁シールドしたり、アース接地したりすることが可能となる。さらに他の実施態様では、金属板における塗膜Aとは反対側の面に、所定の電気抵抗とドライブケース表面温度とを有する樹脂皮膜Cを備えるので、ドライブケース外面を電磁シールドしたり、アース接地したりすることが可能となり、また、ドライブケース内部にこもる熱量を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.金属板
本発明において用いる金属は、電気機器や電子機器の部品のドライブケースを形成するのに十分な強度を有し、かつ、十分な成形加工性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、純アルミニウム、5000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼が好ましい。
【0016】
B.化成皮膜
化成皮膜は、金属板の表面と塗膜との間に介在して両者の密着性を高めるものであれば特に限定されるものでない。例えば、アルミニウム合金には、安価で浴液管理が容易なリン酸クロメート処理液で形成される化成皮膜や、処理液成分の変化が無く水洗を必要としない塗布型ジルコニウム処理で形成される化成皮膜を用いることができる。このような化成処理は、アルミニウム合金板に所定の化成処理液をスプレーしたり、合金板を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。亜鉛メッキ鋼やステンレス鋼には、クロメート処理の他にリン酸塩処理液で形成される化成皮膜も用いることができる。
【0017】
なお、化成処理を行なう前に、金属板表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、金属板を、硫酸、硝酸、リン酸等による酸処理(洗浄)、或いは、カセイソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等によるアルカリ処理(洗浄)を行なうのが望ましい。このような洗浄による表面処理も、金属板に所定の表面処理液をスプレーしたり、金属板を処理液中に所定温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。
【0018】
C.塗膜A
次いで、前記化成皮膜上に塗膜Aが形成される。塗膜Aは、ベース樹脂、特定の樹脂ビーズ、さらに、Niフィラーを必須成分として含有させ、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を焼付け塗装して形成される。
【0019】
C−1.塗膜Aの厚さβ
塗膜Aの厚さβは、樹脂ビーズの存在しない部分において0.6〜2.0μmとなるようにした。0.6μm未満であると成形加工時に樹脂ビーズの脱落が生じ易くなり光ディスクに傷が付く易くなる。一方、2.0μmを超えると、Niフィラーが突出しにくくなり、導電性が劣る。
【0020】
C−2.塗膜Aの厚さβに対する樹脂ビーズa2の平均粒径Pd
塗膜Aの厚さβと後述の樹脂ビーズa2の平均粒径Pdとの関係は、βに対するPdの比が1.8〜4.6となるようにした。1.8未満であると、樹脂ビーズの存在しない塗膜表面部分にディスク等の被接触物が接触し易くなり、ディスクに傷が付き易くなる。一方、4.6を越えると、曲げ加工性や導電性が劣る。
【0021】
C−3.Niフィラーの平均粒径Pnに対する樹脂ビーズの平均粒径Pd
後述のNiフィラーの平均粒径Pnと後述の樹脂ビーズa2の平均粒径Pdとの関係は、Pnに対するPdの比が1.1以上となるようにした。Niフィラーとディスクが接触すると、ディスク表面は樹脂であるためにディスクに傷がつく。そのため、Niフィラーの平均粒径は樹脂ビーズの平均粒径より小さいことが好ましい。Pnに対するPdの比が1.1未満では、光ディスクに傷が付き易くなる。一方、Pnに対するPdの比が大きくなりすぎるとNiフィラーが突出しにくくなり、導電性が劣るため、この比は3.5以下が好ましい。
【0022】
C−4.塗膜Aの厚さβに対するNiフィラーの平均粒径Pn
塗膜Aの厚さβと後述のNiフィラーの平均粒径Pnとの関係は、βに対するPnの比が1.2以上となるようにした。Niフィラーは塗膜表面から突出することにより、電気抵抗値が小さくなる。βに対するPnの比が1.2未満では、導電性が劣る。
【0023】
C−5.ベース樹脂a1
ベース樹脂a1としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種、すなわち、これらの樹脂の1種または2種以上が好ましい。これらの樹脂は、光ディスク等の被接触物と塗膜が接触した際における塗膜の変形が小さく塗膜と光ディスク等の被接触物との接触面積を低減し、耐傷付け性を向上することができる。
【0024】
ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂等が用いられる。アルキド樹脂は、無水フタル酸などの多塩基酸とグリセリンなどの多価アルコールとの縮合物を骨格とし、これを脂肪酸の油脂で変性したものである。用いる油脂の種類と含有量によって、短油性アルキド樹脂、中油性アルキド樹脂、長油性アルキド樹脂及び超長油性アルキド樹脂に分類される。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸又は飽和多塩基酸とグリコール類をエステル化することによって合成される。多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びアジピン酸が用いられ、グリコール類としては、プロピレングリコールが多く用いられる。変成アルキド樹脂としては、天然樹脂、フェノール樹脂又はスチレンなどの重合性モノマーで変成されたものが用いられる。
【0025】
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などを用いることができる。
アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのモノマーを1種または2種以上を重合して得られるものを用いることができる。
【0026】
プレス加工等の加工時に塗膜割れが起こり難く、塗装時の作業性が良好で、コスト的にも有利なポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
C−6.樹脂ビーズa2
塗膜Aに樹脂ビーズa2を含有させることによって、光ディスクが接触した際に樹脂ビーズa2が弾性変形し、接触による衝撃を和らげる緩衝効果を発揮させるようにした。これにより、光ディスク等の被接触物に対する耐傷付け性が向上する。
【0028】
このような樹脂ビーズa2は塗膜表面から上方に突出するために、光ディスク等の被接触物と塗膜表面の接触面積を低減することができる。その結果、光ディスクが塗膜表面に接触する際の滑り性が向上して、光ディスクへの耐傷付け性を高めることができる。しかしながら、硬度の高いアクリルビーズを添加しても光ディスクに傷が付き問題になる。これに対し、潤滑性に富むナイロン系樹脂ビーズやフッ素系樹脂ビーズ、ならびに、柔軟性に富むウレタン系樹脂ビーズから成る群から選択される1種または2種以上の樹脂ビーズを含有させることによって、十分な耐傷付け性を得ることができる。
【0029】
ウレタン系樹脂ビーズとしては、ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるもの、脱塩酸剤の存在下でジアミンにグリコールのビスクロルギ酸エステルを作用させて得られるもの、ジアミンと炭酸エチレンとの反応により得られるもの、ω−アミノアルコールをクロルギ酸エステル又はカルバミン酸エステルに変えこれを縮合させて得られるもの、ビスウレタンとジアミンとの反応により得られるものが用いられる。ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるものが多く用いられ、ジイソシアナートとしては、トリレンジイソシアナート(2,4−及び2,6−の混合物)が多く用いられ、水酸基を有する化合物としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコールのようなエーテル系と、アジピン酸とエチレングリコールを縮合させたポリエステル系のものが多く用いられる。
ナイロン系樹脂ビーズとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、3−ナイロン、4−ナイロン、7−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等のビーズが用いられる。これらのうち、6−ナイロンと6,6−ナイロン、6,10−ナイロンが好適に用いられる。
【0030】
フッ素系樹脂ビーズとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリトリフルオロクロルエチレン(PTFCE)、ポリジクロルジフルオロエチレン(DCDFE)等のビーズが用いられる。これらの樹脂のなかで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が最も好適に用いられる。
【0031】
用いる樹脂ビーズa2の平均粒径Pdは、2.7〜8.8μmが好ましい。平均粒径Pdが2.7μm未満では、光ディスクとの接触面積を低減できず光ディスクに傷が付き易くなる。一方、8.8μmを超えると、成形加工時において、樹脂ビーズが塗膜から脱落し易くなり、光ディスクに傷が付き易くなる。
【0032】
樹脂ビーズa2の含有量は、塗膜の樹脂固形分に対する重量比で3〜20%が好ましい。3%未満では、樹脂ビーズa2の存在しない塗膜表面部分に被接触物が接触し易くなり、光ディスクに傷が付き易くなるからである。一方、20%を超えると成形加工時において樹脂ビーズが塗膜から脱落し易くなり、光ディスクに傷が付き易くなる。
【0033】
C−7.Niフィラーa3
塗膜AにNi(ニッケル)フィラーa3を含有させることによって、塗膜に導電性を付与することができる。Niフィラーは粒子の形状によって、鱗片状、鎖状、球状、スパイク状の4種類に分類される。本発明に用いられるプレコート金属板の塗膜A面には、何れの形状を用いても良いが、鎖状やスパイク状が好ましい。
【0034】
用いるNiフィラーの平均粒径Pnは、2.2μm〜7.0μmが好ましい。Pnはレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて算出されるものである。レーザー回折・散乱法は粒子と光の相互作用が粒子の大きさや光の波長に依存することを利用している。粒子に光が当ると、光は透過、吸収、反射、散乱、回折などの現象を引き起こす。この方法では、粒子に照射した光の前方から側方の角度領域に散乱される光の強度分布が、粒子の大きさの関数であることを利用して粒子径を検出する。分散媒としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートの水溶液を用いることが好ましい。2.0μm未満では、導電性が劣る。一方、7.0μmを超えると、曲げ加工性が劣る。
【0035】
Niフィラーの含有量は、塗膜の樹脂固形分に対する重量比で10〜70%が好ましい。 10%未満では、導電性が劣る。一方、70%を超えると、耐食性が劣る。
【0036】
C−8.添加剤
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤等を適宜添加してもよい。
【0037】
さらに、本発明で用いる塗料には、潤滑剤を添加することが好ましい。潤滑剤としては、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される1種または2種以上が好ましい。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、78〜86℃の融点を有する。ポリエチレンワックスは、分子量が600〜12000であり70〜140℃の融点を有するものが用いられる。マイクロクリスタリンワックスは、石油成分から得られる結晶性の細かいロウでパラフィンより高融点であり、例えば分子量が600〜900で60〜100℃の融点を有するものが用いられる。
【0038】
これらの潤滑剤は、プレス成形等の成形加工時に塗膜表面に潤滑性を付与し、塗膜の耐傷付き性を向上させることに加え、成形加工後の塗膜表面にも潤滑性を付与し、光ディスクと塗膜表面との間で発生する摩擦力を低減させる作用を有する。
【0039】
潤滑剤の含有量は、樹脂固形分に対する重量比で0.2〜10%が好ましく、さらに、0.2〜3%が好ましい。0.2%未満では、塗膜表面に十分な潤滑性を付与することができず、プレス成形時に塗膜に傷が付き易くなり、また、光ディスクが傷付き易くなるからである。潤滑剤の含有量が10%を超えると、プレコート金属板を製造する際のコイルアップ時に滑ってしまい、巻き取りが困難になるからである。
【0040】
C−9.塗膜形成
ベース樹脂a1、樹脂ビーズa2及びNiフィラーa3を必須成分とし、これに上記添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターによって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。溶剤としては、ベンゼン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、イソホロン、イソブチルアルコール、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが用いられる。なお、ロールコーターに代えてエアスプレーやバーコーター等によって塗料を塗布してもよい。
【0041】
C−10.導電性
塗膜Aの導電性は、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重500gで接触させた時の電気抵抗値を10Ω以下とするものである。10Ωを超えると、ドライブケース内面に必要な電気特性を十分に確保することができないからである。
【0042】
E.導電性樹脂皮膜B
成形後にドライブケース外面となる面であって、上記塗膜とは反対側の外面に導電性樹脂皮膜Bを更に設けた構成のプレコート金属板としてもよい。この場合には、上記塗膜Aとは反対側の外面となる金属板上に化成皮膜を設け、その上に導電性樹脂皮膜Bを形成するものである。導電性樹脂皮膜Bには、特許文献1に開示されているような、有機樹脂にNiフィラーとワックスを混合した塗料を塗装して形成される塗膜を用いることができる。
【特許文献1】特開2001−29885号公報
【0043】
E−1.膜厚
前記導電性樹脂皮膜Bの乾燥塗膜厚さは0.2〜2.0μmとする。0.2μm未満であると、導電性は良好であるが、耐食性や成形性が劣る。2.0μmを超えると、Niフィラーの露出が少なくなり、導電性が劣る。
【0044】
E−2.ベース樹脂b1
前記導電性樹脂皮膜Bに用いられるベース樹脂b1は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂または、エポキシ系樹脂から成る群から選択される1種又は2種以上を用いる。ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂などを用いることができる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのモノマーを1種又は2種以上を重合して得られるものを用いることができる。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0045】
E−3.Niフィラーb2
前記導電性樹脂皮膜Bに用いられるNi(ニッケル)フィラーb2は、鱗片状のNiフィラーと鎖状のNiフィラーとの両方を用いる。これらのNiフィラーを混合して用いることにより導電性と成形性を両立させることができる。
通常、プレス成形時にはプレス油が用いられている。プレコート金属板と金型間にプレス油が介在する場合には問題なく成形可能であるが、潤滑膜が局部的に切れるとプレコート金属板表面にかじり傷が発生する。また、Niフィラーは塗膜表面から突出しており、潤滑膜が切れると、金型と接触しNiフィラーが脱落し、成形後の外観を劣化させることがある。つまり、プレコート金属板表面にプレス油を保持することが重要であり、上述した2種類のNiフィラーを混合して用いることにより、塗膜表面の粗さが適度に調節され、プレス油を保持することができる。
鱗片状のNiフィラーと鎖状のNiフィラーは樹脂固形分に対する重量比で10〜70%混合する。10%未満であると導電性や成形性が劣る。70%を超えると、導電性は良好であるが、成形性、密着性、耐食性が劣る。
【0046】
E−4.潤滑剤b3
前記導電性樹脂皮膜Bに用いられる潤滑剤b3には、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される1種又は2種以上の潤滑剤を用いる。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、78〜86℃の融点を有する。ポリエチレンワックスは、分子量が600〜12000であり70〜140℃の融点を有するものが用いられる。マイクロクリスタリンワックスは、石油成分から得られる結晶性の細かいロウでパラフィンより高融点であり、例えば分子量が600〜900で60〜100℃の融点を有するものが用いられる。
これらの潤滑剤b3は、プレス成形等の成形加工時に塗膜表面に潤滑性を付与し、塗膜の耐傷付き性を向上させる。
潤滑剤b3を樹脂固形分に対する重量比で1〜5%混合する。1%未満であると、潤滑性が劣り、塗膜に傷が付き易くなり、5%を超えると、潤滑性が良すぎるために筍状になってコイルアップすることができない。
【0047】
E−5.添加剤
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、レベリング剤、ワキ防止剤、安定化剤、沈降防止剤等を適宜添加してもよい。
【0048】
E−6.導電性樹脂皮膜B形成
ベース樹脂b1、Niフィラーb2、潤滑剤b3を必須成分とし、これに上記添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターによって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。また、ピックアップロールとアプリケーターロールとの間に上から供給した塗料をアプリケーターロールで金属板上にロールコーティングする、トップフィード方式が好ましい。ロールコーターに代えて、エアスプレー、バーコーター等によって化成皮膜上に直接塗布しても良い。
【0049】
E−7.導電性
導電性樹脂皮膜Bの導電性は、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重100gで接触させた時の電気抵抗値を10Ω以下とするものである。10Ωを超えると、ドライブケース外面に必要なアース性や磁気シールド性などの電気特性を十分に確保することができないからである。
【0050】
F.導電性かつ放熱性の樹脂皮膜C
成形後にドライブケース外面となる面であって、上記塗膜とは反対側の外面に、上記導電性樹脂皮膜Bに代えて導電性かつ放熱性の樹脂皮膜Cを設けた構成のプレコート金属板としてもよい。この場合には、上記塗膜とは反対側の外面となる金属板上に化成皮膜を設け、その上に導電性と放熱性を両立した樹脂皮膜を形成するものである。
【0051】
このような樹脂皮膜Cは、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から成る群から選択される1種又は2種以上をベース樹脂c1とし、放熱性を付与するために少なくともグラファイトを含有し、導電性を付与するために少なくともNi(ニッケル)フィラーを含有する。上記ベース樹脂c1としてのポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂は、上記塗膜Aに用いるベース樹脂a1と同じものが用いられる。また、上記ベース樹脂c1としてのフッ素系樹脂、ウレタン系樹脂は、上記塗膜Aに用いる樹脂ビーズa2の樹脂と同じものが用いられる。
【0052】
Niフィラー等の導電性付与成分は、樹脂固形分に対する重量比で10〜70%混合される。10%未満であると導電性や成形性が劣り、70%を超えると、導電性は良好であるが、成形性、密着性、耐食性が劣る。一方、グラファイト等の放熱性付与成分は、樹脂固形分に対する重量比で20〜100%混合される。20%未満であると放熱性が劣り、100%を超えると、放熱性は良好であるが、成形性が劣る。
【0053】
このような導電性かつ放熱性の樹脂皮膜Cの厚さは、乾燥塗膜厚で0.3〜5μmとするのが好ましい。
【0054】
導電性かつ放熱性の樹脂皮膜Cの導電性は、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重100gで接触させた時の電気抵抗値を10Ω以下とするものである。10Ωを超えると、ドライブケース外面に必要なアース性や磁気シールド性などの電気特性を十分に確保することができないからである。
【0055】
導電性かつ放熱性の樹脂皮膜Cの放熱性としては、ドライブケースの内部に光源を配設して発光・発熱させ、ドライブケース内部の温度が定常状態となった時点におけるドライブケース表面の温度を32℃以下とするものである。ドライブケース表面温度が32℃を超えると、ドライブケース内に熱がこもり、電子機器の本来の性能を損なうことがある。
【0056】
このような導電性かつ放熱性の樹脂皮膜Cには、例えば、特許文献2に開示されているような有機樹脂にグラファイトとNiフィラーを混合した塗料を塗装して形成される塗膜を用いることができる。
【特許文献2】特開2005−305993号公報
【0057】
以上において詳述した耐傷付け性プレコート金属板は、テレビ、ビデオ装置、パソコン等の電気機器や電子機器のドライブケース用として用いられるが、これらに限定されるものではなく、構造用のドライブケース等に用いることもできる。また、CDやDVDなどの光ディスクに対して耐傷付け性を備えるものではあるが、光ディスクに限定されるものではなく、磁気ディスク、光磁気ディスク等の精密な加工表面を有する各種部材に対する耐傷付け用として用いてもよい。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0059】
発明例1〜9
金属板にアルミニウム合金板を用いた。アルミニウム合金板(材質:JIS A5052、板厚:0.6mm)の両面を、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗後に、市販のリン酸クロメート処理液により両面を化成処理した。次いで、一方の化成処理面ロに表1に示す塗料bを、バーコーターで塗装し、焼付けした。一方、他の化成処理面イには、表1に示す塗料aをバーコーターで塗装し焼付けして、試料を作製した。塗料b、塗料aの焼付け温度は、最高到達板温度(PMT)230℃であった。発明例1〜9の試料の作製条件を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1〜6
発明例1〜9と同様にして表1の作製条件に基づいて、比較例1〜6の試料を作製した。
【0062】
発明例10及び11
発明例10においては金属板としてステンレス鋼板を用い、発明例11においては金属板として亜鉛鍍金鋼板を用いた。これら金属板を、市販のクロメート処理液によって化成処理した。次いで、一方の化成処理面ロにポリエステル系樹脂、グラファイト、Niフィラーからなる放熱性及び導電性樹脂塗料を、乾燥後の塗膜厚が1μmになるようにバーコーターで塗装し、焼付けした。塗料中における、グラファイト及びNiフィラーの含有量は、樹脂固形分に対する重量比で30%、40%であった。
【0063】
一方、他の化成処理面イには、表2に示すベース樹脂、樹脂ビーズ及び潤滑剤を含む塗料をバーコーターで塗装し焼付けして、試料を作製した。焼付け温度は、最高到達板温度(PMT)230℃であった。発明例10、11の試料の作製条件を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
上述した方法で得られた化成皮膜の皮膜量を蛍光X線分析装置により測定した結果、クロム量は、30mg/mであった。
【0066】
発明例10及び発明例11については、下記の方法で筐体を作製し、筐体表面温度を測定した。すなわち、得られたプレコート金属板のロ面を外側に、イ面を内側にして、底面が150mm×150mm、高さ100mmの筐体を作製し、その内部に光源として60Wの電球を配設して発光・発熱させ、筐体内部の温度が定常状態となった時点における筐体表面の温度を測定した。その結果、定常状態の温度は32℃であった。
【0067】
発明例1〜11及び比較例1〜6で作製したプレコート金属板試料について、耐傷付け性、曲げ加工性、導電性及び耐食性を下記の方法にて評価した。○、△を合格とし、×を不合格とした。
【0068】
<耐傷付け性>
プレコート金属板のイ面を上側にして、定盤の上に固定し、さらに、光ディスク、分銅をのせ、水平にディスクを滑らせてディスクの傷付きが発生しない最大荷重を測定した。
○:150g以上
△:100g以上150g未満
×:100g未満
【0069】
<曲げ加工性>
曲げ加工性は、JIS Z2248に基づいて、プレコート金属板のイ面を外側にして素板を3枚挟んで(合計厚さ1.8mm)180度曲げを行い、目視で曲げ部外観を観察した。
○:塗膜割れなし
×:塗膜割れあり
【0070】
<導電性>
プレコート金属板のイ面に、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重500gで接触させた時の電気抵抗値を測定した。
また、プレコート金属板のロ面に、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重100gで接触させた時の電気抵抗値を測定した。
○:10Ω以下
×:10Ωを超える
<耐食性>
プレコート金属板のロ面にクロスカットを入れて塩水噴霧試験を100時間行い、目視で外観を観察した。
○:腐食なし
×:腐食あり
【0071】
発明例1〜11及び比較例1〜6の上記試験結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
発明例1〜11のプレコート金属板のイ面は、ベース樹脂にナイロン系樹脂ビーズ、フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズから成る群から選択される1種または2種以上の樹脂ビーズとNiフィラーを含有する塗膜とを備え、塗膜厚は0.6μm〜2.0μmの範囲にあり、塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.8〜4.6の範囲にあり、Niフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.1以上の範囲にあり、塗膜厚に対するNiフィラーの平均粒径の比が1.2以上の範囲にある塗膜を用いた結果を示す。これらのプレコート金属板では、良好な耐傷付け性、導電性及び曲げ加工性が得られた。
【0074】
発明例1〜9のプレコート金属板のロ面は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂の中から選択したベース樹脂に、Niフィラーを樹脂固形分に対する重量比で10〜70%混合し、かつ、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックスの中から選択した潤滑剤を樹脂固形分に対する重量比で1〜5%混合した塗料を乾燥塗膜厚として0.2〜2.0μm塗装した樹脂皮膜を備えるので、耐食性及び導電性は良好であった。
【0075】
発明例10〜11のプレコート金属板のロ面は、ポリエステル系樹脂のベース樹脂c1に、グラファイトの放熱材、Niフィラーの導電材を含有する樹脂皮膜を備えるので、耐食性及び導電性は良好であった。
【0076】
一方、比較例1は、プレコート金属板のイ面の塗膜にNiフィラーが添加されていないために導電性が劣っていた。また、プレコート金属板のロ面の塗膜におけるNiフィラーの含有量が樹脂固形分に対して70%を超えるために耐食性が劣っていた。
【0077】
比較例2は、プレコート金属板のイ面の塗膜に樹脂ビーズとしてナイロン系樹脂ビーズ、フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズとは異なる樹脂ビーズを用いているために耐傷付け性が劣っていた。また、プレコート金属板のロ面の塗膜にNiフィラーが含有されていないために導電性が劣っていた。
【0078】
比較例3は、プレコート金属板のイ面の塗膜厚さが2.0μmを超えるために導電性が劣っていた。また、プレコート金属板のロ面の塗膜におけるNiフィラーの含有量が樹脂固形分に対して10%未満であるために導電性が劣っていた。
【0079】
比較例4は、プレコート金属板のイ面の塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比が4.6を超えるために、導電性及び曲げ加工性が劣っていた。プレコート金属板のロ面の塗膜におけるNiフィラーの含有量が樹脂固形分に対して70%を超えるために耐食性が劣っていた。
【0080】
比較例5は、プレコート金属板のイ面のNiフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.1未満であるために、耐傷付け性が劣っていた。また、プレコート金属板のロ面の塗膜の厚さが0.2μm未満であるために耐食性が劣っていた。
【0081】
比較例6は、プレコート金属板のイ面の塗膜厚さに対するNiフィラーの平均粒径の比が1.2未満であるために、導電性が劣っていた。また、プレコート金属板のロ面の塗膜の厚さが2.0μmを超えるために、導電性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の両面に形成した化成皮膜と、前記化成皮膜の一方の上にベース樹脂a1にナイロン系樹脂ビーズ、フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズから成る群から選択される1種または2種以上の樹脂ビーズa2とNiフィラーa3を含有する塗膜Aとを備え、該塗膜Aの乾燥塗膜厚は0.6μm〜2.0μmの範囲にあり、塗膜厚さに対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.8〜4.6の範囲にあり、Niフィラーの平均粒径に対する樹脂ビーズの平均粒径の比が1.1以上であり、塗膜厚さに対するNiフィラーの平均粒径の比が1.2以上であることを特徴とする耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板。
【請求項2】
塗膜Aを形成した面とは反対の面の前記化成皮膜の上にポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂から成る群から選択される1種または2種以上のベース樹脂b1に、Niフィラーb2を樹脂固形分に対する重量比で10〜70%混合し、かつ、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される1種または2種以上の潤滑剤b3を樹脂固形分に対する重量比で1〜5%混合した塗料を乾燥塗膜厚として0.2〜2.0μm塗装した導電性樹脂皮膜Bを更に備えたことを特徴とする、請求項1に記載の耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板。
【請求項3】
塗膜Aを形成した面とは反対の面の前記化成皮膜の上にフッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から成る群から選択される1種または2種以上のベース樹脂c1と、少なくともグラファイトを含む放熱材c2と、少なくともニッケル粉末を含む導電材c3を含有する放熱性かつ導電性の樹脂皮膜Cを更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の耐傷付け性と導電性に優れたプレコート金属板。

【公開番号】特開2008−36847(P2008−36847A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210413(P2006−210413)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】