説明

自動車のエンジンルーム内の装置のためのカバー

本発明は、自動車のエンジンルーム内の装置のための、吸音素材から作られて一体として装置に取付けられる、支持部材(2)と成形部材(3)とを有するカバー(1)に関する。本発明の目的は、自動車のエンジンルーム内の装置のためのカバーを提供することであり、特に、改善された防音効果と同時に、特に容易に装着できるエンジンカバーを提供することである。この目的は、成形部材(3)が、支持部材(2)から対面している側面上に、カバーされる装置に割り当てられるカラー(4)を有することと、装置のカバー(1)の組立てのために提供されたプラグイン連結要素(6)が、成形部材(3)の吸音素材に形状がぴったり合う方法で接続されて、支持部材(2)から少し離れて配置されることとで解決される。成形部材は、好ましくは、支持物(2)の背面を裏側から発泡することによって形成される。プラグイン連結要素(6)は、成形部材(3)の発泡プラスチック素材の中に埋め込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンルーム内の装置のためのカバーに関していて、カバーは、吸音素材から作られて一体で取付けられる、支持部材と成形部材を有する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車には、一様に構造的な機能を有する吸音エンジンカバーの着装が、増大している。
【0003】
特許文献1は、シリンダヘッドカバーとして広がる防音フードを有する、内燃エンジンについて述べている。防音フードは、断面において単層構造の自立成形部材である。周囲の密閉リングは、防音フードの端部に適用されて、歯付きベルトを覆っている制御ボックスの終端側面と、シリンダヘッドカバーの端面及び/又は表面とで密閉接触を形成する。防音フードは、終端部におねじ部分を有し、シリンダヘッドのねじ山の切られた穴にねじこまれるスタッドボルトによって、シリンダヘッドに取付けられる。おねじ部分は、ゴム製套管によって防音していて、防音フードと接続するスリーブを通っている。防音フードは、ねじ山の部分にねじ込まれるキャップナットによって保持されている。発泡プラスチック又は同様なもののような吸音素材の欠如から、防音フードの防音効果は満足されない。さらに、この防音フードの組立は、キャップナットをねじ込まなければならない事によって、比較的に不便である。
【0004】
特許文献2から、吸音エンジンカバーは、二つの被覆層の間の予定された領域に配置された発泡プラスチック素材の充填層を備える、発泡プラスチック素材の多重被覆層を有することが知られている。カバーは、構造カバーとして機能するプラスチックのシェルに、超音波溶接によって取付けられる。さらに、吸音カバーは、プラスチックのシェルの構成部品の通過が可能な凹部を有する。覆われる装置にカバー及び/又はプラスチックのシェルを留めることに関して、特許文献2は詳しい情報を含んでいない。
【0005】
さらに、現状技術に関しては、特許文献3が参照されるべきである。この特許は、防振バネ要素を有する内燃機関のためのカバーシェルについて述べていて、カバーシェルは、アセンブリケージ(an assembly cage)を有する円錐形の圧縮バネ式又は膜構造バネ式で、一体化してそこに直接成型される防振バネ要素を有する。カバーシェルと一体化バネ要素は、同じ素材、すなわちプラスチックから一作業で作られて、装置を形成する。着脱する装置は、バネ要素の端部に取付けられるべきである。けれども、また明らかに一作業で一体化される、これらの着脱する装置の具体的な構造がどのようなものであるかは、明確でない。加えて、提案されたバネ要素は、比較的複雑な射出成形を必要とし、従って、高い製造コストとなり、また品質の問題を必然的に伴っている。さらに、この従来のカバーシェルは、防音素材を備えていないので、防音効果はほとんど満足されない。
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第4041388号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19904986号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19824905号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自動車のエンジンルーム内の装置のためのカバーを提供することであって、詳細には、改善した防音効果を有し、同時に特に容易に装着できるエンジンカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にしたがって、この目的は、前文で規定されたタイプのカバーにより達成されていて、そのカバーにおいて、成形部材が支持部材から対面している側面上に、覆われる装置ために用意されたカラーを有して、装置にカバーを取付けるのに適合するプラグイン連結要素が備えられていて、これらの要素は、支持部材から離間して、成形部材の吸音素材に形状がぴったり合う方法で接続されている。
【0009】
吸音素材、好ましくは発泡プラスチック製の成形部材によって、本発明に従うカバーは、例えば、特許文献1と特許文献3から公知の、従来構造のフード又は防音フードと比較して、改善された防音効果を有する。本発明に従うカバーの防音効果は、カラーを備えてさらに改善され、カラーは成形部材上に形成されて、側面で覆われる装置を大きく又は完全に取り巻く。好ましくは、周囲を囲んでいるカラーは、覆われる又は遮音されるエンジン部分の外形に応じて、異なる幅と厚さの区域を有してもよい。
【0010】
加えて、本発明に従うカバーは、プラグイン連結要素によって、非常に容易で迅速に着脱することが出来る。成形部材を用いたプラグイン連結要素の形状にぴったり合った接続には利点があって、プラグイン連結要素がカバーの構成要素と一体であるため、カバーの着脱で操作する構成要素の数が減少されている。これは、収納コストを削減し、あるいは欠落部品によって生ずる問題の予防を可能にする。加えて、この形状にぴったり合った接続は、カバーの支持部材が、覆われる装置の振動、詳細には、内燃機関の振動に関して、特に良好な遮断となる利点を有する。発泡プラスチックのようなソフト弾性素材から成る成形部材には、吸音効果に加えて防振効果も想定されている。
【0011】
成形部材は、利点のあることに、支持部材を裏側から発泡することによって形成することが出来る。この場合に、プラグイン連結要素は、成形部材の発泡プラスチックによって囲まれるような方法で、射出成形の中に配置されてもよい。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態に従って、カラーは、少なくともある部分の外面に、例えば、充填した熱可塑性エラストマから成る重量層を有する。好ましくは弾性開放気孔の発泡プラスチックから成るカラーと重量層とが合わさって、本発明に従うカバーの吸音と遮音の効果を増大する防音バネ-マスシステムを形成する。
【0013】
本発明のカバーの追加の好ましくて有利な実施形態は、従属請求項に特徴付けられる。
【0014】
本発明は、概略の引例で示している、いくつかの例示する実施形態を描写する図に基づいて、以下に、より詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図示されたカバー1は、構造機能と防音機能を有するエンジンカバーである。カバー1は、自立する支持部材2と成形部材3とから成っていて、成形部材3は、空気伝播音を吸収する素材から作られて、一体で支持部材に連結されている。支持部材2はプラスチック製、例えばポリアミド製である。もしも所望するなら、支持部材2又はその見える側も、金属製、好ましくはアルミニウム製でもよい。
【0016】
支持部材2は、詳細にはプラスチックの成形部材であってもよくて、成形部材は、見える側にフィルムと、フィルムの裏側に射出成形によって作られた裏打ちとを有していて、フィルムは完全に着色されたプラスチックフィルムで、好ましくは、支持部材2のその他の部分と同種のプラスチックから成っている。
【0017】
完全に着色されたプラスチックフィルム(示されていない)は、約300〜400μmの厚さを有し、画定された輪郭に従って、一定の大きさに切断して形作られる。この方法で加工処理されたプラスチックフィルムは、ポリアミド又は別の適切なプラスチックを射出成形することによって、フィルムの挿入物として裏打ちをされる。プラスチックフィルムは、所望するならば、支持部材2の見える面の部分的な領域のみを覆ってもよい。それは、裏側に射出されたプラスチックの色と異なる色を有する。例えば、プラスチックフィルムは、銀色であり、一方裏打ちプラスチックは黒であってもよい。支持部材2は、形状と色の両方がデザイン要素であるデザイン部材である。
【0018】
比較的大きな曲げ剛性を有する支持部材2に一体で結合される成形部材3は、好ましくは、発泡プラスチックから作られる。発泡プラスチッは、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、又はメラニン樹脂発泡体であってもよい。好ましくは、疎水性と疎油性の性質を有する開放気孔の発泡プラスチック素材である。
【0019】
空気伝播音を吸収する成形部材3は、好ましくは、支持部材2を裏側から発泡することによって形成される。従って、大きな領域にわたって、支持部材2と成形部材3との間に接着された結合部がある。
【0020】
支持部材2から対面している側面に、成形部材3は周囲カラー4を有する。カラー4は、成形部材3と一体となるものであり、すなわちカラー4は成形部材3の一部である。カラー4は、凹部の配列によって任意に中断されてもよい。カラー4の輪郭は、覆われるエンジン部分(示されていない)の輪郭に適合する。従って、カラー4は、種々の範囲に下方に突出する部分を有する。成形部材3は、カラー4の範囲でエンジンと直接接触してもよい。しかし、成形部材3は、好ましくはエヤギャップが、覆われるエンジンとカラー4を含む成形部材3との間に備えられるようになっている。
【0021】
カラー4の外面は、少なくとも部分的に重量層5で覆われていてもよく、詳細には、高密充填された熱可塑性エラストマで覆われていて、その結果、カラー4は防音バネ-マスシステムを形成する。
【0022】
防音カバー1の取り外し可能な留め具のために、プラグイン連結要素6が提供される。すなわち、プラグイン連結要素6は、支持部材2から離間して配置される方法によって、成形部材3の吸音素材と形状にぴったり合った方法で接続される。プラグイン連結要素6は、ゴム弾性素材、例えば熱可塑性エラストマから作られる。これら各々は、留め金連結(a catch coupling)の方法でするようになっている接続区画7を有している。自動車のエンジンに装着される、スタッドボルト9のマッシュルーム型の又はボール型の頭部8は、(図5に示す)この接続区画7に嵌合される。図5に示したように、スタットボルト9は、その結果、六角形の部分10と、(示されていない)エンジンの係合するネジ山が切られた穴の中にねじ込むことが可能な、おネジ11とを有してもよい。プラグイン連結要素6の配列は、スタットボルト9の配列に一致する。本発明に従うエンジンカバー1は、プラグイン連結要素を接続し、分離することによって、迅速にかつ容易に装着及び/又は剥脱することが可能である。
【0023】
図2、3と5に示したように、プラグイン連結要素6は、成形部材3の発泡プラスチックの中に一体化される。プラグイン連結要素6は、カラー4の外面に配置される。それぞれのプラグイン連結要素6と発泡プラスチックとの間の特に強固な接続をするために、プラグイン連結要素は、表面領域を大きくする突起物12を有する。これらの突起物12は、チャンバ又はスリーブの形状となるようになっていて、フランジ14及び/又は突出物13、すなわち図3と5で示したような半径方向に突出する突出物を有してもよい。薄い壁厚を有する変り目領域15は、表面を増加する突起物12と、ウェブ又はボルトに接続させることが出来る接続区画7との間に形成される。ここに図示された例示的な実施例において、薄い壁厚を有する変り目領域15は、周囲のノッチ及び/又は溝によって形成される。変り目領域15は、防振のバネ及び/又はバネ膜(spring membrane)の機能を有する。
【0024】
上記で述べたように、本発明に従うカバー1の成形部材3の発泡プラスチックは、吸音機能を有するばかりでなくて、同時に、覆われた振動するエンジン部分とエンジンカバー1の支持部材2との間の防振及び/又は振動緩和機能も有する。防振に関しては、成形部材3が、プラグイン連結要素6の各々を、(図4に示す)形状にぴったり合った方法で支持するチャンバのような凹部16を有する場合に、有利となるかもしれない。チャンバのような凹部16とプラグイン連結要素6との寸法は、ウェブとボルトに接続される、それぞれのプラグイン連結要素6の接続区画7が、チャンバのような凹部16の中で共振するように装着されるために選択される。図4で示したように、ウェブ又はボルトに接続させる共振する接続区画7は、支持部材2からばかりでなく、成形部材3の発泡プラスチックからも離間して配置される。チャンバのような凹部16は、その開口部に、チャンバのような凹部16からの抜け落ちを予防するために、プラグイン連結要素6を付加的に固定する肩のような突出17を有する。
【0025】
図5は、プラグイン連結要素6が、再び発泡プラスチックの中で一体化される例示的な実施形態を示す。このプラグイン連結要素6は、チャンバのような及び/又はスリーブのような突起12を有して、突起は、周囲フランジ14と外部から離れるように突出する羽枝のような突出13を有する。チャンバのような及び/又はスリーブのような突起12は、クロージャ19を備えた中空の空間18を画定する。本例示的な実施形態において、クロージャ19は、フランジ14に宛がわれる接着性のフィルム又はそのようなものによって形成される。スタッドボルト9のマッシュルーム型の又はボール型の頭部8に接続される接続区画7は、共振可能な方法で、チャンバ型の又はシェル型の突起12によって画定される、中空の空間18の内部に装着される。
【0026】
先の記述と請求項で開示され、添付図面で説明された本発明の特徴は、個々にでもまたどのような望ましい組合せにおいてでも、さまざまな実施形態で本発明を履行することが最も重要であるかもしれない。
【0027】
本発明の実施は、上記に述べられた例示的な実施形態に限定されるものではなく、幾つかの異なった別形が考えられて、それはまた基本的に異なるデザインにおいて、請求項で特徴付けられるような創意に富んだアイディアを使用する。このように、吸音成形部材3は、一体として共に結合された幾つかの発泡プラスチックの層及び/又は領域から構成されてもよく、各々の層又は領域は、異なる特性、詳細には異なる比重を有している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は、自動車のためのエンジンカバーの側面図を示す。
図2は、図1に従う、エンジンカバー断面図である。
図3は、第二例示の実施形態に従う、エンジンカバー断面図である。
図4は、第三例示の実施形態に従う、エンジンカバー断面図である。
図5は、第四例示の実施形態に従う、エンジンカバーの部分の断面図である。
【図3】

【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体化してカバーに取付けられる吸音素材で作られた、支持部材(2)と成形部材(3)とを有している、自動車のエンジンルーム内の装置のためのカバー(1)であって、該成形部材(3)が、該支持部材(2)から対面している側面に、覆われるものである該装置に割り当てられるカラー(4)を有していることと、該装置の該カバー(1)の組立てのために提供されるプラグイン連結要素(6)が、該成形部材(3)の該吸音素材に、形状がぴったり合う方法で接続されて、該支持部材(2)から離間して配置されることとを特徴とする、自動車のエンジンルーム内の装置のためのカバー(1)。
【請求項2】
該プラグイン連結要素(6)各々が、留め金連結の形状になっている連結区画(7)を有することを特徴とする、請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
該プラグイン連結要素(6)各々が、ウェブ又はボルト(9)に接続できて、該成形部材(3)から離間して配置される、共振する連結区画(7)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のカバー。
【請求項4】
該成形部材(3)が、発泡プラスチック製であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項5】
該プラグイン連結要素(6)が、該発泡プラスチックに一体化されていることを特徴とする、請求項4に記載のカバー。
【請求項6】
該成形部材(3)が、該支持部材(2)の上に発泡プラスチックを裏打ちすることによって形成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項7】
該成形部材(3)は、プラグイン連結要素(6)の一つが、形状にぴったり合った方法で装着される、チャンバのような凹部(16)を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項8】
該支持部材(2)が、裏側に射出されたフィルムを有するプラスチックの成形部材であって、該プラスチックの成形部材が、見える側に完全に着色されたプラスチックフィルムを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項9】
該支持部材(2)又はその見える側が、アルミニウム製であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項10】
該カラー(4)が、その外部の少なくともある部分に重量層(5)を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項11】
該カラー(4)を包含する該成形部材(3)が、覆われるものである該装置から離間して配置されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のカバー。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−522890(P2006−522890A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504779(P2006−504779)
【出願日】平成16年3月20日(2004.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002957
【国際公開番号】WO2004/090307
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504210628)カーコースティクス テック センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (20)
【Fターム(参考)】