説明

自動二輪車

【課題】エンジンを動力源とする自動二輪車において、変速機に後退ギヤを設けずに後退運転を行うことを可能にする。
【解決手段】エンジン5の回転がメインクラッチ603を有する動力伝達装置6を通して駆動輪3に伝達される自動二輪車において、動力伝達装置6とエンジンの出力軸との間にサブクラッチ11を挿入する。サブクラッチとメインクラッチ603との間で動力伝達装置にモータジェネレータ7の回転軸を結合し、モータジェネレータ7をサブクラッチ11を通してエンジンに結合するとともにメインクラッチ603を通して駆動輪3に結合する。サブクラッチ11をオフにしてエンジンを動力伝達装置から切り離した状態で、モータジェネレータの回転をメインクラッチを通して駆動輪に伝達することにより後退運転を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを動力源として走行する自動二輪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常自動二輪車は変速機が後退ギヤを備えていないため、狭い場所で車両の向きを変えたり、車庫入れをしたりするために、車両を後退させる必要が生じた場合には、運転者が人力で車両を押して後退させる必要がある。小形の自動二輪車は、車両重量が比較的軽いため、人力により車両を後退させることが可能であるが、大型の自動二輪車は、車両重量が非常に重いため、車両を後退させることは容易ではない。車両を後退させる場所が平地であれば、大型の自動二輪車であっても、後退操作はなんとか可能であるが、傾斜地を登る方向に車両を後退させることは不可能に近い。
【0003】
なお大型の自動二輪車に対しては、変速機に後退ギヤを設けておくことが考えられるが、エンジンを動力源として後退を行わせるようにした場合には、運転者が誤って後退ギヤを選択している状態でスロットルを開いた際に運転者の意に反して車両がいきなり後退方向に発進するため、事故が生じるおそれがある。従って、変速機に後退ギヤを設けてエンジンを動力源として後退運転を行わせることは好ましくない。自動二輪車の後退運転は、エンジンから駆動輪への動力の伝達を断った状態で、モータを動力源として行わせるようにするのが好ましい。
【0004】
そこで、特許文献1や特許文献2に示されているように、エンジン始動用のモータを動力源として、駆動輪を後退方向に回転させることができるようにした自動二輪車が提案されている。これらの自動二輪車においては、エンジンの始動を可能にするために、モータの回転を第1のワンウェイクラッチと歯車伝達機構とを通してエンジンのクランク軸に伝達している。また、後退運転を可能にするために、上記モータのエンジン始動時とは逆方向の回転を第2のワンウェイクラッチと他の歯車伝達機構とを通して駆動輪に伝達するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−157882号公報
【特許文献2】特開2005−271669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
変速機に後退ギヤを持たない場合に、モータを動力源として車両を後退させることを可能にした従来の自動二輪車は、エンジン始動用モータのエンジンを始動させる方向への回転をワンウェイクラッチと歯車伝達機構を通してエンジンのクランク軸に伝達するとともに、エンジン始動用モータのエンジン始動時の回転とは逆方向の回転を、他のワンウェイクラッチと歯車伝達機構とを通して駆動輪に伝達するように構成されていたため、エンジンの回転を駆動輪に伝達する動力伝達装置の他に、ワンウェイクラッチと歯車伝達機構とからなる動力伝達機構を2組必要とし、エンジンの機械的な構成が複雑になる上に、エンジンが大型化するという問題があった。
【0007】
また、狭い場所で自動二輪車の切り返しを行う際には、後退だけでなく、前進をも行う必要があるため、モータを動力源として車両を動かす場合には、後退だけでなく、前進をも行うことができるようにしておくことが好ましいが、従来の自動二輪車は、モータのエンジン始動時とは逆方向の回転をワンウェイクラッチを通して駆動輪に伝達するように構成されていたため、モータから駆動輪に車両を前進させる方向の回転を伝達することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、エンジンの構造を複雑にしたり、エンジンの大型化を招いたりすることなく、モータを動力源として車両の後退を安全に行わせることができるようにした自動二輪車を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、エンジンの構造を複雑にしたり、エンジンの大型化を招いたりすることなく、モータを動力源として車両の前進と後退とを安全に行わせることができるようにした自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンと、エンジンを制御するエンジン制御部と、エンジンの回転を駆動輪に伝達する動力伝達装置とを備えた自動二輪車に適用される。本発明が対象とする自動二輪車においては、動力伝達装置が走行時にオンオフされるメインクラッチを有し、エンジン制御部はエンジン停止指令が与えられたときにエンジンを停止させるように構成されている。
【0011】
なお上記メインクラッチは、走行時にエンジンから駆動輪への動力の伝達をオンオフするクラッチであり、通常はハンドルに設けられたクラッチレバーを握ることによりオフ状態(開放状態)にされ、クラッチレバーを離すことによりオン状態(接合状態)にされる。
【0012】
上記動力伝達装置は、多くの場合、変速機(トランスミッション)と、エンジンの出力を変速機側に伝達するエンジン側動力伝達機構と、エンジン側動力伝達機構と変速機の入力軸との間に挿入されたメインクラッチと、変速機の出力軸を駆動輪に伝達する駆動輪側動力伝達機構とにより構成される。
【0013】
本願においては、前記の目的を達成するために、以下に示す発明が開示される。
第1の発明
本願に開示される第1の発明に係わる自動二輪車は、エンジンの出力軸と動力伝達装置との間に挿入されたオンオフ制御が可能なサブクラッチと、モータ及びジェネレータとして機能する回転電機からなっていて、サブクラッチを通してエンジンとの間での動力の伝達を行い、メインクラッチを通して駆動輪との間での動力の伝達を行うようにサブクラッチとメインクラッチとの間で前記動力伝達装置に回転軸が結合されたモータジェネレータと、エンジンを動力源とした通常運転を可能にする通常運転モードと、エンジン停止モードと、モータジェネレータを動力源としたアシスト運転を可能にするアシストモードとを選択するモード選択スイッチと、モード選択スイッチにより選択された制御モードに応じてエンジン停止指令の発生とサブクラッチ及びモータジェネレータの制御とを行うコントローラとを備えている。
【0014】
上記コントローラは、エンジン停止モードが選択されているとき及びアシストモードが選択されているときにエンジン停止指令を発生し、通常運転モードが選択されているときにエンジン停止指令を消滅させるエンジン停止指令発生手段と、アシストモード以外のモードが選択されているときにサブクラッチをオン状態にし、アシストモードが選択されているときにサブクラッチをオフ状態にするようにサブクラッチを制御するサブクラッチ制御手段と、アシストモードが選択されているときにモータジェネレータをモータとして動作させるように制御するアシスト時モータ制御を行うモータジェネレータ制御手段とを備えている。
【0015】
上記のように構成すると、アシストモード以外のモードが選択されているときに、サブクラッチがオン状態にあり、モータジェネレータとエンジンとの間で動力の伝達を行わせることができる。この状態では、モータジェネレータをモータとして動作させるように制御することによりエンジンを始動させることができ、エンジンが始動した後は、エンジンによりモータジェネレータをジェネレータとして駆動してモータジェネレータからバッテリ充電用等の電力を発生させることができる。
【0016】
またアシストモードが選択されているときには、サブクラッチをオフにしてエンジンから駆動輪への動力の伝達を断った状態で、アシスト時モータ制御を行ってモータジェネレータをモータとして動作させるので、モータジェネレータの回転を、エンジンの回転と関係なく駆動輪に伝達することができる。従って、モータジェネレータを動力源として前進運転及び(または)後退運転を行わせることができ、車両の重量が重い場合でも、切り返しや車庫入れなどを容易に行うことができる。
【0017】
本明細書では、エンジンによらずに、モータジェネレータを動力源として行う自動二輪車の運転及び走行をそれぞれ「アシスト運転」及び「アシスト走行」と呼ぶ。
【0018】
本発明では、アシスト走行をエンジンとは異なる動力源を用いて行うため、通常運転時の運転操作とは異なる操作により行わせることができる。従って、アシスト運転を、運転者に意識させて行なわせることができ、誤操作により運転者の意に反して車両がいきなり後退する事態が発生するのを防ぐことができる。また一般に回転電機は、回転速度を設定速度に向けて徐々に上昇させるように制御することが容易であり、モータジェネレータも例外ではないので、モータジェネレータを動力源としてアシスト走行を行わせるようにすれば、アシスト走行時の走行速度を安全な範囲(例えば2ないし3km/h)に収めることが容易であり、安全性を高めることができる。
【0019】
本発明によればまた、エンジンのクランク軸と動力伝達装置との間にサブクラッチを追加するだけでモータジェネレータから駆動輪側への動力の伝達を可能にすることができ、従来技術による場合のように、モータとエンジンとの間及びモータと駆動輪との間にそれぞれワンウェイクラッチを備えた動力伝達機構を設ける必要がないため、動力伝達装置の構成が複雑になるのを防ぐことができる。また回転電機として、モータとしての機能とジェネレータとしての機能とを兼ね備えたモータジェネレータを用いるため、エンジン始動用のモータとバッテリ充電用のジェネレータとの2つの回転電機をエンジンに搭載していた従来の自動二輪車に比べて、エンジンの構成の簡素化を図ることができ、エンジンが大型になるのを防ぐことができる。
【0020】
本発明では、エンジン停止指令発生手段が、通常運転モード以外のモードが選択されているときにエンジン停止指令を発生するので、モータジェネレータを動力源としてアシスト走行を行う際に、エンジンを停止した状態に保持することができる。従って、アシスト走行中に誤動作によりサブクラッチがオン状態になったときに、運転者の意に反して車両がエンジンにより駆動されて発進するのを防ぐことができ、安全性を高めることができる。
【0021】
また上記のように構成すると、サブクラッチは、エンジンが停止している状態でのみオンオフされるため、半クラッチ状態での使用を想定する必要がない。従って、サブクラッチとしては、シンクロ機構を有しない簡単な構造のクラッチを用いることができ、サブクラッチを追加することによるコストの上昇を最小限に抑えることができる。
【0022】
第2の発明
第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、モータジェネレータ制御手段が、通常運転モードが選択されている状態でエンジン始動指令が与えられたときにモータジェネレータをモータとして動作させるように制御するエンジン始動時モータ制御をも行うように構成されている。
【0023】
第3の発明
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に適用される。本発明においては、モータジェネレータ制御手段が、アシスト時モータ制御を行う際にモータジェネレータの回転速度を設定回転速度まで徐々に増大させるように構成されている。
【0024】
モータジェネレータ制御手段を上記のように構成しておくと、設定回転速度を適正な値に設定しておくことにより、アシスト運転を、急発進を伴うことなく、安全な速度で行わせることができるため、後退時に転倒などの事故が発生するのを防ぐことができる。
【0025】
第4の発明
第4の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においては、エンジンの回転速度を調節する際に操作されるスロットルの操作量を検出するスロットルセンサが設けられ、モータジェネレータ制御手段が、アシスト時モータ制御を行う際に設定回転速度を超えない範囲で、スロットルセンサにより検出されるスロットルの操作量に応じてモータジェネレータの回転速度を変化させるように構成される。
【0026】
このように構成した場合には、アシスト運転時にスロットルの操作量に見合った車速が得られるので、アシスト走行時の車速を運転者の意志で調節することができる。
【0027】
第5の発明
第5の発明は第3の発明又は第4の発明に適用されるもので、本発明においては、上記設定回転速度が、車速の上限を2ないし3km/hの範囲の速度とするように設定される。
【0028】
上記のように構成すると、アシスト運転時の走行速度の上限を人が歩く際の速度程度の低い速度に設定できるため、安全性を高めることができる。
【0029】
第6の発明
第6の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においては、車速を検出する車速センサが設けられ、モータジェネレータ制御手段は、アシスト時モータ制御を行う際に車速センサにより検出される車速を設定された制限速度まで徐々に増大させるように構成される。
【0030】
第7の発明
第7の発明は、第6の発明に適用されるもので、本発明においては、車速の上限が、2ないし3km/hの範囲に設定される。
【0031】
第8の発明
第8の発明は、第1ないし第7の発明のいずれかに適用されるもので、本発明では、運転者がメインクラッチをオフ状態にする操作を行っていることを条件としてアシスト時モータ制御を開始するようにモータジェネレータ制御手段が構成される。
【0032】
運転者がメインクラッチをオフ状態にする操作を行っていることは、例えば、クラッチレバーにセンサを取り付けておくことにより検出することができる。通常自動二輪車は、クラッチレバーが握られていて、変速機のギヤポジションがニュートラルである場合にのみエンジンの始動を許容するように構成されているため、クラッチレバーが握られていることを検知するセンサが設けられているのが普通である。
【0033】
上記のように構成しておくと、クラッチレバーが握られていない場合には、アシストモードが選択されてもモータジェネレータの駆動は開始されず、クラッチレバーが握られている状態でアシストモードが選択された場合にのみモータジェネレータの駆動が開始されるため、モード選択スイッチによりアシストモードを選択したときにいきなりモータジェネレータの駆動が開始されてアシスト走行が開始されるのを防ぐことができる。本発明によれば、モード選択スイッチによりアシストモードを選択した後、運転者がアシスト走行を開始する意志を持ってクラッチレバーを離したとき(メインクラッチをオン状態にしたとき)に初めてアシスト走行を開始させることができるため、運転者の意に反してアシスト走行が開始されるのを防いで、安全性を高めることができる。
【0034】
第9の発明
第9の発明は、第1ないし第8の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、動力伝達装置に設けられている変速機のギヤポジションが第1速であるときにのみアシスト時モータ制御を開始するようにモータジェネレータ制御手段が構成される。
【0035】
このように構成した場合には、アシスト走行を必ず第1速のギヤポジションで行わせることができるため、アシスト走行時にモータジェネレータから駆動輪に大きなトルクを伝達してアシスト走行を容易に行わせることができる。アシスト走行時のギヤポジションが不定である場合には、アシスト走行時のモータジェネレータの回転速度の設定値(設定回転速度)を決めるためにギヤポジションを検出して、検出されたギヤポジションに応じて設定回転速度を決める必要があるが、上記のように構成すると、アシスト走行時のギヤポジションが第1速に固定されるため、モータジェネレータの設定回転速度の設定を容易にすることができる。
【0036】
第10の発明
第10の発明は、第3の発明、第4の発明または第5の発明に適用される。本発明においては、動力伝達装置に設けられている変速機のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサが設けられる。この場合、モータジェネレータ制御手段は、ギヤポジションセンサにより検出されているギヤポジションに応じて、設定回転速度を切り替えるように構成される。
【0037】
第11の発明
第11の発明は、第1ないし第10の発明のいずれかに適用される。本発明においては、モータジェネレータ制御手段が、アシスト時モータ制御を行っている状態で運転者がブレーキを操作していることが検出されたときにモータジェネレータのモータとしての駆動を停止させるように構成される。
【0038】
このように構成すると、運転者がブレーキを操作して停止の意志を示したときに直ちにモータジェネレータの駆動を停止することができるため、安全性を高めることができる。
【0039】
第12の発明
本発明は、第1ないし第11の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、モータジェネレータ制御手段がアシスト時モータ制御を行っているときに警告音を発生する警報手段が設けられる。
【0040】
このように構成しておくと、アシストモードが選択されていることを運転者に知らせることができるため、モード選択スイッチの誤操作によりアシスト運転が誤って選択されたときに、運転者の意に反してアシスト運転が行われるのを防ぐことができる。またアシスト運転を行う際に運転者の注意を喚起して安全性を高めることができる。
【0041】
第13の発明
第13の発明は、第1ないし第12の発明のいずれかに適用される。本発明においては、自動二輪車の車両が転倒したことを検出する転倒検出手段が設けられ、アシスト時モータ駆動手段は、転倒検出手段により転倒が検出されたときにアシスト時モータ制御を停止させるように構成される。転倒センサは加速度センサなどにより構成できる。
【0042】
上記のように構成すると、車両が転倒した際にモータジェネレータにより駆動輪が駆動されて回転するのを防ぐことができるため、安全性を高めることができる。
【0043】
第14の発明
第14の発明は、第1ないし第13の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、モータジェネレータ制御手段が、アシスト時モータ制御を行う際に自動二輪車を後退させる方向にのみモータジェネレータを回転させるように構成される。
【0044】
自動二輪車の切り返しを行うためには、アシスト運転時に前進と後退の双方を行わせることができるようにしておくことが好ましいが、前進はエンジンにより行うことができるため、アシスト運転時に後退のみを行わせるようにしても、重量が重い車両の移動を可能にするという目的は達成することができる。
【0045】
第15の発明
第15の発明は、第1ないし第14の発明のいずれかに適用される。本発明においては、モード選択スイッチが、第1ないし第3のポジションを有して、第1のポジションから第2のポジションを経て第3のポジションに切り替わり、第3のポジションから第2のポジションを経て第1のポジションに切り替わるように構成され、モード選択スイッチが第1のポジション、第2のポジション及び第3のポジションにあるときにそれぞれ通常運転モード、エンジン停止モード及びアシストモードを選択するように構成されている。
【0046】
上記のように構成すると、モード選択スイッチが通常運転モードを選択している状態からアシストモードを選択している状態に切り替わる過程で必ずエンジン停止モードが選択されるので、アシストモードが選択される際に必ずエンジンを停止させておくようにすることができる。
【0047】
上記のように構成すると、アシスト走行を行う際に必ずエンジンを停止させておくことができるため、アシスト走行中に誤動作によりサブクラッチがオン状態になって、車両が急発進するといった事態が発生するのを防いで、安全性を高めることができる。
【0048】
第16の発明
第16の発明は、第2の発明に適用される。本発明においては、エンジン始動時モータ制御を行う際にはモータジェネレータをエンジンの始動時の回転方向に回転させることを指示する回転方向指示信号を発生し、アシスト時モータ制御を行う際にはモータジェネレータを自動二輪車の進行方向に対応した回転方向に回転させることを指示する回転方向指示信号を発生する回転方向指示手段が設けられ、モータジェネレータ制御手段は、始動時モータ制御を行う際及びアシスト時モータ制御を行う際に、回転方向指示手段が発生している回転方向指示信号により指示された回転方向にモータジェネレータを回転させるように前記モータジェネレータを制御する。
【0049】
上記にように構成すると、回転方向指示信号により指示する回転方向を切り替えることにより、アシスト運転時の走行方向を適宜に切り替えることができる。
【0050】
第17の発明
本発明は第16の発明に適用されるもので、本発明においては、押ボタンスイッチからなっていて、アシスト時モータ制御を行う際のモータジェネレータの回転方向を、自動二輪車を後退させる方向である第1の回転方向と、自動二輪車を前進させる方向である第2の回転方向とに切り替える際に押ボタンが押される回転方向切替スイッチが設けられる。この場合回転方向指示手段は、アシストモードが選択されたときに最初に指示する回転方向を第1の回転方向として、以後回転方向切替スイッチの押しボタンが押される毎に指示する回転方向を交互に異なる方向に切り替えるように構成されている。
【0051】
上記のように構成すると、回転方向切替スイッチの押ボタンを押す毎にモータジェネレータの回転方向を切り替えて、アシスト走行の方向を前進方向と後退方向とに交互に切り替えることができるので、走行方向の切替操作を簡単にすることができる。またアシスト運転時に、いちいちエンジンをかけることなく車両を前進させることができるため、アシスト運転を容易にすることができる。
【0052】
第18の発明
第18の発明は、第17の発明に適用されるもので、本発明においては、モード選択スイッチが、第1ないし第3のポジションを有して、第1のポジションから第2のポジションを経て第3のポジションに切り替わり、第3のポジションから第2のポジションを経て第1のポジションに切り替わるように構成されていて、第1のポジション、第2のポジション及び第3のポジションにあるときにそれぞれ通常運転モード、エンジン停止モード及びアシストモードを選択するように構成される。
【0053】
第19の発明
第19の発明は、第17の発明または第18の発明に適用されるもので、本発明においては、回転方向切替スイッチを構成する押ボタンスイッチがエンジン始動指令を発生する際に押される押ボタンスイッチ(エンジン始動スイッチ)を兼ねている。
【0054】
アシスト運転時にエンジンを始動することはないため、エンジンを始動する際に押されるエンジン始動スイッチを回転方向切替スイッチとして兼用しても何等支障を来さない。このように構成すると、スイッチの数を少なくすることができるため、操作が煩雑になるのを防ぐことができる。
【0055】
第20の発明
第20の発明は、第15の発明または第18の発明に適用されるもので、本発明においては、モード選択スイッチがエンジンを強制的に停止させる際にエンジン停止指令を発生するキルスイッチを兼ねていて、モード選択スイッチをキルスイッチとして用いる際には、第1のポジションがエンジンの回転を許容する位置として用いられ、第2のポジション及び第3のポジションがエンジン停止指令を発生する位置として用いられる。
【0056】
自動二輪車には、いつでもエンジンを緊急停止させることができるようにするために、エンジンを強制的に停止させるスイッチが設けられている。このスイッチはキルスイッチと呼ばれる。キルスイッチとしては、一般に、エンジンの回転を許容して通常走行を可能にするポジション(ONポジション)と、エンジン停止指令を発生してエンジンを強制的に停止させるポジション(OFFポジション)との2つのポジションをとる2ポジションスイッチが用いられている。本発明では、モード選択スイッチとして用いる3ポジションスイッチをキルスイッチとしても用いるため、第1のポジションをエンジンの回転を許容する位置として用い、第2のポジション及び第3のポジションをエンジン停止指令を発生する位置として用いる。このように構成すると、スイッチの数を少なくして構成の簡素化を図ることができる。
【0057】
第21の発明
第21の発明は、第1ないし第20の発明のいずれかに適用されるもので、本発明におては、サブクラッチが、電気的に駆動されるアクチュエータによりオンオフ操作されるドグクラッチからなっている。
【0058】
ドグクラッチは、自動二輪車の変速機内のギヤの選択、切替などに使用されているクラッチで、小形でシンプルな構造を有し、安価に構成することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、エンジンのクランク軸と動力伝達装置との間にサブクラッチを設けて、このサブクラッチをオフ状態にすることによりエンジンを動力伝達装置から切り離すことができるようにしたので、モータジェネレータをモータとして駆動して、エンジンの回転の影響を受けることなく、モータジェネレータの回転を駆動輪に伝達することができ、モータジェネレータを動力源として、車両の後退又は、後退と前進の双方を行わせることができる。
【0060】
また本発明によれば、エンジンのクランク軸と動力伝達装置との間にサブクラッチを追加するだけでモータジェネレータから駆動輪側への動力の伝達を可能にすることができ、従来技術による場合のように、モータとエンジンとの間及びモータと駆動輪との間にそれぞれワンウェイクラッチを備えた動力伝達機構を設ける必要がないため、動力伝達装置の構成が複雑になるのを防ぐことができる。また回転電機として、モータとしての機能とジェネレータとしての機能とを兼ね備えたモータジェネレータを用いるため、エンジン始動用のモータとジェネレータとをエンジンに搭載していた従来の自動二輪車に比べて、エンジンの構成の簡素化を図ることができ、エンジンが大型になるのを防ぐことができる。
【0061】
更に本発明においては、アシストモードが選択されているときにエンジン停止指令を発生するように構成されているので、モータジェネレータを動力源としてアシスト運転を行う際に、エンジンを停止した状態に保持することができる。従って、アシスト走行中に誤動作によりサブクラッチがオン状態になって、車両が急発進する事態が発生するのを防ぐことができ、安全性を高めることができる。
【0062】
また第3の発明によれば、モータジェネレータ制御手段が、モータジェネレータの回転速度を設定回転速度まで徐々に増大させるようにアシスト時モータ制御を行うので、車両の後退を含むアシスト運転を、急発進を伴うことなく、安全な速度で行わせることができ、アシスト運転時に転倒などの事故が発生するのを防ぐことができる。
【0063】
第8の発明によれば、運転者がメインクラッチをオフ状態にする操作を行っていることを条件としてアシスト時モータ制御を開始するように構成して、メインクラッチがオフ状態にない場合には、アシストモードが選択されてもアシスト時モータ制御が開始されないようにしたので、運転者がアシスト走行を開始する意志を持ってメインクラッチをオン状態にしたときに初めてアシスト運転を開始させることができる。従って、運転者の意に反してアシスト走行が開始されるのを防いで、安全性を高めることができる。
【0064】
本願に開示された他の発明によっても有意な効果を得ることができるが、各発明により得られる効果は、課題を解決するための手段の項で説明されているので、ここでは説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】自動二輪車の一例を示した正面図である。
【図2】自動二輪車のハンドル部を示した上面図である。
【図3】本発明の一実施形態における動力伝達装置の構成を概略的に示した構成図である。
【図4】自動二輪車のハンドルに設けられるキルスイッチとエンジン始動スイッチの一例を示した正面図である。
【図5】本発明の実施形態で用いるコントローラの構成例を示したブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態において、コントローラが制御モードを遷移させる際の遷移条件を説明するためのブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態において、アシスト運転時のモータジェネレータの制御モードの遷移を説明するためのブロック図である。
【図8】本発明の他の実施形態において、コントローラが制御モードを遷移させる際の遷移条件を説明するためのブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態において、コントローラを起動した際にコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態において、通常運転モードが選択されているときにコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態において、サブクラッチを制御するためにコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態において、後退アシストモードが選択された際にコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態において、前進アシストモードが選択された際にコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施形態において、エンジン停止モードが選択された際にコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態において、モータジェネレータをモータとして動作させるように制御する際の回転速度の制御特性の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、エンジンを動力源として用いた自動二輪車1の一例を示したものである。図示のように、自動二輪車1は、操舵輪(前輪)2及び駆動輪(後輪)3と、操舵輪2に取り付けられたハンドル4と、エンジン制御部により制御されて動作するエンジン5と、エンジン5の出力を駆動輪3に伝達する動力伝達装置6と、動力伝達装置6を通してエンジン5と駆動輪3とに結合されたモータジェネレータ(MG)7とを備えている。8は運転者が着座するシート、9は燃料タンクである。
【0067】
動力伝達装置6は、図3に示されているように、変速機(トランスミッション)601と、エンジン5の出力を変速機側に伝達するエンジン側動力伝達機構602と、変速機とエンジン側動力伝達機構602との間に挿入されたメインクラッチ603と、変速機601の出力軸の回転を駆動輪3に伝達する駆動輪側動力伝達機構604とを備えている。
【0068】
本発明においては、エンジン5の出力軸(クランク軸)5aと動力伝達装置602との間に電気的にオンオフ制御が可能なサブクラッチ11が挿入されている。本実施形態においては、エンジンが停止している状態でのみサブクラッチ11をオンオフさせる。従って、サブクラッチ11を半クラッチ状態で使用することは想定する必要がなく、サブクラッチ11としては、シンクロ機構を有しない簡単な構造のクラッチを用いることができる。本実施形態では、電気アクチュエータによりオンオフ操作されるドグクラッチをサブクラッチ11として用いている。
【0069】
図示のエンジン側動力伝達機構602は、出力伝達用の小ギヤ602aと大ギヤ602bとからなる歯車機構をケース602c内に収容したものからなっており、小ギヤ602aに取り付けられたエンジン側動力伝達機構602の入力軸(動力伝達装置の入力軸)602dとエンジンのクランク軸5aとの間にサブクラッチ11が挿入されている。また大ギヤ602bに取り付けられたエンジン側動力伝達機構602の出力軸602eと変速機601の入力軸601aとの間にメインクラッチ603が挿入され、エンジン5と、変速機601と、エンジン側動力伝達機構602と、メインクラッチ603と、サブクラッチ11とがエンジンケース内に収容されてエンジンブロック12が構成されている。図示の駆動輪側動力伝達機構604は、ケーシング内に収容されたチェーン・スプロケット機構からなっている。
【0070】
モータジェネレータ7は、モータ及びジェネレータとして機能する回転電機からなっていて、エンジンを始動する際にはエンジンのクランキングを行うスタータモータとして用いられ、エンジンを動力源として通常運転を行う際にはバッテリを充電するための電力を発生するジェネレータとして用いられる。また本発明では、エンジンを動力源とせずに車両を後退及び前進させるアシスト運転を行わせるために、モータジェネレータ7を走行用の動力源として用いる。
【0071】
図3に示されているように、モータジェネレータ7は、サブクラッチ11を通してエンジン5との間で相互に動力の伝達を行い、メインクラッチ603を通して駆動輪3との間で動力の伝達を行うようにサブクラッチ11とメインクラッチ603との間でエンジン側動力伝達装置602に結合されている。図示の例では、モータジェネレータ7の回転軸7aがエンジン側動力伝達機構602の入力軸602dに直接連結されている。なおモータジェネレータ7は、エンジン側動力伝達機構602の出力軸602eに結合してもよく、エンジン側動力伝達機構602の小ギヤ602aまたは大ギヤ602bにギヤを介して結合するようにしてもよい。
【0072】
上記のように、本発明においては、エンジン5とエンジン側動力伝達機構602との間にサブクラッチ11を挿入するとともに、サブクラッチ11を通してモータジェネレータ7とエンジン5との間で相互に動力の伝達を行い、メインクラッチ603を通してモータジェネレータ7と駆動輪3との間で動力の伝達を行うように、モータジェネレータ7の回転軸をサブクラッチ11とメインクラッチ603との間で動力伝達装置6に結合しておく。このように構成しておくと、サブクラッチ11をオン状態にすることによりモータジェネレータ7とエンジン5との間で動力の伝達を行わせることができ、この状態でモータジェネレータ7をモータとして動作させることにより、エンジン5を始動させることができる。エンジン5が始動した後は、エンジンによりモータジェネレータ7を駆動して、該モータジェネレータをジェネレータとして動作させることができるため、モータジェネレータ7からバッテリ充電用等の電力を発生させることができる。
【0073】
またサブクラッチ11をオフにすると、エンジン5から駆動輪への動力の伝達を断つことができるため、モータジェネレータ7をモータとして動作させて、その回転を駆動輪3に伝達することができる。従って、モータジェネレータ7を動力源として後退運転を行わせたり、前進運転を行わせたりすることができる。
【0074】
本実施形態では、エンジン5を制御し、モータジェネレータ7及びサブクラッチ11を制御するため、図1に示したように、エンジンブロック12に、変速機601のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサ13が取り付けられ、燃料タンク9の下方のシャーシ部分にECU(電子制御ユニット)15が取り付けられている。
【0075】
ECU15は、エンジン5を動作させるために必要な制御を行うエンジン制御部と、本発明で特に設けるコントローラとを構成する。エンジン制御部は、エンジン5の点火時期の制御や燃料供給量の制御など、エンジン5を動作させるために必要な制御を行うとともに、エンジン停止指令が与えられたときにエンジンを停止させるための制御を行う。コントローラは、後記するように、モード選択スイッチにより選択された制御モードに応じて、エンジン停止指令の発生と、サブクラッチ11及びモータジェネレータ7の制御とを行う。
【0076】
図2に示したように、ハンドル4の右端には、スロットルを操作するアクセルグリップ20と、ブレーキレバー21とが取り付けられ、ハンドル4の左端には固定のグリップ22と、クラッチレバー23とが取り付けられている。またハンドル4の右端のアクセルグリップ20に隣接する位置には、スイッチパネル24が取り付けられている。
【0077】
図4に示されているように、スイッチパネル24には、キルスイッチ(エンジンを強制的に停止させる際に操作されてエンジン停止指令を発生するスイッチ)とモード選択スイッチとを兼ねるシーソースイッチ25と、エンジン始動スイッチと回転方向切替スイッチとを兼ねる押ボタンスイッチ26とが取り付けられている。エンジン始動スイッチは、エンジンの始動時にエンジン始動指令を発生するスイッチであり、回転方向切替スイッチは、アシスト運転時にモータとして動作するモータジェネレータ7の回転方向を切り替える(後退と前進とを切り替える)際に操作されるスイッチである。
【0078】
図示のシーソースイッチ25は、長手方向の中央部を中心に揺動するシーソー型のスイッチノブ25aを備えた3極3ポジションスイッチである。このスイッチは、スイッチノブ25aがパネルの一端24a側に傾いた状態になる第1のポジションと、スイッチノブ25aがパネル24の表面と平行な状態になる第2のポジションと、スイッチノブ25aがパネルの他端24b側に傾いた状態になる第3のポジションとの3つのポジションを有して、第1のポジションから第2のポジションを経て第3のポジションに切り替わり、第3のポジションから第2のポジションを経て第1のポジションに切り替わるように構成されている。
【0079】
スイッチ25をキルスイッチとして用いる際には、第1のポジションをエンジンの始動を許容する位置とし、第1のポジション以外のポジション(第2のポジション及び第3のポジション)をエンジン停止位置とする。即ちスイッチノブ25aを第1のポジションにしたときにのみエンジンの始動が可能であり、スイッチノブ25aを第2のポジション及び第3のポジションに位置させたときにはエンジンの回転が禁止される。
【0080】
本実施形態では、コントローラの制御モードとして、通常運転モード、エンジン始動モード、エンジン停止モード及びアシストモードの4つのモードを設定し、これらのモードを選択するためにモード選択スイッチとエンジン始動スイッチとを用いる。モード選択スイッチは専用のスイッチとして別個に設けてもよいが、本実施形態では、キルスイッチとして用いるスイッチ25をモード選択スイッチとしても用いる。スイッチ25をモード選択スイッチとして用いる際には、通常運転モード、エンジン停止モード及びアシストモードをそれぞれ選択するときに、スイッチノブ25aを第1のポジション、第2のポジション及び第3のポジションに位置させる。またエンジン始動モードを選択する際には、スイッチ25を第1のポジションに位置させて通常運転モードを選択した状態でエンジン始動スイッチ26を押す。
【0081】
図4において「RUN」、「OFF」及び「アシスト」は、スイッチ25をモード選択スイッチとして用いる場合のスイッチポジションを示しており、「RUN」、「OFF」及び「アシスト」はそれぞれ、通常運転モードを選択する位置である第1のポジション、エンジン停止モードを選択する位置である第2のポジション及びアシストモードを選択する位置である第3のポジションを示している。
【0082】
キルスイッチとモード選択スイッチとを兼ねるシーソースイッチ25と、エンジン始動スイッチ(エンジン始動時に閉じられるスイッチ)と回転方向切替スイッチとを兼ねる押ボタンスイッチ26は、スイッチパネル24をハンドル4に取り付けた状態で上下に並ぶように配置されている。
【0083】
本実施形態で用いるモータジェネレータ7は、ロータヨークに永久磁石を取り付けて所定の極数の磁石界磁を構成したロータと、多相の電機子コイルを有するステータと、ステータの各相の電機子コイルに対してロータの回転角度位置を検出するロータ位置検出センサとを備えた周知のものである。この種のモータジェネレータは、ブラシレスモータと同様に、ロータ位置検出センサにより随時検出されるロータの位置に応じて、駆動電流を流す電機子コイルの相の組合せパターンを切り替えていくことにより、モータとして動作させてロータを所定の方向に回転させることができる。また駆動電流の極性及び駆動電流を流す相の組合せパターンの切り替え方により、ロータを正逆いずれの方向にも回転させることができる。モータジェネレータ7をモータとして動作させるための制御の手法はブラシレスモータを制御する手法と同一である。
【0084】
モータジェネレータ7はまた、そのロータを動力源により回転駆動することにより、ジェネレータ(発電機)として動作させることができ、その電機子コイルから多相交流出力を得ることができる。この種のモータジェネレータの構造及び駆動制御方法は例えば特開2000−209891号公報に示されているように公知である。
【0085】
モータジェネレータ7のロータの位置を検出するロータ位置検出センサとしては、ステータの各相の電機子コイルに対して設定された検出位置でロータの磁極の極性を検出するホールセンサや、レゾルバなどが用いられる。
【0086】
前述のように、スイッチ25をモード選択スイッチとして用いる際には、該モード選択スイッチ25が[RUN」位置にあるときに通常運転モードが選択され、「OFF」位置にあるとき及び「アシスト」位置にあるときにそれぞれエンジン停止モード及びアシストモードが選択される。
【0087】
通常運転モードは、エンジン5の回転が駆動輪3に伝達されるのを許容してエンジン5を動力源とした通常運転を可能にするモードであり、エンジン停止モードはエンジンを停止状態に保持するモードである。またアシストモードは、モータジェネレータ7の回転が駆動輪3に伝達されるのを許容してモータジェネレータ7を動力源としたアシスト運転を可能にするモードである。
【0088】
ECU15には、エンジンの点火や燃料供給などを制御するために本来設けられているエンジン制御部の他に、モード選択スイッチ25により選択された制御モードに応じて、サブクラッチ11及びモータジェネレータ7の制御とエンジン停止指令の発生とを行うコントローラが設けられている。このコントローラは、通常運転モード以外のモードが選択されているとき、即ちエンジン停止モードが選択されているとき及びアシストモードが選択されているときにエンジン停止指令を発生し、通常運転モードが選択されているときにエンジン停止指令を消滅させるエンジン停止指令発生手段と、アシストモード以外のモードが選択されているときにサブクラッチ11をオン状態にし、アシストモードが選択されているときにサブクラッチ11をオフ状態にするようにサブクラッチを制御するサブクラッチ制御手段と、エンジン始動時モータ制御及びアシスト時モータ制御を行うモータジェネレータ制御手段とを備えている。
【0089】
ここで、エンジン始動時モータ制御は、モード選択スイッチ25が「RUN」位置にあって、通常運転モードが選択されている状態でエンジン始動スイッチ26が押されてエンジン始動指令が与えられたとき(エンジン始動モードが選択されたとき)にモータジェネレータ7をエンジン始動用のモータとして動作させるように制御する制御である。
【0090】
またアシスト時モータ制御は、モード選択スイッチ25が「アシスト」位置にあって、アシストモードが選択されているときにモータジェネレータ7をアシスト走行用の動力源としてのモータとして動作させるように制御する制御である。
【0091】
図5を参照すると、ECU15に設けられるコントローラ30の構成例が示されている。図5に示した例では、エンジン始動スイッチ26が発生するエンジン始動指令と、モード選択スイッチ25が発生する信号と、ギヤポジションセンサ13が発生する検出信号と、ブレーキスイッチ32から得られるブレーキ操作検出信号と、クラッチスイッチ33が発生するクラッチ操作検出信号と、モータジェネレータ7に設けられたロータ位置検出センサ34の出力信号と、車両の傾斜角を検出する傾斜角センサ35の出力信号とがコントローラ30に入力されている。
【0092】
ブレーキスイッチ32はハンドル4に取り付けられて、ブレーキレバー21が握られているときにブレーキ操作検出信号を発生する。このブレーキスイッチ32としては、制動灯を点灯させるために従来から設けられているものをそのまま利用することができる。
【0093】
クラッチスイッチ33もハンドル4に取り付けられていて、クラッチレバー23が握られてメインクラッチ603が切離された状態(オフ状態)にされているときにクラッチ操作検出信号を発生する。
【0094】
ギヤポジションセンサ13は、変速機601のギヤポジションを検出して、選択されているギヤポジションを示す信号を発生する。
【0095】
また傾斜角センサ35は加速度センサ等からなっていて、車両の傾斜角に相応した信号を発生する。コントローラ30には傾斜角センサ35が検出している車両の傾斜角から車両が転倒しているか否かを判定する転倒判定手段30Iが設けられ、傾斜角センサ35と、転倒判定手段30Iとにより、車両の傾斜角が設定値を超えたときに車両が転倒したことを検出する転倒検出手段が構成されている。
【0096】
図5に示されたコントローラ30は、モード判定手段30Aを備え、このモード判定手段に、エンジン始動スイッチ26が発生するエンジン始動指令と、モード選択スイッチ25が発生するモード選択信号とが入力されている。
【0097】
モード判定手段30Aは、モード選択スイッチ25が「RUN」位置にあるときに制御モードが通常運転モードにあると判定し、モード選択スイッチ25が「RUN」位置にある状態でエンジン始動スイッチ26がエンジン始動指令を発生したとき(押ボタンスイッチ26が押されたとき)に制御モードがエンジン始動モードにあると判定する。
【0098】
モード判定手段30Aはまた、モード選択スイッチ25が「OFF」位置にあるときに制御モードがエンジン停止モードであると判定し、モード選択スイッチ25が「アシスト」位置にあるときに制御モードがアシストモードであると判定する。
【0099】
本実施形態では、エンジン始動スイッチ26が、アシスト運転時のモータジェネレータの回転方向を、自動二輪車を後退させる方向である第1の方向と自動二輪車を前進させる方向である第2の方向とに切り替える回転方向切替スイッチを兼ねている。この場合、コントローラ30には、アシストモード時にスイッチ26が押される毎に回転方向を指示する回転方向指令を切り替える回転方向切替手段30Bが設けられる。
【0100】
コントローラ30にはまた、モータジェネレータ7をモータとして動作させる際のモータの回転方向を指示する回転方向指示値を発生する回転方向指示手段30Bと、ロータ位置検出センサ34から与えられる位置検出信号と回転方向指示値により指示された回転方向とに応じて、駆動電流を流す電機子コイルの相の組合せパターンを判定する通電パターン判定手段30Cと、ロータ位置検出センサ34の出力信号からモータジェネレータの回転速度を演算する回転速度演算手段30Dと、モータジェネレータ7に駆動電流を供給するモータ駆動部30Eと、モータジェネレータをモータとして動作させる際の回転速度を指示する回転速度指示手段30Fと、モータジェネレータ7の回転速度を回転速度指示手段30Fにより指示された回転速度に一致させるようにモータ駆動部30Eがモータジェネレータに与える駆動電流をPWM制御する回転速度制御部30Gとが設けられている。
【0101】
更に詳細に説明すると、回転方向切替手段30Bは、モード判定手段30Aにより制御モードがエンジン始動モードであると判定されたときに、モータジェネレータ7の回転方向をエンジン始動時の回転方向として、その回転方向を指示する回転方向指示信号を通電パターン判定手段30Cに与える。回転方向切替手段30Bはまた、モード判定手段30Aにより制御モードがアシストモードであると判定されたときに、アシストモードが選択されたときの最初の回転方向を第1の方向(後退方向)として、以後、回転方向切替スイッチ26が押される毎に通電パターン判定手段30Cに与える回転方向指示信号を、第2の方向を指示する信号と第1の方向を指示する信号とに交互に切り替える。
【0102】
通電パターン判定手段30Cは、ロータ位置検出センサ34により検出されたロータの位置情報と、回転方向指示手段30Bから与えられる回転方向指示信号とに基づいて、ロータを指示された方向に回転させるために通電すべき電機子コイルの相の組み合わせのパターンを通電パターンとして決定して、決定した通電パターンに従ってモータ駆動部30Eに駆動信号を与える。
【0103】
モータ駆動部30Eは、トランジスタやMOSFETからなるスイッチ素子をブリッジ接続するとともに、各スイッチ素子に帰還用ダイオードを逆並列接続して構成したインバータ回路を備えていて、通電パターン判定手段30Cから駆動信号が与えられたスイッチ素子をオン状態にすることにより、通電パターン判定手段30Cが判定した通電パターンに従って、図示しないバッテリからモータジェネレータ7の所定の相の電機子コイルに駆動電流を流す。
【0104】
モータ駆動部30E内には、上記帰還用ダイオードにより、モータジェネレータ7の電機子コイルに誘起する交流電圧を整流する整流回路が構成されており、モータジェネレータが発電機として動作する際には、モータジェネレータ7の電機子コイルに誘起した交流電圧が上記整流回路を通して整流されてバッテリに印加される。この場合、インバータ回路を構成するスイッチ素子をオンオフ制御することにより、電機子コイルからモータ駆動部内の整流回路を通してバッテリに印加される電圧を制御することが可能である。上記のようなモータ駆動部の構成及びモータジェネレータ7が発電機として動作する際にバッテリに印加される電圧を制御する手法は既に公知である。
【0105】
回転速度演算手段30Dは、ロータの回転に伴うロータ位置検出センサ34の出力信号の変化からロータの回転速度を演算して、その演算結果を回転速度制御部30Gに与える。また回転速度指示手段30Fは、モータジェネレータ7をモータとして動作させるように制御する際のモータジェネレータの回転速度を指示する回転速度指示値を発生して、この回転速度指示値を回転速度制御部30Gに与える。
【0106】
コントローラ30にはまた、アシストモードが選択されているときの制御条件(アシスト条件)を判定するアシスト条件判定手段30Hが設けられ、アシスト条件判定手段30Hにより判定されたアシスト条件が回転速度指示手段30Fに与えられている。
【0107】
アシスト条件判定手段30Hは、ブレーキスイッチ32の状態と、クラッチスイッチ33の状態と、ギヤポジションセンサ13により検出されているギヤポジションと、転倒判定手段30Iによる判定結果(転倒検出手段の検出結果)とに基づいてアシスト運転を許可するか条件であるアシスト条件が成立しているか否かを判定して、その判定結果を回転速度指示手段30Gに与える。
【0108】
本実施形態では、モード選択スイッチ25が「アシスト」位置にあって、下記の(a)ないし(d)の条件がすべて満たされているときにアシスト条件(アシスト運転を許可する条件)が成立していると判定し、これらの条件の内の1つでも成立してないときには、アシスト条件が成立していないと判定する。
(a)メインクラッチをオフさせる操作が行われている(クラッチレバー23が握られて いる)。
(b)ブレーキが操作されていない(ブレーキレバー21が握られていない)。
(c) 変速機が第1速の位置にある。
(d)転倒判定手段30Iが転倒を判定していない。
【0109】
アシスト条件判定手段30Hはアシスト運転を許可する条件が成立していると判定したときに、回転速度指示手段30Gが回転速度制御部30Gに零以外の回転速度を指示する回転速度指示値を与えるのを許可し、アシスト運転を許可する条件が成立してないと判定したときには、回転速度指示手段30Gから回転制御部30Gに与える回転速度の指示値を零としてモータジェネレータ7をモータとして駆動するのを禁止する。
【0110】
モード判定手段30Aにより、制御モードがエンジン始動モードであると判定されたときには、回転速度指示手段30Fが回転速度制御部30Gに予め設定された始動時の回転速度を与える。このとき通電パターン判定手段30Cは、モータをエンジン始動方向に回転させるべく通電パターンを決定して、決定した通電パターンに従ってモータ駆動部30Eを構成するインバータ回路のスイッチ素子に駆動信号を与えて、モータジェネレータ7をエンジン始動方向に回転させるエンジン始動時モータ制御を行う。
【0111】
このとき回転速度制御部30Gは、モータジェネレータ7の回転速度を設定された回転速度に保つように、モータジェネレータ7に与えられる駆動電流をPWM制御する。
【0112】
エンジンの始動が完了して、回転速度演算手段30Dにより演算されたエンジンの回転速度が始動完了速度に達したことが検出されたときに、回転速度制御部30Gがモータ駆動部30Eからモータジェネレータ7への駆動電流の供給を停止させて、モータジェネレータ7のモータとしての駆動を停止する。以後、モータジェネレータ7は、エンジン5により駆動される状態になるため、ジェネレータとして機能してバッテリを充電するための電力を発生する。モータジェネレータ7が出力する電力は、図示しないバッテリ充電回路を通して直流電力に変換されてバッテリに供給される。
【0113】
モード判定手段30Aによりアシストモードが選択されていると判定され、かつアシスト条件判定手段30Hによりアシスト運転を許可する条件が成立していると判定されているときには、回転速度指示手段30Fがアシスト運転時のモータの回転速度特性を与える回転速度の指示値を回転速度制御部30Gに与えてアシスト時モータ制御を行わせる。
【0114】
アシスト時モータ制御においては、モータ駆動部30Eが、ロータ位置検出センサ34から与えられるロータ位置検出信号と回転方向切替手段30Bにより指示された回転方向とに応じて通電パターン判定手段30Cにより判定された通電パターンに従ってモータジェネレータ7に駆動電流を流し、モータジェネレータを指示された回転方向(車両を後退させる方向または前進させる方向)に回転させる。このとき、回転速度制御部30Gは、回転速度指示手段30Fにより指示された回転速度と、回転速度演算手段30Dにより演算された回転速度(モータジェネレータの実回転速度)との偏差を零にするように、モータ駆動部30Eがモータジェネレータ7に与える駆動電流をPWM制御して、モータジェネレータ7の回転速度特性をアシスト運転時に適した特性とするように制御する。
【0115】
アシスト運転時のモータの回転速度特性は例えば図15に示すように、時間の経過に伴って回転速度が徐々に上昇して設定回転速度に収束する特性とする。回転速度指示手段30Fは、回転速度制御部30Gに与える回転速度の指示値を図15の回転速度特性と同じように変化させる。図15に示す設定回転速度は、変速機が第1速の位置にあるときにアシスト運転時の走行速度の上限を、人が歩く際の速度程度の十分に低い速度、好ましくは2ないし3km/hの範囲に収めるように設定する。
【0116】
本実施形態では、回転方向指示手段30Bと、通電パターン判定手段30Cと、回転速度演算手段30Dと、モータ駆動部30Eと、回転速度指示手段30Fと、回転速度制御部30Gとにより、通常運転モードが選択されている状態でエンジン始動指令が与えられたときにモータジェネレータ7をモータとして動作させるように制御するエンジン始動時モータ制御と、アシストモードが選択されているときにモータジェネレータをモータとして動作させるように制御するアシスト時モータ制御とを行うモータジェネレータ制御手段が構成されている。
【0117】
コントローラ30にはまた、通常運転モードが選択されているときにサブクラッチ11をオン状態にし、アシストモードが選択されているときにサブクラッチ11をオフ状態にするようにサブクラッチ11を制御するサブクラッチ制御手段30Jと、エンジン停止モードが選択されているとき及びアシストモードが選択されているときにエンジン5を制御するエンジン制御部31にエンジン停止指令を与えるエンジン停止指令発生手段30Kとが設けられている。
【0118】
エンジン制御部31は、エンジン5の点火時期の制御や、エンジン5への燃料供給量の制御を行う制御部で、エンジン停止指令発生部30Kからエンジン停止指令が与えられたときに、エンジンの点火動作を停止させたり、エンジンへの燃料の供給を停止させたりすることにより、エンジン5を停止させる。
【0119】
図6を参照すると、本実施形態において、コントローラ30が制御モードを遷移させる際の条件(遷移条件)を示すブロック図が示されている。本実施形態では、アシストモードにおいて、車両を後退させるアシスト運転と車両を前進させるアシスト運転とを行わせるが、後退方向へのアシスト運転と前進方向へのアシスト運転を切り替えるためには所定の遷移条件を満たしている必要があるため、アシストモードを後退アシストモードと前進アシストモードとに分けている。なお図6において、黒丸と下向きの矢印とで表わした表示はデフォルト遷移を示しており、システムを起動したときには制御モードがエンジン停止モードとされる。
【0120】
本実施形態では、モード選択スイッチ25が「OFF」位置かまたはアシスト位置にあるという条件(遷移条件1)が成立しているときに、制御モードを通常運転モードからエンジン停止モードに遷移させる。またモード選択スイッチ25が「RUN」位置に切り替えられたとき(遷移条件2が成立したとき)に制御モードをエンジン停止モードから通常運転モードに遷移させる。
【0121】
通常運転モードでは、制御モードが最初発電モードにある。この状態で、エンジン始動スイッチが「ON」で、エンジンが停止しており、且つ変速機がニュートラル位置にあってしかもメインクラッチをオフにする操作(クラッチレバーを握る操作)が行われているという条件が成立したとき(遷移条件3が成立したとき)に制御モードがエンジン始動モードに遷移する。またエンジン始動スイッチが「OFF」位置にあるという条件が成立しているとき、またはエンジンの始動が完了したとき、または変速機がニュートラル位置以外の位置で且つメインクラッチがオン状態にある(つながっている)という条件が成立しているとき(遷移条件4が成立しているとき)に制御モードをエンジン始動モードから発電モードに遷移させる。発電モードでは、モータジェネレータ7が出力する交流電圧をモータ駆動部30E内に構成されている整流回路を通して整流してバッテリに供給し、バッテリに印加される電圧を設定範囲に保つように、モータ駆動部30E内のインバータ回路のスイッチ素子を制御する。
【0122】
更に制御モードがエンジン停止モードにある状態で、モード選択スイッチが「OFF」位置から「アシスト」位置に切り替わったとき(遷移条件5が成立したとき)にエンジン停止モードからアシストモードに遷移させ、モード選択スイッチが「OFF」位置または「RUN」位置に切り替わったとき(遷移条件6が成立したとき)にアシストモードからエンジン停止モードに遷移する。
【0123】
制御モードがアシストモードに遷移したときには、最初アシストモードが「後退アシストモード」にある。このときサブクラッチ11がオフにされる。
【0124】
後退アシストモードで回転方向切替スイッチ26の押しボタンが一度押される(遷移条件9が成立する)と、制御モードが「前進アシストモード」に遷移する。この状態では、前進アシストモードで回転方向切替スイッチ26の押ボタンが押される(遷移条件10が成立する)と、制御モードが後退アシストモードに遷移させられる。このようにして、アシストモードでは、回転方向切替スイッチ26の押ボタンが押される毎に制御モードが後退アシストモード及び前進アシストモードに交互に切り替わる。アシストモードが最初に選択されたときの制御モードは必ず後退アシストモードであるので、運転者がアシストモードにおける進行方向を誤るおそれはない。
【0125】
後退アシストモード及び前進アシストモードでは、図7に示したように、運転者の操作に応じてモータを停止させるモータ停止モードと、モータジェネレータ7をモータとして駆動するモータ駆動モードとを行わせる。モータ停止モードでは、モータジェネレータ7への駆動電流の供給を停止してモータを停止させた状態に保持する。モータ駆動モードでは、駆動輪を後退方向または前進方向に回転させるようにモータジェネレータを駆動するための処理を行わせる。
【0126】
モータ停止モードにおいて、メインクラッチをオフにする操作が行われており、ブレーキが操作されておらず、かつ変速機が第1速の位置にあってしかも転倒判定手段301が車両が転倒状態にあるとの判定を行っていないとき(遷移条件7が成立したとき)に制御モードをモータ駆動モードに遷移させ、図15に示した回転速度特性でモータジェネレータ7をモータとして駆動するための処理を行わせる。即ち、モード選択スイッチ25を「アシスト」位置に切り替えて、制御モードをアシストモードに切り替えた後、メインクラッチを切って、変速機の位置を第1速の位置とすると、アシスト走行のためにモータジェネレータ7をモータとして動作させるアシスト時モータ制御が開始される。アシスト走行時の変速機の位置を常に第1速の位置とすることで、アシスト走行時の車速の上限を与えるモータジェネレータの回転速度の上限値が確定する。
【0127】
モータ駆動モードへの遷移は、メインクラッチをオフ状態にする操作が行われていることを条件として行われるため、モータ駆動モードに遷移してモータジェネレータ7をモータとして動作させる制御が開始されても、モータジェネレータ7の回転は駆動輪に伝達されず、アシスト走行は開始されない。モータジェネレータ7をモータとして動作させる制御が開始された後、メインクラッチを徐々につないでいって半クラッチ状態にするとモータジェネレータ7の回転が駆動輪に伝達されるため、アシスト走行が開始される。運転者が万一メインクラッチを半クラッチ状態にすることなくいきなりオン状態にしたとしても、アシストモードでのモータジェネレータ7の回転速度は、車速を2ないし3km/hとする設定回転速度までしか上昇しないため、車両が急発進することはなく、安全性を確保することができる。
【0128】
モータ駆動モードにおいて、ブレーキが操作されていると判定されたとき、変速機が第1速以外の位置にあることが検出されたとき、または転倒判定手段により車両が転倒状態にあるとの判定が行われたとき(遷移条件8が成立したとき)に制御モードをモータ停止モードに遷移させる。即ち、ブレーキが操作されたときには、運転者が車両を停止させる意志表示をしたと判断して、モータジェネレータ7の駆動を停止させる。
【0129】
上記の実施形態によれば、アシストモード以外のモードが選択されているときに、サブクラッチ11がオン状態にされるため、モータジェネレータ7とエンジン5との間で動力の伝達を行わせることができる。この状態で、モータジェネレータ7をモータとして動作させるように制御することによりエンジンを始動させることができる。エンジン5が始動した後は、エンジンによりモータジェネレータ7がジェネレータとして駆動されるため、モータジェネレータ7からバッテリ充電用等の電力を発生させることができる。
【0130】
またアシストモードが選択されているときには、サブクラッチ11をオフにしてエンジン5から駆動輪3への動力の伝達を断った状態で、アシスト時モータ制御を行ってモータジェネレータ7をモータとして動作させるので、モータジェネレータ7の回転を、エンジン5の回転と関係なく駆動輪3に伝達することができる。従って、モータジェネレータ7を動力源として前進運転または後退運転を行わせることができ、車両の重量が重い場合でも、切り返しや車庫入れなどを容易に行うことができる。
【0131】
また上記の実施形態では、アシスト運転を行う際に、図15に示したように、回転速度を設定回転速度まで徐々に上昇させる制御を行わせるため、設定回転速度を適正に設定しておくことにより、転倒などの運転者に危険を及ぼす事故が発生するおそれをなくすことができる。
【0132】
更に、上記の実施形態では、通常運転モード以外のモードが選択されているときにエンジン停止指令発生手段30Kがエンジン停止指令を発生するので、モータジェネレータ7を動力源としてアシスト走行を行う際に、エンジンを停止した状態に保持することができる。従って、アシスト走行中に誤動作によりサブクラッチ11がオン状態になったときに、運転者の意に反して車両がエンジンにより駆動されて発進するのを防ぐことができ、安全性を高めることができる。
【0133】
また上記の実施形態では、サブクラッチ11のオンオフ動作を、エンジンが停止している状態でのみ行わせるため、サブクラッチ11を半クラッチ状態で使用することを想定する必要がない。従って、サブクラッチ11としては、シンクロ機構を有しない安価で簡単な構造のクラッチを用いることができ、サブクラッチを追加することによるコストの上昇を最小限に抑えることができる。
【0134】
上記の実施形態では、モータジェネレータ制御手段が、アシスト時モータ制御を行う際にモータジェネレータの回転速度を設定回転速度まで徐々に増大させるように構成されている。アシスト時モータ駆動手段をこのように構成すると、設定回転速度を適正な値に設定しておくことにより、アシスト運転を、急発進を伴うことなく、安全な速度で行わせることができるため、後退時に転倒などの事故が発生するのを防ぐことができる。
【0135】
上記の実施形態においては、アシスト運転を行う際のモータジェネレータ7の設定回転速度が、車速の上限を2ないし3km/hの範囲の速度とするように設定される。従って、アシスト運転時の走行速度の上限を人が歩く際の速度程度の低い速度に設定することができ、安全性を高めることができる。
【0136】
上記の実施形態では、図7に示されているように、運転者がメインクラッチ603をオフ状態にする操作を行っていることを条件としてアシスト時モータ制御を開始するようにモータジェネレータ制御手段が構成されている。従って、クラッチレバー23が握られていない場合には、アシストモードが選択されてもモータジェネレータ7の駆動は開始されず、アシストモードが選択され、クラッチレバー23が握られている場合にのみモータジェネレータ7の駆動が開始される。そのため、モード選択スイッチ25によりアシストモードを選択したときにいきなりモータジェネレータ7のモータとしての駆動が開始されてアシスト走行が開始されるのを防ぐことができる。このように構成しておけば、モード選択スイッチによりアシストモードを選択した後、運転者がアシスト走行を開始する意志を持ってクラッチレバー23を離したとき(メインクラッチをオン状態にしたとき)に初めてアシスト走行を開始させることができるため、運転者の意に反してアシスト走行が開始されるのを防いで、安全性を高めることができる。
【0137】
上記の実施形態では、動力伝達装置6に設けられている変速機601のギヤポジションが第1速であるときにのみアシスト時モータ制御を開始するようにモータジェネレータ制御手段が構成されている。このように構成しておくと、アシスト走行を必ず第1速のギヤポジションで行わせることができるため、アシスト走行時にモータジェネレータから駆動輪に大きなトルクを伝達してアシスト走行を容易に行わせることができる。またアシスト走行時のギヤポジションが第1速に固定されるため、モータジェネレータの設定回転速度の設定を容易にすることができる。
【0138】
上記の実施形態では、加速度センサ等からなる傾斜角センサ35と転倒判定手段30Iとにより、自動二輪車が転倒状態にあることを検出する転倒検出手段を構成して、この転倒検出手段により車両が転倒したことが検出されたときにアシスト時モータ制御を停止させるようにアシスト時モータ駆動手段が構成されている。このように構成しておくと、車両が転倒した際にモータジェネレータ7により駆動輪3が駆動されて回転するのを防ぐことができるため、安全性を高めることができる。
【0139】
上記の実施形態では、モード選択スイッチ25が、第1ないし第3のポジションを有して、第1のポジションから第2のポジションを経て第3のポジションに切り替わり、第3のポジションから第2のポジションを経て第1のポジションに切り替わるように構成され、モード選択スイッチが第1のポジション、第2のポジション及び第3のポジションにあるときにそれぞれ通常運転モード、エンジン停止モード及びアシストモードを選択するように構成されている。このように構成しておくと、モード選択スイッチが通常運転モードを選択している状態からアシストモードを選択している状態に切り替わる過程で必ずエンジン停止モードが選択されるので、アシストモードが選択される際に必ずエンジンを停止させておくようにすることができる。
【0140】
上記のように構成しておくと、アシスト走行を行う際に必ずエンジンを停止させておくことができるため、アシスト走行中に誤動作によりサブクラッチがオン状態になって、車両が急発進するといった事態が発生するのを防いで、安全性を高めることができる。
【0141】
上記の実施形態では、エンジン始動時モータ制御を行う際にモータジェネレータ7をエンジンの始動時の回転方向に回転させることを指示する回転方向指示信号を発生し、アシスト時モータ制御を行う際にはモータジェネレータを自動二輪車の進行方向に対応した回転方向に回転させることを指示する回転方向指示信号を発生する回転方向指示手段30Bが設けられて、始動時モータ制御を行う際及びアシスト時モータ制御を行う際に、回転方向指示手段30Bが発生している回転方向指示信号により指示された回転方向にモータジェネレータを回転させるようにモータジェネレータ制御手段が構成されている。このように構成しておくと、回転方向指示信号により指示する回転方向を切り替えることにより、アシスト運転時の走行方向を適宜に切り替えることができ、モータジェネレータ7を動力源として、後退方向へのアシスト走行及び前進方向へのアシスト走行を行わせることができる。
【0142】
上記の実施形態では、押ボタンスイッチからなっていて、アシスト時モータ制御を行う際のモータジェネレータの回転方向を、自動二輪車を後退させる方向である第1の回転方向と、自動二輪車を前進させる方向である第2の回転方向とに切り替える際に押ボタンが押される回転方向切替スイッチ26が設けられ、回転方向指示手段30は、アシストモードが選択されたときに最初に指示する回転方向を第1の回転方向として、以後回転方向切替スイッチ26の押しボタンが押される毎に指示する回転方向を交互に異なる方向に切り替えるように構成されている。このように構成しておくと、回転方向切替スイッチ26の押ボタンを押す毎にモータジェネレータの回転方向を切り替えて、アシスト走行の方向を前進方向と後退方向とに交互に切り替えることができるので、走行方向の切替操作を簡単にすることができる。またアシスト運転時に、いちいちエンジンをかけることなく車両を前進させることができるため、アシスト運転を容易にすることができる。
【0143】
上記の実施形態では、アシストモードが選択されたときに、後退方向へのアシスト走行と前進方向へのアシスト走行との双方を行うようにしたが、アシスト時モータ制御を行う際に車両を後退させる方向にのみモータジェネレータを回転させるようにモータジェネレータ制御手段を構成することもできる。
【0144】
図8は、アシスト時モータ制御を行う際に車両を後退させる方向にのみモータジェネレータを回転させるようにモータジェネレータ制御手段を構成する場合の制御モードの遷移を示すブロック図である。図8に示したブロック図は、アシストモードにおいて、後退方向へのアシスト走行を行わせるようにアシスト時モータ制御を行わせる点を除き、図6に示したブロック図と同様である。
【0145】
自動二輪車の切り返しを行うためには、アシスト運転時に前進と後退の双方を行わせることができるようにしておくことが好ましいが、前進走行はエンジンにより行うことができるため、本実施形態のように、アシスト運転時に後退のみを行わせるようにしても、重量が重い車両の移動を可能にするという目的は達成することができる。
【0146】
図5に示されたコントローラ30は、ECUのコンピュータに所定のプログラムを実行させることにより構成することができる。図9ないし図14を参照すると、コントローラ30を構成するためにコンピュータに実行させる各種の処理のアルゴリズムを示すフローチャートが示されている。
【0147】
図9は、システムを起動した際に実行されるイニシャライズ処理を示したもので、この処理においては、ステップ101で初期設定として制御モードをエンジン停止モードに設定し、ステップ102でエンジン停止指令を発生させる。
【0148】
図10は、通常運転モードが選択されたときに実行する処理のアルゴリズムを示したものである。この処理においては、先ずステップ201で遷移条件2が成立しているか否か(モード選択スイッチで「RUN」位置が選択されているか否か)を判定し、成立していない場合には、ステップ202に進んで制御モードをエンジン停止モードに設定する。次いで、ステップ203でエンジン停止指令を発生してこの処理を終了する。
【0149】
ステップ201で遷移条件2が成立していると判定されたときには、ステップ204に進んで現在のモータジェネレータ(MG)の制御モードが発電モードであるか否かを判定する。その結果、発電モードである場合には、ステップ205に進んで遷移条件3(始動スイッチON,エンジンが停止,ギヤがニュートラル、且つメインクラッチがオフ操作中)が成立しているか否かを判定する。その結果、遷移条件3が成立していないときにはこの処理を終了し、遷移条件3が成立しているときには、ステップ206に進んでモータジェネレータの制御モードをエンジン始動モードに設定した後にこの処理を終了する。
【0150】
ステップ204で現在に制御モードが発電モードでないと判定されたときには、ステップ207に進んで現在の制御モードがエンジン始動モードであるか否かを判定する。その結果、エンジン始動モードでない場合には、この処理を終了し、エンジン始動モードである場合には、ステップ208で遷移条件4が成立している(「始動スイッチがOFFになっている」、または「エンジンの始動が完了した」、または「ギヤがニュートラル以外の位置で且つメインクラッチがONである」のいずれかの条件が成立している)か否かを判定する。その結果、遷移条件4が成立していないときには、この処理を終了し、遷移条件4が成立しているときにはステップ209で制御モードを発電モードに設定した後、この処理を終了する。
【0151】
図11は、サブクラッチ制御手段を構成するために実行される処理を示している。この処理においては、ステップ301において制御モードが後退アシストモードであるか否かを判定する。その結果、後退アシストモードでない場合には、ステップ302に移行してサブクラッチを結合する処理を行った後、この処理を終了する。またステップ301で制御モードが後退アシストモードであると判定されたときには、ステップ303でサブクラッチを開放する処理を行った後、この処理を終了する。
【0152】
図12は、図6に示されたようにアシストモードで後退アシストモードと前進アシストモードとを行う場合の後退アシストモード時に実行される処理で、この処理においては、先ずステップ401で遷移条件6(モード選択スイッチがアシスト位置)が成立しているか否かを判定する。その結果、遷移条件6が成立していない(アシストモードでない)と判定されたときにはステップ402で制御モードをエンジン停止モードに設定してこの処理を終了する。ステップ401で遷移条件6が成立していると判定されたときには、ステップ403に進んで遷移条件10(回転方向切替スイッチが押された)が成立しているか否かを判定する。その結果、遷移条件10が成立していないときにはこの処理を終了し、遷移条件10が成立しているときにはステップ404で制御モードを前進アシストモードに設定した後にこの処理を終了する。
【0153】
図13は、アシストモードで前進モードが設定されているときに実行される処理で、この処理では、まずステップ501で遷移条件6(モード選択スイッチがアシスト位置)が成立しているか否かを判定する。この判定の結果、遷移条件6が成立していないときには、ステップ502で制御モードをエンジン停止モードに設定してこの処理を終了する。ステップ501で遷移条件6が成立していると判定されたときには、ステップ503で遷移条件10(回転方向切替スイッチが押された)が成立しているか否かを判定する。その結果、遷移条件10が成立していないと判定されたときにはこの処理を終了し、成立していると判定されたときにはステップ504で制御モードを後退アシストモードに設定してこの処理を終了する。
【0154】
図14は、エンジン停止モードが選択されたときに実行される処理を示したものである。この処理においては、ステップ601で遷移条件2(モード選択スイッチが「RUN」)が成立しているか否かを判定する。その結果、遷移条件2が成立していると判定された(モード選択スイッチが「RUN」位置にある)ときには、ステップ602に進んで制御モードを通常運転モードに設定し、更にステップ603でエンジン停止指令を解除し、ステップ604で制御モードを発電モードに設定した後この処理を終了する。ステップ601で遷移条件2が成立していないと判定された場合には、ステップ605に進んで遷移条件5(モード選択スイッチが「OFF」位置から「アシスト」位置に切り替わった)が成立しているか否かを判定する。その結果、遷移条件5が成立していないときには以後何もしないでこの処理を終了し、遷移条件5が成立しているときにはステップ606で制御モードを後退アシストモードに設定した後この処理を終了する。
【0155】
上記の実施形態では、アシストモードが選択され、モータ駆動判定条件が成立したときに、モータジェネレータ制御手段がモータジェネレータ7の回転速度を徐々に設定回転速度まで上昇させるように構成したが、本発明は、モータジェネレータ制御手段をこのように構成する場合に限定されるものではない。例えば、エンジンの回転速度を調節する際に操作されるスロットルの操作量を検出するスロットルセンサを設けて、アシスト時モータ制御を行う際に設定回転速度を超えない範囲で、スロットルセンサにより検出されるスロットルの操作量に応じてモータジェネレータの回転速度を変化させるようにモータジェネレータ制御手段を構成しても良い。スロットルの操作量は、例えば、アクセルグリップ20の操作量を検出することにより検出することができる。
【0156】
このように構成すると、アシスト運転時にスロットルの操作量に見合った車速が得られるため、アシスト走行時の車速を運転者の意志で調節することができる。
【0157】
上記の実施形態では、アシスト時モータ制御を行う際に、回転速度演算手段30Dによりモータジェネレータ7の回転速度を検出して、検出した回転速度を指示回転速度に保つようにモータジェネレータ7を制御するようにしたが、車速を検出する車速センサを設けて、アシスト時モータ制御を行う際に車速センサにより検出される車速を設定された制限速度まで徐々に増大させるようにモータジェネレータ制御手段を構成してもよい。
【0158】
上記の実施形態では、アシスト走行を行わせる際に変速機のギア位置が第1速であることを条件としたが、動力伝達装置に設けられている変速機のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサ13が設けられる場合には、ギヤポジションセンサ13により検出されているギヤポジションに応じて設定回転速度を切り替えるようにモータジェネレータ制御手段を構成してもよい。
【0159】
アシスト運転を安全に行わせるため、モータジェネレータ制御手段がアシスト時モータ制御を行っているときに警告音を発生する警報手段を設けておくことが望ましい。
【0160】
上記の実施形態では、エンジン始動スイッチを回転方向切替スイッチとして兼用し、キルスイッチをモード選択スイッチとして兼用するようにしたが、回転方向切替スイッチ及びモード選択スイッチをエンジン始動スイッチ及びキルスイッチとは別個に設けることもできる。
【0161】
上記の実施形態では、モータジェネレータ制御手段を、通常運転モードが選択されている状態でエンジン始動指令が与えられたときにモータジェネレータをエンジン始動用のモータとして動作させるように制御するエンジン始動時モータ制御と、アシストモードが選択されているときにモータジェネレータをモータとして動作させるように制御するアシスト時モータ制御とを行うように構成した。しかしながら、本発明は、モータジェネレータ制御手段を上記実施形態のように構成する場合に限定されない。例えば、エンジン始動時モータ制御をエンジン制御部側で行わせるようにしてもよい。従って、モータジェネレータ制御手段は、少なくとも、アシストモードが選択されているときにモータジェネレータをモータとして動作させるように制御するアシスト時モータ制御を行わせるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0162】
1 自動二輪車
2 操舵輪
3 駆動輪
4 ハンドル
5 エンジン
6 動力伝達装置
601 変速機
602 エンジン側動力伝達装置
603 メインクラッチ
604 駆動輪側動力伝達装置
7 モータジェネレータ
11 サブクラッチ
12 エンジンブロック
13 ギヤポジションセンサ
15 ECU
20 アクセルグリップ
21 ブレーキレバー
23 クラッチレバー
24 スイッチパネル
25 キルスイッチ兼モード選択スイッチ
26 エンジン始動スイッチ兼回転方向切替スイッチ
30 コントローラ
30A モード判定手段
30B 回転方向指示手段
30C 通電パターン判定手段
30D 回転速度演算手段
30E モータ駆動部
30F 回転速度指示手段
30G 回転速度制御部
30H アシスト判定手段
30I 転倒判定手段
30J サブクラッチ制御手段
30K 転倒判定手段
31 エンジン制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンを制御するエンジン制御部と、前記エンジンの回転を駆動輪に伝達する動力伝達装置とを備え、前記動力伝達装置は走行時にオンオフされるメインクラッチを有し、前記エンジン制御部はエンジン停止指令が与えられたときに前記エンジンを停止させるように構成されている自動二輪車であって、
前記エンジンの出力軸と前記動力伝達装置との間に挿入されたオンオフ制御が可能なサブクラッチと、
モータ及びジェネレータとして機能する回転電機からなっていて、前記サブクラッチを通して前記エンジンとの間での動力の伝達を行い、前記メインクラッチを通して前記駆動輪との間での動力の伝達を行うように前記サブクラッチとメインクラッチとの間で前記動力伝達装置に回転軸が結合されたモータジェネレータと、
前記エンジンを動力源とした通常運転を可能にする通常運転モードと、エンジン停止モードと、前記モータジェネレータを動力源としたアシスト運転を可能にするアシストモードとを選択するモード選択スイッチと、
前記モード選択スイッチにより選択された制御モードに応じて前記エンジン停止指令の発生と前記サブクラッチ及びモータジェネレータの制御とを行うコントローラと、
を具備し、
前記コントローラは、前記エンジン停止モードが選択されているとき及び前記アシストモードが選択されているときに前記エンジン停止指令を発生し、前記通常運転モードが選択されているときに前記エンジン停止指令を消滅させるエンジン停止指令発生手段と、前記アシストモード以外のモードが選択されているときに前記サブクラッチをオン状態にし、前記アシストモードが選択されているときに前記サブクラッチをオフ状態にするように前記サブクラッチを制御するサブクラッチ制御手段と、前記アシストモードが選択されているときに前記モータジェネレータをモータとして動作させるように制御するアシスト時モータ制御を行うモータジェネレータ制御手段とを備えてなる自動二輪車。
【請求項2】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記通常運転モードが選択されている状態でエンジン始動指令が与えられたときに前記モータジェネレータをモータとして動作させるように制御するエンジン始動時モータ制御をも行うように構成されている請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記アシスト時モータ制御を行う際に前記モータジェネレータの回転速度を設定回転速度まで徐々に増大させるように構成されている請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記エンジンの回転速度を調節する際に操作されるスロットルの操作量を検出するスロットルセンサが設けられ、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記アシスト時モータ制御を行う際に設定回転速度を超えない範囲で、前記スロットルセンサにより検出されるスロットルの操作量に応じて前記モータジェネレータの回転速度を変化させるように構成されている請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記設定回転速度は、車速の上限を2ないし3km/hの範囲の速度とするように設定されている請求項3または4に記載の自動二輪車。
【請求項6】
車速を検出する車速センサが設けられ、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記アシスト時モータ制御を行う際に前記車速センサにより検出される車速を設定された制限速度まで徐々に増大させるように構成されている請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記車速の上限は、2ないし3km/hの範囲に設定されている請求項6に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記モータジェネレータ制御手段は、運転者が前記メインクラッチをオフ状態にする操作を行っていることを条件として前記アシスト時モータ制御を開始するように構成されている請求項1ないし7のいずれか一つに記載の自動二輪車。
【請求項9】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記動力伝達装置に設けられている変速機のギヤポジションが第1速であるときにのみ前記アシスト時モータ制御を行うように構成されている請求項1ないし8のいずれか一つに記載の自動二輪車。
【請求項10】
前記動力伝達装置に設けられている変速機のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサが設けられ、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記ギヤポジションセンサにより検出されているギヤポジションに応じて、設定回転速度を切り替えるように構成されている請求項3,4または5に記載の自動二輪車。
【請求項11】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記アシスト時モータ制御を行っている状態で運転者がブレーキを操作していることが検出されたときに前記モータジェネレータのモータとしての駆動を停止させるように構成されている請求項1ないし10のいずれか1つに記載の自動二輪車。
【請求項12】
前記モータジェネレータ制御手段が前記アシスト時モータ制御を行っているときに警告音を発生する警報手段が設けられている請求項1ないし11のいずれか1つに記載の自動二輪車。
【請求項13】
自動二輪車の車両が転倒状態にあるか否かを検出する転倒検出手段が設けられ、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記転倒検出手段により転倒が検出されたときに前記アシスト時モータ制御を停止させるように構成されている請求項1ないし12のいずれか1つに記載の自動二輪車。
【請求項14】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記アシスト時モータ制御を行う際に自動二輪車を後退させる方向にのみ前記モータジェネレータを回転させるように構成されている請求項1ないし13のいずれか1つに記載の自動二輪車。
【請求項15】
前記モード選択スイッチは、第1ないし第3のポジションを有して、第1のポジションから第2のポジションを経て第3のポジションに切り替わり、第3のポジションから第2のポジションを経て第1のポジションに切り替わるように構成されていて、
前記第1のポジション、第2のポジション及び第3のポジションにあるときにそれぞれ前記通常運転モード、エンジン停止モード及びアシストモードを選択するように構成されている請求項1ないし14のいずれか1つに記載の自動二輪車。
【請求項16】
前記エンジン始動時モータ制御を行う際には前記モータジェネレータをエンジンの始動時の回転方向に回転させることを指示する回転方向指示信号を発生し、前記アシスト時モータ制御を行う際には前記モータジェネレータを自動二輪車の進行方向に対応した回転方向に回転させることを指示する回転方向指示信号を発生する回転方向指示手段が設けられ、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記始動時モータ制御を行う際及び前記アシスト時モータ制御を行う際に、前記回転方向指示手段が発生している回転方向指示信号により指示された回転方向に前記モータジェネレータを回転させるように前記モータジェネレータを制御する請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項17】
押ボタンスイッチからなっていて、前記アシスト時モータ制御を行う際のモータジェネレータの回転方向を、自動二輪車を後退させる方向である第1の回転方向と、自動二輪車を前進させる方向である第2の回転方向とに切り替える際に押ボタンが押される回転方向切替スイッチが設けられ、
前記回転方向指示手段は、前記アシストモードが選択されたときに最初に指示する回転方向を第1の回転方向として、以後前記回転方向切替スイッチの押ボタンが押される毎に指示する回転方向を交互に異なる方向に切り替えるように構成されている請求項16に記載の自動二輪車。
【請求項18】
前記モード選択スイッチは、第1ないし第3のポジションを有して、第1のポジションから第2のポジションを経て第3のポジションに切り替わり、第3のポジションから第2のポジションを経て第1のポジションに切り替わるように構成されていて、前記第1のポジション、第2のポジション及び第3のポジションにあるときにそれぞれ前記通常運転モード、エンジン停止モード及びアシストモードを選択するように構成されている請求項17に記載の自動二輪車。
【請求項19】
前記回転方向切替スイッチを構成する押ボタンスイッチが前記エンジン始動指令を発生する際に押される押ボタンスイッチを兼ねている請求項17または18に記載の自動二輪車。
【請求項20】
前記モード選択スイッチは前記エンジンを強制的に停止させる際に前記エンジン停止指令を発生するキルスイッチを兼ねており、前記モード選択スイッチをキルスイッチとして用いる際には、前記第1のポジションが前記エンジンの回転を許容する位置として用いられ、前記第2のポジション及び第3のポジションが前記エンジン停止指令を発生する位置として用いられる請求項15または18に記載の自動二輪車。
【請求項21】
前記サブクラッチは、電気的に駆動されるアクチュエータによりオンオフ操作されるドグクラッチからなっている請求項1いし20のいずれか1つに記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−31837(P2011−31837A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182421(P2009−182421)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】