説明

自動製パン器

【課題】焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供する。
【解決手段】ブレード部90は、パン容器の底部に設けられる回転軸82に着脱可能である。このブレード部90は、回転軸82が挿入される挿入孔91cが設けられ、回転軸82に対して回転不能に取り付けられる取付部91、及び、取付部91の回転とともに回転されることがある混練ブレード101を有する。混練ブレード101を用いてパン生地を練り上げる練り工程、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程、及び、発酵させたパン生地を焼成する焼成工程を含むパンの製造工程が実行される場合に、練り工程の終了後から焼成工程の終了までの期間内に少なくとも一度、混練ブレード101の回転を停止させて回転軸82を回転させる回転動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れる容器をそのまま焼き型としてパンを製造する仕組みのものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このような自動製パン器では、まず、パン原料を入れたパン容器が本体内の焼成室に入れられる。そして、パン容器内のパン原料がパン容器内に設けられる混練ブレードでパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、パン容器が焼き型として使用されてパンが焼き上げられる(焼成工程)。
【0003】
このような自動製パン器を用いてパンの製造が行われる場合、これまでは、パン原料として、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料が混ぜられたミックス粉が必要とされた。しかしながら、一般家庭においては、米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物が所持されることがある。このために、自動製パン器が穀物粒から直接パンを製造する仕組みを有すれば、非常に便利である。このようなことを念頭において、本出願人らは、穀物粒を出発原料としてパンを製造するパンの製造方法を開発している(特許文献2参照)。
【0004】
このパンの製造方法では、まず、穀物粒と液体とが混合され、この混合物の中で粉砕ブレードが回転されて穀物粒が粉砕される(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を含むパン原料が、混練ブレードを用いてパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、続いてパンを焼き上げる焼成工程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特開2010−35476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人らは、上述の穀物粒を出発原料としてパンを製造する方法を実行可能な、新しい仕組みを備えた自動製パン器の開発に取り組んでいる。この新しい仕組みを備えた自動製パン器の構成として、例えば、本体内に設けられる焼成室にパン容器が収容され、このパン容器内で上述の粉砕工程から焼成工程が実行される構成のものが考えられている。
【0007】
このような構成を採用する場合に、例えば、粉砕工程から練り工程に移る際にブレード交換(粉砕ブレードと混練ブレードとの交換)が必要であるとすると、ユーザは、自動製パン器の使い勝手が悪いとの印象を抱く可能性がある。このために、本出願人らは、例えば、粉砕ブレードと混練ブレードとの使い分けが可能な1つのブレードユニットを、パン容器の内部に着脱自在に取り付ける構成の採用を考えている。
【0008】
なお、この構成では、ブレードユニットは、例えば、その取付部(挿入孔が設けられる)がパン容器の底部に設けられる回転軸に被せられることによって、パン容器に取り付けられる。また、パン容器の底部に設けられる回転軸は、本体内に設けられるモータによって回転可能とされる。
【0009】
しかしながら、本出願人らの鋭意研究により、ブレードユニットを構成する取付部に設けられた挿入孔に回転軸(パン容器の底部に設けられる回転軸)を挿入する構成を採用した場合に、次のような問題が生じることがわかった。すなわち、上記構成では、取付部と回転軸との間にパン原料(この表現には、パン生地が含まれる)が入り込むことがあり、この状態でパンの焼き上げ(焼成工程)が行われると、取付部と回転軸との間に介在するパン原料の焼き付きが原因となって、ブレードユニットが回転軸に固着してしまうことがあった。そして、ブレードユニットが回転軸に固着してしまうと、パン容器からのパンの取り出しが上手くできない場合があった。
【0010】
なお、ここでは、ブレードユニットが混練ブレード及び粉砕ブレードを備える場合の問題について述べた。しかし、このような問題は、ブレードユニットに粉砕ブレードが備えられない自動製パン器(小麦粉や米粉等の穀物粉からのみ、パンを製造できるもの)においても生じることがあるものと考えられる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供することである。また、本発明の他の目的は、穀物粒からパンを焼き上げられる便利な仕組みを備え、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、本体内に設けられる焼成室と、前記焼成室に収容されるとともに、底部に回転軸を有するパン容器と、前記本体内に設けられ、前記焼成室に収容された前記パン容器の前記回転軸に回転力を与えるモータと、前記回転軸が挿入される挿入孔が設けられ、前記回転軸に対して回転不能に取り付けられる取付部、及び、前記取付部の回転とともに回転されることがある混練ブレードを有し、前記回転軸に対して着脱可能なブレード部と、を備え、前記混練ブレードを用いてパン生地を練り上げる練り工程、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程、及び、発酵させたパン生地を焼成する焼成工程を含むパンの製造工程が実行される場合に、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に少なくとも一度、前記混練ブレードの回転を停止させて前記回転軸を回転させる回転動作が行われる。
【0013】
なお、ブレード部は、回転軸に対して一体的に着脱されるもの(1ユニット)であっても構わないし、回転軸に対して一体的に取り付けられず、回転軸から外された状態で複数の部分に分かれるものであっても構わない。
【0014】
本構成では、練り工程の終了後から焼成工程の終了までの期間内に少なくとも一度、混練ブレードの回転を停止させて回転軸を回転させる回転動作が行われるようになっている。この回転動作(好ましくは高速回転)によって、ブレード部の取付部と回転軸との間に入り込んだパン原料(パン生地を含む表現である)が両者の間から取り除かれる効果が期待できる。このために、本構成によれば、パンがパン容器から取り出される際に、取付部と回転軸とが固着している可能性が低減され得る。この結果、本構成の自動製パン器では、焼き上がったパンをパン容器から取り出し難いといった事態が低減され得る。なお、この回転動作は、混練ブレードを停止させた状態で行われるので、この回転動作が原因となってパン生地が傷められることはほとんどない。
【0015】
上記構成の自動製パン器において、前記ブレード部には、前記取付部に対して回転可能に取り付けられるとともに前記混練ブレードを支持する混練ブレード支持部と、前記回転軸と前記混練ブレード支持部との連結状態を切り替える第1のクラッチと、が更に含まれ、前記混練ブレードは、前記混練ブレード支持部に回転可能に取り付けられて、前記練り工程で使用される状態である折り畳み姿勢と、前記パン容器の内壁に当接する状態である開き姿勢との2姿勢をとり得るようになっており、前記回転軸が一方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記折り畳み姿勢となって前記第1のクラッチが前記回転軸と前記混練ブレード支持部とを連結し、前記混練ブレードは前記回転軸とともに回転し、前記回転軸が前記一方向と逆方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記開き姿勢に転じて前記第1のクラッチが前記回転軸と前記混練ブレード支持部との連結を切り離し、前記混練ブレードは回転停止状態となり、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時には、前記回転軸は前記逆方向に回転する、こととしてもよい。
【0016】
本構成によれば、練り工程の終了後から焼成工程の終了までの期間内に、混練ブレードの回転を停止させて回転軸を回転(好ましくは高速回転)させるという回転動作を容易に実現できる。
【0017】
上記構成の自動製パン器において、前記ブレード部には、前記取付部に回転不能に取り付けられる粉砕ブレードが更に含まれ、前記混練ブレード支持部は、前記粉砕ブレードを覆うドーム状のカバーであり、前記パンの製造工程には、前記練り工程の前に行われて穀物粒を前記粉砕ブレードで粉砕する粉砕工程が含まれることとしてもよい。
【0018】
本構成によれば、穀物粒からパンを焼き上げられる便利な仕組みを備え、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器の提供が可能になる。
【0019】
上記構成の自動製パン器において、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時における前記回転軸の最大回転速度は、前記粉砕工程において前記粉砕ブレードを回転させる際の前記回転軸の最大回転速度と同等であることとしてよい。
【0020】
また、上記構成の自動製パン器において、前記モータには、前記練り工程で使用される第1のモータと、前記粉砕工程、及び、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時において使用される第2のモータと、が含まれることとしてもよい。粉砕工程時の粉砕ブレードの回転(高速回転)と、練り工程時の混練ブレードの回転(高トルク、低速回転)とは質の異なる回転が要求される。このために、粉砕ブレードと混練ブレードとを備える自動製パン器は、本構成のように、各ブレードを回転させるためのモータは異なるものとするのが好ましい。そして、本構成では、練り工程の終了後から焼成工程の終了までの期間内に行われる回転動作が、粉砕工程で使用されるのと同一の高速回転用のモータを使用して行われるために、回転動作時の回転数を高速回転とし易い。
【0021】
上記構成の自動製パン器において、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作は、前記練り工程と前記発酵工程との間、及び/又は、前記焼成工程の途中で行われることとしてもよい。回転動作が焼成工程の途中で行われる場合には、回転動作は焼成工程の初期段階に行われるのが好ましい。
【0022】
上記構成の自動製パン器において、前記回転軸には、その側面から突出する突出部が設けられ、前記取付部の側壁には、前記回転軸が前記挿入孔に挿入される場合に、前記突出部と係合する切り欠きが形成されており、前記切り欠きは、前記回転軸が挿入される挿入方向手前側から奥側に向けて幅が徐々に狭くなる傾斜部を有することとしてもよい。
【0023】
本構成によれば、回転軸に対して取付部がぐらつかないようにしつつ、回転動作(好ましくは高速回転)時の遠心力によって、取付部の切り欠きに入り込んだパン原料(パン生地を含む表現である)が傾斜部に沿って取付部外に排出されやすくなる。このために、本構成によれば、取付部と回転軸とが固着する可能性が更に低減され、焼き上がったパンをパン容器から取り出し難いといった事態がより効果的に低減されることが期待できる。
【0024】
上記構成の自動製パン器において、前記回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための異常検知手段と、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作を開始する際に、前記異常検知手段からの情報に基づいて前記異常状態が検知される場合に、前記パンの製造工程の実行を継続するとともに、前記回転動作の実行については取り止めると判断する判断手段と、を更に備える、こととしてもよい。
【0025】
また、上記構成の自動製パン器において、前記回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための異常検知手段と、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作中に、前記異常検知手段からの情報に基づいて前記異常状態が検知される場合に、前記パンの製造工程の実行を継続するとともに、前記回転動作については中止すると判断する判断手段と、を更に備える、こととしてもよい。
【0026】
異常検知手段と判断手段とを備える上記2つの構成によれば、回転軸を回転させると支障を来す異常状態を所定の段階で検知した場合には、「混練ブレードの回転を停止させて回転軸を回転させる回転動作」が取り止められる、或いは、中止されるようになっている。ただし、このような回転動作の取り止めや中止が実行される場合でも、パンの製造工程は継続されるようになっている。すなわち、これらの構成では、既にパンの製造工程がある程度進んだ段階で、前述の異常状態が検知された場合には、前述の回転動作を行うことよりもパンの製造工程を継続することの方が優先されるようになっている。
【0027】
上記構成の自動製パン器において、前記パンの製造工程には、前記練り工程の前に行われて穀物粒を粉砕ブレードで粉砕する粉砕工程が更に含まれ、前記モータには、前記練り工程で使用される第1のモータと、前記粉砕工程、及び、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時において使用される第2のモータと、が含まれ、前記異常検知手段は、前記第2のモータを駆動させて前記回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知する、こととしてもよい。特に、粉砕工程及び前述の回転動作(混練ブレードの回転を停止させて回転軸を回転させる回転動作)を行う際には、回転軸が高速回転されるために、ユーザの安全性等を考慮して異常状態の検知を行うのが好ましく、本構成は、そのように構成された自動製パン器に好適である。
【0028】
上記構成の自動製パン器において、前記異常検知手段には、前記モータの動作異常を検知するためのモータ用異常検知手段が含まれることとしてもよい。
【0029】
また、上記構成の自動製パン器において、前記モータの回転動力を前記回転軸に伝達するか否かを切り替える第2のクラッチを更に備え、前記異常検知手段には、前記第2のクラッチの動作異常を検知するためのクラッチ用異常検知手段が含まれることとしてもよい。
【0030】
また、上記構成の自動製パン器において、前記焼成室を開閉する蓋部を含み、前記異常検知手段には、前記蓋部の開閉状態に関する異常を検知するための蓋部用異常検知手段が含まれることとしてもよい。
【0031】
また、上記構成の自動製パン器において、前記異常検知手段には、前記パン容器の前記焼成室における位置に関する異常を検知するためのパン容器用異常検知手段が含まれることとしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器の提供が可能である。また、本発明によれば、穀物粒からパンを焼き上げられる便利な仕組みを備え、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器の提供が可能である。このため、本発明によれば、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】第1実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】第1実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図
【図4】第1実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図
【図5】第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図
【図6】第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図
【図7】第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略図
【図8】第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図(ガードが取り外された場合の図)
【図9】第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図
【図10】第1実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図11】第1実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【図12】第2実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図13】第2実施形態の自動製パン器における、異常状態検知時の例外処理フローを示すフローチャート
【図14】本実施形態の自動製パン器の変形例について説明するための図で、ユニット用シャフトとブレード回転軸との関係を示す概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、それらは本発明の内容を限定するものではない。
(第1実施形態)
1.自動製パン器の構成
図1は、第1実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、略直方体形状に設けられる自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)の上面の一部には、操作部20が設けられている。この操作部20は、操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部と、によって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等が含まれる。なお、表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成される。
【0035】
また、本体10内部には、詳細は後述するパン容器80が収容される焼成室30が設けられている。この焼成室30は、例えば板金からなる底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図4も参照)で構成されている。焼成室30は、平面形状略矩形の箱形状で、その上面は開口している。この焼成室30は、本体10上部に設けられる蓋40によって開閉可能となっている。蓋40は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として回動することで、焼成室30の開閉が可能になっている。なお、図1は、この蓋40が開かれた状態を示している。
【0036】
この蓋40には、焼成室30内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓41が設けられている。また、蓋40には、パン原料収納容器42が取り付けられている。このパン原料収納容器42は、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入することを可能にしている。パン原料収納容器42は、平面形状略長方形の箱形状の容器本体42aと、容器本体42aに対して回動可能に設けられて、容器本体42aの開口を開閉する容器蓋42bとを備えている。また、パン原料収納容器42は、容器蓋42bを外面(下面)側から支えて容器本体42aの開口が閉じられた状態を維持可能であると共に、外部からの力によって動かされて容器蓋42bとの係合が解除される可動フック42cも備えている。
【0037】
操作部20下部側の本体10内には自動投入用ソレノイド16(後述の図10参照)が設けられており、このソレノイドが駆動すると、そのプランジャーが、蓋40に隣接する本体壁面10aに設けられる開口10bから突出するようになっている。そして、この突出したプランジャーによって可動する可動部材(図示せず)によって可動フック42cが動かされ、容器蓋42bと可動フック42cとの係合が外れて容器蓋42bが回動し、容器本体42aの開口が開かれた状態になる。なお、図1においては、容器本体42aの開口が開かれた状態が示されている。
【0038】
容器本体42a及び容器蓋42bは、容器内に収納される粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)が容器内に残留し難いように、アルミニウム等の金属で設けられるのが好ましい。そして、それらの内面は、シリコンやフッ素等のコーティング層で覆われるのが好ましく、更には凹凸がなるべく設けられず、滑らかに形成されるのが好ましい。
【0039】
また、米粒等の穀物粒を粉砕する際に発生する蒸気等が容器本体42a内に入り込むと、パン原料が容器内面に付着し易くなって好ましくない。このために、容器内に前述の蒸気等が入り込まないように、容器本体42aの開口側縁には鍔部(フランジ部)が設けられて、この鍔部と容器蓋42bとの間にはパッキン(シール部材)42dが介在するようになっている。
【0040】
図2は、第1実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合を想定しており、図の下側が自動製パン器1の正面側、図の上側が背面側である。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に主に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。なお、混練モータ50は本発明の第1のモータの一例であり、粉砕モータ60は本発明の第2のモータの一例である。
【0041】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されるとともに第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている(後述の図3参照)。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている(後述の図3参照)。このクラッチ56の構成については後述する。
【0042】
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている(後述の図3参照)。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられるとともに原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている(後述の図3参照)。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速で回転する。
【0043】
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部は、以下において、第1の動力伝達部と表現されることがある。
【0044】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される;後述の図3参照)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転のものが選定され、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持される。このために、粉砕モータ60の駆動によって、原動軸11の高速回転(例えば7000〜8000rpm)が可能である。
【0045】
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部は、以下において、第2の動力伝達部と表現されることがある。第2の動力伝達部は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
【0046】
図3は、第1実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印X方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
【0047】
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に、クラッチ56は動力伝達を行う。また、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に、クラッチ56は動力遮断を行う。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
【0048】
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、好ましい形状を適宜選択すればよい。
【0049】
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向)に摺動可能、且つ、相対回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるストッパ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
【0050】
クラッチ56の切り替え(動力伝達状態と、動力遮断状態との切り替え)は、第1のクラッチ部材561を支持するアーム部72と、永久磁石73aが内蔵された自己保持型のソレノイド(クラッチ用ソレノイド)73と、を用いて行われる。ソレノイド73のプランジャー73bは、その先端部(図3においては下部側が該当)がアーム部72に設けられる取付部72aに固定された状態となっている。アーム部72(取付部72aを含む)は金属で形成されているために、永久磁石73aに吸着可能となっている。
【0051】
図3(a)の状態から、ソレノイド73に、永久磁石73aの磁界を打ち消すように電圧を印加すると、永久磁石73aのアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する力が低下し、バネ71の付勢力によって第1のクラッチ部材561が下側に押し下げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが得られ、クラッチ56は動力伝達を行うようになる(図3(b)の状態となる)。この噛み合いが得られた状態は、バネ71の付勢力によって維持されるために、第1のクラッチ部材561を引き下げるための駆動を行った後は、ソレノイド73はオフとされる。また、この噛み合いが得られた状態では、アーム部72が引き下がるために、ソレノイド73のプランジャー73bは、ハウジング73cからの突出量(下側への突出量)が増した状態となっている。
【0052】
一方、図3(b)の状態から、ソレノイド73に、プランジャー73bを引き上げるための電圧(永久磁石73aの磁界を打ち消す際とは極性が逆となる電圧)を印加すると、バネ71の付勢力に反して、アーム部72と共に第1のクラッチ部材561が上側に引き上げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが解除され、クラッチ56は動力遮断を行うようになる(図3(a)の状態となる)。この噛み合いが解除された状態においては、ソレノイド73に内蔵される永久磁石73aがアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する。このために、第1のクラッチ部材561を引き上げるための駆動を行った後は、ソレノイド73をオフとしても噛み合いが解除された状態を維持できるので、ソレノイド73はオフされる。
【0053】
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される。この場合、粉砕モータ60が例えば8000rpmで回転されるとすると、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を40000rpmで回転させようとすることになる。この場合、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わるために、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このため、粉砕モータ60を駆動する際には、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達されないようにする必要があり、自動製パン器1は、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部に含む構成となっている。
【0054】
なお、上述のように自動製パン器1においては、第2の動力伝達部にはクラッチが設けられない構成としているが、これは次の理由による。すなわち、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみであり、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはない。そして、このように第2の動力伝達部にクラッチが設けられない構成を敢えて採用することで、自動製パン器の製造コストが抑制される。ただし、第2の動力伝達部にクラッチが設けられる構成を採用しても、勿論構わない。
【0055】
図4は、第1実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図である。図4は、自動製パン器1を正面側から見た場合の構成を想定しており、焼成室30及びパン容器80の構成は概ね断面図で示されている。なお、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用されるパン容器80は、焼成室30に対して出し入れ自在となっている。
【0056】
図4に示すように、焼成室30の内部には、シーズヒータ31(加熱手段の一例)が焼成室30に収容されたパン容器80を包囲するように配置されている。このシーズヒータ31を用いることにより、パン容器80内のパン原料(この表現にはパン生地を含む場合がある)の加熱が可能になる。
【0057】
また、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みの形状は上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。
【0058】
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品(その他、板金等で構成しても構わない)であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述するブレードユニット90の一部を収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
【0059】
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82(本発明の回転軸の一例)が、シール対策を施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から外部側に突き出ている)には、容器側カップリング部材82aが固定されている。また、パン容器80の底部外面側には筒状の台座83が設けられており、パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
【0060】
パン容器80の台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で焼成室30内に収容されると、ブレード回転軸82の下端に設けられる前述の容器側カップリング部材82aと、原動軸11の上端に固定される原動軸側カップリング部材11aとの連結(カップリング)が得られるようになる。そして、これにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力を伝えられるようになる。
【0061】
ブレード回転軸82のパン容器80内部に突出する部分には、その上からブレードユニット90(本発明のブレード部の一例)が着脱可能に取り付けられるようになっている。このブレードユニット90の構成について、図5から図9を参照しながら説明する。なお、図5は、第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図である。図6は、第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図である。図7は、第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図で、図7(a)は概略側面図、図7(b)は図7(a)のA−A位置における断面図である。図8は、第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図で、図8(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図8(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。図8においては、後述のガードが取り外された状態を示している。図9は、第1実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図である。図9(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図9(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。
【0062】
ブレードユニット90は、大きくは、ユニット用シャフト91(本発明の取付部の一例)と、ユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる粉砕ブレード92と、ユニット用シャフト91に相対回転可能且つ粉砕ブレード92を覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー93(本発明の混練ブレード支持部の一例)と、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる混練ブレード101と、を備える構成となっている(例えば、図5〜図7参照)。ブレードユニット90がブレード回転軸82に取り付けられた状態において、粉砕ブレード92は、パン容器80の凹部81底面より少し上の箇所に位置する。また、粉砕ブレード92及びドーム状カバー93のほぼ全体は凹部81に収容される。
【0063】
ユニット用シャフト91は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される略円柱状の部材であり、一方端(図6及び図7の下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。すなわち、ユニット用シャフト91には、挿入孔91cが形成されている(図7(b)参照)。また、ユニット用シャフト91の側壁の下部側(開口側)には、ユニット用シャフト91の回転中心を挟んで対称配置される一対の切り欠き91aが形成されている(例えば図6参照。ただし図6では一方のみが示されている)。ユニット用シャフト91がブレード回転軸82に被せられた場合(ブレード回転軸82が挿入孔91cに挿入された場合)に、ブレード回転軸82を水平に貫くピン(図示せず)が切り欠き91aに係合し、ユニット用シャフト91はブレード回転軸82に相対回転不能に取り付けられた状態になる。
【0064】
なお、図7(b)に示すように、ブレード回転軸82(破線で示す)の上面(略円形状)の中央部に設けられる凸部82bと係合するように、ユニット用シャフト91の上部側内面の中央部には凹部91bが形成されている。これにより、ユニット用シャフト91とブレード回転軸82との中心を合わせた状態で、ブレードユニット90はブレード回転軸82に容易に取り付けることができる。このために、ブレードを回転する際における、不要なガタツキが抑制される。本実施形態では、ブレード回転軸82側に凸部82b、ユニット用シャフト91側に凹部91bを設ける構成としたが、これとは逆に、ブレード回転軸82側に凹部、ユニット用シャフト91側に凸部が設けられる構成としても構わない。
【0065】
穀物粒粉砕用の粉砕ブレード92は例えばステンレス鋼板によって形成され、その形状は例えば飛行機のプロペラのようになっている。粉砕ブレード92の中心部には、図6に示すように、平面視略矩形状の開口92aが形成されている。粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91の下部側から、開口92aにユニット用シャフト91が嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0066】
ユニット用シャフト91の下部側は、円柱の側面を削ったような形状となっており、下から見た場合に、粉砕ブレード92の開口92aとほぼ同形状(略矩形状)となっている。また、ユニット用シャフト91の下部側を下から見た場合の面積は、開口92aより、ほんの僅かだけ小さくなっている。このような形状を採用しているために、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード92の下部側には抜け止め用のストッパ部材94がユニット用シャフト91に嵌め込まれるために、粉砕ブレード92がユニット用シャフト91から脱落することはない。
【0067】
粉砕ブレード92を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー93は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング95(本実施形態では転がり軸受けを使用している)を収容する凹状の収容部931(図7(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部931を形成するために、ドーム状カバー93は、それを外面から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部93aが形成された構成となっている。なお、凸部93aには開口が形成されておらず、収容部931に収容されるベアリング95はその側面及び上面が収容部931の壁面に囲い込まれた状態となっている。
【0068】
ベアリング95は上下に抜け止めリング96a、96bが配置された状態で、その内輪95aがユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている(内輪95a内側の貫通孔にユニット用シャフト91が圧入されている)。また、ベアリング95は、その外輪95bの外壁が収容部931の側壁に固定されるように、収容部931に圧入されている。このベアリング95(内輪95aが外輪95bに対して相対回転する)の介在によって、ドーム状カバー93はユニット用シャフト91に相対回転可能に取り付けられている。
【0069】
また、ドーム状カバー93の収容部931には、外部からベアリング95内に異物(例えば穀物粒の粉砕時に用いられる液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、例えばシリコン系或いはフッ素系の材料によって形成されるシール材97及び、このシール材97を保持する金属製のシールカバー98が、ベアリング95の下部側から圧入されている。シールカバー98は、ドーム状カバー93への固定が確実となるように、リベット99によってドーム状カバー93に固着されている。このリベット99による固定は行わなくてもよいが、確実な固定を得るために、本実施形態のように構成するのが好ましい。なお、シール材97及びシールカバー98はシール手段として機能する。
【0070】
ドーム状カバー93の外面には、凸部93aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置される支軸100(図6参照)により、平面形状「く」の字形の混練ブレード101(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード101は、支軸100に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる支軸100と動きを共にする。換言すると、混練ブレード101は、ドーム状カバー93に対して相対回転可能に取り付けられた構成となっている。
【0071】
混練ブレード101の先端(支軸100を中心として混練ブレード101を回転したときに最も大きな円を描く部分を想定)側近傍の一方面には、図5〜図9に示すように緩衝材107が取り付けられている。緩衝材107は、混練ブレード101の先端から僅かに突出するように設けられている(例えば図8(b)参照)。なお、本実施形態では3mm程度突出するように設けられている。
【0072】
緩衝材107の固定は、混練ブレード101の一方面と固定用板108とで緩衝材107を挟持した状態とし、混練ブレード101の他方面側から挿入されるリベット109のカシメで得られる構成となっている。なお、本実施形態ではリベット109の数を2つとしているが、その数が限定されないのは言うまでもない。
【0073】
この緩衝材107は、混練ブレード101が詳細は後述する開き姿勢となった場合に、パン容器80(の内壁)と直接接触しないように配置されている。混練ブレード101とパン容器80とが直接接触すると、それらの間の干渉が原因となって破損が発生する可能性があり、このような破損を防止すべく緩衝材107は設けられている。
【0074】
本実施形態の自動製パン器1においては、パン容器80及び混練ブレード101の表面にはフッ素コーティングが施されている。このため、本実施形態の緩衝材107は、このフッ素コーティングが混練ブレード101とパン容器80との接触で剥がれないように設けられたものといえる。そして、この点から、緩衝材107を構成する材料としては、フッ素コーティングを剥がさないようにコーティング材よりも柔らかい材料が好ましく、例えば、シリコーンゴムやTPE(Thermoplastic Elastomers;熱可塑性エラストマ)等が用いられる。また、緩衝材107は防音対策としても機能するが、この点は後述する。なお、以下では、この緩衝材107も混練ブレード101の一部と見なして説明が行われる場合がある。
【0075】
また、本実施形態では、ドーム状カバー93の外面に、混練ブレード101に並ぶように補完混練ブレード102(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定配置されている。この補完混練ブレード102は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練り上げる練り工程における混練効率を高めるために設けるのが好ましい。
【0076】
ここで、混練ブレード101の動作について説明する。混練ブレード101は、支軸100と共に支軸100の軸線周りに回転し、図5、図7、図8(a)及び図9(a)に示す折り畳み姿勢と、図8(b)及び図9(b)に示す開き姿勢との2姿勢をとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード101の下縁から垂下した突起101a(図6参照)がドーム状カバー93の上面(外面)に設けられた第1のストッパ部93bに当接する。このために、混練ブレード101は、それ以上ドーム状カバー93に対して反時計方向(上から見た場合を想定)の回動を行うことができない。この折り畳み姿勢では、混練ブレード101の先端がドーム状カバー93から少し突き出している。
【0077】
この姿勢(図9(a)の状態)から混練ブレード101がドーム状カバー93に対して時計方向(上から見た場合を想定)に回動して図9(b)に示す開き姿勢になると、混練ブレード101の先端はドーム状カバー93から大きく突き出す。この開き姿勢における混練ブレード101の開き角度は、ドーム状カバー93の内面に設けられる第2のストッパ部93c(図8参照)によって制限される。詳細は後述する第2係合体103b(支軸100に固定される)が、ドーム状カバー93の内面に設けられる第2のストッパ部93cに当って回転できなくなった時点で、混練ブレード101は最大開き角度となる。
【0078】
なお、混練ブレード101が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図5や図7に示すように補完混練ブレード102は混練ブレード101に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード101のサイズが大型化したようになる。
【0079】
ところで、ユニット用シャフト91には、図6に示すように、粉砕ブレード92とシールカバー98との間にカバー用クラッチ103(本発明の第1のクラッチの一例)を構成する第1係合体103aが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第1係合体103aには略矩形状の開口103aaが形成されており、この開口103aaにユニット用シャフト91の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第1係合体103aはユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体103aは粉砕ブレード92よりも先に、ユニット用シャフト91の下側から嵌め込まれ、ストッパ部材94によって、粉砕ブレード92と共にユニット用シャフト91からの脱落が防止されている。なお、本実施形態では、第1係合体103aとシールカバー98との間には、第1係合体103aの劣化防止等を考慮してワッシャ104を配置する構成としているが、このワッシャ104は必ずしも設けなくてもよい。
【0080】
また、混練ブレード101が取り付けられる支軸100の下部側には、カバー用クラッチ103を構成する第2係合体103bが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第2係合体103bには略矩形状の開口103baが形成されており、この開口103baに支軸100の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第2係合体103bは支軸100に相対回転不能に取り付けられている。なお、本実施形態では、第2係合体103bの上側に、第2係合体103bの劣化防止等を考慮してワッシャ105を配置する構成としているが、このワッシャ105は必ずしも設けなくてもよい。
【0081】
第1係合体103aと第2係合体103bとで構成されるカバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達するか否かを切り替えるクラッチとして機能する。カバー用クラッチ103は、混練モータ50が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転となる。本発明の「一方向」に該当する。)において、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達する。逆に、粉砕モータ60が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転となる。本発明の「一方向と逆方向」に該当する。)においては、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達しない。以下、このカバー用クラッチ103の動作について更に詳細に説明する。
【0082】
混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8(a)、図9(a)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103ab(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図8(a)の破線参照)。このため、ブレード回転軸82が正方向回転すると、第1係合体103aと第2係合体103bは係合し、ブレード回転軸82の回転動力がドーム状カバー93に伝達される。
【0083】
一方、混練ブレード101が開き姿勢にある場合(例えば図8(b)、図9(b)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103abの回転軌道から逸脱した角度となる(図8(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸82が回転しても、第1係合体103aと第2係合体103bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転動力はドーム状カバー93に伝達されない。
【0084】
例えば図5及び図6に示すように、ドーム状カバー93には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓93dが形成される。窓93dは粉砕ブレード92に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓93dが90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0085】
また、ドーム状カバー93内面には、各窓93dに対応して計4個のリブ93eが形成されている。各リブ93eはドーム状カバー93の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ93eは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0086】
また、ドーム状カバー93の下面には、着脱可能なガード106が取り付けられている。このガード106は、ドーム状カバー93の下面を覆って粉砕ブレード92にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード106は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。なお、このガード106は設けなくても構わないが、ユーザが安心して使用できるように設けるのが好ましい。
【0087】
例えば図6に示すように、ガード106の中心には、ユニット用シャフト91に固定されるストッパ部材94を通すリング状のハブ106aがある。また、ガード106の周縁にはリング状のリム106bがある。ハブ106aとリム106bとは複数のスポーク106cで連結される。スポーク106c同士の間は、粉砕ブレード92によって粉砕される穀物粒を通す開口部106dとなる。開口部106dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0088】
ガード106のスポーク106cは、ドーム状カバー93に取り付けられた時、粉砕ブレード92と近接状態となる。そして、あたかも、ガード106が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード92が内刃のような形になる。
【0089】
リム106bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱106eが一体成形されている。この柱106eのガード106中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝106eaが形成される。この溝106eaと、ドーム状カバー93の外周に形成される突起93f(これも45°間隔で計4個配置されている)とを係合させることによって、ガード106はドーム状カバー93に取り付けられる。なお、溝106eaと突起93fとは、バヨネット結合を構成するように設けられている。
【0090】
以上のように、本実施形態の自動製パン器1では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101を1つのユニット(ブレードユニット90)に組み込む構成としているので、その取り扱いが便利である。ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から簡単に引き抜くことが可能であり、製パン作業終了後にブレードの洗浄を手軽に行うことができる。また、ブレードユニット90が備える粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91に着脱可能に取り付けられるものであり、その量産が行いやすく、ブレード交換等のメンテナンス性にも優れる。
【0091】
また、本実施形態の自動製パン器1では、パン容器80に水等の液体が入れられるために、ベアリング95に液体が入り込まないように、ベアリング95は密閉構造とされるのが好ましい。この点、自動製パン器1では、ベアリング95がドーム状カバー93に設けられる凹状の収容部931に収容されているために、ドーム状カバーの内面側にのみシール手段(シール材97及びシールカバー98)を設ければ、ベアリング95を密閉する構造が得られる。このため、ベアリング95の上下にシール手段を設ける必要がなく、ベアリング95のシール構造の小型化が図れる。このため、自動製パン器1では、焼き上がったパンの形状に対する悪影響(例えば、パンの底面が大きく凹む等)を抑制することが可能になる。
【0092】
ところで、本実施形態のブレードユニット90を用いる場合には、製パン動作中に、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間にパン原料(パン生地を含む)が入り込むことがある。そして、両者の間にパン原料が入り込んだ状態でパンを焼き上げると、ユニット用シャフト91がブレード回転軸82に固着してしまうことがある。この場合、ブレードユニット90がブレード回転軸82から抜けずに、焼き上がったパンがパン容器80から取り出せないといった事態が発生する場合がある。このような事態が発生することを防止するために、本実施形態の自動製パン器1では、パンの製造を行う場合の制御動作に工夫が凝らされている。この点は、後述の自動製パン器1の動作説明で詳細に説明する。
【0093】
図10は、第1実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図10に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置120によって行われる。制御装置120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置120は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置120には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
【0094】
制御装置120には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、混練モータ駆動回路121と、粉砕モータ駆動回路122と、ヒータ駆動回路123と、第1のソレノイド駆動回路124と、第2のソレノイド駆動回路125と、が電気的に接続されている。
【0095】
混練モータ駆動回路121は、制御装置120からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路122は、制御装置120からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路123は、制御装置120からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。第1のソレノイド駆動回路124は、制御装置120からの指令の下で、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイド16の駆動を制御するための回路である。第2のソレノイド駆動回路125は、制御装置120からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるクラッチ用ソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
【0096】
制御装置120は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路121を介して混練モータ50による混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転の制御、粉砕モータ駆動回路122を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード92の回転の制御、ヒータ駆動回路123を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、第1のソレノイド駆動回路124を介して自動投入用ソレノイド16による可動フック42cの動作制御、第2のソレノイド駆動回路125を介してクラッチ用ソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
2.自動製パン器の動作
次に、以上のように構成される第1実施形態の自動製パン器1でパンを製造する場合の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に、自動製パン器1の動作を説明する。
【0097】
米粒が出発原料に用いられる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図11は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図11に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、休止工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0098】
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82にユニット用シャフト91を被せることによって、ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付ける。そして、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。
【0099】
また、ユーザは、パンの製造工程の途中で自動投入されるパン原料を計量してパン原料収納容器42の容器本体42aに入れる。そして、収納すべきパン原料を容器本体42aに収納したら、可動フック42cによって容器蓋42bを支え、容器本体42aの開口が容器蓋42bによって閉じられた状態とする。
【0100】
なお、パン原料収納容器42に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイースト等が挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉、増粘剤(グアガム等)及び上新粉のうちの少なくとも1つをパン原料収納容器42に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみがパン原料収納容器42に収納されるようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共に、これらの原料をパン原料収納容器42に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器80に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
【0101】
この後、ユーザは、パン容器80を焼成室30に入れ、更に、パン原料収納容器42を蓋40の所定位置に取り付ける。そして、ユーザは蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置120は、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
【0102】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置120の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器80に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では30分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0103】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制することが可能になる。また、浸漬時間を短時間とするために、シーズヒータ31に通電して、焼成室30の温度が高められるようにしてもよい。
【0104】
また、浸漬工程の初期段階で粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよく、更に、その後も、断続的に粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率が高められる。
【0105】
上記所定時間が経過すると、制御装置120の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92が高速回転(例えば7000〜8000rpm)される。この粉砕工程では、制御装置120は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転(図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転)させる。ブレード回転軸82の逆方向回転により、粉砕ブレード92の切削刃が回転方向前方となるために、粉砕ブレード92を用いた粉砕機能が得られる。
【0106】
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード92を回転させる場合、制御装置120は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。上述したように、このように制御しないとモータ破損の可能性があるからである。
【0107】
粉砕ブレード92を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、ドーム状カバー93もブレード回転軸82の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってドーム状カバー93の回転はすぐに阻止(停止)される。なお、粉砕ブレード92は、粉砕工程の初期段階では低速で回転され、その後、高速回転されるようにするのが好ましい。
【0108】
粉砕ブレード92を回転させるためのブレード回転軸82の回転に伴うドーム状カバー93の回転方向は、図9において反時計方向であり、混練ブレード101は、それまで折り畳み姿勢(図9(a)に示す姿勢)であった場合には、米粒と水が含まれる混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図9(b)に示す姿勢)に転じていく。
【0109】
混練ブレード101が開き姿勢になると、第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)から逸脱する。このために、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82とドーム状カバー93との連結を切り離す。また、開き姿勢になった混練ブレード101は、図9(b)に示すように、その一部(正確には、先端側に設けられる緩衝材107)がパン容器80の内側壁(詳細には粉砕効率を向上するためにパン容器80の内壁に設けられた畝状の凸部80b)に当接するために、ドーム状カバー93の回転は阻止(停止)される。
【0110】
なお、粉砕工程においては、粉砕ブレード92の回転中に振動が発生するが、緩衝材107がパン容器80と接触する構成を採用しているために、この振動によって生じる衝突音が緩和されるようになっている。
【0111】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード92の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード92の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0112】
粉砕工程においては、米粒の粉砕が回転停止したドーム状カバー93内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード106の開口部106dからドーム状カバー93内に入る米粒は、静止したスポーク106cと回転する粉砕ブレード92との間でせん断されるので、効率良く粉砕が行える。また、ドーム状カバー93に設けられるリブ93eによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード92の回転と同方向の流動である)が抑制されるので、効率良く粉砕が行える。
【0113】
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物は、リブ93eによって窓93dの方向に誘導されて、窓93dからドーム状カバー93の外に排出される。リブ93eは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ93eの表面に滞留しにくく、スムーズに窓93dの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー93内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード106の開口部106dを通ってドーム状カバー93内に入いる。このような循環をさせつつ粉砕ブレード92による粉砕を行うので、効率良く粉砕できる。
【0114】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了が、粉砕モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断される構成等としても構わない。
【0115】
粉砕工程が終了すると、制御装置120の指令によって休止工程が実行される。この休止工程は、粉砕工程によって上昇したパン容器80内の内容物の温度を下げる冷却期間として設けられている。温度を下げるのは、次に行われる練り工程が、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で実行されるようにするためである。本実施形態では、休止工程は所定時間(30分)とされているが、場合によっては、パン容器80の温度等が所定の温度となるまで、休止工程が行なわれる構成等としても構わない。
【0116】
休止工程が終了すると、制御装置120の指令によって練り工程が開始される。練り工程の開始にあたって、制御装置120はクラッチ用ソレノイド73を駆動して、クラッチ56が動力伝達を行うようにする(図3(b)の状態)。そして、制御装置120は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転(図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転)させる。
【0117】
ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード92も正方向に回転する。この場合、粉砕ブレード92は、切削刃が回転方向後方となって回転し、粉砕機能を発揮しない。粉砕ブレード92の回転により、粉砕ブレード92の周囲のパン原料が正方向に流動する。それにつられてドーム状カバー93が正方向(図9では時計方向)に動くと、混練ブレード101は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図9(b)参照)から折り畳み姿勢(図9(a)参照)へと角度を変えて行く。これにより、第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)に干渉する角度となる。そして、カバー用クラッチ103がブレード回転軸82とドーム状カバー93とを連結し、ドーム状カバー93はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー93と折り畳み姿勢になった混練ブレード101とは、ブレード回転軸82とともに正方向回転する。
【0118】
なお、以上に説明したカバー用クラッチ103の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸82の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード101が折り畳み姿勢になると、混練ブレード101の延長上に補完混練ブレード102が並ぶために、混練ブレード101があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0119】
混練ブレード101(この用語は、折り畳み姿勢においては、補完混練ブレード102を含む表現として用いる。以下同様。)の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置120によって制御される。混練ブレード101の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置120は自動投入用ソレノイド16を駆動させて、パン原料収納容器42の可動フック42cが容器蓋42bを支えた状態を解消させる。これにより、容器本体42aの開口が開かれて、例えば、グルテン、ドライイーストといったパン原料がパン容器80内に自動投入される。
【0120】
上述のように、パン原料収納容器42は、容器本体42a及び容器蓋42bの内部にコーティング層が設けられて滑りがよくなっており、また、内部に凹凸部が設けられないように工夫されている。更に、パッキン42dの配置方法の工夫により、パン原料がパッキン42dに引っ掛かるという事態も抑制されている。このために、パン原料収納容器42にはパン原料がほとんど残ることなく、自動投入が完了する。
【0121】
なお、本実施形態では、パン原料収納容器42に収納されるパン原料を、混練ブレード101が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード101が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード101が回転した状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
【0122】
パン原料収納容器42に収納されたパン原料がパン容器80に投入された後は、混練ブレード101の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード101が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード101の回転によりドーム状カバー93も回転する。ドーム状カバー93が回転すると、ドーム状カバー93に形成されるリブ93eも回転するために、ドーム状カバー93内のパン原料は速やかに窓93dから排出され、混練ブレード101が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0123】
なお、練り工程においては、ドーム状カバー93と共にガード106も正方向に回転する。ガード106のスポーク106cは、正方向回転時、ガード106の中心側が先行しガード106の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード106は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー93内外のパン原料をスポーク106cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0124】
また、ガード106の柱106eは、ガード106が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面106eb(図6参照)が上向きに傾斜しているから、混練時、ドーム状カバー93の周囲のパン原料が柱106eの前面で上方に跳ね上げられる。このために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0125】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ50の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に、練り工程の終了時点が判断される構成等としても構わない。
【0126】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0127】
練り工程が終了すると、発酵工程が開始される前に、制御装置120の指令によって、混練ブレード101の回転が停止された状態でブレード回転軸82が高速回転される回転動作(本発明の回転動作の一例)が行われる。この回転動作は、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間(切り欠き91a部分やブレード回転軸82が挿入された挿入孔91cの隙間部分等)に入り込んだパン原料(パン生地を含む)が、両者の間から取り除かれることを狙って行われる。この回転動作を行うために、制御装置120は以下に説明する制御動作を行う。
【0128】
まず、制御装置120は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。そして、制御装置120は、粉砕モータ60を駆動させて、ブレード回転軸82をゆっくりと逆方向回転(図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転)させる。なお、練り工程の終了時点では、混練ブレード101は折り畳み姿勢となっている。
【0129】
ブレード回転軸82の低速回転(例えば3500rpm程度)により、粉砕工程の部分で説明したのと同様に、混練ブレード101はパン生地から受ける抵抗で開き姿勢に転じていく。混練ブレード101が開き姿勢になると、第1係合体103aと第2係合体103bとが係合しなくなるために、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82とドーム状カバー93との連結を切り離す。また、開き姿勢になった混練ブレード101は、その一部(正確には、先端側に設けられる緩衝材107)がパン容器80の内側壁に当接する。このために、ドーム状カバー93の回転は停止されることになる。
【0130】
制御装置120は、混練ブレード101の回転が停止された状態となるタイミングを見計らって(本実施形態では低速回転の期間は3秒としている)、粉砕モータ60によるブレード回転軸82の逆方向回転を低速回転から高速回転(例えば7000〜8000rpm)へと切り替える。なお、混練ブレード101の回転が停止された状態となるタイミングについては、予め実験等によって求めておけばよい。そして、求めたタイミングに基づいて決定された所定時間が、制御装置120のROM等に記憶されるようにすればよい。このようにすれば、上述の低速回転から高速回転への切り替えが、適切なタイミングでなされる。また、高速回転時の回転数は、例えば粉砕工程時におけるブレード回転軸82の回転数と同じにすればよい。更に、ブレード回転軸82を高速回転する時間は、特に限定されるものではないが、短時間(例えば5秒等)でよい。
【0131】
このようなブレード回転軸82の回転動作が行われることにより、回転による遠心力のみならず、ブレード回転軸82の高速回転によって発生する振動の影響も加わって、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間に介在するパン原料(パン生地を含む)が、両者の間から取り除かれることが期待できる。なお、ブレード回転軸82が高速回転される際には、混練ブレード101(ドーム状カバー93も)は停止状態である。このために、この回転動作が練り工程で練り上げられた生地に悪影響を及ぼすことはない。
【0132】
練り工程後に行われる回転動作が終了すると、制御装置120の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置120はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0133】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード101(開き姿勢から折り畳み姿勢に変更する必要がある)を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0134】
発酵工程が終了すると、制御装置120の指令によって焼成工程が開始される。制御装置120はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させる。そして、制御装置120は、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。
【0135】
本実施形態では、制御装置120は、焼成工程が開始されてから5分後に、練り工程と発酵工程との間に行われたのと同じ回転動作(粉砕モータ60を用いたブレード回転軸82の逆方向回転、初め低速回転、後に高速回転)が行われるように、ブレード回転軸82の回転制御を行う。練り工程と発酵工程との間に行われる回転動作だけでは、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間に入り込んだパン原料(パン生地を含む)が十分に取り除かれない場合がある。また、発酵工程以後において、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間に入り込んでいるパン生地は、生地の膨らみ等によって、挿入孔91cの奥に入り込んでしまいやすい。このようなことを考慮して、再度、焼成工程の途中で、ブレード回転軸82を高速回転する回転動作(本発明の回転動作の一例)が行われるようにしている。
【0136】
回転動作を行うタイミングが焼成工程の開始から5分後とされるのは、次の理由による。ブレード回転軸82やユニット用シャフト91に熱が伝達される前に回転動作(ブレード回転軸の高速回転)が行われる場合に比べて、これらにある程度の熱が伝達されてから回転動作を行う場合の方が、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間に入り込んでいるパン原料(パン生地を含む)の取り出し効果が大きくなるからである。
【0137】
一方で、焼成工程が開始されてから回転動作が行われるまでの時間が長くなり過ぎると、パン原料の焼き付きによってブレード回転軸82とユニット用シャフト91とが既に固着してしまっている可能性が高くなる。このような固着が起こった状態でブレード回転軸82が高速回転された場合に、固着が剥がれることもあり得るがその可能性は低く、ブレード回転軸82を高速回転する意義は低下するものと考えられる。以上により、回転動作を行うタイミングは、焼成工程が開始されてから少し時間が経過した5分後とされている。ただし、焼成工程の開始から5分後といのは一例であり、適宜変更されてよいのは当然である。
【0138】
また、本実施形態では、焼成工程が開始される段階では、混練ブレード101は開き姿勢となっているはずであり、ブレード回転軸82が逆方向回転しても、混練ブレード101は、ほとんど動かないはずである。このために、焼成工程の5分後に開始される回転動作では、ブレード回転軸82がいきなり高速回転されるようにしてもよい。ただし、混練ブレード101がパン容器80の壁面に当接して回転停止された状態を確実に得てから、ブレード回転軸82の高速回転が行われるようにするために、ブレード回転軸82を一旦低速回転で回転してから、高速回転に移行するのが好ましい。なお、混練ブレード101が回転する状態でブレード回転軸82が高速回転されると、発酵させたパン生地を傷める可能性がある。また、混練ブレード101が回転する状態でブレード回転軸82が高速回転されると、パン生地から受ける抵抗のために、粉砕モータ60やベアリング95に負担が掛かり易く、そのような回転動作は装置故障の原因ともなり得る。これらの事態が避けられるように、回転動作が行われるのが好ましく、本実施形態の自動製パン器1における回転動作(練り工程後と、焼成工程開始後5分に行われる)は、初め低速回転、その後高速回転という制御になっている。
【0139】
焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。本実施形態では、練り工程と発酵工程との間、及び、焼成工程の開始から5分後に、ブレード回転軸82を回転する回転動作が行われるように構成しているために、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との間にパン原料(パン生地を含む)が残留するのが抑制される。この結果、焼成工程において、パン原料が焼き付いてブレード回転軸82とユニット用シャフト91とが固着するといった事態が低減される。このため、ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から引き抜きつつ、パン容器80からパンを容易に取り出すことができる。
【0140】
なお、パンの底には混練ブレード101及び補完混練ブレード102(パン容器80の凹部81から上側に突き出ている)の焼き跡が残る。しかし、ドーム状カバー93とガード106が凹部81の中に収容される構成であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことは抑制される。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の自動製パン器について説明する。第2実施形態の自動製パン器は、その構成及び動作のほとんどが第1実施形態の自動製パン器1と同様である。以下、第2実施形態の自動製パン器について、第1実施形態の自動製パン器1と異なる部分に絞って説明する。なお、以下では、第1実施形態の自動製パン器1と重複する部分については、同一の符号を付して説明する。
【0141】
図12は、第2実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図12に示すように、第2実施形態の自動製パン器2は、異常検知部17を備える点で第1実施形態の自動製パン器1と異なる。この異常検知部17は、粉砕モータ60を用いてブレード回転軸82(例えば図4参照)を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための手段である。この異常検知部17は、本発明の異常検知手段の一例であり、この異常検知部17の存在により、ユーザの安全の確保や装置の故障を防止できる。
【0142】
異常検知部17には、モータ用センサ171と、クラッチ用センサ172と、蓋用センサ173と、パン容器用センサ174と、が含まれる。モータ用センサ171は、本発明のモータ用異常検知手段の一例である。クラッチ用センサ172は、本発明のクラッチ用異常検出手段の一例である。蓋用センサ173は、本発明の蓋用異常検出手段の一例である。パン容器用センサ174は、本発明のパン容器用異常検出手段の一例である。
【0143】
モータ用センサ171は、粉砕モータ60の動作異常を検知するためのセンサで、例えば、粉砕モータ60における電流値を監視する。そして、モータ用センサ171からの情報(信号)を受け取る制御装置120は、例えば粉砕モータ60における電流値が所定の閾値を超えた場合に、粉砕モータ60の動作異常(異常状態)を検知する。このような状態で粉砕モータ60の使用を続けると、装置の故障の原因となるからである。
【0144】
制御装置120は、原則として(例外については後述する)、このような動作異常を検知した場合には、粉砕モータ60の駆動を停止して、パンの製造工程の実行を停止させる。この停止は、単に、そのままパンの製造工程の実行を完全に終了させるものであってもよいが、ある条件の下、パンの製造工程の実行を再開(復帰)させることがあるものであってもよい。
【0145】
クラッチ用センサ172は、第1の動力伝達部に含まれるクラッチ56(図2及び図3を参照、本発明の第2のクラッチの一例)の動力伝達状態を検知するセンサである。このセンサには、例えばマイクロスイッチのような接触式(機械式)のセンサや、例えば光センサのような非接触式のセンサ等を使用できる。より具体的な構成として、例えば、第1のクラッチ部材561を上下させるアーム部72(図3参照)の位置によってマイクロスイッチがオンオフされるような構成を採用することができる。
【0146】
クラッチ用センサ172からの情報(信号)を受け取る制御装置120は、粉砕モータ60の駆動を開始する前(或いは駆動中)にクラッチ56が動力伝達を行う状態であるという情報を受け取ると、クラッチ56の動作異常(異常状態)を検知する。このような状態で粉砕モータ60を駆動すると、上述のように、粉砕モータ60に過負荷が加わって故障の原因となるからである。制御装置120は、原則として(例外については後述する)、このような動作異常を検知した場合には、粉砕モータ60の駆動を開始せず(或いは停止して)、パンの製造工程の実行を停止させる。この停止は、単に、そのままパンの製造工程の実行を完全に終了させるものであってもよいが、ある条件の下、パンの製造工程の実行を再開(復帰)させることがあるものであってもよい。
【0147】
蓋用センサ173は、焼成室30を開閉する蓋40(例えば図1参照、本発明の蓋部の一例)の開閉状態を検知するセンサである。このセンサには、例えばマイクロスイッチのような接触式(機械式)のセンサや、例えば光センサや磁気センサのような非接触式のセンサ等を使用できる。より具体的な構成として、例えば、蓋40側に永久磁石を取り付け、本体側に磁気センサを取り付ける構成を採用することができる。
【0148】
蓋用センサ173からの情報(信号)を受け取る制御装置120は、粉砕モータ60の駆動を開始する前(或いは駆動中)に蓋40が開いた状態であるという情報を受け取ると、蓋40の開閉状態に関する異常を検知する。蓋40が開いた状態で粉砕モータ60を駆動させると、ユーザに危険が及ぶ可能性があるからである。制御装置120は、原則として(例外については後述する)、このような異常状態を検知した場合には、粉砕モータ60の駆動を開始せず(或いは停止して)、パンの製造工程の実行を停止させる。この停止は、単に、そのままパンの製造工程の実行を完全に終了させるものであってもよいが、ある条件の下、パンの製造工程の実行を再開させることがあるものであってもよい。
【0149】
パン容器用センサ174は、焼成室30に収容されるパン容器80(例えば図1、図4参照)が定位置にあるか否かを検知するセンサである。このセンサには、例えばマイクロスイッチのような接触式(機械式)のセンサや、例えば光センサのような非接触式のセンサ等を使用できる。より具体的な構成として、例えば、定位置にパン容器80が収納されている場合にマイクロスイッチがオンされ、焼成室30の収容方向(図4の上下方向)にパン容器80が動いて定位置から所定量浮いた状態となった場合にマイクロスイッチがオフされるような構成を採用することができる。
【0150】
パン容器用センサ174からの情報(信号)を受け取る制御装置120は、粉砕モータ60の駆動を開始する前(或いは駆動中)にパン容器80が定位置から所定量浮いた状態であるとの情報を受け取ると、パン容器80の位置に関する異常を検知する。このような状態での粉砕モータ60の駆動は、装置の故障の原因となるからである。制御装置120は、原則として(例外については後述する)、このような異常状態を検知した場合には、粉砕モータ60の駆動を開始せず(或いは停止して)、パンの製造工程の実行を停止させる。この停止は、単に、そのままパンの製造工程の実行を完全に終了させるものであってもよいが、ある条件の下、パンの製造工程の実行を再開させることがあるものであってもよい。
【0151】
第2実施形態の自動製パン器2も、第1実施形態の自動製パン器1と同様に、練り工程と発酵工程との間、及び、焼成工程開始から5分後に、ブレード回転軸82を逆方向回転する回転動作(本発明の回転動作の一例)が行われるようになっている。これは、第1実施形態の場合と同様に、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91(例えば図6参照)とが固着するのを防止することを狙ったものである。ところで、このような構成を採用しつつ、上述の異常検知部17を設ける場合、次のような点が問題となる。
【0152】
すなわち、前述の回転動作を行う直前、或いは、回転動作中に、異常検知部17によって異常が検知されることが起こり得る。このような場合に、上述の原則に従って、粉砕モータ60を用いた回転動作を開始させない、或いは、回転動作を中止させて、パンの製造工程を停止させるのも一手である。しかし、このようにすると、パンの製造工程が半分以上進んでいるにもかかわらず、最悪の場合には、パンが焼き上げられることなく、パンの製造動作が終了してしまうことになる。このために、ユーザによっては、材料や時間等の無駄となり、使い勝手が悪いとの印象を抱く可能性がある。
【0153】
この点を考慮して、第2実施形態の自動製パン器2は、前述の回転動作を行う直前、或いは、回転動作中に、制御装置120が異常検知部17からの情報によって異常状態を検知した場合、図13に示すような例外処理を行う構成となっている。なお、図13は、第2実施形態の自動製パン器における、異常状態検知時の例外処理フローを示すフローチャートである。
【0154】
パンの製造工程(例えば図11に示す製造工程が該当する)が開始されると、制御装置120は、回転動作(ここでは、練り工程と発酵工程との間にブレード回転軸82を逆方向回転する回転動作が該当)が開始されるタイミングになったか否かの確認を続ける(ステップS1)。
【0155】
前述の回転動作を開始するタイミングになると(ステップS1でYes)、制御装置120は、回転動作を開始する前に、異常検知部17からの情報によって異常状態が検知されているか否かを確認する(ステップS2)。異常状態が検知されている場合には(ステップS2でYes)、制御装置120は、パンの製造工程の実行は継続しつつ、予定されていた、粉砕モータ60を用いた回転動作については取り止めると判断し、そのような動作を実行させる(ステップS3)。
【0156】
その後は、制御装置120は、更に回転動作(ここでは、焼成工程開始から5分後に、ブレード回転軸82を逆方向回転する回転動作が該当)を行う予定が無いか否かを確認する(ステップS4)。回転動作の予定が無い場合には(ステップS4でYes)には、異常状態検知時の例外処理動作が終了される。一方、回転動作の予定が有る場合には(ステップS4でNo)には、ステップS1に戻る。この段階では、ステップS1における回転動作は、焼成工程開始から5分後にブレード回転軸82を逆方向回転する回転動作が該当する。なお、初めの回転動作(練り工程と発酵工程との間に行われる回転動作)の開始前に異常状態が検知された場合には、その段階で、次の回転動作(焼成工程開始から5分後に行われる回転動作)も取り止められるようにしてもよい。
【0157】
ステップS2で異常状態が検知されなかった場合には(ステップS2でNo)、制御装置120は、予定されていた回転動作を実行させる(ステップS5)。そして、制御装置120は、回転動作中に、異常検知部17からの情報によって異常状態が検知されたか否かを確認する(ステップS6)。異常状態が検知された場合には(ステップS6でYes)、制御装置120は、パンの製造工程の実行は継続しつつ、実行中の回転動作を中止すると判断し、そのような動作を実行させる(ステップS7)。その後は、ステップS4に進み、上述の処理が行われる。
【0158】
なお、ステップS6で異常状態が検知された場合には、その後に予定される回転動作について、取り止めるようにしてもよい。
【0159】
また、ステップS6で異常状態が検知されなかった場合には(ステップS6でNo)、制御装置120は、回転動作が終了であるか否かを確認する(ステップS8)。回転動作が終了でない場合には(ステップS8でNo)、ステップS6に戻る。一方、回転動作が終了である場合には(ステップS8でYes)、ステップS4に進み、上述の処理が行われる。
【0160】
以上のように、制御装置120は、回転動作が開始される際、或いは、回転動作中に、異常検知部17からの情報により異常状態を検知した場合には、原則通りパンの製造工程の実行を停止するのではなく、パンの製造工程を継続させる(上記原則に対する例外の動作を行う)。ただし、異常状態を検知しているにもかかわらず粉砕モータ60を駆動させて回転動作を行うと、ユーザに危険が及ぶ、又は、装置の故障の原因となるので、回転動作については「中止」或いは「取り止める」ようにしている。これにより、ユーザは、焼き上がったパンを取り出し難いという不利を被る可能性はあるが、材料と時間の無駄を避けてパンの製造をできる。
【0161】
なお、異常状態が検知されなければ、パンの製造工程が予定通り進められるとともに、練り工程と発酵工程との間、及び、焼成工程開始から5分後に、ブレード回転軸82を逆方向回転する回転動作が行われる。このために、焼き上がったパンをパン容器80から容易に取り出すことが可能になる。
【0162】
また、以上からわかるように、制御装置120は、異常検知部17からの情報により異常状態を検知するとともに、パンの製造工程の継続や回転動作の取り止め等を判断する。すなわち、制御装置120は、本発明の判断手段の一例である。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の例示であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0163】
例えば、以上に示した実施形態では、練り工程と発酵工程との間、及び、焼成工程開始から5分後に、ブレード回転軸82を逆方向回転する回転動作が行われる構成とした(回転動作は2度行われる)。しかしながら、この回転動作が行われるタイミング及び回数は、本実施形態の構成に限らず、適宜変更して構わない。この回転動作が、練り工程の終了後から焼成工程の終了までの期間内の適当なタイミングで少なくとも一度行われれば、パン原料(パン生地を含む)が焼き付いてブレードユニット90がブレード回転軸82から抜けないという事態を低減する効果が得られる。例えば、練り工程と発酵工程との間、及び、焼成工程開始から5分後のうちの、いずれか一方においてのみ、この回転動作が行われる構成等としてもよい。また、場合によっては、この回転動作が練り工程の終了後から焼成工程の終了までの期間内の適当なタイミングで少なくとも一度行われることを条件に、焼成工程後にも、この回転動作が行われるようにしてもよい。
【0164】
また、以上に示した実施形態では、ユニット用シャフト91に設けられる切り欠き91aの形状は、図14(a)に示すような構成とされた。すなわち、ユニット用シャフト91を側面から見た場合に、切り欠き91aの幅(図14(a)の左右方向の長さ)は、ブレード回転軸82に設けられるピン821(本発明の突出部の一例)の直径とほぼ同等(正確にはやや大きい)の長さで、ブレード回転軸82の挿入方向(図14の下から上に向う方向)に沿って一定とされた。なお、正確には、挿入方向奥側のピン821が当接する部分近傍の幅は一定ではない。
【0165】
しかしながら、ユニット用シャフト91に設けられる切り欠き91aの形状は、この構成に限らず、例えば図14(b)に示すような構成としても構わない。すなわち、ユニット用シャフト91を側面から見た場合に、切り欠き91aは、ブレード回転軸82が挿入される挿入方向手前側から奥側に向けて幅が徐々に狭くなる傾斜部91aaを有するように設けても構わない。
【0166】
図14(b)に示す変形例では、切り欠き91aの幅は、挿入方向奥側では、図14(a)と同様にピン821の直径と同等の幅となっており、挿入方向手前側では、ピン821の幅よりも広くなっている。図14(b)に示すように傾斜部91aaが設けられた(テーパがつけられた)場合には、ブレード回転軸82が高速回転された場合に、切り欠き91に挟まったパン生地D等が、遠心力によって傾斜部91aaの方に流れ易くなる。このために、例えば練り工程と発酵工程との間等に行われる上述のブレード回転軸82の高速回転によって、切り欠き91aに挟まったパン生地D等を効果的に取り除くことができる。すなわち、図14(b)に示す構成を採用することによって、ブレード回転軸82とユニット用シャフト91との固着がより効果的に低減され、ユーザはパン容器80からパンを取り出しやすくなる。
【0167】
また、以上に示した実施形態においては、米粒が出発原料として用いられる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作が説明された。しかし、本発明は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒が出発原料として用いられる場合にも、適用可能である。
【0168】
また、以上においては、米粒(穀物粒)が出発原料として用いられる場合を示したが、本実施形態の自動製パン器1は、例えば小麦粉や米粉等の穀物粉を出発原料に用いてパンを製造することもできる。小麦粉や米粉が出発原料として用いられる場合には、粉砕ブレード92は不要である。このため、この場合には、以上に示したのとは異なるパン容器やブレードユニットが使用されるようにしてもよい。
【0169】
本発明は、小麦粉や米粉等の穀物粉が出発原料として用いられて、パンを焼き上げる場合にも適用できる。更には、本発明は、粉砕ブレードを有しない構成の自動製パン器にも適用できる。ただし、この場合には、自動製パン器は、混練ブレードの回転を停止させつつ、ブレード回転軸を回転(高速回転)できる構成のブレード部を備える必要がある。このようなブレード部としては、例えば、本実施形態のブレードユニット90の粉砕ブレード92が抹消された構成のもの(この場合、ドーム状カバー93(混練ブレード支持部)を単なる円板等としても構わない)であってもよい。
【0170】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程後の休止工程は省いてもよい。
【0171】
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、別々のモータが使用される構成とした。しかし、本発明は、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えば1つのモータのみが備えられる構成とし、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、同一のモータを使用する構成としても構わない。この場合には、ブレード回転軸82とブレードユニット90との固着を低減するための上記回転動作も、この1つのモータを用いて行われることになる。
【0172】
また、以上に示した第2実施形態では、異常検知部17に、モータ用センサ171と、クラッチ用センサ172と、蓋用センサ173と、パン容器用センサ174と、が含まれる構成とした。しかし、本発明は、このような構成に限定される趣旨ではない。すなわち、異常検知部17が、上記4つのセンサ171〜174のうちの少なくともいずれか一つを含む構成は本発明の範囲内である。また、異常検知部17が、上記4つのセンサ171〜174に加えて、他のセンサ(粉砕モータ60を用いてブレード回転軸82を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための手段である必要がある)を含む構成や、上記4つのセンサ171〜174以外の他のセンサ(前記同様)のみを含む構成等も本発明の範囲内である。
【0173】
また、以上に示した第2実施形態では、異常検知部17は、粉砕モータ60を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための手段とした。しかし、上述のように、本発明の範囲には、例えばモータを1つのみ備える自動製パン器も含まれる。更には、本発明の範囲には、例えば粉砕機能を有さない自動製パン器も含まれる。このために、本発明の異常検知部は、広くは、ブレード回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための手段とも言える。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0175】
1、2 自動製パン器
10 本体
17 異常検知部(異常検知手段)
30 焼成室
40 蓋(蓋部)
50 混練モータ(第1のモータ)
56 クラッチ(第2のクラッチ)
60 粉砕モータ(第2のモータ)
80 パン容器
82 ブレード回転軸
90 ブレードユニット(ブレード部)
91 ユニット用シャフト(取付部)
91a 切り欠き
91aa 傾斜部
91c 挿入孔
92 粉砕ブレード
93 ドーム状カバー(混練ブレード支持部)
101 混練ブレード
103 カバー用クラッチ(第1のクラッチ)
120 制御装置(判断手段)
171 モータ用センサ(モータ用異常検知手段)
172 クラッチ用センサ(クラッチ用異常検知手段)
173 蓋用センサ(蓋部用異常検知手段)
174 パン容器用センサ(パン容器用異常検知手段)
821 ピン(突出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設けられる焼成室と、
前記焼成室に収容されるとともに、底部に回転軸を有するパン容器と、
前記本体内に設けられ、前記焼成室に収容された前記パン容器の前記回転軸に回転力を与えるモータと、
前記回転軸が挿入される挿入孔が設けられ、前記回転軸に対して回転不能に取り付けられる取付部、及び、前記取付部の回転とともに回転されることがある混練ブレードを有し、前記回転軸に対して着脱可能なブレード部と、
を備え、
前記混練ブレードを用いてパン生地を練り上げる練り工程、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程、及び、発酵させたパン生地を焼成する焼成工程を含むパンの製造工程が実行される場合に、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に少なくとも一度、前記混練ブレードの回転を停止させて前記回転軸を回転させる回転動作が行われる、自動製パン器。
【請求項2】
前記ブレード部には、前記取付部に対して回転可能に取り付けられるとともに前記混練ブレードを支持する混練ブレード支持部と、前記回転軸と前記混練ブレード支持部との連結状態を切り替える第1のクラッチと、が更に含まれ、
前記混練ブレードは、前記混練ブレード支持部に回転可能に取り付けられて、前記練り工程で使用される状態である折り畳み姿勢と、前記パン容器の内壁に当接する状態である開き姿勢との2姿勢をとり得るようになっており、
前記回転軸が一方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記折り畳み姿勢となって前記第1のクラッチが前記回転軸と前記混練ブレード支持部とを連結し、前記混練ブレードは前記回転軸とともに回転し、
前記回転軸が前記一方向と逆方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記開き姿勢に転じて前記第1のクラッチが前記回転軸と前記混練ブレード支持部との連結を切り離し、前記混練ブレードは回転停止状態となり、
前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時には、前記回転軸は前記逆方向に回転する、請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記ブレード部には、前記取付部に回転不能に取り付けられる粉砕ブレードが更に含まれ、
前記混練ブレード支持部は、前記粉砕ブレードを覆うドーム状のカバーであり、
前記パンの製造工程には、前記練り工程の前に行われて穀物粒を前記粉砕ブレードで粉砕する粉砕工程が含まれる、請求項2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時における前記回転軸の最大回転速度は、前記粉砕工程において前記粉砕ブレードを回転させる際の前記回転軸の最大回転速度と同等である、請求項3に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記モータには、前記練り工程で使用される第1のモータと、前記粉砕工程、及び、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時において使用される第2のモータと、が含まれる、請求項3又は4に記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作は、前記練り工程と前記発酵工程との間に行われる、請求項1から5のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項7】
前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作は、前記焼成工程の途中で行われる、請求項1から6のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項8】
前記回転軸には、その側面から突出する突出部が設けられ、
前記取付部の側壁には、前記回転軸が前記挿入孔に挿入される場合に、前記突出部と係合する切り欠きが形成されており、
前記切り欠きは、前記回転軸が挿入される挿入方向手前側から奥側に向けて幅が徐々に狭くなる傾斜部を有する、請求項1から7のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項9】
前記回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための異常検知手段と、
前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作を開始する際に、前記異常検知手段からの情報に基づいて前記異常状態が検知される場合に、前記パンの製造工程の実行を継続するとともに、前記回転動作の実行については取り止めると判断する判断手段と、
を更に備える、請求項1から8のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項10】
前記回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知するための異常検知手段と、
前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作中に、前記異常検知手段からの情報に基づいて前記異常状態が検知される場合に、前記パンの製造工程の実行を継続するとともに、前記回転動作については中止すると判断する判断手段と、
を更に備える、請求項1から8のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項11】
前記パンの製造工程には、前記練り工程の前に行われて穀物粒を粉砕ブレードで粉砕する粉砕工程が更に含まれ、
前記モータには、前記練り工程で使用される第1のモータと、前記粉砕工程、及び、前記練り工程の終了後から前記焼成工程の終了までの期間内に行われる前記回転動作時において使用される第2のモータと、が含まれ、
前記異常検知手段は、前記第2のモータを駆動させて前記回転軸を回転させるにあたって支障となる異常状態を検知する、請求項9又は10に記載の自動製パン器。
【請求項12】
前記異常検知手段には、前記モータの動作異常を検知するためのモータ用異常検知手段が含まれる、請求項9から11のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項13】
前記モータの回転動力を前記回転軸に伝達するか否かを切り替える第2のクラッチを更に備え、
前記異常検知手段には、前記第2のクラッチの動作異常を検知するためのクラッチ用異常検知手段が含まれる、請求項9から12のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項14】
前記焼成室を開閉する蓋部を含み、
前記異常検知手段には、前記蓋部の開閉状態に関する異常を検知するための蓋部用異常検知手段が含まれる、請求項9から13のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項15】
前記異常検知手段には、前記パン容器の前記焼成室における位置に関する異常を検知するためのパン容器用異常検知手段が含まれる、請求項9から14のいずれかに記載の自動製パン器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−90924(P2012−90924A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243710(P2010−243710)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】