説明

自動車懸架用コイルばねの製造方法及び自動車懸架用コイルばね

【課題】 耐へたり性、耐久性、耐腐食疲労性に優れた自動車懸架用コイルばねを製造するための技術を提供する。
【解決手段】 本発明の自動車懸架用コイルばねの製造方法は、成形後のコイルに対して熱処理を行い、熱処理後のコイルに対して温間ショットピーニングを行い、前記温間ショットピーニング後のコイルに対してホットセッチングを行う。この自動車懸架用コイルばねの製造方法では、質量比にしてC:0.35〜0.55%、Si:1.60〜3.00%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.10〜1.50%を含有するとともに、Ni:0.40〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%、V:0.05〜0.50%のうちいずれか1種類以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を素材としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車懸架用コイルばねの製造方法と、自動車懸架用コイルばねに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、従来の自動車懸架用コイルばねの製造方法を開示している。この製造方法では、まず、熱間で線材をコイル状に成形し、成形後のコイルに熱処理(焼入れ焼戻し)を行う。次に、熱処理後のコイルに対してホットセッチングを行い、次いで温間ショットピーニングを行い、さらにその後にセッチング、塗装を行う。この製造方法では、ホットセッチングによってコイルの耐へたり性が向上され、温間ショットピーニングによって耐久性が向上される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本ばね学会編 「ばね」第4版 508ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車懸架用コイルばねには高い耐へたり性、耐久性が求められる。非特許文献1の製造方法では、一応の耐へたり性及び耐久性の向上は図られているものの、より高い耐へたり性、耐久性が求められている。
【0005】
本発明は、従来技術よりも高い耐へたり性、耐久性を有する自動車懸架用コイルばねを製造するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したように、従来の自動車懸架用コイルばねの製造方法では、熱処理後にホットセッチングを行い、その後に温間ショットピーニングが行われていた。本発明者による鋭意検討の結果、無方向性の塑性加工である温間ショットピーニングをホットセッチングの後に行うと、ホットセッチングによってコイルに付与される方向性のある圧縮残留応力が、温間ショットピーニングによって打ち消されることが判明した。そして、製造工程を種々に入れ替えて実験を行った結果、成形後のコイルに対して、温間ショットピーニングを行い、その後ホットセッチングを行うことで、温間ショットピーニングによってコイル表面に付与される圧縮残留応力と、ホットセッチングによってコイルに付与される方向性のある圧縮残留応力とが、共に有効に残留することが判明した。
【0007】
本発明の自動車懸架用コイルばねの製造方法は、上記の知見に基づいて創作されたものである。この製造方法では、素材をコイル状に成形し、成形後のコイルに対して熱処理を行い、熱処理後のコイルに対して温間ショットピーニングを行い、温間ショットピーニング後のコイルに対してホットセッチングを行う。この製造方法によれば、耐へたり性、耐久性に優れた自動車懸架用コイルばねを得ることができる。
【0008】
この自動車懸架用コイルばねの製造方法では、質量比にしてC:0.35〜0.55%、Si:1.60〜3.00%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.10〜1.50%を含有するとともに、Ni:0.40〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%、V:0.05〜0.50%のうちいずれか1種類以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を素材として用いることができる。素材として用いる鋼に含有される各元素の成分範囲を上記のように定めることにより、さらに耐へたり性、耐久性、耐腐食疲労性を向上することができる。
【0009】
また、本発明は、耐久性、耐へたり性に優れた新規な自動車懸架用コイルばねを提供する。すなわち、本発明の自動車懸架用コイルばねは、ばね素線の少なくとも一部に圧縮残留応力が付与されている。そして、その圧縮残留応力が付与された位置における、素線の軸線方向から135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比が、(135°方向の圧縮残留応力+315°方向の圧縮残留応力)/(45°方向の圧縮残留応力+225°方向の圧縮残留応力)によって求められる場合において、素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比が、素線表面における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比よりも大きくされている。
【0010】
一般的に、自動車懸架用コイルばねを使用する場合、コイルばねの素線にかかる引張応力の方向は、素線の軸線方向から135°,315°の対角線方向であることが知られている。このため、コイルばねの素線に135°,315°の対角線方向に高い圧縮残留応力を有していると、この圧縮残留応力により引張応力が効果的に打ち消され、コイルばねの耐久性、耐へたり性が高くなる。特に、135°,315°の対角線方向の圧縮残留応力が、直交する45°,225°の対角線方向の圧縮残留応力より大きい場合は、コイルばねの耐久性、耐へたり性を高めるための圧縮残留応力が効果的に付与されていることになる。さらに、自動車懸架用コイルばねでは、コイルばねの使用環境に応じて素線表面が腐食等によって削られてゆく。このため、自動車懸架用コイルばねの耐久性、耐へたり性を向上するためには、コイルばねの素線表面だけではなく、素線表面から所定の深さの位置で圧縮残留応力が付与されていることが極めて重要となる。具体的には、自動車懸架用コイルばねが、素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置において上記の135°,315°の対角線方向に高い圧縮残留応力を有していれば、コイルばねの使用環境に応じてコイルばねの素線表面が腐食したり、削られたりした場合であっても、コイルばねの圧縮残留応力が有効に残留することとなる。その結果、圧縮残留応力が素線表面にのみ備わっている場合に比べてコイルばねの耐久性、耐へたり性が高くなる。
【0011】
本発明の自動車懸架用コイルばねは、圧縮残留応力が付与された位置において、素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比が、素線表面における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比よりも大きい。すなわち、素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置において、耐久性、耐へたり性を高めるために有効な圧縮残留応力が効果的に付与されている。そのため、本発明の自動車懸架用コイルばねは、高い耐へたり性、耐久性を発揮することができる。
【0012】
この自動車懸架用コイルばねは、素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置における、135°方向の圧縮残留応力と、315°方向の圧縮残留応力とが、800〜1200MPaであることが好ましい。この自動車懸架用コイルばねは、素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置において、135°と315°方向に、800〜1200MPaの範囲の高い圧縮残留応力を有する。従って、本発明の自動車懸架用コイルばねは、高い耐へたり性、耐久性を発揮することができる。
【0013】
この自動車懸架用コイルばねは、ばね硬さがHRC50〜56であることが好ましい。この自動車懸架用コイルばねは、自動車懸架用コイルばねに要求される基準の硬さを備えている。従って、本発明の自動車懸架用コイルばねは、高い耐へたり性、耐久性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動車懸架用コイルばねの素材に含有される各物質の質量比を示す表。
【図2】本発明例1、比較例1の自動車懸架用コイルばねの諸元を示す表。
【図3】本発明例2、比較例2の自動車懸架用コイルばねの諸元を示す表。
【図4】締め付けへたり試験結果を示す表。
【図5】耐久試験結果を示す表。
【図6】腐食疲労試験結果を示す表。
【図7】コイルばねの表面からの距離と圧縮残留応力の関係を示すグラフ。
【図8】コイルばねの表面における各測定角の圧縮残留応力を示すグラフ。
【図9】深さ0.1mmにおける各測定角の圧縮残留応力を示すグラフ。
【図10】深さ0.2mmにおける各測定角の圧縮残留応力を示すグラフ。
【図11】深さ0.3mmにおける各測定角の圧縮残留応力を示すグラフ。
【図12】(135°の圧縮残留応力+315°の圧縮残留応力)/(45°の圧縮残留応力+225°の圧縮残留応力)の計算結果を示す表。
【図13】コイルばねの表面からの距離毎の、各測定角の圧縮残留応力と、(135°の圧縮残留応力+315°の圧縮残留応力)/(45°の圧縮残留応力+225°の圧縮残留応力)により求められる比とを示す表。
【図14】X線応力測定法によるコイルばねの圧縮残留応力の測定方法を示す側面図。
【図15】X線応力測定法によるコイルばねの圧縮残留応力の測定方法を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を具現化した一実施形態に係る自動車懸架用コイルばねの製造方法について説明する。本実施形態の製造方法では、コイル成形、熱処理、温間ショットピーニング、ホットセッチング、冷間ショットピーニング、冷間セッチング、の各工程をこの順序で行うことによって自動車懸架用コイルばねを製造する。以下、本明細書では、自動車懸架用コイルばねを単にコイルばねと呼ぶ場合がある。
【0016】
コイル成形工程では、線材をコイル状に成形する。線材の成形は、線材の径やコイルばねの寸法等に応じて、熱間(線材の再結晶温度以上の温度)で行ってもよいし、温間(線材の再結晶温度未満の温度)又は冷間(室温)で行ってもよい。熱間で成形する場合には、例えば、800〜1000℃で行うことができる。温間で成形する場合には、例えば、50〜400℃で行うことができる。また、コイル状に成形する方法には、従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、コイリングマシンを用いて成形してもよいし、芯金に巻き付ける方法によって成形してもよい。
【0017】
線材として用いる材料には、例えば、質量比にしてC:0.35〜0.55%、Si:1.60〜3.00%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.10〜1.50%を含有するとともに、Ni:0.40〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%、V:0.05〜0.50%のうちいずれか1種類以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材を好適に用いることができる。このような鋼材を用いることで、耐へたり性、耐久性、耐腐食疲労性を向上することができる。なお、各元素についての具体的な上限及び下限を設定した理由は次の通りである。
【0018】
C:0.35〜0.55%。Cは鋼線の強度を高めるために必須の元素であるが、0.35%未満では十分な強度が得られず、逆に0.55%を越えると成形性及び靭性が低下するためである。
【0019】
Si:1.60〜3.00%。Siはばねの強度、硬度と耐へたり性を確保するために必要な元素であり、少ない場合は必要な強度、耐へたり性が不足するため、1.60%を下限とした。また多量に添加しすぎると、材料を硬化させるだけでなく、脆化するため、3.00%を上限とした。
【0020】
Mn:0.20〜1.50%。Mnは鋼の焼入性を向上させ、鋼中のSを固定してその害を阻止する。しかし、0.20%未満ではその効果がない。逆に1.50%を越えると靭性の低下を招き、成形性を損ねる恐れがある。
【0021】
Cr:0.10〜1.50%。Crは焼入れ性を向上させるとともに焼戻し軟化抵抗を付与する。0.10%未満ではその効果は十分ではなく、1.50%を超えると炭化物の固溶を抑制し、強度の低下を招くため、やはり効果的ではない。
【0022】
Ni:0.40〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%、V:0.05〜0.50%のうちいずれか1種類以上を含有すること。Ni、Mo、Vはいずれも焼戻し時の軟化抵抗を増大させる元素である。このため、これらの元素を1種類以上含有することで、焼戻し時の軟化抵抗を増大させることができる。なお、上記の効果を得るための必要量は各元素により異なる。すなわち、Niは0.40〜3.00%であり、Moは0.05〜0.50%であり、Vは0.05〜0.50%である。各元素が下限値より少ないと、必要な軟化抵抗を得ることができない。一方、Ni:3.00%、Mo:0.50%、V:0.50%は、これらの元素による軟化抵抗増大効果が飽和する量であり、これ以上含有させることは無駄である他、過度の強度上昇により成形性が低下するおそれがある。
【0023】
なお、コイルの素材として用いる線材には、上記の鋼材の他、従来からコイルばねの素材として用いられてきた種々の材料(例えば、ばね鋼等)を用いることができる。
【0024】
熱処理工程では、上記の成形工程によってコイル状に成形されたコイルに対して熱処理を行う。この工程で行われる熱処理は、上記の成形工程を熱間で行ったか、温間又は冷間で行ったかによって異なる。すなわち、上記の成形工程を熱間で行った場合には、焼入れと焼戻しを行う。焼入れ焼戻しにより、コイルには強度と靭性が付与される。焼入れの温度条件は、800〜1000℃とすることができる。焼戻しの温度条件は、300〜500℃とすることができる。一方、上記の成形工程を温間又は冷間で行った場合には、低温焼鈍を行う。低温焼鈍により、コイル内部及び表面の有害な残留応力(引張りの残留応力)を除去することができる。低温焼鈍の条件は、300〜500℃で20〜60分とすることができる。コイルの焼入れ焼戻し、並びに、コイルの低温焼鈍の方法は、従来知られているいずれの方法によっても行うことができる。
【0025】
温間ショットピーニング工程では、上記の熱処理が行われたコイルを温間でショットピーニングする。温間ショットピーニングにより、コイル表面に大きな圧縮残留応力が付与され、コイルの耐久性、耐腐食疲労性が向上する。ここで、ショットピーニングを行う温度は、線材の再結晶温度以下で、かつ、室温より高い温度となる温度範囲内で適宜設定することができる。例えば、コイルの温度を150〜400℃とすることができ、より好ましくは250〜350℃とすることができる。このような温度範囲でショットピーニングを行うことで、コイル表面により大きな圧縮残留応力を付与することができる。また、ショットピーニングには、その直径が0.6〜1.2mmの鋼球(ショット)を用いることができる。このような鋼球を用いることで、コイル表面に有害な損傷を与えることなく、好適に圧縮残留応力を付与することができる。また、鋼球の投射速度は50〜100m/sとすることができる。また、カバレージは80%以上の範囲とすることができ、処理回数は1〜2回とすることができる。なお、鋼球のショット方法には、従来知られている種々の方法を用いることができる。
【0026】
ホットセッチング工程では、コイルの温度を温間とした状態でセッチングを行う。ホットセッチングにより、コイルに方向性のある圧縮残留応力が付加されて耐久性が向上し、また、コイルに比較的大きな塑性変形が生じることでコイルの耐へたり性が向上する。ここで、ホットセッチングを行う温度は、線材の再結晶温度以下で、かつ、室温より高い温度となる温度範囲内で適宜設定することができる。例えば、コイルの温度を150〜400℃の範囲で行うことができる。このような温度範囲でセッチングを行うことで、コイルに付与される塑性変形量を大きくでき、耐へたり性を向上することができる。なお、温間ショットピーニングを行うときの温度より低い温度でセッチングを行うようにすれば、温間ショットピーニング後にコイルを加熱する必要がないため好ましい。また、セッチングの残留せん断歪γが10×10−4〜40×10−4の範囲でセッチングを行うことが好ましい。この範囲でセッチングを行うことで、耐久性を低下させることなく、耐へたり性を向上することができる。なお、セッチングには、従来知られている種々の方法を用いることができる。
【0027】
冷間ショットピーニング工程では、コイルの温度を常温にした状態でショットピーニングを行う。温間ショットピーニングに加えてさらに冷間ショットピーニングを行うことにより、コイルの耐久性を一層向上させることができる。冷間ショットピーニングには、直径が0.1〜1.0mmの鋼球(ショット)を用いることができる。なお、冷間ショットピーニングで用いる鋼球の径を、温間ショットピーニングで用いる鋼球の径より小さくすることが好ましい。例えば、温間ショットピーニングに使用する鋼球の径を直径1.2mmとした場合、冷間ショットピーニングに使用する鋼球の径を0.8mmとする。温間ショットピーニングと冷間ショットピーニングを行うことで、先に行われる温間ショットピーニングでコイルに大きな圧縮残留応力が付与され、後に行われる冷間ショットピーニングでコイルの表面粗さが改善され、コイルの耐久性、耐腐食疲労性が一層向上する。なお、冷間ショットピーニングの諸条件、すなわち、投射速度は50〜100m/sとすることができ、カバレージは80%以上とすることができ、処理回数は1〜2回とすることができる。
【0028】
冷間セッチング工程では、コイルの温度を常温にした状態でセッチングを行う。上記ホットセッチングに加えて冷間セッチングを行うことにより、コイルの耐へたり性を一層向上させる。冷間セッチングは、残留せん断歪γが1×10−4〜10×10−4の範囲で行うことが好ましい。この範囲でセッチングを行うことで、耐へたり性をより向上させることができる。
【0029】
なお、上記の冷間ショットピーニング、冷間セッチングの各工程を省略し、温間ショットピーニング及びホットセッチングのみを行うこともできる。また、上記の各工程以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、ホットセッチング後に水冷する工程を行うようにしてもよい。なお、本実施形態の製造方法で製造したコイルばねは、ばね硬さがHRC50〜56の範囲となる。コイルばねのばね硬さは、HRC53±2の範囲となることがより好ましい。
【実施例】
【0030】
(第1実施例)
本実施形態の製造方法で製造したコイルばねを用いて締め付けへたり試験、耐久試験、腐食疲労試験を行った例について説明する。本試験例では、本発明の製造方法で製造した本発明例1及び2と、従来の製造方法で製造した比較例1、2を用いて各試験を行った。
【0031】
図1は、試験に使用したコイルばねの素材となる鋼材A、Bに含有される各元素の質量比を示す表である。
【0032】
鋼材Aは、質量比にしてC:0.47%、Si:2.00%、Mn:0.7%、P:0.005%、S:0.005%、Ni:0.55%、Cr:0.2%、V:0.2%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼である。本実施例では、質量比が上記のようになるように各物質を溶解した後、分塊圧延、線材圧延を行って線材としたものを、本発明例1、比較例1のコイルばねの素材とした。
【0033】
鋼材Bは、質量比にしてC:0.47%、Si:2.18%、Mn:0.44%、P:0.007%、S:0.006%、Ni:0.53%、Cu:0.01%、Cr:0.29%、Mo:0.09%、V:0.1%、Ti:0.023%、B:0.0021%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼である。本実施例では、質量比が上記のようになるように各物質を溶解した後、分塊圧延、線材圧延を行って線材としたものを、本発明例2、比較例2のコイルばねの素材とした。
【0034】
〔本発明例1〕
本発明例1のコイルばねは、上記の鋼材Aからなる線材を材料としている。具体的な製造方法は、鋼材Aからなるオイルテンパー処理を施した線材に対し、冷間成形、テンパー処理(低温焼鈍)、温間ショットピーニング、ホットセッチング、水冷、冷間ショットピーニング、冷間セッチング、の各工程をこの順序で行った。
【0035】
本発明例1の製造過程における各条件は以下の通りである。低温焼鈍の条件は350℃で30分とした。温間ショットピーニングに用いる鋼球(ショット)の直径は1.2mmとした。温間ショットピーニング時のコイル温度を300℃とした。ホットセッチング時のコイル温度を200℃とし、へたり代を21mm(残留せん断歪γ=13.7×10−4)とした。冷間ショットピーニングに用いる鋼球の直径は0.8mmとした。冷間セッチングのへたり代は3mm(残留せん断歪γ=2×10−4)とした。
【0036】
上記のようにして製造した本発明例1のコイルばねは、ばね硬さがHRC53となり、また、図2に示す諸元を備えた。すなわち、本発明例1のコイルばねは、円筒片側ピッグ型で、線径12.6mm、コイル平均径162.6mm、自由長318.5mm、有効巻3.12巻、ばね定数が24.0N/mmであった。
【0037】
〔比較例1〕
比較例1のコイルばねは、本発明例1と同様に上記の鋼材Aからなる線材を材料として製造した。具体的には、鋼材Aからなるオイルテンパー処理を施した線材に対し、冷間成形、テンパー処理(低温焼鈍)、ホットセッチング、温間ショットピーニング、水冷、冷間ショットピーニング、冷間セッチング、の各工程をこの順序で行ってコイルばねとしたものである。ホットセッチングを温間ショットピーニングより前に行う点が本発明例1の製造手順と異なる。この比較例1の製造手順は、従来の自動車懸架用コイルばねの製造方法に従った手順である。
【0038】
比較例1の製造過程における各条件は、以下の通りである。温間ショットピーニングを行う温度は200℃とした。ホットセッチングを行う温度は300℃とした。その他の条件は、本発明例1の製造過程における各条件と共通する。
【0039】
比較例1のコイルばねも、本発明例1と同様にばね硬さがHRC53であり、図2に示す諸元を有する。
【0040】
〔本発明例2〕
本発明例2のコイルばねは、上記の鋼材Bからなる線材を材料としている。具体的な製造方法は、鋼材Bからなる線材に対し、焼入れ加熱、熱間成形、焼入れ(油冷)、焼戻し、温間ショットピーニング、ホットセッチング、水冷、冷間ショットピーニング、冷間セッチング、の各工程をこの順序で行ってコイルばねとしたものである。
【0041】
本発明例2の製造過程における各条件は以下の通りである。焼入れ加熱の条件は990℃、焼戻し加熱の条件は370℃とした。温間ショットピーニングに用いるショットの直径は1.0mmとした。温間ショットピーニング時のコイル温度は350℃とした。ホットセッチング時のコイル温度を180℃とし、へたり代を36mm(残留せん断歪γ=26×10−4)とした。冷間ショットピーニングに用いるショットの直径は0.6mmとした。冷間セッチングのへたり代は4mm(残留せん断歪γ=2×10−4)とした。
【0042】
上記のようにして製造した本発明例2のコイルばねは、ばね硬さがHRC54となり、図3に示す諸元を備えた。即ち、本発明例2のコイルばねは、円筒型で、線径12.4mm、コイル平均径110.9mm、自由長323.0mm、有効巻5.55巻、ばね定数39.1N/mmであった。
【0043】
〔比較例2〕
比較例2のコイルばねは、本発明例2と同様に上記の鋼材Bからなる線材を材料として製造した。具体的には、鋼材Bからなる線材に対し、焼入れ加熱、熱間成形、焼入れ(油冷)、焼戻し、ホットセッチング、温間ショットピーニング、水冷、冷間ショットピーニング、冷間セッチング、の各工程をこの順序で行った。ホットセッチングを温間ショットピーニングより前に行う点が本発明例2の製造手順と異なる。この比較例2の製造手順も、従来の自動車懸架用コイルばねの製造方法に従った手順である。
【0044】
比較例2の製造過程における各条件は、以下の通りである。温間ショットピーニング時のコイル温度を230℃とした。ホットセッチング時のコイル温度を330℃とした。その他の条件は、本発明例2の製造過程における条件と共通する。
【0045】
比較例2のコイルばねも、本発明例2と同様にばね硬さがHRC54であり、図3に示す諸元を備えた。
【0046】
(1.締め付けへたり試験)
締め付けへたり試験は、本発明例1と比較例1を対象として行った。この締め付けへたり試験は、コイルばねに最大荷重時高さで締め付けを行い、所定時間恒温槽に投入する試験である。試験前後での取付け高さでの荷重の変化を測定し、残留せん断歪量を算出した。ここで、締め付け荷重は5472Nとした。恒温槽温度を80℃とし、試験時間を96時間とした。また、この締め付けへたり試験では、本発明例1と比較例1を2本ずつ用意し、それぞれについて同じ試験を行った。試験の結果を図4に示す。図4中、加工順の欄の「SP→HS」は、「温間ショットピーニング後にホットセッチングを行った」ことを示す。同様に「HS→SP」は、「ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行った」ことを示す(以下の各図について同じ)。また、図中の数値は、それぞれへたり量(残留せん断歪量(×10−4))を示す。図4に示すように、本発明例1の各コイルばねのへたり量は、いずれも比較例1のへたり量より小さくなった。
【0047】
上記試験結果が示すように、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例1のコイルばねは、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例1のコイルばねよりも高い耐へたり性を有した。
【0048】
(2.耐久試験)
耐久試験は、本発明例2と比較例2を対象として行った。この耐久試験では、コイルばねに作用する荷重を周期的に変動させ、コイルばねが破損するまでの加振回数(耐久回数)を測定した。ここで、コイルばねに加える応力は主応力で735±550MPaとした。この耐久試験でも、本発明例2と比較例2のコイルばねを2本ずつ用意し、それぞれについて同じ試験を行った。試験の結果を図5に示す。図中の数値は、それぞれ耐久回数(万回)を示す。図5に示すように、本発明例2のコイルばねの耐久回数は、いずれも比較例2の耐久回数より著しく多くなった(約2倍程度)。
【0049】
上記試験結果が示すように、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例2のコイルばねは、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例2のコイルばねよりも高い耐久性を有した。
【0050】
(3.腐食疲労試験)
腐食疲労試験は、本発明例2と比較例2を対象として行った。なお、この腐食疲労試験に使用される本発明例2のコイルばねと比較例2のコイルばねには、事前に塗装が施されているものとする。この腐食疲労試験は、以下の方法で行った。まず、コイルばねを玄武岩JIS7号砕石の上に落下させ、90°ずつ回転させる処理を4回行い、コイルばねの塗膜に傷をつける(チッピング)。次に、コイルばねに対して{塩水噴霧(5%NaCl、35℃)6h+乾燥(60℃、RH20%)6h+湿潤(50℃、RH95%)12h}を1サイクルとする腐食処理を60サイクル行う。腐食処理5サイクル毎に3000回ずつ加振する。60サイクル終了後は、コイルばねをさらに加振し、耐久回数を測定した。なお、コイルばねの加振方法は上記の耐久試験と同様である。コイルばねに加える応力は主応力で735±550MPaとした。この腐食疲労試験でも、本発明例2と比較例2のコイルばねを2本ずつ用意し、それぞれについて同じ試験を行った。試験の結果を図6に示す。図中の数値は、それぞれ耐久回数(万回)を示す。図6に示すように、本発明例2のコイルばねの耐久回数は、いずれも比較例2の耐久回数より多くなった。
【0051】
上記試験結果が示すように、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例2のコイルばねは、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例2のコイルばねよりも高い耐腐食疲労性を有した。
【0052】
(第2実施例)
本実施形態の製造方法で製造したコイルばねに対して、残留応力を測定した例について説明する。本試験例では、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例3のコイルばねと、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例3のコイルばねのそれぞれについて、当該コイルばねのコイル外側面の一箇所を測定点として定め、その測定点に対するX線照射角度を45°ずつ変えながら、残留応力を測定した。具体的には、図14、15に示すように、コイルばねの素線の一部を切り出して、そのばね素線(サンプル)に対して斜め上方からX線を照射し、コイルばねから回折されるX線を測定することで、コイルばねに付与されている圧縮残留応力を測定した(いわゆる、X線応力測定法により圧縮残留応力を測定した)。また、図15に示すように、X線照射方向とコイルばねの素線の軸線方向とが一致する方向を測定角0°とし、その0°に対してコイルばねの素線を反時計回りに回転させる方向を正の方向とした。また、測定点の位置は変えずに、素線表面から径方向中心に向かう方向への距離を変えながら、同様の測定を繰り返し行った。なお、0°に対してコイルばねの素線を反時計回りに回転させる方向が正の方向となるのは、上記のコイルばねが右巻きの場合である。反対に、上記のコイルばねが左巻きの場合、0°に対してコイルばねの素線を時計回りに回転させる方向が正の方向となる。以下では、素線表面から径方向中心に向かう方向への距離のことを簡単に「表面からの距離」又は「深さ」と呼ぶ場合がある。また、測定点に対するX線照射角度のことを簡単に「測定角」と呼ぶ場合がある。なお、測定対象となる本発明例3、比較例3は、比較結果を明確に把握するため、ともに冷間ショットピーニング及び冷間セッチングを省略している。本発明例3と比較例3のその他の製造条件は、上記の本発明例2と同様とした。
【0053】
図7は、コイルばねの表面からの距離と圧縮残留応力の関係を示すグラフである。横軸は表面からの距離(mm)、縦軸は圧縮残留応力(MPa)をそれぞれ示す。縦軸の圧縮残留応力は、表面からの距離が同一で、測定点に対する異なる8方向からのX線照射角度毎の測定結果の平均値を示している。図7に示すように、本発明例3の圧縮残留応力は、表面からの距離が浅い領域から深い領域まで全ての領域で、比較例3の圧縮残留応力より高くなった。
【0054】
図8〜図11は、表面からの距離(深さ)に応じた、当該測定点に対するX線照射角度毎の圧縮残留応力の分布を示す。図8はコイルばねの表面、図9は深さ0.1mm、図10は深さ0.2mm、図11は深さ0.3mmにおいて定めた各測定点における、各測定角の圧縮残留応力をそれぞれ示す。図8〜図11において、中心から45°毎に放射状に表された8本の軸は、測定角が45°,90°,・・315°となる各場合における圧縮残留応力(MPa)をそれぞれ示す。図8に示すように、コイルばね表面において、本発明例3は測定角135°,315°の対角線方向に高い圧縮残留応力が表れている。比較例3と比べるとその差は顕著である。この135°,315°の対角線方向は、本発明例3と比較例3のコイルばねにかかる引張応力の方向と同じである。このため、135°,315°の対角線方向に高い圧縮残留応力を有していると、この圧縮残留応力により引張応力が効果的に打ち消される。その結果、135°,315°方向に高い残留応力が表れている本発明例3のコイルばねは、比較例3のコイルばねに比べて高い耐久性、耐へたり性を有する。
【0055】
本発明例3のコイルばねに、耐久性、耐へたり性に好適な影響を与える135°,315°方向の圧縮残留応力が効果的に付与されていることは、135°,315°方向の圧縮残留応力と、その135°,315°方向と直交する45°,225°方向の比を求めることで定量的に評価することができる。このため、135°,315°方向の圧縮残留応力と45°,225°方向の圧縮残留応力の比を、(135°の圧縮残留応力+315°の圧縮残留応力)/(45°の圧縮残留応力+225°の圧縮残留応力)により求めた。得られた計算結果を図12に示す。図12に示すように、本発明例3の計算値は全ての深さで1よりも大きくなった。このことからも、本発明例3のコイルばねには135°,315°方向の圧縮残留応力が高く備えられていることが明らかとなる。
【0056】
上記の各測定結果が示すように、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例3のコイルばねは、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例3のコイルばねに比べて高い耐へたり性、耐久性を有する。
【0057】
(第3実施例)
本実施形態の製造方法で製造したコイルばねに対して、残留応力を測定した他の例について説明する。本試験例では、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例4、5のコイルばねと、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例4、5のコイルばねのそれぞれについて、測定角45°、135°、225°、315°のそれぞれのときの圧縮残留応力を測定した。また、測定点の位置は変えずに、素線表面からの深さを変えながら、同様の測定を繰り返し行った。なお、測定対象となる本発明例4、5、及び比較例4、5は、比較結果を明確に把握するため、ともに冷間ショットピーニング及び冷間セッチングを省略している。本発明例4、5及び比較例4、5のその他の製造条件は、上記の本発明例2と同様とした。また、圧縮残留応力の測定方法は、上記の第2実施例と同様とした。
【0058】
図13は、素線表面からの深さ(表面から径方向中心に向かう方向への距離)(mm)毎の、各測定角における圧縮残留応力(MPa)と、(135°の圧縮残留応力+315°の圧縮残留応力)/(45°の圧縮残留応力+225°の圧縮残留応力)により求められる圧縮残留応力の比とを示す表である。なお、図13において、測定方向「135°,315°」に対応する各圧縮残留応力の値(例えば、本発明例4の表面の圧縮残留応力の値「607,648」)は、前者(「607」)が135°方向の圧縮残留応力の値、後者(「648」)が315°方向の圧縮残留応力の値、をそれぞれ示す。同様に、「45°,225°」に対応する各圧縮残留応力の値も、前者が45°方向の圧縮残留応力の値、後者が225°方向の圧縮残留応力の値、をそれぞれ示す。
【0059】
上述したとおり、コイルばねが135°,315°の対角線方向に高い圧縮残留応力を有していると、この圧縮残留応力により引張応力が効果的に打ち消され、コイルばねの耐久性、耐へたり性が高くなる。さらに、コイルばねの素線表面から線径中心方向への距離が0.2mmの位置において、135°,315°の対角線方向に高い圧縮残留応力を有していれば、仮にコイルばねの素線表面が腐食した場合であっても、圧縮残留応力が有効に残留するため、高い圧縮残留応力が素線表面にのみ備わっている場合に比べてコイルばねの耐久性、耐へたり性が高くなる。
【0060】
本実施例では、図13に示すように、本発明例4、5の圧縮残留応力の比は、いずれも、深さ0.2mmにおける値が、表面における値よりも大きい。しかも、深さ0.2mmにおける比の値は、いずれも1以上である。即ち、本発明例4、5のコイルばねには、引張応力に対して有効な135°,315°の対角線方向により高い圧縮残留応力が備わっている。これに対し、比較例4、5の圧縮残留応力の比は、いずれの深さにおいても1以下である。即ち、比較例4、5のコイルばねには、引張応力に対して有効な135°,315°の対角線方向に圧縮残留応力が有効に備わっていない。
【0061】
さらに、図13に示すように、本発明例4、5のコイルばねは、深さ0.2mmにおける135°の方向の圧縮残留応力の値及び315°の方向の圧縮残留応力の値がいずれも950MPaより大きい。一方、比較例4、5では、深さ0.2mmにおける135°の方向の圧縮残留応力の値及び315°の方向の圧縮残留応力の値がいずれも700〜750MPa程度である。即ち、本発明例4、5のコイルばねは、比較例4、5に比べて、引張応力に対して有効な方向(135°、315°)に、高い圧縮残留応力が備わっている。
【0062】
以上より、本発明例4、5のコイルばねには、比較例4、5に比べると、深さ0.2mmにおいて、135°,315°方向の圧縮残留応力が高く備えられていることが明らかとなる。上述の通り、深さ0.2mmにおいて、135°,315°方向の圧縮残留応力が高く備えられている本発明例4、5のコイルばねは、比較例4、5のコイルばねに比べて高い耐久性、耐へたり性を有する。
【0063】
上記の各測定結果が示すように、温間ショットピーニング後にホットセッチングを行って製造した本発明例4、5のコイルばねは、ホットセッチング後に温間ショットピーニングを行って製造した比較例4、5のコイルばねに比べて高い耐へたり性、耐久性を有する。
【0064】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材をコイル状に成形し、成形後のコイルに対して熱処理を行い、熱処理後のコイルに対して温間ショットピーニングを行い、温間ショットピーニング後のコイルに対してホットセッチングを行うことを特徴とする自動車懸架用コイルばねの製造方法。
【請求項2】
質量比にしてC:0.35〜0.55%、Si:1.60〜3.00%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.10〜1.50%を含有するとともに、Ni:0.40〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%、V:0.05〜0.50%のうちいずれか1種類以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼を素材とすることを特徴とする請求項1に記載の自動車懸架用コイルばねの製造方法。
【請求項3】
自動車懸架用コイルばねであって、
ばね素線の少なくとも一部に圧縮残留応力が付与されており、
その圧縮残留応力が付与された位置における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比が、(135°方向の圧縮残留応力+315°方向の圧縮残留応力)/(45°方向の圧縮残留応力+225°方向の圧縮残留応力)によって求められる場合において、
素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比が、
素線表面における、135°と315°方向の圧縮残留応力の和と45°と225°方向の圧縮残留応力の和との比よりも大きいことを特徴とする自動車懸架用コイルばね。
【請求項4】
素線表面から線径中心に向かう方向への距離が0.2mmの位置における、135°方向の圧縮残留応力と、315°方向の圧縮残留応力とが、800〜1200MPaであることを特徴とする請求項3に記載の自動車懸架用コイルばね。
【請求項5】
ばね硬さがHRC50〜56であることを特徴とする請求項3又は4に記載の自動車懸架用コイルばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−149036(P2011−149036A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9072(P2010−9072)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】