説明

脆性材料割断装置および脆性材料割断方法

【課題】熱応力の分布を適正化することにより、割断面が割断予定線から外れることなく、良好な割断面を得られるような脆性材料割断装置および脆性材料割断方法を提供する。
【解決手段】
脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断装置であって、割断予定線に沿って幅広く形成される弱加熱領域を形成する第1レーザビーム照射手段と、割断予定線上に弱加熱領域よりも強く加熱される強加熱領域を形成する第2レーザビーム照射手段と、割断予定線上の位置に冷媒を噴射して局所的に冷却する冷却手段とを備え、冷却手段は、脆性材料の移動に伴い弱加熱領域による加熱と強加熱領域による加熱とが重ね合わされて形成される重層加熱領域を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脆性材料の割断技術に関し、特に、レーザを利用した脆性材料割断装置および脆性材料割断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを割断する方法としては、従来、ダイヤモンド等を刃先に使用したガラスカッターにより、ガラスの表面にけがき線を入れ、そのけがき線に沿って分割する方法がある。このようなガラスカッターによって切断されたガラスには、ガラスに形成される微細な亀裂であるマイクロクラックが発生しやすいので、加工後のガラスは曲げ強度等が弱くなる傾向がある。しかし、近年においては、ガラスカッターでけがき線を入れる方法に代わって、レーザを用いてガラスの表面に亀裂溝を形成する方法が実現されている。その方法はレーザスクライブ法と呼ばれる。レーザスクライブ法によって加工されたガラスには、加工時の切削小片であるカレットが発生しないことから、ガラスの割断面にマイクロクラックが形成されない。そのため、レーザスクライブ法によって加工されたガラスの方が曲げ強度等が遙かに強いなどの利点がある。
【0003】
レーザスクライブ法においては主にCOレーザが用いられ、レーザスクライブ法によって、ブラインドクラックという浅い亀裂溝をガラスの表面に形成することができる。レーザスクライブ法を用いたスクライブ工程を経ると、浅い亀裂溝は得られるが、その亀裂溝はガラスの表面に深さ0.1mm程度しか形成されない。つまり、レーザスクライブ法だけでは、ガラスを完全に分割することはできないため、ブレイクという後工程が行われるのが通常である。従って、従来技術としてのレーザスクライブ法は、ガラスを分断するために、前工程としてのスクライブと、後行程としてのブレイクという2つの工程が併用されている。
【0004】
このような従来技術に対して、レーザを利用することで、ガラス表面に亀裂溝を形成するのではなく、ガラスを厚さ方向に完全に分離加工する技術の開発も行われている。この技術はフルカット技術と呼ばれており、フルカット技術を用いると、ブレイク工程無しでガラスを分割できるという利点がある。しかし、今までのフルカット技術にはいくつかの欠点もあり、工業的な利用という観点からは現実化に向けていくつかの課題があった。
【0005】
上述したような、レーザスクライブの技術、あるいはレーザによるフルカット技術については、いくつかの技術が開示されている。例えば、レーザスクライブ法については特許文献1、2、3が、フルカット技術については特許文献4および5がある。
【0006】
特許文献1は、レーザスクライブ法について示されている。特許文献1においては、フルボディ割断技術、すなわちレーザでガラスを分離分割する技術にはいくつかの欠点があるので、スクライブ技術の方が優れているとの主張がなされており、フルカットの実効性には否定的な立場を示している。
【0007】
特許文献2は、レーザビームをガラス基板上に照射し、ガラス基板の走査方向に沿ってY軸方向に長くなった楕円形状のレーザスポットLS1と、X軸方向に沿って長くなった楕円形状のレーザスポットLS2とを、予め設定された所定の距離だけ離れて形成することが記されている。しかし、特許文献2に記載の発明の目的もガラスを分離分割することを目的としてものでは全くなく、あくまでも安定したレーザスクライブを行うことを目的としている。
【0008】
特許文献3には、ガラス板に照射したレーザビームがガラス板を繰返し往復することによってガラス板に局部的に熱応力を生じるようにしたことを特徴とするレーザによるガラス切断方法が示されている。このガラス切断方法は、局所的な熱応力を得るために、1つのレーザビームのみを使い、そのレーザビームがガラスの内部で焦点を結ぶような光学系を用いている。
【0009】
特許文献4には、紫外線レーザと赤外線レーザとを利用して基板を分割するフルカットレーザ切断方法が開示されている。この方法は、特許文献4の明細書の第0023段落に記してあるように、紫外線レーザによって基板の表面にくさび状断面の空間を形成する。つまり、加工時に破片が発生する加工方法であるので、基板断面の品質を高品位に保つことができない。
【0010】
特許文献5には、脆性材料の割断予定位置を面熱源により予備加熱して熱応力による引張り応力を与えて割断直前の状態に保持し、予備加熱されている割断予定位置に局所熱源を走査して引張り応力を増加させるフルボディ割断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3027768号
【特許文献2】国際特許出願WO−03/008168 A1
【特許文献3】特開2007−261915号公報
【特許文献4】特開2006−175487号公報
【特許文献5】特開2009−84133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、ガラスを分割する目的のために、レーザスクライブ法を用いると、後行程としてブレイク工程が必須になるので、レーザスクライブ法だけではガラスを完全に分断することができない。一方において、従来技術としてのフルカット技術を用いると、特許文献4に記載されているように割断面の面精度が劣ったりしていた。
【0013】
そこで、発明者らは、フルカット技術の実用化を目指して技術開発を行った。その技術開発を行う中で、次のような課題が明らかになった。すなわち、板厚が2.0mmを超えるような厚いガラスのフルカットを試みると、特許文献5に記載の技術を応用しても割断不良が多発した。具体的には、厚いガラスをフルカットしようとすると、割断の開始点側、すなわち初亀裂の位置から亀裂が一気に破裂するように走ってしまい、割断予定線の上を外れて割断面が形成されてしまうのである。この現象が発生すると割断の直線性精度が著しく劣化する。つまり、ガラスを真っ直ぐに切れないので、このような加工不良が発生する割断方法では工業的に利用することができなかった。この問題はガラスの板厚が1mm以下と薄い場合には見られないが、厚い場合に特に顕著になる。ガラスの種類や熱膨張率にも依存するが、ソーダガラスの場合では特に2.0mmを超える厚さになると、割断予定線から外れる現象が見られた。
【0014】
本発明はこのような課題を解決するために、熱応力の分布を適正化することにより、割断面が割断予定線から外れることなく、良好な割断面を得られるような脆性材料割断装置および脆性材料割断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による脆性材料割断装置は、脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断装置であって、割断予定線上に幅広く形成される弱加熱領域を形成する第1レーザビーム照射手段と、割断予定線上に前記弱加熱領域よりも狭い幅で、弱加熱領域よりも強く加熱される強加熱領域を形成する第2レーザビーム照射手段と、割断予定線上の位置に冷媒を噴射して局所的に冷却する冷却手段とを備え、この冷却手段が脆性材料との相対移動に伴い弱加熱領域による加熱と強加熱領域による加熱とが重ね合わされて形成される重層加熱領域を冷却するものである。
上記構成によれば、脆性材料上に別々に形成される弱加熱領域と強加熱領域とが、脆性材料の移動に伴って2つの領域が重ね合わされて重層加熱領域が形成され、その重層加熱領域を冷却手段から冷媒を噴射して冷却するので、弱加熱領域と強加熱領域とを同時に局所的に冷却することができる。その結果、割断予定線上にある強加熱領域では、弱加熱領域よりも強く加熱されているので、強く加熱されている部分を冷却することで脆性材料内部に強い引張り応力が発生する。局所的に冷却される位置の相対的な移動に伴って、割断予定線の端部位置に形成された初亀裂を割断予定線上に亀裂を伸展させることができる。
また、同時に、強加熱領域よりも弱く加熱される弱加熱領域も、弱く加熱されている部分を冷却することで脆性材料内部に弱い引張り応力が発生する。弱加熱領域は、強加熱領域と重ね合わされて形成されるので、弱加熱領域も強加熱領域と同時に冷却され、割断予定線に沿って、幅広く弱い引張り応力を発生する。弱加熱領域を冷却することで発生する弱い引張り応力により、割断予定線上に伸展された亀裂は、脆性材料の厚さ方向に深く伸展し、脆性材料を厚さ方向に分断することができる。
【0016】
また、第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームは、脆性材料を前記第1レーザビームが透過するのに伴って、前記第1レーザビームの一部が前記脆性材料に吸収され、かつ、前記第1レーザビームの一部が前記脆性材料を透過するレーザビームである。
上記構成によれば、第1レーザビームが脆性材料に照射されることで、弱加熱領域においては脆性材料の表面から裏面までの全厚さ方向に対して加熱される領域が形成される。
【0017】
また、第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームは、近赤外線の波長を発生するレーザ発振器から供給され、第2レーザビーム照射手段によって照射される第2レーザビームはCOレーザ発振器から供給される。
上記構成によれば、近赤外線の波長の第1レーザビームを光ファイバーを使って導光し脆性材料の表面に照射することができる。また、第2レーザビームはCOレーザビームであるので、脆性材料の表面に強加熱領域を効率よく形成することができる。
【0018】
また、第1レーザビーム照射手段により供給されて弱加熱領域に照射される第1レーザビームのレーザパワーは、第2レーザビーム照射手段で供給される強加熱領域に照射される第2レーザビームのレーザパワーよりも大きくしたものである。
上記構成によれば、弱加熱領域に大きなパワーが供給され、亀裂を脆性材料の厚さ方向に深く伸展させるのに十分な熱エネルギーを供給することができる。
【0019】
また、弱加熱領域に照射されるレーザの脆性材料上でのレーザパワー密度は、強加熱領域に照射されるレーザの脆性材料上でのレーザパワー密度よりも少なくしたものである。
上記構成によれば、弱加熱領域には、強加熱領域よりも少ないレーザパワー密度のビームが照射されるので、脆性材料の表面が溶解することなく、良好な割断面の面品質を保ちつつ熱エネルギーを供給することができる。
【0020】
また、第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームの一部分が、第2レーザビーム照射手段によって照射される第2レーザビームと重なり、脆性材料を第1レーザビームおよび第2レーザビームで同時に加熱する領域があるようにしたものである。
上記構成によれば、第1レーザビームによる加熱領域と第2レーザビームによる加熱領域とが重なり、加熱領域の割断予定線に沿った方向の距離が短くできるので、脆性材料の割断の開始端側において、加熱してから冷却が開始されるまでの時間が短くなる。その結果、脆性材料の割断の開始端側で、加熱だけが先行して行われている時間が短くなり、割断の開始側で亀裂が急速に発生することなく、割断予定線に沿った割断を行うことができる。
【0021】
また、本発明による脆性材料割断装置は、脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断装置であって、割断予定線に沿って脆性材料に形成される加熱部分を生成するレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、割断予定線に沿って加熱部分の後方の位置で脆性材料を冷却する冷却手段とを有し、レーザビーム照射手段は、加熱部分にて割断予定線に沿って帯状で加熱の弱い領域を形成する第1レーザビームを照射する第1レーザビーム照射部と、加熱部分にて割断予定線に沿った方向が直角方向よりも細長い形状で加熱の強い領域を形成する第2レーザビームを照射する第2レーザビーム照射部とを含み、第1レーザビームは脆性材料の内部まで浸透して吸収される波長のレーザビームであり、第2レーザビームは前記脆性材料の表面で吸収される波長のレーザビームであるものである。
上記構成によれば、第1レーザビームが脆性材料の内部まで浸透して吸収されるので、脆性材料の板厚が厚くなっても、脆性材料の表面から裏面に至るまで脆性材料の内部の加熱が行われ、割断面を深く伸展させるための熱エネルギーを脆性材料に与えることができる。
【0022】
また、第1レーザビーム照射部は、脆性材料を透過した第1レーザビームを脆性材料の裏面から脆性材料に向けて少なくとも1回反射させる反射手段を備えているものである。
上記構成によれば、脆性材料の内部で吸収されずに透過したレーザビームを、少なくとも1回、脆性材料内部に入射できるので、吸収効率を高めることができる。
【0023】
また、第1レーザビーム照射部は、脆性材料の表裏を挟んで第1レーザビームを2回以上反射させる多重反射手段を備えているものである。
上記構成によれば、脆性材料の内部で吸収されずに透過したレーザビームを、脆性材料内部に多重に入射できるので、第1レーザビームの吸収効率をより高めることができる。
【0024】
また、第1レーザビーム照射部は、第1レーザビームを導く光ファイバーを備えている。
上記構成によれば、柔軟に設置できる光ファイバーを使用するので、部品配置の制約を少なくして第1レーザビームを脆性材料上に導いて照射することができる。
【0025】
また、本発明による脆性材料割断方法は、脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断方法であって、割断予定線に沿って脆性材料の内部まで浸透して吸収される波長のレーザビームにより帯状で加熱の弱い領域を形成する第1レーザビームを照射する工程と、第1レーザビームの後方に、脆性材料の表面で吸収される波長のレーザビームにより割断予定線に沿った方向が直角方向よりも細長い形状で加熱の強い領域を形成する第2レーザビームを照射する工程と、加熱の弱い領域および加熱の強い領域の後方の位置で脆性材料を冷却する工程を含むものである。
上記構成によれば、第1レーザビームが脆性材料の内部まで浸透して吸収されるので、脆性材料の板厚が厚くなっても、脆性材料の表面から裏面に至るまで脆性材料の内部の加熱が行われ、割断面を深く伸展させるための熱エネルギーを脆性材料に与えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱応力の分布を適正化することにより、割断面が割断予定線から外れることなく、良好な割断面を得られるような脆性材料割断装置および脆性材料割断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る脆性材料割断装置の概略図
【図2】本発明の実施例1に係る脆性材料割断装置を用いて、割断している最中のガラスの様子を模式的に示した斜視図
【図3】本発明の実施例を説明するための、ガラスに対して半透過性を示すレーザビームをガラスに照射した場合の熱吸収の様子を模式的に示した断面図
【図4】本発明の実施例を説明するための、割断している最中のガラス内部の熱分布の様子を、割断予定線に沿って表したガラスの断面模式図
【図5】本発明の実施例を説明するための、ガラスを割断する場合に発生しやすい割断不良の様子を示した外観図
【図6】本発明の実施例におけるガラスのフルカット加工が開始されるタイミングで、その時間の経過を示す概念図で、(a)(b)(c)は時間順に並べて示した図
【図7】本発明の実施例を説明するための、ガラスを加熱する領域が割断予定線に沿って長い場合と短い場合との相違点を表す図で、(a)はガラスを加熱する領域が割断予定線に沿って長い場合、(b)はガラスを加熱する領域が割断予定線に沿って短い場合を示す概念図
【図8】本発明の実施例2に係る光ファイバーを備えた脆性材料割断装置の主要部を示す斜視図
【図9】本発明の実施例3に係るビーム反射部材を備えた脆性材料割断装置の主要部を示す斜視図
【図10】本発明の実施例4に係るビーム多重反射部材を備えた脆性材料割断装置の主要部を示す斜視図
【図11】本発明の実施例におけるガラス割断装置によって割断した2.8mmtのソーダガラスの赤外波長透過特性を示す図
【図12】薄い青色のソーダガラスの分光透過率特性を示す図
【図13】赤外線吸収の用途に使われる緑色のガラスの分光透過率特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明においては、熱応力の分布を適正化するために、脆性材料に想定された割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から割断予定線に沿って加熱した後冷却し、加熱および冷却する位置を脆性材料に対して相対的に移動させる構成において、割断予定線に沿って幅広く形成される弱加熱領域を形成する第1レーザビーム照射手段と、割断予定線上に弱加熱領域よりも強く加熱される強加熱領域を形成する第2レーザビーム照射手段と、割断予定線上の位置に冷媒を噴射して局所的に冷却する冷却手段とを備え、冷却手段が脆性材料の移動に伴い弱加熱領域による加熱と強加熱領域による加熱とが重ね合わされて形成される重層加熱領域を冷却する。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では脆性材料としてガラス基板を例に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1に係る脆性材料割断装置の概略図を示す図である。ガラス基板11は可動式テーブル32上に載置され、可動式テーブル32はX−Y駆動装置によりX−Y平面内を前後左右に移動する。図においては、ガラスの移動方向であるY軸駆動用のサーボモータ33とシャフト軸34のみが示されており、X軸駆動系は図示省略されている。
【0030】
ガラスを加熱するためのレーザ発振器は、本実施例においては半導体レーザ50とCOレーザ25の2台が用いられている。この半導体レーザ50は、数10Wの出力のLDモジュールを数10個程度用いて、個々のLDモジュールのビーム出力面を揃えてスタック状に組み上げた大出力が得られる半導体レーザ発振器である。本実施例においては平行ビームにコリメートされた状態で、最大1kWのレーザパワーが得られる。発振波長はλ=976nmである。なお、半導体レーザから出力されるレーザビームを、以下LDビーム(LD:laser Diode)と表記する。
半導体レーザ50から出射されるLDビーム52は、反射鏡54により鉛直下方に反射され、凹レンズ56を通して所定のビーム径になるように整形される。凹レンズ56を通過したLDビーム52は、そのままガラス基板11の表面に照射される。その結果、LDビーム52によって、ガラス基板11上に第1レーザビームによる照射領域が形成される。
【0031】
一方、COレーザ25から出射されるレーザビーム26は、ビームエキスパンダ27を経由した後、反射鏡28により鉛直下方に反射される。COレーザ25は、ガス封じ切り型で、最大出力100Wが得られるCOレーザ発振器である。ビーム径φ4mmのレーザビーム26が、ビームエキスパンダ27を通過することでビーム径が約4倍に拡大されφ16mmのビームとなる。拡大されたビームは、ビーム整形手段80を通過することで、細長いビームに整形され、ガラス基板11上で第2のレーザビームによる照射領域を形成する。
【0032】
ビーム整形手段80としては、具体的に回折光学素子(DOE)あるいはシリンドリカルレンズのような光学部品を利用できるが、本実施例においては、矩形アパーチャとシリンドリカルレンズとを組み合わせて用いている。また、本実施例においては、第1レーザビームによる照射領域と、第2レーザビームによる照射領域とがガラス基板11の表面で一部分が重なるようなビーム伝送方式になっている。
【0033】
第2のレーザビームによる照射領域の後方には、冷却装置30が設置される。冷却装置30としては、2筒管式の冷却ノズルを使用し、内円筒管から水を、外円筒管から空気を噴射させる。水と空気の混合媒体がガラス基板11に向かって噴射されることにより、ガラス基板11上に冷却点が形成される。
【0034】
第1のレーザビームの照射領域の前方には、初亀裂形成装置31が設けられる。初亀裂形成装置31は、下端部にダイアモンドカッタを備え、そのダイアモンドカッタを上下する上下機構を有している。上下機構とY軸駆動用のサーボモータ33との連動により、ガラス基板11の端部に初亀裂を形成することができる。
【0035】
本実施例においては、割断予定線に沿って、ガラス基板11上の第1レーザビームによる照射領域と、第2レーザビームによる照射領域と、冷却装置30により形成される冷却点とが一直線上に並ぶように配置される。ガラス基板11上の第1レーザビームによる照射領域と、第2レーザビームによる照射領域と、冷却装置30により形成される冷却点とを一直線上に並べることにより、ガラス基板11がY軸方向に移動するのに伴って、ガラス基板11の割断予定線上では、割断予定線を中心として、左右均等バランス良く熱応力を発生させることができる。
【0036】
次に図2を用いてフルカットを達成するための構成及び動作を説明する。図2では、図1に示したガラス基板11をその中央位置まで割断加工している最中の状態を示している。つまり、図2はフルカットが既に開始された後の状態を示しているので、以下の説明では、時間を遡って初亀裂16を形成する最初の段階から説明する。
【0037】
ガラスを割断するために、まず、ガラス基板11の割断予定線12の端部に初亀裂形成装置31(図1参照)により初亀裂16を形成する。この初亀裂16がガラス基板11の割断の出発位置となる。次に、可動式テーブル32(図1参照)の上に載置されたガラス基板11をサーボモータ33(図1参照)によりY方向に移動させる。Y方向に移動させるにあたっては、初亀裂16を形成した後、まず、可動式テーブル32を図1における−Y方向に一旦移動させ、第1レーザビームとしてのLDビーム52を照射してもその下方にガラスが無い位置まで退避させる。
【0038】
次に、半導体レーザ50とCOレーザ25とを各々所定のレーザパワー指令値で連続発振させ、LDビーム52とCOレーザビーム26とを出射する。出射されたLDビーム52は、凹レンズ56で大きな直径のビームに整形され、ガラス基板11の上に照射されて、第1レーザビーム照射領域60を形成する。一方、COレーザ25から出射されたCOレーザビーム26は、矩形アパーチャ(図示省略)とシリンドリカルレンズ48によって、割断予定線12に沿った細長い形状のビームに整形され、第2レーザビーム照射領域14を形成する。
【0039】
シリンドリカルレンズ48の後方には、冷却装置30が配置され、その冷却装置30からは水と空気の混合媒体が下方に噴射される。その結果、ガラス基板11の上には冷却点15が形成される。そして、可動式テーブル32を図1における+Y方向に一定速度で移動させる。
【0040】
LDビーム52による略円形の第1レーザビーム照射領域60によって、ガラス基板11は割断予定線12を中心に幅広い領域を弱いパワー密度で加熱される。更に、ガラス基板11は、COレーザビーム26による細長い第2レーザビーム照射領域14によって、割断予定線12に沿って、強いパワー密度で加熱される。冷却装置30の真下の位置では、ガラス基板11が移動することにより2つの加熱領域が加算された加熱領域が形成される。すなわち、ガラス基板11の上には、第1レーザビーム照射領域60と第2レーザビーム照射領域14とが重ね合わされた加算領域としての重層加熱領域が形成されている。その重層加熱領域に対して、冷却装置30は冷媒を噴射し、冷却点15を形成する。
【0041】
すると、図2に示すように、冷却点直下で初亀裂16から拡大した亀裂がガラス基板11の板厚方向に発生する。初亀裂16の付近で板厚方向に拡大した亀裂は、第1レーザビーム照射領域60と第2レーザビーム照射領域14および冷却点15の組み合わせがガラス基板11に対して相対的に移送するのに伴って、割断予定線12の前方方向に亀裂を拡大させることができる。この結果、ガラス基板11の全板厚に亘って割断面17が拡張される。
【0042】
次に、図3を用いてLDビーム52がガラス基板11を加熱する第1レーザビーム照射領域の状態を詳細に説明する。図3は、LDビーム52がガラス基板11に照射される部分を断面図として示した図で、図2に示したB−B’線の断面を示している。
【0043】
LDビーム52はガラス基板11の上方からほぼ垂直に照射されている。LDビーム52は発振波長λが976nmであるので、ガラス基板11の表面だけで吸収されるわけではなく、ガラス基板11を厚さ方向に通過する途中で、その内部においても吸収される。そのため、ガラス基板11の内部においては、表面から入射されるレーザビーム521のレーザパワーが100Wであった場合に、LDビームがその厚さ方向に進行するのに従って、100Wから90Wへ、更に90Wから80Wへと、ガラスの深部に到達するのに従いそのレーザパワーがガラス基板11に吸収されていく。レーザビームがガラス基板11の裏面にまで到達すると、ガラス基板11に吸収されなかった残りのビーム522がガラスの裏面から放出される。よって、LDビーム52によって形成される第1レーザビーム照射領域60は、図3に示すようにガラス基板11の表面と裏面とに挟まれた立体的な空間となる。
【0044】
一例として、厚さ2.8mmのソーダガラスであれば、照射されるLDビームの約50%がガラス基板11の内部に吸収され、残余の50%がガラス基板11の裏面から透過される。LDビーム52を照射した場合に発生するこのような半透過性の現象は、COレーザビームを照射した場合の現象とは大きく異なっている。COレーザビームであれば、ガラス基板11の表面でほぼ100%が吸収されるので、ガラス基板11の表面で光エネルギーが熱エネルギーに変換される。従って、COレーザビームを照射した場合に、ガラス基板11の内部が加熱されるのは、表面で発生した熱エネルギーが熱伝導によって伝わっていくプロセスしかないため、この点はLDビーム照射の場合と異なっている。
【0045】
LDビーム52を照射した場合のガラス基板11内部の様子を図4を用いて更に詳述する。図4(a)において、ガラス基板11は、第1レーザビーム照射領域60、第2レーザビーム照射領域14によって加熱されるが、まず最初に第1ビーム照射領域60で略円形に加熱される。ガラス基板11はY方向に相対移動するので、第1レーザビーム照射領域60によって加熱される部分は帯状になり、加熱領域160が形成される。次に、ガラス基板11は第2ビーム照射領域14で加熱される。その加熱による熱はY方向への相対移動に伴って、ガラス基板11の裏面方向に熱伝導してガラス基板11内に加熱領域140が形成される。冷却点15における冷却は、ガラス基板11のY方向への相対移動に伴って、その裏面方向に同様に熱伝導するので、ガラス基板11内に冷却領域150が形成される。
【0046】
この結果、冷却点15の真下におけるガラス基板11の熱分布は、図4(b)のようになる。すなわち、ガラス基板11に対して、LDビーム52によりガラス基板11の厚さに依らず裏面まで加熱されている加熱領域160と、それに続く第2ビーム照射領域14により加熱されている加熱領域140が形成される。2つの加熱領域160、140の重層部分に対して、冷却点15による冷却が作用することで、冷却点直下で亀裂がガラス基板11の深さ方向に進行し、ガラス基板11の裏面にまで達して全板厚方向に亘って割断される。この割断面は、最初、初亀裂16の部分に形成され、その直後からガラス基板11の相対移動に伴って割断予定線12に沿って進行し、割断予定線12に沿ったフルカットが実現される。
【0047】
実験で判明した最も好適な実施例として、ソーダガラス2.8mmtに波長λ=976nmの半導体レーザを入射角0°で照射したところ、吸収率は約50%であることがわかった。ソーダガラス2.8mmtにレーザスクライブを入れられる条件を探して、その条件のもとで、COレーザビーム26と重なるようにLDビーム52を照射したところ、割断速度50mm/sでフルカットが可能となった。その場合のガラスに照射するLDビーム52のレーザパワーは685W、COレーザビーム26のレーザパワーは42W、LDビーム52による第1レーザビーム照射領域60は直径約20mmの略円形の形状とし、そのLDビーム52による第1レーザビーム照射領域60のほぼ中心にCOレーザビーム26による細長い第2レーザビーム照射領域14の先端部が位置するような合成ビームプロファイルを形成した。すなわちLDビーム52による第1レーザビーム照射領域60とCOレーザビーム26による細長い第2レーザビーム照射領域26とを重ならせた。その結果、直線性精度の良い、良好な割断の割断面が得られた。
【0048】
注目すべきことは、LDビーム52はガラス基板11に対して半透過性の性質を示すので、LDビーム52を照射するエリアで、ガラス基板11の表面と裏面とで囲まれる立体的な加熱領域60が形成される点である。これは、ガラス基板11の板厚が厚くなっても同様であるので、ガラス基板11の内側からレーザビームで直接に加熱できる。また、LDビーム52は光速でガラス基板11を透過するので、立体的な加熱領域60は、LDビーム52の照射と同時に生成されるといってよい。
【0049】
なお、実験では第1レーザビームとして波長λ=976nmのLDビーム52を用いたが、他の実験結果としては、波長λ=1064nmのNd:YAGレーザを用いた場合でも、ソーダガラス2.8mmtに対して約52%のレーザパワーが吸収され、かつ、残余の45%のレーザパワーが透過することを確認した。ちなみに、同ソーダガラス2.8mmtを2枚重ねた場合には板厚が2倍になるため、約76%のレーザパワーが吸収され、22%のレーザパワーが透過した。よって、第1レーザビームのレーザ光源は半導体レーザに限定されるものではなく、第1レーザビームの一部がガラス基板11に吸収され一部が透過するようなガラス基板11に対して半透過性のレーザビームを発振するレーザ光源であればよく、波長λが800nmm以上1500nm以下の範囲の近赤外線波長を発振する半導体レーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバーレーザなどの各種の近赤外線レーザ発振器を使用することができる。
【0050】
次に、ガラス基板11をレーザで割断する場合に発生しやすい加工不良について詳細に説明する。図5は、レーザを用いてガラスを割断する場合に発生しやすい割断不良の様子を示した平面図である。ガラス基板11の上に想定された直線形状の割断予定線12をレーザ割断加工した後の状態を示している。図示したように、初亀裂16からフルカットの割断面になっているが、その割断面64は、割断予定線12から外れた軌跡となり湾曲している。このような亀裂は、初亀裂側からの亀裂の生成速度が非常に大きく、亀裂が破裂するように一気に進行する場合に発生してしまう。湾曲した亀裂が形成されると直線性精度が著しく劣化するため、このような加工不良が発生する割断方法では工業的に利用することができなかった。以下に、このような割断不良が発生する理由とその割断不良の解決手段について、図6および図7を用いて説明する。
【0051】
前述したように、本実施例においては、割断予定線12の前方に照射される第1レーザビームとしてLDビーム60を使用している。LDビーム60は、ソーダガラスに対して半透過性の性質を示すので、図3で説明したように、ガラス基板11を内部から加熱できるという特徴がある。
【0052】
一方において、割断予定線12の前方に照射される第1レーザビームとして、半導体レーザに変えてCOレーザを使用することもできる。ただし、COレーザを使用した場合には、ガラス基板11の表面でほぼ100%のレーザパワーが吸収される。そのため、ガラス基板11の内部を加熱するためには、表面で吸収されたレーザビームが熱に変換され、ガラスの裏面方向に向かって熱伝導される必要がある。従って、COレーザを前方に照射する場合には、ガラス基板11の裏面に熱伝導するまでの時間をかせぐために、冷却点15とCOレーザビームの前方照射位置との間に距離を設ける必要がある。その離隔距離は、ガラス基板11の板厚及びガラスの加工速度に依存した最小許容値がある。ガラス基板11が厚くなると、離隔距離を所定の最小許容値よりも大きく設定する方が良好な割断面を得る上で好ましい。そのため、このCOレーザビームを第1レーザビームとして用いる場合に、厚さが厚いガラス基板11をフルカットしようとすると、離隔距離を大きく設定しなければならない。
【0053】
他方において、LDレーザの波長のビームを用いる場合には、冷却点15とLD照射位置60との離隔距離を大きくする必要がない。前述したように、LDレーザのビームがガラス基板11に対して半透過の特性を示すために、ガラス基板11の厚さ方向に均一に加熱することができるためである。距離を離す必要がないので、冷却点15とLD照射位置60の離隔距離は短い。このことは、ガラス基板11をフルカット割断する場合に、ガラス基板11に初亀裂16を入れた開始端側において、次のような作用効果をもたらす。その作用効果を図6(a)、図6(b)および図6(c)を用いて説明する。
【0054】
図6(a)、図6(b)および図6(c)は、ガラス基板11のフルカットが開始されるタイミングで、その時間の経過の順番に(a)(b)(c)と並べて示した図である。ガラス基板11が移動することで、初亀裂16側からフルカットが開始される瞬間を、3つのタイミングを切り出して(a)(b)(c)と並べて示している。ガラス基板11が+Y軸方向に移動するので、ガラス前端線11aの位置は、(a)から(b)への経過に伴い距離y1だけ右に移動している。また、(b)から(c)への経過に伴い、ガラス前端線11aの位置は、距離y2だけ右に移動している。ガラス基板11が移動するのに対して、それ以外の構成部分は動いておらず、LDビームの第1ビーム照射領域60と、第2ビーム照射領域14と、冷却点15については、図6(a)、図6(b)、図6(c)のいずれでも固定された同じ位置にある。
【0055】
図6(a)に示すように、まだ、ガラス前端線11aにレーザビームが照射されていないタイミングにおいては、ガラス基板11は一切加熱されていない。図6(b)は、図6(a)よりも時間が経過した状態を示しており、ガラス基板11が+Y方向にy1だけ移動している。図6(b)に示すように、このタイミングにおいては、LDビームの全部とCOレーザビームのほぼ全部がガラス基板11に照射される。冷却点15は、まだガラス基板11の上にない。従って、図6(b)のタイミングにおいては、図6(b)に帯状のハッチング領域として示した重層加熱領域74が加熱されるエリアとなる。ここで、仮に、LDビームの照射領域60の前端から、ガラス前端線11aまでの長さをd1とすると、この長さd1がガラスに注入される熱量の大きさを表す目安となる。図6(c)には、図6(b)よりも時間が経過した状態を示しており、ガラス基板11が更にy2だけ移動している。このタイミングでは、冷却点15がガラス基板11の上にあり、ちょうど初亀裂16の位置に冷却点15が形成されている。
【0056】
ガラスをフルカットする場合に、COレーザを第1レーザビームとして用いた場合には、図6(c)に示すように冷却点15がガラス前端線11aに達したタイミングで、小さな初亀裂が拡大し、破裂するように大きな亀裂に成長することが多い。初亀裂から一気に成長するこのような亀裂は加工不良になる。冷却点15がガラス基板11に達した途端に大きな亀裂が発生してしまう要因の一つは、冷却が行われるまでにガラス基板11に注入される熱エネルギーが大きくなり過ぎてしまうことである。つまり、帯状に加熱される重層加熱領域74の割断方向への長さが長くなると、ガラス基板11に過大な熱エネルギーを与えてしまう。そのことを、図7を用いて説明する。
【0057】
図7は、ガラス基板11を加熱する領域が割断予定線12に沿って長い場合と短い場合との相違点を表す概念図である。図7(a)、図7(b)のいずれも、第1レーザビームとしてLDビームを照射し、第2レーザビームとしてCOレーザビームを照射する。図7(a)、(b)に示すように、帯状に加熱されたガラス基板11が平面的に膨張することに伴って、割断予定線12に沿ってガラス基板11を左右に開こうとする力が発生する。図7(a)に示すように、加熱領域74の長さ、すなわち、LDビームの照射領域60の前端からガラス前端線11aまでの長さd2が長くなると、比較的大きな引張り応力F1,F2が発生する。この引張り応力F1,F2は割断予定線12の向きに直角な方向に、左右対称に発生するので、初亀裂(図示省略)の位置でガラスを左右に開いて亀裂を生じさせようとする力として作用する。この引張り応力F1,F2の大きさは加熱領域74の長さに依存するので、図7(b)に示すようにその長さd3が短いと(d3<d2)、ガラス基板11を左右に開こうとする力F3,F4は小さくなる(F3<F1、|F3|=|F4|、|F1|=|F2|)。
【0058】
初亀裂の位置に熱衝撃が加わった場合に、割断予定線12から外れた亀裂が一挙に発生するのは、帯状の加熱によって図7(a)に示すような大きな引張り応力F1,F2がかかっている状態といえる。よって、割断予定線12から外れるような亀裂が発生しないようにするためには、図7(b)に示すように帯状の加熱領域74の長さd3を短くすることが必要となる。長さd3を短くするために、本実施例においては、LDビーム56の照射領域60とCOレーザビーム26の照射領域14とを重ね合わせている。そのため、図7(b)に示すように、ガラス基板11を左右に開こうとする力F3,F4を小さくできるため、亀裂が一気に発生せず、割断不良の発生が防止される。
【0059】
COレーザであれば、ガラス表面で吸収された熱が熱伝導によりガラス裏面にまで伝導する時間が必要となるため、図7(a)のように加熱領域の長さd2をある程度長く設けなければならないという制約がある。しかし、加熱領域の長さd2を長く設けると、初亀裂の位置が冷却される直前までに帯状に蓄えられる熱エネルギーが過大になるため、制御不能な亀裂が発生し加工不良となる。すなわち、第1レーザビームとしてCOレーザを用いた場合には、ガラス基板11を裏面まで加熱することと、前方照射位置と冷却点との距離d2を短くすることを両立できないのである。しかし、半透過性のレーザビームであれば、レーザビームがガラス基板11に直接吸収されるので、距離d2を短くできる。このように、第1レーザビームとしてガラス基板11に対して半透過性の性質を示すレーザビームを用いることにより、COレーザビームでは対応できないフルカット加工が可能となり、特に厚板ガラスのフルカットが可能となる。
【0060】
従来までのフルカット技術では、割断面の品質に問題があり、マイクロクラックが無い良好な面質の割断面を出すことができなかった。あるいは、従来までのフルカット技術では、サイズ効果の課題を克服できないため、割断線が湾曲したり、大きなサイズのガラス基板11の中央部分の割断が困難であったりした。しかし、本発明によれば、上記の課題や問題点を全て解決することができる。
【0061】
更に、従来までのレーザスクライブ技術では、ガラス基板11の表面に深さ0.1mm未満の亀裂溝を発生させることしかできなかった。しかし、本発明によれば、厚さ2.8mmtのソーダガラスのフルカットに成功しているので、割断面の深さを単純に数値比較すれば、従来技術の28倍もの亀裂深さを達成している。その結果として、従来では必須の工程であったブレイク行程が不要となるという顕著な効果を得られた。
【0062】
ブレイク行程が不要になることのメリットを具体的に表す。一例として、従来の方法では、レーザスクライブを行う機械とブレイクを行う機械を別々に製造し、ガラス基板11をスクライブした後に、ガラス基板11をスクライブの機械から取り出し、ブレイクの機械に搬送してガラス基板11を分割するということが行われていた。場合によっては、ガラス基板11を上方から押してブレイクするために、搬送の途中で、ガラス基板11をひっくり返す反転工程が付加されることもある。本発明に係る脆性材料割断装置を用いると、ブレイクを行う機械が不要となり、ガラス基板11の搬送工程も反転工程も省けるので著しい工数低減の効果を得られる。また、ブレイクを行う機械一台が不要になるので、設備購入のための費用削減という意味でも、その効果は極めて大きい。
【実施例2】
【0063】
図8は、本発明の実施例2に係る脆性材料割断装置の概略図を示す図である。図2と同じ構成部品については、同じ符号を付し、その説明を省略する。光ファイバー82を用いて、第1レーザビームとしてのLDビームを第2ビーム照射領域14の前方に直接導いていることに特徴がある。半導体レーザの発振波長は主に近赤外線の波長を示すものが多い。例えば、近赤外線の範疇に分類される波長800nmから3000nmまでのレーザ発振器であれば、光ファイバーによってレーザビームを柔軟に導くことができる。そのように活用できるレーザ発振器として、例えば、GaAs半導体レーザ、AlGaAs半導体レーザ、InGaAsP半導体レーザ、Ti:サファイアレーザ、Nd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Tm:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Er:YAGレーザ、HFレーザ等を用いることができる。あるいは、ファイバーレーザを用いてもよい。本発明を実施するには、大出力のレーザパワーを低損失で伝送できる石英製コアの光ファイバーを適用できるという点で、800nm以上1500nm以下の範囲の発振波長のレーザの適用が望ましい。更に、ガラス基板11の板厚にもよるが、厚いガラス基板11をフルカットする場合には数100W以上の大出力が容易に得られる方が好ましいので、特に、半導体レーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバーレーザの適用が好ましい。これらのレーザは石英製コアの光ファイバーと組み合わせるのが容易であると特性をもつ点でも好ましい。
【0064】
図8に示すガラス基板11は、アルマイト処理された平面のアルミ製のテーブル(図示せず)の上に載置される。よって、ガラス基板11を透過したLDビームは、アルミ製のテーブルの表面で吸収あるいは乱反射されて、透過したパワーが減衰される。光ファイバー82を用いることにより、LDレーザの発振器等を加工テーブルとは離れた位置に設置することができる。また、光ファイバー82は電気ケーブルと同等の柔軟な取扱いでLDビーム導くことができ、所望の角度でレーザビームをガラス基板11に照射することができるため、ガラス基板11を載置するテーブルの上方のスペースを有効に活用することができる。
【実施例3】
【0065】
図9は、本発明の実施例3に係る脆性材料割断装置の概略図を示す図である。ガラスを載置するテーブルは、ガラスが割断される予定の割断線に沿って、帯状にその表面を鏡面研磨されたアルミ製の鏡面テーブルを用いる。ガラス基板11の下に置かれる鏡面テーブルには、LDビームの反射率を高めるために金メッキ処理を施してもよい。シリンドリカルレンズ48の横の位置には、全反射ミラー49がミラーホルダ機構部(図示省略)に保持されて、鏡面テーブルの上方に所定の設置角度を保ちながら固定されている。割断予定線上に、平行光にコリメート処理されたLDビーム53が直接入射されている。LDビーム53は、割断予定線に対して斜めの角度を持って入射している。割断予定線の下の位置には、金メッキされた鏡面プレートが置かれる。LDビーム53は一部がガラス基板11を透過するが、ガラス基板11の裏面を透過後、鏡面テーブルで反射されて再度ガラス基板11の内部に入射される。ガラス基板11を透過したビームは、全反射ミラー49に照射され、反射されて再度ガラス基板11に入射される。
【0066】
本構成であれば、LDビーム53の入射経路を斜めに設置することができるので、シリンドリカルレンズ48に干渉することなく、細長いCOレーザビームの照射エリアと矩形型のLD照射エリアとを重ねて照射することができる。また、一旦ガラス基板11に照射されて吸収されずにガラス基板11上方に反射してきたLDビーム53を再度ガラス基板11に向けて照射することができるので、LDビーム53の吸収効率を高めることができる。
【実施例4】
【0067】
図10は、本発明の実施例4に係る脆性材料割断装置の概略図を示す図である。割断予定線の下方の位置には、実施例2、3と同様に、金メッキされた鏡面プレートが置かれる。割断予定線の上方の位置には、長方形の全反射ミラー88を配置している。この全反射ミラー88は、その反射面が鏡面プレートと対向する向きに置かれ、さらに反射面は鏡面プレートと平行に設置される。LDビーム52は、ガラス基板11を1回透過した後に、最初に金メッキの鏡面プレートに入射される。その後は、上方の長方形の全反射ミラー88で全反射される。このように、鏡面プレートと長方形の全反射ミラー88との間でジグサク経路の多重反射が行われ、その多重反射が行われる度に、LDビーム52のレーザパワーは効率よくガラス基板11に吸収される。本実施例によれば、LDビーム52に対するガラス基板11の吸収率が低い場合でも、多重反射することでガラス基板11に吸収される熱の吸収率を統合的に高めることができる。
【0068】
実施例1〜4において説明した脆性材料割断装置によって割断した2.8mmtのソーダガラスの赤外波長透過特性を図11に示す。なお、本明細書では、近赤外の波長領域を波長0.76μmから2.5μmの範囲、中赤外を波長2.5μmから5μmの範囲、遠赤外を波長5μmから1000μmの範囲として記載する。
【0069】
図11に示すように、赤外分光装置を用いて測定した結果、同ソーダガラスの透過率が大きく低下するのは波数3700cm−1から波数2000cm−1の範囲、つまり波長換算で2.7μmから5.0μmの範囲であると確認できた。すなわち中赤外の領域で透過率が大きく変化する。他の種類のガラスについても調べたところ、やはり同じ波長範囲で透過率が低下する特性は同様であった。
【0070】
この中赤外の波長領域に発振波長をもつレーザ発振器の一つとしては、例えばEr:YAGレーザがある。Er:YAGレーザを前方照射のレーザとして使用すれば、ソーダガラスのみならず、いずれの種類のガラスであってもフルカットを実現できる可能性がある。ただ、Er:YAGレーザは、出願時点で100Wを超える高い平均パワーを安定して獲得することが難しい。
【0071】
そこで、100W以上の高い平均パワーが得られ、かつ、既に製品化されているレーザ発振器の利用を考えると、近赤外に発振波長をもつ高出力レーザの利用が好ましい。すなわち、AlGaAs系またはInGaAsP系の高出力半導体レーザ。Ndドープ系の固体レーザ。Er、YbあるいはNdドープ系のファイバーレーザ等が活用できる。厚いガラスのフルカットには、これらの高出力レーザを採用することが望ましい。なお、これらのレーザは、概ね波長760nmから1500nmの波長範囲(あるいは波長800nmから1500nmの範囲)に固有の発振波長を示すものが多い。
【0072】
ところで、一般のガラス板は、目に見える波長の光(可視光線:波長範囲でλ=400nm〜760nm)を透過するという物性をもつので透明に見える。透明には、無色透明と有色透明の2つがある。無色透明なガラスは可視光線を吸収せず、まんべんなく透過するのでガラスに色が付かない。有色透明なガラスは、可視光線の一部(その波長の光)が吸収されるので、その色が欠損し、吸収された可視光線の色以外の色がガラスに付いて見える。一例として、波長430nmの青い光を吸収できる紫外線カットフィルター用のガラスが、黄色やオレンジ色のような暖色系の色合いに見えることからもそのことが理解できる。
【0073】
さて、本発明の一つの実施形態では、波長λ=976nm(以下、簡略のためλLDと記す)の近赤外のLDビームを活用して、ソーダガラスのフルカットが可能になった。図12は、ある種類のソーダガラスの分光透過率特性を示すグラフである。(ちなみに、このグラフに記載されている特性のソーダガラスと、実験においてフルカットした2.8mmtのソーダガラスとは、正確には種類の異なるソーダガラスである。ただし、両方とも同じソーダ石灰ガラスの範疇であることから、分光透過率の定性的な特性を説明するために、この図12のグラフを記載した。)
【0074】
図12に示された、厚さ5mmの場合の特性曲線を読むと、λLDでの透過率は72%であり、波長760nm(すなわち赤色の光、以下λREDと略記する)における透過率は80%である。ガラスの表裏面では反射があるので全入射光量内の6%程度は反射で失われる。しかし、その反射分を差し引いても、λLDにおいても、λREDにおいても、10%を上回る光量がガラスに吸収される。
【0075】
ここで、可視光線領域の下限値である波長0.40μm(すなわち紫色の光、以下λVLTと略記する)に対する透過率を読むと87%となる。従って、この5mmのソーダガラスは、λVLT(透過率87%)よりもλRED(透過率80%)での方が透過率が低い。すなわち、このソーダガラスは紫色よりも赤色の光をより多く吸収している。
前述したように、有色透明なガラスは、可視光線の一部の光が吸収されて、その色が欠損するので、吸収された可視光線の色以外の色がガラスに付いて見える。よって、赤色の光を多く吸収する同ソーダガラスは青みがかった色が付く。本発明の実験検証に用いた厚さ2.8mmtのソーダガラスも薄い青色のガラスである。
【0076】
本発明の一つの実施形態であるLDビームを利用する実施形態の場合には、λLDにて半透過の特性であることが望ましく、最大でも透過率80%程度を上限とし、概ね20%を下限とするような特性がより好ましい。フルカットが達成されるかどうかは、λLDにおいて半透過性を示すことが望ましく、可視光線の波長範囲での透過率が何%であるのかは重要ではない。ただし、本実施形態においては、λLDが、可視光線領域の上限値であるλREDと数値的に近い波長となっている。よって、λLDにおける透過率が低いという物性のガラスであれば、λREDでの透過率も自然と低くなる傾向になる。そのことを図13を用いて補充して説明する。
【0077】
図13は、緑色のガラスの透過率特性を示す図である。この緑色ガラスは赤外線を吸収するガラスであり、冷暖房効果を高めるために窓ガラスの材料として使われたりする。赤外線を吸収する目的であるから、図13に示すように0.8μmから1.5μmの波長範囲で透過率の曲線が凹形状に低く窪んでいる。そのため、λREDでの透過率も40%以下の低い値になっている。このように、近赤外での透過率が低ければ、それに近接するλREDでの透過率も低くなる傾向がある。また、波長0.5μmに透過率のピークがあるので、このガラスは緑の色が付いて見える。
【0078】
まとめると、無色透明なガラス板であれば、ガラスの可視光線に対する透過率は90%以上を示す。逆に言うと、可視光線に対する透過率が90%を下回るようなガラスは、無色透明とならず、有色透明の色付きガラスとなる。前述したように、ガラスに色が付いているかどうかは、フルカットの成否には直接的な因果関係は無い。しかし、本発明の実施形態において、近赤外で100Wを超える高い平均レーザパワーを有するレーザを採用する場合には、そのレーザの発振波長でガラスが半透過性を示す方が望ましい。従って、自ずと、λREDでの透過率がλVLTでの透過率よりも低くなる傾向にあり、その結果、加工対象であるガラスは青や緑のような寒色系の色合いを示すことになる。
【0079】
つまり、本発明の一つの実施形態である、λLDのLDビームを用いたガラス割断装置においては、例えば、ブラウンやグレーのような有色透明のガラスのフルカットにも有効であるし、更に好ましくは、紫や青や緑のような寒色系の色合いのガラスのフルカット加工に、より適している。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明による脆性材料の割断装置および脆性割断方法は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイや携帯電話、携帯端末などの表示装置用に用いるガラスの割断、石英、セラミック、半導体などの各種の脆性材料の割断に適用して好適である。
【符号の説明】
【0081】
11 ガラス基板
12 割断予定線
14 第2レーザビーム照射領域
15 冷却点
16 初亀裂
17 割断面
23 反射鏡
24 凹レンズ
25 COレーザ
26 COレーザビーム
27 ビームエキスパンダ
28 反射鏡
29 回折光学素子
30 冷却装置
31 初亀裂形成装置
32 可動式テーブル
33 サーボモータ
34 シャフト軸
60 第1レーザビーム照射領域
50 半導体レーザ
52、53 LDビーム
54 反射鏡
56 凹レンズ
48 シリンドリカルレンズ
49 全反射ミラー
64 割断面
74 重層加熱領域
76 重層加熱領域
80 ビーム整形手段
88 全反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断装置であって、前記割断予定線上に幅広く形成される弱加熱領域を形成する第1レーザビーム照射手段と、前記割断予定線上に前記弱加熱領域よりも狭い幅で、前記弱加熱領域よりも強く加熱される強加熱領域を形成する第2レーザビーム照射手段と、前記割断予定線上の位置に冷媒を噴射して局所的に冷却する冷却手段とを備え、前記冷却手段は、前記脆性材料との相対移動に伴い前記弱加熱領域による加熱と前記強加熱領域による加熱とが重ね合わされて形成される重層加熱領域を冷却することを特徴とする脆性材料割断装置。
【請求項2】
第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームは、脆性材料を前記第1レーザビームが透過するのに伴って、前記第1レーザビームの一部が前記脆性材料に吸収され、かつ、前記第1レーザビームの一部が前記脆性材料を透過するレーザビームであることを特徴とする請求項1に記載の脆性材料割断装置。
【請求項3】
第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームは、近赤外線の波長を発生するレーザ発振器から供給され、第2レーザビーム照射手段によって照射される第2レーザビームはCOレーザ発振器から供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脆性材料割断装置。
【請求項4】
第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームは800nmm以上1500nm以下の範囲の波長であるレーザビームを発生するレーザ発振器から供給され、第2レーザビーム照射手段によって照射される第2レーザビームはCOレーザ発振器から供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脆性材料割断装置。
【請求項5】
第1レーザビーム照射手段により供給されて弱加熱領域に照射される第1レーザビームのレーザパワーは、第2レーザビーム照射手段で供給される強加熱領域に照射される第2レーザビームのレーザパワーよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の脆性材料割断装置。
【請求項6】
弱加熱領域に照射される第1レーザビームの脆性材料上でのレーザパワー密度は、強加熱領域に照射される第2レーザビームの脆性材料上でのレーザパワー密度よりも低いことを特徴とする請求項1または請求項5に記載の脆性材料割断装置。
【請求項7】
第1レーザビーム照射手段によって照射される第1レーザビームの一部分が、第2レーザビーム照射手段によって照射される第2レーザビームと重なり、脆性材料上の一部分を第1レーザビームおよび第2レーザビームで同時に加熱する領域を有することを特徴とする請求項1に記載の脆性材料割断装置。
【請求項8】
脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断装置であって、前記割断予定線に沿って、前記脆性材料に形成される加熱部分を生成するレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、前記割断予定線に沿って、前記加熱部分の後方の位置で前記脆性材料を冷却する冷却手段とを有し、前記レーザビーム照射手段は、前記加熱部分にて、前記割断予定線に沿って帯状で加熱の弱い領域を形成する第1レーザビームを照射する第1レーザビーム照射部と、前記加熱部分にて、前記割断予定線に沿った方向が直角方向よりも細長い形状で加熱の強い領域を形成する第2レーザビームを照射する第2レーザビーム照射部とを含み、前記第1レーザビームは前記脆性材料の内部まで浸透して吸収される波長のレーザビームであり、前記第2レーザビームは前記脆性材料の表面で吸収される波長のレーザビームであることを特徴とする脆性材料割断装置。
【請求項9】
第1レーザビーム照射部によって照射される第1レーザビームは、800nmm以上1500nm以下の範囲の波長であるレーザビームを発生するレーザ発振器から供給され、第2レーザビーム照射部によって照射される前記第2レーザビームはCOレーザ発振器から供給されることを特徴とする請求項8に記載の脆性材料割断装置。
【請求項10】
第1レーザビーム照射部は、脆性材料を透過した第1レーザビームを前記脆性材料の裏面から前記脆性材料に向けて少なくとも1回反射させる反射手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の脆性材料割断装置。
【請求項11】
第1レーザビーム照射部は、脆性材料の表裏を挟んで第1レーザビームを2回以上反射させる多重反射手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の脆性材料割断装置。
【請求項12】
第1レーザビーム照射部は、第1レーザビームを導く光ファイバーを備えていることを特徴とする請求項8に記載の脆性材料割断装置。
【請求項13】
脆性材料に想定された割断予定線に対して、その割断予定線の端部位置に形成された初亀裂の側から前記割断予定線に沿って加熱した後冷却して、その加熱および冷却する位置を前記脆性材料に対して相対的に移動させて割断する脆性材料の割断方法であって、前記割断予定線に沿って前記脆性材料の内部まで浸透して吸収される波長のレーザビームにより帯状で加熱の弱い領域を形成する第1レーザビームを照射する工程と、前記第1レーザビームの後方に、前記脆性材料の表面で吸収される波長のレーザビームにより前記割断予定線に沿った方向が直角方向よりも細長い形状で加熱の強い領域を形成する第2レーザビームを照射する工程と、前記加熱の弱い領域および加熱の強い領域の後方の位置で前記脆性材料を冷却する工程を含む脆性材料割断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−11972(P2011−11972A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127970(P2010−127970)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(503390651)株式会社レミ (34)
【Fターム(参考)】