説明

自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受

【課題】 自己発電機能を持たせることで、半永久的にRFID用タグに情報の書込みを可能にした自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受を提供する
【解決手段】 転がり軸受1は、外輪3と、内輪4と、内輪4および外輪3の間に配置された転動体5とによって構成され、外輪3にはその外周部に平面部9が形成されており、そこには圧電フィルム7と、RFID用タグ8とを含むセンサユニット10が配置されている。圧電フィルム7は転動体5の通過に伴う繰返し歪により自己発電して、発電した電力をRFID用タグ8に供給する。RFID用タグ8は転がり軸受1の回転に伴う信号を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受に関し、特に、非接触でデータの読み書きを行うRFID(Radio Frequency Identification)用タグを取付けた軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、品質管理に関してトレーサビリティの要求が高くなってきており、軸受などの機械要素商品の品質管理では、材料情報,製作情報,検査情報,出荷情報,客先組み込み情報,点検情報などが直ちに分るようにすることが望まれている。
【0003】
このような品質管理などのために、特開2003−85515号公報(特許文献1)には、任意の部材に薄板状アンテナを有するRFID用タグを貼り付けて、材料情報,製作情報,検査情報,出荷情報,客先組み込み情報,点検情報などを記録することで完成品、部品のトレーサビリティの確保や、運転時間などの把握を行うことが記載されている。
【特許文献1】特開2003−85515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたRFID用タグを軸受に取付けることにより、軸受の製造情報などを書込んで記憶させたり、読取ったりすることが可能になる。RFID用タグに情報の書込みおよび読出しをするためには、リーダ/ライタを使用する必要がある。リーダ/ライタは、電磁波などをRFID用タグに無線給電することで内部のメモリなどを能動化して情報の書込み及び読出しを行う。
【0005】
このため、従来のRFID用タグでは、時間とともに変化する軸受の運転状況などを常時連続的に記憶させることができない。ボタン電池などを内蔵させたRFID用タグも知られているが、電池の寿命が問題となる。
【0006】
そこで、この発明は、自己発電機能を持たせることで、半永久的にRFID用タグに情報の書込みを可能にした自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、外輪と、内輪と、外輪および内輪の間に配置される転動体とを含む転がり軸受と、外輪または内輪のいずれかに取付けられ、転動体の通過に伴う繰返し歪により発電する発電素子と、外輪または内輪のいずれかに取付けられ、発電素子から発電された電力が供給され、転がり軸受の回転に伴う信号を記録するRFID用タグとを備える。
【0008】
好ましくは、発電素子は、転動体の通過に伴う繰返し歪により交流電圧を発生し、発電素子で発電された交流電圧を直流電圧に波形整形してRFID用タグに供給する直流電圧供給手段を含む。
【0009】
好ましくは、発電素子から出力される交流電圧波形に含まれる異常波形を検出して、RFID用タグに与える波形検出手段を含む。
【0010】
好ましくは、波形検出手段は、交流電圧波形を検出して、その周期に基づいて回転数を検出し、累積回転数をRFID用タグに与える。
【0011】
好ましくは、発電素子は、自己発電型圧電フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、発電素子により自己発電して、RFID用タグに電力を供給するようにしたので、例えば軸受の累積回転数や寿命などの回転に関する情報をRFID用タグに蓄積できる。したがって、ボタン電池などを内蔵することなく、また電池の寿命などを気にすることなく、半永久的に軸受の品質を絶えず把握することが可能になる。そして、RFID用タグに蓄積した情報は、緊急時において装置類から軸受を取外すことなく、携帯用読取り器などを用いて容易に読み出すことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はこの発明の一実施形態における自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受を示す図であり、図2は図1の矢印A方向から見た外輪の要部平面図である。
【0014】
図1において、転がり軸受1は、外輪3と、内輪4と、内輪4および外輪3の間に配置された転動体5とによって構成されている。内輪4は回転軸6に固定されていて、外輪3はハウジング2に固定されている。回転軸6の回転に伴って内輪4も回転し、転動体5が内輪4と同一方向に公転する。なお、外輪3を回転させ、内輪4を固定させてもよい。
【0015】
外輪3にはその外周部に平面部9が形成されており、そこには圧電フィルム7と、RFID用タグ8とを含むセンサユニット10が配置されている。圧電フィルム7は転動体5の通過に伴う繰返し歪により自己発電する発電素子であって、発電した電力をRFID用タグ8に供給する。RFID用タグ8は転がり軸受1の回転に伴う信号を記録する。
【0016】
図3は図2に示したセンサユニットの回路構成を示す図である。センサユニット10は圧電フィルム7と、RFID用タグ8と、A/Dコンバータ11と、波形整形部12とを含む。RFID用タグ8は、アンテナ81と、送受信回路82と、CPU83と、記憶部84と、蓄電部85とを含む。
【0017】
圧電フィルム7は転動体5の通過に伴って交流電圧を発生して波形整形部12に出力する。波形整形部12は交流電圧を直流電圧に波形整形して蓄電部85に与える。蓄電部85は与えられた直流電圧を蓄電して安定した直流電圧をCPU83に与える。A/Dコンバータ11は圧電フィルム7から出力される出力波形をデジタル信号に変換してCPU83に与える。
【0018】
RFID用タグ8に含まれるアンテナ81は図示しないリーダ/ライタを接近させることで、電磁波による情報の送受信を行うものである。アンテナ81は送受信回路82に接続されており、CPU83には記憶部84が接続されている。
【0019】
図4は圧電フィルムから出力される交流電圧の波形図である。
【0020】
次に、この発明の一実施形態の動作について説明する。図1に示した回転軸6が回転すると内輪4も回転し、転動体5が公転する。転動体5が公転することにより、転動体5が外輪3の内径部を通過するごとに繰返し歪が発生する。この繰返し歪により、圧電フィルム7は、図4(a)に示すようなsin状に波形が変化する交流電圧が発生する。この交流電圧は、波形整形部12で直流電圧に波形整形されて蓄電部85に供給される。蓄電部85は波形整形部12から供給された直流電圧を蓄電し、安定した直流電圧をCPU83に供給する。これによりRFID用タグ8が能動化される。
【0021】
圧電フィルム7から出力される波形信号はA/Dコンバータ11にも与えられており、デジタル信号に変換されてCPU83に与えられている。CPU83は入力された波形のデジタル信号により、その周期を判別することで転がり軸受1の累積回転数を知ることができるので、その累積回転数に関する情報を記憶部84に記憶させる。
【0022】
記憶部84には予め、正常な波形データが記憶されており、CPU83は記憶部84に記憶されている波形データと、A/Dコンバータ11から与えられるデジタル信号に基づく波形データとを比較している。転がり軸受1の転送面に損傷を生じると、圧電フィルム7から図4図(b)に示すようにsin波形に不規則な信号が重畳される。この不規則な信号は転送面の傷に応じてレベルが変化する。CPU83は、A/Dコンバータ11から与えられるデジタル信号に基づく波形データと、記憶部84に記憶されている正常な波形データとの比較に基づいて、不規則な信号成分を判別する。
【0023】
そして、CPU83は不規則な信号成分のレベルに応じて、転がり軸受1の寿命を予測し、不規則な信号成分のレベルが予め定めるしきい値以上になれば、転がり軸受1が不良になったものと判別する。CPU83は、このようにして転がり軸受1の転送面に損傷を生じていることを判別すると、転がり軸受1の寿命を予測してその情報を記憶部84に記憶させる。
【0024】
したがって、この実施形態によれば、圧電フィルム7により自己発電して、RFID用タグ8に電力を供給するようにしたので、転がり軸受1の累積回転数や寿命などの回転に関する情報を常時記憶部84に蓄積できる。これにより、ボタン電池などを内蔵することなく、半永久的に転がり軸受1の品質を絶えず把握することが可能になる。そして、記憶部84に蓄積した情報は、緊急時において装置類から転がり軸受1を取外すことなく、携帯用読取り器などのリーダ/ライタを用いて容易に読み出すことが可能になる。
【0025】
なお、上述の説明では、この発明を転がり軸受1に適用した例について説明したが、これに限ることなく、深溝玉軸受などのその他の軸受に適用してもよい。
【0026】
また、この発明は、ケーブルなどを用いて信号を送信できない機器などに適用すれば、さらに有効である。
【0027】
さらに、上述の説明では転がり軸受1の回転に関する情報を検出するようにしたが、温度や回転速度を検出するセンサを内蔵して、必要な電力を供給してもよい。
【0028】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、電池などを内蔵させることなく、転がり軸受の回転に関する情報を常時蓄積できるので、常時回転を監視する必要がある用途などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態における自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受を示す図である。
【図2】図1の矢印A方向から見た外輪の要部平面図である。
【図3】図2に示したセンサユニットの回路構成を示す図である。
【図4】圧電フィルムから出力される交流電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0031】
1 転がり軸受、2 ハウジング、3 外輪、4 内輪、5 転動体、6 回転軸、7 圧電フィルム、8 RFID用タグ、9 平面部、10 センサユニット、11 A/Dコンバータ、12 波形整形部、81 アンテナ、82 送受信回路、83 CPU,84 記憶部、85 蓄電部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、内輪と、前記外輪および前記内輪の間に配置される転動体とを含む転がり軸受と、
前記外輪または前記内輪のいずれかに取付けられ、前記転動体の通過に伴う繰返し歪により発電する発電素子と、
前記外輪または前記内輪のいずれかに取付けられ、前記発電素子から発電された電力が供給され、前記転がり軸受の回転に伴う信号を記録するRFID用タグとを備える、自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受。
【請求項2】
前記発電素子は、前記転動体の通過に伴う繰返し歪により交流電圧を発生し、
さらに、前記発電素子で発電された交流電圧を直流電圧に波形整形して前記RFID用タグに供給する直流電圧供給手段を含む、請求項1に記載の自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受。
【請求項3】
さらに、前記発電素子から出力される交流電圧波形に含まれる異常波形を検出して、前記RFID用タグに与える波形検出手段を含む、請求項1または2に記載の自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受。
【請求項4】
前記波形検出手段は、前記交流電圧波形を検出して、その周期に基づいて回転数を検出し、累積回転数を前記RFID用タグに与える、請求項3に記載の自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受。
【請求項5】
前記発電素子は、自己発電型圧電フィルムである、請求項1から4のいずれかに記載の自己発電機能付RFID用タグを内蔵した軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52742(P2006−52742A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232645(P2004−232645)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】