説明

脱炭酸反応にてカルボン酸と炭素求電子剤とをC−C結合にて結合させる方法

【課題】触媒である遷移金属または遷移金属化合物の存在下にて、カルボン酸塩と炭素求電子剤とを反応させて、カルボキシル基を除去してC−C結合を形成する方法に関する。
【解決手段】脱炭酸反応によりカルボン酸塩と炭素求電子剤とのC−C結合を形成する方法であって、触媒は2種の遷移金属及び/または遷移金属化合物を含み、一方は、酸化数I相違する酸化状態をとることができ、脱炭酸を触媒し、他方は酸化数II相違する酸化状態をとることができ、C−C結合形成反応の2電子過程を触媒する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
遷移金属触媒の存在下、カルボン酸塩からカルボキシル基を除去することで形成される炭素求核剤と炭素求電子剤とのC−C結合の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤や作物保護剤の調製において、ジアリール基礎構造は機能性物質の重要な官能部分である。このような化合物の合成には、アリールのハロゲン化物とボロン酸との鈴木カップリング反応が用いられる。なぜなら、この反応は操作が簡単で収率も高く、多くの官能基と置換パターンを選択できるからである。特に興味深いのは、殺菌剤製造の中間体である2−ニトロ−4´−クロロジフェニルである。鈴木カップリングの例として工業的製造方法を化2に示す。
【0003】
【化2】

【0004】
しかし、上記方法を工業的に使用するには、特に、ボロン酸が入手困難であり、それ故に高価であるという問題がある。メタル化ビニル、ハロゲン化アリール、ホウ酸トリアルキルとの反応によるボロン酸合成は難しく、さらに全ての官能基に適合できるわけではない。さらには、有機ハロゲン化物とジボロン化合物との触媒を用いた交差カップリング反応が広く使用されているが、高価ゆえ工業的使用はほとんど見られない。ピナコールボランまたはカテコールボランからのボロン酸の合成も、高コストゆえ工業的使用には適切ではない。
【0005】
他のジアリール合成は、収率、実施可能性及び適応幅の面で鈴木カップリングに比べて明らかに劣っている。例えば、ルイス酸とブレンステッド酸の存在下で相互に反応するショール(Scholl)反応では、一般的に収率が不十分でいくつかの官能基と適応できるだけとされている。同じことがゴンベルグ−バッハマン(Gomberg‐Bachmann)反応にも当てはまる。銅化合物の存在下にて2つのヨウ化アリールがカップリングされるウルマン(ullmann)反応も広く使用されるが、対称性を持つ化合物の合成において満足のいく収率が得られるのみである。
【0006】
アリールマグネシウム、アリール亜鉛、アリールリチウムとの触媒を用いた交差カップリング反応では、これら化合物の取り扱いが難しく、官能基との親和性も低いため、鈴木カップリング反応より有用ではない。アリールシロキサンと毒性アリールスタンナンだけは、アリールボロン酸と類似の優れた特性を有している。しかし、これら化合物の調製にも上記と同様の問題がある。
【0007】
このように、優れた利用可能性、操作性及び経済性の面で、炭素求核試薬による新たな交差カップリング反応が必要である。カルボン酸の金属塩は、広く利用可能であり好ましい出発物質である。従って、有機金属種が、カルボン酸塩からカルボキシル基を除去することによりin situで生成し炭素求電子剤に結合するカップリング反応は、特にジアリールの調製にも利用できる場合に、注目される。
【0008】
従来技術に、関連する反応が1つだけある。それは、過剰のハロゲン化アリール存在下におけるカルボン酸銅の熱分解により、他の生成物との間で対応するジアリールが、錯体の反応混合物の成分として、形成する反応である。しかし、この反応は、極端に高い温度(240℃)、低い収率、大量の銅塩、それに基質が限られる点で商業的利用には適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、広く一般に使用でき且つ触媒を用いた、炭素求電子剤と炭素求核剤を交差カップリングする方法であって、前記炭素求核剤をカルボン酸金属からカルボキシル基を除去することによりin situで生成する方法を改良することである。特に困難であったのは適切な触媒系を見出す点であった。なぜなら、通常、カルボン酸の脱炭酸はフリーラジカル機構を通じて行われるが、交差カップリング触媒は、2電子過程(two‐electron processes)だけを選択的に促進してフリーラジカル反応ステップは抑制するからである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、触媒である遷移金属または遷移金属化合物の存在下、カルボン酸塩と炭素求電子剤とを、該カルボン酸塩からカルボキシル基を除去することで、C−C結合にて結合させる方法を提供する。
【0011】
【化3】

【0012】
上記した本発明のスキームは、脱炭酸によるカルボン酸塩と炭素求電子剤の交差カップリングである。
【発明の効果】
【0013】
2または3以上の金属化合物を含む触媒系は、上記化3に係る脱炭酸によるカルボン酸塩と炭素求電子剤の交差カップリングを効果的に触媒する。
【0014】
前記触媒系は、少なくとも2つの異なった遷移金属化合物を含有しているのが好ましい。特に適した触媒系は、第1の遷移金属が酸化数Iだけ異なる酸化状態をとることができ、第2の遷移金属が相互に酸化数II相違する酸化状態をとることができるものである。前記第1の遷移金属はフリーラジカルの脱炭酸反応を触媒し、前記第2の遷移金属は交差カップリング反応の2電子過程を触媒する。これら同時に起こる触媒反応は、相互に妨害し合うことはない。触媒成分が共同でこれらの反応を促進するとは思えず、脱炭酸ステップは、触媒量が極めて少量であってもこれまでにない低い温度で行われる。
【0015】
基質に応じて2または3以上の異なる遷移金属または遷移金属化合物を使用するとき、第1の触媒成分として第1の金属化合物を化学量(stoichiometricamount)で使用することができ、第2の触媒成分として第2の金属または金属化合物を触媒量で使用することができる。
【0016】
さらに、この触媒系の作用は、カルボン酸塩が二酸化炭素を放出して炭素求核剤に変わり、この炭素求核剤が炭素求電子剤と結合して炭素−炭素結合を形成することを特徴とする。
【0017】
カルボン酸塩は、ボロン酸といった有機金属化合物よりも安価で入手しやすく操作が容易という点で上記従来技術よりも優れている。本発明に係る触媒系は交差カップリングを触媒する第2金属成分を添加することにより、新触媒としての利点が生じる。このように、低温にて、より広範囲の基質を高い選択性と収率で反応させることができる。さらには、ニルソン工程では化学量の銅が必要なのに対し、遷移金属は触媒量のみあればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る触媒系は、2つの金属成分を含むのが好ましい。第1の成分は酸化数Iだけ異なる2つの酸化状態をとれる金属が好ましく、例えば、Ag(0、I)、Cu(0、I、II)、Mn(II、III)、Fe(II、III)、Co(II、III)、Ni(II、III)、Mo(IV、V)、Ru(II、III)からなる群から選択された金属が好ましい(上記かっこ内は、酸化状態の適当な組み合わせ例である)。上記の通り、前記金属は、錯体または塩として、元素形態で使用される。特に、銅化合物または銀化合物を使用することが好ましく、特に、銅(I)化合物を使用するのが好ましい。
【0019】
第2成分は、酸化数II相違する2つの酸化状態をとれる金属を含み、Pd(0、II)、Ni(0、II)、Fe(−II、0、II)、Au(I、III)、Rh(I、III)、Pt(0、II、IV)、Ru(0、II)、Ir(I、III)からなる群から選択された金属が好ましい(上記かっこ内は、酸化状態の適当な組み合わせ例である)。上記の通り、前記金属は、錯体または塩として、元素形態で使用される。特に、白金族金属を使用するのが好ましく、より好ましくはパラジウム化合物であり、特に好ましくはパラジウム(II)アセチルアセトネートである。
【0020】
前記2つの金属は、おのおの独立に配位子で安定化させてもよく、配位子はアミン、ホスフィン、N−ヘテロサイクリックカルベン、ニトリル及びオレフィンからなる群から選択されたものが好ましく、より好ましくは環状アミンであり、フェナントロリン、ジピリジン、テルピリジン及びこれらの置換誘導体からなる群から選択されたキレートを形成する環状アミンが特に好ましい。
【0021】
適当な金属の前駆物質に上記成分を添加すると、反応混合物内に触媒が生成する。
【0022】
本発明に係る方法は、一般式(I)のカルボン酸塩を使用することができる。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、n、m、q、pは1〜6の整数であり、rは0〜6の整数である。)
【0025】
対イオンM(m+)は、金属カチオンまたは有機カチオンのどちらかであって、金属カチオンは、Li、Na、K、Mg、Ca、B、Al、Ag、Cu、Mn、Fe、Co、Ni、Mo及びRuからなる群から選択された金属が好ましく、有機カチオンは、アンモニウム、ピリジニウム及びホスホニウムからなる群から選択されたものが好ましい。前記カルボン酸塩にさらにアニオンを配位させてもよく、I、Br、Cl、F、CO、CN、OH、O−アルキル、HCO、PO3−、HPO2−及びHPOからなる群から選択されたアニオンが好ましい。
【0026】
カルボン酸塩は、前もって調製して添加するか、カルボン酸と適当な塩からin situで生成させる。
【0027】
前記Rは有機ラジカルであり、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C20アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C20アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランから選ばれたヘテロアリールからなる群から選択された置換基が好ましい。また、該置換基に、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C10アリール、ヘテロアリール、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルオキシまたはC1‐C10アリールオキシ、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルまたはC1‐C10アリールアミノカルボニル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アシル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10ジアルキルアミノ、C1‐C10アリールアミノ、ホルミル、オキソ、チオ、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、ニトロソ並びにハロゲンからなる群から選択された置換基がさらに結合していてもよい。
【0028】
Rは、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C10アルケニル、C6‐C10アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランから選ばれたヘテロアリールからなる群から選択される置換基がより好ましい。また、該置換基が、上記したさらなる置換基を有したものも好ましい。
【0029】
(化5)
−X (II)
【0030】
炭素求電子剤R1‐X(式II)において、置換基Xは共通の離脱基であり、トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、トリフルオロスルホン酸、トリフルオロ酢酸、カルボン酸、[N2]のハロゲン化物または擬似ハロゲン化物が好ましい。
【0031】
本発明に係る方法では、炭素求電子剤(式II)のR1は有機ラジカルであり、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C20アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C20アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランから選ばれたヘテロアリールからなる群から選択された置換基が好ましい。また、該置換基に、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C10アリール、ヘテロアリール、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルオキシまたはC1‐C10アリールオキシ、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルまたはC1‐C10アリールアミノカルボニル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アシル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10ジアルキルアミノ、C1‐C10アリールアミノ、ホルミル、オキソ、チオ、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、ニトロソ並びにハロゲンからなる群から選択された置換基がさらに結合していてもよい。
【0032】
1は、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C10アルケニル、C6‐C10アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランであるヘテロアリールからなる群から選択された置換基がより好ましい。また、該置換基が、上記したさらなる置換基を有したものも好ましい。
【0033】
前記炭素求電子剤は、カルボニル誘導体でもよく、塩化カルボニル、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン、エステル、α、β−不飽和アルデヒド、α、β−不飽和ケトン、α、β−不飽和エステルからなる群から選択されたカルボニル誘導体が好ましい。
【0034】
本発明に係る方法では、2つの触媒の使用量は、それぞれ独立に炭素求電子剤を基準にして0.001〜100mol%であり、0.001〜10mol%が好ましく、特に好ましくは0.01〜5mol%である。
【0035】
本発明に係る方法は、20〜220℃の温度で行われ、80〜200℃が好ましく、120〜160℃が特に好ましい。
【0036】
本発明に係る方法は、溶媒中または固体内で行われる。使用される溶媒は原料のうちの1つでもよく、例えば、直鎖、分岐鎖及び環状の炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン)、エーテル(例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド)、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、プロピレンカーボネート、塩素化された脂肪族及び芳香族炭化水素などがある。
【0037】
特に、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、プロピレンカーボネートを使用するのが好ましい。
【0038】
本発明に係る方法は、通常の方法による反応の間、例えば蒸留や水結合媒体の添加などにより、水分を除去して行うのが好ましい。
【0039】
さらに、本発明では、カルボキシル基を除去することで、カルボン酸塩と炭素求電子剤とのC−C結合を形成する触媒系を提供する。この触媒系は、2つの遷移金属または遷移金属化合物と、フェナントロリン、ジピリジン及びテルピリジンからなる群から選択され任意に置換されたキレートを形成する環状アミンとを含む。前記遷移金属はいわゆる貴金属が好ましく、パラジウム、パラジウム化合物、銅、銅化合物が特に好ましい。
【0040】
実施例1−18
炭酸銅(II)とパラジウム−ホスフィン錯体の組み合わせは、低温(120℃)でも交差カップリング生成物の収率が優れているということを実施例1〜18が示している。遷移金属化合物は、反応混合物中では低い酸化状態に還元されている。これは、銅はCu(I)化合物として存在し、パラジウムはPd(0)として存在することを示している。
【実施例1】
【0041】
表1では、おのおの、まず1.5mmolのオルト−ニトロ安息香酸を化学量の塩基で脱プロトン化した。得られたカルボン酸塩を、パラジウム(II)塩(0.02mmol)の存在下にて1mmolの4−クロロ−1−ブロモベンゼン(必要に応じてさらに配位子(0.06mmol)及び/または添加剤(1.5mmol))とともに3mlの溶媒中で120℃にて24時間攪拌した。必要に応じて、500mgの分子篩(3Å)を加えて反応混合物を乾燥させた。収率は、内部標準にn−テトラデカンを用いたガスクロマトグラフィで特定した。
【0042】
【化6】

【0043】
2−ニトロ−4´−クロロジフェニルの調製を上記反応式に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例19−25
第2の方法である、in situで生成したカルボン酸カリウムとアリールハロゲン化物との反応は、銅(I)塩、パラジウム(II)塩、アミン配位子を含む触媒系が極少量であっても、高い効率で進むということを表2の実施例19−25が示している。おのおの、まず1.5mmolのオルト−ニトロ安息香酸を化学量の炭酸カリウムで脱プロトン化し、反応における水は蒸留で除去した。次に、得られたカルボン酸塩を、0.02mmolのパラジウム(II)アセチルアセトネート、一定量の銅(I)ハロゲン化物、一定量のアミン配位子の存在下にて1mmolの4−クロロ−1−ブロモベンゼンとNMP中にて160℃、24時間攪拌した。残った水分を500mgの分子篩(3Å)を加えて除去した。収率は、内部標準にn−テトラデカンを用いたガスクロマトグラフィにより特定した。
【0046】
【化7】

【0047】
【表2】

【0048】
実施例26−55
表3の実施例26−55では、1mmolのスケールにて化8の反応を行った。実施例26−55は、本発明に係る方法の幅広い適用性を示している。収率を測定するために、水分処理後、生成物をシリカゲルクロマトグラフィにかけて、NMR、MS、HRMSにて特定した。
【0049】
【化8】

【0050】
【表3】



【0051】
触媒量の銅と触媒量のパラジウムの例
表4の実施例56−71では、1mmolの臭化アリールと1.2mmolのカルボン酸を用いて化9の反応を行った。実施例56−71では、基質に関らず2つの遷移金属が触媒量要求されるだけであった。収率を測定するために、水分処理後、生成物をシリカゲルクロマトグラフィにかけて、NMR、MS、HRMSにて特定した。
【0052】
【化9】

【0053】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属または遷移金属化合物を触媒として、カルボン酸塩と炭素求電子剤とを、該カルボン酸塩からカルボキシル基を除去してC−C結合にて結合させる方法。
【請求項2】
前記触媒が、2つの異なる遷移金属及び/または遷移金属化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの異なる遷移金属化合物の一方が、酸化数I相違する酸化状態をとることができる遷移金属の化合物から選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属が、Ag、Cu、Mn、Fe、Co、Ni、Mo及びRuからなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属が、銅である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移金属化合物が、銅(I)の塩である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記2つの異なる遷移金属化合物の他方が、酸化数II相違する酸化状態をとることができる遷移金属の化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属が、Pd、Ni、Fe、Au、Rh、Pt、Ru及びIrからなる群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属が、パラジウムである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属化合物が、パラジウム(II)アセチルアセトネートである請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属の少なくとも1つが、アミン、ホスフィン、N−ヘテロサイクリックカルベン、ニトリル及びオレフィンからなる群から選択された配位子により安定化される請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記配位子が、環状アミンである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記配位子が、フェナントロリン、ジピリジン及びテルピリジンからなる群から選択されたキレートを形成する環状アミンまたは該環状アミンの置換誘導体である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
2つの前記触媒の使用量は、それぞれ独立に、前記炭素求電子剤を基準にして0.001〜100mol%である請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
2つの前記触媒の使用量は、それぞれ独立に、前記炭素求電子剤を基準にして0.01〜5mol%である請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボン酸塩が、一般式(I)
【化1】

(式中、n、m、q、pは1〜6の整数であり、rは0〜6の整数である。Mは金属または有機化合物であり、Rは有機ラジカルであり、Yはアニオンである)で表される請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対イオンM(m+)が、Li、Na、K、Mg、Ca、B、Al、Ag、Cu、Mn、Fe、Co、Ni、Mo及びRuからなる群から選択された金属カチオンである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記Rが、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C20アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C20アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランであるヘテロアリールからなる群から選択された置換基、または該置換基に、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C10アリール、ヘテロアリール、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルオキシ若しくはC1‐C10アリールオキシ、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル若しくはC1‐C10アリールアミノカルボニル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アシル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10ジアルキルアミノ、C1‐C10アリールアミノ、ホルミル、オキソ、チオ、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、ニトロソ並びにハロゲンからなる群から選択された置換基がさらに結合した置換基である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記Rが、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C20アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランであるヘテロアリールからなる群から選択された置換基、または該置換基に、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C10アリール、ヘテロアリール、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルオキシ若しくはC1‐C10アリールオキシ、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル若しくはC1‐C10アリールアミノカルボニル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アシル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10ジアルキルアミノ、C1‐C10アリールアミノ、ホルミル、オキソ、チオ、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、ニトロソ並びにハロゲンからなる群から選択された置換基がさらに結合した置換基である請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記炭素求電子剤が一般式R1‐Xで表され、該置換基Xが、トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、トリフルオロスルホン酸、トリフルオロ酢酸、カルボン酸及び[N2]からなる群から選択されたもののハロゲン化物または擬似ハロゲン化物である請求項1ないし19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素求電子剤のR1が、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C20アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C20アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランであるヘテロアリールからなる群から選択された置換基、または該置換基に、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C10アリール、ヘテロアリール、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルオキシ若しくはC1‐C10アリールオキシ、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル若しくはC1‐C10アリールアミノカルボニル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アシル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10ジアルキルアミノ、C1‐C10アリールアミノ、ホルミル、オキソ、チオ、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、ニトロソ並びにハロゲンからなる群から選択された置換基がさらに結合した置換基である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素求電子剤のR1が、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C20アリール並びにピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、チオフェンまたはフランであるヘテロアリールからなる群から選択された置換基、または該置換基に、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル、直鎖、分岐鎖及び環状のC2‐C20アルケニル、C6‐C10アリール、ヘテロアリール、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキルオキシ若しくはC1‐C10アリールオキシ、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アルキル若しくはC1‐C10アリールアミノカルボニル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10アシル、直鎖、分岐鎖及び環状のC1‐C10ジアルキルアミノ、C1‐C10アリールアミノ、ホルミル、オキソ、チオ、ヒドロキシル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、ニトロソ並びにハロゲンからなる群から選択された置換基がさらに結合した置換基である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記反応の温度が、80〜200℃である請求項1ないし22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応の温度が、120〜160℃である請求項1ないし22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記反応の間、水分を除去する請求項1ないし24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記炭素求電子剤が、塩化カルボニル、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン、エステル、α、β−不飽和アルデヒド、α、β−不飽和ケトン、α、β−不飽和エステルからなる群から選択されたカルボニル誘導体である請求項1ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
パラジウム化合物、銅化合物、並びにフェナントロリン、ジピリジン及びテルピリジンからなる群から選択されたキレートを形成する環状アミンまたは該環状アミンの置換誘導体を含む、カルボン酸塩と炭素求電子剤とを該カルボン酸塩からカルボキシル基を除去してC−C結合にて結合させる触媒系。

【公表番号】特表2008−540466(P2008−540466A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510406(P2008−510406)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001014
【国際公開番号】WO2006/136135
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(591091515)シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (18)
【氏名又は名称原語表記】STUDIENGESELLSCHAFT KOHLE MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】