説明

自己滅菌性製品

自己滅菌製品に係り、特に、ポリマーに結合したフタロシアニン誘導体を有する新規の製品、この製品の調製方法、自己滅菌性の工業及び医薬の物品又は用具を調製するための使用について、述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン誘導体の分野に係り、特に、自己滅菌性(self−sterilising)を有する新規の製品であって、下記の一般式(I)のフタロシアニン誘導体がポリマーに結合されたものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおいて、接触によって、多くの伝染病が感染する。これは、特に、カテーテル、移植片、プラスティック製コンタクトレンズやこれらに類するものなどの医療用具の使用に関連する感染において、顕著である。事実、ほぼ全ての場合、用具の異種材料上で生育するこれらの伝染病に関与する微生物は、特に毒性を有し、標準的な処理や現在使用されている抗菌剤による不活化に耐性を有する。
【0003】
一般的に知られているように、抗生剤に対する耐性は、微生物の生育とともに発達し、医療従事者及び一般大衆に懸念を抱かせるものである。さらに、新規の抗生剤が、将来、可能な問題を阻止するように、急速且つ効果的に開発され得るかどうかについての関心がある。知られているように、新規の抗生剤の開発は、非常に高価で、且つ長期間の工程であり、その間、微生物は、公知の作用機序に基づいた新規の抗生剤の存在下での進化的圧力下で、より急速に耐性が増加する。
【0004】
従って、原因となる微生物因子を根絶し得る新規の活性本体及び代替法について、継続して研究が進行している。
【0005】
医療物品及び用具の滅菌について、公知の方法としては、ガス状又は溶液状の細胞毒性物質を用いた処理、高エネルギーの放射線への曝露、熱処理などの種々の処置が挙げられる。
【0006】
不運なことに、これらの場合で達成される滅菌のレベルは、一次的なものであり、用具の使用中及び使用の間の両方で、繰り返しの処理で更新される必要がある。言い換えれば、公知の手法により提供される滅菌は、永続的なものではなく、最初の使用の後、再利用され得る前に、材料を、新たな滅菌サイクルに付さねばならない。
【特許文献1】米国特許第5,965,598号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 164 135号明細書
【特許文献3】欧州特許第1 381 611号明細書
【特許文献4】国際特許出願第PCT/EP2006/062059号明細書
【非特許文献1】Ben−Hur E.ら著、Int.J.Radiat. Biol.、1985年、47巻、p.145−147
【非特許文献2】Hermanson著、Bioconjugate Techniques、1996年、Academic Press社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結論として、医療分野、又は物品及び用具の表面を長期間滅菌する必要があり且つ持続的に作用させ得るその他の分野に使用可能な物品及び用具を製造するのに適した、それ自体で殺菌作用及び滅菌作用を有する利用可能な材料を製造することに、重要な関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願出願人は、驚くべきことに発見したように、抗菌活性を有する下記の一般式(I)のフタロシアニン誘導体は、ポリマーの表面に固定されてもよく、一方で、抗菌活性を維持する。
【0009】
従って、本発明の主題は、一般式(I)のフタロシアニン誘導体に結合したポリマーを有するポリマー製品である。
【0010】
【化7】

【0011】
ここで、Mは、2H、並びにZn、Si(OR’)、Ge(OR’)及びAlOR’からなる群から選択された金属から選択され、R’は、H、及び1〜15の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである。
【0012】
Rは、H、少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び特定のキャリアにコンジュゲートするのに適した置換基から選択され、
は、Rと同一又は異なって、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基から選択され、
及びRは、互いに同一又は異なって、H、1〜10の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜10の炭素原子を有するチオアルキル基、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基から選択されるものであって、
但し、
a)R、R、R及びRの少なくとも1つは、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基又は少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基であり、R、R、R及びRが少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基若しくは少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基、又はR及びRが少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基若しくは少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基であり且つR及びRがHである場合、前記の少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、又は前記の少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基は、上記と同様であり、
b)R及びRが両方ともHと異なる場合、これらは、1,4位、又は2,3位に存在し、R及びRの一方のみがHと異なる場合、1位又は2位に存在し、
c)R及びRが両方ともHと異なる場合、8,11,15,18,22,25位、又は9,10,16,17,23,24位に存在し、R及びRの一方のみがHと異なる場合、8(11),15(18),22(25)位、又は9(10),16(17),23(24)位に存在する
ことを条件とし、
この誘導体、及びその医薬的に許容な塩である。
【0013】
本発明のさらなる主題は、上記のポリマー製品の調製方法、自己滅菌性の工業及び医薬物品又は用具の製造又はコーティングへの使用とともに、上記のポリマー製品を有する少なくとも1つの表面を有する製品及び用具である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の通り、本発明の特徴及び利点について、示す。
【0015】
フタロシアニン誘導体は、腫瘍、及び微生物の感染の両者の処理用で公知の光線力学療法(又はPDT)に有用な感光性分子として知られている。フタロシアニンは、事実、生存する真核細胞又は原核細胞に局在化し得る化合物であり、且つ光を吸収して活性酸素種(ROS)、特にラジカルや一重項酸素を発生し、従って、光学力線工程に関連する細胞を破壊すると長く信じられてきた(非特許文献1)。
【0016】
出願人により調製したフタロシアニン誘導体の例は、特許文献1に述べられている。これらの製品は、微生物感染の処理、非経口投与用の溶液の形態、又は局所投与用のクリーム、ゲル、軟膏及びローションの形態に有用な医薬組成物を調製するのに用いられているが、現在、物品及び用具の製造に結合したポリマーに結合又は組み合わせるのに使用されていない。大員環の特徴及び置換基の存在により、活性酸素種(ROS)の製造に強く影響を与え、従って、微生物の不活化を誘導する能力を有する。
【0017】
また、活性酸素種(ROS)の産生は、フタロシアニンが見出される環境に強く依存する。特に、濃度が高くなると、つまり、溶液中でフタロシアニンが凝集すると、感光作用の効果が減弱する。感光の負の効果は、フタロシアニン核における置換基が移動性(mobility)を低下させる場合にも、例えば立体的インピーダンス(steric impedance)故、観察される。驚くべきことに、本発明のフタロシアニン誘導体及びその調製方法を使用することにより、本願出願人は、ポリマー表面にフタロシアニン誘導体を固定化した後であっても、活性酸素種(ROS)の産生により媒介される抗菌活性が効果を有することを見出した。特に、本願出願人が観察したように、一般式(I)に示す本発明のフタロシアニンにより改変される場合、微生物と接触するポリマーの表面は、自己滅菌性となる。
【0018】
本発明のポリマー製品は、微生物の生物膜、複合体、並びにカテーテル、人工弁、義歯及びその他の非生物性表面を移植し得る良好に組織化された均一系を不活性化するのに有効であるが、ヒトの組織、特に、感染創傷の領域や慢性潰瘍の組織などの生物学的組織にも有効である。
【0019】
生物膜は、プランクトン(plankton)の状態の細胞と比較した場合、ユニークな表現型を示す;特に、これは、根絶するのが非常に困難な微生物の生物膜に関連した慢性感染の多重的な耐性のため、最も一般的な抗菌治療に数倍のオーダーの耐性を有する。
【0020】
本発明において、表現「抗菌活性」は、制菌活性及び殺菌活性の両方を意味し、且つ含むものである。特に、本発明のポリマー製品は、グラム陽性及びグラム陰性の微生物に対して有効であり、また、菌類、マイコプラズマ、原虫、蠕虫、ウィルスにも有効である。
【0021】
使用するフタロシアニン誘導体、及びポリマー表面におけるその濃度に依存して、抗菌活性は、表面を可視光に曝露することにより、又は放射のない場合であっても、発現され得る。第一の場合、抗菌活性は、存在する場合に全体の時間の間、抗菌活性が維持され、また一定の暗期の後に表面に再び光を照射すると、回復される。本発明の分子は、日光又は人工照明の強度において効果的に可視光を吸収し得る。UV−VISのスペクトルは、約400nm及び700nm、つまり、光スペクトルの可視領域で強い吸収の2つのバンドを示し、従って、両方の光源は、滅菌されるべきポリマー又は材料を照射するのに使用されてもよい。
【0022】
本発明の製品の抗菌活性が可視光の後に低エネルギーの光に曝露することにより表現される場合、有害な効果を有さず、また滅菌されるべき材料の特性も変化を生じない。
【0023】
照射しない条件下でも有効であるので、本発明のポリマー製品は、人体の内部に使用することを意図された人工装具、ステント及び類似の医療製品が本発明の製品により製造されてもよく、体内での使用、従って、可視光の不存在下において、自己滅菌性の特性を低下させるものでもないという追加の利点を有する。
【0024】
本発明において、表現「少なくとも1つの4級アンモニウム基又は脂肪族アミノ酸基を有する置換基」は、好ましくは、(X)を意味し、Xは、O、−CH−、CO、S、SO及びNRからなる群から選択され、Rは、H及びC〜C15のアルキル基から選択され、Rは、下記式
【0025】
【化8】

【0026】
であって、ここで、Yは、可能に置換された、C〜C10のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択され、又はYは、Z基に結合して、可能に置換された、飽和又は不飽和の複素環を形成し、この複素環は、N、O及びSからなる群から選択される2つ以下のヘテロ原子を有してもよく;
Zは、−N、−CHN及び−CONHCHCHNからなる群から選択され;
及びRは、互いに同一又は異なって、C〜C15のアルキル及びフェニルからなる群から選択され、又はZと結合して、可能に置換された、飽和又は不飽和の複素環を形成し、この複素環は、N、O及びSからなる群から選択される2つ以下のヘテロ原子を有してもよく;
及びRは、互いに同一又は異なって、H、C〜C15のアルキル、及びR10COOEt又はR10COOMeからなる群から選択され、ここで、R10は、C〜C15のアルキルであり;
m、n、p、w、t及びuは、互いに独立に、0又は1であり;且つ
vは、1〜3の整数であり、
但し、n、w、t及びuのひとつのみが同時に0である。
【0027】
本発明によると、少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基について、下記の群から選択されるものであることが好ましい:
【0028】
【化9】

【0029】
本発明によると、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基について、下記の群から選択されるものであることが好ましい:
【0030】
【化10】

【0031】
少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基については、下記の群のものであることが特に好ましい:
【0032】
【化11】

【0033】
少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基については、下記の群のものであることが特に好ましい:
【0034】
【化12】

【0035】
本発明の好適実施例によると、Mは、Znである。
【0036】
用語「飽和又は不飽和の複素環」は、モルフォリン、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾール、アニリン及びジュロリジン(julolidine)からなる群から選択された複素環であることを好ましく意味する。
【0037】
用語「特定のキャリアにコンジュゲートするのに適した置換基」は、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質、多糖類及びアプタマーなどの生物有機キャリアに共有結合に適した種々の置換基であって、上記のフタロシアニンの固相への結合を促進し得るものを意味する;上記の表現は、−COOH、−SH、−NH、−CO−CH−Br、−SOCl、マレイミド、ヒドラジン、フェノール、イミデート(imidate)、ビオチンからなる群から選択された置換基を好ましく示し、適当なスペーサーである(X)−Wを介してフタロシアニン核に結合し得るものである。なお、X及びpは、上記に定義した通りのものであり、Wは、C〜C10のアルキル、アリール、及びC〜Cのアリールアルキルから選択される。
【0038】
Rが上記に定義の通りの特定のキャリアにコンジュゲートするのに適した置換基である場合、Rは、好ましくは、Hであり、R及びRは、H、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基から選択されるものであって、R及びRの少なくともひとつは、Hと異なるものである。
【0039】
式(I)のフタロシアニン誘導体は、例えば、本願出願人による特許文献1乃至3に開示の通りの公知の方法により市販品から調製され得る対応するアミノ酸誘導体から調製されてもよい。
【0040】
本発明の製品に含まれるポリマーは、水及び生体液に不溶性の材料から選択されてもよい。
【0041】
本発明による適当なポリマーの例としては、合成又は天然であってもよく、限定されないが、綿、ビスコース(viscose)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、多糖類、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、シリコン誘導体及びこれらの混合物が挙げられる;これらは、固形、繊維、布地、又はフィルムの形態に加工されてもよい。
【0042】
デキストラン及びその誘導体、蛋白質及びそのメチル化誘導体、蛋白質の加水分解物、並びにこれらに類するものなどの水及び生体液に可溶なポリマーは、上記の不溶解性のポリマーに加えて、混合物又はコーティング物中に、本発明の製品に含まれてもよい。
【0043】
本発明の製品は、医療分野及び工業分野に使用する物品又は装置を製造及びコーティングする方法に使用されてもよく、フタロシアニン誘導体のおかげで、自己滅菌性の特徴を有する表面を有するものである。
【0044】
上記の物品又は装置としては、限定されないが、カテーテル、ガイドチューブ、プローブ、心臓弁、軟組織用の人工装具、動物由来の人工装具、人工の腱、骨、及び心臓の代替品、コンタクトレンズ、血液酸素付加装置、人工の腎臓、心臓、膵臓及び肝臓、血液バッグ、シリンジ、外科用具、フィルター系、実験器具、培養並びに細胞性及び組織再生用の容器、ペプチド、蛋白質及び抗体用の支持体、家庭内及び病院内での使用用の臨床補助具、並びに美容用の容器及び機器が挙げられる。
【0045】
本発明の自己滅菌性の製品は、複合物品(complex article)、コーティング、フィルム及び繊維などの種々の物品の製造に使用されてもよい;繊維は、布地、ニット品に変換されてもよく、又は創傷用の包帯及び絆創膏などに有用な不織布地を製造するのに使用されてもよい。
【0046】
本発明の製品は、1つ以上の医薬的に許容な活性物質を有してもよく、例えば、抗生物質、抗感染物質、抗菌物質、抗ウィルス物質、細胞増殖抑制物質、抗腫瘍物質、抗炎症物質、創傷用の瘢痕形成薬、麻酔物質、コリン性又はアドレナリン性のアゴニスト又はアンタゴニスト、抗血栓物質、抗凝血物質、止血物質、線維素溶解物質、血栓溶解物質、蛋白質又はそのフラグメント、ペプチド、ポリヌクレオチド、成長因子、酵素及びワクチンからなる群から選択される物質が挙げられる。
【0047】
本発明のフタロシアニン誘導体は、ポリマーに物理的、又は共有的に結合されてもよい。代替例として、その表面は、前もって処理されてもよく、固定化は、前処理に用いた材料上で行われてもよい。
【0048】
本発明の製品は、フタロシアニン誘導体を、モノマーと反応させ、その後、重合反応を行うことにより、又は代替的に、前もって調製されたポリマーを式(I)のフタロシアニン誘導体と反応することにより、調製されてもよい。
【0049】
特定の反応条件は、ポリマー表面に依存し、また、フタロシアニン核上の置換基の性質に依存するが、それぞれの場合、反応は、当業者に一般的に知られている技術を使用することにより、実行されてもよい。
【0050】
式(I)のフタロシアニン誘導体は、スペーサーに直接又はスペーサーを介して、ポリマー表面に結合されてもよい;この場合、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、1,1’−カルボニルジイミダゾールクロロトリアジン、臭化シアン、混合無水物、イミドエステル及びマレイミド誘導体などの適当な二官能基剤を使用する;その他、例えば、ポリマーに導入され、又は第二ステップで添加されたアクリル酸などの酸試薬のドーパントを使用する。
【0051】
本発明の追加的な実施例において、ポリマー表面は、物理的又は化学的方法のいずれかを用いて、フタロシアニンが蛋白質コーティング上に固定化され得るように、蛋白質溶液で最初にコーティングされる。
【0052】
代替例として、フタロシアニンは、カルボキシル基により、ポリマーのアミノ酸誘導体に結合して、アミド基を形成する。
【0053】
また、その他の官能性は、適当な化学的方法を使用して、感光化合物に導入されてもよく、例えば、物理的方法を用いた固定化を可能とするのに有用なカルボキシエチル基を、代替的に加水分解し、得られるカルボキシル性を、対応する酸塩化物、アジド又は活性エステルに変換して活性化し、その後、本技術分野公知の化学方法を用いて、求核置換基を有するポリマー製品に導入されてもよい。
【0054】
それぞれの場合、任意にコーティング又は誘導体化されたポリマー(又はモノマー)と、式(I)のフタロシアニン又は例えばヨウ素又は塩化物などの塩を、適当な溶媒に溶解することにより調製されたフタロシアニン溶液との間で、反応を行う。
【0055】
ポリマー表面に固定されたフタロシアニン誘導体の量は、広範な値の範囲で可変な濃度を得るように、最適化される。微生物の光不活性化は、存在するフタロシアニンの量に依存するものであって、必要とする光殺菌活性及び滅菌活性のレベルに依存して可変である。
【0056】
効果的な自己滅菌性の製品を得るため、溶液中のフタロシアニン濃度は、例えば、10μM〜10mMの濃度で可変であってもよく、好ましくは、1mMである。
【0057】
公知の滅菌方法と比較して、本発明の製品を使用することに関連した複数の利点がある:滅菌方法に含まれる活性酸素種(ROS)の産生は、表面上の感光剤の濃度、光の強度、及び使用する光の種類を改変することにより、簡単に調節され得る:人工光及び天然光を用い、並びにスペクトルの可視領域の波長を選択して、放射を行ってもよい。さらなる利点としては、滅菌性を達成するため、特殊な装具又は機器を必要とせず、伝統的な滅菌剤を用いた処理を繰り返す必要もない。
【実施例】
【0058】
本発明の非限定的な例を、例示する目的で下記に示す。
【0059】
(例1)
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(トリメチルアンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド[化合物1]の調製
0.272gの4−[1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−2−プロピルオキシ]−1,2−ベンゼンジカルボニトリル(1ミリモル)、及び0.384gの1,2−ベンゼンジカルボニトリル(3ミリモル)を、少量のメタノールに溶解する;得た溶液に、Zn(AcO)(0.176g;0.96ミリモル)及びDBU(0.66mL;0.42ミリモル)を添加する。この混合物を、不活性雰囲気下で、3時間30分、150℃に加熱する。青色の混合物を、DMFに溶解し、塩基性の水を用いて、再沈殿し、その後、EtO/DMF(4:1)、EtOAc/DMF(4:1)、EtOAc/DMF(1:1)、EtOAc/DMF(1:2)及びDMFで溶出して、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製される。
【0060】
このようにして得た産物は、式(I)の化合物であって、Mが、Znであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−2−プロピルオキシを2位に有するもの[化合物1ビス]である;10mgのこの産物(0.014ミリモル)を2.5mLのN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、過剰量のMelで処理し、この反応混合物を、室温で、15時間、攪拌する。
【0061】
この混合物から、EtOで産物を沈殿し、濾過で回収し、有機溶媒で複数回、沈殿物を洗浄して、精製して、2[1,3−ビス−(トリメチルアンモニウム)−2−プロピルオキシ]亜鉛(II)フタロシアニンジヨーダイドなる所望の化合物(青色粉末)を得る。
【0062】
UV−vis(DMF)λmax(ε、M−1、cm−1):343、607、672(1.9275×10
【0063】
H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ(ppm)=9.95−9.40(m,7H),9.23(s,1H),8.42−8.35(m,6H),8.25−8.15(m,1H),6.30−6.10(m,1H),4.45−4.10(m,4H),3.55(s,18H)
【0064】
ESI−MS:m/z 375.3[M−2I]2+
【0065】
(例2)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチル−酢酸エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタヨーダイド[化合物2]の調製
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)の化合物[化合物2ビス]を得るように、4−[1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−2−プロピルオキシ]−1,2−ベンゼンジカルボニトリルから出発して、例1に述べた方法に従って、表題の化合物を調製する。
【0066】
5mgのこのアミノ誘導体を有する1mLのN−メチルピロリドンの溶液に、0.5mLのICHCOOEtを添加し、この混合物を、3日間、攪拌する。この産物を、その後、EtOで沈殿し、その固形物を、エーテルを用いて複数回、洗浄し、反応溶媒及び不純物を除去する。
【0067】
最終的に、DMFを用いて採取し、EtOで沈殿し、EtO及びCHClを用いて複数回、洗浄する。
【0068】
H−NMR(300MHz、DMSO−d)δ(ppm)9.5(t,4H,J=8.5Hz),9.1(m,4H),6.2(m,4H),4.7(m,16H),4.4−4.3(b.m.,16H),4.0(q,16H,J=6.8Hz),3.5(s,48H),1.0(t,24H,J=6.8Hz)
【0069】
13C−NMR(300MHz,DMSO−d)δ(ppm)=165.3、156.1、153.1、140.8、134.5、125.0、120.7、112.5、69.6、65.4、62.7、53.8、39.3、14.2
【0070】
UV−vis(DMF)λmax(ε,M−1,cm−1):678,354
【0071】
(例3)
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチル−酢酸エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド[化合物3]の調製
例2に述べた方法に従って、表題の化合物を調製した;このようにして得た化合物についてのNMR分析の結果は、下記の通りである。
【0072】
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ(ppm)9,5−9.3(m,6H),9.1(s,2H),8.1−8.3(m,7H),6.2(m,1H),4.75(m,4H),4.5(b.d.,2H,J=12Hz),4.3(b.d.,2H,J=12Hz),4.05(q,4H,J=10Hz),3.5(s,12H),1.0(t,6H,J=10Hz)
【0073】
13C−NMR(300MHz,DMSO−d)δ(ppm)165.4、155.9、154.2、154.0、153.8、153.4、140.9、138.6、134.3、130.6、124.9、123.2、120.9、112.1、69.3、65.6、62.8、53.5、39.3、14.2
【0074】
(例4)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチル−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタヨーダイド[化合物4]の調製
例2に述べた方法に従って、アルキル化剤としてICHCOOHを用いて、対応する誘導体を得た。
【0075】
(例5)
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチル−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド[化合物5]の調製
例3に述べた方法に従って、アルキル化剤としてICHCOOHを用いて、対応する誘導体を得た。
【0076】
(例6)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=4−ヒドロキシカルボニルフェノキシを2位に有し、R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のトリヨーダイド[化合物6]の調製
例1に述べた方法に従って、[4−(4−ヒドロキシカルボニル)−フェノキシ]−フタロニトリル及び4−(3−ジメチルアミノフェノキシ)−フタロニトリルの出発物質を用いて、式(I)の表題の化合物を得た。
【0077】
(例7)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=4−ヒドロキシカルボニルフェノキシを2位に有し、R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のトリヨーダイド[化合物7]の調製
例1に述べた方法に従って、[4−(4−ヒドロキシカルボニル)−フェノキシ]−フタロニトリル及び3−(3−ジメチルアミノフェノキシ)−フタロニトリルの出発物質を用いて、式(I)の表題の化合物を得た。
【0078】
(例8)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のテトラヨーダイド[化合物8]の調製
a)2,9(10),16(17),23(24)−テトラ[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]亜鉛フタロシアニネート[化合物8ビス]の合成
DBU(29mL、194ミリモル)及び無水Zn(OAc)(3.48g、19ミリモル)を、[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]フタロニトリル(10g、38ミリモル)に添加した;このようにして得た混合物を、160℃とし、この温度で、攪拌下、不活性な雰囲気において、遮光し、4時間保持した。この混合物を室温に戻した後、200mLの脱イオン水で処理し、得た固形物を分離し、水及びメタノールで洗浄した。その粗産物を、クロマトグラフィー精製に付した(シリカゲル、CHCl/MeOH 98/2(v/v))。位置異性体の混合物として所望の化合物を含有する溶出物を濃縮し、CHClに溶解し、n−ヘキサンから再沈殿して、7.62gの異性体的に純粋な混合物を得た(収率72%)。
【0079】
UV−Vis(DMF)λmax(nm)681(ε=70300M−1cm−1)612,356
【0080】
H−NMR(200MHz,DMSO−d)δppm9.01−8.90(m,4H),8.51−8.45(m,4H),7.82−7.73(m,4H),7.49−7.36(m,4H),6.85−6.73(m,12H),3.05−3.02(m,24H)
【0081】
13C−NMR(300MHz,DMSO−d)δppm159.71,159.47,158.33,158.21,153.06,152.53,152.23,152.03,151.77,151.36,139.91,132.89,131.16,131.02,124.23,120.32,110.76,109.17,107.97,107.83,104.59
【0082】
FAB−MS m/z1117[M+H]
【0083】
b)2,9(10),16(17),23(24)−テトラ[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]亜鉛フタロシアニネートテトラヨーダイドの合成
過剰量のヨードメタン(16mL)を、亜鉛2,9(10),16(17),23(24)−テトラ[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]フタロシアニネート(6.32g、5.65ミリモル)を有するNMP(158mL)の溶液に添加し、この混合物を、室温で、遮光し、攪拌下で、120時間、保持し、その後、メタノール(320mL)で希釈し、エチルエーテル(1.3L)で処理して、異性体の混合物の形態で、所望の産物に対応する緑色の沈殿物を得た(9g、収率95%)。
【0084】
UV−Vis(DMF)λmax(nm)677(ε=161000M−1cm−1),609,353
【0085】
H−NMR(200MHz,DMSO−d)δppm9.55−9.43(m,4H),9.09−9.02(m,4H),8.22−8.15(m,4H),8.07−7.76(m,12H),7.62−7.52(m,4H)3.77及び3.75(2s,36H)
【0086】
13C−NMR(200MHz,DMSO−d)δppm157.84,157.67,152.50(m),148.85,140.00(m),134.00,131.77,124.70,121.30(m),120.18,119.89,115.99,115.80,112.70,112.42,56.60
【0087】
ESI−MSm/z388[M−4I−CH3+,573[M−4I−2CH2+,1132[M−4I−3CH
【0088】
例12に述べた方法、及び本願出願人の名義の特許文献4に述べた対応するヨウ化物を出発物質としたフタロシアニン誘導体塩化物を調製する方法を用いることにより、式(I)のフタロシアニン誘導体及び対応するアミノ誘導体中間体を調製した:
【0089】
(例9)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のテトラクロライド[化合物9]、及びMがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物9ビス]
【0090】
(例10)
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[4−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のテトラクロライド[化合物10]、及びMがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物10ビス]
【0091】
(例11)
MがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタクロライド[化合物11]、及びMがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物11ビス]
【0092】
(例12)
MがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N,N−メチルジエチルアンモニウム)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタクロライド[化合物12]、及びMがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N−ジエチルアミノ)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物12ビス]
【0093】
(例13)
方形のポリスチレン(2cm×2cm、0.2cm厚)を、例1に述べる通りに調製した1mMの濃度でDMSOに溶解した化合物1の溶液に浸漬し、4℃で一昼夜、インキュベートした。この溶液を、その後、除去し、ポリスチレンを、メタノール及び水でさらに洗浄した。このようにして得た産物を、使用前に乾燥した。
【0094】
同様に、化合物2、3、8及び9を、この方法に従って、ポリスチレン上に固定化した。ポリスチレン上に4℃で一昼夜インキュベートした後の例9に述べたように調製した化合物9をコーティングすることによる荷重の程度は、この材料からなるペトリ皿を用いることにより、行った。ポリスチレンに吸着した化合物の量を、DMFを用いて脱離した後の化合物9の濃度を分光光度的(690nm)に測定することにより、評価した。コーティングの濃度、つまり、コーティングの調製に使用した出発の溶液における化合物9の濃度の関数としての固相の荷重の結果を、図1に示す。
【0095】
(例14)
ネフィルコンA及びPVAからなるレンズ(Focus Daily、Ciba Vision)、及びシリコーン製のカテーテル(Sterile double lumen 15−French Nelaton、Maersk Medical Sdn、マレーシア)を、1mM及び1μMの化合物1を有するHO/CHOH(4:1)の溶液にそれぞれ4℃で一昼夜インキュベートし、その後、滅菌PBSでリンスすることにより、例1の通りに調製した化合物1によりコーティングした。
【0096】
(例15)
ポリスチレンウェルを、0.1mg/mLの濃度を有するBSA溶液で処理し、37℃で1時間インキュベートした。この溶液を除去し、ウェルを、PBSで洗浄し、例1の通りに調製した化合物1の溶液で即座に処理した。この溶液を、4℃で一昼夜インキュベートし、溶液を除去し、ウェルを、エタノール及び水でさらに洗浄した後、使用前に乾燥した。
【0097】
同様に、例8〜12に述べた化合物8〜12を、上記と同様の方法に従って、ポリスチレンに結合し、同様の結果を得た。
【0098】
(例16)
ポリスチレンウェルを、グルタルアルデヒド(GA)を有する0.1%のPBSの溶液で処理し、37℃で1時間、インキュベートした。GA溶液を除き、ウェルをPBSで洗浄し、例1の通り調製した、1mg/mLの化合物1ビスの溶液で即座に処理した。この溶液を、4℃で一昼夜インキュベートし、溶液を除き、ウェルを使用前に乾燥した。
【0099】
同様に、例2及び8〜12の通りに調製した化合物2ビス、8ビス、9ビス、10ビス、11ビス及び12ビスを、コーティングの目的で使用した。
【0100】
(例17)
シリコーンチューブを、GAを有する0.1%PBSの溶液、及び0.01%のヒト血清アルブミン(HSA)で処理し、37℃で1時間インキュベートした。この溶液を除き、チューブを、PBSで洗浄し、10:90〜90:10の種々の比率で、例1の通りに調製した化合物1を有するDMSO溶液、及びHO/CHOHの混合物の異なる溶液で即座に処理した。
【0101】
溶液を、4℃で一昼夜インキュベートし、溶液を除き、感光性が検知されなくなるまで、チューブを洗浄して、感光可能な化合物の分子コーティングを有するチューブを得た。
【0102】
上記と同様の方法を用いて、例2、3、8〜12の通りに調製した化合物2、3及び8〜12を、シリコーンチューブをコーティングするのに使用し、同様の結果を得た。
【0103】
(例18)
2NのHClの溶液を用いて、室温で3時間、ナイロンチューブを、表面的且つ部分的に脱重合した。重炭酸ナトリウムの溶液を用いてその表面を中和し、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルチオ)−プロピオネート(SPDP)で処理した。反応の後、チューブを、エタノールでさらに洗浄し、1mMのジチオスレイトールで処理し、2−チオピリドンクロモフォアを測定することにより、反応を分光光度的にフォローして、ナイロンチューブ上に固定化された試薬のSHフリーの形態のものを得た。
【0104】
例5、6及び7の通りに調製した化合物5、6及び7であって、非特許文献2に述べる従来法を用いて、フタロシアニン残基にマレイミド基を導入するように前もって改変したものを、固定化に用いた。
【0105】
上記の方法により、改変された表面上にフタロシアニン誘導体を共有結合させる。
【0106】
(例19)
黄色ブドウ球菌(ATCCの6538株)を、Tryptic Soy broth(Difco社製)中で、好気的条件下、37℃で増殖させた。静止期中の培養物から細胞を採取し、PBSで2回洗浄し、同様の緩衝液で、1×10に希釈した。Nelficon A及びPVA製の滅菌コンタクトレンズ(Focus Daily、Ciba Vision)、及び滅菌の二重膜15−フレンチネラトン(Maersk Medical Sdn、マレーシア)のカテーテルであって、例14の通りに調製したシリコンからなるカテーテルを使用した。
【0107】
コンタクトレンズ又はカテーテルの部分を、6ウェルの組織培養プレートに載置し、2mLの黄色ブドウ球菌の懸濁液を、各ウェルに添加した。培養プレートを、37℃で5分間インキュベートし、その後、照射した(600〜700nm、30J/cm)。
【0108】
照射した後、ウェルの懸濁液から採取した100μLを、一連に10倍に希釈し、Tryptic soy agar(TSA)上に載置した。TSAプレートを、37℃で24時間、インキュベートし、コロニーを計数し、CFU/mLとしてその数を示した。
【0109】
処理していない装具について、試験のコントロールを行った。
【0110】
全ての実験について、3〜5回行い、下記の表1及び2に結果をまとめた。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】例13に示すように、DMFで脱離させた後に回収した化合物9の濃度(μM)に対する、コーティングを調製するための溶液の濃度の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接、又はスペーサーを介して一般式(I)のフタロシアニン誘導体に結合されたポリマーを有するポリマー製品であって、
【化1】


Mは、2H、並びにZn、Si(OR’)、Ge(OR’)及びAlOR’からなる群から選択された金属から選択され、R’は、H、及び1〜15の炭素原子を有するアルキル基から選択され、
Rは、H、少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び特定のキャリアにコンジュゲートするのに適した置換基から選択され、
は、Rと同一又は異なって、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基から選択され、
及びRは、互いに同一又は異なって、H、1〜10の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜10の炭素原子を有するチオアルキル基、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基から選択されるものであり、
但し、
a)R、R、R及びRの少なくとも1つは、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基又は少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基であり、R、R、R及びRが少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基若しくは少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基、又はR及びRが少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基若しくは少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基であり且つR及びRがHである場合、前記の少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、又は前記の少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基は、上記と同様であり、
b)R及びRが両方ともHと異なる場合、これらは、1,4位、又は2,3位に存在し、R及びRの一方のみがHと異なる場合、1位又は2位に存在し、
c)R及びRが両方ともHと異なる場合、これらは、8,11,15,18,22,25位、又は9,10,16,17,23,24位に存在し、R及びRの一方のみがHと異なる場合、8(11),15(18),22(25)位、又は9(10),16(17),23(24)位に存在する
ことを条件とする化合物、その誘導体、及びその医薬的に許容可能な塩であることを特徴とする製品。
【請求項2】
前記の少なくとも1つの4級アンモニウム基又は少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基は、(X)であって、
Xは、O、−CH−、CO、S、SO及びNRからなる群から選択され、Rは、H及びC〜C15のアルキル基であり、Rは、下記式
【化2】


であって、Yは、C〜C10のアルキル基及びフェニル基からなる群から選択され、又はYは、Z基に結合して、可能に置換された、飽和又は不飽和の複素環を形成し、この複素環は、N、O及びSからなる群から選択される2つ以下のヘテロ原子を有してもよく;
Zは、−N、−CHN及び−CONHCHCHNからなる群から選択され;
及びRは、互いに同一又は異なって、C〜C15のアルキル及びフェニルからなる群から選択され、又はZと結合して、可能に置換された、飽和又は不飽和の複素環を形成し、この複素環は、N、O及びSからなる群から選択される2つ以下のヘテロ原子を有してもよく;
及びRは、互いに同一又は異なって、H、C〜C15のアルキル、及びR10COOEt又はR10COOMeからなる群から選択され、R10は、C〜C15のアルキルであり;
m、n、p、w、t及びuは、互いに独立に、0又は1であり;且つ
vは、1〜3の整数であり、
但し、n、w、t及びuのひとつのみが同時に0である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項3】
前記の少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基は、下記の群
【化3】


から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項4】
前記の少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基は、下記の群
【化4】


から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項5】
前記の少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基は、下記の群
【化5】


から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項6】
前記の少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基は、下記の群
【化6】


から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項7】
式(I)のフタロシアニン誘導体において、Mは、Znであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項8】
前記の飽和又は不飽和の複素環は、モルフォリン、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾール、アニリン及びジュロリジンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項9】
前記の特定のキャリアにコンジュゲートするのに適した置換基は、−COOH、−SH、−NH、−CO−CH−Br、−SOCl、マレイミド、ヒドラジン、フェノール、イミデート、ビオチンからなる群から選択された置換基であって、適当なスペーサーである(X)−Wを介してフタロシアニン核に結合し得るものであり、X及びpは、請求項1に定義した通りのものであり、Wは、C〜C10のアルキル、アリール、及びC〜Cのアリールアルキルから選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項10】
Rが特定のキャリアにコンジュゲートするのに適当な置換基である場合、Rは、Hであり、R及びRは、H、少なくとも1つの脂肪族アミノ酸基を有する置換基、及び少なくとも1つの4級アンモニウム基を有する置換基から選択され、但し、R及びRの少なくとも1つは、Hと異なることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項11】
前記の一般式(I)のフタロシアニン誘導体は、下記の化合物:
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(トリメチルアンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド[化合物1];
Mが、Znであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物1ビス];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチル−酢酸エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタヨーダイド[化合物2];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)の化合物[化合物2ビス];
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチル−酢酸エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド[化合物3];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチル−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタヨーダイド[化合物4];
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチル−(2−ヒドロキシカルボニル)エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド[化合物5];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=4−ヒドロキシカルボニルフェノキシを2位に有し、R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のトリヨーダイド[化合物6];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=4−ヒドロキシカルボニルフェノキシを2位に有し、R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のトリヨーダイド[化合物7];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のテトラヨーダイド[化合物8];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R2=[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を2,9(10),16(17),23(24)に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物8ビス];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のテトラクロライド[化合物9];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物9ビス];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[4−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のテトラクロライド[化合物10];
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を1,8(11),15(18),22(25)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物10ビス];
MがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタクロライド[化合物11];
MがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N−ジメチルアミノ)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物11ビス];
MがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N,N−メチルジエチルアンモニウム)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタクロライド[化合物12];
MがZnであり、R=R=R=R=[3−(N,N−ジエチルアミノ)フェノキシ]を2,3,9,10,16,17,23,24位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体[化合物12ビス];
から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項12】
前記ポリマーは、水及び生体液に不溶解性のポリマーであり、
水又は生体液に可溶なポリマーと可能に混合され、又はコーティングされることを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項13】
前記の不溶解性のポリマーは、綿、ビスコース、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、多糖類、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、シリコン誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のポリマー製品。
【請求項14】
前記の溶解性のポリマーは、デキストラン及びその誘導体、蛋白質及びそのメチル化誘導体、並びに蛋白質の加水分解物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のポリマー製品。
【請求項15】
前記スペーサーは、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、1,1’−カルボニルジイミダゾールクロロトリアジン、臭化シアン、混合無水物、イミドエステル及びマレイミド誘導体からなる群から選択される適当な二官能基剤による、前記フタロシアニン誘導体及び前記ポリマーの結合に由来することを特徴とする請求項1に記載のポリマー製品。
【請求項16】
自己滅菌性の、工業上及び医療上物品又は装具の製造又はコーティング用の請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリマー製品の使用。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリマー製品を有し、可能な1以上の医薬的に可能な活性物質を組み合わせたことを特徴とする物品及び装具。
【請求項18】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリマー製品でコートした少なくとも1つの表面を有することを特徴とする物品及び装具。
【請求項19】
カテーテル、ガイドチューブ、プローブ、心臓弁、軟組織用の人工装具、動物由来の人工装具、人工の腱、骨、及び心臓の代替品、コンタクトレンズ、血液酸素付加装置、人工の腎臓、心臓、膵臓及び肝臓、血液バッグ、シリンジ、外科用具、フィルター系、実験器具、培養並びに細胞性及び組織再生用の容器、ペプチド、蛋白質及び抗体用の支持体、家庭内及び病院内での使用用の臨床補助具、並びに美容用の容器及び機器からなる群から選択されることを特徴とする請求項17又は18に記載の物品及び装具。
【請求項20】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリマー製品の調製方法であって:
i)例えば、ヨウ化物又は塩化物の式(I)のフタロシアニンの塩を、適当な溶媒に溶解して、溶液を得るステップと;
ii)前記ポリマーに対応するモノマーを、ステップi)に由来するフタロシアニン(I)の溶液と反応して、フタロシアニンで誘導体化したモノマーを得るステップと;
iii)ステップii)に由来する誘導体化されたモノマーを重合するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリマー製品の調製方法であって:
i’)例えば、ヨウ化物又は塩化物の式(I)のフタロシアニンの塩を、適当な溶媒に溶解して、溶液を得るステップと;
ii’)ステップi’)に由来するフタロシアニン(I)の溶液を、前もって調製されたポリマーを可能に適当な様式で前処理され及び/又は前もって誘導体化されたポリマーと反応するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項22】
ステップii’)のポリマーは、ドーパント又は蛋白溶液で前処理されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ドーパントは、アクリル酸であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマーは、ポリマーとフタロシアニン誘導体との間に所望のスペーサーを生じるのに適当な二官能基剤で前もって誘導体化されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記二官能基剤は、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、1,1’−カルボニルジイミダゾールクロロトリアジン、臭化シアン、混合無水物、イミドエステル及びマレイミド誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップii’)のポリマーは、フタロシアニンのカルボキシル基にアミド結合を形成するように、適当なアミノ基で前もって誘導体化されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記溶液におけるフタロシアニン(I)の濃度は、10μM〜10mMであることを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項28】
前記溶液におけるフタロシアニン(I)の濃度は、1mMであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
MがZnであり、R=R=Hであり、R=R=1,3−ビス−(ジメチル−酢酸エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2,9(10),16(17),23(24)位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のオクタヨーダイド;及び
MがZnであり、R=R=R=Hであり、R=1,3−ビス−(ジメチル−酢酸エチル−アンモニウム)−2−プロピルオキシを2位に有する式(I)のフタロシアニン誘導体のジヨーダイド;
からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の式(I)のフタロシアニン誘導体。

【図1】
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【公表番号】特表2009−500462(P2009−500462A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518851(P2008−518851)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063695
【国際公開番号】WO2007/000472
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(504394102)エル.モルテニ アンド シー.デイ フラテッリ アリッチ ソシエタ’ディ エセルチヅィオ ソシエタ ペル アチオニ (7)
【Fターム(参考)】