説明

自動車用外装品の仮固定構造

【課題】接着剤の硬化中であっても次工程への移行を可能にし、製造時間の短縮を図る。
【解決手段】第1仮固定部A1は、第2パネルP2に設けられた被係合部22と、第1パネルP1に設けられて被係合部22に係入される爪部24とを備え、その係入により、両封止板部17,18の間隔が変化する方向への両パネルP1,P2の変位を規制する。第2仮固定部A2は、両パネルP1,P2間に、第1パネルP1に一体に設けられた中間部材25を備え、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で、中間部材25を第2パネルP2に係止させる。第3仮固定部は、両パネルP1,P2間で互いに接触している箇所同士を超音波溶着で直接結合することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第2パネルを第1パネルに対し接着固定してなる自動車用外装品において、接着剤が硬化するまで第2パネルを第1パネルに仮固定する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃費向上を図るうえで軽量化は有効な手段である。自動車が軽くなれば、自動車を作動させるために必要なエネルギーを少なくすることができるからである。軽量化の手法としては、材料の軽量化、各部品の小型・軽量化、機能向上による部品点数の削減等がある。
【0003】
この点、例えば、特許文献1には、自動車用外装品として、フロントドア、リヤドア、バックドア等の自動車用ドアを軽量化する技術が提案されている。この自動車用ドアは、隔壁により互いに区画されて自動車の内外方向へ延びる多数の筒状のセルからなるハニカム部と、そのハニカム部を、車内側及び車外側から挟み込んで各セルを封止する一対の封止板部とを備えてなるハニカム構造体からなる。一方の封止板部とハニカム部とは互いに一体形成された第1パネルとされ、他方の封止板部は第2パネルとされる。そして、第2パネルが第1パネルのハニカム部に対し接着剤により接合される。
【0004】
この自動車用ドアでは、全体が樹脂によって形成されるとともにハニカム構造体によって構成されることで、軽量化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−262916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記自動車用ドアでは、第2パネルを第1パネルのハニカム部に対し接着剤によって接合させる際、その接着剤が硬化するまでの期間に、第2パネルとハニカム部との間に隙間が生じないように、両者を互いに接触させた状態に保持(仮固定)する必要がある。
【0007】
特許文献1に特に記載はないが、一般的な仮固定方法に従えば、上記保持(仮固定)は治具を用いて行なわれる。すなわち、第2パネルよりも大きな治具が用いられ、この治具によって第2パネル全体が第1パネル側に押圧され続けて、第2パネルがハニカム部に接触した状態に保持(仮固定)される。
【0008】
しかし、このように治具によって第2パネルを第1パネルに仮固定する方法では、接着剤が硬化して第2パネルがハニカム部に接合されるまでの期間にわたり、自動車用ドアの外部に治具が配置された状態が続く。そのため、接着剤の硬化が完了するまでは、両パネルを次工程へ移すことができず、待つこととなる。その結果、この待ち時間の分、自動車用ドアの製造時間が長くなる。
【0009】
こうした問題は、自動車用ドアに限らず、自動車用フード等、第2パネルを第1パネルのハニカム部に接着により接合するタイプの自動車用外装品であれば、共通して起こり得る。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、接着剤の硬化中であっても次工程への移行を可能にし、製造時間の短縮を図ることのできる自動車用外装品の仮固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、隔壁により互いに区画されて自動車の内外方向へ延びる多数の筒状のセルからなるハニカム部と、前記ハニカム部を、車内側及び車外側から挟み込んで各セルを封止する一対の封止板部とを備え、一方の封止板部と前記ハニカム部とは互いに一体となった第1パネルとされ、他方の封止板部は第2パネルとされ、同第2パネルが前記第1パネルの前記ハニカム部に対し接着剤により接合される自動車用外装品に適用されるものであり、前記接着剤の硬化中、前記第2パネルを前記第1パネルに仮固定する自動車用外装品の仮固定構造であって、前記第1パネル及び前記第2パネルの一方のパネルに設けられた被係合部、及び他方のパネルに設けられて前記被係合部に係入される爪部を備え、その係入により、前記両封止板部の間隔が変化する方向への前記両パネルの変位を規制する第1仮固定部と、前記第1パネル及び前記第2パネル間に、一方のパネルに一体に設けられた中間部材を少なくとも備え、前記第2パネルを前記第1パネル側へ引き寄せた状態で前記中間部材を他方のパネルに係止させる第2仮固定部と、前記第1パネル及び前記第2パネル間で互いに接触している箇所同士を超音波溶着により直接結合してなる第3仮固定部とを備えることを要旨とする。
【0012】
上記の構成によれば、自動車用外装品の製造に際し、第2パネルが接着剤により第1パネルのハニカム部に接合される。この接着剤の硬化中には、第2パネルがハニカム部に接触した状態に保持される。この保持は、第1仮固定部、第2仮固定部及び第3仮固定部においてなされる。
【0013】
第1仮固定部では、一方のパネルに設けられた被係合部に対し、他方のパネルに設けられた爪部が係入される。この係入により、両封止板部の間隔が変化する方向への両パネルの変位が規制される。第2仮固定部では、第2パネルを第1パネル側へ引き寄せた状態で、中間部材が他方のパネルに係止される。第3仮固定部では、両パネル間で互いに接触している箇所同士が超音波溶着により直接結合され、両封止板部の間隔が変化する方向への両パネルの変位が規制される。
【0014】
このように、第1〜第3仮固定部による第2パネルの第1パネルに対する仮固定は、いずれも両パネルの一部において行なわれる。そのため、両パネルの外側に治具等、仮固定を行なうものを配置して、第2パネルを第1パネルに仮固定する必要がなくなる。こうした両パネル外部の治具等は、両パネルを次工程へ移行させる際の阻害要因となる。請求項1に記載の発明では、上記のように両パネルの外部に治具等が配置されないことから、接着剤の硬化中であっても、次工程への移行が可能となる。接着剤の硬化が完了するまで次工程への移行を待つ場合に比べ、製造時間が短くなる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1仮固定部、前記第2仮固定部及び前記第3仮固定部は、前記第1パネル及び前記第2パネルにおいて、同第2パネルの前記ハニカム部に対する接合面に沿う方向へ列をなすように設けられていることを要旨とする。
【0016】
ここで、仮に、第1仮固定部、第2仮固定部及び第3仮固定部のうち、隣合う仮固定部間の距離が長い場合には、各仮固定部の近くでは、第2パネルを第1パネルのハニカム部に接触させた状態に保持(仮固定)できても、隣合う仮固定部間の中間部分では第2パネルがハニカム部から浮き上がるおそれがある。
【0017】
この点、請求項2に記載の発明によるように、第1〜第3仮固定部が、第2パネルのハニカム部に対する接合面に沿う方向へ列をなすように設けられることで、隣合う仮固定部間の距離を短くし、中間部分で第2パネルがハニカム部から浮き上がる現象を起こりにくくすることが可能となる。その結果、第2パネルを、そのどの箇所においても第1パネルのハニカム部に対し接触した状態に保持(仮固定)することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1仮固定部は、前記方向についての一方の端部に設けられ、前記第3仮固定部は、前記方向についての他方の端部に設けられ、前記第2仮固定部は、前記方向についての前記一方の端部と前記他方の端部との間に設けられることを要旨とする。
【0019】
上記の構成によれば、第2パネルは、前記方向についての一方の端部に設けられた第1仮固定部において第1パネルに仮固定される。この仮固定により、上記一方の端部では、両封止板部の間隔が変化する方向への両パネルの変位が規制される。
【0020】
また、第2パネルは、前記方向についての他方の端部に設けられた第3仮固定部において、第1パネルに仮固定される。この仮固定により、上記他方の端部では、両封止板部の間隔が変化する方向への両パネルの変位が規制される。
【0021】
さらに、第2パネルは、前記方向についての一方の端部と他方の端部との間に設けられた第2仮固定部において、第1パネルに仮固定される。この仮固定により、第2パネルが第1パネルから浮く現象が抑制される。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記中間部材の前記他方のパネルに対する係止は、同他方のパネル及び同中間部材に対し、両面において貼着される両面テープにより行なわれることを要旨とする。
【0023】
上記の構成によれば、第2仮固定部による第2パネルの仮固定に際し、第1パネル及び第2パネルの一方のパネルに一体に設けられた中間部材は、他方のパネルに接近させられる。そして、両面テープが他方のパネル及び中間部材に貼着されることで、第2パネルを第1パネル側へ引き寄せた状態で、中間部材が他方のパネルに対し簡単かつ瞬時に係止される。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記第1パネル及び前記第2パネルは樹脂成形により形成されるものであり、前記中間部材が一体に形成される前記一方のパネルは、前記第1パネル及び前記第2パネルのうち車内側に配置されるパネルにより構成され、前記中間部材が係止される前記他方のパネルは、前記第1パネル及び前記第2パネルのうち車外側に配置されるパネルにより構成されることを要旨とする。
【0025】
ここで、第1パネル又は第2パネルと中間部材とを一体成形する際には、成形後に中間部材の収縮に起因して、同パネルの表面に「ひけ」が生ずるおそれがある。このひけは、仮に、第1パネル及び第2パネルのうち、車外側に配置されるパネルの表面(意匠面)に生ずると、自動車用外装品の外観を低下させる一因となる。
【0026】
この点、請求項5に記載の発明では、中間部材が、第1パネル及び第2パネルのうち車内側に配置されるパネルに一体成形される。そのため、ひけは車内側のパネルに生ずることとなり、車外側からは見えない。ひけが車外側のパネルの外表面に表れることがなく、自動車用外装品の外観の低下を招くことはない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の自動車用外装品の仮固定構造によれば、接着剤の硬化中であっても次工程への移行を可能にし、製造時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における自動車用フードの平面図。
【図2】図1のX−X線に沿った自動車用フードの断面構造を示す部分断面図。
【図3】図1のY−Y線に沿った自動車用フードの断面構造を示す部分断面図。
【図4】図1のZ−Z線に沿った自動車用フードの断面構造を示す部分断面図。
【図5】第2パネルを第1パネルに仮固定する途中の状態を示す部分断面図。
【図6】第1仮固定部の変更例を説明する図であり、被係合部に爪部が係入される前の状態を示す部分断面図。
【図7】図6の被係合部に爪部が係入された状態を示す部分断面図。
【図8】第1仮固定部の変更例を説明する図であり、被係合部に爪部が係入される前の状態を示す部分断面図。
【図9】第2仮固定部の変更例を示す図であり、(A)は第2パネルが第1パネルに係止される前の状態を示す概略断面図、(B)は係止された状態を示す概略断面図。
【図10】(a),(b)は、ともに第2仮固定部の変更例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を自動車用フードの仮固定構造に具体化した一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、自動車の前進方向を前方として説明し、自動車の後進方向を後方として説明する。また、以下の記載における上下方向は自動車の上下方向を意味し、左右方向は自動車の車幅方向であって前進時の左右方向と一致するものとする。
【0030】
図1〜図4に示すように自動車には、収容室としてのエンジンルーム11を開閉する自動車用フード12が自動車用外装品として設けられている。この自動車用フード12は、フード本体13と、一対のフードヒンジ31とを備えて構成されている。フード本体13は、自動車用フード12の大部分を占めるものであり、エンジンルーム11を上側から塞ぎ得る形状、ここでは、車幅方向に対するよりも前後方向に短い形状を有している。
【0031】
フード本体13は、エンジンルーム11の閉鎖時には、同エンジンルーム11内に配置された複数の自動車構成部材、例えば、エンジン、エアクリーナ、サイドメンバ、カウル、カウルルーバ等を覆う。サイドメンバは、車体について車幅方向両側部を構成する部材である。カウルは、ウインドシールド下部、かつ、エンジンフード後端部の車体前方パネルである。カウルルーバは、自動車用フード12とフロントガラスの下部との間において、車幅方向に延びるように配設される部材である。
【0032】
図2〜図4に示すように、フード本体13の略全体は、合成樹脂製のハニカム構造体14によって形成されている。ハニカム構造体14は、ハニカム部15と一対の封止板部17,18とからなる。ハニカム部15は、隔壁16により互いに区画された多数の筒状のセル15Aからなる。なお、セル15Aはここでは六角筒状をなしているが、それ以外の多角形の筒状をなすものであってもよい。各セル15Aは、自動車の内外方向(ここでは略上下方向)に延びている。多数のセル15Aは平行に隣合って接合されている。こうした接合態様により、ハニカム部15は全体として蜂巣状をなしている(図1参照)。
【0033】
封止板部17,18は、ハニカム部15を、車内側(下側)及び車外側(上側)から挟み込んで各セル15Aを封止している。ハニカム部15と車内側(下側)の封止板部17とは、互いに一体となった第1パネルP1とされている。第1パネルP1は、例えば、カーボンフィラーの混入されたポリプロピレン(CFPP)を用い、射出成形を行なうことにより一体に成形されている。こうした第1パネルP1は、全体が金属によって形成された従来の自動車用フードにおけるインナパネルに相当する。
【0034】
車外側(上側)の封止板部18は、例えば、タルク等のフィラーの混入されたポリプロピレン(PPF)を用い、射出成形を行なうことによって、上記ハニカム部15及び車内側(下側)の封止板部17とは別に成形されている。この封止板部18は、それ自体で第2パネルP2とされている。こうした第2パネルP2は、全体が金属によって形成された従来の自動車用フードにおけるアウタパネルに相当する。
【0035】
第2パネルP2の外表面である上面18Uは、フード本体13の意匠面を構成している。第2パネルP2の周縁部には、下方へ屈曲形成されてなる縦壁部21が一体に設けられている。上記第2パネルP2は、その下面18Lにおいて、第1パネルP1のハニカム部15に対し接着剤19(図5参照)によって接合されている。
【0036】
上記の構成を有するフード本体13では、ハニカム構造体14の特性上、封止板部17,18自体は曲げ応力に対しさほど強くないが、ハニカム部15の各セル15Aは伸縮しにくい。すなわち、ハニカム構造体14は、封止板部17,18に加わってそれらを曲げようとする力を、ハニカム部15を伸縮させる力に変えることによって高い強度を発揮する。結果として、ハニカム構造体14は剛性(面剛性)が高く変形しにくい。
【0037】
図1に示すように、両フードヒンジ31は、フード本体13がエンジンルーム11を上側から開閉し得るように、同フード本体13を車体(図示略)に支持するためのものである。自動車用フード12は、両フードヒンジ31を支点として上下方向へ傾動することにより、エンジンルーム11を開閉する。
【0038】
フード本体13、より具体的には、車内側(下側)の封止板部17の下面であって、前端部、かつ車幅方向についての略中央部分には、フードロックストライカ32が固定されている。フードロックストライカ32は、車体に設けられたフードロック(図示略)に係止されることで、フード本体13を、エンジンルーム11を閉鎖した状態に保持(ロック)するためのものである。
【0039】
さらに、本実施形態では、ハニカム構造体14におけるセル15Aが、同ハニカム構造体14とその下方の自動車構成部材との間隔に応じた大きさに形成されている。より詳しくは、ハニカム部15には、これを概ね2つの領域Z1,Z2に仕切る仕切り壁33が形成されている。一方の領域Z1は、両フードヒンジ31の近傍部分と、両フードヒンジ31によって挟まれた部分とを含んでいる。この領域Z1では、ハニカム構造体14とその下方の自動車構成部材(例えば、サイドメンバ、カウル、カウルルーバ等)との間隔が狭い。これに対し、他方の領域Z2は、ハニカム部15において、上記領域Z1を除く領域であり、この領域Z2には、ハニカム部15の中央部、及びその周辺(近傍)部分が含まれている。この領域Z2では、ハニカム構造体14とその下方の自動車構成部材(例えば、エンジン、エアクリーナ等)との間隔が広い。そして、上記間隔の狭い領域Z1では、セル15Aが領域Z2でのセル15Aよりも小さく形成されている。
【0040】
ところで、上記自動車用フード12では、第2パネルP2を第1パネルP1のハニカム部15に対し接着剤19によって接合させる際、接着剤19の硬化が完了するまで、第2パネルP2とハニカム部15との間に隙間が生じないように、両者を互いに接触させた状態に保持(仮固定)する必要がある。
【0041】
そこで、本実施形態では、上記接着剤19の硬化中、第2パネルP2をハニカム部15に接触させた状態に保持(仮固定)するための仮固定構造が採用されている。この仮固定構造は、3種類の仮固定部(第1仮固定部A1、第2仮固定部A2及び第3仮固定部A3)を備えている。これらの仮固定部A1〜A3は、第1パネルP1及び第2パネルP2において、同第2パネルP2のハニカム部15に対する接合面に沿う方向へ列をなすように設けられている。本実施形態では、この接合面に沿う方向として、前後方向が設定されている。次に、これらの仮固定部A1〜A3の各々について説明する。
【0042】
<第1仮固定部A1>
第1仮固定部A1は、前後方向については、第1パネルP1及び第2パネルP2の各前端部に設けられている。また、第1仮固定部A1は、車幅方向については、第1パネルP1及び第2パネルP2の同車幅方向へ互いに離間した複数箇所(例えば4箇所)に設けられている。
【0043】
図2に示すように、各第1仮固定部A1は、第2パネルP2における封止板部18の前端部に設けられた被係合部22と、第1パネルP1における封止板部17の前端部に設けられた爪部24とからなる。各被係合部22は、封止板部18の前端部から垂下する上記縦壁部21と、その縦壁部21の下端から後方へ延びる横壁部23とからなる。これに対し、封止板部17の前端部は下方へ屈曲されており、この屈曲部分を含め封止板部17の前端部が上記爪部24を構成している。
【0044】
そして、第1仮固定部A1毎の爪部24が、第2パネルP2の封止板部18、縦壁部21及び横壁部23によって囲まれた空間に係入されることにより、両封止板部17,18の間隔が拡がる方向(上下方向)への両パネルP1,P2の変位が規制される。
【0045】
また、上記のように縦壁部21及び横壁部23からなる被係合部22と、封止板部18の被係合部22近傍とからなる第2パネルP2の前端部は、断面J字状をなしている。第2パネルP2のこの部分は、被係合部22と爪部24との係合部分を支点とする第2パネルP2の第1パネルP1に対する回転を許容する(図5参照)。表現を変えると、第2パネルP2の前端部は、第1パネルP1の爪部24を回転可能に支持する軸受としての機能も有している。
【0046】
<第2仮固定部A2>
図1に示すように、第2仮固定部A2は、前後方向については、第1パネルP1及び第2パネルP2間の前端部と後端部との中間部分(中央部の付近)に設けられている。また、第2仮固定部A2は、車幅方向については、第1パネルP1及び第2パネルP2の同車幅方向へ互いに離間した複数箇所(例えば2箇所)に設けられている。
【0047】
図2に示すように、各第2仮固定部A2は、第1パネルP1の封止板部17と第2パネルP2の封止板部18との間に配置される中間部材25を備えている。各中間部材25は、第2パネルP2が第1パネルP1のハニカム部15に接着剤19によって接合されたときの両封止板部17,18の間隔Dと同程度の上下長を有している。各中間部材25は、第1パネルP1の封止板部17に一体に形成されている。各中間部材25は、自身の上端部に略水平方向へ延びる板状部25Aを有している。そして、各中間部材25は、この板状部25Aにおいて、第2パネルP2(封止板部18)に付着されている。この付着は、本実施形態では両面テープ26の第2パネルP2との貼着によってなされている。この貼着により、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で中間部材25が第2パネルP2に係止されている。
【0048】
<第3仮固定部A3>
図1に示すように、第3仮固定部A3は、前後方向については、第1パネルP1及び第2パネルP2間の後端部に設けられている。また、第3仮固定部A3は、車幅方向については、第1パネルP1及び第2パネルP2間の同車幅方向へ互いに離間した複数箇所(例えば5箇所)に設けられている。この5箇所には、車幅方向についての両端部も含まれている。
【0049】
図3は、車幅方向についての端部の第3仮固定部A3を示し、図4は同車幅方向についての中間部分の第3仮固定部A3を示している。これらの図3及び図4に示すように、各第3仮固定部A3は、第1パネルP1の封止板部17の一部と、第2パネルP2の封止板部18の一部とを超音波溶着によって直接結合することで形成されている。超音波溶着は溶着方法の一態様であり、周知のように、超音波振動を圧力とともに第1パネルP1及び第2パネルP2に加え、生じる摩擦熱によって両パネルP1,P2を接合させる方法である。溶融に関わる箇所として、第1パネルP1の上面17Uであって周縁部(縦壁部21)に接近した箇所には、断面三角形状をなし、かつ同周縁部(縦壁部21)に沿って延びる長尺状のリブ27が一体に形成されている。各リブ27の高さH及び幅Wは、それぞれ0.5mm、2〜3mm程度に設定されている。また、各リブ27は10mm程度の長さを有している。
【0050】
上記のようにして本実施形態の自動車用フード12が構成されている。
ここで、仮に、第1〜第3仮固定部A1〜A3のうち、隣合う仮固定部間の距離が長い場合には、各仮固定部の近くでは、第2パネルP2をハニカム部15に接触させた状態に保持(仮固定)できても、両仮固定部間の中間部分では同仮固定部の作用が及びにくく、第2パネルP2がハニカム部15から浮き上がるおそれがある。
【0051】
この点、本実施形態では、第1仮固定部A1、第2仮固定部A2及び第3仮固定部A3が、第2パネルP2のハニカム部15に対する接合面に沿う方向の1つである前後方向へ列をなすように設けられている。そのため、隣合う仮固定部間の距離が短くなり、中間部分で第2パネルP2がハニカム部15から浮き上がる現象が起こりにくい。その結果、第2パネルP2は、そのどの箇所においてもハニカム部15に対し接触した状態に保持されやすい。
【0052】
上記自動車用フード12の製造に際しては、第2パネルP2がハニカム部15に対し接着剤19により接合される。この接着剤19の硬化中には、第1〜第3仮固定部A1〜A3により、第2パネルP2がハニカム部15に接触した状態に保持(仮固定)される。
【0053】
次に、本実施形態の作用として、ハニカム部15に第2パネルP2を仮固定する手順について説明する。この作業は、図5に示すように、第1パネルP1のハニカム部15の上端面上に接着剤19が塗布され、かつ、両面テープ26がその片面において中間部材25の板状部25A上に貼着されている状態で行なわれる。
【0054】
最初に、接着剤19が第2パネルP2の下面18Lの意図しない箇所(接着の不要な箇所)に付着しないよう、第2パネルP2が接着剤19から離間させられた状態で、同第2パネルP2の前端部が第1パネルP1の前端部に近づけられる。図5に示すように、第2パネルP2の被係合部22が、第1パネルP1の爪部24に被せられる。又は、第1パネルP1の前端部が第2パネルP2の前端部に近づけられ、同第1パネルP1の爪部24が同第2パネルP2の被係合部22に差し込まれる。いずれの作業によっても、第1仮固定部A1では、爪部24が被係合部22に係入された状態となる。縦壁部21が爪部24に当接することで、第2パネルP2の第1パネルP1に対する前後方向の位置決めがなされる。また、この係合状態では、第2パネルP2の封止板部18と横壁部23とが第1パネルP1の爪部24に接触することで、両封止板部17,18の間隔が拡がる方向への第1パネルP1及び第2パネルP2の変位が規制される。
【0055】
続いて、第2パネルP2が、その前端部(被係合部22と爪部24との係合部分)を支点として、図5において矢印Qで示すように、第1パネルP1側へ回転させられる。この回転により、第2パネルP2の前後方向についての中間部分が両面テープ26及び中間部材25に接近する。また、第2パネルP2の後端部が第1パネルP1の後端部のリブ27に接近する。このようにして、両パネルP1,P2の溶着予定箇所同士が接近する。
【0056】
第2パネルP2の上記回転は、同第2パネルP2の下面18Lがハニカム部15上の接着剤19に接触するまで行なわれる。この接触に前後して、第2パネルP2の前後方向についての中間部分が中間部材25上の両面テープ26に接触する。図2に示すように、この両面テープ26により、第2パネルP2の下面18Lが中間部材25に対し瞬時に貼着させられる。この貼着により、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せてハニカム部15に押付けた状態で、中間部材25が両面テープ26を介して第2パネルP2に係止される。このようにして、第2仮固定部A2での仮固定が行なわれる。
【0057】
また、第2パネルP2の上記回転により、図3及び図4に示すように、封止板部17の後端部の上面17Uに設けられているリブ27に対し、第2パネルP2の下面18Lが当接する。さらに、超音波溶着機により第2パネルP2が第1パネルP1(リブ27)側へ加圧され、この状態で第2パネルP2を通じてリブ27に超音波振動が加えられる。この超音波振動によりリブ27及び第2パネルP2間で摩擦熱が発生し、両者が溶融して瞬時に接合される。このようにして、第3仮固定部A3での仮固定が行なわれる。
【0058】
上記第1〜第3仮固定部A1〜A3による第2パネルP2の第1パネルP1に対する仮固定は、いずれも両パネルP1,P2の一部において行なわれる。すなわち、第1仮固定部A1では、被係合部22と爪部24とにおいて仮固定が行なわれる。第2仮固定部A2では、中間部材25と第2パネルP2の下面18Lとにおいて仮固定が行なわれる。第3仮固定部A3では、第1パネルP1のリブ27と第2パネルP2の下面18Lとにおいて仮固定が行なわれる。
【0059】
そのため、両パネルP1,P2の外側に治具等を配置して、第2パネルP2を第1パネルP1に仮固定する必要がない。こうした両パネルP1,P2の外部の治具等は、両パネルP1,P2を次工程へ移行させる際の阻害要因となる。本実施形態では、上記のように両パネルP1,P2の外部に治具等が配置されないことから、接着剤19の硬化中であっても、次工程への移行が可能となる。接着剤19の硬化が完了するまで次工程への移行を待つ場合に比べ、製造時間が短縮される。
【0060】
ところで、上記自動車用フード12が搭載された自動車では、歩行者が接触した場合、その歩行者等が、自動車用フード12に接触(衝突)することがある。この接触(衝突)により、フード本体13に対し外部から力が加わると、フード本体13のセル15Aが座屈(潰れ変形)することで、接触(衝突)の際のエネルギーが吸収される。接触(衝突)により歩行者に加えられる衝撃力が緩和される。
【0061】
ここで、フード本体13の歩行者との接触(衝突)箇所が図1の領域Z2であれば、上記のように外部から力が加わると、セル15Aが座屈(潰れ変形)することに加え、フード本体13がエンジンルーム11に向かって撓むことによっても、接触(衝突)の際のエネルギーが吸収される。このフード本体13が撓むことによるエネルギー吸収の分、セル15Aが座屈することによるエネルギー吸収量が少なくてすむ。本実施形態では、フード本体13において自動車構成部材との間隔の広い中央部やその近傍部分では、セル15Aが、同間隔の狭いフードヒンジ31の近傍部分や後縁部近傍部分のセル15Aよりも大きく形成されている。しかし、フード本体13が撓むこととセル15Aが座屈(潰れ変形)することとの双方によって、自動車構成部材との干渉を招くことなく接触(衝突)の際のエネルギーが吸収される。
【0062】
また、フード本体13の歩行者との接触(衝突)箇所が図1の領域Z1であると、上記のように外部から力が加わった場合、フード本体13が撓むことのできる空間は小さい。これは、ハニカム構造体14と自動車構成部材との間隔が狭いからである。フード本体13が撓むことによって吸収できるエネルギーが少なくなる。その分、セル15Aが座屈(潰れ変形)することによって吸収すべきエネルギーが多くなる。この点、本実施形態では、自動車構成部材との間隔の狭いフードヒンジ31の近傍部分や後縁部近傍部分では、間隔の広い中央部やその近傍部分よりもセル15Aが小さく形成されている。そのため、多くの小さなセル15Aが座屈(潰れ変形)することにより、自動車構成部材との干渉を招くことなく接触(衝突)の際のエネルギーが吸収される。
【0063】
さらに、本実施形態の自動車用フード12は、以下の理由により軽量となる。
(i)フード本体13の略全体がハニカム構造体14によって形成されていること。
(ii)ハニカム構造体14が、六角筒状をなす多数のセル15Aからなるハニカム部15と、同ハニカム部15をその上側及び下側から挟み込んで各セル15Aを封止する一対の封止板部17,18とによって構成されていること。
【0064】
各セル15Aを六角筒状とすることで、それらの内部空間の容積が採り得る最大容積となり、隔壁16の材料が少なくてすむ。このことは、ハニカム構造体14がより軽くなることに繋がる。
【0065】
(iii )ハニカム構造体14の構成部材である車外側(上側)の封止板部18、ハニカム部15、及び車内側(下側)の封止板部17がいずれも合成樹脂によって形成されていること。
【0066】
(iv)ハニカム構造体14におけるセル15Aの大きさが、自動車構成部材とハニカム構造体14との間隔に応じて異なっていること。
そのため、自動車用フード12は、ハニカム構造体14におけるセル15Aの大きさが均一であり、かつ、座屈(潰れ変形)のみによって歩行者との接触(衝突)の際のエネルギーを吸収するのに必要な大きさ(小)に設定されている場合に比べ、軽量となる。
【0067】
以上のことから、本実施形態の自動車用フード12は、金属製のアウタパネルの車内側(エンジンルーム側)に金属製のインナパネルを配置した一般的な金属製自動車用フードよりも軽量となる。また、本実施形態の自動車用フード12は、フード本体13の略全体が金属製のハニカム構造体14によって形成されたものに比べても軽量となる。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)第2パネルP2に設けられた被係合部22と、第1パネルP1に設けられて被係合部22に係入される爪部24とを備え、その係入により、両封止板部17,18の間隔が変化する方向への両パネルP1,P2の変位を規制する第1仮固定部A1を設ける(図2)。
【0069】
第1パネルP1に一体に設けられた中間部材25を両パネルP1,P2間に備え、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で中間部材25を第2パネルP2に係止させる第2仮固定部A2を設ける(図2)。
【0070】
両パネルP1,P2間で互いに接触している箇所同士を超音波溶着により直接結合してなる第3仮固定部A3を設けている(図3、図4)。
このように、第1〜第3仮固定部A1〜A3による第2パネルP2の第1パネルP1に対する仮固定を、いずれも両パネルP1,P2の一部において行なうようにしている。そのため、接着剤19の硬化中、両パネルP1,P2の外部に、治具等、仮固定を行なうものを配置する必要がなくなる。その結果、接着剤19の硬化中であっても、次工程へ移行し、自動車用フード12の製造時間を短縮することができる。
【0071】
(2)第1仮固定部A1、第2仮固定部A2及び第3仮固定部A3を、第1パネルP1及び第2パネルP2において、同第2パネルP2のハニカム部15に対する接合面に沿う方向である前後方向へ、列をなすように設けている(図1)。
【0072】
そのため、隣合う仮固定部間の距離を短くし、中間部分で第2パネルP2が第1パネルP1から浮き上がるのを抑制することができる。その結果、第2パネルP2を、同第2パネルP2のどの箇所においてもハニカム部15に対し接触した状態に保持(仮固定)することができる。
【0073】
(3)上記(2)の前後方向について、第1仮固定部A1を前端部に設け、第3仮固定部A3を後端部に設け、第2仮固定部A2を中間部分に設けている(図1)。
そのため、前後方向についての前端部では、第1仮固定部A1により第2パネルP2を第1パネルP1に仮固定し、両封止板部17,18の間隔が変化する方向への両パネルP1,P2の変位を規制することができる。
【0074】
また、前後方向についての後端部では、第3仮固定部A3により第2パネルP2を第1パネルP1に仮固定し、両封止板部17,18の間隔が変化する方向への両パネルP1,P2の変位を規制することができる。
【0075】
さらに、前後方向についての中間部では、第2仮固定部A2により第2パネルP2を第1パネルP1に仮固定し、第1仮固定部A1及び第3仮固定部A3間で第2パネルP2がハニカム部15から浮くのを抑制することができる。
【0076】
(4)中間部材25の第2パネルP2に対する係止を両面テープ26によって行なうようにしている(図2、図5)。
そのため、第2パネルP2を第1パネルP1に接近させて、両面テープ26を第2パネルP2及び中間部材25に貼着させるといった簡単な作業を行なうだけで、中間部材25を第2パネルP2に対し瞬時に係止することができる。
【0077】
(5)樹脂成形により形成される第1パネルP1及び第2パネルP2のうち、車内側に配置されるパネルである第1パネルP1に中間部材25を一体成形するようにしている。車外側に配置されるパネルである第2パネルP2には、中間部材25を一体成形していない。
【0078】
そのため、樹脂成形後に中間部材25の収縮に起因して、パネルの表面に「ひけ」が生じたとしても、そのひけを車内側の第1パネルP1に生じさせ、ひけが第2パネルP2の外表面(フード本体13の意匠面)に表れないようにし、自動車用フード12の外観の低下を招くのを抑制することができる。
【0079】
(6)被係合部22を、縦壁部21及び横壁部23により構成する。この被係合部22と封止板部18とにより、被係合部22と爪部24との係合部分を支点とする第2パネルP2の第1パネルP1に対する回転を許容する(図5)。
【0080】
そして、第2パネルP2の第1パネルP1への仮固定に際し、爪部24を被係合部22に係合させることで第1仮固定部A1のみによる仮固定を行なう。この状態で、係合部分を支点として、第2パネルP2を第1パネルP1側へ回転させて、ハニカム部15に近づけたうえで、第2仮固定部A2及び第3仮固定部A3による各仮固定を行なうようにしている。
【0081】
そのため、係合部分を支点とした第2パネルP2の上記回転により、第2仮固定部A2では、中間部材25を第2パネルP2に近づけ、第3仮固定部A3では、両パネルP1,P2の溶着予定箇所同士を接近させることができ、第2仮固定部A2による仮固定作業、及び第3仮固定部A3による仮固定作業をスムーズに行なうことができる。
【0082】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<第1仮固定部A1に関する事項>
・第1仮固定部A1は両パネルP1,P2の前端部から後方へ離れた箇所に設けられてもよい。
【0083】
・第1仮固定部A1は、第1パネルP1及び第2パネルP2の全幅にわたって設けられてもよい。
・第1仮固定部A1に、第2パネルP2の車幅方向における位置決めを行なうための構造を追加してもよい。図6〜図8はその一例を示している。
【0084】
図6に示す第1仮固定部A1では、封止板部18の被係合部22の下端部を構成する横壁部23に、上面、下面及び後面において開口する切欠き部34が形成されている。また、封止板部17の爪部24の近傍であって、上記切欠き部34に対応する箇所には、同封止板部17から下方へ突出する係合突部35が設けられている。
【0085】
この変更例によると、図7に示すように、爪部24が被係合部22に係入される過程で係合突部35が切欠き部34に係合される。この係合により、第2パネルP2の車幅方向における位置が決定・保持される。
【0086】
図8に示す第1仮固定部A1では、被係合部22の縦壁部21に、後面において開口する穴36が形成されている。また、爪部24には前方へ突出する突起37が設けられている。
【0087】
この変更例によると、爪部24が被係合部22に係入される過程で、突起37が穴36に嵌入される。この嵌入により、第2パネルP2の車幅方向における位置が決定・保持される。
【0088】
<第2仮固定部A2に関する事項>
・図9(A)に示すように、第1パネルP1及び第2パネルP2間に第1中間部材38及び第2中間部材39が設けられ、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で、第1中間部材38が第2中間部材39に係止されてもよい。
【0089】
この場合、第1中間部材38は、第1パネルP1の封止板部17から第2パネルP2側(上側)へ延びる支柱部38Aと、その支柱部38Aの先端(上端)に位置する係止爪部38Bとからなり、全体が第1パネルP1に一体に形成される。第2中間部材39は、第2パネルP2の封止板部18から第1パネルP1側(下側)へ延びる支柱部39Aと、その支柱部39Aの先端(下端)に位置する係止爪部39Bとからなり、全体が第2パネルP2に一体に形成される。
【0090】
ここで、支柱部38Aの長さをL1、支柱部39Aの長さをL2、ハニカム部15の長さ(高さ)をL3とすると、次式(1)が満たされるように、各長さL1〜L3が設定されている。
【0091】
(L1+L2)<L3 ・・・(1)
そして、図9(B)に示すように、第2パネルP2とハニカム部15との間に接着剤(図示略)が介在された状態で、係止爪部38Bが係止爪部39Bに引っ掛けられることによって、第1中間部材38が第2中間部材39を通じて第2パネルP2に係止される。
【0092】
この場合、上記(1)の寸法関係を満たしていることから、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で、第1中間部材38が第2中間部材39を通じて第2パネルP2に係止される。この係止により、同図9(B)において矢印Rで示すように、第2パネルP2がハニカム部15に押付けられた状態に保持される。
【0093】
・図10(a)に示すように、第2パネルP2の封止板部18に、第1パネルP1側(下側)へ延びるリブ41が中間部材として一体に設けられる。第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で、リブ41が超音波溶着により封止板部17に直接結合されてもよい。この場合、矢印Sで示す方向に第2パネルP2が加圧されながら超音波振動が加えられる。この結合により、リブ41が第1パネルP1に係止され、第2パネルP2がハニカム部(図示略)に押付けられた状態に保持される。
【0094】
・図10(b)に示すように、第2パネルP2の封止板部18に、第1パネルP1側(下側)へ延びるリブ42が中間部材として一体に設けられるとともに、第1パネルP1の封止板部17に孔43が形成される。そして、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で、リブ42が孔43に挿通され、孔43から車内側(下側)へ突出した部分においてリブ42が熱により第1パネルP1に溶着されてもよい。この場合であっても、リブ42が第1パネルP1に係止され、第2パネルP2がハニカム部(図示略)に押付けられた状態に保持される。
【0095】
なお、図10(A)及び図10(B)と表記せずに図10(a)及び図10(b)と表記したのは、以下の理由による。図9(A)及び図9(B)が第1中間部材38を第2中間部材39に係止する前後の状態を示しているのに対し、図10(a)及び図10(b)は、第2パネルP2を第1パネルP1側へ引き寄せた状態で中間部材(リブ41,42)を第1パネルP1の封止板部17に係止させる変更例をそれぞれ示している。そのため、表記を上記のように異ならせることで、図9(A)及び図9(B)と、図10(a)及び図10(b)とが、異なる態様で変更例を表現していることを明らかにしている。
【0096】
<第3仮固定部A3に関する事項>
・第3仮固定部A3は、前後方向については、両パネルP1,P2の後端部から前方へ離れた箇所に設けられてもよい。
【0097】
・超音波溶着によって溶着されるリブ27の大きさ(高さH、幅W等)、長さ及び断面形状の各々は、適宜変更可能である。
<第1〜第3仮固定部A1〜A3に関する事項>
・自動車用外装品が自動車用フード12である場合、第1〜第3仮固定部A1〜A3は、車幅方向へ列をなすように設けられてもよいし、前後方向及び車幅方向のいずれの方向についても列をなさないように設けられてもよい。
【0098】
・第1〜第3仮固定部A1〜A3は、前記実施形態とは異なる配置順をもって、列をなすように設けられてもよい。
<フード本体13全体に関する事項>
・フード本体13は、その少なくとも一部がハニカム構造体14によって形成されたものであればよい。従って、フード本体13は、その略全体がハニカム構造体14によって形成された前記実施形態とは異なり、一部のみがハニカム構造体14によって形成されてもよい。例えば、フード本体13の中央部やその近傍部分、フードヒンジ31の近傍部分、及び両フードヒンジ31によって挟まれた後縁部近傍部分のみがハニカム構造体14によって形成されてもよい。
【0099】
・本発明は、フード本体13が前記実施形態よりも前後方向に長い自動車用フード12にも適用可能である。
・フード本体13は、略水平方向とは異なる方向、例えば略上下方向へ延びるものであってもよい。この場合、フード本体13は略水平方向に開閉動作する。
【0100】
<ハニカム構造体14の材料について>
・ハニカム構造体14の材料は、エンジンルーム11内の温度に耐え得る耐熱性を有する樹脂材料の中から、セル15Aの座屈(潰れ変形)による衝撃エネルギー吸収特性の設定の容易性や取り扱い性、さらには、コスト等を考慮して、適宜に選択されて用いられることが望ましい。
【0101】
こうした観点から、ハニカム構造体14が例えば繊維強化樹脂によって形成されてもよい。繊維強化樹脂としては、例えば、PP、PA、PET等の合成樹脂を母材とし、これに繊維長の比較的短い炭素繊維、ガラス繊維等の繊維を強化材として含有した複合材料が用いられてもよい。
【0102】
<ハニカム構造体14の構成について>
・車内側(下側)の封止板部17に代えて、車外側(上側)の封止板部18がハニカム部15と一体に形成されてもよい。
【0103】
<セル15Aに関する事項>
・各セル15Aは、その開口端における各辺が均一でないものであってもよい。例えば、偏平な六角筒状(相対向する1組の辺のみが、相対向する他の組の辺よりも長い場合)がこれに該当する。
【0104】
・ハニカム構造体14におけるハニカム部15は、大きさの異なる3種類以上のセル15Aによって構成されてもよい。この場合、セル15Aを、ハニカム構造体14と自動車構成部材との間隔が狭い箇所では、同間隔の広い箇所よりも小さく形成する。このようにすれば、軽量化とエネルギー吸収性能の向上とを、より一層高い次元で実現することが可能となる。
【0105】
<フードヒンジ31に関する事項>
・フードヒンジ31は、自動車用フード12側の部材でなく車体側の部材とされ、フード本体13のみによって自動車用フード12が構成されてもよい。
【0106】
・本発明は、フード本体13が、その後端部、かつ車幅方向についての両端部とは異なる箇所において車体に開閉可能に支持される自動車用フード12にも適用可能である。
例えば、両フードヒンジ31は、フード本体13の前端部、かつ車幅方向についての両端部に設けられてもよい。この場合、自動車用フード12は、上記両フードヒンジ31を支点として上下方向へ傾動することにより、エンジンルーム11の開口部を開閉する。また、フードロックストライカ32は、フード本体13の後端部に設けられる。そして、フードロックストライカ32の車体側のフードロックに対する係止及びその解除は、エンジンルーム11の後ろ側で行なわれる。
【0107】
また、本発明は、フード本体13が車幅方向についての一方の端部、すなわち左端部又は右端部において、車体に開閉可能に支持される自動車用フード12にも適用可能である。
【0108】
・フード本体13は、1つ又は3つ以上のフードヒンジ31によって車体に開閉可能に支持されるものであってもよい。
<その他の事項>
・自動車用フード12によって開閉される収容室としては、上記実施形態で説明したエンジンルーム11が代表的である。それ以外の収容室としては、例えば、次のものが挙げられる。
【0109】
車体の後部に荷室(トランクルーム)が設けられている自動車では、この荷室が収容室の対象となり得る。
また、車体の後部にエンジンを搭載し、後輪を駆動する方式(RR方式)の自動車の場合、車体の前部に荷室(トランクルーム)が設けられているが、この荷室も収容室となり得る。
【0110】
車体の前部に荷室が設けられた電気自動車についても上記と同様である。この場合、荷室が収容室となり得る。
・本発明は、自動車用フード以外の自動車用外装品にも適用可能である。例えば、自動車用ドアがこれに該当する。この自動車用ドアには、フロントドア、リヤドア、バックドア等が含まれる。
【0111】
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
(A)請求項3に記載の自動車用外装品の仮固定構造において、前記被係合部は、前記封止板部との協働により、前記爪部との係合部分を支点とする前記第2パネルの前記第1パネルに対する回転を許容する構造を有しており、
前記第2パネルの前記第1パネルへの仮固定に際しては、前記爪部が前記被係合部に係合させられることで前記第1仮固定部のみによる仮固定が行なわれ、この状態で、係合部分を支点として、前記第2パネルが前記第1パネル側へ回転させられて、前記ハニカム部に近づけられたうえで、前記第2仮固定部及び前記第3仮固定部による各仮固定が行なわれるものである。
【0112】
上記の構成によれば、第2パネルを第1パネルに仮固定する際には、まず、爪部が被係合部に係入されることで、第1仮固定部のみによる仮固定が行なわれる。この状態で、爪部及び被係合部の係合部分を支点として、第2パネルが第1パネル側へ回転させられることで、同第2パネルがハニカム部に近づけられる。これに伴い、第2仮固定部では、一方のパネルに設けられた中間部材が他方のパネルに近づけられる。第3仮固定部では、両パネルの溶着予定箇所が接近する。そのため、第2仮固定部による仮固定作業、及び第3仮固定部による仮固定作業をスムーズに行なうことができる。
【符号の説明】
【0113】
12…自動車用フード(自動車用外装品)、15…ハニカム部、15A…セル、16…隔壁、17,18…封止板部、19…接着剤、22…被係合部、24…爪部、25…中間部材、26…両面テープ、38…第1中間部材、39…第2中間部材、41,42…リブ(中間部材)、A1…第1仮固定部、A2…第2仮固定部、A3…第3仮固定部、P1…第1パネル、P2…第2パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により互いに区画されて自動車の内外方向へ延びる多数の筒状のセルからなるハニカム部と、前記ハニカム部を、車内側及び車外側から挟み込んで各セルを封止する一対の封止板部とを備え、一方の封止板部と前記ハニカム部とは互いに一体となった第1パネルとされ、他方の封止板部は第2パネルとされ、同第2パネルが前記第1パネルの前記ハニカム部に対し接着剤により接合される自動車用外装品に適用されるものであり、前記接着剤の硬化中、前記第2パネルを前記第1パネルに仮固定する自動車用外装品の仮固定構造であって、
前記第1パネル及び前記第2パネルの一方のパネルに設けられた被係合部、及び他方のパネルに設けられて前記被係合部に係入される爪部を備え、その係入により、前記両封止板部の間隔が変化する方向への前記両パネルの変位を規制する第1仮固定部と、
前記第1パネル及び前記第2パネル間に、一方のパネルに一体に設けられた中間部材を少なくとも備え、前記第2パネルを前記第1パネル側へ引き寄せた状態で前記中間部材を他方のパネルに係止させる第2仮固定部と、
前記第1パネル及び前記第2パネル間で互いに接触している箇所同士を超音波溶着により直接結合してなる第3仮固定部と
を備えることを特徴とする自動車用外装品の仮固定構造。
【請求項2】
前記第1仮固定部、前記第2仮固定部及び前記第3仮固定部は、前記第1パネル及び前記第2パネルにおいて、同第2パネルの前記ハニカム部に対する接合面に沿う方向へ列をなすように設けられている請求項1に記載の自動車用外装品の仮固定構造。
【請求項3】
前記第1仮固定部は、前記方向についての一方の端部に設けられ、
前記第3仮固定部は、前記方向についての他方の端部に設けられ、
前記第2仮固定部は、前記方向についての前記一方の端部と前記他方の端部との間に設けられる請求項2に記載の自動車用外装品の仮固定構造。
【請求項4】
前記中間部材の前記他方のパネルに対する係止は、同他方のパネル及び同中間部材に対し、両面において貼着される両面テープにより行なわれる請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車用外装品の仮固定構造。
【請求項5】
前記第1パネル及び前記第2パネルは樹脂成形により形成されるものであり、
前記中間部材が一体に形成される前記一方のパネルは、前記第1パネル及び前記第2パネルのうち車内側に配置されるパネルにより構成され、
前記中間部材が係止される前記他方のパネルは、前記第1パネル及び前記第2パネルのうち車外側に配置されるパネルにより構成される請求項1〜4のいずれか1つに記載の自動車用外装品の仮固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−176710(P2012−176710A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41452(P2011−41452)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】