説明

自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置

本発明は、自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置(1)であって、伝動装置ハウジング(3)に受容されている平歯車(4)を回転駆動するための電動モータ(2)が設けられており、平歯車(4)が、ウインドワイパ装置のための被駆動軸(19)を駆動するために、伝動装置(5)と作用結合しており、平歯車(4)が一緒に回転する平歯車軸(6)を用いて伝動装置ハウジング(3)内に回転可能に受容されている形式のものに関する。このような形式の駆動装置において本発明の構成では、平歯車軸(6)の軸区分(7)が伝動装置ハウジング(3)から外に突出していて、該軸区分(7)に、テールゲート及び/又はテールゲートウインドを閉鎖するための閉鎖装置(8)を操作する手段が受容されている。このように構成されていることによって、自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置(1)は、ウインドワイパ装置か又は閉鎖装置を選択的に操作するために簡単な構成を有することができ、かつ、ウインドワイパ装置を駆動するために公知の構造形式で構成された伝動装置ハウジングを有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式の電気機械式の駆動装置、すなわち、自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置であって、伝動装置ハウジングに受容されている平歯車を回転駆動するための電動モータが設けられており、平歯車が、ウインドワイパ装置のための被駆動軸を駆動するために、伝動装置と作用結合しており、平歯車が一緒に回転する平歯車軸を用いて伝動装置ハウジング内に回転可能に受容されている形式のものに関する。
【0002】
従来の技術
このような形式の電気機械式の駆動装置はEP0937187B1に基づいて公知である。この駆動装置は自動車のテールゲートにおいて使用するためのものであり、伝動装置ハウジング内に受容された平歯車を回転駆動するための電動モータを有しており、平歯車は、ウインドワイパ装置のための被駆動軸を駆動するために、伝動装置と作用結合している。さらに電気機械式の駆動装置は、テールゲートを閉鎖するための閉鎖装置と機械式に結合されており、この駆動装置自体は、リヤウインドワイパ装置用の駆動装置として形成されていて、電動モータは、伝動装置を介してワイパ装置を操作するための電気式駆動装置として働く。閉鎖装置を操作するため及びワイパ装置を駆動するために、電気機械式の駆動装置はモジュール状に形成されており、電動モータは両回転方向において制御可能であり、伝動装置は一方の回転方向ではワイパ装置への力伝達経路を操作し、かつ他方の回転方向では閉鎖装置への力伝達経路を操作する。これによって電動モータの回転方向に関連して選択的にワイパ装置か又は閉鎖装置を操作することができる。
【0003】
このような駆動装置ではフリーホイールもしくは自由回転が必要であり、その結果ワイパ装置の操作時には閉鎖装置への力伝達経路は中断され、それに対して、閉鎖装置を操作したい場合には、ワイパ装置への力伝達経路を中断する必要がある。公知の構成によればそのために、駆動装置の平歯車に複数の連行体が設けられており、これらの連行体は、操作レバーと相互に作用し合っており、この相互作用は回転方向に関連して導入又は中断される。この場合操作レバーは構造的に複雑かつ高価な形式でケーブルを介して滑子案内と結合されねばならず、この滑子案内は、テールゲートのドア閉鎖のために必要なのと同じ回転を、閉鎖装置において生ぜしめる。従来技術の構成によればさらに特殊に構成された伝動装置ハウジングが必要であり、この伝動装置ハウジングは、操作レバーとボーデンケーブルとして形成されたケーブルとを受容しており、さらに、駆動装置と閉鎖装置とのモジュラ構造形式を得るために、閉鎖装置を駆動装置と機械的に結合している。
【0004】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置を改良して、ウインドワイパ装置か又は閉鎖装置を選択的に操作するために簡単な構造を有していて、ウインドワイパ装置を駆動するために公知の構造形式で構成された伝動装置ハウジングを有している、電気機械式の駆動装置を提供することである。
【0005】
発明の開示
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式の、自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置において、平歯車軸の軸区分が伝動装置ハウジングから外に突出していて、該軸区分に、テールゲート及び/又はテールゲートウインドを閉鎖するための閉鎖装置を操作する手段が受容されているようにした。
【0006】
本発明の別の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【0007】
本発明は、公知の形式で構成された伝動装置ハウジングを備えた駆動装置をベースにして、簡単化のために単に平歯車軸の長さを変えて、軸区分を伝動装置ハウジングの外に延ばすことによって、テールゲート及び/又はテールゲートウインドを閉鎖するための閉鎖装置を操作する手段の受容可能性を得ることができる、という思想に基づいている。閉鎖装置は、例えばステーションワゴン、コンパクトカー又は小型車において知られているテールゲートを閉鎖するために構成されていることができ、この場合テールゲートの実施形態に関連してテールゲートウインド自体が開放可能もしくは閉鎖可能に構成されていることができる。
【0008】
平歯車軸は平歯車と回動不能に結合されているので、平歯車の回転運動は平歯車軸に伝達され、伝動装置ハウジングから外に延びている平歯車軸の軸区分も同様に一緒に回転する。
【0009】
閉鎖装置を操作する手段の有利な構成によれば、閉鎖装置を操作する手段が、第1のフリーホイール装置を有しており、該第1のフリーホイール装置が平歯車軸の回転時に第1の回転方向では閉鎖装置を操作し、逆向きの第2の回転方向では平歯車軸を自由回転させるようになっている。電動モータの回転方向に関連して、平歯車軸は右回転又は左回転し、これは第1の回転方向もしくは逆向きの第2の回転方向によって記載されている。フリーホイール装置はこの場合、駆動装置と閉鎖装置との間における力伝達経路の一部である。
【0010】
フリーホイール装置の別の有利な構成では、第1のフリーホイール装置が操作レバーを有しており、該操作レバーが、一緒に回転するように平歯車軸の軸区分に受容されていて、操作レバーの回転方向においてくさび形に形成された、閉鎖装置の閉鎖装置レバーと作用結合している。操作レバーは軸区分にプレス嵌め又はその他の形式で回動不能に軸区分と結合されていることができる。平歯車軸が回転すると、操作レバーもまた同様に回転平面において回転する。この回転平面には、閉鎖装置から閉鎖装置レバーが延びており、この場合閉鎖装置レバーはくさび形に形成されている。操作レバーが平歯車の回転によって回転すると、操作レバーはくさび形の閉鎖装置レバーと当接することができ、これによって駆動装置と閉鎖装置との間の力伝達経路を閉鎖することができる。
【0011】
本発明の別の有利な構成では、操作レバーが平歯車軸の延在方向においてばね弾性的に形成されていて、その結果操作レバーが閉鎖装置を操作するために第1の回転方向ではくさび形状の閉鎖装置レバーに形状結合式に当接し、かつ第2の回転方向ではばね弾性的にくさび形の閉鎖装置レバーを越えて滑動して、平歯車軸を自由回転させるようになっている。閉鎖装置レバーのくさび形の構成は、くさび形の断面を意味しており、この場合くさびの方向は操作レバーの回転平面に位置している。操作レバーが第1の回転方向で回転すると、操作レバーは少なくとも端部側において、閉鎖装置レバーのくさび断面の鈍角側に当接し、これにより操作力が操作装置に形状結合により伝達される。操作レバーが第2の回転方向で回転すると、操作レバーは閉鎖装置レバーを越えて滑動する。それというのはこの場合、操作レバーはくさび断面の乗上げ側において閉鎖装置レバーとの間に形状結合を生ぜしめないからである。これによってフリーホイール装置が得られ、この場合閉鎖装置の確実な操作のためには、平歯車が少なくとも1回転することが必要であり、これによって閉鎖装置レバーのくさび形の断面の鈍角側への操作レバーの当接を保証することができる。フリーホイール装置の別の有利な構成では、第1のフリーホイール装置がスリーブフリーホイールとして形成されていて、該スリーブフリーホイールが平歯車軸の軸区分に配置され、かつ操作レバーの軸区分に受容されている。
【0012】
スリーブフリーホイールは、互いに同心的に内外に配置された2つのスリーブ区分を有しており、両スリーブ区分の間にはクランプ体が挿入されており、その結果外側スリーブは内側スリーブに対して単に一方の回転方向においてだけ回転可能であり、かつ他方の回転方向ではロックされるようになっている。スリーブフリーホイールは内側のスリーブで平歯車軸の軸区分にプレス嵌めされており、操作レバーはスリーブフリーホイールの外側スリーブと結合されている。平歯車軸の軸区分が第1の回転方向で回転すると、回転運動はスリーブフリーホイールの内側スリーブから外側スリーブに伝達され、操作レバーは一緒に回転することができる。これに対して平歯車軸の軸区分が第2の回転方向で回転すると、回転運動はスリーブフリーホイールの内側スリーブから外側スリーブに伝達されず、操作レバーが回転させられることはない。
【0013】
本発明の別の有利な構成では、第2の回転方向における操作レバーの不都合な逆回転を阻止するために、操作レバーと伝動装置ハウジングとの間にばねエレメントが配置されている。このように構成されていると、操作レバーの規定された位置を保証することができ、この場合ばねエレメントは例えば小さな板ばねとして形成されていることができる。この板ばねは操作レバーの側部に接触することができ、その結果操作レバーは閉鎖装置レバーとの係合前に僅かな角度で位置決めされる。
【0014】
本発明の別の有利な構成では、平歯車と伝動装置との間に第2のフリーホイール装置が配置されており、該第2のフリーホイール装置が平歯車の回転時に第1の回転方向では伝動装置に対する運動伝達を中断し、逆向きの第2の回転方向では運動伝達を生ぜしめる。第1のフリーホイール装置が、閉鎖装置の方向における力伝達経路を回転方向に関連して中断するのに対して、第2のフリーホイール装置は、伝動装置の方向における力伝達経路を回転方向に関連して中断する。
【0015】
有利には第2のフリーホイール装置が、平歯車の平面側に設けられていてランプ形の隆起部を備えたガイド溝を有しており、該ガイド溝内においてばね負荷されたピンが案内されていて、該ピンが伝動装置と結合している。ランプ形の隆起部は、乗上げ側と当接側とによって画成されており、ピンは平歯車の回転時に第1の回転方向では乗上げ側を越えて滑動し、第2の回転方向における回転時には当接側と形状結合式に当接して、伝動装置への運動伝達を行うことができる。ランプ形の隆起部はガイド溝の底部に設けられていて、平歯車の平面側の内部においてガイド溝の全周において1回、2回又は4回設けられていることができる。これによってストッパ側を介しての形状結合式の力伝達は、360°の最大回転角において初めて得られるのではなく、既に180°、120°等において得ることができる。ピンはコイルばねを用いてばね力を負荷されており、ガイド溝の底面に向かって押圧される。平歯車が第1の回転方向で回転すると、ピンはガイド溝の底面に沿って滑動し、ランプに達した際にランプの傾斜面に沿って該ランプを上方に滑動し、乱舞の端部に達した時に、ばね力によってガイド溝の底面にスナップ式に押し戻される。これによって、伝動装置への平歯車の回転運動の伝達は、中断することができる。しかしながら平歯車が第2の回転方向で回転すると、ランプは当接側でピンと当接し、その結果伝動装置への回転運動の伝達が可能になる。
【0016】
第2のフリーホイール装置の別の構成では、平歯車の平面側に設けられたガイド溝がロックばねを備えて形成されており、ガイド溝内において案内されるピンが平歯車の回転時に第1の回転方向ではロックばねを越えて滑動し、逆向きの第2の回転方向における回転時にはロックばねと形状結合式に当接して、伝動装置への運動伝達を行うことができる。このように構成されていると、ガイド軌道に向かってピンを押圧するために働く、ピンの背側に配置された圧縮ばねを省くことができる。それというのは、ロックばねはそれ自体が可撓性であり、ピンの下を滑動することができ、第2の回転方向ではピンに対して形状結合式に当接することができるからである。ロックばねはばね負荷されたロックエレメントとして形成されていてもよく、このロックエレメントはスナップ式にガイド軌道から持ち上がり、自由回転方向におけるピンの通過時に、ピンによって押し縮められることができ、ロック方向においてロック側を形成し、これによって伝動装置への平歯車の力伝達経路を閉鎖することができる。
【0017】
第1のフリーホイール装置の構成において既に述べたように、本発明の別の有利な構成では、第2のフリーホイール装置が同様にスリーブフリーホイールとして形成されており、該スリーブフリーホイールが平歯車軸に配置されていて、スリーブフリーホイールに、伝動装置と作用結合している伝動装置レバーが配置されている。つまり平歯車軸は、軸区分に対して逆向きの方向においても延長区分を有しており、この延長区分は伝動装置ハウジング内へと延びている。この軸区分には、既に述べたように、スリーブフリーホイールがプレス嵌めされていて、自体公知の作用形式で、第1の回転方向では自由回転を生ぜしめ、第2の回転方向ではスリーブフリーホイールの内側スリーブから外側スリーブへの回転運動を伝達し、ひいては伝動装置を駆動することができる。伝動装置は例えば変換伝動装置として構成されていることができ、この場合可能な1実施形態としては4リンク伝動装置を挙げることもできる。公知の実施形態の伝動装置では、平歯車は偏心的な伝動装置ピンを有していて、この伝動装置ピンに変換レバーが枢着的に配置されている。本発明の実施形態では伝動装置ピンの偏心的な配置形式は伝動装置レバーによって実現され、この伝動装置レバーは変換エレメントと枢着結合されている。伝動装置レバー自体はスリーブフリーホイールによって、平歯車軸の延長された側において該平歯車軸に配置されている。
【0018】
電気機械式の駆動装置のモジュラ構造形式を可能にするために、閉鎖装置が伝動装置ハウジング自体に配置されていると有利である。このように構成されていると、電気機械式の駆動装置は、ウインドワイパ装置用の駆動装置とテールゲートもしくはテールゲートウインドのロックを操作するための駆動装置とを形成し、この場合すべての構成部材を、予め組み立てることができるユニットとして構成することができる。そしてこのユニットは組立てに際してテールゲート内にモジュールとして組み込まれるだけでよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による電気機械式の駆動装置を断面して示す側面図であって、第1のフリーホイール装置が示されている図である。
【図2】図1に示された第1のフリーホイール装置を備えた電気機械式の駆動装置を示す平面図である。
【図3】本発明による電気機械式の駆動装置を断面して示す側面図であって、第1のフリーホイール装置の別の実施形態が示されている図である。
【図4】図3に示された第1のフリーホイール装置を備えた電気機械式の駆動装置を示す平面図である。
【図5】本発明による電気機械式の駆動装置を示す平面図であって、第2のフリーホイール装置が示されている図である。
【図6】図5に示された第2のフリーホイール装置の1実施形態を示す断面図である。
【図7】図5に示された第2のフリーホイール装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図8】電気機械式の駆動装置の平面図であって、第2のフリーホイール装置の第3の実施形態を示す図である。
【図9】第2のフリーホイール装置の第3の実施形態を断面して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に図面を参照しながら本発明の有利な実施形態を説明する。
【0021】
図1及び図2に示された電気機械式の駆動装置1は、伝動装置ハウジング3を有しており、この伝動装置ハウジング3内には平歯車4が回転可能に受容されており、この平歯車4は伝動装置5と共働する。この伝動装置5は同様に伝動装置ハウジング3内に受容されていて、被駆動軸19と結合されている。電動モータ2を用いて平歯車4は回転運動させられ、この場合平歯車4は回転運動を伝動装置5に伝達し、被駆動軸19への力伝達経路はワイパ装置を操作するために形成されている。部分的にしか示されていない伝動装置5は、変換伝動装置として形成されているので、平歯車4の回転運動は被駆動軸19の揺動運動に変えられる。
【0022】
平歯車4は平歯車軸6に被せ嵌められており、この平歯車軸6は略示された焼結ブシュ20を用いて、伝動装置ハウジング3内に回転可能に受容されている。伝動装置ハウジング3はアルミダイカスト又はプラスチック射出成形品であり、中空円筒形の一体成形部を有していて、この一体成形部には焼結ブシュ20が挿入されている。平歯車軸6はその軸区分7が、伝動装置ハウジング3の中空円筒形の一体成形部から突出していて、操作レバー9を受容するために働く。平歯車軸6は、平歯車4の回転運動と一緒に回転し、操作レバー9は平歯車軸6と回動不能に結合されている。操作レバー9の回転平面には、閉鎖装置8に取り付けられた閉鎖装置レバー10が進入している。単に略示されている閉鎖装置8は、伝動装置ハウジング3の背側に設けられており、閉鎖装置8は、詳しくは示されていないが、伝動装置ハウジング3に機械的に取り付けられている。操作レバー9は、扁平に形成されたばねエレメントとして形成されており、その結果操作レバー9は平歯車軸6の延在方向においてばね弾性的に屈曲することができる。閉鎖装置レバー10は、図1には詳しく示されていないがくさび形の横断面を有している。
【0023】
図2には、図1に示された駆動装置1が平面図で示されている。これによって操作レバー9を平歯車軸6の長手方向である視線方向から見ることができ、図2において矢印21は平歯車軸6の回転、ひいては操作レバー9の回転を示している。操作レバー9が閉鎖装置8の閉鎖装置レバー10に向かって回転すると、操作レバー9はこの回転方向に関連して、閉鎖装置レバー10に対して操作力を伝達する。操作レバー9が矢印21の方向で回転すると、操作レバー9はくさび形状の閉鎖装置レバー10に当接し、くさび形の閉鎖装置レバー10の平面側を押す。これによって閉鎖装置レバー10への力伝達を行うことができ、閉鎖装置8は操作される。しかしながら操作レバー9が矢印21とは逆方向に回転すると、操作レバー9はくさび形の閉鎖装置レバー10を越えて滑り、平歯車軸6は自由回転する。これによって操作レバー9と、くさび形横断面を有する閉鎖装置レバー10とは、第1のフリーホイール装置を形成し、この第1のフリーホイール装置によって、閉鎖装置8の操作は第1の回転方向(矢印21の回転方向)においてしか生ぜしめられず、これに対して平歯車軸6の逆向きの第2の回転方向においては自由回転が生ぜしめられる。
【0024】
平歯車軸6と閉鎖装置8との間における第1のフリーホイール装置の別の実施形態は、図3に駆動装置1の断面された側面図で示されている。この実施形態においても操作レバー9が設けられていて、この操作レバー9は平歯車軸6の回転と一緒に回転し、閉鎖装置レバー10に当接することができる。しかしながら操作レバー9はスリーブフリーホイール11を介して、平歯車軸6の軸区分7に取り付けられている。単に略示されているスリーブフリーホイール11は、互いに同心的に内外に配置された2つの円筒区分を有しており、この場合内側の円筒区分は軸区分7にプレス嵌めされていて、外側のスリーブ区分は操作レバー9と回動不能に結合されている。両スリーブ区分は第1の回転方向において互いに対してロックされており、逆向きの第2の回転方向では、内側のスリーブは外側のスリーブ内において自由回転することができる。これによって同様に第1のフリーホイール装置が得られ、その結果平歯車軸6は第1の回転方向においてしか操作レバー9を回転させず、逆向きの第2の回転方向では被駆動軸19を駆動する。図3においても同様に略示された焼結ブシュ20が示されており、この場合平歯車軸6の軸区分7、つまり伝動装置ハウジング3の中空円筒形の一体成形部から外に突出している軸区分7は、第1のフリーホイール装置の長さの選択に合わせられている。
【0025】
図4には、図3に示された実施形態による駆動装置1が平面図で示されており、この場合スリーブフリーホイール11は同様に、平歯車軸6の長手方向である視線方向から見た平面図で示されている。操作レバー9と伝動装置ハウジング3との間にはばねエレメント12が配置されており、これによって、被駆動軸19を駆動するための第2の回転方向における操作レバー9の不都合な戻り回転を阻止することができ、レバーの規定された位置を保証することができる。ばねエレメント12は、平歯車軸6が矢印21で示された回転方向とは逆向きに回転させられる場合に、使用される。
【0026】
図5には、電気機械式の駆動装置1が平面図で示されており、この場合視線方向はハウジング3の内部に達している。この図5から、ウォーム22を介して平歯車4を駆動する電動モータ2が明らかである。平歯車4にはランプ形の隆起部14が平面側に設けられており、この隆起部14は、平歯車4の平面側に環状に設けられたガイド軌道13内に位置している。ランプ形の隆起部14は乗上げ側と当接側とを有しており、この乗上げ側及び当接側はそれぞれ、ガイド軌道13の周方向における隆起部14の各画成部を形成している。ガイド軌道13にはピン15が進入しており、このピン15は伝動装置5と機械的に結合されている。平歯車4が矢印21の方向で駆動されると、ピン15は平面側においてランプ形の隆起部14の当接側に衝突する。これによって伝動装置5への力伝達経路が閉鎖され、この場合ピン15はガイド軌道13の周方向において一緒に運動する。これによって生ぜしめられる伝動装置5の操作に基づいて、被駆動軸19を揺動運動させることができ、ひいてはワイパ装置を操作することができる。これに対して平歯車が矢印21の方向とは逆方向に回転すると、ランプ形の隆起部14はピン15に対する当接側とは反対方向に移動し、その結果ピン15はランプ形の隆起部14に乗り上げ、隆起部14とピン15との形状結合(Formschluss)、ひいては隆起部14とピン15との間におけるトルクの伝達が阻止される。
【0027】
図6には、図5におけるVI−VI線に沿って断面した断面図で、第2のフリーホイール装置を形成する平歯車4が示されている。これによってランプ形の隆起部14もまた同様に断面されて示されており、この場合図6に示されているようにピン15は隆起部14の当接側に隣接しており、その結果隆起部14とピン15とは形状結合されている。ピン15はばね負荷されており、この場合図示の形態ではピン15はその背側において圧縮ばね23によって押圧されていて、これによりガイド軌道13に押し付けられている。
【0028】
図7には、第2のフリーホイール装置を形成する平歯車4の別の実施例が示されている。ロック装置を形成するためにリテーナスプリングであるロックばね16が、平歯車4におけるガイド軌道13とピン15との間に配置されている。平歯車4が第1の回転方向で回転すると、ロックばね16はピン15に当接し、その結果回転力はロックばね16を介してピン15に伝達されることができる。逆向きの回転方向ではロックばね16はピン15の下をスナップ式につまり一時的に撓んで通過し、その結果ピン15への回転運動の伝達は行われない。
【0029】
第2のフリーホイール装置の別の実施例は、図9との関連において図8に駆動装置1を用いて示されている。この第2のフリーホイール装置は、平歯車軸6と伝動装置レバー18との間に配置されたスリーブフリーホイール17の形で実現されている。伝動装置5と伝動装置レバー18との間における結合は、ピン15によって実現されており、この場合スリーブフリーホイール17は平歯車軸6の回転運動を、第2の回転方向においてしか伝達しない。平歯車4が矢印21の方向に駆動されると、スリーブフリーホイール17は自由回転をロックし、平歯車軸6の回転運動は伝動装置レバー18に伝達される。ピン15を用いた結合によって伝動装置は運動させられ、被駆動軸19は揺動運動させられる。
【0030】
本発明の図示の有利な実施例に制限されるものではなく、基本的に異なった形式の構成においても図示の解決策によって使用することができる種々様々な変化実施例が可能である。平歯車軸6もしくは軸区分7と閉鎖装置8との間における第1のフリーホイール装置は、既に述べたように、少なくとも2つの異なった形式で構成することができ、また平歯車4もしくは平歯車軸6と伝動装置5との間の第2のフリーホイール装置のためにも複数の実施例が示されている。基本的には、第1のフリーホイール装置の如何なる形式の構成をも、第2のフリーホイール装置の任意の構成形式と組み合わせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置(1)であって、伝動装置ハウジング(3)に受容されている平歯車(4)を回転駆動するための電動モータ(2)が設けられており、平歯車(4)が、ウインドワイパ装置のための被駆動軸(19)を駆動するために、伝動装置(5)と作用結合しており、平歯車(4)が一緒に回転する平歯車軸(6)を用いて伝動装置ハウジング(3)内に回転可能に受容されている形式のものにおいて、平歯車軸(6)の軸区分(7)が伝動装置ハウジング(3)から外に突出していて、該軸区分(7)に、テールゲート及び/又はテールゲートウインドを閉鎖するための閉鎖装置(8)を操作する手段が受容されていることを特徴とする、自動車のテールゲートにおいて使用される電気機械式の駆動装置。
【請求項2】
閉鎖装置(8)を操作する手段が、第1のフリーホイール装置を有しており、該第1のフリーホイール装置が平歯車軸(6)の回転時に第1の回転方向では閉鎖装置(8)を操作し、逆向きの第2の回転方向では平歯車軸(6)を自由回転させる、請求項1記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項3】
第1のフリーホイール装置が操作レバー(9)を有しており、該操作レバー(9)が、一緒に回転するように平歯車軸(6)の軸区分(7)に受容されていて、操作レバー(9)の回転方向においてくさび形に形成された、閉鎖装置(8)の閉鎖装置レバー(10)と作用結合している、請求項2記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項4】
操作レバー(9)が平歯車軸(6)の延在方向においてばね弾性的に形成されていて、その結果操作レバー(9)が閉鎖装置(8)を操作するために第1の回転方向ではくさび形状の閉鎖装置レバー(10)に形状結合式に当接し、かつ第2の回転方向ではばね弾性的にくさび形の閉鎖装置レバー(10)を越えて滑動して、平歯車軸(6)を自由回転させる、請求項3記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項5】
第1のフリーホイール装置がスリーブフリーホイール(11)として形成されていて、該スリーブフリーホイール(11)が平歯車軸(6)の軸区分(7)に配置され、かつ操作レバー(9)の軸区分に受容されている、請求項2記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項6】
第2の回転方向における操作レバー(9)の不都合な逆回転を阻止するために、操作レバー(9)と伝動装置ハウジング(3)との間にばねエレメント(12)が配置されている、請求項5記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項7】
平歯車(4)と伝動装置(5)との間に第2のフリーホイール装置が配置されており、該第2のフリーホイール装置が平歯車(4)の回転時に第1の回転方向では伝動装置(5)に対する運動伝達を中断し、逆向きの第2の回転方向では運動伝達を生ぜしめる、請求項1から6までのいずれか1項記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項8】
第2のフリーホイール装置が、平歯車(4)の平面側に設けられていてランプ形の隆起部(14)を備えたガイド溝(13)を有しており、該ガイド溝(13)内においてばね負荷されたピン(15)が案内されていて、該ピン(15)が伝動装置(5)と結合している、請求項7記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項9】
ランプ形の隆起部(14)が乗上げ側と当接側とによって画成されており、ピン(15)が平歯車(4)の回転時に第1の回転方向では乗上げ側を越えて滑動し、第2の回転方向における回転時には当接側と形状結合式に当接して、伝動装置への運動伝達を行う、請求項7又は8記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項10】
平歯車(4)の平面側に設けられたガイド溝(13)がロックばね(16)を備えて形成されており、ガイド溝(13)内において案内されるピン(15)が平歯車(4)の回転時に第1の回転方向ではロックばね(16)を越えて滑動し、逆向きの第2の回転方向における回転時にはロックばね(16)と形状結合式に当接して、伝動装置への運動伝達を行う、請求項7記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項11】
第2のフリーホイール装置がスリーブフリーホイール(17)として形成されており、該スリーブフリーホイール(17)が平歯車軸(6)に配置されていて、スリーブフリーホイール(17)に、伝動装置(5)と作用結合している伝動装置レバー(18)が配置されている、請求項7記載の電気機械式の駆動装置。
【請求項12】
閉鎖装置(8)が伝動装置ハウジング(3)に、有利には伝動装置ハウジング(3)からの軸区分(7)の突出側に、配置されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の電気機械式の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−510128(P2010−510128A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537577(P2009−537577)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060372
【国際公開番号】WO2008/061836
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】