説明

自動車の車輪へ加えられるトルクの制御装置及び制御方法

本発明は、自動車の車輪へ加えるトルクの設定値信号を発生することが可能な自動車の動力装置の制御装置に関する。この制御装置は、音響的な観点から有害な、動力装置の熱エンジンの回転数の変化を減少させることに適した、動力装置の中に組み込まれた熱エンジンの回転数の変化の制限を表す信号の発生手段(1)と、回転数の変化の制限を表す信号による、最適動作範囲の中における動力装置の動作点の決定手段(2)を含む。動力装置の中に組み込まれた熱エンジンの回転数の変化の制限を表す信号の発生手段は、入力として、自動車の特性を表すパラメータと、運転者の意志を表すパレメータを受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪へ加えるトルクの設定信号を発生することが可能な動力装置の制御装置と、それに関連する制御方法に関する。
【0002】
特に本発明は、任意のタイプの自動車に適合させることができ、自動車の運転者及び乗客が感じる音響を改善するために、動力装置のエンジン回転数の変化を制御することを可能にする、動力装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、充分に満足な運転の快適性を得るために、自動車の動力装置から発生される騒音をできるだけ減少させることが探求されている。
【0004】
このため、本出願人は、FR−A−2 827 339に記載の、自動車の動力装置の動作点の制御装置を開発した。この装置によって実行される制御は、自動車の車輪へ加えられるトルクの制御である。自動車の車輪へ加えられるトルクの値は、自動車の車輪のレベルで直接計算される。この制御装置には、運転者が聞く可能性がある動力装置の音響の変化を減少させることが可能な、動力装置の回転数の変化の制限を表す信号の発生装置を特に含む、IVCと呼ばれる、運転者の意志の解釈モジュールが設けられる。
【0005】
上記の信号は、自動車の車輪へ加えるトルクを制御するために、動力装置の最適化ブロックへ伝達される。この最適化ブロックは、運転の快適性の制約に基づいて、動力装置の最適動作領域における動作点の決定を可能にする。動力装置の騒音の変化を減少させることを可能にする動力装置の回転数の制限を表す信号の決定は、運転者の活発度と自動車の速度に応じて実行される。
【0006】
車室内の人が感じる音響を改善することを可能にするこのような装置には、車輪へ加えるトルクの要求の変化を正確に考慮に入れることを可能にしないという問題があり、信号は主に自動車の速度によって決定される。
【特許文献1】FR−A−2 827 339
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、上記の問題を解消し、トルクの要求の変化、従って、間接的に動力装置の回転数を特に正確に考慮に入れることが可能な、動力装置の適切な制限の決定を可能にする、動力装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、自動車の車輪へ加えるトルクの設定値信号を発生することが可能な自動車の動力装置の制御装置は、音響的な観点から有害な、動力装置の熱エンジンの回転数の変化を減少させることに適した、上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号の発生手段と、上記回転数の変化の制限を表す信号に応じた、最適動作範囲の中における上記動力装置の動作点の決定手段を含む。上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号の上記発生手段は、入力として、自動車の特性を表すパラメータと、運転者の意志を表すパレメータを受ける。
【0009】
上記車輪へ加えるトルクの設定値信号は、上記自動車の上記車輪のレベルで直接計算される。
【0010】
このような制御装置によって、特にアクセルペダルを介して送られる運転者の意志に直接適合された運転の快適性をもたらす、動力装置の動作範囲を決定するための装置を供給することが可能になる。したがって、この制御装置は、自動車の速度のみならず、運転者の意志にも依存する音響をもたらすことを可能にする。換言すれば、この制御装置は、動力装置の熱エンジンの回転数の制限を発生するために、自動車の加速度または減速度に加えて、アクセルペダルの位置の変化を考慮に入れることを可能にする。
【0011】
上記自動車の特性を表すパラメータは、上記運転者の推定または計測された活発度Acondを表すパラメータと、上記自動車の速度Vvehを表すパラメータを含むことができる。
【0012】
上記運転者の意志を表すパレメータは、アクセルペダルの踏み込み量Pedaccを表すパラメータと、ブレーキペダルの踏み込み量Pedfreinを表すパラメータを含むことが望ましい。上記運転者の意志を表すパレメータは、さらに、上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値Pedacc_grdを表すパラメータを含むと有利である。
【0013】
1実施の形態においては、上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値Pedacc_grdを表す上記パラメータは、上記パラメータが上記発生手段へ供給される前に、フィルター手段によってフィルターされることと、タイマー手段によって遅延されることとの少なくとも一方を施される。
【0014】
上記発生手段は、2つの上記動作制限値(lim_var_rpm_pos、lim_var_rpm_neg)の信号を有利に発生し、上記動作制限値(lim_var_rpm_pos、lim_var_rpm_neg)は、次式:
lim_var_rpm_pos=F1(Acond、Vveh)
lim_var_rpm_neg=F2(Acond、Vveh)
によって定義され、ここに、変動関数F1及びF2は、上記アクセルペダルの踏み込み量と上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値に依存し、上記変動関数は内挿表によって決定され、上記内挿表のパラメータは、上記自動車の開発時に明確に定められる。
【0015】
また本発明は、音響的な観点から有害な、動力装置の熱エンジンの回転数の変化を減少させることに適した、上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号を発生し、上記動力装置の動作点は、最適動作範囲の中において、上記回転数の変化の制限を表す信号に従って決定される、自動車の車輪へ加えるトルクの設定値信号を発生することが可能な自動車の動力装置の制御方法に関する。上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号は、自動車の特性を表す入力パラメータと運転者の意志を表す入力パレメータに応じて決定される。
【0016】
上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、アクセルペダルの踏み込み量Pedaccに応じて有利に発生される。上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、上記自動車のブレーキペダルの踏み込み量Pedfreinと、上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値Pedacc_grdとの少なくとも一方に応じて発生させることもできる。
【0017】
1実施の形態においては、上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、以下のステップ:
− 上記アクセルペダルの踏み込み量を、上記アクセルペダルのハードポイントの位置を越えた上記アクセルペダルの踏み込み量に相当する、所定の第1閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量を、上記第1閾値よりも小さいが、顕著な上記アクセルペダルの踏み込み量に相当する、所定の第2閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量を、上記第2閾値よりも小さい上記アクセルペダルの踏み込み量に相当する、所定の第3閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値を、上記アクセルペダルの急速な踏み込みに相当する、所定の第4閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値を、上記アクセルペダルの急速な開放に相当する、所定の第5閾値と比較するステップ、
の少なくとも1つを含むステップによって決定され、各上記ステップは、上記入力パラメータに応じて、動作制限値の間の上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を決定、または次の上記ステップへの移行を認可する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明及びその利点は、非限定的で、添付図面によって例示された、本発明の実施の形態の説明を検討することによって明らかとなるであろう。これらの図面において:
−図1は、本発明による制御装置のブロック図であり;
−図2は、図1の制御装置の信号の発生手段のブロック図であり;
−図3は、図2の信号の発生手段の様々な動作段階の流れ図である。
【0019】
図1は、運転者の意志解釈手段1(請求項1における、熱エンジンの回転数の変化の制限を表す信号の発生手段(1)に該当する。)と、動力装置3の最適動作領域における動作点の決定手段2と、決定された動作点を動力装置へ適用するための動作点適用手段4を含む、制御装置を示す。
【0020】
運転者の意志解釈手段1は、それぞれ接続8、9、10を介して、自動車に装備されたセンサ(図示しない)によって測定された量を表す信号を発生することが可能な、3つの入力モジュール5、6、7へ接続される。
【0021】
入力モジュール5は、自動車の特性、特にユーザに引き渡される自動車の機能を特徴付けるように、メーカによってプログラムされた特性を供給する。入力モジュール6は、マン/マシーン インタフェース技術に従って、人間である運転者と自動車のその他の部分との間にインタフェースを設けることによって、データを発生することが可能である。入力モジュール7は、自動車の環境に関するデータを発生することが可能である。この入力モジュール7は、例えば、自動車の速度、道路の状態、または天候条件のような、自動車の状態及び環境の中における自動車の状況を、考慮に入れることを可能にする。これらの3つの入力モジュールによって伝達される入力データのパラメータの値及び状態変数は、制御装置の各構成要素に共通のメモリの中へ記録することができる(図示しない)。
【0022】
運転者の意志解釈手段1は、静的トルクCsと呼ばれる静的成分からなる、車輪へ加えられるトルクの設定点を発生する、静的トルク設定点発生機11と、動的トルクCdと呼ばれる動的成分からなる、車輪へ加えられるトルクの設定点を発生する、動的トルク設定点発生機12を含む。これらのトルク設定点発生機は、例えば特許出願FR−A−2 827 339に記載されたような発生機であることができる。
【0023】
また、運転者の意志解釈手段1は、動力装置の熱エンジンの回転数の変化の制限を表す信号を発生する、エンジン回転数変化制限発生手段13を含む。エンジン回転数変化制限発生手段13は、増加方向における回転数変化を制限する正の回転数変化制限値lim_var_rpm_posと呼ばれる制限設定点信号と、減少方向における回転数変化を制限する負の回転数変化制限値lim_var_rpm_negと呼ばれる制限設定点信号との、2つの動作制限値の信号を発生することが可能である。回転数変化制限は、定められた時間間隔の間のエンジン回転数の変化を規定する。
【0024】
図2に示すように、エンジン回転数変化制限発生手段13は、入力として、運転者の意志を表すデータと、自動車の特性を表すデータを受ける。
【0025】
接続14、15a、16及び17によってそれぞれ伝達される運転者の意志を表す入力データは:
− センサ(図示しない)を介して得られる、自動車のアクセルペダルの踏み込み量Pedacc;
− 先行する踏み込み量に相対的な現在のアクセルペダルの踏み込み量に基づく、アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値であって、該時間微分値は、アクセルペダルの相次ぐ踏み込み量の微分値を計算する特有の演算装置によって計算される、アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値Pedacc_grd;
− 従来の段付きの自動変速機において、例えば追い越し時に必要となることがある、瞬間的な加速の増加を得るために、低ギヤ比へのシフトダウンの強制を特に可能にする、アクセルペダルのハードポイントとも呼ばれる、物理的なストッパーの位置に相当するアクセルペダルの踏み込み量Kick;
− センサ(図示しない)を介して得られる、自動車のブレーキペダルの踏み込み量Pedfrein;
を含む。
【0026】
アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値を表すデータは、偶発的な寄生ノイズを除去するために、接続15bを介してエンジン回転数変化制限発生手段13へ伝達される前に、フィルターのようなフィルター手段20によって有利にフィルターすることができる。与えられた時間間隔の間のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値の最大値をエンジン回転数変化制限発生手段13へ伝達するために、この最大値を記憶させることが可能な、タイマー手段(図示しない)を設けることも構想可能である。
【0027】
接続18、19を介してそれぞれ伝達される自動車の特性を表すデータは:
− 運転者の活発度を記録するメモリから読み取り可能な、推定または計測された運転者の活発度Acond(パーセント);
− メモリまたは自動車の速度を示す信号を表す状態変数から読み取りまたは解釈可能な、自動車の速度Vveh(km/h);
を含む。
【0028】
入力として受けたデータから、エンジン回転数変化制限発生手段13は、増加方向における回転数変化制限値lim_var_rpm_posの制限設定点信号と、減少方向における回転数変化制限値lim_var_rpm_negの制限設定点信号とを、それぞれ接続21、22を介して、動力装置の動作点の決定手段2へ伝達することによって、自動車の車室内の音響を改善するための、エンジン回転数の変化の制限を決定することを可能にする。
【0029】
図3に示す流れ図は、接続14〜19(図2)を介して伝達されるデータに対して実行される様々な解析及び比較テストを示す。これらの解析及び比較テストは、例えば比較器のような様々な比較手段によって、以下の過程に従って実行される。
【0030】
第1ステップ23は、アクセルペダルが第1閾値、ここではハードポイントの位置に相当するアクセルペダルの踏み込み量Kickを越えて踏み込まれたか否かを決定する。アクセルペダルの踏み込み量Pedaccが、ハードポイントの位置に相当するアクセルペダルの踏み込み量kickよりも大であれば、エンジン回転数変化制限発生手段13は、第1モード24を選択する。第1モード24においては、回転数変化制限値lim_var_rpm_posは、較正可能値Ni_grd_maxをとり、回転数変化制限値lim_var_rpm_negは、較正可能値Ni_grd_minをとる。ここに、Niは、自動車の車室内の人のために改善された音響を有しながら、動力装置3(図1)の中に組み込まれた熱エンジンの、動力装置3の最大性能を達成することを可能にする動作点の制限を得るようにあらかじめ定められた、回転数設定点を表す。
【0031】
アクセルペダルの踏み込み量Pedaccが、ハードポイントの位置に相当するアクセルペダルの踏み込み量kickよりも小であれば、エンジン回転数変化制限発生手段13は、ステップ25へ移行する。ステップ25においては、アクセルペダルの踏み込み量Pedaccが、第2閾値seuil_PedaccFよりも大きいか否かを確かめる。第2閾値seuil_PedaccFは、100%に近いアクセルペダルの踏み込み量に相当し、例えば95%とすることができる。もし、自動車のアクセルペダルの踏み込み量が、所定のアクセルペダルの踏み込み量の第2閾値よりも厳密に大であれば(Pedacc>seuil_PedaccF)、エンジン回転数変化制限発生手段13は、第2モード26へ移行する。第2モード26においては、回転数変化制限値lim_var_rpm_posは、較正可能なマップp_PedaccFから計算され、回転数変化制限値lim_var_rpm_negは、較正可能なマップn_PedaccFから計算される。これらの2つのマップは、それぞれ接続18と接続19(図2)を介して伝達される、運転者の活発度Acondと自動車の速度Vvehに依存し、運転者の活発度Acondと自動車の速度Vvehは、運転者の特性を記録するメモリから、及び自動車の環境を記述する信号を表すメモリまたは状態変数から、それぞれ読み取りまたは解釈可能である。
【0032】
もし、自動車のアクセルペダルの踏み込み量が、第2閾値seuil_PedaccFに相当する踏み込み量よりも小であれば、エンジン回転数変化制限発生手段13は、ステップ27へ移行する。ステップ27においては、アクセルペダルの踏み込み量Pedaccが、第3閾値seuil_PedaccLよりも小さいか否かを確かめる。第3閾値seuil_PedaccLは、0%に近いアクセルペダルの踏み込み量に相当し、例えば10%とすることができる。もし、自動車のアクセルペダルの踏み込み量が、所定のアクセルペダルの踏み込み量の第3閾値よりも厳密に小であれば(Pedacc<seuil_PedaccL)、エンジン回転数変化制限発生手段13は、第3モード28へ移行する。第3モード28においては、回転数変化制限値lim_var_rpm_posは、較正可能なマップp_PedaccLから計算され、回転数変化制限値lim_var_rpm_negは、較正可能なマップn_PedaccLから計算される。これらの2つのマップは、運転者の活発度Acondと自動車の速度Vvehに依存する。
【0033】
もし、アクセルペダルの踏み込み量が、第3閾値seuil_PedaccLよりも大であれば、エンジン回転数変化制限発生手段13は、ステップ29へ移行する。ステップ29においては、フィルターされたアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値Pedacc_grd_filが、第4閾値seuil_PedaccFDよりも大であるか否かを確かめる。第4閾値seuil_PedaccFDは、アクセルペダルの踏み込み量が第2閾値seuil_PedaccFに達することのない、アクセルペダルの急速な踏み込みに相当する。もし、自動車のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値が、所定のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値の第4閾値よりも厳密に大であれば(Pedacc_grd_fil>seuil_PedaccFD)、エンジン回転数変化制限発生手段13は、第4モード30へ移行する。第4モード30においては、回転数変化制限値lim_var_rpm_posは、較正可能なマップp_PedaccFDから計算され、回転数変化制限値lim_var_rpm_negは、較正可能なマップn_PedaccFDから計算される。これらの2つのマップは、運転者の活発度Acondと自動車の速度Vvehに依存する。
【0034】
もし、アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値が、第4閾値seuil_PedaccFDよりも小であれば、エンジン回転数変化制限発生手段13は、ステップ31へ移行する。ステップ31においては、フィルターされたアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値Pedacc_grd_filが、第5閾値seuil_PedaccLDよりも小であるか否かを確かめる。第5閾値seuil_PedaccLDは、アクセルペダルの踏み込み量が第2閾値seuil_PedaccFに達しない場合の、アクセルペダルの急速な開放に相当する。もし、自動車のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値が、所定のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値の第5閾値よりも厳密に小であれば(Pedacc_grd_fil<seuil_PedaccLD)、エンジン回転数変化制限発生手段13は、第5モード32へ移行する。第5モード32においては、回転数変化制限値lim_var_rpm_posは、較正可能なマップp_PedaccLDから計算され、回転数変化制限値lim_var_rpm_negは、較正可能なマップn_PedaccLDから計算される。これらの2つのマップは、運転者の活発度Acondと自動車の速度Vvehに依存する。
【0035】
もし、自動車のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値が、所定のアクセルペダルの踏み込み量の時間微分値の第5閾値よりも大であれば(Pedacc_grd_fil>seuil_PedaccLD)、エンジン回転数変化制限発生手段13は、第6モード33へ移行する。第6モード33においては、回転数変化制限値lim_var_rpm_posは、較正可能なマップp_PedaccSから計算され、回転数変化制限値lim_var_rpm_negは、較正可能なマップn_PedaccSから計算される。これらの2つのマップは、運転者の活発度Acondと自動車の速度Vvehに依存する。
【0036】
エンジン回転数変化制限発生手段13は、このようにして、増加方向における熱エンジンの回転数変化制限値lim_var_rpm_posの制限設定点信号と、減少方向における回転数変化制限値lim_var_rpm_negの制限設定点信号とを、動作点の決定手段2へ伝達することによって、自動車の車室内の音響を改善するために、動作点の決定手段2へ熱エンジンの回転数の変化の制限値を伝達することを可能にする。
【0037】
同様な仕方で、接続17(図2)を介してエンジン回転数変化制限発生手段13へ伝達される情報から、ブレーキペダルの踏み込み量Pedfreinを使用することも、さらに、運転者がブレーキペダルを踏み込んだときに回転数の変化の制限を停止することも可能である。
【0038】
図1に示すように、動作点の決定手段2は、接続34を介して静的トルク設定点発生機11から静的トルクCsの設定点を、また接続35を介して動的トルク設定点発生機12から動的トルクCdの設定点を受ける。
【0039】
このように、動力装置3の動作点の決定手段2は、4つの制御信号、すなわち、lim_var_rpm_pos、lim_var_rpm_neg、Cs、Cdを受ける。動作点の決定手段2は、このようにして、その構成モジュール36、構成モジュール37及び構成モジュール38を、独立にパラメータ化することを可能にする。モジュール36は車輪Cへのトルク信号を供給し、モジュール37はバッテリーの出力信号Pbatを供給し、モジュール38は、エンジン回転数制御信号Nを供給する。これらの信号は、それぞれ接続39、接続40、接続41を介して、動力装置3の動作点を作成する動作点適用手段40へ伝達される。動作点適用手段40は、本出願人の名における特許出願FR−A−2 827 339と同様な仕方で、接続42を介して動力装置3の制御装置を制御し、接続44を介して駆動輪43を制御することを可能にする。
【0040】
本発明は、このように、改善された運転の快適性を得るために、自動車の状態のみならず、特にアクセルペダルを介して運転者の意志にも直接依存する、動力装置の中に組み込まれた熱エンジンの回転数制限設定値を発生することを可能にし、動力装置の動作点の制御、すなわち車輪へ加えられるトルクの制御を実行することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による制御装置のブロック図である。
【図2】図1の制御装置の信号の発生手段のブロック図である。
【図3】図2の信号の発生手段の様々な動作段階の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響的な観点から有害な、動力装置の熱エンジンの回転数の変化を減少させることに適した、上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号の発生手段(1)と、
上記回転数の変化の制限を表す信号に応じた、最適動作範囲の中における上記動力装置の動作点の決定手段(2)を含み、
上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号の上記発生手段(1)は、入力として、自動車の特性を表すパラメータと、運転者の意志を表すパレメータを受け、
上記運転者の意志を表すパレメータは、アクセルペダルの踏み込み量(Pedacc)を表すパラメータと、ブレーキペダルの踏み込み量(Pedfrein)を表すパラメータと、上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値(Pedacc_grd)を表すパラメータとを含む、
自動車の車輪へ加えるトルクの設定値信号を発生することが可能な自動車の動力装置の制御装置において、
上記発生手段(1)は、変数であり、所定の閾値に相対的な、上記アクセルペダルの踏み込み量と上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値に依存する、上記動力装置の2つの動作制限値(lim_var_rpm_pos、lim_var_rpm_neg)を発生する、
ことを特徴とする、自動車の動力装置の制御装置。
【請求項2】
上記自動車の特性を表すパラメータは、上記運転者の推定または計測された活発度(Acond)を表すパラメータと、上記自動車の速度(Vveh)を表すパラメータを含むことを特徴とする、請求項1に記載の自動車の動力装置の制御装置。
【請求項3】
上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値(Pedacc_grd)を表す上記パラメータは、上記パラメータが上記発生手段(1)へ供給される前に、フィルター手段によってフィルターされることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車の動力装置の制御装置。
【請求項4】
上記動作制限値(lim_var_rpm_pos、lim_var_rpm_neg)は、次式:
lim_var_rpm_pos=F1(Acond、Vveh)
lim_var_rpm_neg=F2(Acond、Vveh)
によって定義され、ここに、変動関数F1及びF2は、上記アクセルペダルの踏み込み量と上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値に依存し、上記変動関数は、内挿表によって決定され、上記内挿表のパラメータは、自動車の開発時に明確に定められることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車の動力装置の制御装置。
【請求項5】
音響的な観点から有害な、動力装置の熱エンジンの回転数の変化を減少させることに適した、上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号を発生し、
上記動力装置の動作点は、最適動作範囲の中において、上記回転数の変化の制限を表す信号に従って決定され、
上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を表す信号は、自動車の特性を表す入力パラメータと運転者の意志を表す入力パレメータに応じて決定される、
自動車の車輪へ加えるトルクの設定値信号を発生することが可能な自動車の動力装置の制御方法において、
上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、以下のステップ:
− アクセルペダルの踏み込み量を、上記アクセルペダルのハードポイントの位置を越えた上記アクセルペダルの踏み込み量に相当する、所定の第1閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量を、上記第1閾値よりも小さい上記アクセルペダルの踏み込み量に相当する、所定の第2閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量を、上記第2閾値よりも小さい上記アクセルペダルの踏み込み量に相当する、所定の第3閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値を、上記アクセルペダルの急速な踏み込みに相当する、所定の第4閾値と比較するステップ、
− 上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値を、上記アクセルペダルの急速な開放に相当する、所定の第5閾値と比較するステップ、
の少なくとも1つを含むステップによって決定され、各上記ステップは、上記入力パラメータに応じて、動作制限値の間の上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限を決定、または次の上記ステップへの移行を認可することを特徴とする、自動車の動力方法の制御方法。
【請求項6】
上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、アクセルペダルの踏み込み量(Pedacc)に応じて発生されることを特徴とする、請求項5に記載の自動車の動力装置の制御方法。
【請求項7】
上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、ブレーキペダルの踏み込み量(Pedfrein)に応じて発生されることを特徴とする、請求項5または6に記載の自動車の動力装置の制御方法。
【請求項8】
上記動力装置の中に組み込まれた上記熱エンジンの上記回転数の変化の制限は、上記アクセルペダルの踏み込み量の時間微分値(Pedacc_grd)に応じて発生されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1つに記載の自動車の動力装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−501090(P2008−501090A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514051(P2007−514051)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050388
【国際公開番号】WO2005/118327
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】