説明

自動変速機

【課題】構成要素が少なく、フリクションロスが削減可能な自動変速機を提供する。
【解決手段】自動変速機10は、入力軸12、3つの遊星歯車機構PG1〜PG3及び遊星歯車機構PG1の出力要素Saに連結された出力ギヤ13を備える。遊星歯車機構PG1の第1入力要素Raに動力を伝達自在な電動機MOTが設けられる。遊星歯車機構PG2,PG3の入力要素Cb,Ccに入力軸12が連結される。遊星歯車機構PG2の出力要素RbがクラッチC1を介して、遊星歯車機構PG3の出力要素Rcが第3クラッチC1を介して、夫々遊星歯車機構PG1の第2入力要素Saに連結可能である。第1及び第2入力要素Ra,SaがクラッチC2を介して連結可能である。第1入力要素RaがクラッチC4を介して入力要素Cbに連結可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車機構を用いて内燃機関の動力を複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊星歯車機構を用いて内燃機関の動力を複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、3つの遊星歯車機構、2つのクラッチ及び3つのブレーキを用いて、前進1速段から6速段及び後進1速段を確保した自動変速機が記載されている。また、特許文献2には、3つの遊星歯車機構、2つのクラッチ及び4つのブレーキを用いて、前進1速段から5速段及び後進1速段を確保した自動変速機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3620883号公報
【特許文献2】特開2002−122191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の自動変速機では、前進1速段から5速段及び後進1速段を確保するために、3つの遊星歯車機構の他に、2つのクラッチと3つのブレーキ、又は2つのクラッチと4つのブレーキを必要とし、構成要素が多いので、フリクションロスが大きくなっていた。特に、ブレーキによるフリクションロスが大きかった。
【0006】
本発明は、構成要素が少なく、フリクションロスが削減可能な自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、駆動源からの動力により回転する入力軸と、該入力軸の回転軸線上に配置され、サンギヤ、キャリア及びリングギヤからなる3つの要素を夫々有する第1から第3の3つの遊星歯車機構と、変速された動力を出力する出力部材とを備える自動変速機であって、前記第1遊星歯車機構の何れか1つの前記要素が前記出力部材に動力を伝達する出力要素であり、前記第1遊星歯車機構の他の2つの前記要素が夫々第1入力要素及び第2入力要素であり、前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素に動力を伝達自在な電動機が設けられ、前記第2遊星歯車機構の何れか1つの前記要素が前記入力軸に連結された入力要素であり、前記第2遊星歯車機構の他の1つの前記要素がケーシングに固定された固定要素であり、前記第2遊星歯車機構の残り1つの前記要素が出力要素であり、前記第3遊星歯車機構の何れか1つの前記要素が前記入力軸に連結された入力要素であり、前記第3遊星歯車機構の他の1つの前記要素がケーシングに固定された固定要素であり、前記第3遊星歯車機構の残り1つの前記要素が出力要素であり、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2又は前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第1係合機構と、前記第1遊星歯車機構の何れか2つの要素を連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第2係合機構と、前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第3係合機構と、前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第1入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記入力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第4係合機構と備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の自動変速機によれば、第1及び第3係合機構の切換状況に応じて、第1遊星歯車機構の第2入力要素が、入力軸の回転が伝達されない状態と、入力軸の回転が伝達経路に応じて2つの異なる回転速度で回転される状態とになる。第4係合機構の切換状況に応じて、第1遊星歯車機構の第1入力要素が、入力軸の回転が伝達されない状態と、入力軸の回転が伝達経路に応じた回転速度で回転される状態とになる。そして、第2係合機構の切換状況に応じて、第1遊星歯車機構の3つの要素が、相対回転不能なロック状態と、相対回転可能な状態となる。よって、第1から第4係合機構の切換状況の組み合わせに応じて、入力軸の回転が5段階に変速されて第1遊星歯車機構の出力要素から出力部材に出力される。
【0009】
そして、駆動源からの動力により入力軸が回転するときに第1遊星歯車機構の第1入力要素が回転する方向に電動機を回転させることにより、電動機により駆動源の動力をアシストすることが可能となる。さらに、電動機を前記方向と逆方向に回転させることにより、第1遊星歯車機構の出力要素を逆回転させることが可能となり、後段を確保することができる。
【0010】
従って、3つの遊星歯車機構及び4つの係合機構を有する構成で、前進1速段から5速段及び後進段を確保することができる。上記従来の自動変速機と比較して、構成要素が少なく、且つブレーキを有していないので、フリクションロスが削減される。
【0011】
本発明において、前記第3遊星歯車機構の前記入力要素又は前記出力要素に発電機が連結されていることが好ましい。
【0012】
これによれば、駆動源の動力により発電機で発電させることができる。
【0013】
本発明の第1の具体的態様としては、前記第1遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、前記第1要素は前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素であり、前記第2要素は前記第1遊星歯車機構の前記出力要素であり、前記第3要素は前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素であり、前記第4要素は前記第2遊星歯車機構の前記入力要素であり、前記第5要素は前記第2遊星歯車機構の前記出力要素であり、前記第6要素は前記第2遊星歯車機構の前記固定要素であり、前記第7要素は前記第3遊星歯車機構の前記出力要素であり、前記第8要素は前記第3遊星歯車機構の前記入力要素であり、前記第9要素は前記第3遊星歯車機構の前記固定力要素であり、前記第1係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第3係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第4係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記入力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であるように構成することができる。
【0014】
本発明の第2の具体的態様としては、前記第1遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、前記第1要素は前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素であり、前記第2要素は前記第1遊星歯車機構の前記出力要素であり、前記第3要素は前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素であり、前記第4要素は前記第2遊星歯車機構の前記入力要素であり、前記第5要素は前記第2遊星歯車機構の前記出力要素であり、前記第6要素は前記第2遊星歯車機構の前記固定要素であり、前記第7要素は前記第3遊星歯車機構の前記入力要素であり、前記第8要素は前記第3遊星歯車機構の前記出要素であり、前記第9要素は前記第3遊星歯車機構の前記固定力要素であり、前記第1係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第3係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記入力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第4係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であるように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動変速機のスケルトン図。
【図2】図1に示した自動変速機の係合要素の状態を変速段毎にまとめて示す説明図。
【図3】図1に示した自動変速機の共線図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る自動変速機のスケルトン図。
【図5】図4に示した自動変速機の係合要素の状態を変速段毎にまとめて示す説明図。
【図6】図4に示した自動変速機の共線図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る自動変速機10について説明する。
【0017】
図1に示すように、自動変速機10は、変速機ケース11内に回転自在に軸支されると共に、エンジン等の内燃機関からなる駆動源ENGにダンパDaを介して連結される入力軸12と、入力軸12と同心に配置された出力ギヤ13とを備えている。出力ギヤ13の回転はカウンターギヤ14aを介してカウンターシャフト14に伝達される。そして、カウンターシャフト14の回転は、図外のディファレンシャルギヤやプロペラシャフトを介して、車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0018】
又、変速機ケース11内には、第1遊星歯車機構PG1、第2遊星歯車機構PG2及び第3遊星歯車機構PG3が入力軸12と同心に配置されている。第1遊星歯車機構PG1は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとから成るシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
【0019】
図3における第1遊星歯車機構PG1の共線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの要素の相対回転速度の比を直線で表すことができる図)を参照して、第1遊星歯車機構PG1の3つの要素Sa,Ca,Raを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0020】
ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1遊星歯車機構PG1のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をhとして、h:1に設定される。尚、共線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸12と同じ回転速度)であることを示している。
【0021】
第2遊星歯車機構PG2は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤSbに噛合し、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb1,Pb2を自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るダブルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
【0022】
図3における第2遊星歯車機構PG2の共線図を参照して、第2遊星歯車機構PG2の3つの要素Sb,Cb,Rbを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はキャリアCb、第5要素はリングギヤRb、第6要素はサンギヤSbになる。
【0023】
ここで、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔と、キャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2遊星歯車機構PG2のギヤ比をiとして、i:1に設定される。
【0024】
第3遊星歯車機構PG3は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤScとリングギヤRcとに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
【0025】
図3における第3遊星歯車機構PG3の共線図を参照して、第3遊星歯車機構PG3の3つの要素Sc,Cc,Rcを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。
【0026】
ここで、サンギヤScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギヤRc間の間隔との比は、第3遊星歯車機構PG3のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をjとして、j:1に設定される。
【0027】
第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)には、出力ギヤ13が連結されている。第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)は、入力軸12と同心に配置された中空軸15に連結されている。
【0028】
第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)には、中空の電動機MOT(電動モータ)が連結されている。電動機MOTは、変速機ケース11に固定されたステータMOTaと、リングギヤRa(第3要素)に連結されたロータMOTbとで構成される。
【0029】
第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)が第1入力要素、サンギヤSa(第1要素)が第2入力要素となり、リングギヤRa(第3要素)及びサンギヤSa(第1要素)に夫々入力された回転が変速されて、出力要素たるキャリアCa(第2要素)から出力される。
【0030】
第2遊星歯車機構PG2のキャリアCb(第4要素)は、入力軸12に連結されている。第2遊星歯車機構PG2のサンギヤSb(第6要素)は、変速機ケース11に固定されている。
【0031】
従って、第2遊星歯車機構PG2のキャリアCb(第4要素)が入力要素、サンギヤSb(第6要素)が固定要素、リングギヤRb(第5要素)が出力要素となり、入力軸12の回転速度が1/iに減速されて、出力要素たるリングギヤRb(第5要素)から出力される。
【0032】
第3遊星歯車機構PG3のサンギヤSc(第7要素)には、中空の発電機GEN(ジェネレータ)が連結されている。発電機GENは、変速機ケース11に固定されたステータGENaと、サンギヤSc(第7要素)に連結されたロータGENbとで構成される。
【0033】
第3遊星歯車機構PG3のキャリアCc(第8要素)は、入力軸12に連結されている。第3遊星歯車機構PG3のリングギヤRc(第9要素)は、変速機ケース11に固定されている。
【0034】
従って、第3遊星歯車機構PG3のキャリアCc(第8要素)が入力要素、リングギヤRc(第9要素)が固定要素、サンギヤSc(第7要素)が出力要素となり、入力軸12の回転速度が(j+1)/jに増速されて、出力要素たるキャリアCc(第8要素)から出力される。
【0035】
自動変速機10は、係合機構として、第1から第4の4つの湿式多板クラッチC1〜C4を備える。
【0036】
第1湿式多板クラッチC1は、中空軸15と第2遊星歯車機構PG2の出力要素たるリングギヤRb(第5要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0037】
第2湿式多板クラッチC2は、中空軸15と第1遊星歯車機構PG1の第1入力要素たるリングギヤRa(第3要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。中空軸15は第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)と連結されているので、第2湿式多板クラッチC2が連結状態となると、第1遊星歯車機構PG1の3つ要素Sa,Ca,Raは、相対回転不能なロック状態となる。
【0038】
尚、第2湿式多板クラッチC2は、第1遊星歯車機構PG1をロック状態にできればよく、例えば、サンギヤSa(第1要素)とキャリアCa(第2要素)とを解除自在に連結できるように構成してもよく、又は、キャリアCa(第2要素)とリングギヤRa(第3要素)とを解除自在に連結できるように構成してもよい。
【0039】
第3湿式多板クラッチC3は、中空軸15と第3遊星歯車機構PG3の出力要素たるサンギヤSc(第7要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0040】
第4湿式多板クラッチC4は、第2湿式多板クラッチC2を介して第1遊星歯車機構PG1の第1入力要素たるリングギヤRa(第3要素)と第2遊星歯車機構PG2の入力要素たるキャリアCb(第4要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0041】
図1に示すように、自動変速機10においては、中空の電動機MOTの内側に、第1遊星歯車機構PG1、第2遊星歯車機構PG2、第1湿式多板クラッチC1、第2湿式多板クラッチC2及び第4湿式多板クラッチC4を配置している。また、中空の発電機GENの内側に、第3遊星歯車機構PG3及び第3湿式多板クラッチC3を配置している。このように、中空の電動機MOT及び発電機GENの内側のスペースを有効活用することにより、自動変速機10の軸長の増加を抑制している。
【0042】
変速機ケース11には、発電機GENと電動機MOTとの間に位置させて、径方向内方に延びる側壁11aが設けられている。この側壁11aの径方向内縁には、軸方向に突出する筒状保持部11bが設けられている。この筒状保持部11bの外周面にベアリング13aを介して出力ギヤ13が軸支されている。
【0043】
次に、図2及び図3を参照して、自動変速機10の作動を説明する。自動変速機10においては、駆動源ENGの動力を用いて車両を走行させる場合には、前進1速段から5速段及び後進段を確立させることができる。
【0044】
1速段を確立させる場合には、第1湿式多板クラッチC1及び第2湿式多板クラッチC2を連結状態とする。
【0045】
第1湿式多板クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)が第2遊星歯車機構PG2のリングギヤRb(第5要素)と同一速度で回転する。よって、サンギヤSa(第1要素)が入力軸12の回転速度の1/iの速度で回転する。また、第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1は各要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。よって、第1遊星歯車機構PG1の全ての要素Sa,Ca,Raが入力軸12の回転速度の1/iの速度で回転する。
【0046】
従って、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸12の回転速度の1/iの速度で回転して、1速段が確立される。
【0047】
2速段を確立させる場合には、第1湿式多板クラッチC1及び第4湿式多板クラッチC4を連結状態とする。
【0048】
第1湿式多板クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)が入力軸12の回転速度の1/iの速度で回転する。また、第4湿式多板クラッチC4を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)が第2遊星歯車機構PG2のキャリアCb(第4要素)と同一速度で回転する。よって、リングギヤRa(第3要素)が入力軸12と同一速度で回転する。
【0049】
従って、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸12の回転速度の(hi+i−1)/(hi)で回転して、2速段が確立される。
【0050】
3速段を確立させる場合には、第2湿式多板クラッチC2及び第4湿式多板クラッチC4を連結状態とする。
【0051】
第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1は各要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。また、第4湿式多板クラッチC4を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)が第2遊星歯車機構PG2のキャリアCb(第4要素)と同一速度で回転する。よって、リングギヤRa(第3要素)が入力軸12と同一速度で回転する。
【0052】
従って、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸12と同一速度で回転して、3速段が確立される。
【0053】
4速段を確立させる場合には、第3湿式多板クラッチC3及び第4湿式多板クラッチC4を連結状態とする。
【0054】
第3湿式多板クラッチC3を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)が第3遊星歯車機構PG3のサンギヤSc(第7要素)と同一速度で回転する。よって、サンギヤSa(第1要素)が入力軸12の回転速度の(j+1)/j(以下、「N1」と省略して用いる場合もある。)で回転する。また、第4湿式多板クラッチC4を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)が入力軸12と同一速度で回転する。
【0055】
従って、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸12の回転速度の1+(N1−1)/hで回転して、4速段が確立される。
【0056】
5速段を確立させる場合には、第2湿式多板クラッチC2及び第3湿式多板クラッチC3を連結状態とする。
【0057】
第3湿式多板クラッチC3を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)が「N1」で回転する。また、第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1は各要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。
【0058】
従って、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が「N1」で回転して、5速段が確立される。
【0059】
第2湿式多板クラッチC2のみを連結状態とすると共に、電動機MOTを正転(車両が前進する方向の回転)させる。これにより、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が電動機MOTの回転速度のh/(h+1)で回転し、電動機MOTの動力のみにより車両の駆動輪に動力を伝達させることができる。このとき、ダンパDaにより駆動源ENGと入力軸12との連結を解除することによって、自動変速機10から駆動源ENGを切り離すことができる。
【0060】
そして、後進段を確立させる場合には、第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすると共に、電動機MOTを逆転(車両が後進する方向の回転)させる。これにより、出力ギヤ13に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が電動機MOTの回転速度のh/(h+1)で回転し、後進段が確立される。
【0061】
自動変速機10においては、内燃機関たる駆動源ENGと発電機GENとが、第1遊星歯車機構PG1を介して連結状態となっている。このため、全ての変速段において、駆動源ENGの駆動力により発電機GENで発電させて図示省略した2次電池に充電させる回生を行うことができる。また、車両が停車状態である場合でも、例えば、第1から第3湿式多板クラッチC1〜C3を開放状態とすることにより、車両の駆動輪に動力を伝達させることなく回生を行うこともできる。
【0062】
また、電動機MOTの駆動力により走行させることもできる。また、各速段において、駆動源ENGと電動機MOTとの両方の駆動力を用い、無段変速ECVTを行うこともできる。これは、図3に一点鎖線の領域で例示するように、発電機MOTの駆動力を調節することによって行う。
【0063】
尚、図3では、電動機MOTの調節領域として正転(車両が前進する方向の回転)側のみを示しているが、逆転側まで調節領域を広げてもよい。
【0064】
以上説明したように、自動変速機10では、3つの遊星歯車機構PG1〜PG3と4つの係合機構たる湿式多板クラッチC1〜C4を用いて、前進1速段から5速段及び後進段を確保している。よって、上記従来の自動変速機と比較して、構成要素が少なく、フリクションロスが削減される。特に、ブレーキを用いないので、フリクションロスが削減される。
【0065】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る自動変速機20について説明する。
【0066】
図4に示すように、自動変速機20は、変速機ケース21内に回転自在に軸支されると共に、エンジン等の内燃機関からなる駆動源ENGにダンパDaを介して連結される入力軸22と、入力軸22と同心に配置された出力ギヤ23とを備えている。出力ギヤ23の回転はカウンターギヤ24aを介してカウンターシャフト24に伝達される。そして、カウンターシャフト24の回転は、図外のディファレンシャルギヤやプロペラシャフトを介して、車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0067】
又、変速機ケース21内には、第1遊星歯車機構PG1、第2遊星歯車機構PG2及び第3遊星歯車機構PG3が入力軸22と同心に配置されている。第1遊星歯車機構PG1は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとから成るシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
【0068】
図6における第1遊星歯車機構PG1の共線図を参照して、第1遊星歯車機構PG1の3つの要素Sa,Ca,Raを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0069】
ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1遊星歯車機構PG1のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をhとして、h:1に設定される。尚、共線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸22と同じ回転速度)であることを示している。
【0070】
第2遊星歯車機構PG2は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSbとリングギヤRbとに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
【0071】
図6における第2遊星歯車機構PG2の共線図を参照して、第2遊星歯車機構PG2の3つの要素Sb,Cb,Rbを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSb、第5要素はキャリアCb、第6要素はリングギヤRbなる。
【0072】
ここで、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔と、キャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2遊星歯車機構PG2のギヤ比をiとして、i:1に設定される。
【0073】
第3遊星歯車機構PG3は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤScとリングギヤRcとに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
【0074】
図6における第3遊星歯車機構PG3の共線図を参照して、第3遊星歯車機構PG3の3つの要素Sc,Cc,Rcを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。
【0075】
ここで、サンギヤScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギヤRc間の間隔との比は、第3遊星歯車機構PG3のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をjとして、j:1に設定される(但し、i<j)。
【0076】
第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)には、出力ギヤ23が連結されている。第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)は、入力軸22と同心に配置された中空軸25に連結されている。
【0077】
第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)には、中空の電動機MOT(電動モータ)が連結されている。電動機MOTは、変速機ケース21に固定されたステータMOTaと、リングギヤRb(第3要素)に連結されたロータMOTbとで構成される。
【0078】
第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)が第1入力要素、サンギヤSa(第1要素)が第2入力要素となり、リングギヤRa(第3要素)及びサンギヤSa(第1要素)に夫々入力された回転が変速されて、出力要素たるキャリアCa(第2要素)から出力される。
【0079】
第2遊星歯車機構PG2のサンギヤSb(第4要素)は、入力軸22に連結されている。第2遊星歯車機構PG2のリングギヤRb(第6要素)は、変速機ケース21に固定されている。
【0080】
従って、第2遊星歯車機構PG2のサンギヤSb(第4要素)が入力要素、リングギヤRb(第6要素)が固定要素となり、入力軸22の回転速度が1/iに減速されて、出力要素たるキャリアCb(第5要素)から出力される。
【0081】
第3遊星歯車機構PG3のサンギヤSc(第7要素)は、入力軸22に連結されている。第3遊星歯車機構PG3のリングギヤRc(第9要素)は、変速機ケース21に固定されている。
【0082】
従って、第3遊星歯車機構PG3のサンギヤSc(第7要素)が入力要素、リングギヤRc(第9要素)が固定要素となり、入力軸22の回転速度が1/jに減速されて、出力要素たるキャリアCc(第8要素)から出力される。
【0083】
そして、入力軸22には、中空の発電機GEN(ジェネレータ)が連結されている。発電機GENは、変速機ケース21に固定されたステータGENaと、入力軸22に連結されたロータGENbとで構成される。
【0084】
自動変速機20は、係合機構として、第1から第4の4つの湿式多板クラッチC1〜C4を備える。
【0085】
第1湿式多板クラッチC1は、中空軸25と第2遊星歯車機構PG3の出力要素たるキャリアCc(第8要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0086】
第2湿式多板クラッチC2は、中空軸25と第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。中空軸25は第1遊星歯車機構PG1のサンギヤSa(第1要素)と連結されているので、第2湿式多板クラッチC2が連結状態となると、第1遊星歯車機構PG1の3つ要素Sa,Ca,Raは、相対回転不能なロック状態となる。
【0087】
尚、第2湿式多板クラッチC2は、第1遊星歯車機構PG1をロック状態にできればよく、例えば、サンギヤSa(第1要素)とキャリアCa(第2要素)とを解除自在に連結できるように構成してもよく、又は、キャリアCa(第2要素)とリングギヤRa(第3要素)とを解除自在に連結できるように構成してもよい。
【0088】
第3湿式多板クラッチC3は、中空軸25と第3遊星歯車機構PG3の入力要素たるサンギヤSc(第7要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0089】
第4湿式多板クラッチC4は、第2湿式多板クラッチC2を介して第1遊星歯車機構PG1の第1入力要素たるリングギヤSa(第3要素)と第2遊星歯車機構PG2の出力要素たるキャリアCb(第5要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0090】
図4に示すように、自動変速機20においては、中空の電動機MOTの内側に、第1遊星歯車機構PG1、第2遊星歯車機構PG2、第2湿式多板クラッチC2及び第4湿式多板クラッチC4を配置している。また、中空の発電機GENの内側に、第3遊星歯車機構PG3、第1湿式多板クラッチC1及び第3湿式多板クラッチC3を配置している。このように、中空の電動機MOT及び発電機GENの内側のスペースを有効活用することにより、自動変速機の軸長の増加を抑制している。
【0091】
変速機ケース21には、発電機GENと電動機MOTとの間に位置させて、径方向内方に延びる側壁21aが設けられている。この側壁21aの径方向内縁には、軸方向に突出する筒状保持部21bが設けられている。この筒状保持部21bの外周面にベアリング23aを介して出力ギヤ23が軸支されている。
【0092】
次に、図5及び図6を参照して、自動変速機20の作動を説明する。自動変速機20においては、駆動源ENGの動力を用いて車両を走行させる場合には、前進1速段から5速段及び後進段を確立させることができる。
【0093】
1速段を確立させる場合には、第1湿式多板クラッチC1及び第2湿式多板クラッチC2を連結状態とする。
【0094】
第1湿式多板クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1の第2入力要素たるサンギヤSa(第1要素)が第3遊星歯車機構PG3の出力要素たるキャリアCc(第8要素)と同一速度で回転する。よって、サンギヤSa(第1要素)が入力軸22の回転速度の1/jの速度で回転する。また、第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1は各要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。よって、第1遊星歯車機構PG1の全ての要素Sa,Ca,Raが入力軸22の回転速度の1/jの速度で回転する。
【0095】
従って、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸22の回転速度の1/jの速度で回転して、1速段が確立される。
【0096】
2速段を確立させる場合には、第1湿式多板クラッチC1及び第4湿式多板クラッチC4を連結状態とする。
【0097】
第1湿式多板クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1の第1入力要素たるサンギヤSa(第1要素)が入力軸22の回転速度の1/jの速度で回転する。また、第4湿式多板クラッチC4を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1の第2入力要素たるリングギヤRa(第3要素)が第2遊星歯車機構PG2の出力要素たるキャリアCb(第5要素)と同一速度で回転する。よって、リングギヤRa(第3要素)が入力軸22の回転速度の1/iの速度で回転する。
【0098】
従って、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸22の回転速度の(hj+i−j)/(hij)で回転して、2速段が確立される。
【0099】
3速段を確立させる場合には、第2湿式多板クラッチC2及び第4湿式多板クラッチC4を連結状態とする。
【0100】
第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1は各要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。また、第4湿式多板クラッチC4を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤRa(第3要素)が入力軸22の回転速度の1/iで回転する。
【0101】
従って、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸22の回転速度の1/iで回転して、3速段が確立される。
【0102】
4速段を確立させる場合には、第3湿式多板クラッチC3及び第4湿式多板クラッチC4を連結状態とする。
【0103】
第3湿式多板クラッチC3を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1の第2入力要素たるサンギヤSa(第1要素)が第3遊星歯車機構PG3の入力要素たるサンギヤSc(第7要素)と同一速度で回転する。よって、サンギヤSa(第1要素)が入力軸22と同一速度で回転する。また、第4湿式多板クラッチC4を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1の第1入力要素たるリングギヤRa(第3要素)が入力軸22の回転速度の1/iで回転する。
【0104】
従って、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸22の回転速度の(h+i−1)/(hi)で回転して、4速段が確立される。
【0105】
5速段を確立させる場合には、第2湿式多板クラッチC2及び第3湿式多板クラッチC3を連結状態とする。
【0106】
第3湿式多板クラッチC3を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1の第入力要素たるサンギヤSa(第1要素)が入力軸22と同一速度で回転する。また、第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PG1は各要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。
【0107】
従って、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が入力軸22と同一速度で回転して、5速段が確立される。
【0108】
第2湿式多板クラッチC2のみを連結状態とすると共に、電動機MOTを正転(車両が前進する方向の回転)させる。これにより、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が電動機MOTの回転速度のh/(h+1)で回転し、電動機MOTの動力のみにより車両の駆動輪に動力を伝達させることができる。このとき、ダンパDaにより駆動源ENGと入力軸22との連結を解除することによって、自動変速機20から駆動源ENGを切り離すことができる。
【0109】
そして、後進段を確立させる場合には、第2湿式多板クラッチC2を連結状態とすると共に、電動機MOTを逆転(車両が後進する方向の回転)させる。これにより、出力ギヤ23に連結する第1遊星歯車機構PG1のキャリアCa(第2要素)が電動機MOTの回転速度のh/(h+1)で回転し、後進段が確立される。
【0110】
自動変速機20においては、内燃機関たる駆動源ENGと発電機GENとが、第1遊星歯車機構PG1を介して連結状態となっている。このため、全ての変速段において、駆動源ENGの駆動力により発電機GENで発電させて図示省略した2次電池に充電させる回生を行うことができる。また、車両が停車状態である場合でも、例えば、第1から第3湿式多板クラッチC1〜C3を開放状態とすることにより、車両の駆動輪に動力を伝達させることなく回生を行うこともできる。
【0111】
また、電動機MOTの駆動力により走行させることもできる。また、各速段において、駆動源ENGと電動機MOTとの両方の駆動力を用い、無段変速ECVTを行うこともできる。これは、図6に一点鎖線の領域で例示するように、発電機MOTの駆動力を調節することによって行う。
【0112】
尚、図6では、電動機MOTの調節領域として正転(車両が前進する方向の回転)側のみを示しているが、逆転側まで調節領域を広げてもよい。
【0113】
以上説明したように、自動変速機20では、3つの遊星歯車機構PG1〜PG3と4つの係合機構たる湿式多板クラッチC1〜C4を用いて、前進1速段から5速段及び後進段を確保している。よって、上記従来の自動変速機と比較して、構成要素が少なく、フリクションロスが削減される。特に、ブレーキを用いないので、フリクションロスが削減される。さらに、自動変速機20では、3つの遊星歯車機構PG1〜PG3が全てシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されているので、フリクションロスが少ない。
【符号の説明】
【0114】
10,20…自動変速機、 11,21…変速機ケース、 12,22…入力軸、 13、23…出力ギヤ(出力部材)、 14,24…カウンターシャフト、 14a,24a…カウンターギヤ、 15,25…中空軸、 PG1…第1遊星歯車機構、 Ca…キャリア(第2要素、出力要素)、 Ra…リングギヤ(第3要素、第1入力要素)、 Sa…サンギヤ(第1要素、第2入力要素)、 PG2…第2遊星歯車機構、 Cb…キャリア(第4要素、入力要素、第5要素、出力要素)、 Rb…リングギヤ(第5要素、出力要素、第6要素、固定要素)、 Sb…サンギヤ(第6要素、固定要素、第4要素、入力要素)、 PG3…第3遊星歯車機構、 Cc…キャリア(第8要素、入力要素、出力要素)、 Rc…リングギヤ(第9要素、固定要素)、 Sc…サンギヤ(第7要素、出力要素、入力要素)、 C1…第1湿式多板クラッチ(第1係合機構)、 C2…第2湿式多板クラッチ(第2係合機構)、 C3…第3湿式多板クラッチ(第3係合機構)、 C4…第4湿式多板クラッチ(第4係合機構)、 Da…ダンパ、 ENG…駆動源(内燃機関、エンジン)、 MOT…電動機、 GEN…発電機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの動力により回転する入力軸と、
該入力軸の回転軸線上に配置され、サンギヤ、キャリア及びリングギヤからなる3つの要素を夫々有する第1から第3の3つの遊星歯車機構と、
変速された動力を出力する出力部材とを備える自動変速機であって、
前記第1遊星歯車機構の何れか1つの前記要素が前記出力部材に動力を伝達する出力要素であり、前記第1遊星歯車機構の他の2つの前記要素が夫々第1入力要素及び第2入力要素であり、
前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素に動力を伝達自在な電動機が設けられ、
前記第2遊星歯車機構の何れか1つの前記要素が前記入力軸に連結された入力要素であり、前記第2遊星歯車機構の他の1つの前記要素がケーシングに固定された固定要素であり、前記第2遊星歯車機構の残り1つの前記要素が出力要素であり、
前記第3遊星歯車機構の何れか1つの前記要素が前記入力軸に連結された入力要素であり、前記第3遊星歯車機構の他の1つの前記要素がケーシングに固定された固定要素であり、前記第3遊星歯車機構の残り1つの前記要素が出力要素であり、
前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2又は前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第1係合機構と、
前記第1遊星歯車機構の何れか2つの要素を連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第2係合機構と、
前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第3係合機構と、
前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第1入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記入力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、前記第1係合機構が前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素との連結状態を切換える場合、前記第1遊星歯車機構の第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在な第4係合機構と備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速機において、
前記第3遊星歯車機構の前記入力要素又は前記出力要素に発電機が連結されていることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動変速機において、
前記第1遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、
前記第1要素は前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素であり、
前記第2要素は前記第1遊星歯車機構の前記出力要素であり、
前記第3要素は前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素であり、
前記第4要素は前記第2遊星歯車機構の前記入力要素であり、
前記第5要素は前記第2遊星歯車機構の前記出力要素であり、
前記第6要素は前記第2遊星歯車機構の前記固定要素であり、
前記第7要素は前記第3遊星歯車機構の前記出力要素であり、
前記第8要素は前記第3遊星歯車機構の前記入力要素であり、
前記第9要素は前記第3遊星歯車機構の前記固定要素であり、
前記第1係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、
前記第3係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、
前記第4係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記入力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であることを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1又は2記載の自動変速機において、
前記第1遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3遊星歯車機構の各前記要素を、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、
前記第1要素は前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素であり、
前記第2要素は前記第1遊星歯車機構の前記出力要素であり、
前記第3要素は前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素であり、
前記第4要素は前記第2遊星歯車機構の前記入力要素であり、
前記第5要素は前記第2遊星歯車機構の前記出力要素であり、
前記第6要素は前記第2遊星歯車機構の前記固定要素であり、
前記第7要素は前記第3遊星歯車機構の前記入力要素であり、
前記第8要素は前記第3遊星歯車機構の前記出力要素であり、
前記第9要素は前記第3遊星歯車機構の前記固定要素であり、
前記第1係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、
前記第3係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第2入力要素と前記第3遊星歯車機構の前記入力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であり、
前記第4係合機構は、前記第1遊星歯車機構の前記第1入力要素と前記第2遊星歯車機構の前記出力要素とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在であることを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−2290(P2012−2290A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138382(P2010−138382)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】