説明

自己組織化高分子膜材料、自己組織化パターン、及びパターン形成方法

【解決手段】繰り返し単位としてヒドロキシスチレン単位を含み、重量平均分子量が20,000以下であることを特徴とする自己組織化によりミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターンを形成する自己組織化高分子膜材料。
【効果】本発明は、ヒドロキシスチレン単位を含む高分子化合物を、ブロック共重合体として用いたり、他の高分子化合物と配合することで、従来のブロックコポリマーでは難しい、パターンサイズが20nm以下の自己組織化により形成されるミクロドメイン構造のパターンを得ることができ、特に超LSI製造用の微細パターン形成材料などへ好適な自己組織化材料を与えることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシスチレン単位を含む高分子化合物を、ブロック共重合体として用いたり、他の高分子化合物と配合することで、従来のブロックコポリマーでは難しい、パターンサイズが20nm以下の自己組織化により形成されるミクロドメイン構造のパターンを得ることができ、特に超LSI製造用の微細パターン形成材料などへ好適な自己組織化高分子膜材料、及び自己組織化パターン並びにパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められており、現世代の微細加工技術としてArF露光、EB直描、EUVリソグラフィーが開発されている。ArF露光、EB直描リソグラフィーは、0.06μm以下の加工も可能であり、光吸収の低いレジスト材料を用いた場合、基板に対して垂直に近い側壁を有したパターン形成が可能になっている。
しかし、30nm以下のリソグラフィー、特に10nm以下のリソグラフィーによる微細パターン形成は困難な現状である。
【0003】
近年、ブロック共重合体の自己組織化技術を用いて、リソグラフィー工程を用いず、規則性のあるパターンを得ることに成功している(特許文献1〜3:特開2005−7244号公報、特開2005−8701号公報、特開2005−8882号公報記載)。また、発光ダイオードの光取り出し効率向上のため、自己組織化技術が用いられている(特許文献4:特開2003−218383号公報記載)。
【0004】
ところが、これら自己組織化材料で得られるパターンサイズは、50nmから200nmであり、最も小さいものでも30nm程度で、パターン形状の均一性や、規則性にも問題が多く、未だ実用化に至っていないのが現状であり、このためこれら問題の改善が望まれる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−7244号公報
【特許文献2】特開2005−8701号公報
【特許文献3】特開2005−8882号公報
【特許文献4】特開2003−218383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ヒドロキシスチレン単位を含む高分子化合物を、ブロック共重合体として用いたり、他の高分子化合物と配合することで、従来のブロックポリマーでは難しい、パターンサイズが20nm以下の自己組織化により形成されるミクロドメイン構造のパターンを得ることができ、特に超LSI製造用の微細パターン形成材料などへ好適な自己組織化高分子膜材料、自己組織化パターン、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、後述する方法によって得られる、ヒドロキシスチレン単位を含む重合体であり、かつ重量平均分子量が20,000以下の高分子化合物を有機溶剤に溶解し、基板上に塗布後、ベーク、アニーリング工程を行うことで自己組織化により形成されるミクロドメイン構造のパターンを得ることができ、エッチングなどの処理を行うことで凹凸パターンが形成可能で、精密な微細加工に有利であり、超LSI用製造用材料として非常に有効であることを知見した。
【0008】
即ち、本発明の高分子化合物は、ヒドロキシスチレン単位を含む重合体であり、かつ重量平均分子量が20,000以下のポリマーである。従来の自己組織化用途に用いられる通常のスチレン系ポリマーの分子量は20,000を超えるものであり、これはこれ以下であるとポリマーの自己組織化が起こらなくなるためである。一方、自己組織化により形成されたミクロドメイン構造のパターンサイズは、使用するポリマーの分子量と比例関係にあり、分子量が20,000を超えると、理論的にパターンサイズを20nm以下にするのは困難である。
【0009】
このような従来の自己組織化材料に対して、上述したようなヒドロキシスチレン単位を含む重合体であり、かつ分子量が20,000以下の高分子化合物は、ポリマー自身のヒドロキシ基特有の水素結合的相互作用から、分子量10,000程度のブロック共重合体でも、自己組織化が起こることが確認された。
【0010】
即ち、上記自己組織化可能な高分子化合物を使用すれば、ミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下、特に10nm以下のパターンが形成可能となることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、下記自己組織化高分子膜材料、自己組織化パターン、及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
繰り返し単位としてヒドロキシスチレン単位を含み、重量平均分子量が20,000以下であることを特徴とする自己組織化によりミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターンを形成する自己組織化高分子膜材料。
請求項2:
ヒドロキシスチレン単位が、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示されるものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
請求項3:
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化2】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位と他の繰り返し単位とがブロック共重合してなるものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
請求項4:
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化3】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位が、他の繰り返し単位とトリブロック共重合してなるものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
請求項5:
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化4】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位と、下記一般式(2)
【化5】


(式中、R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R3は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示す。)
で示される繰り返し単位とがジブロック又はトリブロック共重合されたものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
請求項6:
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化6】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位と、下記一般式(3)
【化7】


(式中、R4は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシアルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示し、Xはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子を表す。また、n、mは0又は1〜5までの正の整数である。)
請求項7:
下記一般式(1)
【化8】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が20,000以下である高分子化合物と、下記一般式(2)
【化9】


(式中、R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R3は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示す。)
で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が20,000以下である高分子化合物とを含有することを特徴とする自己組織化によりミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターンを形成する自己組織化高分子膜材料。
請求項8:
請求項1乃至7のいずれか1項記載の自己組織化高分子膜材料の自己組織化により形成された、ミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターン。
請求項9:
パターンサイズが10nm以下である請求項8記載のパターン。
請求項10:
請求項8又は9記載のパターンをエッチング処理して、ミクロドメイン構造中の一部を除去して凹凸パターンを形成するパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ヒドロキシスチレン単位を含む高分子化合物を、ブロック共重合体として用いたり、他の高分子化合物と配合することで、従来のブロックコポリマーでは難しい、パターンサイズが20nm以下の自己組織化により形成されるミクロドメイン構造のパターンを得ることができ、特に超LSI製造用の微細パターン形成材料などへ好適な自己組織化材料を与えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の自己組織化高分子膜材料は、繰り返し単位としてヒドロキシスチレン単位、特に下記一般式(1)
【化10】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される単位を有する高分子化合物を含む。
【0014】
この場合、高分子化合物が、上記式(1)の繰り返し単位と他の繰り返し単位とのブロック共重合体であることが好ましく、ブロック共重合体は、式(1)の繰り返し単位が他の繰り返し単位とジブロック又はトリブロック共重合してなる態様が好ましい。
上記他の繰り返し単位としては、下記一般式(2)又は(3)で示される単位が好ましい。
【0015】
【化11】


(式中、R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R3は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示す。)
【0016】
ここで、R3の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましい。また、ヒドロキシ置換アルキル基としては、ヒドロキシエチル基、フッ素原子含有のアルキル基、フッ素原子含有のヒドロキシアルキル基としては、以下示した構造式のものが挙げられる。
【0017】
【化12】

【0018】
【化13】


(式中、R4は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシアルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示し、Xはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子を表す。また、n、mは0又は1〜5までの正の整数である。)
【0019】
ここで、R5のアルコキシアルキル基としては、メトキシ基、t−ブトキシ基、1,1−ジメチルエチルオキシ基などが挙げられる。また、フッ素原子含有のアルキル基としては、トリフルオロメチル基などが、フッ素原子含有のヒドロキシアルキル基としては、1,1−ジトリフルオロメチルヒドロキシメチル基などが例示される。
【0020】
上記高分子化合物が、上記式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位とを含む場合、式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位の割合は20〜80質量%であることが好ましい。
【0021】
また、上記高分子化合物が、上記式(1)の繰り返し単位と式(3)の繰り返し単位とを含む場合、式(1)の繰り返し単位と式(3)の繰り返し単位の割合は20〜80質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明の自己組織化高分子膜材料において、高分子化合物としては、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物と、上記式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物とを併用してもよい。この場合、その併用割合は、式(1)の繰り返し単位を有する高分子化合物と式(2)の繰り返し単位を有する高分子化合物との配合割合は10〜90質量%であることが好ましい。
【0023】
ここで、上記高分子化合物を得るための反応を行う重合形態としては、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、有機金属触媒を用いた配位重合等が挙げられ、なかでもリビング重合が可能なアニオン重合がより好ましい。例えば、リビングアニオン重合を行う場合、脱水処理を行った重合用モノマー、溶媒を用いる。使用する有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられ、これら有機溶媒に、アニオン種を必要量添加し、その後モノマーを添加することで重合を行う。使用するアニオン種としては、有機金属を用い、例としてはアルキルリチウム、アルキルマグネシウムハライド、ナフタレンナトリウム、アルキル化ランタノイド系化合物等が挙げられ、特にモノマーとして置換スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを重合する場合には、ブチルリチウムやブチルマグネシウムクロライドが好ましい。重合温度としては、−100〜30℃の範囲内が好ましく、重合の制御性をよくするためには、−80〜10℃がより好ましい。
【0024】
本発明の高分子化合物を製造する方法としては、例えば上記に例示したようなリビングアニオン重合によりブロックコポリマーを合成する。ここで、4−エトキシエトキシスチレンに代表されるようなモノマーを用いてブロック共重合を行う場合、得られた高分子化合物を酸触媒を用いて脱保護し、フェノール性水酸基を含む高分子化合物を合成することが可能である。また重合時のフェノール性水酸基に対する保護基としては、ほかにt−ブチル基、トリアルキルシリル基、アルキルカルボニル基等が挙げられる。また、高分子化合物中に他のエーテル部位、エステル部位を有する単位を共重合する場合は、脱保護反応時の酸強度の調整や、アルカリ性条件下での脱保護反応により、選択的にフェノール性水酸基を得ることも可能である。
【0025】
本発明に係る高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は1,000〜20,000であり、好ましくは3,000〜15,000、更に好ましくは5,000〜12,000である。重量平均分子量が小さすぎると自己組織化現象が生じず、大きすぎると得られるパターンサイズが大きくなってしまう。
【0026】
更に、本発明の高分子化合物において、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は
低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、自己組織化により形成されたミクロドメイン構造のパターンの均一性や規則性の悪化などの性能低下を引き起こすことから、高分子化合物の分子量分布は1.0〜1.3、特に1.0〜1.2と狭分散であることが好ましい。
【0027】
本発明の自己組織化高分子膜組成物において、高分子化合物を溶解する有機溶剤としては、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸3−メトキシブチル、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジアセトンアルコール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、γブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、テトラメチレンスルホン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、乳酸アルキルエステルである。これらの溶剤は単独でも2種以上混合してもよい。なお、本発明におけるプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基は炭素数1〜4のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、中でもメチル基、エチル基が好適である。また、このプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートには1,2置換体と1,3置換体があり、置換位置の組み合わせで3種の異性体があるが、単独或いは混合物のいずれの場合でもよい。
【0028】
また、上記の乳酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数1〜4のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、中でもメチル基、エチル基が好適である。
【0029】
溶剤としてプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートを添加する際には全溶剤に対して50質量%以上とすることが好ましく、乳酸アルキルエステルを添加する際には全溶剤に対して50質量%以上とすることが好ましい。また、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートと乳酸アルキルエステルの混合溶剤を溶剤として用いる際には、その合計量が全溶剤に対して50質量%以上であることが好ましい。この場合、更に好ましくは、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートを60〜95質量%、乳酸アルキルエステルを5〜40質量%の割合とすることが好ましい。プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートが少ないと、塗布性劣化等の問題があり、多すぎると溶解性不十分などの問題がある。
【0030】
溶剤の配合量は、通常、高分子化合物固形分100質量部に対して300〜8,000質量部、好ましくは400〜3,000質量部であるが、既存の成膜方法で可能な濃度であればこれに限定されるものではない。
【0031】
本発明の自己組織化高分子膜材料中には、更に、塗布性を向上させるための界面活性剤を加えることができる。
【0032】
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171,F172,F173(大日本インキ化学工業)、フロラードFC−430,FC−431(住友スリーエム)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106、サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業)が挙げられ、中でもFC−430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004,KH−20,KH−30が好適である。これらは単独或いは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0033】
本発明の自己組織化高分子膜組成物中の界面活性剤の添加量としては、高分子化合物固形分100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。なお、下限は特に制限されないが、0.1質量部以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の自己組織化高分子膜材料は、これをシリコン等の基板上に好ましくは0.005〜0.05μm、特に0.01〜0.03μmの厚さに塗布し、100〜300℃、特に100〜150℃にて5〜600分、特に5〜100分ベークとアニーリング工程を併せて行うことにより、自己組織化によってミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下、特に10nm以下のパターンが形成される。
【0035】
また、ハロゲン系ガス、O2,SO2ガス等を用いてエッチングするなどの処理を行うことにより、ミクロドメイン構造中の一部を除去して凹凸パターンを形成することができる。
【実施例】
【0036】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
[合成例1]
2Lのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン1,500gを注入し、−75℃まで冷却した。その後、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液:1N)を12.3g注入し、蒸留脱水処理を行った4−エトキシエトキシスチレンを161g滴下注入した。このとき反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。15分間反応後、更に蒸留脱水処理を行った4−t−ブトキシスチレンを98.7g滴下注入し、30分間反応させた。この後、メタノール10gを注入し、反応を停止させた。反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を減圧濃縮し、メタノール800gを注入撹拌し、静置後、上層のメタノール層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、金属Liを取り除いた。下層のポリマー溶液を濃縮し、テトラヒドロフラン580g、メタノール507g、シュウ酸5.0gを加え、40℃に加温し、40時間脱保護反応を行い、ピリジン3.5gを用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.6Lに溶解し、水7.0Lの溶液中に沈殿させ、洗浄し、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体166.2gを得た。
【0037】
得られた重合体を13C,1H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
ヒドロキシスチレン:4−t−ブトキシスチレン=57.7:42.3
重量平均分子量(Mw)=9,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.13
これを(ジブロック−A)とする。
【化14】

【0038】
[合成例2]
2Lのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン1,500gを注入し、−75℃まで冷却した。その後、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液:1N)を12.5g注入し、蒸留脱水処理を行った4−t−ブトキシスチレンを41g滴下注入した。このとき反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。15分間反応後、更に蒸留脱水処理を行った4−エトキシエトキシスチレンを154g滴下注入し、15分間反応させた。最後に蒸留脱水処理を行った4−t−ブトキシスチレンを再度41g滴下注入し、30分間反応後、メタノール10gを注入し、反応を停止させた。反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を減圧濃縮し、メタノール800gを注入撹拌し、静置後、上層のメタノール層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、金属Liを取り除いた。下層のポリマー溶液を濃縮し、テトラヒドロフラン580g、メタノール507g、シュウ酸5.0gを加え、40℃に加温し、40時間脱保護反応を行い、ピリジン3.5gを用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.6Lに溶解し、水7.0Lの溶液中に沈殿させ、洗浄し、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体163.2gを得た。
【0039】
得られた重合体を13C,1H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
ヒドロキシスチレン:4−t−ブトキシスチレン=62.5:37.5
重量平均分子量(Mw)=10,200
分子量分布(Mw/Mn)=1.09
これを(トリブロック−B)とする。
【化15】

【0040】
[合成例3]
2Lのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン1,500gを注入し、−75℃まで冷却した。その後、s−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液:1N)を14.5g注入し、蒸留脱水処理を行った4−エトキシエトキシスチレンを193g滴下注入した。このとき反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。15分間反応後、更に蒸留脱水処理を行ったメタクリル酸メチルエステルを47g滴下注入し、0℃まで30分間かけて昇温させながら反応を行い、その後メタノール10gを注入し、反応を停止させた。反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を減圧濃縮し、メタノール800gを注入撹拌し、静置後、上層のメタノール層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、金属Liを取り除いた。下層のポリマー溶液を濃縮し、テトラヒドロフラン580g、メタノール507g、シュウ酸5.0gを加え、40℃に加温し、40時間脱保護反応を行い、ピリジン3.5gを用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.6Lに溶解し、水7.0Lの溶液中に沈殿させ、洗浄し、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体148.9gを得た。
【0041】
得られた重合体を13C,1H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
ヒドロキシスチレン:メタクリル酸メチルエステル=67.9:32.1
重量平均分子量(Mw)=11,200
分子量分布(Mw/Mn)=1.12
これを(ジブロック−C)とする。
【化16】

【0042】
以下、同様の合成法により、下記構造式に示したようなトリブロック−D,ジブロック−E,Fを合成した。
【化17】

【0043】
また、比較合成例として、下記構造式に示したようなジブロック−G,H,Iを合成した。
【化18】

【0044】
[実施例、比較例]
上記ジ又はトリブロックポリマーA〜Iをそれぞれ50〜70質量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液に調製し、2mm角のサンプルホルダーに注入した。この各ポリマー溶液を、高エネルギー加速器研究機構のシンクロトロン放射光ビームラインBL45XU,Spring−8(super photon ring−8GeV)のSAXS(small−angle X−ray scattering)装置を用いて(q/nm-1)測定し、フーリエ変換解析を行い、ポリマーの自己組織化によるミクロドメイン構造の平均パターンサイズ幅(=D)を得た結果を表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
また、これら実施例記載のブロックポリマーのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液をシリコン基板上に塗布して成膜を行い、50〜400℃のアニーリング工程を10分〜50時間経ることで、基板上に自己組織化により形成されたミクロドメイン構造のパターンを作製することができる。このミクロドメイン構造のパターンをエッチング処理すれば、ナノドットパターンやラインパターンなどの凹凸パターンを形成することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位としてヒドロキシスチレン単位を含み、重量平均分子量が20,000以下であることを特徴とする自己組織化によりミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターンを形成する自己組織化高分子膜材料。
【請求項2】
ヒドロキシスチレン単位が、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示されるものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
【請求項3】
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化2】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位と他の繰り返し単位とがブロック共重合してなるものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
【請求項4】
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化3】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位が、他の繰り返し単位とトリブロック共重合してなるものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
【請求項5】
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化4】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位と、下記一般式(2)
【化5】


(式中、R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R3は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示す。)
で示される繰り返し単位とがジブロック又はトリブロック共重合されたものである請求項1記載の自己組織化高分子膜材料。
【請求項6】
高分子化合物が、下記一般式(1)
【化6】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位と、下記一般式(3)
【化7】


(式中、R4は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシアルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示し、Xはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子を表す。また、n、mは0又は1〜5までの正の整数である。)
【請求項7】
下記一般式(1)
【化8】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が20,000以下である高分子化合物と、下記一般式(2)
【化9】


(式中、R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R3は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基、フッ素原子含有のアルキル基、又はフッ素原子含有のヒドロキシアルキル基を示す。)
で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が20,000以下である高分子化合物とを含有することを特徴とする自己組織化によりミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターンを形成する自己組織化高分子膜材料。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の自己組織化高分子膜材料の自己組織化により形成された、ミクロドメイン構造のパターンサイズが20nm以下のパターン。
【請求項9】
パターンサイズが10nm以下である請求項8記載のパターン。
【請求項10】
請求項8又は9記載のパターンをエッチング処理して、ミクロドメイン構造中の一部を除去して凹凸パターンを形成するパターン形成方法。

【公開番号】特開2007−246600(P2007−246600A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69055(P2006−69055)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】